説明

新規ポリ(メタ)アクリレート共重合体ならびに小胞体及びゴルジ体への送達方法

【課題】MPCなどのリン脂質極性基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーを含む新規共重合体及びその新規用途を提供すること。
【解決手段】(メタ)アクリルアミド系化合物、(メタ)アクリル酸エステル、及び次式[R、R、Rは互いに独立して、水素原子又はメチル基、Rは炭素数8〜24の直鎖又は分枝鎖の飽和又は不飽和の1価の炭化水素基、Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基、Rは炭素数1〜4の2価の炭化水素基、R、R、Rは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基、Aはエステル結合、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合からなる群から選択される2価の結合、Lは単結合又は連結基、Xは送達されるべき物質の残基。]:

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ポリ(メタ)アクリレート共重合体、ならびにそれを用いて所望の物質を小胞体及びゴルジ体に送達する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖脂質は、その他の膜構成成分とともに細胞膜とこれらの細胞小器官の間を循環している。ゴルジ体では、糖鎖がひとつずつ付加されて新たな糖脂質が合成され、リソソームでは、糖脂質が一つずつ糖鎖を除かれて分解される。エンドソームではエンドサイトーシスによって細胞膜から細胞内へ取り込まれた糖脂質がゴルジ体若しくはリソソームへと振り分けられる。また、ゴルジ体で合成された糖脂質やエンドサイトーシスで取り込まれた糖脂質の一部はここを通って細胞膜へと戻っていく。細胞の種類にもよるが、細胞膜の糖脂質は、30〜40分で半数が循環し、糖脂質組成の恒常性を維持している。膜間の移動は、ほとんどの場合、二層膜構造を維持した小胞を形成して行われる。
このような、糖脂質などの生合成、修飾に重要なゴルジ体や小胞体に所望の物質を選択的に送達する手法は知られてない。
【0003】
ところで、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下「MPC」ともいう)と(メタ)アクリレートとを重合させて得られる共重合体は、薬物放出システム(非特許文献1)、血液適合性材料(非特許文献2)、化粧料用粉体のコーティング剤(特許文献1)、糖鎖化合物吸着制御実験器具用のコーティング材料(特許文献2及び3)として、研究開発されている。
【特許文献1】特開2004−189652号公報
【特許文献2】特開2004−275862号公報
【特許文献3】特開2004−290111号公報
【非特許文献1】石原一彦、上田智子、中林宣男、「リン脂質類似構造を有するハイドロゲル膜からの薬物放出特性」、高分子論文集、1989年、第46巻、第10号、p.591−595
【非特許文献2】上田智子、石原一彦、中林宣男、「ハイドロゲルの血液適合性に及ぼす親水性基構造の影響」、生体材料、1991年、第9巻、第6号、p.288−295
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、MPCなどのリン脂質極性基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーを含む新規共重合体及びその新規用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意研究の結果、所望の物質を担持した(メタ)アクリルアミド誘導体モノマーと、特定の(メタ)アクリル酸誘導体モノマーと、MPCなどのリン脂質極性基を有する(メタ)アクリル酸誘導体との新規共重合体を用いることによって、所望の物質を小胞体及びゴルジ体に選択的に送達できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、
式(I):
【化8】


で示される繰り返し単位(以下「単位I」ともいう)、
式(II):
【化9】


で示される繰り返し単位(以下「単位II」ともいう)、及び
式(III):
【化10】


で示される繰り返し単位(以下「単位III」ともいう)
を含有する共重合体
[式中、
、R、及びRは、互いに独立して、水素原子又はメチル基であり;
は、炭素数8〜24の直鎖又は分枝鎖の飽和又は不飽和の1価の炭化水素基(この炭化水素基は、非置換であるか、又はハロゲン若しくはアジド基で置換されている)であり;
は、炭素数1〜10の2価の炭化水素基、又は(ポリ)オキシエチレン基であり;
は、炭素数1〜4の2価の炭化水素基であり;
、R、及びRは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基であり;
Aは、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、及びエーテル結合からなる群から選択される2価の結合であり;
Lは、単結合であるか又は連結基であり;
Xは、送達されるべき物質の残基である]、ならびにその共重合体を用いる所望の物質の小胞体及びゴルジ体への送達方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の共重合体は、生体適合性に優れ、所望の物質を小胞体及びゴルジ体に選択的に送達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
前記式(I)〜(III)中、R、R、及びRは、互いに独立して、水素原子又はメチル基である。Rは重合反応性の点から好ましくは水素原子である。R及びRは得られる共重合体の安定性の点から好ましくはメチル基である。
【0009】
前記式(II)中、Rは、炭素数8〜24の直鎖又は分枝鎖の飽和又は不飽和の1価の炭化水素基である。この炭化水素基は、非置換であるか、又はハロゲン若しくはアジド基で置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。ハロゲン若しくはアジド基で置換された炭化水素基として、12−ブロモドデシル基や12−アジドドデシル基が例示される。
上記の炭化水素基の炭素数は、通常8〜24であるが、所望の物質を好適に送達できる点から、12〜24が好ましく、その点に加えて、送達された物質が送達された小胞体やゴルジ体から漏れにくくなることも加味できる点から、18〜24が好ましい。
上記の不飽和の炭化水素基は、炭素−炭素単結合の他に、炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合あるいはその両方を、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、最も好ましくは1個含んでいてもよい。上記炭化水素基は、得られる共重合体に良好な細胞膜透過性を付与できる点から、飽和しているものが好ましい。
上記炭化水素基として、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、パルミチル基、マルガリル基、ステアリル基、ノナデシル基、アラキジル基、ベヘニル基などの直鎖の高級アルキル基;イソステアリル基などの分岐鎖の高級アルキル基;ミリストレイル基、パルミトレイル基、オレイル基、リノール基、リノレル基、アラキドル基、12−ドコセル基などの不飽和の高級炭化水素基が例示される。また、これらの中でも、得られる共重合体に細胞膜との良好な親和性を付与できることから、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、特にパルミチル基が好ましい。
【0010】
前記式(III)中、Rは、炭素数1〜10の2価の炭化水素基、又は(ポリ)オキシエチレン基:−(OCHCH−(式中、nは、本発明の共重合体に適切な水溶性と生体適合性を付与する単位IIIの機能を損なわない限り特に制限されず、例えば、1〜10である。なお、該ポリオキシエチレン基は−O−を介して基Aと結合する)であり、好ましくは炭素数1〜6の2価の炭化水素基、特にアルキレンである。このようなアルキレンとして、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレンなどが例示され、好ましくは、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン、特にエチレンである。
は、炭素数1〜4の2価の炭化水素基、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどが例示され、エチレンが特に好ましい。
、R、及びRは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基、例えばメチル又はエチルであり、特にR、R、及びRが、同時に、水素原子又はメチル、特にメチルであることが好ましい。
Aは、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、及びエーテル結合からなる群から選択される2価の結合であり、エステル結合、アミド結合、特にエステル結合が好ましい。
【0011】
前記式(I)中、Lは単結合であるか又は連結基であり、連結基として、直鎖又は分枝鎖の飽和又は不飽和炭化水素基が例示される。この炭化水素基の炭素数は、得られる共重合体に高い水溶性を付与できる点から、好ましくは1〜12、より好ましくは2〜12、最も好ましくは2〜6である。この炭化水素基は、互いに隣接しない酸素原子若しくは硫黄原子又はその両方により、1箇所以上、好ましくは1箇所で中断されていてもよい。また、上記不飽和炭化水素基は二重結合若しくは三重結合又はその両方を1個以上含んでもよい。
【0012】
前記式(I)中、Xは、送達されるべき物質の残基である。送達されるべき物質は、上記L基に直接結合していてもよいし、あるいはエステル結合、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、ジスルフィド結合、ジアゾ結合、チオカルバミド結合、アセタール結合、及びケタール結合などからなる群から選択される一つ以上の結合を介して結合していてもよい。上記結合は、例えば、送達されるべき物質に存在する官能基Z又は該物質に新たに導入された官能基Zと、上記L基に導入された官能基Zとを反応させて形成してもよい。これら官能基Z〜Zとして、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキサミド基、イミデート基、イソチオシアナト基、及びイソシアナト基が例示される。
上記結合が小胞体及びゴルジ体において生理学的に切断、例えば加水分解又は酵素によって切断されると、送達されるべき物質が、本発明の共重合体から遊離し、小胞体及びゴルジ体中でその活性や機能を発揮し得ることもある。このような遊離を可能にして送達されべき物質の活性を発現させる点から、上記結合はエステル結合やアミド結合が好ましい。逆に送達されるべき物質の遊離を抑えることで細胞内の糖鎖合成を抑制することができる場合もある。このような遊離を抑える点から、上記結合はエーテル結合が好ましい。
【0013】
上記の送達されるべき物質は、特に制限されず、ヌクレオチド;ペプチド、タンパク質、抗体、酵素;脂質;単糖(グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノースなど)、二糖(マルトース、イソマルトース、ラクトース、スクロースなど)、三糖(マルトトリオースなど)などのオリゴ糖、及び多糖;放射能標識、磁性標識、スピン標識、蛍光標識などの標識;糖鎖生合成の阻害剤;グリコシダーゼ阻害剤(デオキシノジリマイシンなど)などが例示される。特にグリコシダーゼ阻害剤(デオキシノジリマイシンなど)が有用である。
【0014】
本願発明の共重合体は、互いに異なる2種以上の送達されるべき物質の残基をそれぞれ担持した2種以上の単位Iを含有することで、送達されるべき物質を2種以上担持することができる。例えば、所望の送達されるべき物質の他に、標識も送達されるべき物質として担持させることで、送達された箇所を標識することができるので便利である。
【0015】
前記単位IIIは、本発明の共重合体に良好な水溶性と生体適合性が付与される点から、好ましくは
【化11】


である。
【0016】
本発明の共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互性の高い共重合体のいずれでもよく、前記単位I、II、及びIIIが共重合体分子全体に平均的に分布するランダム共重合体が、ゴルジ体や小胞体で基Xに対する生体反応が起こる際、反応場の均一性が保たれることから、好ましい。
【0017】
本発明の共重合体において、単位Iは、送達されるべき物質を担持する役割を有する。単位IIは、本発明の共重合体に細胞膜貫通性と小胞体及びゴルジ体への標的指向性とを付与する役割を有する。単位IIIは、本発明の共重合体に水溶性と生体適合性を付与する役割を有する。このような各単位の役割によって、本発明の共重合体は、水溶性及び生体適合性を確保しつつ、細胞膜に貫通することもでき、その結果、送達されるべき物質を小胞体及びゴルジ体に選択的に送達せしめる。これら単位の比率を変化させることで、本発明の共重合体の細胞膜貫通性、標的指向性、水溶性、生体適合性を適宜制御することができる。
本発明の共重合体において単位Iと単位IIと単位IIIとの含有比は、本発明の共重合体に適切な細胞膜貫通性、水溶性、生体適合性などを付与する点から、モル比で0.1〜2:0.1〜2:1、特に0.1〜1:0.1〜1:1、とりわけ0.1〜1:0.2〜1:1であるのが好ましい。
上記の単位の比率を変化させる手法は、特に制限されず、原料となる単量体の混合比を調整する方法が例示される。
【0018】
さらに、本発明の共重合体の数平均分子量は、本発明の共重合体に適切な細胞膜貫通性、水溶性、生体適合性などを付与する点から、1×10〜1×10、特に1×10〜1×10、とりわけ1×10〜5×10であるのが好ましい。なお、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する。
【0019】
本発明により所望の物質を小胞体及びゴルジ体に送達する方法としては、特に制限されるわけではないが、例えば、培養細胞に所望の物質を送達したい場合は、当該細胞の培養液に、送達したい所望の物質を担持する本発明の共重合体を添加して、適切な時間、例えば5〜120分間培養を続けることで、所望の物質を小胞体及びゴルジ体に送達することができる。
上記の培養条件は、培養される細胞の種類に応じて当業者が適宜選択してもよいが、血清を培地中に含むことが、所望の物質の小胞体及びゴルジ体への選択的送達が高まる点から好ましい。この点から、血清は上記培養液中に5〜10%含有されるのが好ましい。血清は、細胞培養に通常用いられているものであれば特に制限されず、ウシ胎児血清(FBS)、新生ウシ血清、仔ウシ血清、ウマ血清が例示される。
【0020】
本発明の共重合体を適用する対象として、ゴルジ体や小胞体を有している真核細胞が例示される。ガン細胞、例えば子宮頸ガン由来細胞(Hela)、メラノーマ細胞、腎臓細胞、脳細胞などが例示される。
【0021】
本発明の共重合体は、単位IIが疎水性を示し、単位IIIが親水性を示すことから、溶液中である濃度以上になると、自己会合することが予想される。本発明の共重合体を培養細胞に投与する場合、小胞体及びゴルジ体に所望の物質を良好に送達する上で、ミセルを形成しない濃度(境界ミセル濃度)、例えば1〜1000μg/ml、特に1〜200μg/ml、とりわけ1〜100μg/mlで、該細胞を培養又は分散させた液に添加することが好ましい。
このような共重合体の境界ミセル濃度(cmc)は慣用の方法で測定できる。
例えば、ピレンを蛍光プローブとして用いて本発明の共重合体の凝集濃度を求めてもよい。ピレンは親水場では334.5nmに発光ピークを示し、疎水場では高波長側にシフトし、336.5nmに発光ピークを示す。共重合体が凝集しピレンが取り込まれると、発光ピークがシフトすることを利用して凝集濃度を求めることができる。溶液中での共重合体の濃度をさまざまに変化させ、それに伴うピレンの励起スペクトルを観察し、その蛍光強度比(334.5nm/336.5nm)を求め、この蛍光強度比を共重合体濃度のLog値に対してプロットする。その変極点を計算することで凝集濃度が求まる。
【0022】
本発明の共重合体の製法を以下に説明するが、本発明の共重合体は必ずしも下記の製法によって得られるものに限定されるわけではない。
【0023】
式(IV):
【化12】


で示される化合物(以下「単量体I」ともいう)、
式(V):
【化13】


で示される化合物(以下「単量体II」ともいう)、及び
式(VI):
【化14】


で示される化合物(以下「単量体III」ともいう)
を重合させて、本発明の共重合体を得ることができる[式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、A、L、及びXは、前記で定義されたとおりである]。
すなわち、本発明はこの方法で得られる共重合体にも関する。
【0024】
単量体I、II、及びIIIを重合させて本発明の共重合体を得るのは、公知の方法、例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合などの方法を用いて、必要に応じて不活性ガス、例えば、窒素、二酸化炭素、ヘリウムで置換して、ラジカル重合させる方法などで製造することもできる。この場合、溶媒中で、開始剤存在下で、0〜100℃、好ましくは60〜65℃で、10分〜48時間、好ましくは4〜20時間、より好ましくは4〜8時間、上記単量体を反応させることで本発明の共重合体を得ることができる。このとき、溶媒として用いることができるものは、上記単量体を溶解できるものであればよく、具体的には水、メタノール、エタノール、プロパノール、t−ブタノール、ベンゼン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ならびにこれらの混合溶媒、例えば、DMSOと水との、エタノールとテトラヒドロフランとの混合溶媒が例示される。
開始剤としては、通常のラジカル開始剤であればいずれも用いることができ、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチルアミド二水和物、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスマレノニトリルなどの脂肪酸アゾ化合物、t−ブチルペルオキシネオデカノエート(商品名「パーブチルND」、日本油脂(株)製、以下P−NDと略記する)、又はこれらの混合物などが例示される。上記重合開始剤には各種レドックス系の促進剤を用いてもよい。重合開始剤の使用量は、単量体I、II、及びIIIの合計100重量部に対して0.01〜5.0重量部が好ましい。
このようにして得られた共重合体の精製は、再沈澱法、透析法、限外濾過法など一般的な精製法により行うことができる。
【0025】
単量体Iは、特に制限されず、公知の方法を用いて製造できるが、以下の方法が例示される。先ず、連結基及びアミノ基を有する化合物:HN−L−Z(式中、Lは連結基であり、Z基はヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基などの前記官能基である。Z基はFmoc基などの保護基で保護されていてもよい)を公知の方法を用いて合成する。次いで、これにアクリル酸(又はメタクリル酸):CH=CR−COOHを市販の縮合剤を用いて縮合させ、CH=CR−CO−HN−L−Zを得る。Z基が保護されている場合は脱保護してから、この得られた化合物のZ基と所望の送達させるべき物質に存在する前記官能基Z又はZとを反応させて前記結合を形成させて、単量体I:CH=CR−CO−HN−L−Xを得ることができる。また、Lが単結合のときは、上記アクリル酸(又はメタクリル酸)のカルボキシル基と送達されるべき物質:HN−Xに存在するアミノ基とをアミド結合させることで、単量体I:CH=CR−CO−HN−Xを得ることができる。
【0026】
単量体IIは、公知の方法で製造することができる。
【0027】
単量体IIIは、特開2005−239988号公報に記載された方法などの公知の方法で製造することができる。単量体IIIとしては、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスホリルコリン、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルホスホリルコリン、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルホスホリルコリン、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルホスホリルコリン、ω−(メタ)アクリロイル(ポリ)オキシエチレンホスホリルコリン、2−アクリルアミドエチルホスホリルコリン、3−アクリルアミドプロピルホスホリルコリン、4−アクリルアミドブチルホスホリルコリン、6−アクリルアミドヘキシルホスホリルコリン、10−アクリルアミドデシルホスホリルコリン、ω−(メタ)アクリルアミド(ポリ)オキシエチレンホスホリルコリン、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルエタノールアミン、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルエタノールアミン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスホリルエタノールアミン、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルホスホリルエタノールアミン、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルホスホリルエタノールアミン、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルホスホリルエタノールアミン、ω−(メタ)アクリロイル(ポリ)オキシエチレンホスホリルエタノールアミンが例示される。
上記単量体中の(ポリ)オキシエチレン部分のオキシエチレン単位の繰り返し数は、本発明の共重合体に適切な水溶性と生体適合性を付与する単位IIIの機能を損なわない限り特に制限されず、例えば、1〜10である。
【0028】
特に好ましくは、本発明の共重合体に良好な水溶性と生体適合性を付与する点から、下式:
【化15】


で示される2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンである。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、これにより本発明が限定されるものではない。
なお、NMR測定には日本電子製のECP-600核磁気共鳴分光計(1H 600MHz;13C 150MHz)を使用して行った。共重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、島津製作所製(LC−9A、RID−6A、SPD−10A)を利用し、測定には東ソー製のカラム、TSK-gel G4000PWXL、G3000PWXL、G2000PWXL、G-Oligo PWXLを使用して、GPC法で測定した。標準にはプルランを用いた。試薬は、和光純薬工業株式会社及び東京化成工業より購入し精製せずに用いた。カラムクロマトグラフィー用シリカゲルは、MERCK silica gel(70-230 mesh)を用いた。薄層クラマトグラフィーは、MERCK TLC plate silica gel(60 F2540.25mm)を用いた。
【0030】
ラクトース担持単量体1の合成
【化16】


5−アミノ−1−ペンタノールをアクリル化してからグリコシレーションさせた。イミデート基を導入したアセチルラクトース(3)と、5−アミノ−1−ペンタノールをアクリル化して得たN−アクリルペンタノール(10)とをグリコシレーションさせたところ、約10%の収率で化合物7を得た。次いで、脱アセチル化を行ってラクトース担持単量体1を得た。
【0031】
4−O−(2’,3’,4’,6’−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトピラノシル)−2,3,6−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド−α−トリクロロアセトイミデート(3)の合成
【化17】


アルゴン雰囲気下、アセチルラクトース(30g、29.5mol)を80mlのDMFに溶解し、氷浴下でヒドラジン一水和物(1.43ml、1.0eq)を加えた。複数のアセチル基が外れるのを防ぐため、未反応物が残っている状態で濃縮した。続いて、アルゴン雰囲気下、1,2-ジクロロエタン(15ml)に溶解し、トリクロロアセトニトリル(15ml、5.1eq)を加え、室温で撹拌した。氷冷下でDBU(1.8ml、0.4eq)を滴下し、室温で一晩撹拌した。反応終了後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製し、ベンゼンによる凍結乾燥の後、白黄色固体の標記化合物3(12.8g、2工程、収率55.8%)を得た。
【0032】
5−アクリルアミド−1−ペンタノール(10)の合成
【化18】


5−アミノ−1−ペンタノール(5ml、46.0mmol)、炭酸ナトリウム(5.85g、1.2eq)をメタノール(50ml)に溶解させ、氷浴下でアクリル酸クロリド(4.5ml、1.2eq)を滴下し、室温で1時間攪拌した。反応終了後、濃縮し、オープンカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=4:1)により精製し、化合物10(4.79g、62.8%)を得た。
【0033】
1−(5−N−アクリルアミド−1−ペンタニル)−4−O−(2’,3’,4’,6’−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトピラノシル)−2,3,6−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド(7)の合成
【化19】


アルゴン雰囲気下、化合物3(3g、3.84mmol)をジクロロメタン(90ml)に溶解し、化合物10(0.91mg、1.5eq)とモレキュラーシーブス(9g)を加え、-30℃まで冷却し、30分撹拌した。三フッ化ホウ素・エーテル錯体(420μl、0.4eq)を0.1Mになるようにジクロロメタンにより希釈し、数回に分けて滴下し-30℃で3時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮しオープンカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:4)で精製し、標記化合物7(0.315g、10.6%)を得た。
【0034】
1−(5−N−アクリルアミド−1−ペンタニル)−4−O−(β−D−ガラクトピラノシル)−β−D−グルコピラノシド(1)の合成
【化20】


化合物7(995mg、1.5mmol)をメタノール(30ml)に溶解させ、ナトリウムメトキシド(4.0mg、0.75eq)を加え、室温で一晩撹拌した。反応終了後、陽イオン交換樹脂を加え、反応液を中和し、ろ過により樹脂を取り除いた後濃縮し、ラクトース担持単量体1として標記化合物1(720mg)を得た。
【0035】
蛍光標識担持単量体13の合成
片側がFmoc基で保護された1,5−ジアミノペンタンと蛍光物質フルオレセインイソチオシアネート(FITC)を用い、蛍光標識担持単量体13を合成した(スキーム2)。
【0036】
【化21】

【0037】
(9H−フルオレン−9−イル)メチル 5−(アクリルアミド)ペンチルカルバメート(15)の合成
【化22】


(9H−フルオレン−9−イル)メチル 5−(アンモニウムクロリド)ペンチルカルバメート(200 mg、0.55 mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、193μl、2.0eq)をDMF(4 ml)に溶解させ、氷浴下でアクリル酸クロリド(50 μl、1.1eq)を滴下し、室温で1時間攪拌した。反応終了後、反応液を水に滴下することで再沈殿を行った。遠心により沈殿物を集め、10%クエン酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液により洗浄を行った後、凍結乾燥させ白色の標記化合物15を得た。
【0038】
N−(5−アミノペンチル)アクリルアミド(16)の合成
【化23】


化合物15(200.1mg、529μmol)をジエチルアミン(10ml)に溶解させ、終夜で攪拌した。反応終了後、濃縮し、クロロホルムにより抽出を行い、水相を集め、凍結乾燥させ白色の標記化合物16(119.2mg、144%)を得た。NMRにより化合物16とジエチルアミンが約1:1で混じっていることが確認できた。
【0039】
5−(3−(5−(アクリルアミド)ペンチル)チオウレイド)−2−(3−ヒドロキシ−6−オキソ−6H−キサンテン−9−イル)安息香酸(13)の合成
【化24】


化合物16(19.6mg、2.0eq)、トリエチルアミン(9.9μl、1.1eq)をDMF(250μl)、メタノール(50μl)に溶解させ、遮光下で、FITC(25.6mg、64.2μmol)を加え終夜で攪拌した。反応終了後、分取TLC(クロロホルム:メタノール=2:1)により精製し、蛍光標識担持単量体13として標記化合物13(7.2mg、20.5%)を得た。
【0040】
共重合体の合成(例1〜6)
【化25】


ステアリルメタクリレート(11)は東京化成から購入(M0593)し、MPC(12)は文献(特許2870727 または Polymer Journal, 22(5), 355-360 (1990))に従って合成した。
アルゴン雰囲気下、前記で合成したラクトース担持単量体1と、ステアリルメタクリレート(11)と、MPC(12)と、得られる共重合体の細胞内における存在位置を示す前記で合成した蛍光標識担持単量体13とを、これら単量体を併せた全濃度が0.5Mとなるように、表1に示したモル比でDMSO:水=1:1溶媒に溶解させた。これに開始剤としてAPSを2.5×10-2Mとなるように加え、60℃で20時間攪拌した。アセトンを用いた再沈殿法により精製してから、3500cut offの透析膜を用いて3日間透析した後、凍結乾燥させて、例1〜6の共重合体を得た。得られた共重合体の分子量、共重合体中の各単位の組成を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
細胞への投与
前記で合成した共重合体を細胞に投与し、その結果を顕微鏡により観察することで、該共重合体の細胞内における挙動を観察した。従来の合成修飾剤は細胞に投与すると細胞膜表面を修飾している。そこで、今回合成した共重合体が、細胞に取り込まれないのか、細胞膜に局在するのか、それとも細胞中に取り込まれるのかを確認した。
【0043】
培地・試薬・実験用具
DMEM(Gibco製)、DMEM/F12(Gibco製)、ウシ胎児血清(FBS)、グルタミン(商品名「ニッスイ」、日水製薬製)、トリプシン-EDTA液(0.25%トリプシン、1mM EDTA-4Na含有)、ダルベッコPBS(−)粉末(商品名「ニッスイ」、日水製薬製)、HBSS(Gibco製)
【0044】
Hela細胞の前培養
ヒト子宮頸癌由来細胞(Hela)を用いた。DMEM/F1培地(2mMグルタミン、10%FBS含有)を用い、37℃、5%CO下で培養し、2〜3日ごとに継代を行った。継代の際には、培地を除去した後、トリプシン-EDTA液を2ml加え、細胞表層を洗浄し、除去した後再度トリプシン-EDTA液を2ml加え、37℃、5%CO下で5分ほどインキュベートした。このトリプシン-EDTA液を、あらかじめ10ml程度のDMEM/F12培地を加えてあった15ml遠沈管に加え、遠心分離(1000rpm、5分、室温)することで細胞を沈殿させ、上清を除去して、細胞を回収した。その後、再度10mlのDMEM/F12培地を加え、懸濁させ、血球計算板で細胞数を数え1.0×106cells/7ml/dishとなるように播種した。
【0045】
実験手順
実験は以下の手順により行った。また、共重合体が取り込まれている細胞内の位置は、共重合体に含まれる蛍光標識からの蛍光を検出することで特定した。核の位置はpropidium iodide(PI)で染色することで特定し、ゴルジ体及び小胞体の位置はWGAレクチン−Alexa647で染色することで特定した。
1) 消毒したカバーガラスを6wellプレートに入れ、24時間前培養した(37℃、5%CO、3.0×105cells/well)。
2) 培地を除去し、50μg/mlに調整した前記合成した共重合体の溶液を添加し(2ml/well)、1時間インキュベートした(37℃、5%CO)。
3) HBSSで洗浄した(2ml/well×2回)。
4) メタノールを添加し(0.5ml/well)、5分間インキュベート(室温)して固定した。
5) HBSSで洗浄した(2ml/well×2回)。
6) HBSSを用いて5μg/mlに希釈したWGAレクチン−Alexa647を添加(2ml/well)し、10分間インキュベートした(室温)。
7) HBSSで洗浄した(2ml/well×2回)。
8) HBSSを用いて0.5μg/mlに希釈したPIを添加(1ml/well)し、5分間インキュベートした(37℃、5%CO)。
9) HBSSで洗浄した(2ml/well×2回)。
10) プレパラート上に退色防止剤をカバーガラス1枚につき1滴滴下した。
11) ピンセットを用いて、カバーガラスを取り出し、退色防止剤を滴下した上に、観察面が下になるようにのせた。
12) カバーガラスの周囲をマニュキュアで覆った。
13) 細胞を観察した。
【0046】
結果
共重合体中の脂質の有無による違い
ステアリル基を有する共重合体(例4)及びそれを有さない共重合体(例5)をそれぞれ細胞に投与することで、脂質の有無による違いを調べた。その結果を図1に示した。図1より、例4の共重合体をHela細胞に投与したAの写真に注目すると、細胞のいずれかの部位に共重合体が取り込まれていることが確認できた。そこで、核及びゴルジ体・小胞体をそれぞれ染色した写真B及び写真Cと比較したところ、多くの共重合体がゴルジ体・小胞体の染色部位の局在と一致することがわかった。このことより、取り込まれた共重合体はゴルジ体及び小胞体に局在し、核にまでは運搬されないということがわかった。次に、例5の共重合体を細胞に投与した写真Eと比較すると、例5の共重合体はほとんど細胞に取り込まれないことがわかった。
【0047】
糖質を有する共重合体の投与
ラクトース及びステアリル基を有する例1〜3の共重合体をそれぞれ細胞に投与した。その結果を図2に示した。図2より、例1〜3の共重合体をHela細胞に投与したA、E、Iの写真に注目すると、ラクトースを多く含む共重合体は細胞に導入されず、ラクトースの含有率を減少させると、細胞により取り込まれやすくなっていることがわかった。また、核及びゴルジ体・小胞体を染色した写真と比較すると、細胞内に取り込まれた多くのポリマーはゴルジ体・小胞体のマーカーの局在と一致することがわかった。ラクトースの含有率が大きくなると、ポリマーの親水性が大きくなるため細胞に取り込まれにくくなるのではないかと考えられる。
【0048】
インキュベート時間と細胞への取り込み
例3の共重合体を用いて、インキュベート時間と共重合体の局在を確認した。その結果を図3に示した。図3より、5分間インキュベートした時点ですでに細胞に取り込まれ、かつゴルジ体・小胞体に局在していることがわかった。インキュベート時間が1時間の場合までは、ゴルジ体や小胞体に共重合体が局在していたが、3及び6時間のインキュベート後ではポリマーが細胞全体に広がっていった。
【0049】
血清の影響
10%FBSを含む培地ではなくITS-X(GIBCO社製)を含む培地を用いて例3の共重合体溶液を調整することで、共重合体の取り込みに対する血清の影響を検討した。その結果を図4に示した。ITS-Xを含む培地と比較して、10%FBSを含む培地の方が、共重合体の細胞内への取り込みが大きいことがわかった。単純な濃度拡散によって細胞内に共重合体が取り込まれるのではなく、キャリアー及びエンドサイトーシス経由で細胞内に取り込まれている可能性が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、所望の物質を小胞体やゴルジ体に送達することができる。これによって、例えば、標識を含む本発明の共重合体をこれら小胞体及びゴルジ体の標識として利用することができる。また、例えば、糖転移酵素阻害剤又は原料となる糖を小胞体及びゴルジ体に送達することで、そこで行われる特定の糖鎖生合成を抑制したりあるいは促進させたり制御することができる。また、所望のペプチドを小胞体及びゴルジ体に送達して、そこで所望の糖ペプチドを合成させることができる。
このように細胞内の糖やタンパク質の生合成を制御できるので、糖鎖異常の糖タンパク質や糖脂質などの産生を抑え、正常な糖タンパク質や糖脂質などの生合成を促し、糖鎖異常の糖タンパク質や糖脂質などによる疾患、例えばガンや脳疾患を治療又は予防することができる。
また、ペプチドやタンパク質などへ糖鎖を付与して、糖ペプチド薬剤の生産、あるいは多糖の生産において利用することもできる。特に、本発明の共重合体は、Helaに投与した場合、小胞体やゴルジ体により選択的に送達されることから、このような物質生産ではHela細胞を使用するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の共重合体の細胞内局在を示す図である。A〜Dは例4を、E〜Hは例5を、それぞれ投与した細胞を示す。AとEは投与された共重合体のFITC蛍光を、BとFはPIで染色された核を、CとGはWGAレクチン−Alexa647で染色されたゴルジ体及び小胞体を、それぞれ示す。DはA〜Cを、HはE〜Gを、それぞれ重ね合わせた図である。
【図2】本発明の共重合体の細胞内局在を示す図である。A〜Dは例1を、E〜Hは例2を、I〜Lは例3を、それぞれ投与した細胞を示す。AとEとIは投与された共重合体のFITC蛍光を、BとFとJはPIで染色された核を、CとGとKはWGAレクチン−Alexa647で染色されたゴルジ体及び小胞体を、それぞれ示す。DはA〜Cを、HはE〜Gを、LはI〜Kを、それぞれ重ね合わせた図である。Sugarはラクトース担持単量体1の共重合体組成(mol%)を示す。
【図3】例3の共重合体のインキュベート時間による細胞内局在の変化を示す図である。例3を投与する前(A〜D)、例3を投与しインキュベートを開始してから5分後(E〜H)、60分後(I〜L)、180分後(M〜P)、360分後(Q〜T)の細胞を示す。A、E、I、M、及びQは投与された共重合体のFITC蛍光を、B、F、J、N、及びRはPIで染色された核を、C、G、K、O、及びSはWGAレクチン−Alexa647で染色されたゴルジ体及び小胞体を、それぞれ示す。DはA〜Cを、HはE〜Gを、LはI〜Kを、PはM〜Oを、TはQ〜Sを、それぞれ重ね合わせた図である。
【図4】血清の有無による例3の共重合体の細胞内局在の変化を示す図である。A〜Dは10%FBSを含む培地で、E〜HはITS-Xを含む培地で、それぞれ調製された例3を投与した細胞を示す。AとEは投与された共重合体のFITC蛍光を、BとFはPIで染色された核を、CとGはWGAレクチン−Alexa647で染色されたゴルジ体及び小胞体を、それぞれ示す。DはA〜Cを、HはE〜Gを、それぞれ重ね合わせた図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


で示される繰り返し単位、
式(II):
【化2】


で示される繰り返し単位、及び
式(III):
【化3】


で示される繰り返し単位
を含有する共重合体
[式中、
、R、及びRは、互いに独立して、水素原子又はメチル基であり;
は、炭素数8〜24の直鎖又は分枝鎖の飽和又は不飽和の1価の炭化水素基(この炭化水素基は、非置換であるか、又はハロゲン若しくはアジド基で置換されている)であり;
は、炭素数1〜10の2価の炭化水素基、又は(ポリ)オキシエチレン基であり;
は、炭素数1〜4の2価の炭化水素基であり;
、R、及びRは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基であり;
Aは、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、及びエーテル結合からなる群から選択される2価の結合であり;
Lは、単結合であるか又は連結基であり;
Xは、送達されるべき物質の残基である]。
【請求項2】
式(III)で示される繰り返し単位が
【化4】


である、請求項1記載の共重合体。
【請求項3】
式(IV):
【化5】


で示される化合物、
式(V):
【化6】


で示される化合物、及び
式(VI):
【化7】


で示される化合物
を重合させて得られる共重合体
[式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、A、L、及びXは、請求項1に定義されたとおりである]。
【請求項4】
式(VI)で示される化合物が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンである、請求項3記載の共重合体。
【請求項5】
が炭素数12〜24の炭化水素基である、請求項1〜4のいずれか1項記載の共重合体。
【請求項6】
Lが炭素数1〜12の炭化水素基(この炭化水素基は、中断されていないか、あるいは互いに隣接しない酸素原子若しくは硫黄原子又はその両方により1箇所以上で中断されている)である、請求項1〜5のいずれか1項記載の共重合体。
【請求項7】
式(I)で示される単位と式(II)で示される単位と式(III)で示される単位との含有比が、モル比で0.1〜2:0.1〜2:1である、請求項1〜6のいずれか1項記載の共重合体。
【請求項8】
数平均分子量が1×10〜1×10である、請求項1〜7のいずれか1項記載の共重合体。
【請求項9】
送達されるべき物質が標識である、請求項1〜8のいずれか1項記載の共重合体。
【請求項10】
請求項9記載の共重合体を含む、小胞体及びゴルジ体の標識用試薬。
【請求項11】
所望の物質を小胞体及びゴルジ体に送達するための、請求項1〜8のいずれか1項記載の共重合体の使用。
【請求項12】
所望の物質が標識である、請求項11記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−297488(P2008−297488A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146919(P2007−146919)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】