説明

断熱打ち抜き加工による高強度部品を製作するための方法

本発明は、車両座席のための調節デバイスの部品を製作するための方法に関し、そこではワークピースが第1の領域において第2の領域におけるよりも硬くなるように、および/またはワークピースが第3の領域において第4の領域におけるよりも大きな幾何学的サイズのものであるように、第1のステップにおいてワークピースが加工され、ツールが1m/sよりも大きな速度でワークピース上に動かされるようなやり方で、第2のステップにおいてワークピースが変形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両座席のための調節デバイスの部品を製作するための方法に関し。そこでは第1のステップにおいて、ワークピースが第1の領域において第2の領域におけるよりも硬くなるように、および/またはワークピースが第3の領域において第4の領域におけるよりも大きな幾何学的寸法を有するように、ワークピースが加工され、そこでは第2のステップにおいて、ツールが1m/sよりも大きな速度でワークピース上に動かされるようなやり方で、ワークピースが成形される。
【背景技術】
【0002】
部品を製作するための方法は周知である。更には、文献EP 1 516 717 A1、 WO2007/026091 A1およびWO2007/026090 A1が、断熱分離の原理を使った方法と装置を開示している。断熱分離の原理では、分離エッジにおける熱の発展と共に部品が打ち抜かれるように、ツールがワークピース上に高速で動かされる。既知の方法と装置での不利点は、高強度部品を製作するために、打ち抜き動作の後に、再作業、例えば部品の表面の硬化がなされる必要があることである。
【発明の概要】
【0003】
従って、本発明の目的は、従来の方法の不利点を有していない方法を提供することである。
【0004】
この目的は、車両座席のための調節デバイスの部品を製作するための方法が利用可能とされ、そこでは第1のステップにおいて、ワークピースが第1の領域において第2の領域におけるよりも硬くなるように、および/またはワークピースが第3の領域において第4の領域におけるよりも大きな幾何学的寸法を有するように、ワークピースが加工され、そこでは第2のステップにおいて、ツールが1m/sよりも大きな速度でワークピース上に動かされるようなやり方で、ワークピースが成形される、ことで達成される。発明によると、第1の方法ステップでは、
--局所的な硬化がなされることができる、または
--幾何学的寸法の局所的または領域的な変更が行われることができる、あるいは
--局所的な硬化と幾何学的寸法の局所的または領域的な変更の両方が行われることができる(例えば、第1の方法ステップの第1の部分ステップにおける局所的な硬化と、第1の方法ステップの第2の部分ステップにおける幾何学的寸法の局所的または領域的な変更)。
【0005】
結果として、第1と第2の領域のみ(もし第1の領域における局所的な硬化のみが行われるなら)が作り出されるか、または第3と第4の領域のみ(もし第3または第4の領域における幾何学的寸法の局所的または領域的な変更が行われるなら)が作り出されることが可能である。局所的な硬化と幾何学的寸法の局所的または領域的な変更の両方が行われることが、発明に従って好ましくは提供される。よって、(異なる硬度についての)第1と第2の領域と(幾何学的寸法についての)第3と第4の領域の両方が作成され、そこでは第1の領域が第3または第4の領域と重複することができ、そこでは第2の領域が第3または第4の領域と重複することができる。第1の領域は、好ましくはワークピース表面を硬化すること(局所的な硬化)によって作成される。第3の領域と第4の領域の両方は、好ましくは圧延方法によって作成され、圧延が好ましくはワークピースのより小さな材料の厚さを第3の領域よりも第4の領域において作成するようにする。
【0006】
幾何学的寸法は、例えば帯状材料の厚さのような、ワークピースのあらゆる測定可能な拡がりである。この発明の文脈における材料は、機械加工方法で処理されることができるあらゆる金属性材料である。この発明の文脈におけるツールは、ワークピースを機械加工するためのあらゆる手段である。この発明の文脈における成形は、動作前のワークピースの形状が動作後のワークピースの形状とは異なる、ワークピース上のあらゆる機械加工動作である。
【0007】
従来技術と比較して、発明による方法は、高速での成形の結果として、硬化のための複雑な再作業ステップが必要とされること無しに、例えば歯部のような部品の最適な形を達成することができ、同時に異なる硬度および/または厚さを有する部品の領域を実現することができる。結果として、製作コストを下げることができ、部品の重量が削減される。更には、機械加工中に潤滑剤の使用が必要ではないので、有利なことにはるかに単純な製作が可能であり、例えば部品からの潤滑剤の洗浄やばり取りのような再作業が必要ではない。ツールの高い衝突速度のせいで、材料は断熱状態に転換され、そこでは例えば歯部の形成または作成がなされる。この場合、金属ワークピースの原子集力が削減されるので、成形中に後者はより容易に流れることができる。従って、成形プロセスは実質的に非切断的なので、有利なことに非切断的製作は製造経費をかなり削減することができ、より良い材料利用が可能である。更には、エッジ領域の小さな変形のせいで比較的良好な材料利用を達成することが有利なことに可能である。更には、比較的良好な歯部の品質が達成されることが有利なことに可能である。加えて、歯部のミリングのような既知の方法と比較して非常に高い効率に結果としてなる。更には、発明による方法におけるツールの負荷は、押出加工または鍛造と比較して比較的低く、ツールとマシーンのかなりより長いサービス寿命に結果としてなる。
【0008】
好ましくは、ツールは成形サポートと成形パンチを有し、そこでは成形サポート上に置かれたワークピースに対する成形パンチの高い衝突速度で成形がなされる。成形パンチの衝突速度は、好ましくは3m/sより大きく、より好ましくは6m/sより大きく、更に好ましくは9m/sより大きい。
【0009】
更には、断熱成形プロセスの前の圧延および/または硬化のせいで、調節デバイスのための部品が簡単なやり方で製作可能となることが有利なことに可能であり、前記部品は、異なる硬度を有する領域および/または異なる厚さを有する領域を有している。硬化プロセスがもはや要求されないので、再作業はもはや必要ではない。好ましくは、ワークピースは帯状材料の形である。より好ましくは、帯状材料は板の形である。より好ましくは、帯状材料はロールから広げられる。発明による方法によって、大きな硬度と高い強度を要求する、例えばラッチ爪の歯部やギア扇形板を作成することが容易なやり方で可能である。好ましくは、発明による方法によって、取り付け部、ブロッキングカム、歯付きセグメント、ロッキングフック、またはピ二オンが製作可能となることが可能である。スタンピングの前のワークピースの硬化は、例えばレーザーによって行われ、それによって比較的僅かな材料歪曲が起こるようにワークピースが選択的に局所的に加熱される。好ましくは、ファイバーレーザーが使われる。結果として、製造プロセスが節約され、製作コストがかなり削減される。更に有利なことに、より少なく抑圧された領域がより薄いやり方で構成されることができ、その結果として材料が節約されることができるので、部品の重量が削減されることができ、部品当りの材料コストをかなり下げることができる。同時に、特定の領域における部品の要求された強度を、容易なやり方で作成することができる。更には、高いツール速度のせいで、発明による方法で、比較的厚いワークピースが打ち抜かれることもできることが有利なことに可能である。好ましくは、鋼材、より好ましくは高強度または超高強度の鋼材、更に好ましくは例えば高強度16MnCr5鋼のようなMnCr鋼合金、が材料として使われる。但し、あらゆるその他の鋼材が使われることもできる。好ましくは、ワークピースはより厚い領域において5mmの厚さと、より薄い領域において4mmの厚さを有し、そこでは薄いおよび厚い材料のあらゆるその他の組み合わせも実現されることができる。更には、有利なことに異なる材料性質を有する多数の可能な部品が実現されることができるように、異なる厚さを有する領域と異なる硬度を有する領域の両方を組み合わせることが可能である。好ましくは、部品は帯状のワークピースから押し抜かれ、そこでは異なる厚さと硬度の領域の好適な配置によって、材料帯の最適な利用で部品を製造することが可能であり、その結果として材料の浪費を削減することができる。好ましくは、1分当り30から200個のワークピース、より好ましくは1分当り50から160個のワークピース、更に好ましくは1分当り70から130個のワークピース、更にもっと好ましくは1分当り80から110個のワークピースのサイクル頻度で断熱成形がなされる。
【0010】
本発明の更なる主題は、部品が、硬化された歯部および/または硬化された軸受点を有する、上記の方法の1つによって製作された、車両座席のための調節デバイスの部品である。
【0011】
本発明の更なる主題は、装置が、ワークピースから部品をスタンピングするための高速プレスを有する、発明による方法を行うための装置である。好ましくは、ワークピース上へのツールの衝突速度は、1m/sよりも大きく、好ましくは3m/sより大きく、より好ましくは5m/sより大きく、更に好ましくは7m/sより大きく、更にもっと好ましくは9m/sより大きい。装置が、1分当り20から200回のスタンピング動作、より好ましくは1分当り50から160回のスタンピング動作、更に好ましくは1分当り70から130回のスタンピング動作、更にもっと好ましくは1分当り80から110回のスタンピング動作のために構成されていることがより好ましい。
【0012】
発明が、以下の図面によって説明される。これらの説明は、例としてのものに過ぎず、発明の全体的な概念を限定はしない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、ロック状態にある発明によるラッチ爪を有するブロッキングおよび傾斜調節デバイスを概略的に示す。
【図2】図2は、アンロック状態にある発明によるラッチ爪を有するブロッキングおよび傾斜調節デバイスを概略的に示す。
【図3】図3は、発明によるラッチ爪を有するブロッキングおよび傾斜調節デバイスによって制御される座席を概略的に示す。
【図4】図4は、発明による方法の実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、ロック状態にある発明によるラッチ爪を有するブロッキングおよび傾斜調節デバイスを概略的に示す。取り付け具1は、回転軸4の周りをお互いに対して回転可能な第1の取り付け部2と第2の取り付け部3からなる。第2の取り付け部3が、例えば座席部上に配置され、取り付け部2が車両座席の背もたれ上に配置されるかその逆である。ロックは、ラッチ爪5の接合歯部15の第2の取り付け部3の歯部6中への係合によって行われる。ラッチ爪5は、軸7の周りを回転可能となるべく取り付け部2上に配置され、ブロッキングカム8によって歯部6中できつく締められてこの位置にしっかり留められる。ラッチ爪5の周囲に対して重みをかけるブロッキングカム8は、回転軸9の周りを取り付け部2に対して回転し、部分的円周歯部10を介してピ二オン11と係合しており、前記ピ二オン11はラッチ爪5の方向に向けられた突起13を有し、よって後者についてのブロッキングエレメント(補助カム14)としての役目を同時に果たす。補助カム14の回転軸12は、回転軸7の反対側であるラッチ爪5の端部の方向に特定に、ブロッキングカム8の回転軸9から距離を置いて配置される。回転軸12はよって、回転軸7から見た時、回転軸4と9を繋いでいる直線Gのもう一方側に位置している。例示的実施形態では、補助カム14は、ラッチ爪5の周囲に直接は位置しておらず、後者に対して小さなギャップを有する。但し、補助カム14がラッチ爪5に対して重みをかけることを許容し、ブロッキングカム8にギャップを設けることも考えうるであろう。ブロッキングカム8は時計回り方向に回転するべく予め応力がかけられ、補助カム14は反時計回り方向に回転するべく予め応力がかけられている。ブロッキングカム8と補助カム14は、ブロッキングカム8上に働き、その力が歯部10を介して補助カム14上へも伝達される(描かれていない)ばねを介して予め応力がかけられている。
【0015】
事故によって引き起こされたラッチ爪5の歯の変形の際には、補助カム14とブロッキングカム8が両方共ラッチ爪5の周囲に対してつっかかって、それが開くことを防ぐ。プロセス中に、デザインによって以前設けられていたギャップは閉じられる。補助カム14のラッチ爪5との接触点は、この場合には、取り付け具1の前方方向への負荷(矢印A)の際に歯部6とラッチ爪5の間の歯係合がかなりの程度促進されるように選択される。
【0016】
図2は、その予め応力をかけられている方向に抗するブロッキングカム8の以前知られていた回転によって傾斜位置を設定するための、取り付け具1の計画的な開きを概略的に示す。補助カム14上に配置されているのは(描かれていない)ハンドルであり、それによって前記補助カム14が時計回り方向に回転される。プロセス中に、その突起13がラッチ爪5から離れるように回転され、回転運動がブロッキングカム8に移転されるので、後者は反時計回り方向に同様にラッチ爪5から離れるように回転される。但し、ハンドルは、ブロッキングカム8上に配置されることもできる。
【0017】
図3は、発明によるラッチ爪5を有するブロッキングおよび傾斜調節デバイス305によって操作される座席300を概略的に示す。背もたれ部304は、ブロッキングおよび傾斜調節デバイス305を介して車両の本体302に接続されている。好ましくは、座席300は、本体302上に配置された2つのレールに沿って調節可能である。好ましくは、背もたれ部304の傾斜を座席部303に対して変えることができるように、座席部303と背もたれ部304がブロッキングおよび傾斜調節デバイス305を介してお互いに接続されることが可能である。
【0018】
図4は、発明による方法の実施形態を概略的に示す。まず最初に、領域401(領域は破線によって示されている)において領域402および403よりも小さな材料厚さがあるように、ワークピース400が圧延される。結果として、材料は節約されることができ、部品の重量が削減される。次に、ワークピースは、領域402および403中にそれぞれある領域404および405において、例えばファイバーレーザーによる局所的加熱によって、硬化される。次に、ワークピースは、部品の負の形にある(細線によって描かれた)2つの凹み406を有するツールの下方部分上に置かれる。これらの凹み406は、ワークピース400が最も可能な程度に利用され、できる限り少ない切れ端が作成されるように配置される。次に、部品の形状を有する(ここには描かれていない)2つの成形パンチが、ワークピースの下方部分上に全速で動かされる。結果として、発明による2つの部品がワークピース400から打ち抜かれる。その後の硬化はもはや必要ではない。
【符号の説明】
【0019】
1 取り付け具
2、3 取り付け部
4 (取り付け部2、3の間の)回転軸
5 ラッチ部材、ラッチ爪
6 (取り付け部3の)歯部
7 (ラッチ爪5の)回転軸
8 ブロッキングカム
9 (ブロッキングカム8の)回転軸
10 (ブロッキングカム8の)歯部
11 ピニオン
12 (ピニオン11の)回転軸
13 突起
14 ブロッキングカム、補助カム
15 ラッチ爪の歯部
300 座席
302 本体
303 座席部
304 背もたれ部
305 ブロッキングおよび傾斜調節デバイス
400 ワークピース
401、402、403、404、405 ワークピースの領域
406 凹み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のステップにおいて、ワークピースが第1の領域において第2の領域におけるよりも硬くなるように、および/またはワークピースが第3の領域において第4の領域におけるよりも大きな幾何学的寸法を有するように、ワークピースが加工され、第2のステップにおいて、ツールが1m/sよりも大きな速度でワークピース上に動かされるようなやり方で、ワークピースが成形されることを特徴とする、車両座席のための調節デバイスの部品を製作するための方法。
【請求項2】
ツールが、3m/sよりも大きな、好ましくは5m/sよりも大きな、より好ましくは7m/sよりも大きな、更に好ましくは9m/sよりも大きな速度でワークピース上に動かされることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ワークピースが、板または広げられた帯状材料の形で存在していることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ワークピースが、鋼材からなることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
第1のステップにおいてまずワークピースが圧延され、圧延の後でワークピースの第1の領域が硬化されることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
第2のステップにおいてワークピースが高速プレスでスタンピングされることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
部品が、硬化された歯部および/または硬化された軸受点を第1の領域中に有することを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の方法によって製作された、車両座席のための調節デバイスの部品。
【請求項8】
装置が、ワークピースから部品をスタンピングするための高速プレスを有することを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の方法を行うための装置。
【請求項9】
ワークピース上のツールの衝突速度が、1m/sよりも大きい、好ましくは3m/sより大きい、より好ましくは5m/sより大きい、更に好ましくは7m/sより大きい、更にもっと好ましくは9m/sより大きいことを特徴とする、請求項8記載の装置。
【請求項10】
装置が、1分当り30から200回のスタンピング動作のために構成されていることを特徴とする、請求項8または9記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2013−519556(P2013−519556A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552304(P2012−552304)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000575
【国際公開番号】WO2011/098250
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(502156098)ジョンソン・コントロールズ・ゲー・エム・ベー・ハー (142)
【Fターム(参考)】