説明

新規のアルコールデヒドロゲナーゼ

本発明は、NAD依存性アルコールデヒドロゲナーゼ又はNADP依存性アルコールデヒドロゲナーゼの生物活性を有する新規のポリペプチドに関する。本発明は更に、所望の生成物を製造するために使用されてよい、前記ポリペプチドをコードする核酸、非ヒト宿主又は宿主細胞及び反応系に関する。本発明のポリペプチドは有利には、アルデヒド又はケトンから開始する、医薬品の中間体として役立つ第一級アルコール及びエナンチオマー純粋な第二級アルコールの製造において使用される。又は、本発明のポリペプチドは、この逆反応において使用されてもよく、即ちアルデヒド又はケトンを形成するアルコールの酸化において使用されてよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NAD依存性アルコールデヒドロゲナーゼ又はNADP依存性アルコールデヒドロゲナーゼの生物活性を有する新規のポリペプチドに関する。本発明は更に、所望の生成物を製造するために使用されてよい、前記ポリペプチドをコードする核酸、非ヒト宿主又は宿主細胞及び反応系に関する。本発明のポリペプチドは有利には、アルデヒド又はケトンから開始する、医薬品の中間体として役立つ第一級アルコール及びエナンチオマー純粋な第二級アルコールの製造において使用される。又は、本発明のポリペプチドは、この逆反応において使用されてもよく、即ちアルデヒド又はケトンを形成するアルコールの酸化において使用されてよい。
【0002】
本明細書は種々の文献を参照する。当該文献の開示内容は本発明に参照により組み込まれる。
【0003】
エナンチオマー純粋なアルコールは、産業的に特殊かつ良好な化学のもっとも重要なキラル構成ブロックである。これらの生成物は、特に、医薬品の製造における重要な鍵となる中間体として作用する。長い間、これらの標的分子への産業的経路は、有利には純粋に化学的である方法を介して、例えばラセミ体分割を介して経て来た。これには、ケトンから開始して、まずアルコールをそのラセミ体の形に製造、次いで、少なくとも化学量論量のキラル補助物質の助けによるラセミ体分割におけるこの所望のエナンチオマーの単離を伴う。前記方法の不利な点は、前記ラセミ体分割の最大で50%の収率を含むだけでなく、前記ラセミ体の製造のための極めて生態学的に問題である開始化合物の使用においても見受けられるものである。更なる不利な点は、この不所望のエナンチオマーをリサイクルする付加的な工程と同様に、キラル補助剤(更には、化学量論量のキラル補助剤)の、前記ラセミ体分割のための必要性でもある。前記ラセミ体分割の概念は、図1中の概要における反応式(1a)に要約している。より維持可能な方法に向けた第1の実質的な進展は、生体触媒によるラセミ体分割を用いて、これによりキラル補助剤の化学量論量の使用の必要性を不要にして達成された。しかし残念ながら、上記に列記した全てのその他の不利な点は、係る生体触媒による経路にもかかわらず、関連したままであった。
【0004】
前記のラセミ体分割又はジアステレオ選択的合成の上述の不利な点を回避する1つの可能性のある方法は、ケトンの所望の光学活性アルコールへの一工程における直接変換である。係る「直接的非対称法」は、まず金属含有化学触媒を使用することで実施されてよく、この際使用された前記化学触媒は、キラル配位子を含有する重金属含有錯体である。生態学的に問題である重金属の実質的な触媒成分としての使用の他に、高価であってかつ部分的に非常に感受性である配位子、例えばホスファン配位子の必要性もまた、不利な点である。
【0005】
その他の選択肢は、プロキラル物質のこの所望のエナンチオマー純粋な生成物への定量的な変換のために、適した生体触媒を使用する直接的非対称還元である。この場合にもやはり、反応工程の回数は、理論的に可能な最小限である一工程のみに減少され、この生物触媒による変換は、生態学的に優れた条件(特に、溶媒としての水)のもとで実施され、かつ係る方法は高度に微小な経済性でもって進行する。この種類の、生物触媒によるものであってかつ維持可能な方法の概念は、図1中の概要の反応式(1b)に示されている。
【0006】
前記生体触媒による変形の1つの不利な点はしかしながら、前記の標的反応のための適した生体触媒としての産業スケールにおいて入手可能なアルコールデヒドロゲナーゼ及びこの発現の欠損である。本発明に基づく課題は従って、新規の、有効であってかつ産業により使用可能であるアルコールデヒドロゲナーゼを取得することである。前記課題は、特許請求の範囲に特徴付けられる実施態様により達成される。
【0007】
従って、本発明はNAD依存性アルコールデヒドロゲナーゼ又はNADP依存性アルコールデヒドロゲナーゼの生物活性を有し、かつ以下の配列の1つを含有するか又は有するポリペプチドに関する:SEQ ID NO.1の配列、SEQ ID NO.2の配列、SEQ ID NO.3の配列、又はSEQ ID NO.:3の配列に少なくとも90%同一である配列。前記配列は有利には、SEQ ID NO.:3に少なくとも95%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:3に少なくとも98%又は99%同一である。また含まれるのは、SEQ ID NO.:4の配列である。更に含まれるのは、SEQ ID NO.:5の配列、又はSEQ ID NO.:5に少なくとも90%同一である配列である。有利には、前記配列はSEQ ID NO.:5に少なくとも95%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:5の配列に少なくとも少なくとも98%又は99%同一である。また含まれるのは、SEQ ID NO.6の配列、又はSEQ ID NO.:6の配列に少なくとも90%同一である配列である。有利には、前記配列はSEQ ID NO.:6に少なくとも95%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:6に少なくとも98%又は99%同一である。同様に含まれるのは、SEQ ID NO.7の配列、又はSEQ ID NO.:7の配列に少なくとも70%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:7に少なくとも75%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:7の配列に少なくとも80%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:7の配列に少なくとも85%、90%、95%、98%又は99%同一である。また含まれるのは、SEQ ID NO.8の配列、又はSEQ ID NO.:8の配列に少なくとも70%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:8に少なくとも75%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:8の配列に少なくとも80%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:8の配列に少なくとも85%、90%、95%、98%又は99%同一である。
【0008】
付加的に含まれるのは、SEQ ID NO.9の配列、又はSEQ ID NO.:9の配列に少なくとも70%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:9に少なくとも75%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:9の配列に少なくとも80%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:9の配列に少なくとも85%、90%、95%、98%又は99%同一である。
【0009】
同様に含まれるのは、SEQ ID NO.10の配列、又はSEQ ID NO.:10の配列に少なくとも70%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:10に少なくとも75%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:10の配列に少なくとも80%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:10の配列に少なくとも85%、90%、95%、98%又は99%同一である。
【0010】
また含まれるのは、SEQ ID NO.11の配列、又はSEQ ID NO.:11の配列に少なくとも70%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:11の配列に少なくとも75%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:11の配列に少なくとも80%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:11の配列に少なくとも85%、90%、95%、98%又は99%同一である。
【0011】
更に含まれるのは、SEQ ID NO.12の配列、又はSEQ ID NO.:12の配列に少なくとも60%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:12に少なくとも65%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:12の配列に少なくとも70%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:12に少なくとも75%又は80%同一である。特に有利には、前記配列はSEQ ID NO.:12の配列に少なくとも85%、90%、95%、98%又は99%同一である。
【0012】
同様に含まれるのは、SEQ ID NO.13の配列、又はSEQ ID NO.:13の配列に少なくとも60%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:13に少なくとも65%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:13の配列に少なくとも70%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:13に少なくとも75%又は80%同一である。特に有利には、前記配列はSEQ ID NO.:13の配列に少なくとも85%、90%、95%、98%又は99%同一である。
【0013】
また含まれるのは、SEQ ID NO.14の配列、又はSEQ ID NO.:14の配列に少なくとも75%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:14の配列に少なくとも80%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:14の配列に少なくとも85%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:14の配列に少なくとも90%、95%、98%又は99%同一である。
【0014】
付加的に含まれるのは、SEQ ID NO.15の配列、又はSEQ ID NO.:15の配列に少なくとも95%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:15の配列に少なくとも98%又は99%同一である。
【0015】
また含まれるのは、SEQ ID NO.16の配列、又はSEQ ID NO.:16の配列に少なくとも95%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:16の配列に少なくとも98%又は99%同一である。
【0016】
更に含まれるのは、SEQ ID NO.17の配列、又はSEQ ID NO.:17の配列に少なくとも75%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:17の配列に少なくとも80%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:17の配列に少なくとも85%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:17の配列に少なくとも90%、95%、98%又は99%同一である。
【0017】
同様に含まれるのは、SEQ ID NO.18の配列、又はSEQ ID NO.:18の配列に少なくとも70%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:18に少なくとも75%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:18の配列に少なくとも80%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:18の配列に少なくとも85%、90%、95%、98%又は99%同一である。
【0018】
また含まれるのは、SEQ ID NO.19の配列、又はSEQ ID NO.:19の配列に少なくとも70%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:19に少なくとも75%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:19の配列に少なくとも80%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:19の配列に少なくとも85%、90%、95%、98%又は99%同一である。
【0019】
付加的に含まれるのは、SEQ ID NO.20の配列、又はSEQ ID NO.:20の配列に少なくとも60%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:20に少なくとも65%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:20の配列に少なくとも70%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:20に少なくとも75%又は80%同一である。特に有利には、前記配列はSEQ ID NO.:20の配列に少なくとも85%、90%、95%、98%又は99%同一である。
【0020】
また含まれるのは、SEQ ID NO.21の配列、又はSEQ ID NO.:21の配列に少なくとも90%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:21の配列に少なくとも95%同一である。更に有利には、前記配列はSEQ ID NO.:21の配列に少なくとも98%又は99%同一である。
【0021】
更に含まれるのは、SEQ ID NO.22の配列、又はSEQ ID NO.:22の配列に少なくとも70%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:22に少なくとも75%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:22の配列に少なくとも80%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:22の配列に少なくとも85%、90%、95%、98%又は99%同一である。
【0022】
同様に含まれるのは、SEQ ID NO.23の配列、又はSEQ ID NO.:23の配列に少なくとも55%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:23に少なくとも60%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:23の配列に少なくとも65%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:23に少なくとも70%又は75%同一である。特に有利には、前記配列はSEQ ID NO.:23の配列に少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%同一である。
【0023】
また含まれるのは、SEQ ID NO.24の配列、又はSEQ ID NO.:24の配列に少なくとも65%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:24に少なくとも70%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:24の配列に少なくとも75%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:24に少なくとも80%又は85%同一である。特に有利には、前記配列はSEQ ID NO.:24の配列に少なくとも90%、95%、98%又は99%同一である。
【0024】
更に含まれるのは、SEQ ID NO.25の配列、又はSEQ ID NO.:25の配列に少なくとも55%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:25に少なくとも60%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:25の配列に少なくとも65%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:25に少なくとも70%又は75%同一である。特に有利には、前記配列はSEQ ID NO.:25の配列に少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%同一である。
【0025】
更に含まれるのは、SEQ ID NO.26の配列、又はSEQ ID NO.:26の配列に少なくとも55%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:26に少なくとも60%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:26の配列に少なくとも65%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:26に少なくとも70%又は75%同一である。特に有利には、前記配列はSEQ ID NO.:26の配列に少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%同一である。
【0026】
同様に含まれるのは、SEQ ID NO.27の配列、又はSEQ ID NO.:27の配列に少なくとも55%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:27に少なくとも60%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:27の配列に少なくとも65%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:27に少なくとも70%又は75%同一である。特に有利には、前記配列はSEQ ID NO.:27の配列に少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%同一である。
【0027】
更に含まれるのは、SEQ ID NO.28の配列、又はSEQ ID NO.:28に少なくとも75%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:28の配列に少なくとも80%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:28の配列に少なくとも85%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:28に少なくとも90%、95%、98%又は99%同一である。
【0028】
同様に含まれるのは、SEQ ID NO.29の配列、又はSEQ ID NO.:29の配列に少なくとも70%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:29に少なくとも75%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:29の配列に少なくとも80%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:29に少なくとも85%又は90%同一である。特に有利には、前記配列はSEQ ID NO.:29の配列に少なくとも95%、98%又は99%同一である。
【0029】
また含まれるのは、SEQ ID NO.30の配列、又はSEQ ID NO.:30の配列に少なくとも60%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:30に少なくとも65%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:30の配列に少なくとも70%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:30に少なくとも75%又は80%同一である。特に有利には、前記配列はSEQ ID NO.:30の配列に少なくとも85%、90%、95%、98%又は99%同一である。
【0030】
更に含まれるのは、SEQ ID NO.31の配列、又はSEQ ID NO.:31の配列に少なくとも55%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:31に少なくとも60%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:31の配列に少なくとも65%または70%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:31に少なくとも75%又は80%同一である。特に有利には、前記配列はSEQ ID NO.:31の配列に少なくとも85%、90%、95%、98%又は99%同一である。
【0031】
同様に含まれるのは、SEQ ID NO.32の配列、又はSEQ ID NO.:32の配列に少なくとも55%同一である配列である。有利には前記配列はSEQ ID NO.:32に少なくとも60%同一である。より有利には、前記配列はSEQ ID NO.:32の配列に少なくとも65%または70%同一である。より一層有利には、前記配列はSEQ ID NO.:32に少なくとも75%又は80%同一である。特に有利には、前記配列はSEQ ID NO.:32の配列に少なくとも85%、90%、95%、98%又は99%同一である。
【0032】
更に含まれるのは、SEQ ID NO.:33の配列、又はSEQ ID NO.:34の配列である。言及してかつSEQ IDにより特徴付けたアミノ酸配列は有利には、SEQ ID NO.:35〜68として参照されるDNA配列によりコードされる。
更に、全長にわたり天然に生じる酵素に相応するポリペプチドが有利である。その他の有利な実施態様において、本発明のポリペプチドは付加的に、前記ポリペプチドを融合タンパク質として特徴付ける少なくとも1つの異種アミノ酸部位を有する。本発明の融合タンパク質の異種成分の可能性のある例は、タグ(例えばHis−タグまたはフラッグタグ)であり、これらは本発明の融合タンパク質の精製のために使用されてよい。その他の実施態様において、前記異種成分は、その独自の酵素活性を有してよい。この場合には、前記の2つの酵素成分は有利には、リンカー、例えばフレキシブルなグリシン又は長さにおいて6〜10つのアミノ酸のグリシン−セリンリンカーにより、前記成分の機能性を確保するために連結されている。「異種」との用語は、本発明において使用される場合には、第1には、前記融合タンパク質の成分は天然には共有結合により一緒に連結して生じることがないこと、そして第2には、前記成分は異なる種に由来することを意味してよい。融合タンパク質は通常は組み換えDNA技術(Sambrook et al., loc. cit.参照)を使用して製造される。
【0033】
本発明によれば、「NAD依存性アルコールデヒドロゲナーゼ又はNADP依存性アルコールデヒドロゲナーゼの生物活性を有するポリペプチド」との用語は、アルコールのアルデヒド又はケトンへの変換、又はこの相応する逆反応、即ちアルデヒドの第一級アルコールへの又はケトンの第二級アルコールへの変換を触媒する酵素のグループを指す。最初に言及した反応は、この関連において酸化的方法に相応し、この二番目に言及した反応の型は、還元的方法に相応する。アルコールデヒドロゲナーゼ(ADHs)のECナンバーは、EC1.1.1.1である。本発明の保護の範囲は、本発明の過程において単離された天然に生じる酵素に加えて、天然の起源から単離されたポリペプチドに比較して、アミノ酸のレベルにおいて上述の同一性の値を有するポリペプチドをも含み、前記ポリペプチドは同様に天然の起源に由来してよい。その一方でこれらは組み換えDNA技術により、当業者であれば予期できるように、前記酵素活性が維持されるか又は実質的に維持されるように改変されていてよい(参照、例えばSambrook et al, "Molecular Cloning, A Laboratory Handbook", 第2版 1989, CSH Press, Cold Spring Harbor, Ausubel et al. "Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley & Sons, NY 2001)。従って、活性部位に局在しておらず、「同類の」アミノ酸での置換が一見して、実質的に改変された三次元構造を生じないことが予期されるアミノ酸は、「同類の」アミノ酸で置換されることが可能である。例えば、非極性鎖を有する特定のアミノ酸(同類のアミノ酸)は置き換えられることが予期されてよく、例えばバリンをアラニンのかわりに、これが(実質的な)影響を前記酵素の生物機能に、本発明と一致した酵素活性に有することなしに置き換えることが予期されてよい。当業者は、その専門知識に基づいて、その他の型のアミノ酸の置き換え(例えば、塩基性アミノ酸をその他の塩基性アミノ酸で、又は非帯電極性側鎖をその他のこのグループからのアミノ酸で置換)に対しても相応する結論を導いてよい。
【0034】
天然の起源から単離されたポリペプチドのアミノ酸配列に対する同一性のパーセンテージは、これはSEQ IQナンバーにより本願明細書において記載されるが、容易に当業者によって、公知技術を用いて決定されていてよい。本発明により使用されてよい適したプログラムは、BLASTP(Altschul et al.. 1997. Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of protein database search programs. Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402.)である。
【0035】
本発明は、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子にも関する。
【0036】
本発明の核酸分子は、DNA分子又はRNA分子であってよい。cDNA分子又はmRNA分子である核酸分子が有利である。本発明によれば、前記DNA分子は更にゲノムDNA分子であってよい。本発明はまた、前記DNA分子がPNA分子又はDNA分子のその他の誘導体である実施態様も含む。本発明によれば、SEQ IDナンバー35〜68に従ったDNA配列を含有するDNA配列が有利である。
【0037】
本発明が基づく課題を達成するために、以下のアプローチを追求した。まず、広範囲な所有権のある株収集物(extensive proprietary strain collection)に基づいて、優先付けされた株をプレート上で成長させ、生存度および精製の制御が実施された後に液体培養中でも成長させた。これらの生物のゲノムDNAを回収した細胞ペレットから単離した。前記の調製したゲノムDNAに基づいて、選択した単離物を、アルコールデヒドロゲナーゼに関して、本発明のプライマーを使用したPCRタイピングを介して遺伝子によりスクリーニングした。この文脈において、既知のアルコールデヒドロゲナーゼのホモロジーのために、以前には同定されていないアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の援助を用いて容易にはオリゴヌクレオチドプライマーを由来させることを可能にしない、前記アミノ酸配列の類似性でさえも、容易に成功して増幅されてよい。本来、このアプローチは、これまでに既知であるアルコールデヒドロゲナーゼの遺伝子中に保存されてもいる、またこの所望のアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝中に存在もしている特定の配列モチーフの仮説に基づいていた。しかしながら、これまでに既知であるアルコールデヒドロゲナーゼ中に保存されている配列モチーフは、当業者に公知である方法によるデジェネレートプライマーを得るためには不適当である(Kwok et al.. 1995. Design and use of mismatched and degenerate primers. In: PCR Primer , A laboratory Manual, Dieffenbach CW & Dveksler GS (Editors), Cold Spring Habor Laboratory Press, pp143-155; Compton T. 1990. Degenerate Primers for DNA Amplification. In: PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications. Innis et al. (Editors) Academic Press, San Diego, pp39-34)。NAD依存性アルコールデヒドロゲナーゼ又はNADP依存性アルコールデヒドロゲナーゼは、長鎖、中間鎖、及び短鎖のADHsとして分類される。これらは、この3つのグループに、特にこの金属依存性及びサブユニットの大きさに基づいて分けられる。短鎖ADHsは、いかなる金属イオンをも必要とせず、このサブユニットは約250アミノ酸からなる。対照的に、中間鎖及び長鎖ADHsは、金属イオンに依存性である。前記中間鎖ADHsは、この典型的なサブユニットが約350アミノ酸からなり、亜鉛イオンを必要とする。長鎖ADHsは、このサブユニットが約385アミノ酸からなり、鉄イオンを必要とする(Hummel, W. 1997. New alcohol dehydrogenases for the synthesis of chiral compounds. 58:145-84)。既知のNAD依存性ADHs又はNADP依存性ADHsの全てのうちにあるだけでなく簡単に説明したこれらの3つのADHグループのうちにもある、この配列異質性は、極めて高い。従って、まず第1に特異的にADH配列を増幅でき、そして第2に本願の課題を達成するために必要である新規のADHsの多様性を捕捉することに役立つプライマーを構築することは、容易ではなかった。従って、この使用したのに基づいて予期された配列ホモロジーにもかかわらず、長鎖ADHsその他は、検査した細菌中では単離されなかった。この関連において、この構築されたプライマーの品質をまず、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子が既知であるモデル生物のゲノムDNAで、又は様々な微生物からのDNAからなるDNAプールで、試験することを試みた。これには、クローニング、配列決定及び引き続くPCR産物の解析が伴った。この確立時期の後で選択した単離体を、上述したように、スクリーニングすべき微生物の調製したゲノムDNAに基づいてPCRタイピングにかけた。この実験から得られる結果(配列同一性及び比活性に関して)を、新規のアルコールデヒドロゲナーゼが単離された、可能性のあるヒット生物(Hit organism)の優先付けに組み込んだ。予期していない、残念な、そして動機付けを損なうような結果にもかかわらず、長鎖のADHSをコードすることが予想される核酸の試みた単離の過程において、短鎖の酵素及び中間鎖の酵素鎖をコードする数々の核酸が、本発明により単離された。前記酵素及び酵素鎖のうちいくつかは、意外にも低配列同一性(<50%)を、このクラスの既知の酵素に対して有した。
【0038】
本発明は更に、本発明の核酸分子に対して相補的である核酸分子に関する。
【0039】
本発明によれば、「相補的」との用語は、間隙なしに、本発明の核酸分子の全体の領域にわたって及ぶ相補性を意味する。言い換えると、本発明によれば、本発明の配列の全体の領域にわたって、即ち示した5′末端から示した3′末端にわたって、100%に及ぶ前記相補性が有利である。更なる有利な実施態様において、前記相補性は、少なくとも19つ、有利には少なくとも21つの、有利には酵素活性の活性部位をコードしない連続したヌクレオチドの領域にわたって及ぶ。
【0040】
加えて、本発明は、本発明の核酸分子を含有するベクターに関する。
【0041】
本発明のベクターは有利には、発現制御配列に機能的に連結された本発明の核酸を、前記核酸が、転写され、適切であれば適した宿主細胞中に翻訳されることが可能であるように含有する。発現制御配列は通常は、プロモーターと、適切であれば更なる調節配列、例えばオペレーター又はエンハンサーを含有する。更に、翻訳開始配列が存在してもよい。原核生物又は真核生物である宿主細胞のために適した発現制御配列は、当業者に公知である(参照、例えばSambrook et al., loc. cit.)。本発明の組み換えベクターは更に、通常の要素、例えば複製開始点及び選択マーカー遺伝子を含んでもよい。適した組み換えベクターの例は、プラスミド、コスミド、ファージ又はウィルスである(参照、例えばSambrook et al., supra)。本発明の組み換えベクターを製造するための開始材料は、市販されている(例えば、Stratagene、InVitroGen又はPromega)。
【0042】
この目的のために当業者に入手可能である任意のプラスミド又はベクターが、原則的に適する。これらのプラスミド及びベクターは、例えばStudier及び同僚(Studier, W. F.; Rosenberg A. H.; Dunn J. J.; Dubendroff J. W.; (1990), Use of the T7 RNA polymerase to direct expression of cloned genes, Methods Enzymol. 185, 61-89)又はNovagen、Promega、New England Biolabs、Clontech又はGibco BRLからのパンフレットに見出されてよい。更に有利なプラスミド及びベクターは、以下に見出される:Glover, D. M. (1985), DNA cloning: a practical approach, 第I巻-第III巻, IRL Press Ltd., Oxford; Rodriguez, R. L.及びDenhardt, D. T. (eds) (1988), Vectors: a survey of molecular cloning vectors and their uses, 179-204, Butterworth, Stoneham; Goeddel, D. V. (1990), Systems for heterologous gene expression, Methods Enzymol. 185, 3−7; Sambrook, J.; Fritsch, E. F.及びManiatis, T. (1989), Molecular cloning: a laboratory manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York。本発明の核酸配列を有する遺伝子構築物を、宿主生物中にクローニングするために特に有利な様式で使用されてよいプラスミドは、以下の誘導体である:pUC18及びpUC19(Roche Biochemicals)、pKK−177−3H(Roche Biochemicals)、pBTac2(Roche Biochemicals)、pKK223−3(Amersham Pharmacia Biotech)、pKK−233−3(Stratagene又はpET(Novagen)。その他の有利なプラスミドは、pBR322(DSM3879)、pACYC184(DSM4439)及びpSC101(DSM6202)であり、これらはDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH, Brunswick, Germanyから取得されてよい。有利なプロモーターの例は、T7、lac、tac、trp、rha及びaraである。
【0043】
本発明はまた、本発明のポリペプチド又は本発明の核酸分子又は本発明のベクターを含有する非ヒト宿主に関する。
【0044】
前記非ヒト宿主は、細胞又は多細胞生物又は多数細胞生物であってよい。適した多細胞生物は、分子生物学において慣用のモデル系を含み、例えばキイロショウジョウバエ、ゼブラフィッシュ、又は線虫である。
【0045】
有利な実施態様において、前記宿主は細胞である。
【0046】
この有利な実施態様において、本発明の宿主は、本発明の核酸又は本発明のベクターで形質転換又はトランスフェクションされた組み換え細胞である(本発明によれば、「形質転換」及び「トランスフェクション」との用語は同義に使用される)。形質転換又はトランスフェクションは、公知の方法、例えばリン酸カルシウム共沈、リポフェクション、電気穿孔、粒子撃ち込み、又はウィルス感染により実施さてよい。本発明の細胞は、組み換え核酸を、染色体外に、又は染色体に組み込まれた形で含んでよい。言い換えると、トランスフェクション/形質転換は、安定又は一過的であってよい。
【0047】
前記組み換え細胞は、有利には原核生物起源である。適した宿主細胞は、単細胞微生物の細胞、例えば細菌の細胞を含む。特に適した細菌の宿主系は、大腸菌である。大腸菌の細胞質は、本発明のポリペプチドの酵素活性に必要とされる補因子を含有する。これらは、特にNADH、NADPH、NAD及びNADPである。特に、大腸菌XL1 Blue、W3110、DSM14459(PCT/US00/08159)、NM 522、JM101、JM109、JM105、RR1、DH5、TOP 10−又はHB101が有利である。本発明の核酸の発現のためには、ラクトバシラス、バシラス、ロドコッカス、カンピロバクター、カウロバクター、マイコバクテリウム、ストレプトマイセス、ナイセリア、ラルストニ(Ralstoni)、シュードモナス及びアグロバクテリウムの属/種の細菌を使用することも可能である。適した株は、公知技術から入手可能であり、少なくとも部分的に、国際寄託局、例えばATCC又はDMSZを介して取得されてよい。トランスフェクションプロトコル及び形質転換プロトコルは、当業者に公知である(Chan及びCohen. 1979. High Frequency Transformation of Bacillus subtilis Protoplasts by Palsmid DNA. Mol Gen Genet. 168(1):111-5; Kieser et al.. 2000. Practical Streptomyces Genetics. The John Innes Foundation Norwich.; Sambrook et al.. 1989. Molecular Cloning. A Laboratory Manual. 第2版. Cold Spring Harbor Laboratory Press. Cold Spring Harbor. NY.; Irani及びRowe. 1997. Enhancement of transformation in Pseudomonas aeruginosa PAO1 by Mg2+ and heat. Biotechniques 22: 54-56)。使用されてよい宿主生物の付加的な例はまた、酵母、例えばハンゼヌラ・ポリモルファ、ピチア種、サッカロマイセス・セレビシである。この代用品として、真核生物起源の細胞を使用してよい。適した真核生物の細胞は、CHO細胞、HeLa細胞、及びその他を含む。これらの細胞のうち多くは、寄託局、例えばATCC又はDMSZを介して取得できる。
【0048】
更なる有利な実施態様において、前記宿主は非ヒトのトランスジェニック動物である。
【0049】
非ヒトのトランスジェニック動物は、公知技術において公知である方法により製造されてよい。
【0050】
本発明の非ヒトのトランスジェニック動物は、有利には、様々な遺伝的構成を有してよい。これは、(i)構成的に又は誘導的に、本発明の核酸の遺伝子を過剰発現させる、(ii)不活性の形態において、本発明の核酸の内在性遺伝子を含有する、(iii)完全に又は部分的に本発明の核酸の変異した遺伝子により置換された、本発明の核酸の内在性遺伝子を含有する、(iv)本発明の核酸の遺伝子の条件性及び組織特異的な過剰発現又は過小発現を有する、又は(v)条件性及び組織特異的な、本発明の核酸の遺伝子のノックアウトを有する可能性がある。
【0051】
有利には、トランスジェニック動物は付加的に、本発明の核酸の外来性の遺伝子を、過剰発現を可能にするプロモーターの制御下で含有する。
【0052】
又は、本発明の核酸の内在性の遺伝子は、内在プロモーターの活性化及び/又は置換により過剰発現されてよい。有利には、本発明の核酸の遺伝子の内在性のプロモーターは、前記遺伝子の増加した発現を生じる遺伝子改変を有してよい。前記の、内在性プロモーターの遺伝子の改変は、本発明において、個々の塩基の変異及び欠失及び挿入の変異の両方を含んでよい。
【0053】
本発明の宿主の特に適した実施態様において、これらはトランスジェニック齧歯類、有利にはトランスジェニックマウス、トランスジェニックウサギ、トランスジェニックラット、又はトランスジェニックヒツジ、トランスジェニックウシ、トランスジェニックヤギ又はトランスジェニックブタである。
【0054】
マウスは、その他の動物を超えた種々の利点を有する。これらは容易に飼育され、マウスの生理学はヒトの生理学のモデル系であると見なされている。係る遺伝子操作された動物の産生は、当業者に十分公知であり、通常の方法を用いて実施される(参照、例えばHogan, B., Beddington, R., Costantini, F.及びLacy, E. (1994), Manipulating the Mouse-Embryo; A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY; WO91/08216)。
【0055】
選択的に又は付加的に、細胞培養系、特にヒト細胞培養系を使用することも、本発明の非ヒトのトランスジェニック動物に関して説明した適用のために可能である。
使用されるアルコールデヒドロゲナーゼの補因子の例は、既に言及したように、この特定のアルコールデヒドロゲナーゼに依存して、NADH及びNADPH、及びこれらの酸化した形、それぞれNAD及びNADPである。
【0056】
前記補因子は再生されてよく、原則的に、酵素に共役した様式で第2の酵素を用いて、例えばギ酸デヒドロゲナーゼ又はグルコースデヒドロゲナーゼを用いて、又は基質に共役した様式で、使用したアルコールデヒドロゲナーゼにより基質として許容される任意のアルコール、例えば基質として許容される場合にはイソプロパノール、を用いて再生されてよい。以下の図式は、ギ酸デヒドロゲナーゼを使用した酵素に共役した補因子再生を用いた、アルコールデヒドロゲナーゼ触媒したケトンの還元を概念を例として示す。
【0057】
【表1】

【0058】
アルコールデヒドロゲナーゼは、例えば、エナンチオマー富化した、有利にはエナンチオマー純粋の第二級アルコールをプロキラルケトンから出発して、製造するために使用される。この関連において、(R)−特異的なアルコールデヒドロゲナーゼ及び(S)−特異的なアルコールデヒドロゲナーゼの両方は既知であり、これは従ってアルコールの、それぞれ特定のエナンチオマーの、(R)及び又は(S)の形の形成を生じる。
【0059】
相応して、本発明によればまた、補因子再生のために適した更なるデヒドロゲナーゼ又は前記デヒドロゲナーゼをコードする核酸分子を有する宿主が有利である。
【0060】
この関連において、前記宿主は天然に、前記の更なるデヒドロゲナーゼを含有するか、又は前記デヒドロゲナーゼをコードする組み換え核酸(この核酸を用いて、前記宿主中で前記デヒドロゲナーゼを発現することが可能である)でトランスフェクションされていてよい。前記実施態様はまた、前記の更なるデヒドロゲナーゼの機能に必要な補因子を有する宿主を必要とするか、又は前記補因子は前記宿主へと適した様式において配送されることを必要とする。
【0061】
特にこの関連において、補因子再生に適したデヒドロゲナーゼが、ギ酸デヒドロゲナーゼ又はグルコースデヒドロゲナーゼである宿主が有利である。特に、カンジダ・ボイジニのギ酸デヒドロゲナーゼが有利である。特に、バシラス・サチリスのグルコースデヒドロゲナーゼである補因子再生デヒドロゲナーゼもまた有利である。遺伝子的に改変された、前記補因子再生デヒドロゲナーゼの変異体は、これは前記の酵素機能を維持するが、同様に本発明によれば有利である。
【0062】
更なる一実施態様において、本発明はデヒドロゲナーゼの基質である有機化合物、更には本発明のポリペプチド、本発明のベクター又は本発明の宿主、及び、適切であれば本発明のポリペプチドのための補因子を含有する反応系に関する(補因子の添加は、前記補因子が前記系に存在しない場合には必要である、以下も参照)。ある場合では、本発明の反応系は本発明の宿主に相応する細菌の細胞であってよく、そして前記系は本発明のポリペプチドもこの細胞質中で必要な補因子をも有する。前記補因子が既に天然に、前記系/宿主中に存在する場合には、前記補因子はもはや分かれて配送される必要がない。適しているのは、補因子再生に適した更なるデヒドロゲナーゼ、又は前記デヒドロゲナーゼをコードする分子、及びまたこのために必要とされる補因子を有する宿主である。所望の生成物のための基質が前記反応系に供給されるか、又は前記基質が前記反応系自体において代謝される場合には、前記反応系が適した条件下で維持される場合には、この所望の生成物は容易に前記反応系から単離される。適した条件は、前記反応を10〜80℃、有利には20〜60℃、特に有利には20〜40℃の温度で実施することを含む。100〜2000mM、有利には200〜800mMである前記基質濃度も有利である。有利な形態において、この所望の反応は、>80%、特に>90%の変換を、<20時間、特に反応時間<10時間、そしてとりわけ有利には反応時間<5時間のうちに達成できるように実施する。その他の実施態様において、前記反応系は、所望の生成物を取得するために適した基質を変換するためのin vitro系であってよい。例えば本発明のポリペプチドは、言及した補因子及びこの基質と、適切であれば(即ち、必要であれば)、補因子再生に適した更なるデヒドロゲナーゼ(及び、適切であれば、このために必要とされる補因子、特にNADH及び/又はNADPH、その酸化した形)と、上述したような適した条件下で、例えば十分な時間にわたり、この所望の生成物が産生されるように接触されてよい。この単離した酵素(精製した形、又は粗抽出物として)及び補因子の添加を利用するin vitro変形において、これらの補因子添加は、経済的な方法の制御に従って、<0.01当量(使用した基質の量に基づいて)、有利には<0.001当量、特に有利には<0.0005当量であることが望ましい。
【0063】
「反応系」は更に、非ヒトのトランスジェニック動物であってもよく、前記動物に対して適した基質、及び適切であれば、補因子及び/又は前記の更なるデヒドロゲナーゼが供給されるか又は投与され、かつ前記動物は前記基質を適した組織中で変換することが可能である、その他の実施態様において、前記反応系は細胞膜の系であってもよく、前記系において、前記酵素、前記酵素類及び適切であれば補因子がアンカーしている。
【0064】
更に、本発明によれば、デヒドロゲナーゼの基質である有機化合物がカルボニル化合物である反応系が有利である。
【0065】
特に、前記カルボニル化合物がアルデヒド又はケトンである反応系が有利である。
【0066】
本発明のこの実施態様は製造を、特に有利には本発明により、技術的等級のアルコールの製造を可能にし、前記アルコールは例えば、医薬品において使用可能である活性化合物の製造のための中間体として使用されてよい。
【0067】
特に、本発明によれば、非対称に置換されたケトンであるケトンが有利である。
【0068】
本発明のこの実施態様は特に有利であり、というのは相応する還元において産生される生成物は、キラリティーの中心を有し、高エナンチオ選択性でもって取得されてよいからである。一般的に、この所望のキラルの第二級アルコールは、>99%のエナンチオマー過剰でもってエナンチオマー純粋な形で取得される。
【0069】
本発明の反応系のその他の有利な実施態様において、デヒドロゲナーゼの基質である有機化合物はアルコールである。この変形は有利には、商業上重要なカルボニル化合物、例えば芳香化学の分野において関連のあるケトンの製造に適する。更に酸化を、エナンチオマー純粋な第二級アルコールの形成のために、基質としてラセミのアルコールから開始し、この不所望のエナンチオマーをエナンチオ選択的酸化によりケトン化合物へと変換することにより利用してもよい。この残りの、所望のエナンチオマーを次いで、しかるべく単離してよい。
【0070】
前記アルコールは有利には、第一級アルコール又はキラルである第二級アルコールである。最初の場合には、産生される生成物はアルデヒドであるが、第2の場合にはこの相応するケトンが形成される。
【0071】
本発明によれば、本発明の反応系中の補因子がNADH、NADPH、NAD又はNADPであることも有利である。
【0072】
本発明はまた、本発明のポリペプチド又は本発明の核酸分子によりコードされたポリペプチドの製造方法であって、宿主の成長及び前記ポリペプチドの単離を含む製造方法にも関する。
【0073】
前記ポリペプチドは、精製され、例えば従来の方法により精製され、例えば適した細胞の破壊により、例えば「フレンチプレス」、イオン交換、サイズ選択又はアフィニティクロマトグラフィその他(Coligan et al.. Current Protocols in Protein Science, John Wiley & Sons, Inc.)を用いて精製されてよい。これに代えて、本発明のポリペプチドは、リーダーペプチドに連結している場合には、この細胞外に輸送され、そしてこの培養上清から精製してもよい。この実施態様は、本発明のポリペプチド(前記ポリペプチドは天然にはリーダーペプチドを含まない)を遺伝子改変する必要がある。この実施態様は、本発明のポリペプチドの、前記培養上清からのより単純な精製という利点を有する。この最適な手法及び適したリーダーペプチドは、当業者により容易に決定されてよい。
【0074】
本発明の方法の更に有利な実施態様において、前記ポリペプチドは、非ヒトのトランスジェニック動物の体液又は組織試料から単離される。この実施態様においてもやはり、本発明のポリペプチドは有利にはリーダーペプチドを含有する。
【0075】
本発明の方法の更に有利な実施態様において、及び特に、前記の非ヒトのトランスジェニック動物が哺乳類、例えばウシ、ヤギ又はヒツジである場合には、前記体液はミルク又は血清である。
【0076】
その他の実施態様において本発明は、デヒドロゲナーゼの生成物である有機化合物の製造方法であって、デヒドロゲナーゼの基質である有機化合物と本発明のポリペプチド、本発明の宿主、又は本発明の反応系を利用して反応させることを含む製造方法に関する。
【0077】
本発明の方法において使用されてよい本発明の様々な実施態様は、原則的には、更なる成分、例えば補因子その他(参照supra)が前記ポリペプチドに添加される必要がある点で、この後者が無細胞系においてin vitro系で使用される場合に相違する。本発明の反応系を使用する場合には、この必要な成分は、可能性のある前記基質を除いて、好ましくも有利には、既に前記系中に存在していて、従って別の添加はこの際必要でない。
【0078】
本発明によれば、前記反応の生成物の単離の工程を更に含む方法が有利である。単離/精製に適した方法は、上述してある。
【0079】
本発明の方法のとりわけ適した実施態様において、これらは更に医薬品を生じるための生成物の処理を含む。医薬的活性化合物を製造するための中間体としてエナンチオマー純粋なアルコールを利用する数々の記載が、前記文献に与えられている。この関連における概要は特に以下に含まれている:A. Kleemann, J. Engels, B. Kutscher, D. Reichert, Pharmaceutical Substances: Syntheses, Patents, Applications, 第4版, Thieme-Verlag, Stuttgart, 2001。
【0080】
その他の、本発明の方法の特に有利な実施態様において、これらは、二次的な生成物を生じるための前記生成物の処理の工程を更に含む。この関連において、誘導体化は、前記アルコールの基の改変、例えばエステル化及び引き続く二次的な反応、及びこの特定の置換基の改変の両者により行われてよい。
【0081】
特に、前記の二次的な生成物を医薬品の製造において医薬的に適合性であるキャリアー又は賦形剤又は希釈剤と共に処方する工程を含む本発明の方法が有利である。
【0082】
適した医薬的に適合性であるキャリアー及び/又は希釈剤の例は当業者に公知であり、例えばリン酸緩衝食塩水溶液、水、エマルション、例えば、油/水エマルション、様々なタイプの湿潤剤又は界面活性剤、滅菌溶液その他を含んでよい。係るキャリアーを含む医薬品は、公知の従来法を使用して処方されてよい。前記医薬品は、適した用量で個人に投与されてよい。前記投与は、経口により又は非経口により、例えば静脈内に、腹腔内に、皮下に、筋肉内に、局所的に、経鼻により、気管支内に、経口により、又は皮内に、又は動脈内の部位のカテーテルを介して実施されてよい。非経口投与のための調製物は、滅菌した水溶液又は非水溶液、懸濁物及びエマルションを含んでよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油脂、例えばオリーブ油、及び有機エステル化合物、例えばオレイン酸エチルであり、これらは注射に適する。水性のキャリアーは、水、アルコール/水ベースの溶液、エマルション、懸濁物、塩溶液及び緩衝媒体を含む。非経口キャリアーは、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンガー及び結合油(bound oil)を含む。静脈内キャリアーの例は、液体、栄養分、及び電解質補給物(例えば、リンガーデキストロースに基づいたもの)を含む。前記医薬品は更に、保存剤及びその他の添加剤、例えば抗菌化合物、酸化防止剤、錯化剤及び不活性ガスを含む。目的とする特定の用法に依存して、その他の活性化合物、例えばインターロイキン、成長因子、分化因子、インターフェロン、走化性タンパク質又は非特異的な免疫調節物質をも含めてよい。
【0083】
用量のタイプは、担当の医者により、臨床的な因子に従って決定される。当業者は、用量のタイプが様々な因子、例えば体のサイズ又は体重、体表面積、年齢、性別又は患者の一般的な健康に依存すること、又は特異的に投与すべき剤、投与の期間及びタイプ、及び並行して投与されてよいその他の医薬品に依存することを関知している。典型的な用量は例えば、0.001〜1000μgの範囲内にあり、この際用量は例示的な範囲よりも低いことも及び高いことも、特に上述の因子を考慮した場合には理解してよい。本発明のこの組成物が定期的に投与される場合には、一日あたりの単位用量は一般的に、1μg〜10mgの範囲にあることが望ましい。この調製物中の活性化合物は通常は、10μg/生理学的緩衝液mlよりも高い濃度で存在する。しかしながらこれは、この全体の混合物の0.1〜99.5質量%の濃度で、固形で存在してもよい。一般的に、前記活性化合物を24時間につき0.001〜100mg/体重kgの全体量で、有利には0.01〜10mg/体重kgの全体量で、この際適切には連続的注入として、又は複数の個々の用量の形で投与することが、この所望の結果を達成するためには利点であることが証明された。前記組成物が静脈内に投与される場合には、1日につき体重1キログラム当たりの単位用量は、1μg〜10mgの範囲にあることが望ましい。前記医薬品は、局所投与、局在投与、又は全身投与されてよい。
【0084】
最後に、本発明によれば前記生成物がエナンチオマー純粋なアルコールである方法が特に有利である。
【0085】
本発明はまた、本発明のポリペプチドに特異的に結合するリガンドであって、前記ポリペプチドの基質でも、この補因子でも、これにより変換される生成物でもないリガンドに関する。
【0086】
「特異的に結合する」との用語は本発明によれば、前記リガンドが、同様の一次配列又は同様の三次元構造を有するポリペプチドを含めたその他のポリペプチドと、交差反応しないか又は実質的に交差反応しないことを意味する。交差反応性は公知技術から公知の方法により決定されてよい(参照、Harlow及びLane "Antibodies, A Laboratory Manual", CSH Press, Cold Spring Harbor, 1988)。この最後に、例えば競合アッセイ、例えば比濁試験を使用することが可能であり、前記アッセイにおいて前記リガンドは、本発明のラベル化ポリペプチド及びこれと競合するポリペプチドと共にインキュベーションされ、この際この後者は、異なる濃度で使用されることが可能である。
【0087】
有利な実施態様において、本発明のリガンドは、抗体又は断片又はこれらの誘導体、アプタマー、又は低分子量物質である。
【0088】
抗体断片は、Fv、Fab及びF(ab′)断片を含む。この誘導体は、scFvs(Harlow及びLane, loc. cit.)を含む。抗体はポリクローナル又はモノクローナル起源であってよい。
【0089】
本発明のレセプターのとりわけ有利な実施態様において、前記レセプターはモノクローナル抗体である。
【0090】
本発明によれば、「低分子量物質」とは、天然に生じるか又は人工的に産生された分子であって、約250〜1000Da、有利には300〜750Da、特に有利には400〜600Daの分子量を有する分子であるか又は、天然の物質に由来する前記分子量の改変された分子である。
【0091】
この請求された本発明は、表1に示された配列を有するプライマーを更に有する。
【0092】
加えて本発明は、表1に記載された配列を有するプライマー対であって、DNA配列の増幅のために、前記プライマー対の第一のプライマーはフォワードプライマーとして作用し、かつ前記プライマー対第二のプライマーはリバースプライマーとして作用する、プライマー対に関する。
【0093】
本発明のプライマー(更に適したプライマー、有利には更に適した、表1に列記したプライマーと組み合わせて)及び本発明のプライマー対は、本発明の配列の増幅のために、有利にはPCR又はLCRを用いて使用されてよい。プライマー及びプライマー対は、それぞれ、潜在的に可能性のある様々なプライマーから、細心の注意を払って選択された。本発明の核酸配列の増幅の他に、これは公知技術の酵素をコードする配列の増幅をも可能にし、従ってこれらは多用途性である。
【0094】
本発明は更に、
本発明のポリペプチド、
本発明の核酸分子、
本発明のベクター、
本発明の宿主、
本発明のリガンド、
本発明の反応系、
本発明のプライマー少なくとも1つ、及び/又は
本発明のプライマー対少なくとも1つ
を含有するキットに関する。
【0095】
本発明のキットの前記成分は、個々に又は部分的に一緒になって、適した容器中に包装されていてよい。前記成分は本発明のキット中に、例えば凍結乾燥した形で、例えば溶液で、適した溶媒、特に水性溶媒を含む溶媒と共に、例えば緩衝溶液、例えばリン酸緩衝溶液で存在してよい。
【0096】
本発明のキットは、多くの様々な方法で使用されてよい。例えば、これらは更なるアルコールデヒドロゲナーゼ、又はこれをコードする核酸を同定するために役立ってよく、その際特に有利には本発明のプライマーの使用が有利である。その他の実施態様において、本発明のキットは、本発明の酵素の、又は前記酵素により変換された生成物の産業的製造のために使用されてよい。これらの実施態様において、本発明の宿主又は本発明の反応系の使用が有利である。
【0097】
図1において:
図 :図1は、ラセミ体分割を介した公知技術を記す:少なくとも4−4工程。
図 :図2は、33つの配列に基づいたクラスター2(=プライマーグループ2)の概要を記す。
図3:図3は、様々なプールを使用した、グループ2のプライマーによるPCRタイピングを示す。
【0098】
実施例は本発明を説明するものである。
【0099】
実施例1:ADHsのクラスター化及びプライマー設計
株を、広範囲な所有権のある株収集物から優先付けて、液体培養中で生存性及び精製度チェックを実施した後で成長させた。回収した細胞ペレットは、遺伝子スクリーニングのための開始材料として役立つ。アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の遺伝子スクリーニングのためのプライマーを構築し、次いで選択した微生物単離体の調製したゲノムDNAに基づいてPCRを用いて試験した。NAD依存性アルコールデヒドロゲナーゼ又はNADP依存性アルコールデヒドロゲナーゼは長鎖、中間鎖及び短鎖のADHsとして分類した。これらのグループのうちでの配列異質性は大幅にあり、前記グループは配列解析に基づいてクラスターにグループ分けされた。長鎖のADHsを3つのクラスターに、中間鎖のADHsを4つのクラスターに、短鎖のADHsを3つのクラスターに分けた。引き続き、それぞれの場合において、クラスターにつき4つのディジェネレートプライマーセットを構築し、これらは特定のコドンの利用の点(コドン使用頻度)で相違するが、前記クラスターの同一の配列モチーフに対して指向させてある。
【0100】
実施例2:
長鎖のアルコールデヒドロゲナーゼに対する遺伝子スクリーニング
長鎖のADHsを、配列解析に基づいて3つのクラスターに分け、このプライマーを構築し、同様の手法を用いて試験した。しかしながら、反対の予期にもかかわらず、このグループに対して割り当てられるPCRタグは増幅されなかった。
【0101】
実施例3:
中間鎖のアルコールデヒドロゲナーゼに対する遺伝子スクリーニング
中間鎖のADHsに対して指向させたプライマーを以下のように設計した:この中間鎖のADHsを配列解析に基づいて4つのクラスターに分けた。引き続き、それぞれの場合において、4つのディジェネレートプライマーセットを構築し、これらは選択されたコドン使用頻度により相違した。これは、図示により及び図2中の例示により、プライマーグループ2の決定のための生物のグループに基づいて描写される。このプライマーセットは、33つの異なるアルコールデヒドロゲナーゼ配列中の保存領域に基づいて選択された。
これらのプライマーグループは、例えばプライマーグループ2は、引き続き様々なプール(微生物からのゲノムDNAを含む)を調査するために使用された。このプライマーセットを使用して、新規の部分的に中間鎖であるADH配列を増幅、クローニング及び配列決定することが可能であった。このPCRタイピングの相応する結果を、以下図3に示した。示したように、特に図3のレーン1、2及び10により、それぞれの場合に、ここでは遺伝子配列が見出され、これはADH酵素の既知の遺伝子に相応する遺伝子配列に基づく、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を示す。全体として、可能性のあるアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有する更なる遺伝子配列を同定した。既知のADHsを用いて見出された前記配列タグの同一性は、51〜99%であった。
【0102】
実施例4:
ロドコッカス株からのアルコールデヒドロゲナーゼに対する類似性による、特殊な中間鎖アルコールデヒドロゲナーゼに対する遺伝子スクリーニング
公知のロドコッカス・エリスロポリス(S)−アルコールデヒドロゲナーゼ(S−Re−ADH;この酵素は、幅広いスペクトルのケトン及びケトエステルの、相応するヒドロキシ化合物への立体選択的変換により特徴付けられる)(前記酵素は同様に中間鎖アルコールデヒドロゲナーゼに属する)の、及びまたロドコッカス株から取得されたその他のアルコールデヒドロゲナーゼの興味深い特性のために、遺伝子スクリーニングを用いたこの配列に対する比較的高い相似性を示す新規のADH配列を同定することが可能であるか、との問いが調べられた。この際の駆動力は、S−Re−ADH配列との高い同一性を共有する配列の新規のADHsは、同様に興味深い特性を有する可能性があるとの仮定である。例えば、係る新規のADHsは一方ではS−Re−ADHの証明済みの特性を有してよいが、他方では、例えば、改変された基質スペクトル又は増加した発現能力を有する可能性がある。この上述の問いに解答するために、このS−Re−ADHのアミノ酸配列を用いた比較配列解析をまず実施した。これらの解析により、S−Re−ADHは、中間鎖ADHsのクラスター1の代表であることが明らかになった。更に、5つのタンパク質配列からなるグループは、これはS−Re−ADHを含むが、このクラスターのうちに見出された。この5つの配列から開始して、コドン使用頻度を考慮して、上述した手法に従って、ディジェネレートプライマーを構築し、アッセイにかけた。
【0103】
実施すべきPCRsの数を減少するために、24つの細菌の単離体からなるプールを確立し、DNAを単離した。このDNAをテンプレートとして使用した。数々の配列タグを増幅し、配列決定した。アミノ酸配列中に翻訳された配列タグの解析により、このS−Re−ADH配列に対する同一性が約 〜 であることが明らかになった。2つの全長遺伝子を単離し、これは1つの配列タグにより代表され、かつS−Re−ADHに対する98%の同一性をアミノ酸配列レベルで示した。この新規のADHsは生物アルスロバクター・パラフィネウス(Arthrobacter paraffineus)、ATCC21317に由来した。DNAレベルでのホモロジーは94%であった。前記の全長遺伝子を、配列ホモロジーアプローチを使用して単離した。
【0104】
実施例5:
短鎖のアルコールデヒドロゲナーゼに対する遺伝子スクリーニング
更に、短鎖ADHsに対する12つのプライマーセットを、これらはこのグループの3つのクラスターに対して指向させているが、最後にアッセイにかけた。使用したテンプレートは、このADH活性のおかげで、その4−クロロアセトフェノン又は2−ヘプタノンのいずれかを活性スクリーニングにおいて減少させた5つの単離体から単離したDNAであった。公知の短鎖のADH配列に対するアミノ酸配列タグの同一性は、 の間であり、この配列の大多数は、公表された配列に対して よりも少ない同一性を示した。
表1:本発明の をコードするDNA配列のスクリーニングのために使用した 配列
【0105】
【表2】

【0106】
【表3】

【0107】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】図1は、ラセミ体分割を介した公知技術を記す図である。
【図2】図2は、33つの配列に基づいたクラスター2(=プライマーグループ2)を示す図である。
【図3】図3は、様々なプールを使用した、グループ2のプライマーによるPCRタイピングを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NAD依存性アルコールデヒドロゲナーゼ又はNADP依存性アルコールデヒドロゲナーゼの生物活性を有し、かつ以下の配列の1つを含有するか又は有するポリペプチド:SEQ ID NO.:1の配列、SEQ ID NO.:2の配列、SEQ ID NO.:3の配列、又はSEQ ID NO.:3の配列に少なくとも90%同一である配列、SEQ ID NO.:4の配列、SEQ ID NO.:5の配列、又はSEQ ID NO.:5の配列に少なくとも90%同一である配列、SEQ ID NO.:6の配列、又はSEQ ID NO.:6の配列に少なくとも90%同一である配列、SEQ ID NO.:7の配列、又はSEQ ID NO.:7の配列に少なくとも70%同一である配列、SEQ ID NO.:8の配列、又はSEQ ID NO.:8の配列に少なくとも70%同一である配列、SEQ ID NO.:9の配列、又はSEQ ID NO.:9の配列に少なくとも70%同一である配列、SEQ ID NO.:10の配列、又はSEQ ID NO.:10の配列に少なくとも70%同一である配列、SEQ ID NO.:11の配列、又はSEQ ID NO.:11の配列に少なくとも70%同一である配列、SEQ ID NO.:12の配列、又はSEQ ID NO.:12の配列に少なくとも60%同一である配列、SEQ ID NO.:13の配列、又はSEQ ID NO.:13の配列に少なくとも60%同一である配列、SEQ ID NO.:14の配列、又はSEQ ID NO.:14の配列に少なくとも75%同一である配列、SEQ ID NO.:15の配列、又はSEQ ID NO.:15の配列に少なくとも95%同一である配列、SEQ ID NO.:16の配列、又はSEQ ID NO.:16の配列に少なくとも95%同一である配列、SEQ ID NO.:17の配列、又はSEQ ID NO.:17の配列に少なくとも75%同一である配列、SEQ ID NO.:18の配列、又はSEQ ID NO.:18の配列に少なくとも70%同一である配列、SEQ ID NO.:19の配列、又はSEQ ID NO.:19の配列に少なくとも70%同一である配列、SEQ ID NO.:20の配列、又はSEQ ID NO.:20の配列に少なくとも60%同一である配列、SEQ ID NO.:21の配列、又はSEQ ID NO.:21の配列に少なくとも90%同一である配列、SEQ ID NO.:22の配列、又はSEQ ID NO.:22の配列に少なくとも70%同一である配列、SEQ ID NO.:23の配列、又はSEQ ID NO.:23の配列に少なくとも55%同一である配列、SEQ ID NO.:24の配列、又はSEQ ID NO.:24の配列に少なくとも65%同一である配列、SEQ ID NO.:25の配列、又はSEQ ID NO.:25の配列に少なくとも55%同一である配列、SEQ ID NO.:26の配列、又はSEQ ID NO.:26の配列に少なくとも55%同一である配列、SEQ ID NO.:27の配列、又はSEQ ID NO.:27の配列に少なくとも55%同一である配列、SEQ ID NO.:28の配列、又はSEQ ID NO.:28の配列に少なくとも75%同一である配列、SEQ ID NO.:29の配列、又はSEQ ID NO.:29の配列に少なくとも70%同一である配列、SEQ ID NO.:30の配列、又はSEQ ID NO.:30の配列に少なくとも60%同一である配列、SEQ ID NO.:31の配列、又はSEQ ID NO.:31の配列に少なくとも55%同一である配列、SEQ ID NO.:32の配列、又はSEQ ID NO.:32の配列に少なくとも55%同一である配列、SEQ ID NO.:33の配列、又はSEQ ID NO.:34の配列。
【請求項2】
請求項1記載のポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項3】
請求項2記載の核酸分子に対して相補的である核酸分子。
【請求項4】
請求項2又は3記載の核酸分子を含有するベクター。
【請求項5】
請求項1記載のポリペプチド又は請求項2又は3記載の核酸分子又は請求項4記載のベクターを含有する非ヒト宿主。
【請求項6】
細胞である、請求項5記載の宿主。
【請求項7】
非ヒトのトランスジェニック動物である、請求項5記載の宿主。
【請求項8】
補因子再生に適した更なるデヒドロゲナーゼ又は前記デヒドロゲナーゼをコードする核酸分子を有する、請求項5から7までのいずれか1項記載の宿主。
【請求項9】
補因子再生に適したデヒドロゲナーゼが、ギ酸デヒドロゲナーゼ又はグルコースデヒドロゲナーゼである、請求項8記載の宿主。
【請求項10】
デヒドロゲナーゼの基質である有機化合物、請求項1記載のポリペプチド、請求項4記載のベクター又は請求項5から9までのいずれか1項記載の宿主、及び、適切であれば請求項1記載のポリペプチドのための補因子を含有する反応系。
【請求項11】
デヒドロゲナーゼの基質である前記有機化合物が、カルボニル化合物である、請求項10記載の反応系。
【請求項12】
前記カルボニル化合物がアルデヒド又はケトンである、請求項11記載の反応系。
【請求項13】
前記ケトンが非対称に置換したケトンである、請求項12記載の反応系。
【請求項14】
デヒドロゲナーゼの基質である前記有機化合物が、アルコールである、請求項10記載の反応系。
【請求項15】
前記アルコールが、第一級アルコール又はキラルである第二級アルコールである、請求項14記載の反応系。
【請求項16】
補因子が である、請求項10から15までのいずれか1項記載の反応系。
【請求項17】
請求項1記載のポリペプチド又は請求項2記載の核酸分子によりコードされたポリペプチドの製造方法であって、請求項5から9までのいずれか1項記載の宿主の成長及び前記ポリペプチドの単離を含む製造方法。
【請求項18】
請求項1記載のポリペプチド又は請求項2記載の核酸分子によりコードされたポリペプチドの製造方法であって、請求項7から9までのいずれか1項記載の宿主の体液又は組織試料からの前記ポリペプチドの単離を含む製造方法。
【請求項19】
デヒドロゲナーゼの生成物である有機化合物の方法であって、デヒドロゲナーゼの基質である有機化合物と請求項1記載のポリペプチド、請求項5から9までのいずれか1項記載の宿主、又は請求項10から16までのいずれか1項記載の反応系を利用して反応させることを含む製造方法。
【請求項20】
更に、前記反応の生成物の単離の工程を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
医薬品を生じるための生成物の処理を更に含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
二次的な生成物を生じるための前記生成物の処理の工程を更に含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記の二次的な生成物を医薬品の製造において処方する工程を更に含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記生成物が、エナンチオマー純粋なアルコールである、請求項19から23までのいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
請求項1記載のポリペプチドに特異的に結合するリガンドであって、前記リガンドが前記ポリペプチドの基質又は補因子でも、これらから産生された生成物でもない、リガンド。
【請求項26】
抗体又は断片又はこれらの誘導体、アプタマー、又は低分子量物質である、請求項25記載のリガンド。
【請求項27】
表1に示された配列を有する、プライマー。
【請求項28】
表1に示された配列を有するプライマー対であって、DNA配列の増幅のために、前記プライマー対の第一のプライマーはフォワードプライマーとして作用し、かつ前記プライマー対第二のプライマーはリバースプライマーとして作用する、プライマー対。
【請求項29】
(a)請求項1記載のポリペプチド、
(b)請求項2又は3記載の核酸分子、
(c)請求項4記載のベクター、
(d)請求項6から9までのいずれか1項記載の宿主、
(e)請求項10から16までのいずれか1項記載の反応系、
(f)請求項25又は26記載のリガンド、
(g)請求項27記載のプライマー少なくとも1つ、及び/又は
(h)請求項28記載のプライマー対少なくとも1つ
を含有するキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−529232(P2007−529232A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504293(P2007−504293)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002557
【国際公開番号】WO2005/103239
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(501073862)デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】