説明

新規ポリエステルアミドイミド及びポリエステルアミドをベースとする電線被覆用組成物

相互に架橋することができる、求核基を有する樹脂、および場合によりアミド基を含む樹脂を含む電線被覆用組成物であって、(A)OH、NHR、SH、カルボキシレート、およびCH−酸性基からなる群から選択された求核基を有する少なくとも1種の樹脂5〜95重量%と、(B)少なくとも1種のアミド基を含む樹脂0〜70重量%と、(C)少なくとも1種の有機溶媒5〜95重量%とを含み、成分(A)または成分(B)の樹脂が、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含み、(A)〜(C)の重量パーセントが合計100パーセントになる組成物。本発明による電線被覆用組成物は、標準的電線エナメルの肯定的特性を失うことなく、エナメル化速度の大幅な上昇を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2005年8月8日出願の米国特許仮出願第60/706,460号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、高速なエナメル化速度において導電性電線の優れたエナメル表面をもたらし、導電体を被覆するのに有用である、新規ポリエステルアミドイミドおよびポリエステルアミドをベースとする新規電線被覆用組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、一般的に使用される電線被覆剤は、クレゾール、フェノール、ベンジルアルコール、炭酸プロピレン、またはN−メチルピロリドンなどの適切な有機溶媒;キシレン、他の置換芳香族物質、脂肪族物質などの希釈液;ならびに少量添加の添加剤、触媒、および調節剤中のTHEIC[トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌラート]ポリエステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミド−イミド、THEICポリエステルイミド、ポリエステルイミド、またはポリウレタンなどのエナメル電線バインダーの溶液である。溶媒は、電線被覆剤の熱硬化中に蒸発する。高品質の被覆を得るためには、溶媒をできる限り完全に排除することが必要である。溶媒に加えて、硬化反応の副生物も、エナメル化相から、縮合反応による架橋中に生じる気相に移る。
【0004】
電線被覆のユーザーは、電線被覆にエナメル化を短時間施した後、導電性エナメル電線の産出量をできる限り増大させ、ユーザーにとって可能な最良の方法が得られるように努力する。適切な架橋を実現するためには、高速なエナメル化速度においてさえ、エナメルから、溶媒だけでなく架橋反応の開裂生成物もできる限り完全に除去されなければならない。架橋反応のオーブン温度もしくは触媒作用、またはしたがって両パラメータを増大させて、電線のオーブンにおける滞在時間が比較的短いにもかかわらず、実質的な架橋を可能にしなければならない。架橋が速くなると、粘度が急速に上昇し、したがって溶媒および縮合生成物の散逸も、はるかに短い時間に起こる必要がある。したがって、プロセスウィンドウははるかに小さくなり、電線エナメル化プロセスの安定性は大幅に限定される。したがって、気泡や窪みなど、特定のエナメル欠陥の発生はほとんど不可避である。
【0005】
下記の特許に示されるように、電線エナメルを電気導体に塗布する速度を上昇させる様々な方法が従来から採用されてきた。
【0006】
欧州特許出願公開第873198号(A)明細書には、マイケル反応によって低分子アクリラートに結合させたポリアミドアミンを表すエナメルが述べられている。
【0007】
独国特許出願公開第3133571号(A)明細書には、ポリオールおよび(ブロック)イソシアナート成分に加えて、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有するポリウレタン電線エナメル化系が提案されている。この系はトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含まない同様な組成物より、エナメル化速度が高速になり得る。しかし、この方法は、ポリウレタン電線エナメルに限定される。
【0008】
独国特許出願公開第19648830号(A)明細書には、高速なエナメル化速度を可能にするポリエステルイミド電線エナメル化樹脂が提案されている。最初に、ポリイソシアナートまたはポリアミンを酸または酸無水物と反応させることによってポリイミドを生成し、ポリオールと反応させて、ポリエステルイミドを生成し、続いて酸または無水物と反応させる。このポリエステルイミドは、具体的にはヒドロキシ基に加えて、かなりの数の酸基を有するという点を特徴とする。エナメル化速度は、一般にエステル交換反応より遅く起こるOH−COOHエステル化反応によって限定される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、相互に架橋することができる、求核基を有する樹脂、および場合によりアミド基を含む樹脂を含む電線被覆用組成物であって、
(A)OH、NHR、SH、カルボキシレート、およびCH−酸性基からなる群から選択された求核基を有する少なくとも1種の樹脂5〜95重量%と、
(B)少なくとも1種のアミド基を含む樹脂0〜70重量%と、
(C)少なくとも1種の有機溶媒5〜95重量%と
を含み、
成分(A)の樹脂、または成分(B)が組成物に含まれる場合は成分(B)の樹脂が、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含み、(A)〜(C)の重量パーセントが合計100パーセントになる組成物を提供する。
【0010】
本発明による電線被覆用組成物は、標準的電線エナメルの肯定的特性を失うことなく、エナメル化速度の大幅な上昇を可能にする。本発明による電線被覆剤は、保管の際に安定性があり、丸くプロファイルされた導電性電線への良好な接着性を示し、適切な耐熱ショック性を有する。極めて高い表面品質は、具体的には高速なエナメル化速度において非常に良好な電気的、熱的、および機械的諸特性によって実現される。驚くべきことに、本発明によるエナメルは、従来技術のものより良好な接着性および良好な機械的諸特性も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
さらに、フェノール樹脂、および/またはメラミン樹脂、触媒、ナノスケール粒子、および/または元素−有機化合物、場合によっては一般的に使用される添加剤および/または補助剤、ならびに顔料および/または充填剤を含有する電線被覆用組成物が好ましい。
【0012】
このタイプの電線被覆用組成物は、
(A)OH、NHR、SH、カルボキシレート、およびCH−酸性基からなる群から選択された求核基を有する少なくとも1種の樹脂5〜60重量%と、
(B)少なくとも1種のアミド基を含む樹脂1〜50重量%と、
(C)少なくとも1種の有機溶媒5〜90重量%と、
(D)少なくとも1種の触媒0〜10重量%、好ましくは0.1〜20重量%と、
(E)少なくとも1種のフェノール樹脂および/またはメラミン樹脂および/またはブロックイソシアナート0〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%と、
(F)一般的に使用される添加剤または補助剤0〜3重量%、好ましくは0.1〜3重量%と、
(G)ナノスケール粒子0〜70重量%、好ましくは0.1〜70重量%と、
(H)一般的に使用される充填剤および/または顔料0〜60重量%、好ましくは0.1〜60重量%と
を含み、
成分(A)または成分(B)の樹脂が、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含み、(A)〜(H)の重量パーセントが合計100パーセントになる。
【0013】
電線の被覆で知られている樹脂を、成分(A)として使用することができる。これらは、ポリエステル、またヘテロ環系の窒素含有環を有するポリエステル、例えばイミドおよびヒダントインおよびベンゾイミダゾール構造が縮合して分子となったポリエステルとすることができる。ポリエステルは、具体的には多塩基性の脂肪族、芳香族、および/または脂環式のカルボン酸ならびにその無水物、多価アルコール、ならびにイミドを含むポリエステルの場合はポリエステルアミノ基を含む化合物、および場合によっては所定量の単官能性化合物、例えば1価アルコールの縮合生成物である。飽和ポリエステルイミドは、好ましくはジオールに加えて、ポリオール、および追加のジカルボン酸成分としてジアミノジフェニルメタンとトリメリト酸無水物の反応生成物を含有することもできるテレフタル酸ポリエステルをベースとする。さらに、不飽和ポリエステル樹脂および/またはポリエステルイミド、ならびにポリアクリラートを使用することもできる。成分Aとして、下記:ポリアミド、例えば熱可塑性ポリアミド、芳香族、脂肪族、および芳香族−脂肪族のポリアミド、さらに例えばトリメリット(trimelletic)酸無水物およびジイソシアナト−ジフェニルメタンから生成されたタイプのポリアミドイミドを使用することもできる。
【0014】
好ましくは、不飽和のポリエステルおよび/またはポリエステルイミドを使用する。
【0015】
本発明による組成物は、さらに電線被覆産業において周知で一般的なタイプの別のバインダーを1種または複数含有することができる。これらは、例えばポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、THEIC−ポリエステルイミド、ポリチタン酸エステル−THEIC−エステルイミド、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリメタクリル酸イミド、ポリイミド、ポリビスマレイン酸イミド、ポリエーテルイミド、ポリベンゾオキサジンジオン、ポリヒダントイン、ポリビニルホルマール、ポリアクリラートおよびその誘導体、ポリビニルアセタール、ならびに/またはマスクされたイソシアナートとすることができる。好ましくは、ポリエステルおよびTHEIC−ポリエステルイミドを使用する(参考文献:Behr, “Hochtemperaeturbestandige Kunststoffe” Hanser Verlage, Munich 1969; Cassidy, “Thermally Stable Polymers” New York: Marcel Dekker, 1980; Frazer, “High Temperature Resistant Polymers” New York: Interscience, 1968; Mair, Kunststoffe 77 (1987) 204)。
【0016】
成分(B)のアミドを含む樹脂は、本発明に役立つ成分としてα−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含む。α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基は、好ましくは末端部位に組み込まれている。上記のα−カルボキシ基は、好ましくはアルキル−またはアリール−エステル化されている。一方、このタイプのα−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミドは、応するカルボン酸、またはカルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸無水物基など、その反応性誘導体から、アミン基との反応によって生成することができる。アミンとカルボン酸からの合成中にジシクロヘキシルカルボジイミドなどのアミド化補助剤を使用することも好都合である。α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸は、例えば塩基性条件下におけるハロギ酸エステルとの反応、およびその後の選択的ケン化によって得ることができる。1−カルボキシ−2−オキソシクロアルカンは、例えば1,n−カルボン酸ジエステルから、アルコール開裂を伴う塩基との反応によって合成して得ることができる。一方、前記α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミドは、塩基性条件下における前記1−カルボキシ−2−オキソシクロアルカンとイソシアナートとの反応によって生成することもできる。前記1−カルボキシ−2−オキソシクロアルカンは、例えばグルタル酸ジアルキルエステル、グルタル酸ジアリールエステル、アジピン酸ジアルキルエステル、アジピン酸ジアリールエステル、ピメリン酸ジアルキルエステル、ピメリン酸ジアリールエステル、オクタン二酸ジアルキルエステル、オクタン二酸ジアリールエステル、ならびにアルキル−、アリール−、アルコキシ−、アリールオキシ−、アルキルカルボキシ−、アリールカルボキシ−、ハロゲン−、およびその他のその置換誘導体、特に好ましくはアジピン酸ジメチルおよびエチルエステルから得ることができる。上記のイソシアナートは、例えばプロピレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、テトラメチレン(tetramethyle)ジイソシアナート、ペンタメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、エチルエチレンジイソシアナート、3,3,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,3−シクロペンチルジイソシアナート、1,4−シクロヘキシルジイソシアナート、1,2−シクロヘキシルジイソシアナート、1,3−フェニレンジイソシアナート、1,4−フェニレンジイソシアナート、2,5−トルイレンジイソシアナート、2,6−トルイレンジイソシアナート、4,4’−ビフェニレンジイソシアナート、1,5−ナフチレンジイソシアナート、1,4−ナフチレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート;アニリン、ホルムアルデヒド、およびCOCl2の反応に由来し、>2個の官能基を有する多核イソシアナート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、トリイソシアナトノナン、またはこれらのイソシアナートから作製されたオリゴマーおよびポリマー(例えば、ウレトジオン、イソシアヌラートなど)とすることができる。
【0017】
例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリトール、および他のジオール、トリオール、テトラオール、ポリオール、あるいはアミノアルコール、ジアミン、トリアミン、およびポリアミンとの反応によって得ることができる前記イソシアナートから得られた過剰のウレタンまたはウレアを使用することもできる。
【0018】
アミド化に使用される上記のアミンは、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族第一級ジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミンなどの脂環式ジアミン、あるいはトリアミンとすることができ、第二級アミンを使用することも可能である。アミンは、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミン;>2個の可能基を有する多核芳香族アミン、トルイレンジアミン、または対応する誘導体などの芳香族アミンとすることもできる。分子中に別の官能基を有するアミン、例えばモノエタノールアミンおよび/またはモノプロパノールアミンなどのアミノアルコール、あるいはグリシン、アミノプロパン酸、アミノカプロン酸、またはアミノ安息香酸などのアミノ酸、およびそのエステルを使用することも可能である。
【0019】
α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を、成分(A)に直接組み込むこともできる。これは、例えば成分(A)の樹脂とジ−またはポリイソシアナートおよび少なくとも1つのカルボキシ−β−オキソシクロアルカンの反応によって実現することができる。
【0020】
成分(C)として、組成物は、芳香族炭化水素、N−メチルピロリドン、クレゾール、フェノール、キシレノール、スチレン、ビニルトルエン、メチルアクリラートなど、1種または複数の有機溶媒を含有することができる。
【0021】
チタン酸テトラブチル、チタン酸イソプロピル、チタン酸クレゾール、そのポリマー形、ジラウリン酸ジブチルスズ、別のスズ触媒などの触媒を、成分(D)として個別にまたは混合物として使用することができる。
【0022】
成分(E)として使用することができるフェノール樹脂および/またはメラミン樹脂は、例えばフェノールとアルデヒドの重縮合によって得ることができるノボラック、あるいはポリビニルアルコールとアルデヒドおよび/またはケトンから得ることができるポリビニルホルマールとすることができる。
【0023】
ポリオール、アミン、C−H−酸性化合物(例えば、アセト酢酸エステル、マロン酸エステルなど)、およびジイソシアナートのNCO−付加物などのブロックイソシアナート(例えば、参考文献、Methoden der org. Chemie, Houben−Weyl, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 4th edition, Vol. 14/2, Part 2 “Makromolekulare Stoffe”, 1963, page 61)を成分(E)として使用することもでき、クレゾールおよび/またはフェノールを、一般的にブロッキング剤として使用する。
【0024】
成分(F)の一般的な添加剤および補助剤としては、例えば延長剤、可塑成分、促進剤(例えば、金属塩、置換アミン)、開始剤(例えば、光開始剤、熱応答性開始剤)、安定化剤(例えば、ヒドロキノン、キノン、アルキルフェノール、アルキルフェノールエーテル)、脱泡剤、およびフローコントロール剤など、一般的なエナメル添加剤が挙げられる。
【0025】
成分(G)のナノスケール粒子としては、平均粒径が1〜300nmの範囲、好ましくは2〜80nmの範囲の粒子が挙げられる。これらは、例えばSiO2、Al23、TiO2、ホウ窒化物、炭化ケイ素などの化合物をベースとする無機ナノスケール粒子である。粒子は、例えばケイ素、亜鉛、アルミニウム、スズ、ホウ素、ゲルマニウム、ガリウム、鉛、遷移金属、ならびにランタニドおよびアクチニドからなる系列、具体的にはケイ素、チタン、亜鉛、イットリウム、セリウム、バナジウム、ハフニウム、ジルコニウム、ニッケル、および/またはタンタルからなる系列からの元素を含む元素−酸素のネットワークをベースとする化合物とすることができる。これらの粒子の元素−酸素のネットワークの表面は、例えば欧州特許出願公開第1166283号(A)明細書に記載されているように反応性有機基で変性することができる。
【0026】
組成物は、成分(H)として、例えばSiO2、Al23、TiO2、Cr23をベースとする顔料および/または充填剤、例えば二酸化チタンやカーボンブラックなどのカラー付与無機および/または有機顔料、ならびに金属フレーク顔料および/または真珠光沢顔料などのエフェクト顔料を含有することができる。
【0027】
被覆用組成物は、さらにモノマーおよび/またはポリマーの元素−有機化合物を含有することができる。ポリマーの有機−元素化合物の例としては、例えば独国特許出願公開第198 41 977号(A)明細書に記載されているタイプの無機−有機ハイブリッドポリマーが挙げられる。モノマーの有機−元素化合物の例としては、ノニル、セチル、ステアリル、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、テトライソプロピル、クレジル、テトラブチルチタナートおよびジルコナートなどのオルト−チタン酸エステルおよび/またはオルト−ジルコン酸エステル、チタニウムテトララクタート、ハフニウムおよびケイ素化合物、例えばハフニウムテトラブトキシドおよびケイ酸テトラエチル、ならびに/または様々なシリコーン樹脂が挙げられる。このタイプの追加のポリマーおよび/またはモノマーの有機−元素化合物を、本発明による組成物中に例えば0〜70重量%の含有量で含むことができる。
【0028】
成分(A)および成分(B)は、焼付け(ベーキング)プロセス時に化学反応に入ることができる。成分(A)および成分(B)の化学的性質に応じて、当業者に周知の適切な反応としては、例えばエステル交換反応、重合反応、重付加反応、縮合反応が挙げられる。成分(A)と成分(B)との付加反応、例えば(A)の求核攻撃による(B)における開環が好ましい。ポリエステルアミドイミド電線被覆またはポリエステルアミド電線被覆は、焼付けプロセス時の化学反応により生成される。
【0029】
本発明による組成物は、場合によっては一般的な電線エナメルと混合し、続いて一般的な方法で塗布することもできる。
【0030】
本発明による組成物は、使用する導電性電線のタイプおよび直径とは関わりなく、一般的な方法で塗布することができる。電線を本発明による組成物で直接被覆し、続いてオーブン中で焼付け(ベーキング)することができる。被覆および焼付けは、場合によっては連続して数回行われることがある。オーブンは水平または垂直に配列することができ、被覆の時間および回数、焼付け温度、被覆速度などの被覆条件は、被覆対象の電線のタイプに適合させる。例えば、被覆温度は、室温から400℃の範囲とすることができる。さらに、400℃超、例えば800℃まで、およびそれ以上の周囲温度は、本発明による被覆の品質に影響を与えることなく、エナメル化プロセス時に可能となり得る。焼付けは、当業者に周知の技法で赤外線(IR)および/または近赤外線(NIR)を照射することによって支援することができる。
【0031】
本発明による組成物は、導電性電線のタイプおよび直径とは関わりなく使用することができる。例えば、直径が5μm〜6mmの電線を被覆することができる。例えば、銅、アルミニウム、亜鉛、鉄、金、銀、またはその合金で作製された一般的な金属導体を電線として使用することができる。
【0032】
本発明による被覆用組成物を、多層エナメルの成分として含有することができる。この多層エナメルは、例えば少なくとも1種の本発明による被覆用組成物を含有することができる。
【0033】
本発明によれば、導電性電線を既存の仕上げで被覆してもよく、または被覆しなくてもよい。既存の仕上げは、例えば絶縁被覆および難燃被覆とすることができる。このような場合、本発明による被覆層の厚さは大きく異なることがある。
【0034】
本発明による被覆を介して別の被覆、例えば別の絶縁被覆を塗布することも可能である。これらの被覆を、例えばトップコートとして使用して、機械的保護を改善し、所望の表面特性を生じ、滑らかな表面をもたらすこともできる。例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド、およびポリイミドをベースとする組成物が、トップコートとして特に適切である。
【0035】
具体的には、本発明による組成物は、単層として塗布するのにも適している。
【0036】
本発明によれば、組成物を一般的な層の厚さで塗布することができる。例えば、5〜10μmの薄層を、本発明によって実現された耐部分放電性にも、仕上げの接着、強度、および伸展性にも影響を与えることなく塗布することもできる。乾燥した層の厚さは、細い導電性電線および太い導電性電線の標準値によって様々であり得る。例えば、細い電線の場合、5〜10μmの薄い厚さであり、太い電線の場合、約75〜89μmの厚さである。
【0037】
本発明を、下記の実施例によって説明する。
【実施例】
【0038】
試験:
固形分[%] 1g、1時間、180℃ (DIN EN ISO 3251に対応)
25℃における粘度[mPas]または[Pas] (DIN 53015に対応)
【0039】
実施例1(成分Aとして、THEIC−ポリエステルイミド)
撹拌機、温度計、および蒸留装置(蒸留塔および蒸留ブリッジ)を備えた2リットルの3ツ口フラスコ中で、122.4gのエチレングリコール、37.5gのプロピレングリコール、171.5gのテレフタル酸ジメチル(DMT)、237.7gのトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌラート(THEIC)、および1.0gのオルト−チタン酸テトラブチルエステルを、205℃に4時間加熱する。55gのメタノールを留去する。150℃に冷却した後、277.8gのトリメリト酸無水物(TMA)および143.2gのメチレンジアニリン(DADM)を添加する。混合物を撹拌しながら、210℃に3時間以内加熱し、固体の樹脂の粘度が710mPas(1:2、m−クレゾール中、25℃)に到達するまでこの温度で維持する。52gの水を留去する。次に、残渣を180℃に冷却し、509gのクレゾールを添加する。得られたポリエステルイミド溶液の固形分は60.3%である。
【0040】
実施例2(成分Aとして、THEIC−ポリエステル)
撹拌機、温度計、および蒸留装置(蒸留塔および蒸留ブリッジ)を備えた2リットルの3ツ口フラスコ中で、105.9gのエチレングリコール、464.5gのテレフタル酸ジメチル(DMT)、416.6gのトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌラート(THEIC)、0.4gの酢酸亜鉛、および0.4gのオルト−チタン酸テトラブチルエステルを撹拌しながら、220℃に3時間以内加熱し、固体の樹脂の粘度が700mPas(1:2、m−クレゾール中、25℃)に到達するまでこの温度で維持する。153gの水を留去する。次に、混合物を180℃に冷却し、490.5gのクレゾールを21.6gのオルト−チタン酸テトラブチルエステルと共に、最高150℃で添加する。得られたポリエステル溶液の固形分は59.7%である。
【0041】
実施例3(成分Bとして、アミド基を含むポリウレタン樹脂)
撹拌機、還流冷却器、および温度計を備えた2リットルの3ツ口フラスコ中で、150.0gのキシレン、346.5gのDesmodur(登録商標)44 M、0.2gの一般的な触媒(例えば、水酸化物)、49.6gのトリメチロールプロパン、および216.5gの2−オキソ−シクロペンチルカルボン酸エチルエステルを、NCO数が約4時間後に<6.5%に低下するまで70℃に加熱する。次いで、混合物を40℃に冷却し、160.0gのポリエステルイミド樹脂溶液(クレゾール中固形分30.2%、ヒドロキシル数:322mgKOH/g)を添加し、140℃に加熱する。3時間後に、1040mPasの粘度(4:4、クレゾール中、25℃)が実現される。次いで、混合物を577.2gのクレゾールで希釈し、樹脂を濾過する。得られたアミドウレタン樹脂溶液の粘度は、25℃において5500mPasであり、固形分は44.6%である。
【0042】
実施例4(成分Bとして、アミド基を含むポリエステル樹脂)
撹拌機、還流冷却器、および温度計を備えた2リットルの3ツ口フラスコ中で、150.0gのキシレン、272.2gのDesmodur(登録商標)44 M(実施例3に記載)、0.2gの一般的な触媒(例えば、水酸化物)、および340.0gの2−オキソ−シクロペンチルカルボン酸エチルエステルを、NCO数が約4時間後に<0.5%に低下するまで70℃に加熱する。次いで、混合物を40℃に冷却し、48.7gのトリメチロールプロパンを添加し、140℃に加熱する。3時間後に、1150mPasの粘度(4:5、クレゾール中、25℃)が実現される。次いで、混合物を688.9gのクレゾールで希釈し、樹脂を濾過する。得られたアミドエステル樹脂溶液の粘度は、25℃において4800mPasであり、固形分は44.5%である。
【0043】
実施例5(成分Bとして、アミド基を含む樹脂)
撹拌機、還流冷却器、および温度計を備えた2リットルの3ツ口フラスコ中で、150.0gのキシレン、304.0gのDesmodur(登録商標)VL、0.2gの一般的な触媒(例えば、水酸化物)、および356.9gの2−オキソ−シクロペンチルカルボン酸エチルエステルを、NCO数が約4時間後に<0.5%に低下するまで70℃に加熱する。3時間後に、980mPasの粘度(4:5、クレゾール中、25℃)に到達する。次いで、混合物を688.9gのクレゾールで希釈し、樹脂を濾過する。得られたアミド樹脂溶液の粘度は、25℃において4200mPasであり、固形分は44.6%である。
【0044】
実施例6(ポリエステルイミドエナメルと本発明によるポリエステルアミドイミドエナメルの比較)
エナメル6a(従来技術):
653.1gの実施例1からのポリエステルイミド溶液、211.2gのクレゾール、86.0gの芳香族炭化水素混合物、30.6gのベンジルアルコール、10.2gの一般的な市販の触媒A、ならびに少量(8.9g)の一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は39.7%であり、粘度は25℃において1250mPasである。
【0045】
エナメル6b:
479.0gの実施例1からのポリエステルイミド溶液、214.0gの実施例3のアミドウレタン樹脂溶液、173.3gのクレゾール、84.0gの芳香族炭化水素混合物、30.6gのベンジルアルコール、10.2gの一般的な市販の触媒A、ならびに少量(8.9g)の一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は39.9%であり、粘度は25℃において1320mPasである。
【0046】
エナメル6c:
384.0gの実施例1からのポリエステルイミド溶液、342.0gの実施例3のアミドウレタン樹脂溶液、142.3gのクレゾール、82.0gの芳香族炭化水素混合物、30.6gのベンジルアルコール、10.2gの一般的な市販の触媒A、ならびに少量(8.9g)の一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は39.2%であり、粘度は25℃において1400mPasである。
【0047】
エナメル6d:
274.0gの実施例1からのポリエステルイミド溶液、490.0gの実施例3のアミドウレタン樹脂溶液、106.3gのクレゾール、80.0gの芳香族炭化水素混合物、30.6gのベンジルアルコール、10.2gの一般的な市販の触媒A、ならびに少量(8.9g)の一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は40.0%であり、粘度は25℃において1420mPasである。
【0048】
エナメル6e:
175.0gの実施例1からのポリエステルイミド溶液、625.0gの実施例3のアミドウレタン樹脂溶液、72.3gのクレゾール、78.0gの芳香族炭化水素混合物、30.6gのベンジルアルコール、10.2gの一般的な市販の触媒A、ならびに少量(8.9g)の一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は39.4%であり、粘度は25℃において1500mPasである。
【0049】
実施例7(ポリエステルエナメルと本発明によるポリエステルアミドエナメルの比較)
エナメル7a(従来技術):
745.0gの実施例2からのポリエステル溶液、15.0gのクレゾール、29.0gのベンジルアルコール、42.0gのシクロヘキサノン、52.0gのメチルジグリコール、10.0gの芳香族炭化水素混合物A、30.0gの芳香族炭化水素混合物B、ならびに68.0gの一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は50.4%であり、粘度は25℃において3920mPasである。
【0050】
エナメル7b:
591.0gの実施例2からのポリエステル溶液、207.0gの実施例3からのアミドウレタン樹脂溶液、11.0gのクレゾール、21.0gのベンジルアルコール、30.0gのシクロヘキサノン、38.0gのメチルジグリコール、7.0gの芳香族炭化水素混合物A、27.0gの芳香族炭化水素混合物B、ならびに68.0gの一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は50.0%であり、粘度は25℃において4050mPasである。
【0051】
エナメル7c:
490.0gの実施例2からのポリエステル溶液、342.0gの実施例3からのアミドウレタン樹脂溶液、9.5gのクレゾール、16.0gのベンジルアルコール、22.5gのシクロヘキサノン、27.0gのメチルジグリコール、5.0gの芳香族炭化水素混合物A、20.0gの芳香族炭化水素混合物B、ならびに68.0gの一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は49.6%であり、粘度は25℃において4240mPasである。
【0052】
エナメル7d:
366.0gの実施例2からのポリエステル溶液、508.0gの実施例3からのアミドウレタン樹脂溶液、6.5gのクレゾール、9.5gのベンジルアルコール、13.0gのシクロヘキサノン、15.0gのメチルジグリコール、3.0gの芳香族炭化水素混合物A、11.0gの芳香族炭化水素混合物B、ならびに68.0gの一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は49.9%であり、粘度は25℃において4430mPasである。
【0053】
エナメル7e:
243.0gの実施例2からのポリエステル溶液、673.0gの実施例3からのアミドウレタン樹脂溶液、1.0gのクレゾール、2.0gのベンジルアルコール、4.0gのシクロヘキサノン、5.0gのメチルジグリコール、1.0gの芳香族炭化水素混合物A、3.0gの芳香族炭化水素混合物B、ならびに68.0gの一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は49.4%であり、粘度は25℃において4510mPasである。
【0054】
実施例8(ポリエステルイミドエナメルと本発明によるポリエステルアミドイミドエナメルの比較)
エナメル8a(従来技術):
653.1gの実施例1からのポリエステルイミド溶液、211.2gのクレゾール、86.0gの芳香族炭化水素混合物、30.6gのベンジルアルコール、10.2gの一般的な市販の触媒A、ならびに少量(8.9g)の一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。
【0055】
得られた電線エナメルの固形分は39.7%であり、粘度は25℃において1250mPasである(エナメル6aに相当)。
【0056】
エナメル8b:
448.8gの実施例1からのポリエステルイミド溶液、254.8gの実施例4からのアミドエステル樹脂溶液、166.7gのクレゾール、81.0gの芳香族炭化水素混合物、30.6gのベンジルアルコール、10.2gの一般的な市販の触媒A、ならびに少量(8.9g)の一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。
【0057】
得られた電線エナメルの固形分は39.5%であり、粘度は25℃において1200mPasである。
【0058】
エナメル8c:
346.5gの実施例1からのポリエステルイミド溶液、393.4gの実施例4からのアミドエステル樹脂溶液、138.2gのクレゾール、78.0gの芳香族炭化水素混合物、30.6gのベンジルアルコール、10.2gの一般的な市販の触媒A、ならびに少量(8.9g)の一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。
【0059】
得られた電線エナメルの固形分は39.9%であり、粘度は25℃において1250mPasである。
【0060】
エナメル8d:
238.0gの実施例1からのポリエステルイミド溶液、540.0gの実施例4からのアミドエステル樹脂溶液、95.9gのクレゾール、76.0gの芳香族炭化水素混合物、30.6gのベンジルアルコール、10.2gの一般的な市販の触媒A、ならびに少量(8.9g)の一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。
【0061】
得られた電線エナメルの固形分は39.8%であり、粘度は25℃において1310mPasである。
【0062】
エナメル8e:
146.3gの実施例1からのポリエステルイミド溶液、664.6gの実施例4からのアミドエステル樹脂溶液、65.4gのクレゾール、74.0gの芳香族炭化水素混合物、30.6gのベンジルアルコール、10.2gの一般的な市販の触媒A、ならびに少量(8.9g)の一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。
【0063】
得られた電線エナメルの固形分は39.2%であり、粘度は25℃において1290mPasである。
【0064】
実施例9(ポリエステルエナメルと本発明によるポリエステルアミドエナメルの比較)
エナメル9a(従来技術):
745.0gの実施例2からのポリエステル溶液、15.0gのクレゾール、29.0gのベンジルアルコール、42.0gのシクロヘキサノン、52.0gのメチルジグリコール、10.0gの芳香族炭化水素混合物A、39.0gの芳香族炭化水素混合物B、ならびに68.0gの一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は50.4%であり、粘度は25℃において3920mPasである(エナメル7aに相当)。
【0065】
エナメル9b:
559.8gの実施例2からのポリエステル溶液、249.0gの実施例4からのアミドエステル樹脂溶液、10.0gのクレゾール、19.0gのベンジルアルコール、28.0gのシクロヘキサノン、35.0gのメチルジグリコール、6.0gの芳香族炭化水素混合物A、25.2gの芳香族炭化水素混合物B、ならびに68.0gの一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は49.8%であり、粘度は25℃において3870mPasである。
【0066】
エナメル9c:
448.2gの実施例2からのポリエステル溶液、398.8gの実施例4からのアミドエステル樹脂溶液、8.0gのクレゾール、14.0gのベンジルアルコール、18.5gのシクロヘキサノン、23.5gのメチルジグリコール、4.0gの芳香族炭化水素混合物A、17.0gの芳香族炭化水素混合物B、ならびに68.0gの一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は49.9%であり、粘度は25℃において4010mPasである。
【0067】
エナメル9d:
320.4gの実施例2からのポリエステル溶液、570.2gの実施例4からのアミドエステル樹脂溶液、4.4gのクレゾール、7.0gのベンジルアルコール、9.0gのシクロヘキサノン、11.0gのメチルジグリコール、2.0gの芳香族炭化水素混合物A、8.0gの芳香族炭化水素混合物B、ならびに68.0gの一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は50.2%であり、粘度は25℃において4230mPasである。
【0068】
エナメル9e:
204.0gの実施例2からのポリエステル溶液、726.3gの実施例4からのアミドエステル樹脂溶液、1.7gのベンジルアルコール、ならびに68.0gの一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は50.6%であり、粘度は25℃において4300mPasである。
【0069】
実施例10(ポリエステルイミドエナメルと本発明によるポリエステルアミドイミドエナメルの比較)
エナメル10a(従来技術):
653.1gの実施例1からのポリエステルイミド溶液、211.2gのクレゾール、86.0gの芳香族炭化水素混合物、30.6gのベンジルアルコール、10.2gの一般的な市販の触媒A、ならびに少量(8.9g)の市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は39.7%であり、粘度は25℃において1259mPasである(エナメル6aに相当)。
【0070】
エナメル10b:
530.7gの実施例1からのポリエステルイミド溶液、143.5gの実施例5からのアミド樹脂溶液、185.5gのクレゾール、90.6gの芳香族炭化水素混合物、30.6gのベンジルアルコール、10.2gの一般的な市販の触媒A、ならびに少量(8.9g)の市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は39.6%であり、粘度は25℃において1150mPasである。
【0071】
エナメル10c:
454.9gの実施例1からのポリエステルイミド溶液、246.0gの実施例5からのアミド樹脂溶液、158.5gのクレゾール、90.9gの芳香族炭化水素混合物、30.6gのベンジルアルコール、10.2gの一般的な市販の触媒A、ならびに少量(8.9g)の市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は39.5%であり、粘度は25℃において1170mPasである。
【0072】
エナメル10d:
353.8gの実施例1からのポリエステルイミド溶液、382.7gの実施例5からのアミド樹脂溶液、124.6gのクレゾール、89.2gの芳香族炭化水素混合物、30.6gのベンジルアルコール、10.2gの一般的な市販の触媒A、ならびに少量(8.9g)の市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は39.8%であり、粘度は25℃において1210mPasである。
【0073】
エナメル10e:
244.9gの実施例1からのポリエステルイミド溶液、529.9gの実施例3からのアミド樹脂溶液、95.3gのクレゾール、80.2gの芳香族炭化水素混合物、30.6gのベンジルアルコール、10.2gの一般的な市販の触媒A、ならびに少量(8.9g)の市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は40.1%であり、粘度は25℃において1240mPasである。
【0074】
実施例11(ポリエステルエナメルと本発明によるポリエステルアミドエナメルの比較)
エナメル11a(従来技術):
745.0gの実施例2からのポリエステル溶液、15.0gのクレゾール、29.0gのベンジルアルコール、42.0gのシクロヘキサノン、52.0gのメチルジグリコール、10.0gの芳香族炭化水素混合物A、39.0gの芳香族炭化水素混合物B、ならびに68.0gの一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は50.4%であり、粘度は25℃において3920mPasである(エナメル7aに相当)。
【0075】
エナメル11b:
643.5gの実施例2からのポリエステル溶液、136.4gの実施例5からのアミド樹脂溶液、12.5gのクレゾール、24.0gのベンジルアルコール、34.5gのシクロヘキサノン、44.0gのメチルジグリコール、8.0gの芳香族炭化水素混合物A、29.1gの芳香族炭化水素混合物B、ならびに68.0gの一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は49.8%であり、粘度は25℃において3850mPasである。
【0076】
エナメル11c:
566.1gの実施例2からのポリエステル溶液、240.0gの実施例5からのアミド樹脂溶液、11.3gのクレゾール、19.6gのベンジルアルコール、27.9gのシクロヘキサノン、34.2gのメチルジグリコール、6.9gの芳香族炭化水素混合物A、26.0gの芳香族炭化水素混合物B、ならびに68.0gの一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は49.6%であり、粘度は25℃において3040mPasである。
【0077】
エナメル11d:
456.4gの実施例2からのポリエステル溶液、386.9gの実施例5からのアミド樹脂溶液、8.7gのクレゾール、13.9gのベンジルアルコール、19.6gのシクロヘキサノン、23.8gのメチルジグリコール、5.2gの芳香族炭化水素混合物A、17.5gの芳香族炭化水素混合物B、ならびに68.0gの一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は49.7%であり、粘度は25℃において4030mPasである。
【0078】
エナメル11e:
328.8gの実施例2からのポリエステル溶液、557.6gの実施例5からのアミド樹脂溶液、3.2gのクレゾール、6.3gのベンジルアルコール、10.3gのシクロヘキサノン、13.4gのメチルジグリコール、3.2gの芳香族炭化水素混合物A、9.2gの芳香族炭化水素混合物B、ならびに68.0gの一般的な市販の表面添加剤およびフェノール樹脂を撹拌しながら、エナメルに作製する。得られた電線エナメルの固形分は49.5%であり、粘度は25℃において4100mPasである。
【0079】
結果
DIN 46453およびDIN EN 60851による試験データ:
【0080】
ポリエステルイミド(実施例6、8、および10)
直径0.65mmの銅線に、オーブン温度580℃で、それぞれ38および46m/分でエナメルを施した。
【0081】
アミドウレタン樹脂の場合:

【0082】
アミドエステル樹脂の場合:

【0083】
アミド樹脂の場合:

【0084】
表から、アミド基を含む樹脂の含有量が高くなると、エナメルは、エナメル化速度を38から48m/分に顕著に変化させたとき、その一般的特性をよりよく維持する(すなわち、本発明によるエナメルは、急速なエナメル化でよりよい性能を示す)ことが明確にわかる。一方、比較エナメル(a)は、エナメル化速度を上昇させると、性能の大幅な損失を示す。
【0085】
ポリエステル(実施例7、9、および11):
直径1.0mmの銅線に、オーブン温度560℃で、それぞれ45および52m/分でエナメルを施した。
【0086】
アミドウレタン樹脂の場合:

【0087】
アミドエステル樹脂の場合:

【0088】
アミド樹脂の場合:

【0089】
表から、アミド基を含む樹脂の含有量が高くなると、エナメルは、エナメル化速度を45から52m/分に顕著に変化させたとき、その一般的特性をよりよく維持する(すなわち、本発明によるエナメルは、急速なエナメル化でよりよい性能を示す)ことが明確にわかる。一方、比較エナメル(a)は、エナメル化速度を上昇させると、性能の大幅な損失を示す。さらに、エナメル9および11は、標準(9a、11a)に比べて、熱ショックの大幅な改善を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
求核基を有する樹脂をベースとする電線被覆用組成物であって、
(A)OH、NHR、SH、カルボキシレート、およびCH−酸性基からなる群から選択された求核基を有する少なくとも1種の樹脂5〜95重量%と、
(B)少なくとも1種のアミド基を含む樹脂0〜70重量%と、
(C)少なくとも1種の有機溶媒5〜95重量%と
を含み、
成分(A)または成分(B)の樹脂が、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含み、(A)〜(C)の重量パーセントが合計100パーセントになる組成物。
【請求項2】
(A)OH、NHR、SH、カルボキシレート、およびCH−酸性基からなる群から選択された求核基を有する少なくとも1種の樹脂5〜60重量%と、
(B)少なくとも1種のアミド基を含む樹脂1〜50重量%と、
(C)少なくとも1種の有機溶媒5〜90重量%と、
(D)少なくとも1種の触媒0〜10重量%と、
(E)少なくとも1種のフェノール樹脂および/またはメラミン樹脂および/またはブロックイソシアナート0〜20重量%と、
(F)一般的に使用される添加剤または補助剤0〜3重量%と、
(G)ナノスケール粒子0〜70重量%と、
(H)一般的に使用される充填剤および/または顔料0〜60重量%と
を含み、
成分(A)または成分(B)の樹脂が、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含み、(A)〜(H)の重量パーセントが合計100パーセントになる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(B)が、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1種のポリエステルおよび/またはポリエステルイミドが、成分(A)として使用される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
成分(G)の粒子の平均粒径が、1〜300nmの範囲である、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
粒子が、ケイ素、亜鉛、アルミニウム、スズ、ホウ素、ゲルマニウム、ガリウム、鉛、遷移金属、ならびにランタニドおよびアクチニドからなる系列からの元素を含む元素−酸素のネットワークをベースとし、これらの粒子の元素−酸素のネットワークの表面を、反応性有機基で変性することができる、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
元素−有機化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
オルト−チタン酸エステル、オルト−ジルコン酸エステル、チタニウムテトララクタート、ハフニウムおよびケイ素化合物、ならびにシリコーン樹脂が、元素−有機化合物として使用される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
導電性電線を被覆する方法であって、請求項1に記載の組成物を塗布するステップと、前記被覆用組成物を高温で硬化して、硬化被覆を生成するステップとを含む方法。
【請求項10】
電線を前被覆する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
被覆用組成物を、単層として、ならびに/または多層被覆内のベースコート、ミドルコート、および/またはトップコートとして塗布する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の被覆用組成物で被覆され、硬化された導電性電線。

【公表番号】特表2009−504845(P2009−504845A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526105(P2008−526105)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/030709
【国際公開番号】WO2007/019434
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】