説明

整合カラーバリアントを決定するための方法

本発明は、補修対象物の効果色に整合する補修塗料の標準色の整合バリアントを決定する方法であって、a)補修対象物の色の標準色を決定する工程、及び、b)標準色の最も良く整合するバリアントを、所与の数のバリアントカラーから決定する工程を含み、標準色の色により塗布された色見本が、整合対象色と、少なくとも2つの異なる照明角度及び/又は観測角度のもとで目視比較され、標準色及び整合対象物の色からの視覚によるずれが、視覚特性についての所定のずれに基づいて評価され(この場合、所定の視覚特性は少なくとも1つの色特性及び少なくとも1つの外見特性を含む)、標準色及び整合対象物の色の視覚特性についての所定のずれに基づいて、標準色の最も良く整合するバリアントが決定される方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補修対象物の色に整合する補修塗料の標準色の整合バリアントを決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーバリアントは、塗布された基体(例えば、自動車など)の同じ標準色のバリアントであり、このようなカラーバリアントは、プロセス条件における小さい変化、例えば、異なる製造場所でのプロセス条件における小さい変化に起因するか、或いは、塗料又はその成分のバッチ間の変化に起因する。これらの違いは個々の車両では目立たないかもしれないが、これらの違いが同じ車両の1つの車体パネル又は隣接する車体パネル(例えば、フード及びフェンダーなど)に存在するときには、これらの違いは目視により感知可能であり得る。これらのカラーバリアントは、優れた色整合を自動車車体修理工場において達成することを困難にする。典型的には、3つから6つまでのバリアントが、現場に見出される1つの標準色のバリアントの範囲を扱うために使用される。色整合を自動車修理期間中に行うためには、正しい標準色を選択することが要求されるだけでなく、最も良く整合するカラーバリアントを選択することもまた要求される。標準色が最も良い整合を与えることもまた可能であることを理解しなければならない。従って、標準色が、最も良い整合が選択されるカラーバリアントの数には含まれる。
【0003】
国際特許出願公開第2006/1121776A号は、塗料の色を整合させるプロセスのために考案されているいくつかの方法を記載する。1つの典型的な方法では、デバイス、典型的には分光光度計が使用され、そして、塗装表面の色特徴が測定され、測定値が、以前に開発された塗料処方に関連するコンピュータデータベースにおいて達成される色特徴に対して整合させられる。この方法では、コンピュータデータベースが修理施設にある。再仕上げ又は再塗装の途中の車両の塗装表面の色特徴に最も近い色特徴を有する塗料処方が選ばれ、塗料を配合するために使用され、その後、この塗料が試験パネルに塗布され、再仕上げ又は再塗装の途中の車両における塗料と比較される。典型的には、この配合された塗料は再仕上げ又は再塗装の途中の車両の色と十分には整合せず、色の整合が得られるまで手作業で調節されなければならない。これはかなり非効率的なプロセスであり、仕上げ手順の労務費に著しく影響する。さらには、分光光度計は高価であり、また、自動車車体修理工場において広く一般に存在する条件のもとでは損傷しやすい。分光光度計は多くの場合、特に熟練した操作者を必要とする。
【0004】
関連した方法が米国特許第6522977号に示され、この方法では、車両に使用される色に関連し得る製造番号を含有するVIN(車両識別番号)が使用され、その製造番号が中央コンピュータに提供され、その後、中央コンピュータにより、その車両における損傷した塗料を再仕上げ又は補修するための塗料を配合するために使用され得る推奨される塗料処方が提供される。
【0005】
カラーバリアント選択のための1つの公知の方法が、車体工場に標準色の色見本及び標準色のそれぞれのカラーバリアントの色見本を提供することである。噴霧者が、最も良く整合する色見本を、補修すべき自動車表面と、色見本との目視比較によって選択することができる。それぞれの色見本が、カラーバリアント及び関連する塗料配合表に対応する。視覚特性についての最も低い全体的なずれを有する色見本に対応する塗料配合表が、最も良く整合する配合表として選択される。しかしながら、すべての自動車車体工場にカラーバリアントの数千の色見本を提供し、かつ、システムを定期的に更新することは費用がかかる。また、色見本調製プロセスにおける変化のために、色の色見本が時には、色特性において、使用者によって噴霧される実際の目標色と異なることもある。
【0006】
現在使用される別の手順が、塗料供給者が、規格塗料色と整合する再仕上げ塗料のためだけの色見本を提供し、入手可能な再仕上げ塗料の代替品目が提供されることである。再仕上げ者は、規格塗料色を表す色見本を置き、整合対象車両における塗料との違い、例えば、正反射に近い角度ではより明るく、かつ、より鮮明であり、フロップ角度ではより暗いことを判断し、そして、その情報を、入手可能な代替塗料処方の品目と整合させ、最も近い代替物を選び、その後、補修途中の車両の色と噴霧により整合させることを試みる。そのような技術は十分な整合をもたらす場合もあり、又は、十分な整合をもたらさない場合もある。
【0007】
従って、補修対象物の色を整合させる補修塗料の標準色の整合するバリアントを決定するための代わりの方法が求められている。この方法は、すべてのカラーバリアントの色見本に頼るものであってはならない。この方法は、自動車車体修理工場における使用のために好適でなければならない。この方法は、高価な機器及び/又は影響を受けやすい機器(例えば、分光光度計及びコンピュータなど)を必要としてはならない。とりわけ、この方法は補修塗料の信頼できる色整合をもたらされなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、補修対象物の効果色に整合する補修塗料の標準色の整合バリアントを決定する方法であって、下記の工程:
a)補修対象物の色の標準色を決定する工程、及び
b)標準色の最も良く整合するバリアントを、所与の数のバリアントカラーから決定する工程
を含み、
標準色の色により塗布された色見本が、整合対象色と、少なくとも2つの異なる照明角度及び/又は観測角度のもとで目視比較され、
標準色及び整合対象物の色の視覚によるずれが、視覚特性についての所定のずれに基づいて評価され(この場合、所定の視覚特性は少なくとも1つの色特性及び少なくとも1つの外見特性を含む)、
標準色及び整合対象物の色の視覚特性についての所定のずれに基づいて、標準色の最も良く整合するバリアントが決定される
方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
整合対象物の効果色は、一般には金属光沢効果色又は真珠光沢効果色である。色が金属光沢効果及び真珠光沢効果の組合せを示すこともまた可能である。塗料における金属光沢効果が好適には、塗料に存在する金属粒子によって、例えば、アルミニウムフレークによって達成される。他の形状又は他の金属の粒子も同様に使用することができる。使用することができる他の特別な効果顔料が真珠光沢顔料である。
【0010】
上記で述べられたように、所定の視覚特性は少なくとも1つの色特性を含む。そのような色特性には、明度、色方向、彩度及び色相が含まれる。視覚特性にはまた、少なくとも1つの外見特性が含まれる。外見によって、塗膜の面における視覚による外見が意味される。視覚的な外見特性の例には、粗さ及び輝きが含まれる。一般には、少なくとも3つの視覚特性についてのずれが決定される。最も良く整合するバリアントを決定することの精度が、ずれが、より多くの視覚特性について、例えば、4つ又は5つの所定の視覚特性について決定されるときには改善され得る。しかしながら、決定されるべき視覚特性についてのずれの数は大きくなりすぎてはならない。これは、そうでない場合、この方法は、操作者には過度に時間消費であり、このことが、この方法を自動車車体修理工場における使用のためにあまり魅力のないものとするからである。従って、一般には、最大でも8つ又は6つの所定の視覚特性についてのずれが決定される。
【0011】
補修対象物は自動車たり得る。しかしながら、本方法はまた、補修塗料の色が最初の塗料色と正確に整合させなければならない他の物体のために好適であり、例えば、トラック、バス、列車及び航空機などのために好適である。
【0012】
補修対象物の標準色の決定を公知の方法に従って行うことができる。ほとんどの場合、自動車の標準色が所有者には知られているか、或いは、自動車の標準色が自動車の製造者文書においてコード化されるか、又は、直接に言及される。
【0013】
それぞれの標準色に関連するバリアントの数は変化し得る。通常、それぞれの標準色は、その標準色に関連する少なくとも2つのバリアント、又は、その標準色に関連する少なくとも3つのバリアント、又は、その標準色に関連する少なくとも4つのバリアントを有する。一般には、標準色あたりのバリアントの数は10以下か、又は、8以下か、又は、6以下である。上記で既に述べられたように、最も良い整合が標準色により得られることが可能である。従って、最も良い整合が選択されるカラーバリアントの数には常に、標準色が同様に含まれる。
【0014】
最も良く整合するバリアントは好適には、所定の視覚特性についてのずれのセットが標準色の特定のバリアントに関連させられているデータベースを使用して決定される。1つの実施形態において、データベースが、通常的にはコンピュータシステムである電子的なデータ記憶装置及びデータ処理装置に実装されている。しかしながら、従来の形態で実装されるデータベース、例えば、紙ファイルの形態で実装されているデータベースを有することもまた可能である。使用の容易さのために、色の色見本の1組がノート型コンピュータに伴うことがあり、この場合、操作者は所定の視覚特性についてのずれを記録することができる。
【0015】
一般には、最も良く整合するカラーバリアントの塗料を調製するための配合表を決定することもまた望ましい。これは、対応する塗料配合表をどの色に対しても関連づけることによって上記のデータベースに都合よく実装可能である。塗料配合表により、原材料の量及びタイプ、並びに、塗料を調製するプロセスが指定される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1つの実施形態において、本発明の方法はさらに、最も良く整合するカラーバリアントの塗料をその決定された配合表に従うことによって調製することを含む。さらなる実施形態において、本発明の方法は、調製される塗料を、自動車又は大型輸送車両を再仕上げするために使用することを含む。
【0017】
なおさらなる実施形態において、最大のずれを有する所定の視覚特性には、それ以外の所定の視覚特性よりも大きい重み付けが決定プロセスにおいて与えられる。これは、視覚特性に重要性のいくつかの所定のレベルを割り当てることによって実装可能である。これにより、最も良く整合するバリアントを選択することの精度のさらなる改善がもたらされることが見出されている。
【0018】
操作の容易さのために、所定の視覚特性についての視覚によるずれの方向が、所定の記号によって、例えば、「+」及び「−」によって示されることが有用である。代替では、ずれはまた、基準化された表現を使用して示すことができ、例えば、「より黒く」、「より鮮明に」、「より澄んだ」、「よりくすんだ」などを使用して示すことができる。加えて、所定の視覚特性についての視覚的に感知されるずれの大きさを所定の記号によって示すこともまた好都合である。従って、ずれの方向についての上記の記号は繰り返すことができ、それぞれのさらなる繰り返しにより、より一層のずれが示される。通常、ずれの大きさは、大きさ指標の所定の数から選択することによって、例えば、2つ又は3つ、例えば、「+」、「++」及び「+++」などから選択することによって示される。
【0019】
好適には、所定の視覚特性についてのずれが、規定されたスペクトル分布を有する照明放射光の光源のもとで決定される。1つの実施形態において、放射される光のスペクトル分布は自然日光に類似するか、又は、自然日光と本質的に同じである。別の実施形態において、所定の視覚特性についてのずれが、異なるスペクトル分布の照明放射光の2つの異なる光源のもとで決定される。2つの異なる光源を使用することは、選択されたバリアントのメタメリズムによる不整合の危険性を低下させることができる。
【0020】
好適な照明光源の例が、発光ダイオード、蛍光灯及び白熱灯である。好適な市販されている照明光源が、3Mから入手可能なSun Gun Color Matching Lightである。
【0021】
視覚特性についてのずれが、少なくとも2つの異なる検査用幾何学的配置のもとで決定される。典型的には、本方法が、自動車用の補修塗料を整合させるために使用されるとき、自動車の標準色の色での塗料により塗布される色見本が、自動車の損傷していない車体パネルと本質的には平行に置かれる。色見本を、例えば、自動車のフード又はボンネットに置くことができ、或いは、色見本を、接着テープを使用して車体パネルに貼り付けることができる。その後、標準色の色見本及び整合対象自動車の色の所定の視覚特性についての視覚によるずれが、第1の幾何学的配置で決定される。第1の幾何学的配置の一例が45°の照明角度及び25°の観測角度であり、この場合、両方の角度が車体パネルの面に対して測定される。第2の幾何学的配置の一例が65°の照明角度及び90°の観測角度であり、この場合、両方の角度が車体パネルの面に対して測定される。所定の視覚特性についての視覚によるずれを2つよりも多い幾何学的配置で決定することもまた可能であり、例えば、所定の視覚特性についての視覚によるずれを3つの異なる幾何学的配置又は4つまでもの異なる幾何学的配置で決定することもまた可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補修対象物の効果色に整合する補修塗料の標準色の整合バリアントを決定する方法であって、下記の工程:
c)前記補修対象物の色の前記標準色を決定する工程、及び
d)前記標準色の最も良く整合するバリアントを、所与の数のバリアントカラーから決定する工程
を含み、
前記標準色の色により塗布された色見本が、前記整合対象色と、少なくとも2つの異なる照明角度及び/又は観測角度のもとで目視比較され、
前記標準色及び前記整合対象物の色の視覚によるずれが、視覚特性についての所定のずれに基づいて評価され(この場合、所定の視覚特性は少なくとも1つの色特性及び少なくとも1つの外見特性を含む)、
前記標準色及び前記整合対象物の色の視覚特性についての所定のずれに基づいて、前記標準色の最も良く整合するバリアントが決定される、
方法。
【請求項2】
前記整合対象物の色が金属光沢色及び/又は真珠光沢色である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の視覚特性が、明度、色方向及び粗さを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記最も良く整合するバリアントが少なくとも3つのバリアントカラーから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記最も良く整合するバリアントが多くても6つのバリアントカラーから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
最大のずれを有する前記所定の視覚特性には、それ以外の所定の視覚特性よりも大きい重み付けが決定プロセスにおいて与えられる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記所定の視覚特性についてのずれの方向及び大きさが所定の記号によって示される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記所定の視覚特性のついてのずれが、自然日光と本質的に同じであるスペクトル分布を有する照明光源のもとで決定される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記最も良く整合するバリアントが、所定の視覚特性についてのずれのセットが標準色の特定のバリアントに関連させられているデータベースを使用して決定される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記データベースが電子的なデータ記憶装置及びデータ処理装置に実装されている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
さらに、前記最も良く整合するカラーバリアントの塗料を調製するための配合表が決定される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記最も良く整合するカラーバリアントの塗料が、決定された前記配合表に従うことによって調製される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
調製される前記塗料が、自動車又は大型輸送車両を再仕上げするために使用される、請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2011−522234(P2011−522234A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510988(P2011−510988)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056373
【国際公開番号】WO2009/144222
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】