新規なナノ粒子
本発明は、(a)ポリマーを含むカチオン性コア材料と、(b)シリカを含むシェル材料とを含むコア−シェル型ナノ粒子を含む組成物を提供する。好ましいコア材料は、部分的または完全に4級化されたジアルキルアミノエチルメタクリレート単位の1種のブロックおよび4級化されていないままのジアルキルアミノエチルメタクリレート単位の1種のブロックを含むジブロックコポリマーミセルを含む。本発明はまた、(a)ポリマーを含むカチオン性コア材料を調製するステップと、(b)このポリマーを自然条件下にシリカ前駆体で処理することによってコア材料を、シリカを含むシェルで被覆するステップとを含む、前記組成物の調製方法も提供する。本発明はまた、少なくとも1種の活性剤の系内への徐放送達を、系内のpHを制御しながら変化させることに応答して促進するようになされた、コア−シェル型ナノ粒子を含む組成物も想定している。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、新規なナノ粒子に関する。より具体的には、本発明は、コア−シェル型シリカ−コポリマーナノ粒子、その調製方法、およびその利用可能性に関する。
【0002】
ナノ粒子、その中でも特にコア−シェル型構造を有するナノ粒子は、薬物等の活性物質の送達媒体としての利用可能性があることから、その合成および用途への学術的および産業的な関心が高まっている。そのため、先行技術においては、この種類のナノサイズの粒子の調製に多くの取り組みがなされている。
【0003】
特に、シリカを含むコア−シェル型ナノ粒子の潜在的用途が何人かの著者によって考察されており、また、このことに関連して、ブロックコポリマーを鋳型としたシリカ構造体の合成ならびにこれらの性質および利用可能性の研究に関心が寄せられてきた。さらに、粒子のコアから活性物質を刺激応答放出(triggered release)させることを可能にするコア形成材料が存在すれば、幅広い機会を提供することができるであろう。
【0004】
珪藻や海綿動物等の様々な生物系においては、自然条件の水中でシリカの生体鉱物化または生体ケイ酸化(biosilicification)が起こることが知られている。さらに、この自然の過程は正確にナノスケール制御された階層構造および複合形態を生じさせるが、この特性は材料科学者には依然として解明されていない。理想的には、シリカ合成を何らかの形で生体模倣する手法は、環境にも優しく、かつ様々な構造や形態が生成するような制御も可能であろう。
【0005】
最近になって生体ケイ酸化の解明が進んできたことにより、自然条件下におけるシリカ形成を上首尾に実証した研究もある。
【0006】
さらに、ブロックコポリマーは、様々な無機材料形成の制御に使用可能な幅広いナノ構造体に自己集合させることが可能であることも周知である。しかしながら、ブロックコポリマーを媒介させるシリカ形成の報告はほとんどない。さらに、このような粒子を形態および構造を制御できる化学的効率の高い方法で形成することは依然として主要な課題のままである。
【0007】
シリカをベースとするコア−シェル型ナノ粒子を、薬物送達、生体撮像、生体標識等の様々な生物分析に応用することが提案されてきた。
【0008】
このような場合においては、粒子は、機能性を有するコアをステバー(Stoeber)化学を用いるかまたはマイクロエマルジョン手法を用いるかのいずれかによりシリカシェルで被覆することによって予め合成されている。しかしながら、どちらの方法も、高温、非生理的なpH値、大量の界面活性剤および/または有機共溶媒の存在等の理想的でない条件を用いることを確実に必要とする。
【0009】
したがって、好都合な反応条件を用いて得ることができる代替的なナノサイズ粒子を開発する余地があることは明らかである。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、コア−シェル型ナノ粒子を含む組成物であって、上記ナノ粒子が、
(a)ポリマーを含むカチオン性コア材料と、
(b)シリカを含むシェル材料と
を含む組成物が提供される。
【0011】
好ましくは、コア材料は、コポリマーミセル、より好ましくは、ジブロックコポリマーミセルを含む。最も好ましくは、上記ジブロックコポリマーミセルは、第1ポリマーの少なくとも1種のブロックを含むコアと、上記第1ポリマーとは異なる第2ポリマーの少なくとも1種のブロックを含む外殻とを含む。
【0012】
好ましくは、上記コポリマーは、第1ポリマーおよび第2ポリマーを含み、両方ともアミノ系(アルク)アクリレート((alk)acrylate)モノマー単位、より好ましくは、第3級アミノ系(アルク)アクリレート単位、最も好ましくは第3級アミノアルキル(アルク)アクリレート単位を含んでいる。特に好ましくは、上記(アルク)アクリレート単位は、アクリレート、またはより詳細には、メタクリレート単位を含む。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記第3級アミノアルキルメタクリレート単位は、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート単位、特にジアルキルアミノエチルメタクリレート単位を含む。特に好ましい実施形態においては、上記コポリマーは、ポリ[2−(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)−ブロック−2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート](PDPA−PDMA)を含む。
【0014】
本発明によれば、上記ミセルは、上記ポリマーをベースとする非架橋型またはシェル架橋型(SCL)ミセルのいずれかであってもよい。したがって、特に好ましい実施形態は、ポリ[2−(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)−ブロック−2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート]等の第3級アミンメタクリル酸エステルから誘導されたブロックコポリマーをベースとする非架橋型またはシェル架橋型ミセルを想定している。
【0015】
従来のシェル架橋型ミセルの合成経路には、ミセルの外殻鎖を共有結合により安定化させることが含まれるが、最近では、ポリイオン架橋させることも提案されている。しかしながら、生体鉱物化を介するミセルのシェル架橋は文献報告されていない。
【0016】
本発明においては、上記第3級アミノ系(アルク)アクリレートコポリマーのミセルの架橋は、上記コポリマーの第3級アミノ基の一部または全部を、二官能性4級化剤を用いて4級化することによって最も好都合に達成される。したがって、本発明の第1態様の最も好ましい実施形態の場合は、ポリ[2−(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)−ブロック−2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート](PDPA−PDMA)の部分架橋を、好適な二官能性4級化剤、例えば1,2−ビス−(ヨードエトキシ)エタン(BIEE)等のビス(ハロアルコキシ)アルカンを用いてPDMA鎖を選択的に4級化/架橋することによって達成してもよい。この最も好ましい実施形態においては、PDPA鎖は基本的に4級化されないままである。
【0017】
本発明はまた、ハロゲン化アルキル(特にヨードメタン等のヨウ化アルキル)等の単官能性4級化剤を用いることにより4級化が達成される、類似の非架橋型の4級化された誘導体も想定している。しかしながら、シリカ沈着過程の制御は材料が架橋されている場合に向上し得ると考えられている。
【0018】
ポリマーの重合度は、好ましくは、特定の範囲内に制御される。したがって、本発明の最も好ましい実施形態におけるPDPA−PDMAコポリマーの重合度は、好ましくは、PDPAの平均重合度が20〜25の範囲内となり、かつPDMAの平均重合度が65〜70の範囲内となるように制御され、PDPA23−PDMA68コポリマー(下付き文字は各ブロックの平均重合度を示す)を用いることにより特に好ましい結果が得られている。上記実施形態においては、PDPA単位はミセルのコアを形成し、PDMA単位はミセルの外殻を形成する。
【0019】
好ましくは、上記シェル材料は、上記コア材料上に沈着された、少なくとも1種のシリカ前駆体由来のシリカを含む。場合により、上記少なくとも1種のシリカ前駆体は、無機ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属ケイ酸塩を含んでいてもよい。しかしながら、好ましいシリカ前駆体は、有機ケイ酸エステル化合物、特に、オルトケイ酸テトラメチルやオルトケイ酸テトラエチル等のケイ酸アルキルエステルを含む。最も好ましくは、上記シリカ前駆体は、オルトケイ酸テトラメチルを含む。上記処理は、未架橋のミセル内でコポリマー鎖を効果的に架橋させ、それによってミセルを解離に対し安定化させることが見出された。
【0020】
好ましくは、上記ナノ粒子の粒度は、10〜100nm、より好ましくは20〜50nm、最も好ましくは30〜40nmの範囲にあり、特に好ましくは、粒度は約30nmである。
【0021】
好ましくは、ナノ粒子の平均特定サイズ(average specific size)g(ここで、g=1/2×(長さ+幅))は約300nm以下である。より好ましくは、粒子の平均サイズは約200nm以下である。よりさらに好ましくは、粒子の平均サイズは約100nm以下である。好ましくは、粒子の平均サイズは1nm以上、より好ましくは、粒子の平均サイズは約10nm以上である。
【0022】
好ましくは、空隙の平均特定サイズは1nm以上、より好ましくは3nm以上、よりさらに好ましくは6nm以上である。好ましくは、空隙の平均特定サイズは100nm以下、より好ましくは80nm以下、よりさらに好ましくは70nm以下である。
【0023】
好ましくは、シェルの厚みは少なくとも1nm、より好ましくは少なくとも5nm、よりさらに好ましくは少なくとも10nmである。好ましくは、シェルの厚みは75nm以下、より好ましくは50nm以下、よりさらに好ましくは25nm以下である。
【0024】
本発明の第1態様の特定の実施形態においては、コア−シェル型ナノ粒子を含む組成物であって、上記ナノ粒子が、
(a)コポリマーミセルを含むカチオン性コア材料と、
(b)シリカを含むシェル材料と
を含み、
上記ナノ粒子が、異方性ロッド状形態を有する、組成物が提供される。好ましくは、本発明の上記実施形態においては、上記コポリマーミセルは、ジブロックまたはトリブロックコポリマーを含む。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様によるコア−シェル型ナノ粒子を含む組成物の調製方法であって、
(a)ポリマーを含むカチオン性コア材料を調製するステップと、
(b)上記コア材料を、シリカを含むシェルで被覆するステップと
を含む方法が提供される。
【0026】
ポリマーコア材料は任意の好適な重合法により調製してもよいが、グループ移動重合や制御ラジカル重合等の方法を用いると特に好ましい結果が得られる。上記コア材料は、次いで、好適なシリカ前駆体で処理することによってシリカで被覆される。
【0027】
本発明の第2の態様による方法は、本発明の第1の態様のより好ましい実施形態および最も好ましい実施形態によるコア−シェル型ナノ粒子を含む組成物の調製に特に適している。したがって、特に好ましい実施形態は、第3級アミノアルキルメタクリレートのグループ移動重合を用いたモノマーの逐次付加によってカチオン性ジブロックコポリマーを調製することを想定している。
【0028】
上記コポリマーの完全または部分的な4級化は、文献に報告されている任意の標準的な4級化技法によって達成してもよい。したがって、典型的には、好適な不活性溶媒中で上記第3級アミノ系コポリマーをハロゲン化アルキル(その中でも特に、ヨードメタン等のヨウ化アルキル)で処理することにより非架橋型4級化誘導体の調製が促進され、一方、適切な不活性溶媒中で第3級アミノコポリマーを二官能性4級化剤(ビス(ハロアルコキシ)アルカン等、例えば1,2−ビス−(ヨードエトキシ)エタン)で処理することにより架橋型4級化コポリマーが得られる。典型的には、上記4級化反応は、常温(20〜30℃)付近、好ましくは約25℃において、第3級アミノコポリマーを4級化剤で1〜100時間、好ましくは24〜72時間処理することによって実施される。
【0029】
シリカ沈着は、温和な条件下でカチオン性ポリマーを好適なシリカ前駆体で単純に処理することによって実施される。したがって、好ましいコポリマーミセルの場合、このような材料をシリカ前駆体(典型的には、有機ケイ酸エステル化合物、特に、オルトケイ酸テトラエチル等のケイ酸アルキルエステル、最も好ましくはオルトケイ酸テトラメチル)と一緒に、5〜30℃、pH6.2〜9.0で10〜60分間撹拌してもよい。典型的な反応においては、PDPA−PDMAコポリマーミセルをオルトケイ酸テトラメチルで20℃、pH7.2で20分間処理してもよい。本発明の第2の態様の方法は、低いpH値(典型的にはpH1)で実施すべきであるシリカ沈着手順が必要とされる先行技術の方法よりも勝っている正にこの点によって重要な利点が得られる。
【0030】
本発明の第3の態様によれば、少なくとも1種の活性剤の系内への徐放送達(controlled delivery)を促進するようになされた組成物が提供され、上記組成物は、本発明の第1の態様によるコア−シェル型ナノ粒子を含み、上記組成物は、上記系の制御されたpH変化に応答して上記徐放送達を行うようになされている。
【0031】
本発明の第4の態様によれば、少なくとも1種の活性剤の系内への徐放送達を促進する方法が提供され、上記方法は、本発明の第3の態様による組成物を上記系内に導入することと、上記送達が促進されるようにこの系のpHを制御下に変化させることとを含む。
【0032】
上記活性剤の好ましい例としては、例えば、薬物、染料、および触媒が挙げられ、これらが送達され得る好適な系としては、人間および動物の体内、コーティング、化学反応器等の多様な例が挙げられる。本発明の第1の態様による最も好ましい組成物の場合、上記組成物は、第3級アミン系アルキル(メタ)アクリレート単位を含むコポリマーを含み、活性剤の徐放送達は、上記組成物を系内に導入し、そして好適な酸性試剤を添加することにより系のpH値を6未満に調整することによって達成してもよい。
【0033】
本発明のさらなる態様によれば、本ナノ粒子を含む薄膜コーティングが提供される。本明細書において用いられる「薄膜」とは、平均厚さが500nm以下のコーティングを指す。
【0034】
本発明のさらなる態様によれば、本ナノ粒子を含む光学コーティングが提供される。本明細書において用いられる「光学コーティング」という用語は、光学機能を主要な機能とするコーティングを指す。光学コーティングの例としては、反射防止、ノングレア、防眩、帯電防止、EM制御(例えば、UV制御、日射制御、IR制御、RF制御等)機能が得られるように設計されたものが挙げられる。好ましくは、このコーティングは、反射防止機能を有している。より好ましくは、本コーティングは、コーティングされた1つの面について波長425〜675nmの波長(可視光域)で測定した場合の最低反射率が約2%以下、好ましくは約1.5%以下、より好ましくは約1%以下となるものである。
【0035】
本粒子の利点の幾つかを達成するためには、コア材料の一部または全部を粒子から除去することが必要となる場合があることは明らかであろう。これは、任意の好適な方法により製造工程の任意の好適な時点で達成してもよい。好ましい方法としては、例えば、熱分解、光分解、溶剤洗浄、電子線、レーザー、触媒分解、およびこれらの組合せが挙げられる。したがって、本発明の範囲には、コアが存在し、そのコアの少なくとも一部が除去されているコア−シェル型ナノ粒子が包含される。
【0036】
本明細書の本文および特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」および「含む(contain)」という単語ならびにこれらの単語の変形、例えば、「含む(comprising)」および「含む(comprises)」は、「含むがこれらに限定されるものではない」ことを意味し、それ以外の部分、添加剤、成分、整数、またはステップを除外することを意図するものではない(除外しない)。
【0037】
本明細書の記載内容および特許請求の範囲全体を通して、単数形には、その文脈において別段の必要がない限り、複数形が包含される。特に、不定冠詞が用いられている場合、本明細書は、その文脈において別段の必要がない限り、単数と同様に複数も意図しているものと理解されたい。
【0038】
本発明の特定の態様、実施形態、または実施例と一緒に記載される特徴、整数、特性、化合物、化学部分、または基は、不適合でない限り、本明細書に記載される他の任意の態様、実施形態、または実施例にも適用可能であると理解されたい。
【0039】
本発明を、添付の図面を個々に参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】シェル架橋型(SCL)または非架橋型のいずれかのカチオン性ブロックコポリマーミセルを鋳型として用いてオルトケイ酸テトラメチル(TMOS)を生体鉱物化させることにより得られるコア−シェル型シリカナノ粒子の形成の略図を示すものである。どちらの経路を経ても、明確に画定されたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子が得られる。上の経路に示すように、非架橋型ミセルを使用した場合は、その場でさらにシリカの架橋が起こる。
【図2】コポリマー−シリカナノ粒子のTEM画像を示すものであり、(A)は、4級化されていないPDPA23−PDMA68コポリマーのミセルをそのまま鋳型として用いて合成されたもの、(B)は、一部4級化(PDMAシェルを基準として50%)されたコポリマーのミセルを用いて形成されたものである。(B)の挿入図は、同じ粒子をそのまま酸性溶液(pH2)中に分散させて得られたものの典型的な高倍率画像である。縮尺は100nmである。
【図3】TEM画像を示すものであり、(A)は、一部4級化されたシェル架橋型ミセル(PDMA鎖の目標架橋度30%)の0.25w/v%水溶液2.0ml溶液およびTMOS2.0mlを含む混合物を40分間撹拌することにより調製されたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子(上の挿入図は、800℃の焼成によりコポリマー成分を熱分解した後の代表的な中空シリカナノ粒子であり、下の挿入図は、典型的なコア−シェル型粒子を目立たせたものである)、(B)は、一部4級化されたSCLミセル(PDMA鎖を基準とした目標架橋度50%)を使用し、(A)で用いたものと同じ生体鉱物化条件を用いて形成されたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子、(C)は、一部4級化されたSCLミセル(PDMA鎖の目標架橋度30%)の0.25w/v%水溶液2.0ml、TMOS2.0ml、およびメタノール2.0mlを含む初期に均質な溶液を40分間撹拌することにより形成されたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子、(D)は、(C)に記載したものと同一条件を用いて120分間撹拌することにより形成されたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子に関し得られたものである。縮尺は各場合において50nmである。
【図4】PDPA23−PDMA68コポリマー(外殻PDMA鎖の50%をヨードメタンを用いて4級化)から調製されたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子の、図2Bに示すTEM画像から推定した粒度分布を示すものである。これらの粒子のTEMによる個数平均径は28±3nmであり、DLS測定から判定した強度平均径(intensity average diameter)は34nmである。
【図5】4級化されたPDPA23−PDMA68コポリマー(PDMA鎖の100%を4級化)を使用して調製されたミセル鋳型から得られたシリカナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真を示すものであり、その生体鉱物化には、50%4級化されたコポリマーを用いて調製されたミセルの鋳型を媒介させた場合と同一条件を用いている。この場合、コア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子が形成された形跡はほとんどまたは全く現れておらず、ミセル内部全体にケイ酸化が起こっているようである。
【図6】超音波浴を利用してpH2の酸性溶液中に分散させたシリカナノ粒子(図2Bに示したものと同じ粒子、50%4級化されたPDPA23−PDMA68ミセルを用いて形成)の透過型電子顕微鏡写真を示すものである。
【図7】1H NMRスペクトルを例示するものであり、(a)は、PDMA68−PDPA23ジブロックコポリマー(ヨードメタンを用いてPDMAブロックの50%を4級化)をD2O/DCl中にpH2で分子状に溶解させた溶液であり(δ1.3〜1.4のシグナルGは、プロトン化されたDPA残基の4つの等価なメチル基に由来するものである)、(b)は、pH7のD2O中で得られた同じコポリマーのミセルであり(このpHにおいては、PDPAブロックが脱プロトン化されて疎水性のミセルコアを形成しているため、DPA残基由来のδ1.3〜1.4のシグナルGはもはや認められない、(c)は、pH2のD2O中においてPDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーミセル(PDMAブロックの50%が4級化されている)から誘導された、シリカ被覆されたナノ粒子であり(δ1.3〜1.4のシグナルGは、ミセルコア中のプロトン化されたPDPA鎖に対応する)、(d)は、pH7のD2O中における、シリカ被覆された同じナノ粒子である(δ1.3〜1.4のシグナルGは消失し、ミセルコア中のPDPA鎖が脱プロトン化により疎水性になったことを示唆している)。
【図8】混成シリカナノ粒子(図3Aに示す、PDMA鎖の目標架橋度が30%のSCLミセルを用いて調製されたもの)のTEM粒度分布を示すものである。このコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子の個数平均径は32±5nmであり、DLS測定による強度平均径は35nmである。
【図9】一部4級化されたコポリマーミセル(PDMAシェルを基準として50%をヨードメタンで4級化)の0.25wt%水溶液2.0mlおよびTMOS58mg(画像A、B)または116mg(画像C、D)のいずれかを含む混合物を20℃、pH7.2で20分間撹拌することにより得られたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真を示すものである。
【図10】一部4級化されたコポリマーミセル(PDMAシェルを基準とした目標架橋度50%、4級化にはBIEEを使用)の0.25wt%水溶液2.0mlおよびTMOS58mg(画像A、B)または116mg(画像C、D)のいずれかを含む混合物を20℃、pH7.2で20分間撹拌することにより得られたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真を示すものである。
【図11】コポリマー濃度がより高いPDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーミセルを用いてシリカを沈着させた後に撮影されたTEM画像を示すものであり、コポリマー−シリカコア−シェル型ナノ粒子は、ヨードメタンで50%(PDMA鎖のみを基準とする)4級化されたコポリマーミセルの1wt%または2wt%水溶液のいずれかを1.0mlを、TMOS116mgまたは232mgのいずれかと一緒に含む混合物を20℃、pH7.2で20分間撹拌した後、粒子をエタノール40mlで希釈し、16000rpmで30分間遠心分離し、最後に超音波浴を用いてエタノール中に再分散させることにより得られたものである。過剰のTMOSおよび未反応のケイ酸オリゴマーを確実に除去するために、この遠心分離−再分散サイクルを繰り返した。
【図12】PDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーミセルのシリカ沈着工程の沈着時間をはるかに長くした場合のTEM画像を示すものであり、コポリマー−シリカコア−シェル型ナノ粒子は、ヨードメタンで50%(PDMA鎖を基準とする)4級化されたコポリマーミセルの0.25wt%水溶液2.0mlをTMOS58mgと一緒に含む混合物を20℃、pH7.2で8時間撹拌し、次いで、粒子をエタノール洗浄および遠心分離サイクル(16000rpm、30分間)に2回かけることにより得られたものである。
【図13】FT−IRスペクトルを例示するものであり、(a)は、前駆体PDPA23−PDMA68ジブロックコポリマー、(b)は、PDPA23−PDMA68ジブロックコポリマー(目標架橋度30%、BIEE使用)から得られたシェル架橋型ミセル上に既述の条件下でシリカを沈着させることにより得られたコポリマー−シリカコア−シェル型ナノ粒子(図3A参照)、(c)は、コポリマーを800℃で焼成して熱分解することによって得られた中空シリカナノ粒子について記録されたものである。コポリマー−シリカコア−シェル型ナノ粒子のFT−IRスペクトルに含まれるIRバンドは、シリカネットワーク(1080cm−1はSi−O伸縮に対応する多重線、950cm−1はSi−OH振動モード、800cm−1はSi−O−Si変角、470cm−1はSi−O変角)の特徴に加えてコポリマー(1730cm−1のカルボニルエステル伸縮)の特徴も有している。この後者のカルボニルバンドはコポリマーの焼成後には予想通り消失して中空シリカ粒子の形成を示唆しており、この最終的な結果は、TEM研究の結果により確認されている。
【図14】PDMA外殻鎖の目標架橋度が30%であるPDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーから調製された元のSCLミセル(丸)および0.25wt%のSCLミセル溶液(目標架橋度30%)2.0mlおよびTMOS2.0mlの混合物を用いて40分間で合成された最終コポリマー−シリカコア−シェル型粒子(四角)について得られたゼータ電位対pH曲線を示すものであり、比較目的で、市販の超微細20nmシリカゾル(ナイアコル(Nyacol)2040)(三角)のゼータ電位曲線も示す。
【図15】シリカ被覆ミセルのコア内のPDPA鎖をHAuCl4を用いてプロトン化した後、NaBH4を用いてその場で還元することにより得られたAu/シリカナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真を示すものである。この実験から、予想通り、PDPA鎖がシリカ沈着後もミセルコア内に位置したままであることが確認される。
【図16】ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、PDMA、およびPDPAをベースとするABCトリブロックコポリマー合成の略図であり、PEO45−PDMA29−PDPA76トリブロックコポリマーを、PEOをベースとするマクロ開始剤(PEO45−Brマクロ開始剤)を用いた原子移動ラジカル重合(ATRP)により、PEO45−PDMA29ジブロックコポリマーを介して合成した。
【図17】d5−ピリジン中で記録されたPEO45−PDMA29−PDPA76トリブロックコポリマーの1H NMRスペクトルを示すものである。
【図18】シリカロッドのTEM画像を示すものである。シリカ沈着は、コポリマー濃度1.0%で実施し、結果として得られたシリカロッドは超音波処理によって容易に(再)分散した。
【図19】PEO45−PDMA29−PDPA76トリブロックコポリマーから調製された元のコポリマーロッド(四角で示す)および1.0wt%コポリマーミセル溶液1.0mlおよびTMOS0.20gの混合物を用いて20分間で合成された最終シリカロッド(三角で示す)から得られたゼータ電位対pH曲線の比較を例示するものであり、比較目的で、市販の超微細20nmシリカゾル(ナイアコル2040)(丸)から得られたゼータ電位曲線も示してある。
【0041】
第3級アミンメタクリレート系ブロックコポリマー(具体例は、ポリ[2−(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)−ブロック−2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート](PDPA−PDMA))から誘導された、選択的に4級化された非架橋型およびシェル架橋型ミセルをベースとする組成物を用いることにより、特に好ましい結果が達成されており、この種の材料を鋳型として用いると、直径が50nm未満の明確に画定されたコポリマー−シリカナノ粒子の生体模倣による形成が特に上首尾に行われることが証明されている。部分的または完全に4級化されたポリ(2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート)(PDMA)の外殻および疎水性ポリ(2−(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)(PDPA)のコアを含むジブロックコポリマーミセルは、特に、温和な条件下すなわちpH7.2の20℃の水溶液からシリカを沈着させるためのナノサイズの鋳型として用いられている。
【0042】
この種のPDPA−PDMAジブロックコポリマーは、グループ移動重合や制御ラジカル重合等の任意の好適な方法を用いて幅広いブロック組成およびコポリマー分子量で合成することが比較的容易である。このようなジブロックコポリマーは、酸性溶液中においてはポリアミンブロックの両方がプロトン化されるため、分子状に溶解する。水性塩基を用いて溶液のpHを調節すると中性pH付近でミセルの自己会合が起こり、脱プロトン化された疎水性PDPA鎖がミセルのコアを形成し、カチオン性(プロトン化された)PDMA鎖がミセルの外殻を形成する。あるいは、そして、調査対象の正確なブロック組成および4級化の度合いに応じて、選択されたジブロックコポリマーを中性pH付近の水中にそのまま溶解させることができ、明確に画定されたミセルが形成される。
【0043】
この種の非架橋型およびSCLミセルはいずれも、コロイドの安定性を失うことなくシリカで被覆することができる。SCLミセル上のシリカ沈着は、主としてカチオン性PDMAシェル内に限定され、pH応答性PDPAコアを有するコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子が得られる。さらに、その場でのシリカ沈着は未架橋のPDPA−PDMAミセルを効果的に安定化させ、元のPDPA−PDMAミセルの場合は溶液のpHを低下させると酸性溶液中で解離して個々のコポリマー鎖となることが見出されている一方で、これは変化しないままである。
【0044】
本発明のさらなる実施形態においては、ポリ(エチレンオキシド)−PDMA−PDEAトリブロックコポリマーが異方性の高いロッド状シリカ粒子の調製を促進することが示された。
【0045】
これらのミセルの1,2−ビス−(2−ヨードエトキシ)エタン(BIEE)を二官能性4級化剤として用いたシェル架橋は、温和な条件下においても高希釈度で容易に達成することができる。BIEEはPDMA鎖を選択的に4級化し、それよりもはるかに反応性の低いPDPA鎖を変化させずに残す。
【0046】
本発明の第1の態様による組成物を調製するための一般的な手法を図1に示すが、ここから、コポリマーミセルに架橋が組み込まれているか否かに応じて沈着されたシリカシェルの厚みが異なることが見出せるであろう。PDMAブロックの4級化の度合いも重要な要素となり得る。PDMAシェルは、プロトン化および/または4級化のいずれかによって顕著なカチオン性の性質を有しており、そのため、高分子触媒としても、シリカ形成のための物理的な骨組みとしても作用することができる。オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)をシリカ前駆体として用いて、20℃の水溶液中において、中性付近のpHで生体鉱物化を実施した。
【0047】
これに従い、第1の手法においては、PDPA23−PDMA68ブロックコポリマーをテトラヒドロフラン中でヨードメタンを用いて20℃で24時間処理することによって部分的または完全に4級化し、pH2で溶解させた後、pHを7.2に調整することによって非架橋型ミセルを形成させ、最後に、このミセルを、オルトケイ酸テトラメチルを用いて室温下にpH7.2で10〜40分間処理することによってシリカ沈着を起こさせると、結果として、比較的大過剰のTMOSを用いた場合は比較的厚肉のシリカシェルを有するシリカ架橋型ナノ粒子が形成される。
【0048】
あるいは、PDPA23−PDMA68ブロックコポリマーをpH2で溶解させた後、pH7.2に調整することによってミセルを形成させ、次いで、このミセルを1,2−ビス−(2−ヨードエトキシ)エタン(BIEE)を用いて20℃で72時間処理することにより4級化することによってシェルを架橋させ、次いで、架橋されたミセルを、オルトケイ酸テトラメチルを用いて室温下にpH7.2で10〜40分間処理することによりシリカ沈着を実施すると、結果として、比較的大過剰のTMOSを用いた場合は比較的薄肉のシリカシェルを有するシリカナノ粒子が形成される。
【0049】
まず、本発明者らは、PDPA23−PDMA68コポリマー前駆体からそのまま調製した非架橋型ミセルを鋳型として用いたシリカ沈着を実施した。動的光散乱(DLS)研究から、これらのミセル鋳型の25℃における強度平均径が37nmであることが示された。pH7.2においては、ミセルシェル内のPDMA鎖は約50%がプロトン化されており、したがって、かなりの程度のカチオン性の性質を有している24。
【0050】
上記ミセルのケイ酸化は、ミセル水溶液(0.25w/v%、pH7.2)2.0mlをオルトケイ酸テトラメチル1.0mlと一緒に混合し、次いで、初期に不均質な溶液を自然条件下で20分間撹拌することにより達成される。こうして得られたシリカ被覆されたナノ粒子をエタノールで洗浄した後、16000rpm、5分間の遠心分離/再分散サイクルを3回実施した。次いで、超音波浴を用いることにより、沈降したナノ粒子の再分散を達成した。
【0051】
生成物の熱重量分析から、シリカナノ粒子のジブロックコポリマーの平均含有量は約15質量%であることが示された。これらのTMOS処理されたミセルから得られた典型的な透過型電子顕微鏡写真(TEM)画像を図2Aに示す。シリカ/PDMA混成シェルはミセルコア内のPDPA鎖よりも電子密度が高いので、鋳型を介して形成されたコア−シェル型構造を有するシリカナノ粒子がはっきりと観察される。これらのナノ粒子の数平均径は約35nmであり、これは前駆体ミセルの寸法と適度に一致する。しかしながら、図2Aには、鋳型を介したシリカナノ粒子の形成に加えて、境界が不明瞭な、鋳型を介していないシリカ構造の形成も若干見受けられ、この場合はシリカ形成がとりわけ良好に制御されているわけではないことを示唆している。理想的には、シリカ形成は、バルク溶液中で起こるのではなくカチオン性コポリマーミセル上のみで起こるべきである。
【0052】
しかしながら、4級化されたポリマーを用いることによってシリカ沈着の制御が改善された。まず、試験的な実験を、PDMAホモポリマーを用いて実施し、オルトケイ酸テトラメチル1.0mlおよびPDMAホモポリマー水溶液1.0ml(DMA繰り返し単位の濃度[DMA]=0.064M)をpH7.2、20℃で混合すると、初期に不均質であった溶液が15分間の連続撹拌後に均質化することがわかった(TMOSが加水分解し、これによってケイ酸が生成し、系が均質化する)。それとは対照的に、同一条件下における50%および100%4級化されたPDMAホモポリマーの場合は、これに対応する、反応溶液を均質化するのに要する時間は、それぞれ25分間および50分間であった。これは、4級化されたPDMA鎖が、TMOS前駆体の加水分解をゆっくりと触媒し、したがって、制御がおそらくより上首尾に行われることを示唆している。
【0053】
PDMAホモポリマーを用いたこれらの実験は、部分的または完全に4級化されたPDPA23−PDMA68コポリマーミセルを鋳型として用いることにより十分に制御されたシリカ沈着が達成され得ることを示唆している。これに従い、ヨードメタンを温和な条件下で用いてDMA残基を選択的に4級化する実験を実施した。PDMA鎖の50%が4級化されたPDPA23−PDMA68コポリマーミセルの0.25wt%水溶液のpH7.2における強度平均径が29nmであることが動的光散乱(DLS)により示された。オルトケイ酸テトラメチル(1.0ml)をミセル水溶液2.0mlに20℃で加え、連続的に撹拌しながらシリカ沈着を20分間継続させた後、遠心分離により単離した。
【0054】
精製して得られたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子のTEM画像を図2Bに示す。コア−シェル型のナノ構造がはっきりと観察され、個数平均径は28±3nmであった。DLS調査からは、強度平均径が34nmであり、図4に例示するように、サイズ分布が比較的狭いことが示された。この場合は、4級化されていないジブロック前駆体から得られた結果とは対照的に、鋳型を介さずにシリカ構造が形成された形跡はなく、二次的な核形成が最小限に抑えられたことを示唆している。
【0055】
100%4級化されたPDMAブロックを有するミセルを用いて得られたTEMの結果を図5に示すが、ここからは、コポリマーのコアが形成された形跡はほとんどまたは全く認められないことが明らかであり、したがって、一部4級化されたコポリマーが本発明の特に好ましい実施形態であることが確認される。しかしながら、熱重量分析からは、50%および100%4級化されたPDMAブロックを有するミセルから誘導されたシリカナノ粒子のジブロックコポリマーの平均含有量がそれぞれ約18質量%および16質量%であったことが示された。したがって、PDMA鎖を4級化することは、シリカ沈着を十分に制御するために正に有利なようである。さらに、同一の生体鉱物化条件下において4級化されていないコポリマーミセルを用いて得られたもの(図2A参照)と比較すると、これらの4級化されたミセルにより、より厚肉のより明確に画定されたシリカシェルを有する混成ナノ粒子が生成する。
【0056】
本発明者らは、これらのコポリマー−シリカコア−シェル型粒子のナノ構造が、シリカ沈着に用いられるTMOSの量を最適に調整することによって単純に制御することができることも確かめた。このようにして、例えばより少量のTMOSを用いた場合は、シェルが薄肉でコポリマーのコアが大きいシリカ粒子が得られた。TMOS58mgを50%4級化されたコポリマーミセルの0.25w/v%溶液2mlと合一した混合物を20分間撹拌することにより、個数平均径が約26nmである明確に画定されたシリカ粒子(図9A/9B参照)が形成された。表1に示すように、生成物の熱重量分析からこれらのコア−シェル型コポリマー−シリカ粒子のコポリマーの平均含有量が約28質量%であることが示され、シリカの反応率が約58%であることを示していた。このような粒子のシリカシェルははるかに薄肉であり、かつコポリマーコアがより大きい。さらに、たとえ反応時間を20分間から8時間に延長してさえも、使用されたTMOSの量が低減されていれば、コロイドの安定性は維持されていた(図12A/12B参照)。上述の合成においてTMOSの量を116mgに増量した場合に得られた結果を図9C/9Dに示す。ここでも同じく、鋳型を介さなかったシリカの形跡はなく(図2Bで観察されたものと同様)、これらのシリカナノ構造が効率的に鋳型を介して形成されていることを示している。さらなる熱重量分析からは、これらのコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子のコポリマー含有量が図9A/9Cに示すコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子(コポリマー含有量28%)よりも低い(23%)ことが示された。このことは、より多量のTMOSを用いると、それ以外の条件が同一であれば、より多量のシリカが沈着されることを示している。
【0057】
TEM調査から、生体鉱物化を介して効率的なミセル架橋が行われているさらなる根拠が示された。図2B(挿入図参照)および図6に示すように、シリカ架橋されたミセルはpH2においてそのまま分散させて乾燥させた後もその球状のコア−シェル型構造を維持している。pH2におけるコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子の1H NMR調査では、プロトン化されたPDPA鎖によりδ1.3〜1.4のシグナルが生成した(図7参照)。しかしながら、溶液のpHをpH7に上昇させるとPDPA鎖が脱プロトン化し、したがって疎水性になるために、このシグナルは消失した。したがって、これらの分光学的調査から、ミセルコア中のPDPA鎖はpH応答性を有する(すなわち、低pHで親水性になり、高pHで疎水性になることができる)ことが確認され、このことは、これらの新規なコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子が内封/徐放用途に使用される可能性をさらに例示するものである。
【0058】
典型的には、シェル架橋は、ミセル間の融合を回避するために高希釈度(普通はコポリマーミセルが0.5wt%未満)で実施される。しかしながら、生体模倣によるシリカ沈着を用いたミセル架橋は、それよりも幾分高い濃度で上首尾に実施することができる。これに従い、図11A/11Bに示すように、コポリマーミセル(PDMAシェルを基準として50%が4級化されている)1.0w/v%溶液1mlをTMOS116mgと20分間混合することにより、個数平均径が約26nmの明確に画定された混成コポリマー−シリカコア−シェル型粒子が生成した。2.0w/v%コポリマーミセルを用いることにより類似のサイズの粒子も得られた(図11C/11D参照)。熱重量分析(表1)から、図11A/11Bおよび11C/11Dに示したコポリマー−シリカコア−シェル型粒子のコポリマーの平均含有量がそれぞれ約20および22質量%であったことが示され、これは、シリカの反応率がそれぞれ87および78%であったことを示唆している。したがって、このSCLミセルを得るためのシリカ沈着による生体模倣的手法は、著しく効率的なようであり、先行技術の方法と比較すると、温和な反応条件、短い反応時間、および比較的安価な試薬という観点で特に有利である。
【0059】
また、本発明者らは、1,2−ビス−(2−ヨードエトキシ)エタンを用いた選択的4級化およびPDMA鎖の架橋によるSCLミセルの調製も行い、結果として得られたカチオン性ミセルをシリカ沈着の鋳型として評価した。PDMA外殻鎖の目標架橋度を30mol%とした。DLS調査を25℃で実施したところ、前駆体SCLミセルの強度平均ミセル径が37nmであることが示された。
【0060】
非架橋型ミセルに用いたものと同一条件下で、オルトケイ酸テトラメチルを用いた生体鉱物化を実施した。図3Aは、結果として得られたシリカナノ粒子の典型的なTEM画像を示すものである。DLSおよびTEMによるこれらの強度平均および個数平均径はそれぞれ35nmおよび32±5nm(図8参照)であり、SCLミセル前駆体から得られた値とかなりよく一致していた。さらに、これらがコア−シェル型構造を有することもはっきりと示されている。例えば、図3Aにおいて下側の白い四角に示されるシリカナノ粒子のPDPAコアは約14nmであり、シリカ/PDMA混成シェルの厚みは約11nmである。目標架橋度を50%として調製されたSCLミセルを用いた生体鉱物化調査からは、図3Bに示すように同様の結果が得られた。非架橋型ミセルを用いて調製されたシリカナノ粒子(図2A)と比較すると、SCLミセル前駆体から得られたシリカ粒子はより大きなコアおよびより薄肉のシェルを有していた。さらに、分散液中には鋳型を介していないシリカの形跡はなく、ここでもシリカ沈着が十分に制御されていることが示されている。
【0061】
より少量のTMOSを用いたシリカ沈着も実施した。これに従い、0.25w/v%コポリマーミセル溶液(BIEEを用いた目標架橋度50%)2mlを分取してTMOS58mgと一緒に20分間混合すると、シリカ沈着により、コロイド状に安定した分散液ではなく凝集に至った。TEM調査から、約17nmのコア−シェル型シリカ粒子が形成していることとともに、一次粒子が互いに結合して融合していること(図10A/10B)が示された。熱重量分析(表1参照)から、平均ポリマー含有量が約30質量%であることが示され、これは、シリカの反応率が約50%であることを示している。シリカナノ粒子の形成は、同一条件下でやや過剰のTMOSを用いることにより大幅に改善された。これに従い、0.25w/v%コポリマーミセル溶液(目標架橋度50%、BIEE使用)2mlをTMOS116mgと20分間混合すると、コロイド状に安定した分散液が生じた(目視により判定)。図10C/10Dに示すように、個数平均径が約20nmである混成コポリマー−シリカ粒子が得られた。熱重量分析から、平均コポリマー含有量が約24質量%であることが示され、シリカの反応率が約35%であることを示していた。
【0062】
初期に均質な条件下でSCLミセルを用いてもシリカ沈着を制御することができる。これに従い、0.25wt%のSCLミセル溶液を2.0ml分取してメタノール2.0mlおよびオルトケイ酸テトラメチル2.0mlの混合物に加え、メタノールを共溶媒として作用させることにより、反応開始時点からTMOSが水相と確実に混和するようにした。シリカ沈着を40分間継続した後、得られた生成物のTEM調査を実施し、図3Cに例示したように、明確に画定されたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子が予想通り形成されたことを確認した。一方、たとえこの処理を120分間継続した後でさえも、図3Dに示すように、鋳型を介していないシリカナノ構造の形跡は認められなかった。
【0063】
図3Aに示す、SCLミセルから誘導されたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子の特性評価を、さらに熱重量分析、FT−IR分光法、および水系電気泳動(aqueous electrophoresis)を用いて実施した。熱重量分析からは、コポリマー−シリカ粒子の平均コポリマー含有量が約19質量%であることが示されるとともに、図13に例示するFT−IR調査からは、これらの粒子に無機成分が存在することによる1080、950、800、および470cm−1のバンドが認められたことから、シリカが形成したことが確認された。これらのバンドは、生体鉱物化前のコポリマーミセルから得られたスペクトルには存在しないことがわかった。800℃で焼成した後は、熱分解されたコポリマーに帰属される1726cm−1の特徴的なバンドは完全に消失し、一方、熱的に安定なシリカに帰属されるバンドは依然として観察された。
【0064】
TEM調査から、コポリマー−シリカ粒子の有機成分が熱分解された後に、中空のシリカ粒子になったことが示された。図14に示すように、ゼータ電位測定からも、シリカがコポリマーミセルの外殻層内に沈着されたことが支持された。前駆体SCLミセル(PDMA鎖の目標架橋度30%)のゼータ電位は、これらがカチオン性のPDMAシェルを有するため、調査した全pH範囲にわたって正の値を示していた。一方、シリカ被覆されたミセルは幅広いpH範囲にわたって負のゼータ電位を示し、等電点はpH3.3付近であった。この後者の挙動は、水性コロイド状シリカゾルに見られるものと類似しており(図14参照)、したがって、SCLミセルがシリカ外被で被覆されたことと一致している。
【0065】
本発明者らはまた、このような混成コポリマー−シリカ粒子内に金ナノ粒子を沈着させることも試みた。これを達成するために、まず、ナノ粒子のコア内の弱塩基性のPDPA鎖をプロトン化するためにHAuCl4を使用した。次いで、プロトン化されたPDPA鎖に付随する対イオンAuCl4−を、還元剤としてNaBH4を用いてその場で還元することによりゼロ価の金ナノ粒子を生成させた。還元ステップ後、コポリマー−シリカ混成ナノ粒子の色が白色からワインレッドに変化し、ナノサイズの金ゾルが形成したことを示唆していた。図15に例示するように、TEM観察から、コポリマー−シリカナノ粒子のコア内に金ゾルが生成したことが裏付けられた。しかしながら、一部のシリカシェルが破壊されていることも明らかであった。この実験から、混成コポリマー−シリカ粒子のコア内にPDPA鎖が存在することの直接の証拠も得られた。
【0066】
このように、量子ドットや生物活性分子等の他の化学種が内封される可能性もはっきりと例示されている。実際、これらの明確に画定されたナノ構造の結果、これらの混成コポリマー−シリカナノ粒子は、生体標識、生体診断、薬剤の標的送達、可溶化、触媒反応、および撮像における用途ならびにフィラーおよびコーティングとしての用途に潜在性を有している。
【0067】
本明細書における、温和な条件、短い反応時間、および入手可能な試薬を利用できるという事実は、商業的に適用可能な製造方法を準備する際には明らかな利点が得られるであろう。さらに、粒子のサイズおよび/または性質を制御できることも有利である。
【0068】
シリカを使用することは、本発明の材料の潜在的用途という観点でも特に有利である。つまり、シリカは通常、「食用」材料と認識されているので、これらの新規な粒子は食品製造にも潜在的用途がある。
【0069】
本発明者らの研究により、コポリマーミセルの性質に厳密に依存して固体の球(空洞なし)または構造化されたコア−シェル型の球(薄いシェルを有する)または構造化されたコア−シェル型の球(厚いシェルを有する)のいずれかを得ることができることから、対象とするジブロックコポリマー鋳型の4級化およびシェル架橋の度合いを変化させることが、その場でのシリカ生体鉱物化中に生成するシリカナノ粒子の性質に顕著に影響することは明らかである。
【0070】
本発明のコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子は先行技術のものより幾分大きい(30nm対10nm)ことから、充填能力をより高くすることが可能になるはずである。混成コポリマー−シリカ粒子のコア−シェル性はTEM調査によりはっきりと例示された。そして、これらの結果は、X線小角散乱調査(SAXS)により裏付けられた。TEMおよびSAXSにより得られる壁の平均厚さはよく一致している。
【0071】
しかしながら、本発明の最も顕著な利点はおそらく、特許請求された組成物のコア形成性PDPAブロックがpH応答性であり、これにより、混成コポリマー−シリカナノ粒子のコアから疎水性の有効成分がpH刺激応答放出される可能性が提供されることにある。
【0072】
ABCトリブロックコポリマーは、主として異方性のロッド状コポリマー−シリカ粒子の調製に特に上首尾に使用されることが見出され、上記ナノロッドは、ゼロ次分散放出を可能にするはずである。上記ナノロッドの合成を図16に例示するが、ここでは、まず、ポリ(エチレンオキシド)をベースとするマクロ開始剤(PEO45−Br)を塩化銅(I)の存在下に2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMA)と反応させ、次いで、その生成物をさらに2−(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPA)と反応させる。得られたコポリマーをGPCおよび1H NMRで特性評価した結果を表2および図17に示すが、これは、d5−ピリジン中で記録されたトリブロックコポリマーの1H NMRスペクトルを示すものである。
【0073】
このコポリマーは、PDPAコア、PEO外殻、およびPDMA内側シェルを有するコロイド状のミセル状会合体に自己会合するように設計されたものである。PDMAブロックのpKaは約7.0であるので、これらの残基の約50%がpH7.2でプロトン化される。したがって、シリカ沈着は、カチオン性のPDMA内側シェル内のみで起こると予想され、外殻のPEOブロックは立体的な安定性を供与する。したがって、粒子の融合を誘起することなくシリカ沈着は比較的高いコポリマー濃度で実施することができると考えられる。
【0074】
シリカ沈着をコポリマー濃度1.0%で実施し、異方性ロッド状コポリマー−シリカ粒子を生成させた。これは超音波処理によって容易に(再)分散した。結果として得られたシリカロッドをTEM、熱重量分析、FT−IR分光、およびゼータ電位測定を用いて特性評価した。図18は、シリカロッドの代表的なTEM画像を示すものである。FT−IR調査から、これらのシリカロッドの無機成分由来の1080、950、800、および470cm−1のバンドならびにポリマーのカルボニルエステル伸縮由来の1726cm−1のバンドが観測されたことから、シリカが形成したことおよびポリマーが内封されていることが確認された。熱重量分析から、これらの中空シリカロッドの平均コポリマー含有量が約26質量%であることが示され、図19に示すように、ゼータ電位測定から、コポリマーミセル上にシリカが上首尾に被覆されたことが示された。
【0075】
以下の実施例を参照することにより本発明をさらに例示するが、本開示の範囲を何ら限定するものではない。
【0076】
[実施例]
[実施例1]
Chem.Commun.、1997年、671〜672頁に従いグループ移動重合を用いてモノマーを逐次付加させることによりPDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーを合成した。一連の単分散に近いポリ(メチルメタクリレート)を較正基準として用いたゲル浸透クロマトグラフィー分析から、Mnが18000であり、Mw/Mnが1.08であることが示された。PDPAおよびPDMAブロックの平均重合度は、1H NMR分光を用いることにより、それぞれ23および68と推定された。
【0077】
PDPA23−PDMA68ジブロックコポリマー(4級化度=0%)をpH2で分子状に溶解させた後、NaOHを用いて溶液のpHをpH7.2に調整することにより非架橋型ミセル調製した。25℃における動的光散乱(DLS)調査から、pH7.2のコポリマーミセルの0.25wt%溶液においては、ミセルの強度平均径が37nmであることが示された。
【0078】
上記ミセルのミセル水溶液(0.25w/v%、pH7.2)2.0mlをオルトケイ酸テトラメチル1.0mlと混合した後、初期に不均質な溶液を自然条件下で20分間撹拌することによりケイ酸化を達成した。こうして得られた混成コア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子をエタノールで洗浄した後、16000rpm、5分間の遠心分離/再分散サイクルに3回かけた。次いで、沈降したコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子の再分散を、超音波浴を用いて達成した。
【0079】
[実施例2]
実施例1のようにグループ移動重合を用いてモノマーを逐次付加することによりPDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーを合成した。
【0080】
Macromolecules、2001年、第34巻、1148〜1159頁に記載されたように、ヨードメタンを用いたPDMAブロックの部分4級化(目標4級化度は50%または100%のいずれか)をTHF中で24時間実施した。
【0081】
50%または100%4級化されたPDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーを用いて調製された非架橋型ミセルも同様に、実施例1に記載したようなpH調整によって調製した。pH7.2で実施したDLS調査から、50%および100%4級化されたコポリマーミセルの0.25wt%水溶液の場合は、強度平均径がそれぞれ29nmおよび26nmであることが示された。
【0082】
PDMA鎖が50%4級化されたPDPA23−PDMA68コポリマーミセルの0.25wt.%水溶液2.0mlにオルトケイ酸テトラメチル(1.0ml)を20℃で添加し、連続撹拌しながらシリカ沈着を20分間継続させた後、遠心分離によって単離した。
【0083】
50%4級化されたコポリマー前駆体を用いて得られた混成コア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子のDLS調査から、pH7付近のミセルの強度平均径が34nmであることが示された。
【0084】
[実施例3]
グループ移動重合を用いてモノマーを逐次添加することによりPDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーを合成し、PDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーの非架橋型ミセルを実施例1に記載したように調製した。
【0085】
二官能性4級化剤である1,2−ビス−(2−ヨードエトキシ)エタン(BIEE、目標架橋度30%を達成するため、DMA残基1個当たり0.15mol)をPDPA23−PDMA68コポリマーミセルの0.25%溶液にpH7.2で添加することにより外殻PDMA鎖のシェル架橋を達成した。シェル架橋を25℃で少なくとも72時間実施した。シェル架橋させた後のDLS調査から、強度平均径が32nmであることが示され、TEM調査からは、乾燥させたSCLミセルの数平均径が26nmであることが示された。SCLミセル水溶液をpH2に調整してDLS調査を行ったところ、SCLミセルの膨潤とにより強度平均径が45nmであることが示された。
【0086】
低pHにおいてはPDPA鎖が高度にプロトン化され、したがってもはや疎水性ではなくなるので、非架橋型ミセルの場合は低pHで単純に解離して分子状に溶解した溶液を形成するという理由から、このDLS実験により、シェル架橋が上首尾に行われたことも確認された。さらに、50%4級化されたコポリマーを用いて調製されたSCLミセルのDLSにより示された強度平均径はpH7.2で37nmであった。
【0087】
0.25wt%SCLミセル溶液を2.0ml分取して、メタノール2.0mlおよびオルトケイ酸テトラメチル2.0mlの混合物に加えることによりシリカ沈着を達成した。ここでは、メタノールを共溶媒として作用させ、TMOSが確実に水相と混和するようにした。シリカ沈着を40分間継続した後に得られた生成物のTEM調査を行い、図3Cに例示するように明確に画定されたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子の形成を確認した。一方、この処理を120分間継続した後でさえも、図3Dに示すように、鋳型を介していないシリカナノ構造の形跡は認められなかった。
【0088】
[実施例4]
PEO45−PDMA29−PDPA76トリブロックコポリマーをPEOベースのマクロ開始剤を用いた原子移動ラジカル重合により合成した。まず、マクロ開始剤(1.00g、0.463mmol)を25mlの一頚フラスコに加え、次いで、吸引/窒素サイクルを3回行うことにより脱気した後、DMA(2.18g、13.88mmol、目標架橋度30)、2,2’−ビピリジン(144.5mg、0.925mmol)、次いで、脱気した95/5v/vIPA/水混合物3.2mlを加えた。この溶液を40℃の油浴に入れて均質になるまで撹拌した。次いで、塩化銅(I)(45.8mg、0.463mmol)を加えて反応を40℃で3.5時間窒素中で連続撹拌しながら実施した。この時間が経過した後、1H NMR分光で測定したDMAモノマーの反応率は96%に到達した。
【0089】
その後、DPA(4.94g、23.13mmol、目標架橋度=50)および95/5v/vIPA/水混合物5.0mlの混合物を加えた。2段階重合を40℃で18.5時間実施した後、空気に触れさせることにより停止した。1H NMR分析により、DPAモノマー反応率が99%に到達したことが示された。コポリマー溶液をTHF(200ml)で希釈し、シリカカラムを通して使用済み触媒を除去した。次いで、コポリマー溶液を減圧濃縮し、固体のコポリマーを脱イオン水(100ml)中で析出させることにより残留モノマーおよび任意の未反応のPEO−DMAジブロックコポリマーを除去した。精製された白色のコポリマーを真空中で一夜凍結乾燥させることにより単離した。全体の収量は6.1g(76%)であった。
【0090】
PEO45−PDMA29−PDPA76トリブロックコポリマーをpH2で分子状に溶解した後、NaOHを用いて溶液のpHを7.2に調整してミセルのロッドを形成させる調製を行った。最終コポリマー濃度を1.0wt%とした。過剰のTMOS(0.20g、すなわちTMOS:コポリマー質量比20:1)をコポリマー溶液1.0mlに加え、次いで、ケイ酸化を20℃、pH7.2で20分間実施することによりシリカ沈着を達成した。エタノールで洗浄した後、13000rpm、15分間の遠心分離/再分散サイクルを3回行うことによりシリカロッドを得た。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、新規なナノ粒子に関する。より具体的には、本発明は、コア−シェル型シリカ−コポリマーナノ粒子、その調製方法、およびその利用可能性に関する。
【0002】
ナノ粒子、その中でも特にコア−シェル型構造を有するナノ粒子は、薬物等の活性物質の送達媒体としての利用可能性があることから、その合成および用途への学術的および産業的な関心が高まっている。そのため、先行技術においては、この種類のナノサイズの粒子の調製に多くの取り組みがなされている。
【0003】
特に、シリカを含むコア−シェル型ナノ粒子の潜在的用途が何人かの著者によって考察されており、また、このことに関連して、ブロックコポリマーを鋳型としたシリカ構造体の合成ならびにこれらの性質および利用可能性の研究に関心が寄せられてきた。さらに、粒子のコアから活性物質を刺激応答放出(triggered release)させることを可能にするコア形成材料が存在すれば、幅広い機会を提供することができるであろう。
【0004】
珪藻や海綿動物等の様々な生物系においては、自然条件の水中でシリカの生体鉱物化または生体ケイ酸化(biosilicification)が起こることが知られている。さらに、この自然の過程は正確にナノスケール制御された階層構造および複合形態を生じさせるが、この特性は材料科学者には依然として解明されていない。理想的には、シリカ合成を何らかの形で生体模倣する手法は、環境にも優しく、かつ様々な構造や形態が生成するような制御も可能であろう。
【0005】
最近になって生体ケイ酸化の解明が進んできたことにより、自然条件下におけるシリカ形成を上首尾に実証した研究もある。
【0006】
さらに、ブロックコポリマーは、様々な無機材料形成の制御に使用可能な幅広いナノ構造体に自己集合させることが可能であることも周知である。しかしながら、ブロックコポリマーを媒介させるシリカ形成の報告はほとんどない。さらに、このような粒子を形態および構造を制御できる化学的効率の高い方法で形成することは依然として主要な課題のままである。
【0007】
シリカをベースとするコア−シェル型ナノ粒子を、薬物送達、生体撮像、生体標識等の様々な生物分析に応用することが提案されてきた。
【0008】
このような場合においては、粒子は、機能性を有するコアをステバー(Stoeber)化学を用いるかまたはマイクロエマルジョン手法を用いるかのいずれかによりシリカシェルで被覆することによって予め合成されている。しかしながら、どちらの方法も、高温、非生理的なpH値、大量の界面活性剤および/または有機共溶媒の存在等の理想的でない条件を用いることを確実に必要とする。
【0009】
したがって、好都合な反応条件を用いて得ることができる代替的なナノサイズ粒子を開発する余地があることは明らかである。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、コア−シェル型ナノ粒子を含む組成物であって、上記ナノ粒子が、
(a)ポリマーを含むカチオン性コア材料と、
(b)シリカを含むシェル材料と
を含む組成物が提供される。
【0011】
好ましくは、コア材料は、コポリマーミセル、より好ましくは、ジブロックコポリマーミセルを含む。最も好ましくは、上記ジブロックコポリマーミセルは、第1ポリマーの少なくとも1種のブロックを含むコアと、上記第1ポリマーとは異なる第2ポリマーの少なくとも1種のブロックを含む外殻とを含む。
【0012】
好ましくは、上記コポリマーは、第1ポリマーおよび第2ポリマーを含み、両方ともアミノ系(アルク)アクリレート((alk)acrylate)モノマー単位、より好ましくは、第3級アミノ系(アルク)アクリレート単位、最も好ましくは第3級アミノアルキル(アルク)アクリレート単位を含んでいる。特に好ましくは、上記(アルク)アクリレート単位は、アクリレート、またはより詳細には、メタクリレート単位を含む。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記第3級アミノアルキルメタクリレート単位は、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート単位、特にジアルキルアミノエチルメタクリレート単位を含む。特に好ましい実施形態においては、上記コポリマーは、ポリ[2−(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)−ブロック−2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート](PDPA−PDMA)を含む。
【0014】
本発明によれば、上記ミセルは、上記ポリマーをベースとする非架橋型またはシェル架橋型(SCL)ミセルのいずれかであってもよい。したがって、特に好ましい実施形態は、ポリ[2−(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)−ブロック−2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート]等の第3級アミンメタクリル酸エステルから誘導されたブロックコポリマーをベースとする非架橋型またはシェル架橋型ミセルを想定している。
【0015】
従来のシェル架橋型ミセルの合成経路には、ミセルの外殻鎖を共有結合により安定化させることが含まれるが、最近では、ポリイオン架橋させることも提案されている。しかしながら、生体鉱物化を介するミセルのシェル架橋は文献報告されていない。
【0016】
本発明においては、上記第3級アミノ系(アルク)アクリレートコポリマーのミセルの架橋は、上記コポリマーの第3級アミノ基の一部または全部を、二官能性4級化剤を用いて4級化することによって最も好都合に達成される。したがって、本発明の第1態様の最も好ましい実施形態の場合は、ポリ[2−(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)−ブロック−2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート](PDPA−PDMA)の部分架橋を、好適な二官能性4級化剤、例えば1,2−ビス−(ヨードエトキシ)エタン(BIEE)等のビス(ハロアルコキシ)アルカンを用いてPDMA鎖を選択的に4級化/架橋することによって達成してもよい。この最も好ましい実施形態においては、PDPA鎖は基本的に4級化されないままである。
【0017】
本発明はまた、ハロゲン化アルキル(特にヨードメタン等のヨウ化アルキル)等の単官能性4級化剤を用いることにより4級化が達成される、類似の非架橋型の4級化された誘導体も想定している。しかしながら、シリカ沈着過程の制御は材料が架橋されている場合に向上し得ると考えられている。
【0018】
ポリマーの重合度は、好ましくは、特定の範囲内に制御される。したがって、本発明の最も好ましい実施形態におけるPDPA−PDMAコポリマーの重合度は、好ましくは、PDPAの平均重合度が20〜25の範囲内となり、かつPDMAの平均重合度が65〜70の範囲内となるように制御され、PDPA23−PDMA68コポリマー(下付き文字は各ブロックの平均重合度を示す)を用いることにより特に好ましい結果が得られている。上記実施形態においては、PDPA単位はミセルのコアを形成し、PDMA単位はミセルの外殻を形成する。
【0019】
好ましくは、上記シェル材料は、上記コア材料上に沈着された、少なくとも1種のシリカ前駆体由来のシリカを含む。場合により、上記少なくとも1種のシリカ前駆体は、無機ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属ケイ酸塩を含んでいてもよい。しかしながら、好ましいシリカ前駆体は、有機ケイ酸エステル化合物、特に、オルトケイ酸テトラメチルやオルトケイ酸テトラエチル等のケイ酸アルキルエステルを含む。最も好ましくは、上記シリカ前駆体は、オルトケイ酸テトラメチルを含む。上記処理は、未架橋のミセル内でコポリマー鎖を効果的に架橋させ、それによってミセルを解離に対し安定化させることが見出された。
【0020】
好ましくは、上記ナノ粒子の粒度は、10〜100nm、より好ましくは20〜50nm、最も好ましくは30〜40nmの範囲にあり、特に好ましくは、粒度は約30nmである。
【0021】
好ましくは、ナノ粒子の平均特定サイズ(average specific size)g(ここで、g=1/2×(長さ+幅))は約300nm以下である。より好ましくは、粒子の平均サイズは約200nm以下である。よりさらに好ましくは、粒子の平均サイズは約100nm以下である。好ましくは、粒子の平均サイズは1nm以上、より好ましくは、粒子の平均サイズは約10nm以上である。
【0022】
好ましくは、空隙の平均特定サイズは1nm以上、より好ましくは3nm以上、よりさらに好ましくは6nm以上である。好ましくは、空隙の平均特定サイズは100nm以下、より好ましくは80nm以下、よりさらに好ましくは70nm以下である。
【0023】
好ましくは、シェルの厚みは少なくとも1nm、より好ましくは少なくとも5nm、よりさらに好ましくは少なくとも10nmである。好ましくは、シェルの厚みは75nm以下、より好ましくは50nm以下、よりさらに好ましくは25nm以下である。
【0024】
本発明の第1態様の特定の実施形態においては、コア−シェル型ナノ粒子を含む組成物であって、上記ナノ粒子が、
(a)コポリマーミセルを含むカチオン性コア材料と、
(b)シリカを含むシェル材料と
を含み、
上記ナノ粒子が、異方性ロッド状形態を有する、組成物が提供される。好ましくは、本発明の上記実施形態においては、上記コポリマーミセルは、ジブロックまたはトリブロックコポリマーを含む。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様によるコア−シェル型ナノ粒子を含む組成物の調製方法であって、
(a)ポリマーを含むカチオン性コア材料を調製するステップと、
(b)上記コア材料を、シリカを含むシェルで被覆するステップと
を含む方法が提供される。
【0026】
ポリマーコア材料は任意の好適な重合法により調製してもよいが、グループ移動重合や制御ラジカル重合等の方法を用いると特に好ましい結果が得られる。上記コア材料は、次いで、好適なシリカ前駆体で処理することによってシリカで被覆される。
【0027】
本発明の第2の態様による方法は、本発明の第1の態様のより好ましい実施形態および最も好ましい実施形態によるコア−シェル型ナノ粒子を含む組成物の調製に特に適している。したがって、特に好ましい実施形態は、第3級アミノアルキルメタクリレートのグループ移動重合を用いたモノマーの逐次付加によってカチオン性ジブロックコポリマーを調製することを想定している。
【0028】
上記コポリマーの完全または部分的な4級化は、文献に報告されている任意の標準的な4級化技法によって達成してもよい。したがって、典型的には、好適な不活性溶媒中で上記第3級アミノ系コポリマーをハロゲン化アルキル(その中でも特に、ヨードメタン等のヨウ化アルキル)で処理することにより非架橋型4級化誘導体の調製が促進され、一方、適切な不活性溶媒中で第3級アミノコポリマーを二官能性4級化剤(ビス(ハロアルコキシ)アルカン等、例えば1,2−ビス−(ヨードエトキシ)エタン)で処理することにより架橋型4級化コポリマーが得られる。典型的には、上記4級化反応は、常温(20〜30℃)付近、好ましくは約25℃において、第3級アミノコポリマーを4級化剤で1〜100時間、好ましくは24〜72時間処理することによって実施される。
【0029】
シリカ沈着は、温和な条件下でカチオン性ポリマーを好適なシリカ前駆体で単純に処理することによって実施される。したがって、好ましいコポリマーミセルの場合、このような材料をシリカ前駆体(典型的には、有機ケイ酸エステル化合物、特に、オルトケイ酸テトラエチル等のケイ酸アルキルエステル、最も好ましくはオルトケイ酸テトラメチル)と一緒に、5〜30℃、pH6.2〜9.0で10〜60分間撹拌してもよい。典型的な反応においては、PDPA−PDMAコポリマーミセルをオルトケイ酸テトラメチルで20℃、pH7.2で20分間処理してもよい。本発明の第2の態様の方法は、低いpH値(典型的にはpH1)で実施すべきであるシリカ沈着手順が必要とされる先行技術の方法よりも勝っている正にこの点によって重要な利点が得られる。
【0030】
本発明の第3の態様によれば、少なくとも1種の活性剤の系内への徐放送達(controlled delivery)を促進するようになされた組成物が提供され、上記組成物は、本発明の第1の態様によるコア−シェル型ナノ粒子を含み、上記組成物は、上記系の制御されたpH変化に応答して上記徐放送達を行うようになされている。
【0031】
本発明の第4の態様によれば、少なくとも1種の活性剤の系内への徐放送達を促進する方法が提供され、上記方法は、本発明の第3の態様による組成物を上記系内に導入することと、上記送達が促進されるようにこの系のpHを制御下に変化させることとを含む。
【0032】
上記活性剤の好ましい例としては、例えば、薬物、染料、および触媒が挙げられ、これらが送達され得る好適な系としては、人間および動物の体内、コーティング、化学反応器等の多様な例が挙げられる。本発明の第1の態様による最も好ましい組成物の場合、上記組成物は、第3級アミン系アルキル(メタ)アクリレート単位を含むコポリマーを含み、活性剤の徐放送達は、上記組成物を系内に導入し、そして好適な酸性試剤を添加することにより系のpH値を6未満に調整することによって達成してもよい。
【0033】
本発明のさらなる態様によれば、本ナノ粒子を含む薄膜コーティングが提供される。本明細書において用いられる「薄膜」とは、平均厚さが500nm以下のコーティングを指す。
【0034】
本発明のさらなる態様によれば、本ナノ粒子を含む光学コーティングが提供される。本明細書において用いられる「光学コーティング」という用語は、光学機能を主要な機能とするコーティングを指す。光学コーティングの例としては、反射防止、ノングレア、防眩、帯電防止、EM制御(例えば、UV制御、日射制御、IR制御、RF制御等)機能が得られるように設計されたものが挙げられる。好ましくは、このコーティングは、反射防止機能を有している。より好ましくは、本コーティングは、コーティングされた1つの面について波長425〜675nmの波長(可視光域)で測定した場合の最低反射率が約2%以下、好ましくは約1.5%以下、より好ましくは約1%以下となるものである。
【0035】
本粒子の利点の幾つかを達成するためには、コア材料の一部または全部を粒子から除去することが必要となる場合があることは明らかであろう。これは、任意の好適な方法により製造工程の任意の好適な時点で達成してもよい。好ましい方法としては、例えば、熱分解、光分解、溶剤洗浄、電子線、レーザー、触媒分解、およびこれらの組合せが挙げられる。したがって、本発明の範囲には、コアが存在し、そのコアの少なくとも一部が除去されているコア−シェル型ナノ粒子が包含される。
【0036】
本明細書の本文および特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」および「含む(contain)」という単語ならびにこれらの単語の変形、例えば、「含む(comprising)」および「含む(comprises)」は、「含むがこれらに限定されるものではない」ことを意味し、それ以外の部分、添加剤、成分、整数、またはステップを除外することを意図するものではない(除外しない)。
【0037】
本明細書の記載内容および特許請求の範囲全体を通して、単数形には、その文脈において別段の必要がない限り、複数形が包含される。特に、不定冠詞が用いられている場合、本明細書は、その文脈において別段の必要がない限り、単数と同様に複数も意図しているものと理解されたい。
【0038】
本発明の特定の態様、実施形態、または実施例と一緒に記載される特徴、整数、特性、化合物、化学部分、または基は、不適合でない限り、本明細書に記載される他の任意の態様、実施形態、または実施例にも適用可能であると理解されたい。
【0039】
本発明を、添付の図面を個々に参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】シェル架橋型(SCL)または非架橋型のいずれかのカチオン性ブロックコポリマーミセルを鋳型として用いてオルトケイ酸テトラメチル(TMOS)を生体鉱物化させることにより得られるコア−シェル型シリカナノ粒子の形成の略図を示すものである。どちらの経路を経ても、明確に画定されたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子が得られる。上の経路に示すように、非架橋型ミセルを使用した場合は、その場でさらにシリカの架橋が起こる。
【図2】コポリマー−シリカナノ粒子のTEM画像を示すものであり、(A)は、4級化されていないPDPA23−PDMA68コポリマーのミセルをそのまま鋳型として用いて合成されたもの、(B)は、一部4級化(PDMAシェルを基準として50%)されたコポリマーのミセルを用いて形成されたものである。(B)の挿入図は、同じ粒子をそのまま酸性溶液(pH2)中に分散させて得られたものの典型的な高倍率画像である。縮尺は100nmである。
【図3】TEM画像を示すものであり、(A)は、一部4級化されたシェル架橋型ミセル(PDMA鎖の目標架橋度30%)の0.25w/v%水溶液2.0ml溶液およびTMOS2.0mlを含む混合物を40分間撹拌することにより調製されたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子(上の挿入図は、800℃の焼成によりコポリマー成分を熱分解した後の代表的な中空シリカナノ粒子であり、下の挿入図は、典型的なコア−シェル型粒子を目立たせたものである)、(B)は、一部4級化されたSCLミセル(PDMA鎖を基準とした目標架橋度50%)を使用し、(A)で用いたものと同じ生体鉱物化条件を用いて形成されたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子、(C)は、一部4級化されたSCLミセル(PDMA鎖の目標架橋度30%)の0.25w/v%水溶液2.0ml、TMOS2.0ml、およびメタノール2.0mlを含む初期に均質な溶液を40分間撹拌することにより形成されたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子、(D)は、(C)に記載したものと同一条件を用いて120分間撹拌することにより形成されたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子に関し得られたものである。縮尺は各場合において50nmである。
【図4】PDPA23−PDMA68コポリマー(外殻PDMA鎖の50%をヨードメタンを用いて4級化)から調製されたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子の、図2Bに示すTEM画像から推定した粒度分布を示すものである。これらの粒子のTEMによる個数平均径は28±3nmであり、DLS測定から判定した強度平均径(intensity average diameter)は34nmである。
【図5】4級化されたPDPA23−PDMA68コポリマー(PDMA鎖の100%を4級化)を使用して調製されたミセル鋳型から得られたシリカナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真を示すものであり、その生体鉱物化には、50%4級化されたコポリマーを用いて調製されたミセルの鋳型を媒介させた場合と同一条件を用いている。この場合、コア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子が形成された形跡はほとんどまたは全く現れておらず、ミセル内部全体にケイ酸化が起こっているようである。
【図6】超音波浴を利用してpH2の酸性溶液中に分散させたシリカナノ粒子(図2Bに示したものと同じ粒子、50%4級化されたPDPA23−PDMA68ミセルを用いて形成)の透過型電子顕微鏡写真を示すものである。
【図7】1H NMRスペクトルを例示するものであり、(a)は、PDMA68−PDPA23ジブロックコポリマー(ヨードメタンを用いてPDMAブロックの50%を4級化)をD2O/DCl中にpH2で分子状に溶解させた溶液であり(δ1.3〜1.4のシグナルGは、プロトン化されたDPA残基の4つの等価なメチル基に由来するものである)、(b)は、pH7のD2O中で得られた同じコポリマーのミセルであり(このpHにおいては、PDPAブロックが脱プロトン化されて疎水性のミセルコアを形成しているため、DPA残基由来のδ1.3〜1.4のシグナルGはもはや認められない、(c)は、pH2のD2O中においてPDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーミセル(PDMAブロックの50%が4級化されている)から誘導された、シリカ被覆されたナノ粒子であり(δ1.3〜1.4のシグナルGは、ミセルコア中のプロトン化されたPDPA鎖に対応する)、(d)は、pH7のD2O中における、シリカ被覆された同じナノ粒子である(δ1.3〜1.4のシグナルGは消失し、ミセルコア中のPDPA鎖が脱プロトン化により疎水性になったことを示唆している)。
【図8】混成シリカナノ粒子(図3Aに示す、PDMA鎖の目標架橋度が30%のSCLミセルを用いて調製されたもの)のTEM粒度分布を示すものである。このコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子の個数平均径は32±5nmであり、DLS測定による強度平均径は35nmである。
【図9】一部4級化されたコポリマーミセル(PDMAシェルを基準として50%をヨードメタンで4級化)の0.25wt%水溶液2.0mlおよびTMOS58mg(画像A、B)または116mg(画像C、D)のいずれかを含む混合物を20℃、pH7.2で20分間撹拌することにより得られたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真を示すものである。
【図10】一部4級化されたコポリマーミセル(PDMAシェルを基準とした目標架橋度50%、4級化にはBIEEを使用)の0.25wt%水溶液2.0mlおよびTMOS58mg(画像A、B)または116mg(画像C、D)のいずれかを含む混合物を20℃、pH7.2で20分間撹拌することにより得られたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真を示すものである。
【図11】コポリマー濃度がより高いPDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーミセルを用いてシリカを沈着させた後に撮影されたTEM画像を示すものであり、コポリマー−シリカコア−シェル型ナノ粒子は、ヨードメタンで50%(PDMA鎖のみを基準とする)4級化されたコポリマーミセルの1wt%または2wt%水溶液のいずれかを1.0mlを、TMOS116mgまたは232mgのいずれかと一緒に含む混合物を20℃、pH7.2で20分間撹拌した後、粒子をエタノール40mlで希釈し、16000rpmで30分間遠心分離し、最後に超音波浴を用いてエタノール中に再分散させることにより得られたものである。過剰のTMOSおよび未反応のケイ酸オリゴマーを確実に除去するために、この遠心分離−再分散サイクルを繰り返した。
【図12】PDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーミセルのシリカ沈着工程の沈着時間をはるかに長くした場合のTEM画像を示すものであり、コポリマー−シリカコア−シェル型ナノ粒子は、ヨードメタンで50%(PDMA鎖を基準とする)4級化されたコポリマーミセルの0.25wt%水溶液2.0mlをTMOS58mgと一緒に含む混合物を20℃、pH7.2で8時間撹拌し、次いで、粒子をエタノール洗浄および遠心分離サイクル(16000rpm、30分間)に2回かけることにより得られたものである。
【図13】FT−IRスペクトルを例示するものであり、(a)は、前駆体PDPA23−PDMA68ジブロックコポリマー、(b)は、PDPA23−PDMA68ジブロックコポリマー(目標架橋度30%、BIEE使用)から得られたシェル架橋型ミセル上に既述の条件下でシリカを沈着させることにより得られたコポリマー−シリカコア−シェル型ナノ粒子(図3A参照)、(c)は、コポリマーを800℃で焼成して熱分解することによって得られた中空シリカナノ粒子について記録されたものである。コポリマー−シリカコア−シェル型ナノ粒子のFT−IRスペクトルに含まれるIRバンドは、シリカネットワーク(1080cm−1はSi−O伸縮に対応する多重線、950cm−1はSi−OH振動モード、800cm−1はSi−O−Si変角、470cm−1はSi−O変角)の特徴に加えてコポリマー(1730cm−1のカルボニルエステル伸縮)の特徴も有している。この後者のカルボニルバンドはコポリマーの焼成後には予想通り消失して中空シリカ粒子の形成を示唆しており、この最終的な結果は、TEM研究の結果により確認されている。
【図14】PDMA外殻鎖の目標架橋度が30%であるPDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーから調製された元のSCLミセル(丸)および0.25wt%のSCLミセル溶液(目標架橋度30%)2.0mlおよびTMOS2.0mlの混合物を用いて40分間で合成された最終コポリマー−シリカコア−シェル型粒子(四角)について得られたゼータ電位対pH曲線を示すものであり、比較目的で、市販の超微細20nmシリカゾル(ナイアコル(Nyacol)2040)(三角)のゼータ電位曲線も示す。
【図15】シリカ被覆ミセルのコア内のPDPA鎖をHAuCl4を用いてプロトン化した後、NaBH4を用いてその場で還元することにより得られたAu/シリカナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真を示すものである。この実験から、予想通り、PDPA鎖がシリカ沈着後もミセルコア内に位置したままであることが確認される。
【図16】ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、PDMA、およびPDPAをベースとするABCトリブロックコポリマー合成の略図であり、PEO45−PDMA29−PDPA76トリブロックコポリマーを、PEOをベースとするマクロ開始剤(PEO45−Brマクロ開始剤)を用いた原子移動ラジカル重合(ATRP)により、PEO45−PDMA29ジブロックコポリマーを介して合成した。
【図17】d5−ピリジン中で記録されたPEO45−PDMA29−PDPA76トリブロックコポリマーの1H NMRスペクトルを示すものである。
【図18】シリカロッドのTEM画像を示すものである。シリカ沈着は、コポリマー濃度1.0%で実施し、結果として得られたシリカロッドは超音波処理によって容易に(再)分散した。
【図19】PEO45−PDMA29−PDPA76トリブロックコポリマーから調製された元のコポリマーロッド(四角で示す)および1.0wt%コポリマーミセル溶液1.0mlおよびTMOS0.20gの混合物を用いて20分間で合成された最終シリカロッド(三角で示す)から得られたゼータ電位対pH曲線の比較を例示するものであり、比較目的で、市販の超微細20nmシリカゾル(ナイアコル2040)(丸)から得られたゼータ電位曲線も示してある。
【0041】
第3級アミンメタクリレート系ブロックコポリマー(具体例は、ポリ[2−(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)−ブロック−2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート](PDPA−PDMA))から誘導された、選択的に4級化された非架橋型およびシェル架橋型ミセルをベースとする組成物を用いることにより、特に好ましい結果が達成されており、この種の材料を鋳型として用いると、直径が50nm未満の明確に画定されたコポリマー−シリカナノ粒子の生体模倣による形成が特に上首尾に行われることが証明されている。部分的または完全に4級化されたポリ(2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート)(PDMA)の外殻および疎水性ポリ(2−(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)(PDPA)のコアを含むジブロックコポリマーミセルは、特に、温和な条件下すなわちpH7.2の20℃の水溶液からシリカを沈着させるためのナノサイズの鋳型として用いられている。
【0042】
この種のPDPA−PDMAジブロックコポリマーは、グループ移動重合や制御ラジカル重合等の任意の好適な方法を用いて幅広いブロック組成およびコポリマー分子量で合成することが比較的容易である。このようなジブロックコポリマーは、酸性溶液中においてはポリアミンブロックの両方がプロトン化されるため、分子状に溶解する。水性塩基を用いて溶液のpHを調節すると中性pH付近でミセルの自己会合が起こり、脱プロトン化された疎水性PDPA鎖がミセルのコアを形成し、カチオン性(プロトン化された)PDMA鎖がミセルの外殻を形成する。あるいは、そして、調査対象の正確なブロック組成および4級化の度合いに応じて、選択されたジブロックコポリマーを中性pH付近の水中にそのまま溶解させることができ、明確に画定されたミセルが形成される。
【0043】
この種の非架橋型およびSCLミセルはいずれも、コロイドの安定性を失うことなくシリカで被覆することができる。SCLミセル上のシリカ沈着は、主としてカチオン性PDMAシェル内に限定され、pH応答性PDPAコアを有するコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子が得られる。さらに、その場でのシリカ沈着は未架橋のPDPA−PDMAミセルを効果的に安定化させ、元のPDPA−PDMAミセルの場合は溶液のpHを低下させると酸性溶液中で解離して個々のコポリマー鎖となることが見出されている一方で、これは変化しないままである。
【0044】
本発明のさらなる実施形態においては、ポリ(エチレンオキシド)−PDMA−PDEAトリブロックコポリマーが異方性の高いロッド状シリカ粒子の調製を促進することが示された。
【0045】
これらのミセルの1,2−ビス−(2−ヨードエトキシ)エタン(BIEE)を二官能性4級化剤として用いたシェル架橋は、温和な条件下においても高希釈度で容易に達成することができる。BIEEはPDMA鎖を選択的に4級化し、それよりもはるかに反応性の低いPDPA鎖を変化させずに残す。
【0046】
本発明の第1の態様による組成物を調製するための一般的な手法を図1に示すが、ここから、コポリマーミセルに架橋が組み込まれているか否かに応じて沈着されたシリカシェルの厚みが異なることが見出せるであろう。PDMAブロックの4級化の度合いも重要な要素となり得る。PDMAシェルは、プロトン化および/または4級化のいずれかによって顕著なカチオン性の性質を有しており、そのため、高分子触媒としても、シリカ形成のための物理的な骨組みとしても作用することができる。オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)をシリカ前駆体として用いて、20℃の水溶液中において、中性付近のpHで生体鉱物化を実施した。
【0047】
これに従い、第1の手法においては、PDPA23−PDMA68ブロックコポリマーをテトラヒドロフラン中でヨードメタンを用いて20℃で24時間処理することによって部分的または完全に4級化し、pH2で溶解させた後、pHを7.2に調整することによって非架橋型ミセルを形成させ、最後に、このミセルを、オルトケイ酸テトラメチルを用いて室温下にpH7.2で10〜40分間処理することによってシリカ沈着を起こさせると、結果として、比較的大過剰のTMOSを用いた場合は比較的厚肉のシリカシェルを有するシリカ架橋型ナノ粒子が形成される。
【0048】
あるいは、PDPA23−PDMA68ブロックコポリマーをpH2で溶解させた後、pH7.2に調整することによってミセルを形成させ、次いで、このミセルを1,2−ビス−(2−ヨードエトキシ)エタン(BIEE)を用いて20℃で72時間処理することにより4級化することによってシェルを架橋させ、次いで、架橋されたミセルを、オルトケイ酸テトラメチルを用いて室温下にpH7.2で10〜40分間処理することによりシリカ沈着を実施すると、結果として、比較的大過剰のTMOSを用いた場合は比較的薄肉のシリカシェルを有するシリカナノ粒子が形成される。
【0049】
まず、本発明者らは、PDPA23−PDMA68コポリマー前駆体からそのまま調製した非架橋型ミセルを鋳型として用いたシリカ沈着を実施した。動的光散乱(DLS)研究から、これらのミセル鋳型の25℃における強度平均径が37nmであることが示された。pH7.2においては、ミセルシェル内のPDMA鎖は約50%がプロトン化されており、したがって、かなりの程度のカチオン性の性質を有している24。
【0050】
上記ミセルのケイ酸化は、ミセル水溶液(0.25w/v%、pH7.2)2.0mlをオルトケイ酸テトラメチル1.0mlと一緒に混合し、次いで、初期に不均質な溶液を自然条件下で20分間撹拌することにより達成される。こうして得られたシリカ被覆されたナノ粒子をエタノールで洗浄した後、16000rpm、5分間の遠心分離/再分散サイクルを3回実施した。次いで、超音波浴を用いることにより、沈降したナノ粒子の再分散を達成した。
【0051】
生成物の熱重量分析から、シリカナノ粒子のジブロックコポリマーの平均含有量は約15質量%であることが示された。これらのTMOS処理されたミセルから得られた典型的な透過型電子顕微鏡写真(TEM)画像を図2Aに示す。シリカ/PDMA混成シェルはミセルコア内のPDPA鎖よりも電子密度が高いので、鋳型を介して形成されたコア−シェル型構造を有するシリカナノ粒子がはっきりと観察される。これらのナノ粒子の数平均径は約35nmであり、これは前駆体ミセルの寸法と適度に一致する。しかしながら、図2Aには、鋳型を介したシリカナノ粒子の形成に加えて、境界が不明瞭な、鋳型を介していないシリカ構造の形成も若干見受けられ、この場合はシリカ形成がとりわけ良好に制御されているわけではないことを示唆している。理想的には、シリカ形成は、バルク溶液中で起こるのではなくカチオン性コポリマーミセル上のみで起こるべきである。
【0052】
しかしながら、4級化されたポリマーを用いることによってシリカ沈着の制御が改善された。まず、試験的な実験を、PDMAホモポリマーを用いて実施し、オルトケイ酸テトラメチル1.0mlおよびPDMAホモポリマー水溶液1.0ml(DMA繰り返し単位の濃度[DMA]=0.064M)をpH7.2、20℃で混合すると、初期に不均質であった溶液が15分間の連続撹拌後に均質化することがわかった(TMOSが加水分解し、これによってケイ酸が生成し、系が均質化する)。それとは対照的に、同一条件下における50%および100%4級化されたPDMAホモポリマーの場合は、これに対応する、反応溶液を均質化するのに要する時間は、それぞれ25分間および50分間であった。これは、4級化されたPDMA鎖が、TMOS前駆体の加水分解をゆっくりと触媒し、したがって、制御がおそらくより上首尾に行われることを示唆している。
【0053】
PDMAホモポリマーを用いたこれらの実験は、部分的または完全に4級化されたPDPA23−PDMA68コポリマーミセルを鋳型として用いることにより十分に制御されたシリカ沈着が達成され得ることを示唆している。これに従い、ヨードメタンを温和な条件下で用いてDMA残基を選択的に4級化する実験を実施した。PDMA鎖の50%が4級化されたPDPA23−PDMA68コポリマーミセルの0.25wt%水溶液のpH7.2における強度平均径が29nmであることが動的光散乱(DLS)により示された。オルトケイ酸テトラメチル(1.0ml)をミセル水溶液2.0mlに20℃で加え、連続的に撹拌しながらシリカ沈着を20分間継続させた後、遠心分離により単離した。
【0054】
精製して得られたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子のTEM画像を図2Bに示す。コア−シェル型のナノ構造がはっきりと観察され、個数平均径は28±3nmであった。DLS調査からは、強度平均径が34nmであり、図4に例示するように、サイズ分布が比較的狭いことが示された。この場合は、4級化されていないジブロック前駆体から得られた結果とは対照的に、鋳型を介さずにシリカ構造が形成された形跡はなく、二次的な核形成が最小限に抑えられたことを示唆している。
【0055】
100%4級化されたPDMAブロックを有するミセルを用いて得られたTEMの結果を図5に示すが、ここからは、コポリマーのコアが形成された形跡はほとんどまたは全く認められないことが明らかであり、したがって、一部4級化されたコポリマーが本発明の特に好ましい実施形態であることが確認される。しかしながら、熱重量分析からは、50%および100%4級化されたPDMAブロックを有するミセルから誘導されたシリカナノ粒子のジブロックコポリマーの平均含有量がそれぞれ約18質量%および16質量%であったことが示された。したがって、PDMA鎖を4級化することは、シリカ沈着を十分に制御するために正に有利なようである。さらに、同一の生体鉱物化条件下において4級化されていないコポリマーミセルを用いて得られたもの(図2A参照)と比較すると、これらの4級化されたミセルにより、より厚肉のより明確に画定されたシリカシェルを有する混成ナノ粒子が生成する。
【0056】
本発明者らは、これらのコポリマー−シリカコア−シェル型粒子のナノ構造が、シリカ沈着に用いられるTMOSの量を最適に調整することによって単純に制御することができることも確かめた。このようにして、例えばより少量のTMOSを用いた場合は、シェルが薄肉でコポリマーのコアが大きいシリカ粒子が得られた。TMOS58mgを50%4級化されたコポリマーミセルの0.25w/v%溶液2mlと合一した混合物を20分間撹拌することにより、個数平均径が約26nmである明確に画定されたシリカ粒子(図9A/9B参照)が形成された。表1に示すように、生成物の熱重量分析からこれらのコア−シェル型コポリマー−シリカ粒子のコポリマーの平均含有量が約28質量%であることが示され、シリカの反応率が約58%であることを示していた。このような粒子のシリカシェルははるかに薄肉であり、かつコポリマーコアがより大きい。さらに、たとえ反応時間を20分間から8時間に延長してさえも、使用されたTMOSの量が低減されていれば、コロイドの安定性は維持されていた(図12A/12B参照)。上述の合成においてTMOSの量を116mgに増量した場合に得られた結果を図9C/9Dに示す。ここでも同じく、鋳型を介さなかったシリカの形跡はなく(図2Bで観察されたものと同様)、これらのシリカナノ構造が効率的に鋳型を介して形成されていることを示している。さらなる熱重量分析からは、これらのコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子のコポリマー含有量が図9A/9Cに示すコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子(コポリマー含有量28%)よりも低い(23%)ことが示された。このことは、より多量のTMOSを用いると、それ以外の条件が同一であれば、より多量のシリカが沈着されることを示している。
【0057】
TEM調査から、生体鉱物化を介して効率的なミセル架橋が行われているさらなる根拠が示された。図2B(挿入図参照)および図6に示すように、シリカ架橋されたミセルはpH2においてそのまま分散させて乾燥させた後もその球状のコア−シェル型構造を維持している。pH2におけるコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子の1H NMR調査では、プロトン化されたPDPA鎖によりδ1.3〜1.4のシグナルが生成した(図7参照)。しかしながら、溶液のpHをpH7に上昇させるとPDPA鎖が脱プロトン化し、したがって疎水性になるために、このシグナルは消失した。したがって、これらの分光学的調査から、ミセルコア中のPDPA鎖はpH応答性を有する(すなわち、低pHで親水性になり、高pHで疎水性になることができる)ことが確認され、このことは、これらの新規なコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子が内封/徐放用途に使用される可能性をさらに例示するものである。
【0058】
典型的には、シェル架橋は、ミセル間の融合を回避するために高希釈度(普通はコポリマーミセルが0.5wt%未満)で実施される。しかしながら、生体模倣によるシリカ沈着を用いたミセル架橋は、それよりも幾分高い濃度で上首尾に実施することができる。これに従い、図11A/11Bに示すように、コポリマーミセル(PDMAシェルを基準として50%が4級化されている)1.0w/v%溶液1mlをTMOS116mgと20分間混合することにより、個数平均径が約26nmの明確に画定された混成コポリマー−シリカコア−シェル型粒子が生成した。2.0w/v%コポリマーミセルを用いることにより類似のサイズの粒子も得られた(図11C/11D参照)。熱重量分析(表1)から、図11A/11Bおよび11C/11Dに示したコポリマー−シリカコア−シェル型粒子のコポリマーの平均含有量がそれぞれ約20および22質量%であったことが示され、これは、シリカの反応率がそれぞれ87および78%であったことを示唆している。したがって、このSCLミセルを得るためのシリカ沈着による生体模倣的手法は、著しく効率的なようであり、先行技術の方法と比較すると、温和な反応条件、短い反応時間、および比較的安価な試薬という観点で特に有利である。
【0059】
また、本発明者らは、1,2−ビス−(2−ヨードエトキシ)エタンを用いた選択的4級化およびPDMA鎖の架橋によるSCLミセルの調製も行い、結果として得られたカチオン性ミセルをシリカ沈着の鋳型として評価した。PDMA外殻鎖の目標架橋度を30mol%とした。DLS調査を25℃で実施したところ、前駆体SCLミセルの強度平均ミセル径が37nmであることが示された。
【0060】
非架橋型ミセルに用いたものと同一条件下で、オルトケイ酸テトラメチルを用いた生体鉱物化を実施した。図3Aは、結果として得られたシリカナノ粒子の典型的なTEM画像を示すものである。DLSおよびTEMによるこれらの強度平均および個数平均径はそれぞれ35nmおよび32±5nm(図8参照)であり、SCLミセル前駆体から得られた値とかなりよく一致していた。さらに、これらがコア−シェル型構造を有することもはっきりと示されている。例えば、図3Aにおいて下側の白い四角に示されるシリカナノ粒子のPDPAコアは約14nmであり、シリカ/PDMA混成シェルの厚みは約11nmである。目標架橋度を50%として調製されたSCLミセルを用いた生体鉱物化調査からは、図3Bに示すように同様の結果が得られた。非架橋型ミセルを用いて調製されたシリカナノ粒子(図2A)と比較すると、SCLミセル前駆体から得られたシリカ粒子はより大きなコアおよびより薄肉のシェルを有していた。さらに、分散液中には鋳型を介していないシリカの形跡はなく、ここでもシリカ沈着が十分に制御されていることが示されている。
【0061】
より少量のTMOSを用いたシリカ沈着も実施した。これに従い、0.25w/v%コポリマーミセル溶液(BIEEを用いた目標架橋度50%)2mlを分取してTMOS58mgと一緒に20分間混合すると、シリカ沈着により、コロイド状に安定した分散液ではなく凝集に至った。TEM調査から、約17nmのコア−シェル型シリカ粒子が形成していることとともに、一次粒子が互いに結合して融合していること(図10A/10B)が示された。熱重量分析(表1参照)から、平均ポリマー含有量が約30質量%であることが示され、これは、シリカの反応率が約50%であることを示している。シリカナノ粒子の形成は、同一条件下でやや過剰のTMOSを用いることにより大幅に改善された。これに従い、0.25w/v%コポリマーミセル溶液(目標架橋度50%、BIEE使用)2mlをTMOS116mgと20分間混合すると、コロイド状に安定した分散液が生じた(目視により判定)。図10C/10Dに示すように、個数平均径が約20nmである混成コポリマー−シリカ粒子が得られた。熱重量分析から、平均コポリマー含有量が約24質量%であることが示され、シリカの反応率が約35%であることを示していた。
【0062】
初期に均質な条件下でSCLミセルを用いてもシリカ沈着を制御することができる。これに従い、0.25wt%のSCLミセル溶液を2.0ml分取してメタノール2.0mlおよびオルトケイ酸テトラメチル2.0mlの混合物に加え、メタノールを共溶媒として作用させることにより、反応開始時点からTMOSが水相と確実に混和するようにした。シリカ沈着を40分間継続した後、得られた生成物のTEM調査を実施し、図3Cに例示したように、明確に画定されたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子が予想通り形成されたことを確認した。一方、たとえこの処理を120分間継続した後でさえも、図3Dに示すように、鋳型を介していないシリカナノ構造の形跡は認められなかった。
【0063】
図3Aに示す、SCLミセルから誘導されたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子の特性評価を、さらに熱重量分析、FT−IR分光法、および水系電気泳動(aqueous electrophoresis)を用いて実施した。熱重量分析からは、コポリマー−シリカ粒子の平均コポリマー含有量が約19質量%であることが示されるとともに、図13に例示するFT−IR調査からは、これらの粒子に無機成分が存在することによる1080、950、800、および470cm−1のバンドが認められたことから、シリカが形成したことが確認された。これらのバンドは、生体鉱物化前のコポリマーミセルから得られたスペクトルには存在しないことがわかった。800℃で焼成した後は、熱分解されたコポリマーに帰属される1726cm−1の特徴的なバンドは完全に消失し、一方、熱的に安定なシリカに帰属されるバンドは依然として観察された。
【0064】
TEM調査から、コポリマー−シリカ粒子の有機成分が熱分解された後に、中空のシリカ粒子になったことが示された。図14に示すように、ゼータ電位測定からも、シリカがコポリマーミセルの外殻層内に沈着されたことが支持された。前駆体SCLミセル(PDMA鎖の目標架橋度30%)のゼータ電位は、これらがカチオン性のPDMAシェルを有するため、調査した全pH範囲にわたって正の値を示していた。一方、シリカ被覆されたミセルは幅広いpH範囲にわたって負のゼータ電位を示し、等電点はpH3.3付近であった。この後者の挙動は、水性コロイド状シリカゾルに見られるものと類似しており(図14参照)、したがって、SCLミセルがシリカ外被で被覆されたことと一致している。
【0065】
本発明者らはまた、このような混成コポリマー−シリカ粒子内に金ナノ粒子を沈着させることも試みた。これを達成するために、まず、ナノ粒子のコア内の弱塩基性のPDPA鎖をプロトン化するためにHAuCl4を使用した。次いで、プロトン化されたPDPA鎖に付随する対イオンAuCl4−を、還元剤としてNaBH4を用いてその場で還元することによりゼロ価の金ナノ粒子を生成させた。還元ステップ後、コポリマー−シリカ混成ナノ粒子の色が白色からワインレッドに変化し、ナノサイズの金ゾルが形成したことを示唆していた。図15に例示するように、TEM観察から、コポリマー−シリカナノ粒子のコア内に金ゾルが生成したことが裏付けられた。しかしながら、一部のシリカシェルが破壊されていることも明らかであった。この実験から、混成コポリマー−シリカ粒子のコア内にPDPA鎖が存在することの直接の証拠も得られた。
【0066】
このように、量子ドットや生物活性分子等の他の化学種が内封される可能性もはっきりと例示されている。実際、これらの明確に画定されたナノ構造の結果、これらの混成コポリマー−シリカナノ粒子は、生体標識、生体診断、薬剤の標的送達、可溶化、触媒反応、および撮像における用途ならびにフィラーおよびコーティングとしての用途に潜在性を有している。
【0067】
本明細書における、温和な条件、短い反応時間、および入手可能な試薬を利用できるという事実は、商業的に適用可能な製造方法を準備する際には明らかな利点が得られるであろう。さらに、粒子のサイズおよび/または性質を制御できることも有利である。
【0068】
シリカを使用することは、本発明の材料の潜在的用途という観点でも特に有利である。つまり、シリカは通常、「食用」材料と認識されているので、これらの新規な粒子は食品製造にも潜在的用途がある。
【0069】
本発明者らの研究により、コポリマーミセルの性質に厳密に依存して固体の球(空洞なし)または構造化されたコア−シェル型の球(薄いシェルを有する)または構造化されたコア−シェル型の球(厚いシェルを有する)のいずれかを得ることができることから、対象とするジブロックコポリマー鋳型の4級化およびシェル架橋の度合いを変化させることが、その場でのシリカ生体鉱物化中に生成するシリカナノ粒子の性質に顕著に影響することは明らかである。
【0070】
本発明のコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子は先行技術のものより幾分大きい(30nm対10nm)ことから、充填能力をより高くすることが可能になるはずである。混成コポリマー−シリカ粒子のコア−シェル性はTEM調査によりはっきりと例示された。そして、これらの結果は、X線小角散乱調査(SAXS)により裏付けられた。TEMおよびSAXSにより得られる壁の平均厚さはよく一致している。
【0071】
しかしながら、本発明の最も顕著な利点はおそらく、特許請求された組成物のコア形成性PDPAブロックがpH応答性であり、これにより、混成コポリマー−シリカナノ粒子のコアから疎水性の有効成分がpH刺激応答放出される可能性が提供されることにある。
【0072】
ABCトリブロックコポリマーは、主として異方性のロッド状コポリマー−シリカ粒子の調製に特に上首尾に使用されることが見出され、上記ナノロッドは、ゼロ次分散放出を可能にするはずである。上記ナノロッドの合成を図16に例示するが、ここでは、まず、ポリ(エチレンオキシド)をベースとするマクロ開始剤(PEO45−Br)を塩化銅(I)の存在下に2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMA)と反応させ、次いで、その生成物をさらに2−(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPA)と反応させる。得られたコポリマーをGPCおよび1H NMRで特性評価した結果を表2および図17に示すが、これは、d5−ピリジン中で記録されたトリブロックコポリマーの1H NMRスペクトルを示すものである。
【0073】
このコポリマーは、PDPAコア、PEO外殻、およびPDMA内側シェルを有するコロイド状のミセル状会合体に自己会合するように設計されたものである。PDMAブロックのpKaは約7.0であるので、これらの残基の約50%がpH7.2でプロトン化される。したがって、シリカ沈着は、カチオン性のPDMA内側シェル内のみで起こると予想され、外殻のPEOブロックは立体的な安定性を供与する。したがって、粒子の融合を誘起することなくシリカ沈着は比較的高いコポリマー濃度で実施することができると考えられる。
【0074】
シリカ沈着をコポリマー濃度1.0%で実施し、異方性ロッド状コポリマー−シリカ粒子を生成させた。これは超音波処理によって容易に(再)分散した。結果として得られたシリカロッドをTEM、熱重量分析、FT−IR分光、およびゼータ電位測定を用いて特性評価した。図18は、シリカロッドの代表的なTEM画像を示すものである。FT−IR調査から、これらのシリカロッドの無機成分由来の1080、950、800、および470cm−1のバンドならびにポリマーのカルボニルエステル伸縮由来の1726cm−1のバンドが観測されたことから、シリカが形成したことおよびポリマーが内封されていることが確認された。熱重量分析から、これらの中空シリカロッドの平均コポリマー含有量が約26質量%であることが示され、図19に示すように、ゼータ電位測定から、コポリマーミセル上にシリカが上首尾に被覆されたことが示された。
【0075】
以下の実施例を参照することにより本発明をさらに例示するが、本開示の範囲を何ら限定するものではない。
【0076】
[実施例]
[実施例1]
Chem.Commun.、1997年、671〜672頁に従いグループ移動重合を用いてモノマーを逐次付加させることによりPDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーを合成した。一連の単分散に近いポリ(メチルメタクリレート)を較正基準として用いたゲル浸透クロマトグラフィー分析から、Mnが18000であり、Mw/Mnが1.08であることが示された。PDPAおよびPDMAブロックの平均重合度は、1H NMR分光を用いることにより、それぞれ23および68と推定された。
【0077】
PDPA23−PDMA68ジブロックコポリマー(4級化度=0%)をpH2で分子状に溶解させた後、NaOHを用いて溶液のpHをpH7.2に調整することにより非架橋型ミセル調製した。25℃における動的光散乱(DLS)調査から、pH7.2のコポリマーミセルの0.25wt%溶液においては、ミセルの強度平均径が37nmであることが示された。
【0078】
上記ミセルのミセル水溶液(0.25w/v%、pH7.2)2.0mlをオルトケイ酸テトラメチル1.0mlと混合した後、初期に不均質な溶液を自然条件下で20分間撹拌することによりケイ酸化を達成した。こうして得られた混成コア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子をエタノールで洗浄した後、16000rpm、5分間の遠心分離/再分散サイクルに3回かけた。次いで、沈降したコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子の再分散を、超音波浴を用いて達成した。
【0079】
[実施例2]
実施例1のようにグループ移動重合を用いてモノマーを逐次付加することによりPDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーを合成した。
【0080】
Macromolecules、2001年、第34巻、1148〜1159頁に記載されたように、ヨードメタンを用いたPDMAブロックの部分4級化(目標4級化度は50%または100%のいずれか)をTHF中で24時間実施した。
【0081】
50%または100%4級化されたPDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーを用いて調製された非架橋型ミセルも同様に、実施例1に記載したようなpH調整によって調製した。pH7.2で実施したDLS調査から、50%および100%4級化されたコポリマーミセルの0.25wt%水溶液の場合は、強度平均径がそれぞれ29nmおよび26nmであることが示された。
【0082】
PDMA鎖が50%4級化されたPDPA23−PDMA68コポリマーミセルの0.25wt.%水溶液2.0mlにオルトケイ酸テトラメチル(1.0ml)を20℃で添加し、連続撹拌しながらシリカ沈着を20分間継続させた後、遠心分離によって単離した。
【0083】
50%4級化されたコポリマー前駆体を用いて得られた混成コア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子のDLS調査から、pH7付近のミセルの強度平均径が34nmであることが示された。
【0084】
[実施例3]
グループ移動重合を用いてモノマーを逐次添加することによりPDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーを合成し、PDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーの非架橋型ミセルを実施例1に記載したように調製した。
【0085】
二官能性4級化剤である1,2−ビス−(2−ヨードエトキシ)エタン(BIEE、目標架橋度30%を達成するため、DMA残基1個当たり0.15mol)をPDPA23−PDMA68コポリマーミセルの0.25%溶液にpH7.2で添加することにより外殻PDMA鎖のシェル架橋を達成した。シェル架橋を25℃で少なくとも72時間実施した。シェル架橋させた後のDLS調査から、強度平均径が32nmであることが示され、TEM調査からは、乾燥させたSCLミセルの数平均径が26nmであることが示された。SCLミセル水溶液をpH2に調整してDLS調査を行ったところ、SCLミセルの膨潤とにより強度平均径が45nmであることが示された。
【0086】
低pHにおいてはPDPA鎖が高度にプロトン化され、したがってもはや疎水性ではなくなるので、非架橋型ミセルの場合は低pHで単純に解離して分子状に溶解した溶液を形成するという理由から、このDLS実験により、シェル架橋が上首尾に行われたことも確認された。さらに、50%4級化されたコポリマーを用いて調製されたSCLミセルのDLSにより示された強度平均径はpH7.2で37nmであった。
【0087】
0.25wt%SCLミセル溶液を2.0ml分取して、メタノール2.0mlおよびオルトケイ酸テトラメチル2.0mlの混合物に加えることによりシリカ沈着を達成した。ここでは、メタノールを共溶媒として作用させ、TMOSが確実に水相と混和するようにした。シリカ沈着を40分間継続した後に得られた生成物のTEM調査を行い、図3Cに例示するように明確に画定されたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子の形成を確認した。一方、この処理を120分間継続した後でさえも、図3Dに示すように、鋳型を介していないシリカナノ構造の形跡は認められなかった。
【0088】
[実施例4]
PEO45−PDMA29−PDPA76トリブロックコポリマーをPEOベースのマクロ開始剤を用いた原子移動ラジカル重合により合成した。まず、マクロ開始剤(1.00g、0.463mmol)を25mlの一頚フラスコに加え、次いで、吸引/窒素サイクルを3回行うことにより脱気した後、DMA(2.18g、13.88mmol、目標架橋度30)、2,2’−ビピリジン(144.5mg、0.925mmol)、次いで、脱気した95/5v/vIPA/水混合物3.2mlを加えた。この溶液を40℃の油浴に入れて均質になるまで撹拌した。次いで、塩化銅(I)(45.8mg、0.463mmol)を加えて反応を40℃で3.5時間窒素中で連続撹拌しながら実施した。この時間が経過した後、1H NMR分光で測定したDMAモノマーの反応率は96%に到達した。
【0089】
その後、DPA(4.94g、23.13mmol、目標架橋度=50)および95/5v/vIPA/水混合物5.0mlの混合物を加えた。2段階重合を40℃で18.5時間実施した後、空気に触れさせることにより停止した。1H NMR分析により、DPAモノマー反応率が99%に到達したことが示された。コポリマー溶液をTHF(200ml)で希釈し、シリカカラムを通して使用済み触媒を除去した。次いで、コポリマー溶液を減圧濃縮し、固体のコポリマーを脱イオン水(100ml)中で析出させることにより残留モノマーおよび任意の未反応のPEO−DMAジブロックコポリマーを除去した。精製された白色のコポリマーを真空中で一夜凍結乾燥させることにより単離した。全体の収量は6.1g(76%)であった。
【0090】
PEO45−PDMA29−PDPA76トリブロックコポリマーをpH2で分子状に溶解した後、NaOHを用いて溶液のpHを7.2に調整してミセルのロッドを形成させる調製を行った。最終コポリマー濃度を1.0wt%とした。過剰のTMOS(0.20g、すなわちTMOS:コポリマー質量比20:1)をコポリマー溶液1.0mlに加え、次いで、ケイ酸化を20℃、pH7.2で20分間実施することによりシリカ沈着を達成した。エタノールで洗浄した後、13000rpm、15分間の遠心分離/再分散サイクルを3回行うことによりシリカロッドを得た。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア−シェル型ナノ粒子を含む組成物であって、前記ナノ粒子が、
(a)ポリマーを含むカチオン性コア材料と、
(b)シリカを含むシェル材料と
を含む、組成物。
【請求項2】
前記コア材料が、コポリマーミセルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記コポリマーミセルが、ジブロックコポリマーミセルを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ジブロックコポリマーミセルが、第1ポリマーの少なくとも1種のブロックを含むコアおよび第2ポリマーの少なくとも1種のブロックを含む外殻を有し、前記第2ポリマーが前記第1ポリマーとは異なる、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記コポリマーが、第1ポリマーおよび第2ポリマーを含み、その両方がアミノ系(アルク)アクリレートモノマー単位を含む、請求項2〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記(アルク)アクリレート単位が、アクリレート単位を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリマーが、ポリ[2−(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)−ブロック−2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート](PDPA−PDMA)を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記PDPA−PDMAコポリマーの重合度が、前記少なくとも1種のPDPAブロックの平均重合度が20〜25の範囲になるように制御されている、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記PDPA−PDMAコポリマーの重合度が、前記少なくとも1種のPDMAブロックの平均重合度が65〜70の範囲になるように制御される、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
前記シェル材料が、少なくとも1種のシリカ前駆体から前記コア材料上に配置されたシリカを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ナノ粒子の平均特定サイズ(g)が約300nm以下である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ナノ粒子の平均粒度が10〜100nmの範囲にある、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ナノ粒子が異方性のロッド状形態を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のコア−シェル型ナノ粒子を含む組成物の調製方法であって、
(a)ポリマーを含むカチオン性コア材料を調製するステップと、
(b)前記コア材料を、シリカを含むシェルで被覆するステップと
を含む方法。
【請求項15】
前記ポリマーコア材料が、グループ移動重合または制御ラジカル重合により調製される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1種の活性剤を系内に徐放送達するのを促進するようになされた組成物であって、前記組成物が、請求項1〜13のいずれか一項に記載のコア−シェル型ナノ粒子を含み、前記組成物が、前記系のpHを制御しながら変化させることに応答して前記徐放送達を提供するようになされている、組成物。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のナノ粒子を含むコーティング。
【請求項1】
コア−シェル型ナノ粒子を含む組成物であって、前記ナノ粒子が、
(a)ポリマーを含むカチオン性コア材料と、
(b)シリカを含むシェル材料と
を含む、組成物。
【請求項2】
前記コア材料が、コポリマーミセルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記コポリマーミセルが、ジブロックコポリマーミセルを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ジブロックコポリマーミセルが、第1ポリマーの少なくとも1種のブロックを含むコアおよび第2ポリマーの少なくとも1種のブロックを含む外殻を有し、前記第2ポリマーが前記第1ポリマーとは異なる、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記コポリマーが、第1ポリマーおよび第2ポリマーを含み、その両方がアミノ系(アルク)アクリレートモノマー単位を含む、請求項2〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記(アルク)アクリレート単位が、アクリレート単位を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリマーが、ポリ[2−(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)−ブロック−2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート](PDPA−PDMA)を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記PDPA−PDMAコポリマーの重合度が、前記少なくとも1種のPDPAブロックの平均重合度が20〜25の範囲になるように制御されている、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記PDPA−PDMAコポリマーの重合度が、前記少なくとも1種のPDMAブロックの平均重合度が65〜70の範囲になるように制御される、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
前記シェル材料が、少なくとも1種のシリカ前駆体から前記コア材料上に配置されたシリカを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ナノ粒子の平均特定サイズ(g)が約300nm以下である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ナノ粒子の平均粒度が10〜100nmの範囲にある、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ナノ粒子が異方性のロッド状形態を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のコア−シェル型ナノ粒子を含む組成物の調製方法であって、
(a)ポリマーを含むカチオン性コア材料を調製するステップと、
(b)前記コア材料を、シリカを含むシェルで被覆するステップと
を含む方法。
【請求項15】
前記ポリマーコア材料が、グループ移動重合または制御ラジカル重合により調製される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1種の活性剤を系内に徐放送達するのを促進するようになされた組成物であって、前記組成物が、請求項1〜13のいずれか一項に記載のコア−シェル型ナノ粒子を含み、前記組成物が、前記系のpHを制御しながら変化させることに応答して前記徐放送達を提供するようになされている、組成物。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のナノ粒子を含むコーティング。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2010−502795(P2010−502795A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527050(P2009−527050)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007729
【国際公開番号】WO2008/028641
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007729
【国際公開番号】WO2008/028641
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】
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