説明

断熱パネルに物品を固着する固着具

【課題】断熱パネルに被固着物品を固着する場合において、断熱パネルの破壊を防止しながら断熱性に優れた強固な固着を実現し、かつ、固着の作業性を向上させる。
【解決手段】合成樹脂製の棒状本体部21の、一端に金属製の頭部付きボルト22をねじ結合するとともに他端にねじ棒23をねじ結合し、さらに、棒状本体部21の端面に接触するよう金属製端面ナット24をねじ棒23にねじ結合して、固着具本体2を構成する。そして、固着具本体2を断熱パネル及び被固着物品LRを貫通するように設置し、締め付けナット3により被固着物品をLR断熱パネルに固着する。被固着物品LRに作用する荷重が断熱パネル全体で支持されるので強固な固着が可能であり、合成樹脂製の棒状本体部21の存在で熱伝達が遮断される。また、金属製端面ナット24により締め付けナット3の締め付けに起因するねじ結合部の破損が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性を備えた固着具、例えば、冷凍車の箱型荷台の断熱パネルに貨物緊縛用のレールを取り付けるために適した固着具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の消費生活の多様化あるいは利便性の追求に伴い、トラック等による貨物輸送の分野では、冷凍品又は生鮮食料品等の輸送の需要が増加している。冷凍品等の貨物の輸送には、断熱パネルにより囲まれた密閉式の箱型荷台を備え、その荷室内の温度を、冷凍装置によって低温に保つ冷凍車等が使用されることから、このような箱型荷台に対する需要も高まっている。荷室内の温度を、積載する冷凍品等の貨物に応じた適正な範囲から外れないよう厳格に管理する、温度管理車と呼ばれる車両も増加している。
【0003】
冷凍車等の断熱パネルには、箱型荷台の外側の外板と荷室側の内板との間に芯材となる断熱材を配置し、これらを積層したサンドイッチ構造のパネルが使用される。外板及び内板としては、アルミニウム、ステンレス等の金属製の薄板が、断熱材としては、ポリスチレンフォーム等の発泡合成樹脂が用いられることが多い。芯材となる断熱材は、荷室内の設定温度が低温となり外気温度との差が大きくなるほど、断熱性能を確保するため、厚さが大きい断熱材が用いられる。
【0004】
ところで、貨物輸送用車両の箱型荷台では、車両走行中に積載した貨物が荷くずれを生じたり、相互に衝突して損傷したりすることがないよう、緊縛用ベルトやロッドにより貨物を固定する。箱型荷台の荷室内壁面には、一般的に、緊縛用ベルト等を掛け止めするレールが設置されており、ラッシングレールと呼ばれている。
冷凍車等の箱型荷台においては、ラッシングレールが断熱パネルの荷室側の内板に固着されることとなるが、内板は、発泡合成樹脂に積層されたアルミニウム等の薄板であって強度及び剛性が小さい。一方、貨物の緊縛用ベルト等を掛け止めするラッシングレールには、車両走行中に貨物に働く慣性力等に起因して大きな荷重が作用するので、ラッシングレールを固着した部分の断熱パネルが破壊される虞れがある。冷凍車等の箱型荷台の断熱パネルには、ラッシングレール以外に、荷室内を冷却する冷凍装置のエバポレータ(蒸発器)及びファン、貨物を載せる棚等が取り付けられ、重量が大きいこうした物品を固着する個所でも、断熱パネルの破壊の起こる場合がある。
【0005】
サンドイッチ構造の断熱パネルに物品を固着するとき、固着する個所の強度等を増加して破壊を防ぐ幾つかの固着方法が知られており、それらを図5に示す。図5においては、断熱パネルの外板をOP、内板をIP、断熱材をINで表している。
図5(a)の固着方法は、ねじを形成した鋼製の比較的厚い補強板RPを、断熱材INを切削して形成した凹所内に埋め込んで接着等で固定し、ボルトBTを用いてラッシングレールLR等の被固着物品を固着するものである。
図5(b)の固着方法は、円筒形の合成樹脂製の保持部材(アンカー)ANに金属製のボルトBTを一体に組み込み、断熱材INを切削して形成した凹所内に保持部材ANを挿入し、周囲を接着して固定するものである。ラッシングレールLR等の物品は、内板IPから突出するボルトBTのねじ部にナットにより固着される。
【0006】
図5(a)(b)の固着方法では、補強板RPや保持部材ANを断熱材INの凹所内に埋め込んだ後、ボルトの通過する孔を設けた内板IPを積層し接着等で固定することとなる。内板IPの内側に補強用のバックアッププレートBPを重ねる場合もある。
【0007】
図5(c)の固着方法は、サンドイッチ構造の断熱パネル全体を貫通する金属製の長ボルトを使用し、先端のねじ部を内板IPから突出させて、ナットによりラッシングレールLR等を固着するものである。外気に晒される長ボルトLBTの頭部は合成樹脂製のキャップで覆われており、外気の熱が、長ボルトLBTを通して冷却された荷室内に伝達されるのを防止する。
また、図5(d)には、特許第3940516号公報に開示された物品の取り付け構造を示す。この取り付け構造は、箱型荷台のリア側に置かれた観音開き式ドアの断熱パネルの外板に、開閉用のヒンジ金具HGを固着するものであり、合成樹脂製の円筒形のカラーPCを内板IPと断熱材INに形成した孔に挿入する。カラーPCには、内板IPに係合する鍔部LDと内部孔IHとが設けられるとともに、内部孔IHの外板OP側には、カラーPCと外板OPとを貫通するボルトBTが取り付けられており、ヒンジ金具HGは、ナットNTによりボルトBTに固着される。
【0008】
図5(c)(d)の固着方法では、断熱パネルの厚さ方向の全体で荷重を支持するよう構成されているため、物品を固着する個所の強度等が格段と高まる。そして、図5(d)の取り付け構造では、断熱性能の向上を図るため、合成樹脂製の円筒形のカラーPCを使用し、かつ、内部孔IHの端部をキャップSLで塞いで、金属製のボルトBTと荷室内の冷気との接触を遮断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3940516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
サンドイッチ構造の断熱パネルに固着具を用いて物品を固着するときは、固着個所の強度等を増大すると同時に、固着具自体を介して熱が伝達しないように配慮し、また、固着作業の容易化を図ることが望ましい。前述したように、断熱パネルに物品を固着するには各種の方法があるものの、こうした要請から図5の固着方法を観たときには必ずしも満足できるものではなく、次のような点に問題が存在する。
【0011】
補強板や保持部材を断熱材の凹所内に埋め込む図5(a)(b)の固着方法では、断熱パネルの内板を断熱材に積層し固定する前の作業工程で、補強板等の嵌め込まれる凹所を正確な位置及び寸法に加工し、次いで適正な量の接着剤を塗布して補強板等を固定する必要があり、この作業が簡単ではない。ことに、車両用の箱型荷台の断熱パネルは大物の部品であり、ラッシングレールは長尺の部品であるから、ラッシングレールの取り付け孔の位置に正確に一致させて、断熱材に予め補強板等を設置するのは非常に困難となる。固着個所の強度を確保するには、補強板等の面積が大きいものを使用することになるため、狭い個所では補強板等による固着方法を採用できない。
【0012】
断熱パネルを貫通する金属製の長ボルトを用いて固着する図5(c)の方法では、断熱パネルの全体で荷重を支持しており、物品を固着する個所の強度等を高めることができるとともに、断熱材に内板と外板を積層して断熱パネルを完成した後に、ラッシングレール等、被固着物品の取り付け孔等の位置に合わせて、長ボルトを通す貫通孔をドリル等により正確に加工することができる。しかし、金属製の長ボルトが断熱パネルを貫通しているので、長ボルトを介して断熱パネルの内側と外側の間に熱伝達が生じる。長ボルトの頭部は合成樹脂製のキャップで覆われているものの、荷室内の冷気により頭部が冷やされて結露が生じ、外観を損ねたり頭部付近の金属が腐食したりする場合がある。
【0013】
図5(d)の固着方法では、断熱性を向上するため、熱伝導率の小さい合成樹脂製のカラーを使用し、かつ、キャップにより金属製のボルトと荷室内の冷気との直接接触を遮断している。しかし、この固着方法では、複雑な形状のカラーを使用するのでコストが増大する。また、断熱パネルの別々の部材に、カラーが挿入される大径の孔とボルトが貫通する小径の穴とを同心状に形成する作業、これらに部品を設置しながら断熱パネルに被固着物品を固着する作業は、容易なものではない。
本発明の課題は、断熱パネルの破壊及び変形を防止しながら被固着物品の強固な固着を実現し、しかも、簡単な作業で正確な固着が可能な、断熱性に優れた固着具を提供して、上述の問題点を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題に鑑み、本発明は、金属よりも大幅に熱伝導率の小さい合成樹脂製の棒状本体部を有する固着具本体を断熱パネルに貫通させ、棒状本体部の端部に植え込んだ金属製のねじ棒に、合成樹脂製の棒状本体部を保護する端面ナットをねじ結合した後、締め付けナットを用いて被固着物品を固着するものである。すなわち、本発明は、
「固着具本体と金属製の締め付けナットとを備え、断熱材の配置された断熱パネルに被固着物品を固着する固着具であって、
前記固着具本体は、両端にねじ孔が形成された均一横断面の合成樹脂製の棒状本体部と、一端の前記ねじ孔にねじ結合され、前記棒状本体部よりも拡大した頭部を有する金属製の頭部付きボルトと、他端の前記ねじ孔にねじ結合され、前記棒状本体部の他端より突出する金属製のねじ棒とを備え、かつ、前記棒状本体部の端面に接触するよう前記ねじ棒にねじ結合される金属製の端面ナットを備えており、
前記固着具本体を、前記断熱パネル及び前記被固着物品を貫通するように設置し、前記締め付けナットを前記ねじ棒の先端部分にねじ結合して、前記被固着物品を前記断熱パネルに固着する」
ことを特徴とする固着具となっている。
【0015】
請求項2に記載のように、前記断熱パネルは、発泡合成樹脂製の断熱材の両側に、金属製の薄板が積層されたサンドイッチ構造を有するものであることが好ましい。また、請求項3に記載のように、前記固着具本体は、前記棒状本体部が円形横断面の繊維強化合成樹脂製であることが好ましい。
【0016】
請求項4に記載のように、前記頭部付きボルト及び前記ねじ棒と、前記棒状本体部のねじ孔とのねじ結合部分を接着するとともに、前記端面ナットと前記棒状本体部の端面との接触部分を接着することができる。
【0017】
請求項5に記載のように、前記頭部付きボルトの頭部と前記棒状本体部の端面との間には、シール部材を介在させることができる。
【0018】
請求項6に記載のように、本発明は、車両の箱型荷台の壁面を構成する断熱パネルに、貨物緊縛のためのラッシングレールを固着する固着具として好適なものである。この場合において、前記断熱パネルの端部が前記箱型荷台のコーナー部に置かれた柱体に取り付けられているときは、請求項7に記載のように、前記固着具本体を、前記断熱パネル、前記ラッシングレール及び前記柱体を貫通するように設置し、前記ラッシングレールの端部を前記締め付けナットにより前記断熱パネルに固着することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
断熱パネルに被固着物品を固着する本発明の固着具は、合成樹脂製の棒状本体部の両端部にねじ孔を設け、一方のねじ孔に金属製の頭部付きボルトをねじ結合(螺着)し、他方のねじ孔に金属製のねじ棒を植え込んで固着具本体を形成し、この固着具本体を、断熱パネル及び被固着物品を貫通するように設置した後、ねじ棒の先端部分に締め付けナットをねじ結合して被固着物品を固着するものである。固着具本体は、断熱パネルを貫通して被固着物品を固定し、被固着物品に作用する荷重が断熱パネル全体で支持されるから、断熱パネルの表面部分が強度の小さい薄板等であっても、その変形や破壊を防止することができる。また、本発明の固着具では、棒状となった固着具本体の先端のねじ棒に締め付けナットにより被固着物品を結合しており、固着方法がいわば通常のボルト・ナットによる固着方法と同等な形態となる。そのため、断熱パネルに予め補強板等を設置する等の作業は必要なく、完成した断熱パネルに被固着物品の位置に合わせて、固着具本体を通す貫通孔をドリル等により正確に加工し、固着を行うことができる。
【0020】
本発明の固着具本体には、合成樹脂製の棒状本体部が介在されている。合成樹脂は金属よりも大幅に熱伝導率が小さいので、固着具本体が断熱パネルを貫通していても、棒状本体部の両端に固定された金属製の頭部付きボルトとねじ棒との間の熱伝達が遮断され、固着具を介して断熱パネルの内側と外側との間に熱移動が生じることはない。また、棒状本体部の長さを調整することにより、厚さの異なる断熱パネルに固着具本体を対応させることが可能で、頭部付きボルトとねじ棒には共通の部品を使用できる。
【0021】
そして、締め付けナットを締め付けるねじ棒には、棒状本体部の端面に接触するよう金属製の端面ナットがねじ結合されている。被固着物品を固着するため締め付けナットに締め付けトルクを付与すると、締め付けナットとねじ棒との接触面の摩擦により、ねじ棒にも大きなトルクが作用するが、端面ナットがなければ、このトルクが合成樹脂製である棒状本体部のねじ孔のねじ結合部分に直接作用する。合成樹脂は、断熱性に優れる反面、強度や表面の硬さの点では鋼材等の金属に劣るから、締め付けトルクによりねじ孔部分が変形し破損を起こす虞れがある。
本発明では、ねじ棒に働く締め付けトルクが、端面ナットと棒状本体部の端面との接触面にも摩擦力として作用する。つまり、固着のための締め付けトルクを、ねじ孔部分と棒状本体部の全体とによって分担して受けることになる。また、金属製の端面ナットが棒状本体部の端面に密着し、ねじ孔部分の変形を防ぎながら端面を保護しているので、締め付けナットの締め付けに起因するねじ孔部分の破損が防止される。
【0022】
請求項2の発明は、発泡合成樹脂製の断熱材の両側に、金属製の薄板が積層されたサンドイッチ構造を有する断熱パネルに、本発明の固着具を適用して被固着物品を固定するものであり、強度の小さい発泡合成樹脂又は薄板であっても、強固な固着が可能となる。請求項3の発明は、固着具本体の棒状本体部に、円形横断面の繊維強化合成樹脂製の棒、つまり、FRP製の丸棒を採用するものである。丸棒であると棒状本体部や断熱パネルの貫通孔の加工が容易であり、FRPは引張強度等が大きいので、棒状本体部を小径化し固着具をコンパクトとすることが可能である。また、請求項4の発明では、棒状本体部におけるねじ結合部分、端面ナットとの接触面が接着されており、より一層強度が増大するとともに、固着具本体が予め一体化され、固着作業の作業性が向上する。
【0023】
請求項5の発明は、頭部付きボルトの頭部と棒状本体部の端面との間に、シール部材を介在させるものであり、これにより、例えば、雨水が断熱パネルと固着具本体との間隙を通過して侵入するのを防止できる。シール部材は、ゴム製のワッシャのような平面状のものでも、Oリングのような円形断面形状のものでもよい。
【0024】
請求項6の発明は、車両の箱型荷台の壁面を構成する断熱パネルに、貨物緊縛のためのラッシングレールを固着する固着具として本発明の固着具を適用するものである。前述したように、箱型荷台の断熱パネルは大物物品であり、車両走行中の加減速等に伴う慣性力に基づきラッシングレールには大きな荷重が作用するので、本発明の固着具の好適な採用個所ということができる。
ここで、ラッシングレールに作用する荷重は、ラッシングレールの中間位置においては固着具の両側の部分で支持できるが、ラッシングレールの端部位置では固着具の片側で支持せざるを得ないため、ラッシングレール端部の断熱パネルは、より破壊され易い傾向にある。ラッシングレール端部の位置には、通常、箱型荷台のコーナー部に置かれた柱体(コーナーポスト)が存在するので、請求項7の発明においては、固着具本体を、断熱パネル及びラッシングレールとともに、柱体を貫通するように設置する。これによって、ラッシングレール端部に掛かる荷重が剛性の高い柱体でも支持されるようになり、断熱パネルの破損を確実に防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の固着具により断熱パネルにラッシングレールを固着した図である。
【図2】図1のB−B断面拡大図である。
【図3】本発明の固着具を単品で示す図である。
【図4】本発明の固着具により、厚さの小さい断熱パネルにラッシングレールを固着した図である。
【図5】断熱パネルに被固着物品を固着する従来の各種固着手段を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて本発明の固着具について説明する。図1、図2は、本発明の固着具を使用して、車両の箱型荷台の断熱パネルにラッシングレールを固着する実施例を示すものであり、この例の断熱パネルは、図5のものと同様に、発泡合成樹脂製の断熱材INの両側に、アルミニウム製の薄板からなる外板OPと内板IPとが積層されたサンドイッチ構造を有している。
図1は、車両の箱型荷台の右側壁をなす断熱パネルの、ラッシングレールLRが装着された後方端部付近を荷室内から見た図である。ラッシングレールLRは、緊縛用ベルト等を掛け止めするための開口部OGが等間隔に多数形成され、箱型荷台の前端部付近まで延びる長尺の、鋼製又はアルミニウム製部品である。取付図(A−A断面)に示すように、ラッシングレールLRの断面はハット形であり、ブラインドリベットBR等の固定具によって断熱パネルの内板IPに取り付けられる。ラッシングレールLRを接着して取り付けてもよく、また、補強用のバックアッププレートを介在させて取り付けてもよい。
【0027】
図1のB−B断面拡大図である図2に示されるとおり、断熱パネルの後方端部は、箱型荷台の後方のコーナーに設置された柱体であるコーナーポストCPに連結される。コーナーポストCPは、箱型荷台の後部を支えるとともに、観音開き式の後部ドア(図示せず)を支持する強度及び剛性の大きい柱状部材であって、断熱パネルの後方端部の外板OPが密着して連結される外板部分CPOを備えている。断熱パネルの内板IPとコーナーポストCPとの連結部は、薄板のカバーで覆われている。
【0028】
ラッシングレールLRの端部には、本発明の固着具1が設けられ、ラッシングレールLRを断熱パネルに固着している。固着具1の単品図である図3(a)に示されるとおり、固着具は、固着具本体2と金属製の締め付けナット3とを備えるものである。固着具本体2は、両端にねじ孔が形成された均一横断面の合成樹脂からなる棒状本体部21を有する(図3(b)参照)。棒状本体部21の一端のねじ孔には、棒状本体部21よりも拡大した頭部を有する金属製の頭部付きボルト22がねじ結合されるとともに、他端のねじ孔には、棒状本体部の他端より突出する金属製のねじ棒23が、植え込みボルトのように、ねじ結合によって植え込まれている。そして、ねじ棒23には、金属製の端面ナット24が棒状本体部21の端面に接触するようねじ結合されており、棒状本体部21、頭部付きボルト22、ねじ棒23及び端面ナット24により固着具本体2が構成される。
【0029】
この実施例では、棒状本体部21は、横断面形状が円形の丸棒であり、その材料に、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維強化材と、ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂等の合成樹脂との複合材である繊維強化プラスチック(FRP)が用いられる。頭部付きボルト22、ねじ棒23、端面ナット24及び締め付けナット3の材料としては、通常のボルト・ナットと同様な鋼材が使用される。繊維強化プラスチックの採用により、棒状本体部21が小径であっても十分な引張強度を確保でき、また、頭部付きボルト22とねじ棒23とが鋼材であってもその間の熱伝達が遮断される。
【0030】
ラッシングレールLRの端部を固着するには、図2に示すように、固着具本体2を、断熱パネルの断熱材IN、内板IP及び外板OPを貫通させ、さらに、コーナーポストCPの外板部分CPOを貫通させて設置し、締め付けナット3によって、ねじ棒23の先端部にラッシングレールLRを締め付ける。このとき、締め付けナット3とねじ棒23との接触面を介して伝達される締め付けトルクが、端面ナット24により棒状本体部21の端面全体にも作用し、ねじ棒23が結合されるねじ孔に掛かるトルクが減少する。また、棒状本体部21の端面に密着する端面ナット24は、端面を保護しながらねじ孔部分の変形も抑制するので、締め付けナット3の締め付けに起因する、合成樹脂製棒状本体部21のねじ孔の破損を防止することができる。
【0031】
固着具本体2は、断熱パネルとコーナーポストの外板部分CPOとを貫通してラッシングレールLRの端部を固定しており、ラッシングレールLRに作用する荷重Fが、断熱パネル全体とコーナーポストCPにより支持される。したがって、ラッシングレールLRに作用する荷重Fが大きなものであっても、十分強固な支持が可能であり、断熱パネルの変形や破壊が起こることはない。コーナーポストが存在しない位置に固着するときは、必要に応じて、補強用のバックアッププレートを介在させることができる。この実施例では、頭部付きボルト22の頭部と棒状本体部21の端面との間に、コーナーポストの外板部分CPOに密着するよう、シール部材であるゴム製の平坦なワッシャ4が配置してあり、雨水等が断熱パネルと固着具本体2との間隙を通過して侵入するのを防止している。ワッシャ4の代わりに、図5(d)に示されるような合成樹脂製キャップで頭部付きボルト22の頭部を覆い、シールを行うこともできる。
【0032】
図4は、本発明の固着具1を使用して、比較的厚さの小さい断熱パネルにラッシングレールを固着する実施例を示すものである。図4の実施例における固着具本体2は、図2の固着具本体と比べると、棒状本体部21の長さが短い点で相違するのみで、頭部付きボルト22、ねじ棒23等は、図2の固着具本体と同一のものが用いられている。つまり、本発明の固着具は、棒状本体部21の長さを調整することにより、厚さの異なる断熱パネルに対応させることが可能で、その他には共通の部品を使用できる。また、本発明の固着具では、棒状となった固着具本体2の先端のねじ棒23に、締め付けナット3により被固着物品を固定しており、固着方法がいわば通常のボルト・ナットによる固着方法と同等な形態となるため、固着作業が非常に容易である。
【0033】
以上詳述したように、本発明は、断熱パネルに被固着物品を固着する固着具であって、断熱性に優れた合成樹脂製の棒状本体部を有する固着具本体を断熱パネルに貫通させ、断熱パネルの破壊を防止しながら、簡単な作業で被固着物品を固着するものである。上記の実施例では、車両用箱型荷台の断熱パネルにラッシングレールを固着する場合について述べているが、本発明の固着具は、例えば、箱型荷台のドアの断熱パネルにヒンジ金具を固着するとき、冷蔵倉庫の断熱パネルに物品を固着するとき等に使用できる。また、固着具本体の棒状本体部の断面形状を多角形とするなど、実施例に対して各種の変形が可能であることは明らかである。
【符号の説明】
【0034】
1 固着具
2 固着具本体
21 棒状本体部(合成樹脂製)
22 頭部付きボルト(金属製)
23 ねじ棒(金属製)
24 端面ナット(金属製)
3 締め付けナット
4 ゴム製ワッシャ(シール部材)
IN 断熱材
IP 内板
OP 外板
CP コーナーポスト(柱体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固着具本体と金属製の締め付けナットとを備え、断熱材の配置された断熱パネルに被固着物品を固着する固着具であって、
前記固着具本体は、両端にねじ孔が形成された均一横断面の合成樹脂製の棒状本体部と、一端の前記ねじ孔にねじ結合され、前記棒状本体部よりも拡大した頭部を有する金属製の頭部付きボルトと、他端の前記ねじ孔にねじ結合され、前記棒状本体部の他端より突出する金属製のねじ棒とを備え、かつ、前記棒状本体部の端面に接触するよう前記ねじ棒にねじ結合される金属製の端面ナットを備えており、
前記固着具本体を、前記断熱パネル及び前記被固着物品を貫通するように設置し、前記締め付けナットを前記ねじ棒の先端部分にねじ結合して、前記被固着物品を前記断熱パネルに固着することを特徴とする固着具。
【請求項2】
前記断熱パネルは、発泡合成樹脂製の断熱材の両側に、金属製の薄板が積層されたサンドイッチ構造を有する請求項1に記載の固着具。
【請求項3】
前記固着具本体は、円形横断面の繊維強化合成樹脂製の前記棒状本体部を備える請求項1又は請求項2に記載の固着具。
【請求項4】
前記頭部付きボルト及び前記ねじ棒と、前記棒状本体部のねじ孔とのねじ結合部分が接着されるとともに、前記端面ナットと前記棒状本体部の端面との接触部分が接着される請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の固着具。
【請求項5】
前記頭部付きボルトの頭部と前記棒状本体部の端面との間には、シール部材が介在される請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の固着具。
【請求項6】
前記断熱パネルが、車両の箱型荷台の壁面を構成する断熱パネルであり、かつ、前記被固着物品が、貨物緊縛のためのラッシングレールである請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の固着具。
【請求項7】
前記断熱パネルの端部が、前記箱型荷台のコーナー部に置かれた柱体に取り付けられており、前記固着具本体が、前記断熱パネル、前記ラッシングレール及び前記柱体を貫通するように設置され、前記ラッシングレールの端部が前記締め付けナットにより前記断熱パネルに固着される請求項6に記載の固着具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−246026(P2011−246026A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122417(P2010−122417)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000229900)日本フルハーフ株式会社 (93)
【Fターム(参考)】