説明

断熱パネルおよび断熱壁構造

【課題】本柱、間柱等の柱に施工性よく取り付けることができ、屋内の居住環境を良好に保つことのできる断熱性、耐久性に優れた断熱パネルを提供する。
【解決手段】パネル本体1の屋外側に外張り断熱材層2を設け、屋内側に合成樹脂発泡体を硬化させてなる充填断熱材層3を設けるとともに、該充填断熱材層3に欠除部51、52を設け、この欠除部51、52を柱4への固定部としてなる断熱パネルA。好ましくは、上記外張り断熱材層2の屋外側に、さらに透湿防水シート層6を設けてなる断熱パネルB、および上記断熱パネルBを胴縁7を用い、該胴縁7を挿通する固着手段8により柱4へ固定してなる断熱壁構造C。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、建築物の外壁に用いられる断熱パネルに関し、特に、一般家屋の軸組の際、柱に固定され、建物に断熱層を形成する断熱パネルおよびそれを用いて得られた断熱壁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、一般住宅等においても、夏は冷房、冬は暖房を施すことが普及しており、建物の壁、天井、床の内部に断熱施工を行い、夏季は高い外気温を遮り、冬季は冷気を防いで、四季を通じて快適な住環境で過ごせるように住宅の高性能化が求められている。
【0003】
例えば、登実登−3042932号公報には、板材と、該板材の表裏面にそれぞれに表断熱層、裏断熱層を形成し、上記表裏断熱層がそれぞれ板材と一体に形成された合成樹脂発泡体であり、裏断熱層における端縁近傍において、端縁から所定幅に亘って断熱層を切り欠いて板材が露出した固定面を設けたことを特徴とする断熱パネルが開示されている。
【0004】
そして、上記のように構成された断熱パネルを用いることにより、板材の表側の全面に断熱層が形成され、板材に直接、内外部の温度変化が伝わらないことから断熱パネルの基材である板材近傍に結露が生じることなく、また、板材の外面に接触する熱橋がパネル体に固定する固定具のみとなるので、断熱性が大幅に向上できるとの効果が述べられている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献の図3、図4、図6(a)、(b)に示されるように、上記構成の断熱パネルを柱、間柱等に打設して断熱下地を形成するとき、固定具としての通常の釘、ビス等を用いる場合、深度を調節しつつ、すなわち、工具や上記固定具の頭部にて表断熱層を破壊しないように打設を行うか、または、2つの頭部を有する二頭釘を用いて打設する必要があり、作業性よく断熱下地を形成できるものとはいえない。
【特許文献1】登実登−3042932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、上記背景技術に鑑みてなしたものであり、その目的は、柱、土台、横架材等の軸材、特に本柱、間柱等の柱に作業性よく取り付けることができるとともに、夏季は高い外気温を遮り、冬季は冷気を防いで屋内の居住環境を良好に保つことのできる断熱性、耐久性に優れた断熱パネルおよびそれを用いた断熱壁構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明に係る断熱パネルは、パネル本体の屋外側に外張り断熱材層を設け、屋内側に合成樹脂発泡体を硬化させてなる充填断熱材層を設けるとともに、該充填断熱材層に欠除部を設け、この欠除部を柱への固定部としてなることを特徴としている。
【0008】
上記パネル本体としては、クロス合板や強化合板、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)、WBP(ウッドプラスチックボード)、集積材等の木質系基板、石膏ボード、石膏スラグボード等の石膏系基材、パルプセメント板等の繊維セメント板、ならびに上記各基材の複合体を用いることができる。
【0009】
また、上記充填断熱材層を形成する充填断熱材としては、合成樹脂発泡体からなるものが用いられ、ノズルから噴出させて空気あるいは空気中の水分によって硬化する各種のものをあげることができる。例えば、スチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、フェノールフォーム、塩化ビニルフォーム、ポリエチレンレフォーム、ユリアフォーム等を例示することができる。
【0010】
欠除部を設ける方法については、特に限定されず、充填断熱材層を設けた後、柱の固定部として必要な幅以外の不要部分を切り取って欠除部を設ける、あるいは予め欠除部近傍のパネル本体に柱の幅よりやや大きい幅でテープ材を貼り、その上に充填断熱材層を設けて柱の固定部として必要な幅以外の不要な充填断熱材層とテープ材とを一体として切り取り、欠除部を設ける等の方法等をあげることができる。
【0011】
本願請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の断熱パネルにおいて、上記外張り断熱材層の屋外側に、さらに透湿防水シート層を設けてなることを特徴としている。外張り断熱材層を構成する外張り断熱材としては、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン、ビーズ法ポリスチレン、エポキシフォーム、フェノールフォーム、ポリエチレンフォーム等の硬質合成樹脂発泡体の圧縮成形品が用いられ、これらを板状に成形したものや、高密度のグラスウールマット、ロックウールマット等を単独で板状の形態を保持する程度の硬さに成形したものが用いられる。
【0012】
透湿防水シート層としては公知のシートが用いられ、屋内側からの湿気は気体として屋外に排気するとともに、雨水等、液体としての水の浸入を防ぐ特殊素材からなる透湿防水シートが用いられる。
【0013】
本願請求項3に記載の発明は、上記請求項1に記載の断熱パネルにおいて、欠除部が薄い充填断熱材層を残して形成されてなることを特徴としている。
【0014】
本願請求項4に記載の発明に係る断熱壁構造は、上記断熱パネルを、胴縁を用いて、該胴縁を挿通する固着手段により柱へ固定してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本願請求項1記載の発明に係る断熱パネルは、パネル本体の屋外側に外張り断熱材層が設けられ、屋内側に充填断熱材層が設けられるとともに、この充填断熱材層を、合成樹脂発泡体を現場で吹き付けた後、硬化して形成することにより、現場で必要とされる断熱厚さに応じて作業性よく施工することができる。また、得られた充填断熱材層に欠除部を設け、この欠除部を柱への仮固定部として充填断熱材層を自立して保持させ、その後、固定用ビス、スクリュウ釘等の固着手段により固定する固定部とすることにより、上記断熱パネルを柱へしっかりと固定することができる。
【0016】
本願請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明に係る断熱パネルにおいて、外張り断熱材層の屋外側に、さらに透湿防水シート層を設けてなるため、屋内の居住空間で生活活動によって発生した湿気は気体として屋外に排気されるとともに、雨水等、液体としての水の浸入を防ぐことが可能となり、結露を防いで快適な居住空間を提供することができる。
【0017】
本願請求項3記載の発明は、上記請求項1記載の発明に係る断熱パネルにおいて、上記欠除部が薄い充填断熱材層を残して形成されてなるため、断熱パネルを仮固定、本固定するときの固定部とすることができるとともに、柱とパネル本体とが直接接触して伝熱により熱が逃げることを防ぎ、断熱性が低下することを防止できる。
【0018】
本願請求項4記載の発明に係る断熱壁構造は、上記断熱パネルを、胴縁を用いて該胴縁を挿通する固着手段により柱へ固定してなるため、該固着手段を用いて胴縁と断熱パネルとを同時に柱へ固定することにより、作業工程の単純化が可能となり、作業性よく断熱下地材の施工を行うことができる、また、一般住宅の外壁として用いた場合、屋内で結露等の問題が発生しにくく、かつ、耐久性に優れた良好な居住環境を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本願発明にかかる断熱パネルの実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本願発明にかかる断熱パネルAを断面で示す説明図である。図1に示すように、上記断熱パネルAは、パネル本体1としての構造用合板の屋外側に外張り断熱材として、例えば、発泡ポリスチレンを板状に成形してなる外張り断熱材層2を設け、屋内側には、充填断熱材層3が設けられている。
【0020】
上記充填断熱材層3は、合成樹脂発泡体からなるものが用いられ、例えば、空気中の水分と反応して硬化するポリウレタンを用いることができる。ポリウレタンは上記反応の際、二酸化炭素を放出し、放出された二酸化炭素は封じ込められ発泡体を形成するとともに、硬化したポリウレタン樹脂は自己接着力によりパネル本体1に接着し一体化する。
【0021】
上記のようにして充填断熱材層3を形成した後、本柱41や間柱42等、柱4への固定部となる箇所に、欠除部51、52が設けられる。すなわち、上記断熱パネルAと隣接する断熱パネルAとによって形成された欠除部51の中へ本柱41が嵌装され、断熱パネルAの充填断熱材層3に設けられた欠除部52へは間柱42が嵌装される。
【0022】
このとき、図1に符号dで示す本柱41と間柱42との内法dと、充填断熱材層3の横幅wとを略同等とすることにより、充填断熱材層3が本柱41と間柱42との間にタイトに装着され、断熱パネルAが欠除部51と欠除部52とによって仮固定され、自立して保持される。
【0023】
図2は、本柱41、間柱42、図外土台、図外横架材等の軸材を軸組した後、上記断熱パネルAを仮固定した状態を断面で示す説明図である。図3は、本願発明の他の実施形態にかかる断熱パネルBを断面で示す説明図である。図3に示されているように、上記断熱パネルBにおいては、本柱41が嵌装される欠除部51が薄い充填断熱材層31を残して形成され、間柱42が嵌装される欠除部52も同様に、薄い充填断熱材層32を残して形成されている。
【0024】
このように、薄い充填断熱材層31、32を残して欠除部51、52を設けることにより、前述のように断熱パネルBを仮固定できるとともに、本柱41、間柱42とパネル本体1としての構造用合板とが直接接触しないようにし、伝熱によって熱が逃げることを防止している。また、外張り断熱材層2の屋外側に特殊素材からなる透湿防水シート層6が設けられている。
【0025】
ついで、図3に示すように構成された断熱パネルBは、固定用ビス、スクリュウ釘等の固着手段により本固定される。図4は、断熱パネルBを固着手段8により固着する状態を示す説明図である。図4に示されているように、断熱パネルBは、欠除部51、52に嵌装された本柱41と間柱42とに、通気性の胴縁7、透湿防水シート層6、外張り断熱材層2、パネル本体1、薄い充填断熱材層31、32を挿通する固着手段8により固着される。
【0026】
ここで、固着手段8としての固定用ビス、スクリュウ釘等は、胴縁7、透湿防水シート層6、外張り断熱材層2とパネル本体1を貫通した後、薄い充填断熱材層31、32を貫通して柱4に螺着されるので、固定手段8の長さを従来の固定手段に比べて短くすることができる。
【0027】
また、本願発明にかかる断熱パネルは、従来法におけるように、断熱層を圧縮破壊しないように工具や固定具の頭部を注意深く打設する必要はなく、電動ドライバー等で固着手段8を胴縁7を通して断熱パネルBにねじ込めばよい。従って、作業性よく、簡単に断熱パネルBを本柱41と間柱42とに固定することができる。
【0028】
図5は、上記のようにして得られた本願発明に係る断熱壁構造Cを断面で示す説明図である。図5に示されているように、上記断熱壁構造Cは、断熱パネルBが胴縁7によって、透湿防水シート層6の外側からその継ぎ目を目隠しするように、比較的短い固定用ビス、スクリュウ釘等の固着手段8で本柱41と間柱42とにしっかりと固定して構成されている。
【0029】
上記のようにすることにより、本願発明にかかる断熱パネルは、従来の施工方法のように、軸組した後、軸材への構造用合板等、パネル本体の釘打ち等による固定、さらに外張り断熱材の施工、透湿防水シートのタッカー留め、通気性の胴縁の取り付け等の複数の工程を必要とせず、断熱パネルBを胴縁7を介して固着手段8による本柱41と間柱42へ固定する工程のみで行うことができる。このように、作業工程を単純化することができるため、作業性よく断熱下地材の施工を行うことができ、施工コストの低減を図ることも可能となる。
【0030】
以上述べたように、本願発明に係る断熱壁構造Cを一般住宅の外壁として用いた場合、屋内で結露が発生しにくく、断熱性、耐久性に優れるとともに、良好な居住環境を提供することができる。なお、上記実施形態においては、断熱壁パネルBを用いた例について説明したが、断熱壁パネルBに限定されず、断熱壁パネルAを用いてもよく、このように本願発明は設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、本願発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本願発明にかかる断熱パネルを断面で示す説明図。
【図2】軸材を軸組した後、本願発明にかかる断熱パネルを仮固定した状態を断面で示す説明図。
【図3】本願発明の他の実施形態にかかる断熱パネルを断面で示す説明図。
【図4】断熱パネルを固着手段により固着する状態を示す説明図。
【図5】本願発明に係る断熱壁構造を断面で示す説明図。
【符号の説明】
【0032】
A 断熱パネル
B 他の形態の断熱パネル
C 断熱壁構造
d 本柱と間柱との内法
w 充填断熱材層の横幅
1 パネル本体
2 外張り断熱材層
3 充填断熱材層
31 薄い充填断熱材層
32 薄い充填断熱材層
4 柱
41 本柱
42 間柱
51 欠除部
52 欠除部
6 透湿防水シート層
7 胴縁
8 固着手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル本体の屋外側に外張り断熱材層を設け、屋内側に合成樹脂発泡体を硬化させてなる充填断熱材層を設けるとともに、該充填断熱材層に欠除部を設け、この欠除部を柱への固定部としてなる断熱パネル。
【請求項2】
上記外張り断熱材層の屋外側に、さらに透湿防水シート層を設けてなる請求項1に記載の断熱パネル。
【請求項3】
上記欠除部が薄い充填断熱材層を残して形成されてなる請求項1に記載の断熱パネル。
【請求項4】
上記断熱パネルを、胴縁を用いて、該胴縁を挿通する固着手段により柱へ固定してなる断熱壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−228385(P2009−228385A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78415(P2008−78415)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】