説明

新規乳酸菌を含む食品及びその製造方法

【課題】新規な乳酸生成菌を用いて、従来にない新しい風味・香り・食感などを有する食品及びその製造方法を提供する。特に、パン(サワーブレッド)にこの新規な乳酸生成菌を利用し、風味・香りなどのほか、例えば、防カビ性などの効果を得る。
【解決手段】製糖工程における抽出工程より得た新規な乳酸生成菌を用いてパン(サワーブレッド)を焼成した。このパンは従来にはない風味・香味を有し、なおかつ非常にカビが発生し難かった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な乳酸生成菌を含む食品及びその製造方法に関する。より詳しくは、製糖工程の工程汁から得られた新規な乳酸生成菌を混合してなる食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、食品業界において食嗜好の多様化が進んでおり、消費者の多くは美味しいものを求める一方で安全・安心な食品も望んでいる。
乳酸発酵食品はバラエティに富み、チーズやヨーグルトといった伝統的なものからプロバイオティクスを狙った乳酸菌飲料に至るまで、その種類は多岐に渡っている。
【0003】
乳酸発酵食品の一つに、北欧や欧州において昔から食されてきたサワーブレッドがある。一般的に、「小麦、ライ麦、水の混合物を乳酸菌によって(または酵母とともに)発酵させたもの」はサワードウ(サワー種)と称され、サワードウを用いて焼成したパンはサワーブレッドと称される。
サワーブレッドは、乳酸菌によって生成される乳酸などの有機酸により、特有の香りを醸し、酸味のある風味を呈するパンである。
【0004】
サワーブレッドの製造方法は、サワードウ酵母とサワードウ菌を混合してサワー種を作る方法(例えば特許文献1)やサワードウをパン生地と混合する方法(特許文献2)が一般的である。このほか、清酒醸造に使用される乳酸菌を使用する方法(特許文献3)、温帯落葉広葉樹林帯の腐葉土由来の乳酸菌を使用する方法(特許文献4)、ペディオコッカス属乳酸菌を使用する方法(特許文献5)、パン生地にビフィズス菌を添加する方法(特許文献6)、6種類以上の乳酸菌及び/又はビフィズス菌を混合することにより風味を出す方法(特許文献7)など、様々な方法がある。
【0005】
一方、てん菜白糖の製造工程すなわち製糖工程は、原料集荷→洗浄→細断→抽出(温水浸出)→清浄(石灰添加・炭酸飽汁)→軟化・脱塩→濃縮→煎糖→分蜜、となっている。
抽出より後の清浄工程以後はほとんど無菌状態が保たれているが、抽出工程においては原料に付着してくる微生物も存在している(非特許文献1)。抽出工程においてはこの微生物の活動に起因する糖分損失もあると推定されている(非特許文献2)。
【特許文献1】特公昭57−39734号
【特許文献2】特表2006−519600号
【特許文献3】特開2000−189041号
【特許文献4】特開2007−236344号
【特許文献5】特開2007−68441号
【特許文献6】特開2005−229808号
【特許文献7】特表2008−532532号
【非特許文献1】社団法人糖業協会編、「現代糖業技術史−第二次大戦終了以後−(ビート糖編)」、丸善プラネット株式会社、2006年2月、p.220
【非特許文献2】及川昭蔵、他3名、精糖技術研究会誌、1982年6月、第31号、p.19−p.28
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
消費者の要求はより多種多様となっており、それに応えると共に安全な食品を提供することが食品メーカーには求められている。
【0007】
本発明の課題は、新規な乳酸菌、又は乳酸菌株を用いて、従来にない新しい風味・香り・食感などを有する食品及びその製造方法を提供することである。
特に、サワーブレッドに新規な乳酸菌を利用し、風味・香りなどのほか、例えば、防カビ性などの効果を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、発明者らは製糖工程の抽出工程に存在する微生物に注目した。抽出工程の温度は浸出塔において約70℃に達するが、高温菌など特殊な微生物が生育できる。
【0009】
そこで、この抽出工程より得た新規な乳酸菌を用いてパンを焼成したところ、驚くべきことに従来にはない風味を有するパンを得ることができた。また、このパンには非常にカビが発生し難かった。発明者らは、これらの知見に基づいて本発明を完成させた。
【0010】
本発明は次のように構成されている。
(1) 製糖工場の工程汁から得られた乳酸生成菌を混合してなることを特徴とする食品。
(2) 乳酸生成菌がNT−1株(エンテロコッカス フェカリス、Enterococcus faecalis)及び/又はNT−2株(ストレプトコッカス サーモフィルス、Streptococcus thermophilus)である上記の食品。
(3) 食品がパンである上記の食品。
(4) 食品がサワーブレッドである上記の食品。
(5) 製糖工場の工程汁から得られた乳酸生成菌を混合することを特徴とする、食品の保存性向上方法。
(6) 乳酸生成菌がNT−1株(エンテロコッカス フェカリス、Enterococcus faecalis)及び/又はNT−2株(ストレプトコッカス サーモフィルス、Streptococcus thermophilus)である、食品の保存性向上方法。
(7) 食品がパンである上記の方法。
(8) 食品がサワーブレッドである上記の方法。
(9) 製糖工場の工程汁から得られ、高温生育能を有することを特徴とする乳酸生成菌NT−1株(エンテロコッカス フェカリス、Enterococcus faecalis)。
(10) 製糖工場の工程汁から得られ、高温生育能を有することを特徴とする乳酸生成菌NT−2株(ストレプトコッカス サーモフィルス、Streptococcus thermophilus)。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって作製されたサワーブレッドは、従来から市場に出回っている市販スターターによって作製されたサワーブレッドと比較し、独特の風味・香りを保持している。
そして、本発明で提示する乳酸菌を数種類混合することにより新たな風味・香りを有するサワーブレッドを作製することが可能であり、消費者及びベーカリーの多種多様な要求に応じることが可能となる。
【0012】
さらに、本発明によって作製されたサワーブレッドは、市販スターターによって作製されたサワーブレッドと比較し有意に高い防カビ性能を保持している。添加物を使用せずに乳酸菌独自の抗菌作用を保持するので、安全・安心な食品を求める消費者の要求に合致する。
【0013】
また、パン(サワーブレッド)のみではなく、麺類、菓子類、ピザ、パスタなどの食品へ風味及び抗菌性を付与することができる。
【0014】
しかも、この発明に用いられる乳酸菌はビート糖蜜を原料として高収率で培養することが可能であり、製糖会社である出願人などより安定的に市場に供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に記載する。
【0016】
本発明で提示する乳酸菌は製糖所の製糖工程という特殊な環境から分離されたものである。分離される可能性のある乳酸菌としては、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、ラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバシラス・ブチネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバシラス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバシラス・カテナフォルメ(Lactobacillus catenaforme)、ラクトバシラス・セロビオサス(Lactobacillus Cellobiosus)、ラクトバシラス・クリスパツス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバシラス・クルヴァツス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバシラス・デルブルエッキ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバシラス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバシラス・デルブルエッキ亜種ラクティス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)、ラクトバシラス・ヘルヴェティクス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバシラス・ジェネセニ(Lactobacillus jensenii)、ラクトバシラス・レイクマンニ(Lactobacillus leichmannii)、ラクトバシラス・ミヌツス(Lactobacillus minutus)、ラクトバシラス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバシラス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバシラス・ロゴサエ(Lactobacillus rogosae)、ラクトバシラス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバシラス・ブレヴィス(Lactobacillus brevis)、ラクトバシラス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバシラス・フェルメンツム(Lactobacillus fermentum)、ロイコノストック・デキストラニカム(Leuconostoc dextranicum)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ストレプトコッカス・ラクティス(Streptococcus lactis)、ストレプトコッカス・ラフィノラクティス(Streptococcus raffinolactis)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ラクトバシラス・ラクティス亜種ラクティス(Lactobacillus lactis subsp. lactis) などがある。
【0017】
なお、本発明における製糖所とは、てん菜を原料として砂糖を製造する工場のほか、甘蔗、サトウカエデ、イタヤカエデ、サトウヤシなどの砂糖作物から砂糖を製造する工場を含む。
【0018】
てん菜を原料とした製糖工程からの乳酸菌分離方法を以下に示す。製糖工程の温水浸出汁を炭酸カルシウム2%の個体培地に塗抹すると、乳酸菌によって生産された乳酸が炭酸カルシウムを分解しハローを形成するため、スクリーニングが可能である。この手法により取得された乳酸菌にNT−1株、NT−2株があり、16SリボソームRNA・DNA配列による相同性検索の結果、NT−1株はエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)と99.2%一致し、NT−2株はストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)と99.4%一致した。どちらの乳酸菌も古来からチーズやヨーグルトの製造に使用されており、食経験のある菌種である。また、温水浸出汁からはこの他にもNT−3株(ロイコノストック・デキストラニカム、Leuconostoc dextranicum)、NT−4株(ラクトバシラス・ラクティス亜種ラクティス、Lactobacillus lactis subsp. lactis)、NT−5株(ペディオコッカス・アシディラクティシ、Pediococcus acidilactici)、NT−6株(ラクトバシラス・フェルメンツム、Lactobacillus fermentum)、NT−7(ラクトバシラス・アシドフィルス、Lactobacillus acidophilus)、NT−8(ラクトバシラス・フェルメンツム、Lactobacillus fermentum)が分離されている。
【0019】
NT−1株(エンテロコッカス・フェカリス NT−1)とNT−2株(ストレプトコッカス・サーモフィルス NT−2)は、それぞれ、Enterococcus faecalis NT−1、及び、Streptococcus thermophilus NT−2として、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、平成20年(2008年)10月29日付で受領されており、それらの受領番号は、それぞれ、NT−1株が FERM AP−21712、NT−2株が FERM AP−21713 である。
【0020】
NT−1株及びNT−2株は、次のような培養法で培養することも又可能である。
用いる培地は、例えばM17ブイヨン(OXOID社製)、もしくは製糖工程における温水浸出汁、カーボネーション後汁、貯蔵糖蜜、イオン交換クロマト廃液などの製糖工程液に数種類のミネラルや酵母エキスを添加したものを用いることが出来る。培地中の糖濃度は1〜2%が適当であり、培養温度30℃〜50℃の範囲で静置培養することで、歩留まり80%程度を達成できる。
【0021】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、これらの実施例は、本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
また、本発明においてサワーブレッドとは、食パンの形態のほか、乳酸菌を加えて製造されたパンの幅広い概念の総称とする。
【実施例1】
【0022】
M17ブイヨンによって培養された乳酸菌NT−1株(Enterococcus faecalis)およびNT−2株(Streptococcus thermophilus)を乳酸菌菌体液として用いた。乳酸菌生菌数としては、乳酸菌菌体液(10〜1010 cfu/ml)として用いた。以下の配合にてサワー種を作製した。

強力小麦粉 100重量部
ライ麦粉(全粒粉) 10重量部
乳酸菌菌体液 1重量部
水 99重量部
【0023】
これらを加えて混捏温度25.0±0.5℃で2分間低速混捏した後、ステンレスボウルに入れ、ラップで覆い28℃のインキュベーターに入れて発酵を行った。発酵時間としては一晩〜四日間行い、生地のpHが低下するまで発酵を続け、サワー種を作製した。市販スターターの試験区には、ライ麦粉・乳酸菌菌体液の代わりにTKスターター(BOCKER社製)を10重量部用いた。サワー種にイーストを配合せず、サワー種の作製とイースト配合の手順を分別することで、イーストと栄養源を競合せずに乳酸菌のみを純粋培養することが可能となる。これは、乳酸菌の菌株を数種類混合しサワー種を作製する場合においても有効な手段となり得る。
【0024】
NT−1株、NT−2株、TKスターターの試験区について、サワー種10gを水30mlに懸濁し、上清のpHを経時的に測定した。結果を図1に示す。
NT−1株およびNT−2株はTKスターターと比較しpHの低下が遅いことが示された。サワー種を作製する者にとって、急激なpHの低下が起こるTKスターターでは発酵停止のタイミングが一律となりがちであるが、pHの低下が緩慢なNT−1株およびNT−2株を使用することで、サワー種作製者の意図する発酵時間で発酵を終了させることが可能である。このことは、NT−1株およびNT−2株を使用することにより、サワー種作製者の好む香り・風味・食感を意図的に選択できることを意味する。
【実施例2】
【0025】
実施例1にて作製されたサワー種を用い、以下の配合によりサワーブレッドを作製した。

強力小麦粉 100 重量部
イースト 2.2重量部
サワー種 30 重量部
フード 0.1重量部
砂糖 8 重量部
食塩 1.8重量部
脱脂粉乳 4 重量部
ラード 5 重量部
水 62 重量部
【0026】
これらを日本イースト工業会の製パン分析手法に従い、食パンストレート法にて混捏後、分割・成形を行い、焼成し、サワーブレッドを作製した。表1に種無添加のものと比容積を比較した結果を示す。NT−1(NT−1株をサワー種としたサワーブレッド)およびNT−2(NT−2株をサワー種としたサワーブレッド)は重量感があり、内相の形状が改善されたパンを作製することが可能であることが示された。
【0027】
【表1】

【実施例3】
【0028】
実施例2において作製されたサワーブレッドについて、26人(男13人、女13人)の被験者を対象に官能試験を実施し、NT−1およびNT−2をサワー種無添加の試験区・TKスターターの試験区と比較した。結果を図2及び図3に示す。
図2に示すように、NT−1は「おいしそうな香り」「おいしい、好きな味」の項目でTKスターターを上回ったことから、万人向けのおいしいサワーブレッドであることが示された。一方、NT−2では「香りが強い」の項目で他の試験区と有意な差となり(図2)、また嗜好性に対するコメントでは「チーズ臭」の項目が突出していた(図3)。つまり、NT−2株を用いたサワーブレッドにおいて、例えば「チーズを使わなくてもチーズの風味がするパン」と言った表現で販売することで、新たな市場を開拓できる可能性がある。
【実施例4】
【0029】
厚さ1.9cmにスライスされたサワーブレッドについて、クラム部25gに対し水75mlを加え、ブレンダーにて破砕後200mlにメスアップし、1時間室温で放置した。その後、遠心分離により上清を回収し、ろ紙で濾過したのちpHおよび有機酸量を測定した。米国にて市販されている食パン型サワーブレッド(FRANTZ FAMILY BAKERIES社製、表2中では海外品と記載)についても同様の手法により有機酸を測定した。
下記の条件にて測定を行った。
カラム :Shodex RSpac KC−LG+KC−811×2
溶出 :4.8mM HClO4
検出器 :VIS(430nm)
カラム温度:60℃
【0030】
測定結果は表2に示すとおりである。NT−1およびNT−2は多量の乳酸・酢酸を生産することから、TKスターターとは異なる風味を呈することが示された。このことは、前述の官能試験の結果を裏付けるものである。また、NT−1およびNT−2はTKスターターおよび海外品と比較しエタノール量が少ないことから、パンのアルコール臭が苦手な消費者にとっても摂食し易いパンであることが想定される。
【0031】
【表2】

【実施例5】
【0032】
実施例2にて作製したサワーブレッドについて、香気成分を分析した。ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS、日立製作所 モデルG−3000)を用い、下記の条件にて分析を行った。
(1)香気成分捕集条件
サンプル:クラムおよびクラスト部0.5cm角切片(100mg相当)
捕集剤 :TENAX TA 100mg
パージ :20ml/分、10分間、55℃
(2)GC−MS条件
カラム :TC=WAX(0.25mmI.D.×60m)
40℃(5分間)、100℃(5℃/分)、240℃(10℃/分、10分間)
イオン化:EI、70eV
【0033】
分析結果は表3及び表4に示すとおりである。表3に示すように、内部標準(ノーマルアミルアルコール)に対するピーク面積比の出力結果より、出力比においてNT−1、NT−2は無添加のものと比較し高い値を示したことから、NT−1、NT−2は強い香りを有することが示唆された。特に、NT−2においてはTKスターターよりも有意に強い香りを有することが改めて示された。また、表4に示すように各ピークの組成比を比較すると、乳酸菌特有のメチルヘプチルケトン、酪酸、γ-ヘキサラクトン、ジアセチル、インドールが有意に検出された。
NT−1、NT−2はエタノールの比率が低く、メチルヘプチルケトンや酪酸など多種の化合物のピークが検出された。このことは、NT−1およびNT−2は複雑な化合物の組み合わせにより独特の香りを醸し出していることを意味する。この結果は食嗜好の多様化に十分対応しうるものと考えられる。
【0034】
【表3】

【0035】
【表4】

【実施例6】
【0036】
実施例2にて作製したサワーブレッドを厚さ1.9cmにスライスし、食パンから分離したカビ(Penicillium属)の胞子懸濁液50μl(50μl中に10個体の胞子が存在)を1スライスあたり9箇所に接種し、ビニール袋で密封したのち25℃で四日間培養を行った。各試験区(無添加、NT−1株、NT−2株、TKスターター)について、接種されたカビのコロニーの大きさを測定することで防カビ性能を評価した。評価時のカビの発生状態を図4から図7に示す。TKスターターと比較し、NT−2株は非常に高い防カビ性能を有することが示された。また、NT−1株もNT−2株と同様に多量の有機酸を生産することが可能であるため、NT−2株との混合使用によって更なる防カビ性能を期待できるものと考えられる。防カビ剤を使用せずに乳酸菌独自の防カビ作用を保持するNT−2株のサワーブレッドは、今日の安全・安心な食品を求める消費者にとって理想的なパンと言える。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例1において、NT−1株、NT−2株、TKスターターの試験区について上清のpHを経時的に測定した結果を示すグラフである。
【図2】実施例3の官能試験結果において、風味の嗜好性の差を表したグラフである。
【図3】実施例3の官能試験結果において、風味の嗜好性に対するコメントを表したグラフである。
【図4】実施例6において、無添加のもののカビの発生状況である。
【図5】実施例6において、NT−1を使用したもののカビの発生状況である。
【図6】実施例6において、NT−2を使用したもののカビの発生状況である。
【図7】実施例6において、TKスターターを使用したもののカビの発生状況である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製糖工場の工程汁から得られた乳酸生成菌を混合してなることを特徴とする食品。
【請求項2】
乳酸生成菌がNT−1株(エンテロコッカス フェカリス、Enterococcus faecalis)及び/又はNT−2株(ストレプトコッカス サーモフィルス、Streptococcus thermophilus)である請求項1に記載の食品。
【請求項3】
食品がパンである請求項2に記載の食品。
【請求項4】
食品がサワーブレッドである請求項3に記載の食品。
【請求項5】
製糖工場の工程汁から得られた乳酸生成菌を混合することを特徴とする、食品の保存性向上方法。
【請求項6】
乳酸生成菌がNT−1株(エンテロコッカス フェカリス、Enterococcus faecalis)及び/又はNT−2株(ストレプトコッカス サーモフィルス、Streptococcus thermophilus)である、食品の保存性向上方法。
【請求項7】
食品がパンである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
食品がサワーブレッドである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
製糖工場の工程汁から得られ、高温生育能を有することを特徴とする乳酸生成菌NT−1株(エンテロコッカス フェカリス、Enterococcus faecalis)。
【請求項10】
製糖工場の工程汁から得られ、高温生育能を有することを特徴とする乳酸生成菌NT−2株(ストレプトコッカス サーモフィルス、Streptococcus thermophilus)。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−104305(P2010−104305A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280589(P2008−280589)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000231981)日本甜菜製糖株式会社 (58)
【Fターム(参考)】