説明

新規なオキシドリダクターゼおよびその使用

本発明は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)から単離された新規なオキシドリダクターゼをコードする遺伝子を含む、新たに同定されたポリヌクレオチド配列に関する。本発明は、新規な遺伝子のフルレングスのヌクレオチド配列、新規なオキシドリダクターゼのフルレングスのコーディング配列を含むcDNA配列、並びに、フルレングスの機能性タンパク質およびその機能的等価物のアミノ酸配列を特徴とする。本発明は、また、ベーキングおよび乳製品用途におけるこれらの酵素の使用方法に関する。また、本発明には、本発明のポリヌクレオチドでトランスフォームされた細胞、並びに、本発明のオキシドリダクターゼがその活性および/または発現レベルが増加または減少するよう遺伝子的に修飾される細胞も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)から単離された新規なオキシドリダクターゼをコードする遺伝子を含む、新規に同定されたポリヌクレオチド配列に関する。本発明は、新規な遺伝子のフルレングスのヌクレオチド配列、新規なオキシドリダクターゼのフルレングスのコード配列を含むcDNA配列、さらには、フルレングスの機能性タンパク質およびその機能的等価物のアミノ酸配列を特徴とする。本発明は、また、ベーキングおよび乳製品用途におけるこれらの酵素の使用方法に関する。本発明には、また、本発明のポリヌクレオチドで形質転換された細胞、並びに、本発明のオキシドリダクターゼの活性および/または発現レベルを増大または低下させるために遺伝子的に修飾される細胞も含まれる。
【0002】
[発明の背景]
オキシドリダクターゼは、本明細書中では、酸化還元反応を触媒する酵素と定義される。オキシドリダクターゼとして知られる酵素の群(EC 1.#.#.#、ここで#は数字である)は、酵素の命名法および分類に関する国際生化学連合の命名委員会(Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry on the Nomenclature and Classification of Enzymes)(エンザイム・ノーメンクレーチャー(Enzyme Nomenclature)、アカデミック・プレス(Academic Press)、ニューヨーク(New York)、1992)により、酸化還元反応を触媒する全ての酵素と定義されている。酸化される基質は、水素または電子供与体と見なされる。コードの第2の数字は、酸化を受ける水素供与体の群を示す。第3の数字は、関係する受容体のタイプを示し、3は酸素が受容体であることを意味する。酸化される基質は水素供与体と見なされる。
【0003】
オキシドリダクターゼの例:
・ラッカーゼ(EC 1.10.3.2)は、o−およびp−キノールの酸化を触媒し、しばしば、アミノフェノールおよびフェニレンジアミンにも作用する。
・グルコースオキシダーゼ(EC 1.1.3.4−GOX)は、グルコースおよび他の数種の糖類の酸化を触媒する。
・ヘキソースオキシダーゼ(EC 1.1.3.5)はGOXと同じ反応、すなわち、グルコース、並びに、ガラクトース、マンノース、マルトース、ラクトースおよびセロビオースなどの他の数種の糖類の酸化を触媒する。
・コレステロールオキシダーゼ(EC 1.1.3.6)は、コレステロールの酸化還元反応を触媒する。
・コリンデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.99.1)は、コリンの酸化還元反応を触媒する。
・グルコースデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.99.10)は、グルコースの酸化還元反応を触媒する。
・アルコールオキシダーゼ(EC 1.1.3.13)は、第一アルコールの酸化反応を触媒する。
・第二アルコールオキシダーゼ(EC 1.1.3.18)は、第二アルコールの酸化反応を触媒する。
・D−アスパラギン酸オキシダーゼ(D−aspartate oxidase)(EC 1.4.3.1)は、アスパラギン酸塩の酸化還元反応を触媒し、アスパラギン酸オキシダーゼ(aspartic oxidase)としても知られる。
・プトレッシンオキシダーゼ(EC 1.4.3.10)は、プトレッシンの4−アミノブタナール(縮合して1−ピロリンとなる)への酸化還元反応を触媒する。
・アミンオキシダーゼ(EC 1.4.3.4)は、アミン、主として第一アミン、および、通常は数種の第二および第三アミンの酸化還元反応を触媒する。
・サルコシンオキシダーゼ(EC 1.5.3.1)は、サルコシンの酸化還元反応を触媒する。
・ポリアミンオキシダーゼ(EC 1.5.3.11)は、N−アセチルスペルミンの酸化還元反応を触媒する。
・(R)−6−ヒドロキシニコチンオキシダーゼ(EC 1.5.3.6)は、(R)−6−ヒドロキシニコチンの酸化還元反応を触媒する。
・レチクリンオキシダーゼ(EC 1.5.3.9)は、(S)−レチクリンの酸化還元反応を触媒し、ベルベリン架橋酵素としても知られる。
・カテコールオキシダーゼ(EC 1.10.3.1)は、カテコールおよび多くの置換カテコールの酸化還元反応を触媒する。
・酸化チオレドキシンの還元を触媒するチオレドキシンリダクターゼ(EC 1.6.4.5)。
・硫化水素の還元を触媒する亜硫酸リダクターゼ(EC 1.8.1.2)。
・安定なC−Cl結合を生成する有機分子の塩素化を引き起こし、BrおよびIにも作用することができる塩化物ペルオキシダーゼ(EC 1.11.1.10)。
・例えばエタノールのようないくつかの有機物質の酸化還元反応を引き起こすカタラーゼ(EC1.11.1.6)。
・オキシドリダクターゼの他の例としては、蛍ルシフェラーゼ(EC 1.13.12.7)、桂皮酸4−ヒドロキシラーゼ(EC 1.14.13.11)、安息香酸4−モノオキシゲナーゼ(EC 1.14.13.12)、コレステロール7α−モノオキシゲナーゼ(EC 1.14.13.17)、ペンタクロロフェノールモノオキシゲナーゼ(EC 1.14.13.50)、モノオキシゲナーゼ(EC 1.14.14.1)、ステロイド11β−モノオキシゲナーゼ(EC 1.14.15.4)、モノフェノールモノオキシゲナーゼ(EC 1.14.18.1)、プロスタグランディンシンターゼ(EC 1.14.99.1)およびサリチル酸ヒドロキシラーゼ(EC 1.14.13.1)が挙げられる。
【0004】
上に挙げた例は、決して本発明を制限または限定することを意味するものではない。
【0005】
オキシドリダクターゼは、微生物中で好適に生産される。微生物オキシドリダクターゼは、各種のソースから入手することができる;バチルス(Bacillus)属は細菌酵素の一般的なソースであり、菌体酵素は、一般に、Aspergillus種により生産される。
【0006】
オキシドリダクターゼ活性を有する微生物酵素は、ペニシリウム(Penicillium)、タラロマイス(Talaromyce)、クラドスポリウム(Cladosporum)(国際公開第95/29996号パンフレット)、トラメテス・ヒルスタ(Trametes hirsuta)(国際公開第97/22257号パンフレット)など、各種ソースからのものが報告されている。微生物オキシドリダクターゼ遺伝子は、フザリウム(Fusarium)(EP 1157117 A1)、コリオラス・ベルシカラー(Coriolus versicolor)(DE 195 45 780 A1)、トラメテス(Trametes)(米国特許第6146865号明細書)、トリコデルマ(Trichoderma)(米国特許第6248575号明細書)、およびミクロドキウム・ニバレ(Microdochium nivale)(国際公開第99/31990号パンフレット)など、各種ソースから、クローニングされている。
【0007】
オキシドリダクターゼは、化学的酸化剤を使用することも可能な全ての適用分野で使用することができる。そのような化学的酸化剤は、通常、ヨウ素酸塩、過酸化物、アスコルビン酸、臭素酸カリウムおよびアゾジカルボンアミドなどの非特異的な酸化剤である。しかしながら、現在入手可能な化学酸化剤には、特に食品の用途領域において、その使用に消費者が抵抗を示したり、あるいは、規制当局からその使用が許可されていないものがある。
【0008】
オキシドリダクターゼの使用は、化学酸化剤の代替と考えられている。
【0009】
オキシドリダクターゼは、食品の製造や洗剤など、様々な工業的用途で使用することができる。
【0010】
上記のオキシドリダクターゼ酵素の工業的用途はほんの一例であって、この列記は限定を意味するものではない。
【0011】
オキシドリダクターゼを好適に使用することができる食品製造の一例としては、例えば、パン生地またはベーキング製品の品質を向上させるためのベーキング用途の分野における使用が挙げられる。
【0012】
例えば米国特許第2,783,150号明細書には、パン生地の強さ、並びに、焼き上げたパンの質感および外観を向上させるために、小麦粉にGOXを使用することが記載されている。EP0338452には、グルコースオキシダーゼを、ヘミセルロースおよび/またはセルロース分解酵素と組み合わせて使用することが記載されている。国際公開第02/30207号パンフレットには、GOXの効果を高めるために、GOXをタンパク質ジスルフィドイソメラーゼと組み合わせてベーキングで使用することが記載されている。国際公開第96/39851号パンフレットには、紅藻コンドラス・クリスパス(Chondrus crispus)のヘキソースオキシダーゼをベーキング用途に使用することが記載されている。国際公開第98/44804号パンフレットには、パン生地のレオロジー特性を改善するために、グリセロールオキシダーゼを使用することが記載されている。
【0013】
オキシドリダクターゼを使用することができる他の食品としては、乳製品が挙げられる。例えば、国際公開第02/39828号パンフレットには、ピザの製造過程でピザチーズのメイラード反応を低減するために、ヘキソースオキシダーゼを使用することが記載されており、国際公開第99/31990号パンフレットには、ミルク中で最も豊富な糖であるラクトースからラクトビオン酸を製造するために、炭水化物オキシダーゼを使用することが記載されている。
【0014】
現在のところ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のグルコースオキシダーゼが、上記用途で工業的に使用される唯一の酵素である。他のオキシドリダクターゼが有する問題は、未だコスト効率の良い方法で製造できないこと、および/または、特性が意図する使用に対して最適でないことである。したがって、特定の用途のために、例えば有効性、基質の特異性および/または親和性、所要の温度範囲およびpH範囲における安定性および活性などを考慮して、オキシドリダクターゼを改良しようとする欲求が今もなお存在している。
【0015】
より具体的にいえば、ベーキング用途に関し、今日ベーキングに使用されているオキシドリダクターゼ(殆どがアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のグルコースオキシダーゼ)は、例えば臭素酸カリウムが示す性能はない。臭素酸カリウムは化学酸化剤であり、特に長時間のベーキング処理に対しては、技術的に優れた酸化剤であると考えられる。臭素酸塩の禁止によって、パン製造業者は、今日も未だ埋められない性能のギャップを抱いている。別の例としては、良好な白いクラムを得るために、酵素によりクラムを漂白することが挙げられる。長年、リポキシゲナーゼを含有する、酵素活性を有する大豆粉がこの目的のために使用されてきた。遺伝子修飾を行った大豆の品種が市場に導入されたが、ベーキングにそのような大豆粉を使用することに、世界中の消費者が反対した。代替として他の豆およびエンドウ豆の粉を使用することができるが、大豆粉ほどの効果が得られない。したがって、クラムを漂白する用途においても、この問題を酵素を使用して解決するという大きな必要性が今もなお存在している。
【0016】
より具体的にいえば、乳製品の用途では、熱処理過程におけるプロセスパラメータにわずかな変更また外れがあると、メイラード反応が進み、その結果、着色が進む。このような着色は望ましくなく、したがって、温度およびプロセスを厳密に制御する以外の仕方で、この褐色化過程を制御して、殺菌プロセスをより強化する必要性が存在する。
【0017】
チーズの熱処理においてもまた、チーズの褐色化、例えばピザ上のそれは、望ましくない。国際公開第02/39828号パンフレットには、褐色化を減じるための試みがいくつか要約されているが、それらは、通常、チーズの製造過程を非常に厳密に制御または変更しようとするものである。これらの解決法の欠点は、操作が難しいこと、および/または、コストの上昇もしくは収率の低下を招くことである。
【0018】
本発明は、上記問題の全てではないまでも、少なくとも1つには対処するものである。
【0019】
[本発明の目的]
本発明の目的は、特性の向上した新規なオキシドリダクターゼをコードする新規なポリヌクレオチドを提供することにある。他の目的は、天然および遺伝子組換えで産生されたオキシドリダクターゼ、およびそれらを産生する組換え菌株を提供することにある。本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの製造方法および使用方法もまた本発明の目的である。
【0020】
上記問題の少なくとも1つを解決する新規なオキシドリダクターゼを提供すること、または、乳製品および/もしくはベーキング用途での使用に際して、1つ以上の改善された特性を有するオキシドリダクターゼを提供することもまた本発明の目的である。
【0021】
乳製品の改善特性は、メイラード反応による褐色化の低減、抗微生物性の改善、およびタンパク質架橋の改善からなる群より選択される。
【0022】
パンの生地および/またはベーキング製品の改善特性は、パン生地の強度の増大、パン生地の弾性の増大、パン生地の安定性の増大、パン生地の粘性の低下、プルーフィングトレランスの改善、パン生地の伸びの改善、パン生地の耐機械性の改善、ベーキング製品の体積の増大、ベーキング製品のパン状構造の改善、ベーキング製品の柔らかさの改善、ベーキング製品の風味の改善、ベーキング製品の硬化防止性の改善、ベーキング製品の着色の改善、ベーキング製品の皮の改善、または広範な基質特異性からなる群より選択される。
【0023】
[発明の詳細な説明]
[ポリヌクレオチド]
本発明は、新規なオキシドリダクターゼ酵素、特に、上記のような活性を有する酵素、好ましくは、イソアミルアルコールオキシダーゼ活性、炭水化物オキシダーゼ、ラッカーゼ、グルコースオキシダーゼまたはヘキソースオキシダーゼ活性を有する酵素をコードする新規なポリヌクレオチドを提供する。
【0024】
本発明は、OXI 01、OXI 02、OXI 03、OXI 04、OXI 05、OXI 06(以下、OXI 01〜OXI 06と記す)と仮称され、それぞれ、配列番号013、配列番号014、配列番号015、配列番号016、配列番号017、配列番号018(以下、「配列番号013〜018」と記す)に示すアミノ酸配列を有するオキシドリダクターゼ、または、これらの機能的等価物をコードする6個の新規なポリヌクレオチドを提供する。配列番号013〜018をコードする遺伝子配列を、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)から得られた遺伝子クローンの配列を調べ、決定した。
【0025】
驚くべきことに、本発明のOXI 01〜OXI 06ポリペプチドを、パン生地の製造過程で使用すると、パン生地の強度が改善されることが判った。
【0026】
本発明は、OXI 01〜OXI 06オキシドリダクターゼをコードする遺伝子(それぞれ、配列番号001、配列番号002、配列番号003、配列番号004、配列番号005、配列番号006を含む。以下、「配列番号001〜006」と記す)、および、その完全なcDNA配列(それぞれ、配列番号007、配列番号008、配列番号009、配列番号010、配列番号011、配列番号012であり、以下、配列番号007〜012と記す)を含むポリヌクレオチド配列を提供する。
【0027】
したがって、本発明は、配列番号001〜006または配列番号007〜012のヌクレオチド配列、あるいは、それらの機能的等価物を含む単離ポリヌクレオチドに関する。
【0028】
本発明は、特に、ストリンジェンシー条件下で、好ましくは高ストリンジェンシー条件下で、配列番号001〜006または配列番号007〜012のポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な単離ポリヌクレオチドに関する。このようなポリヌクレオチドは、糸状菌、特にアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)から得ることが有利である。より具体的には、本発明は、配列番号001〜006または配列番号007〜012のヌクレオチド配列を有する単離ポリヌクレオチドに関する。
【0029】
本発明は、また、それぞれ配列番号013〜018に示すポリペプチド、または、それらの機能的等価物の、少なくとも1つの機能性ドメインをコードする単離ポリヌクレオチドに関する。
【0030】
誤解を避けるためにいうならば、OXI 01は、核酸配列の配列番号001および配列番号007、アミノ酸配列の配列番号013、並びに、これらのホモログ機能的等価物に対応し、OXI 02は、配列番号002、配列番号008および配列番号014、並びに、これらのホモログ機能的等価物に対応するなど、以下同様であり、そして、OXI 06は、配列番号006、配列番号012および配列番号018、並びに、これらのホモログ機能的等価物に対応する。
【0031】
用語「遺伝子」および「組換え遺伝子」は、本明細書中で使用する場合、染色体DNAから単離される核酸分子をいい、それには、タンパク質、例えばA.ニガー(A.niger)オキシドリダクターゼをコードするオープンリーディングフレームが含まれる。遺伝子には、コーディング配列、非コーディング配列、イントロンおよび調節配列が含まれる。さらに、遺伝子は、本明細書中で定義する場合、単離された核酸分子をいう。
【0032】
配列番号001〜006または配列番号007〜012のヌクレオチド配列を有する核酸分子、あるいはその機能的等価物などの、本発明の核酸分子は、標準の分子生物学的技術、および、本明細書で提供される配列情報を使用して単離することができる。例えば、核酸配列の配列番号001〜006または配列番号007〜012の全部または一部をハイブリダイゼーションのプローブとして使用し、標準のハイブリダイゼーションおよびクローニング技術(例えば、サムブルック・ジェイ(Sambrook,J.)、フリッツ・イー・エフ(Fritsh,E.F.)およびマニアティス・ティー(Maniatis,T.)、モリキュラー・クローニング(Molecular Cloning):ア・ラボラトリー・マニュアル(A Laboratory Manual)、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク州(NY)、1989に記載)により、本発明の核酸分子を単離することができる。
【0033】
さらに、配列番号001〜006または配列番号007〜012の全部または一部を含む核酸分子は、配列番号001〜006または配列番号007〜012に含まれる配列情報を基に設計された合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって単離することができる。
【0034】
本発明の核酸は、cDNA、mDNAあるいはゲノムDNAをテンプレートとして使用し、かつ、適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、標準PCR増幅技術により増幅させることができる。そのようにして増幅された核酸を、適当なベクターにクローニングし、DNA配列解析を行うことによって、その特性が明らかとなる。
【0035】
さらに、本発明のヌクレオチド配列に対応する、または、ハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドは、標準の合成技術、例えば、自動DNA合成装置を使用することにより調製することができる。
【0036】
好ましい一実施態様では、単離される本発明の核酸分子は、配列番号007〜012で示されるヌクレオチド配列を含む。配列番号007〜012の配列は、A.ニガー(A.niger)OXI 01〜OXI 06 cDNAのコーディング領域に対応する。このcDNAは、配列番号013〜018の、A.ニガー(A.niger)OXI 01〜OXI 06ポリペプチドをコードする配列を含む。
【0037】
他の好ましい一実施態様では、単離される本発明の核酸分子は、配列番号001〜006または配列番号007〜012で示されるヌクレオチド配列、あるいはこれらのヌクレオチド配列の機能的等価物の相補体である核酸分子を含む。
【0038】
他のヌクレオチド配列と相補的な核酸分子は、他のヌクレオチド配列と十分に相補的であるため、他のヌクレオチド配列にハイブリダイズし、それによって安定な二本鎖を形成することができるものである。
【0039】
1つの観点では、本発明は、本発明のポリペプチド、または、その機能的等価物をコードする単離核酸分子(生物学的に活性なフラグメントまたはドメインなど)、さらには、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子を同定するために、ハイブリダイゼーションプローブとして十分使用することができる核酸分子、および、そのような核酸分子のフラグメントであって、核酸分子の増幅または変異にPCRプライマーとして使用することに適したものに関する。
【0040】
「単離ポリヌクレオチド」または「単離核酸」は、両方のコーディング配列に隣接しないDNAまたはRNAであり、それが得られた生物の自然に生成したゲノム中で、それは隣接している(5’末端のものと、3’末端のもの)。したがって、一実施態様では、単離核酸は、コーディング配列に隣接する5’非コーディング(例えば、プロモータ)の配列の一部または全部を含む。したがって、この用語は、例えば、ベクター、自己複製プラスミドもしくはウイルス、または、原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれる、あるいは、他の配列から独立した別の分子(例えば、PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理により製造されるcDNA、またはゲノムDNAフラグメント)として存在する組換えDNAを含む。それは、また、細胞物質、ウイルス物質、または培地(組換えDNA技術で生産する場合)、あるいは、化学前駆体または他の化学物質(化学的に合成する場合)を実質的に含まない、さらなるポリペプチドをコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAを含む。さらに「単離核酸フラグメント」は、フラグメントとして天然には生じず、かつ自然の状態では見いだされない核酸フラグメントである。
【0041】
用語「ポリヌクレオチド」または「核酸分子」は、本明細書中で使用する場合、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)、並びに、ヌクレオチド類似物から作られるDNAまたはRNA類似物を含むことを意図している。核酸分子は一本鎖であってもよいし、二本鎖であってもよいが、二本鎖DNAであることが好ましい。核酸は、オリゴヌクレオチド類似物または誘導体(例えば、イノシンまたはホスホロチオエートヌクレオチド)を使用して合成してもよい。そのようなオリゴヌクレオチドは、例えば、塩基対形成能力が変更されているか、または、ヌクレアーゼ耐性が向上した核酸を調製するために使用することができる。
【0042】
本発明の別の実施態様では、OXI 01〜OXI 06核酸分子にアンチセンスの単離核酸分子、例えば、OXI 01〜OXI 06核酸分子のコード鎖を提供する。本明細書で記載された核酸分子の相補鎖もまた本発明の範囲に含まれる。
【0043】
[配列決定のエラー]
本明細書で提供する配列情報は、間違って同定した塩基の含有を要求するような狭い解釈がなされるべきではない。本明細書で開示する特定の配列は、さらなる配列解析に容易に供される糸状菌、特に、A.ニガー(A.niger)から完全な遺伝子を単離するのに容易に使用することができ、それにより、配列決定のエラーを同定することができる。
【0044】
特に明記されていない限り、本明細書でDNA分子の配列決定により決定された全ヌクレオチド配列は、自動DNAシーケンサーを使用して決定されたものであり、本明細書で決定されたDNA分子によりコードされるポリペプチドの全アミノ酸配列は、上記のように決定されたDNA配列の翻訳によって推定されたものである。したがって、当該技術分野で知られているように、この自動化アプローチにより決定されたDNA配列では、本明細書で決定されたヌクレオチド配列にはエラーが含まれることがある。自動化で決定されたヌクレオチド配列は、配列決定したDNA分子の実際のヌクレオチド配列と、典型的には、少なくとも約90%、より典型的には、少なくとも約95%から少なくとも約99.9%一致している。実際の配列は、当該技術分野でよく知られた手動によるDNA配列決定法などの他のアプローチによって、より正確に決定することができる。また当該技術分野で知られているように、実際の配列と比較して、決定されたヌクレオチド配列に1つの挿入または削除を行うと、ヌクレオチド配列の翻訳に際してフレームシフトが起こり、決定されたヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸の推定配列は、配列決定したDNA分子によって実際にコードされるアミノ酸配列とは、そのような挿入または削除点を起点として、完全に異なったものとなる。
【0045】
当業者であれば、そのように間違って同定された塩基を同定することができ、そのようなエラーの修正の仕方を知っている。
【0046】
[核酸フラグメント、プローブおよびプライマー]
本発明の核酸分子は、配列番号001〜006または配列番号007〜012で示される核酸配列の一部またはフラグメント、例えば、プローブもしくはプライマーとして使用することができるフラグメント、または、OXI 01〜OXI 06タンパク質の一部をコードするフラグメントのみを含んでいてもよい。OXI 01〜OXI 06遺伝子およびcDNAのクローニングから決定されたヌクレオチド配列により、他のOXI 01〜OXI 06ファミリーメンバー同様、他の種由来のOXI 01〜OXI 06ホモログを同定および/またはクローニングする際に使用するように設計されたプローブおよびプライマーを生成することができる。プローブ/プライマーは、好ましくは高ストリンジェンシー条件下で、少なくとも約12または15、好ましくは約18または20、好ましくは約22または25、より好ましくは約30、35、40、45、50、55、60、65または75以上の連続する、配列番号001〜006または配列番号007〜012で示されるヌクレオチド配列、またはその機能的等価物のヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド配列領域を通常含む、十分に精製されたオリゴヌクレオチドを、通常含む。
【0047】
OXI 01〜OXI 06ヌクレオチド配列をベースとするプローブは、例えば他の生物における、同一もしくは相同のタンパク質をコードする転写物またはOXI 01〜OXI 06のゲノム配列を検出するために使用することができる。好ましい実施態様では、プローブは、それに結合されたラベル基をさらに含む。ラベル基としては、例えば放射性同位元素、蛍光化合物、酵素または酵素補助因子が挙げられる。そのようなプローブは、また、OXI 01〜OXI 06タンパク質を発現する細胞を同定するための診断テストキットの一部として使用することができる。
【0048】
[同一性および相同性]
用語「相同性」または「パーセント同一性」は、本明細書中では同じ意味で使用される。本発明の目的のために、本明細書中では、2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するために、最適比較を目的として配列を配置するものと定める(例えば、第2のアミノ酸または核酸配列と最適配置をとるために、第1のアミノ酸または核酸配列にギャップを導入することができる)。それから、対応するアミノ酸の位置またはヌクレオチドの位置で、アミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列内の位置が、第2の配列の対応する位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドと同じもので占められているならば、その分子はその位置で同一である。2つの配列のパーセント同一性は、両配列で共有する同一位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一位置の数/位置の総数(すなわち、オーバーラップする位置)×100)。2つの配列が同じ長さであることが好ましい。
【0049】
熟練者であれば、2つの配列間の相同性を決定するために、いくつかの異なるコンピュータプログラムを入手できることを知っているであろう。例えば、配列を比較し、2つの配列のパーセント同一性を決定するには、数学アルゴリズムを使用して行うことができる。好ましい実施態様では、2つのアミノ酸配列のパーセント同一性が、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラム(http://www.gcg.comで入手可能)に組み込まれているニードルマン(Needleman)およびブンシュ(Wunsch)(ジャーナル・オブ・モリキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)(48):444−453(1970))のアルゴリズムを使用し、Blossom62マトリックスまたはPAM250マトリックス、並びに、ギャップ重量16、14、12、10、8、6または4および長さ重量1、2、3、4、5または6を使用して決定される。熟練者であれば、これら全ての異なるパラメータにより若干異なる結果が得られるものの、異なるアルゴリズムを使用したときの2つの配列の全体的なパーセント同一性は、あまり大きくは変わらないことを認識しているであろう。
【0050】
さらに別の実施態様では、2つのヌクレオチド配列のパーセント同一性が、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comより入手可能)のGAPプログラムにより、NWSgapdna.CMPマトリックス、並びに、ギャップ重量40、50、60、70または80および長さ重量1、2、3、4、5または6を使用して決定される。別の実施態様では、2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列のパーセント同一性が、ALIGNプログラム(バージョン2.0)(http://vega.igh.cnrs.fr/bin/align−guess.cgiより入手可能)に組み込まれた、イー・メイヤーズ(E.Meyers)およびダブリュー・ミラー(W.Miller)、(CABIOS、4:11−17(1989)のアルゴリズムにより、PAM120ウェイト残基テーブル、ギャップ長ペナルティ12、ギャップペナルティ4を使用して決定される。
【0051】
本発明の核酸およびタンパク質配列は、さらに、例えば他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定するために、公共のデータベースで検索を実施する際に、「検索配列」として使用することができる。そのような検索は、アルトシュール(Altschul)ら(1990)ジャーナル・オブ・モリキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol)215:403−10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて行いことができる。本発明のOXI 01〜OXI 06核酸分子に相同のヌクレオチド配列を得るNBLASTプログラムを使用し、スコア=100、ワード長さ=12でBLASTヌクレオチド検索を行うことにより、本発明のOXI 01〜OXI 06核酸分子に相同のヌクレオチド配列を得ることができる。XBLASTプログラムを使用し、スコア=50、ワード長さ=3でBLASTタンパク質検索を行うことにより、本発明のOXI 01〜OXI 06タンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較のために、ギャップ挿入の位置合わせを行うには、アルトシュール(Altschul)ら、(1997)ニュークレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Res.)25(17):3389−3402に記載のように、Gapped BLASTを使用することができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを使用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトのパラメータを使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0052】
[ハイブリダイゼーション]
用語「ハイブリダイズする」には、本明細書中で使用する場合、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、よりいっそう好ましくは85%〜90%、より好ましくは少なくとも95%の相同性を互いに有するヌクレオチド配列が、通常、互いにハイブリダイズされた状態になるような、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を記載する意図がある。
【0053】
そのようなハイブリダイゼーション条件の好ましい例は、約45℃において、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でハイブリダイゼーションを行った後、50℃、好ましくは55℃、好ましくは60℃、よりいっそう好ましくは65℃において、1×SSC、0.1%SDS中で1回もしくはそれ以上の洗浄を行うことであるが、これに限定されるものではない。
【0054】
高ストリンジェンシー条件としては、例えば、68℃において、5×SSC/5×Denhardt溶液/1.0%SDS中でハイブリダイズし、室温において、0.2×SSC/0.1%SDS中で洗浄することが挙げられる。あるいは、洗浄は42℃で行ってもよい。
【0055】
熟練者であれば、厳密なあるいは高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件として、いずれの条件を適用すべきかを知っていよう。そのような条件に関するさらなる手引きは、当該技術分野では容易に入手することができ、例えば、サムブルック(Sambrook)ら、1989、モリキュラー・クローニング、ア・ラボラトリー・マニュアル、コールド・スプリング・ハーバー・プレス(Cold Spring Harbor Press)、ニューヨーク州)や、オースベル(Ausubel)ら(編者)、1995、カレント・プロトコルズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current Protocols in Molecular Biology)、(ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク州)が挙げられる。
【0056】
もちろん、ポリA配列(mRNAの3’末端ポリ(A)トラクトなど)またはT(またはU)残基の相補的ストレッチに対してのみハイブリダイズするポリヌクレオチドは、ポリ(A)ストレッチまたはその相補体(例えば、実際には任意の二本鎖cDNAクローン)を含有するいかなる核酸分子にもハイブリダイズするため、本発明の核酸の一部に特異的にハイブリダイズさせるために使用される本発明のポリヌクレオチドには含まれない。
【0057】
[他の生物からのフルレングスDNAの取得]
典型的アプローチでは、糸状菌などの他の生物、特にアスペルギルス(Aspergillus)属菌種からのもので構築されたcDNAライブラリーがスクリーニングされる。
【0058】
例えば、相同的OXI 01〜OXI 06ポリヌクレオチドについて、ノーザンブロット法により、アスペルギルス(Aspergillus)株をスクリーニングすることができる。本発明のポリヌクレオチドに相同な転写体が検出されたなら、当業者にはよく知られた標準的手法により、適切な菌株から単離されたRNAを基にcDNAライブラリーを構築することができる。あるいは、本発明のOXI 01〜OXI 06ポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能なプローブを使用して、全ゲノムDNAライブラリーをスクリーニングすることもできる。
【0059】
相同的遺伝子配列は、例えば、本明細書で教示したヌクレオチド配列を基に設計された2つの縮重オリゴヌクレオチドプライマープールを使用してPCRを行うことにより単離することができる。
【0060】
この反応のテンプレートは、本発明のポリヌクレオチドを発現すると知られているかまたは推定される菌株から調製されたmRNAの逆転写により得られたcDNAとすることができる。PCR生成物をサブクローニングし、増幅された配列が新規のOXI 01〜OXI 06の核酸配列、またはその機能的等価物の配列であることを確認するために配列が決定される。
【0061】
PCRフラグメントは、その後、種々の公知の方法により、フルレングスのcDNAクローンを単離するために使用することができる。例えば、増幅フラグメントに標識し、バクテリオファージまたはコスミドcDNAライブラリーをスクリーニングするために使用することができる。あるいは、標識フラグメントを、ゲノムライブラリーをスクリーニングするために使用することができる。
【0062】
PCR技術は、また、他の生物からフルレングスcDNA配列を単離するために使用することができる。例えば、RNAを、適当な細胞源または組織源から標準的手法により単離することができる。第1鎖の合成をプライムするために、増幅したフラグメントの殆どの5’末端に対して特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを使用し、RNA上で逆転写反応を実施することができる。
【0063】
得られたRNA/DNAハイブリッドに、その後、標準ターミナルトランスフェラーゼ反応を使用して「尾」を付け(例えばグアニンで)、そのハイブリッドをRNase Hにより消化し、その後、第2鎖の合成をプライムすることができる(例えば、ポリ−Cプライマーにより)。こうして、増幅フラグメントの上流のcDNAを容易に単離することができる。有用なクローニング戦略のレビューには、上記のサムブルックらおよびオースベルらを参照されたい。
【0064】
相同的DNAフラグメントが機能的OXI 01〜OXI 06タンパク質をコードするか否かは、当該技術分野で知られた方法で容易にテストすることができる。
【0065】
[ベクター]
別の観点では、本発明は、OXI 01〜OXI 06タンパク質またはその機能的等価物をコードする核酸を含むベクター、好ましくは発現ベクターに関する。用語「ベクター」は、本明細書中で使用する場合、別の核酸分子に結合して、その核酸分子を輸送することができる核酸分子を意味する。ベクターのタイプの1つに「プラスミド」があるが、これは環状二本鎖DNAループであり、このループに別のDNAセグメントがリゲートされる。ベクターの別のタイプにウイルスベクターがあり、それでは、そのウイルスゲノムに別のDNAセグメントがリゲートされる。ある種のベクターは、導入された宿主細胞中で自己複製することができる(例えば、複製が細菌起源の細菌ベクターおよびエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入された時点で宿主細胞のゲノムに組み込まれ、その結果、宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ある種のベクターは、作動可能に連結された遺伝子の発現を指向し得る。このようなベクターは、ここで、「発現ベクター」という。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、しばしば、プラスミドの形態である。プラスミドはベクターの最も一般的に使用される形態であるから、用語「プラスミド」と用語「ベクター」は、本明細書中では、交換可能に使用される。しかしながら、本発明は、機能的に等価な、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)などの他の形態の発現ベクターを包含することが意図される。
【0066】
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中で核酸を発現するのに適した形態で本発明の核酸を含む。このことは、組換え発現ベクターが、発現のために使用される宿主細胞に基づき選択され、発現される核酸配列に作動可能に連結された1つ以上の調節配列を含むことを意味する。組換え発現ベクターにおいて、「作動可能に連結される」は、目的のヌクレオチド配列が、(例えば、インビトロ転写/翻訳系、またはベクターが宿主細胞に導入される場合は宿主細胞において)ヌクレオチド配列の発現を可能にする仕方で、調節配列に連結されていることを意味することが意図される。用語「調節配列」は、プロモータ、エンハンサーおよび他の発現制御因子(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。このような調節配列は、例えば、ゲッデル(Goeddel)、ジーン・エクスプレッション・テクノロジー:メソッズ・イン・エンザイモロジー(Gene Expression Technology:Methods in Enzymology)185、アカデミック・プレス、サンディエゴ(San Diego)、カリフォルニア州(CA)(1990)に、記載されている。調節配列としては、多くのタイプの宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的な発現を指向する調節配列、および特定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指向する調節配列(例えば、組織特異的調節配列)が挙げられる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望されるタンパク質の発現レベルなどの因子に依存し得ることが、当業者には理解されているであろう。本発明の発現ベクターは、宿主細胞に導入され、それによって、本明細書中に記載されるような核酸によりコードされるタンパク質またはペプチド(例えば、OXI 01〜OXI 06タンパク質、OXI 01〜OXI 06タンパク質の突然変異型、フラグメント、バリアント、またはこれらの任意の機能的等価物など)を生成し得る。
【0067】
本発明の組換え発現ベクターは、原核生物細胞または真核生物細胞においてOXI 01〜OXI 06タンパク質を発現するように設計され得る。例えば、OXI 01〜OXI 06タンパク質は、E.coliなどの細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用して)、酵母細胞、または哺乳動物細胞において発現され得る。適切な宿主細胞は、ゲッデル、ジーン・エクスプレッション・テクノロジー:メソッズ・イン・エンザイモロジー185、アカデミック・プレス、サンディエゴ、カリフォルニア州(1990)においてさらに議論されている。あるいは、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモータ調節配列およびT7ポリメラーゼを用いて、インビトロで転写および翻訳され得る。
【0068】
本発明に有用な発現ベクターとしては、染色体ベクター、エピソーム性ベクター、およびウイルス由来ベクター、例えば、細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体エレメント、バキュロウイルス、パポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、家禽ジフテリアウイルス、仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルスなどのウイルス由来のベクター、並びに、プラスミドおよびバクテリオファージ遺伝要素(コスミドおよびファージミッドなど)に由来するものなどの、それらの組み合わせに由来するベクターが挙げられる。
【0069】
DNA挿入は、2、3の例を挙げれば、ファージラムダPLプロモータ、E.colilac、trpおよびtacプロモータ、SV40早期および後期プロモータおよびレトロウイルスLTRプロモータなどの適切なプロモータに作動可能に結合されるべきである。他の適切なプロモータは、当業者には知られているであろう。ある特定の実施態様においては、糸状菌中でオキシドリダクターゼの高発現レベルを指向することができるプロモータが好ましい。そのようなプロモータは当該技術分野において知られている。発現構築体は、転写の開始サイトおよび終了サイト、および転写領域に翻訳のためのリボソーム結合サイトを含み得る。構築体によって発現されるマチュアな転写物のコーディング部分は、翻訳されるポリペプチドの始めに翻訳開始AUG、および終わりに適切に位置する終止コドンを含む。
【0070】
ベクターDNAは、従来の形質転換技術またはトランスフェクション技術によって、原核生物細胞または真核生物細胞に導入され得る。本明細書中で使用する場合、用語「形質転換」および「トランスフェクション」は、外来核酸(例えば、DNA)を宿主細胞に導入するための、当該技術分野で認識されている種々の技術をいうことが意図され、これらとして、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、形質導入、感染、リポフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、またはエレクトロポレーションが挙げられる。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするための適切な方法は、サムブルックら(モリキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク州、1989)、デービス(Davis)ら、ベーシック・メソッズ・イン・モリキュラー・バイオロジー(Basic Methods in Molecular Biology)、(1986)、および他の研究マニュアルに見出され得る。
【0071】
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションについて、使用される発現ベクターおよびトランスフェクション技術に依存して、細胞の少しの画分のみが、それらのゲノムに外来DNAを組込み得ることが知られている。これらの組込み体を同定し、選択するために、一般に、選択マーカー(例えば、抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子が、目的の遺伝子と共に宿主細胞に導入される。好ましい選択マーカーとしては、G418、ハイグロマイシン、およびメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を与えるものが挙げられる。選択マーカーをコードする核酸は、OXI 01〜OXI 06タンパク質をコードするベクターと同じベクターで宿主細胞に導入され得るか、または別々のベクターで導入され得る。導入された核酸で安定にトランスフェクトされた細胞は、薬物選択により同定され得る(例えば、選択マーカー遺伝子を組込まれた細胞が生き残り、他の細胞が死滅する)。
【0072】
原核生物におけるタンパク質の発現は、E.coliにおいて、タンパク質の発現を指向する構成プロモータまたは誘導プロモータを含むベクターにより行われる。
【0073】
前述のように、発現ベクターは、選択マーカーを含むことが好ましい。そのようなマーカーとしては、真核細胞培養に対しては、ジヒドロ葉酸リダクターゼまたはネオマイシン耐性が挙げられ、E.coliおよび他の細菌における培養に対しては、テトラシリンまたはアンピシリン耐性が挙げられる。適切な宿主の代表例としては、E.coli、ストレプトミケス(Streptomyces)およびサルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)などの細菌細胞;酵母などの真菌細胞;ショウジョウバエ属(Drosophia)S2およびスポドプテラ属(Spodoptera)Sf9などの昆虫細胞;CHO、COSおよびボウズメラノーマ(Bowes melanoma)などの動物細胞;および植物細胞が挙げられる。上記宿主細胞の適切な培地および培養条件は、当該技術分野で知られている。
【0074】
細菌における使用に好ましいベクターには、キアゲン(Qiagen)から入手可能なpQE70、pQE60およびPQE−9;ストラタジーン(Stratagene)から入手可能なpBSベクター、ファージスクリプト(Phagescript)ベクター、ブルースクリプト(Bluescript)ベクター、pNH8A、pNH16A、pNH18A、pNH46A;およびファルマキア(Pharmacia)から入手可能なptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5がある。好ましい真核生物ベクターには、ストラタジーン(Stratagene)から入手可能なPWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pZT1およびpSG;およびファルマキアから入手可能なpSVK3、pBPV、pMSGおよびpSVLがある。他の適切なベクターは、熟練者には容易に分かるであろう。
【0075】
本発明で使用される公知の細菌プロモータとしては、E.coli laclプロモータおよびE.coli lacZプロモータ、T3プロモータおよびT7プロモータ、gptプロモータ、ラムダPRプロモータ、ラムダPLプロモータおよびtrpプロモータ、HSVチミジンキナーゼプロモータ、SV40早期および後期プロモータ、ロウス(Rous)サルコーマウイルス(「RSV」)プロモータなどのレトロウイルスLTRプロモータ、並びに、マウスメタロチオネイン−Iプロモータなどのメタロチオネインプロモータが挙げられる。
【0076】
本発明のポリペプチドをコードするDNAをより高等な真核生物により転写する際は、ベクターにエンハンサー配列を挿入することによって転写を促進させてもよい。エンハンサーは、通常、約10〜300bpのDNAシス作用性因子であり、所与のタイプの宿主細胞においてプロモータの転写活性を促進させる。エンハンサーの例としては、複製起点の後期側、100〜270bpに位置するSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス早期プロモータエンハンサー、複製起点の後期側にあるポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。
【0077】
翻訳されたタンパク質を小胞体内腔、ペリプラズム空間または細胞外環境へ分泌するために、適切な分泌シグナルを発現ポリペプチド内へ導入してもよい。シグナルはポリペプチド内因性であっても異種シグナルであってもよい。
【0078】
ポリペプチドは、修飾した形態で発現させてもよく、また、分泌シグナルだけでなくさらなる異種機能領域を含んでもよい。したがって、例えば、精製過程、またはその後のハンドリングおよび貯蔵過程における宿主細胞中での安定性および持続性を改善するために、追加のアミノ酸、特に荷電アミノ酸の領域をポリペプチドのN末端に加えてもよい。また、精製を容易にするために、ペプチド部分をポリペプチドに加えてもよい。
【0079】
[本発明のポリペプチド]
本発明は、配列番号013〜018のアミノ酸配列を有する単離ポリペプチド、適切な宿主中で配列番号001〜077のポリヌクレオチドを発現させることによって得られるアミノ酸配列、さらには、適切な宿主中で配列番号007〜012のポリヌクレオチド配列を発現させることによって得られるアミノ酸配列を提供する。また、上記ポリペプチドの機能的等価物を含むペプチドまたはポリペプチドも本発明の範囲に含まれる。上記ポリペプチドは、用語「本発明のポリペプチド」に集合的に含まれる。
【0080】
用語「ペプチド」および「オリゴペプチド」は同義語とみなされ(通常、認識されているように)、ペプチジル結合によって結合した少なくとも2つのアミノ酸の鎖を文脈で示す必要があるとき、それぞれの用語は交換可能に使用され得る。用語「ポリペプチド」は、本明細書中では、7個超のアミノ酸残基を含有する鎖に対して使用される。全てのオリゴペプチドおよびポリペプチドの式または配列は、本明細書中では、左から右へ、かつアミノ末端からカルボキシ末端の方向に記載される。本明細書中で使用される一文字コードは、当該技術分野で広く知られており、サムブルックら(モリキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク州、1989)に見出され得る。
【0081】
「単離された」ポリペプチドまたはタンパク質は、天然環境から取り出されたポリペプチドまたはタンパク質を意味する。例えば、スミス(Smith)およびジョンソン(Johnson)、ジーン(Gene)67:31−40(1988)に開示される一段階精製法のような適切な方法により実質的に精製された天然または組換えのポリペプチドと同様に、例えば、組換え技術によって生産され、宿主細胞中で発現したポリペプチドおよびタンパク質は、本発明の目的のために単離されたと考える。
【0082】
本発明のOXI 01〜OXI 06オキシドリダクターゼは、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈澱、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーなどのよく知られた方法により、組換え細胞培養物から回収し精製することができる。精製に高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)を使用することが特に好ましい。
【0083】
本発明のポリペプチドとしては、天然に精製された生成物、化学的合成法による生成物、および組換え技術により原核生物または真核生物の宿主(例えば、細菌、酵母、高等植物、昆虫および哺乳動物の細胞など)から生産された生産物が挙げられる。組換え生産手法で使用する宿主に応じて、本発明のポリペプチドは、グリコシル化されてもよく、あるいは、非グリコシル化されてもよい。さらに、本発明のポリペプチドは、また、初期の修飾メチオニン残基を、ある場合には宿主仲介プロセスの結果として含んでもよい。
【0084】
[タンパク質フラグメント]
本発明は、また、本発明のポリペプチドの生物学的に活性なフラグメントを特徴とする。
【0085】
本発明のポリペプチドの生物学的に活性なフラグメントとしては、OXI 01〜OXI 06タンパク質のアミノ酸配列(例えば、アミノ酸配列の配列番号013〜018)に十分に一致するか、または、そのアミノ酸配列から誘導されるアミノ酸配列を含むポリペプチドが挙げられる。それは、フルレングスのタンパク質よりアミノ酸数が少なく、対応するフルレングスのタンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を示す。典型的には、生物学的に活性なフラグメントは、OXI 01〜OXI 06タンパク質の少なくとも1つの活性を有する領域またはモチーフを含む。好ましくは、グルコースオキシダーゼ活性(E.C.1.1.3.4)を有するフラグメントである。
【0086】
本発明のタンパク質の生物学的に活性なフラグメントは、例えば10、25、50、100またはそれ以上のアミノ酸からなる長さのポリペプチドであり得る。さらに、タンパク質の別の領域が削除されている他の生物学的に活性な部分を、組換え技術により調製し、本発明の天然の形態のポリペプチドが有する1つ以上の生物学的活性を評価することができる。
【0087】
本発明は、また、上記のOXI 01〜OXI 06タンパク質の生物学的に活性なフラグメントをコードする核酸フラグメントを特徴とする。
【0088】
[機能的等価物]
用語「機能的等価物」および「機能的バリアント」は、本明細書中では、交換可能に使用される。OXI 01〜OXI 06のDNAの機能的等価物は、本明細書中で定義する場合、OXI 01〜OXI 06A.ニガー(A.niger)オキシドリダクターゼ固有の機能を示すポリペプチドをコードする単離されたDNAフラグメントである。本発明のOXI 01〜OXI 06ポリペプチドの機能的等価物は、本明細書中で定義する場合、A.ニガー(A.niger)オキシドリダクターゼの少なくとも1つの機能を示すポリペプチドである。したがって、機能的等価物は、また、生物学的に活性なフラグメントを包含する。
【0089】
機能性タンパク質またはポリペプチドの等価物は、配列番号013〜018の1つ以上のアミノ酸の保存性置換、または、非必須アミノ酸の置換、挿入または削除のみを含んでいてもよい。したがって、非必須アミノ酸は、配列番号013〜018の中で、生物学的機能を実質的に変えることなく変更し得る残基である。例えば、本発明のOXI 01〜OXI 06タンパク質間で保存されるアミノ酸残基は、特に変更を加えにくいものであると推定される。さらに、本発明のOXI 01〜OXI 06タンパク質および他のオキシドリダクターゼ間で保存されるアミノ酸は、容易には変更されない。
【0090】
用語「保存性置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基と置き換わる置換を意味することが意図される。これらのファミリーは当該技術分野では知られており、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニンおよびヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非電荷極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ位分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。
【0091】
機能的核酸等価物は、通常、サイレント変異、またはコードされたポリペプチドの生物学的機能を変化させない変異を含有し得る。したがって、本発明は、特定の生物学的活性に必須ではないアミノ酸残基に変化を含むOXI01〜OXI06タンパク質をコードする核酸分子を提供する。そのようなOXI 01〜OXI 06タンパク質は、配列番号013〜018とアミノ酸配列が異なるが、少なくとも1つの生物学的活性を保持している。したがって、本発明は、また、タンパク質(配列番号013に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約63%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を有する実質的に相同なアミノ酸配列を含有するタンパク質)をコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を包含する。別の実施態様では、単離核酸分子は、タンパク質(配列番号014〜018に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約40%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を有する実質的に相同なアミノ酸配列を含む)をコードするヌクレオチド配列を含むが、そのタンパク質は、配列番号014〜018で表わされるアミノ酸配列に対して、少なくとも約40%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を有する実質的に相同なアミノ酸配列を含む。
【0092】
例えば、表現型的にサイレントなアミノ酸の置換方法に関するガイダンスは、バウウィー・ジェイ・ユー(Bowie,J.U)ら、サイエンス(Science)247:1306−1310(1990)に与えられている。その中で著者らは、アミノ酸配列の変更に対する許容性の研究には、2つの主要なアプローチがあることを示している。第一の方法は、進化のプロセスに頼るもので、そこでは変異が自然の選択により受容されるかまたは拒否される。第二のアプローチは、遺伝子工学を使用してクローニングされた遺伝子の特定部位にアミノ酸の変化を導入し、選択またはスクリーニングを行って機能を維持する配列を同定する。著者らが述べているように、これらの研究によって、タンパク質はアミノ酸置換に対して驚くほど寛容であることが判った。著者らは、さらに、タンパク質の特定の部位でどのような変化が許容されやすいかを示している。例えば、最も埋もれたアミノ酸残基は非極性側鎖を要求するのに対し、表面側鎖では、通常、保存される特徴は殆どない。そのような表現型的にサイレントな置換体は、上記のバウウィー(Bowie)ら、およびそこで引用されている文献に記載されている。
【0093】
配列番号013〜018のタンパク質に相同なOXI 01〜OXI 06タンパク質をコードする単離核酸分子は、コードされたタンパク質に1つ以上のアミノ酸の置換、削除または挿入が導入されるように、配列番号001〜006または配列番号007〜012のコーディングヌクレオチド配列に1つ以上のヌクレオチドの置換、付加または削除を導入することによって作製することができる。そのような変異は、部位特異的突然変異誘発法およびPCR仲介突然変異誘発法などの標準の技術によって導入することができる。
【0094】
用語「機能的等価物」は、また、A.ニガー(A.niger)OXI 01〜OXI06タンパク質の相同分子種を包含する。A.ニガー(A.niger)OXI 01〜OXI 06タンパク質の相同分子種は、他の菌株または種から単離することができるタンパク質であり、類似のまたは同一の生物学的活性を有する。そのような相同分子種は、配列番号013〜018に実質的に相同なアミノ酸配列を含むものとして、容易に同定することができる。
【0095】
本明細書中で定義する場合、用語「実質的に相同な」は、第1および第2のアミノ酸またはヌクレオチド配列が共通の領域を有するように、第2のアミノ酸またはヌクレオチド配列に対して十分なまたは最小の数の同一のまたは等価な(例えば、類似の側鎖を有する)アミノ酸またはヌクレオチドを含む第1のアミノ酸またはヌクレオチド配列をいう。例えば、約40%の、好ましくは65%の、より好ましくは70%の、よりいっそう好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性、またはそれ以上の同一性を有する共通の領域を含むアミノ酸またはヌクレオチド配列は、本明細書中では十分に一致していると定義される。
【0096】
また、このようにして配列番号001〜006または配列番号007〜012とは異なるヌクレオチド配列を有する、別のOXI 01〜OXI 06ファミリーメンバーをコードする核酸も、本発明の範囲内である。さらに、このようにして配列番号001〜006または配列番号007〜012とは異なるヌクレオチド配列を有する、異なる種からのOXI 01〜OXI 06タンパク質をコードする核酸も、本発明の範囲内である。
【0097】
本発明のOXI 01〜OXI 06DNAのバリアント(例えば、自然対立遺伝子バリアント)およびホモログに対応する核酸分子は、本明細書に開示されるOXI 01〜OXI 06核酸に対する相同性に基づき、本明細書に開示されるcDNAまたはその適切なフラグメントを標準ハイブリダイゼーション技術のハイブリダイゼーションプローブとして使用して、好ましくは高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件で、単離することができる。
【0098】
OXI 01〜OXI 06配列の自然に発生する対立遺伝子バリアントに加え、配列番号001〜006または配列番号007〜012のヌクレオチド配列へ突然変異による変化を導入し、それによってOXI 01〜OXI 06タンパク質の機能を実質的に変化させずに、OXI 01〜OXI 06タンパク質のアミノ酸配列を変化させることができることを、当業者は認識していよう。
【0099】
本発明の別の観点では、改良されたOXI 01〜OXI 06タンパク質が提供される。改良OXI 01〜OXI 06タンパク質は、少なくとも1つの生物学的活性が改良されたタンパク質である。そのようなタンパク質は、OXI 01〜OXI 06コーディング配列の全部または一部に沿って飽和突然変異誘発などによる突然変異をランダムに導入することによって得ることができ、その結果得られる突然変異体は組換え技術により発現され、生物学的活性に関してスクリーニングが行われる。例えば、当該技術分野においてはオキシドリダクターゼの酵素活性を測定する標準分析法が開発されており、したがって、改良タンパク質は容易に選別することができる。
【0100】
好ましい実施態様では、OXI 01〜OXI 06タンパク質は、配列番号013〜018のアミノ酸配列を有する。別の実施態様では、OXI 01〜OXI 06ポリペプチドは、配列番号013〜018のアミノ酸配列と実質的に相同であり、配列番号013〜018ポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を維持するが、上記のような自然変異または突然変異誘発によりアミノ酸配列は異なる。
【0101】
さらに好ましい実施態様では、OXI 01〜OXI 06タンパク質は、好ましくは高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下で、配列番号001〜006または配列番号007〜012の核酸にハイブリダイズすることができる単離核酸フラグメントによってコードされたアミノ酸配列を有する。
【0102】
配列番号013のアミノ酸配列を含むタンパク質では、機能性酵素に最も近いホモログはアスペルギルス・フミガトゥス(Aspergillus fumigatus)由来のイソアミルアルコールオキシダーゼであり、これは配列番号013に対して62%の同一性を示す。1つの実施態様では、単離核酸分子はタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。そのタンパク質は、配列番号013で示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約63%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を有する実質的に相同なアミノ酸配列を含み、かつ配列番号013のアミノ酸配列を含むタンパク質の機能的等価物である。
【0103】
配列番号014のアミノ酸配列を含むタンパク質では、機能性酵素に最も近いホモログはアントロバクター・オキシダンス(Anthrobacter oxidans)由来の6−ヒドロキシ−D−ニコチンオキシダーゼであり、これは配列番号014に対して××%の同一性を示す。1つの実施態様では、単離核酸分子は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。そのタンパク質は、配列番号014で示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約40%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を有する実質的に相同なアミノ酸配列を含み、かつ配列番号014のアミノ酸配列を含むタンパク質の機能的等価物である。
【0104】
配列番号015のアミノ酸配列を含むタンパク質では、機能性酵素に最も近いホモログはアスペルギルス・パラシティクス(Aspergillus parasiticus)由来のバーシコロリン(versikolorin)Bシンターゼであり、これは配列番号015に対して31%の同一性を示す。1つの実施態様では、単離核酸分子は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。そのタンパク質は、配列番号015で示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約40%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を有する実質的に相同なアミノ酸配列を含み、かつ配列番号015のアミノ酸配列を含むタンパク質の機能的等価物である。
【0105】
配列番号016のアミノ酸配列を含むタンパク質は、いかなる機能性酵素にも相同性を有さない。1つの実施態様では、単離核酸分子は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。そのタンパク質は、配列番号016で示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約40%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を有する実質的に相同なアミノ酸配列を含み、かつ配列番号016のアミノ酸配列を含むタンパク質の機能的等価物である。
【0106】
配列番号017のアミノ酸配列を含むタンパク質では、機能性酵素に最も近いホモログはアントロバクター・オキシダンス(Anthrobacter oxidans)由来の6−ヒドロキシ−D−ニコチンオキシダーゼであり、これは配列番号017に対して<25%の同一性を示す。1つの実施態様では、単離核酸分子は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。そのタンパク質は、配列番号017で示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約40%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を有する実質的に相同なアミノ酸配列を含み、かつ配列番号017のアミノ酸配列を含むタンパク質の機能的等価物である。
【0107】
配列番号018のアミノ酸配列を含有するタンパク質は、機能性酵素と相同性を有さない。1つの実施態様では、本発明の単離核酸分子は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。そのタンパク質は、配列番号018で示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約40%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を有する実質的に相同なアミノ酸配列を含み、かつ配列番号018のアミノ酸配列を含むタンパク質の機能的等価物である。
【0108】
したがって、OXI 01タンパク質は、配列番号013で示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約63%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつ配列番号013ポリペプチドの少なくとも1つの機能的活性を維持しているタンパク質である。
【0109】
同様に、OXI2〜OXI 06タンパク質は、それぞれ配列番号014〜018で示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約40%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつ配列番号014〜018ポリペプチドの少なくとも1つの機能的活性を維持しているタンパク質である。
【0110】
本発明のタンパク質の機能的等価物もまた、例えば、本発明のたんぱく質の変異体、例えば切断変異体のコンビナトリアルライブラリーを、オキシドリダクターゼ活性に関してスクリーニングすることにより同定することができる。1つの実施態様においては、バリアントの多様化ライブラリーが、核酸レベルでのコンビナトリアル変異誘発によって作製される。バリアントの多様化ライブラリーは、タンパク質配列候補の縮重集合が個々のポリペプチドとして発現可能なように、例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物を酵素的に連結させて遺伝子配列を形成させることによって作製することができる。縮重オリゴヌクレオチド配列から本発明のポリペプチドのバリアント候補のライブラリーを作製するために使用できる方法にはさまざまなものがある。縮重オリゴヌクレオチドを合成するための方法は当該技術分野では周知である(例えば、ナラング(Narang)(1983)テトラヘドロン(Tetrahedron)39:3;イタクラ(Itakura)ら(1984)アニュアル・レビュー・オブ・バイオケミストリー(Annu.Rev.Biochem.)53:323;イタクラら(1984)サイエンス198:1056;イケ(Ike)ら(1983)、ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acid Res.)11:477を参照されたい)。
【0111】
さらに、本発明に係るポリペプチドのコーディング配列のフラグメントのライブラリーは、後に選択したバリアントをスクリーニングするための、ポリペプチドの多様化集団を作製するために使用することができる。例えば、コーディング配列フラグメントのライブラリーは、目的のコーディング配列の二本鎖PCRフラグメントを、ニッキングが1分子当たり約1回しか起こらない条件下でヌクレアーゼによって処理し、二本鎖DNAを変性させ、DNAを再生させて、異なる切断生成物からのセンス/アンチセンス対を含み得る二本鎖DNAを形成させ、再形成された二本鎖からS1ヌクレアーゼ処理によって一本鎖部分を除去し、その結果得られたフラグメントライブラリーを発現ベクター中に連結することによって作製することができる。この方法により、目的のタンパク質のN末端および種々のサイズの内部フラグメントをコードする発現ライブラリーを得ることができる。
【0112】
切断の点変異によって作製されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子生成物のスクリーニングのため、および選択した性質を有する遺伝子生成物に関してcDNAライブラリーをスクリーニングするための技法は、当該技術分野でいくつか知られている。ハイスループット解析に適しており、大規模な遺伝子ライブラリーのスクリーニングのために最も広く用いられている技法は、典型的には、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクター中にクローニングし、その結果得られたベクターのライブラリーを用いて適切な細胞の形質転換を行った上で、生成物の検出される遺伝子をコードするベクターが所望の活性を検出することによって容易に単離される条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現させることを含む。ライブラリー中の機能的変異体の頻度を高める技法である再帰的集合変異誘発法(REM)を、本発明のタンパク質のバリアントを同定するために、スクリーニングアッセイ法と組み合わせて用いることができる(アーキン(Arkin)およびユアバン(Yourvan)(1992)、ザ・プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ザ・ユナイティッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)89:7811−7815;デルグレイブ(Delgrave)ら(1993)プロテイン・エンジニアリング(Protein Engineering)6(3):327−331)。
【0113】
配列番号1で示されるOXI 01〜OXI 06の遺伝子配列に加えて、OXI 01〜OXI 06タンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらし得るDNA配列の多形性が、所与の集団の中に存在し得ることは、当業者には明らかである。そのような遺伝子の多形性は、自然対立遺伝子変異により異なる集団または1つの集団の細胞内に存在し得る。対立遺伝子変異もまた、機能的等価物を含み得る。
【0114】
本発明のポリヌクレオチドのフラグメントはまた、機能性ポリペプチドをコードしないポリヌクレオチドを含み得る。そのようなポリヌクレオチドはPCR反応のプローブまたはプライマーとして機能し得る。
【0115】
本発明の核酸は、コードするポリペプチドが機能性であるか非機能性であるかに拘らず、ハイブリダイゼーションのプローブとして、または、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のプライマーとして使用することができる。OXI 01〜OXI 06活性を有するポリペプチドをコードしない本発明の核酸分子の使用としては、特に、(1)例えば、A.ニガー(A.niger)以外の生物由来cDNAライブラリーからの、OXI 01〜OXI 06タンパク質またはその対立遺伝子バリアントをコードする遺伝子の単離;(2)ベルマ(Verma)ら、ヒューマン・クロモソームズ:ア・マニュアル・オブ・ベーシック・テクニックス(Human Chromosomes:a Manual of Basic Techniques)、パーガモン・プレス(Pergamon Press)、ニューヨーク(1988)に記載されているような、OXI 01〜OXI 06遺伝子の正確な染色体位置を提供するための、分裂中期の染色体スプレッドへのインサイチューハイブリダイゼーション(例えば、FISH);(3)特定の組織および/または細胞中におけるOXI 01〜OXI 06mRNAの発現を検出するためのノーザンブロット分析;並びに(4)所与の生物学的(例えば、組織)サンプルにおいてOXI 01〜OXI 06プローブにハイブリダイズ可能な核酸の存在を分析する診断ツールとして使用することができるプローブおよびプライマーが挙げられる。
【0116】
OXI 01〜OXI 06の遺伝子またはcDNAの機能的等価物を得る方法も本発明に包含される。そのような方法は、配列番号013〜018で示される配列の全てまたは一部をコードする単離核酸またはそのバリアントを含む標識プローブを得ること;標識プローブを用いて核酸フラグメントのライブラリーを、そのライブラリー中の核酸フラグメントにそのプローブをハイブリダイズできる条件下でスクリーニングし、それにより二本鎖核酸を生成すること、および、標識した二本鎖の核酸フラグメントからフルレングスの遺伝子配列を調製して、OXI 01〜OXI 06遺伝子関連の遺伝子を得ることを含む。
【0117】
[宿主細胞]
別の実施態様では、本発明は、細胞、例えば本発明に包含される核酸を含む形質転換された宿主細胞または組換え宿主細胞を特徴とする。「形質転換された細胞」または「組換え細胞」とは、組換えDNA技法により、本発明の核酸が導入された(またはその祖先に導入された)細胞である。例えば細菌、真菌、酵母など、原核細胞および真核細胞の両者が含まれる。特に好ましくは、糸状菌、特にアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)の細胞である。
【0118】
挿入配列の発現を調節する、または、特定の所望の方法で遺伝子産物を修飾し加工する宿主細胞が選択され得る。そのようなタンパク質産物の修飾(例えば、グリコシル化)および加工(例えば、切断)は、タンパク質が最適に機能することの助けになる。
【0119】
種々の宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後の加工および修飾に対して、特徴ある特定のメカニズムを有している。発現された外来タンパク質に所望の、かつ正しい修飾および加工を確実に加えるために、分子生物学および/または微生物学分野の当業者に馴染みのある適切な細胞株または宿主系が選択され得る。このために、一次転写物の適切なプロセッシング、グリコシル化、および遺伝子産物のリン酸化反応のための細胞機構を有する真核生物の宿主細胞を使用することができる。そのような宿主細胞は、当該技術分野ではよく知られている。
【0120】
宿主細胞としては、また、これらに限定されるものではないが、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3、WI38および脈絡叢細胞株などの哺乳動物の細胞株が挙げられる。
【0121】
所望するならば、本発明のポリペプチドは、安定にトランスフェクトされた細胞株によって生産することができる。哺乳類細胞の安定なトランスフェクションに適したベクターが多数、一般公衆に入手可能となっており、そのような細胞株を作製する方法もまた、例えばオースベル(Ausubel)ら(上記を参照)により公知である。
【0122】
[工業プロセスにおけるオキシドリダクターゼの使用]
本発明は、また、本発明のオキシドリダクターゼの、選択された数の工業プロセスにおける使用に関する。これらのプロセスに関して長期の経験があるにも拘らず、本発明のオキシドリダクターゼは、現在使用されている酵素と比べ、多数の大きな利点を有するという特徴がある。特定の用途に依存するが、これらの利点としては、より良好な特性、より安価な製造コスト、基質に対するより高い特異性、より低い抗原性、望ましくない副活性がより少ないこと、適切な微生物中で生産した場合のより高い収率、より適切なpHおよび温度の範囲、最終製品のより良好な風味、さらには、食品グレードおよびコーシャーの観点が挙げられる。
【0123】
本発明のオキシドリダクターゼは、基質を酸化したり、あるいはその特定の反応生成物を得る必要がある用途において使用することができる。例えば、本発明のオキシドリダクターゼを使用することにより、アルデヒド、アルコール、カルボン酸などと共に過酸化水素を得ることができる。
【0124】
本発明の新規なオキシドリダクターゼが使用され得る工業プロセスの1つに、ベーキング用途のプロセスがある。本発明は、また、レオロジー特性が改善された小麦粉生地を提供する方法、および、そのような生地を焼くかまたは乾燥させて出来上がった製品(テクスチャ特性、食味特性および寸法特性が改善されている)に関する。本発明は、また、ベーキング用プレミックスに関する。それは、小麦粉、酵素調製物および適切な担体を含む。本発明によれば、レオロジー特性が向上したより強い生地、および高品質の最終ベーキング製品が得られる。
【0125】
生地の強さは、小規模用途および大規模用途のいずれにとっても、ベーキングの重要な性状である。強い生地は、混合時間、プルーフィング時間、および生地搬送時の機械的振動に対する許容度が大きく、一方、弱い生地はこのような取り扱いに対する許容度が小さい。優れたレオロジー特性およびハンドリング特性を有する強い生地は、強力なグルテン網を有する小麦粉から得られる。タンパク質含有量が少ないか、またはグルテンの品質が劣る小麦粉からは、弱い生地が得られる。
【0126】
ベーキング産業において、生地改良剤はよく知られている。パン生地に改良剤を添加すると、生地の耐機械性が改善され、パンのテクスチャ、体積、フレーバーおよび新鮮度(耐老化特性)が改善される。小麦粉のベーキング性能を改善する目的で、生地のレオロジー特性を改善し、所望の強さと安定性を有する生地を得るために、ヨウ素酸塩、過酸化物、アスコルビン酸、臭素酸カリウムおよびアゾジカーボンアミドなどの非特異的酸化剤が使用される。
【0127】
これらの改良剤は、グルテンを、したがって生地を強化するタンパク質間結合の形成を誘起することが示唆されている。しかしながら、現在入手可能な数種類の化学酸化剤を使用することは、消費者の反対に会うか、または規制当局の許可が得られない。
【0128】
生地改良剤として酵素を使用することは、化学改良剤の代替と考えられている。最近、生地および/またはパンの改良剤として、数多くの酵素、特に生地中に大量に存在する成分に作用する酵素が使用されてきている。そのような酵素の例としては、アミラーゼ、プロテアーゼ、グルコースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、キシラナーゼ、およびペントサナーゼなどの(ヘミ)セルラーゼ、並びに、リパーゼ、ホスホリパーゼおよびガラクトリパーゼが挙げられる。
【0129】
ベーキング製品は、通常、基本原料である小麦粉、水および任意成分の塩により作られる生地から調製される。ベーキング製品に応じて、他の任意成分として、砂糖、フレーバーなどが使用される。発酵製品には、酸(発生化合物)と重炭酸塩との組み合わせなどの化学膨張系に次いで、パン酵母が主に使用される。生地のハンドリング特性および/またはベーキング製品の最終特性を改善するために、改善特性を備えた加工助剤を開発する努力が続けられている。改善すべき生地の特性としては、耐機械性、ガス保持性などが挙げられる。改善され得るベーキング製品の特性としては、パン容積、皮のカリカリ性、クラムのテクスチャと柔らかさ、味とフレーバー、およびシェルフライフが挙げられる。現在使用されている加工助剤は、化学添加剤および酵素の2つのグループに分けられる。
【0130】
改善特性を有する化学添加剤としては、アスコルビン酸、臭素酸塩およびアゾジカーボネートなどの化学酸化剤、L−システインおよびグルタチオンなどの還元剤、モノ/ジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(DATEM)、ステアロイルラクチル酸ナトリウム(SSL)またはステアロイルラクチル酸カルシウム(CSL)などの生地改良剤として、またはグリセロールモノステアレート(GMS)などのクラム柔軟剤として作用する乳化剤、トリグリセリド(脂肪)またはレシチンなどの脂肪質、その他が挙げられる。
【0131】
今日では、化学添加剤を酵素で置き換える傾向にある。後者はより天然の化合物であり、それ故、消費者により受け入れられると考えられる。適切な酵素は、酸化酵素、すなわち、デンプン分解酵素、アラビノキシランおよびその他のヘミセルロース分解酵素、セルロース分解酵素、脂肪質分解酵素およびタンパク質分解酵素からなる群よい選択され得る。
【0132】
本発明は、また、有効量の本発明のオキシドリダクターゼを生地中に含有させることを含む、生地またはベーキング製品の調製方法に関するものであり、これは、ポリペプチドを含有しない生地またはベーキング製品と比べて、生地または生地から得られるベーキング製品の1つ以上の特性を改善する。
【0133】
語句「生地中に含有させる」は、本明細書中では、生地、生地を作る材料、および/または生地を作る生地材料の混合物に、本発明のオキシドリダクターゼを添加することと定義される。換言すれば、本発明のオキシドリダクターゼは、生地を調製するどの工程で添加してもよく、また、1つ、2つまたはそれ以上の工程で添加してもよい。本発明のオキシドリダクターゼは、生地の材料に添加され、当該技術分野でよく知られている方法で混練され、かつ焼かれてベーキング製品を製造される。例えば、米国特許第4,567,046号明細書、EP−A−426,211、特開昭60−78529号公報、特開昭62−111629号公報および特開昭63−258528号公報を参照されたい。
【0134】
用語「有効な量」は、本明細書中では、生地および/またはベーキング製品の目的とする少なくとも1つの特性について、測定可能な効果を与えるのに十分な本発明のオキシドリダクターゼの量と定義される。
【0135】
用語「改善された特性」は、本明細書中では、本発明のオキシドリダクターゼを含有しない生地または製品に対して、本発明のオキシドリダクターゼの作用により改善された、生地および/または生地から得られる製品、特にベーキング製品の任意の特性と定義される。改善された特性としては、これらに限定されるものではないが、増大した生地の強さ、増大した生地の弾性、増大した生地の安定性、低下した生地の粘性、向上した生地の伸長性、向上したベーキング製品のフレーバー、向上したベーキング製品の耐老化特性、および向上したクラムの白さが挙げられる。
【0136】
改善された特性は、下記の実施例で記載するように、本発明の方法により本発明のポリペプチドを添加して、および添加せずに調製した生地及び/またはベーキング製品を比較することにより決定される。官能特性は、ベーキング産業で十分に確立された方法を用いて評価することができ、例えば、訓練された味覚試験員で構成される委員会の利用などが挙げられる。
【0137】
用語「増大した生地の強さ」は、本明細書中では、一般により大きな弾性特性を有し、かつ/または、型に入れ成形するのにより多くの労力を必要とする生地の特性と定義される。
【0138】
用語「増大した生地の弾性」は、本明細書中では、ある一定の物理的負荷が加えられた後、元の形により戻ろうとする生地の特性と定義される。
【0139】
用語「増大した生地の安定性」は、本明細書中では、乱暴な扱いに対する感受性が低くしたがって、形や体積の維持により優れる生地の特性と定義される。
【0140】
用語「低下した生地の粘性」は、本明細書中では、表面、例えば生地製造機の表面に粘着する傾向がより低い生地の特性と定義される。これは、熟練したパン職人の試験員により経験的に評価されるか、または、当該技術分野で知られているテクスチャ分析装置(例えば、TAXT2)を使用して測定される。
【0141】
用語「向上した生地の伸展性」は、本明細書中では、破断させずに大きな負荷または伸長を加えることができる生地の特性と定義される。
【0142】
用語「向上した生地の耐機械性」は、本明細書中では、一般に、粘性がより小さく、かつ/または、より硬く、かつ/または、より高い弾性を有する生地の特性と定義される。
【0143】
用語「増大した生地の耐プルーフィング性」は、延長されたプルーフィング時間に生地が耐えられる能力と定義する。
【0144】
用語「増加したベーキング製品の体積」は、所与の一塊のパンの比体積(体積/重量)として測定され、通常、従来のレイプシード置換法により決定される。
【0145】
用語「向上したベーキング製品のクラム構造」は、本明細書中では、クラムの細胞壁がより微細および/またはより薄い、並びに/あるいは、クラムの細胞の分布がより一様/均一である、ベーキング製品の特性と定義される。これは、通常、熟練したパン職人の試験員により経験的に評価される。
【0146】
用語「向上したベーキング製品の柔軟性」は、「硬さ」の反対語であり、本明細書中では、圧縮がより容易なベーキング製品の特性であると定義される。これは熟練したパン職人の試験員により経験的に評価されるか、または、当該技術分野で知られているテクスチャ分析装置(例えば、TAXT2)を使用して測定される。
【0147】
用語「向上したベーキング製品のフレーバー」は、訓練された試験審査会により評価される。
【0148】
用語「向上したベーキング製品の耐老化特性」は、本明細書中では、貯蔵中の品質パラメータ、例えば、柔軟性および/または弾性が低下する速度の小さいベーキング製品の特性と定義される。
【0149】
用語「生地」は、本明細書中では、混練またはロールするのに十分な硬さの、小麦粉と他の材料の混合物と定義される。生地は、生であっても、冷凍であっても、予備ベアーされた(pre−bared)ものであっても、または予備ベーキングされたものであってもよい。冷凍生地の調製は、クルプ(Kulp)およびローレンツ(Lorenz)により、フローズン・アンド・リフリジャレーティッド・ダフス・アンド・バターズ(Frozen and Refrigerated Doughs and Batters)に記載されている。
【0150】
用語「ベーキング製品」は、本明細書中では、生地から調製された柔軟な、またはカリカリした特性の製品と定義される。白、ライトまたはダークタイプに拘りなく、本発明により有利に製造されるベーキング製品の例としては、典型的には、塊またはロール状のパン(特に、白、全麦またはライ麦パン)、バゲットタイプのフランスパン、パスタ、ピタパン、トーチラス、タコス、ケーキ、パンケーキ、ビスケット、クッキー、パイ生地、蒸しパン、クリスプブレッド、その他が挙げられる。
【0151】
本発明のオキシドリダクターゼ、および/または、本発明の方法で使用される付加的酵素は、例えば、乾燥粉末、凝集粉末、または粒子、特に微粉を発生しない粒子、液体、特に安定化液体、または、国際公開第01/11974号パンフレットおよび国際公開第02/26044号パンフレットに記載されているような保護酵素など、目的の用途に適していればいかなる形態であってもよい。粒子および凝集粉末は、従来の方法、例えば、流動層造粒機により本発明のオキシドリダクターゼを担体にスプレーすることにより、製造することができる。担体は適切な粒子径を有する粒子状コアからなるものであってよい。担体は、例えば、塩(NaClまたは硫酸ナトリウムなど)、糖(スクロースまたはラクトースなど)、糖アルコール(ソルビトールなど)、スターチ、米、粗挽きトウモロコシまたは大豆など、溶解性であっても非溶解性であってもよい。本発明のオキシドリダクターゼおよび/または付加的酵素は、徐放性製剤に含有させてもよい。徐放性製剤の製造方法は、当該技術分野でよく知られている。糖、糖アルコールもしくは他のポリオール、および/または、乳酸もしくは他の有機酸などの栄養的に許容される安定剤を、確立された方法で添加することにより、例えば、液体酵素調製物を安定化させることができる。
【0152】
本発明のオキシドリダクターゼは、また、EP−A−0619947、EP−A−0659344および国際公開第02/49441号パンフレットに開示されているような組成物を含む酵母に含有させてもよい。
【0153】
小麦粉プレミックスへの添加には、本発明のポリペプチドは乾燥生成物、例えば微粉を発生しない粒子の形態であることが有利であるが、液体とともに添加するには、液体の形態が有利である。
【0154】
1種以上の付加的酵素を生地に加えてもよい。付加的酵素は、哺乳動物および植物など、いかなる起源のものであってもよい。好ましくは微生物(細菌、酵母または糸状菌)起源のものであり、当該技術分野で従来より使用されている技法により得てもよい。
【0155】
好ましい実施態様では、付加的酵素は、アルファ−アミラーゼ(酵母により発酵可能な糖の提供および老化抑制に有用)またはベータ−アミラーゼなどのアミラーゼ、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、ペプチダーゼ、特にエキソペプチダーゼ(フレーバー促進に有用)、トランスグルタミナーゼ、リパーゼ/ホスホリパーゼ/ガラクトリパーゼ(生地または生地構成成分中に存在する脂肪分解性化合物の改質に有用)、オキシドリダクターゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、特にキシラナーゼなどのペントサナーゼ(生地の伸展性を増加させるペントサンの部分加水分解に有用)、プロテアーゼ(特に、強力粉を使用するときグルテンを弱めるのに有用)、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ、例えば国際公開第95/00636号パンフレットに開示されているタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、ペルオキシダーゼ(生地の硬さ改善に有用)、ラッカーゼ、カテコールオキシダーゼ、または他のオキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、アルドースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、リポキシゲナーゼもしくはL−アミノ酸オキシダーゼ(生地の硬さ改善に有用)であってよい。
【0156】
本発明の方法に従って1種以上の付加的酵素活性物を添加する場合、これらの活性物は、本発明のポリペプチドと別に添加されても、あるいは共に添加されてもよく、場合により、パンおよび/または生地改良組成物の構成成分として添加されてもよい。その他の酵素活性物は上記のいかなる酵素でもよく、確立されたベーキング方法に従って添加することができる。
【0157】
本発明は、また、ベーキング製品を製造する方法であって、本発明の方法で得られた生地を焼いてベーキング製品を製造することを含む方法に関する。生地を焼いてベーキング製品を製造する工程は、当該技術分野でよく知られた方法を使用して実施することができる。
【0158】
本発明は、また、本発明の方法でそれぞれ製造された生地およびベーキング製品に関する。
【0159】
本発明は、さらに、生地および/または生地から作られるベーキング製品用の、例えば、小麦粉組成物の形態のプレミックスに関する。そこでは、プレミックスは本発明のポリペプチドを含む。本明細書中では、用語「プレミックス」は、従来の意味で理解されるべきである、すなわち、工業的製パン工場/設備で使用されるだけでなく、パン小売り店でも使用される、一般に小麦粉を含むベーキング物質のミックスと定義される。プレミックスは、ポリペプチド、あるいは、ポリペプチドを含む本発明のパン改良および/または生地改良組成物を、小麦粉、スターチ、糖または塩などの適切な担体と混合することによって製造することができる。プレミックスは、他の生地改良および/またはパン改良添加剤、例えば、前述の酵素を含む添加剤を含有してもよい。
【0160】
本発明は、さらに、本発明のポリペプチドを含む粒子または凝集粉末の形態のベーキング添加剤に関する。ベーキング添加剤は、粒子の95%(重量)超が25〜500μmの範囲に入る狭い粒子径分布を有することが好ましい。
【0161】
生地およびパンを作る際、本発明は、酸化剤(例えば、アスコルビン酸)のような化学加工助剤、還元剤(例えば、L−システイン)、ホスホリパーゼ、および/または、他の酵素[ポリサッカライド修飾酵素(例えば、α−アミラーゼ、ヘミセルラーゼ、分枝酵素など)および/またはタンパク質修飾酵素(エンドプロテアーゼ、エキソプロテアーゼ、分岐酵素など)など]のような、先に定義した加工助剤と組み合わせて使用され得る。
【0162】
また、OXI 01タンパク質が生地中で過酸化水素を生成することがわかった。それは、驚いたことに、少なくとも9,12,13−トリヒドロキシ−10−オクタデカン酸を基質として使用し、それによりケト−ジヒドロキシ−10−オクタデカン酸を生成する。この基質は、例えば小麦粉中に存在するので、OXI 01タンパク質はベーキングに特に適したものとなる。
【0163】
ベーキングにそのような酵素を使用することは、以前には知られていなかった。したがって本発明は、また、ベーキングにおいて、ヒドロキシ脂肪酸、例えばモノヒドロキシ脂肪酸、ジヒドロキシ脂肪酸、または9,12,13−トリヒドロキシ−10−オクタデカン酸などのトリヒドロキシ脂肪酸の酸化を触媒し、これにより過酸化水素を生成する酵素の使用を含む。適切な酵素のタイプとしては、アルコールオキシダーゼ、例えば第2アルコールオキシダーゼまたはイソアミルアルコールオキシダーゼが例示される。
【0164】
好ましい実施態様では、ヒドロキシ脂肪酸を酸化可能な酵素は、リポキシゲナーゼおよび/またはペルオキシダーゼと組み合わされる。
【0165】
本発明は、また、ヒドロキシ脂肪酸を酸化可能な酵素、並びに、リポキシゲナーゼおよび/またはペルオキシダーゼを含む、ベーキングの使用に適した組成物に関する。ヒドロキシ脂肪酸を酸化可能な酵素は、9,12,13−トリヒドロキシ−10−オクタデカン酸が酸化可能であることが好ましい。ヒドロキシ脂肪酸を酸化可能な酵素は、OXI 01タンパク質であることがより好ましく、配列番号013のアミノ酸配列を含むタンパク質であることがよりいっそう好ましい。
【0166】
本発明のオキシドリダクターゼは、乳製品の用途分野で別途使用することができる。
【0167】
ミルクの熱処理は、常にある程度のメイラード反応を伴い、処理されたミルクが茶色がかった色を帯びる原因となる。それが望ましい場合もある(例えば、バタースコッチキャンデーまたはキャラメルにおいて)が、通常、茶色に着色することは望まれない。メイラード反応は、ミルク中に存在する還元糖、特にラクトース、グルコースおよびラクトースと、カゼインまたはホエータンパク質などのミルクタンパク質中に含まれる遊離アミノ基との反応の結果である。
【0168】
本発明のオキシドリダクターゼOXI 01〜06は、高温の、ミルク、緩和な条件で生成された製品、またはそのような緩和な条件で生成された(乳)製品を含む食材中でのメイラード反応の低下に使用することができる。
【0169】
そうした処理の例には、シェルライフの安定性を高めるために行うミルクの殺菌がある。バット殺菌とも呼ばれる低温長時間(LTLP)殺菌では、ミルクは、通常、30分以上、62.8℃に保持される。連続プロセスでは、ミルクが最小15秒間、71.7℃以上(または、より高温でより短時間の等価な条件)に保持される高温短時間(HTST)殺菌が使用される。ごく最近、ミルクを最少1秒間、低くとも135℃に加熱する超高温熱処理(UHT)殺菌が開発された。特にUHT処理では高ストリンジェンシー温度管理とプロセス制御を必要とするが、程度は低くなるもののLTLPおよびHTST処理でも同様である。
【0170】
本発明のオキシドリダクターゼを使用する適切な用途の他の例は、ピザに載せるチーズスプレッドがある。多くの場合、ピザのトッピングにはモッツァレラ(Mozzarella)タイプのチーズが使用される。当該技術分野では、パスタフィラータをモッツァレラと呼んでいる。多くのピザ製造業者は、>260℃の温度でピザを焼く。このような高温においてチーズが過度に茶色に着色する傾向が、モッツァレラ産業において特に懸念されている。というのは、モッツァレラ製造業者は、このような高温で焼き上げても黒色の膨れや褐色部分を生じないチーズを納品しなければならないからである。茶色への変化は、通常、ラクトースおよび特にガラクトースの残留量により引き起こされる。ガラクトースと焼き上げたチーズの色の濃さには強い相関係数があり、モッツァレラ中のガラクトースおよびラクトースの量を減少させる多くの試みが文献に記載されていることは、当該技術分野では知られている。これらは殆どが操作困難で、かつ/またはコストの上昇もしくは収率の減少を招くおそれがある。
【0171】
本発明のオキシドリダクターゼを熱処理の前に使用すると、メイラード反応が抑制され、高温での熱処理過程でミルクが茶色に着色するのを制御する有効なルートが提供される。本発明のオキシドリダクターゼは、還元糖を酸化させる最大限の時間を酵素に与えるために、ミルク処理の初期の段階で添加することが好ましい。酵素は利用可能な酸素に依存するため、ミルク処理過程で酸素を導入させ、そして、それにより還元糖の濃度レベルを可能な限り低減させるために、初期に添加することが好ましい。本発明のオキシドリダクターゼは広範な基質特異性を有しており、幅広い範囲の還元糖を酸化することができる。乳製品または乳製品を含有する食材の用途では、本発明のオキシドリダクターゼは、ラクトース、グルコースおよびガラクトースを効率よく酸化することができる。
【0172】
酵素はより多くの固体食材、例えばチーズと、いくつかの方法で接触させることができる。チーズは、製造プロセスのある段階で酵素を加え(例えば、チーズミルクへの添加)て、チーズのマトリックス中に酵素を取り込ませることによって、チーズ製造過程で酵素と接触させてもよい。酸素が存在すれば、酵素は活性化するであろう。これはチーズ自身の中で幾分は生じるが、空気に晒されるチーズ表面や酸素への暴露の相当な増大をもたらすスライスまたはすりおろしといったチーズ加工の過程および/または後で特に顕著になるであろう。あるいは、加熱前にチーズ含有食材上に酵素をスプレーしてもよく、この方法では、メイラード反応が最も顕著に起こる場所である表面のメイラード反応が防止される。この場合、酵素は溶液または懸濁液で提供され、食材へスプレーされる。溶液/懸濁液はOXI 01〜OXI 06を1〜50単位/mlの量で酵素を含んでいてもよい。あるいは、酵素は粉末などの乾燥形態で添加してもよい。
【0173】
酵素は、乾燥または液体形態のいずれかで、単独または他の添加剤と組み合わせて添加してもよい。
【0174】
驚いたことに、本発明のオキシドリダクターゼの使用により、ミルク中の好気性微生物の増殖を抑えることもでき、これにより新鮮なミルクの保存に寄与することができる。そのような場合、オキシドリダクターゼは、乳製品の用途、例えばミルク、ミルク派生製品またはそのような製品を含む食材において、抗微生物剤として使用することができる。
【0175】
本発明のオキシドリダクターゼを使用することの更なる利点は、過酸化物が生成されることである。そのような過酸化物はタンパク質と反応し、タンパク質を架橋させることができることが知られている(例えば、ジェイ・エイ・ジェラード(J.A.Gerrard)、トレンズ・イン・フード・サイエンス・アンド・テクノロジー(Trens in Food Science & Technology)(2002)、13、391−399を参照されたい)。しかしながら、架橋の程度は生成される過酸化水素の量に依存する。驚いたことに、本発明のオキシドリダクターゼは、ミルク中のタンパク質を十分に架橋することができる。架橋の程度は、また、基質の前処理、酸化還元反応が利用できる酸素の量などにも依存する。タンパク質の架橋によって、架橋したタンパク質を含む製品のテクスチャ特性、例えば、そのような架橋タンパク質から形成されるゲルの水分保持容量が変化するという利点がある。
【0176】
[実施例]
[実施例1]
[レオロジー試験]
生地のレオロジー特性および加工特性の評価には、世界的に、ファリノグラフおよびエクステンソグラフがパン製造業者によって使用されている。
【0177】
生地のレオロジー特性に対するオキシドリダクターゼの効果は、Rapid Visco Analyser、ファリノグラフ法(AACC 54−2、ICC 115)およびエクステンソグラフ(AACC 54−10、ICC 114)など、国際穀物科学技術協会(International Association of Cereal Chemistry)(ICC)およびアメリカ穀物化学者協会(American Association of Cereal Chemistry)(AACC)による標準の方法で測定することができる。
【0178】
効果のうち、エクステンソグラフ法は、生地の相対強度を測定する。強い生地は、弱いパン生地に比べて、より高く、かつ、ある場合には、より長いエクソテンソカーブを示す。AACC法54−10はエクステンソグラフを次のように定義している。「エクソテンソグラフは、生地の試験片の荷重−伸び曲線を、生地が破断するまで記録する。荷重−伸び曲線、すなわちエクステンソグラムの特性を使用して、小麦粉の一般的品質およびその改良剤へのレスポンスが評価される」。
【0179】
ファリノグラフ法は、ある特定の小麦粉の水分摂取量、および、得られた生地の混合許容性を決定する。より良質なベーキング用小麦粉、および生地は、より高いファリノグラフ値を示すであろう。特定の小麦粉が比較的高い水分摂取量を示し、かつ得られたパン生地の混合許容性が良好ならば、時間が経過しても、完全ではないにしろ初期の高さがほぼ保持されることがファリノグラフ曲線に示される。そのような生地の耐機械性およびベーキング品質は優れている可能性が高い。AACC法54−12では、ファリノグラフを次のように定義している。「ファリノグラフは、混合に対する生地の抵抗を測定し記録する。これは小麦粉の吸収を評価し、混合過程における生地の安定性および他の特性を決定するために使用される。」
【0180】
[実施例2]
[生地の遊離チオール含有量の測定]
チオ−ル基架橋の形成に対する酸化還元酵素の効果は、生地中の遊離チオール基含有量を測定することによって調べることができる。この方法は、シリアル・ケミストリー(Cereal Chemistry)、1983、70、20−26に記載されている。この方法は、5、5’−ジチオ−ビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)が生地中のチオール基と反応して、2−ニトロ−5−メルカプト−安息香酸の強く着色したアニオンを生成するという原理に基づくものであり、着色アニオンは分光光度法により412nmで測定される。
【0181】
[実施例3]
[ミニバタールベーキング試験]
グルテン強化の測定に、ミニバタールベーキング試験を使用した。グルテンの強化に対する酵素の効果を検出するために、化学酸化剤は加えなかった。全ての試験は2回行う。
【0182】
【表1】

【0183】
【表2】

【0184】
高さ/幅の比は生地の安定性の尺度である。ハースブレッドを焼くとき、酸化剤がないと、生地は不安定で扁平かつ幅広になる。最終のパンにも同じ特徴がみられる。生地の安定性を高める酵素を加えことにより、より大きな高さ/幅の比が得られる。
【0185】
加工中、生地の品質はパン製造者によって評価される。高さ/幅の比は定規で測定される。結果は、ANOVAのStatgraphics plus5.1で統計的に評価される。
【0186】
[実施例3.1]
配列番号013、014、015、016、017および018で示されるアミノ酸配列を有するオキシドリダクターゼを、ミニバタールで試験した。全ての試験は2回行った。酵素は全て限外ろ過濃縮物として加え、小麦粉1kg当たりの全タンパク質量5mgとして試験を行った。オキシドリダクターゼを加えない生地を負の対照とした。アスコルビン酸(68mm)をレファレンスとして採用する。
【0187】
【表3】

【0188】
本発明のオキシドリダクターゼを含有する塊は、これらの酵素を含有しない塊より、良好な高さ/幅の比を示すことは明らかである。
【0189】
[実施例3.2]
高さ/幅の比に対する配列番号013のアミノ酸を含有する酵素の添加応答をミニバタールで試験した。3種類の添加量:全タンパク質1、2および3mg/小麦粉1kg、を試験した。オキシドリダクターゼを加えない生地を負の対照とした。アスコルビン酸(68mm)をレファレンスとして採用する。試験は2回行う。
【0190】
【表4】

【0191】
本発明のオキシドリダクターゼは、焼いたミニバタールの高さ/幅の比に対して良好な添加応答を示すことがわかる。実施例3.1の結果と比べ、高さ/幅の比の絶対値はこの試験がより大きい。これは、実施例3.1の試験が2005年収穫の小麦粉を使用して行われ、実施例3.2が2006年収穫の小麦粉を使用して行われているという事実に関係
した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号001〜006または配列番号007〜012の任意の1つのポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な単離ポリヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号001〜006または配列番号007〜012の任意の1つのポリヌクレオチドに高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズ可能な請求項1に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項3】
糸状菌から得られる請求項1または2に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項4】
アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)から得られる請求項3に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項5】
アミノ酸配列の配列番号013〜018またはこれらの機能的等価物の任意の1つを含むオキシドリダクターゼをコードする単離ポリヌクレオチド。
【請求項6】
アミノ酸配列の配列番号013〜018またはこれらの機能的等価物の任意の1つを含むオキシドリダクターゼの少なくとも1つの機能性ドメインをコードする単離ポリヌクレオチド。
【請求項7】
ヌクレオチド配列の配列番号001〜077もしくは配列番号007〜012またはこれらの機能的等価物の任意の1つを含む単離ポリヌクレオチド。
【請求項8】
配列番号001〜006または配列番号007〜012の任意の1つからなる単離ポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の前記ポリヌクレオチド配列が、適切な宿主細胞中で前記ポリヌクレオチド配列の発現に適切な調節配列と作動可能に連結されている請求項9に記載のベクター。
【請求項11】
前記適切な宿主細胞が糸状菌である請求項10に記載のベクター。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項9〜11のいずれか一項に記載のベクターを製造する方法であって、前記ポリヌクレオチドまたは前記ベクターでトランスフォームされた宿主細胞を培養する工程、および前記ポリヌクレオチドまたは前記ベクターを前記宿主細胞から単離する工程を含む方法。
【請求項13】
配列番号013〜018またはこれらの機能的等価物の1つのアミノ酸配列を有する単離オキシドリダクターゼ。
【請求項14】
アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)から得られる請求項13に記載の単離オキシドリダクターゼ。
【請求項15】
適切な宿主細胞、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)中で、請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項9〜11のいずれか一項に記載のベクターを発現させることによって得られる単離オキシドリダクターゼ。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか一項に記載のオキシドリダクターゼの機能性ドメインを含む組換えオキシドリダクターゼ。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれか一項に記載のオキシドリダクターゼを製造する方法であって、適切な宿主細胞を請求項1〜8のいずれか一項に記載の単離ポリヌクレオチドまたは請求項9〜11のいずれか一項に記載のベクターによりトランスフォームする工程、前記ポリヌクレオチドの発現可能な条件下、前記細胞を培養する工程、および場合により前記細胞または培地からコードされたポリペプチドを精製する工程を含む方法。
【請求項18】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項9〜11のいずれか一項に記載のベクターを含む組み換え宿主細胞。
【請求項19】
請求項13〜16のいずれか一項に記載のポリペプチドを発現させる組換え宿主細胞。
【請求項20】
請求項13〜16のいずれか一項に記載のオキシドリダクターゼと反応する精製抗体。
【請求項21】
請求項13〜16のいずれか一項に記載のオキシドリダクターゼを添加する工程を含む生地の製造方法。
【請求項22】
請求項21の方法により調製された生地からベーキング製品を製造する方法。
【請求項23】
生地および/またはそのベーキング製品を調製するための、請求項13〜16のいずれか一項に記載のオキシドリダクターゼの使用。
【請求項24】
生地および/またはそのベーキング製品を調製するための、ヒドロキシ脂肪酸を加水分解することができる酵素の使用。
【請求項25】
乳製品を製造するための、請求項13〜16のいずれか一項に記載のオキシドリダクターゼの使用。
【請求項26】
乳製品におけるメイラード反応を低減するための、請求項13〜16のいずれか一項に記載のオキシドリダクターゼの使用。
【請求項27】
乳製品におけるメイラード反応を防止するための、請求項13〜16のいずれか一項に記載のオキシドリダクターゼの使用。
【請求項28】
乳製品における抗微生物剤としての、請求項13〜16のいずれか一項に記載のオキシドリダクターゼの使用。
【請求項29】
抗微生物剤がミルク中のラクトペルオキシダーゼチオシアネート系に使用されることを特徴とする請求項28に記載のオキシドリダクターゼの使用。
【請求項30】
乳製品がミルクまたはチーズであることを特徴とする請求項25〜28のいずれか一項に記載のオキシドリダクターゼの使用。

【公表番号】特表2009−525736(P2009−525736A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553687(P2008−553687)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001134
【国際公開番号】WO2007/090675
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】