数値制御情報作成装置
【課題】削り残しの除去加工のための数値制御情報がより効率的に生成でき得る数値制御情報作成装置を提供する。
【解決手段】第一回転工具での削り残し領域を、第一回転工具より小径の第二回転工具で除去加工する数値制御情報を作成する場合、第一工具での加工範囲を第二工具半径分だけ内側にオフセットした第一形状と、指定形状を取代と第二工具半径との和でオフセットして第二形状と、を算出し、前記第二形状から第一形状を除外して残った追い込み加工形状を生成する。そして、この追い込み加工形状のうち第二形状に由来する要素のみを順次、内側にオフセットする。そして、このオフセット形状および追い込み加工形状に沿って移動する第二回転工具の移動軌跡を求める。
【解決手段】第一回転工具での削り残し領域を、第一回転工具より小径の第二回転工具で除去加工する数値制御情報を作成する場合、第一工具での加工範囲を第二工具半径分だけ内側にオフセットした第一形状と、指定形状を取代と第二工具半径との和でオフセットして第二形状と、を算出し、前記第二形状から第一形状を除外して残った追い込み加工形状を生成する。そして、この追い込み加工形状のうち第二形状に由来する要素のみを順次、内側にオフセットする。そして、このオフセット形状および追い込み加工形状に沿って移動する第二回転工具の移動軌跡を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力した形状に沿って第一回転工具で加工した際に第一回転工具が進入出来ない領域を第一回転工具より小さな径を有する第二回転工具で加工するための数値制御情報を作成する数値制御情報作成装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、第一回転工具が進入出来ない領域、いわゆる削り残し領域を認識し、当該領域を第一回転工具よりも小さな径を有する第二回転工具で除去するための制御情報を生成する数値制御情報作成装置が知られている。こうした従来の数値制御情報作成装置について図10〜図14を参照して説明する。
【0003】
図10は、従来の数値制御情報作成装置の構成を示すブロック図である。また、図11〜図13は、この数値制御情報作成装置での処理過程を示す図であり、図14A、図14Bは、処理結果の一部を示す図である。
【0004】
ここでは、指定形状が図11の符号51で示されるような形状の場合を例に挙げて説明する。この場合、ユーザは、部品図面から、円弧、直線、その他の幾何形状要素で構成される指定形状51を抽出し、数値制御情報作成装置の形状入力部1に入力する。また、ユーザは、指定形状51に対して残す取代Fの値や、第一回転工具の工具半径(第一工具半径R1)、第二回転工具の工具半径(第二工具半径R2)、第二回転工具での切削幅Wなども、それぞれ、取代設定部2、第一工具半径設定部3、第二工具半径設定部4、切削幅設定部9に入力し、設定する。
【0005】
取代オフセット処理部14は、指定形状51を前記取代設定部2に設定された取代F分だけオフセットすることで加工形状52を生成する(図11参照)。第一工具半径設定部3には、第一回転工具の工具半径である第一工具半径R1が設定されている。工具形状オフセット処理部15は、前記取代オフセット処理部14で生成された加工形状52を、第一工具半径設定部3に設定された第一工具半径R1分だけオフセットし、工具の移動軌跡を得る。そして、工具形状オフセット処理部15は、その移動軌跡をさらに、第一工具半径R1相当の値で逆方向(外側方向)にオフセットすることで、当該第一回転工具での加工範囲を示す加工範囲形状53(図12参照)を生成する。
【0006】
なお、特に記載がないかぎり、以下において、形状オフセットは次のようにして行なう。まず、形状を構成する線分に対しては、オフセット方向にオフセット量分だけ平行移動した同じ長さの線分を新しく作る。また、形状を構成する円弧に対しては、開き角と中心位置が同じでオフセット方向に円弧が移動した位置となるようにオフセット量分半径を増減した円弧を新しく作成する。この際、半径が0以下になってしまう場合は、その円弧は新しい形状を生成しない。そして、新しく作成された形状を順にたどった形状がオフセット形状となる。その際、各々形状の終点は新しい形状同士の交点となる。形状が離れてしまう場合は、形状の間に半径がオフセット量分で前後の形状に接する円弧を新しく作成する。
【0007】
形状合成処理部8は、加工形状52と加工範囲形状53とを合成し、加工形状52から加工範囲形状53を除外して残った形状である削り残し領域54a〜54dを得る(図13参照)。この削り残し領域54a〜54dは、加工範囲形状53に対する加工形状52のはみ出し範囲ともいえる。続いて、数値制御情報作成装置は、この削り残し領域54a〜54dを、領域加工として一般的であるポケット加工によって除去するための数値制御情報を算出する。具体的には、次のとおりである。第二工具半径設定部4には、予め、追い込み加工に用いられる回転工具、すなわち第二回転工具の工具半径である第二工具半径R2が設定されている。ポケット軌跡生成部16は、この第二工具半径設定部4に設定された第二工具半径R2を有する工具を用いて、前記形状合成処理部8において求められた前記削り残し領域54a〜54dの内部の除去加工を行うための軌跡を生成する。この際、前記削り残し領域54a〜54dの外形を、切削幅設定部9に設定された切削幅Wで逐次オフセットし、工具軌跡を生成する。最後に、これまで生成された工具軌跡を出力部13へ出力することで、目的の追い込み加工用軌跡が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−121219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、こうした従来の数値制御情報作成装置では、前記削り残し領域54a〜54d内部の除去加工を行うがゆえ、図14Aにおいて符号56で示すような箇所の除去が出来ないという課題があり、当該個所56を除去するためさらに輪郭加工を追加定義し組み合わせるなどの特別な処置が必要となる。
【0010】
また一般に、図14Aに示すように、加工初期の工具降下位置(加工開始位置)58として、第一回転工具により加工済みであるとみなせる既加工領域64の内部位置を探索する必要がある。さらに前記工具降下位置58に降下したあとは、最奥部オフセット線上位置60に向かって走行することになるが、前記工具降下位置58から前記最奥部オフセット線上位置60への走行軌跡62は長距離に渡って被削材と工具半周分の接触が発生し加工負荷が大きくなるという課題もある。
【0011】
さらに、前記削り残し領域54a〜54dに接して広がる広大な前記既加工領域64が存在するにもかかわらず、たとえば削り残し領域54dの切削加工中に発生する切粉は当該削り残し領域54dの内部にとどまり、既加工領域64の方向へ排出されないため加工の安定性を阻害する要因となるという課題も存在する。
【0012】
さらに、図14Bに示すように、前記形状入力部1に設定された指定形状51を構成する形状要素51a,51bの座標値精度が粗く、当該形状要素51a,51bが微小な角度を成す折れ線であったとする。この場合、前記折れ線(形状要素51a,51b)を前記取代設定部2に設定された取代Fでオフセットして生成される加工形状52と加工範囲形状53との間に、削り残し領域54eが生じることになる。この削り残し領域54eの最大幅66が、僅か数μmという実加工では無視すべき厚みであっても、従来の数値制御情報作成装置では、削り残し領域として厳密に検出されてしまい、加工効率が悪いという問題もあった。
【0013】
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みなされたものであり、その目的は、削り残しの除去加工のために、異なる複数の加工定義を組み合わせる必要がなく、且つ加工開始時の工具降下位置が必ず加工済みの位置となり、且つ、加工中の切粉排出性能がよく且つ実加工では無視すべきである僅か数μmの厚みしかない削り残しが無視される、効率のよい加工軌跡を生成する数値制御情報作成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の数値制御情報作成装置は、第一回転工具での削り残し領域を、第一回転工具より小径の第二回転工具で除去加工する数値制御情報を作成する数値制御情報作成装置であって、加工すべき形状である指定形状の入力を受け付ける形状入力部と、前記第一回転工具および前記第二回転工具の工具半径の設定を受け付ける工具半径設定部と、前記指定形状に対して残す取代の設定を受け付ける取代設定部と、前記指定形状を、前記取代と第一工具半径との和で、前記第一回転工具で除去加工する側へオフセットして得られる形状を、さらに、第一工具半径から第二工具半径を減じた値で、前記第一回転工具で除去加工する側とは反対側にオフセットして第一形状を算出する第一形状算出部と、前記指定形状を、前記取代と第二工具半径との和で、前記第一回転工具で除去加工する側へオフセットして第二形状を算出する第二形状算出部と、前記第二形状から第一形状を除外して残った追い込み加工形状を生成する形状合成処理部と、追い込み加工形状に基づいて、前記第一回転工具で削り残した領域を、第二回転工具で追い込み加工する際の軌跡を生成する追い込み加工用軌跡生成部と、を備える事を特徴とする。
【0015】
別の言い方をすると、本発明の数値制御情報作成装置は、指定形状、第一工具半径、第二工具半径、および取代に基づいて、第一回転工具が実際に加工する領域の外形より、第二工具半径分だけ小さくオフセットした第一形状、および、この指定形状を取代と第二工具半径とオフセット加算量の和でオフセットした第二形状を生成する。そして、この第一形状から第二形状のはみ出した範囲の形状、すなわち、第一回転工具が削り残す領域に沿って第二回転工具が走行する際に描く工具中心の軌跡を意味する追い込み加工形状を生成する。そして、この追い込み加工形状に対して、第一形状由来の形状要素を対象としないオフセットを順次施すことによって、追い込み加工形状の内側に位置する複数のオフセット形状からなるオフセット形状群を生成する。第二回転工具を走行させる軌跡として、オフセット形状群のうち最も内側のオフセット形状に沿って移動した後、順次、一つ外側のオフセット形状に沿って移動し、最終的に、追い込み加工形状に沿って移動する軌跡を出力する。その際に、前記オフセット形状間を結ぶために、これらオフセット形状毎に含まれる第一形状由来の要素の端点もしくは中点から加工を開始し且つピックフィードを行う経路を合わせて出力する。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、第一形状として第二工具半径の量だけ小さくした形状を求めているため、追い込み加工形状及びその内部を第二回転工具が走行することによって第一回転工具が削り残す領域が確実に除去されることとなる。また前記追い込み加工形状を求める際に若干量を加算してオフセットするため実加工では無視してよい狭小な削り残しの検出を防止することができる。また、追い込み加工形状には第一形状に由来する形状要素が必ず含まれるので当該要素上に前記第二回転工具の中心を置いたとき前記第二回転工具の外周は前記第一回転工具によって加工済みであるはずの領域の内部に存在することとなるため加工開始時の工具降下は実加工動作が伴わず安全であり、また前記工具降下を行った位置から最も内側のオフセット形状へ第二回転工具が向かう際の加工動作において被削材と工具半周分の接触はほとんど発生しないため加工負荷が小さくなる。また最も内側のオフセット形状上の走行から順にその外側のオフセット形状上の走行へと乗り移らせながら前記第二回転工具の中心を移動させて行う加工動作は第一回転工具によって加工済みである広大な領域の側に開いた状態であるため加工中に生ずる切粉は前記広大な領域へと排出され、追い込み加工として最適な軌跡を生成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明における数値制御情報作成方法の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の数値制御情報作成方法に基づく処理過程の第1の図である。
【図3】本発明の数値制御情報作成方法に基づく処理過程の第2の図である。
【図4】本発明の数値制御情報作成方法に基づく処理過程の第3の図である。
【図5】本発明の数値制御情報作成方法に基づく処理過程の第4の図である。
【図6】本発明の数値制御情報作成方法に基づく処理過程の第5の図である。
【図7】本発明の数値制御情報作成方法に基づく処理結果の第1の図である。
【図8】本発明の数値制御情報作成方法を構成する処理の一部を示す。
【図9】本発明の数値制御情報作成方法を構成する処理の一部を示す。
【図10】従来の数値制御情報作成方法の一例を示すブロック図である。
【図11】従来の数値制御情報作成方法に基づく処理過程の第1の図である。
【図12】従来の数値制御情報作成方法に基づく処理過程の第2の図である。
【図13】従来の数値制御情報作成方法に基づく処理過程の第3の図である。
【図14A】従来の数値制御情報作成方法に基づく処理結果の一部を示す第1の図である。
【図14B】従来の数値制御情報作成方法に基づく処理結果の一部を示す第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態である数値制御情報作成装置について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である数値制御情報作成装置の構成を示すブロック図である。図2〜図6は、数値制御情報作成の処理過程を示す図である。また、図7は数値制御情報作成の処理結果を示す図であり、図8、図9は数値制御情報作成の処理の一部を示す図である。
【0019】
ここでは、指定形状が図2の21で示されるような形状の場合を例に挙げて説明する。この場合、ユーザは、部品図面から、円弧、直線、その他の幾何形状要素で構成される指定形状21を抽出し、数値制御情報作成装置の形状入力部1に入力する。また、ユーザは、予め設定された加工条件に従って、指定形状21に対して残す仕上げ代Fの値を取代設定部2に、追い込み加工時における切削幅を切削幅設定部9に、それぞれ入力し、設定する。また、第一回転工具の工具半径(第一工具半径)R1を第一工具半径設定部3に、第二回転工具(追い込み加工用工具)の工具半径(第二工具半径)R2を第二工具半径設定部4に、それぞれ入力し設定する。ここで、第二回転工具は、指定形状21の内部を、第一回転工具で、設定された仕上げ代Fを残して除去加工した際に生じた削り残しを、さらに除去加工する際に用いられる工具である。したがって、第二回転工具の工具半径(第二工具半径)R2としては、第一回転工具の工具半径(第一工具半径)R1よりも小さな値が設定される(R1>R2)。さらに、本実施形態では、オフセット加算量設定部5にオフセット加算量αも入力され、設定される。このオフセット加算量については、後に詳説する。
【0020】
以上のパラメータの設定が完了すれば、数値制御情報作成装置が、実際に工具軌跡の算出を開始する。ここでは、特に追い込み加工時の工具軌跡の算出の流れについて詳説する。第一形状算出部6は、図2に示すように、指定形状21を、仕上げ代Fと第一工具半径R1の和で与えられる量(F+R1)だけ、内側にオフセットし、第一回転工具の工具軌跡22を得る。続いて、この工具軌跡22を、第一工具半径R1から第二工具半径R2を減じた量(R1−R2)だけ、工具軌跡22を求めた際とは逆向き(外側)にオフセットし、第一形状23を得る。
【0021】
次に、第二形状算出部7は、図3に示すように、指定形状21を、仕上げ代Fと第二工具半径R2とオフセット加算量αとの和で与えられる量(F+R2+α)だけ、内側にオフセットすることで第二形状24を得る。なお、オフセット加算量αとして、数値制御装置の位置制御における最小分解能より僅かに小さな値、例えば0.4μm程度を設定し、このオフセット量に加算すると、形状合成部8における処理において第一形状23と第二形状24とが確実に交差することとなる。その結果、様々な処理を経ることで座標値精度の劣化が蓄積されたとしても形状合成は確実に行われるようになる。または、前記オフセット加算量αとして1〜10μm程度の量を設定し、このオフセット量に加算すると、実加工では無視すべき厚みである数μm程度の厚みしか有しない削り残し領域は検出されなくなる。いずれにしても、このオフセット加算量αとしては、実加工では無視でき得る程度の小さい値(許容誤差以下の値)が設定される。
【0022】
次に、形状合成部8は、図4、図5に示すように、第一形状23と第二形状24とを合成し、第二形状24から第一形状23を除外して残る追い込み加工形状25a〜25d(第一形状23に対して第二形状24がはみ出している範囲形状)を得る。ここで、こうした追い込み加工形状25a〜25dは、いずれも、第一形状23を構成する要素23p(図5において太線で図示した要素)と、第二形状24を構成する要素24pと、で構成される。本実施形態では、この追い込み加工形状25a〜25dを構成する要素のうち、第一形状23を構成する要素23pには、その旨を意味する第一形状情報を保持させる。
【0023】
次に、オフセット処理部10では、追い込み加工形状25a〜25dに対し、切削幅設定部9に設定された切削幅Wでのオフセットを繰り返す演算がなされる。図6は、追い込み加工形状25dに対して、このオフセットを繰り返した際の様子を示す図である。この際、前記第一形状情報を保持している形状要素、すなわち、もともと第一形状23を構成する要素23pはオフセットの対象から除外する。
【0024】
その結果、図6に示すように、追い込み加工形状25dの内側には、第二形状に由来する略V字状のオフセット線と、当該オフセット線の端点を結ぶ第一形状に由来する曲線と、から構成される略三角形状のオフセット形状26a〜26dが得られることになる。以下では、この複数のオフセット形状26a〜26dをオフセット形状群と呼ぶ。
【0025】
次に、加工開始位置処理部11では、オフセット形状上を第二回転工具の中心が移動する際の開始位置を決定する。この開始位置の決定について図8、図9を参照して説明する。なお、説明を分かりやすくするため、曲線ac、曲線fd、曲線igをずらして図示しているが、実際には、これらの曲線はいずれも、要素23p上の曲線である。
【0026】
開始位置を決定する場合は、図8に示すように、まず、オフセット形状群を構成する複数のオフセット形状のうち、最も内側にあるオフセット形状abcを特定する。続いて、このオフセット形状abcを構成する要素のうち、第一形状情報を有する要素acの中点oを求める。そして、この中点oを、第二回転工具を降下させ、加工を開始する開始位置として設定する。
【0027】
あるいは、図9に示すように、オフセット形状群を構成する複数のオフセット形状のうち、最も内側にあるオフセット形状abcを特定する。そして、このオフセット形状abcを構成する要素ab,bc,acのうち第一形状情報を有する要素acと、第一形状情報を有さない要素abまたは要素bcとの交点の1つ、たとえば交点aを求め、その位置を、第二回転工具を降下させ加工を開始する開始点として設定してもよい。
【0028】
次に、ピックフィード処理部12において、オフセット形状および追い込み加工形状上を第二回転工具の工具中心が移動する経路が決定される。この経路決定は、加工開始位置処理部11で開始点として点oを求めた場合には、最も内側にあるオフセット形状abcから、その1つ外側にあるオフセット形状def、さらに一つ外側にあるオフセット形状ghiへと、前記中点o(加工開始点)の位置で乗り移る軌跡を生成する。そして、最終的に、最も外側に位置する追い込み加工形状上を移動する軌跡まで生成する。すなわち、oa−ab−bc−co−od−de−ef−fo−og−gh−hi−io・・・という経路の軌跡を生成する。
【0029】
あるいは、加工開始位置処理部11で開始点として点aを求めた場合には、最も内側にあるオフセット形状abcの終点cから、一つ外側のオフセット形状defの始点dへ、オフセット形状defの終点fから一つ外側のオフセット形状ghiの始点gへと乗り移る軌跡を生成する。そして、最終的に、最も外側に位置する追い込み加工形状上を移動する軌跡まで生成する。すなわち、ab−bc−cd−de−ef−fg−gh−hi・・・という経路の軌跡を生成する。そして、最後に、出力部13において、生成された軌跡を出力する。なお、ここでは、中点oまたは交点aを加工開始位置とした場合を例示したが、第一形状に由来する形状要素上の点であれば、他の点を加工開始位置としてもよい。
【0030】
以上の処理によって生成される軌跡は、図14Aで符号56で示したような箇所も確実に除去される。したがって、本実施形態によれば、当該箇所を除去するために輪郭加工を追加定義して組み合わせるなどの特別な処置が不要となる。また、第二回転工具の降下位置(加工開始点oや点aなど)は、既加工領域27(図7参照)内に存在することとなるため工具降下位置に注意を払う必要はない。また、工具降下後に削り残し領域内へ進入する動作において第二回転工具が被削材と工具半周分の接触となる箇所はほとんど無く加工負荷は小さい。
【0031】
また、削り残し領域の切削加工中に発生する切粉は削り残し領域に接して存在する広大な既加工領域27に排出されるため加工が安定する。また、実加工では無視すべき僅か数μmの厚みしかない削り残し領域54e(図14B参照)の検出を抑制出来るため加工効率がよい。
【0032】
したがって、本実施形態によれば、削り残し部分の追い込み加工を、確実かつ安定して行える軌跡が生成出来る。
【符号の説明】
【0033】
1 形状入力部、2 取代設定部、3 第一工具半径設定部、4 第二工具半径設定部、5 オフセット加算量設定部、6 第一形状算出部、7 第二形状算出部、8 形状合成処理部、9 切削幅設定部、10 オフセット処理部、11 加工開始位置処理部、12 ピックフィード処理部、13 出力部、14 取代オフセット処理部、15 工具形状オフセット処理部、16 ポケット軌跡生成部、21 指定形状、23 第一形状、24 第二形状、25a〜25d 追い込み加工形状、26a〜26d オフセット形状、27 既加工領域、54a〜54d 削り残し領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力した形状に沿って第一回転工具で加工した際に第一回転工具が進入出来ない領域を第一回転工具より小さな径を有する第二回転工具で加工するための数値制御情報を作成する数値制御情報作成装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、第一回転工具が進入出来ない領域、いわゆる削り残し領域を認識し、当該領域を第一回転工具よりも小さな径を有する第二回転工具で除去するための制御情報を生成する数値制御情報作成装置が知られている。こうした従来の数値制御情報作成装置について図10〜図14を参照して説明する。
【0003】
図10は、従来の数値制御情報作成装置の構成を示すブロック図である。また、図11〜図13は、この数値制御情報作成装置での処理過程を示す図であり、図14A、図14Bは、処理結果の一部を示す図である。
【0004】
ここでは、指定形状が図11の符号51で示されるような形状の場合を例に挙げて説明する。この場合、ユーザは、部品図面から、円弧、直線、その他の幾何形状要素で構成される指定形状51を抽出し、数値制御情報作成装置の形状入力部1に入力する。また、ユーザは、指定形状51に対して残す取代Fの値や、第一回転工具の工具半径(第一工具半径R1)、第二回転工具の工具半径(第二工具半径R2)、第二回転工具での切削幅Wなども、それぞれ、取代設定部2、第一工具半径設定部3、第二工具半径設定部4、切削幅設定部9に入力し、設定する。
【0005】
取代オフセット処理部14は、指定形状51を前記取代設定部2に設定された取代F分だけオフセットすることで加工形状52を生成する(図11参照)。第一工具半径設定部3には、第一回転工具の工具半径である第一工具半径R1が設定されている。工具形状オフセット処理部15は、前記取代オフセット処理部14で生成された加工形状52を、第一工具半径設定部3に設定された第一工具半径R1分だけオフセットし、工具の移動軌跡を得る。そして、工具形状オフセット処理部15は、その移動軌跡をさらに、第一工具半径R1相当の値で逆方向(外側方向)にオフセットすることで、当該第一回転工具での加工範囲を示す加工範囲形状53(図12参照)を生成する。
【0006】
なお、特に記載がないかぎり、以下において、形状オフセットは次のようにして行なう。まず、形状を構成する線分に対しては、オフセット方向にオフセット量分だけ平行移動した同じ長さの線分を新しく作る。また、形状を構成する円弧に対しては、開き角と中心位置が同じでオフセット方向に円弧が移動した位置となるようにオフセット量分半径を増減した円弧を新しく作成する。この際、半径が0以下になってしまう場合は、その円弧は新しい形状を生成しない。そして、新しく作成された形状を順にたどった形状がオフセット形状となる。その際、各々形状の終点は新しい形状同士の交点となる。形状が離れてしまう場合は、形状の間に半径がオフセット量分で前後の形状に接する円弧を新しく作成する。
【0007】
形状合成処理部8は、加工形状52と加工範囲形状53とを合成し、加工形状52から加工範囲形状53を除外して残った形状である削り残し領域54a〜54dを得る(図13参照)。この削り残し領域54a〜54dは、加工範囲形状53に対する加工形状52のはみ出し範囲ともいえる。続いて、数値制御情報作成装置は、この削り残し領域54a〜54dを、領域加工として一般的であるポケット加工によって除去するための数値制御情報を算出する。具体的には、次のとおりである。第二工具半径設定部4には、予め、追い込み加工に用いられる回転工具、すなわち第二回転工具の工具半径である第二工具半径R2が設定されている。ポケット軌跡生成部16は、この第二工具半径設定部4に設定された第二工具半径R2を有する工具を用いて、前記形状合成処理部8において求められた前記削り残し領域54a〜54dの内部の除去加工を行うための軌跡を生成する。この際、前記削り残し領域54a〜54dの外形を、切削幅設定部9に設定された切削幅Wで逐次オフセットし、工具軌跡を生成する。最後に、これまで生成された工具軌跡を出力部13へ出力することで、目的の追い込み加工用軌跡が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−121219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、こうした従来の数値制御情報作成装置では、前記削り残し領域54a〜54d内部の除去加工を行うがゆえ、図14Aにおいて符号56で示すような箇所の除去が出来ないという課題があり、当該個所56を除去するためさらに輪郭加工を追加定義し組み合わせるなどの特別な処置が必要となる。
【0010】
また一般に、図14Aに示すように、加工初期の工具降下位置(加工開始位置)58として、第一回転工具により加工済みであるとみなせる既加工領域64の内部位置を探索する必要がある。さらに前記工具降下位置58に降下したあとは、最奥部オフセット線上位置60に向かって走行することになるが、前記工具降下位置58から前記最奥部オフセット線上位置60への走行軌跡62は長距離に渡って被削材と工具半周分の接触が発生し加工負荷が大きくなるという課題もある。
【0011】
さらに、前記削り残し領域54a〜54dに接して広がる広大な前記既加工領域64が存在するにもかかわらず、たとえば削り残し領域54dの切削加工中に発生する切粉は当該削り残し領域54dの内部にとどまり、既加工領域64の方向へ排出されないため加工の安定性を阻害する要因となるという課題も存在する。
【0012】
さらに、図14Bに示すように、前記形状入力部1に設定された指定形状51を構成する形状要素51a,51bの座標値精度が粗く、当該形状要素51a,51bが微小な角度を成す折れ線であったとする。この場合、前記折れ線(形状要素51a,51b)を前記取代設定部2に設定された取代Fでオフセットして生成される加工形状52と加工範囲形状53との間に、削り残し領域54eが生じることになる。この削り残し領域54eの最大幅66が、僅か数μmという実加工では無視すべき厚みであっても、従来の数値制御情報作成装置では、削り残し領域として厳密に検出されてしまい、加工効率が悪いという問題もあった。
【0013】
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みなされたものであり、その目的は、削り残しの除去加工のために、異なる複数の加工定義を組み合わせる必要がなく、且つ加工開始時の工具降下位置が必ず加工済みの位置となり、且つ、加工中の切粉排出性能がよく且つ実加工では無視すべきである僅か数μmの厚みしかない削り残しが無視される、効率のよい加工軌跡を生成する数値制御情報作成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の数値制御情報作成装置は、第一回転工具での削り残し領域を、第一回転工具より小径の第二回転工具で除去加工する数値制御情報を作成する数値制御情報作成装置であって、加工すべき形状である指定形状の入力を受け付ける形状入力部と、前記第一回転工具および前記第二回転工具の工具半径の設定を受け付ける工具半径設定部と、前記指定形状に対して残す取代の設定を受け付ける取代設定部と、前記指定形状を、前記取代と第一工具半径との和で、前記第一回転工具で除去加工する側へオフセットして得られる形状を、さらに、第一工具半径から第二工具半径を減じた値で、前記第一回転工具で除去加工する側とは反対側にオフセットして第一形状を算出する第一形状算出部と、前記指定形状を、前記取代と第二工具半径との和で、前記第一回転工具で除去加工する側へオフセットして第二形状を算出する第二形状算出部と、前記第二形状から第一形状を除外して残った追い込み加工形状を生成する形状合成処理部と、追い込み加工形状に基づいて、前記第一回転工具で削り残した領域を、第二回転工具で追い込み加工する際の軌跡を生成する追い込み加工用軌跡生成部と、を備える事を特徴とする。
【0015】
別の言い方をすると、本発明の数値制御情報作成装置は、指定形状、第一工具半径、第二工具半径、および取代に基づいて、第一回転工具が実際に加工する領域の外形より、第二工具半径分だけ小さくオフセットした第一形状、および、この指定形状を取代と第二工具半径とオフセット加算量の和でオフセットした第二形状を生成する。そして、この第一形状から第二形状のはみ出した範囲の形状、すなわち、第一回転工具が削り残す領域に沿って第二回転工具が走行する際に描く工具中心の軌跡を意味する追い込み加工形状を生成する。そして、この追い込み加工形状に対して、第一形状由来の形状要素を対象としないオフセットを順次施すことによって、追い込み加工形状の内側に位置する複数のオフセット形状からなるオフセット形状群を生成する。第二回転工具を走行させる軌跡として、オフセット形状群のうち最も内側のオフセット形状に沿って移動した後、順次、一つ外側のオフセット形状に沿って移動し、最終的に、追い込み加工形状に沿って移動する軌跡を出力する。その際に、前記オフセット形状間を結ぶために、これらオフセット形状毎に含まれる第一形状由来の要素の端点もしくは中点から加工を開始し且つピックフィードを行う経路を合わせて出力する。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、第一形状として第二工具半径の量だけ小さくした形状を求めているため、追い込み加工形状及びその内部を第二回転工具が走行することによって第一回転工具が削り残す領域が確実に除去されることとなる。また前記追い込み加工形状を求める際に若干量を加算してオフセットするため実加工では無視してよい狭小な削り残しの検出を防止することができる。また、追い込み加工形状には第一形状に由来する形状要素が必ず含まれるので当該要素上に前記第二回転工具の中心を置いたとき前記第二回転工具の外周は前記第一回転工具によって加工済みであるはずの領域の内部に存在することとなるため加工開始時の工具降下は実加工動作が伴わず安全であり、また前記工具降下を行った位置から最も内側のオフセット形状へ第二回転工具が向かう際の加工動作において被削材と工具半周分の接触はほとんど発生しないため加工負荷が小さくなる。また最も内側のオフセット形状上の走行から順にその外側のオフセット形状上の走行へと乗り移らせながら前記第二回転工具の中心を移動させて行う加工動作は第一回転工具によって加工済みである広大な領域の側に開いた状態であるため加工中に生ずる切粉は前記広大な領域へと排出され、追い込み加工として最適な軌跡を生成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明における数値制御情報作成方法の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の数値制御情報作成方法に基づく処理過程の第1の図である。
【図3】本発明の数値制御情報作成方法に基づく処理過程の第2の図である。
【図4】本発明の数値制御情報作成方法に基づく処理過程の第3の図である。
【図5】本発明の数値制御情報作成方法に基づく処理過程の第4の図である。
【図6】本発明の数値制御情報作成方法に基づく処理過程の第5の図である。
【図7】本発明の数値制御情報作成方法に基づく処理結果の第1の図である。
【図8】本発明の数値制御情報作成方法を構成する処理の一部を示す。
【図9】本発明の数値制御情報作成方法を構成する処理の一部を示す。
【図10】従来の数値制御情報作成方法の一例を示すブロック図である。
【図11】従来の数値制御情報作成方法に基づく処理過程の第1の図である。
【図12】従来の数値制御情報作成方法に基づく処理過程の第2の図である。
【図13】従来の数値制御情報作成方法に基づく処理過程の第3の図である。
【図14A】従来の数値制御情報作成方法に基づく処理結果の一部を示す第1の図である。
【図14B】従来の数値制御情報作成方法に基づく処理結果の一部を示す第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態である数値制御情報作成装置について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である数値制御情報作成装置の構成を示すブロック図である。図2〜図6は、数値制御情報作成の処理過程を示す図である。また、図7は数値制御情報作成の処理結果を示す図であり、図8、図9は数値制御情報作成の処理の一部を示す図である。
【0019】
ここでは、指定形状が図2の21で示されるような形状の場合を例に挙げて説明する。この場合、ユーザは、部品図面から、円弧、直線、その他の幾何形状要素で構成される指定形状21を抽出し、数値制御情報作成装置の形状入力部1に入力する。また、ユーザは、予め設定された加工条件に従って、指定形状21に対して残す仕上げ代Fの値を取代設定部2に、追い込み加工時における切削幅を切削幅設定部9に、それぞれ入力し、設定する。また、第一回転工具の工具半径(第一工具半径)R1を第一工具半径設定部3に、第二回転工具(追い込み加工用工具)の工具半径(第二工具半径)R2を第二工具半径設定部4に、それぞれ入力し設定する。ここで、第二回転工具は、指定形状21の内部を、第一回転工具で、設定された仕上げ代Fを残して除去加工した際に生じた削り残しを、さらに除去加工する際に用いられる工具である。したがって、第二回転工具の工具半径(第二工具半径)R2としては、第一回転工具の工具半径(第一工具半径)R1よりも小さな値が設定される(R1>R2)。さらに、本実施形態では、オフセット加算量設定部5にオフセット加算量αも入力され、設定される。このオフセット加算量については、後に詳説する。
【0020】
以上のパラメータの設定が完了すれば、数値制御情報作成装置が、実際に工具軌跡の算出を開始する。ここでは、特に追い込み加工時の工具軌跡の算出の流れについて詳説する。第一形状算出部6は、図2に示すように、指定形状21を、仕上げ代Fと第一工具半径R1の和で与えられる量(F+R1)だけ、内側にオフセットし、第一回転工具の工具軌跡22を得る。続いて、この工具軌跡22を、第一工具半径R1から第二工具半径R2を減じた量(R1−R2)だけ、工具軌跡22を求めた際とは逆向き(外側)にオフセットし、第一形状23を得る。
【0021】
次に、第二形状算出部7は、図3に示すように、指定形状21を、仕上げ代Fと第二工具半径R2とオフセット加算量αとの和で与えられる量(F+R2+α)だけ、内側にオフセットすることで第二形状24を得る。なお、オフセット加算量αとして、数値制御装置の位置制御における最小分解能より僅かに小さな値、例えば0.4μm程度を設定し、このオフセット量に加算すると、形状合成部8における処理において第一形状23と第二形状24とが確実に交差することとなる。その結果、様々な処理を経ることで座標値精度の劣化が蓄積されたとしても形状合成は確実に行われるようになる。または、前記オフセット加算量αとして1〜10μm程度の量を設定し、このオフセット量に加算すると、実加工では無視すべき厚みである数μm程度の厚みしか有しない削り残し領域は検出されなくなる。いずれにしても、このオフセット加算量αとしては、実加工では無視でき得る程度の小さい値(許容誤差以下の値)が設定される。
【0022】
次に、形状合成部8は、図4、図5に示すように、第一形状23と第二形状24とを合成し、第二形状24から第一形状23を除外して残る追い込み加工形状25a〜25d(第一形状23に対して第二形状24がはみ出している範囲形状)を得る。ここで、こうした追い込み加工形状25a〜25dは、いずれも、第一形状23を構成する要素23p(図5において太線で図示した要素)と、第二形状24を構成する要素24pと、で構成される。本実施形態では、この追い込み加工形状25a〜25dを構成する要素のうち、第一形状23を構成する要素23pには、その旨を意味する第一形状情報を保持させる。
【0023】
次に、オフセット処理部10では、追い込み加工形状25a〜25dに対し、切削幅設定部9に設定された切削幅Wでのオフセットを繰り返す演算がなされる。図6は、追い込み加工形状25dに対して、このオフセットを繰り返した際の様子を示す図である。この際、前記第一形状情報を保持している形状要素、すなわち、もともと第一形状23を構成する要素23pはオフセットの対象から除外する。
【0024】
その結果、図6に示すように、追い込み加工形状25dの内側には、第二形状に由来する略V字状のオフセット線と、当該オフセット線の端点を結ぶ第一形状に由来する曲線と、から構成される略三角形状のオフセット形状26a〜26dが得られることになる。以下では、この複数のオフセット形状26a〜26dをオフセット形状群と呼ぶ。
【0025】
次に、加工開始位置処理部11では、オフセット形状上を第二回転工具の中心が移動する際の開始位置を決定する。この開始位置の決定について図8、図9を参照して説明する。なお、説明を分かりやすくするため、曲線ac、曲線fd、曲線igをずらして図示しているが、実際には、これらの曲線はいずれも、要素23p上の曲線である。
【0026】
開始位置を決定する場合は、図8に示すように、まず、オフセット形状群を構成する複数のオフセット形状のうち、最も内側にあるオフセット形状abcを特定する。続いて、このオフセット形状abcを構成する要素のうち、第一形状情報を有する要素acの中点oを求める。そして、この中点oを、第二回転工具を降下させ、加工を開始する開始位置として設定する。
【0027】
あるいは、図9に示すように、オフセット形状群を構成する複数のオフセット形状のうち、最も内側にあるオフセット形状abcを特定する。そして、このオフセット形状abcを構成する要素ab,bc,acのうち第一形状情報を有する要素acと、第一形状情報を有さない要素abまたは要素bcとの交点の1つ、たとえば交点aを求め、その位置を、第二回転工具を降下させ加工を開始する開始点として設定してもよい。
【0028】
次に、ピックフィード処理部12において、オフセット形状および追い込み加工形状上を第二回転工具の工具中心が移動する経路が決定される。この経路決定は、加工開始位置処理部11で開始点として点oを求めた場合には、最も内側にあるオフセット形状abcから、その1つ外側にあるオフセット形状def、さらに一つ外側にあるオフセット形状ghiへと、前記中点o(加工開始点)の位置で乗り移る軌跡を生成する。そして、最終的に、最も外側に位置する追い込み加工形状上を移動する軌跡まで生成する。すなわち、oa−ab−bc−co−od−de−ef−fo−og−gh−hi−io・・・という経路の軌跡を生成する。
【0029】
あるいは、加工開始位置処理部11で開始点として点aを求めた場合には、最も内側にあるオフセット形状abcの終点cから、一つ外側のオフセット形状defの始点dへ、オフセット形状defの終点fから一つ外側のオフセット形状ghiの始点gへと乗り移る軌跡を生成する。そして、最終的に、最も外側に位置する追い込み加工形状上を移動する軌跡まで生成する。すなわち、ab−bc−cd−de−ef−fg−gh−hi・・・という経路の軌跡を生成する。そして、最後に、出力部13において、生成された軌跡を出力する。なお、ここでは、中点oまたは交点aを加工開始位置とした場合を例示したが、第一形状に由来する形状要素上の点であれば、他の点を加工開始位置としてもよい。
【0030】
以上の処理によって生成される軌跡は、図14Aで符号56で示したような箇所も確実に除去される。したがって、本実施形態によれば、当該箇所を除去するために輪郭加工を追加定義して組み合わせるなどの特別な処置が不要となる。また、第二回転工具の降下位置(加工開始点oや点aなど)は、既加工領域27(図7参照)内に存在することとなるため工具降下位置に注意を払う必要はない。また、工具降下後に削り残し領域内へ進入する動作において第二回転工具が被削材と工具半周分の接触となる箇所はほとんど無く加工負荷は小さい。
【0031】
また、削り残し領域の切削加工中に発生する切粉は削り残し領域に接して存在する広大な既加工領域27に排出されるため加工が安定する。また、実加工では無視すべき僅か数μmの厚みしかない削り残し領域54e(図14B参照)の検出を抑制出来るため加工効率がよい。
【0032】
したがって、本実施形態によれば、削り残し部分の追い込み加工を、確実かつ安定して行える軌跡が生成出来る。
【符号の説明】
【0033】
1 形状入力部、2 取代設定部、3 第一工具半径設定部、4 第二工具半径設定部、5 オフセット加算量設定部、6 第一形状算出部、7 第二形状算出部、8 形状合成処理部、9 切削幅設定部、10 オフセット処理部、11 加工開始位置処理部、12 ピックフィード処理部、13 出力部、14 取代オフセット処理部、15 工具形状オフセット処理部、16 ポケット軌跡生成部、21 指定形状、23 第一形状、24 第二形状、25a〜25d 追い込み加工形状、26a〜26d オフセット形状、27 既加工領域、54a〜54d 削り残し領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一回転工具での削り残し領域を、第一回転工具より小径の第二回転工具で除去加工する数値制御情報を作成する数値制御情報作成装置であって、
加工すべき形状である指定形状の入力を受け付ける形状入力部と、
前記第一回転工具および前記第二回転工具の工具径の設定を受け付ける工具径設定部と、
前記指定形状に対して残す取代の設定を受け付ける取代設定部と、
前記指定形状を、前記取代と第一工具径に基づく値との和で、前記第一回転工具で除去加工する側へオフセットして得られる形状を、さらに、第一工具径から第二工具径を減じた値に基づく値で、前記第一回転工具で除去加工する側とは反対側にオフセットして第一形状を算出する第一形状算出部と、
前記指定形状を、前記取代と第二工具径に基づく値との和で、前記第一回転工具で除去加工する側へオフセットして第二形状を算出する第二形状算出部と、
前記第二形状から第一形状を除外して残った追い込み加工形状を生成する形状合成処理部と、
追い込み加工形状に基づいて、前記第一回転工具で削り残した領域を、第二回転工具で追い込み加工する際の軌跡を生成する追い込み加工用軌跡生成部と、
を備える事を特徴とした数値制御情報作成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の数値制御情報作成装置であって、さらに、
第二形状を算出する際のオフセット量として加算されるオフセット加算量の設定を受け付けるオフセット加算量設定部を備え、
前記第二形状算出部は、前記指定形状を、前記取代と第二工具径に基づく値との和に、さらに、前記オフセット加算量を加算した値で、前記第一回転工具で除去加工する側へオフセットした形状を第二形状として算出する、
ことを特徴とする数値制御情報作成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の数値制御情報作成装置であって、
前記追い込み加工用軌跡生成部は、
前記追い込み加工形状を、第一形状に由来する形状要素を除外しつつ順次内側にオフセットしたオフセット形状群を算出する形状オフセット処理部と、
前記オフセット形状群を構成するオフセット形状のうち、最も内側のオフセット形状に含まれる前記第一形状に由来する形状要素上の点を、第二回転工具による加工の開始位置として抽出する加工開始位置処理部と、
前記オフセット形状および追い込み加工形状に沿って移動する第二回転工具の軌跡を生成するピックフィード処理部と、
を備えることを特徴とする数値制御情報作成装置。
【請求項1】
第一回転工具での削り残し領域を、第一回転工具より小径の第二回転工具で除去加工する数値制御情報を作成する数値制御情報作成装置であって、
加工すべき形状である指定形状の入力を受け付ける形状入力部と、
前記第一回転工具および前記第二回転工具の工具径の設定を受け付ける工具径設定部と、
前記指定形状に対して残す取代の設定を受け付ける取代設定部と、
前記指定形状を、前記取代と第一工具径に基づく値との和で、前記第一回転工具で除去加工する側へオフセットして得られる形状を、さらに、第一工具径から第二工具径を減じた値に基づく値で、前記第一回転工具で除去加工する側とは反対側にオフセットして第一形状を算出する第一形状算出部と、
前記指定形状を、前記取代と第二工具径に基づく値との和で、前記第一回転工具で除去加工する側へオフセットして第二形状を算出する第二形状算出部と、
前記第二形状から第一形状を除外して残った追い込み加工形状を生成する形状合成処理部と、
追い込み加工形状に基づいて、前記第一回転工具で削り残した領域を、第二回転工具で追い込み加工する際の軌跡を生成する追い込み加工用軌跡生成部と、
を備える事を特徴とした数値制御情報作成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の数値制御情報作成装置であって、さらに、
第二形状を算出する際のオフセット量として加算されるオフセット加算量の設定を受け付けるオフセット加算量設定部を備え、
前記第二形状算出部は、前記指定形状を、前記取代と第二工具径に基づく値との和に、さらに、前記オフセット加算量を加算した値で、前記第一回転工具で除去加工する側へオフセットした形状を第二形状として算出する、
ことを特徴とする数値制御情報作成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の数値制御情報作成装置であって、
前記追い込み加工用軌跡生成部は、
前記追い込み加工形状を、第一形状に由来する形状要素を除外しつつ順次内側にオフセットしたオフセット形状群を算出する形状オフセット処理部と、
前記オフセット形状群を構成するオフセット形状のうち、最も内側のオフセット形状に含まれる前記第一形状に由来する形状要素上の点を、第二回転工具による加工の開始位置として抽出する加工開始位置処理部と、
前記オフセット形状および追い込み加工形状に沿って移動する第二回転工具の軌跡を生成するピックフィード処理部と、
を備えることを特徴とする数値制御情報作成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【公開番号】特開2012−157948(P2012−157948A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20092(P2011−20092)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【Fターム(参考)】
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