説明

新規な結晶型ベポタスチン金属塩水和物、その製造方法及びこれを含む医薬組成物

【課題】 非吸湿性であり、光学的に安定した結晶型ベポタスチン金属塩水和物、その製造方法及びこれを含む医薬組成物を提供する。
【解決手段】 式Iで表される結晶型ベポタスチン金属塩水和物、その製造方法及びこれを有効成分として含むヒスタミン調停が関与する疾患またはアレルギー性疾患の予防または治療用医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は結晶型ベポタスチン金属塩水和物、その製造方法及びこれを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
式IIで表されるベポタスチン(化学名:(+)−(S)−4−{4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ}酪酸)は、即効性のある選択的な抗ヒスタミン剤(selective anti−histaminic agent)であって、経口投与する際に眠気や不整脈などのような副作用を引き起こさない。ベポタスチンは(R)−体を等量含むラセミ体として開示されたことがあるが(日本国特開平2−25465号)、その後、(S)−体の絶対配置を有するベポタスチンが対応する(R)−体の光学異性体に比べて薬理活性が顕著に優れており、毒性が低いと知られている(日本国特開平10−237070号)。
【化1】

【0003】
しかし、ベポタスチンは精製しにくいシロップ状で得られ、吸湿性が高いので、薬剤の製造またはその保管過程などで水分の作用によって(R)−体光学異性体に変形し得る。
【0004】
従って、これまでベポタスチンを、ラセミ化しない高光学純度の酸性塩の形態で製造するための数多くの研究が行われて来ている。日本国特開平10−237070号は比較的に安定性に優れ、非吸湿性のベポタスチンベンゼンスルホン酸とベポタスチン安息香酸塩を開示している。しかし、ベポタスチンベンゼンスルホン酸塩またはベポタスチン安息香酸塩は高湿条件(40℃、75%の相対湿度)に晒される場合、徐々にラセミ化することが明らかになった。
【0005】
従って、本発明者らは、ベポタスチンの新規な結晶型について鋭意研究した結果、非吸湿性であり、化学的かつ光学的に安定であり、ベポタスチン医薬組成物の製造に有用な新規な結晶型ベポタスチン金属塩水和物を開発して本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特開平2−25465号
【特許文献2】日本国特開平10−237070号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、安定性に優れており、非吸湿性の結晶型ベポタスチン金属塩水和物を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は前記結晶型ベポタスチン金属塩水和物を製造する方法を提供することである。
【0009】
本発明のまた他の目的は前記結晶型ベポタスチン金属塩水和物を有効成分として含む、ヒスタミン調停が関与する疾患またはアレルギー性疾患の予防または治療用医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために本発明は式Iで表される結晶型ベポタスチン金属塩水和物を提供する。
【化2】

【0011】
前記式中、Mはカルシウムまたはストロンチウムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法による結晶型ベポタスチン金属塩水和物は、非吸湿性であるとともに光学的に安定しており、かつ光学純度が低下しないので、その薬理活性が減少ないために長期間保管することができる。従って、本発明による結晶型ベポタスチン金属塩水和物はヒスタミン調停が関与する疾患またはアレルギー性疾患の予防または治療用医薬組成物の有効成分として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるベポタスチンカルシウム塩水和物のX線粉末回折(X−ray Powder Diffraction;XRPD)スペクトルを示すグラフである。
【図2】本発明によるベポタスチンカルシウム塩水和物の示差走査熱量計(differential scanning calorimeter;DSC)によるDSC曲線を示す図である。
【図3】本発明によるベポタスチンストロンチウム塩水和物のXRPDスペクトルを示すグラフである。
【図4】本発明によるベポタスチンストロンチウム塩水和物のDSC曲線を示す図である。
【図5】従来の吸湿性ベポタスチンナトリウム塩水和物のXRPDスペクトルを示すグラフである。
【図6】従来の吸湿性のベポタスチンカリウム塩水和物のXRPDスペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による結晶型ベポタスチン金属塩水和物は非吸湿性であり、かつその光学安定性に優れている。
【0015】
本発明による前記式Iのベポタスチン金属塩水和物は、2つのベポタスチン分子に2価のカルシウムイオンまたは2価のストロンチウムイオンが配位結合しており、これに2つの水分子が配位結合している結晶性水和物である。本発明の化合物は、CuKαを光源として用いるX線粉末回折パターンにおいて、特定の2θ値で主要ピークを示すことを特徴とする。また、本発明によるベポタスチン金属塩に含有された水分子は示差走査熱量分析によって検出でき、この水分子の数は熱重量分析(thermogravimetric analysis)またはカール・フィッシャー(Karl−Fischer)法を用いて確認することができる。
【0016】
本発明の好適な一実施形態による結晶型ベポタスチンカルシウム塩二水和物は、X線粉末回折(XRPD)スペクトルにおいて、15%以上のI/I値(I/I×100;Iは各ピークの強度;Iは最大ピークの強度)を有するピークが12.3、14.2、14.7、15.1、16.5、17.0、18.7、19.1、20.6、22.8、23.8、24.2、25.5、28.6及び31.8の回折角(2θ±0.2)で現われる(図1参照)。また、前記ベポタスチンカルシウム塩二水和物は示差走査熱量分析において、脱水点にあたる吸熱ピークが115.9℃で現われ、脱水点で約4.5%の熱重量減少を示す(図2参照)。さらに、カール・フィッシャー法を用いて測定した含水量は約4.3%であり、この値は本発明のベポタスチンカルシウム塩二水和物に含有された理論的含水量(4.23%)と合致する。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態による結晶型ベポタスチンストロンチウム塩二水和物は、XRPDスペクトルにおいて、15%以上のI/I値を有するピークが4.8、6.2、7.3、8.4、9.5、10.6、12.2、12.5、13.3、14.1、14.3、14.6、16.5、16.9、18.7、19.1、20.2、21.3、22.2、23.0、23.9、25.5、28.4、29.7及び31.8の回折角(2θ±0.2)で現われる(図3参照)。また、前記ベポタスチンストロンチウム塩二水和物は示差走査熱量分析において、脱水点にあたる吸熱ピークが122.4℃で現われ、脱水点で約4.2%の熱重量減少を示す(図4参照)。さらに、カール・フィッシャー法を用いて測定した含水量は約4.3%であり、この値はベポタスチンストロンチウム塩二水和物に含有された理論的含水量(4.01%)と合致する。
【0018】
本発明による結晶型ベポタスチン金属塩水和物の光学的安定性は、従来のベポタスチンベンゼンスルホン酸塩よりも高い。よって、本発明の結晶型ベポタスチン金属塩水和物は従来の塩に比べて長期間保管時の安定性が優れているという特別な効果がある。
【0019】
本発明による前記式Iの結晶型ベポタスチン金属塩水和物は、湿度が非常に高い条件下で保管する際にも含水量が実質的に増加せず、そのため、非吸湿性である。これに対して、ベポタスチンのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩またはバリウム塩などのようなアルカリ金属塩;ベポタスチンの亜鉛塩、アルミニウム塩、ビスマス塩または鉄塩などのような転移金属塩;ベポタスチンのアンモニウム塩、エチルアミン塩、ジメチルアミン塩、トリエチルアミン塩またはN−メチルグルカミン塩などのような有機アミン塩;及びベポタスチンのアルギニン塩、リジン塩またはヒスチジン塩などのようなアミノ酸塩は主に非結晶体の形態で得られるが、結晶体の形で得られるとしても吸湿性を示す。例えば、部分結晶構造を有するベポタスチンナトリウム塩は、高吸湿性であり、そのXRPDスペクトルにおいて、6.2、6.8及び31.6の2θ回折角のピーク及び15.0〜25.0の2θで緩やかなピークを示し(図5参照);結晶構造を有するベポタスチンカリウム塩は、そのXRPDスペクトルにおいて、6.3、9.4、9.6、15.7、18.0、18.8、19.3、20.7、27.4及び28.3の2θ回折角で特徴的なピークを示す(図6参照)結晶体であるが、これらはともに吸湿性が非常に高い。
【表1】

【0020】
本発明において、前記式Iの結晶型ベポタスチン金属塩水和物は、(i)(a)ベポタスチンを水酸化カルシウムまたは水酸化ストロンチウムと溶媒中で反応させるか、または(b)ベポタスチンを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アムモニア及び有機アミンから選ばれた塩基と溶媒中で接触させて相応するベポタスチンの塩を製造した後、これをカルシウムまたはストロンチウムの反応性塩と反応させる段階;(ii)前記反応物から結晶を沈澱させる段階;及び(iii)沈澱した結晶を回収する段階を含み、前記(a)または(b)段階で用いられる溶媒はメタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトニトリル及びアセトンで構成よりなる群ら選ばれた1種以上の有機溶媒と水との混合溶媒または水である。
【0021】
本発明の方法で用いられる溶媒の量は、ベポタスチン1g当り3〜30ml、好ましくは5〜15mlである。この時、水と有機溶媒との混合溶媒が用いられる場合、有機溶媒の量が混合物の総量に対し30容量%を超えないことが好ましい。
【0022】
また、前記段階(i)での反応は0℃〜溶媒の沸点温度、好ましくは10〜50℃で行われ、前記段階(ii)での沈澱段階は−20〜50℃、好ましくは0℃〜室温で行われることができる。
【0023】
前記(a)段階で用いられる水酸化カルシウムまたは水酸化ストロンチウムの量は、ベポタスチン1モル当り0.5〜0.75当量の範囲であることが好ましい。
【0024】
また、前記(b)段階で用いられる塩基の量は、ベポタスチン1モル当り1.0〜1.4当量であることが好ましく、カルシウムまたはストロンチウムの反応性塩の使用量は前記塩基1モル当り0.5〜0.75当量であることが好ましい。
【0025】
前記有機アミンの好適な例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン及びトリエチルアミンなどのような低級の有機アミンが挙げられ、カルシウムまたはストロンチウムの反応性塩の例としては、そのハロゲン化塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩またはクエン酸塩が挙げられる。
【0026】
本発明の方法による一実施例として、ベポタスチンの水溶液に水酸化ナトリウムを加えてベポタスチンナトリウム塩を含む溶液を得た後、これに塩化カルシウム溶液を徐々に添加して攪拌した後、結晶の沈澱を流発し、沈澱した結晶を濾過して得ることができる。
【0027】
本発明の方法に用いられるベポタスチンは、米国特許第6,307,052号に開示された方法と類似した方法または他の方法によって製造され得る。
【0028】
前記得られた式Iのベポタスチン金属塩水和物は、99.5%以上の高い光学純度を有する非吸湿性の結晶体であり、従って、従来のベポタスチンベンゼンスルホン酸塩に比べて優れた光学安定性を有する。また、前記式Iのベポタスチン金属塩水和物は医薬組成物に含有される場合、高湿、高温などの多様な条件下で長期間高光学純度を維持することができるので、本発明のベポタスチン金属塩水和物は向上した貯蔵安定性を有するという利点を合わせて提供する。
【0029】
従って、本発明は前記式Iの結晶型ベポタスチン金属塩水和物及び薬剤学的に許容される担体を有効成分として含むヒスタミン調停が関与する疾患またはアレルギー性疾患の予防または治療用医薬組成物をさらに提供する。
【0030】
本発明の医薬組成物は、アレルギー性鼻炎(allergic rhinitis)、じんま疹(urticaria)、掻痒症(pruritus)、鼻閉塞(nasal obstruction)、皮膚炎または湿疹の予防または治療に有用である。
【0031】
本発明による医薬組成物は、経口、鼻腔、眼球、直腸、注射などの多様な経路を通じて投与することができ、好ましくは経口投与することができる。
【0032】
経口投与のために、本発明のベポタスチン金属塩水和物は、薬剤学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とともに製剤することができる。担体、希釈剤及び賦形剤の好ましい例としては、澱粉、糖及びマンニトールのような賦形剤;リン酸カルシウム及びシリカ誘導体のような充填剤または増量剤;カルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ゼラチン、アルギン酸塩、及びポリビニルピロリドンのような結合剤;滑石、マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、水素化ヒマシ油、及び固相ポリエチレングリコールのような潤滑剤;ポビドン、クロスカルメロースナトリウム、及びクロスポビドンのような崩壊剤;及びポリソルベート、セチル(cetyl)アルコール、及びグリセロールモノステアレートなどのような界面活性剤などが挙げられる。また、本発明の医薬組成物は、特定量の有効成分とともにこれらのような担体、希釈剤または賦形剤のような添加剤を添加するか、または添加せず、通常の方法によって多様に製造することができる(文献[Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 19th Edition, 1995]参照)。
【0033】
好ましい実施例において、本発明の経口投与用の医薬組成物は、有効成分として前記式Iの結晶型ベポタスチン金属塩水和物を組成物の総重量に対し0.1〜95重量%、好ましくは1〜70重量%の量で含むことができる。
【0034】
前記式Iの結晶型ベポタスチン金属塩水和物は、ヒトを含む哺乳動物に対して一日に0.5〜500mg/kg体重、好ましくは1〜100mg/kg体重の量で単回投与又は数回に分けて投与することができる。
【0035】
以下、本発明を実施例によってさらに詳しく説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するだけのものであり、これらにより本発明が限定されるものではない。
【0036】
光学純度分析
ベポタスチンの光学純度を測定するために、下記の分析条件下でキラルHPLC(chiral HPLC)を行い、下記等式1を用いて光学純度を計算した。
【0037】
<分析条件>
検出器:紫外線吸光光度計(検出波長:225nm)
カラム:YMC Chiral β−CDs(4.6×250mm、5μm)
移動相:メタノール/酢酸アンモニウム緩衝溶液=45/55(v/v、%)
流速:0.8ml/min
等式1
光学純度(%)=Ps/(Ps+Pr)×100
前記式中、
Psはベポタスチンのピーク面積であり、
Prはベポタスチンの(R)−体の光学異性体のピーク面積である。
【0038】
比較例1:ベポタスチンベンゼンスルホン酸塩の製造
米国特許第6,307,052号に開示された工程に従ってベポタスチン(5.0g、12.9mmol)を酢酸エチル250mlに溶解させ、ベンゼンスルホン酸一水和物(2.0g、11.4mmol)を添加した後、減圧下で濃縮した。得られた残渣に酢酸エチル250mlを加え、冷蔵庫で約1週間放置して少量の結晶を得た。スパチュラでこの結晶をこすった後、2日間放置して結晶を沈澱させた。沈澱した結晶を濾過し、アセトニトリル50mlを用いて再結晶化して微白色結晶粉末の標題化合物4.2g(収率:68%)を得た。
【0039】
次に、ベポタスチン(45.0g、120mmol)をアセトニトリル450mlに溶解させた後、ベンゼンスルホン酸一水和物(16.1g、100mmol)を添加し、前記得られたベポタスチンベンゼンスルホン酸塩をシードし、室温で12時間攪拌してから、沈殿物を濾過して標題化合物33gを得た(収率:66%)。
【0040】
融点:161〜163℃(基準値:161.5℃)
含水量:0.4%(カールフィッシャー水分計)
光学純度:99.9%。
【0041】
得られた結晶粉末をX線粉末回折分析を通じて15%以上の100×I/I値を有するピークを確認した結果、下記表2のような2θ値を得た。
【表2】

【0042】
実施例1:ベポタスチンカルシウム塩二水和物の製造
ベポタスチン(40.0g、100mmol)を水300mlに溶解させ、水酸化ナトリウム(4.5g、110mmol)を添加した後、室温で30分間攪拌した。これに塩化カルシウム(7.3g、70mmol)を水100mlに溶解させた溶液を徐々に添加し、12時間攪拌した後、沈殿物を濾過して、白色結晶粉末の標題化合物35g(収率:83%)を得た。
【0043】
含水量:4.3%(カールフィッシャー水分計、二水和物の理論値:4.23%)
光学純度:99.9%
融点:236〜240℃(分解)。
【0044】
1H-NMR (DMSO-d6, ppm): δ 8.4(d, 1H), 7.8(t, 1H), 7.5(d, 1H), 7.4(m, 4H), 7.2(t, 2H), 5.6(s, 1H), 3.5(m, 1H), 2.6(m, 2H), 2.2(t, 2H), 1.9(m, 4H), 1.8(m, 2H), 1.6(m, 4H)。
【0045】
IR (KBr, cm-1): 3338, 2945, 2825, 1589, 1562, 1490, 1471, 1432, 1412.9, 1308, 1116, 1092, 1061, 1014, 994, 808, 776, 750。
【0046】
得られた結晶粉末をX線粉末回折分析を通じて15%以上の100×I/I値を有するピークを確認した結果、下記表3のような2θ値を得た。
【表3】

【0047】
実施例2:ベポタスチンカルシウム塩二水和物の製造
ベポタスチン(8.5g、21.9mmol)を水60mlとアセトン15mlとの混合溶媒に溶解させ、水酸化ナトリウム(0.96g、24.0mmol)を添加した後、室温で30分間攪拌した。これに塩化カルシウム1.6gを水25mlに溶解させた溶液を徐々に添加して懸濁液を得た。得られた懸濁液を12時間攪拌してから、沈殿物を濾過して白色結晶粉末の標題化合物7.9g(収率:89%)を得た。
【0048】
含水量:4.6%(カールフィッシャー水分計)
光学純度:99.9%
融点:235〜239℃(分解)。
【0049】
実施例3:ベポタスチンカルシウム塩二水和物の製造
ベポタスチン(5.0g、12.9mmol)を水35mlとメタノール2.5mlとの混合溶媒に溶解させ、水酸化ナトリウム(0.56g、14.0mmol)を添加した後、室温で30分間攪拌した。これに塩化カルシウム(0.93g、8.4mmol)を水12.5mlに溶解させた溶液を徐々に添加して、懸濁液を得た。得られた懸濁液を室温で12時間攪拌してから、沈殿物を濾過して白色結晶粉末の標題化合物4.1g(収率:78%)を得た。
【0050】
含水量:4.5%(カールフィッシャー水分計)
光学純度:99.9%
融点:235〜239℃(分解)。
【0051】
実施例4:ベポタスチンカルシウム塩二水和物の製造
ベポタスチン(5.0g、12.9mmol)を水35mlとメタノール2.5mlとの混合溶媒に溶解させ、水酸化カルシウム(0.58g、14.4mmol)を添加した後、室温で12時間攪拌した。その後、生成された沈殿物を濾過して白色結晶粉末の標題化合物4.1g(収率:78%)を得た。
【0052】
含水量:4.5%(カールフィッシャー水分計、二水和物の理論値:4.23%)
光学純度:99.9%
融点:235〜239℃(分解)。
【0053】
実施例5:ベポタスチンストロンチウム塩二水和物の製造
ベポタスチン(15.0g、38.6mmol)を水100mlに溶解させ、水酸化ナトリウム(1.7g、42.5mmol)を添加した後、室温で30分間攪拌した。これに塩化ストロンチウム六水和物(3.36g、30.3mmol)を水50mlに溶解させた溶液を徐々に添加して懸濁液を得た。得られた懸濁液を12時間攪拌してから、沈殿物を濾過して白色結晶粉末の標題化合物15g(収率:90%)を得た。
【0054】
含水量:4.3%(カールフィッシャー水分計、二水和物の理論値:4.01%)
光学純度:99.9%
融点:240〜245℃(分解)。
【0055】
1H-NMR (DMSO-d6, ppm): δ 8.4(d, 1H), 7.8(t, 1H), 7.5(d, 1H), 7.4(m, 4H), 7.2(t, 2H), 5.6(s, 1H), 3.3(brs, 1H), 2.6(m, 2H), 2.1(t, 2H), 1.9(m, 4H), 1.8(m, 2H), 1.5(m, 4H)。
【0056】
IR (KBr, cm-1): 3332, 2946, 2825, 1589, 1559, 1490, 1471, 1412, 1308, 1114, 1091, 1014, 994, 807, 775, 751。
【0057】
得られた結晶粉末をX線粉末回折分析を通じて15%以上の100×I/I値を有するピークを確認した結果、下記表4のような2θ値を得た。
【表4】

【0058】
実施例6:ベポタスチンストロンチウム塩二水和物の製造
ベポタスチン(5.0g、12.9mmol)を水25mlに溶解させ、これに水酸化ストロンチウム八水和物(1.58g、7.1mmol)を水25mlに溶解させた溶液を徐々に添加した後、生成された懸濁液を室温で12時間攪拌した。生成された沈殿物を濾過して白色結晶粉末の標題化合物4.8g(収率:86%)を得た。
【0059】
含水量:4.2%(カールフィッシャー水分計、二水和物の理論値:4.01%)
光学純度:99.9%
融点:230〜240℃(分解)。
【0060】
試験例1:苛酷な保管条件下での光学純度試験
前記比較例1で得られたベポタスチンベンゼンスルホン酸塩と前記実施例1で得られたベポタスチンカルシウム塩水和物をそれぞれ60℃、75%の相対湿度(R.H.)の条件に晒されてまたは密閉条件下で4週間放置した。それぞれのベポタスチン塩の光学純度を測定した。その結果は下記表5に示した。
【表5】

【0061】
前記表5から分かるように、従来のベポタスチンベンゼンスルホン酸塩は、保管中に光学純度が急激に低くなったが、これに対し本発明によるベポタスチンカルシウム塩水和物は光学純度の変化があまりなかった。
【0062】
試験例2:吸湿性試験
前記比較例1で得られたベポタスチンベンゼンスルホン酸塩と前記実施例1で得られたベポタスチンカルシウム塩水和物をそれぞれ(i)25℃、75%の相対湿度、(ii)40℃、75%の相対湿度、及び(iii)40℃、90%の相対湿度の条件下で15日間放置した後、1日、3日、7日及び15日目に含水量を測定した。その結果は下記表6に示した。
【表6】

【0063】
前記表6から分かるように、二つのベポタスチン塩はいずれも75%の相対湿度下では含水量が大きく増加しなかった。しかし、40℃、90%の相対湿度の条件下で、従来のベポタスチンベンゼンスルホン酸塩の含水量は0.4〜2.5%増加した反面、本発明によるベポタスチンカルシウム塩水和物の含水量の増加は0.7%未満であった。よって、本発明のベポタスチンカルシウム塩水和物は本質的に非吸湿性であることが確認された。
【0064】
試験例3:溶解度測定試験
比較例1で得られたベポタスチンベンゼンスルホン酸塩と実施例1で得られたベポタスチンカルシウム塩水和物の飽和溶解度をpH1.2とpH6.8の緩衝溶液を用いて測定した。pH1.2とpH6.8の緩衝溶液はそれぞれ胃液と腸液の条件にあたる。その結果は下記表7に示した。
【表7】

【0065】
前記表7から分かるように、本発明のベポタスチンカルシウム塩水和物の溶解度はpH1.2ではベポタスチンベンゼンスルホン酸塩と類似するが、ベポタスチンが吸収される腸領域の液にあたるpH6.8では本発明のベポタスチンカルシウム塩水和物の溶解度がベポタスチンベンゼンスルホン酸塩の溶解度よりも2倍以上高かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの結晶型ベポタスチン金属塩水和物:
【化1】

前記式中、Mはカルシウムまたはストロンチウムである。
【請求項2】
前記Mがカルシウムであることを特徴とする請求項1に記載の結晶型ベポタスチン金属塩水和物。
【請求項3】
X線粉末回折スペクトル(X−ray powder diffraction spectrum)において15%以上の100×I/I値(Iは各ピークの強度;Iは最大ピークの強度)を有するピークが、12.3、14.2、14.7、15.1、16.5、17.0、18.7、19.1、20.6、22.8、23.8、24.2、25.5、28.6及び31.8の回折角(2θ±0.2)において現れることを特徴とする請求項2に記載の結晶型ベポタスチン金属塩水和物。
【請求項4】
前記Mがストロンチウムであることを特徴とする請求項1に記載の結晶型ベポタスチン金属塩水和物。
【請求項5】
X線粉末回折スペクトルにおいて15%以上の100×I/I値を有するピークが、4.8、6.2、7.3、8.4、9.5、10.6、12.2、12.5、13.3、14.1、14.3、14.6、16.5、16.9、18.7、19.1、20.2、21.3、22.2、23.0、23.9、25.5、28.4、29.7及び31.8の回折角(2θ±0.2)において現れることを特徴とする請求項4に記載の結晶型ベポタスチン金属塩水和物。
【請求項6】
(i)(a)ベポタスチンを水酸化カルシウムまたは水酸化ストロンチウムと溶媒中で反応させるか、または(b)ベポタスチンを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アムモニア及び有機アミンから選ばれた塩基と溶媒中で接触させて相応するベポタスチンの塩を製造した後、これをカルシウムまたはストロンチウムの反応性塩と反応させる段階;
(ii)結晶を沈澱させる段階;
(iii)沈澱した結晶を回収する段階を含み、
前記(a)または(b)段階で用いられる溶媒は、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトニトリル及びアセトンよりなる群から選ばれた1種以上の有機溶媒と水との混合溶媒または水であることを特徴とする請求項1に記載の結晶型ベポタスチン金属塩水和物を製造する方法。
【請求項7】
前記(a)段階で前記水酸化カルシウムまたは水酸化ストロンチウムが、前記ベポタスチン1モル当り0.5〜0.75モル当量の範囲で用いられることを特徴とする請求項6に記載の結晶型ベポタスチン金属塩水和物を製造する方法。
【請求項8】
前記(b)段階で前記塩基が、前記ベポタスチン1モル当り1.0〜1.4モル当量の範囲で用いられることを特徴とする請求項6に記載の結晶型ベポタスチン金属塩水和物を製造する方法。
【請求項9】
前記(b)段階で前記カルシウムまたはストロンチウムの反応性塩が、前記塩基1モル当り0.5〜0.75モル当量で用いられることを特徴とする請求項6に記載の結晶型ベポタスチン金属塩水和物を製造する方法。
【請求項10】
請求項1に記載の結晶型ベポタスチン金属塩水和物及び薬剤学的に許容される担体を有効成分として含む、ヒスタミン調停が関与する疾患またはアレルギー性疾患を予防または治療するための医薬組成物。
【請求項11】
前記疾患がアレルギー性鼻炎、じんま疹、掻痒症、鼻腔障害、皮膚炎または湿疹であることを特徴とする請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
経口、鼻腔または眼球に投与するための製剤であることを特徴とする請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
経口投与用製剤であることを特徴とする請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記結晶型ベポタスチン金属塩水和物が組成物の総重量に対して0.1〜95重量%範囲の量で含まれることを特徴とする請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記結晶型ベポタスチン金属塩水和物が組成物の総重量に対して1〜70重量%範囲の量で含まれることを特徴とする請求項14に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−522747(P2010−522747A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500837(P2010−500837)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【国際出願番号】PCT/KR2008/001912
【国際公開番号】WO2008/123701
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(599139534)ハンミ ファーム. シーオー., エルティーディー. (56)
【Fターム(参考)】