説明

新規のガラクトオリゴサッカライド組成物およびその調製法

本発明は、ラクトースをガラクトオリゴサッカライドの新規混合物に変換する、新規ガラクトシダーゼ酵素活性を持ちうる、ビフィドバクテリウム ビフィダムの新規な株を提供する。前記オリゴサッカライドの混合物は、腸内ビフィズス菌の増殖を促進し、病原性微生物叢の増殖を抑制することで腸の健康を改善するために、多数の食物製品、または動物の餌に組み込むことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトースを新規のガラクトオリゴサッカライドの混合物に変換可能な、新規のガラクトシダーゼ酵素活性を生じさせるビフィドバクテリウム ビフィダムの新規株に関する。ガラクトサッカライドは、消化不可能な糖質であり、哺乳動物の胃腸消化酵素に耐性を示すが、特定の大腸菌によって発酵される。本発明はまた、腸内のビフィズス菌の増殖を促進することが可能であり、新規のガラクトオリゴサッカライド組成物を生成するための、ビフィズス菌株の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト腸管内菌叢には、病原性、良性そして有益な属がある。前者が優占種である場合、急性(たとえば胃腸炎)および慢性(たとえば炎症性腸疾患、過敏性腸症候群および腸がん)の両方であり得る腸疾患が発症しうる。1つまたはそれ以上のそれら微生物株を、適切な食物担体に加えることによって、ビフィズス菌等の有益な微生物が優占種となるような腸管内菌叢のバランスをもたらすための試みが為されてきた。そのような生微生物食物サプリメントが体によいことは公知である。しかしながら、食物中、また消化後に、生細菌の生存を保証することは難しい。
【0003】
腸管内菌叢の食事操作に対する他のアプローチは、プレバイオティック(prebiotic)を使用することであり、大腸内の1つまたは限定された数の細菌の増殖および/または活性を選択的に刺激することによる結果として宿主の健康を改善させることによって、宿主に有益な影響を与える、消化不可能な食物成分として定義される。
【0004】
ヒト大腸管内菌叢は、誕生時点で獲得される。母乳を与えられた胎児では、他の属と容易に競合するビフィズス菌が優占的である。これは、ヒトのミルク成分が促進的であるからである。一方、調乳を与えられた胎児は、バクテロイド、クロストリディア、ビフィズス菌、乳酸菌、グラム陽性球菌、大腸菌および他の群すべてが、全く等しい特性を有する成人の腸と似た、より複雑な腸管内菌叢を持つ。ビフィズス菌は一般的に、大腸感染に対して防御的であると考えられており、おそらくこの差によって、調乳ミルクを与えられた胎児と比較して、母乳を与えられた胎児における感染の頻度が非常に低いことが説明される。
【0005】
腸管内菌叢の特定の構成要素が、腸疾患の原因に関与してきた。たとえば、マイコバクテリアは、クローン病に関連し、潰瘍性大腸炎は、硫酸減少性細菌によって引き起こされ、腸がんの発達に細菌が関与しうる。有用な常在の腸内細菌の選択的増殖が、プレバイオティックの摂取によって促進される場合には、明らかに有益である。これは、病原性細菌叢が抑制されうるという継続的効果をもたらす。
【0006】
プレバイオティックとして分類される化合物の群の1つは、ガラクトオリゴサッカライドであり、これは、Glcα1−4[β Gal1−6]nの形態でのガラクトース含有オリゴサッカライドであり、式中n=2〜5であり、酵素β−ガラクトシダーゼのトランスガラクトシラーゼ活性を用いて、ラクトースシロップから生成される(Crittenden,(1999)、Probiotics(体によい働きをするバクテリア):論評(Probiotics:A Critial Review.)、Tannock,G(ed)Horizon Scientific Press,Wymondham,pp.141-156。)3つの製品が、僅かに異なる組成を有して現在市販されている。これらのうちの1つ目は、トランスガラクトシル化オリゴサッカライド(TOS)であり、アスペルギルス オリザエ(Aspergillus oryzae)よりβ−ガラクトシダーゼを用いて生成され(Tanaka et al.,(1983)Bifidobacteria Microflowa,2,17-24)、トリ−、テトラ−、ペンタ−およびヘキサ−ガラクト−オリゴサッカライドからなる。2つ目は、オリゴメート55(Oligomate 55)であり、A.オリザエ(A.oryzae)およびストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)より、β−ガラクトシダーゼを用いて調製され(Ito et al.,(1999)、Microbial Ecology in Health and Disease,3,285-292)、36%のトリ−、テトラ−、ペンタ−およびヘキサ−のガラクト−オリゴサッカライド類、16%のジサッカライド類、ガラクトシルグルコースおよびガラクトシルガラクトース、38%のモノサッカライド類および10%のラクトースを含む。最後のものは、トランスガラクトシル化ジサッカライド(TD)の調製物が、S.サーモフィラス(S.thermophilus)より、β−ガラクトシダーゼを用いて生成される(Ito et al., (1993), J. Nutritional Science and Vitaminology, 39,279-288)。
【0007】
ビフィズス菌の一員が、ラクトースの細菌代謝に関与する、β−ガラクトシダーゼ酵素を生成することが知られている。Moller, P.L. et al. Appl. & Environ. Microbiol., (2001),62,(5)、2276-2283では、ビフィドバクテリウム ビフィダムの株からの、3つのβ−ガラクトシダーゼ遺伝子の単離および特徴化について記述されている。
米国特許第2002/0086358号は、ビフィドバクテリウム ビフィダムからの新規のβ−ガラクトシダーゼ、とりわけ、高いトランスガラクトシル化活性を持つ酵素の短化バージョンを記述している。該β−ガラクトシダーゼはラクトースと0.5〜60%の該ラクトースの存在下で一緒にインキュベーションを実施することが可能であることが言及されている一方で、トランスガラクトシル化反応で生成された、ガラクトオリゴサッカライドの例示的な最大収率は、44%(添加ラクトース1mgあたりの生成されたオリゴサッカライドのmg)であった。さらに、本米国特許明細書中でのオリゴサッカライドの定義より、生成物が、少なくとも3つの連結糖分子からなることが明白である。
【0008】
Carbohydrate Research, 201,(1990),115-123中で、Dumortier et al.は、ビフィドバクテリウム ビフィダムDSM20456でのラクトース加水分解中の、トランスガラクトシダーゼ化反応による、オリゴサッカライドの形成を記述している。生成されたオリゴサッカライド類の混合物の構造についてのこれらの解析によって、結合が、β−(1→3)、β−(1→6)およびβ−(1→4)−D−ガラクトシルの順であったことが示された。Dumortierは、ビフィドバクテリウム ビフィダムによって生成された化合物が、大腸内の細菌の付着に関与していることを示唆している。
【0009】
ビフィズス菌の株は現在、ガラクトオリゴサッカライドの混合物へラクトースを変換するガラクトシダーゼ酵素活性を生じさせることが可能なだけではなく、また、35%までのジサッカライドガラビオース(Gal(α1−6)−Gal)を含む、ガラクトオリゴサッカライド混合物を生成することが発見されている。後者は、毒素、たとえばシガ毒素、および大腸菌(E.Coli)のような病原体の、腸壁への付着を防止することが可能な抗付着物であることが知られている(Paton, J.C.&Paton,A.W. (1989), Clin.Microbiol.Revs., 11, 450-479; Carlsson, K.A. (1989), Ann. Reviews Biochem., 58, 309-350を参照のこと)。
【特許文献1】米国特許第2002/0086358号
【非特許文献1】Crittenden,(1999)、Probiotics: A Critial Review.、Tannock,G(ed)Horizon Scientific Press,Wymondham,pp.141-156
【非特許文献2】Tanaka et al.,(1983)Bifidobacteria Microflowa,2,17-24
【非特許文献3】Ito et al.,(1999)、Microbial Ecology in Health and Disease,3,285-292
【非特許文献4】Ito et al., (1993), J. Nutritional Science and Vitaminology, 39,279-288
【非特許文献5】Moller, P.L. et al. Appl. & Environ. Microbiol., (2001),62,(5)、2276-2283
【非特許文献6】Carbohydrate Research, 201,(1990),115-123
【非特許文献7】Paton, J.C.&Paton,A.W. (1989), Clin.Microbiol.Revs., 11, 450-479; Carlsson, K.A. (1989), Ann. Reviews Biochem., 58, 309-350
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ラクトースを新規のガラクトオリゴサッカライドの混合物に変換可能な、新規のガラクトシダーゼ酵素活性を生じさせるビフィドバクテリウム ビフィダムの新規株、及び該ビフィズス菌株の使用に関する開示を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ラクトースを、少なくとも1つのジサッカライド、少なくとも1つのトリサッカライド、少なくとも1つのテトラサッカライド、および少なくとも1つのペンタサッカライドを含む、ガラクトオリゴサッカライド混合物に変換する、ガラクトシダーゼ酵素活性を生じさせることが可能なビフィドバクテリウム ビフィダムの株を提供する。好ましくは、この混合物は、20〜35%w/vのジサッカライド、20〜35%w/vのトリサッカライド、15〜25%w/vのテトラサッカライド、および10〜20%w/vのペンタサッカライドを含有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の開示するビフィドバクテリウム ビフィダムの新規株が生じる新規ガラクトシダーゼの酵素活性によりラクトースを新規のガラクトオリゴサッカライドの混合物に変換することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、ラクトースを、少なくとも1つのジサッカライド、少なくとも1つのトリサッカライド、少なくとも1つのテトラサッカライド、および少なくとも1つのペンタサッカライドを含む、ガラクトオリゴサッカライド混合物に変換する、ガラクトシダーゼ酵素活性を生じさせることが可能なビフィドバクテリウム ビフィダムの株を提供する。好ましくは、この混合物は、20〜35%w/vのジサッカライド、20〜35%w/vのトリサッカライド、15〜25%w/vのテトラサッカライド、および10〜20%w/vのペンタサッカライドを含有する。
【0014】
本発明のガラクトシダーゼ酵素活性に関連して使用される語句「酵素活性(enzyme activity)」は、少なくとも1つのガラクトシダーゼ酵素からもたらされる活性である。
【0015】
本発明のある態様において、ガラクトオリゴサッカライド混合物は、ジサッカライド、Gal−Gal、トリサッカライド、Gal−Gal−Glc、テトラサッカライド、Gal−Gal−Gal−Glc、ペンタサッカライド、Gal−Gal−Gal−Gal−Glcを含み、ここでGalはガラクトース残基を、Glcはグルコース残基を表す。
【0016】
メチル化解析および酵素加水分解を用いて、ガラクトオリゴサッカライド混合物が、Gal(α1−6)−Gal、(β1−6)−Gal(β1−4)−Glcのテトラサッカライド、Gal(β1−3)−Gal(β1−4)−Glc、およびGal(β1−3)−Gal(β1−4)G1cのトリサッカライド、Gal(β1−3)−Glc、Gal(β1−3)−Gal、Ga1(β1−6)−Gal、および(α1−6)−Galのジサッカライドを有することが判明した。
【0017】
ラクトースを、以上で定義したガラクトオリゴサッカライド類の混合物に変換する、ガラクトシダーゼ酵素活性を生じさせることが可能なビフィドバクテリウム ビフィダムの株は、2003年3月31日に、Natioal Collection of Industrial and Marine Bacteria,Aberdeen,UKにて、NCIMB41171の受託番号にて預託された。
【0018】
前記預託されたビフィドバクテリウム ビフィダム株またはその生物学的機能等価物は、以上で定義したようなガラクトオリゴサッカライド混合物を生成するために使用可能である。ガラクトオリゴサッカライドの混合物は、腸中のビフィズス菌、とりわけ起源生成株(origin producer strain)の増殖を促進することによって、腸の健康を改善するための製品の一部分を形成しうる。そのような製品は、日用品(たとえば、液体ミルク、全ミルク粉末、スキムミルク粉末、脂肪添加乳粉末、乳清粉末等の乾燥ミルク粉末、乳児ミルク、アイスクリーム、ヨーグルト、チーズ、発酵日常製品)、飲料、幼児食、シリアル、ビスケット、菓子、ケーキ、食物サプリメント、栄養補助食品、動物の餌、家禽の餌または他の食物または飲料からなる群より選択しうる。
【0019】
オリゴサッカライドの混合物はまた、病原体または病原体によって生成される毒素の腸壁への付着を防止するための医薬品の調製のために使用しうる。この混合物を、しばしば正常の健康な腸管内菌叢を変化させ破壊までする抗生物質投与の後に、または腸における手術の後に、健康な腸の正常な腸管内菌叢を腸内で再構築する目的で、患者に投与しうる。ガラクトオリゴサッカライドの混合物は、以上で言及したビフィドバクテリウム ビフィダムの株または生物学的機能等価物との組み合わせで使用しうる。
【0020】
語句「生物学的機能等価物(biologically functional equivalent)」は、ラクトースを、以上で定義したようなガラクトオリゴサッカライドの混合物に変換するガラクトシダーゼ酵素活性を生じさせることが可能なビフィドバクテリウム ビフィダムの株を意味する。
【0021】
本発明の他の態様では、有効成分として、少なくとも1つのジサッカライド、少なくとも1つのトリサッカライド、少なくとも1つのテトラサッカライドおよび少なくとも1つのペンタサッカライドを含む、ビフィズス菌の増殖を促進するための、ガラクトオリゴサッカライド組成物が提供される。
【0022】
ガラクトオリゴサッカライド組成物は、好ましくは、本明細書にて上述したような、ガラクトオリゴサッカライド混合物を含む。
【0023】
好ましくは、ガラクトオリゴサッカライド組成物は、20〜35%w/vのジサッカライド、20〜35%w/vのトリサッカライド、15〜25%w/vのテトラサッカライド、および10〜20%w/vのペンタサッカライドを含む。
【0024】
本発明のまた他の態様では、ラクトースまたはラクトース含有物質を、以上で定義したようなビフィドバクテリウム ビフィダムの株で処理することを特徴とする、ビフィズス菌の増殖を促進するための基質を製造するための方法が提供される。
【0025】
好適なラクトース含有物質は、市販されているラクトース、全ミルク、セミスキムミルク、スキムミルク、乳清および脂肪添加乳(fat−filled milk)から選択されうる。そのようなミルク製品は、ウシ、バッファロー、ヒツジまたはヤギから得うる。脂肪添加乳は、酪農脂肪を除去した後、植物脂肪または油の添加によって置換されるスキムされた全ミルクとして定義される。
【0026】
ラクトース以外の糖質基質を含む増殖培地を用いた場合に、本発明によるビフィドバクテリウム ビフィダムが、マルトース、ラフィノース、キシランおよびフルクトースを利用可能であることが判明した。これらの糖質の1つを含む培地中での細菌の培養によって、α−グルコシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、キシロシダーゼ、およびβ−フルクトフラノシダーゼの発現がそれぞれ誘導され、その結果として、α−グルコオリゴサッカライド、α−ガラクトオリゴサッカライド、キシロオリゴサッカライドおよびフルクトオリゴサッカライドがそれぞれ生成される。
【0027】
本発明に至る研究において、腸由来の細菌を、ガラクトシダーゼ生成が可能なもの、つまり、ガラクトオリゴサッカライド(類)を生成する可能性が最も高いものに関して選別を行った。結果として、属ビフィドバクテリウムに属する特定の細菌、とりわけビフィドバクテリウム ビフィダムが、ガラクトシダーゼ酵素活性を生じさせることが可能であるのみならず、該酵素が、ラクトースを、20〜35%w/vのジサッカライド、20〜35%w/vのトリサッカライド、15〜25%w/vのテトラサッカライド、および10〜20%w/vのペンタサッカライドを含む、ガラクトオリゴサッカライド混合物へ変換可能であることが発見された。ビフィドバクテリウム ビフィダムの特定の例が、2003年3月31日に、NCIMB,Aberdeenにて、受託番号41171にて預託された。
【0028】
これらの細菌を培養するために、細菌によって吸収されうる条件を備えたいずれかの栄養供給源を使用することが可能である。適切な培養培地を、例えば、ラクトース、スクロースまたはグルコースのような糖質類;酵母抽出物、トリプトン、肉抽出物(Lab Lemco)などのような、窒素を含有する無機的または有機的な栄養供給源;リン酸カリウムのような、無機的栄養供給源;等とともに処方可能である。培養のために、影響培地のpHは、6.0〜8.0の範囲、好ましくは7.0であるべきであり、培養は、35〜40℃の温度範囲、好ましくは37℃で、40〜64時間、好ましくは50時間、嫌気的条件で実施する。
【0029】
前記株は、安定相培養、嫌気的限界培養または振とう培養のような、いずれか公知の培養方法によって培養可能である。細菌細胞を、遠心分離または濾過によって回収することで、さらなる処理を行わずに、反応触媒様のものとして使用可能である。あるいは、細胞は、適切な固定手順によって、固定化状態で使用しうる。
【0030】
本発明のビフィドバクテリウム ビフィダムは、ラクトース自体、またはミルク製品中に含まれるラクトースを、本発明の新規ガラクトオリゴサッカライド組成物に変換するために使用可能である。変換の後、細菌細胞は遠心分離にて除去可能である。存在するモノサッカライドのいずれかは、たとえば、酵母サッカロマイセス セルビシエ(Saccharomyces cervisiae)とともにインキュベートして、除去しうる。ついで、混合物を遠心分離および精密濾過に続けてかけうる。得られたGOS溶液を、続いて噴霧乾燥させ、粉末を得ることも可能である。
【0031】
この方法によって生成された、本発明のガラクトオリゴサッカライド組成物を含有するミルクは、子供、成人または動物に直接処方することができる。あるいは、ガラクトオリゴサッカライドは酸性条件下および高温条件下で安定であり分解せずに使用可能であるので、パン、菓子のような製品を製造するのにも使用しうる。あるいは、GOS粉末を、以上で列記したような製品に加えうる。
【0032】
GOS粉末は、炎症性腸疾患および過敏性腸症候群のような腸疾病を患っている患者に投与可能であり、この場合、2つに分割した用量で、2〜20g、好ましくは5〜10g、もっとも好ましくは7gの一日用量を摂取しうる。
【0033】
あるいは、本発明のガラクトオリゴサッカライド組成物を、本発明による、ビフィドバクテリウム ビフィダムの培養液と混合して、腸の健康を改善するための混合物を生成してもよい。そのような混合物は「GI管中の生細菌食物サプリメントの生存および着床を改善することによって、宿主に有益な影響を与えるプロバイオテックとプレバイオテックの混合」として定義されるシンバイオティック(synbiotic)に分類される(Gibson and Roberfroid, 1995,(ヒト微生物の食物改変:プレバイオティックの概念紹介(Dietary modification of he human microbiota: introducing the concept of prebiotics.)Journal of Nutrition 125, 1401-1412を参照のこと)。このような組み合わせにより、利用可能な選択的基質を提供され、それにより、大腸に都合の悪い環境におけるプロバイオティックの生存が増進される。細菌性プロバイオティックは、ガラクトオリゴサッカライドプレバイオティック中にマイクロ小カプセル化して、たとえば、粉末を生成してよく、ついでこれを、ヨーグルトのような食物製品に加えるか、または栄養補助食品として使用しうる。
【0034】
本発明のガラクトオリゴサッカライド組成物を含むミルクまたは他の製品を摂取する利点は、クロストリディアのような、腸マイコフローラ中に存在する他のあまり望ましくない細菌の犠牲において、腸中に有益なビフィズス菌のレベルの増加を促進することである。これにより、個々の健康に有害な効果を与えうる、特定の常在細菌の減少がおこる。ついでこれは、胃腸管感染を減少させる。腸炎の予防または治療を補助し、下痢症状を短期化させ、潰瘍性大腸炎および癌のような慢性腸疾患のリスクを減少させる。また、過敏性腸症候群の症状の軽減を補助し得る。
【0035】
本発明のオリゴサッカライド組成物を、たとえば粉末形態で、含有する餌を与えられる農場動物は、その餌における転換重量の改善を示しうる。
【0036】
本発明はさらに、以下の実施例に対する参照の方法で記述され得る。
【実施例1】
【0037】
10.0g/lトリプトン、5.0g/l Lab−LEMCO(肉抽出物)、5.0g/l酵母抽出物、3.0g/l KHPO、0.05g/lシステインHCl、10g/lラクトースおよび1ml/l Tween80を含有する1lの培地(pH7.0)を、121℃にて15分間滅菌した。滅菌の後、この培地に、1.0%(v/v)の新鮮なビフィドバクテリウム ビフィダムNCIMB41171培養液を接種させ、嫌気条件下37℃にて50時間、インキュベートした。細菌細胞を、遠心分離(30000g、20分間)によって回収した。リン酸緩衝液(0.02M、pH7.0)で2回洗浄して、細胞をオリゴサッカライド合成反応に使用する準備が出来た。
【0038】
細菌細胞(β−ガラクトシダーゼ活性の40ユニット)を、50gのラクトースを含むリン酸緩衝液(0.02M、pH7.0)100ml中に再懸濁させた。反応を、40℃にて進行させ、7時間後、混合液は、35%(w/v)加水分解生成物(グルコース、ガラクトース)、37%(w/v)ラクトース、および2〜5のポリマー化の程度で、18%(w/v)ガラクトオリゴサッカライドの混合物を得た。遠心分離(3000g、20分間)による細菌細胞の除去後、モノサッカライド(グルコースおよびガラクトース)を、酵母サッカロマイセス セルビシエとのインキュベーションによって除去した。この酵母を続いて、遠心分離(10000g、10分間)によって除去し、ついで混合物を、0.1μ精密濾過フィルターを介して濾過し、生成物の微小生物学的な性質を確保した。ついで糖溶液を噴霧乾燥させて、粉末形態を得た。生成物を、APEX Carbohydrateカラム(Jones Chromatography,Mid Glamorgan,UK)およびMerck−Hitachi LaChrom製RI検出器を備える、メルク−日立 ラクロームシステム(Merck, Poole,Dorset,UK)を用いて、高性能液体クロマトグラフィーによって、定量的に解析した。70%(v/v)アセトニトリルを25℃にて溶出液として、0.8ml/分の流速で使用した。ガラクトオリゴサッカライド混合物は、25%のGal−Gal、35%のGal−Gal−Glc、24%のGal−Gal−Gal−Glc、および16%のGal−Gal−Gal−Gal−Gal−Glcから成っていた。
【実施例2】
【0039】
実施例1に従って調製したビフィドバクテリウム ビフィダムNCIMB41171細胞を、撹拌タンク中の500mlのスキムミルクに加え、(β−ガラクトシダーゼ活性の300ユニット)を加えた。ラクトース変換を、40℃にて進行させた。8時間後のガラクトオリゴサッカライド濃度は、22%(w/v)であり、この混合物は、28%のGal−Gal、32%のGal−Gal−Glc、21%のGal−Gal−Gal−Glc、および19%のGal−Gal−Gal−Gal−Glcから成っていた。
【実施例3】
【0040】
in vitro腸モデル
大腸の状態を、実施例1に従って調製した1%(w/v)のGOS混合物なし、および該混合物ありで、増殖培地中、健康なヒトボランティアからの10%(w/v)便ホモジネートを接種させた、3段階の連続発酵(Macfarlane et al.,1998,Microbial Ecology,35,180−187)中で復元した(表2)。モデルは、それぞれの動作容量が270、300、および300mlである、3つの管、V1、V2およびV3からなる。温度を37℃に設定し、pHと共に自動的に制御した。3つの管中の培養pHは、5.5、6.2および6.8にそれぞれ維持した。各発酵器を磁気撹拌し、O2を含まないN2での連続噴霧(15ml/分)によって、嫌気条件を維持した。増殖培地は、以下の成分を含有する。デンプン8g/l、ムチン4g/l、カセイン3g/l、ペプトン水5g/l、トリプトン水5g/l、胆汁N°3 0.4g/l、酵母4.5g/l、FeSO4 0.005g/l、NaCl 4.5g/l、KCl 4.5g/l、KH2PO4 0.5g/l、MgSO4.7H2O 1.25g/l、CaCl2.6H2O 0.15g/l、NaHCO3 1.5g/l、Tween80 1ml、Hemin 0.05g/l、システイン.HCl 0.8g/l。培地を、蠕動ポンプによってV1に加え、V1は連続して、連続チューブを介してV2およびV3に供給される。本システムを約36時間の保持時間で操作した。腸モデルを一晩、培養ポンプを変える前に、平衡に維持し、試験基質を含む培地を導入する前、少なくとも10日間稼動させ、ついでさらに10日間維持した。試料を、開始時点および各サイクルの終わりで回収した。回収した試料容量は5mlであり、この容量を、細菌群を列挙するために使用した。
【0041】
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)
細菌集団の差を、16S rRNAの診断領域を標的とするように設計したオリゴヌクレオチドプローブで、FISHにより査定を行った。これらは、市販品として合成され、蛍光色素Cy3(Eurogentec UK Ltd.より供給される)でラベルした。使用した分子プローブを表1で示した。総細菌の計数には核酸染色4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)を使用した。発酵管から得た試料を、4%(w/v)パラフィンアルデヒド中で希釈し、4℃にて一晩で定着させた。ついで細胞を1500×gにて5分間遠心分離し、リン酸−緩衝食塩水(PBS、0.1M、pH7.0)にて2回洗浄し、PBS/99%エタノール(1:1、w/v)の混合液中に再懸濁させ、−20℃にて、少なくとも1時間保存した。ついで細胞懸濁液を、ハイブリッド混合液に添加し、一晩放置して、適切な温度にて、各プローブにハイブリッド形成させた。ハイブリッド形成した混合物を、2μm Isopore膜フィルター(Millipore Corporation),Herts,UK)を用いて吸引濾過した。濾液を除去し、SLowFade(Molecular Probes, Eugan,OR,USA)と共にガラススライド上に置き、蛍光顕微鏡(Nicon Eclipse,E400)下で検査した。DAPI染色細胞をUV光下で検査し、ハイブリッド細胞を、DM510フィルターを用いて視覚化した。各スライドに対して、少なくとも15の異なる視野で計数した。
【0042】
【表1】

【0043】
結果
【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
結論
表3より、本発明のGOS混合液が、より良好なプレバイオティック特性(すなわち、ビフィズス菌のより大きな増加、ならびに市販のGOS等価物と比較した場合の、細菌の減少(表2を参照のこと))を示すことがわかる。該プレバイオティック効果は、管1(V1)および2(V2)にてより強く、これは本発明のGOSが、低分子量のオリゴサッカライドからなることを説明している。
【実施例4】
【0047】
メチル化解析
実施例1に従って調製したガラクトオリゴサッカライド合成生成物を、Biogel P2(Pharmacia)のカラム上でのゲル濾過によって精製し、水3ml/分で溶出した。
【0048】
それぞれのガラクト−オリゴサッカライド調製物に関する結合位置を、メチル化解析によって判定した。凍結乾燥した試料(5〜6mg)を、アルゴンでフラッシュした後、16時間、20℃にて、乾燥ジメチル−スルホキシド(DMSO)中で分散させた。これらを、粉末化水酸化ナトリウム(0.5g)およびヨードメタン(4ml)の連続添加によってメチル化した(Ciucanu and Kerek,1984;MacCormick et al,1993)。C18−結合カートリッジ(Sep−Pak、ウォーターズ(Waters)、Watford,UK)上での溶出−抽出後、メチル化糖質類を乾燥させ、CHCl3/CH3OH(1:1 v/v)内に溶出し、乾燥するまで蒸発させた。試料を、トリフルオロ酢酸を用いて加水分解し(Blakeney et al,1983)、NaBD4還元と、酢酸無水物およびN−メチルイミダゾールでのアセチル化によって部分的にメチル化されたアルジトール酢酸塩(PMAAs)へ変換した(Alberscheim et al,1967)。
【0049】
PMAAsを、発炎イオン化検出器、および温度プログラム:55℃(2分間)+45℃/分(1.9分間)、140℃(2分間)、+2℃/分(35分間)、210℃(40分間)を用いて、50%シアノプロピルメチル−50%フェニルメチルポリシロキサン架橋カラム(Thames Chromatography, Maidenhead,UK)上のGCによって解析した。PMAAsは、ミオ−イノシトールヘキサ酢酸と比較した、その保持時間を測定し、外部の標準のものと、前記相対保持時間を比較することによって同定した。各糖の標準の混合物を、メチルグリコシドを慎重にメチル化することによって調製した(Doares et al,1991)。ピーク面積は、有効炭素反応因子を用いて相対モル量として表した(Sweet et al,1975)。
【0050】
PMAAsは、その電子−イオン化分子スペクトル(Carpita and Shia,1989)によって同定確認した。GC−MS解析は、200℃の供給温度、および70eVのイオン化電位を用いて、Fisons Analytical Trio ISスペクトロメーターに続いて、同一GCにて実施した。
【0051】
合成生成物のアノマー構造を判定するために、オリゴサッカライドを、30分間、提案された最適条件にて、α−ガラクトシダーゼまたはβ−ガラクトシダーゼ(Melibiase、シグマ(Sigma))で処理した。反応生成物をHPLCによって解析した。
【0052】
結果
以上の解析より、オリゴサッカライド構造が、テトラサッカライド分画ではGal(β1−6)−Gal(β1−6)−Gal(β1−4)−Glc、トリサッカライド分画ではGal(β1−6)−Gal(β1−4)−Glc、Gal(β1−3)−Gal(β1−4)−Glc、そしてジサッカライド区画ではGal(β1−4)−Glc(ラクトース基質)、Gal(β1−3)−Glc、Gal(β1−3)−Gal、Gal(β1−6)−Gal、Gal(α1−6)−Gal(ガラビオース)であると推定された。
ここでGalはガラクトース、Glcはグルコースである。
【0053】
参考文献
1.Albersheim P.D.,D.J.Nevins,P.D.English, and A.Karr.1967、「ガス−液体クロマトグラフィーによる、植物細胞壁ポリサッカライド上の糖類の解析方法(A method for the analysis of sugars on plant cell-wall polysaccharides by gas-liquid chromatography.)Carbohydr Res 5:340-345。
2.Blakeney A.B.,P.J.Harris,R.J.Henry and B.A.Stone.1983。「モノサッカライド解析のための、アルジトール酢酸塩の単純かつ迅速な調製(A simple and rapid preparation of alditol acetates for monosaccharide analysis.)」Carbohydr Res 113:291-299。
3.Carpita N.C.,and E.M.Shia.1989。「部分的にメチル化されたアルジトール酢酸塩に関する、ガスクロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)による、糖質類の結合構造(Linkage structure of carbohydrates by gas chromatography-mass spectroscopy(CD-MS) for partially methylated alditol acetates.)」p。157-216。C.J.Bierman and G.D.McGinnis(ed.),「ガス−液体クロマトグラフィーおよび質量分析による、糖質類の解析(Analysis of carbohydrates by gas-liquid chromatography and mass spectroscopy.)」CRC Press Poca Raton,Fla。
4.Ciucanu I.,andF.Kerek.1984。「糖質類のペルメチル化のための単純かつ迅速な方法(A simple and rapid method for the permethylation of carbohydrates.) 」Carbohydr Res 131:209-217。
5.Doares S.H.,P.Albersheim,and A.G.Darvill.1991。「複合糖質類のグルコシル結合解析のための、標準品の調製のための改善方法(An improved method for the preparation of standards for the glycosyl-linkage analysis of complex carbohydrates.)」Carbohydr Res 210:311-317。
6.MacCormick C.A.,J.E.Harris,A.P.Cunning,and V.J.Morris.1993。「アセトバクター キシリヌム株の変異体によって生成されたポリサッカライドアセタンの変異体の特性化(Characterization of a variant of polysaccharide acetan produced by a mutan of Acetobacter xylinumstrain)」CR 1/4.J Appl Bacteriol 74:196-199。
7.Sweet D.P.,R.Shapiro,and P.Albersheim.1975。「部分的にメチル化され、部分的にエチル化されたアルジトール酢酸塩に対する種々のGLC応答−因子説による、定量的解析(Quantitative analysis by various GLC response-factor theories for partially methylated and partially ethylated alditol acetates.)」Carbohydr Res 40:217-225。
【実施例5】
【0054】
材料と方法
HT29細胞株は、European Collection of Cell Culutures for Applied Microbiology and Researchより入手した。細胞ストックを、5%(v/v)ウシ胎児血清(FBS)、100mMペニシリン、0.1M ストレプトマイシン、非必須アミノ酸(NEAA×100)および200mM a−グルタミンを含有する高グルコースダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、湿潤5%CO2中で37℃にて培養した。細胞は、48時間ごとに栄養分を与え、コンフレントになる前に継代した。
【0055】
オリゴサッカライド感受性のアッセイ
異なる濃度のオリゴサッカライド(0.01、0.1、1、10、100mM)を含む血清標準培地(1% v/v)を、Olano−Martin et al.,1003によるオリゴサッカライド感受性のアッセイに使用した。細胞には実験培地(目的のオリゴサッカライドを含む)を与え、該培地を毎日変え、付着細胞の測定を、実験培地を除去し、細胞をCa++を含まないリン酸緩衝食塩水(pH7、9.6g/L)で洗浄することによって実施した。ついで付着細胞をトリプシン処理し、等容量の血清標準培地で中和した。細胞懸濁液を、Isoton II中に希釈し、細胞は、Coulter Counter中で計数した。細胞生存パーセンテージを、以下のように計算した。(図1)
%生存=(処理細胞の平均吸収/対照の平均吸収)×100
【0056】
付着アッセイ
HT29細胞は、標準培地を用いて、>90%コンフレントまで、12−ウェル組織培養プレート中で培養した。アッセイを実施する前、最終の細胞栄養補給のために、抗生物質を含まない培地を使用した。
【0057】
病原体は、少なくとも3つの継代培養のために、抗生物質を含まない細胞培養培地中で、嫌気的に増殖させた。アッセイの日に、新たに前還元した組織培養培地に、一晩置いた10%の病原体培養液を接種し、アッセイの前に4時間インキュベートした。
【0058】
試験用オリゴサッカライドのストック溶液を、リン酸緩衝食塩水中5Mの濃度で調製し、濾過滅菌した。
【0059】
4時間の病原体培養の1/1000希釈液を、PBS中で調製して、プレートカウントによって数えた。培地を、組織培養プレートから吸引し、細胞をPBS(1ml)中で1回洗浄した。
【0060】
各試験用オリゴサッカライドとして、0.5mlのオリゴサッカライド(5M)溶液を3つのウェルに加えた。オリゴサッカライドを含まないリン酸緩衝食塩水(PBS)を、対照として含めた。培養懸濁液0.5mlを全てのウェルに加え、プレートをロック混合し、37℃にて2時間、好気的にインキュベートした。
【0061】
培養液を吸引して除き、すべてのウェルを、無菌PBS(ウェルあたり1ml)中で3回洗浄した。最終洗浄の後、PBSを吸引して取り除き、70μlトリプシン/EDTA溶液を各ウェルに加え、混合し、37℃にて5分間放置した。
【0062】
1mlPBSをウェルあたりに加え、ピペット混合して、全ての細胞が、ウェルの底から取り除かれたこと、および塊が壊れたことを確認した。
【0063】
1mlの細胞懸濁液を、MRD(Maximum Recovery Diluent)のユニーバサルボトル中にピペットし、適宜希釈した。希釈液を、ピレート計数アガー(PCA)上に撒き、24時間37℃にてインキュベートした。
【0064】
インキュベーションの後、コロニーを計数し、付着の阻害を、対照区(PBS)に存在する細菌数に対する、試料中に存在する細菌数(c.f.u ml-1)の比として計算した(図2)。
【0065】
結論
図2で示した結果は、ジサッカライド分画の存在下での、大腸菌(E.coli)EPECおよびS.トリフィムリウム(S.typhiurium)の付着に対する強力な阻害を示唆しており、該阻害はまたGOS混合物においても存在する。トリサッカライドより高次のサッカライド(>tri)分画が混合物に含まれると、S.トリフィムリウムに対する抗付着作用がより低いことが認められる。
【0066】
該オリゴサッカライド感受性アッセイは、オリゴサッカライド混合物が、HT29細胞に対して毒性を示さないことを確認するために実施される(図1)。
【0067】
参考文献
Olano-Martin E.,Williams M.R.,Gibson G.R.,Rastall R.A.2003。「ペクチンおよびペクチン−オリゴサッカライドは、ヒト大腸細胞株HT29に対して指向するように、大腸菌O157:H7シガ毒素を阻害する。(Pectins and pectic-oligosaccharides inhibit Escherichia coli O157:H7 Shiga toxin as directed towards the human colonic cell line HT29.)」FEMS Microbiol Letters 218(1):101-105。
【0068】
図1は、添加されるオリゴサッカライド濃度を変えることの、24時間後及び48時間後の細胞の生存率への影響を示す。

図2は、大腸菌(E.Coli)EPEC 、大腸菌(E.Coli)VTECおよびサルモネラ チフィムリウム(Salmonella typhimurium)のHT29細胞への付着に対する、オリゴサッカライド混合物(ALL)と、該混合物中の他の分画が与える影響を示す。

【実施例6】
【0069】
本実験で使用したGOS生成物は、先述(実施例1)と同様に製造し、イヌリンは、オラフティ(Orafti)(Belgium)より入手した。
【0070】
40匹の離乳したオスブタすべては、JSRジェネンティクス社(JSR Genetics Ltd),Southburn,Driffield,Yorkshire、YO25 9EDから購入した。
【0071】
リーディング大学(Reading University)に到着した時に、ブタは、7日間の間、10匹、4群で飼い、輸送の後、落ち着かせ、ユニットおよび餌に慣れさせた。輸送時のブタの平均体重は14.70kgであった。
【0072】
7日間の順応期間に続き、ブタを、同一のユニット内の、個々の囲いに移した。個々の囲いにおけるブタの平均体重は、17.46gであった。
【0073】
ブタを、個々の耳入れ墨で同定し、これらはまた、防水ストックマーカーを用いて個々に番号付けした。それぞれの個々の囲いは、それぞれのブタを記録するのに使用したのと同一の同定番号で番号付けした。
【0074】
10匹のブタを、4つの餌、すなわち、対照区餌(NEG)、実施例1に従い調製した1.6%(w/w)GOSを対照区餌に添加した餌、4%(w/w)GOSを対照区餌に添加した餌、及び、1.6%(w/w)イヌリンを対照区餌に添加した餌、の内の1つに割り当てた。
【0075】
ブタは、本研究の間、おが屑の上に寝かせた。さらに、退屈を紛らわすためのおもちゃとして、また環境を向上させるものとして、藁を提供した。
【0076】
本研究の間、ブタには、自由な給餌のために、Deltawean 15 NGPペレット(ABN,ABN House,PO Box250,Oundle Rd,Woodston,Peterborough.PE 9QF)、完全給餌用飼料を与えた。
Deltawean 15 NGPの栄養/ミネラル組成は下記の通り。

【0077】
ブタ餌にはまた、許容されている抗酸化剤、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)およびエソキシクインが含まれた。
【0078】
同一の給餌投与における2匹または3匹のブタは、同一群の囲い内で個々に育成したが、給餌に際しては、ブタを無作為に割り付けた。ブタが、個々の囲いから逃げることによる混乱を避けるために、本法ではブタをグループ分けし、それにより、特定のブタが正しく給餌投与用の食物だけを摂取することが出来るようにしている。同一の給餌投与に際して、2匹または3匹のグループの、個々の飼育ブタを、ユニットにわたって、無作為に割り付けた。
【0079】
糞試料を、試験餌の給餌開始時、および給餌の4週間後に、各ブタより回収し、糞における微生物群を、先に記述した(実施例3)ように、FISH(表4)を用いて判定した。実験終了時には、ブタを屠殺して、近位および遠位大腸内の内容物を試料として得た。pH値(表5)、短鎖脂肪酸(SCFA)(表6)および微生物集団(表7)を、近位および遠位腸内容試料中で判定した。データは、平均値からの標準偏差を示している。差は、スチューデントt−検定によって解析した。差は、P<0.05で有意であると考えられた。
【0080】
【表4】

【0081】
【表5】

【0082】
【表6】

【0083】
【表7】

【0084】
結論
表5:GOSの存在下で、遠位大腸にてpHの減少があり(1.6%に対して、また特に4%に対して)、これは、SCFAデータ(表6)と組み合わせて、GOS生成物が、近位大腸に到達したことを示唆している(発酵生成物が増加している)。
【0085】
表7:GOS(4%)の存在により、近位大腸にて、有益な細菌(ビフィズス菌、乳酸菌)の集団数が著しく増加したことが示されている。集団数のこの増加は、遠位部分、および糞試料では小さく、GOS生成物が、主に近位大腸で発酵されるようであるとの事実によって説明可能である。1.6%のGOSの投与でも同様の傾向が示された。
【0086】
近位大腸において、ビフィズス菌集団数の増加が見られ、また、酢酸(ビフィズス菌の主な発酵生成物)の生成の増加がみられた。このことは、GOS生成物が、ビフィズス菌種に対して、非常に選択的であることを示唆している。
【実施例7】
【0087】
ケーススタディー
ケーススタディー1−炎症性腸疾患(IBD)
潰瘍性大腸炎(IBDの2つの主要な形態のうちの1つ)と診断された43歳の女性の患者を、実施例1に従って調製したGOS生成物の効果のケーススタディーとして引用する。
【0088】
この患者は、5年に及び潰瘍性大腸炎を患っており、試験期間前、および期間中の投薬はなかった。抗炎症性薬剤スルファサラジンが以前に使用されていたが、ポジティブな効果はなかった。この患者は、標準食では、食物を消化することが困難であり、吐き気、下痢および腹痛に苦しんでいた。後者は左側大腸であり、下降結腸の炎症に基づく大腸炎との診断と相関した。
【0089】
(2回の分割用量での)1日に7g/dの総用量でのをGOSを摂取させた。摂取から4日以内に、症状が改善し始めた。患者は、食事をより消化することが可能になり、腸の痛みが軽減し始め、吐き気も軽減した。内視鏡による臨床解析はなされなかったが、体調が良くなっているという患者の感触には顕著な改善が認められた。食事になされた変更は、GOSの添加のみであった。6週間後においてもこの効果は持続していた。
【0090】
プラセボ対照区は存在しないが、多数の患者における研究において、このケーススタディーが、IBDの1つの主要な形態での、プレバイオティックGOSのポジティブな効果に関する事例となる証拠を示している。
【0091】
ケーススタディー2−過敏性腸症候群(IBS)
3年間IBSを患っている27歳の男性に、2回の分割用量で、実施例1に従って調製した7g/d GOSを摂取させた。この投与期間より以前では、この男性は膨満感、便秘、腸痛および疲労感を経験していた。これらは、IBSに関連する旧来の症状である。この患者は、6ヶ月間、抗生物質を摂取せず、小麦/グルテンおよび糖を含まない食事を摂取した。
【0092】
プレバイオティック摂取の後、これら症状において明瞭な効果が3日以内に見られ、その後持続された。この被験者は、「マラソンを走る準備が出来ている」という言葉をもって、全般的な健康や腸の健康における劇的な改善を報告した。彼は、無理なく通常の食事を摂取することが可能になっている。
【0093】
この報告は、対照試験ではないが、GOSが、IBS状態を改善し、よりよい生活の質(クオリティー オブ ライフ)を回復させうることを示す、事例証拠としてはたらく。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトースを、少なくとも1つのジサッカライド、少なくとも1つのトリサッカライド、少なくとも1つのテトラサッカライド、および少なくとも1つのペンタサッカライドを含有する、ガラクトオリゴサッカライド混合物に変換する、ガラクトシダーゼ酵素活性を生じることが可能な、ビフィドバクテリウム ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)株。
【請求項2】
前記ガラクトオリゴサッカライド混合物中において、前記ジサッカライドがGal−Galであり、前記トリサッカライドがGal−Gal−Glcであり、前記テトラサッカライドがGal−Gal−Gal−Glcであり、前記ペンタサッカライドがGal−Gal−Gal−Gal−Glcであり、ここでGalはガラクトース残基を、Glcはグルコース残基を表す、請求項1に記載の株。
【請求項3】
前記ガラクトオリゴサッカライド混合物が、Gal(α1−6)−Gal、Gal(β1−6)−Gal(β1−4)−Glc、Gal(β1−3)−Gal(β1−4)−Glc、Gal(β1−6)−Gal(β1−6)−Gal(β1−4)−Glc、およびGal(β1−6)−Gal(β1−6)−Gal(β1−6)−Gal(β1−4)−Glcを含む、請求項1または請求項2に記載の株。
【請求項4】
前記ガラクトオリゴサッカライド混合物が、20〜35%w/vのジサッカライド、20〜35%w/vのトリサッカライド、15〜25%w/vのテトラサッカライド、および10〜20%w/vのペンタサッカライドを含む、請求項1〜3のいずれか1つに記載の株。
【請求項5】
2003年3月31日に、Natioal Collection of Industrial and Marine Bacteria,Aberdeen,UKにて、NCIMB41171の受託番号にて預託された、請求項1〜4のいずれか1つに記載の株、またはその生物学的機能等価物。
【請求項6】
有効成分として、少なくとも1つのジサッカライド、少なくとも1つのトリサッカライド、少なくとも1つのテトラサッカライドおよび少なくとも1つのペンタサッカライドの混合物を含有する、ビフィズス菌の特異的増殖を促進するための、ガラクトオリゴサッカライド組成物。
【請求項7】
前記ジサッカライドが、Gal−Galであり、前記トリサッカライドが、Gal−Gal−Glcであり、前記テトラサッカライドがGal−Gal−Gal−Glcであり、前記ペンタサッカライドがGal−Gal−Gal−Gal−Glcである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
Gal(α1−6)−Gal、Gal(β1−6)−Gal(β1−4)−Glc、Gal(β1−3)−Gal(β1−4)−Glc、Gal(β1−6)−Gal(β1−6)−Gal(β1−4)−Glc、およびGal(β1−6)−Gal(β1−6)−Gal(β1−6)−Gal(β1−4)−Glcを含む、請求項6または請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
20〜35%w/vのジサッカライド、20〜35%w/vのトリサッカライド、15〜25%w/vのテトラサッカライド、および10〜20%w/vのペンタサッカライドを含む、請求項6〜8のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項10】
培養された請求項1〜5のいずれか1つに記載のビフィドバクテリウム ビフィダムの株と、請求項6〜9のいずれか1つに記載の組成物との組み合わせを含む、腸の健康を改善するための組成物。
【請求項11】
治療としてヒトまたは動物に投与する方法に使用するための、請求項6〜9のいずれか1つに記載のビフィドバクテリウムの増殖を促進するための組成物。
【請求項12】
病原体または病原体によって生成される毒素の腸壁への付着を防止するための医薬品の調製における、請求項6〜10のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【請求項13】
抗生物質の投与または施術後に正常な腸管内菌叢を再構築するための医薬品の調製における、請求項6〜10のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【請求項14】
請求項6〜9のいずれかにおいて定義された前記ガラクトオリゴサッカライドの混合物を生成するための、請求項1〜5のいずれか1つに記載の、ビフィドバクテリウム ビフィダムの株の使用。
【請求項15】
請求項8にて定義された前記ガラクトサッカライドの混合物を生成するための、請求項5に記載の株の使用。
【請求項16】
前記ガラクトオリゴサッカライドの混合物が、腸の健康を改善するための製品の一部である、請求項14または請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記製品が、日用品、飲料、幼児食、シリアル、ビスケット、菓子、ケーキ、食物サプリメント、栄養補助食品、動物の餌、家禽餌または他の食物または飲料からなる群より選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
ビフィズス菌の増殖を促進するための基質を製造する方法であって、ラクトースまたはラクトース含有物質を、請求項1〜5のいずれか1つに記載のビフィドバクテリウム ビフィダムの株で処理することを特徴とする、該方法。
【請求項19】
前記ラクトース含有物質が、市販されているラクトース、全ミルク、セミスキムミルク、スキムミルク、乳清および脂肪添加乳からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ミルクが、ウシ、バッファロー、ヒツジまたはヤギより得られる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ビフィドバクテリウム ビフィダム細胞の除去の後に基質を噴霧乾燥させて、粉末を作成することを含む、請求項18〜20のいずれか1つに記載の方法。

【公表番号】特表2007−527199(P2007−527199A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500267(P2006−500267)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002815
【国際公開番号】WO2005/003329
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(505408848)クラサド インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】