説明

新規な有機−無機ハイブリッド材料IM−19およびその調製法

本発明は、ガリウム元素を含みかつ有機架橋によって一緒に接続される金属中心の無機ネットワークを含む新しいハイブリッド有機−無機材料並びにその調製および使用に関する。本発明はまた、前記ハイブリッド有機−無機材料の合成の間に得られる中間固体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機−無機混合マトリクスを有する、新規な結晶化ハイブリッド材料(以後IM−19と呼ぶ)、その調製方法、および触媒または吸着剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質固体の類は、産業用途のみならず日常生活的な用途においても重要であることには議論の余地もないことであり、材料の分野において実施される探索研究においては、依然として大きな関心が持たれている。
【0003】
無機多孔質固体は、それらの構造の開口部を拡大するために広く研究されたが、その目的は、反応剤の活性サイトへのアクセス、またはこの活性サイトからの反応生成物の脱離を容易とするためである。
【0004】
1990年代以降、有機−無機混合マトリクスを有するハイブリッド化合物が特に注目されており、多孔質材料のタイプを区別するグループの数が次の3種にまでなってきた:無機材料、炭素材料、およびハイブリッド材料(配位高分子とも呼ばれる)。
【0005】
これらの配位高分子(その最初のものは1960年代に記載がある)は、発表の数が増え続ける対象となっている。事実、これらの材料についての興奮は、短時間の間に、すでに先進構造多様性の域に達するまでになってきた(非特許文献1)。概念的には、有機−無機混合マトリクスを有する多孔質ハイブリッド固体は、無機骨格を有する多孔質固体に極めて類似している。この多孔質固体と同様に、それらは、多孔性を生じさせることによって、化学的実体物を結び付けている。主な違いは、それらの実体物の性質にある。この差が特に有利であって、それによりこのカテゴリーの固体に汎用性が与えられている。事実、それらの細孔サイズは、有機リガンドの使用を通じて、その炭素鎖の長さにより調節可能である。骨格は、無機多孔性材料の場合、いくつかの元素(Si、Al、Ge、場合によりZn)のみ受け入れることができるが、この場合、骨格は、全てのカチオンを用いることができる(アルカリカチオンを除く)。これらの材料について、特定の構造化剤は必要なく、溶媒がそれ自体で、この機能を全て満たす。
【0006】
したがって、このクラスの材料は、構造の多様性、その結果として、固体を目的とする用途に適合させられることを可能にすることが明らかなようである。
【0007】
配位高分子は、コネクタおよびリガンドと呼ばれる2つの要素からなり、それらの配位と結合サイトの数が、そのハイブリッド材料の構造を決定する。すでに言及されたように、これらのリガンドおよびコネクタの多様性は、広く各種のハイブリッド材料を生じさせる。他のさらなる補助的化合物も合成において含まれる:例えば、ブロッカー、カウンターイオン。
【0008】
リガンドと呼ばれているものは、ハイブリッド材料の有機部分である。これらのリガンドは、多くの場合、ジ−もしくはトリ−カルボキシラートまたはピリジン誘導体である。いくつかの頻繁に遭遇される有機リガンドが以降に示される:bdc=ベンゼン−1,4−ジカルボキシラート、btc=ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシラート、ndc=ナフタレン−2,6−ジカルボキシラート、bpy=4,4’−ビピリジン、hfipbb=4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)−ビスベンゾアート、cyclam=1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン。
【0009】
【化1】

【0010】
コネクタとして機能する無機実体物は、単一のカチオン、ダイマー、トリマーもしくはテトラマー、または鎖状、面状、さらには三次元状のネットワークである。
【0011】
したがって、YaghiおよびFereyのチームは、数多くの新規な材料を記載した(それぞれ、MOFシリーズ、およびMILシリーズである)。多くの他のチームはこの経路を追いかけ、今日では、新規材料として記載されているものの数は、膨大なものとなっている。ほとんどの場合、それらの研究は、極端に大きい細孔容積、良好な熱安定性、および調節可能な化学的機能性を示す、秩序だった構造を開発することを目的としている。
【0012】
例えば、Yaghiらは、特許文献1に、一連のホウ素をベースとした構造を記載しており、気体の貯蔵の面でそれらが適していることを彼らは示している。Muellerらによる特許文献2には、文献に記載のある構造についての特に完璧な要約が提供されていて、今日すでに存在している材料の大多数を完全に示している。
【0013】
非特許文献2には、アルミニウム原子とリガンドbdc(benzene-1,4-dicarboxylate:ベンゼン−1,4−ジカルボキシレート)とをベースとするMIL−53の相が記載されている。この化合物は三次元構造を有しており、−Al−O(H)−単位を有する一次元の無機鎖が、脱プロトン化されたテレフタル酸コネクタによって結合させられている(bdc=OC−C−CO)。それぞれのアルミニウム原子は、六座配位されていて、ヒドロキシル基の2個の酸素原子がアピカルな位置にあり、4個のテレフタル酸コネクタからの4個の酸素原子がエカトリアルな位置にある。さらに、1個の有機リガンドが4個のアルミニウム原子(2つの隣接するアルミニウム原子の対)に結合させられている。フリーのテレフタル酸分子(Hbdc=HOC−C−COH)が、Hbdc/Al比0.7で、「その骨格で空きとなっている空間」を占めている。
【0014】
ガリウム元素をベースとした、別のタイプの金属前駆体を使用した合成態様を開発することによって、本発明者らは、有機−無機混合マトリクスを有する新規なハイブリッド材料を得た。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0154807号明細書
【特許文献2】米国特許第7202385号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】フェレイ、G.(Ferey,G.)著、ル・アクチュアリテ・シミク(L’actualite chimique)、2007年1月、No.304
【非特許文献2】T.ルアソー(T.Loiseau)ら著、Chem. Eur. J.、2004年、第10巻、p.1373〜1382
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の説明)
本発明の目的は、有機−無機混合マトリクスを含むIM−19と称される新規なハイブリッド結晶材料であって、ガリウム元素をベースとする金属中心の無機ネットワークを含み、テレフタラートタイプ(またはbdc)の有機リガンドによって相互に接続され、かつ、MIL−53材料と等しい構造を有している、材料である。
【0018】
本発明によるハイブリッド材料IM−19は、表1に記載されたラインを少なくとも含むX線回折図を有している。この回折図は、放射線結晶学的分析により、従来の粉末法を用いて、フロントGeモノクロメーター(111)およびPSD検出器を備えたSTOE STADI-P回折計によって得られる。材料分析は、デバイ−シェラー(Debye-Scherrer)モードで、5°から50°まで(2θ)、0.01°の解像度(2θ)および0.1°のピッチで85秒間にわたって記録された。
【0019】
サンプルの格子面間隔(reticular distance)dhklの特性は、角2θで表される回折ピークの位置からブラッグの関係式を適用することにより計算される。dhklにおける測定誤差Δ(dhkl)は、2θの測定に帰する絶対誤差Δ(2θ)の関数として計算される。一般的に、±0.02°に等しい絶対誤差Δ(2θ)が許容されている。Δ(2θ)のそれぞれの値に帰する相対強度I/Iは、相当する回折ピークの高さから測定される。本発明によるハイブリッド材料IM−19のX線回折図は、表1に与えられるdhklの値にラインを少なくとも含む。dhklの列において、格子面間隔の平均値がオングストローム(Å)で与えられている。これらの値のそれぞれが、±0.3Å〜±0.01Åの間の範囲の測定誤差Δ(dhkl)の値に帰されなければならない。
【0020】
【表1】

【0021】
表中、FF=極めて高い;F=高い;m=中程度;mf=中程度に低い;f=低い:ff=極めて低い。強度I/Iは、相対強度スケールに対して与えられ、ここで、100の値がX線回折図の最も強いラインに割り当てられる:ff<15;15≦f<30;30≦mf<50;50≦m<65;65≦F<85;FF≧85。
【0022】
図1は、ハイブリッド固体IM−19のX線回折図に相当する。
【0023】
ハイブリッド材料IM−19は、格子パラメータとして:a=19.187(3)Å;b=7.628(2)Å、c=6.669(1)Åならびに角度として:α=γ=90°、β=95.86(1)°を有する単斜晶系に分類される。
【0024】
本発明はまた、ハイブリッド材料IM−19を調製する際の中間体として得られる、合成されたままの(as-synthesized)形態にある結晶化ハイブリッド材料に関する。合成されたままの形態で得られるこの結晶化ハイブリッド材料は、有機−無機混合マトリクスを有し、該有機−無機混合マトリクスは、ガリウムをベースとし、テレフタラート型の有機リガンドによって互いに接続される金属中心のネットワークを有するハイブリッド材料である。それは、表2に記載されたラインを少なくとも含むX線回折図を示す。
【0025】
この図は、上記の表1について記載された条件と同一の条件下に得られた。
【0026】
【表2】

【0027】
表中、FF=極めて高い;F=高い;m=中程度;mf=中程度に低い;f=低い:ff=極めて低い。強度I/Iは、相対強度スケールに対して与えられ、ここで、100の値がX線回折図の最も強いラインに割り当てられる:ff<15;15≦f<30;30≦mf<50;50≦m<65;65≦F<85;FF≧85。
【0028】
図2は、ハイブリッド材料IM−19の調製の際に得られた合成されたままの形態にある、結晶化中間体固体のX線回折図に相当する。
【0029】
合成されたままの結晶化中間体材料は、格子パラメーターとして:a=17.422(2)Å;b=12.146(2)Å、c=6.737(1)Åおよび角度として:α=γ=β=90°を有する斜方晶系に分類される。
【0030】
本発明はまた、有機−無機混合マトリクスを有する結晶化ハイブリッド材料IM−19を調製する方法を記載する。この方法は少なくとも次の段階を含む:
i)少なくとも1種のガリウム前駆体を水の中に溶解させる段階、
ii)テレフタル酸(Hbdc)を添加する段階、
iii)場合により、フッ化水素酸を添加する工程、
iv)結晶化段階、
v)合成されたままの形態にある、結晶化中間体固体を得るための、ろ過、洗浄、乾燥段階、
vi)前記合成されたままの結晶化中間体固体を活性化させる工程であって、連続的に、ソルボサーマル経路を介して120〜220℃の範囲の温度、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびジメチルホルムアミド(DMF)の中から選択される極性溶媒の存在下で実施される第1の段階a)、アルコール性溶媒の存在下における交換の第2の段階b)、および段階b)の最後に得られた固体を、150〜280℃の間の範囲の温度に加熱することからなる第3の段階c)、を含む段階、
vii)活性化された固体を冷却して、前記材料IM−19を得る工程、ならびに
viii)場合による、得られた材料IM−19を300〜400℃の範囲の温度に加熱して、脱水された、多孔質で溶媒不含有の材料を得る段階。
【0031】
ガリウム前駆体は、ガリウム(III)塩、例えば塩化ガリウム、硫酸ガリウム、酢酸ガリウムまたは硝酸ガリウムの中から選択される。最も好ましくは、使用する前駆体は、硝酸ガリウムである。
【0032】
ハイブリッド材料IM−19の調製(段階i)〜iii))の際に得られる混合物のモル組成は、以下の範囲であり得る:ガリウム前駆体1モル:テレフタル酸0.5〜3モル:フッ化水素酸0〜1モル:水100モル。
【0033】
段階iii)の最後に得られた混合物は、中間体固体の結晶化が得られるまで、水熱処理に付される。
【0034】
結晶化段階iv)は、周囲温度〜260℃、好ましくは150〜230℃の範囲の温度で、12〜72時間にわたり、自己生成性(autogenous)反応圧力条件下に実施される。
【0035】
材料IM−19を調製するための方法の段階v)による乾燥は、20℃から最高200℃の温度までの間で実施される。ほとんどの場合、乾燥は、20〜100℃、好ましくは20〜80℃で、1〜24時間、最も頻繁には4〜10時間の範囲の期間にわたって実施される。
【0036】
有利には、段階v)による乾燥段階の最後に得られた固体は、有利には水により、熱ジメチルホルムアミド(DMF)溶液により、次いでエタノールにより洗浄される。
【0037】
材料IM−19を調製する方法の前記段階v)の最後に、テレフタル酸が存在する、合成されたままの結晶化中間体固体が得られる。この固体のX線回折図が、図2に示されるものであり、表2において与えられる平均dhkl値および測定された相対強度に対応する。
【0038】
次いで、前記結晶化中間体固体は、段階vi)によって活性化させられ、その細孔の内部に含まれるテレフタル酸が放出させられ、材料IM−19が、最初に活性化段階c)の後に脱水された形態で、次いで、段階vii)の後に水和された形態で得られる。
【0039】
活性化処理の第1の段階a)は、合成されたままの結晶化固体を使用して実施され、その結晶化固体はオートクレーブの中に送られ、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびジメチルホルムアミド(DMF)の中から選択される極性溶媒、好ましくはDMFの存在下に持ち込まれ、極性溶媒対合成されたままの結晶化固体のモル比、好ましくはDMF対合成されたままの固体の質量比は、20〜200の範囲、好ましくは50〜150の範囲にわたる。前記段階a)は、有利には、150〜180℃の間の範囲の温度で実施される。それは、有利には1〜10日、非常に有利には2〜10日間、より有利には4〜10日の間の範囲の期間にわたって実施される。
【0040】
前記段階a)に続いて、好ましくは、周囲温度〜50℃の温度への冷却、次いで、前記段階d)から得られた懸濁液のろ過および乾燥が行われる。乾燥は、好ましくは、20〜50℃の範囲の温度で実施される。
【0041】
それは、有利には、8〜24時間の範囲の期間にわたって実施される。内包された極性溶媒分子を含む結晶化固体が得られる。
【0042】
活性化処理の第2の段階b)は、活性化処理の第1の段階a)からの固体の細孔の中に存在する極性溶媒、好ましくはDMFを、アルコール性溶媒、好ましくはメタノール、エタノールおよびイソプロパノールの中から選択されるものに交換することからなる。より好ましくは、前記アルコール性溶媒はエタノールである。前記第2の段階は、一般的には、前記段階a)において得られた固体を前記アルコール性溶媒、好ましくはエタノールに漬けることからなり、アルコール性溶媒/固体、好ましくはエタノール/固体の質量比は、200〜1000、好ましくは350〜800の範囲にわたる。より好ましくは、前記第2の段階は、攪拌なしで行われる。それは、周囲温度〜75℃の範囲の温度、好ましくは周囲温度で行われる。
【0043】
前記活性化処理段階b)の最後に、懸濁液が得られ、前記懸濁液は、好ましくはろ過され、次いで乾燥させられて粉体が得られる。乾燥は、周囲温度〜70℃の範囲の温度、好ましくは周囲温度で、2〜12時間の範囲の期間にわたって実施される。
【0044】
活性化処理の第3の段階c)は、前記段階b)から得られた固体を、好ましくは8時間〜3日間の範囲の期間にわたって150〜280℃の範囲の温度に加熱することからなる。前記第3の段階c)の最後に得られた材料は、脱水されていて、溶媒はまったく含まない。
【0045】
材料IM−19は、最終的には、前記工程vi)によって、好ましくは空気中で活性化された固体を冷却することにより得られる。それは、水和された形態で得られる。
【0046】
場合によっては、この冷却段階に続けて、空気中で少なくとも300〜400℃の範囲の温度に、好ましくは1日にわたって加熱する段階が行われる。この段階の最後に得られる材料は、脱水されていて、溶媒を一切含まず、多孔質である。それは、結晶化ハイブリッド材料であって、表3に記載されたラインを少なくとも含むX線回折図を示す。
【0047】
このX線回折図は、放射線結晶学分析によって、従来の粉末方法を用いて、2.122mmの有効長を有するフロントモノクロメータを有するPANALYTICAL X’PERT PRO MPD回折計により得られる。記録は、ブラッグ−ブレンターノ配置(Bragg-Brentano geometry)で、2θで5.5000から50.0021°までの角領域にわたって、36分と39秒の全期間にわたり実施された。
【0048】
【表3】

【0049】
表中、FF=極めて高い;F=高い;m=中程度;mf=中程度に低い;f=低い:ff=極めて低い。強度I/Iは、相対強度スケールに対して与えられ、ここで、100の値がX線回折図の最も強いラインに割り当てられる:ff<15;15≦f<30;30≦mf<50;50≦m<65;65≦F<85;FF≧85。
【0050】
この多孔質材料は、格子パラメーターとして:a=16.734(3)Å;b=13.282(3)Å、c=6.741(2)Å、ならびに角度として:α=γ=β=90°を有する斜方晶系に分類される。
【0051】
X線回折図が少なくとも表3に記載された線を含む、この多孔質材料は、そのX線回折図が表3に記載されたラインを少なくとも含むものであり、活性化処理の段階a)の最後に得られた固体を150〜350℃に加熱することによって得られ得る。
【0052】
本発明はまた、吸着剤または触媒としてのハイブリッド材料IM−19の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は、以下の実施例により例証されるが、これらの実施例は、いかなる点からも本発明を限定するものではない。
【0054】
(実施例)
(実施例1:本発明による有機−無機混合マトリクスを含むハイブリッド材料IM−19の調製および特徴付け(フッ素化方法))
18.33gの蒸留水を、内容積40mLのPTFE容器の中に入れる。2.66gの水和硝酸ガリウム(Alfa Aesar)を添加する。磁気攪拌器を使用して、混合物を5分間にわたって撹拌する。均一化の後、0.52gのフッ化水素酸水溶液(40質量%、Riedel de Haen)を添加する。溶液を5分間にわたって撹拌する。次いで、1.74gのテレフタル酸(Fluka)を添加する。混合物を5分間にわたって撹拌する。得られた混合物のモル組成は、次の通りである:1硝酸ガリウム:1テレフタル酸:1HF:100HO。次いでPTFE容器の内容物をオートクレーブに移し、撹拌なしで3日間にわたって220℃に加熱する。冷却後、得られた結晶化固体を、水、熱DMF溶液、次いでエタノールにより洗浄する。25℃で約6時間にわたる空気中での乾燥の後、結晶性の粉体の形態の結晶化中間体固体が得られ、このものは、表2に記載されたラインを少なくとも含むX線回折図を有する、その合成されたままの形態にある固体に相当する。
【0055】
結晶化固体の活性化は、最初に、ソルボサーマル経路を通じて合成されたままの結晶化固体をDMF溶液中(オートクレーブ充填比:50%;DMF/結晶化固体質量比:75)で、160℃に7日間にわたって加熱することにより実施される(1日に1回オートクレーブ中で手動攪拌)。冷却の後、得られた懸濁液をろ過し、25℃で12時間にわたって乾燥させる。その細孔中にDMFを含む固体が得られる。無水エタノール溶液中に24時間にわたって、撹拌なしで浸漬させて、第二の活性化段階を実施する(EtOH/固体の質量比:500)。ろ過し、25℃で6時間にわたって乾燥させた後、得られた粉体を、第三段階において、24時間にわたって空気中で220℃に加熱する。空気中での冷却の後、粉体の形態の固体生成物が得られ、X線回折により分析され、表1に記載されたラインを少なくとも含むX線回折図を有する、固体IM−19の結晶からなることが同定される。
【0056】
(実施例2:本発明による有機−無機混合マトリクスを有するハイブリッド材料IM−19の調製および特徴付け(フッ化水素酸なしの方法))
6.61gの蒸留水を、内容積20mLのPTFE容器の中に入れる。0.96gの水和硝酸ガリウム(Alfa Aesar)を添加する。磁気攪拌器を使用して、混合物を5分間にわたって撹拌する。次いで、0.61gのテレフタル酸(Fluka)を添加する。混合物を5分間にわたって撹拌する。得られた混合物のモル組成は、次の通りである;1硝酸ガリウム:1テレフタル酸:1HF:100HO。次いでPTFE容器の内容物をオートクレーブに移し、1日間にわたって撹拌なしで160℃に加熱する。冷却の後、得られた結晶化固体をろ過し、水、次いで熱DMF溶液、次いでエタノールにより洗浄する。25℃で約6時間にわたって空気中で乾燥させた後、結晶性の粉体の形態の結晶化中間体固体が得られ、このものは、表2に記載されたラインを少なくとも含むX線回折図を有する、その合成されたままの形態にある固体に相当する。
【0057】
結晶化固体の活性化は、第一に、ソルボサーマル経路を通じて合成されたままの結晶固体をDMF溶液中で(オートクレーブ充填比:50%;DMF/結晶化固体の質量比:75)、7日間にわたって160℃に加熱することによって実施される(1日に1回のオートクレーブ中の手動攪拌)。冷却の後、得られた懸濁液をろ過し、25℃で12時間にわたって乾燥させる。その細孔中にDMFを含む固体が得られる。無水エタノール溶液中に24時間にわたって撹拌なしで浸漬させて、第二の活性化段階を実施する(EtOH/固体の質量比:500)。ろ過および25℃での6時間にわたる乾燥の後、得られた粉体を、第三の段階において、24時間にわたり空気中で220℃に加熱する。空気中での冷却の後、粉体の形態の固体生成物が得られ、X線回折により分析され、表1に記載されたラインを少なくとも含むX線回折図を有する、固体IM−19の結晶からなることが同定される。
【0058】
(実施例3:ハイブリッド材料IM−19の調製および各種の反応混合物モル組成および反応温度に対する特徴付け)
実施例1(合成例a〜e)および実施例2(合成例f〜h)を、混合物のモル組成および/または反応温度を変化させ、その他の操作条件は同一に維持しながら、繰り返す。これらの各種のパラメーターを次の表に記載する。
【0059】
【表4】

【0060】
これらの固体は、それぞれ実施例1および2に記載された実験プロトコールを繰り返すことにより合成される。
【0061】
活性化の段階および活性化された固体の冷却の終わりに、IM−19結晶からなる結晶化粉体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】ハイブリッド固体IM−19のX線回折図。
【図2】ハイブリッド材料IM−19の調製の際に得られた合成されたままの形態にある、結晶化中間体固体のX線回折図。
【図3】X線回折図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガリウム元素をベースとし、かつ、テレフタラートタイプの有機リガンドにより相互に接続された金属中心の無機ネットワークを含む有機−無機混合マトリクスを有し、下記表に記載されたラインを少なくとも含むX線回折図を有する、結晶化ハイブリッド材料IM−19。
【表1】

(表中、FF=極めて高い;F=高い;m=中程度;mf=中程度に低い;f=低い:ff=極めて低い。強度I/Iは、相対強度スケールに対して与えられ、ここで、100の値が、X線回折図の最も強いラインに割り当てられる:ff<15;15≦f<30;30≦mf<50;50≦m<65;65≦F<85;FF≧85)
【請求項2】
格子パラメーターとして;a=19.187(3)Å;b=7.628(2)Å、c=6.669(1)Åおよび角度として;α=γ=90°、β=95.86(1)°を有する単斜晶系に分類されることを特徴とする、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
ガリウム元素をベースとし、かつ、テレフタラートタイプの有機リガンドにより相互に接続された、金属中心のネットワークを含む有機−無機混合マトリクスを有し、下記表に記載されたラインを少なくとも含むX線回折図を有する、合成されたままの形態にある結晶化ハイブリッド材料。
【表2】

(表中、FF=極めて高い;F=高い;m=中程度;mf=中程度に低い;f=低い:ff=極めて低い。強度I/Iは、相対強度スケールに対して与えられ、ここで、100の値が、そのX線回折図の最も強いラインに割り当てられる:ff<15;15≦f<30;30≦mf<50;50≦m<65;65≦F<85;FF≧85。)
【請求項4】
格子パラメーターとして:a=17.422(2)Å;b=l2.146(2)Å、c=6.737(1)Åおよび角度として:α=γ=β=90°を有する斜方晶系に分類されることを特徴とする、請求項3に記載の合成されたままの形態にある結晶化ハイブリッド材料。
【請求項5】
請求項1または2に記載の有機−無機混合マトリクスを有する結晶化ハイブリッド材料を調製する方法であって、
i)少なくとも1種のガリウム前駆体を水に溶解させる段階、
ii)テレフタル酸(Hbdc)を添加する段階、
iii)場合により、フッ化水素酸を添加する段階、
iv)結晶化段階、
v)ろ過、洗浄、および乾燥を行って、請求項3に規定された合成されたままの形態にある結晶化中間体固体を得る段階、
vi)前記合成されたままの固体を活性化させる工程であって、連続的に、
ソルボサーマル経路を通じて、120〜220℃の範囲の温度で、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびジメチルホルムアミド(DMF)の中から選択される極性溶媒の存在下に実施される第1段階a)、アルコール性溶媒の存在下に交換の第2の段階b)および150〜280℃の範囲の温度に段階b)の終わりに得られた固体を加熱することからなる第3の段階c)を含む、工程、
vii)前記活性化固体を冷却して、前記材料IM−19を得る段階、ならびに
viii)場合による、得られた材料IM−19を300〜400℃の範囲の温度に加熱して、脱水され、多孔質で溶媒フリーな材料を得る工程、
を少なくとも含む、方法。
【請求項6】
ガリウム前駆体は、ガリウム(III)塩の中から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ガリウム前駆体は、硝酸ガリウムである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
段階i)〜iii)において得られた前記混合物のモル組成は、1モルのガリウム前駆体:0.5〜3モルのテレフタル酸:0〜1モルのフッ化水素酸:100モルの水の範囲である、請求項5〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
段階iii)の最後に得られた混合物を、中間体固体の結晶化が得られるまで水熱処理にかけ、前記結晶化段階を、周囲温度〜260℃の温度で12〜72時間にわたって、自己生成性反応圧力条件下に実施する、請求項5〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
段階v)による乾燥を、20〜200℃で、1〜24時間の範囲の期間にわたって実施する、請求項5〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
活性化処理の第1段階a)の際に含まれる、極性溶媒対合成されたままの結晶固体の質量比が20〜200の範囲である、請求項5〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
段階a)に続けて、周囲温度〜50℃の範囲の温度に冷却する段階、次いで、段階a)から得られる懸濁液をろ過および乾燥させる段階を行い、乾燥を好ましくは20〜50℃の範囲の温度で実施する、請求項5〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記活性化処理の工程b)に含まれる、アルコール性溶媒対固体の質量比が、200〜1000の間の範囲である、請求項5〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記活性化処理の段階b)の終わりに、懸濁液が得られ、次いでそれをろ過し、周囲温度〜70℃の範囲の温度で乾燥させる、請求項5〜13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
請求項1または2に記載のハイブリッド材料または請求項5〜14のいずれか1つに記載の方法により得られたハイブリッド材料の、吸着剤または触媒としての使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−517661(P2011−517661A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−548139(P2010−548139)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000177
【国際公開番号】WO2009/115683
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(311002872)
【Fターム(参考)】