説明

新規イミダゾール誘導体及びその製造方法並びに該イミダゾール誘導体を利用したヒスチジンアミド誘導体の製造方法

【課題】効率的に低コストでアンセリン等のヒスチジンアミド誘導体を製造する方法を提供する。
【解決手段】アンセリン等のヒスチジンアミド誘導体の合成において、その前駆化合物として新規イミダゾール誘導体を用いる。このイミダゾール誘導体はエナミン構造部分を有するので、その二重結合を不斉還元することで、アンセリン等のヒスチジンアミド誘導体を製造するに際し、所望の立体異性体を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規イミダゾール誘導体及びその製造方法並びに該イミダゾール誘導体を利用したヒスチジンアミド誘導体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回遊性大型魚類であるマグロやカツオの筋肉中などに含有量高く見出されるL−アンセリンは、1−メチル−L−ヒスチジンとβ−アラニンとを構成アミノ酸とするジペプチド化合物である。アンセリンの効用としては、これを摂取することにより抗疲労の作用効果が得られることが知られている(下記特許文献1,2参照)。また、尿酸値抑制作用、活性酸素消去作用、血圧降下作用、抗炎症作用などを有することも知られている。その類縁化合物であるL−カルノシン(β−アラニル−L−ヒスチジン)は脊椎動物の筋肉中などに含有量高く見出され、L−バレニン(β−アラニル−3−メチル−L−ヒスチジン)はクジラの筋肉中などに含有量高く見出される。これらの化合物もアンセリンと同様の作用効果を発揮すると考えられている。
【0003】
L−アンセリンの合成方法としては、例えば、下記非特許文献1には、1−メチル−L−ヒスチジン メチルエステル(1-methyl-L-histidine methyl ester)とN−カルボキシベンゾイル−β−アラニル アジド(N-carbobenzoxy-β-alanyl azide)とを縮合して加水分解、接触還元を経る方法が開示されている。下記非特許文献2には、N−フタリル−β−アラニン(N-phtalyl-b-alanine)を酸無水物に変換して1−メチル−L−ヒスチジン メチルエステル(1-methyl-L-histidine methyl ester)と縮合する方法が開示されている。下記特許文献3には、まずN−フタリル−カルノシン(N-phtalyl-carnosine)を合成し、イミダゾール環の3位のNをアシル基で保護し、そして残った1位のNを選択的にメチル化後、アシル基を脱保護することでアンセリンを得る方法が開示されている。下記非特許文献3には、下記特許文献3に記載の方法と類似した方法であり、N−フタリル−カルノシン(N-phtalyl-carnosine)のイミダゾール環の3位をトリチル基で保護し1位をメチル化することでアンセリンを得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−173442号公報
【特許文献2】特開2002−338473号公報
【特許文献3】特開2005−082571号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】The Synthesis of Anserine from L-1-Methylhistidine, Otto K. Behrens and Vincent du Vigneaud, J. Biol. Chem. (1937) 120, p517-522
【非特許文献2】Synthesis of Carnosine, Anserine, and Isoanserine, Heinrich Rinderknecht, Tiiu Rebane, and Victoria Ma, J. Org. Chem. (1964) 29, p1968-1970
【非特許文献3】An Expedient, Scalable Synthesis of the Natural Product L-Anserine, Charlotte Wiles, and Paul Watts, Synthesis (2007) 17, p2608-2610
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記非特許文献1の方法では、出発物質となる1−メチル−L−ヒスチジン メチルエステル(1-Methyl-L-histidine methyl ester)は天然のアンセリンを加水分解して得られており、純粋な化学合成法とはいえないものであった。また、上記非特許文献2の方法では、出発物質となる1−メチル−L−ヒスチジン メチルエステル(1-methyl-L-histidine methyl ester)はL−ヒスチジン(L-histidine)のメチル化後、分離することで得られており、効率的に低コストで製造することが困難であった。また、上記非特許文献3又は特許文献3の方法は、合成の後半においてイミダゾール環の3位のNを保護してメチル化することでイミダゾール環の1位にメチル基を導入する方法であるが、この方法でも効率的に低コストで製造することが困難であった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、効率的に低コストでアンセリン等のヒスチジンアミド誘導体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アンセリン等のヒスチジンアミド誘導体の合成において、その前駆化合物として新規イミダゾール誘導体を用いることにより上記課題を解決するものである。すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0009】
[1] 下記一般式(1)で表わされる化合物。
【0010】
【化1】

[式(1)中、R,Rは、水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
【0011】
[2] 下記一般式(2)で表わされる化合物と、
【0012】
【化2】

[式(2)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わす。]
下記一般式(3)で表わされる化合物とを反応させて、
【0013】
【化3】

[式(3)中、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
【0014】
下記一般式(4)で表わされる化合物を得ることを特徴とするイミダゾール誘導体の製造方法。
【0015】
【化4】

[式(4)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
【0016】
[3] 下記一般式(5)で表わされる化合物のエナミン構造部分の二重結合を還元し、
【0017】
【化5】

[式(5)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
【0018】
下記一般式(6)で表される化合物を得、
【0019】
【化6】

[式(6)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
【0020】
下記一般式(7)で表わされる化合物を反応させて、
【0021】
【化7】

[式(7)中、Rはアルキルオキシカルボニル基又はアシル基を表わす。nは1〜5の整数である。]
【0022】
下記一般式(8)で表わされる化合物を得ることを特徴とする、ヒスチジンアミド誘導体の製造方法。
【0023】
【化8】

[式(8)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。nは1〜5の整数である。]
【0024】
[4] 得られる化合物が、アンセリン、バレニン、及びカルノシンからなる群から選ばれた一種である上記[3]記載の製造方法。
【0025】
[5] 下記一般式(9)で表わされる化合物のエナミン構造部分の二重結合を不斉還元し、
【0026】
【化9】

[式(9)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
【0027】
下記一般式(10)又は(11)で表される化合物を得ることを特徴とする、光学活性イミダゾール誘導体の製造方法。
【0028】
【化10】

[式(10)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
【0029】
【化11】

[式(11)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
【0030】
[6] 下記一般式(12)又は(13)で表される化合物と、
【0031】
【化12】

[式(12)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
【0032】
【化13】

[式(13)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
【0033】
下記一般式(14)で表わされる化合物とを反応させて、
【0034】
【化14】

[式(14)中、Rはアルキルオキシカルボニル基又はアシル基を表わす。nは1〜5の整数である。]
【0035】
下記一般式(15)又は(16)で表される化合物を得ることを特徴とする、光学活性ヒスチジンアミド誘導体の製造方法。
【0036】
【化15】

[式(15)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。nは1〜5の整数である。]
【0037】
【化16】

[式(16)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。nは1〜5の整数である。]
【0038】
[7] 得られる化合物が、L-アンセリン、L-バレニン、及びL-カルノシンからなる群から選ばれた一種である上記[6]記載の製造方法。
【発明の効果】
【0039】
本発明の新規イミダゾール誘導体によれば、アンセリン等のヒスチジンアミド誘導体の合成におけるその前駆化合物となるので、アンセリン等のヒスチジンアミド誘導体を効率的に低コストで製造することが可能となる。
【0040】
また、本発明のイミダゾール誘導体の製造方法によれば、効率的に低コストでイミダゾール環への選択的メチル化を実現できるイミダゾール環包含化合物を出発物質として、アンセリン等のヒスチジンアミド誘導体の合成におけるその前駆化合物として利用できる新規イミダゾール誘導体を合成することができるので、アンセリン等のヒスチジンアミド誘導体を効率的に低コストで製造することが可能となる。
【0041】
更に、本発明のヒスチジンアミド誘導体の製造方法によれば、新規イミダゾール誘導体のエナミン構造部分の二重結合を還元する工程を含むものであるので、その還元に不斉還元法を用いることで、アンセリン等のヒスチジンアミド誘導体を製造するに際し、所望の立体異性体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明について好ましい態様を挙げて、更に詳細に説明する。
【0043】
本発明の1つは、下記一般式(1)で表わされる化合物である。
【0044】
【化17】

【0045】
上記式(1)中、R,Rは、水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。
【0046】
上記式(1)中、Rのアルキルオキシカルボニル基としては、tert-ブトキシカルボニル(t-butoxycarbonyl)基(以下、Boc基ともいう。)、ベンジルオキシカルボニル(benzyloxycarbonyl)基(以下、Cbz基ともいう。)、フルオレニルメチルオキシカルボニル基(以下、Fmoc基ともいう。)、トリクロロエトキシカルボニル基(以下、Troc基ともいう。)、アリルオキシカルボニル基(以下、Aloc基ともいう。)などを好ましく例示できる。これらの基は保護基として機能させることができるので、好ましい。すなわち、例えば、Boc基の場合には、トリフルオロ酢酸などの強酸や塩化チオニル(SOCl2)に作用させて脱保護し、生じるアミノ基に他の基を導入することができる。Cbz基の場合には、例えば、接触還元条件下に脱保護し、生じるアミノ基に他の基を導入することができる。
【0047】
上記式(1)中、Rのアシル基としては、アセチル基(以下、Ac基ともいう。)、ベンゾイル基(以下、Bz基ともいう。)、トリフルオロアセチル基(以下、TFA基ともいう。)などを好ましく例示できる。これらの基は保護基として機能させることができるので、好ましい。すなわち、例えば、Ac基の場合には、ヒドラジンや塩酸に作用させて脱保護し、生じるアミノ基に他の基を導入することができる。
【0048】
本発明のイミダゾール誘導体の製造方法においては、上記式(1)で表わされる化合物を下記のようにして合成する。
【0049】
すなわち、まず下記一般式(2)で表わされる化合物を準備する。
【0050】
【化18】

【0051】
上記式(2)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わす。
【0052】
上記式(2)で表わされる化合物は、K. G. Holdenらの方法(J. Org. Chem. 2002, 67, 5913参照)に準じて、合成することができる。また、下記に示す化合物は、比較的安価に市販されているので、これを入手して用いることができる。
【0053】
【化19】

【0054】
また、下記一般式(3)で表わされる化合物を準備する。
【0055】
【化20】

【0056】
上記式(3)中、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。
【0057】
上記式(3)中、Rのアルキルオキシカルボニル基としては、tert-ブトキシカルボニル基(Boc基)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz基)、フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc基)、トリクロロエトキシカルボニル基(Troc基)、アリルオキシカルボニル基(Aloc基)などを好ましく例示できる。これらの基は保護基として機能させることができるので、好ましい。
【0058】
上記式(3)中、Rのアシル基としては、アセチル基(Ac基)、ベンゾイル基(Bz基)、トリフルオロアセチル基(TFA基)などを好ましく例示できる。これらの基は保護基として機能させることができるので、好ましい。
【0059】
上記式(3)で表わされる化合物は、既知の方法(例えば、Ben-Ishai, D.; Zoller, U. Tetrahedron. 1975, 31, 863参照)に準じて、下記の合成スキームで合成することができる。
【0060】
【化21】

【0061】
例えば、下記に示す化合物を例示することができる。
【0062】
【化22】

【0063】
【化23】

【0064】
【化24】

【0065】
次いで、上記式(2)で表わされる化合物と上記式(3)で表わされる化合物とを反応させて、下記一般式(4)で表わされる化合物を得る。
【0066】
【化25】

【0067】
上記式(4)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。なお、R,R又はRは、上記出発物質とされた上記式(2)で表わされる化合物と上記式(3)で表わされる化合物とからそれぞれ由来する。
【0068】
本発明のイミダゾール誘導体の製造方法においては、好ましくは、既知のHorner-Wadsworth-Emmons(HWE)反応を行い、下記にその概要を示す反応で、上記式(2)で表わされる化合物と上記式(3)で表わされる化合物とを出発物質にして、上記式(4)で表わされる化合物を得ることができる。
【0069】
【化26】

【0070】
一方、本発明のヒスチジンアミド誘導体の製造方法においては、まず下記一般式(5)で表わされる化合物を準備する。
【0071】
【化27】

【0072】
なお、この一般式(5)で表わされる化合物と、上記式(1)で表わされる化合物とは共通する。すなわち、上記式(5)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。
【0073】
上記式(5)中、Rのアルキルオキシカルボニル基としては、tert-ブトキシカルボニル基(Boc基)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz基)、フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc基)、トリクロロエトキシカルボニル基(Troc基)、アリルオキシカルボニル基(Aloc基)などを好ましく例示できる。特に、Boc基あるいはCbz基である場合には、これらの基は保護基として機能させることができるので、好ましい。
【0074】
上記式(5)中、Rのアシル基としては、アセチル基(Ac基)、ベンゾイル基(Bz基)、トリフルオロアセチル基(TFA基)などを好ましく例示できる。特に、アセチル基である場合には、これらの基は保護基として機能させることができるので、好ましい。
【0075】
次いで、上記式(5)で表わされる化合物のエナミン構造部分の二重結合を還元し、下記一般式(6)で表される化合物を得る。
【0076】
【化28】

【0077】
上記式(6)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。なお、R,R又はRは、上記出発物質とされた上記式(5)で表わされる化合物に由来する。
【0078】
上記還元は、ニッケル触媒による水素化法、パラジウム活性炭素による接触還元法などの既知の方法に準じて行うことができる。
【0079】
次いで、上記式(6)で表わされる化合物と下記一般式(7)で表わされる化合物とを反応させる。
【0080】
【化29】

【0081】
上記式(7)中、Rはアルキルオキシカルボニル基又はアシル基を表わす。nは1〜5の整数である。
【0082】
上記式(6)で表わされる化合物と上記式(7)で表わされる化合物とを反応させる際には、上記式(6)で表わされる化合物中、そのRが水素である以外の場合には、反応前にそのRを予め除去しておくことが好ましい。具体的には、そのRがtert-ブトキシカルボニル基(Boc基)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz基)、又はアセチル基(Ac基)などの保護基である場合には、上述したそれぞれに適した条件で脱保護を行うことができる。
【0083】
本発明のヒスチジンアミド誘導体の製造方法においては、上記式(6)で表わされる化合物と上記式(7)で表わされる化合物とを反応させて、アミド結合を形成させることにより、下記一般式(8)で表わされる化合物を得ることができる。
【0084】
【化30】

【0085】
上記式(8)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。nは1〜5の整数である。なお、R,Rは、上記出発物質とされた上記式式(6)で表わされる化合物に由来する。また、Rが水素である場合以外では、そのRは、上記式(7)に由来する。
【0086】
本発明の他の1つは光学活性イミダゾール誘導体の製造方法である。本発明の光学活性イミダゾール誘導体の製造方法においては、まず下記一般式(9)で表わされる化合物を準備する。
【0087】
【化31】

【0088】
[式(9)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
なお、この一般式(9)で表わされる化合物と、上記式(1)又は(5)で表わされる化合物とは共通する。すなわち、上記式(9)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。
【0089】
上記式(9)中、Rのアルキルオキシカルボニル基としては、tert-ブトキシカルボニル基(Boc基)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz基)、フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc基)、トリクロロエトキシカルボニル基(Troc基)、アリルオキシカルボニル基(Aloc基)などを好ましく例示できる。特に、Boc基あるいはCbz基である場合には、これらの基は保護基として機能させることができるので、好ましい。
【0090】
上記式(9)中、Rのアシル基としては、アセチル基(Ac基)、ベンゾイル基(Bz基)、トリフルオロアセチル基(TFA基)などを好ましく例示できる。特に、アセチル基である場合には、これらの基は保護基として機能させることができるので、好ましい。
【0091】
次いで、上記式(9)で表わされる化合物のエナミン構造部分の二重結合を不斉還元し、下記一般式(10)又は(11)で表される、光学活性な化合物を得る。
【0092】
【化32】

【0093】
【化33】

【0094】
上記式(10)又は(11)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。なお、R,R又はRは、上記出発物質とされた上記式(9)で表わされる化合物に由来する。
【0095】
上記不斉還元は、既知の方法を用いることができるが、不斉還元触媒を用いた不斉還元が好ましく、不斉還元触媒を用いた不斉水素添加によるものであることがより好ましい。
【0096】
一般に、デヒドロアミノ酸誘導体から光学活性なアミノ酸誘導体への不斉還元(水素化)反応には、Rh(I)あるいはRh(II)とBINAPやDIOPに代表されるホスフィンリガンドとの錯体触媒が多用される。本発明で好ましく用いられる不斉配位子は、Et(ジエチル)-DUPHOS(1,2-ビス-(2,5-ジメチルホスホラノ)ベンゼン(米国特許第5,171,892号明細書参照。)であり、カチオン性のRh(I) との錯体である市販のRh[(COD)-(S,S)-Et-DuPHOS]+TfO-が好ましく用いられる。ただし、デヒドロヒスチジン誘導体にはRh錯体と配位可能なイミダゾール由来の塩基性のアミノ基を有しているため、不斉還元に多用されるアルコールやエステル系の溶媒では反応が進行しないことが分かった。そこで酢酸などの酸性の溶媒を用いて塩基性を弱めることで始めて反応が進行することが分かった。その溶媒としては、トリフロロエタノールが最も良好な結果を与えた。
【0097】
不斉還元によるエナンチオマー過剰率は、50%以上であることが好ましく、より好ましくは75%以上、最も好ましくは95%以上である。
【0098】
本発明の更にもう1つは光学活性ヒスチジンアミド誘導体の製造方法である。本発明の光学活性ヒスチジンアミド誘導体の製造方法においては、まず下記一般式(12)又は(13)で表わされる化合物を準備する。
【0099】
【化34】

【0100】
【化35】

【0101】
なお、この一般式(12)又は(13)で表わされる化合物と、上記式(10)又は(11)で表わされる化合物とは、それぞれ共通する。すなわち、上記式(12)又は(13)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。
【0102】
次に、上記式(12)又は(13)で表わされる化合物と下記一般式(14)で表わされる化合物とを反応させる。
【0103】
【化36】

【0104】
なお、上記式(14)で表される化合物と、上記式(7)で表される化合物とは共通する。すなわち、上記式(14)中、Rはアルキルオキシカルボニル基又はアシル基を表わす。nは1〜5の整数である。
【0105】
上記式(12)又は(13)で表わされる化合物と上記式(14)で表わされる化合物とを反応させる際には、上記式(14)で表わされる化合物中、そのRが水素である以外の場合には、反応前にそのRを予め除去しておくことが好ましい。具体的には、そのRがtert-ブトキシカルボニル基(Boc基)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz基)、又はアセチル基(Ac基)などの保護基である場合には、上述したそれぞれに適した条件で脱保護を行うことができる。
【0106】
本発明の光学活性ヒスチジンアミド誘導体の製造方法においては、上記式(12)又は(13)で表わされる化合物と上記式(14)で表わされる化合物とを反応させて、アミド結合を形成させることにより、下記一般式(15)又は(16)で表わされる化合物を得ることができる。
【0107】
【化37】

【0108】
【化38】

【0109】
上記式(15)又は(16)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。nは1〜5の整数である。なお、上記式(15)中、R,Rは、上記出発物質とされた上記式式(12)で表わされる化合物に由来し、Rが水素である場合以外では、そのRは、上記式(14)に由来する。また、なお、上記式(16)中、R,Rは、上記出発物質とされた上記式式(13)で表わされる化合物に由来し、Rが水素である場合以外では、そのRは、上記式(14)に由来する。
【0110】
本発明の好ましい態様においては、下記のステップを経ることで、アンセリンを製造することができる。
【0111】
・ステップ1
上記式(2)で表わされる化合物として下記の化合物を用い、
【0112】
【化39】

【0113】
上記式(3)で表わされる化合物として下記の化合物を用いて、
【0114】
【化40】

【0115】
上記式(4)で表わされる化合物として下記の化合物を得る。
【0116】
【化41】

【0117】
・ステップ2
次いで、これを還元して上記式(6)で表わされる化合物として下記の化合物を得る。
【0118】
【化42】

【0119】
・ステップ3
次いで、Boc基を脱保護して、上記式(7)で表わされる化合物として下記の化合物を用いて反応させて、
【0120】
【化43】

【0121】
下記の化合物を得る。
【0122】
【化44】

【0123】
次いで、メチルエステルの加水分解後、Boc基を脱保護して、アンセリンを得ることができる。
【0124】
また、上記ステップ2で不斉還元を行うことにより下記の化合物を得て、
【0125】
【化45】

【0126】
上記と同様にして、下記に示すL−アンセリンを得ることができる。
【0127】
【化46】

【0128】
なお、上記の保護基としてはBoc基以外にも、Cbz基、Ac基などを用いて同様にアンセリンを得ることができる。また、ステップ2で不斉還元を行うことによりD体の光学活性中間体を得て、上記と同様に用いることにより、D体のアンセリンを得ることもできる。
【0129】
本発明の別の好ましい態様においては、下記のステップを経ることで、バレニンを製造することができる。
【0130】
・ステップ4
上記式(2)で表わされる化合物として下記の化合物を用い、
【0131】
【化47】

【0132】
上記式(3)で表わされる化合物として下記の化合物を用いて、
【0133】
【化48】

【0134】
上記式(4)で表わされる化合物として下記の化合物を得る。
【0135】
【化49】

【0136】
・ステップ5
次いで、これを還元して上記式(6)で表わされる化合物として下記の化合物を得る。
【0137】
【化50】

【0138】
・ステップ6
次いで、Boc基を脱保護して、上記式(7)で表わされる化合物として下記の化合物を用いて反応させて、
【0139】
【化51】

【0140】
下記の化合物を得る。
【0141】
【化52】

【0142】
次いで、メチルエステルの加水分解後、Boc基を脱保護して、バレニンを得ることができる。
【0143】
また、上記ステップ5で不斉還元を行うことにより下記の化合物を得て、
【0144】
【化53】

【0145】
上記と同様にして、下記に示すL−バレニンを得ることができる。
【0146】
【化54】

【0147】
なお、上記の保護基としてはBoc基以外にも、Cbz基、Ac基などを用いて同様にバレニンを得ることができる。また、ステップ5で不斉還元を行うことによりD体の光学活性中間体を得て、上記と同様に用いることにより、D体のバレニンを得ることもできる。
【0148】
本発明の更に別の好ましい態様においては、下記のステップを経ることで、カルノシンを製造することができる。
【0149】
・ステップ7
上記式(2)で表わされる化合物として下記の化合物を用い、
【0150】
【化55】

【0151】
上記式(3)で表わされる化合物として下記の化合物を用いて、
【0152】
【化56】

【0153】
上記式(4)で表わされる化合物として下記の化合物を得る。
【0154】
【化57】

【0155】
・ステップ8
次いで、これを還元して上記式(6)で表わされる化合物として下記の化合物を得る。
【0156】
【化58】

【0157】
・ステップ9
次いで、Boc基を脱保護して、上記式(7)で表わされる化合物として下記の化合物を用いて反応させて、
【0158】
【化59】

【0159】
下記の化合物を得る。
【0160】
【化60】

【0161】
次いで、メチルエステルの加水分解後、Boc基を脱保護して、カルノシンを得ることができる。
【0162】
また、上記ステップ8で不斉還元を行うことにより下記の化合物を得て、
【0163】
【化61】

【0164】
上記と同様にして、下記に示すL−カルノシンを得ることができる。
【0165】
【化62】

【0166】
なお、上記の保護基としてはBoc基以外にも、Cbz基、Ac基などを用いて同様にカルノシンを得ることができる。また、ステップ8で不斉還元を行うことによりD体の光学活性中間体を得て、上記と同様に用いることにより、D体のカルノシンを得ることもできる。
【実施例】
【0167】
以下に例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0168】
<例1> (イミダゾール誘導体の合成 その1)
下記反応式Aに表わされる合成反応を行なった。
【0169】
【化63】

【0170】
具体的には、市販品であるアルデヒド1(和光純薬工業株式会社製)と、公知の方法(例えば、Ben-Ishai, D.; Zoller, U. Tetrahedron. 1975, 31, 863参照)に準じて合成したホスホン酸エステル2aとを出発物質として、TMG存在下、Horner-Wadsworth-Emmons(HWE)反応を行い、Z体選択的に化合物3aを得た。
【0171】
より詳細には、ホスホン酸エステル2a(0.64mmol, 1.2当量)を無水テトラヒドロフラン(dry THF)の1.6mLに溶解し、0℃に冷却したのち、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)(0.64mmol, 1.2当量)を添加した。そして、溶液を0℃に保ちながらアルデヒド1(0.53mmol, 1.0当量)を添加した。反応の進行はTLCでモニターし、水を添加することにより反応を止めた。反応生成物をメチレンクロライドで抽出し、硫酸マグネシウムで脱水したのち、メチレンクロライドを留去し、粗生成物125.7mgを得た。この粗生成物を、溶媒としてジクロロメタン(CH2Cl2)/MeOH;10:1を用いたシリカゲルクロマトグラフィーにかけて精製し、乾固して無色の結晶を得た。収量は117.1mgであり、アルデヒド1に対する収率は70%であった。
【0172】
生成物のNMR分析の結果、1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ= 3.68 (s, 3H), 3.85 (s, 3H), 5.18 (s, 2H), 7.25 (s, 1H), 7.46 (s, 1H), 7.53 (s, 1H)、の各シグナルが得られ、上記反応式Aに表わされる化合物3aが得られたことが確認された。
【0173】
<例2> (イミダゾール誘導体の合成 その2)
下記反応式Bに表わされる合成反応を行なった。
【0174】
【化64】

【0175】
具体的には、市販品であるアルデヒド1(和光純薬工業株式会社製)と、公知の方法(例えば、Ben-Ishai, D.; Zoller, U. Tetrahedron. 1975, 31, 863参照)に準じて合成したホスホン酸エステル2bとを出発物質として、TMG存在下、Horner-Wadsworth-Emmons(HWE)反応を行い、Z体選択的に化合物3bを得た。
【0176】
より詳細には、ホスホン酸エステル2b(1.27mmol, 1.2当量)を無水テトラヒドロフラン(dry THF)の3.2mLに溶解し、0℃に冷却したのち、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)(1.27mmol, 1.2当量)を添加した。そして、溶液を0℃に保ちながらアルデヒド1(1.06mmol, 1.0当量)を添加した。反応の進行はTLCでモニターし、水を添加することにより反応を止めた。反応生成物をメチレンクロライドで抽出し、硫酸マグネシウムで脱水したのち、メチレンクロライドを留去し、粗生成物を476mg得た。この粗生成物を、溶媒としてジクロロメタン(CH2Cl2)/MeOH;10:1を用いたシリカゲルクロマトグラフィーにかけて精製し、乾固して無色の結晶を得た。収量は261.7mgであり、アルデヒド1に対する収率は89%であった。
【0177】
生成物のNMR分析の結果、1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ= 1.48 (s, 9H), 3.70 (s, 3H), 3.84 (s, 3H), 7.17 (s, 1H), 7.48 (s, 1H), 7.53 (s, 1H) 13C NMR (125 MHz, CDCl3):δ= 31.8, 40.2, 52.5, 81.1, 116.9, 123.2, 133.8, 140.0, 152.6, 165.5、の各シグナルが得られ、上記反応式Bに表わされる化合物3bが得られたことが確認された。
【0178】
<例3> (イミダゾール誘導体の合成 その3)
下記反応式Cに表わされる合成反応を行なった。
【0179】
【化65】

【0180】
具体的には、市販品であるアルデヒド1(和光純薬工業株式会社製)と、公知の方法(例えば、Ben-Ishai, D.; Zoller, U. Tetrahedron. 1975, 31, 863参照)に準じて合成したホスホン酸エステル2cとを出発物質として、TMG存在下、Horner-Wadsworth-Emmons(HWE)反応を行い、Z体選択的に化合物3cを得た。
【0181】
より詳細には、ホスホン酸エステル2c(1.4mmol, 1.0当量)を無水テトラヒドロフラン(dry THF)の4.3mLに溶解し、0℃に冷却したのち、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)(1.4mmol, 1.0当量)を添加した。そして、溶液を0℃に保ちながらアルデヒド1(1.4mmol, 1.0当量)を添加した。反応の進行はTLCでモニターし、水を添加することにより反応を止めた。反応生成物をメチレンクロライドで抽出し、硫酸マグネシウムで脱水したのち、メチレンクロライドを留去し、粗生成物92.2mgを得た。
【0182】
生成物のNMR分析の結果、1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ= 2.23 (s, 3H), 3.68 (s, 3H), 3.86 (s, 3H), 7.05 (s, 1H), 7.32 (s, 1H), 7.54 (s, 1H)、の各シグナルが得られ、上記反応式Cに表わされる化合物3cが得られたことが確認された。
【0183】
<例4> (アンセリンの合成)
下記反応式Dに表わされる合成反応を行なった。
【0184】
【化66】

【0185】
具体的には、まず、上記例2で得られた化合物3bに対してニッケル触媒下、NaBH4を用いて、1,4-還元を行い、1-methyl-histidine誘導体4を得た。
【0186】
より詳細には、例2で得られた化合物3b(200mg, 0.71mmol)を無水メタノールの2.0mLに溶解し、NiCl2(74mg, 0.57mmol)を添加した。これに少量のメタノールに懸濁させたNaBH4(161mg, 4.26mmol)を添加し、室温で攪拌して反応を行なった。反応開始25分後に飽和食塩水の10mLを添加して反応を止めた。還元生成物をエーテルで抽出し、硫酸マグネシウムで脱水したのち、エーテルを留去し、残渣を、溶媒としてヘキサン/酢酸エチル;7:3を用いたシリカゲル フラッシュ クロマトグラフィーにかけて精製し、乾固して無色の結晶を得た。
【0187】
生成物のNMR分析の結果、1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ= 1.42 (s, 9H), 3.08 (m, 2H), 3.59 (s, 3H), 3.75 (s, 3H), 4.53 (br, 1H), 5.14 (br, 1H), 6.80 (s, 1H), 7.44 (s, 1H)、の各シグナルが得られ、上記反応式Dに表わされる1-methyl-histidine誘導体4が得られたことが確認された。
【0188】
次に、上記で得られた1-methyl-histidine誘導体4に対して脱Boc化を行い、アミン塩酸塩5とした。得られたアミン塩酸塩5と、別途公知のSchotten-Baumann法(例えば、Yao, Z, J.; Shen, J, W.; Qin, D, G.; Zhang, H, W. J. Org. Chem. 2003, 68, 7479参照)により合成したBoc-β-alanine6を1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride(以下、WSCI・HClという。)及びトリエチルアミン(Et3N)の存在下縮合させて、ジペプチド7を得た。
【0189】
より詳細には、上記で得られた1-methyl-histidine誘導体4(43.5mg)を無水メタノールの2.0mLに溶解し、溶液を0℃に保ちながらSOCl2の216μLを添加して、攪拌しながら1hrの反応を行なった。溶液を留去して39.4mgの粗生成物を得、精製せずに以下の反応に用いた。
【0190】
なお粗生成物のNMR分析の結果、1H NMR (270 MHz, CD3OD):δ= 3.25 (overlap, 1H), 3.40 (dd, J= 6.9, 16.2 MHz), 4.40 (t, J= 6.9 MHz), 7.45 (s, 1H), 8.85 (s, 1H)、の各シグナルが得られ、上記反応式Dに表わされるアミン塩酸塩5が得られたことが確認された。
【0191】
次ぎに、上記で得られたアミン塩酸塩5(30mg, 0.14mmol)、Boc-β-alanine6(43.5mg, 0.14mmol)、及びトリエチルアミン(50μL, 0.35mmol)をジクロロメタン(CH2Cl2)の1mLに入れてアルゴンガス雰囲気下に室温で攪拌しながら、更にWSCI・HCl(48mg, 0.25mmol)を添加した。無水メタノールの2.0mLに溶解し、NiCl2(74mg, 0.57mmol)を添加した。反応開始24hr後に飽和NaHCO3溶液の5mLを添加して反応を止め、更に3mLのジクロロメタンを添加して、液−液分配される生成物をジクロロメタン層中に回収した。これを硫酸マグネシウムで脱水したのち、溶媒を留去し、残渣を、分取薄層クロマトグラフィーにかけて精製し、乾固して無色の結晶を得た。
【0192】
生成物のNMR分析の結果、1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ= 1.43 (s, 9H), 2.37 (t, J= 5.8 Hz, 2H), 3.04 (dd, J= 6.7, 15.4 Hz, 1H), 3.10 (dd, J= 6.7, 15.4 Hz, 1H), 3.31 (m, 2H), 3.57 (s, 3H), 3.71 (s, 3H), 4.76 (m, 1H), 6.77 (s, 1H), 7.50 (s, 1H);13C NMR (125 MHz, CDCl3):δ= 26.5, 28.5, 31.7, 36.1, 36.6, 51.6, 52.8, 79.9, 126.9, 128.3, 138.1, 156.2, 171. 2, 172.5、の各シグナルが得られ、上記反応式Dに表わされるジペプチド7が得られたことが確認された。
【0193】
次に、常法に従いメチルエステルの加水分解後、Boc基を脱保護して、アンセリンを得た。
【0194】
<例5> (L-アンセリンの合成)
[不斉還元:光学活性イミダゾール誘導体の合成 その1]
下記反応式Eに表わされる不斉合成反応を行った。
【0195】
【化67】


【0196】
具体的には、上記例2で得られた化合物3bの50mgを高圧水添装置内でトリフルオロエタノール(TFE)5 mLに溶解させた後、1,2-Bis((2R,5R)-2,5-ジエチルホスホラノ)ベンゼン-ロジウム(以下、「(-)Et-Duphos-Rh」とする。)を10 mg加えた。装置を密封し、500 psiの水素を加え50 ℃で8時間撹拌した。TLCで原料が無くなったことを確認した後、反応液を濃縮し分取TLC(CHCl3 : MeOH=10 : 1)で精製した。
【0197】
NMR分析の結果、1H NMR (500 MHz, CDCl3) : δ= 1.42 (s, 9H), 3.08 (m, 2H), 3.59 (s, 3H), 3.75 (s, 3H), 4.53 (br, 1H), 5.14 (br, 1H), 6.80 (s, 1H), 7.44 (s, 1H)、の各シグナルが得られ、上記反応式Eに表わされる1−メチル−L−ヒスチジン誘導体8bが得られたことが確認された。また、得られた誘導体のエナンチオマー過剰率(ee)は96%であった。(HPLC分析条件:カラム;CHIRALPAK-IC、溶媒;hexane : EtOH : Et2NH=50 : 50 : 0.1、RT;14.8min, 19.8min)
[脱Boc化]
上記不斉還元の方法で得られた1−メチル−L−ヒスチジン誘導体8bの1.28 gをMeOH 4mLに溶解させた後、0 ℃まで冷却した。溶液に塩化チオニル3.2 mLをゆっくり滴下し、40分撹拌した。反応液をトルエンで共沸し、目的物2.4 gを得た。
【0198】
NMR分析の結果、1H NMR (270 MHz, CD3OD) : δ = 3.25 (overlap, 1H), 3.40 (dd, J = 6.9, 16.2 MHz), 4.40 (t, J= 6.9 MHz), 7.45 (s, 1H), 8.85 (s, 1H)、の各シグナルが得られ、脱Boc化誘導体が得られたことが確認された。また、得られた脱Boc化誘導体のエナンチオマー過剰率(ee)は94%であった。(HPLC分析条件:カラム;CHIRALCEL-OC、溶媒;hexane : EtOH : Et2NH=50 : 50 : 0.1、RT;14.8min, 19.8min)
[β-アラニンとの縮合]
上記のようにして得られた脱Boc化誘導体の508 mgをCH2Cl2 8 mLに溶解させた後、Boc-β-alanine 530 mg、EDCI 480 mg、Et3N 0.49 mLを室温で加えた。5時間撹拌した後、CH2Cl2/sat. NaHCO3で分液し、有機層をMgSO4で乾燥させた。綿栓濾過し、エバポレーションすることにより粗生成物779 mgを得た。これをカラムクロマトグラフィー(hexane : AcOEt = 1 : 10、CHCl3 : MeOH = 20 : 1)で精製し、目的物137 mgを得た。
【0199】
NMR分析の結果、1H NMR (500 MHz, CDCl3) : δ = 1.43 (s, 9H), 2.37 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 3.04 (dd, J = 6.7, 15.4 Hz, 1H), 3.10 (dd, J = 6.7, 15.4 Hz, 1H), 3.31 (m, 2H), 3.57 (s, 3H), 3.71 (s, 3H), 4.76 (m, 1H), 6.77 (s, 1H), 7.50 (s, 1H)、の各シグナルが得られ、下記に示す光学活性ヒスチジンアミド誘導体である化合物14bが得られたことが確認された。また、得られた光学活性化合物14bのエナンチオマー過剰率(ee)は94%であった。(HPLC分析条件:カラム;CHIRALCEL-OC、溶媒;hexane : EtOH : Et2NH=60 : 40 : 0.1、RT;20.3min, 29.2min)
【0200】
【化68】

【0201】
[エステルの加水分解]
上記で得られた化合物14bの15.4 mgをMeOH 2 mLに溶解させた後、1M NaOH 0.04 mLを室温で加えた。1時間撹拌した後、エバポレーションにより溶媒を留去した。
[脱Boc化]
上記エステル加水分解後、3M HCl 3 mLを氷冷下加え、4時間撹拌した。NaHCO3で中和した後、エバポレーションにより溶媒を留去した。熱EtOHでトリチュレーションし、桐山濾過することにより得られた濾液を濃縮することにより、目的物12.9 mgを得た。
【0202】
NMR分析の結果、1H NMR (500 MHz, CD3OD) : δ = 2.33 (m, 2H), 2.82 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 2.92 (dd, J = 8.8, 15.4 Hz, 1H), 3.20 (dd, J = 8.8, 15.4 Hz, 1H), 3.66 (s, 3H), 4.51 (s, 3H), 3.71 (s, 3H), 4.76 (m, 1H), 6.77 (s, 1H), 7.50 (s, 1H)、の各シグナルが得られ、下記に示すL-アンセリンが得られたことが確認された。
【0203】
【化69】

【0204】
<例6> (L-バレニン合成)
下記反応式F1に表わされる合成反応を行った。
【0205】
【化70】

【0206】
具体的には、市販品であるアルデヒド9(和光純薬工業株式会社製)と、公知の方法(例えば、Ben-Ishai, D.; Zoller, U. Tetrahedron. 1975, 31, 863参照)に準じて合成したホスホン酸エステル2aとを出発物質として、TMG存在下、Horner-Wadsworth-Emmons(HWE)反応を行いZ体選択的に化合物9aを得た。
【0207】
[不斉還元:光学活性イミダゾール誘導体の合成 その2]
下記反応式G1に表わされる不斉合成反応を行った。
【0208】
【化71】

【0209】
具体的には、上記のようにして得られた化合物9aの52.91 mgを高圧水添装置内でトリフルオロエタノール(TFE)6 mLに溶解させた後、(-)Et-Duphos-Rh 10.1 mgを加えた。装置を密封し、800 psiの水素を加え50 ℃で14時間撹拌した。TLCで原料が無くなったことを確認した後、反応液を濃縮し分取TLC(CHCl3 : MeOH=10 : 1)で精製した。
【0210】
NMR分析の結果、1H NMR (500 MHz, CDCl3) : δ = 3.06 (m, 2H), 3.59 (s, 3H), 3.71 (s, 3H), 4.60 (br, 1H), 5.11 (s, 2H), 6.29 (s, 1H), 6.61 (s, 1H), 7.34 (m, 5H)、の各シグナルが得られ、上記反応式G1に表わされる光学活性イミダゾール誘導体である化合物11aが得られたことが確認された。また、得られた光学活性化合物11aのエナンチオマー過剰率(ee)は82%であった。(HPLC分析条件:カラム;CHIRALCEL-OC、溶媒;hexane : EtOH : Et2NH=60 : 40 : 0.1、RT;28.9min, 34.5min)
[脱Cbz化]
上記不斉還元の方法で得られた光学活性化合物11aの10.4 mgをMeOH 2 mLに溶解させた後、Pd(OH)2を10 mg加え、接触還元を行った。反応終了後セライト濾過し、濾液を濃縮した。
[β-アラニンとの縮合]
上記のようにして得られた脱Cbz化誘導体の275.8 mgをCH2Cl27.6 mLに溶解させた後、Boc-β-alanine 314.1 mg、EDCI 318.2 mgを室温で加えた。9時間撹拌した後、CH2Cl2/sat. NaHCO3で分液し、有機層をMgSO4で乾燥させた。綿栓濾過し、エバポレーションすることにより粗生成物445.3 mgを得た。これをカラムクロマトグラフィー(hexane : AcOEt = 1 : 10、CHCl3 : MeOH = 20 : 1)で精製し、目的物196 mgを得た。
【0211】
NMR分析の結果、1H NMR (500 MHz, CDCl3) : δ = 1.43 (s, 9H), 2.45 (m, 2H), 3.04 (m, 2H), 3.41 (m, 2H), 3.63 (s, 3H), 3.70 (s, 3H), 4.78 (m, 1H), 5.69 (br, 1H), 6.64 (s, 1H), 7.35 (s, 1H)、の各シグナルが得られ、下記に示す光学活性ヒスチジンアミド誘導体である化合物15bが得られたことが確認された。また、得られた化合物15bのエナンチオマー過剰率(ee)は77%であった。(HPLC分析条件:カラム;CHIRALCEL-OC、溶媒;hexane : EtOH : Et2NH=60 : 40 : 0.1、RT;17.6min, 21.7min)
【0212】
【化72】

【0213】
[エステルの加水分解]
上記で得られた化合物15bの196 mgをMeOH 2 mLに溶解させた後、1M NaOH 1 mLを室温で加えた。10時間撹拌した後、エバポレーションにより溶媒を留去した。
[脱Boc化]
上記エステル加水分解後、3M HCl 2 mLを氷冷下加え、4時間撹拌した。NaHCO3で中和した後、エバポレーションにより溶媒を留去した。熱EtOHでトリチュレーションし、桐山濾過することにより得られた濾液を濃縮することにより、目的物70.3 mgを得た。
【0214】
NMR分析の結果、1H NMR (500 MHz, CD3OD) : δ = 2.32 (m, 2H), 2.82 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 2.92 (dd, J = 8.8, 15.4 Hz, 1H), 3.20 (dd, J = 8.8, 15.4 Hz, 1H), 3.63 (s, 3H), 4.50 (s, 3H), 6.84 (s, 1H), 7.42 (s, 1H)、の各シグナルが得られ、下記に示すL-バレニンが得られたことが確認された。
【0215】
【化73】

【0216】
<例7> (L-カルノシンの合成)
下記反応式F2に表わされる合成反応を行った。
【0217】
【化74】

【0218】
具体的には、市販品であるアルデヒド10(和光純薬工業株式会社製)と、公知の方法(例えば、Ben-Ishai, D.; Zoller, U. Tetrahedron. 1975, 31, 863参照)に準じて合成したホスホン酸エステル2aとを出発物質として、TMG存在下、Horner-Wadsworth-Emmons(HWE)反応を行い、Z体選択的にアルデヒド10から化合物10aを得た。
【0219】
[不斉還元:光学活性イミダゾール誘導体の合成 その3]
下記反応式G2に表わされる不斉合成反応を行った。
【0220】
【化75】

【0221】
具体的には、上記のようにして得られた化合物10aの50.75 mgを高圧水添装置内でトリフルオロエタノール(TFE)6 mLに溶解させた後、(-)Et-Duphos-Rh 10.01 mgを加えた。装置を密封し、1900 psiの水素を加え50 ℃で24時間撹拌した。TLCで原料が無くなったことを確認した後、反応液を濃縮し分取TLC(CHCl3 : MeOH=10 : 1)で精製した。
【0222】
NMR分析の結果、1H NMR (500 MHz, CDCl3) : δ = 3.12 (m, 2H), 3.73 (s, 3H), 4.63 (br, 1H), 5.11 (s, 2H), 6.13 (br, 1H), 6.80 (s, 1H), 7.35 (m, 7H), 7.55 (s, 1H)、の各シグナルが得られ、上記反応式G2に表わされる光学活性イミダゾール誘導体である化合物12aが得られたことが確認された。また、得られた光学活性化合物12aのエナンチオマー過剰率(ee)は90%であった。(HPLC分析条件:カラム;CHIRALCEL-OJ-H, hexane : EtOH : Et2NH = 80 : 20 : 0.1, RT; 17.3 min, 20.5 min)
以下、上記例6と同様にして、脱Cbz化、β-アラニンとの縮合を順次行い、下記に示す光学活性ヒスチジンアミド誘導体である化合物16bを得た。
【0223】
【化76】

【0224】
更に、上記例6と同様にして、エステルの加水分解、β-アラニンの保護基であったBoc基の脱保護を順次行い、下記に示すL-カルノシンを得た。
【0225】
【化77】

【0226】
<例8> (アンセリンD体の合成)
[不斉還元:光学活性イミダゾール誘導体の合成 その4]
下記反応式G3に表わされる不斉合成反応を行った。
【0227】
【化78】

【0228】
具体的には、上記例2で得られた化合物3bの50mgを高圧水添装置内でトリフルオロエタノール(TFE)5 mLに溶解させた後、1,2-Bis((2S,5S)-2,5-ジエチルホスホラノ)ベンゼン-ロジウム(以下、「(+)Et-Duphos-Rh」とする。)を10 mg加えた。装置を密封し、500 psiの水素を加え50 ℃で8時間撹拌した。TLCで原料が無くなったことを確認した後、反応液を濃縮し分取TLC(CHCl3 : MeOH=10 : 1)で精製した。
【0229】
NMR分析の結果、上記反応式G3に表わされる光学活性イミダゾール誘導体である化合物13bが得られたことが確認された。また、得られた光学活性化合物13bのエナンチオマー過剰率(ee)は82%であった。(HPLC分析条件:カラム;CHIRALCEL-OJ-H, hexane : EtOH : Et2NH = 80 : 20 : 0.1, RT; 17.3 min, 20.5 min)
以下、上記例5と同様にして、脱Boc化、β-アラニンとの縮合を順次行い、下記に示す光学活性ヒスチジンアミド誘導体である化合物17bを得た。
【0230】
【化79】

【0231】
更に、上記例5と同様にして、エステルの加水分解、β-アラニンの保護基であったBoc基の脱保護を順次行い、下記に示す光学活性アンセリンD体を得た。
【0232】
【化80】

【0233】
下記表1には、上記例5〜例8における不斉還元反応の原料、不斉還元触媒、中間生成物、及びそのエナンチオマー過剰率についてまとめて示す。
【0234】
【表1】

【0235】
以上から、上記表1左欄記載のイミダゾール誘導体を原料にして、上記表1中欄記載の不斉還元触媒によって、上記表1右欄記載の光学活性イミダゾール誘導体が得られることが明らかとなった。
【0236】
また、下記表2には、上記例5〜例8の合成反応における上記中間生成物からの生成物と、そのエナンチオマー過剰率についてまとめて示す。
【0237】
【表2】

【0238】
以上から、上記表2左欄記載の光学活性イミダゾール誘導体から、上記表2右欄記載の光学活性ヒスチジンアミド誘導体が得られることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表わされる化合物。
【化1】


[式(1)中、R,Rは、水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
【請求項2】
下記一般式(2)で表わされる化合物と、
【化2】


[式(2)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わす。]
下記一般式(3)で表わされる化合物とを反応させて、
【化3】


[式(3)中、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
下記一般式(4)で表わされる化合物を得ることを特徴とするイミダゾール誘導体の製造方法。
【化4】


[式(4)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
【請求項3】
下記一般式(5)で表わされる化合物のエナミン構造部分の二重結合を還元し、
【化5】


[式(5)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
下記一般式(6)で表される化合物を得、
【化6】


[式(6)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
下記一般式(7)で表わされる化合物を反応させて、
【化7】


[式(7)中、Rはアルキルオキシカルボニル基又はアシル基を表わす。nは1〜5の整数である。]
下記一般式(8)で表わされる化合物を得ることを特徴とする、ヒスチジンアミド誘導体の製造方法。
【化8】


[式(8)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。nは1〜5の整数である。]
【請求項4】
得られる化合物が、アンセリン、バレニン、及びカルノシンからなる群から選ばれた一種である請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
下記一般式(9)で表わされる化合物のエナミン構造部分の二重結合を不斉還元し、
【化9】


[式(9)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
下記一般式(10)又は(11)で表される化合物を得ることを特徴とする、光学活性イミダゾール誘導体の製造方法。
【化10】


[式(10)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
【化11】


[式(11)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
【請求項6】
下記一般式(12)又は(13)で表される化合物と、
【化12】


[式(12)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
【化13】


[式(13)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。]
下記一般式(14)で表わされる化合物とを反応させて、
【化14】


[式(14)中、Rはアルキルオキシカルボニル基又はアシル基を表わす。nは1〜5の整数である。]
下記一般式(15)又は(16)で表される化合物を得ることを特徴とする、光学活性ヒスチジンアミド誘導体の製造方法。
【化15】


[式(15)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。nは1〜5の整数である。]
【化16】


[式(16)中、R,Rは水素又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素、アルキルオキシカルボニル基、及びアシル基からなる群から選ばれた一種を表わす。nは1〜5の整数である。]
【請求項7】
得られる化合物が、L-アンセリン、L-バレニン、及びL-カルノシンからなる群から選ばれた一種である請求項6記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−31004(P2010−31004A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159787(P2009−159787)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(390033145)焼津水産化学工業株式会社 (80)
【出願人】(507219686)静岡県公立大学法人 (63)
【Fターム(参考)】