説明

新規シクロスポリン類似体およびそれらの薬学的使用

本発明の化合物は、下記の式I、またはその薬学的に許容される塩で表され、式中、X、R0、R1、およびR2は本明細書中に定義される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、新規シクロスポリン類似体ならびに免疫抑制剤および他の疾患処置用の医用薬剤としてのそれらの有用性を開示する。そのような類似体の調製方法も開示する。
【0002】
本出願は、2004年9月29日提出の米国特許仮出願第60/614,266号の恩典を主張し、その内容は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
シクロスポリンA(CsA)は真菌トリポクラジウム・インフラツム(Tolypocladium inflatum)から単離された中性環式ウンデカペプチドで、現在のところNeoral(登録商標)およびSandimmune(登録商標)(Novartis、バーゼル、スイス)として市販されており、臓器移植片拒絶の予防のために広く用いられている。シクロスポリンAは、ペプチジルプロリルシス/トランスイソメラーゼであるシクロフィリンに結合することにより分子レベルでその免疫抑制効果を発揮する。結合の結果生じるシクロスポリンAとシクロフィリンとの複合体はCa2+/カルモジュリン依存性ホスファターゼであるカルシニューリンに結合し、そのホスファターゼ活性を阻害する。カルシニューリンは転写因子である活性化T細胞の核因子(NFAT)の転座と、続くT細胞増殖に必要な初期遺伝子の発現を調節する。シクロスポリンA-シクロフィリン複合体によるカルシニューリンのホスファターゼ活性阻害は、NFAT核局在化を防止し、IL-2などの遺伝子の発現を抑制して、最終的に免疫抑制を引き起こす(Matsuda et al., 「Mechanisms of Action of Cyclosporin,」Immunopharmacology, 47:119-125 (2000))。
【0004】
シクロスポリンAは、関節リウマチ、クローン病、乾癬などの自己免疫疾患、および喘息などの慢性炎症疾患の処置における治療的適用の可能性も有する。残念なことに、これらの適応症に対する臨床上の有用性は、シクロスポリンAの臨床上有効な用量で起こる、腎毒性、高血圧、肝毒性、貧血、および胃腸不耐性などの副作用のために、実現していない。シクロスポリンAに伴う毒性は、免疫抑制療法分野で働く多くの専門家によって、作用機序によると考えられている(Lazarova et al., 「Cyclosporin A Analogues:Recent Advances,」Expert Opin. Ther. Patents, 13:1327-1332 (2003))。事実、治療指数が改善された新規シクロスポリン類似体を発見するゴールは、過去30年間にわたるこの薬物発見分野での多大な努力にもかかわらず、まだ達成されていない(Bollingerらの米国特許第5,525,590号;Boelsterliらの米国特許第5,643,870号;Richらの米国特許第5,639,852号;Duretteの米国特許第5,236,899号;Patchettの米国特許第5,122,511号;Dumontの米国特許第4,914,188号;Seebachの米国特許第4,771,122号;Wengerの米国特許第4,764,503号;Wengerの米国特許第4,396,542号;Rueggerらの米国特許第4,210,581号)。
【0005】
近年、強力な免疫抑制作用と低い毒性を有する新規シクロスポリン類似体を見いだすために、さらに努力がなされており、ISATX247などの化合物が得られている。前臨床所見により、ISATX247は、移植片拒絶予防のためにすでに市販されているこのクラスの他の免疫抑制剤よりも著しく強力で毒性が低い可能性を有する。ISATX247は移植後の臓器拒絶予防および乾癬処置のための臨床試験第II相に入っている(Abel et al.,「ISATX247:A Novel Calcineurin Inhibitor,」J. Heart Lung Transplant, 20:161 (2001);Aspeslet et al.,「ISATX247:A Novel Calcineurin Inhibitor,」Transplantation Proceedings, 33:1048-1051 (2001);Naickerらの米国特許第6,605,593号および第6,613,739号)。
【0006】
「ソフト」薬物アプローチ(Lazarova et al.,「Synthesis and Biological Evaluation of Cyclosporin A Analogues:Potential Soft Drugs for the Treatment of Autoimmune Diseases,」J. Med. Chem., 46:674-676 (2003))も最近記載されており、これは自己免疫疾患(Orらの国際公開公報第03/033010号)および喘息などの呼吸器疾患(Orらの国際公開公報第02/069902号)の処置用に用いられる免疫抑制シクロスポリンA誘導体の毒性を最低限に抑えるよう努力するものである。
【0007】
治療指数が改善された新規シクロスポリン類似体がまだ大いに必要とされている。
【0008】
本発明はこれらの目標を達成することを目的とする。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明の化合物は下記の式Iaで表され:

(式中:
XはOHまたはOAcであり;
R0はHまたはCH2OR3であり;
R1はHまたはDであり;
R2は下記からなる群より選択され:
ハロゲン、
C1-C6ハロゲン化飽和直鎖または分枝炭素鎖、
C2-C6ハロゲン化不飽和直鎖または分枝炭素鎖、
C3-C6置換および無置換シクロアルキル、
アミノ基を含むC1-C6飽和直鎖または分枝炭素鎖、
-CH=N-OR4、および
-CH=N-NR4R5
R3は下記からなる群より選択され:
水素、
アルカノイル、
アルケノイル、
アルキノイル、
アリーロイル、
アリールアルカノイル、
アルキルアミノカルボニル、
アリールアミノカルボニル、
アリールアルキルアミノカルボニル、
アルキルオキシカルボニル、
アリールオキシカルボニル、および
アリールアルキルオキシカルボニル;
R4およびR5は同じまたは異なり、下記からなる群より独立に選択され:
水素、
C1-C6飽和直鎖または分枝炭素鎖、
C3-C6不飽和直鎖または分枝炭素鎖、
C3-C6-置換および無置換シクロアルキル、
アリールまたはヘテロアリールを含むC1-C4炭素鎖、
置換および無置換アリール、
置換および無置換ヘテロアリール、
アルカノイル、
アルケノイル、
アルキノイル、
アリーロイル、
アリールアルカノイル、
アルキルアミノカルボニル、
アリールアミノカルボニル、
アリールアルキルアミノカルボニル、
アルキルオキシカルボニル、
アリールオキシカルボニル、
アリールアルキルオキシカルボニル、
アルキルスルホニル、および
アリールスルホニル;ならびに
R4はR5と一緒になって、任意に一つまたは複数のヘテロ原子を含むC2-C6の環状部分を形成する)、
ここで化合物はシス幾何異性体、トランス幾何異性体、もしくはシスおよびトランス幾何異性体の混合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0010】
本発明の化合物は下記の式Ibでも表され:

(式中:
XはOHまたはOAcであり;
R0はHまたはCH2OR3であり;
R1はハロゲンであり;
R2は下記からなる群より選択され:
水素、
重水素、
ハロゲン、
任意にハロゲンを含む、C1-C6飽和直鎖または分枝炭素鎖、
任意にハロゲンを含む、C2-C6不飽和直鎖または分枝炭素鎖、
C3-C6置換および無置換シクロアルキル、
置換および無置換アリール、および
置換および無置換ヘテロアリール;ならびに
R3は下記からなる群より選択される:
水素、
アルカノイル、
アルケノイル、
アルキノイル、
アリーロイル、
アリールアルカノイル、
アルキルアミノカルボニル、
アリールアミノカルボニル、
アリールアルキルアミノカルボニル、
アルキルオキシカルボニル、
アリールオキシカルボニル、および
アリールアルキルオキシカルボニル)、
ここで化合物はシス幾何異性体、トランス幾何異性体、もしくはシスおよびトランス幾何異性体の混合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0011】
本発明は、シクロスポリンAから化学的に改変された新規シクロスポリン誘導体を開示する。特に、本発明は、1位のアミノ酸に化学的に改変された側鎖と、任意に3位のアミノ酸に置換を含む、シクロスポリン類似体を開示する。
【0012】
本発明は、免疫抑制剤として有効な新規シクロスポリン類似体を開示する。本発明の化合物は、シクロスポリンAと類似、またはそれよりも強力な免疫抑制活性を有する。これらの化合物は、眼アレルギーおよびドライアイ、ならびに喘息、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、および潰瘍性大腸炎などの自己免疫および慢性炎症性疾患の処置において有用でもある。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、下記の式Iaで表される新規シクロスポリン類似体化合物を提供し:

(式中:
XはOHまたはOAcであり;
R0はHまたはCH2OR3であり;
R1はHまたはDであり;
R2は下記からなる群より選択され:
ハロゲン、
C1-C6ハロゲン化飽和直鎖または分枝炭素鎖、
C2-C6ハロゲン化不飽和直鎖または分枝炭素鎖、
C3-C6置換および無置換シクロアルキル、
アミノ基を含むC1-C6飽和直鎖または分枝炭素鎖、
-CH=N-OR4、および
-CH=N-NR4R5
R3は下記からなる群より選択され:
水素、
アルカノイル、
アルケノイル、
アルキノイル、
アリーロイル、
アリールアルカノイル、
アルキルアミノカルボニル、
アリールアミノカルボニル、
アリールアルキルアミノカルボニル、
アルキルオキシカルボニル、
アリールオキシカルボニル、および
アリールアルキルオキシカルボニル;
R4およびR5は同じまたは異なり、下記からなる群より独立に選択され:
水素、
C1-C6飽和直鎖または分枝炭素鎖、
C3-C6不飽和直鎖または分枝炭素鎖、
C3-C6-置換および無置換シクロアルキル、
アリールまたはヘテロアリールを含むC1-C4炭素鎖、
置換および無置換アリール、
置換および無置換ヘテロアリール、
アルカノイル、
アルケノイル、
アルキノイル、
アリーロイル、
アリールアルカノイル、
アルキルアミノカルボニル、
アリールアミノカルボニル、
アリールアルキルアミノカルボニル、
アルキルオキシカルボニル、
アリールオキシカルボニル、
アリールアルキルオキシカルボニル、
アルキルスルホニル、および
アリールスルホニル;ならびに
R4はR5と一緒になって、任意に一つまたは複数のヘテロ原子を含むC2-C6の環状部分を形成する)、
ここで化合物はシス幾何異性体、トランス幾何異性体、もしくはシスおよびトランス幾何異性体の混合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0014】
本発明の一つの態様は、X=OHまたはOAc;R0=H、CH2OH、またはCH2OAc;R1=HまたはD;およびR2=F、Cl、Br、またはIである、前述の式Iaの化合物に関する。
【0015】
本発明のもう一つの態様は、X=OHまたはOAc;R0=H、CH2OH、またはCH2OAc;R1=HまたはD;およびR2=CF3、CH2F、またはCH2Clである、前述の式Iaの化合物に関する。
【0016】
本発明のもう一つの態様は、X=OHまたはOAc;R0=H、CH2OH、またはCH2OAc;R1=HまたはD;およびR2=-CH=CHF、-CH=CHCl、-CH=CHBr、または-CH=CHIである、前述の式Iaの化合物に関する。
【0017】
本発明のもう一つの態様は、X=OHまたはOAc;R0=H、CH2OH、またはCH2OAc;R1=HまたはD;およびR2=-CH=CH-C≡CH、-CH=CH-C≡C-CH3、または-CH=CH-C≡C-CH=CH2である、前述の式Iaの化合物に関する。
【0018】
本発明のもう一つの態様は、X=OHまたはOAc;R0=H、CH2OH、またはCH2OAc;R1=HまたはD;およびR2=シクロプロピルである、前述の式Iaの化合物に関する。
【0019】
本発明のもう一つの態様は、X=OHまたはOAc;R0=H、CH2OH、またはCH2OAc;R1=HまたはD;およびR2=-CH=N-OH、-CH=N-OCH3、-CH=N-OCH2CH3、-CH=N-NHCH3、または-CH=N-N(CH3)2である、前述の式Iaの化合物に関する。
【0020】
本発明のもう一つの態様は、
X=OHまたはOAc、
R0=H、
R1=HまたはD、および
R2=Cl、Br、I、CF3、C3F7、C4F9、CH2F、CH2Cl、-シクロプロピル、-CH=CHCl、-CH=CHBr、-CH=CHI、-CH=CHCF3、-C(CF3)=CH2、-C≡CC4H9、-CH=CH-C≡CH、-CH=CH-C≡CCH3、-CH=CH-C≡CSi(CH3)3、-CH=CH-C≡C-CH=CH2、-CH=CH-C≡C-CH(OH)CH3、-CH2NHCH3、-CH2N(CH3)2、-CH2N(CH3)(Ac)、-CH2-ピロリジン、-CH2-ピペリジン、-CH2-モルホリン、-CH2-チオモルホリン、-CH2-メチルピペリジン(piperizine)、-CH=N-OH、-CH=N-OCH3、-CH=N-OCH2CH3、-CH=N-OCH2CH=CH2、-CH=N-OCH2Ph、-CH=N-N(CH3)2、-CH=N-NHCH3、または-CH=N-NHSO2C6H4CH3である、前述の式Iaの化合物に関する。
【0021】
本発明のもう一つの態様は、
X=OHまたはOAc、
R0=CH2OHまたはCH2OAc、
R1=H、および
R2=Cl、Br、I、CF3、CH2F、Ph、-CH=CHCl、-CH=CHBr、-CH=CHI、-CH=CH2、または-CH=CD2である、前述の式Iaの化合物に関する。
【0022】
加えて、本発明の化合物は下記の式Ibで表され:

(式中:
XはOHまたはOAcであり;
R0はHまたはCH2OR3であり;
R1はハロゲンであり;
R2は下記からなる群より選択され:
水素、
重水素、
ハロゲン、
任意にハロゲンを含む、C1-C6飽和直鎖または分枝炭素鎖、
任意にハロゲンを含む、C2-C6不飽和直鎖または分枝炭素鎖、
C3-C6置換および無置換シクロアルキル、
置換および無置換アリール、および
置換および無置換ヘテロアリール;ならびに
R3は下記からなる群より選択される:
水素、
アルカノイル、
アルケノイル、
アルキノイル、
アリーロイル、
アリールアルカノイル、
アルキルアミノカルボニル、
アリールアミノカルボニル、
アリールアルキルアミノカルボニル、
アルキルオキシカルボニル、
アリールオキシカルボニル、および
アリールアルキルオキシカルボニル)、
ここで化合物はシス幾何異性体、トランス幾何異性体、もしくはシスおよびトランス幾何異性体の混合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0023】
本発明のもう一つの態様は、
X=OHまたはOAc、
R0=H、
R1=Cl、および
R2=H、D、Cl、CF3、またはPhである、前述の式Ibの化合物に関する。
【0024】
本発明のもう一つの態様は、
X=OHまたはOAc、
R0=H、
R1=BrまたはI、および
R2=H、D、またはCH3である、前述の式Ibの化合物に関する。
【0025】
特に、本発明は、シクロスポリンハロゲン化ビニルおよびハロゲン化アリルを含む、新規ハロゲン化シクロスポリン類似体に関する。
【0026】
本発明は、式Iaおよび式Ibで表される新規シクロスポリン類似体化合物の調製方法ならびに様々な疾患処置用の医用薬剤としてのそれらの有用性も開示する。本発明は、他の新規シクロスポリン誘導体に変換することができる合成中間体としての、ハロゲン化シクロスポリン類似体(ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化アリル)の有用性も記載する。
【0027】
本発明の化合物調製のための出発原料はシクロスポリンAである。シクロウンデカペプチドであるシクロスポリンAの構造、および環内の各アミノ酸の位置の番号づけを以下に示す:

【0028】
シクロスポリンAは下記の式IIaで表すこともできる:

【0029】
本発明の新規シクロスポリン類似体は、シクロスポリンAまたはシクロスポリンAの3位アミノ酸の改変により調製された鍵となる中間体から誘導される。スキーム1に示すとおり、そのような鍵となる中間体(式IIb)は、シクロスポリンAのリチウムジイソプロピルアミド(LDA)による脱プロトン化と、続くホルムアルデヒド処理により調製することができる(Seebach et al,「Modification of Cyclosporin A:Generation of an Enolate at the Sarcosine Residue and Reaction With Electrophiles,」HeIv. Chim. Acta, 76:1564-1590 (1993)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
スキーム1

【0030】
本発明の一つの態様に従い、新規シクロスポリンハロゲン化ビニルを、スキーム2に概略を示すとおり、タカイ反応を鍵となる段階として用いて調製することができる。シクロスポリンA(式IIa)または式IIbのシクロスポリンジオール中間体の無水酢酸によるアセチル化と、続く二重結合のオゾンによる酸化的切断により、式IIIのシクロスポリンアルデヒドを順調に生成する。シクロスポリンアルデヒドのハロホルム-CrCl2複合体処理により、式Iaの新規シクロスポリンハロゲン化ビニルを生じる(Takai et al,「Simple and Selective Method for RCHO -> (E)-RCH=CHX Conversion by Means of a CHX3-CrCl2 System,」J. Am. Chem. Soc, 108:7408-7410 (1986)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。クロロホルム、ブロモホルム、およびヨードホルムなどの様々なハロホルムを適用することができる。所望のハロゲン化ビニルを良好から優秀な収率(50〜80%)で得るために、過剰のハロホルムおよびCrCl2の使用が必要と考えられる。この立体選択的化学は式Iaのハロゲン化オレフィンをトランス配置のみで与える(R1=HまたはD;R2=ハロゲン)。アセチル保護基は、メタノール中での炭酸カリウム処理により除去することができる(スキーム2参照)。
スキーム2

【0031】
本発明の式Ibの新規シクロスポリンハロゲン化ビニルを、スキーム3に示すとおり、リンイリド化学(ウィッティヒ反応、ホーナー-エモンズ反応、または他の改変ウィッティヒ条件)を適用しての代替アプローチにより調製することができる。この化学は式IIIのシクロスポリンアルデヒドを式Ibのハロゲン化オレフィンに効率的に変換する。この反応はオレフィンのシス異性体またはシスおよびトランス異性体の分離可能な混合物のいずれかを生成する。典型的には、ウィッティヒ、ホーナー-エモンズ、または他の改変ウィッティヒ条件下で、リンイリド種は様々なホスホニウム塩またはホスホン酸塩のn-ブチルリチウムもしくはナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドなどの強塩基処理によって生成する。脱アセチル化はスキーム2に記載のものと同じ条件下で行う。
スキーム3

【0032】
スキーム2に記載のものと同じ戦略を用いて、ハロゲン化シクロスポリンジエンを、式IVのα,β-不飽和アルデヒドのタカイ反応により調製することができ、このアルデヒドはシクロスポリンにオレフィンクロス複分解を適用して生成する(スキーム4)。過去10年間に、炭素-炭素結合生成のための強力な合成ツールとしてルテニウム触媒オレフィン複分解が現れた(Chatterjee et al,「A General Model for Selectivity in Olefin Cross Metathesis,」J. Am. Chem. Soc., 125:11360-11370 (2003);Connon et al,「Recent Development in Olefin Cross Metathesis,」Angew. Chem. Int. Ed., 42:1900-1923 (2003)、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。オレフィン複分解には三つの主な変形がある:(a)クロス複分解;(b)開環/閉環複分解;および(c)分子間エニン複分解。非環式炭素-炭素結合生成法として、オレフィンクロス複分解は多くの利点を有する:(1)工程が触媒反応である(典型的には1〜5モル%の触媒が必要);(2)緩和な条件下、比較的短い反応時間で高収率を得ることができる;(3)広範な官能基が、最低限の基質保護しか必要とせずに耐容される;および(4)反応が比較的原子-経済的であり、通常は気体エチレンが唯一の副産物で、これは工業的適用において重要な考慮すべき事項である(Connon et al,「Recent Development in Olefin Cross Metathesis,」Angew. Chem. Int. Ed., 42:1900-1923 (2003)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
スキーム4

【0033】
スキーム4に示すとおり、アセチル保護シクロスポリンAまたはシクロスポリンジオールのオレフィンクロス複分解を、塩化メチレンまたはトルエン中、グラブス触媒存在下で、アクロレインアセタール(アクロレインジメチルアセタールおよび2-ビニル-1,3-ジオキソランなど)により実施する。この反応によりアセタール中間体を得、これは溶媒系としてアセトニトリル-水-トリフルオロ酢酸を用いての高圧液体クロマトグラフィによる精製中に加水分解されて、式IVのトランス-α,β-不飽和アルデヒドを良好から優秀な収率(60〜80%)で直接生成する。触媒はグラブス触媒第2世代(Schwab et al,「A Series of Well-Defined Metathesis Catalysts-Synthesis of [RuCl2(=CHR')(PR3)2] and Its Reactions,」Angew. Chem. Int. Ed., 34:2039-2041 (1995)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)またはホベイダ-グラブス触媒(Scholl et al,「Synthesis and Activity of a New Generation of Ruthenium-Based Olefin Metathesis Catalysts Coordinated with 1,3-Dimesityl-4,5-dihydroimidazol-2-ylidene Ligands,」Org. Lett., 1:953 (1999);Sanford et al,「Mechanism and Activity of Ruthenium Olefin Metathesis Catalysts,」J. Am. Chem. Soc., 123:6543-6554 (2001)、 これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)のいずれであってもよい。この立体選択的化学は式IVのα,β-不飽和アルデヒドをトランス幾何異性体のみで与える。
【0034】
式IVのα,β-不飽和アルデヒドをテトラヒドロフラン中、ハロホルムおよびCrCl2で処理して、式Vのハロゲン化シクロスポリンジエンをトランス異性体で得る。これらの条件下では少量のシス異性体が観察されるにすぎない。最後に、アセチル保護基をメタノール中、炭酸カリウムで除去することができる(スキーム4)。
【0035】
本発明のもう一つの態様に従い、シクロスポリンハロゲン化ビニルをパラジウムまたはニッケル触媒カップリング(スティルカップリング、スズキカップリング、ネギシカップリング、およびソノガシラカップリングなど)のための強力な合成中間体として用い、新しい炭素-炭素結合を構築することができる。スキーム5に示すとおり、式VIのシクロスポリンヨウ化ビニルのPd(CH3CN)2Cl2存在下、有機スズ試薬とのスティルカップリングにより、それぞれ新規シクロスポリンシクロプロピル誘導体およびジエン類似体を得、一方アルキンとのソノガシラカップリングによりエニン類似体を得る。同様の反応を、式Vのハロゲン化ジエンに対し有機スズ試薬、有機亜鉛試薬、ボロン酸、またはアルキンで実施し、新規シクロスポリン類似体を調製することもできる。
スキーム5

【0036】
本発明のもう一つの態様に従い、シクロスポリンハロゲン化アリルを、スキーム6に示すとおり、グラブス触媒を用いてのオレフィンクロス複分解により調製することができる。式VIIの塩化アリルを鍵となる中間体として用い、様々なシクロスポリンアミン誘導体を得ることができる。
スキーム6

【0037】
本発明のもう一つの態様は、いわゆる「ソフト薬物」戦略に関する(Lazarova et al.,「Synthesis and Biological Evaluation of Novel Cyclosporin A Analogues:Potential Soft Drugs for the Treatment of Autoimmune Diseases,」Journal of Medicinal Chemistry, 46:674-676 (2003);Little et al.,「Soft Drugs Based on Hydrocortisone:The Inactive Metabolite Approach and Its Application to Steroidal Anti-inflammatory Agents,」Pharm. Res., 16:961-967 (1999)、これらその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。C=N結合を組み込むことにより、式VIIIのα,β-不飽和オキシム(C=N-OR)およびヒドラゾン(C=N-NR2)を調製する。本発明の活性α,β-不飽和オキシム(C=N-OR)およびヒドラゾン(C=N-NR2)は生理的条件下で加水分解を受けて不活化されうる。したがって、式VIIIの新規シクロスポリン類似体のC=N部分はソフト薬物の加水分解による半減期を制御する単純な手段を提供し、したがって系の曝露および毒性を最小にとどめることができる。スキーム7に示すとおり、式IVのα,β-不飽和アルデヒドをヒドロキシルアミンまたはアルキルオキシアミン(RONH2)およびヒドラジン(R2NNH2)で処理して、それぞれ対応する式VIIIのα,β-不飽和オキシム(C=N-OR)およびヒドラゾン(C=N-NR2)を得る。
スキーム7

【0038】
本発明において開示する化合物は、免疫抑制剤として特に有用である。これらの化合物の投与は、臓器移植患者の免疫応答を抑制し、したがって、同種移植片拒絶を予防する。本発明の化合物はシクロスポリンAと類似、またはそれよりも強力な免疫抑制活性を有する。例えば、図1に示すとおり、実施例9および11に開示する新規シクロスポリン類似体化合物はシクロスポリンAに比べ、コンカナバリンA刺激脾細胞アッセイにおいて免疫抑制の高い効力を有している。表1は、本出願において開示するいくつかの新規シクロスポリン類似体化合物の免疫抑制活性を示す。(表1の三番目のカラムは、比較のためにシクロスポリンA陽性対照の値を含む。)
【0039】
【表1】

【0040】
本発明において開示する化合物は、喘息、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、および潰瘍性大腸炎などはほんの一例であるが、これらの自己免疫および慢性炎症性疾患の処置においても有用性を有する。
【0041】
加えて、本発明において開示する化合物は、眼アレルギーおよびドライアイの処置のためにも有用である。Allerganは現在、眼の炎症のために涙液産生が抑制されていると推定される患者の乾性角結膜炎または慢性眼球乾燥症候群処置のための、Restasis(商標)と呼ばれるシクロスポリンAの局所製剤(シクロスポリン眼科用懸濁剤)を市販している。Restasis(商標)の正確なメカニズムは不明であるが、抗炎症効果を有する免疫調節剤として作用すると考えられる(「Annual Update 2003:Ophthalmic Drugs」Drugs of the Future, 28(3):287-307 (2003);Clark et al.,「Ophthalmic Drug Discovery,」Nature Reviews in Drug Discovery, 2:448-459 (2003)、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0042】
前述の疾患の処置のために、本発明の化合物の治療上有効な用量を、経口、局所、非経口、吸入噴霧、または直腸内に、通常の非毒性の薬学的に許容される担体、補助剤、および媒体を含む用量単位製剤で投与してもよい。本明細書において用いられる非経口なる用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射、または注入技術を含む。
【0043】
活性成分を含む薬学的組成物は、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁剤、分散性散剤もしくは顆粒剤、乳剤、硬もしくは軟カプセル剤、またはシロップもしくはエリキシル剤としての経口使用に適した剤形であってもよい。本発明の薬学的組成物は、一つまたは複数の薬学的に許容される担体と共に製剤された活性成分を含む。本明細書において用いられる「薬学的に許容される担体」なる用語は、任意の型の非毒性、不活性の固体、半固体または液体充填剤、希釈剤、カプセル化材料、または製剤補助剤を意味する。薬学的に許容される担体のいくつかの例は、ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖;トウモロコシデンプンまたはバレイショデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオ脂および坐剤ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱原なしの水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの非毒性、適合性滑沢剤;ならびに着色剤、放出剤、甘味料、ならびに着香および芳香剤である。p-ヒドロキシ安息香酸エチルまたはn-プロピルなどの保存剤および抗酸化剤も、薬学的組成物に含むことができる。
【0044】
本発明において開示する化合物の局所または経皮投与用の剤形には、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、硬膏剤、パップ剤、散剤、液剤、噴霧剤、吸入剤、またはパッチが含まれる。必要性に応じて、活性成分を無菌条件下で薬学的に許容される担体および任意の必要な保存剤または緩衝剤と混合する。軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、本発明の活性成分に加えて、動物および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはその混合物などの賦形剤を含んでもよい。
【0045】
鼻内投与のために、本発明において開示する化合物を、適宜、液体または粉末剤形で鼻内アプリケーターから投与することができる。眼への使用に適した剤形には、当技術分野において公知のとおり、ローション、チンキ剤、ゲル、軟膏および眼用インサートが含まれる。直腸内投与(結腸の局所療法)のために、本発明の化合物を坐剤または浣腸剤形、特に例えば植物油または保持浣腸として用いるための油系中の溶液で投与してもよい。
【0046】
本発明において開示する化合物は、ネブライザー剤形または乾燥粉末のいずれかで、吸入経路により肺に送達してもよい。喘息および他の気流閉塞疾患ならびに/または慢性副鼻腔炎の処置における、吸入経路の全身経路を上回る利点は、患者を非常に少量の薬物に曝露し、化合物を作用部位に直接送達することである。
【0047】
本発明において同定される疾患の処置に用いる、本発明の化合物の用量は、処置部位、処置する特定の状態、状態の重症度、処置する対象(体重、年齢、全般的健康、性別、および他の因子において変動しうる)、ならびに所望の効果に応じて変動することになる。
【0048】
本発明において同定される状態または疾患の処置のために、1日あたり体重1kgにつき約0.05mgから約50mgの範囲の用量レベルが有用である。これは、投与する本発明に開示する化合物の量が1日あたり患者一人につき2.5mgから約2.5gの範囲となることを意味する。
【0049】
単回用量剤形を製造するために薬学的担体材料と混合しうる活性成分の量は、処置する宿主および特定の投与様式に応じて変動することになる。例えば、ヒトへの経口投与が意図される製剤は、全組成物の約5から95パーセントまで変動しうる、適当かつ好都合な量の担体材料と混合した、2.5mgから2.5gの本発明の活性化合物を含みうる。用量単位剤形は一般には約5mgから約500mgの本発明の活性化合物を含むことになる。局所製剤用の用量は一般には経口製剤に要する用量よりも少ない(10分の1から100分の1)。
【0050】
実施例
以下の実施例は本発明の態様を例示するために提供するが、いかなる様式でもその範囲を限定する意図はない。
【0051】
実施例1−シクロスポリン酢酸エステルの調製
塩化メチレン(40mL)中のシクロスポリンA(5.0g、4.16mmol)、無水酢酸(7.80mL、83.2mmol)、およびDMAP(760mg、6.2mmol)の溶液をN2雰囲気下、室温で終夜撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム溶液(200mL)を溶液に加え、さらに2時間撹拌した。混合物をエーテルで抽出し、1N HClで洗浄し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮して、シクロスポリン酢酸エステル(4.92g、95%)を白色固体で得た。

【0052】
実施例2−アセチルシクロスポリンアルデヒドの調製
塩化メチレン(70mL)中の実施例1からのシクロスポリン酢酸エステル(3.0g、2.4mmol)の溶液にオゾンを-78℃で青色が生じるまで通気した。混合物を窒素で数分間脱気し、硫化ジメチル(3mL)を-78℃で加えた。反応混合物を室温まで加温し、3時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮し、残渣を酢酸エチル(300mL)に溶解し、水(2×70mL)および食塩水(70mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮して、アセチルシクロスポリンアルデヒド(2.79g、94%)を白色固体で得た。粗生成物をそれ以上精製せずに次の段階に持ち越した:

【0053】
実施例3−アセチルシクロスポリン塩化ビニルの調製
無水CrCl2(100mg、0.81mmol)をTHF(3mL)にアルゴン雰囲気下で懸濁し、次いでTHF(1mL)中の実施例2からのアセチルシクロスポリンアルデヒド(100mg、0.081mmol)およびCHCl3(29mg、0.243mmol)の溶液を加えた。混合物をアルゴン雰囲気下、40℃で64時間撹拌した。室温まで冷却後、溶媒を減圧下で除去し、残渣を半調製用HPLCで精製して、所望のアセチルシクロスポリン塩化ビニル(25mg、24%)を白色固体で得た。

【0054】
実施例4−シクロスポリン塩化ビニルの調製
実施例3からのアセチル保護シクロスポリン塩化ビニル(20mg、0.016mmol)をメタノール(4mL)に溶解し、次いでK2CO3(100mg、0.725mmol)を加えた。混合物を室温で終夜撹拌し、次いでEtOAc(100mL)で希釈し、食塩水(3×10mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリン塩化ビニル(13mg、67%)を白色固体で得た。

【0055】
実施例5−アセチルシクロスポリンヨウ化ビニルの調製
THF(25mL)中の塩化クロミウム(II)(1.0g、8.2mmol)の氷冷懸濁液に、THF(25mL)中の実施例2からのアセチルシクロスポリンアルデヒド(0.50g、0.41mmol)およびヨードホルム(1.29g、3.28mmol)の溶液を加えた。0℃で7時間後、反応混合物を氷水(50mL)中に注いだ。水層を酢酸エチル(3×60mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥して、濃縮した。この材料を半調製用HPLCで精製し、アセチルシクロスポリンヨウ化ビニル(290mg、52%)を白色固体で得た。

【0056】
実施例6−シクロスポリンヨウ化ビニルの調製
メタノール(4mL)中の実施例5からのアセチルシクロスポリンヨウ化ビニル(42mg、0.030mmol)の溶液を撹拌しながら、これに炭酸カリウム(104mg、0.750mmol)を室温で加えた。室温で12時間後、メタノールを蒸発させた。水(20mL)を加え、混合物を酢酸エチル(3×70mL)で抽出した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。この材料を半調製用HPLCで精製し、シクロスポリンヨウ化ビニル(30mg、78%)を白色固体で得た。

【0057】
実施例7−シス-およびトランス-重水素化シクロスポリンヨウ化ビニルの酢酸エステルの調製
無水THF(10mL)中の実施例2からのアセチルシクロスポリンアルデヒド(500mg、0.40mmol)およびヨードホルム-d(1.35g、4.0mmol)の混合物を-78℃に冷却した。冷却後、塩化クロミウム(1.0g、8.0mmol)を反応混合物に急速に加えた。混合物を0℃まで加温し、N2雰囲気下で5時間撹拌した。混合物を氷水(300mL)中に注ぎ、酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物を半調製用HPLCで精製し、トランス-重水素化シクロスポリンヨウ化ビニルの酢酸エステル(220mg、40%)を淡褐色固体で得:

シス-重水素化シクロスポリンヨウ化ビニルの酢酸エステル(40mg、7%)を淡褐色固体で得た。

【0058】
実施例8−シス-重水素化シクロスポリンヨウ化ビニルの調製
メタノール(2mL)中の実施例7からのシス-重水素化シクロスポリンヨウ化ビニルの酢酸エステル(40mg、0.029mmol)の溶液を室温で撹拌した。反応混合物を炭酸カリウム(50mg、0.36mmol)で処理し、N2雰囲気下で終夜撹拌した。混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物を半調製用HPLCで精製し、シス-重水素化シクロスポリンヨウ化ビニル(20mg、53%)を白色固体で得た。

【0059】
実施例9−トランス-重水素化シクロスポリンヨウ化ビニルの調製
メタノール(2mL)中の実施例7からのトランス-重水素化シクロスポリンヨウ化ビニルの酢酸エステル(50mg、0.037mmol)の溶液を室温で撹拌した。反応混合物を炭酸カリウム(60mg、0.43mmol)で処理し、N2雰囲気下で終夜撹拌した。混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物を半調製用HPLCで精製し、トランス-重水素化シクロスポリンヨウ化ビニル(29mg、60%)を白色固体で得た。

【0060】
実施例10−シス-およびトランス-重水素化シクロスポリン塩化ビニルの酢酸エステルの調製
無水THF(5mL)中の実施例2からのアセチルシクロスポリンアルデヒド(500mg、0.40mmol)およびクロロホルム-d(0.32mL、4.0mmol)の混合物を-78℃に冷却した。冷却後、塩化クロミウム(1.0g、8.0mmol)を反応混合物に急速に加えた。混合物を0℃まで加温し、N2雰囲気下で4時間撹拌した。混合物を氷水(300mL)中に注ぎ、酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物を半調製用HPLCで精製し、トランス-重水素化シクロスポリン塩化ビニルの酢酸エステル(136mg、27%)を淡褐色固体で得:

シス-重水素化シクロスポリン塩化ビニルの酢酸エステル(32mg、6%)を淡褐色固体で得た。

【0061】
実施例11−トランス-重水素化シクロスポリン塩化ビニルの調製
メタノール(2mL)中の実施例10からのトランス-重水素化シクロスポリン塩化ビニルの酢酸エステル(30mg、0.024mmol)の溶液を室温で撹拌した。反応混合物を炭酸カリウム(35mg、0.25mmol)で処理し、N2雰囲気下で終夜撹拌した。混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物を半調製用HPLCで精製し、トランス-重水素化シクロスポリン塩化ビニル(17mg、60%)を白色固体で得た。

【0062】
実施例12−シス-重水素化シクロスポリン塩化ビニルの調製
メタノール(2mL)中の実施例10からのシス-重水素化シクロスポリン塩化ビニルの酢酸エステル(32mg、0.025mmol)の溶液を室温で撹拌した。反応混合物を炭酸カリウム(38mg、0.27mmol)で処理し、N2雰囲気下で終夜撹拌した。混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物を半調製用HPLCで精製し、シス-重水素化シクロスポリン塩化ビニル(17mg、55%)を白色固体で得た。

【0063】
実施例13−シス-およびトランス-シクロスポリン塩化ビニルの酢酸エステルの調製
NaHMDS(THF中1.0M、0.4mL、0.4mmol)を窒素雰囲気下、-78℃で塩化(クロロメチル)トリフェニルホスホニウム(140mg、0.4mmol)およびTHF(4mL)の混合物に加え、混合物を-78℃で1時間撹拌した後、THF(3mL)中の実施例2からのアセチルシクロスポリンアルデヒド(100mg、0.08mmol)を加えた。得られた混合物を-78℃で2時間撹拌し、飽和NH4Cl水溶液(4mL)で反応停止し、エーテル(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。その後、溶媒を減圧下で除去し、残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリン塩化ビニルのシス異性体の酢酸エステル(13mg、12%)を白色固体で得:

シクロスポリン塩化ビニルのトランス異性体の酢酸エステル(10mg、9.7%)を白色固体で得た。

【0064】
実施例14−シクロスポリン塩化ビニルのシス異性体の調製
実施例13からのシクロスポリン塩化ビニルのシス異性体の酢酸エステル(13mg、0.01mmol)をメタノール(3mL)に溶解し、次いでK2CO3(50mg、0.36mmol)を加えた。混合物を室温で終夜撹拌し、EtOAc(100mL)で希釈し、食塩水(3×10mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリン塩化物のシス異性体(9mg、71%)を白色固体で得た。

【0065】
実施例15−シス-シクロスポリンヨウ化ビニルの酢酸エステルの調製
無水THF(18mL)中のヨウ化(ヨードメチル)トリフェニルホスホニウム(1.3g、2.4mmol)の懸濁液を窒素雰囲気下で激しく撹拌し、これにナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(THF中1M、2.4mL、2.4mmol)を加えた。室温で10分後、混合物を0℃に冷却し、無水THF(10mL)中の実施例2からのアセチルシクロスポリンアルデヒド(300mg、0.240mmol)を滴下した。0℃で10分後、塩化アンモニウムの飽和溶液(10mL)で反応停止し、室温まで加温した。得られた固体を珪藻土のプラグを通してろ過し、酢酸エチル(200mL)で洗浄した。有機層を亜硫酸水素ナトリウムの水溶液(20%、200mL)で洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、粗生成物(540mg)を得た。この材料を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンヨウ化ビニルのシス異性体の酢酸エステル(150mg、46%)を淡褐色油状物で得た。

【0066】
実施例16−シス-シクロスポリンヨウ化ビニルの調製
メタノール(8mL)中の実施例15からのシクロスポリンヨウ化ビニルのシス異性体の酢酸エステル(70mg、0.052mmol)の溶液を撹拌しながら、これに炭酸カリウム(180mg、1.30mmol)を室温で加えた。室温で12時間後、メタノールを蒸発させた。水(20mL)を加え、混合物を酢酸エチル(3×70mL)で抽出した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、粗生成物(47mg)を得た。この材料を半調製用HPLCで精製し、シス-シクロスポリンヨウ化ビニル(19mg、28%)を白色固体で得た。

【0067】
実施例17−シス-およびトランス-シクロスポリン臭化ビニルの酢酸エステルの調製
NaHMDS(THF中1.0M、0.8mL、0.8mmol)を窒素雰囲気下、-78℃で臭化(ブロモメチル)トリフェニルホスホニウム(348mg、0.8mmol)およびTHF(8mL)の混合物に加え、混合物を-78℃で1時間撹拌した後、THF(4mL)中の実施例2からのアセチルシクロスポリンアルデヒド(200mg、0.16mmol)を加えた。得られた混合物を-78℃で2時間撹拌し、飽和NH4Cl水溶液(8mL)で反応停止し、エーテル(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。その後、溶媒を減圧下で除去し、残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリン臭化ビニルのトランス異性体の酢酸エステル(4mg、1.9%)を白色固体で得:

シクロスポリン臭化ビニルのシス異性体の酢酸エステル(13mg、6.1%)を白色固体で得た。

【0068】
実施例18−シス-シクロスポリン臭化ビニルの調製
実施例17からのシクロスポリン臭化ビニルのシス異性体の酢酸エステル(13mg、0.01mmol)をメタノール(3mL)に溶解し、次いでK2CO3(50mg、0.36mmol)を加えた。混合物を室温で終夜撹拌し、EtOAc(100mL)で希釈し、食塩水(3×10mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を半調製用HPLCで精製して、シス-シクロスポリン臭化ビニル(5.1mg、40%)を白色固体で得た。

【0069】
実施例19−トランス-シクロスポリン臭化ビニルの調製
実施例17からのシクロスポリン臭化ビニルのトランス異性体の酢酸エステル(7mg、0.005mmol)をメタノール(3mL)に溶解し、次いでK2CO3(50mg、0.36mmol)を加えた。混合物を室温で終夜撹拌し、EtOAc(100mL)で希釈し、食塩水(3×10mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を半調製用HPLCで精製して、トランス-シクロスポリン臭化ビニル(4.0mg、55%)を白色固体で得た。

【0070】
実施例20−シクロスポリン二塩化ビニルの酢酸エステルの調製
アセトニトリル(2mL)中の実施例2からのアセチルシクロスポリンアルデヒド(150mg、0.120mmol)およびトリフェニルホスフィン(630mg、2.40mmol)の混合物に、四塩化炭素(0.12mL、1.2mmol)を0℃で一度に加えた。混合物を室温まで加温した。室温で2時間後、水(5mL)を溶液に加え、次いで混合物を酢酸エチル(100mL)で抽出した。有機層を食塩水(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。粗生成物を半調製用HPLCで精製し、シクロスポリン二塩化ビニルの酢酸エステル(50mg、32%)を白色固体で得た。

【0071】
実施例21−シクロスポリン二塩化ビニルの調製
メタノール(4mL)中の実施例20からのシクロスポリン二塩化ビニルの酢酸エステル(45mg、0.040mmol)の溶液を撹拌しながら、これに炭酸カリウム(121mg、0.870mmol)を室温で加えた。室温で12時間後、メタノールを蒸発させた。水(20mL)を加え、混合物を酢酸エチル(3×70mL)で抽出した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。この材料を半調製用HPLCで精製し、シクロスポリン二塩化ビニル(25mg、57%)をオフホワイト固体で得た。

【0072】
実施例22−シス-およびトランス-シクロスポリン塩化フェニルビニルの酢酸エステルの調製
THF(2mL)中のベンジルホスホン酸ジエチル(0.50mL、2.4mmol)の溶液に、-78℃でn-ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、1.1mL、2.6mmol)を滴下した。-78℃で15分後、THF(1mL)中の四塩化炭素(0.23mL、2.4mmol)の溶液を加えた。-78℃で15分後、THF(1mL)中の実施例2からのアセチルシクロスポリンアルデヒド(150mg、0.120mmol)を加えた。-78℃で15分後、反応混合物を1時間かけて室温まで加温した。水(2mL)で反応停止し、酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥して、濃縮した。粗生成物を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリン塩化フェニルビニルの酢酸エステル(118mg、73%)をシスおよびトランス-異性体の混合物として淡褐色固体で得た。

【0073】
実施例23−シス-およびトランス-シクロスポリン塩化フェニルビニルの調製
メタノール(5mL)中の実施例22からのシクロスポリン塩化フェニルビニルの酢酸エステル(59mg、0.040mmol)の溶液を撹拌しながら、これに炭酸カリウム(149mg、1.07mmol)を室温で加えた。室温で12時間後、メタノールを蒸発させた。水(20mL)を加え、混合物を酢酸エチル(3×70mL)で抽出した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。この材料を半調製用HPLCで精製し、シクロスポリン塩化フェニルビニル(35mg、63%)をシスおよびトランス-異性体の混合物として白色固体で得た。

【0074】
実施例24−シクロスポリンα,β-不飽和アルデヒドの酢酸エステルの調製
実施例1からのアセチル保護シクロスポリンA(100mg、0.08mmol)、アクロレインジメチルアセタール(0.018mL、0.16mmol)、グラブス触媒第二世代(25mg、0.029mmol)および塩化メチレン(1mL)の混合物を密封チューブ内、60℃で12時間加熱した。触媒(25mg)およびアクロレインジメチルアセタール(0.018mL)を補充し、混合物を同じ温度でさらに12時間撹拌し、室温まで冷却し、減圧濃縮した。残渣を半調製用HPLCで精製し、シクロスポリンα,β-不飽和アルデヒドの酢酸エステル(65mg、64%)をオフホワイト固体で得た。

【0075】
実施例25−シクロスポリン塩化ビニルの酢酸エステルの調製
THF(3mL)中の実施例24からのシクロスポリンα,β-不飽和アルデヒドの酢酸エステル(80mg、0.64mmol)およびクロロホルム(0.05mL、0.064mmol)の溶液に室温で塩化クロミウム(II)(235mg、1.92mmol)を加えた。混合物を50℃で4時間撹拌し、次いで室温まで冷却し、水で反応停止し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリン塩化ビニルの酢酸エステル(25mg、30%)を白色固体で得た。

【0076】
実施例26−シクロスポリン塩化ビニルの調製
実施例25からのシクロスポリン塩化ビニルの酢酸エステル(25mg、0.019mmol)、炭酸カリウム(50mg、0.36mmol)およびメタノール(1mL)の混合物を室温で終夜撹拌し、次いで酢酸エチルで希釈し、水および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリン塩化ビニル(15mg、61%)を白色固体で得た。

【0077】
実施例27−シクロスポリン臭化ビニルの酢酸エステルの調製
THF(3mL)中の実施例24からのシクロスポリンα,β-不飽和アルデヒドの酢酸エステル(80mg、0.064mmol)およびブロモホルム(0.084mL、0.96mmol)の溶液に室温で塩化クロミウム(II)(235mg、1.92mmol)を加えた。混合物を窒素雰囲気下で4時間撹拌し、次いで水で反応停止し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリン臭化ビニルの酢酸エステル(13mg、15%)を白色固体で得た。

【0078】
実施例28−シクロスポリン臭化ビニルの調製
実施例27からのシクロスポリン臭化ビニルの酢酸エステル(13mg、0.01mmol)、炭酸カリウム(30mg、0.22mmol)およびメタノール(1mL)の混合物を室温で終夜撹拌し、次いで酢酸エチルで希釈し、水および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリン臭化ビニル(4mg、31%)を白色固体で得た。

【0079】
実施例29−シクロスポリンヨウ化ビニルの酢酸エステルの調製
THF(5mL)中の実施例24からのシクロスポリンα,β-不飽和アルデヒドの酢酸エステル(174mg、0.138mmol)およびヨードホルム(540mg、1.38mmol)の溶液に-40℃で塩化クロミウム(II)(340mg、2.76mmol)を加えた。混合物を0℃まで加温し、窒素雰囲気下で1時間撹拌した。混合物を氷水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンヨウ化ビニルの酢酸エステル(125mg、65%)を淡黄色固体で得た。

【0080】
実施例30−シクロスポリンヨウ化ビニルの調製
実施例29からのシクロスポリンヨウ化ビニルの酢酸エステル(27mg、0.02mmol)、炭酸カリウム(40mg、0.29mmol)およびメタノール(1mL)の混合物を室温で4時間撹拌し、次いで酢酸エチルで希釈し、水および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンヨウ化ビニル(14mg、54%)を白色固体で得た。

【0081】
実施例31−シクロスポリンフッ化物の調製
25mL丸底フラスコにシクロスポリンA(90mg、0.072mmol)、α,α,α-トリフルオロトルエン(5mL)、3,3,3-トリフルオロプロペン(200mg、2.08mmol)、およびトリシクロヘキシルホスフィン[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-4,5-ジヒドロイミダゾル-2-イル-エン][ベンジリジン]二塩化ルテニウム(IV)(15mg、0.018mmol)を加えた。3,3,3-トリフルオロプロペンを充填した風船により気圧を維持した。混合物を50℃で72時間撹拌し、その間24時間毎に3,3,3-トリフルオロプロペンを補充した。室温まで冷却後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、EtOAc/CH3CN 6:1)で予備精製して、淡褐色固体(40mg)を得た。得られた固体を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンフッ化物(12mg、12.7%)を白色固体で得た。

【0082】
実施例32−シクロスポリンフッ化物の調製
25mL丸底フラスコにシクロスポリンA(100mg、0.08mmol)、ジクロロメタン(5mL)、1H,1H,2H-ヘプタフルオロペンタ-1-エン(200mg、1.02mmol)、およびトリシクロヘキシルホスフィン[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-4,5-ジヒドロイミダゾル-2-イル-エン][ベンジリジン]二塩化ルテニウム(IV)(16mg、0.019mmol)を加えた。混合物を50℃で48時間還流した。室温まで冷却後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、EtOAc/CH3CN 6:1)で予備精製して、淡褐色固体(40mg)を得た。得られた固体を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンフッ化物(12mg、10.6%)を白色固体で得た。

【0083】
実施例33−シクロスポリンフッ化物の調製
25mL丸底フラスコにシクロスポリンA(100mg、0.08mmol)、ジクロロメタン(4mL)、1H,1H,2H-過フルオロ-1-ヘキセン(200mg、1.37mmol)、およびトリシクロヘキシルホスフィン[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-4,5-ジヒドロイミダゾル-2-イル-エン][ベンジリジン]二塩化ルテニウム(IV)(15mg、0.018mmol)を加えた。混合物を50℃で20時間還流した。室温まで冷却後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、EtOAc/CH3CN 6:1)で予備精製して、淡褐色固体(90mg)を得た。得られた固体を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンフッ化物(22mg、18.8%)を白色固体で得た。

【0084】
実施例34−シクロスポリンフッ化アリルの調製
25mL丸底フラスコにシクロスポリンA(100mg、0.083mmol)、フッ化アリル(50mg、0.83mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-4,5-ジヒドロイミダゾル-2-イル-エン][ベンジリジン]二塩化ルテニウム(IV)(34mg、0.04mmol)およびCH2Cl2(5mL)を加えた。混合物を窒素雰囲気下で終夜還流した。室温まで冷却後、溶媒を減圧下で除去した。残渣をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、ヘキサン/アセトン 1:1)で予備精製し、次いで半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンフッ化アリル(52mg、51.2%)を白色固体で得た。

【0085】
実施例35−シクロスポリン塩化アリルの酢酸エステルの調製
アセチル保護シクロスポリンA(100mg、0.08mmol)をCH2Cl2(5mL)に溶解し、次いで塩化アリル(61mg、0.8mmol)およびグラブス触媒第3世代(25mg、0.04mmol)を加えた。混合物をN2雰囲気下で48時間還流した。その後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルカラム(EtOAc)で精製して、シクロスポリン塩化アリルの酢酸エステル(97mg、収率94%)を淡黄色固体で得た。

【0086】
実施例36−シクロスポリン塩化アリルの調製
実施例35からのシクロスポリン塩化アリルの酢酸エステル(30mg、0.023mmol)をメタノール(2mL)に溶解し、次いでK2CO3(190mg、1.127mmol)を加えた。混合物を室温で1.5時間撹拌し、次いでEtOAc(100mL)で希釈し、水(10mL)、食塩水(10mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、溶媒を減圧下で除去し、残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリン塩化アリル(15mg、51%)を白色固体で得た。

【0087】
実施例37−シクロスポリンアミンの調製
実施例35からのシクロスポリン塩化アリルの酢酸エステル(35mg、0.027mmol)をTHF中のジメチルアミン(1.0M、6.0mL、6.0mmol)と混合した。混合物を窒素雰囲気下、室温で終夜撹拌した。その後、溶媒を減圧下で除去して、粗製アセチルシクロスポリンアミン(40mg)を得た。粗生成物(40mg、0.03mmol)をメタノール(3mL)に溶解し、次いでK2CO3(215mg、1.55mmol)を加えた。混合物を室温で4時間撹拌し、次いでEtOAc(100mL)で希釈し、食塩水(3×10mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンアミン(10.1mg、26%)を白色固体で得た。

【0088】
実施例38−シクロスポリンピロリジンの調製
実施例35からのシクロスポリン塩化アリルの酢酸エステル(13mg、0.01mmol)およびピロリジン(7mg、0.1mmol)をCH2Cl2(2mL)に溶解し、混合物を窒素雰囲気下、室温で48時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去して、粗製アセチルピロリジン化合物(13mg)を得た。粗生成物(13mg、0.01mmol)をメタノール(2mL)に溶解し、次いでK2CO3(50mg、0.36mmol)を加えた。混合物を室温で48時間撹拌し、次いでEtOAc(100mL)で希釈し、食塩水(3×10mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンピロリジン(3mg、23%)を白色固体で得た。

【0089】
実施例39−シクロスポリンアセトアミドの調製
実施例35からのシクロスポリン塩化アリルの酢酸エステル(30mg、0.023mmol)をTHF中のメチルアミン(2.0M、4.0mL、8.0mmol)と混合した。混合物を窒素雰囲気下、室温で終夜撹拌した。その後、溶媒を減圧下で除去して、粗製アセチルシクロスポリンメチルアミン(30mg)を得た。メチルアミン(30mg、0.024mmol)をCH2Cl2(4mL)に溶解し、次いでAc2O(48mg、0.47mmol)、ピリジン(37mg、0.47mmol)およびDMAP(3mg、0.024mmol)を加えた。混合物を窒素雰囲気下、室温で終夜撹拌し、次いでEtOAc(100mL)で希釈し、食塩水(3×10mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンアセトアミド(12mg、39%)を白色固体で得た。

【0090】
実施例40−シクロスポリンアミドの調製
実施例39からのシクロスポリンアミド(12mg、0.009mmol)をメタノール(2mL)に溶解し、次いでK2CO3(63mg、0.456mmol)を加えた。混合物を室温で4時間撹拌し、次いでEtOAc(100mL)で希釈し、食塩水(3×10mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンアミド(4.5mg、38%)を白色固体で得た。

【0091】
実施例41−シクロスポリンピペリジンの調製
塩化メチレン(3mL)中の実施例35からのシクロスポリン塩化アリルの酢酸エステル(50mg、0.04mmol)およびピペリジン(33mg、0.4mmol)の溶液をN2雰囲気下、室温で終夜撹拌した。混合物をエーテルで希釈し、1N HClで抽出した。水層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で中和し、酢酸エチルで抽出し、食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮して、粗製シクロスポリン酢酸エステル(12mg)をオフホワイト固体で得た。メタノール(1mL)中の粗製酢酸エステル(12mg、0.009mmol)および炭酸カリウム(13mg、0.099mmol)の溶液をN2雰囲気下、室温で終夜撹拌した。混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンピペリジン(8.3mg、17%)をオフホワイト固体で得た。

【0092】
実施例42−シクロスポリンモルホリンの調製
塩化メチレン(3mL)中の実施例35からのシクロスポリン塩化アリルの酢酸エステル(75mg、0.058mmol)およびモルホリン(51mg、0.58mmol)の溶液をN2雰囲気下、室温で終夜撹拌した。混合物を減圧濃縮した。残渣および炭酸カリウム(114mg、0.83mmol)をメタノール(3mL)に溶解し、N2雰囲気下、室温で終夜撹拌した。混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンモルホリン(28.2mg、29%)を淡黄色固体で得た。

【0093】
実施例43−シクロスポリンチオモルホリンの調製
塩化メチレン(3mL)中の実施例35からのシクロスポリン塩化アリルの酢酸エステル(60mg、0.047mmol)およびチオモルホリン(48mg、0.47mmol)の溶液をN2雰囲気下、室温で終夜撹拌した。混合物を減圧濃縮した。残渣および炭酸カリウム(102mg、0.740mmol)をメタノール(3mL)に溶解し、N2雰囲気下、室温で終夜撹拌した。混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンチオモルホリン(28.8mg、33%)を白色固体で得た。

【0094】
実施例44−シクロスポリンメチルピペラジンの調製
塩化メチレン(3mL)中の実施例35からのシクロスポリン塩化アリルの酢酸エステル(75mg、0.058mmol)およびメチルピペラジン(58mg、0.58mmol)の溶液をN2雰囲気下、室温で終夜撹拌した。混合物を減圧濃縮した。残渣および炭酸カリウム(102mg、0.740mmol)をメタノール(3mL)に溶解し、N2雰囲気下、室温で終夜撹拌した。混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンメチルピペラジン(36.2mg、42%)をオフホワイト固体で得た。

【0095】
実施例45−シクロスポリンエン-エン-インの酢酸エステルの調製
THF(1mL)中の臭化1-プロピニルマグネシウム(THF中0.5M、1.24mL、0.62mmol)の溶液に塩化亜鉛(エーテル中1.0M、0.62mL、0.62mmol)を0℃で加え、混合物を窒素雰囲気下で10分間撹拌した。氷浴を取り除き、混合物を室温まで加温した。THF(2mL)中の実施例29からのシクロスポリンヨウ化ビニルの酢酸エステル(85mg、0.062mmol)を加えた後、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(II)(4.3mg、0.0062mmol)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応停止し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンエン-エン-インの酢酸エステル(17mg、22%)を黄色油状物で得た。

【0096】
実施例46−シクロスポリンエン-エン-インの調製
実施例45からのシクロスポリンエン-エン-インの酢酸エステル(17mg、0.013mmol)、炭酸カリウム(30mg、0.22mmol)およびメタノール(1mL)の混合物を室温で終夜撹拌し、次いで酢酸エチルで希釈し、水および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンエン-エン-イン(6mg、36%)を白色固体で得た。

【0097】
実施例47−シクロスポリンエン-エン-インの酢酸エステルの調製
実施例29からのシクロスポリンヨウ化ビニルの酢酸エステル(250mg、0.180mmol)、3-ブチン-2-オール(0.13mL、1.8mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(II)(13mg、0.018mmol)、ヨウ化銅(I)(7mg、0.036mmol)およびトリエチルアミン(2mL)の混合物を窒素雰囲気下、室温で4時間撹拌した。混合物を酢酸エチルで希釈し、シリカゲルパッドを通してろ過し、酢酸エチルで洗浄した。ろ液を減圧濃縮し、残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンエン-エン-インの酢酸エステル(166mg、70%)を白色固体で得た。

【0098】
実施例48−シクロスポリンエン-エン-インの調製
実施例47からのシクロスポリンエン-エン-インの酢酸エステル(11mg、0.008mmol)、炭酸カリウム(30mg、0.22mmol)およびメタノール(1mL)の混合物を室温で終夜撹拌し、次いで酢酸エチルで希釈し、水および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンエン-エン-イン(5mg、45%)を白色固体で得た。

【0099】
実施例49−シクロスポリンエン-エン-イン-エンの酢酸エステルの調製
実施例47からの粗製シクロスポリンエン-エン-インの酢酸エステル(136mg、0.10mmol)、バージェス試薬(119mg、0.50mmol)およびベンゼン(2mL)の混合物を70℃で5時間加熱し、次いで室温まで冷却し、エーテルで希釈し、水および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を半調製用HPLCで精製して、所望のシクロスポリンエン-エン-イン-エンの酢酸エステル(10mg、7%)を白色固体で得た。

【0100】
実施例50−シクロスポリンエン-エン-イン-エンの調製
実施例49からのシクロスポリンエン-エン-イン-エンの酢酸エステル(10mg、0.008mmol)、炭酸カリウム(30mg、0.22mmol)およびメタノール(1mL)の混合物を室温で8時間撹拌し、次いで酢酸エチルで希釈し、水および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンエン-エン-イン-エン(3mg、30%)を白色固体で得た。

【0101】
実施例51−シクロスポリンエン-エン-インの酢酸エステルの調製
実施例29からのシクロスポリンヨウ化ビニルの酢酸エステル(56mg、0.041mmol)、(トリメチルシリル)アセチレン(0.056mL、0.41mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(II)(5.7mg、0.0082mmol)、ヨウ化銅(I)(3.1mg、0.016mmol)およびトリエチルアミン(1mL)の混合物を窒素雰囲気下、室温で1時間撹拌し、次いで酢酸エチルで希釈し、食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンエン-エン-インの酢酸エステル(34mg、64%)を淡黄色固体で得た。

【0102】
実施例52−シクロスポリンエン-エン-インの調製
実施例51からのシクロスポリンエン-エン-インの酢酸エステル(34mg、0.025mmol)、炭酸カリウム(30mg、0.22mmol)およびメタノール(1mL)の混合物を室温で終夜撹拌し、次いで酢酸エチルで希釈し、水および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンエン-エン-イン(15mg、48%)を白色固体で得た。

【0103】
実施例53−シス-シクロスポリンヨウ化ビニルの酢酸エステルの調製
ヨウ化エチルトリフェニルホスホニウム(203mg、0.49mmol)をTHF(3mL)に溶解し、N2雰囲気下、室温で、n-BuLi(0.4mL、ヘキサン中2.5M、0.98mmol)処理した。反応混合物を-78℃に冷却し、THF(2mL)中のI2(109mg、0.43mmol)の溶液で処理した。混合物を5分間撹拌し、次いで5分間で-15℃まで加温した。次に、反応混合物をナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(0.4mL、THF中1M、0.41mmol)で処理し、さらに5分間撹拌した。実施例2からのアセチルシクロスポリンアルデヒド(500mg、0.4mmol)を反応混合物に加え、-15℃で10分間撹拌し、次いで室温まで加温した。反応混合物をNH4Clの飽和溶液に注ぎ、エーテルで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物を半調製用HPLCで精製して、シス-シクロスポリンヨウ化ビニルの酢酸エステル(13mg、2%)をオフホワイト固体で得た。

【0104】
実施例54−シス-シクロスポリンヨウ化ビニルの調製
メタノール(1mL)中の実施例53からのシス-シクロスポリンヨウ化ビニルの酢酸エステル(13mg、0.009mmol)の溶液を室温で撹拌した。反応混合物を炭酸カリウム(15mg、0.11mmol)で処理し、N2雰囲気下で終夜撹拌し続けた。混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物を半調製用HPLCで精製して、シス-シクロスポリンヨウ化ビニル(6mg、47%)を白色固体で得た。

【0105】
実施例55−シクロスポリンオキシムの酢酸エステルの調製
ピリジン(1mL)中の実施例24からのシクロスポリンα,β-不飽和アルデヒドの酢酸エステル(65mg、0.052mmol)の溶液に室温で塩酸メトキシアミン(4.3mg、0.052mmol)を加えた。混合物を窒素雰囲気下で1時間撹拌し、次いでエーテルで希釈し、0.2N HClおよび食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を半調製用HPLCで精製して、所望のシクロスポリンオキシムの酢酸エステル(31mg、47%)を二つの異性体の混合物として白色固体で得た。

【0106】
実施例56−シクロスポリンオキシムの調製
実施例55からのシクロスポリンオキシムの酢酸エステル(24mg、0.019mmol)、炭酸カリウム(30mg、0.22mmol)およびメタノール(1mL)の混合物を室温で終夜撹拌し、次いで酢酸エチルで希釈し、水および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を塩化メチレンに溶解し、マイクロフィリター(0.2μm)を通してろ過し、ろ液を濃縮し、減圧下で乾燥して、シクロスポリンオキシム(21mg、90%)を白色固体で得た。

【0107】
実施例57−シクロスポリンオキシムの酢酸エステルの調製
ピリジン(0.5mL)中の実施例24からのシクロスポリンα,β-不飽和アルデヒドの酢酸エステル(40mg、0.032mmol)の溶液に室温で塩酸O-エチルヒドロキシルアミン(3.1mg、0.032mmol)を加えた。混合物を窒素雰囲気下で1時間撹拌し、次いで酢酸エチルで希釈し、1N HClおよび食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を半調製用HPLCで精製して、所望のシクロスポリンオキシムの酢酸エステル(8mg、20%)を二つの異性体の混合物として白色固体で得た。

【0108】
実施例58−シクロスポリンオキシムの調製
実施例57からのシクロスポリンオキシムの酢酸エステル(8mg、0.006mmol)、炭酸カリウム(30mg、0.22mmol)およびメタノール(1mL)の混合物を室温で4時間撹拌し、次いで酢酸エチルで希釈し、水および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を塩化メチレンに溶解し、マイクロフィリター(0.2μm)を通してろ過し、ろ液を濃縮し、減圧下で乾燥して、シクロスポリンオキシム(7mg、88%)を白色固体で得た。

【0109】
実施例59−シクロスポリンオキシムの酢酸エステルの調製
ピリジン(0.5mL)中の実施例24からのシクロスポリンα,β-不飽和アルデヒドの酢酸エステル(40mg、0.032mmol)の溶液に室温で塩酸O-ベンジルヒドロキシルアミン(5.1mg、0.032mmol)を加えた。混合物を窒素雰囲気下で1時間撹拌し、次いで酢酸エチルで希釈し、1N HClおよび食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を半調製用HPLCで精製して、所望のシクロスポリンオキシムの酢酸エステル(7mg、16%)を二つの異性体の混合物として白色固体で得た。

【0110】
実施例60−シクロスポリンオキシムの調製
実施例59からのシクロスポリンオキシムの酢酸エステル(7mg、0.005mmol)、炭酸カリウム(30mg、0.22mmol)およびメタノール(1mL)の混合物を室温で4時間撹拌し、次いで酢酸エチルで希釈し、水および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を塩化メチレンに溶解し、マイクロフィリター(0.2μm)を通してろ過し、ろ液を濃縮し、減圧下で乾燥して、シクロスポリンオキシム(6mg、86%)を白色固体で得た。

【0111】
実施例61−シクロスポリンヒドラゾンの酢酸エステルの調製
メタノール(1mL)中の実施例24からのシクロスポリンα,β-不飽和アルデヒドの酢酸エステル(40mg、0.032mmol)の溶液に室温で1,1-ジメチルヒドラジン(2.4μL、0.032mmol)を加えた。混合物を窒素雰囲気下で2時間撹拌し、次いで酢酸エチルで希釈し、食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を半調製用HPLCで精製して、所望のシクロスポリンヒドラゾンの酢酸エステル(15mg、36%)を二つの異性体の混合物として白色固体で得た。

【0112】
実施例62−シクロスポリンヒドラゾンの調製
実施例61からのシクロスポリンヒドラゾンの酢酸エステル(15mg、0.011mmol)、炭酸カリウム(40mg、0.29mmol)およびメタノール(1mL)の混合物を室温で6時間撹拌し、次いで酢酸エチルで希釈し、水および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を塩化メチレンに溶解し、マイクロフィリター(0.2μm)を通してろ過し、ろ液を濃縮し、減圧下で乾燥して、シクロスポリンヒドラゾン(12mg、82%)を白色固体で得た。

【0113】
実施例63−シクロスポリンジオールの調製
THF(50mL)中のジイソプロピルアミン(2.6mL、18mmol)の溶液を-78℃で機械的に撹拌し、これにn-ブチルリチウム(6.6mL、ヘキサン中2.5M、17mmol)を滴下し、次いで混合物を0.5時間撹拌した。THF(8mL)中のシクロスポリンA(1.0g、0.83mmol)の溶液を加え、次いで混合物を-78℃で2時間撹拌した。パラホルムアルデヒド(8.0g)を170℃に加熱し、得られたホルムアルデヒドガスを、綿およびアルミホイルで包んだガラス管から反応混合物に2時間かけて導入した。-78℃でさらに1時間撹拌した後、反応混合物を水(10mL)で反応停止した。混合物を室温まで加温し、酢酸エチル(150mL)で希釈し、水(2×50mL)で洗浄した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。粗製材料を半調製用HPLCで精製し、シクロスポリンジオール(0.45g、44%)を白色固体で得た。

【0114】
実施例64−シクロスポリン二酢酸エステルの調製
塩化メチレン(5mL)中の実施例63からのシクロスポリンジオール(0.43g、0.35mmol)の溶液に、ピリジン(0.57mL、7.0mmol)と、続いて4-(ジメチルアミノ)ピリジン(86mg、0.70mmol)および無水酢酸(1.0mL、10.5mmol)を加えた。反応混合物を室温で2日間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(150mL)で希釈し、炭酸水素ナトリウムの飽和溶液(30mL)、1N HCl溶液(30mL)および食塩水(30mL)で洗浄した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。粗製材料を半調製用HPLCで精製し、シクロスポリン二酢酸エステル(0.23g、50%)を白色固体で得た。

【0115】
実施例65−シクロスポリンアルデヒドの調製
塩化メチレン(10mL)中の実施例64からのシクロスポリン二酢酸エステル(0.22g、0.17mmol)の溶液にオゾンを-78℃で青色が生じるまで通気した。混合物を窒素で数分間脱気し、硫化ジメチル(0.4mL)を-78℃で加えた。反応混合物を室温まで加温し、3時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮し、残渣を酢酸エチル(120mL)に溶解し、水(2×20mL)および食塩水(30mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮して、シクロスポリンアルデヒド(0.19g、86%)を白色固体で得た。粗生成物をそれ以上精製せずに次の段階に持ち越した:

【0116】
実施例66−トランス-シクロスポリンジエンの二酢酸エステルの調製
塩化メチレン(2mL)中の水素化塩化ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム(199mg、0.77mmol)の懸濁液に、プロパルギルトリメチルシラン(0.12mL、0.81mmol)を加え、次いで混合物を室温で10分間撹拌した。この溶液に、塩化メチレン(1mL)中の実施例65からのシクロスポリンアルデヒド(100mg、0.077mmol)の溶液と、次いで過塩素酸銀(3mg、0.015mmol)を逐次加えた。得られた混合物を室温で12時間撹拌し、次いで炭酸水素ナトリウムの飽和溶液(10mL)に注いだ。有機層を分離し、水層を塩化メチレン(2×20mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮して、粗生成物を得た。この材料を半調製用HPLCで精製し、トランス-シクロスポリンジエンの二酢酸エステル(47mg、46%)を白色固体で得た。

【0117】
実施例67−トランス-シクロスポリンジエンの調製
メタノール(2mL)中の実施例66からのトランス-シクロスポリンジエンの二酢酸エステル(45mg、0.034mmol)の溶液を撹拌しながら、これに炭酸カリウム(140mg、1.02mmol)を室温で加えた。室温で12時間後、反応混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、水(20mL)で洗浄した。水層を分離し、酢酸エチル(30mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮して、粗生成物を得た。この材料を半調製用HPLCで精製し、トランス-シクロスポリンジエン(11mg、26%)を白色固体で得た。

【0118】
実施例68−トランス-シクロスポリンジエン-d2の酢酸エステルの調製
塩化メチレン(2mL)中の水素化塩化ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム(199mg、0.77mmol)の懸濁液に、d2-プロパルギルトリメチルシラン(92mg、0.81mmol)を加え、次いで混合物を室温で10分間撹拌した。この溶液に、塩化メチレン(1mL)中の実施例65からのシクロスポリンアルデヒド(100mg、0.077mmol)の溶液と、次いで過塩素酸銀(3mg、0.015mmol)を逐次加えた。得られた混合物を室温で12時間撹拌し、次いで炭酸水素ナトリウムの飽和溶液(10mL)に注いだ。有機層を分離し、水層を塩化メチレン(2×20mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮して、粗生成物を得た。この材料を半調製用HPLCで精製し、重水素化トランス-シクロスポリンジエンの酢酸エステル(20mg、20%)を白色固体で得た。

【0119】
実施例69−トランス-シクロスポリンジエン-d2の調製
メタノール(3mL)中の実施例68からの重水素化トランス-シクロスポリンジエンの酢酸エステル(17mg、0.013mmol)の溶液を撹拌しながら、これに炭酸カリウム(54mg、0.39mmol)を室温で加えた。室温で12時間後、反応混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、水(20mL)で洗浄した。水層を分離し、酢酸エチル(30mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮して、粗生成物を得た。この材料を半調製用HPLCで精製し、トランス-シクロスポリンジエン-d2(5mg、31%)を白色固体で得た。

【0120】
実施例70−シクロスポリン塩化ビニルの酢酸エステルの調製
THF(4mL)中の実施例65からのシクロスポリンアルデヒド(126mg、0.097mmol)およびCHCl3(30mg、0.25mmol)の溶液にアルゴン雰囲気下で無水CrCl2(119mg、0.97mmol)を加えた。混合物をアルゴン雰囲気下、40℃で24時間撹拌し、次いで室温まで冷却し、短いシリカゲルカラム(EtOAc)を通してろ過した。合わせたろ液を水(3×10mL)および食塩水(3×10mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮乾固した。残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリン塩化ビニルの酢酸エステル(71mg、55%)を白色固体で得た。

【0121】
実施例71−シクロスポリン塩化ビニルの調製
実施例70からのシクロスポリン塩化ビニルの酢酸エステル(71mg、0.053mmol)をMeOH(7mL)に溶解し、次いでK2CO3(200mg、1.449mmol)を加えた。混合物をN2雰囲気下、室温で6時間撹拌し、次いでEtOAc(200mL)で希釈し、食塩水(3×10mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮乾固した。残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリン塩化ビニル(35mg、53%)を白色固体で得た。

【0122】
実施例72−シクロスポリンヨウ化ビニルの調製
THF(5mL)中の実施例65からのシクロスポリンアルデヒド(200mg、0.15mmol)の氷冷溶液に無水CrCl2(184mg、1.5mmol)およびCHI3(206mg、0.6mmol)を加え、次いで混合物をN2雰囲気下、0℃で24時間撹拌した。反応混合物をEtOAc(200mL)で希釈し、水(4×10mL)で洗浄し、mgSO4で乾燥し、濃縮乾固した。残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリン塩化ビニルの二酢酸エステル(57mg、26%)を淡黄色油状物で得た:ESI MS m/z 1429 [C66H114IN11O15+H]
【0123】
上のシクロスポリンヨウ化ビニルの二酢酸エステル(57mg、0.04mmol)をMeOH(10mL)に溶解し、次いでK2CO3(200mg、1.45mmol)を加えた。混合物をN2雰囲気下、室温で終夜撹拌し、次いでEtOAc(200mL)で希釈し、食塩水(3×10mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮乾固した。残渣を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンヨウ化ビニル(19mg、35%)を白色固体で得た。

【0124】
実施例73−シス-およびトランス-シクロスポリン臭化ビニルの酢酸エステルの調製
THF(5mL)中の臭化(ブロモメチル)トリフェニルホスホニウム(700mg、1.6mmol)の懸濁液に-78℃でナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(1.6mL、THF中1M、1.6mmol)を滴下し、次いで混合物を1時間撹拌した。THF(5mL)中の実施例65からのシクロスポリンアルデヒド(0.21g、0.16mmol)を加え、次いで混合物を-78℃で2時間撹拌した。反応混合物を塩化アンモニウムの飽和溶液で反応停止した。室温まで加温後、混合物をエチルエーテル(100mL)で希釈し、食塩水(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。粗製材料を半調製用HPLCで精製して、シス-シクロスポリン臭化ビニルの酢酸エステル(50mg、23%):

;およびトランス-シクロスポリン臭化ビニルの酢酸エステル(8mg、4%)を得た。

【0125】
実施例74−シス-シクロスポリン臭化ビニルの調製
メタノール(3mL)中の実施例73からのシス-シクロスポリン臭化ビニルの酢酸エステル(24mg、0.017mmol)の溶液を撹拌しながら、これに炭酸カリウム(120mg、0.86mmol)を室温で加えた。室温で12時間後、反応混合物を塩化アンモニウムの飽和溶液(20mL)で反応停止し、次いで酢酸エチル(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮して、粗生成物を得た。この材料を半調製用HPLCで精製し、シス-シクロスポリン臭化ビニル(8mg、36%)を白色固体で得た。

【0126】
実施例75−トランス-シクロスポリン臭化ビニルの調製
メタノール(2mL)中の実施例73からのトランス-シクロスポリン臭化ビニルの酢酸エステル(10mg、0.007mmol)の溶液を撹拌しながら、これに炭酸カリウム(50mg、0.36mmol)を室温で加えた。室温で12時間後、反応混合物を塩化アンモニウムの飽和溶液(15mL)で反応停止し、次いで酢酸エチル(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮して、粗生成物を得た。この材料を半調製用HPLCで精製し、トランス-シクロスポリン臭化ビニル(4mg、44%)を白色固体で得た。

【0127】
実施例76−アリール化シクロスポリンジオールの調製
塩化メチレン中の実施例63からのシクロスポリンジオール(57mg、0.040mmol)の溶液を撹拌しながら、これにスチレン(42mg、0.400mmol)およびグラブス触媒第2世代(2.5mg、0.004mmol)を加えた。得られた混合物を窒素雰囲気下、50℃で還流しながら終夜撹拌した。次いで、反応混合物を25℃まで冷却し、濃縮乾固した。粗製混合物を半調製用HPLCで二回精製して、所望の生成物(8.8mg、17%)を白色固体で得た。

【0128】
実施例77−シクロスポリンフッ化物の調製
塩化メチレン(2mL)中の実施例63からのシクロスポリンジオール(50mg、0.410mmol)の溶液を入れたフラスコを-78℃に冷却した。フッ化アリル(1.5g、90.11mmol)を溶液に通気した。反応混合物を室温まで加温し、グラブス触媒第2世代(18mg、0.021mmol)を加えた。得られた混合物をフッ化アリル雰囲気下(風船から)、50℃で還流しながら終夜撹拌した。16時間後、反応混合物を減圧下で濃縮乾固した。半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンフッ化物(11.3mg、22%)をオフホワイト固体で得た。

【0129】
実施例78−シクロスポリン三フッ化物の調製
乾燥した25mLフラスコに塩化メチレン(2mL)中の実施例63からのシクロスポリンジオール(50mg、0.041mmol)の溶液を入れ、これに3,3,3-トリフルオロプロペンガス(39mg、0.41mmol)を加えた。この溶液をグラブス触媒第2世代(18mg、0.021mmol)で処理し、得られた混合物を3,3,3-トリフルオロプロペンガス雰囲気下(風船から)、50℃で終夜還流しながら撹拌した。17時間後、グラブス触媒第2世代(18mg、0.021mmol)を加え、反応混合物を3,3,3-トリフルオロプロペンガス雰囲気下、50℃で終夜還流した。反応混合物を減圧下で濃縮乾固した。半調製用HPLCで精製して、所望の生成物(2mg、4%)を桃色固体で得た。

【0130】
実施例79−シクロスポリンα,β-不飽和アルデヒドの酢酸エステルの調製
実施例64からのシクロスポリン二酢酸エステル(100mg、0.076mmol)、アクロレインジメチルアセタール(0.087mL、0.76mmol)、グラブス触媒第二世代(12.7mg、0.015mmol)およびトルエン(2mL)の混合物を25mLフラスコ内、55℃で終夜加熱した。触媒(12.7mg)およびアクロレインジメチルアセタール(0.087mL)を補充し、混合物を同じ温度でさらに24時間撹拌した。触媒(12.7mg)を再度補充し、反応混合物を55℃で6時間撹拌した。触媒をさらに20mg加え、反応混合物を55℃で終夜撹拌した。触媒(32.3mg)を再度補充し、アクロレインジメチルアセタールをさらに1mL加えた。55℃で2日後、グラブス触媒(20mg)ならびにアクロレインジメチルアセタール(0.017mL)を加えた。24時間後、反応混合物を室温まで冷却し、減圧濃縮した。残渣を半調製用HPLCで精製し、シクロスポリンα,β-不飽和アルデヒドの酢酸エステル(40mg、40%)を得た。

【0131】
実施例80−シクロスポリン塩化ジエニルの酢酸エステルの調製
乾燥した25mLフラスコにTHF(3mL)中の実施例79からのシクロスポリンα,β-不飽和アルデヒドの酢酸エステル(71mg、0.053mmol)およびクロロホルム(63mg、0.53mmol)の溶液を入れ、これに塩化クロミウム(195mg、1.59mmol)を加えた。得られた混合物を50℃に加熱し、N2雰囲気下で2時間撹拌した。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、氷水(200mL)に激しく撹拌しながら注いだ。次いで、水層を酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。合わせた有機層を食塩水(80mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、次いで減圧濃縮した。粗製材料を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリン塩化ジエニルの酢酸エステル(44mg、63%)を白色固体で得た。

【0132】
実施例81−シクロスポリン塩化ジエニルの調製
MeOH(1mL)中の実施例80からのシクロスポリン塩化ジエニルの酢酸エステル(44mg、0.03mmol)の溶液を炭酸カリウム(83mg、0.60mmol)で処理した。これを室温で終夜撹拌した。次いで、反応混合物を酢酸エチル(30mL)で希釈し、炭酸水素ナトリウムの飽和溶液(20mL)で洗浄し、食塩水(20mL)で洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥した。次いで、これを減圧下で濃縮した。粗製材料を半調製用HPLCで精製し、シクロスポリン塩化ジエニル(6mg、16%)を得た。

【0133】
実施例82−シクロスポリンヨウ化ジエニルの酢酸エステルの調製
25mLフラスコにTHF(2mL)中の実施例79からのシクロスポリンα,β-不飽和アルデヒドの酢酸エステル(36mg、0.027mmol)の溶液を入れ、ヨードホルム(108mg、0.027mmol)で処理した。次いで、これを-78℃に冷却し、塩化クロミウム(99mg、0.81mmol)を溶液に加えた。混合物を-78℃で10分間撹拌し、次いで0℃に加温し、この温度で1.5時間撹拌した。次いで、反応混合物を氷水(70mL)に激しく撹拌しながら注いだ。この材料を酢酸エチル(100mL)で抽出した。有機層を食塩水(15mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。粗製材料を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリンヨウ化ジエニルの酢酸エステル(14mg、35%)を得た。

【0134】
実施例83−シクロスポリンヨウ化ジエニルの調製
MeOH(1mL)中の実施例82からのシクロスポリンヨウ化ジエニルの酢酸エステル(13.7mg、0.003mmol)の溶液を炭酸カリウム(26mg、0.19mmol)で処理した。これを室温で終夜撹拌した。次いで、反応混合物を酢酸エチル(30mL)で希釈し、炭酸水素ナトリウムの飽和溶液(20mL)で洗浄し、食塩水(20mL)で洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥した。次いで、これを減圧下で濃縮した。粗製材料を半調製用HPLCで精製し、シクロスポリンヨウ化ジエニル(7.3mg、59%)を得た。

【0135】
実施例84−シクロスポリン臭化ジエニルの調製
25mLフラスコにTHF(2mL)中の実施例79からのシクロスポリンα,β-不飽和アルデヒドの酢酸エステル(49mg、0.04mmol)の溶液を入れ、0℃に冷却してブロモホルム(0.04mL、0.40mmol)で処理した。塩化クロミウム(II)(147mg、1.20mmol)を溶液に加えた。混合物を0℃で1.5時間撹拌し、次いで氷浴を取り除いた。混合物を室温で終夜撹拌した。次いで、反応混合物を氷水(70mL)に激しく撹拌しながら注いだ。この材料を酢酸エチル(150mL)で抽出した。有機層を食塩水(25mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。粗製材料を半調製用HPLCで精製して、シクロスポリン臭化ジエニルの酢酸エステル(5.2mg、9%)を得た:ESI MS m/z 1408 [C68H115BrN11O15+H]
【0136】
MeOH(1mL)中の上のシクロスポリン臭化ジエニルの酢酸エステル(5.2mg、0.004mmol)の溶液を炭酸カリウム(21mg、0.15mmol)で処理した。これを室温で7時間撹拌した。次いで、反応混合物を酢酸エチル(60mL)で希釈し、炭酸水素ナトリウムの飽和溶液(10mL)で洗浄し、食塩水(10mL)で洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥した。次いで、これを減圧下で濃縮した。粗製材料を半調製用HPLCで精製し、シクロスポリン臭化ジエニル(2.1mg、40%)を得た。

【0137】
実施例85−コンカナバリンA刺激脾細胞アッセイ
5から7週齢の雄BALB/cマウスをCO2吸入により屠殺した。脾臓を摘出し、ナイロンセルストレーナーを通すことにより分離した。脾細胞をRPMI 1640/5%ウシ胎仔血清(FCS)中で洗浄し、400×gでペレット化した。次いで、細胞ペレットをACK溶解緩衝液(150mM NH4Cl、1mM KHCO3、0.1mM EDTA、脾臓一つあたり3mL)に室温で10分間懸濁することにより、赤血球を溶解した。400×gでペレット化した後、細胞をRPMI 1640/5%FCSに再度懸濁し、再度ペレット化することにより洗浄した。細胞ペレットをRPMI 1640/5%FCSに再度懸濁し、セルストレーナーを再度通過させて、細胞凝集物を除去した。次いで、細胞を計数し、RPMI 1640/10%FCS/50μM 2-メルカプトエタノール中2×106細胞/mlに調節した。細胞生存度をトリパンブルー染色により評価した。シクロスポリンAまたは試験化合物および2マイクログラムのコンカナバリンAを96穴プレートのウェルに加えた後、2×105脾細胞を加えた。細胞を37℃のCO2インキュベーター内で2日間培養し、次いで1μCiの[3H]チミジンで6時間パルスラベルした。細胞をTomTec 96穴プレート回収器でフィルターマット上に回収し、H2Oで溶解した。フィルターマットおよびシンチレーション液をプラスティックスリーブ内に密封した。[3H]チミジン取り込みをWallac Triluxプレート計数器で測定した。初期スクリーンを試験化合物100ng/mlの固定値で行った。IC50をGraphPadソフトウェアを用いて7点濃度-反応曲線から計算した。
【0138】
実施例86−マウスエクスビボ薬物動態アッセイ
シクロスポリンAおよび開示したシクロスポリン類似体のインビボ免疫抑制活性を、下記のとおりに評価することができる。コンカナバリンA刺激脾細胞活性を、Petersonらによって以前に記載された方法(Peterson et al.,「A Tacrolimus-Related Immunosuppressant with Biochemical Properties Distinct from Those of Tacrolimus,」Transplantation, 65:10-18 (1998)、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)またはそのわずかに改変したものを用いて、インビボで評価することができる。
【0139】
シクロスポリンAまたは本発明の免疫抑制化合物の最適用量(試験薬物の4つの異なる用量および薬物なしの対照動物群)を、雄BALB/cまたは雌C57BLマウスに経口または静脈内投与した。各用量でマウス3匹を試験した。シクロスポリンAまたは免疫抑制化合物の投与から4時間後に、コンカナバリンAをマウスの尾静脈に注射した。コンカナバリンA注射の1時間後、マウスを安楽死させ、脾臓を無菌条件下で摘出し、脾細胞増殖の程度を、実施例85に記載のものと同様の様式で測定した。対照に比べての阻害パーセントを免疫抑制化合物の用量に対してプロットし、ED50値をもとめた。本発明の化合物の各用量-反応アッセイを、ED50に等しい単一用量のシクロスポリン対照と共に行った。
【0140】
本発明を例示を目的として詳細に記載してきたが、そのような詳細は例示のためにすぎず、当業者であれば、添付の特許請求の範囲で規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、その中で改変をなしうることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】コンカナバリンA(ConA)刺激脾細胞アッセイの結果を示す図であり、本発明の新規シクロスポリン類似体化合物(実施例9および11に開示)は、シクロスポリンAに比べて、高い免疫抑制効力を有することが示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シス幾何異性体、トランス幾何異性体、もしくはシスおよびトランス幾何異性体の混合物、またはその薬学的に許容される塩である、式Iaの化合物:

式中:
XはOHまたはOAcであり;
R0はHまたはCH2OR3であり;
R1はHまたはDであり;
R2は下記からなる群より選択され:
ハロゲン、
C1-C6ハロゲン化飽和直鎖または分枝炭素鎖、
C2-C6ハロゲン化不飽和直鎖または分枝炭素鎖、
C3-C6置換および無置換シクロアルキル、
アミノ基を含むC1-C6飽和直鎖または分枝炭素鎖、
-CH=N-OR4、および
-CH=N-NR4R5
R3は下記からなる群より選択され:
水素、
アルカノイル、
アルケノイル、
アルキノイル、
アリーロイル、
アリールアルカノイル、
アルキルアミノカルボニル、
アリールアミノカルボニル、
アリールアルキルアミノカルボニル、
アルキルオキシカルボニル、
アリールオキシカルボニル、および
アリールアルキルオキシカルボニル;
R4およびR5は同じまたは異なり、下記からなる群より独立に選択され:
水素、
C1-C6飽和直鎖または分枝炭素鎖、
C3-C6不飽和直鎖または分枝炭素鎖、
C3-C6-置換および無置換シクロアルキル、
アリールまたはヘテロアリールを含むC1-C4炭素鎖、
置換および無置換アリール、
置換および無置換ヘテロアリール、
アルカノイル、
アルケノイル、
アルキノイル、
アリーロイル、
アリールアルカノイル、
アルキルアミノカルボニル、
アリールアミノカルボニル、
アリールアルキルアミノカルボニル、
アルキルオキシカルボニル、
アリールオキシカルボニル、
アリールアルキルオキシカルボニル、
アルキルスルホニル、および
アリールスルホニル;ならびに
R4はR5と一緒になって、任意に一つまたは複数のヘテロ原子を含むC2-C6の環状部分を形成する。
【請求項2】
XがOHまたはOAcであり、R0がH、CH2OHまたはCH2OAcであり、R1がHまたはDである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R2がF、Cl、Br、およびIからなる群より選択される、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
R2がCF3、CH2F、およびCH2Clからなる群より選択される、請求項2記載の化合物。
【請求項5】
R2が-CH=CHF、-CH=CHCl、-CH=CHBr、および-CH=CHIからなる群より選択される、請求項2記載の化合物。
【請求項6】
R2が-CH=CH-C≡CH、-CH=CH-C≡C-CH3、および-CH=CH-C≡C-CH=CH2からなる群より選択される、請求項2記載の化合物。
【請求項7】
R2がシクロプロピルである、請求項2記載の化合物。
【請求項8】
R2が-CH=N-OH、-CH=N-OCH3、-CH=N-OCH2CH3、-CH=N-NHCH3、および-CH=N-N(CH3)2からなる群より選択される、請求項2記載の化合物。
【請求項9】
シス幾何異性体、トランス幾何異性体、もしくはシスおよびトランス幾何異性体の混合物、またはその薬学的に許容される塩である、式Ibの化合物:

式中:
XはOHまたはOAcであり;
R0はHまたはCH2OR3であり;
R1はハロゲンであり;
R2は下記からなる群より選択され:
水素、
重水素、
ハロゲン、
任意にハロゲンを含む、C1-C6飽和直鎖または分枝炭素鎖、
任意にハロゲンを含む、C2-C6不飽和直鎖または分枝炭素鎖、
C3-C6置換および無置換シクロアルキル、
置換および無置換アリール、および
置換および無置換ヘテロアリール;ならびに
R3は下記からなる群より選択される:
水素、
アルカノイル、
アルケノイル、
アルキノイル、
アリーロイル、
アリールアルカノイル、
アルキルアミノカルボニル、
アリールアミノカルボニル、
アリールアルキルアミノカルボニル、
アルキルオキシカルボニル、
アリールオキシカルボニル、および
アリールアルキルオキシカルボニル。
【請求項10】
薬学的に許容される担体、および請求項1記載の化合物の治療的有効量を含む、薬学的組成物。
【請求項11】
薬学的に許容される担体、および請求項9記載の化合物の治療的有効量を含む、薬学的組成物。
【請求項12】
哺乳動物の免疫応答を抑制するのに有効な条件下で、請求項1記載の化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物における免疫応答の抑制方法または軽減方法。
【請求項13】
慢性炎症または自己免疫疾患を処置するのに有効な条件下で、請求項1記載の化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、慢性炎症または自己免疫疾患を有する哺乳動物の処置方法。
【請求項14】
慢性炎症または自己免疫疾患が喘息、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、および潰瘍性大腸炎からなる群より選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
眼アレルギーおよびドライアイを処置するのに有効な条件下で、請求項1記載の化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、眼アレルギーおよびドライアイを有する哺乳動物の処置方法。
【請求項16】
哺乳動物の免疫応答を抑制するのに有効な条件下で、請求項9記載の化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物における免疫応答の抑制方法または軽減方法。
【請求項17】
慢性炎症または自己免疫疾患を処置するのに有効な条件下で、請求項9記載の化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、慢性炎症または自己免疫疾患を有する哺乳動物の処置方法。
【請求項18】
慢性炎症または自己免疫疾患が喘息、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、および潰瘍性大腸炎からなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
眼アレルギーおよびドライアイを処置するのに有効な条件下で、請求項9記載の化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、眼アレルギーおよびドライアイを有する哺乳動物の処置方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−514702(P2008−514702A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534661(P2007−534661)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/033844
【国際公開番号】WO2006/039164
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(506190544)エーエムアール テクノロジー インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】