説明

新規抗体

本発明は、疾患における異常血管新生の阻害を含む、癌を治療し、血管新生及び/又は血管透過を阻害するための、VEGFアンタゴニスト及び新規抗α5β1抗体の使用に関する。本発明はまた新規抗α5β1抗体を含む組成物とキット及びそれらを製造し、使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は開示の全体が出典明示によりここに援用される2007年9月26日出願の米国仮出願第60/975471号の優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、新規α5β1抗体、組成物と抗体及び抗体を使用するための方法を含むキットに関する。
【背景技術】
【0003】
α5β1インテグリンは、主要なリガンドであるフィブロネクチンを介して細胞−細胞及び細胞−ECM相互作用を媒介する細胞膜糖タンパク質である。α5β1インテグリンは細胞移動、分化及び生存において重要な役割を担う。α5β1インテグリンのレベルは癌血管内皮(例えば、胃、結腸、肝臓、子宮、及び乳癌)及びその他の新生血管で増加している。α5β1インテグリンは内皮細胞による壁細胞の集合及び血管新生中の内皮性細胞外マトリックスの集合を制御する。このように、α5β1インテグリンは血管新生の抑制及びVEGFアンタゴニストの影響への細胞の増感の有用な標的である。
【0004】
このように、当該分野において、α5β1インテグリンを標的とする組成物及び方法が必要とされている。本発明はこの及びその他の必要性を満たす。
【発明の概要】
【0005】
本発明は7H5ハイブリドーマから産生された抗体から生成された新規抗α5β1抗体、新規抗α5β1抗体を含むキット及び組成物、及びそれらの作製又は使用方法に関する。本発明の抗α5β1抗体は、7H5ハイブリドーマから産生された抗体と比較してα5β1への改善された結合を有する。このような抗体はヒト化抗体を含む。別の実施態様では、新規抗α5β1抗体は、限定されるものではないが、治療薬又は患者中の若しくは患者のサンプル中のα5β1を検知するための蛍光色素若しくはその他のマーカーのような別の要素にコンジュゲートすることが可能である。このような新規α5β1抗体は種々の治療及び診断方法として使用してもよい。例えば、このような抗α5β1抗体は、異常血管新生、腫瘍、眼疾患及び自己免疫疾患の治療に使用してもよい。このような抗体は、このような抗体を患者中若しくは患者のサンプル中のα5β1タンパク質に接触させることによる患者中若しくは患者のサンプル中のα5β1タンパク質の検知及び定性的若しくは定量的なα5β1タンパク質に結合した抗α5β1抗体の決定が可能である。
【0006】
一実施態様では、本発明の抗α5β1抗体は、(1)アミノ酸配列KASQ−N/S−VGSDVA(配列番号:10)を含むLHVR1、(2)アミノ酸配列STSYRYS(配列番号:11)を含むLHVR2及び(3)アミノ酸配列QQY−N/S−SYPFT(配列番号:12)を含むLHVR3、を含む軽鎖可変ドメイン配列を含む。別の実施態様では、本発明の抗α5β1抗体は、(1)アミノ酸配列GYTF−T/S−DYYLY(配列番号:13)を含むHHVR1、(2)アミノ酸配列GISPS−N/S−GGTTF−N/A−D−N/A−FE−N/G(配列番号:14)を含むHHVR2及び(3)アミノ酸配列DAYGDWYFDV(配列番号:15)を含むHHVR3、を含む重鎖可変ドメイン配列を含む。
【0007】
別の実施態様では、本発明の抗α5β1抗体は、配列番号:1の配列又はその誘導体を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号:6の配列又はその誘導体を有する重鎖可変ドメインを含む。一実施態様では、重鎖可変ドメインの可変配列は、30、48、49、54、60、62、65、66、67及び69(Kabat番号付けシステム)からなる群から選択される残基にアミノ酸置換を含む。別の実施態様では、軽鎖可変ドメインの可変配列は、28、46及び92(Kabat番号付けシステム)からなる群から選択される残基にアミノ酸置換を含む。一実施態様では、重鎖可変ドメインの可変配列は、T30S、I48V、G49S、N54S、N60A、N62A、N62S、N65G、K66R、A67F及びL69I(Kabat番号付けシステム)からなる群から選択される残基にアミノ酸置換を含む。一実施態様では、軽鎖可変ドメインは、N28S、T46L及びN92S(Kabat番号付けシステム)からなる群から選択されるアミノ酸置換を含む。
【0008】
本発明はまた配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、及び9からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む組成物に関する。別の実施態様では、組成物は配列番号:1の軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号:5の重鎖可変ドメイン配列を含む抗体を含む。別の実施態様では、組成物は配列番号:2の軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号:6の重鎖可変ドメイン配列を含む抗体を含む。別の実施態様では、組成物は配列番号:2の軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号:7の重鎖可変ドメイン配列を含む抗体を含む。別の実施態様では、組成物は配列番号:3の軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号:8の重鎖可変ドメイン配列を含む抗体を含む。別の実施態様では、組成物は配列番号:4の軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号:9の重鎖可変ドメイン配列を含む抗体を含む。
【0009】
更に別の実施態様では、本発明は、VEGFアンタゴニスト及び本発明の抗α5β1抗体を投与する工程を含む、患者の癌治療の方法を提供する。好ましい一実施態様では、癌はVEGFアンタゴニスト治療に応答する。別の実施態様では、治療的有効量のVEGFアンタゴニスト及び本発明の抗α5β1抗体を投与する工程を含む、AMDに罹患した患者における、滲出性の加齢黄斑変性を含む加齢黄斑変性(AMD)の治療法である。更に別の実施態様では、治療的有効量のVEGFアンタゴニスト及び抗α5β1抗体を投与する工程を含む、患者の自己免疫疾患の治療方法である。
【0010】
一実施態様では、治療を受ける患者は最初にVEGFアンタゴニストを投与され、次に本発明の抗α5β1抗体で治療され得る。別の実施態様では、患者はVEGFアンタゴニスト及び本発明の抗α5β1抗体で、何れかの薬剤を用いた周期的な治療において、治療される。別の実施態様では、患者がVEGFアンタゴニストに応答しなくなるまで、患者はVEGFで治療され、次いで患者は本発明の抗α5β1抗体で治療される。特定の一実施態様では、癌が非浸潤性又は初期の場合、患者はVEGFアンタゴニストで治療され、癌が浸潤性の場合、本発明の抗α5β1抗体で治療される。別の実施態様では、本発明の抗α5β1抗体で治療される患者は、疾患組織におけるα5β1のレベルが、疾患に罹患していない組織と比較して亢進している。この例において、該方法は、例えば、VEGFアンタゴニストを用いた治療後の疾患組織における、患者のα5β1を検知する工程を更に含み得る。一実施態様では、浸潤性癌は転移癌である。別の実施態様では、初期癌は補助療法(例えば、化学療法又は外科的除去)による癌治療である。
好ましい一実施態様では、患者は異常血管新生を有する疾患に罹患している。別の実施態様では、疾患は癌、自己免疫疾患又は眼疾患から成る群から選択される。好ましい一実施態様では、疾患は、固形癌、転移癌、軟部腫瘍、眼内血管新生を有する疾患、異常血管新生を有する免疫疾患、移植後に患者に生じる疾患及び繊維血管組織の異常増殖を有する疾患からなる群から選択される。別の好ましい実施態様では、癌が、乳癌(転移性乳癌を含む)、子宮頸癌、結腸直腸癌(転移性結腸直腸癌を含む)、肺癌(非小細胞肺癌を含む)、非ホジキンス・リンパ腫(NHL)、慢性リンパ球性白血病、腎臓細胞癌、ホルモン不応性前立腺癌を含む前立腺癌、肝癌、頭部及び首癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、軟部組織癌、消化管間質腫瘍、多形神経膠芽腫及び多発性骨髄腫からなる群から選択される。別の好ましい実施態様では、疾患は、網膜症、加齢黄斑変性(例えば、滲出性AMD)、糖尿病性黄斑浮腫、網膜静脈閉塞(RVO)及び非滲出性AMD/地図上萎縮(滲出性AMDの進行の抑制のため)、虹彩炎;乾癬、炎症性腎疾患、溶血性尿毒症症候群、糖尿病性腎症(例えば、増殖糖尿病網膜症)、関節炎(例えば乾癬の関節炎、骨関節症、慢性関節リウマチ)、炎症性腸疾患、慢性的な炎症、慢性的な網膜剥離、慢性的なブドウ膜炎、慢性的な硝子体炎、角膜移植片拒絶反応、角膜新血管新生、角膜移植片新血管新生、クローン病、近視、眼血管新生疾患、パジェット病、類天疱瘡、多発動脈炎、レーザー放射状角膜切開後、網膜新血管新生、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、移植片拒絶反応、肺炎症、ネフローゼ症候群、浮腫、悪性腹水、脳卒中、血管線維腫及び血管新生緑内障からなる群から選択せれる。一実施態様では、主題は、抗悪性腫瘍薬、化学療法薬及び細胞毒性薬からなる群から選択される治療薬を更に投与される。
【0011】
本発明の好ましい一実施態様では、抗α5β1抗体で治療される患者は、VEGFアンタゴニスト治療後に再発するか又はVEGFアンタゴニスト治療に対して難治性になる。別の実施態様では、本発明の抗α5β1抗体及びVEGFアンタゴニストで治療される患者は転移性癌に罹患するか又は事前に補助治療を受ける。一実施態様では、イリノテカンのような化学治療薬に対して、対象の患者は再発性、難治性又は耐性である。このような疾患の例は、限定されるものではないが、転移性結腸直腸癌、再発転移性結腸直腸癌、転移性乳癌、再発転移性乳癌、転移性HER2+乳癌、補助乳癌、補助HER2+乳癌、転移性膵癌、補助大腸癌、補助非小細胞肺癌、補助直腸癌、補助非小細胞肺癌、転移性非小細胞肺癌、転移性卵巣癌、転移性腎臓細胞癌及び補助腎臓細胞癌である。
【0012】
一実施態様では、ここに記載された疾患に罹患している患者は、VEGFアンタゴニストを用いた疾患の治療後の維持治療を受け、ここで維持療法は本発明の抗α5β1抗体のみ又は連続的若しくは継続的にVEGFアンタゴニストを添加する。
【0013】
好ましい一実施態様では、抗体、イムノアドヘシン、ペプチボディ、ストリンジェント条件下でVEGFをコードする核酸分子とハイブリダイズする小分子及び核酸(例えば、リボザイム、siRNA及びアプタマー)からなる群から選択してもよい。好ましい一実施態様では、VEGFアンタゴニストは抗体である。別の実施態様では、抗体はモノクローナル抗体である。好ましい一実施態様では、抗VEGF抗体はアバスチン(登録商標)抗体によってヒトVEGF抗体への結合を競合的に阻害することができる。別の実施態様では、抗VEGF抗体はヒト、ヒト化又はキメラである。具体的な一実施態様では、抗VEGF抗体はアバスチン(登録商標)抗体である。別の実施態様では、抗VEGF抗体は、Fab、Fab’、F(ab)’、単鎖Fv(scFv)、Fvフラグメントからなる群から選択される;二特異性抗体及び線状抗体。別の実施態様では、VEGFアンタゴニストはVEGFに結合し、本発明の抗α5β1抗体の重鎖及び軽鎖可変ドメインを含む二特異性抗体である。
【0014】
好ましい一実施態様では、本発明の抗α5β1抗体は、ヒトIgGのFc部分を含む抗体である。別の実施態様では、本発明の抗α5β1抗体は、ヒトIgG1又はhIgG4のCH1、CH2及びCH3ドメインを含む。好ましい一実施態様では、抗α5β1抗体はヒト化抗体である。具体的な一実施態様では、抗α5β1抗体は7H5抗体又はキメラ若しくはそのヒト化抗体である。別の実施態様では、抗α5β1抗体は、Fab、Fab’、F(ab)’、単鎖Fv(scFv)、Fvフラグメントからなる群から選択される;二特異性抗体及び線状抗体。別の実施態様では、本発明の抗α5β1抗体はVEGF及びα5β1に結合する二特異性抗体であり、VEGFアンタゴニストである。更に別の実施態様では、本発明の抗α5β1抗体は、改変されたエフェクター機能を有する。一実施態様では、抗α5β1抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)又は補体依存性細胞障害(CDC)活性を減少又は抑制するために改変される。(例えば、抗体のFc部分をコードする核酸配列を改変することによる)更に別の実施態様では、抗α5β1抗体はヒト中の半減期を増加又は減少するために改変される(例えば、抗体のFc部分をコードする核酸配列を改変することによる)。
【0015】
一実施態様では、α5β1抗体は細胞毒性薬又は化学治療薬にコンジュゲートされる。別の実施態様では、細胞毒性薬は放射性同位体又は毒素である。
【0016】
本発明はVEGFアンタゴニスト、本発明のα5β1抗体及び製薬的に許容可能な担体を含む組成物を提供する。本発明はまたVEGFアンタゴニストで治療された患者中のα5β1を検知する指示書を含む製造品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1は抗インテグリンα5β1クローン7H5に関する以下の軽鎖可変ドメインの配列アラインメントを示す:マウス7H5(h7H5.v1)(配列番号:1)のCDRグラフトに基づくヒト化7H5抗体、h7H5.v1(h7H5.v2、配列番号:2)のCDR−L1、−L3及び−H2中の残基の置換に基づくヒト化7H5抗体及びh7H5.v2(h7H5.v4(配列番号:3)及びh7H5.v5(配列番号:4))におけるフレームワーク修飾に基づくヒト化7H5抗体。h7H5.v3軽鎖可変ドメインは配列が配列番号:2と同一である。
【0018】
図2は抗インテグリンα5β1クローン7H5に関する以下の重鎖可変ドメインの配列アラインメントを示す:マウス7H5(h7H5.v1)(配列番号:5)のCDRグラフトに基づくヒト化7H5抗体、h7H5.v1(h7H5.v2、配列番号:6)のCDR−L1、−L3及び−H2中の残基の置換に基づくヒト化7H5抗体及びh7H5.v2(h7H5.v4(配列番号:8)及びh7H5.v5(配列番号:9))におけるフレームワーク修飾に基づくヒト化7H5抗体。h7H5.v3重鎖可変ドメインは配列が、N62Sのアミノ酸変異を有してるという点を除いて、h7H5.v2と同一である(配列番号:7で指定されたh7H5.v3VH配列)。
【0019】
図3はキメラ7H5−IgG及びヒト化7H5.v1−IgGのヒトインテグリンα5β1に対するビアコア(登録商標)解析の結果を示す。(A)キメラ7H5−IgG及びヒト化7H5.v1−IgGをCM5センサーチップの2つの異なるフローセルに450RU(Response Unit)固定化し、25℃における結合親和性及び動態を決定するために、センサーチップに300nMから0.29nMの2倍連続希釈ヒトインテグリンα5β1を注入した。(B)ヒトインテグリンα5β1をCM5センサーチップに800RU固定化し、25℃における結合親和性及び速度論を決定するために、センサーチップに2倍連続希釈キメラ7H5−IgG及び200nMから0.2nMのヒト化7H5.v1−IgGを注入した。
【0020】
図4は一価Fab様式としてファージ上に表示されるヒト化7H5.v1の一点変異クローンのヒトインテグリンα5β1に対するファージIC50を決定するためのファージ競合ELISAを示す。
【0021】
図5はそれぞれの一点変異体の親クローンh7H5.v1に対する結合親和性(IC50)の変化の相対倍率の要約を示す。
【0022】
図6は一価Fab様式としてファージ上に表示されるヒト化7H5.v1の複数置換クローンのヒトインテグリンα5β1に対するファージIC50を決定するためのファージ競合ELISAを示す。最初の2つの変異体は図5で強調した選択に基づいて作製した。全体として、全ての6つの変異体は保持され、わずかに改善された結合親和性を示す;従って、h7H5.v2及びh7H5の2つの変異体は示されたように、CDR−H2の位置65にグリシン置換を含むように選択された。
【0023】
図7はヒト化7H5.v1、v2及びv3−IgGのヒトインテグリンα5β1に対するBIACORE(登録商標)解析の結果を示す。ヒト化7H5.v1、v2及びv3−IgGはCM5センサーチップの3つの異なるフローセルに450RU(Response Unit)固定され、25℃における結合親和性及び速度論を決定するために、300nMから0.29nMの2倍連続希釈ヒトインテグリンα5β1をセンサーチップに注入した。ヒト化7H5.v2は解離速度において最も結合親和性が改善される。
【0024】
図8は一価Fab様式としてファージ上に表示されるヒト化7H5.v2フレームワーク改変クローンのヒトインテグリンα5β1に対するファージIC50を決定するためのファージ競合ELISAを示す。ほとんどのフレームワーク置換は、重鎖の位置49及び78における、それぞれグリシンからセリン及びアラニンからロイシンへの変化を除いて、h7H5.v2と同等の結合親和性を示す。
【0025】
図9はヒト化7H5.v2、v4及びv5−IgGのヒトインテグリンα5β1に対するBIACORE(登録商標)解析の結果を示す。(A)ヒト化7H5.v2、v4及びv5−IgGはCM5センサーチップの3つの異なるフローセルに450RU(Response Unit)固定され、25℃における結合親和性及び速度論を決定するために、300nMから0.29nMの2倍連続希釈ヒトインテグリンα5β1がセンサーチップを注入した。(B)ヒトインテグリンα5β1はCM5センサーチップに800RU固定化され、25℃における結合親和性及び速度論を決定するために、200nMから0.2nMの2倍連続希釈ヒト化7H5.v2、v4及びv5−IgGを注入した。両者の様式で、ヒト化7H5.v4はヒト化7H5.v2と比較して同等の結合親和性を示す。
【0026】
図10は、h7H5.v2及び抗VEGFを組み合わせた投与が抗VEGFのみの抗血管新生効果を増加することを示した皮膚創傷治療実験の結果を示す。
【0027】
図11は、h7H5.v4及び抗VEGFを組み合わせた投与が抗VEGFのみの抗血管新生効果を増加することを示した皮膚創傷治療実験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
I.序論
本発明はα5β1インテグリンに結合する新規抗体の同定に基づく。αβ抗体はモノクローナル抗体7H5から得られ、種々の治療及び診断方法に使用してもよい。例えば、α5β1抗体は単独又は他の医薬と組み合わせることにより、異常血管新生、腫瘍、眼疾患及び自己免疫疾患の治療に使用してもよい。抗体は、抗体を患者のαβタンパク質に投与し、患者のサンプル中のα5β1タンパク質に結合した抗αβ抗体を(例えば、in vivo又はex vivoで)検知することにより、又は抗体を患者のサンプルに接触させ、αβタンパク質に結合した抗αβ抗体を定性的若しくは定量的に決定することにより、患者又は患者のサンプル中のαβタンパク質を検出するために使用してもよい。
【0029】
II.定義
「アルファベータ1」又は「α5β1」又は「a5b1」又は「αβ」は2つの異なるタンパク質(例えば、アルファ5及びベータ1サブユニット)を含むインテグリンである。α5β1はフィブロネクチン、L1−CAM及びフィブリノーゲンに結合することが示されている。α5β1インテグリンはまたVery Late Activation−5、VLA−5、アルファ5ベータ1、CD49e/CD29、フィブロネクチンレセプター、FNR及びGPIc−IIaとして知られている。好ましい一の実施態様では、α5β1はヒトα5β1である。
【0030】
ここで使用される「アルファ5」はCD49e、α5、インテグリンアルファ5サブユニット、VLA−5アルファサブユニット、GPIc−IIaのICサブユニット及びFNRアルファ鎖と同義に使用され、α5β1インテグリンの1つのサブユニットを意味する。アルファ5はオルタナティブスプライシング(A−D)によって生じる4つのアイソフォームを有し、細胞質ドメインが異なる。アルファ5のヒトアイソフォームのアミノ酸配列は、例えば、Genbank受託番号:X07979、U33879、U33882及びU33880にそれぞれ見出すことができる。
【0031】
「ベータ1」はまたCD29、ベータ1、血小板GPIIa; VLA−ベータ鎖; ベータ−1インテグリン鎖、CD29;FNRB;MDF2;VLAB;GPIIA; MSK12及びVLA5Bと呼ばれる。ヒトベータ1のアミノ酸配列は、例えば、Genbank受託番号X06256に見出すことができる。
【0032】
ここで使用される「VEGF」なる用語は、Leung等 Science, 246:1306 (1989)、及びHouck等 Mol. Endocrin., 5:1806 (1991)に記載されたように、165アミノ酸の血管内皮細胞増殖因子と、関連した121−、189−、及び206−アミノ酸のヒト血管内皮細胞増殖因子、並びにそれらの天然に生じる対立遺伝子型及びプロセシング型を意味する。「VEGF」なる用語はまた、非ヒト動物腫、マウス、ラット又は霊長類由来のVEGFを意味する。特定の種由来のVEGFは、ヒトVEGFはhVEGF、マウスVEGFはmVEGF等の用語で表されることが多い。「VEGF」なる用語はまた、165アミノ酸のヒト血管内皮成長因子のアミノ酸8から109、又は1から109を含む切断型ポリペプチドを意味する。そのようなVEGF型を指すときは、本明細書では、例えば、「VEGF(8−109)」、「VEGF(1−109)」又は「VEGF165」と表す。「切断型の」天然のVEGFのアミノ酸位置は、天然のVEGF配列に示される数で示す。例えば、切断型の天然VEGFのアミノ酸位置17(メチオニン)は、天然のVEGF中の位置17(メチオニン)でもある。切断型の天然VEGFは天然のVEGFに匹敵するKDR及びFlt−1レセプター結合親和性を有する。好ましい実施態様では、VEGFはヒトVEGFである。
【0033】
「VEGFアンタゴニスト」は、一又は複数のVEGFレセプターへの結合を含むVEGF活性を中和、遮断、阻害、抑止、低減又は干渉することができる分子を意味する。好ましくは、VEGFアンタゴニストはVEGF又はVEGFレセプターに結合する。VEGFアンタゴニストは抗VEGF抗体及びその抗原結合断片、VEGF及びVEGFレセプターに結合し、リガンド−レセプター相互作用を阻害するポリペプチド(例えば、イムノアドヘシン、ペプチボディ)、VEGFRチロシンキナーゼの小分子阻害剤のような抗VEGFレセプター抗体及びVEGFレセプターアンタゴニスト、VEGFに結合するアプタマー及び厳しい条件下でVEGF又はVEGFレセプターをコードする核酸配列とハイブリダイズする核酸(例えば、RNAi)。好ましい一実施態様では、VEGFアンタゴニストはVEGFに結合し、in vitroでのVEGF誘導内皮細胞増殖を阻害する。好ましい一実施態様では、VEGFアンタゴニストは、非VEGF又は非VEGFレセプターより大きな親和性でVEGF又はVEGFレセプターに結合する。好ましい一実施態様では、VEGFアンタゴニストはVEGF又はVEGFレセプターに1uMから1pMのKdで結合する。別の好ましい実施態様では、VEGFアンタゴニストは500nMから1pMでVEGF又はVEGFレセプターに結合する。
【0034】
好ましい実施態様では、VEGFアンタゴニストは抗体、ペプチボディ、イムノアドヘシン、小分子又はアプタマーのようなポリペプチドからなる群から選択される。好ましい実施態様では、抗体は、AVASTIN(登録商標)抗体又は抗VEGFR2若しくは抗VEGFR3抗体のような抗VEGFレセプター抗体である。VEGFアンタゴニストの他の例はVEGF−Trap、Mucagen、PTK787、SU11248、AG−013736、Bay439006(sorafenib)、ZD−6474、CP632、CP−547632、AZD−2171、CDP−171、SU−14813、CHIR−258、AEE−788、SB786034、BAY579352、CDP−791、EG−3306、GW−786034、RWJ−417975/CT6758及びKRN−633を含む。
【0035】
「抗VEGF抗体」は、十分な親和性及び特異性でVEGFと結合する抗体である。好ましくは、本発明の抗VEGF抗体は、VEGF活性が関与する疾患又は状態を標的として干渉する際の治療的薬剤として使用してもよい。抗VEGF抗体は通常、VEGF-B又はVEGF-Cのような他のVEGFホモログにも、PlGF、PDGF又はbFGFのような他の増殖因子にも結合しないであろう。好適な抗VEGF抗体は、ハイブリドーマATCC HB 10709によって産生されるモノクローナル抗-VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープと結合するモノクローナル抗体である。より好ましくは、抗VEGF抗体は、Presta等 (1997) Cancer Res. 57: 4593-4599に従って生成される組み換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体であり、限定するものではないがベバシズマブ(BV;Avastin(登録商標))として知られる抗体を含む。
別の実施態様では、使用可能な抗VEGF抗体は、限定されるものではないが、国際公開第2005/012359に開示された抗体を含む。一実施態様では、抗VEGF抗体は国際公開第2005/012359号の図24、25、26、27及び29(例えば、G6、G6−23、G6−31、G6−23.1、G6−23.2、B20、B20−4及びB20.4.1)に開示された抗体の何れか一の可変重鎖及び可変軽鎖領域を含む。別の好ましい実施態様では、ラニビズマブとして知られる抗VEGF抗体は、糖尿病網膜症及び滲出性AMDのような眼疾患に投与されるVEGFアンタゴニストである。
【0036】
「rhuMAb VEGF」又は「アバスチン(登録商標)」としても知られる抗VEGF抗体「ベバシズマブ(BV)」は、Presta 等 (1997) Cancer Res. 57: 4593-4599に従って生成される組み換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体である。これは、ヒトVEGFのそのレセプターへの結合をブロックするマウス抗hVEGFモノクローナル抗体A4.6.1由来の抗原結合相補性決定領域と変異したヒトIgG1フレームワーク領域を含有する。ほとんどのフレームワーク領域を含む、ベバシズマブのおよそ93%のアミノ酸配列はヒトIgG1由来のものであり、配列のおよそ7%はマウス抗体A4.6.1由来である。ベバシズマブは、およそ149,000ダルトンの分子質量であり、グリコシル化される。他の抗VEGF抗体は米国特許第6884879号及び国際公開第2005/044853号に記載の抗体を含む。
【0037】
抗VEGF抗体のラニビズマブ又はLUCENTIS(登録商標)抗体又はrhuFabV2はヒト化親和成熟抗ヒトVEGF Fab断片である。ラニビズマブは大腸菌発現ベクターにおける標準的な組み替え技術及び細菌発酵によって産生される。ラニビズマブはグリコシル化されておらず分子量は約48,000ダルトンである。国際公開第98/45331号及び米国特許第2003/0190317号を参照されたい。
【0038】
7H5として知られるアルファ5/ベータ1モノクローナル抗体は、ATCCに2006年3月7日に7H5.4.2.8(ATCC番号PTA−7421)として寄託されている。
【0039】
標的の重複又は類似の領域への結合によって特徴付けられる抗体のような分子は、競合的阻害/結合評価によって同定することができる。
【0040】
一実施態様では、HUVEC又は他の細胞発現α5β1が競合阻害評価に使用され、2つの抗α5β1抗体の互いの結合局所性の評価するためにFACSが使用される。例えば、HUVEC細胞はコニカルチューブで洗浄することができ、1000rmpで5分間遠心することができる。ペレットは通常2回洗浄する。次いで、細胞を再懸濁し、カウントし、使用まで氷上で保持できる。100ulの第一の抗α5β1抗体(例えば、1ug/ml濃度又は未満の濃度で開始)をウェルに添加することができる。次に、100μl(例えば、20×10細胞)の細胞を各ウェルに添加し、氷上で30分間インキュベートすることができる。次に、100μlのビオチン化した抗α5β1抗体(5μg/mlストック)を各ウェルに加え、氷上で30分間インキュベートすることができる。次いで、細胞を洗浄し、1000rpmで5分間ペレット化する。上清を吸引する。第2の試薬、R−フィコエリトリンコンジュゲートストレプトアビジン(Jackson 016−110−084)をウェルに添加する(1:1000で100μl)。次に、プレートをホイルで包装し、氷上で30分間インキュベートすることができる。インキュベーションに続いて、ペレットを洗浄し、1000rpmで5分間ペレット化することができる。ペレットを再懸濁し、FACS解析のためにマイクロタイターチューブに移すことができる。
【0041】
「血管新生因子又は医薬」は、血管の発達を刺激する、例えば、血管新生、血管内皮細胞成長、血管の安定化及び/又は脈管形成などを促進する成長因子である。例えば、血管形成因子には、限定するものではないが、例えば、VEGF及びVEGFファミリーのメンバー、PlGF、PDGFファミリー、線維芽細胞成長因子ファミリー(FGF)、TIEリガンド(アンギオポイエチン)、エフリン、Del-1、線維芽細胞成長因子:酸性(aFGF)及び塩基性(bFGF)、フォリスタチン、顆粒性コロニー刺激因子(G―CSF)、肝細胞増殖因子(HGF)/散乱係数(SF)、インターロイキン-8(IL-8)、レプチン、ミドカイン、胎盤成長因子、血小板由来内皮細胞成長因子(PD-ECGF)、血小板由来成長因子、特にPDGF-BB又はPDGFR-β、プレイオトロフィン(Pleiotrophin)(PTN)、プログラヌリン(Progranulin)、プロリフェリン(Proliferin)、トランスフォーミング成長因子-α(TGF-α)、トランスフォーミング成長因子-β(TGFβ)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、血管内皮性成長因子(VEGF)/血管透過性因子(VPF)などが含まれる。また、成長ホルモン、インスリン様増殖因子-I(IGF-I)、VIGF、上皮細胞成長因子(EGF)、CTGF、及び、そのファミリーメンバー及びTGF-α及びTGF-βのような創傷治癒を促進する因子が含まれる。Klagsbrun及びD'Amore, Annu. Rev. Physiol., 53:217-39 (1991);Streit及びDetmar, Oncogene, 22:3172-3179 (2003);Ferrara & Alitalo, Nature Medicine 5(12): 1359-1364 (1999);Toniniら., Oncogene, 22:6549-6556 (2003)(例えば、公知の血管形成因子を挙げている表1);及び、Sato Int. J. Clin. Oncol., 8:200-206 (2003)を参照されたい。
【0042】
本発明に記載の抗VEGF抗体の「Kd」又は「Kd値」は、好ましい一実施態様において、以下の、段階的な力価の非標識抗原の存在下で、最小濃度の(125I)−標識VEGF(109)にてFabを平衡化して、抗Fab抗体被覆プレートに結合したVEGFを捕獲することによってVEGFに対するFabの溶液結合親和性を測定する評価(Chen等, (1999) J. Mol Biol 293:865-881)で示されるような、抗体のFab型とVEGF分子を用いて実行される放射性標識VEGF結合評価(RIA)で測定される。評価の条件を決めるために、マイクロタイタープレート(Dynex)を5μg/mlの捕獲抗Fab抗体(Cappel Labs)を含む50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)にて終夜被覆し、続いて2%(w/v)のウシ血清アルブミンを含むPBSにて室温(およそ23℃)で2から5時間、ブロックする。非吸着プレート(Nunc #269620)に、100pM又は26pMの[125I]VEGF(109)を段階希釈した所望のFab(例えば、Presta等, (1997) Cancer Res. 57: 4593-4599)と混合する。ついで所望のFabを終夜インキュベートする;しかし、インキュベーションは平衡状態に達したことを確認するまでに65時間継続してもよい。その後、混合物を捕獲プレートに移し、室温で1時間インキュベートする。そして、溶液を取り除き、プレートを0.1%のTween20を含むPBSにて8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルの閃光物質(MicroScint−20; Packard)を加え、プレートをTopcountγ計測器(Packard)にて10分間計測する。最大結合の20%か又はそれ未満の濃度のFabを選択してそれぞれ競合結合測定に用いる。他の実施態様では、約10応答単位(RU)の固定したhVEGF(8−109)CM5チップを用いて25℃のBIAcore商標−2000又はBIAcore商標−3000(BIAcore、Inc.、Piscataway、NJ)にて表面プラズモン共鳴評価を行ってKd又はKd値を測定する。簡潔には、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore Inc.)を、提供者の指示書に従ってN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化した。ヒトVEGFを注入前に10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(約0.2μM)に希釈し、結合したタンパク質の反応単位(RU)がおよそ10になるように5μl/分の流速で注入した。ヒトVEGFの注入後、反応しない群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入した。動力学的な測定のために、2倍の段階希釈したFab(0.78nMから500nM)を25℃、約25μl/分の流速で0.05%Tween20(PBST)を含むPBSに注入した。会合及び解離のセンサーグラムを同時にフィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one-to-one Langmuir binding model)(BIAcore Evaluationソフトウェアバージョン3.2)を用いて、会合速度(kon)と解離速度(koff)を算出した。平衡解離定数(Kd)をkoff/kon比として算出した。Chen, Y.,等, (1999) J. Mol Biol 293:865-881を参照されたい。上記の表面プラスモン共鳴評価による結合速度が10−1−1を上回る場合、分光計、例えば、流動停止を備えた分光光度計(stop−flow equipped spectrophometer)(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM−Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される、漸増濃度のヒトVEGF切断型(8−109)又はマウスVEGFの存在下にて、PBS(pH7.2)、25℃の、20nMの抗VEGF抗体(Fab型)の蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、帯域通過=16nm)における増加又は減少を測定する蛍光消光技術を用いて結合速度を測定することができる。同様の結合評価は、抗α5β1Fab抗体又はα5β1を標的として使用した抗体のKdを決定するために実施することができる。
【0043】
ここで使用される処置される被検体は哺乳動物(例えばヒト、非ヒト霊長類、ラット、マウス、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコなど)である。被検体は、臨床患者、臨床試験ボランティア、実験動物などであってもよい。被検体は、癌、免疫系疾患若しくは異常血管新生を伴う他の疾患に罹ることが予測されるか若しくは罹るリスクを有するか、又は癌、免疫系疾患若しくは異常血管新生を伴う他の疾患と診断された被検体であり得る。癌ないし免疫系疾患の多くの診断方法及び癌ないし免疫系疾患の臨床像は当分野で公知である。好ましい一実施態様では、本発明の処置される被検体はヒトである。
【0044】
用語「血管新生疾患」は、疾患又は疾患を引き起こす状態において、新生血管が過度に又は不適切に成長する場合(例えば、医学的見地から望ましくない血管新生の場所、時間、程度、又は発生)に起きる。癌、特に血管化固形腫瘍及び転移性腫瘍(大腸癌、肺癌(特に小細胞肺癌)又は前立腺癌を含む)、眼性新血管形成による疾患、特に糖尿病性盲目、網膜症、一次性糖尿病性網膜症又は加齢黄斑変性、脈絡膜血管新生(CNV)、糖尿病性黄斑浮腫、病的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、角膜血管新生、及び網膜血管新生及びルベオーシス;乾癬、関乾癬関節炎、血管腫のような血管芽細胞腫;炎症性腎疾患、例えば糸球体腎炎、特に糸球体間質性増殖性の糸球体腎炎、溶血性尿毒症性症候群、糖尿病性ネフロパシ又は高血圧の腎硬化症;様々な炎症疾患、例えば、関節炎、特に慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬、類肉腫症、移植後に生じる動脈の動脈硬化及び疾患、子宮内膜症又は慢性喘息、及び70以上の他の症状のような幾つかの場合において、病状の悪化又は疾患を引き起こす新生血管成長がある時に過度の、制御されていない、又は他の不適切な血管新生が起きる。新生血管が患部組織を育て、正常な組織を破壊し、癌の場合、新生血管によって腫瘍細胞は血流に逃れ、他の器官に留まる(腫瘍転移)。本発明は、上述の疾患を発生させるリスクがある患者を治療することを意図する。
【0045】
「血管透過性疾患」は血管と血管外区画間の血流、分子(例えば、イオンと栄養)及び細胞(例えば、白血球)が過剰又は不適切な場合(例えば、医学的見地から望ましくない血管新生の場所、時間、程度、又は発生)に起きる。血管透過性疾患は血管を介したイオン、水、栄養、又は細胞の過剰又は不適切な「漏れ」を起こし得る。幾つかの場合において、過剰な、制御されない、又は不適切な血管透過又は血管漏出は、例えば、腫瘍を伴う例えば、脳腫瘍;悪性腹水;メイグス症候群;肺炎;ネフローゼ症候群;心嚢貯留液;胸水;心筋梗塞および脳卒中などに続く状態のような心血管疾患と関連した透過性を含む浮腫を含む病状を悪化又は誘導する。
【0046】
本発明の抗体又はポリペプチドを投与する候補となる他の患者は、血管結合組織組織の異常な増殖、赤瘡、後天性免疫不全症候群、動脈閉塞、アトピー性角膜炎、細菌性潰瘍、ベーチェット病、血液由来の腫瘍、頸動脈閉塞性疾患、脈絡叢血管新生、慢性炎症、慢性網膜剥離、慢性ブドウ膜炎、慢性硝子体炎、コンタクトレンズ過剰装着、角膜移植片拒絶、角膜血管新生、角膜移植片血管新生、クローン病、イールズ病、流行性角結膜炎、細菌性潰瘍、単純ヘルペス感染症、帯状疱疹、過粘稠度症候群、カポジ肉腫、白血病、脂質退化、ライム病、辺縁潰瘍性角膜炎、モーレン潰瘍、ハンセン病以外のマイコバクテリア感染症、近視、眼性新生血管疾患、視覚穴、オスラー-ウェーバー症候群(オスラー-ウェーバー-ランデュ)、骨関節炎、パジェット病、毛様体扁平部炎、類天ぽうそう、フリクテン症、多発動脈炎、レーザー治療後合併症、原生動物の感染症、弾性線維性偽性黄色腫、鰭角膜炎シッカ、放射状角膜切開、網膜血管新生、未熟児の網膜症、水晶体後繊維増殖、類肉腫、強膜炎、鎌状赤血球貧血、シェーグレン症候群、固形腫瘍、シュタルガルト病、スティーブンジョンソン疾患、上部の辺縁角膜炎、梅毒、全身狼瘡、テリアンの周縁退化、トキソプラズマ症、外傷、ユーイング肉腫の腫瘍、神経芽細胞腫の腫瘍、骨肉腫の腫瘍、網膜芽細胞腫の腫瘍、横紋筋肉腫の腫瘍、潰瘍性大腸炎、静脈閉塞ビタミンA欠乏およびウェゲナーサルコイドーシス、糖尿病と関連している望ましくない血管新生、寄生虫病、異常な創傷治癒、手術、損傷又は外傷後肥大、体毛成長の抑制、排卵および黄体形成の抑制、移植の阻害及び子宮の胚の発達の阻害にあるもの又は、発症するリスクのあるものである。
【0047】
抗血管新生治療は、移植片拒絶、肺炎症、ネフローゼ症候群、子癇前症、心嚢貯留液、例として、心外膜炎及び胸水が関連するもの、望ましくない血管透過によって特徴づけられる疾患及び疾患、例えば、脳腫瘍と関連している浮腫、悪性腫瘍と関連している腹水、メイグス症候群、肺炎症、ネフローゼ症候群、心嚢浮腫、胸水、心血管疾患と関連している透過性例えば心筋梗塞および脳卒中などの後の症状の一般的な処置に有用である。
【0048】
本発明の他の血管新生依存性疾患には、血管線維腫(出血傾向がある異常な血管)、血管新生緑内障(目の血管成長)、動静脈奇形(動脈および静脈間の異常な連通)、結合しない骨折(治癒しない骨折)、アテローム動脈硬化性斑(動脈硬化)、化膿肉芽腫(血管から成る一般的な皮膚病変)、強皮症(結合織病の形)、血管腫(血管から成る腫瘍)、トラコーマ(発展途上国の盲目の主要な原因)、血友病関節、血管粘着力および肥大した瘢痕(異常な瘢痕形成)が含まれる。
【0049】
「治療」は、治療的処置及び予防的又は防止的な処置を「治療」は、治療的処置及び予防的又は防止的な処置を指す。治療を必要とするものには、既に疾患を有するもの、並びに予防すべき疾患があるものが含まれる。治療を必要とするものには、既に疾患を有するもの、並びに予防すべき疾患があるものが含まれる。
【0050】
用語「再起」、「再発」又は「再発した」は、疾患消失を医学的に評価した後に、癌又は疾患が再発することを意味する。遠隔転移又は局所再起の診断は再発と見なすことができる。
【0051】
「難治性」又は「抵抗性」なる用語は、治療に応答しない癌又は病気を意味する。
【0052】
「補助治療」なる用語は第1の治療後になされる治療であり、通常外科手術を意味する。癌又は疾患の補助治療は免疫治療、化学治療、照射治療及びホルモン治療を含み得る。
【0053】
「維持治療」なる用語は以前の治療効果の維持を補助するためになされる計画された治療を意味する。
【0054】
「侵襲性癌」なる用語は組織の層上に広がり、正常の周辺組織に進入を開始する。侵襲性癌は転移性であってもなくてもよい。
【0055】
「非侵襲性癌」なる用語は、非常に初期の癌又は元の組織上に広がらない癌を意味する。
【0056】
腫瘍学における「無増悪生存期間 」なる用語は治療中及び後の癌が成長しない期間の長さを意味する。無増悪生存期間は患者が完全な反応又は部分的な反応を経験する時間量、並びに安定な疾患を患者が経験する時間量を含む。
【0057】
腫瘍学における「進行性疾患」なる用語は、治療開始から20%より多い−体積の増加又は腫瘍の拡大の何れかによる腫瘍成長を意味してもよい。
【0058】
「疾患」は、抗体を用いて治療することによって利益を得る任意の症状である。例えば、異常な血管形成(過剰、不適切又は制御不能の血管形成)又は血管透過性に罹患しているか、又はそれらに対して予防する必要がある哺乳動物。これには、哺乳動物の問題とする疾患の素因となる病的状態を含む慢性及び急性の疾患又は疾病を包含する。限定するものでなく、ここで治療する疾患の例には、悪性及び良性の腫瘍;非白血病およびリンパ系の悪性腫瘍;神経系、神経膠系、星状膠系、視床下部性及び他の腺性、マクロファージ系、上皮性、間質性、胞胚腔系の疾患;及び、炎症性、血管原性及び免疫性の疾患が包含される。
【0059】
「癌」及び「癌性」なる用語は、典型的には制御されない細胞増殖を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか記述する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。このような癌のより具体的な例には、扁平細胞癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸管癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓癌、腎癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝癌、頭頸部癌、直腸癌、結腸直腸癌、小細胞肺癌を含む肺がん、非小細胞肺癌、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌、扁平細胞癌(例えば上皮の扁平細胞癌)、前立腺ガン、腹膜ガン、肝細胞性癌、胃腸癌を含む胃または胃癌、膵癌、神経膠芽腫、網膜芽細胞腫、星状細胞腫、莢膜細胞腫、男化腫瘍、肝癌、非ホジキンリンパ腫を含む血液悪性腫瘍(NHL)、多発性骨髄腫及び急性の血液系悪性腫瘍、子宮内膜ないし子宮カルチノーマ、子宮内膜症、線維肉腫、絨毛膜癌、唾液腺カルチノーマ、外陰部癌、甲状腺癌、食道カルチノーマ、肝癌、肛門部のカルチノーマ、陰茎カルチノーマ、上咽頭癌、喉頭のカルチノーマ、カポシ肉腫、メラノーマ、皮膚カルチノーマ、シュワン腫、乏突起細胞腫、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、骨原性肉種、平滑筋肉腫、尿路カルチノーマ、甲状腺カルチノーマ、ウィルムス腫瘍、並びにB細胞リンパ腫(低級/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球(SL)NHL;中級/濾胞性NHL;中級びまん性NHL;高級免疫芽細胞性NHL;高級リンパ芽球性NHL;高級小非分割細胞NHL;バルキー疾患NHL;外套細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;及びワルデンストロームのマクログロブリン病を含む);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);線毛細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、並びに母斑症及びメイグス症候群と関係している異常な血管性増殖が含まれる。
【0060】
ここで使用される「腫瘍」なる用語は、悪性又は良性に関わらず、全ての腫瘍形成細胞成長及び増殖、及び全ての前癌性及び癌性細胞及び組織を意味する。
【0061】
「抗腫瘍性組成物」又は「抗腫瘍薬」なる用語は、少なくとも一つの活性治療的作用剤、例えば「抗癌剤」を含む、癌を治療する際に有効な組成物を指す。治療的作用剤(抗癌剤)の例には、制限するものではないが、例えば、化学療法剤、増殖阻害性作用剤、細胞障害性作用剤、放射線療法に用いられる作用剤、抗血管新生作用剤、アポトーシス作用剤、抗チューブリン作用剤および癌を治療する他の作用剤、例えば、抗HER-2抗体、抗CD20抗体、表皮の成長因子レセプター(EGFR)アンタゴニスト(例えばチロシンキナーゼインヒビター)、HER1/EGFRインヒビター(例えばエルロチニブ(Tarceva(商標))、血小板由来成長因子インヒビター(例えばGleevec(商標)(メシル酸イマチニブ))、COX-2インヒビター(例えばセレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、以下の標的ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR−β、BAFF、BR3、APRIL、BCMA又はVEGFレセプタの一つ以上と結合するアンタゴニスト(例えば中和抗体)、TRAIL/Apo2および他の生理活性的で有機化学的作用材などが含まれる。また、その組合せは本発明に含まれる。
【0062】
ここで使用される「成長阻害剤」とは、インビトロ及び/又はインビボにおいて細胞の成長又は増殖を阻害する化合物又は組成物のことを意味する。従って、成長阻害剤には、S期の細胞の割合を著しく減少させるようなものでありうる。成長阻害剤の例には、細胞周期の進行をブロックする薬剤(S期以外の時点において)、例えばG1停止及びM期停止を誘発する薬剤が含まれる。典型的なM期ブロッカーには、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキソール(登録商標)、トポIIインヒビター、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが含まれる。また、G1を停止させるこれらの薬剤、例えばDNAアルキル化剤、例えばタモキシフェン、プレドニソン、ダカーバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-CがS期停止に溢流する。更なる情報は、Murakamiらにより「細胞周期の調節、オンコジーン、及び抗新生物薬」と題された、癌の分子的基礎、Mendelsohn及びIsrael編、第1章(WB Saunders;Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。
【0063】
ここで使用される「細胞毒性薬」は、細胞の機能を阻害又は抑制し、及び/又は細胞破壊を起こす物質を意味する。この用語は、放射性同位元素(例えば、I131、I125、Y90及びRe186)、化学治療薬、及び細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素又はその断片を意味する。
【0064】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学治療剤の例には、癌治療に有用な化学組成物を含む。化学療法剤の例には、チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミドのようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成アナログトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;ドュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロスレアス(nitrosureas);抗生物質、例えばエネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンωI1(例えばNicolaou等., Agnew, Chem Intl. Ed. Engl., 33:183-186(1994)を参照されたい);ダイネマイシン(dynemicin)Aを含むダイネマイシン;エスペラマイシン;並びにネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素タンパクエネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン(aclacinomycin)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorbicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCのようなマイトマイシン、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、及びゾルビシン(zorubicin);代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate);プリンアナログ、例えばフルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine);アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー(replenisher)、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシノイド(maytansinoid)類、例えばメイタンシン(maytansine)及びアンサミトシン(ansamitocine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene、OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジン(roridine)A及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロフォスファミド;チオテパ;タキソイド類、例えばTAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol− Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)、パクリタキセルのクレモフォー無添加アルブミン操作ナノ粒子製剤(ABRAXANE(商標))、及びTAXOTERE(登録商標)ドキセタキセル(Rhone−Poulenc Rorer、Antony、France);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;プラチナアナログ、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン(novantrone);テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;エクセローダ;イバンドロナート(ibandronate);イリノテカン(Camptosar、CPT−11)(5−FU及びロイコボリンを伴うイリノテカンの治療法を含む);トポイソメラーゼ阻害薬RFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸のようなレチノイド;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン(LV);オキサリプラチン治療計画(FOLFOX)を含むオキサリプラチン;細胞増殖を減少させるPKC−アルファ、Raf、H−Ras及びEGFR(例えば、エルロチニブ(Tarceva(商標))の阻害剤、及び上記の何れかの薬学的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0065】
化学治療薬は、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(raloxifene)、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びFARESTON(登録商標)・トレミフェン;副腎におけるエストロゲン生産を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば4(5)−イミダゾール類、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲステロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタニー、ファドゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾール;及びフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;並びにトロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類縁体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、例えばPKC−α、Raf及びH−Rasのような異常な細胞増殖に関与するとされるシグナル伝達経路内の遺伝子発現を阻害するもの;VEGF発現インヒビター(例えば、ANGIOXYME(登録商標)リボザイム)及びHER2発現インヒビターのようなリボザイム;ワクチン類、例えば遺伝子療法ワクチン類、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL−2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ビノレルビン及びエスペラミシン(米国特許第4675187号を参照されたい)、及び上記の何れかの製薬上許容しうる塩、酸又は誘導体のような、抗エストロゲン及び選択的エストロゲンレセプターモジュレーター(SERM)のような癌に対するホルモンの効果を調節又は阻害する抗ホルモン薬を含む。
この出願で用いられる「プロドラッグ」という用語は、親薬剤に比較して癌細胞に対する細胞障害性が低く、より活性な親形態に酵素的に活性化され又は変換される製薬的活性物質の前駆体又は誘導体形態を意味する。例えば、Wilman, 「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」, Biochemical Society Transactions, 14:375-382頁, 615th Meeting, Belfast(1986)、及びStellaら, 「Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」、Directed Drug Delivery, Borchardt等(編), 247-267頁, Humana Press (1985)を参照されたい。本発明のプロドラッグは、限定するものではないが、ホスフェート含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、スルフェート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、βラクタム含有プロドラッグ、置換されていてもよいフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は置換されていてもよいフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグを含む。限定はしないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化することができる細胞障害性剤の例には、上記の化学療法薬が含まれる。
【0066】
「単離された」とは、ここで開示された種々のポリペプチドを記述するために使用するときは、それを発現した細胞又は細胞培養から同定及び分離及び/又は回収されたポリペプチドを意味する。その自然環境の汚染成分とは、ポリペプチドの診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質を含み得る。好ましい実施態様では、ポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端あるいは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに充分なほど、又は、(2)クーマシーブルー又は好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性が得られるように充分なほど精製される。ポリペプチドの自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、単離されたポリペプチドには、組換え細胞内のインサイツのポリペプチドが含まれる。しかしながら、通常、単離されたポリペプチドは少なくとも1つの精製工程により調製される。
【0067】
「単離された」ポリペプチドコード化核酸又は他のポリペプチドコード化核酸は、同定され、ポリペプチドコード化核酸の天然供給源に通常付随している少なくとも1つの汚染核酸分子から分離された核酸分子である。単離されたポリペプチドコード化核酸分子は、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。故に、単離されたポリペプチドコード化核酸分子は、天然の細胞中に存在する特定のポリペプチドコード化核酸分子とは区別される。しかし、単離されたポリペプチドコード化核酸分子は、例えば、核酸分子が天然の細胞のものとは異なった染色体位置にあるポリペプチドを通常発現する細胞に含まれるポリペプチドコード化核酸分子を含む。
【0068】
「制御配列」なる用語は、特定の宿主生物において作用可能に結合されたコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適な制御配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
【0069】
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合」している。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているならば、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合したDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが常套的な手法に従って使用される。
【0070】
ここで定義される「ストリンジェント条件」又は「高度のストリンジェンシー条件」は、(1)洗浄に低イオン強度及び高温度を用いる、例えば、50℃で、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウム;(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤を用いる、例えば、42℃で、50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム;又は(3)42℃で、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハード液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%の硫酸デキストラン溶液中で終夜ハイブリダイゼーション、42℃で、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中にて10分間の洗浄、ついで55℃で、EDTAを含む0.1×SSCからなる10分間の高ストリンジェンシー洗浄を用いるものによって同定される。
【0071】
ここに記載されるアミノ酸配列は特に定めない限り隣接したアミノ酸配列である。
【0072】
ここで使用される「イムノアドヘシン」なる用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを結合した抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、所望の結合特異性を持ち、抗体の抗原認識及び結合部位以外である(即ち「異種の」)アミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドへシン部分は、典型的には少なくともレセプター又はリガンド、例えば、VEGFR又はフィブロネクチンリガンドの結合部位を含む隣接アミノ酸配列である。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD又はIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。ペプチボディは、免疫グロブリンのFc部分に融合させた標的に特異的に結合する配列のファージディスプレイセレクションから得られた配列を含み、ここではイムノアドヘシンと見なし得る。
【0073】
「抗体」なる用語は、最も広義に使用され、特に単一モノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト及び中和抗体を含む)、多重エピトープ特異性を有する抗体組成物、ポリクローナル抗体、単鎖抗原結合分子、並びに天然のポリペプチドに特異的に結合するか及び/又は、本発明の生物学的活性又は免疫学的活性を示す限り、抗原結合断片(下記参照)を包含する。一実施態様では、抗体は標的タンパク質のオリゴマー、例えば、3量体に結合する。別の実施態様では、抗体はタンパク質に特異的に結合し、その結合は本発明のモノクローナル抗体で阻害され得る(例えば、本発明の寄託抗体など)。抗体の「機能断片又はアナログ」なる用語は、参照される抗体と同等の定量的な生物学的活性を有する化合物である。例えば、本発明の抗体の機能断片又はアナログは、VEGF又はα5β1に特異的に結合し得る。一実施態様は、抗体は細胞増殖を誘導するVEGFの活性を阻害するか又は大幅に減少し得る。
【0074】
「単離された抗体」は、その自然環境の成分から同定され分離及び/又は回収されたものである。その自然環境の汚染成分とは、その抗体の診断又は治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、抗体は、(1)ローリー法で測定した場合95%を越える抗体、最も好ましくは99重量%を越えるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、あるいは、(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS−PAGEによる均一性まで精製される。単離された抗体には、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により調製される。
【0075】
基本的な4鎖抗体単位は、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖からなるヘテロ四量体糖タンパク質である(IgM抗体は、J鎖と呼ばれる付加的なポリペプチドを備えた5つの基本的ヘテロ四量体からなり、よって10の抗原結合部位を含む一方、分泌IgA抗体は重合して、J鎖と共に2−5の基本的4鎖単位を含む多価集合体を形成することができる)。IgGの場合、4鎖単位は一般的に約150000ダルトンである。各L鎖は一つの共有ジスルフィド結合によりH鎖に連結している一方、2つのH鎖はH鎖のアイソタイプに応じて一又は複数のジスルフィド結合により互いに連結されている。また各H及びL鎖は、規則的に離間した内鎖ジスルフィド架橋を有している。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(V)と、これに続くα及びγ鎖それぞれに対しては3つの定常ドメイン(C)と、μ及びεアイソタイプに対しては4つのCドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(V)と、これに続く定常ドメイン(C)をその他端に有する。VはVに整列しており、Cは重鎖の第1定常ドメイン(C1)に整列している。特定のアミノ酸残基は軽鎖と重鎖の可変ドメインの界面を形成すると考えられている。VとVは対になって単一の抗原結合部位を形成する。異なったクラスの抗体の構造及び特性について、例えば、Basic and Clinical Immunology, 8版, D. Stites, A. Terr及びT. Parslow編, Appleton & Lange, Norwalk, CT, 1994, 71頁, 6章を参照されたい。
【0076】
任意の脊椎動物種からのL鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ及びラムダと呼ばれる明確に区別される2つのタイプのタイプを割り当てることができる。それらの重鎖の定常ドメイン(C)のアミノ酸配列に基づき、免疫グロブリンは、種々のクラス又はアイソタイプに割り当てることができる。免疫グロブリンには、それぞれ、α、δ、ε、γ及びμと命名された重鎖を有するIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの5つのクラスがある。γ及びαクラスはさらにCH配列及び機能の比較的小さな差異に基づいてサブクラスに分割され、例えばヒトでは、次のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2を発現する。
【0077】
「可変」なる用語は、可変ドメインの所定のセグメントが抗体間で配列の点で広範囲に相違していることを意味する。Vドメインは抗原結合を媒介し、特定の抗体のその特定の抗原に対する特異性を定める。しかしながら、可変性は可変ドメインの約110アミノ酸スパンにわたって均一に分布しているのではない。むしろ、V領域は、それぞれ9−12アミノ酸長である「高頻度可変領域」と呼ばれる極度の可変性のより短い領域により分離した15−30のアミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる相対的に不変の伸長部からなる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、各々、主としてβ-シート配置をとり、3つの高頻度可変領域によって連結され、β-シート構造を連結し、場合によってはその一部を形成することもある4つのFRを含む。各鎖の高頻度可変領域はFRによって極く近傍に一緒に保持され、他の鎖からの高頻度可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)を参照)。定常ドメインは抗体の抗原への結合に直接は関係しないが、例えば抗体依存性細胞傷害性(ADCC)への抗体の関与のような様々なエフェクター機能を示す。
【0078】
ここで使用される「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合性の原因となる抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、Vにおいては、およそ残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)、及びVにおいては、およそ31−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3);Kabat等、上記、及び/又は「高度可変ループ」からの残基(例えば、Vにおいては、およそ残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)、及びVにおいては、およそ26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196:901-917 (1987))を含んでなる。本発明のHVR領域は、位置:軽鎖可変ドメインの24−36(LHVR1)、46−56(LHVR2)、及び89−97(LHVR3)及び重鎖可変ドメインの26−35(HHVR1)、47−65(HHVR2)及び93−102(HHVR3)を含む(Kabat番号付けシステム、Kabat等、上記1991)。
【0079】
本明細書及び特許請求の範囲すべてにわたって、一般的に、可変ドメインの残基を指す場合にはカバット番号付けシステムを用いる(およそ、軽鎖の残基1−107と重鎖の残基1−113)(例として、Kabat 等, 上記)。一般的に、イムノグロブリン重鎖定常領域内の残基を指す場合には、「EU番号付けシステム」又は「EUインデックス」を用いる(EUインデックスはKabat 等, 上記 (1991)において報告されており、出典明記によって本明細書中に特別に組み込まれる)。本明細書中で特に述べない限り、抗体の可変ドメイン内の残基の数の参照は、カバット番号付けシステムによって番号付けした残基を意味する。本明細書中で特に述べない限り、抗体の定常ドメイン内の残基の数の参照は、EU番号付けシステムによって番号付けした残基を意味する。
【0080】
ここで使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、少量で存在しうる自然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原性部位に対している。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物と比べて、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。これらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体と混ざらないで合成されうる点で有利である。「モノクローナル」なる修飾は、ある特定の方法によって抗体が作製されることを必要とすると解釈されるものではない。例えば、本発明において有用なモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256;495 (1975)によって初めて記載されるハイブリドーマ方法論によって調製されてもよいし、例えば細菌、非動物真核生物、動物又は植物の細胞における組み換えDNA法を用いて作製されてもよい(例として米国特許第4816567号を参照)。また、「モノクローナル抗体」は、例としてClackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)及びMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載の技術又は実施例に記載の方法を用いてファージ抗体ライブラリーから単離されうる。
【0081】
本明細書中のモノクローナル抗体は、「キメラ」抗体を含み、それは特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列に相同な又は同一な重鎖及び/又は軽鎖の一部を含むものであり、残りの鎖は、本発明の生物学的活性を表す限り、抗体断片のように他の種由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列に相同な又は同一なものである(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。ここで対象とするキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、旧世界サル、サルなど)由来の可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む。
【0082】
「無傷な」抗体は、抗原-結合部位、並びにC及び少なくとも重鎖定常ドメイン、C1、C2及びC3を含むものである。定常ドメインは天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそれらのアミノ酸配列変異体であってよい。好ましくは、インタクトな抗体は一又は複数のエフェクター機能を有する。
【0083】
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片;二重特異性抗体;線形抗体(Zapata等, Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]);一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
【0084】
「線形抗体」という表現は、一般的に、Zapata等, Protein Eng. 8(10):1057-1062 (1995)に記載された抗体を意味する。簡単には、これらの抗体は抗原結合領域の対を形成する直列のFdセグメント(VH−CH1−VH−CH1)を含む。直鎖状抗体は二重特異的でも単一特異的でもよい。
【0085】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片と、容易に結晶化する能力を反映して命名された残留「Fc」断片を産生する。Fab断片は全長L鎖とH鎖の可変領域ドメイン(V)、及び一つの重鎖の第一定常ドメイン(C1)からなる。各Fab断片は抗原結合性に関して一価である、すなわち単一の抗原-結合部位を有する。抗体のペプシン処理により、単一の大きなF(ab')断片が生じ、これは2価の抗原結合部位を持つ2つのジスルフィド結合されたFab断片にほぼ対応し、抗原を交差結合させることができるものである。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含むC1ドメインのカルボキシ末端に幾つかの残基が付加されていることによりFab断片と相違する。Fab'-SHは、ここでは定常ドメインのシステイン残基(類)が遊離のチオール基を持つFab'を表す。F(ab')抗体断片は、通常はFab'断片の対として生成され、それらの間にヒンジシステインを有する。抗体断片の他の化学的結合も知られている。
【0086】
Fc断片はジスルフィドにより一緒に保持されている双方のH鎖のカルボキシ末端部位を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域の配列により決定され、その領域は、所定の型の細胞に見出されるFcレセプター(FcR)によって認識される部位である。
【0087】
「変異体Fc領域」は、ここで定義されるような少なくとも一つの「アミノ酸修飾」によって天然配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、変異体Fc領域は、天然配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域と比較し、少なくとも一つの一アミノ酸置換を有する、例えば、天然配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域において、約1から約10アミノ酸置換、及び好ましくは約1から約5アミノ酸置換である。一実施態様では、本明細書中の変異体Fc領域は、天然配列Fc領域(例えば配列番号133)と少なくとも約80%同一性、少なくとも約85%同一性、少なくとも約90%同一性、少なくとも約95%同一性、又は少なくとも約99%同一性を有する。他の実施態様では、本明細書中の変異体Fc領域は、親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%同一性、少なくとも約85%同一性、少なくとも約90%同一性、少なくとも約95%同一性、又は少なくとも約99%同一性を有する。
【0088】
「Fc領域を含んだポリペプチド」という用語は、Fc領域を含む抗体もしくはイムノアドヘンシン(下記記載の定義を参照)などのポリペプチドのことを指す。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムに従うと残基447)は、例えば、ポリペプチドの精製中又はポリペプチドをコードする核酸を組み換え操作することによって除去してもよい。したがって、本発明のFc領域を有する、抗体などのポリペプチドを含んでなる組成物は、すべてのK447残基が除去されたポリペプチド集団、除去されるK447残基のないポリペプチド集団又はK447残基を有するポリペプチドとK447を有さないポリペプチドが混合しているポリペプチド集団を包含する。
【0089】
「Fv」は、完全な抗原認識及び-結合部位を含む最小の抗体断片である。この断片は、密接に非共有結合した1本の重鎖と1本の軽鎖の可変領域の二量体からなる。これら2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に対する抗原結合特異性を付与する6つの高頻度可変ループ(H及びL鎖から、それぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含んでなるFvの半分)でさえ、結合部位全体よりは低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を持つ。
【0090】
「sFv」又は「scFv」とも略称される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖内に結合したV及びV抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドはV及びVドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それはsFVが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994);Borrebaeck 1995, 以下を参照されたい。
【0091】
「ダイアボディ」なる用語は、鎖間ではなく鎖内でVドメインを対形成させ、結果として二価の断片、すなわち2つの抗原-結合部位を有する断片が得られるように、VとVドメインとの間に、短いリンカー(約5-10残基)を持つsFv断片(前の段落を参照)を構築することにより調製される小型の抗体断片を意味する。二重特異性ダイアボディは2つの「交差」sFv断片のヘテロダイマーであり、そこでは2つの抗体のV及びVドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404097号;国際公開93/11161号;及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)により十分に記載されている。
【0092】
非ヒト(例えば齧歯類)抗体の「ヒト化」形とは、非ヒト抗体から得られた最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の抗体特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、全て又はほとんど全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに一致し、全て又はほとんど全てのFRがヒト免疫グロブリン配列である、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、状況に応じて免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。さらなる詳細は、Jones等, Nature 321, 522-525(1986);Riechmann等, Nature 332, 323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992)を参照されたい。
【0093】
「種依存性抗体」は、第二の哺乳動物種からの抗原の相同体に対して有している結合親和性よりも、第一の哺乳動物種からの抗原に対してより強力な結合親和性を有する抗体である。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原(すなわち、約1×10−7M以下、好ましくは約1×10−8以下、最も好ましくは約1×10−9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)と「特異的に結合」するが、そのヒト抗原に対する結合親和性よりも、少なくとも約50倍、又は少なくとも約500倍、又は少なくとも約1000倍弱い、第二の非ヒト哺乳動物種からの抗原の相同体に対する結合親和性を有する。種依存性抗体は、上にて定義した種々の型の抗体のいずれでもあることが可能だが、好ましくはヒト化又はヒト抗体である。
【0094】
そのような実施態様では、薬剤の「非標的」タンパク質との結合の程度は、蛍光標示式細胞分取器(FACS)分析又は放射免疫沈降(RIA)によって定量することができる、その特定の標的タンパク質とのポリペプチド、抗体、アンタゴニスト又又は組成物の結合の約10%よりも低い。標的分子へのポリペプチド薬剤の結合に関して、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープと「特異的に結合」又は「特異的に結合する」、又はそれに対して「特異的である」という用語は、非特異的な相互作用とは測定して異なる結合を意味する。特異的な結合は、例えば、一般に結合活性を持たない類似した構造の分子であるコントロール分子の結合性と比較して、分子の結合性を定量することによって測定することができる。例えば、特異的な結合性は、標的、例えば過剰の非標識標的に類似したコントロール分子とも競合にとって定量することができる。この場合、プローブに対する標識標的の結合が過剰の非標識標的によって競合的に阻害されるならば、特異的結合が表示される。ここで使用される特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープと「特異的に結合」又は「特異的に結合する」、又はそれに対して「特異的である」という用語は、例えば標的に対して少なくとも約10−4M、あるいは少なくとも約10−5M、あるいは少なくとも約10−6M、あるいは少なくとも約10−7M、あるいは少なくとも約10−8M、あるいは少なくとも約10−9M、あるいは少なくとも約10−10M、あるいは少なくとも約10−11M、あるいは少なくとも約10−12M、あるいはそれ以上のKdを持つ分子によって示されうる。一実施態様では、「特異的に結合する」という用語は、如何なる他のポリペプチド又はポリペプチドエピトープへ実質的に結合することなく分子が特定のポリペプチド又は特定のポリペプチドのエピトープに結合する結合を意味する。
【0095】
抗体「エフェクター機能」は抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に起因する生物学的活性を意味し、抗体アイソタイプと共に変わる。抗体エフェクター機能の例は、C1q結合及び補体依存性細胞毒性;Fcレセプター結合;抗体依存性細胞障害性(ADCC);ファゴサイトーシス;細胞表面レセプター(例えばB細胞レセプター)のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化を含む。「天然配列Fc領域」は天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同等のアミノ酸配列を含む。Fc配列の例は、例えば、限定されるものではないが、Kabat等, 上記(1991)である。
【0096】
ここで定義されるポリペプチド又は抗体配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」及び「相同性」とは、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考え、配列を整列させた後の、比較しているポリペプチドのアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を測定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用することによって得られる。ALIGN-2はジェネンテック社によって作製され、ALIGN-2のソースコードは米国著作権庁, ワシントンD.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087で登録されている。ALIGN-2プログラムはジェネンテック社、サウス サン フランシスコ, カリフォルニアから公的に入手可能である。ALIGN-2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標)V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
【0097】
「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載するために使用される。一実施態様では、本発明のFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)と結合するもので、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスを含み、それらの対立遺伝子変異体、選択的にスプライシングされたものも含まれる。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性型受容体」)、FcγRIIB(「阻害型受容体」)が含まれ、主としてその細胞質領域は異なるが、類似のアミノ酸配列を有するものである。活性型受容体FcγRIIAは、細胞質領域にチロシン依存性免疫受容体活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif ;ITAM)を含んでいる。阻害型受容体FcγRIIBは、細胞質領域にチロシン依存性免疫受容体阻害性モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif ;ITIM)を含んでいる(総説MDaeron, Annu. Rev. immunol. 15:203-234 (1997)を参照されたい)。該用語には、FcγRIIIAアロタイプ:FcγRIIIA-Phe158、FcγRIIIA-Val158、FcγRIIA-R131、及び/又はFcγRIIA-H131などのアロタイプが含まれる。FcRに関しては、 Ravetch及びKinet, Annu.Rev. Immunol. 9:457-92 (1991);Capel 等, Immunomethods 4:25-34 (1994);de Haas 等, J.Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995) に総説されている。他のFcR、ここでは、将来的に同定されるものも含めて、「FcR」という言葉によって包含される。また、該用語には、母性IgGsが胎児に受け継がれる要因となっている新生児性受容体FcRnも含まれる(Guyer 等, J. Immunol. 117:587 (1976)および Kim 等, J. Immunol.24:249 (1994))。
【0098】
「FcRn」なる用語は、新生児Fcレセプター(FcRn)を意味する。FcRnは主要組織適合性複合体(MHC)と構造的に類似しており、β2ミクログロブリンに非共有的に結合したα鎖からなる。新生児FcレセプターFcRnの複数の機能は、Ghetie及びWard (2000) Annu. Rev. Immunol. 18, 739-766に概説される。FcRnは母親から子へのイムノグロブリンIgGの受動的な運搬と、血清IgGレベルの調節を担う。FcRnは、細胞内及び細胞間でピノサイトーシスされた完全な形のIgGを結合して運搬し、標準の分解系経路からIgGをレスキューするサルベージレセプターとして働くことができる。
【0099】
国際公開公報00/42072(Presta)及びShieldsら, J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604(2001)には、FcRとの結合が改良又は消滅した抗体変異体が記載されている。これらの文献は出典明記によって特別に本明細書中に組み込まれる。
【0100】
ヒトIgG Fc領域の「CH1ドメイン」(「H1」ドメインの「C1」とも称される)は、通常およそアミノ酸118からおよそアミノ酸215(EU番号付けシステム)に伸展している。
【0101】
「ヒンジ領域」はヒトIgG1のGlu216からPro230の伸展として一般に定義されている(Burton, Molec. Immunol. 22:161-206 (1985))。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖間S-S結合を形成する最初と最後のシステイン残基を同じ位置に配することにより、IgG1と整合させられうる。
【0102】
Fc領域の「低ヒンジ領域」は、通常、カルボキシル末端からヒンジ領域、すなわち、Fc領域の残基233から239までの伸展として定義されている。本発明に先立ち、FcRの結合には、一般に、IgGのFc領域の低ヒンジ領域内のアミノ酸残基が寄与しているとされていた。
【0103】
ヒトIgGFc領域の「CH2ドメイン」(「H2」ドメインの「C2」とも呼ばれる)は通常およそアミノ酸231からおよそアミノ酸340まで伸展する。CH2ドメインは、他のドメインと密接には対をなさないという点で独特である。むしろ、2つのN-結合分岐炭水化物鎖が未変性の天然IgG分子の2つのCH2ドメインの間に介在されている。炭水化物はドメイン-ドメイン対形成に対する代替物を提供し、CH2ドメインを安定化させるのに役立つと推測されてきた。Burton, Molec. Immunol. 22:161-206 (1985)。
【0104】
「CH3ドメイン」(「H3」ドメイン又は「C2」とも呼ばれる)は、残基C末端からFc領域のCH2ドメインへの伸長を含む(すなわち、およそアミノ酸残基341から抗体配列のC末端まで、典型的にはIgGのアミノ酸残基446又は447)。
【0105】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を有する。模範的な「エフェクター機能」は、C1q結合;補体依存性細胞障害性;Fcレセプター結合;抗体依存性細胞媒介障害活性(ADCC);ファゴサイトーシス;細胞表層レセプターの下方制御(例えば、B細胞レセプター;BCR)等を含む。このようなエフェクター機能は、一般的に、結合ドメインと結合するFc領域(例えば、抗体可変ドメイン)を必要とし、例えば本明細書中に記載の種々のアッセイを使用して評価することができる。
【0106】
「C1q」は免疫グロブリンのFc領域に対する結合部位を含むポリペプチドである。C1qは二つのセリンプロテアーゼC1r及びC1sと共に、補体依存性細胞毒性(CDC)経路の最初の成分である複合体C1を形成する。ヒトC1qは例えばQuidel, San Diego, CAから市販されている。
【0107】
「結合ドメイン」なる用語は、他の分子に結合するポリペプチドの領域を意味する。FcRの場合には、結合ドメインはFc領域の結合の原因であるそのポリペプチド鎖の一部(例えばそのアルファ鎖)を含みうる。一つの有用な結合ドメインはFcRアルファ鎖の細胞外ドメインである。
【0108】
「改変された」FcR結合親和性又はADCC活性を有する変異体IgGFcを含むポリペプチドとは、親ポリペプチド若しくは天然配列Fc領域を有するポリペプチドと比較して増加または減少されたFcR結合活性(例えばFcγRまたはFcRn)及び/又はADCC活性を持つものである。FcRに対して「亢進した結合能を示す」変異形Fcは、親ポリペプチド又は天然配列のIgG Fcよりは高い親和性(例えば低い見かけのKd値又はIC50値)を有する少なくとも一のFcRを結合する。いくつかの実施態様では、親ポリペプチドと比較したときの結合の改善はおよそ3倍、好ましくはおよそ5、10、25、50、60、100、150、200、500倍まで、またはおよそ25%から1000%の結合の改善である。FcRに対して「減弱した結合能を示す」ポリペプチド変異体は、親ポリペプチドよりは弱い親和性で少なくとも一のFcRに結合する(例えば、より高い見かけのKd又はより高いIC50値)。親ポリペプチドと比較したときの結合の減弱は、およそ5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%またはそれ以上の結合の減弱であってもよい。
【0109】
「抗体依存性細胞障害活性」又は「ADCC」は、特定の細胞障害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcR)に結合した分泌型Igが細胞障害性エフェクター細胞を抗原保持標的細胞に特異的に結合させ、続いて標的細胞を細胞障害性によって標的細胞を殺傷する細胞障害性の形態を指す。抗体は細胞障害性細胞「に対するものであり」、必ず細胞の殺傷に必要である。ADCCを媒介する一次細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現する一方、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血性細胞でのFcRの発現は、Ravetch及びKinet, Annu.Rev.Immunol., 9:457-92(1991)の464頁の表3に要約されている。対象分子のADCC活性を評価するためには、米国特許第5500362号又は第5821337号、又は以下の実施例に記載されているようなインビトロADCCアッセイが実施されうる。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK)細胞を含む。あるいは、又は付加的に、対象分子のADCC活性は、例えばClynes等 .PNAS(USA), 95:652-656(1998)に開示されたような動物モデルにおいて、インビボで評価されてもよい。
【0110】
野生型IgGFc又は親ポリペプチドを有するポリペプチドより効果的に、ヒトエフェクター細胞の存在下で、「亢進したADCCを示す」又は抗体依存性細胞障害活性を媒介する変異Fc領域を含むポリペプチドは、変異型Fc領域を含むポリペプチド及び野生型Fc領域を含む親ポリペプチド(又は親ポリペプチド)のアッセイにおける量が本質的に同じ場合に、インビトロ又はインビボで、媒介するADCCがより効果的なポリペプチドである。一般的に、このような変異体は、ここに開示されたインビトロADCCアッセイを用いて同定されるが、例えば、動物モデルにおける、他のアッセイ又はADCC活性を決定するための方法が考えられる。一実施態様では、好ましい変異体は、媒介するADCC活性が、野生型のFc(又は親ポリペプチド)より約5倍から約100倍、例えば約25倍から約50倍効果的である。
【0111】
「補体依存性細胞障害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。典型的な補体経路の活性化は補体系(Clq)の第1補体が、同族抗原と結合した(適切なサブクラスの)抗体に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施することができる。
【0112】
Fc領域アミノ酸配列を変更してC1q結合能力が増大又は減少したポリペプチド変異体は、米特許第6194551号及び国際公開公報99/51642に記述される。それらの特許文献の内容は、出典明記によって、特別に本願明細書に組み込まれるものとする。またIdusogie 等 J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)を参照のこと。
【0113】
「ヒトエフェクター細胞」とは、一又はそれ以上のFcRsを発現し、エフェクターとしての機能を発揮する白血球のことである。一実施態様では、その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を発揮することが望ましい。ADCCを媒介する細胞の例として、抹消血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、好中球、が含まれるが、PBMCsとNK細胞が好適である。エフェクター細胞は天然の材料、例えば、ここで述べるように、血液やPMBC類、から単離してもよい。
【0114】
FcRnへの結合の測定方法は公知であり(例としてGhetie 1997, Hinton 2004を参照)、以下に記載される。インビボでのヒトFcRnへの結合とヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清半減期は、例えばヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウス又は形質転換されたヒト細胞株、又はFc変異形ポリペプチドを投与された霊長類動物においてアッセイすることができる。ある実施態様では、本発明のヒト化2H7抗体は、IgG Fc内にアミノ酸変異をさらに含有しており、野生型IgG Fcを有する抗体よりも少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、より好ましくは少なくとも100倍、好ましくは少なくとも125倍、さらにより好ましくは少なくとも150倍からおよそ170倍に亢進したヒトFcRnへの結合親和性を示す。
【0115】
FcRnへの結合親和性について、一実施態様では、抗体のEC50又は見かけのKd(pH6.0での)は100nM以下、より好ましくは10nM以下である。FcγRIII(F158;すなわち低親和性アイソタイプ)への増加した結合親和性について、一実施態様では、EC50又は見かけのKdは10nM以下であり、FcγRIII(V158;高親和性)について、EC50又は見かけのKdは3nM以下である。他の実施態様では、試験抗体とコントロール抗体の結合曲線の中間点における吸光度の値の比(例えばA450 nm(抗体)/A450 nm(コントロールAb))が40%以下である場合に、コントロール抗体(例えばハーセプチン(登録商標)抗体)との相対的なFcレセプターに対する抗体結合の減少は、コントロール抗体と有意に相関しているとみなしうる。他の実施態様では、試験抗体とコントロール抗体の結合曲線の中間点における吸光度の値の比(例えばA450 nm(抗体)/A50 nm(コントロールAb) )が125%以上である場合に、コントロール抗体(例えばハーセプチン(登録商標)抗体)との相対的なFcレセプターに対する抗体結合の増加は、コントロール抗体と有意に相関しているとみなしうる。
【0116】
「親ポリペプチド」又は「親抗体」は、変異体ポリペプチド又は抗体が生じるアミノ酸配列及び変異体ポリペプチドないし抗体が比較されるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドないし抗体である。典型的には、親ポリペプチドないし親抗体は、ここに開示した一又は複数のFc領域修飾を欠き、ここに開示したポリペプチド変異体と比較してエフェクター機能が異なる。親ポリペプチドは天然配列のFc領域又は(例えば付加、欠失及び/又は置換のような)本来存在するアミノ酸配列の修飾を有するFc領域を含みうる。
【0117】
本発明の抗体はファージディスプレイから得られる。ここで使用される場合、「ライブラリー」は複数の抗体、抗体断片配列、又はこれらの配列をコードする核酸を意味し、該配列は本発明の方法によってこれらの配列中に導入される変異アミノ酸の組合せにおいて異なっている。
【0118】
「ファージディスプレイ」は、変異体ポリペプチドを、ファージ、例えば糸状ファージ粒子の表面上のコートタンパク質の少なくとも一部への融合タンパク質としてディスプレイする技術である。ファージディスプレイの有用性は、ランダム化タンパク質変異体の大きなライブラリーを、高親和性で標的分子に結合する配列について迅速にかつ効率的に選別できるという点にある。ファージ上へのペプチド及びタンパク質ライブラリーのディスプレイは、特異的結合特性を持つものについて何百万ものポリペプチドをスクリーニングするために使用されている。多価ファージディスプレイ法は、糸状ファージの遺伝子III又は遺伝子VIIIへの融合体を通してランダム小ペプチド及び小タンパク質をディスプレイするために使用されている。Wells及びLowman, Curr. Opin. Struct. Biol., 3:355-362 (1992)と、そこで引用されている文献。一価ファージディスプレイでは、タンパク質又はペプチドライブラリーは遺伝子III又はその一部に融合させられ、ファージ粒子が融合タンパク質の1コピーをディスプレイするか何もディスプレイしないように野生型遺伝子IIIタンパク質の存在下で低レベルで発現される。選別が内因的なリガンド親和性に基づくように結合活性効果が多価ファージに対して低減され、ファージミドベクターが使用され、これがDNA操作を単純にする。Lowman及びWells, Methods: A companion to Methods in Enzymology, 3:205-0216 (1991)。
【0119】
「ファージミド」は、細菌の複製起点、例えばCo1E1、及びバクテリオファージの遺伝子間領域のコピーを有するプラスミドベクターである。ファージミドは、糸状バクテリオファージ及びラムドイドバクテリオファージを含む任意の既知のバクテリオファージで使用されうる。プラスミドはまた一般には抗生物質耐性の選択マーカーも含む。これらのベクターにクローニングされるDNAセグメントはプラスミドとして増殖することができる。これらのベクターを内部に持つ細胞がファージ粒子の生産のために必要な全ての遺伝子を備えているとき、プラスミドの複製様式はローリングサークル複製に変化し、プラスミドDNAの1つの鎖のコピーとパッケージファージ粒子を生成する。ファージミドは感染性または非感染性ファージ粒子を形成しうる。この用語は、異種ポリペプチドがファージ粒子表面に提示されるように遺伝子融合体としてこの異種ポリペプチドの遺伝子と結合したファージコートタンパク質遺伝子又はその断片を含むファージミドを含む。
【0120】
「ファージベクター」なる用語は、異種遺伝子を含んでいて複製ができるバクテリオファージの二本鎖複製型を意味する。ファージベクターは、ファージ複製及びファージ粒子形成を可能にするファージ複製起点を有している。ファージは糸状バクテリオファージ、例えばM13、f1、fd、Pf3ファージもしくはその誘導体、又はラムドイドファージ、例えばラムダ、21、phi80、phi81、82、424、434等、もしくはその誘導体でありうる。
【0121】
ペプチボディ、イムノアドヘシン、抗体及び短いペプチドのようなポリペプチドの共有結合的修飾は本発明の範囲内に含まれる。共有結合的修飾の一型には、抗体又はポリペプチドの標的とするアミノ酸残基を、抗体又はポリペプチドの選択された側鎖又はN又はC末端残基と反応できる有機誘導体化試薬と反応させることが含まれる。二官能性試薬による誘導体化は、例えば抗体又はポリペプチドを、抗体の精製方法で用いる水不溶性支持体マトリクス又は表面と架橋させるために有用であり、その逆も同じである。通常用いられる架橋剤には、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4-アジドサリチル酸を有するエステル、3,3'-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)等のジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、ビス-N-マレイミド-1,8-オクタン等の二官能性マレイミド、及びメチル-3-[(p-アジドフェニル)-ジチオ]プロピオイミダート等の試薬が含まれる。
【0122】
他の修飾には、グルタミニル及びアスパラギニル残基の各々対応するグルタミル及びアスパルチル残基への脱アミノ化、プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化[T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp.79-86 (1983)]、N末端アミンのアセチル化、及び任意のC末端カルボキシル基のアミド化を含む。
【0123】
他の修飾はメイタンシン、メイタンシノイド、カリケアマイシン及び他の細胞毒性薬のような毒素のアンタゴニストへのコンジュゲーションを含む。
【0124】
本発明のポリペプチドの共有結合的修飾の他のタイプは、ポリペプチドを、種々の非タンパク質様ポリマーの一つ、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンへ、米国特許第4640835号;第4496689号;第4301144号;第4670417号;第4791192号又は第4179337号に記載された方法で結合させることを含む。
【0125】
本発明のポリペプチドは、別の非相同のポリペプチド又はアミノ酸配列(例えば、イムノアドヘシン又はペプチボディ)に融合させたポリペプチドを含むキメラ分子を形成するのに有利な場合、修飾されてもよい。
【0126】
一実施態様では、そのようなキメラ分子はポリペプチドと、例えば、ヒト免疫不全ウイルスTATタンパク質のタンパク質伝達ドメイン(Schwarze等., 1999, Science 285: 1569-72)を使用して、種々の組織へ及び特に血液脳関門を越えて運搬するためにポリペプチドを標的とするタンパク質伝達ドメインとの融合を含むものである。
【0127】
一実施態様では、このようなキメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドとポリペプチドとの融合を含む。エピトープタグは、一般的にはそのような抗体又はポリペプチドのアミノ又はカルボキシル末端に位置する。このような抗体又はポリペプチドのエピトープタグ形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体又はエピトープタグに結合する他の型の親和性マトリクスを用いたアフィニティ精製によってそのような抗体又はポリペプチドを容易に精製できるようにする。種々のタグポリペプチド及びそれら各々の抗体はこの分野で良く知られている。例としては、ポリ−ヒスチジン(ポリ−His)又はポリ−ヒスチジン−グリシン(ポリ−His−Gly)タグ;flu HAタグポリペプチド及びその抗体12CA5[Field等, Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988)];c-mycタグ及びそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体[Evan等, Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)];及び単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体[Paborsky等, Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]を含む。他のタグポリペプチドは、フラッグペプチド[Hopp等, BioTechnology, 6:1204-1210 (1988)];KT3エピトープペプチド[Martin等, Science, 255:192-194 (1992)];α-チューブリンエピトープペプチド[Skinner等, J. Biol. Chem., 266:15163-15166 (1991)];及びT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuth等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397 (1990)]を含む。
【0128】
それに換わる実施態様では、キメラ分子はポリペプチドの免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定領域との融合体を含んでもよい。キメラ分子の二価形態(「イムノアドヘシン」とも呼ばれる)については、そのような融合体はIgG分子のFc領域であり得る。本発明のIg融合体は、Ig分子中の少なくとも一の可変領域に、概ね又は唯一、ヒトの残基94−243、残基33−53又は残基33−52を含むポリペプチドを含む。特に好ましい実施態様では、免疫グロブリン融合体は、ヒンジ、CH及びCH,又はIgG1分子のヒンジ、CH、CH及びCH領域を含む。免疫グロブリン融合体の製造については、米国特許第5428130号を参照されたい。
【0129】
本発明は腫瘍成長の再発又は癌細胞成長の再発を抑制又は阻害するための方法及び組成物を提供する。種々の実施態様では、癌は、癌細胞の数があまり減少しない、若しくは増加する、又は腫瘍の大きさがあまり減少しない、若しくは増加する、又は癌細胞の大きさ又は数がそれ以上減少することができない、腫瘍の成長の再発又は癌細胞の成長の再発である。癌細胞の治療効果を評価するための、当該分野でよく知られている任意の方法で、インビトロ又はインビボにおいて、癌細胞が腫瘍の成長の再発又は癌細胞の成長の何れかであるか決定され得る。抗VEGF治療への腫瘍の耐性は腫瘍成長の再発の一例である。
【0130】
ここに開示するポリペプチド、抗体、アンタゴニスト又は組成物の「有効量」とは特に述べた目的を達成するために十分な量のことである。「有効量」は経験的に及び述べた目的に関連するよく知られている方法を用いて決定され得る。
【0131】
「治療的有効量」という用語は、哺乳類の疾病や疾患(患者としても知られる)の「治療」のために有効な本発明の抗体、ポリペプチド、又はアンタゴニストの量を意味する。癌の場合は、治療的有効量の医薬により、癌細胞の数を減少させ;腫瘍の大きさ又は重さを小さくし;癌細胞の周辺器官への浸潤を阻害(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)し;腫瘍の転移を阻害(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)し;腫瘍の成長をある程度阻害し;及び/又は疾患に関連する一又は複数の症状をある程度和らげることが可能である。ある程度、医薬は、成長を妨げ及び/又は現存の癌細胞を殺すことが可能で、細胞分裂停止性及び/又は細胞障害性である。一実施態様では、治療的有効量は成長阻害量である。別の実施態様では、治療的有効量は、患者の生存期間を延長する量である。別の実施態様では、治療的有効量は、患者の無進行生存期間を改善する量である。
【0132】
創傷治癒の場合、「有効量」又は「治療的有効量」は患者の創傷治癒を加速又は改善するために有効な医薬の量を意味する。治療的投与量とは患者に治療効果を示す投与量であり、治療的投与量未満とは処置患者に治療効果をを示さない投与量を意味する。
【0133】
「慢性創傷」は、治癒しない創傷を意味する。例として、Lazarus等, Definitions and guidelines for assessment of wounds and evaluation of healing, Arch. Dermatol. 130:489-93 (1994)を参照。慢性創傷には、例えば、動脈の潰瘍、糖尿病性潰瘍、褥瘡、静脈潰瘍などが含まれるが、これに限定されるものではない。急性創傷は慢性創傷に発達しうる。急性創傷には、例えば、熱障害、外傷、手術、広範囲な皮膚癌の切除、深在性真菌及び細菌の感染、血管炎、強皮症、ペンフィグス、中毒性上皮性表皮壊死症などによって生じる創傷が含まれるが、これに限定されるものではない。例として、Buford, Wound Healing and Pressure Sores, HealingWell.com, published on: October 24, 2001を参照。「通常の創傷」は、通常の創傷治癒修復を経る創傷を意味する。
【0134】
本発明のポリペプチド、抗体、アンタゴニスト又は組成物の「成長阻害量」は、細胞、特に腫瘍、例えば癌細胞の成長をインビトロ又はインビボで阻害できる量である。腫瘍性細胞成長の阻害の目的のための本発明のポリペプチド、抗体、アンタゴニスト又は組成物の「成長阻害量」は、よく知られている方法及びここで提供される実施例により決定することができる。
【0135】
本発明のポリペプチド、抗体、アンタゴニスト又は組成物の「細胞毒性量」は、細胞、特に腫瘍、例えば癌細胞の成長をインビトロ又はインビボで阻害できる量である。腫瘍性細胞成長の阻害の目的のための本発明のポリペプチド、抗体、アンタゴニスト又は組成物の「細胞毒性量」は、経験的に及びよく知られている方法で決定することができる。
【0136】
ここで「自己免疫疾患」は、個体自身の組織から生じそれに対する疾病又は疾患あるいはその同時分離又は徴候又はそれから生じる症状である。自己免疫病又は疾患の例には、限定されないが、関節炎(関節リウマチ、例えば急性関節炎、慢性関節リウマチ、痛風性関節炎、急性痛風性関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節症、感染性関節炎、ライム病関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、脊椎関節炎、及び若年発症関節リウマチ、骨関節炎、関節炎慢性化、関節炎変形、関節炎慢性原発、反応性関節炎、及び強直性脊椎炎)、炎症性過剰増殖性皮膚病、乾癬、例えばプラーク乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬及び爪乾癬、接触皮膚炎を含む皮膚炎、慢性接触皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、ヘルペス状の皮膚炎、及びアトピー性皮膚炎、x連鎖性高IgM症候群、蕁麻疹、例えば慢性自己免疫蕁麻疹を含む慢性特発性蕁麻疹、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性上皮性表皮壊死症、強皮症(全身強皮症を含む)、硬化症、例えば全身性硬化症、多発性硬化症(MS)、例えば脊椎眼(spino-optical) MS)、原発性進行性MS、及び再発性寛解MS、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化、動脈硬化症、硬化症汎発、及び失調性硬化症、炎症性腸疾患(IBD)(例えばクローン病、大腸炎、例えば潰瘍性大腸炎、大腸性潰瘍、微細な大腸炎、膠原性大腸炎、大腸ポリープ、壊死性全腸炎及び貫壁性大腸炎、及び自己免疫炎症性腸疾患)、膿皮症壊疽、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、上強膜炎)、成人性又は急性の呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む呼吸窮迫症候群、髄膜炎、葡萄膜の全部又は一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫血液疾患、リウマチ様脊椎炎、突発性聴力障害、IgE媒介性疾患、例えばアナフィラキシー及びアレルギー性鼻炎及びアトピー性鼻炎、脳炎、例えばラスマッセンの脳炎及び辺縁及び/又は脳幹脳炎、ブドウ膜炎、例として、前部ブドウ膜炎、急性前ブドウ膜炎、肉芽腫ブドウ膜炎、非顆粒性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、又は自己免疫ブドウ膜炎、ネフローゼ症候群を有する又は有さない糸球体腎炎(GN)、例として、慢性又は急性の糸球体腎炎、例として原発性GN、免疫性GN、膜性GN(膜性ネフロパシ)、特発性膜性GN、膜性増殖性GN(MPGN)(タイプI及びタイプIIを含む)、及び急速進行性GN、アレルギー性症状、アレルギー性反応、アレルギー性又はアトピー性湿疹を含む湿疹、喘息、例えば喘息気管支炎、気管支喘息、及び自己免疫喘息、T細胞の浸潤を伴う症状及び慢性炎症反応、妊娠中の胎児A-B-O血液型のような外来性抗原に対する免疫反応、慢性肺炎症性疾患、自己免疫心筋炎、白血球接着不全症、全身性エリテマトーデス(SLE)又は全身性エリテマトーデス、例えば皮膚SLE、亜急性皮膚エリテマトーデス、新生児期ループス症候群(NLE)、紅班性狼瘡汎発、(腎炎、脳炎、小児、非腎性、円板状、脱毛症を含む)ループス、若年発症(I型)真正糖尿病、例として小児インシュリン依存性真正糖尿病(IDDM)、成人発症型真正糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性の尿崩症、サイトカイン及びTリンパ球によって媒介される急性及び遅発性過敏症と関係する免疫応答、結核、サルコイドーシス、肉芽腫症、例としてリンパ腫肉芽腫症、ヴェゲナーの肉芽腫症、無顆粒球症、脈管炎、(大脈管脈管炎(リウマチ性多発性筋痛及び巨細胞(高安)動脈炎を含む)血管炎を含む、中脈管脈管炎(川崎病及び結節性多発動脈炎を含む)、微小多発動脈炎、CNS脈管炎、壊死性血管炎、皮膚性血管炎又は過敏性血管炎、全身性壊死性血管炎、及びANCA関連の脈管炎、例としてチャーグ-ストラウス脈管炎又は症候群(CSS))、側頭動脈炎、無形成性貧血、自己免疫無形成性貧血、クームズ陽性貧血症、ダイアモンドブラックファン貧血症、溶血性貧血又は免疫溶血性貧血、例として自己免疫溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血(貧血症悪性熱)、アジソン病、純粋な赤血球貧血症又は形成不全(PRCA)、第VIII因子欠損症、血友病A、自己免疫好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球血管外遊出を伴う疾患、CNS炎症性疾患、多器官損傷症候群、例えば敗血症、外傷又は出血の二次症状、抗原-抗体複合体関連疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット(Bechet)又はベーチェット(Behcet)病、カールスマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンスジョンソン症候群、類天疱瘡、例えば類水疱性天疱瘡及び類天疱瘡皮膚、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、ペンフィグス粘液膜類天疱瘡及び天疱瘡エリテマトーデスを含む)、自己免疫多腺性内分泌障害、ライター病又は症候群、免疫複合体腎炎、抗体媒介性腎炎、慢性神経障害、例えばIgM多発性神経炎又はIgM媒介性神経障害、血小板減少(例えば心筋梗塞患者によるもの)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、例えば慢性及び急性のITPを含む特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、自己免疫性精巣炎及び卵巣炎を含む精巣及び卵巣の自己免疫性疾患、原発性甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、自己免疫内分泌性疾患、例えば甲状腺炎、例えば自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)又は亜急性の甲状腺炎、自己免疫甲状腺性疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーブ病、多腺性症候群、例として自己免疫多腺性症候群(又は多腺性内分泌障害症候群)、腫瘍随伴症候群、例として神経系新生物関連症候群、例えばランバート-イートン筋無力症症候群又はイートン―ランバート症候群、スティッフマン(stiff-man)又はスティッフパーソン(stiff-person)症候群、脳脊髄炎、例として、アレルギー性脳脊髄炎又は脳脊髄炎性アレルギー及び実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、重症筋無力症、小脳性退化、神経ミオトニ、眼球クローヌス又は眼球クローヌス筋硬直症候群(OMS)及び感覚系神経障害、シーハン症候群、自己免疫肝炎、慢性肝炎、類狼瘡肝炎、巨細胞肝炎、慢性活動性肝炎又は自己免疫慢性活動性肝炎、リンパ系間隙間質性肺炎、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギラン‐バレー症候群、ベルガー病(IgAネフロパシ)、特発性IgAネフロパシ、線状IgA皮膚病、原発性胆管萎縮症、肺線維症、自己免疫腸疾患症候群、セリアック病、コエリアック病、脂肪便症(グルテン腸疾患)、抵抗性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、アミロトロフィック側索硬化症(ALS;筋萎縮性側索硬化症(ルー・ゲーリック病))、冠状動脈疾患、自己免疫内耳疾患(AIED)、又は自己免疫聴力障害、眼球クローヌス筋硬直徴候(OMS)、多発性軟骨炎、例として、抵抗性又は再発性多発性軟骨炎、肺胞状蛋白症、アミロイドーシス、強膜炎、非癌性リンパ球増多症、モノクローナルB細胞リンパ球増多症(例えば良性モノクローナル免疫グロブリン症及び意義未確定のモノクローナル免疫グロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance)MGUS)を含む原発性リンパ球増多症、末梢性神経障害、腫瘍随伴症候群、チャネル病、例として、癲癇、片頭痛、不整脈、筋疾患、難聴、盲目、周期性麻痺及びCNSのチャネル病、自閉症、炎症性ミオパシ、局所性分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼障害、ブドウ膜網膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝臓病、線維症、多内分泌性不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮、初老期痴呆、脱髄疾患、例として、自己免疫脱髄性病、糖尿病性ネフロパシ、ドレスラー症候群、円形脱毛症、CREST症候群(石灰沈着、レイノー現象、食道運動障害、強指症、及び毛細管拡張症)、雌雄自己免疫性不妊性、混合性結合組織病、シャーガス病、リウマチ熱、再発性中絶、農夫肺、多形性紅斑、心切開術後症候群、クッシング症候群、愛鳥家肺、アレルギー性肉芽腫性脈管炎、良性リンパ球血管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えばアレルギー性肺胞炎及び繊維化肺胞炎、間隙肺疾患、輸血反応、ハンセン病、マラリア、リーシュマニア症、キパノソミアシス(kypanosomiasis)、住血吸虫症、蛔虫症、アスペルギルス症、サンプター症候群、カプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維形成、びまん性間質性肺線維症、間質性肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎児赤芽球症、好酸性筋膜炎(eosinophilic faciitis)、シャルマン症候群、フェルティー症候群、フィラリア(flariasis)、毛様体炎、例えば慢性毛様体炎、ヘテロ慢性毛様体炎、虹彩毛様体炎、又はフックス毛様体炎、ヘーノホ-シェーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、エコーウィルス感染、心筋症、アルツハイマー病、パルボウィルス感染、風疹ウィルス感染、種痘後症候群、先天性風疹感染、エプスタインバーウイルス感染、耳下腺炎、エヴァン症候群、自己免疫性腺機能不全、シドナム舞踏病、連鎖球菌感染後腎炎、閉塞性血栓性血管炎(thromboangitis ubiterans)、甲状腺中毒症、脊髄癆、脈絡膜炎、巨細胞多発性筋痛、内分泌性眼障害、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、特発性腎臓症候群、微小変化ネフロパシ、良性家族性及び乏血-再灌流障害、網膜自己免疫、関節炎症、気管支炎、慢性閉塞性気道疾患、珪肺症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化症疾患、アスペルミオジェネース(aspermiogenese)、自己免疫性溶血、ベック病、クリオグロブリン血症、デュピュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎、腸炎アレルギー、癩性結節性紅斑、特発性顔麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ性熱、ハンマンリッチ病、感覚器性(sensoneural)聴力障害、血色素尿症発作(haemoglobinuria paroxysmatica)、性機能低下、回腸炎領域、白血球減少症、単核細胞増加症感染、横移動脊髄炎、原発性特発性粘液水腫、ネフローゼ、交感神経(symphatica)眼炎、精巣炎肉芽腫症、膵炎、多発性神経根炎急性、膿皮症壊疽、Quervain甲状腺炎、後天性脾臓萎縮、抗精子抗体による不妊性、非悪性胸腺腫、白斑、SCID及びエプスタインバーウイルス関連疾患、後天性免疫不全症候群(エイズ)、寄生虫病、例えばリーシュマニア属、毒性ショック症候群、食中毒、T細胞の浸潤を伴う症状、白血球接着不全症、サイトカイン及びTリンパ球に媒介される急性及び遅発性過敏症関連免疫応答、白血球血管外遊出を伴う疾患、多器官損傷症候群、抗原-抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、アレルギー性神経炎、自己免疫多腺性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫萎縮性胃炎、交感性眼炎、リウマチ性疾患、混合性結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多内分泌性不全、末梢性神経障害、自己免疫多腺性症候群I型、成人発症型特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、完全脱毛症、拡張型心筋症、後天性表皮水疱症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性又は非化膿性副鼻腔炎、急性又は慢性副鼻腔炎、篩骨、正面、上顎骨又は蝶形骨副鼻腔炎、好酸球性関連疾患、例えば好酸球増加症、肺浸潤好酸球増加症、好酸球増加症-筋肉痛症候群、レフラー症候群、慢性好酸性肺炎、熱帯肺好酸球増加症、気管支肺炎アスペルギルス症、アスペルギローム、又は好酸球性を含有する肉芽腫、アナフィラキシー、血清陰性脊椎関節炎疹、多内分泌性自己免疫性疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、慢性皮膚粘膜カンジダ症、ブラットン症候群、乳児期の一過性低ガンマグロブリン血症、ウィスコット‐アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性失調症候群、膠原病と関係する自己免疫疾患、リウマチ、神経病学的疾患、リンパ節炎、虚血性再灌流障害、血圧応答の減退、血管機能不全、脈管拡張(antgiectasis)、組織損傷、心血管乏血、痛覚過敏、脳虚血、及び脈管化を伴う疾患、アレルギー性過敏症疾患、糸球体腎炎、再灌流障害、心筋又は他の組織の再灌流損傷、急性炎症性成分を有する皮膚病、急性化膿性髄膜炎又は他の中枢神経系炎症性疾患、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘発性毒性、急性重症炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、肺線維症、糖尿病性網膜症、糖尿病性大動脈疾患、動脈内過形成、消化性潰瘍、弁膜炎、及び子宮内膜症が含まれる。
【0137】
「検知」なる用語は、物質が存在しているか若しくは存在していないかを決定すること又は物質の量を定量することを含むことを意図する。従って、該用語は、定量的及び定性的な決定のための本発明の物質、組成物、及び方法の使用を意味する。一般的に、検知に使用した特定の技術は、本発明の実施に重要ではない。
【0138】
例えば、本発明に記載の「検知」は、α5遺伝子産物、β1遺伝子産物(例えば、mRNA分子)、又は、α5若しくはα5β1ポリペプチドの存在又は非存在;α5若しくはα5β1ポリペプチドの量又は標的に結合した量の変化;α5若しくはα5β1ポリペプチドの生物学的機能/活性の変化を観察することを含み得る。幾つかの実施態様では、「検知」は野生型α5又はα5β1の量(例えば、mRNA若しくはポリペプチドの量)を検知することを含み得る。検知は、コントロールと比較した際の、10%から90%の間の任意の値、又は30%から60%の間の任意の値、又は100%を超える変化(増加又は減少)の定量を含み得る。検知は2倍から10倍、又は例えば、100倍を超える任意の値の変化の定量を含み得る。
【0139】
ここで使用する場合、「標的」は抗体に直接若しくは関節的にコンジュゲートした検知可能な化合物又は組成物を意味する。標的はそれ自体が検出され得る(例えば、放射性同位体又は蛍光標識)か、又は、酵素標識の場合では、検知可能な基質化合物又は組成物の化学変化を触媒し得る。
【0140】
III.抗α5β1抗体
ヒトα5β1に結合し、抗α5β1抗体のヒトα5β1への結合を競合的に阻害する抗体をここで提供する。従って、本明細書の一実施態様は、配列番号:1、2、3、又は4の何れか一の配列で示される可変軽鎖(VL)配列及び配列番号:5、6、7、8、又は9の何れか一の配列で示される可変重鎖(VH)ドメインを含む抗体を提供する。寄託ハイブリドーマのヒト又はキメラ形態の抗体も意図する。
【0141】
一実施態様では、抗体はKdが500nMから1pMの間のKdを持つヒトα5β1に結合する抗体である。別の実施態様では、抗体はアルファVベータ3又はアルファVベータ5又はアルファVベータ1に結合しない。別の実施態様では、抗体は例えばヒトIgG1又はヒトIgG4のようなヒトIgGのFc配列を含む抗体である。別の実施態様では、Fc配列は、それらのFcレセプター(FcR)への結合にしばしば関連する抗体依存性細胞性障害(ADCC)エフェクター機能を欠くように改変又はそうでない場合は交換される。エフェクター機能を変えることが可能なFc配列の交換又は変異の例は多い。例えば、国際公開第00/42072号及びShields et al. J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)では、FcRへの結合が改善又は減少した抗体変異体を記載している。それらの刊行物の内容はここで出典明示により特別に組み込まれる。抗体はFab、Fab’、F(ab)’、単鎖Fv(scFv)、Fvフラグメント;ダイアボディ及び線形の形状であり得る。また、抗体はα5β1に結合する多特異抗体、及びα5β1アンタゴニストであり得るだけでなく、一又はそれ以上の他の標的に結合し、それらの機能(例えば、VEGF)を阻害する。抗体は治療薬(例えば、細胞毒性薬、放射性同位体及び化学治療薬)又は患者のサンプル中又はイメージングを用いたインビボにおいてα5β1を検知するための標識(例えば、放射性同位体、蛍光色素及び酵素)とコンジュゲートしてもよい。
【0142】
抗α5β1抗体をコードする核酸分子、一又は両者の可変ドメインをコードする核酸分子を含む発現ベクター、及び核酸分子を含む細胞も意図される。これらの抗体はここで記載される治療及び患者のサンプル(例えば、FACS,免疫組織化学(IHC)、ELISAアッセイ)若しくは患者中のα5β1タンパク質の検知に使用され得る。
【0143】
A.モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、例えば、Kohler及びMilsin, Nature, 256:495 (1975)により記載されたハイブリドーマ法を用いて作製でき、又は組換えDNA法(米国特許第4816567号)によって作製することができ、又はここで下の実施例に記載された方法で作製することができる。ハイブリドーマ法では、ハムスター、マウス又はその他の適当な宿主動物を、典型的には免疫化剤を用いて免疫し、免疫化剤と特異的に結合する抗体を生産するか又は生産することのできるリンパ球を導き出す。別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。
【0144】
免疫化剤は典型的にはポリペプチド又は所望のタンパク質の融合タンパク質である。一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化株化細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する。Goding, Monoclonal Antibodies:Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103。不死化株化細胞は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫細胞株が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は成長を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培地で培養され得る。例えば、親の細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプチリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
【0145】
好ましい不死化株化細胞は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である。より好ましい不死化株化細胞はマウス骨髄腫株であり、これは、例えば、カリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやバージニア州マナッサスのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより入手可能である。ヒトモノクローナル抗体産生ためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫株化細胞も記載されている。Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63。
【0146】
次いでハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、ポリペプチドに対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイし得る。ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合アッセイによって測定され得る。このような技術及びアッセイは、当該分野においてよく知られている。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson及びPollard,Anal.Biochem.,107:220(1980)によるスキャッチャード分析法によって測定することができる。
【0147】
所望のハイブリドーマ細胞を同定した後、クローンを限定希釈処理によってサブクローニングし、標準の方法で成長させる。Goding、上記。この目的のために適切な培地は、例えば、ダルベッコの改良イーグル培地及びRPMI−1640培地を含む。その代わりに、ハイブリドーマ細胞はほ乳類の腹水としてインビボで成長させてもよい。
【0148】
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA−セファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法、透析法又はアフィニティークロマトグラフィー等の一般的な免疫グロブリン精製法によって培養培地又は腹水液から単離又は精製されうる。
【0149】
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4816567号に記載された方法により作成することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、常套的な方法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に配置することができ、これが宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは骨髄腫細胞内に形質移入され、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成をすることができる。また、DNAは、例えば相同マウス配列に換えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより(上掲の米国特許第4816567号;Morrison等)、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインに置換でき、あるいは本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインに置換でき、キメラ性二重特異性抗体を生成する。
【0150】
抗体は好ましくは一価抗体である。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られている。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意の点で切断される。あるいは、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか欠失させて架橋を防止する。
【0151】
一価抗体の調製には、またインビトロ法が適している。抗体の消化による、その断片、特にFab断片の生成は、限定されるものではないが、当該分野において知られている技術を使用して達成することができる。
【0152】
B.ヒト及びヒト化抗体
抗体はヒト化抗体又はヒト抗体であり得る。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化型とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はその断片(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、典型的には非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントのCDRの残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは殆ど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいは殆ど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み得る。ヒト化抗体は、好ましくは免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる。Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596 (1992)。
【0153】
非ヒト抗体をヒト化する方法は当該分野でよく知られており、下に記載される。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。一実施態様では、ヒト化は基本的にWinter及び共同研究者(Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988))の方法に従って、齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列の代わりに用いることにより実施される。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
【0154】
ヒト化の別法として、ヒト抗体を生成することができる。例えば、内因性の免疫グロブリン産生がなくともヒト抗体の全レパートリーを免疫化することで産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが現在は可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子の同型接合欠損が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の転移は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。Jakobovitsら, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovitsら, Nature 362:255-258 (1993); Bruggemannら, Year in Immuno., 7:33 (1993);及び米国特許第5545806号、同5569825号、同5591669号、同5545807号、および国際公報97/17852を参照されたい。その代わりに、ヒト抗体は、例えば、内在性イミノグロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活性化されたマウスのようなトランスジェニック動物にヒトイミノグロブリン遺伝子座を導入することにより作製し得る。チャレンジの際、ヒト抗体産生は、遺伝子再構成、集合、及び抗体レパートリーを含む全ての点で、ヒトで見られるものと非常に類似している。この方法は、例えば、米国特許第5545807号;同第5545806号;同第5569825号;同第5625126号;同第5633425号;同第5661016号及びMarks等, Bio.Technology 10: 779-783 (1992);Lonberg等, Nature 368: 856-859 (1994);Morrison, Nature 368: 812-813 (1994);Fishwild等, Nature Biotechnol. 14: 845-851 (1996);Neuberger, Nature Biotechnol. 14: 826 (1996)及びLonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol. 13: 65-93 (1995)に記載されている。
【0155】
あるいは、ファージディスプレイ技術(McCafferty等, Nature 348:552-553 (1990))を、非免疫化ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を産出させるために使用することができる。当該技術では、抗体Vドメイン配列は、繊維状バクテリオファージ、例えばM13又はfdのメジャー又はマイナーコートタンパク質遺伝子の何れかにインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面上に機能的抗体断片として示される。ファージディスプレイは、例えば、下の実施例に記載されたように又は例えば、Johnson, Kevin S. and Chiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571 (1993)に総説されたように、多様な形式で行うことができる。V-遺伝子セグメントのいくつかの供給源がファージディスプレイのために使用可能である。Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)は、免疫化されたマウス脾臓から得られたV遺伝子の小ランダム組合せライブラリからの抗オキサゾロン抗体の異なった配列を単離した。非免疫化ヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーを構築し、抗原(自己抗原を含む)の異なった配列に対する抗体を、Marks等, J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991)、又はGriffith等, EMBO J. 12:725-734(1993)に記載の技術に本質的に従って単離することができる。また、米国特許第5565332号及び同5573905号を参照のこと。
【0156】
上記のように、ヒト抗体はインビトロで活性化したB細胞により発生し得る(米国特許第5,567,610及び同5,229,275号を参照されたい。
【0157】
ヒト抗体はまたファージディスプレイライブラリを含む当該分野でよく知られた様々な技術を使用して作製し得る。Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227: 381 (1991); Marks等., J. Mol. Biol., 222: 581 (1991)。Cole等及びBoerner等の技術もヒトモノクローナル抗体の作製に使用することができる。Cole et等., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985)及び Boerner等., J. Immunol., 147(1): 86-95 (1991)。
【0158】
C.多特異抗体
多特異抗体はモノクローナルであり、好ましくは2以上の異なる抗体への結合特異性を有するヒト又はヒト化抗体(例えば、少なくとも2つの抗原への結合特異性を有する二特異的抗体)である。例えば、結合特異性の一つはα5β1タンパク質であり得、もう一つは任意の他の抗原であり得る。好ましい実施態様では、他の抗原は細胞表面タンパク質又はレセプター又はレセプターサブユニットである。例えば、細胞表面タンパク質はナチュラルキラー(NK)細胞レセプターであり得る。従って、一実施態様では、本発明の二重特異性抗体はα5β1及びVEGFの両者に結合し得る。
【0159】
二重特異性抗体の適切な作成方法は、当該分野でよく知られている。例えば、二重特異性抗体の組み換え産生は2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づき、ここで2つの重鎖は異なる特異性を持っている。Millstein及びCuello, Nature, 305:537-539(1983)。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の可能性ある混合物を産生し、そのうちただ一つが正しい二重特異性構造を有する。通常、正しい分子の精製は、アフィニティ-ークロマトグラフィー工程により行われる。同様の方法が国際公開公報第1993/08829号及びTraunecker等, EMBO J., 10:3655-3659 (1991)に開示されている。
【0160】
所望の結合特異性(抗体抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一の融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を作成するための更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210(1986)を参照されたい。
【0161】
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し単離する様々な方法もまた記述されている。例えば、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体が生産されている。Kostelny等, J.Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドが、遺伝子融合により2つの異なった抗体のFab’部分に結合させられた。抗体ホモダイマーがヒンジ領域で還元されてモノマーを形成し、次いで再酸化されて抗体ヘテロダイマーを形成した。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に対して使用することができる。Hollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするのに十分に短いリンカーによりVLにVHを結合してなる。従って、一つの断片のVH及びVLドメインは別の断片の相補的VL及びVHドメインと強制的に対形成させられ、2つの抗原結合部位を形成する。一本鎖Fv(sFv)ダイマーを使用する別の二重特異性抗体断片製造方策もまた報告されている。Gruber等, J.Immunol., 152:5368 (1994)を参照されたい。
【0162】
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tutt等, J.Immunol. 147:60(1991)。
D.ヘテロコンジュゲート抗体
ヘテロコンジュゲート抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため(米国特許第4676980号)及びHIV感染の治療のために(国際公開第91/00360;国際公開第92/200373;欧州特許第03089号)提案されている。この抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することによって、免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチルイミダート、及び例えば米国特許第4676980号に開示されたものが含まれる。
【0163】
E.エフェクター機能工学
本発明の抗体をエフェクター機能について改変し、例えば癌治療における抗体の有効性を向上させることが望ましい。例えば、システイン残基をFc領域に導入し、それにより、この領域に鎖間ジスルフィド結合を形成するようにしてもよい。そのようにして生成された同種二量体抗体は、向上した内部移行能力及び/又は増加した補体媒介細胞殺傷及び抗体−依存性細胞性細胞障害性(ADCC)を有する可能性がある。Caron等, J. Exp. Med. 176: 1191-1195 (1992)及びShopes, J. Immunol. 148: 2918-2922 (1992)参照。また、向上した抗腫瘍活性を持つ同種二量体抗体は、Wolff等, Cancer research 53: 2560-2565 (1993)に記載されている異種二官能性架橋を用いて調製することができる。或いは、抗体は、二つのFc領域を有するように加工して、それにより補体溶解及びADCC能力を向上させることもできる。Stevenson等, Anti-Cancer Drug Design 3: 219-230 (1989)参照。
【0164】
Fc配列内を変異又は変更して、FcR結合を改善することができる(例えばFcガンマR、FcRn)。一実施態様では、本発明の抗体は、天然のIgG又は親抗体と比較して、ADCC、CDC及び改善したFcRn結合からなる群から選択される少なくとも一のエフェクター機能を変更している。いくつかの有用な特定の変異の例は、例えばShields, RL et al. (2001) JBC 276(6)6591-6604;Presta, L.G., (2002) Biochemical Society Transactions 30(4):487-490;及び国際公開公報00/42072に記載される。
【0165】
一実施態様では、Fcレセプター変異は、Fc領域内の残基の番号付けがEU番号付けシステムに従った場合、Fc領域の238、239、246、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、332、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438又は439からなる群から選択される少なくとも一の位置の置換である。幾つかの実施態様では、Fcレセプター変異はD265A置換である。幾つかの実施態様では、Fcレセプター変異はN297A置換である。付加的な適切な変異は米国特許第7332581号で示される。
【0166】
F.免疫コンジュゲート
本発明は、例えば化学療法剤、毒素(例えば酵素的に活性な細菌、真菌、植物、又は動物由来の毒素、又はその断片)、又は放射性同位体(つまり放射性コンジュゲート)のような細胞障害性薬剤とコンジュゲートした抗体を含む免疫コンジュゲートに関する。
【0167】
そのような免疫コンジュゲートの作製に有用な化学療法剤は上に記載した。使用可能な酵素活性毒素及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP−S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。種々の放射性核酸を放射性コンジュゲート抗体の作製に用いることができる。例には、212Bi、131I、131In、90Y、及び186Reが含まれる。
【0168】
抗体及び細胞毒性薬のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデート塩酸等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トリエン2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて作成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238:1098 (1987)に記載されているように調製することができる。炭素-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への抱合(コンジュゲート)のためのキレート剤の例である。国際公開公報第1994/11026参照。
【0169】
他の実施態様では、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)に抗体がコンジュゲートされ得、ここで、抗体-レセプターコンジュゲートを患者に投与し、続いて清澄化(clearing)剤を使用し、循環から未結合コンジュゲートを除去し、細胞障害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0170】
G.免疫リポソーム
ここに開示される抗体は免疫リポソームとして処方することができる。抗体を含有するリポソームは、例えばEpstein等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688(1985);Hwang等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030(1980);及び米国特許第4485045号及び同4544545号に記載されているように、当該分野において既知の方法により調製される。循環時間が増したリポソームは米国特許第5013556号に開示されている。
【0171】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含有する脂質組成物を用いた逆相蒸発法により作製することができる。リポソームは孔径が定められたフィルターを通して押し出され、所望の直径を有するリポソームが得られる。本発明の抗体のFab'断片は、ジスルフィド交換反応を介して、Martin等, J. Biol. Chem. 257:286-288(1982)に記載されているようにしてリポソームにコンジュゲートすることができる。場合によっては、化学療法剤(ドキソルビジンなど)はリポソーム内に包含される。Gabizon等, J. National Cancer Inst. 81(19)1484(1989)を参照されたい。
【0172】
IV.抗α5β1抗体を使用した治療法
本発明の抗α5β1抗体は、例えば、癌、眼疾患、及び免疫疾患(例えば、自己免疫疾患)を含む異常血管新生及び/又は血管透過又は血管漏出を含む疾患及び障害を治療するために検体(例えば、ヒトのようなほ乳類)に投与し得る。例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下などを含む任意の適切な経路によって投与してもよい。
幾つかの実施態様では、本発明の抗α5β1抗体は、異常血管新生及び/又は血管透過又は血管漏出を含む疾患又は障害を治療するために(例えば、抗腫瘍剤、成長阻害剤、又は化学治療薬を含む)第2、第3又は第4の医薬と組み合わせて投与される。幾つかの実施態様では、抗α5β1抗体は付加的な医薬とコンジュゲートする。
幾つかの実施態様では、抗α5β1抗体はVEGFアンタゴニストと組み合わせて投与される。抗α5β1抗体及び付加的な医薬(例えば、VEGFアンタゴニスト)は同時に又は順番に投与され得る。その代わりに、患者はVEGFアンタゴニストを投与され、次いでα5β1アンタゴニストを投与され得、例えば、患者がVEGFアンタゴニスト治療に応答しなくなるまでVEGFで処置し、次いで患者をα5β1アンタゴニストで処置する。一実施態様では、癌が非侵襲性の場合、患者はVEGFアンタゴニストで処置され、患者が侵襲性の場合、α5β1アンタゴニストで処置される。非疾患患者又はコントロールと比較して、自然にα5β1レベルが上昇し、又はVEGFアンタゴニスト治療に応答する患者は、特にこの組み合わせの治療に応答し得る。治療薬(例えば、抗腫瘍薬、化学治療薬、成長阻害剤及び細胞毒性薬)を更に含む組み合わせが考えられる。例えば、化学治療(例えば、イリノテカン)及びα5β1アンタゴニストで治療されるか、又は化学治療及びα5β1アンタゴニストで治療される患者はVEGFアンタゴニスト治療の恩恵を受け得る。その代わりに、化学治療及びVEGFアンタゴニストで処置される患者はα5β1アンタゴニスト治療の恩恵を受け得る。好ましい一実施態様では、抗VEGF抗体はAvastin(登録商標)抗体である。別の好ましい実施態様では、抗α5β1抗体はここで記載される抗α5β1抗体である。VEGFアンタゴニスト、α5β1アンタゴニスト、及び任意に、化学治療薬を含むキットが考えられる。
【0173】
癌治療は、限定されるものではないが、腫瘍の縮退、癌の重量又は大きさの縮退、増殖時間、生存期間、無成長生存、全応答速度、応答の持続、生育環境、タンパク発現及び/又は活性で評価され得る。ここに記載の抗血管新生薬は腫瘍血管を標的とし、必ずしも腫瘍細胞自身を標的としていないため、それらは特異的な種類の抗癌剤であり、したがって、医薬に対する医療的な応答の特異的な測定及び定義を必要とし得る。例えば、2次元解析において50%より大きい腫瘍の縮退は、応答を定義するのに標準的なカットオフである。しかし、本発明のα5β1アンタゴニスト及びVEGFアンタゴニストは、原発腫瘍が縮退せずに、転移の拡大を阻害し得るか、又は単純に転移効果を発揮し得る。従って、例えば、血管新生の血漿又は尿マーカーの測定及び放射線イメージングの応答の測定を含む、治療の効果を決定する方法が採用され得る。
【0174】
治療される兆候及び当該分野の医者が熟知の因子に依存して、本発明の抗体は、最小の毒性と副作用の、その兆候を治療するために効果的な投与量で投与される。癌治療の場合、自己免疫疾患又は免疫疾患、免疫不全疾患、治療的な有効投与量は、例えば、50mg/投与から2.5g/mであり得る。一実施態様では、投与量は約250mg/mから約400mg/m又は500 mg/mである。別の実施態様では、投与量は約250−375mg/mである。更に別の実施態様では、投与量の範囲は275−375mg/mである。
【0175】
加齢黄斑変性(AMD)の治療評価は、限定されるものではないが、更なる視力の喪失の速度低下又は更なる視力の抑制を含む。AMDの治療では、インビボの効能は、例えば、以下の一又は複数により測定され得る:所望の時間での、ベースラインから最高矯正視力(BCVA)までの平均変化の評価、ベースラインと比較して、所望の時間で15文字より少ない視力の喪失する患者の割合を評価し、ベースラインと比較して、所望の時間で15文字以上の視力を獲得する患者の割合を評価し、所望の時間で、視力Snellenが20/2000又はより低い患者の割合を評価し、NEI視力機能アンケートを評価し、所望の時間における、CNVの大きさ及びCNVの漏出量を、蛍光眼底観察法で評価する等。
【0176】
V.薬学的製剤
抗α5β1抗体は、投与に適切になるように、適切な担体又は賦形剤によって製剤化し得る。抗体の適切な製剤は、所望の純度を持つ抗体と、場合によっては薬学的に許容される担体、賦形剤又は安定化剤を混合することにより(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態に調製される。許容される担体、賦形剤又は安定化剤は、用いられる用量と濃度でレシピエントに非毒性であり、ホスフェート、シトレート、及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;保存料(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンズエトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又はTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。典型的な抗体製剤は国際公開第98/56418号に記載され、出典明示によりここに組み込まれる。凍結乾燥剤形は国際公報97/04801に記載されるように、皮下的投与に適する。そのような凍結乾燥剤形は適当な希釈剤で高いタンパク質濃度に再編成されるかもしれない、また再編成された剤形はここで治療される哺乳動物に皮下注射されうる。
【0177】
また、ここでの製剤は治療を特異的に示すために必要な一以上の活性化合物、好ましくはお互い負に作用しない相補的活性を持つものを含みうる。例として、さらに細胞障害性剤、又は化学療法剤を提供することが望まれる。このような分子は意図された目的のために有効な量の組み合わせとして適切に存在する。このような他剤の有効量は剤形に存在する抗体量、疾患または疾病または治療の型、および上述した他の因子に依存する。これらは一般に同じ用量およびここに示した投与経路またはここで用いられる用量の1から99%量で用いられる。
活性成分もまた、例えばコアセルベーション法又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれコロイド薬剤送達システ(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフィア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルジョンで、ヒドリキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル、及びポリ-(メチルメタアシレート)マイクロカプセルに封入されうる。このような技術は、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示されている。
【0178】
リポフェクション又はリポソームを使用して、細胞中に本発明のポリペプチド及び抗体、又は組成物を送達することができる。抗体断片が使用される場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小の断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持するペプチド分子を設計することができる。このようなペプチドは化学的に合成し、及び/又は組換えDNA技術により生産することができる。Marasco等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:7889-7893 (1993)を参照されたい。
【0179】
また、活性成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中に包括されていてもよい。これらの技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences、上掲に開示されている。
【0180】
徐放性製剤を調製することもできる。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、このマトリクスは成形品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形態である。除放性マトリクスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドからなる注射可能なミクロスフィア)等の分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、ポリ-(D)-3-ヒドロキシブチル酸を含む。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは分子を100日に亘って放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短時間でタンパク質を放出する。カプセル化された抗体が身体内に長時間残ると、それらは37℃の水分に露出されることにより変性又は凝集し、その結果、生物学的活性の低下及び起こりうる免疫原性の変化をもたらす。合理的な方法は、含まれる機構に依存する安定化について工夫することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換を通した分子間S-S結合形成であると発見された場合、安定化はスルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適切な添加剤の付加、及び特異的ポリマーマトリクス組成物の開発によって達成されうる。
【0181】
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは滅菌フィルター膜を通して濾過することによってすぐに達成される。
VI.抗α5β1抗体を使用した診断及びイメージングの方法
【0182】
α5β1ポリペプチドに特異的に結合する標識した抗α5β1抗体、及びその誘導体及びアナログを、α5β1の発現、異常な発現及び/又は活性に関する疾患及び/又は疾病を検出、診断ないしモニターするための診断用の目的に用いることができる。例えば、本発明の抗α5β1抗体は、インサイチュウ、インビボ、エクスビボ、及びインビトロ診断アッセイ又はイメージングアッセイに使用することができる。
α5β1ポリペプチドの発現の検知方法は、(a)本発明の一又は複数の抗体を用いて、個体の細胞(例えば、組織)ないし体液中におけるポリペプチドの発現をアッセイすること及び(b)標準の遺伝子発現レベルと遺伝子発現のレベルを比較することを含み、これによって標準の発現レベルと比較してアッセイした遺伝子の発現が増加しているか減少しているかによって異常な発現が示される。
【0183】
本発明の更なる実施態様は動物中(例えば、ヒトのようなほ乳類)におけるα5β1の発現又は異常な発現に関連する疾患又は障害を診断する方法を含む。該方法は、ほ乳類中のα5β1分子の検知を含む。一実施態様では、VEGFアンタゴニストを投与後、診断は、(a)標識した抗α5β1抗体のほ乳類への有効量の投与(b)α5β1分子が発現される被検体内の部位に標識したα5β1抗体が優先的に濃縮するように(また、結合していない標識分子がバックグラウンドレベルにまで除去されるように)、投与後一定期間をおくこと;(c)バックグラウンドレベルを測定すること;及び(d)被検体内の標識した分子を検出することを含み、バックグラウンドレベル以上に標識した分子が検出されれば、該被検体がα5β1の発現ないし異常発現に関する特定の疾患ないし疾病を有することが示される。バックグラウンドレベルは、様々な方法、例えば特定のシステムについて既に測定された標準値と検出された標識分子との量を比較することによって決定することができる。
【0184】
本発明のα5β1抗体を、当業者に公知の古典的な免疫組織学的方法を用いて生体試料中のタンパク質のレベルをアッセイするために用いることができる(例えば、Jalkanen, 等, J. Cell. Biol. 101:976-985 (1985);Jalkanen, 等, J. Cell. Biol. 105:3087-3096 (1987)を参照)。タンパク質遺伝子発現を検出するために有用な他の抗体ベースの方法には、イムノアッセイ、例えば酵素結合免疫測定法(ELISA)及び放射性免疫測定法(RIA)が含まれる。好適な抗体アッセイ標識は当分野で公知であり、酵素標識、例えばグルコースオキシダーゼ;放射性同位体、例えばヨウ素(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、イオウ(35S)、トリチウム(H)、インジウム(115mIn、113mIn、112In、111In)、及びテクネチウム(99Tc、99mTc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru;ルミノール;及び蛍光標識、例えばフルオレセイン、ローダミン及びビオチンが含まれる。
【0185】
当分野で公知の技術は、本発明の抗体を標識するために応用してもよい。このような技術には、限定するものではないが、二官能性のコンジュゲート剤の使用が含まれる(例として、米国特許第5,756,065号;同第5,714,631号;同第5,696,239号;同第5,652,361号;同第5,505,931号;同第5,489,425号;同第5,435,990号;同第5,428,139号;同第5,342,604号;同第5,274,119号;同第4,994,560号;及び同第5,808,003号)。
【0186】
具体的な一実施態様では、α5β1ポリペプチド発現又は過剰発現は、VEGFアンタゴニスト治療薬を投与後に細胞の表面上に存在するα5β1のレベルを評価することにより決定する(例えば、抗α5β1抗体を使用した免疫組織評価)。或いは又は加えて、例えば、α5β1をコードした核酸又はその相補鎖に対応する核酸ベースのプローブを使用した蛍光インサイツハイブリダイゼーション法(1998年10月公開のFISH;国際公開第98/45479号参照)、サザンブロット法、ノーザンブロット法、又は実時間定量PCR(RT−PCR)等のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術により、細胞内のSTEAP−1コード化核酸又はmRNAのレベルを測定することができる。また、例えば抗体に基づくアッセイ(例えば、1990年6月12日発行の米国特許第4933294号、1991年4月18日公開の国際公開第91/05264号、1995年3月28日発行の米国特許5401638号、及びSiasらによるJ. Immunol. Methods 132: 73-80 (1990)参照)を用いて、血清等の生物学的流体に含まれる抗原を測定することにより、α5β1の過剰発現を調査することができる。上記アッセイ以外にも、当業者であれば様々なインビボ及びエクスビボアッセイが利用できる。例えば、患者の体内の細胞を、放射性同位元素等の検出可能なラベルで随意に標識した抗体に曝すことができ、例えば外側から放射能をスキャンしたり、事前に抗体に曝されたほ乳類から採取した試料(例えば、生検又は他の生物学的試料)を分析することで、抗体の結合を評価することができる。
【0187】
VII.製造品及びキット
本発明の別の実施態様では、癌治療(例えば、腫瘍)、眼疾患(例えば、滲出性AMD)又は自己免疫疾患及び関連の症状の治療に有用な物質を含む製造品である。この製造品は、容器及びラベル又は容器の上に又は容器に付属してパッケージ挿入物が存在する。適切な容器には、例えば、瓶、バイアル、シリンジ等が含まれる。容器はガラス又はプラスチック等の様々な材料から形成される。一般的に、容器は問題の疾患の治療に有効な組成物を保持し、無菌のアクセスポートを有することができる(例えば、容器は、静脈注射用溶液のバッグ又は皮下注射針で穿孔可能なストッパを有するバイアルでよい。)組成物中少なくとも一つの活性剤は本発明のVEGFアンタゴニスト又はα5β1アンタゴニスト又はVEGFアンタゴニスト又はα5β1アンタゴニストである。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が対象の特定の疾病を治療するために使用されること示す。ラベル又はパッケージ挿入物は、抗体組成物を患者に投与する使用法を更に含む。ここに記載される組み合わせ治療を含む製造品及びキットも考えられる。
【0188】
パッケージ挿入物は、治療用製品の商業パッケージに慣例的に含まれる仕様書を意味し、そのような治療用製品の使用に関する表示、使用法、用量、投与法、禁忌、及び/又は警告を含む。一実施態様では、パッケージ挿入物は組成物が非ホジキンリンパ種に使用される。
【0189】
製造品は更に、薬学的に許容可能な希釈バッファー、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、及びはブドウ糖溶液を含む別の容器を備えることができる。それは更に、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む商業的及び使用者の視点から望ましいその他の物品を含み得る。
【0190】
また、例えば、任意に製造品と組み合わせることにより、患者中でα5β1及び/又はVEGFの単離又は検知するためのような、様々な目的のために有用なキットが提供される。α5β1の単離の及び精製のために、キットは、ビーズ(例えば、セファロースビーズ)と連結させた抗α5β1抗体を含み得る。α5β1及び/又はVEGFを、例えば、ELISA又はウェスタンブロットで、インビトロで定量又は検知するための抗体を含むキットも提供され得る。製造品として、キットは容器及びラベル又は容器の上に又は付随してパッケージ挿入物を含む。例えば、容器は少なくとも一の本発明の抗α5β1抗体を含む組成物を含む。例えば、希釈物及びバッファー、コントロールの抗体を含む容器を更に含み得る。ラベル又はパッケージ挿入物はインビトロ又は診断における使用を意図した使用法並びに組成物の処方を提供し得る。
【0191】
実施例で言及されている市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用した。ATCC登録番号により以下の実施例及び明細書全体を通して特定されている細胞の供給源はアメリカ培養細胞系統保存機関、マナッサス、VAである。特に記さない限り、本発明は上記及び以下の教科書に記載されたもののような組換えDNA技術の標準的な手法を用いた:上掲のSambrook等;Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology(Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y., 1989);Innis等, PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications(Academic Press, Inc.; N.Y., 1990);Harlow等, Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press: Cold Spring Harbor 1988);Gait, Oligonucleotide synthesis(IRL Press, Oxford, 1984);Freshney, Animal Cell Culture, 1987;Coligan等, Current Protocols in Immunology, 1991。
【0192】
ここで引用される(特許及び特許出願を含む)全ての刊行物は出典明示により、その全てが取り込まれ、具体的には2006年3月21日出願の米国仮出願第60/784704号、2006年3月22日出願の米国仮出願第60/785330号、2006年12月22日出願の米国仮出願第60/871743号を含む。
【0193】
以下DNA配列は、以下に示すようにブダペスト条約の規約のもと、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)、10801 University Blvd., Manassas, VA 20110-2209, USAに寄託した:
材料 委託番号 委託日
Alpha5/beta1 7H5.4.2.8 PTA-7421 March 7, 2006
【0194】
これらの寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約及びその規則(ブダペスト条約)の規定に従って行われた。これは、寄託の日付から30年間、寄託の生存可能な培養が維持されることを保証するものである。寄託物はブダペスト条約の条項に従い、またジェネンテク社とATCCとの間の合意に従い、ATCCから入手することができ、これは、関連の米国特許の発行及び任意の米国又は外国特許出願の公開のうち、いずれか早く行なわれた方の時点で、寄託培養物の子孫を永久且つ非制限的に入手可能とすることを保証し、35USC122条及びそれに従う特許商標庁長官規則(特に参照番号886OG638の37CFR第1.14条を含む)に従って権利を有すると米国特許商標庁長官が決定した者に後代を入手可能とすることを保証するものである。
【0195】
本出願の譲受人は、寄託した培養物が、適切な条件下で培養されていた場合に死亡もしくは損失又は破壊されたならば、材料は通知時に同一の他のものと即座に取り替えることに同意する。寄託物質の入手可能性は、特許法に従いあらゆる政府の権限下で認められた権利に違反して、本発明を実施するライセンスであるとみなされるものではない。
【0196】
実施例で言及されている市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用した。ATCC登録番号により以下の実施例及び明細書全体を通して特定されている細胞の供給源はアメリカ培養細胞系統保存機関、マナッサス、VAである。特に記さない限り、本発明は上記及び以下の教科書に記載されたもののような組換えDNA技術の標準的な手法を用いた:上掲のSambrook等;Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology(Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y., 1989);Innis等, PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications(Academic Press, Inc.; N.Y.., 1990);Harlow等, Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press: Cold Spring Harbor 1988);Gait, Oligonucleotide synthesis(IRL Press, Oxford, 1984);Freshney, Animal Cell Culture, 1987;Coligan等, Current Protocols in Immunology, 1991。
【0197】
前記の明細書は、当業者に本発明を実施できるようにするために十分であると考えられる。以下の実施例は例示的目的のためのみに示すのであり、本発明の範囲が多少なりとも限定されるものではない。実際、ここに示し記載したものに加えて、本発明を様々に改変することは、前記の記載から当業者にとっては明らかなものであり、添付の特許請求の範囲内に入るものである。
【実施例】
【0198】
(1)アクセプターヒトコンセンサスフレームワークへのダイレクトCDRグラフト
この実施例で使用されるファージミドは基本的にはLee等., J. Mol. Biol. 340:1073-93 (2004)に記載されているような一価のFab−g3ディスプレイベクターである。マウスモノクローナル抗体7H5配列の超可変配列がヒトコンセンサスカッパI(huKI)及びヒトサブグループIIIコンセンサスVH(huIII)ドメインにグラフト化される。CDRグラフトを作製する場合、ヒトサブグループIIIコンセンサスVHドメインと3つの位置:R71A、N73T、及びL78A(Carter等., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4285 (1992))アクセプターVHフレームワークが使用される。
【0199】
(2)ヒト化7H5.v1のCDRアスパラギンの修飾
様々な位置の他の残基の置換はそれぞれの位置に別のオリゴヌクレオチドを使用するKunkel変異によって行った。図4のファージ競合ELISAは、ファージ上にFabとして一価表示された変異体のヒトインテグリンα5β1に対する結合親和性(IC50)を評価するために使用した。親ヒト化7H5.v1と比較した際の、結合親和性の損失又は改善の相対倍率を図5に要約した。結合親和性のIC50値は図6のファージ競合ELISAによって決定した。2つの変異体、h7H5.v2及びh7H5.v3は示されたように、CDR−H2の位置65にグリシン置換を含むように選択し、hIgG1ベクターにクローニングし、BIAcore装置を使用して結合親和性を評価した。図7では、BIAcore結合解析により、ヒト化7H5.v2が実際には結合親和性がサブナノモラーレベルにわずかに改善したことが示された。
【0200】
(3)ヒト化7H5.v2のフレームワーク修飾
以下の位置を変異させた:h7H5.v2の軽鎖位置46(T46L)、重鎖位置48(I48V)、49(G49S)、66(K66R)、67(A67F)、69(L69I)及び78(A78L)。更に、重鎖位置30(T30S)も変異させた。
【0201】
それぞれの位置の変異は別のオリゴヌクレオチドを用いたKunkel変異によって導入した。ファージ競合ELISAは全ての変異体を評価するために使用した。一価のFabをファージ上に表示させた。ヒトインテグリンα5β1に対する結合親和性(IC50)を決定した。図8は重鎖の位置49(G49S)及び78(A78L)に変異を持つ2つの変異体を除き、ほとんどの変異体が依然として親クローンと同じレベルの結合親和性を保持していたことを示す。
【0202】
従って、下記の全ての変異、軽鎖位置46(T46L)、重鎖位置30(T30S)、48(I48V)、66(K66R)、67(A67F)及び69(L69I)を導入し、重鎖位置49はただ変更することにより、ヒト化7H5.v4及びv5を得た。
【0203】
(4)ファージ競合ELISA
MAXISORPTMマイクロタイタープレートをPBS中5μg/mlの組み換えヒトインテグリンα5β1(R&D)で終夜被覆し、PBSTバッファー(0.5%のBSA及び0.05%のPBS中Tween20)で1時間室温でブロックした。培養上清から得たファージを組織培養マイクロタイタープレートで、PBSTバッファー中の連続希釈ヒトインテグリンα5β1と共にインキュベートし、その後、結合していないファージを補足するために、80μlの混合物を、15分間標的被覆ウェルに移した。プレートはPBTバッファー(PBS中の0.05%のTween20)で洗浄し、HRPをコンジュゲートさせた抗M13(Amersham Pharmacia Biotech)を40分間(PBSTバッファー中1:5000)添加した。プレートをPBTバッファーで洗浄し、テトラメチルベンジジン基質(Kirkegaard and Perry Laboratories, Gaithersburg, MD)を添加することにより作製した。ファージのIC50を決定するために、450nmの吸収を溶液中の標的濃度の関数としてプロットした。これはファージの表面に作製されたFabクローンに対する親和性の推定値として使用した。
【0204】
(5)BIAcore実験によるIgG産生及び抗体親和性決定
興味あるクローン(キメラ7H5、ヒト化7H5.v1、v2、v3、v4、及びv5)をヒトIgG1のpRKベクター(Carter et al., PNAS USA, 89: 4285-4289 (1992))に組み込み、CHO細胞で一時的に発現させ、及びプロテインAアフィニティーカラムで精製した。
【0205】
親和性はBIACORE(商標)−3000装置を使用して表面プラズモン共鳴から決定した。固定化は、製造者提供のプロトコルを使用して、アミノ基をランダムにカップリングすることで行った。ヒトインテグリンα5β1に対する抗体の結合速度論調査は2つの異なる方法で行った。図3A、7、及び9Aでは、抗体をCM5センサーチップ上に450反応単位(RU)固定化し、2倍の連続希釈濃度のPBTバッファー(PBS中0.05%のTween20)中のヒトインテグリンα5β1(300nMから0.29nM)を25℃で30μl/分の流速で注入した。図3B及び9Bでは、ヒトインテグリンα5β1をCM5センサーチップ上に800反応単位(RU)固定化し、2倍の連続希釈濃度のPBTバッファー(PBS中0.05%のTween20)中の抗体(200nMから0.2nM)を25℃で30μl/分の流速で注入した。各注入の後、チップはpH1.7の10mMのグリシン−塩酸バッファーを用いて再生した。結合応答はブランクフローセルのRUを差し引くことにより校正された。会合速度(kon)及び解離速度(koff)は単純一対一ラングミュア結合モデル(ビアコア評価ソフトバージョン3.2)。平衡解離定数(Kd)はkoff/kon比で計算した。
【0206】
(6)皮膚創傷治癒アッセイ
調査に使用されるニュージーランド白ウサギはヒト化7H5抗体に効能を示す。滅菌技術を使用し、円形8mm生検パンチを使用し耳介軟骨の深さの創傷を作製し、骨膜離子及び精密ハサミで下にある軟骨膜を取り除いた。それぞれの創傷の見かけの成長は調査の終了まで毎日観察した。創傷間隙測定は、0、7、14、21、及び28日目に行った。全ての動物は28日に安楽死させた。皮膚創傷治癒実験は2回行った。
【0207】
一回目はグループ毎に5匹及び動物毎に2個の創傷を持つ下記の実験群を使用した:ネガティブコントロールIgG(200μg/30μl/創傷 一日毎);(2)h7H5.v2(100μg/30μl/創傷 一日毎);(3)抗VEGF抗体(100μg/30μl/創傷 一日毎);及び(4)h7H5.v2(100μg/15μl/創傷 一日毎)と抗VEGF抗体(100μg/15μl/創傷 一日毎)の組み合わせ。抗体は局所投与した。図10は(1)h7H5.V2単独又は抗VEGF抗体単独の投与で創傷治癒が阻害されること及び(2)h7H5.v2と抗VEGF抗体を組み合わせた投与が創傷治癒における抗VEGF抗体単独の効果を高めることを示す結果を示す。
【0208】
二回目の実験はグループ毎に5匹及び動物毎に2個の創傷を持つ下記の実験群を使用した:ネガティブコントロールIgG(200μg/30μl/創傷 一日毎);(2)h7H5.v4(100μg/30μl/創傷 一日毎);(3)抗VEGF抗体(100μg/30μl/創傷 一日毎);及び(4)h7H5.v4(100μg/15μl/創傷 一日毎)と抗VEGF抗体(100μg/15μl/創傷 一日毎)の組み合わせ。抗体は局所投与した。図10は(1)h7H5.V4のみ又は抗VEGF抗体のみの投与で創傷治癒が阻害されること及び(2)h7H5.v4と抗VEGF抗体を組み合わせた投与が創傷治癒における抗VEGF抗体のみ効果を高めることを示す結果を示す。
【0209】
ここで引用する全ての刊行物(例えば、特許、特許出願、及びGenbank識別番号を含む)は、出典明示により各々の参考文献が特別及び個別に取り込まれるように、全ての目的のためにその全体が出典明示によりここに援用される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)アミノ酸配列KASQ−N/S−VGSDVA(配列番号:10)を含むLHVR1と(2)アミノ酸配列STSYRYS(配列番号:11)を含むLHVR2と(3)アミノ酸配列QQY−N/S−SYPFT(配列番号:12)を含むLHVR3とを含む軽鎖可変ドメイン配列並びに(1)アミノ酸配列GYTF−T/S−DYYLY(配列番号:13)を含むHHVR1と(2)アミノ酸配列GISPS−N/S−GGTTF−N/A−D−N/A−FE−N/G(配列番号:14)を含むHHVR2と(3)アミノ酸配列DAYGDWYFDV(配列番号:15)を含むHHVR3とを含む重鎖可変ドメイン配列を含む抗α5β1抗体。
【請求項2】
配列番号:1、2、3、又は4の何れか一の配列又はその変異型を有する軽鎖可変ドメインと配列番号:5、6、7、8又は9の何れか一の配列又はその変異型を有する重鎖可変ドメインを含む抗α5β1抗体。
【請求項3】
軽鎖可変ドメインが配列番号:3の配列を有し、重鎖可変ドメインが配列番号:8の配列を有する請求項2に記載の抗体。
【請求項4】
重鎖可変ドメインの可変領域が30、48、49、54、60、62、65、66、67及び69からなる群から選択される残基に一のアミノ酸置換を含む、請求項2に記載の抗体。
【請求項5】
軽鎖可変ドメインが28、46及び92からなる群から選択される残基に一のアミノ酸置換を含む、請求項2に記載の抗体。
【請求項6】
アミノ酸置換がT30S、I48V、G49S、N54S、N60A、N62A、N62S、N65G、K66R、A67F及びL69Iからなる群から選択される、請求項4に記載の抗体。
【請求項7】
軽鎖可変ドメインがN28S、T46L及びN92Sからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む、請求項5に記載の抗体。
【請求項8】
抗体がアルファVベータ3又はアルファVベータ5又はアルファVベータ1に結合しない、請求項1、2、又は3に記載の抗体。
【請求項9】
抗体がヒトIgGのFc配列を含む請求項1に記載の抗体。
【請求項10】
ヒトIgGがhIgG1又はhIgG4である請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
抗体が抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)エフェクター機能を欠いたFc配列を含む請求項9に記載の抗体。
【請求項12】
Fc配列がD265A置換を含む請求項11に記載の抗体。
【請求項13】
抗体が、Fab、Fab’、F(ab)’、単鎖Fv(scFv)、Fv断片;二重特異性抗体及び直線抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項14】
抗体が多価抗体である請求項1に記載の抗体。
【請求項15】
治療薬をコンジュゲートした請求項1に記載の抗体。
【請求項16】
治療薬が細胞毒性薬、放射性同位体及び化学治療薬からなる群から選択される、請求項15に記載の抗体。
【請求項17】
標識をコンジュゲートした請求項1に記載の抗体。
【請求項18】
標識が放射性同位体、蛍光色素及び酵素からなる群から選択される、請求項17に記載の抗体。
【請求項19】
請求項1に記載の抗体をコードする単離された核酸分子。
【請求項20】
請求項19の核酸分子をコードする発現ベクター。
【請求項21】
請求項20の発現ベクターを含む細胞。
【請求項22】
請求項21の細胞培養及び細胞培養からの抗体の回収を含む抗体の調製方法
【請求項23】
請求項1に記載の組成物及び製薬的に許容可能な担体
【請求項24】
請求項1の抗体をサンプルに接触させ、サンプル中のα5β1タンパク質を検出することにより、α5β1タンパク質に結合する抗α5β1抗体を検出する方法。
【請求項25】
抗体が免疫組織化学アッセイ(IHC)又はELISAアッセイに使用される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
患者の血管新生及び/又は血管透過若しくは漏出を阻害するための医薬の製造方法における、請求項1に記載の抗体の使用。
【請求項27】
疾患が異常な血管新生又は血管透過若しくは漏出を有する、患者の疾患を治療するための医薬の製造方法における、請求項1に記載の抗体の使用。
【請求項28】
VEGFアンタゴニスト及び請求項1の抗α5β1抗体の投与を含む、疾患に罹患した患者の血管新生及び/又は血管透過若しくは漏出を阻害するための方法。
【請求項29】
VEGFアンタゴニスト及び請求項1の抗α5β1抗体の投与を含む患者の癌の治療方法。
【請求項30】
VEGFアンタゴニスト及び請求項1の抗α5β1抗体の投与を含む患者の眼疾患の治療方法。
【請求項31】
VEGFアンタゴニスト及び請求項1の抗α5β1抗体の投与を含む患者の自己免疫疾患の治療方法。
【請求項32】
疾患に罹患していない患者の組織と比較して、患者の病変組織のα5β1量の上昇が無い請求項30に記載の方法。
【請求項33】
患者が抗腫瘍剤、化学治療薬、成長阻害剤及び細胞毒性薬からなる群から選択される治療薬を更に投与される、請求項28から32の何れか一に記載の方法。
【請求項34】
VEGFアンタゴニストがアバスチン(登録商標)抗体のヒトVEGFへの結合を競合的に阻害することができる、請求項28から32の何れか一に記載の方法。
【請求項35】
VEGFアンタゴニストがアバスチン(登録商標)抗体である請求項34に記載の方法。
【請求項36】
VEGFアンタゴニスト、請求項1に記載の抗体及び製薬的に許容可能な阻害剤を含む組成物。

【公表番号】特表2011−501656(P2011−501656A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527128(P2010−527128)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/077622
【国際公開番号】WO2009/042746
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】