説明

敷均機及び粘土系遮水層の敷設方法

【課題】既設の構造物を傷つけることなく粘土系材料を敷き均すことが可能な敷均機を提供すること。
【解決手段】撒き出された粘土系材料を敷き均す振動プレート31と、振動プレート31に搭載され、振動プレート31を振動させる振動バイブレータ33とを備えた敷均機3において、進行方向に回転自在なガイド車輪32を振動プレート31の側方に突出する態様で備えたので、振動プレート31は躯体被覆層17及び側部壁体部18の側壁とガイド車輪32を介して離隔した状態で走行する。したがって、敷均機3が躯体被覆層17及び側部壁体部18を傷付けることがなく、効率的な敷き均しが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撒き出された粘土系材料を敷き均す敷均機、敷き均された粘土系材料を締め固めた粘土系遮水層の敷設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低レベルの放射性廃棄物の埋設処分施設が計画されている。埋設処分施設は、掘削した地下坑道の内部に底部床盤部と底部遮水層とを敷設した後に、躯体コンクリートを構築したものである。躯体コンクリートは上方が開口しており、放射性廃棄物が内部に収容可能となっている。そして、躯体コンクリートの内部に放射性廃棄物を収容した後、蓋体(躯体コンクリート)で開口を塞ぐことにより、躯体コンクリートは封止される。その後、躯体コンクリートの周りを躯体被覆層で囲繞し、さらに、躯体被覆層と、別途構築された側部壁体部との間に、撒き出した粘土系材料を締め固めることにより粘土系遮水層を敷設し、安全を期している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−12356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この粘土系遮水層は、撒出機から撒き出された粘土系材料を転圧機によって締め固めることにより敷設されるために、粘土系材料が均一に撒き出されなかった場合には凹凸が生じ、敷設された粘土系遮水層に欠点が残ることなる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、既設の構造物を傷つけることなく粘土系材料を敷き均すことが可能な敷均機、及びこの敷均機を用いてより均一な密度で締め固めた粘土系遮水層の敷設を可能とした粘土系遮水層の敷設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係る敷均機は、撒き出された粘土系材料を敷き均す振動プレートと、前記振動プレートに搭載され、前記振動プレートを振動させる振動バイブレータとを備えた敷均機において、進行方向に回転自在なガイド車輪を前記振動プレートの側方に突出する態様で備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に係る敷均機は、上記請求項1において、前記振動バイブレータが前記振動プレートを進行させる態様で振動することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に係る敷均機は、上記請求項1において、粘土系材料を撒き出す撒出機に前記振動プレートが吊り下げられたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に係る粘土系遮水層の敷設方法は、廃棄物格納躯体を収容した躯体コンクリートの周りを囲繞することにより構築され、横断面が矩形形状を有した躯体被覆層と、該躯体被覆層の側面と所定の間隔を有して対向するように構築された側部壁体部との間に、粘土系材料を撒き出した後に該粘土系材料を締め固めることにより、前記躯体被覆層と前記側部壁体部との間に粘土系遮水層を敷設する粘土系遮水層の敷設方法において、躯体被覆層と側部壁体部との間に粘土系材料を撒き出す工程と、躯体被覆層と側部壁体部との間に撒き出された粘土系材料を締め固める工程との間に、撒き出された粘土系材料を敷き均す工程を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る敷均機は、進行方向に回転自在なガイド車輪を振動プレートの側方に突出する態様で備えたので、振動プレートは既設の構造物の側壁とガイド車輪を介して離隔した状態で進行する。したがって、敷均機が既設の構造物を傷付けることがない。
【0011】
本発明に係る粘土系遮水層の敷設方法は、躯体被覆層と側部壁体部との間に粘土系材料を撒き出す工程と、躯体被覆層と側部壁体部との間に撒き出された粘土系材料を締め固める工程との間に、撒き出された粘土系材料を敷き均す工程を設けたので、撒き出された粘土系材料を平坦に敷き均した後に締め固めることになり、絞め固められた粘土系遮水層の仕上がり密度を均一なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態である粘土系遮水層の敷設方法、及びこの敷設方法に用いられる敷均装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態である粘土系遮水層の敷設方法を適用する低レベルの放射性廃棄物の埋設処分施設を示す横断面図である。
【0014】
低レベルの放射性廃棄物の埋設処分施設1は、掘削した地下坑道11の内部に底部床盤部12と底部遮水層13とを敷設した後に、躯体コンクリート14を構築したものである。底部床盤部12は、コンクリート、モルタル等の埋戻材料を敷設したものであり、底部遮水層13は、粘土系材料(例えば、ベントナイト系粘土材)を締め固めたものである。躯体コンクリート14は上方が開口しており、内部に放射性廃棄物15を収容可能となっている。そして、躯体コンクリート14の内部に放射性廃棄物15を収容した後に、蓋体14aで開口を塞ぐことにより、躯体コンクリート14は封止される。その後、躯体コンクリート14の周りは躯体被覆層17で囲繞される。躯体被覆層17は、無筋のセメント系モルタル等により構築され、横断面が矩形形状を有している。また、地下坑道11の側壁に沿って側部壁体部18が別途構築されている。側部壁体部18は、躯体被覆層17の側面と所定の間隔を有して対向するように構築されており、躯体被覆層17と側部壁体部18との間には、狭隘な空間である狭隘部19が画成されている。
【0015】
本発明の実施の形態に係る粘土系遮水層の敷設方法は、上述した躯体被覆層17と側部壁体部18との間に画成された狭隘部19に敷設する側部遮水層の敷設方法に関するものである。図1に示すように、躯体被覆層17の上方は比較的大きな空間として利用可能であり、躯体被覆層17の側面および上面は平坦な面となっている。一方、側部壁体部18は、底部床盤部12と同様に、コンクリート、モルタル等の埋戻材料により構築してあり、その側面は平坦な面となっている。
【0016】
図2〜図4に示すように、躯体被覆層17の上面を走行するように撒出機2を配備する一方、躯体被覆層17と側部壁体部18との間を走行するように敷均機3と転圧機4とを配備してある。したがって、撒出機2は、敷均機3及び転圧機4と段差を隔てて横並びとなるように走行することができるようになっている。
【0017】
撒出機2は、上方から躯体被覆層17と側部壁体部18との間に粘土系材料(例えば、ベントナイト系粘土材)を撒き出すためのもので、撒出機本体20を有している。撒出機本体20には、車輪タイプの走行装置21が取り付けてあり、撒出機2は一定の速度による自律走行が可能となっている。また、撒出機本体20には、ホッパー22およびフィーダ23が搭載してある。ホッパー22は、撒き出す粘土系材料が供給される部分であって、時間当たり一定量の粘土系材料をフィーダ23に順次送出可能となっている。フィーダ23は、例えば、振動により粘土系材料を送出する振動フィーダにより構成してあり、ホッパー22から供給された粘土系材料を一様な厚みとした後に斜め前方から粘土系材料を撒き出すようになっている。
【0018】
敷均機3は、躯体被覆層17と側部壁体部18との間に撒き出された粘土系材料を敷き均すためのもので、振動プレート31を有している。振動プレート31の前進方向端部となる前部31aは、前進方向に向けて漸次高くなるように傾斜しており、撒き出された粘土系材料に凹凸がある場合であっても振動プレート31が粘土系材料を乗り越えることができるようになっている。同様に、振動プレート31の後退方向端部となる後部31bは、後退方向に向けて漸次高くなるように傾斜している。
【0019】
振動プレート31の進行方向側方となる左側部と右側部とには、それぞれ一対となるガイド車輪32が設けてある。各ガイド車輪32は、振動プレート31の側方に突出する態様で取り付けてあり、敷均機3の進行方向に回転自在となっている。したがって、敷均機3は、ガイド車輪32に案内され、操行操作をしなくても前後方向に走行可能となっている。
【0020】
また、振動プレート31には、振動バイブレータ33が搭載してある。振動バイブレータ33は、振動プレート31を振動させるためのもので、振動プレート31が振動すると振動プレート31の下の粘土系材料が敷き均されるとともに軽度に締め固められる(予備転圧)。
【0021】
振動バイブレータ33は、例えば、図5あるいは図6に示すように、ディスク34の重心位置を回転軸から移動した回転式のバイブレータであって、ディスク34の回転がアンバランスとなることによる大きな遠心力を振動力として利用している。図5に示した敷均機3の振動バイブレータ33は、振動プレート31を進行させる態様で振動させることができ、ディスク34が一方(図5において反時計回り)に回転した場合には振動プレート31が前進(図5において左方に移動)し、ディスク34が他方(図5において時計回り)に回転した場合には振動プレート31が後退(図5において右方に移動)するようになっている。図6に示した敷均機3の振動バイブレータ33は、図5に示した振動バイブレータ33と同様に、振動を進行させる態様で振動させることができ、一方(図6において左方)の振動バイブレータ33のディスクを一方(図6において反時計回り)に回転させた場合には振動プレート31が前進(図6において左方に移動)し、他方(図6において右方)の振動バイブレータ33のディスク34を他方向(図6において時計回り)に回転させた場合には振動プレート31が後退(図6において右方に移動)するようになっている。
【0022】
上述した敷均機3は、リモートコントローラ(図示せず)を操作することにより、前後の方向に任意の速度で進行し、粘土系材料を敷き均すことが可能となっている。
【0023】
図2〜図4に示すように、転圧機4は、躯体被覆層17と側部壁体部18との間において敷き均された粘土系材料を転圧するためのもので、転圧機本体40を有している。転圧機本体40には、車輪タイプの走行装置41が取り付けてあり、転圧機4は一定の速度による自律走行が可能となっている。
【0024】
また、転圧機本体40の進行方向側方となる左側部と右側部とには、それぞれ一対となるガイド車輪42が設けてある。各ガイド車輪42は、転圧機本体40および後述する転圧装置45の側方に突出する態様で取り付けてあり、転圧機4の進行方向に回転自在となっている。したがって、転圧機4は、ガイド車輪42に案内され、操向操作をしなくても前後方向に走行可能となっている。
【0025】
また、転圧機本体40には、昇降装置43、シフト装置44および転圧装置45が搭載してある。昇降装置43は、シフト装置44および転圧装置45を上下方向に昇降させるものであり、転圧装置45を任意の高さに維持した状態で走行可能となっている。シフト装置44は、昇降装置43と転圧装置45との間に設けられ、転圧機本体40の走行方向と直交する方向に転圧装置45をシフトさせることが可能となっている。転圧装置45は、複数の転圧ユニット45aを有している。複数の転圧ユニット45aは、転圧機本体40の走行方向と直交する方向に配設してあり、転圧機本体40の幅を超えて転圧することが可能となっている。各転圧ユニット45aは、下方に繰り出すことにより粘土系材料を転圧することが可能であって、これら複数の転圧ユニット45aは異なるタイミングで粘土系材料を転圧することが可能である。
【0026】
上述した転圧機4は、リモートコントローラ(図示せず)を操作することにより、前後の方向に任意の速度で走行し、粘土系材料を転圧することが可能となっている。
【0027】
上述した本発明の実施の形態に係る粘土系遮水層の敷設方法は、撒出機2を躯体被覆層17の上面を走行するように配備する一方、敷均機3と転圧機4とを躯体被覆層17と側部壁体部18との間を走行するように配備する。そして、撒出機2が敷均機3と転圧機4とに先行して走行することにより、上方から躯体被覆層17と側部壁体部18との間に画成された狭隘部19に粘土系材料(例えば、ベントナイト系粘土材)を撒き出すようになっている。一方、敷均機3が撒出機2に追従して進行することにより、躯体被覆層17と側部壁体部18との間に画成された狭隘部19に撒き出された粘土系材料が敷き均されるとともに軽度に締め固められる(予備転圧)。他方、転圧機4が敷均機3に続いて走行することにより、敷き均されるとともに締め固められた粘土系材料が更に締め固められる(本転圧)。
【0028】
上述した本発明の実施の形態に係る敷均機3は、進行方向に回転自在なガイド車輪32を振動プレート31の側方に突出する態様で備えたので、振動プレート31は躯体被覆層17及び側部壁体部18の側壁とガイド車輪32を介して離隔した状態で進行する。したがって、敷均機3が躯体被覆層17及び側部壁体部18を傷付けることがない。
【0029】
また、リモートコントローラ(図示せず)により、敷均機3及び転圧機4を操作することができるので、狭隘部19においてオペレータが作業する必要がなく、例えば、躯体被覆層17の上からオペレータが敷均機3及び転圧機4を操作することができる。
【0030】
上述した本発明の実施の形態に係る粘土系遮水層の敷設方法によれば、躯体被覆層17と側部壁体部18との間に粘土系材料を撒き出す工程と、躯体被覆層17と側部壁体部18との間に撒き出された粘土系材料を締め固める工程との間に、撒き出された粘土系材料を敷き均す工程を設けたので、撒き出された粘土系材料を平坦に敷き均した後に締め固めることになり、絞め固められた粘土系遮水層の仕上がり密度を均一なものとすることができる。
【0031】
なお、上述した実施の形態に係る敷均機3の振動バイブレータ33が振動プレート31を進行させる態様で振動させるものとしたが、図4中二点鎖線で示すように、撒出機2に吊り下げたものであれば、振動バイブレータ33が振動プレート31を進行させるものでなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係る粘土系遮水層の敷設方法を適用する低レベルの放射性廃棄物の埋設処分施設を示す横断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る粘土系遮水層の敷設方法を説明する正面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る粘土系遮水層の敷設方法を説明する平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る粘土系遮水層の敷設方法を説明する縦断側面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る敷均機を示す概念図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る敷均機を示す概念図である。
【符号の説明】
【0033】
1 埋設処分施設
11 地下坑道
12 底部床盤部
13 底部遮水層
14 躯体コンクリート
15 放射性廃棄物
16 モルタル
17 躯体被覆層
18 側部壁体部
19 狭隘部
2 撒出機
20 撒出機本体
21 走行装置
22 ホッパー
23 フィーダ
3 敷均機
31 振動プレート
32 ガイド車輪
33 振動バイブレータ
34 ディスク
4 転圧機
40 転圧機本体
41 走行装置
42 ガイド車輪
43 昇降装置
44 シフト装置
45 転圧装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撒き出された粘土系材料を敷き均す振動プレートと、前記振動プレートに搭載され、前記振動プレートを振動させる振動バイブレータとを備えた敷均機において、
進行方向に回転自在なガイド車輪を前記振動プレートの側方に突出する態様で備えたことを特徴とする敷均機。
【請求項2】
前記振動バイブレータが前記振動プレートを進行させる態様で振動することを特徴とする請求項1に記載の敷均機。
【請求項3】
粘土系材料を撒き出す撒出機に前記振動プレートが吊り下げられたことを特徴とする請求項1に記載の敷均機。
【請求項4】
廃棄物格納躯体を収容した躯体コンクリートの周りを囲繞することにより構築され、横断面が矩形形状を有した躯体被覆層と、該躯体被覆層の側面と所定の間隔を有して対向するように構築された側部壁体部との間に、粘土系材料を撒き出した後に該粘土系材料を締め固めることにより、前記躯体被覆層と前記側部壁体部との間に粘土系遮水層を敷設する粘土系遮水層の敷設方法において、
躯体被覆層と側部壁体部との間に粘土系材料を撒き出す工程と、躯体被覆層と側部壁体部との間に撒き出された粘土系材料を締め固める工程との間に、撒き出された粘土系材料を敷き均す工程を設けたことを特徴とする粘土系遮水層の敷設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−266948(P2008−266948A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109620(P2007−109620)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】