説明

断熱グレージングの冷蔵室ドアにおける使用および断熱グレージングを含む冷蔵室ドア

【課題】本発明の主題は、少くとも1つの見える領域を有する透明なグレージングユニット、および冷蔵室のドア、そして特にグレージングドアにおけるその使用であり、そのグレージング領域は本質的に真空断熱ユニットからなる。
【解決手段】本発明によれば、見える領域は、該領域の少くとも1つの表面に堆積された氷結を防止する吸収剤層に結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明なグレージング(glazing)(取り付けガラス)ユニットおよび冷蔵室(refrigerated enclosure)のドアにおける使用、そして特に、断熱グレージングユニットから本質的になるグレージング領域のグレージングドアに関する。
【0002】
本発明は、冷たいか、もしくは冷凍された製品が展示される冷蔵室のドアに関してもっと具体的に説明されるが、本発明はこの種の製品もしくは用途に限定されると解釈されてはならない。上述の「透明グレージング」(“transparent glazing”)という表現は、少くとも1つのガラスシートおよび/または少くとも1つのプラスチックシートからなるいかなる種類のグレージングも包含し、自動車産業、建築産業もしくは家庭電化製品産業における使用が意図される。
【背景技術】
【0003】
冷蔵室に保存される製品が、多くの現在の商業的な店のケースのように、見えなければならないとき、冷蔵室はそれを冷蔵「展示ケース」(“display case”)(通常の名称は「冷蔵販売キャビネット」である)に変換するグレージング部分を備える。これらの「展示ケース」にはいくつかの代替形態がある。それらのいくつかはキャビネットの形態であり、したがってそれは透明であるドア自体であるが、他は箱(chest)の形態であり、中味がみえるようにするためにグレージングされている水平なフタである。
【0004】
これらの種類の展示ケースにおいて、商品が消費者に十分にみえることが必要であり、その結果、展示ケースを開けないで商品を予め選定することができる。通常の断熱グレージングが用いられるとき、断熱が十分ではなく、外気と接触するガラスシート表面の温度は、露点温度より低いことが多く、この表面に凝縮現象を生じ、視界を害しうる。
【0005】
真空断熱グレージングの使用は、非常に高度に高められた断熱を付与することによりこの不利益を除去することを可能にする。
【0006】
FR97/09772としてSaint−Gobain Vitrageの名称で出願されたフランス特許出願は、このような真空グレージングユニットを含む冷蔵室のドアを記載する。それは少くとも2つのガラス基板からなる断熱パネルから本質的に構成される冷蔵室のドアを提案し、その基板の間では真空が創り出され、基板は全表面にわたって分布されたスタッドにより互いに分離され、無機シールによりその周囲を結合されている。このように、通常使用されている従来の断熱グレージングユニットは、その間に真空が創り出されている少くとも2つのガラスシートからなる1つの断熱グレージングユニットで置換されており、我々は以後、真空断熱と呼ぶ。この種の真空断熱グレージングは、従来の断熱グレージングユニットよりも著しく少ない全体厚みについて、実質的に改良された断熱性を有する。
【0007】
さらに、このような真空断熱グレージングユニットの構造はガラスシートの厚さの合計に等しい厚さの単1のグレージングユニットに等しい剛さおよび強度を付与する利点を有し、ガラスシートはその厚さがいわば2つのガラスシートの厚さの合計であるような単1シートとして挙動する。この方法において、この種のグレージングを支持枠で結合する必要はない。したがって、全体の大きさは大いに減少し、周囲の室に適合させるのに非常に簡易である。
【0008】
本質的に真空断熱グレージングユニットからなる冷蔵室のこのようなドアは、外部表面への凝縮の問題を解決することを可能にする:これは、このグレージングユニットの断熱が外気温度の外部表面を得るのを可能にするからである。
【0009】
一方において、この高められた断熱は、グレージングの、もしくはドアの内部表面が冷蔵環境の温度で、ドアが開いているとき凝縮現象を強調する何かであることを意味する:内部表面の温度は冷凍キャビネットケースにおいて、氷結が該表面に生成するのがみられるような温度である。
【0010】
ドアの内部表面に生成する凝縮および/または氷結を防止するための通常の方法はこの表面の上方に加熱空気を吹付けることにある。その方法が使用されても、エネルギーコストは高い;コストの報い(penalty)は真空断熱グレージングユニットの場所よりもはるかに大きく、凝縮および/または氷結を除去するために要する時間はもっと長い。しかも、内側の面の非常な低温による、この比較的長い時間は、ドアを開放後も含む、ほとんど永久的な視界領域を得ることにある意図されたねらいに反する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、特に、断熱グレージングユニットからなるグレージング領域を含む冷蔵室のドアを製造することであり、そこでドアが開いているときに見える領域に形成しやすい氷結はすぐに、そして安価に除去されうる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は少くとも1つの見える領域を有する透明なグレージングユニットによる本発明にしたがって達成され、この領域は該領域の少くとも1つの表面に堆積された氷結を防止する吸収剤層と結合されている。
【0013】
その層の氷結防止機能は、それが水の結晶の生成を妨げることを意味する。
【0014】
このようなグレージングユニットは、特にそれが断熱グレージングユニット、さらに特に真空断熱ユニットであるときに、少くとも1つの見える領域を有する冷蔵室のドアに用いられ得、たとえばその領域は、冷蔵環境と接触している該見える領域の表面に有利に堆積している吸収剤層と結合する該真空断熱グレージングユニットからなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるグレージングを含むこのようなドアは氷結現象を防止し、またはもっと正確にはそれを遅らせ、もしくはその出現を少くとも限定することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
第1の態様によれば、氷結を防止する吸収剤層は、ガラス上に直接に、そしてもっと特別には冷蔵環境に接触している真空断熱グレージングユニットの表面に、堆積される。これはドアが閉っているときに冷蔵環境と接触している表面である。このような層は、スパッタ、または特にフローコーティングもしくはディープコーティング型のコーティングの方法により堆積され得、その堆積は真空グレージングユニットの製造の前、もしくは後に実施される。有利には、シラン型の接着剤プライマーが用意される;それはガラスに前もって、または層が形成されるのと同時に堆積され、シラン類は氷結を防止する吸収剤層の組成に配合される。
【0017】
第2の態様によれば、氷結を防止する吸収剤層は、たとえば上述の方法の1つにより、プラスチックフィルム上に堆積され、プラスチックフィルムは真空断熱グレージングユニットにそれ自体固定される。使用されるプラスチックフィルムは、好適には3mm未満の厚さを有するポリカーボネートフィルムであるのが有利である;このプラスチックは、その機械的強度特性のために特に選ばれる。プラスチックフィルムは密封された態様でグレージングに固定され、その結果、水分の痕跡もガラス表面とプラスチックフィルムの間に存在し得ない。たとえば、それは周囲を接着剤結合することにより固定されうる;ガラスとプラスチックフィルムの間に存在しうる空気層は有利には3mmを超えてはならない。さらに固定は、従来の組立ての断熱グレージングユニットのためのものと類似した、乾燥剤と接着剤で結合されたアルミニウム枠により達成されうる;有利には、ガラスとプラスチックフィルムの間の空気層は10mmを超えない。
【0018】
本発明の有利な態様によれば、氷結を防止する吸収剤層は少くとも1つの親水性ポリマーからなる。このようなポリマーは、次のポリマーから選ばれうるが、これらに制限されない:ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)もしくはポリ(1−ビニルピロリドン)型のポリビニルピロリドン、ポリ(N−ビニル−2−ピリジン)型、ポリ(N−ビニル−3−ピリジン)型もしくはポリ(N−ビニル−4−ピリジン)型のポリビニルピリジン、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)型のポリアクリレート、ポリ(N′,N−ヒドロキシアクリルアミド)型のポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアクロレイン、ポリエチレングリコールまたはポリオキシエチレン、ポリマーは、上述のポリマーの2以上にもとづくコポリマーであってもよい。
【0019】
好適には、本発明においては、層が少くとも1つの架橋親水ポリマーからなることが例示される。ポリマーを架橋することは、特に、もっと良好な密着を得、さらに長期もしくは短期にわたって層が水に溶解される危険を防止することを可能にする。
【0020】
本発明の好適な態様によれば、親水ポリマーは有機もしくは無機の吸収剤材料に結合され、該吸収剤材料は好適には多孔質である。
【0021】
特に、無機吸収剤材料は層の機械的強度を改良し、そして特にひっかき傷の形成を防止する。無機の機能はTiO2 ナノ粒子のようなメソポーラス物質(CPG−MCM41)を堆積することにより、またはオルソシリケート加水分解縮合物、もしくは他のケイ素誘導体を堆積することにより達成されるのが有利である。
【0022】
特に、有機吸収剤材料は親水ポリマーを保持させる;たとえばポリウレタンが使用される。
【0023】
本発明者は、グレージング領域の表面に親水ポリマーを含む多孔質層の存在は水を吸収させることを示すことができた。この原理は水滴の形成、そしてさらには、グレージング領域にわたって氷結し、視界を害しやすい膜の形成を防止する。親水ポリマー、ならびに多孔質吸収剤材料の場合での気孔率の選択は層の氷結防止挙動を制御することを可能にする。特に、気孔率を増加させることは、水吸収速度、水吸収性、ならびに微小滴形態の水の含量を制御させうる。
【0024】
本発明の好適な態様によれば、層の気孔率は0.1〜1000cm3 /gである。ポリマー材料の場合には、有利には0.1〜100cm3 /g、そして好ましくは20cm3 /g未満である。メソポーラス材料の場合には200〜1000cm3 /gが好適である。気孔率は層の単位質量あたりの細孔の空隙量を意味する。
【0025】
さらに好ましくは、層は細孔を有し、その平均径は0.05〜50μm、好ましくは0.1〜20μm、そしてもっと好ましくは1〜15μmである。細孔を構成する空隙の形状は卵形もしくは球形である。
【0026】
氷結を防止する吸収剤層の性質、およびその製法がいかなるものであっても、その層は、有利には100μm未満、好ましくは50μm未満、もっと好ましくは35μm未満、そしてある場合には好ましくは25μm未満、もっと好ましくは20μm未満、の厚さを有する。
【0027】
本発明のさらなる詳細および有利な特徴は本発明の例示的な例および実施された試験の説明から以下に明らかになろう。
【実施例】
【0028】
上述のとおり、ドアもしくは冷蔵された販売キャビネットが作製された。それは見える領域を形成するための真空断熱グレージングユニットならびに、たとえば金属でつくられたドア枠から特に構成される。この枠は、取っ手(handle)およびちょうつがい(hinge)型のすべての機械的システム、ならびに冷蔵室の壁に対して密封するシールを特に支持する。
【0029】
断熱グレージングユニットは2つのガラスシートからなり、その間には真空が創り出されている。そのガラスシートはグレージングの全表面にわたって分布されたスタッドにより互いに分離され、無機接着剤のシールによりその周囲を結合されている。このような真空断熱グレージングユニットは、たとえば、特許出願EP 645 516に記載される方法により作製される。
【0030】
本発明によれば、厚さ2mmを有するポリカーボネートフィルムがグレージングの周りに1mmの厚さの細片を形成する接着剤により真空断熱グレージングユニットに固定される。このように、空気の空隙がグレージングと完全に密封されたポリカーボネートフィルムとの間に形成される。この複合体(complex)は捕捉された空気が乾燥されているような方法で作製される。フィルムは、ドアが閉められているときに冷蔵室の内側に面するようにされている真空断熱グレージングユニットの側に固定される。
【0031】
ポリカーボネートフィルムは、付着させる前に、氷結を防止する吸収剤層で被覆され、これは、ドアが閉じられているときに冷蔵室の内側に面するように堆積される。このように堆積された層は、ポリビニルピロリドンおよびポリウレタンにもとづく、ポリマー多孔質三次元ネットワークを形成する。
【0032】
測定は透過型電子顕微鏡を用いて湿潤状態で層について実施された:これらの測定は層の厚さおよび細孔径を検査するのを可能にする。層の厚さは14.5μmであり、細孔は1〜8μmに変動する平均径を有する。
【0033】
試験は種々の型のドアについて実施された。これらのドアは冷蔵販売キャビネットに合わせられ、その中は−28℃の温度に維持される。キャビネット自体は25℃の温度の雰囲気に置かれる。試験は3分間および12秒間、ドアを開けることにある。3分間の期間は、朝に、この種のキャビネットに仕込むのに必要な平均時間をシミュレートする。12秒間の期間は、消費者が1つ以上の商品を取るのに必要な平均時間をシミュレートする。
【0034】
測定された結果は、ドアの十分な視界がもどるのに必要な時間、すなわち凝縮および/または氷結を除去するのに必要な時間である。
【0035】
試験された第1のドア、Aは3つのガラスシートからなる断熱グレージングユニットを有する。試験された第2のドア、Bは真空断熱グレージングユニットを有する。
【0036】
第3のドア、Cは記述された本発明によるドアである。
【0037】
結果は、下の表に示される:
3分間開放 12秒間開放
A 8分20秒 1分15秒
B 31分10秒 1分40秒
C 0秒 0秒
これらの結果から、本発明により作製されたドアCは氷結の形成を防止することが明らかである。
【0038】
もう1つの試験が同様な条件で実施された。層の性質のみがこの第2の例において異なる。この第2の例は親水ポリマーのみからなる層を堆積することにある;この親水ポリマーはポリビニルピロリドンにもとづき、それは分子量1,300,000g/mol を有し、エタノール中に10wt%に希釈された。このようにして得られた組成物は、ついでフローコーティングによりガラス上に堆積された。
【0039】
上述のような試験は、12秒間および3分間、ドアを開けることにあり、実施された。いずれの場合も、ドアの見える領域に氷結の兆候は全くみられなかった。
【0040】
したがって吸収剤層の存在は、ドアが通常の操作条件下で開かれるとき、氷結の形成を防止する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
見える領域が、その領域の少くとも1つの表面に堆積された氷結を防止する吸収剤層に結合されていることを特徴とする少くとも1つの見える領域を有する透明グレージング。
【請求項2】
層がグレージングの表面に堆積されていることを特徴とする請求項1記載のグレージング。
【請求項3】
層はプラスチックフィルム上に堆積され、しかもプラスチックフィルムはグレージングに固定されていることを特徴とする請求項1記載のグレージング。
【請求項4】
層が少くとも1つの親水性ポリマーからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のグレージング。
【請求項5】
親水性ポリマーが架橋されることを特徴とする請求項4記載のグレージング。
【請求項6】
親水性ポリマーがビニルピロリドンのポリマーもしくはコポリマーである請求項4もしくは5記載のグレージング。
【請求項7】
層が有機もしくは無機、そして好ましくは多孔質の、吸収剤材料を含む請求項4〜6のいずれかに記載のグレージング。
【請求項8】
湿潤状態の層が約0.1〜1000cm3 /gの気孔率を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のグレージング。
【請求項9】
湿潤状態の層が、径0.05〜50μm、好ましくは0.1〜20μm、そしてもっと好ましくは1〜15μmの細孔を有する請求項1〜8のいずれかに記載のグレージング。
【請求項10】
氷結を防止する吸収剤層が100μm未満の厚さを有することを特徴とする請求項1〜9記載のグレージング。
【請求項11】
グレージングは少くとも2つのガラスシートからなる断熱グレージングユニットである請求項1〜10のいずれかに記載のグレージング。
【請求項12】
グレージングが真空断熱グレージングユニットである請求項11記載のグレージング。
【請求項13】
冷蔵室のドアにおける、請求項1〜12記載のグレージングの使用。
【請求項14】
氷結を防止する吸収剤層が、冷蔵される環境に接触している見える領域の表面上に堆積される、請求項13記載のグレージングの使用。

【公開番号】特開2008−14630(P2008−14630A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193034(P2007−193034)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【分割の表示】特願2000−619742(P2000−619742)の分割
【原出願日】平成12年5月25日(2000.5.25)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】