説明

新規方法および組成物

本発明は特に病原体に対する免疫応答を惹起する方法であって、(i) 該病原体に由来する一以上の第一の免疫原性ポリペプチド;(ii) 該病原体に由来する一以上の第二の免疫原性ポリペプチドをコードする一以上の異種ポリヌクレオチドを含む一以上のアデノウイルスベクター;および (iii) アジュバントを投与する工程を含み、ここで一以上の第一の免疫原性ポリペプチド、一以上のアデノウイルスベクターおよびアジュバントは併用投与される、上記方法に関する。本発明はまた、当該ポリペプチド、アデノウイルスベクターおよびアジュバントを用いたワクチン、医薬組成物、キットおよび使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物において免疫応答を刺激するための、特にヒトにおいて病原体による感染を予防および治療するための、新規のワクチン組成物およびその使用に関する。詳細には、本発明は複雑なプライムブーストスケジュールを使用することなく被験体にCD4+およびCD8+ T細胞応答ならびに抗体応答を誘導できる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
19世紀後期より、有効なワクチン接種において、病原体そのものは不活性化され用いられている。近年では、抽出物、サブユニット、トキソイドおよび莢膜多糖類の投与を含むワクチンが用いられている。遺伝子工学技術の利用により、組み換えタンパク質の使用は有利なストラテジーである。これにより、天然源より精製したタンパク質の使用に関連する様々なリスクを回避することができる。
【0003】
初期のワクチン方法は、in vivoにおいて免疫応答の何らかの局面を刺激するタンパク質の投与をベースとしていた。その後、宿主によって転写および翻訳され免疫原性タンパク質となるDNAの投与によっても免疫応答を惹起できることが明らかとなった。
【0004】
哺乳動物の免疫応答は2つの重要な要素、すなわち液性応答反応および細胞性応答反応を有する。液性応答反応は循環抗体の産生を含み、当該循環抗体が抗原と特異的に結合して抗原を中和化し、細胞障害性または食作用による他の細胞を含む過程によってその後クリアランスされるのを補助する。B細胞は、抗体産生の機能(プラズマB細胞)および免疫学的液性メモリー (メモリーB細胞)、すなわち初めての暴露(例えば、ワクチン接種)から数年後においても抗原を認識する能力を保持する機能を果たす。細胞媒介性の応答は、様々な種類の細胞による相互作用を含み、この中にT細胞が含まれる。T細胞は様々な種類の小集団(主にCD4+およびCD8+ T細胞)に分類される。
【0005】
マクロファージおよび樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)は免疫システムの監視役を果たし、外来抗原について体内をスクリーニングする。細胞外の外来抗原がAPCによって検出されると、これらの抗原はAPC内に貪食され(取り込まれる)、ここで小型のペプチドへと処理される。その後これらのペプチドはAPCの表面に存在するII型主要組織適合性遺伝子複合体(MHC II)分子に提示され、ここでCD4表面分子を発現する抗原特異的Tリンパ球(CD4+ T細胞)に認識される。適当な共刺激シグナルの存在下にてMHCII分子に提示される抗原を、CD4+ T細胞が認識すると(これら抗原に対してCD4+ T細胞は特異的である)、CD4+ T細胞は活性化され、免疫システムにおける別のシステムを続いて活性化させるサイトカインのアレイを分泌する。一般的に、CD4+T細胞は応答の種類に応じてT ヘルパー 1 (Th1)またはT ヘルパー 2 (Th2)の小集団に分類され、これらは以下の抗原認識を生じる。ペプチド-MHC II複合体の認識により、Th1 CD4+ T細胞はインターロイキンおよびサイトカイン(例えば、インターフェロンγ)を分泌してマクロファージを活性化し、毒性の化学物質(例えば、一酸化窒素および反応性酸素/窒素種)を放出する。IL-2およびTNF-αはまた、一般にTh1 サイトカインとして分類されている。一方、Th2 CD4+ T細胞は一般にインターロイキン(例えば、IL-4, IL-5またはIL-13)を分泌する。
【0006】
T ヘルパー CD4+ T細胞の他の機能には、B細胞を活性化して抗体産生および放出を補助することが含まれる。T ヘルパー CD4+ T細胞はまた、抗原特異的 CD8+ T細胞(すなわち、CD4+ T細胞以外のその他の主要なT細胞小集団)の活性化に関与し得る。
【0007】
適当な共刺激シグナルの存在下にてI型主要組織適合性遺伝子複合体 (MHC I)分子によって宿主細胞の表面にペプチドが提示されると、CD8+ T細胞は当該ペプチドを認識する。これらペプチドに対してCD8+ T細胞は特異的である。MHC I分子に提示させるために、外来抗原はウイルスもしくは細胞内細菌が宿主細胞に直接侵入する場合、またはDNAワクチン接種の場合と同様に、細胞の内側(サイトゾルまたは細胞核)に直接入る必要がある。細胞内にて抗原は小型のペプチドへと処理され、細胞表面に再度向けられたMHC I分子上に提示される。活性化されると、CD8+T細胞はマクロファージおよび他の細胞を活性化するサイトカイン(例えば、インターフェロンγ)のアレイを分泌する。詳細には、これらCD8+ T細胞の小集団は活性化されると溶解分子および細胞傷害性分子 (例えば、グランザイム、パーフォリン)を分泌する。このようなCD8+ T細胞は細胞障害性T細胞とも呼ばれる。
【0008】
最近になって、細胞外の抗原またはその断片をMHCI複合体に乗せることを含む抗原提示の別の経路が報告されており、「交差提示」と呼ばれている。
【0009】
T細胞応答の特性はまた、ワクチンに用いられるアジュバントの組成の影響を受ける。例えば、MPLおよびQS21を含有するアジュバントがTh1 CD4+ T細胞を活性化してIFN-γを分泌することが示されている (非特許文献1)。
【0010】
アジュバントはタンパク質抗原に対する免疫応答を増強するのに有効であることが周知である一方、DNAまたはDNAベースベクターのワクチン接種と通常一緒に用いられていない。アジュバントがDNAベクター系ワクチンと一緒に用いられていない理由については様々な仮説がある。実際、アジュバントとベクターとの干渉はそれらの安定性に対して影響を及ぼし得る。さらに、アジュバントを弱毒化ベクターに加えることによって、それら生成物によって誘導される反応源性が増大し得ることが予測される。最後に、DNAベクター系ワクチンの免疫原性を増大させることによって、当該ベクター自体に対する増強された中和免疫応答を誘導し、これにより同一のベクター系ワクチンのその後の接種によるブースト効果が妨げられる。実際、P. falciparum 感染に対する予防のためのワクチン接種プロトコルにおいて、非特許文献2はDNAプライミング後、ブースト組成物としてDNA、組み換えタンパク質およびアジュバントの組み合わせを用いた結果、不利な結果が得られたことを報告している。実際に、寄生虫血のレベルはブースト組成物がタンパク質およびアジュバントのみを含んでいるグループにおいて顕著に低かった。当該プロトコルにおいてDNA、組み換えタンパク質およびアジュバントを組み合わせて使用することによって、寄生虫血症および抗体応答の結果に不利な影響を及ぼすことが結論付けられた。
【0011】
一方、アジュバント化されたDNA系ベクターワクチンの効果を増強させることについて報告されている (非特許文献3)。詳細には、複製欠損アデノウイルスベクターワクチンにオイルアジュバントを添加することによって得られる増強効果が高い抗体レベルと相関性があるが、CD4およびCD8T細胞応答に対する影響については報告されていなかった。
【0012】
病原性ウイルスをアジュバントとして使用することは特許文献1に開示されている。当該ウイルスが異種ポリヌクレオチドを含むことについては言及されていなかった。
【0013】
一般に、CD4+細胞およびCD8+ 細胞を共に刺激することが最適な防御免疫、特にHIV 感染/AIDSなどの特定の疾患には必要であると考えられている。予防的にまたは治療的に最適な免疫応答を誘導するためには、CD4+細胞およびCD8+ 細胞を共に刺激することが望ましい。このことは「プライムブースト」ワクチン接種ストラテジーの主な目標の一つであり、当該ストラテジーにおいてタンパク質系ワクチン (ほとんどのCD4+T細胞を誘導する)とDNAベクター系ワクチン(すなわち、裸のDNA、ウイルスベクターまたはリステリアなどの細胞内細菌ベクター)(ほとんどのCD8+T細胞誘導する)の交互投与(またはその逆)は、CD4+およびCD8+T細胞応答の両方を活性化する可能性が最も高い。
【0014】
しかし、プライムブーストワクチンストラテジーは一般により大きなまたはバランスが取れた応答を生じ得るが、1回以上および確実には2回以上のワクチン接種を要し、発展途上国などにおける大量の免疫化プログラムにおいては実施が困難であるか、さらには実施不可能であり得る。
【0015】
さらに、上述したようにベクター自体に対する免疫が生じ得るために、ウイルスベクター成分をブーストすることはしばしば不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】WO2007/016715
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Stewartら、Vaccine. 2006, 24 (42-43):6483-92
【非特許文献2】Jonesら, J Infect Diseases. 2001,183, 303-312
【非特許文献3】Ganneら、Vaccine. 1994, 12(13), 1190-1196
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は以下の一以上を含む:(a)特に繰り返しの免疫化を行うことなくまたは軽減して、CD4+および/またはCD8+ 細胞および/または抗体の産生を刺激する完全なワクチン接種プロトコルおよびワクチン組成物を提供すること;(b)免疫原性ポリペプチドのみもしくはポリヌクレオチドのみを含有するワクチン組成物または免疫原性ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの別個の投与を含む従来のプライムブーストプロトコルと比べて、CD4+細胞および/またはCD8+細胞および/または抗体の産生を良好に刺激するワクチン接種プロトコルおよびワクチン組成物を提供すること;(c)Th1応答を刺激するまたは良好に刺激するワクチン組成物を提供すること;(d)成分、特にウイルスベクターの必要量を最小化するワクチン組成物およびワクチン接種プロトコルを提供すること;ならびに(e)より一般的には、病原体によって引き起こされる疾患の治療または予防に有用なワクチン組成物およびワクチン接種プロトコルを提供すること。「良好に刺激する」とは、応答の強度および/または持続性が増強されていることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、病原体に対する免疫応答を惹起する方法を提供する。当該方法は (i) 該病原体に由来する一以上の第一の免疫原性ポリペプチド;(ii) 該病原体に由来する一以上の第二の免疫原性ポリペプチドをコードする一以上の異種ポリヌクレオチドを含む一以上のアデノウイルスベクター;および(iii)アジュバントを投与する工程を含み、;ここで一以上の第一の免疫原性ポリペプチド、一以上のアデノウイルスベクターおよびアジュバントは併用投与される。
【0020】
本発明の具体的な態様においては、(i)病原体に由来する一以上の第一の免疫原性ポリペプチド;(ii)該病原体に由来する一以上の第二の免疫原性ポリペプチドをコードする一以上の異種ポリヌクレオチドを含む一以上のアデノウイルスベクター;および(iii)アジュバントを含有するワクチン組成物を提供する。
【0021】
また、本発明の具体的な態様においては、(i)病原体に由来する一以上の第一の免疫原性ポリペプチド;(ii)該病原体に由来する一以上の第二の免疫原性ポリペプチドをコードする一以上の異種ポリヌクレオチドを含む一以上のアデノウイルスベクター;および(iii)アジュバントを含有する免疫原性組成物を提供する。
【0022】
当該ワクチンおよび免疫原性組成物は病原体特異的 CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞および/または抗体の産生を好適に刺激する。
【0023】
「病原体特異的 CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞および/または抗体」とは、病原体全体またはその部分(例えば、免疫原性サブユニット)を特異的に認識するCD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞および/または抗体を意味する。「特異的に認識する」とはCD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞および/または抗体が免疫特異的に(非特異的な様式ではない)該病原体(またはその部分)を認識することを意味する。
【0024】
本発明はまた、免疫学的有効量の上記組成物を被験体に投与することを含む、哺乳動物において免疫応答を刺激する方法を提供する。
【0025】
本発明はまた、哺乳動物において免疫応答を刺激するための薬剤の製造における上記組成物の使用に関する。
【0026】
本発明はまた、哺乳動物における免疫応答の刺激に使用するための上記組成物を提供する。
【0027】
本発明はまた、哺乳動物において病原体特異的 CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞および/または抗体の産生を刺激するための方法を提供する。当該方法は、該哺乳動物に (i) 病原体に由来する一以上の第一の免疫原性ポリペプチド;(ii) 該病原体に由来する一以上の第二の免疫原性ポリペプチドをコードする一以上の異種ポリヌクレオチドを含む一以上のアデノウイルスベクター;および(iii) アジュバントを投与する工程を含み、ここで一以上の第一の免疫原性ポリペプチド、一以上のアデノウイルスベクターおよびアジュバントは例えば免疫学的有効量の上記組成物を投与することによって併用投与される。
【0028】
本発明はまた、哺乳動物において病原体特異的CD4+および/またはCD8+ 細胞および/または抗体の産生を刺激するための薬剤の製造における上記組成物の使用を提供する。
【0029】
例えば、CD4+ T細胞またはCD8+ T細胞または抗体の産生が刺激される。
【0030】
好ましくは、CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞および/または抗体のうちの2および特に3の産生が刺激される。
【0031】
好ましくはCD8+ T細胞の産生が刺激される。好ましくはCD4+およびCD8+ T細胞の産生が刺激される。好ましくはCD4+およびCD8+ T細胞および抗体の産生が刺激される。
【0032】
あるいは、好ましくはCD4+ T細胞の産生を刺激する。好ましくはCD4+および抗体の産生を刺激する。
【0033】
あるいは、好ましくは抗体の産生を刺激する。
【0034】
本発明の方法は免疫応答を惹起するための完全な方法(必要であれば、当該方法は繰り返される)に適した工程を提供することを意図する。したがって、好ましくは当該方法はプライミング量の免疫原性ポリペプチドまたは免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、アデノウイルスベクターのようなベクター形態にて)を使用することは含まない。
【0035】
例えば、本発明は病原体に対する免疫応答を惹起する方法を提供する。当該方法は(a) (i) 該病原体に由来する一以上の第一の免疫原性ポリペプチド;(ii) 該病原体に由来する一以上の第二の免疫原性ポリペプチドをコードする一以上の異種ポリヌクレオチドを含む一以上のアデノウイルスベクター;および (iii) アジュバントを投与する工程(ここで一以上の免疫原性ポリペプチド、一以上のアデノウイルスベクターおよびアジュバントは併用投与する);ならびに(b)必要に応じて(a)の工程を繰り返す工程からなる。
【0036】
当該方法の工程は、繰り返すことによって免疫応答が向上される場合、繰り返しても良い(例えば、1回繰り返す)。少なくともT細胞応答が関与している限り、適切な応答が、上記工程を繰り返す必要もなく得ることができる。
【0037】
本発明はまた、病原体に対する免疫応答を惹起する方法を提供する。当該方法は (a) (i) 該病原体に由来する一以上の第一の免疫原性ポリペプチド;(ii) 該病原体に由来する一以上の第二の免疫原性ポリペプチドをコードする一以上の異種ポリヌクレオチドを含む一以上のアデノウイルスベクター;および (iii) アジュバントを投与する工程を含み、当該方法において一以上の第一の免疫原性ポリペプチド、一以上のアデノウイルスベクターおよびアジュバントは併用投与され、またプライミング量の免疫原性ポリペプチドまたは免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを投与することは含まれない。
【0038】
本発明はまた本発明方法において使用するための、 (i) 病原体に由来する一以上の第一の免疫原性ポリペプチド;(ii) 該病原体に由来する一以上の第二の免疫原性ポリペプチドをコードする一以上の異種ポリヌクレオチドを含む一以上のアデノウイルスベクター;および(iii) アジュバントを含むキット、特に、 (i) 病原体に由来する一以上の第一の免疫原性ポリペプチドおよびアジュバント;および(ii)当該病原体に由来する一以上の免疫原性ポリペプチドをコードする一以上の 異種ポリヌクレオチドを含む一以上の第二のアデノウイルスベクターを含むキットを提供する。
【0039】
本発明の組成物および方法は、未処理の被験体における病原体による感染を予防するのに、もしくは病原体に以前に感染したことがある被験体における再感染を予防するのに、または病原体に感染している被験体を治療するのに有用であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1はプラスミド p73i-Tgrn構築物の模式図を示す。
【図2a】図2aは実施例1に記載される実験結果を示す。具体的には、様々な免疫化プロトコル後の様々な時点における、p24, RT, Nefおよびp17に由来するペプチドプールによる再刺激に対する応答におけるCD4+細胞応答およびCD8+ T細胞応答を示す。
【図2b】図2bは実施例1に記載される実験結果を示す。具体的には、様々な免疫化プロトコル後の様々な時点における、p24, RT, Nefおよびp17に由来するペプチドプールによる再刺激に対する応答におけるCD4+細胞応答およびCD8+ T細胞応答を示す。
【図3a】図3aは実施例1に記載される実験結果を示す。具体的には、様々な免疫化プロトコル後の様々な時点における、p24, RT, Nefおよびp17に由来するペプチドプールによる再刺激に対する応答におけるCD4+細胞応答およびCD8+ T細胞応答を示す。
【図3b】図3bは実施例1に記載される実験結果を示す。具体的には、様々な免疫化プロトコル後の様々な時点における、p24, RT, Nefおよびp17に由来するペプチドプールによる再刺激に対する応答におけるCD4+細胞応答およびCD8+ T細胞応答を示す。
【図4】図4は実施例1に記載される実験結果を示す。具体的には、F4に対する抗体応答を示す。
【図5】図5は実施例1に記載される実験結果を示す。具体的には、F4成分p24, RT, p17およびNefそれぞれに対する抗体応答を示す。
【図6】図6は実施例1に記載される実験結果を示す。具体的には、F4成分p24, RT, p17およびNefそれぞれに対する抗体応答を示す。
【図7】図7は実施例1に記載される実験結果を示す。具体的には、F4成分p24, RT, p17およびNefそれぞれに対する抗体応答を示す。
【図8】図8は実施例1に記載される実験結果を示す。具体的には、F4成分p24, RT, p17およびNefそれぞれに対する抗体応答を示す。
【図9】図9は実施例2に記載される実験結果を示す。具体的には、様々な免疫化プロトコル後のp24およびRTに由来するペプチドプールによる再刺激に対する応答におけるCD4+ T細胞応答を示す。
【図10】図10は実施例3に記載される実験結果を示す。具体的には、図10はF4配列をカバーするペプチドプールに対するウサギPBMCのリンパ球増殖応答を示す。
【図11】図11は実施例3に記載される実験結果を示す。図11はF4に対する抗体応答の経時変化を示す。
【図12a】図12aは実施例3に記載される実験結果を示す。図12aはF4成分、すなわちp24およびRTのそれぞれに対する抗体応答 (77日目)を示す。
【図12b】図12bは実施例3に記載される実験結果を示す。図12bはF4成分、すなわちp24およびRTのそれぞれに対する抗体応答 (77日目)を示す。
【図13】図13はHIV-1特異的CD4 T細胞の定量を示す。
【図14】図14は2回の免疫化から7日後のF4特異的CD4 T細胞の度数分布を示す。
【図15A】図15Aは2回の免疫化から7日後のF4特異的CD4 T細胞のサイトカイン産生を示す。
【図15B】図15Bは2回の免疫化から7日後のF4特異的CD4 T細胞のサイトカイン産生を示す。
【図15C】図15Cは2回の免疫化から7日後のF4特異的CD4 T細胞のサイトカイン産生を示す。
【図16】図16はHIV-1特異的CD8 T細胞の定量を示す。
【図17A】図17Aは2回の免疫化から7日後のF4特異的CD8 T細胞のサイトカイン産生を示す。
【図17B】図17Bは2回の免疫化から7日後のF4特異的CD8 T細胞のサイトカイン産生を示す。
【図17C】図17Cは2回の免疫化から7日後のF4特異的CD8 T細胞のサイトカイン産生を示す。
【図18】図18はCSP特異的CD4 T細胞の定量を示す。
【図19】図19はCSP特異的CD8 T細胞の定量を示す。
【図20】図20はCSP(N末端)特異的CD4 T細胞の定量を示す。
【図21】図21はCSP( C末端)特異的CD4 T細胞の定量を示す。
【図22】図22はCSP(N末端)特異的CD8 T細胞の定量を示す。
【図23】図23はCSP( C末端)特異的CD8 T細胞の定量を示す。
【図24】図24はCSP特異的抗体力価の定量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本明細書中において、「同時に」とは一以上の免疫原性ポリペプチド、一以上のアデノウイルスベクターおよびアジュバントがわずか12時間以内に、例えばわずか1時間以内に投与されることを意味し、通常一度の機会に例えば、医療従事者を訪ねたのと同じ機会に、例えば一以上の免疫原性ポリペプチド、一以上のアデノウイルスベクターおよびアジュバントを連続してまたは同時に投与する。
【0042】
本明細書中において「エピトープ」とは、免疫原性のアミノ酸配列を指す。エピトープは通常6〜8個のアミノ酸から成る最小のアミノ酸配列を指し、その天然源から取り出されると、例えば、異種ポリペプチドに移植されると、当該最小のアミノ酸配列は免疫原である。エピトープはまた、免疫原性であるタンパク質の部分を指し、エピトープを含有するポリペプチドは抗原(またはしばしば「ポリペプチド抗原」)として示される。ポリペプチドまたは抗原は、一以上の(例えば2または3またはそれ以上の) 別個のエピトープを含んでも良い。「エピトープ」とはB細胞およびT細胞エピトープを含む。「T細胞エピトープ」とはCD4+ T細胞エピトープおよびCD8+ T細胞エピトープ (しばしばCTL エピトープとも呼ばれる)を含む。
【0043】
「免疫原性ポリペプチド」とは免疫原性であるポリペプチドを指し、すなわち哺乳動物において免疫応答を惹起でき、一以上のエピトープ(例えば、T細胞および/またはB細胞エピトープ)を含有するポリペプチドである。免疫原性ポリペプチドは一以上のポリペプチド抗原を融合タンパク質中など非天然の配置にて含み得る。
【0044】
免疫原性ポリペプチドは通常、例えば、異種宿主(細菌宿主など)、酵母または培養哺乳動物細胞での発現によって産生される組み換えタンパク質であろう。
【0045】
「病原体由来のポリペプチド」とは、病原体にて天然に生じる配列(すなわち抗原)を完全にまたは部分的に含むポリペプチドまたはそれと高い配列同一性(少なくとも10、例えば少なくとも20 アミノ酸の長さにわたって95%を超える同一性)を有するポリペプチドを意味する。
【0046】
免疫原性ポリペプチドは一以上(例えば、1、2、3または4)のポリペプチド抗原を含み得る。
【0047】
明記しないかぎり、「免疫応答」は細胞性および/または液性応答反応であり得る。
【0048】
本発明の一実施形態において、前記一以上の第一の免疫原性ポリペプチドの一以上は前記一以上の第二の免疫原性ポリペプチドの一以上と実質的に同一である。例えば、少なくとも1つの第一の免疫原性ポリペプチドと少なくとも1つの第二の免疫原性ポリペプチドは、他方の免疫原性ポリペプチドの長さにわたって90%または95%以上または98%以上または99%以上の全配列同一性を有し得る。
【0049】
本発明の別の実施形態において、前記一以上の第一の免疫原性ポリペプチドの一以上は、前記一以上の第二の免疫原性ポリペプチドの一以上に含まれる抗原と実質的に同一の少なくとも1つの抗原を含む。例えば、少なくとも1つの第一の免疫原性ポリペプチドと少なくとも1つの第二の免疫原性ポリペプチドは、20のアミノ酸または40以上のアミノ酸または60以上のアミノ酸またはそれ以上の長さにわたって90%または95%以上または98%以上または99%以上の全配列同一性を有し得る。
【0050】
好ましくは、一以上の第一の免疫原性ポリペプチドは少なくとも1つのT細胞エピトープを含む。
【0051】
好ましくは、一以上の第二の免疫原性ポリペプチドは少なくとも1つのT細胞エピトープを含む。
【0052】
好ましくは、一以上の第一の免疫原性ポリペプチドは少なくとも1つのB細胞エピトープを含む。
【0053】
好ましくは、一以上の第二の免疫原性ポリペプチドは少なくとも1つのB細胞エピトープを含む。
【0054】
本発明の別の実施形態において、前記一以上の第一の免疫原性ポリペプチドの一以上および前記一以上の第二の免疫原性ポリペプチドの一以上は、一以上の同一のB細胞および/またはT細胞エピトープを共有する。好ましくは、これらは10 アミノ酸または15以上のアミノ酸または25以上のアミノ酸またはそれ以上の長さの一以上の同一のアミノ酸配列を共有する。
【0055】
本発明の別の実施形態において、前記一以上の第一の免疫原性ポリペプチドの一以上は、前記一以上の第二の免疫原性ポリペプチドの一以上と実質的に同一でもなく、また共通の抗原を含むものでもない。例えばこれらは20 アミノ酸または40以上のアミノ酸または60以上のアミノ酸またはそれ以上の長さにわたって90%未満の全配列同一性を有し得る。
【0056】
したがって、これらはB細胞またはT細胞エピトープのいずれも共有し得ない。例えば、これらは10アミノ酸または15以上のアミノ酸または25以上のアミノ酸またはそれ以上の長さの同一のアミノ酸配列を何ら共有し得ない。
【0057】
本発明の特定の一実施形態において、第一の免疫原性ポリペプチドおよび第二の免疫原性ポリペプチドは、同一の配置または異なる配置(例えば、異なる配置)で同一の抗原を含む。「異なる配置」とは上記2つの配列を異なる順序で配置し得ることおよび/または分離し得ることを意味する。本発明の別の特定の実施形態において、第一の免疫原性ポリペプチドおよび第二の免疫原性ポリペプチドは同一である。
【0058】
本発明の組成物は組成物中唯一の免疫原性ポリペプチドとして、第一の免疫原性ポリペプチドを一つ含んでも良い。あるいは、本発明の組成物は一以上の第一の免疫原性ポリペプチド、例えば2または3または4またはそれ以上の免疫原性ポリペプチドを含んでも良い。
【0059】
本発明の組成物はアデノウイルスベクターを一つ含んでも良い。あるいは、本発明の組成物は一以上のアデノウイルスベクター、例えば、2つのアデノウイルスベクターを含む。
【0060】
本発明の組成物において、アデノウイルスベクターは第二の免疫原性ポリペプチドを一つコードする異種ポリヌクレオチドを含んでも良いし、一以上のプロモーターの制御下において一以上の第二の免疫原性ポリペプチドを合わせてコードする一以上の異種ポリヌクレオチドを含んでも良い。
【0061】
予防のためのワクチン接種についても、本発明の組成物を病原体に既に感染している個体に用いて、確認された感染の免疫学的制御を改善し得る。このことは病原体がHIVである場合に特に興味深い。HIVについては、HIV感染細胞を特異的に認識するCD8陽性T細胞によって制御できると考えられる。このようなCD8陽性T細胞応答はHIV特異的CD4陽性ヘルパー T細胞の存在によって維持される。したがって、両タイプの免疫応答の誘導は特に有効であり、様々なワクチン組成物を組み合わせることによって達成できる。アジュバント化タンパク質および組み換えアデノウイルスの組み合わせは特に興味深い。上記ワクチン接種の恩恵を受け得るHIV感染患者はワクチン接種において、初感染、潜伏期または末期のHIV感染である。患者はワクチン接種時に病原体に対する他の治療 (HIVの場合には、例えば高活性抗レトロウイルス療法)を受けていても良いし、受けていなくても良い。
【0062】
抗原
本発明の抗原は病原体に由来する。
【0063】
病原体は、ウイルス、細菌、原生動物および哺乳動物(ヒトを含む)に有害な他の寄生生物を含む。
【0064】
好ましくは、本発明のポリペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとして投与すべきポリペプチド抗原は以下の抗原を含む:当該抗原は、HIV (例えば、HIV-1)、ヒトヘルペスウイルス、例えばgH、gL、gM、gB、gC、gK、gEもしくはgDまたはその誘導体あるいは前初期タンパク質、例えばHSV1またはHSV2由来のICP27、ICP47、ICP4、ICP36、サイトメガロウイルス、特にヒト、(例えばgBまたはその誘導体)、エプスタイン・バーウイルス(例えばgp350またはその誘導体)、水痘帯状疱疹ウイルス(例えばgpI、II、IIIおよびIE63)由来、または肝炎ウイルス、例えばB型肝炎ウイルス(例えばB型肝炎表面抗原または肝炎コア抗原またはpol)、C型肝炎ウイルス抗原およびE型肝炎ウイルス抗原由来、または他のウイルス性病原体、例えばパラミクソウイルス:呼吸器合胞体ウイルス(例えばFおよびGタンパク質またはその誘導体)由来、またはパラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ヒトパピローマウイルス(例えばHPV6、11、16、18、例えばL1、L2、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7)、フラビウイルス(例えば黄熱ウイルス、デングウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)またはインフルエンザウイルス細胞、例えばHA、NP、NA、またはMタンパク質、またはそれらの組み合わせ)由来の抗原、または細菌性病原体、例えばナイセリア属(Neisseria spp)、例えばN.gonorrheaおよびN.meningitidis、例えばトランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質、PilC、アドヘジン);S.pyogenes(例えばMタンパク質またはそのフラグメント、C5Aプロテアーゼ、S.agalactiae、S.mutans;H.ducreyi;モラクセラ属(Moraxella spp)、例えばM.catarrhalis(Branhamella catarrhalisとしても知られる)(例えば高分子量および低分子量アドヘジンおよびインベジン);ボルデテラ属(Bordetella spp)、例えばB.pertussis(例えばペルタクチン、百日咳毒素またはその誘導体、線維状赤血球凝集素、アデニル酸シクラーゼ、線毛(fimbriae))、B.parapertussisおよびB.bronchiseptica;マイコバクテリウム属(Mycobacterium spp.)、例えばM.tuberculosis(例えばESAT6、抗原85A、85Bまたは85C、MPT44、MPT59、MPT45、HSP10、HSP65、HSP70、HSP75、HSP90、PPD19kDa[Rv3763]、PPD38kDa[Rv0934])、M.bovis、M.leprae、M.avium、M.paratuberculosis、M.smegmatis;レジオネラ属(Legionella spp)、例えばL.pneumophila;エシェリキア属(Escherichia spp)、例えば腸管毒性(enterotoxic)大腸菌(例えばコロニー形成因子、熱不安定性毒素またはその誘導体、熱安定性毒素またはその誘導体)、腸管出血性大腸菌、腸管病原性大腸菌(例えば志賀毒素様毒素またはその誘導体);ビブリオ属(Vibrio spp)、例えばV.cholera(例えばコレラ毒素またはその誘導体);赤痢菌属(Shigella spp)、例えばS.sonnei、S.dysenteriae、S.flexnerii;エルシニア属(Yersinia spp)、例えばY.enterocolitica(例えばYopタンパク質)、Y.pestis、Y.pseudotuberculosis;カンピロバクター属(Campylobacter spp)、例えばC.jejuni(例えば毒素、アドヘジンおよびインベジン)およびC.coli;サルモネラ属(Salmonella spp)、例えばS.typhi、S.paratyphi、S.choleraesuis、S.enteritidis;リステリア属(Listeria spp.)、例えばL.monocytogenes;ヘリコバクター属(Helicobacter spp)、例えばH.pylori(例えばウレアーゼ、カタラーゼ、空胞化毒素);シュードモナス属(Pseudomonas spp)、例えばP.aeruginosa;ブドウ球菌属(Staphylococcus spp.)、例えばS.aureus、S.epidermidis;エンテロコッカス属(Enterococcus spp.)、例えばE.faecalis、E.faecium;クロストリジウム属(Clostridium spp.)、例えばC.tetani(例えば破傷風毒素およびその誘導体)、C.botulinum(例えばボツリヌス毒素およびその誘導体)、C.difficile(例えばクロストリジウム毒素AまたはBおよびその誘導体);バシラス属(Bacillus spp.)、例えばB.anthracis(例えばボツリヌス毒素およびその誘導体);コリネバクテリウム属(Corynebacterium spp.)、例えばC.diphtheriae(例えばジフテリア毒素およびその誘導体);ボレリア属(Borrelia spp.)、例えばB.burgdorferi(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.garinii(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.afzelii(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.andersonii(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.hermsii;エーリキア属(Ehrlichia spp.)、例えばE.equiおよびヒト顆粒球性エーリキア症の物質;リケッチア属(Rickettsia spp)、例えばR.rickettsii;クラミジア属(Chlamydia spp.)、例えばC.trachomatis(例えばMOMP、ヘパリン結合タンパク質)、C.pneumoniae(例えばMOMP、ヘパリン結合タンパク質)、C.psittaci;レプトスピラ属(Leptospira spp.)、例えばL.interrogans;トレポネーマ属(Treponema spp.)、例えばT.pallidum(例えば稀少外膜タンパク質)、T.denticola、T.hyodysenteriae由来の抗原;または寄生虫、例えばプラスモジウム属(プラスモジウムspp.)、例えばP.falciparum;トキソプラズマ属(Toxoplasma spp.)、例えばT.gondii(例えばSAG2、SAG3、Tg34);アメーバ属(Entamoeba spp.)、例えばE.histolytica;バベシア属(Babesia spp.)、例えばB.microti;トリパノソーマ属(Trypanosoma spp.)、例えばT.cruzi;ジアルジア属(Giardia spp.)、例えばG.lamblia;リューシュマニア属(Leishmania spp.)、例えばL.major;ニューモシスティス属(Pneumocystis spp.)、例えばP.carinii;トリコモナス属(Trichomonas spp.)、例えばT.vaginalis;スキゾストーマ属(Schisostoma spp.)、例えばS.mansoni由来、または酵母、例えばカンジダ属(Candida spp.)、例えばC.albicans;クリプトコッカス属(Cryptococcus spp.)、例えばC.neoformans由来である。
【0065】
さらに細菌性抗原はS. pneumoniaeを含むストレプトコッカス属(Streptococcus spp)由来の抗原(PsaA, PspA, ストレプトリジン, コリン結合性タンパク質)およびタンパク質抗原である肺炎球菌溶血素 (Biochem Biophys Acta, 1989, 67, 1007;Rubinsら、, Microbial Pathogenesis, 25, 337-342)およびその解毒化された変異誘導体(WO 90/06951;WO 99/03884)である。他の細菌性抗原には、以下のものに由来する抗原を含む:B型インフルエンザを含むヘモフィルス属(Haemophilus spp.)(例えば PRPおよびそのコンジュゲート体)、未分類インフルエンザ、例えば OMP26、高分子量のアドヘシン、P5、P6、プロテインDおよびリポタンパク質Dならびにフィンブリンおよびフィンブリン由来ペプチド (US 5,843,464)または多コピー変異体あるいはそれらの融合タンパク質。
【0066】
特に、本発明の方法または組成物を用いて、ウイルス性疾患(例えば、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)または単純ヘルペスウイルスによって引き起こされる疾患);細菌性疾患(例えば、ヒト型結核菌(TB)またはクラミジアによって引き起こされる疾患)およびマラリアなどの原生動物による感染を予防または治療し得る。
【0067】
これらの具体的疾患状態、病原体および抗原は例示のためだけに言及されており、本発明の範囲を限定することを意図するものでないことは理解されよう。
【0068】
TB 抗原
病原体は例えばヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)であり得る。
【0069】
ヒト型結核菌に由来する例示的な抗原としては例えば、α−クリスタリン(HspX)、HBHA、Rv1753、Rv2386、Rv2707、Rv2557、Rv2558、RPF: Rv0837c、Rv1884c、Rv2389c、Rv2450、Rv1009、aceA (Rv0467)、ESAT6、Tb38-1、Ag85A、-Bまたは-C、MPT 44、MPT59、MPT45、HSP10、HSP65、HSP70、HSP 75、HSP90、PPD 19kDa [Rv3763]、PPD、38kDa、[Rv0934]、PstS1、(Rv0932)、SodA (Rv3846)、Rv2031c、16kDa、Ra12、TbH9、Ra35、Tb38-1、Erd 14、DPV、MTI、MSL、DPPD、mTCC1、mTCC2、hTCC1 (WO 99/51748)およびhTCC2、特にMtb32a、Ra35、Ra12、DPV、MSL、MTI、Tb38-1、mTCC1、TbH9 (Mtb39a)、hTCC1、mTCC2およびDPPDである。ヒト型結核菌に由来する抗原にはまた、融合タンパク質およびその変異体(ヒト型結核菌の少なくとも2つ、または例えば3つのポリペプチドをより大きなタンパク質へと融合する)を含む。このような融合体はRa12-TbH9-Ra35、Erd14-DPV-MTI、DPV-MTI-MSL、Erd14-DPV-MTI-MSL-mTCC2、Erd14-DPV-MTI-MSL、DPV-MTI-MSL-mTCC2、TbH9-DPV-MTI (WO 99/51748)、Ra12-Tbh9-Ra35-Ag85BおよびRa12-Tbh9-Ra35- mTCC2を含んでも良いし、それらから構成されていても良い。言及する特定のRa12-Tbh9-Ra35配列は、WO2006/117240の配列番号6と当該配列のSer 704がセリン以外(例えば、アラニン)に変異している変異体および適当な長さのN末端Hisタグを含む誘導体(例えば、WO2006/117240の配列番号2または4)とによって規定され得る。適当な開始メチオニンおよび適当なN末端His-Hisタグ (2位および3位)を含み、当該配列の706位において野生型であるSerがAlaに変異している配列番号10を参照のこと。
【0070】
クラミジア抗原
病原体は、例えばクラミジア属(例えば、C trachomatis)であり得る。
【0071】
クラミジア属(例えば、C trachomatis)に由来する例示的な抗原は、CT858、CT 089、CT875、MOMP、CT622、PmpD、PmpGおよびその断片、SWIB、これらの内のいずれかの免疫原性断片 (例えば、PmpDpdおよびPmpGpd)ならびにそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、抗原の組み合わせはCT858、CT089およびCT875を含む。用い得る特定の配列および組み合わせはWO2006/104890に記載される。
【0072】
原虫抗原
病原体は例えば、マラリアを引き起こすプラスモジウム属(例えば、P falciparumまたはP vivax)などの寄生虫であり得る。
【0073】
例えば、P falciparum由来の抗原には、スポロゾイト周囲タンパク質(CSタンパク質)、PfEMP-1、Pfs 16 抗原、MSP-1、MSP-3、LSA-1、LSA-3、AMA-1およびTRAPを含む。言及し得る特定のハイブリッド抗原はRTSである。RTSは、B型肝炎ウイルスの表面 (S)抗原にB型肝炎ウイルスの表面抗原であるpreS2タンパク質の4つのアミノ酸を介して連結されているP.falciparumのスポロゾイト周囲 (CS)タンパク質のC末端部分を実質的に全て含むハイブリッドタンパク質である。酵母で発現される場合、RTSはリポタンパク質粒子として産生され、HBV由来のS抗原と共発現される場合、RTS,Sとして知られる混合粒子を産生する。構造またはRTSおよびRTS,SはWO 93/10152に開示されている。TRAP 抗原はWO 90/01496に開示されている。他のプラスモジウム抗原には、P. falciparum EBA、GLURP、RAP1、RAP2、セクエストリン(Sequestrin)、Pf332、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs48/45、Pfs230および他のプラスモジウム属における類似体を含む。本発明の一実施形態は、RTS,SもしくはCSタンパク質またはその断片(例えば、RTS, SのCS部分)を一以上のさらなるマラリア抗原(例えばMSP-1、MSP-3、AMA-1、Pfs 16、LSA-1およびLSA-3からなる群から選択され得る)と組み合わせて含む組成物である。P vivaxに由来する有力な抗原には、スポロゾイト周囲タンパク質(CSタンパク質)およびDuffy抗原結合タンパク質およびその免疫原性断片(例えば、PvRII)(WO02/12292参照のこと)を含む。
【0074】
本発明の好適な一実施形態において、第一および第二の免疫原性ポリペプチドは、Plasmodium falciparumおよび/またはPlasmodium vivaxに由来する抗原から選択される。
【0075】
例えば、第一および/または第二の免疫原性ポリペプチドはRTS (例えば、RTS,S)、スポロゾイト周囲 (CS)タンパク質、MSP-1、MSP-3、AMA-1、LSA-1、LSA-3およびその免疫原性誘導体またはその免疫原性断片から選択される。
【0076】
言及し得る特定の誘導体の一つは、RTSとして、特に混合粒子の形態で提示される場合にはRTS,Sとして公知のハイブリッドタンパク質である。
【0077】
例示的なRTS配列を配列番号14に示す。
【0078】
例示的なP. falciparumのCS タンパク質由来抗原を配列番号12に示す。当該配列はP.falciparum (3D7株)のCSP配列に相当し、7G8株に由来する19アミノ酸(81-100)からなる挿入物を含む。
【0079】
本発明の一実施形態において、第一の免疫原性ポリペプチドはRTS,Sであり、第二の免疫原性ポリペプチドはPlasmodium falciparumに由来するCSタンパク質またはその免疫原性断片である。
【0080】
HPV抗原
病原体は例えば、ヒトパピローマウイルスである。
【0081】
本発明において有用な抗原は、例えば、尖圭コンジローマ(genital warts)に関与すると考えられるヒトパピローマウイルス(HPV)(HPV6またはHPV11等)、および/または子宮頸癌に関与するHPVウイルス(HPV16、HPV18、HPV33、HPV51、HPV56、HPV31、HPV45、HPV58、HPV52等)由来であってよい。一実施形態では、尖圭コンジローマの予防または治療用組成物の形式は、L1粒子またはカプソメア(capsomers)、およびHPVタンパク質E1、E2、E5 E6、E7、L1、およびL2から選択される1以上の抗原を含む融合タンパク質を含む。一実施形態では、融合タンパク質の形式は、WO 96/26277に開示されるL2E7、およびPCT/EP98/05285に開示されるプロテインD(1/3)−E7である。
【0082】
一実施形態では、HPV子宮頸部感染もしくは癌の予防または治療用組成物に適切な抗原はHPV16または18抗原を含む。例えば、L1もしくはL2抗原単量体、またはウイルス様粒子(VLP)として一緒に提供されるL1もしくはL2抗原またはVLPまたはカプソメア構造中で単独で提供されるL1単独タンパク質である。そのような抗原、ウイルス様粒子およびカプソメアはそれ自体公知である。例えばWO94/00152、WO94/20137、WO94/05792、およびWO93/02184を参照のこと。追加の初期タンパク質、例えばE7、E2または例えばE5を単独でまたは融合タンパク質として含ませてよく;その一実施形態には、L1E7融合タンパク質を含むVLPが含まれる(WO96/11272)。一実施形態では、HPV16抗原は、HPV16由来の、プロテインD担体と融合してプロテインD−E6またはE7融合物を形成している初期タンパク質E6またはE7、またはその組み合わせを含み;またはE6またはE7とL2の組み合わせを含む(WO96/26277)。別法では、HPV16または18初期タンパク質E6およびE7は、単一分子中で、例えばプロテインD−E6/E7融合物として提供してよい。そのような組成物は、場合により、HPV 18由来のE6およびE7タンパク質のいずれかまたは両者を、例えばプロテインD−E6またはプロテインD−E7融合タンパク質またはプロテインD E6/E7融合タンパク質の形式で、提供しうる。さらに、他のHPV系統、好ましくはHPV 31または33系統に由来する抗原を用いても良い。
【0083】
HIV 抗原
病原体は、例えばHIV(HIV-1など)であり得る。
【0084】
したがって、抗原はHIV由来の抗原、特にHIV−1由来の抗原から選択される。
【0085】
HIV TatおよびNefタンパク質は初期タンパク質であり、すなわち、それらは感染の早期に、かつ構造タンパク質の不存在下で発現される。
【0086】
Nef遺伝子は、いくつかの活性を有することが示されている初期アクセサリーHIVタンパク質をコードする。例えば、Nefタンパク質によって、HIV受容体であるCD4が細胞表面から除去されることが知られているが、この機能の生物学的重要性は議論されている。NefはT細胞のシグナル経路と相互作用し、活性状態を誘導し、その結果として、より効率的な遺伝子発現を促進しうる。いくつかのHIV単離体はこの領域中に突然変異または欠失を有し、その結果、機能的タンパク質をコードしないことになり、それらのin vivo複製および病原性が大きく損なわれる。
【0087】
Gag遺伝子は完全長RNAから翻訳されて前駆体ポリタンパク質を生じさせ、その後、該前駆体ポリタンパク質は切断されて3〜5カプシドタンパク質;マトリックスタンパク質p17、カプシドタンパク質p24および核酸結合タンパク質になる(Fundamental Virology, Fields BN, Knipe DMおよびHowley M 1996 2. Fields Virology vol 2 1996)。
【0088】
Gag遺伝子はp55とも称される55キロダルトン(kD)Gag前駆体タンパク質を生じさせる。該タンパク質は非スプライスウイルスmRNAから発現される。翻訳中に、p55のN末端はミリストイル化され、細胞膜の細胞質側面との結合が引き起こされる。膜結合型Gagポリタンパク質は、感染細胞の表面からウイルス粒子を発芽させる他のウイルスタンパク質および細胞タンパク質とともに、2コピーのウイルスゲノムRNAを動員する。発芽後、p55は、ウイルスの成熟プロセス中に、ウイルスがコードするプロテアーゼ(Pol遺伝子の産物)によって切断され、MA(マトリックス[p17])、CA(カプシド[p24])、NC(ヌクレオカプシド[p9])、およびp6.(4)と称される4つの小タンパク質になる。
【0089】
3つの主なGagタンパク質(p17、p24およびp9)に加えて、すべてのGag前駆体は数個の他の領域を含有し、該領域は切除されて、種々のサイズのペプチドとしてビリオン中に残留する。これらのタンパク質は異なる役割を有し、例えばp2タンパク質は、該プロテアーゼの活性の調節において、提唱される役割を有し、タンパク質分解によるプロセシングの正確なタイミングに貢献する。
【0090】
MAポリペプチドは、p55のミリストイル化末端であるN末端由来である。ほとんどのMA分子は、ビリオン脂質二重層の内部表面に結合したままであり、該粒子を安定化する。MAのサブセットはビリオンのより深い層の内側に動員され、そこで、ウイルスDNAを核へ送り届ける複合体の部分になる。これらのMA分子はウイルスゲノムの核輸送を促進する。その理由は、MA上の親核性(karyophilic)シグナルが細胞の核内移行機構によって認識されるからである。この現象により、HIVが非分裂細胞に感染することが可能になる。それはレトロウイルスの異常な特性である。
【0091】
p24(CA)タンパク質はウイルス粒子の円錐コアを形成する。サイクロフィリンAは、p55のp24領域と相互作用して、そのHIV粒子内への取り込みを導くことが実証されている。GagとサイクロフィリンA間の相互作用は必須である。その理由は、この相互作用がシクロスポリンAによって破壊されると、ウイルス複製が阻害されるからである。
【0092】
GagのNC領域は、特に、HIVのいわゆるパッケージングシグナルの認識に関与する。該パッケージングシグナルは、ウイルスRNAの5’末端付近に位置する4つのステムループ構造からなり、HIV−1ビリオン内への異種RNAの取り込みを媒介するために十分である。NCは、2つのジンクフィンガーモチーフによって媒介される相互作用を通して、パッケージングシグナルと結合する。NCはまた、逆転写を促進する。
【0093】
p6ポリペプチド領域はp55 Gagとアクセサリータンパク質Vpr間の相互作用を媒介し、Vprを集合ビリオン内へ取り込ませる。p6領域はまた、感染細胞からの発芽ビリオンの効率的放出に必要とされる、いわゆる後期ドメインを含有する。
【0094】
Pol遺伝子は、早期の感染中にウイルスによって必要とされる活性を有する3つのタンパク質、逆転写酵素RT、プロテアーゼ、および細胞DNAへのウイルスDNAの組み込みに必要とされるインテグラーゼタンパク質をコードする。Polの初期産物はビリオンプロテアーゼによって切断されて、DNA合成に必要な活性を含有するアミノ末端RTペプチド(RNAおよびDNAを標的にするDNAポリメラーゼ、リボヌクレアーゼH(ribouclease H))およびカルボキシ末端インテグラーゼタンパク質が生じる。HIV RTは完全長RT(p66)および、カルボキシ末端RNaseHドメインを欠いている切断産物(p51)のヘテロ二量体である。
【0095】
RTは、レトロウイルスゲノムによってコードされる最も高度に保存されているタンパク質の1つである。RTの2つの主要な活性はDNA PolおよびリボヌクレアーゼHである。RTのDNA Pol活性はRNAおよびDNAを鋳型として交換可能に使用し、すべての公知のDNAポリメラーゼと同様に、新規にDNA合成を開始することができず、プライマー(RNA)として働く既存の分子を必要とする。
【0096】
すべてのRTタンパク質に備わっているRNaseH活性は、複製の早期に、DNA合成の進行に伴ってRNAゲノムを除去する必須の役割を果たす。それはすべてのRNA−DNAハイブリッド分子からRNAを選択的に分解する。構造的に、該ポリメラーゼおよびribo Hは、Polのアミノ末端側3分の2のアミノをカバーするPol内の離れた重複しないドメインを占める。
【0097】
p66触媒サブユニットは5つの別個のサブドメインにフォールディングされる。そのアミノ末端の23個は、RT活性を有する部分を有する。そのカルボキシ末端はRNaseHドメインである。
【0098】
宿主細胞に感染した後、レトロウイルスRNAゲノムは、感染粒子中に存在する逆転写酵素によって線状二本鎖DNA内にコピーされる。インテグラーゼ(Skalka AM '99 Adv in Virus Res 52 271-273に総説されている)は、ウイルスDNAの末端を認識し、それらを刈り込み、組み込みを触媒するためにウイルスDNAを宿主染色体部位と一緒にする。宿主DNA中の多数の部位が組み込みの標的でありうる。インテグラーゼはin vitroで組み込みを触媒するために十分であるが、それはin vivoでウイルスDNAと関連している唯一のタンパク質ではない。感染細胞から単離された大きいタンパク質−ウイルスDNA複合体がプレ組み込み複合体として示されている。これは子孫ウイルスゲノムによる宿主細胞遺伝子の獲得を容易にする。
【0099】
インテグラーゼは、3つの別個のドメイン、N末端ドメイン、触媒コアおよびC末端ドメインからできている。触媒コアドメインはポリヌクレオチド基転移(polynucleotidyl transfer)化学に関するすべての必要条件を含む。
【0100】
ゆえに本発明において使用するためのHIV−1由来の抗原は、例えば、Gag(例えば、全長Gag)、p17(Gagの一部分)、p24(Gagの別の一部分)、p41、p40、Pol(例えば、全長Pol)、RT(Polの一部分)、p51(RTの一部分)、インテグラーゼ(Polの一部分)、プロテアーゼ(Polの一部分)、Env、gp120、gp140またはgp160、gp41、Nef、Vif、Vpr、Vpu、RevおよびTatならびにその免疫原性誘導体およびその免疫原性フラグメント、特にEnv、Gag、NefおよびPolならびにその免疫原性誘導体およびその免疫原性フラグメント、例えばp17、p24、RTおよびインテグラーゼから選択してよい。HIVワクチンは、上記リストから選択することができる複数の異なるHIV抗原、例えば2または3または4またはそれ以上のHIV抗原に対応するポリペプチドおよび/またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでよい。例えば、数個の異なる抗原を単一融合タンパク質中に含ませてよい。一以上の第一の免疫原性ポリペプチドおよび/または一以上の第二の免疫原性ポリペプチド(それぞれHIV抗原であるか、または一以上の抗原からなる融合体である)を用いても良い。
【0101】
例えば抗原は、Gagまたはその免疫原性誘導体もしくは免疫原性フラグメントを含んでよく、それはRTまたはその免疫原性誘導体もしくは免疫原性フラグメントに融合され、それはNefまたはその免疫原性誘導体もしくは免疫原性フラグメントに融合されていて、その場合、該融合タンパク質のGag部分は該ポリペプチドの5’末端に存在する。
【0102】
本発明で有用なGag配列では、Gag p6ポリペプチドをコードする配列を除外してよい。本発明において使用するためのGag配列の具体例は、p17および/またはp24をコードする配列を含む。
【0103】
RT配列は、すべての逆転写酵素活性を実質的に不活性化する突然変異を含有してよい。WO03/025003を参照されたい。
【0104】
RT遺伝子は、HIVゲノム中のより大きいPol遺伝子の成分である。本発明にしたがって用いられるRT配列は、Polと関連して、または少なくともRTに相当するPolのフラグメント中に存在してよいことが理解される。そのようなPolのフラグメントはPolの主要CTLエピトープを保持する。一具体例では、RTは、RTのp51のみまたはp66のみのフラグメントとして含まれる。
【0105】
本発明において融合タンパク質または組成物のRT成分は必要に応じて変異を含み、原核生物の発現系において内部開始部位として機能する部位を除去しても良い。
【0106】
場合により、本発明において使用するためのNef配列を切断して、N末端領域をコードする配列を除去し、すなわち30〜85アミノ酸、例えば60〜85アミノ酸、特にN末端の65アミノ酸を除去する(後者の切断は本明細書中でtrNefと称される)。その代わりにまたはそれに加えて、Nefを改変して、ミリスチル化部位を除去してよい。例えばGly2ミリスチル化部位を欠失または置換によって除去してよい。その代わりにまたはそれに加えて、Nefを改変して、Leu174およびLeu175のジロイシンモチーフを、一方または両ロイシンの欠失または置換によって変化させてよい。CD4ダウンレギュレーションに関するジロイシンモチーフの重要性は、例えば、Bresnahan P.A.ら(1998) Current Biology, 8(22): 1235-8に記載されている。
【0107】
Env抗原は全長(gp160)または切断型(gp140)またはより短い形態(gp120とgp41との間の切断部位のモチーフを破壊するのに好適な変異を含んでも良い)で存在し得る。Env抗原はまた、gp120およびgp41として、天然に処理された形態で存在し得る。これら二つのgp160の誘導体は、別個にまたは組み合わせて一緒に用いても良い。上記Env 抗原はさらに、欠失(特に可変長ループにおいて)およびトランケーションを示す。Envの断片も良好に用いることができる。
【0108】
例示的なgp120配列を配列番号8に示す。例示的なgp140配列を配列番号6に示す。
【0109】
本発明の免疫原性ポリペプチドは、Gag、Pol、EnvおよびNefを含んでよく、その場合、これらのネイティブ抗原のCTLエピトープの少なくとも75%、または少なくとも90%または少なくとも95%、例えば96%が存在する。
【0110】
本発明において有用な抗原は、上記で規定したp17/p24 Gag、p66 RT、および切断型Nefを含んでよく、ネイティブGag、PolおよびNef抗原のCTLエピトープの96%が存在しうる。
【0111】
本発明の一実施形態は、p17、p24 Gag、p66 RT、切断型Nef (末端アミノ酸 1-85をコードするヌクレオチドを欠いている-「trNef」)をGag、RT、Nefの順序で含む免疫原性ポリペプチドを提供する。本発明の免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにおいて、好ましくはP24 GagおよびP66 RTはコドン最適化されている。
【0112】
本発明にしたがって使用できる特定のポリヌクレオチド構築物および対応するポリペプチド抗原には、以下の抗原が含まれる:
1. p17,p24(コドン最適化)Gag−p66 RT(コドン最適化)−切断型Nef;
2. 切断型Nef−p66 RT(コドン最適化)−p17,p24(コドン最適化)Gag;
3. 切断型Nef−p17,p24(コドン最適化)Gag−p66 RT(コドン最適化);
4. p66 RT(コドン最適化)−p17,p24(コドン最適化)Gag−切断型Nef;
5. p66 RT(コドン最適化)−切断型Nef−p17,p24(コドン最適化)Gag;
6. p17,p24(コドン最適化)Gag−切断型Nef−p66 RT(コドン最適化)。
【0113】
例示的な融合は、Gag, RTおよびNefの融合、特にGag-RT-Nefの順序の融合である(例えば、配列番号2を参照のこと)。別の例示的な融合はp17、p24、RTおよびNefの融合、特にp24-RT-Nef-p17の順序の融合である(本明細書中にて「F4」として記載される配列番号16を参照のこと)。
【0114】
別の実施形態において、免疫原性ポリペプチドはGag、RT、インテグラーゼおよびNefを、特にGag-RT-インテグラーゼ-Nefの順序で含む(例えば、配列番号4)。
【0115】
他の実施形態において、HIV抗原はNefまたはその免疫原性誘導体またはその免疫原性断片、ならびにp17 Gagおよび/またはp24 Gagまたはその免疫原性誘導体またはその免疫原性断片を含む融合ポリペプチドであり、p17およびp24 Gagが共に存在する場合、それらの間に少なくとも1つのHIV抗原または免疫原性断片が存在する。
【0116】
例えば、Nefは好ましくは全長Nefである。
【0117】
例えば、p17 Gagおよびp24 Gagはそれぞれ、全長p17および全長p24である。
【0118】
一実施形態において、免疫原性ポリペプチドはp17およびp24 Gagまたはそれらの免疫原性断片を含む。このような構築物において、p24 Gag成分およびp17 Gag成分は少なくとも1つのさらなるHIV抗原または免疫原性断片(例えば、Nefおよび/またはRT、それらの免疫原性誘導体あるいはそれらの免疫原性断片)によって分離されている。さらなる詳細についてはWO2006/013106を参照のこと。
【0119】
p24およびRTを含む融合タンパク質においては、構築物においてp24がRTの前に配置されることが好ましい。当該抗原が大腸菌内で発現された場合に、p24の発現はRTの発現よりも良好であることが観察されるためである。
本発明による好ましい構築物としては、以下のものが挙げられる:
1. p24 - RT - Nef - p17
2. p24 - RT* - Nef - p17
3. p24 - p51RT - Nef - p17
4. p24 - p51RT* - Nef - p17
5. p17 - p51RT - Nef
6. p17 - p51RT* - Nef
7. Nef - p17
8. Nef - p17(リンカーあり)
9. p17 - Nef
10. p17 - Nef (リンカーあり)
はRTのメチオニン592のリジンへの突然変異を表す。)
本発明の別の態様においては、Nef、PolおよびGagから誘導される、少なくとも4つのHIV抗原またはその免疫原性断片を含むHIV抗原の融合タンパク質を提供する。Gagは、前記融合体において少なくとも1つの他の抗原により隔てられている2つの別個の成分として存在するのが好ましい。Nefは完全長Nefであるのが好ましい。Polは、p66またはp51RTであるのが好ましい。Gagは、p17およびp24 Gagであるのが好ましい。本発明のこの態様における前記融合体の抗原成分の他の好ましい特徴および特性は、本明細書に記載の通りである。
【0120】
本発明のこの態様の好ましい実施形態は、上記に既に列挙された4つの成分の融合体である:
1. p24 - RT - Nef - p17
2. p24 - RT* - Nef - p17
3. p24 - p51RT - Nef - p17
4. p24 - p51RT* - Nef - p17
本発明の免疫原性ポリペプチドは、Gag、RTおよびNefなどの特定の抗原に対応する配列間に存在するリンカー配列を有し得る。このようなリンカー配列は例えば、20以下のアミノ酸長であり得る。特定の実施例において、リンカー配列は1〜10アミノ酸、または1〜6 アミノ酸、例えば4〜6 アミノ酸であり得る。
【0121】
このような好適なHIV抗原についてのさらなる説明が、WO03/025003に記載されている。
【0122】
本発明のHIV抗原はいずれかのHIVクレード、例えばクレードA、クレードBまたはクレードCに由来するものであり得る。例えばHIV抗原はクレードAまたはB、特にクレードBに由来するものであり得る。
【0123】
本発明の一実施形態において、第一の免疫原性ポリペプチドは、Gagおよび/またはPolおよび/またはNefあるいはそれら何れかの断片または誘導体を含むポリペプチド(例えばp24-RT-Nef-p17)である。本発明の一実施形態において、第二の免疫原性ポリペプチドは、Gapおよび/またはPolおよび/またはNefあるいはそれら何れかの断片または誘導体を含むポリペプチド(例えばGag-RT-NefまたはGag-RT-インテグラーゼ-Nef)である。
【0124】
一実施形態において、Gapおよび/またはPolおよび/またはNefあるいはそれら何れかの断片または誘導体を含むポリペプチド(例えばp24-RT-Nef-p17)が第一の免疫原性ポリペプチドであり、Gapおよび/またはPolおよび/またはNefあるいはそれら何れかの断片または誘導体を含むポリペプチド(例えばGag-RT-NefまたはGag-RT-インテグラーゼ-Nef)は第二の免疫原性ポリペプチドである。
【0125】
本発明の別の実施形態において、第一の免疫原性ポリペプチドはEnvまたはその断片もしくは誘導体(例えば、gp120, gp140またはgp160 (特にgp120))である。本発明の一実施形態において、第二の免疫原性ポリペプチドはGagおよび/またはPolおよび/またはNefあるいはそれら何れかの断片または誘導体を含むポリペプチドである(例えば、p24-RT-Nef-p17)。
【0126】
一実施形態において、Envまたはその断片もしくは誘導体(例えば、gp120, gp140またはgp160 (特にgp120))は第一の免疫原性ポリペプチドであり、Gagおよび/またはPolおよび/またはNefあるいはそれら何れかの断片または誘導体を含むポリペプチド(例えば、p24-RT-Nef-p17)は第二の免疫原性ポリペプチドである。
【0127】
本発明の別の実施形態において、第一の免疫原性ポリペプチドはGagおよび/またはPolおよび/またはNefあるいはそれら何れかの断片または誘導体を含むポリペプチドである(例えば、p24-RT-Nef-p17)。本発明の特定の実施形態において、第二の免疫原性ポリペプチドはEnvまたはその断片もしくは誘導体である(例えば、gp120, gp140またはgp160 (特にgp120))。
【0128】
一実施形態において、Gagおよび/またはPolおよび/またはNefあるいはそれら何れかの断片または誘導体を含むポリペプチド(例えば、p24-RT-Nef-p17)は第一の免疫原性ポリペプチドであり、Envまたはその断片もしくは誘導体(例えば、gp120, gp140またはgp160 (特にgp120))は第二の免疫原性ポリペプチドである。
【0129】
抗原の免疫原性誘導体および免疫原性断片
前記抗原を、抗原全体ではなく、その免疫原性誘導体または免疫原性断片の形態で用いることができる。
【0130】
本明細書中において、天然源由来の抗原に関して「免疫原性誘導体」とは、その天然の抗原と比較して限定的に改変されている抗原を指す。例えば、当該限定的改変にはタンパク質の特性を原核生物の系における発現を向上させることによって、または望ましくない活性(酵素活性など)を除去することによって、変化させ得る点突然変異を含み得る。しかし、免疫原性誘導体は天然の抗原と十分に類似しており、その結果その抗原特性を保持し、天然の抗原に対して免疫応答を惹起する能力を保持する。所与の誘導体が免疫応答を惹起するか否かは、好適な免疫学的アッセイ、例えば、ELISA (抗体応答に関する)または細胞マーカーに関する好適な染色を利用したフローサイトメトリー(細胞性応答に関する)によって測定することができる。
【0131】
免疫原性断片は、少なくとも1つの エピトープ、例えばCTLエピトープ、通常、少なくとも8アミノ酸からなるペプチドをコードする断片である。少なくとも8アミノ酸長、例えば8〜10アミノ酸長または20、50、60、70、100、150もしくは200以下のアミノ酸長の断片は、ポリペプチドが抗原性を示す限り、すなわち主要なエピトープ(例えば、CTLエピトープ)が当該ポリペプチドによって保持されている限り、本発明の範囲に該当すると考えられる。
【0132】
アデノウイルス
本発明のアデノウイルスベクターは、一以上の免疫原性ポリペプチドをコードする一以上の異種ポリヌクレオチド(DNA)を含む。
【0133】
本発明において使用するアデノウイルスベクターは、様々な哺乳動物宿主に由来し得る。
【0134】
アデノウイルス(本明細書中で「Ad」または「Adv」と称される)は、3つの主要タンパク質、ヘキソン(II)、ペントンベース(III)およびノブファイバー(knobbed fibre)(IV)から、いくつかの他の微量タンパク質、VI、VIII、IX、IIIaおよびIVa2とともに、構成される正二十面体の(icosohedral)カプシドを有する特徴的な形態を有する(Russell W.C. 2000, Gen Viriol, 81:2573-2604)。そのウイルスゲノムは、5’末端に末端タンパク質が共有結合している線状二本鎖DNAであり、逆方向末端反復(ITR)を有する。該ウイルスDNAは、非常に塩基性のタンパク質VIIおよびミュー(mu)と称される小ペプチドと密接に関連している。別のタンパク質VはこのDNA−タンパク質複合体とともにパッケージングされ、タンパク質VIを介するカプシドとの構造的連結をもたらす。該ウイルスはまた、ウイルスによってコードされるプロテアーゼを含有する。該プロテアーゼは、いくつかの構造タンパク質をプロセシングして成熟感染性ウイルスを生産するために必要である。
【0135】
種々の哺乳動物種に感染する、アデノウイルスについての100を超える別個の血清型が単離されており、そのうち51種がヒト起源の血清型である。一以上のアデノウイルスベクターはヒトアデノウイルスに由来し得る。そのようなヒト由来のアデノウイルスの例は、Ad1、Ad2、Ad4、Ad5、Ad6、Ad11、Ad24、Ad34、Ad35、特にAd5、Ad11およびAd35である。該ヒト血清型は、いくつかの生物学的、化学的、免疫学的および構造的基準に基づいて、6亜群(A〜F)に分類されている。
【0136】
Ad5ベースのベクターが多数の遺伝子治療試験において広範に使用されているが、Ad5および他のC群のアデノウイルスベクターの使用に関しては制限があり、該制限は天然感染に起因する一般集団中の既存の免疫のせいである。Ad5および他のC群のメンバーは最も血清陽性の血清型に含まれる場合が多い。既存のベクターに対する免疫は、処置期間中に該ベクターに曝露された結果として生じうる。血清陽性ベクターに対するこれらのタイプの既存または成熟免疫は、遺伝子治療またはワクチン接種の取組みの有効性を制限しうる。ゆえに、代替のアデノウイルス血清型は、宿主免疫応答を回避することが可能な遺伝子送達系の探究において、非常に重要な標的をなす。
【0137】
そのような代替の血清型の一領域は非ヒト霊長類、特にチンパンジーアデノウイルスのものである。2種のチンパンジーアデノウイルスのゲノムが記載されている米国特許第6,083,716号を参照のこと。
【0138】
チンパンジー(「Pan」または「C」)アデノウイルスベクターはヒトアデノウイルスベクターと同程度の効率で導入遺伝子産物に対する強い免疫応答を誘導することが示されている(Fitzgeraldら、J. Immunol. 170:1416)。
【0139】
非ヒト霊長類アデノウイルスはチンパンジーの腸間膜リンパ節から単離することができる。チンパンジーアデノウイルスは、HEK293細胞中でE1欠失ウイルスの複製を可能にするほど十分にヒトアデノウイルスサブタイプCと類似している。しかし、チンパンジーアデノウイルスは、比較的一般的なヒト血清型(Ad2およびAd5)と系統的に異なっている。Pan6は、Pan5、7および9とあまり密接に関連しておらず、それらと血清学的に異なっている。
【0140】
一以上のアデノウイルスベクターは、チンパンジーアデノウイルス(例えば、血清型Pan5, Pan6, Pan7およびPan9から選択されるもの)などの非ヒト霊長類アデノウイルスに由来する。
【0141】
アデノウイルスベクターはまた、一以上のアデノウイルス血清型に由来し得、各血清型は供給源が同じであっても良いし、異なっていても良い。例えばアデノウイルスベクターは、一以上のヒト血清型および/または一以上の非ヒト霊長類血清型に由来し得る。キメラアデノウイルスベクターの構築方法はWO2005/001103に開示されている。
【0142】
アデノウイルスに異種DNAを挿入することに関連して、一定のサイズ制限が存在する。ヒトアデノウイルスは野生型ゲノム長の105%までをパッケージングする能力を有する(Bettら1993, J Virol 67 (10), 5911-21)。ヒトアデノウイルスに関するパッケージング下限は野生型ゲノム長の75%であることが示されている(Parksら1995, J Virol 71(4), 3293-8)。
【0143】
アデノウイルスの一例は、Ad2およびAd5等の、ヒト集団中に広く認められる天然に存在する血清型とは異なるものである。これにより、中和抗体によってベクター取り込みをブロックし、かつ毒性に影響することよって同血清型の後の投与の効力を制限する、ベクターに対する強力な免疫応答の誘導が回避される。
【0144】
ゆえに、該アデノウイルスは、広く認められる天然に存在するヒトウイルス血清型ではないアデノウイルスでありうる。動物から単離されたアデノウイルスは免疫学的に異なるカプシド、ヘキソン、ペントンおよびファイバー成分を有するが、系統的に密接に関連している。特に、該ウイルスは、非ヒトアデノウイルス、例えばサルアデノウイルスおよび、特にチンパンジーアデノウイルス、例えばPan5、6、7または9であってよい。そのような系統の例はWO03/000283に記載されていて、American Type Culture Collection, 10801 University Boulevard, Manassas, Virginia 20110-2209、および他の供給元から入手可能である。望ましいチンパンジーアデノウイルス系統は、Pan5[ATCC VR-591]、Pan6[ATCC VR-592]、およびPan7[ATCC VR-593]である。
【0145】
チンパンジーアデノウイルスはヒトアデノウイルス血清型より有益だと考えられる。その理由は、標的集団中にアデノウイルスに対する既存の免疫が存在せず、特に交差中和抗体が存在しないからである。既存の中和抗体応答とチンパンジーアデノウイルスの交差反応は、特定のヒトアデノウイルスベクター候補の場合の35%と比較して、標的集団の2%にしか存在しない。チンパンジーアデノウイルスは、より一般的なヒトサブタイプAd2およびAd5と異なるが、亜群EのヒトAd4とより密接に関連している。それは広く認められるサブタイプではない。Pan6はPan5、7および9とあまり密接に関連していない。
【0146】
本発明のアデノウイルスは複製欠損でありうる。このことは、それが、非補完細胞において複製するための、野生型ウイルスと比較して低減した能力を有することを意味する。これは、例えば複製に関与する遺伝子の欠失、例えばE1a、E1b、E3またはE4遺伝子の欠失によって該ウイルスを突然変異させることによって実現することができる。
【0147】
本発明のアデノウイルスベクターは、機能的E1欠失を含む複製欠損アデノウイルスでありうる。ゆえに、本発明のアデノウイルスベクターは、アデノウイルスE1aおよびE1bを発現する能力の不存在に起因して複製欠損であってよく、すなわちE1aおよびE1bにおいて機能的に欠失していてよい。組換えアデノウイルスは、他の遺伝子の機能的欠失を有してもよく[WO03/000283を参照のこと]、例えばE3またはE4遺伝子における欠失を有してもよい。該アデノウイルスの遅延初期遺伝子E3を、組換えウイルスの部分を形成するアデノウイルス配列から除去することができる。E3の機能は組換えアデノウイルス粒子の生産に必要ではない。ゆえに、本発明において有用な組換えアデノウイルスをパッケージングするためにこの遺伝子産物の機能を置換することは不要である。特定の一実施形態では、組換えアデノウイルスは機能的に欠失したE1およびE3遺伝子を有する。そのようなベクターの構築はRoyら、,Human Gene Therapy 15:519-530, 2004に記載されている。
【0148】
組換えアデノウイルスには、E4遺伝子の機能的欠失を有するが、E4のORF6機能が保持されていることが好ましい。本発明のアデノウイルスベクターは遅延初期遺伝子E2aにおける欠失を含有してもよい。欠失は、アデノウイルスゲノムの後期遺伝子L1〜L5のいずれかにおいて施してもよい。同様に、中間遺伝子(intermediate genes)IXおよびIVaにおける欠失も有用でありうる。
【0149】
他の欠失は他の構造または非構造アデノウイルス遺伝子において施してもよい。上記欠失は個別に使用してよく、すなわち本発明において使用するためのアデノウイルス配列はE1のみの欠失を含有してよい。別法では、遺伝子全体またはその生物学的活性を破壊するために有効なその部分の欠失を任意の組み合わせで使用することができる。例えば典型的な1つのベクターでは、アデノウイルス配列は、E1遺伝子およびE4遺伝子の欠失、またはE1、E2aおよびE3遺伝子の欠失、またはE1およびE3遺伝子の欠失(例えばE1aおよびE1bにおける機能的欠失、およびE3の少なくとも部分の欠失)、またはE3の欠失を伴うかまたは伴わないE1、E2aおよびE4遺伝子の欠失等を有してよい。そのような欠失は前記遺伝子の部分的または完全欠失であってよく、他の突然変異、例えば温度感受性突然変異と組み合わせて使用して、所望の結果を達成してよい。
【0150】
本発明のアデノウイルスベクターは、該ウイルスが複製可能な任意の好適な細胞株で生産することができる。特に、ウイルスベクターから欠けていて、その結果、その複製特性を損なわせる因子を提供する補完細胞株を使用することができる。非限定的に、そのような細胞株は、特に、HeLa[ATCC受託番号CCL 2]、A549[ATCC受託番号CCL 185]、HEK 293、KB[CCL 17]、Detroit[例えばDetroit 510,CCL 72]およびWI−38[CCL 75]細胞である。これらの細胞株はすべて、American Type Culture Collection, 10801 University Boulevard, Manassas, Virginia 20110-2209から入手可能である。他の好適な親細胞株を他の供給元から入手してよく、例えばCentre for Applied MicrobiologyおよびResearch(CAMR、英国)のEuropean Collection of Animal Cell Cultures(ECACC)にECACC no.96022940の下で寄託されている細胞によって代表されるPER.C6(copyright)細胞またはHer96細胞(Crucell)である。
【0151】
免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は哺乳動物細胞用にコドン最適化されても良い。このようなコドン最適化については、WO05/025614に詳細に記載されている。特定のHIV配列に関するコドン最適化については、WO 03/025003にさらに記載されている。
【0152】
本発明の一実施形態において、ポリヌクレオチド構築物はN末端リーダー配列を含む。シグナル配列、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは個々に、必要に応じて全て存在していても良いし、欠失していても良い。本発明の一実施形態において、これらの領域は全て存在するが、改変はされていない。
【0153】
本発明のアデノウイルスベクターにて使用するためのプロモーターは、HCMV IE遺伝子に由来するプロモーターであっても良く、例えば当該プロモーターにはエクソン1を含むHCMV IE遺伝子の5’非翻訳領域が含まれ、またイントロンAはWO 02/36792に記載されるように、全体または部分的に含まれる。
【0154】
複数の抗原が融合タンパク質へと融合される場合、このようなタンパク質は単一プロモーターの制御下にあるポリヌクレオチドによってコードされる。
【0155】
本発明の代替的な実施形態において、複数の抗原が個々のプロモーター(各プロモーターは同一であっても良いし、異なっていても良い)により、別個に発現されても良い。本発明のさらに別の実施形態において、いくつかの抗原は第一のプロモーターに連結された融合体であり、かつ他の抗原は第二のプロモーター(第一のプロモーターと同一であっても良いし、異なっていても良い)に連結されていても良い。
【0156】
アデノウイルスベクターは一以上の発現カセットを含み、当該発現カセットのそれぞれは一のプロモーターの制御下に一の抗原をコードし得る。あるいは、またはそれに加えて、アデノウイルスベクターは一以上の発現カセットを含み、当該発現カセットのそれぞれは一のプロモーターの制御下に一以上の抗原をコードし得る。これにより抗原は融合体として発現される。各発現カセットはアデノウイルスベクター内の一以上の部位に存在し得る。
【0157】
発現されるべき免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを、アデノウイルスのいずれかの欠失領域、例えばE1欠失領域に挿入し得る。
【0158】
免疫原性ポリペプチドをコードする二以上のポリヌクレオチドは融合体として連結され得るが、得られるタンパク質は融合タンパク質として発現されても良いし、別個のタンパク質生成物として発現されても良く、または融合タンパク質として発現された後に、小さなサブユニットへと分解されても良い。
【0159】
アジュバント
アジュバントは、「ワクチンの設計-サブユニットおよびアジュバント手法(Vaccine Design - the Subunit and Adjuvant Approach)」、PowellおよびNewman(編), Plenum Press, New York, 1995に一般的に記載されている。
【0160】
好適なアジュバントとしては、水酸化アルミニウムもしくはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩が挙げられるが、カルシウム、鉄もしくは亜鉛の塩であってもよく、またはアシル化されたチロシン、もしくはアシル化された糖、陽イオンもしくは陰イオン的に誘導体化された多糖、もしくはポリホスファゼンの不溶性懸濁液であってもよい。
【0161】
本発明の製剤においては、前記アジュバント組成物は優先的にTh1応答を誘導するのが好ましい。しかしながら、他の体液性応答などの他の応答も排除されないことが理解されるであろう。
【0162】
特定のワクチンアジュバントが、Th1またはTh2型のサイトカイン応答の刺激にとって特に好適であることが知られている。伝統的には、ワクチン接種または感染後の免疫応答のTh1:Th2の平衡の最良の指示因子としては、抗原による再刺激後のin vitroでのTリンパ球によるTh1もしくはTh2サイトカインの産生の直接的測定、および/または抗原特異的抗体応答のIgG1:IgG2a比の測定が挙げられる。
【0163】
かくして、Th1型アジュバントは、単離されたT細胞集団を刺激して、in vivo(血清中で測定)またはex vivo(in vitroで抗原により再刺激された場合に測定されるサイトカイン)にて、高レベルのTh1型サイトカインを産生し、かつTh1型アイソタイプと関連する抗原特異的免疫グロブリン応答を誘導するものである。
【0164】
本発明における使用にとって好適なアジュバントを製造するために製剤化することができる好ましいTh1型免疫刺激因子としては、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる:
Toll様受容体(TLR) 4 リガンド、特に脂質 A 誘導体(具体的にはモノホスホリルリピドA、より具体的には3脱アシル化モノホスホリルリピドA (3D-MPL)などのアゴニスト。
【0165】
3D-MPLはGlaxoSmithKlineより商品名MPL(登録商標)として販売されており、IFN-γの産生によって特徴付けられるCD4+T細胞応答(Th1細胞、すなわち1型表現型を有するCD4 T ヘルパー細胞)を主に促進する。3D-MPLはGB 2 220 211 Aに開示される方法により製造され得る。化学的には、3D-MPLは3-脱アシル化モノホスホリルリピドAと3, 4, 5または6 アシル化鎖との混合物である。本発明の組成物において、好ましくは小粒子の3D-MPLを用いる。小粒子3 D-MPLは0.22μmフィルターによりろ過滅菌し得る粒径を有する。このような製剤についてはWO94/21292に開示されている。リピドAの合成誘導体は公知であり、TLR4アゴニストであると考えられ、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。
【0166】
OM174 (2-デオキシ-6-o-[2-デオキシ-2-[(R)-3-ドデカノイルオキシテトラ-デカノイルアミノ]-4-o-ホスホノ-β-D-グルコピラノシル]-2-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]-α-D-グルコピラノシルジヒドロゲンホスフェート), (WO 95/14026)
OM 294 DP (3S, 9 R) -3--[(R)- ドデカノイルオキシテトラ-デカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9(R)-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ] デカン-1,10-ジオール,1,10-ビス(ジヒドロゲンホスフェート) (WO99 /64301およびWO 00/0462 )
OM 197 MP-AcDP(3S,9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1-ジヒドロゲンホスフェート10-(6-アミノヘキサノエート) (WO 01/46127)
用いることができる他のTLR4リガンドは、WO 98/50399もしくは米国特許第6,303,347号(AGPの調製方法も開示されている)に開示されたものなどのアルキルグルコサミニドホスフェート(AGP)、または米国特許第6,764,840号に開示されたようなAGPの製薬上許容し得る塩である。いくつかのAGPはTLR4アゴニストであり、いくつかはTLR4アンタゴニストである。両方ともアジュバントとして有用であると考えられる。
【0167】
サポニンも、本発明に従う好ましいTh1免疫刺激因子である。サポニンはよく知られたアジュバントであり、Lacaille-Dubois, M and Wagner H (1996. A review of the biological and pharmacological activities of saponins., Phytomedicine vol 2 pp 363-386)に教示されている。例えば、Quil A(南アメリカの樹木キラヤ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮に由来する)、およびその画分が、米国特許第5,057,540号および”Saponins as Vaccine adjuvants.” Kensil, C.R., Crit Rev Ther Drug Carrier Syst, 1996, 12(1-2):1-55;ならびにEP 0 362 279 B1に記載されている。溶血性サポニンQS21およびQS17(Quil AのHPLC精製された画分)が強力な全身性アジュバントとして記載されており、その製造方法は米国特許第5,057,540号およびEP 0 362 279 B1に開示されている。また、これらの参考文献には、全身性ワクチンのための強力なアジュバントとして働くQS7(Quil Aの非溶血性画分)の使用も記載されている。QS21の使用は、Kensilら(1991. J. Immunology vol 146, 431-437)にさらに記載されている。QS21とポリソルベートまたはシクロデキストリンとの組合せも公知である(WO 99/10008)。QS21およびQS7などのQuil Aの画分を含む粒子状アジュバント系はWO 96/33739およびWO 96/11711に記載されている。1つのそのような系はIscornとして公知であり、1種以上のサポニンを含んでもよい。
【0168】
本発明のアジュバントは特に、サポニンと組み合わせてToll様受容体(TLR) 4リガンド、特に3D-MPLを含み得る。
【0169】
他の好適なアジュバントにはTLR 9 リガンド(アゴニスト)を含む。別の好ましい免疫刺激因子は、非メチル化CpGジヌクレオチド(「CpG」)を含む免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。CpGはDNA中に存在するシトシン−グアノシンジヌクレオチドモチーフの省略形である。CpGは、全身経路および粘膜経路の両方により投与される場合のアジュバントとして当分野で公知である(WO 96/02555、EP 468520、Davisら、J.Immunol, 1998, 160(2):870-876;McCluskieおよびDavis, J.Immunol., 1998, 161(9):4463-6)。歴史的には、BCGのDNA画分が抗腫瘍作用を示し得ることが観察された。さらなる研究において、BCG遺伝子配列から誘導された合成オリゴヌクレオチドが、免疫刺激作用を誘導することができる(in vitroおよびin vivoの両方において)ことが示された。これらの研究の著者らは、中央のCGモチーフなどの、特定のパリンドローム配列がこの活性を有すると結論付けた。免疫刺激におけるCGモチーフの中心的な役割はKrieg, Nature 374, p546 1995による刊行物において後に解明された。詳細な分析により、CGモチーフが特定の配列の前後関係の中になければならず、そのような配列は細菌のDNAにおいて一般的であるが、脊椎動物のDNAにおいては稀であることが示された。免疫刺激性配列は多い:プリン、プリン、C、G、ピリミジン、ピリミジン;ここで、CGモチーフはメチル化されていないが、他の非メチル化CpG配列も免疫刺激性であることが知られており、本発明において用いることができる。
【0170】
6つのヌクレオチドの特定の組合せ中に、パリンドローム配列が存在する。これらのモチーフのいくつか、1つのモチーフの繰り返しまたは異なるモチーフの組合せのいずれかが、同じオリゴヌクレオチド中に存在してもよい。これらの免疫刺激性配列を含む1つ以上のオリゴヌクレオチドの存在は、ナチュラルキラー細胞(インターフェロンγを産生し、細胞溶解活性を有する)およびマクロファージ(Wooldrigeら、Vol 89 (no. 8), 1977)などの様々な免疫サブセットを活性化することができる。この共通配列を含まない他の非メチル化CpGを含む配列も、現在では免疫刺激性であることが示されている。
【0171】
ワクチン中で製剤化する場合、一般的には、CpGを、遊離の抗原と共に遊離の溶液中で投与するか(WO 96/02555;McCluskieおよびDavis,上掲)、または抗原に共有結合させるか(WO 98/16247)、または水酸化アルミニウムなどの担体と一緒に製剤化する((肝炎表面抗原) Davisら、上掲;Brazolot-Millanら、Proc.Natl.Acad.Sci., USA, 1998, 95(26), 15553-8)。
【0172】
潜在的に興味深い他のTLR9アゴニストには、オリゴヌクレオチドを含む免疫賦活化CpRモチーフおよびオリゴヌクレオチド (Idera)を含むYpGモチーフを含む。
【0173】
上記のような免疫刺激因子を、例えば、リポソーム、水中油型乳濁液、および/またはアルミニウム塩(水酸化アルミニウムなど)などの金属塩などの担体と一緒に製剤化することができる。例えば、3D−MPLを、水酸化アルミニウム(EP 0 689 454)または水中油型乳濁液(WO 95/17210)と一緒に製剤化することができる;有利には、QS21を、コレステロールを含有するリポソーム(WO 96/33739)、水中油型乳濁液(WO 95/17210)またはミョウバン(WO 98/15287)と一緒に製剤化することができる;CpGを、ミョウバンと共に(Davisら、上掲;Brazolot-Millan、上掲)または他の陽イオン性担体と一緒に製剤化することができる。
【0174】
免疫刺激因子の組合せ、特に、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体の組合せ(WO 94/00153;WO 95/17210;WO 96/33739;WO 98/56414;WO 99/12565;WO 99/11241)、より具体的には、WO 94/00153に開示されたようなQS21と3D−MPLの組合せも好ましい。あるいは、CpGとQS21などのサポニンの組合せも、本発明における使用のための強力なアジュバントを形成する。あるいは、サポニンをリポソーム中で、またはIscorn中で製剤化し、免疫刺激性オリゴヌクレオチドと組合わせることもできる。
【0175】
かくして、好適なアジュバント系としては、例えば、モノホスホリルリピドA、好ましくは3D−MPLと、アルミニウム塩との組合せが挙げられる(例えば、WO00/23105に記載される)。
【0176】
増強された系は、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体の組合せ、特に、WO 94/00153に開示されたようなQS21と3D−MPLの組合せ、またはWO 96/33739に開示されたようなコレステロールを含有するリポソーム(DQ)中でQS21をクエンチする低反応性組成物を含む。この組合せはさらに、免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含んでもよい。
【0177】
例示的なアジュバントはQS21および/またはMPLおよび/またはCpGを含む。
【0178】
水中油型乳濁液中にQS21、3D−MPLおよびトコフェロールを含む特に強力なアジュバント製剤がWO 95/17210に記載されており、本発明における使用にとって別の好ましい製剤である。
【0179】
別の好ましい製剤は、CpGオリゴヌクレオチドのみ、またはCpGオリゴヌクレオチドとアルミニウム塩とを含む。
【0180】
本発明のさらなる態様においては、本発明による一または複数の第一の免疫原性ポリペプチドを、好適なアジュバントと混合することを含む、本明細書に記載のワクチン製剤の製造方法を提供する。
【0181】
本発明による製剤における使用にとって特に好ましいアジュバントの組合せは以下の通りである:
i) 3D-MPL + QS21(リポソーム中) (例えば、以下のアジュバントBを参照のこと)
ii)ミョウバン + 3D-MPL
iii)ミョウバン+ QS21 (リポソーム中) + 3D-MPL
iv)ミョウバン + CpG
v) 3D-MPL + QS21 + 水中油型乳濁液
vi) CpG
vii) 3D-MPL + QS21 (例えば、リポソーム中) + CpG
viii) QS21+ CpG。
【0182】
好ましくは、アジュバントはリポソーム、ISCOMまたは水中油型エマルジョンの形態で提供される。本発明の一実施形態において、アジュバントは水中油型エマルジョンを含む。本発明の別の実施形態において、アジュバントリポソームを含む。
【0183】
好ましくは、アジュバント成分はいずれのウイルスも含まない。好ましくは、本発明に使用する組成物は、病原体由来の第二の免疫原性ポリペプチドを一以上コードする一以上の異種ポリヌクレオチドを含む一以上のアデノウイルスベクター以外にウイルスは含まない。
【0184】
組成物、用量および投与
本発明方法において、免疫原性ポリペプチド、アデノウイルスベクターおよびアジュバントは併用投与する。
【0185】
通常、アジュバントは免疫原性ポリペプチドと一緒に製剤化する。好ましくはアジュバントはまた、投与されるべき他の免疫原性ポリペプチドと一緒に製剤化する。
【0186】
本発明の一実施形態において、免疫応答を惹起する方法を提供する。当該方法は(i)アジュバントと一緒に製剤化されている一以上の第一の免疫原性ポリペプチド;および(ii)一以上の第二の免疫原性ポリペプチドをコードする一以上の 異種ポリヌクレオチドを含む一以上のアデノウイルスベクターを投与する工程を含み、ここで一以上の第一の免疫原性ポリペプチドおよびアジュバントならびに一以上のアデノウイルスベクターは併用投与される。
【0187】
「一緒に製剤化する」とは、第一の免疫原性ポリペプチドとアジュバントを同一の組成物(例えば、医薬組成物)中に含めることを意味する。
【0188】
通常、アデノウイルスベクターは組成物(例えば、医薬組成物)中に含まれる。
【0189】
あるいは、一以上の第一の免疫原性ポリペプチド、一以上のアデノウイルスベクターおよびアジュバントが一緒に製剤化されている。
【0190】
したがって、一以上の免疫原性ポリペプチド、一以上のアデノウイルスベクターおよびアジュバントを含む本発明の組成物が提供される。
【0191】
本発明の組成物および方法は、一以上の免疫原性ポリペプチドおよび/または一以上のアデノウイルスベクターの使用を含み得る。複数の抗原を使用することは、特定の病原体(HIV、M. tuberculosisおよびプラスモジウム属など)に対する予防的免疫応答を惹起するのに有利である。本発明の組成物は一以上のアジュバントを含んでも良い。
【0192】
本発明において用いられる組成物および方法は通常、担体(例えば、水性緩衝担体)を含み得る。
【0193】
組成物は、標的細胞を形質転換し、十分レベルの遺伝子導入および発現をもたらし、ならびに病原体特異的免疫応答を生じ、過度の副作用を伴わないか、または医学上容認される生理効果を伴う予防または治療効果(当該効果は当業者により測定することができる)をもたらすのに十分量で投与すべきである。従来的なおよび医薬的に受容可能な投与経路には、網膜への直接送達および他の眼球内送達法、肝臓への直接送達、吸入、経鼻投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、表皮投与、直腸投与、経口投与および他の非経口経路の投与が挙げられるが、これらに限定されない。投与経路は、遺伝子産物や病状に応じて、組み合わせたり(必要であれば)、調整したりできる。投与経路は主に、治療されるべき病状の性質に依拠する。最も好ましい投与経路は、筋肉内、皮内または表皮内投与である。
【0194】
標的として好ましい組織は、筋肉、皮膚および粘膜である。皮膚および粘膜は多くの感染性抗原が通常接触する生理的部位である。
【0195】
第一の免疫原性ポリペプチド、アジュバントおよびアデノウイルスベクターが一緒に製剤化されない場合、別個の製剤(例えば、ポリペプチド/アジュバントおよびアデノウイルスベクター製剤)を同一の投与経路で、または異なる投与経路で投与することができる。
【0196】
本方法における組成物の投与量は、治療すべき症状、被験体の年齢、体重および健康状態などの要因の主に依拠し、したがって被験体に応じて様々であり得る。例えば、成人ヒトまたは動物に対する治療有効量とは通常、約1 x 106〜約1 x 1015粒子、約1 x 1011〜1 x 1013粒子または約1 x 109〜1x 1012粒子濃度のウイルスと約1〜1000μgまたは約2〜100μg、例えば、約4〜40μgの免疫原性ポリペプチドを含有する約100μL〜約100 mLの担体の範囲である。投与量は動物の大きさおよび投与経路に応じて様々である。例えば、ヒトまたは動物(約80 kgの動物について)に対する筋肉内注射において好適な投与量は、一部位につき1 mLあたり約1 x 109〜約5 x 1012 ウイルス粒子および4〜40μgのタンパク質を含む範囲である。当業者は当該投与量を、投与経路および当該組成物が用いられる治療用途またはワクチン用途に応じて、調整することができる。
【0197】
アジュバントの量はアジュバントおよび免疫原性ポリペプチドの特性、治療されるべき症状、ならびに被験体の年齢、体重および健康状態に依拠しうる。通常、ヒトに対する投与については、一用量あたり1〜100μg、例えば、10〜50μgのアジュバント量が好ましい。
【0198】
好ましくは、適当な免疫応答は、本発明方法において、本発明の組成物を一度、同時投与することによって得られる。しかし、第一の免疫原性ポリペプチド、アジュバントおよびアデノウイルスベクターのさらなる用量を二度目またはそれ以後に(例えば、一ヵ月後または二ヵ月後に)投与することによって、免疫応答をさらに向上することができる場合、そのようなプロトコルも本発明に含まれる。
【0199】
本発明者らは、良好な病原体特異的 CD4+および/またはCD8+ T細胞応答を、本発明方法において本発明の組成物を一度、同時投与することによって惹起できることを見出した。しかし本発明者らは、良好な病原体特異的抗体応答が本発明の組成物を二度またはそれ以上同時投与する必要もあり得ることを見出した。
【0200】
本発明の成分は製薬上好適な賦形剤(水、緩衝液など)と組み合わせても良いし、製剤化しても良い。
【実施例】
【0201】
アジュバント製剤
1) WO 95/17210に記載のプロトコルに従って水中油型エマルジョンの調製
エマルジョンは以下を含む:42.72 mg/ml スクアレン、47.44 mg/ml トコフェロール、19.4 mg/ml Tween 80。得られた油滴はおよそ180 nmの大きさを有する。
【0202】
Tween 80をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に溶解し2%PBS溶液を得る。100 ml の二倍濃縮エマルジョンを得るために、5gのDLαトコフェロールおよび5mlのスクアレンを完全に混合するまでボルテックスした。90mlのPBS/Tween 溶液を加え、完全に混合した。次いで得られたエマルジョンをシリンジに通し、M110S マイクロフルイディクス装置を使用して最終的にマイクロ流体化した。得られた油滴はおよそ180 nmの大きさを有する。
【0203】
2) QS21およびMPLを用いた水中油型エマルジョンの調製
滅菌バルクエマルジョンをPBSに加え、終濃度 1ml あたり500μlのエマルジョン(v/v)を得た。次いで3 D-MPLを加えた。次いでQS21を加えた。各成分を添加する間に、中間生成物を5分間撹拌した。15分後、pHをチェックし、必要があればNaOHまたはHClを用いて6.8 +/- 0.1に調整した。3D-MPLおよびQS21の終濃度はそれぞれ1ml あたり100μg であった。
【0204】
3)リポソーム MPLの調製
有機溶媒中の脂質(卵黄もしくは合成由来ホスファチジルコリンなど)およびコレステロールおよび3D-MPLの混合物を、減圧下(または不活性ガス流下)で乾燥させた。次いで、水溶液(リン酸緩衝生理食塩水など)を加え、脂質が全て懸濁されるまで容器を攪拌した。次いで、この懸濁液を、リポソームの大きさが約100 nmに減少するまで微小流体化した後、0.2μmフィルターを通して滅菌濾過した。押出または超音波処理をこの工程と置き換えることも可能であった。
【0205】
典型的には、コレステロール:ホスファチジルコリン比は1:4(w/w)であり、水溶液を加えて、10 mg/mlの最終コレステロール濃度を得た。
【0206】
MPLの終濃度は2 mg/mlである。
【0207】
リポソームはおよそ100 nmの大きさを有し、これをSUV(小単ラメラ小胞)と呼ぶ。リポソームはそれ自体で長時間に渡って安定であり、融合能を持たない。
【0208】
4)アジュバント B (“adj B”) の調製
SUVの滅菌バルクをPBSに加えた。PBSの組成は以下のとおりであった :Na2HPO4: 9 mM;KH2PO4: 48 mM;NaCl: 100 mM pH 6.1。QS21の水溶液をSUVに加えた。3D-MPLおよびQS21の終濃度はそれぞれ1mlあたり100 μgであった。この混合物をアジュバント Bと呼ぶ。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClでpHを6.1±0.1に調整した。
【0209】
p24-RT-Nef-P17タンパク質 (“F4”) の調製
F4をWO2006/013106の実施例1、コドン最適化法に記載されるとおりに調製した。
【0210】
Gag-RT-Nef トランス遺伝子を含むチンパンジーアデノウイルス Pan7 (“Pan7GRN”) の調製
Gag, RT, Nef プラスミドの構築
プラスミド p73i-Tgrn
Tgrn プラスミド挿入物の全長配列を配列番号1に示す。このプラスミド構築物を図1に模式的に示す。このプラスミドはp17 p24 (コドン最適化されたもの) Gag, p66 RT (コドン最適化および不活性化されたもの) および切断型 Nefを含む。
【0211】
プラスミド P73i-TgrnをWO03/025003の実施例1−13に記載されるとおりに調製した。
【0212】
E1/E3欠損型Pan 7 アデノウイルスの構築
E1/E3 欠損型 Pan 7 アデノウイルスをWO2006/120034の実施例1に記載されるとおりに調製した。
【0213】
他の血清型のベクターを同様の方法で構築することができる。当該および他のPan アデノウイルス血清型におけるE1, E3およびE4の欠損を構築することに関する十分な説明がWO03/0046124に記載されている。さらなる情報はHuman Gene Therapy 15:519-530にて得ることができる。
【0214】
アデノウイルスへのGag, RT, Nef配列の挿入
プラスミド P73i-Tgrnを使用して、WO2006/120034の実施例3に記載されるとおりにGRN発現カセットをE1/E3欠損型Pan 7 アデノウイルスに挿入し、C7-GRNcを作製することができる。C7-GRNc は本明細書中にて示される実施例にて用いられるPan7GRN アデノウイルス成分である。
【0215】
(実施例1)
アデノウイルス成分 ( Pan7GRN) およびタンパク質成分 (F4/アジュバント B)を別個に、またはアデノウイルスおよびタンパク質成分を一緒に製剤化して免疫化したマウスにおける免疫原性試験
用いたマウス系統はCB6F1であり、一時点あたり3匹のマウスを用いた。ヒト用量の1/10量のF4/アジュバント B (P)を用いて免疫化するために、50μLのアジュバント B中9μg のF4タンパク質を接種した。Pan7GRN (A) を用いて免疫化するために、50μLの生理食塩水(注射溶液用の0.9%NaCl 水) 中10 x 108 ウイルス粒子用いた。Pan7GRN チンパンジーアデノウイルスはGag (G), RT (R)およびNef (N)をコードする遺伝子を運ぶ。
【0216】
ワクチン接種のスケジュール以下のとおり:

このように、グループ1および2のマウスは、タンパク質(PP) またはアデノウイルス (AA)それぞれ、2回接種して免疫化した。グループ3および4のマウスは慣用のプライムブーストスケジュールを受けた: タンパク質次いでアデノウイルス (PPAA)またはその逆(AAPP)。一方、グループ5および6のマウスは、本発明にしたがってタンパク質およびアデノウイルスの組み合わせ(combo)からなる1回または2回の接種を受けた。グループ 7のマウスはアジュバントを受けたのみの対照であり、グループ 8のマウスは何も受けなかった。
【0217】
以下の内容を実施した:
抗体応答 (各グループに由来する各動物の血清を用いてELISAを実施した):
・F4に対する抗体応答(図4)
・F4の成分p24, RT, Nefおよびp17に対する抗体応答(図5-8)
細胞性応答(図2−3):
・p24, RT, Nefまたはp17のペプチドプールで脾臓細胞を一晩再刺激した後、表面および細胞内サイトカインを染色してフローサイトメトリーにより測定した。一グループにつき一時点あたり3匹のマウスの脾臓細胞を分析用にプールした。
【0218】
グループ1および2については、最後の免疫化から21目にサンプルを測定用に採取した。その他のグループについては、最後の免疫化から21日目、56日目および112日目に測定を行った。
【0219】
結果:
結果を図2〜8に示す。
【0220】
X 軸の表示は以下を示す:
PP - 2回目の免疫後のグループ 1 の動物
AA - 2回目の免疫後のグループ 2 の動物
PPAA - 4回目の免疫後のグループ 3 の動物
AAPP - 4回目の免疫後のグループ 4 の動物
Combo -免疫後のグループ 5 の動物
Combo x 2 - 2回目の免疫後のグループ 6 の動物
測定時点(最後の免疫化から21, 56または112日)は括弧内に示される。
【0221】
細胞性応答 (図2-3):
分析した時点にて、データはCD4+ T細胞応答が主にp24, RTおよびNefに対して観察されたことを示す。
【0222】
図2aおよび2b (左のパネル)に示すように、最後の免疫化から21日目に、アデノウイルスを用いた2回の免疫化、続くタンパク質/アジュバントを用いた2回の免疫化(グループ 4 の動物)により最高のCD4+ T細胞応答が観察される。アデノウイルス/タンパク質/アジュバントの組み合わせによる1回の接種により、タンパク質/アジュバントを用いて2回接種し、続いてp24, RTまたはNefペプチドを用いて再刺激した場合よりも高いCD4+ T細胞レベルが惹起される。
【0223】
RTおよびNefによる再刺激については、アデノウイルス/タンパク質/アジュバントの組み合わせを用いた2回の免疫化により、該組み合わせを用いた1回の免疫化よりもわずかに高いCD4+ T細胞応答を惹起するが、p24については、1回または2回の免疫化による応答は同程度であった。
【0224】
分析した時点にて、CD8+ T細胞応答は主にp24およびRTペプチドに対して観察され、Nefまたはp17に特異的なCD8+ T細胞はあまり検出されなかった。
【0225】
図2aおよび2b (右のパネル)に示すように、最後の免疫化から21日目にて、アデノウイルス/タンパク質/アジュバントの組み合わせを用いて1または2回免疫化を行った後のCD8+ T細胞応答は同程度であった。 (i)アデノウイルスを用いて2回または(ii)アデノウイルスを用いて2回続いてタンパク質を用いて2回または (iii)アデノウイルス/タンパク質/アジュバントの組み合わせを用いて1回もしくは2回のいずれかにより免疫化したグループにて観察されるp24に対するCD8応答はそれぞれ同程度であり、タンパク質を用いて2回その後アデノウイルスを用いて2回免疫化したグループにおける応答よりやや低かった。アデノウイルス/タンパク質/アジュバントの組み合わせを用いて1回または2回免疫化したグループにて観察されるRTに対するCD8応答は同程度であり、(i) アデノウイルスを用いて2回または(ii) アデノウイルスを用いて2回その後タンパク質を用いて2回または(iii) タンパク質を用いて2回その後アデノウイルスを用いて2回のいずれかにより免疫化したグループにおける応答よりやや低かった。
【0226】
CD4およびCD8T細胞応答はまた、より後の時点(最後の免疫化から56および112日目)においても分析した(応答の持続性が認められる場合)(図3aおよび3b)。CD4応答 (図3aおよび3b、左のパネル) は主にp24, RTおよびNefに対して観察された。これらの時点において、最も高いCD4応答がアデノウイルスを用いて2回その後タンパク質を用いて2回免疫化した動物において観察される。アデノウイルス/タンパク質/アジュバントの組み合わせを用いて1回または2回免疫化したマウスにおけるCD4応答はそれぞれ同程度であり、一般にタンパク質を用いて2回その後アデノウイルスを用いて2回免疫化したグループにて観察される応答よりも高かった。
【0227】
より後の時点にて、p24に対するCD8応答がアデノウイルス/タンパク質/アジュバントの組み合わせを用いて1回免疫化したグループで最も高い(図3b, 右のパネル)。当該応答はタンパク質を用いて2回その後アデノウイルスを用いて2回免疫化した動物における応答と同程度であり、(i) アデノウイルス/タンパク質/アジュバントの組み合わせを用いて2回または(ii) アデノウイルスを用いて2回その後タンパク質を用いて2回免疫化した動物における応答よりもやや高い。後者の二つの応答は同程度である。RTに対するCD8応答が最も高く、 (i)アデノウイルス/タンパク質/アジュバントの組み合わせを用いて2回または(ii) アデノウイルスを用いて2回その後タンパク質を用いて2回免疫化したグループにおける応答と同程度である。(i) アデノウイルス/タンパク質/アジュバントの組み合わせを用いて2回または(ii) タンパク質を用いて2回その後アデノウイルスを用いて2回免疫化したグループにおけるRTに対するCD8応答は若干低いものであったが、それらは互いに同程度であった(図3)。図3a (右のパネル)に示すように、Nefまたはp17に特異的なCD8+ T細胞はあまり検出されなかった。
【0228】
抗体応答:
図4〜8に示すように、検出される抗体応答は主にp24 (図5), RT (図6)およびNef (図8)に対するものである。抗F4 (図4)応答は一般にp24, RTまたはNef成分のそれぞれに対して観察される応答によく似ており、以下のように特徴付けることができる:
・(i) アデノウイルスを用いて2回または(ii) アデノウイルス/タンパク質/アジュバントの組み合わせを用いて1回免疫化したグループにおいて低い抗体応答〜抗体応答なしが検出された;
・最も高い抗体応答は一般に免疫化から21日目にタンパク質を用いて2回免疫化したグループにて検出された。しかし、このグループにおいては個体間のばらつきが最も高いことも観察された。さらに、抗Nef 血清学については、アデノウイルスを用いて2回その後タンパク質を用いて2回免疫化したグループは他のグループと比べて最も高い応答を示す;
・(i)アデノウイルス/タンパク質/アジュバントの組み合わせを用いて2回または(ii) タンパク質を用いて2回その後アデノウイルスを用いて2回または(iii) アデノウイルスを用いて2回その後タンパク質を用いて2回免疫化したグループにて観察される応答は同程度であり、最後の免疫化から21日目にピークがありその後徐々に減少する。
【0229】
p17に対する抗体応答(図7)は全てのグループにおいて非常に低いか検出不可能なものであった。
【0230】
結論:
全体的に、最も高い抗原特異的細胞性免疫応答は4回の免疫化後、AAPP処理したグループにて観察される。しかし、2回の免疫化後のグループ(すなわち、AA, PPおよび2x組み合わせグループ)と比べて、抗原特異的 CD4およびCD8T細胞応答の両応答の誘導はタンパク質/アデノウイルス/アジュバントの組み合わせを用いて2回免疫化したグループにおいて観察されたのみである。さらに、同レベルのCD4およびCD8T細胞応答がタンパク質/アデノウイルス/アジュバントの組み合わせによる1回の接種後に得られる。さらに、持続性については、タンパク質/アデノウイルス/アジュバントの組み合わせによる2回目の免疫化から112日目に観察される抗原特異的T細胞応答はAAPP処理グループにおける4回目の免疫化から112日目に観察される当該応答と同程度であった。最後に、タンパク質/アデノウイルス/アジュバントの組み合わせによる2回の免疫化が、アジュバント化したタンパク質を用いて2回免疫化したグループ、すなわち最も高い抗体応答を生じるグループにて得られる抗体応答と同程度の抗体応答を得るために必要であると考えられる。
【0231】
(実施例2)
Pan7GRN アデノウイルスおよびF4タンパク質/アジュバント Bを一緒に製剤化して免疫化したマウスにおける免疫原性試験
一グループあたり9匹のCB6F1系統のマウスを用いた。マウスを、F4タンパク質 (ヒト用量の1/10量、すなわち9μgを接種した)とPan7GRN(10 x 108 ウイルス粒子)を 50μLのアジュバント Bまたはその希釈物(1/2, 1/4または1/10)中に一緒に製剤化してそれを用いて1回免疫化した。Nef, p17, p24またはRTペプチドのいずれかのプールに対するCD4およびCD8 細胞性応答を免疫化から21日目に調べた (各グループにつき3つの脾臓からなる3つのプール)。
【0232】
以下の内容を実施した:
細胞性応答 (図9):
・p24, RT, Nefまたはp17のペプチドプールを用いて脾臓細胞を一晩再刺激した後、表面および細胞内サイトカイン染色後フローサイトメトリーにて測定。脾臓細胞は分析用にプールした(一グループにつき3つの脾臓からなる3つのプール) 。
【0233】
結果:
図9に示す結果はp24またはRTペプチドのプールを用いて再刺激した後に観察される細胞性応答を示す。
【0234】
X 軸の表示は以下を示す:
Adj B -9μgF4/ 108vpPan7GRN/ 未希釈アジュバント Bを用いて免疫化したマウス
1/2 Adj B -9μgF4/ 108vpPan7GRN/ 1/2希釈したアジュバント Bを用いて免疫化したマウス
1/4 Adj B -9μgF4/ 108vpPan7GRN/ 1/4希釈したアジュバント Bを用いて免疫化したマウス
1/10 Adj B -9μgF4/ 108vpPan7GRN/ 1/10希釈したアジュバント Bを用いて免疫化したマウス
Naive - 未処理のマウス(免疫化していない)
結果よりCD4応答(図9, 左のパネル)およびCD8応答(図9, 右のパネル)が主にp24およびRTに対して観察されたこと、およびRTに特異的なCD8T細胞応答がp24に特異的な応答よりも低いことが示される。さらに、結果より、未希釈アジュバント Bまたはその1/2希釈液を用いて免疫化したグループにおける免疫化後21日目のp24およびRTに対するCD4応答が同程度であることが示される。これらのCD4応答はアジュバントを1/4に希釈した場合には減少する傾向にある。アジュバント Bを1/10に希釈した場合、観察されるCD4応答は1/4希釈のアジュバント Bを用いて免疫化したグループの応答と同程度である。p24に対する抗CD8応答はアジュバントが1/2に希釈されているかいないかにかかわらず、同程度である。しかし、アジュバント B が1/4に、さらに1/10に希釈される場合、応答は減少する。一方、このような傾向は抗RT CD8応答については観察されず、用いたアジュバントの用量に依拠する効果はない。
【0235】
結論:
F4成分に対するCD4+細胞およびCD8+ 細胞は免疫原性ポリペプチド、免疫原性ポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドを含むアデノウイルスベクターおよびアジュバントを含む組成物の単回投与により誘導された(アジュバントが希釈された場合も含む)。アジュバントの希釈による影響は目的とする抗原特異的 CD4またはCD8応答に応じて異なる。特に、観察された最も高い応答はp24に対するものであり、抗p24 CD4およびCD8T細胞応答は、ワクチンと組み合わせて用いたアジュバントの用量と相関する用量依存的な効果を示す。同様の効果は抗RT CD4T細胞応答について観察されるが、上記組み合わせにて用いたアジュバントの用量に関する用量依存的な効果は抗RT CD8T細胞応答についてはあまり明確ではない。最後に、全体的な抗原特異的 CD4およびCD8T細胞応答を考慮し、4つの抗原に対する応答を要約すると、用量範囲が観察され得る。
【0236】
(実施例3)
Pan7GRN またはF4/アジュバント B 連続して、または一緒に、アデノウイルスおよびタンパク質成分を一緒に製剤化して用いて免疫化したニュージーランド白ウサギにおける免疫原性試験
F4/アジュバント Bを用いた免疫化については、ヒト用量、すなわち500μLのアジュバント B中90μgのF4タンパク質を接種した。Pan7GRNを用いた免疫化については、500μLの生理食塩水中10 x 1010または10 x 1012 ウイルス粒子を用いた。アデノウイルスおよびタンパク質成分を一緒に製剤化してそれを用いた免疫化については、500μL のアジュバント B中90μgのF4タンパク質、Pan7 GRNの10 x 1011 ウイルス粒子を用いた。
【0237】
ワクチン接種のスケジュールは以下のとおりであった:

グループ 1 を除いて、一グループあたり3匹のウサギを用いた(グループ 1は2匹のウサギを含む)。
【0238】
以下の内容を実施した:
抗体応答 (各グループの個々の動物に由来する血清を用いてELISAを実施する):
・F4に対する抗体応答
・F4成分 p24, RT, Nefおよびp17に対する抗体応答
リンパ球増殖反応:
リンパ球の増殖を末梢血単核細胞 (密度勾配により全血より単離したもの)によるトリチウム化チミジンの取り込みにより調べた。当該末梢血単核細胞はトリチウム化チミジンの存在下、Nef, p17, p24および/またはRTペプチドのプールを用いてin vitroにて88時間かけて再刺激されたもの(最後の16時間はインキュベートする)。
【0239】
結果:
リンパ球増殖反応:
図10に示すように、最も高いリンパ球増殖反応がタンパク質を用いて2回免疫化したグループにおいて観察される。アデノウイルス/タンパク質/アジュバントの組み合わせを用いて2回免疫化した動物におけるリンパ球増殖応答は当該グループにおける全てのウサギで観察された。当該応答は実際のところ1回の接種の後にピークに達し、アデノウイルス/タンパク質/アジュバントの組み合わせによる3回目の接種の後に1回目の接種後と同程度のレベルまで再び生じた。これは最初の2回の接種が、さらなる同様の接種に対するあらゆる応答を阻害する中和反応を誘導しなかったことを示唆する。その強度において、アデノウイルス/タンパク質/アジュバントの組み合わせを用いて免疫化したウサギにおいて観察される増殖応答は1012 ウイルス粒子のアデノウイルスで1回または2回免疫化した動物において観察される応答に匹敵し、1010 ウイルス粒子のアデノウイルスで1回または2回免疫化した動物における応答よりも高いと考えられた。要するに、アデノウイルス/タンパク質/アジュバントの組み合わせを用いることによって、用いられるべきアデノウイルスの用量を減らすことができることを示唆する。最後に、アデノウイルス/タンパク質/アジュバントの組み合わせによる3回目の接種の後、グループ4にて観察される応答はタンパク質を用いて3回免疫化された動物 (グループ 1)における応答と同程度であった。
【0240】
血清学:
図11に示すように、アデノウイルス/タンパク質/アジュバントの組み合わせを用いて2回免疫化した動物において観察される抗F4 抗体応答の速度はタンパク質を用いて2回免疫化した動物の応答と同程度である: 2回目の接種から7日目に検出されその後徐々に減少する。しかし、強度においては、アデノウイルス/タンパク質/アジュバントの組み合わせを用いて2回免疫化した動物の抗F4応答は、タンパク質を用いて2回免疫化した動物の抗F4応答と比べて、後の時点 (2回目の免疫化から21日および63日)においても高いままである。1010 ウイルス粒子のアデノウイルスを用いて1回免疫化したウサギにおいては、抗F4 抗体応答は観察されない。1012 ウイルス粒子のアデノウイルスで1回免疫化したウサギにおいて、抗F4応答は免疫化から21および63日目に検出されるのみである。当該グループにおいて、免疫化から63日目の 時点 (d77)にて観察される応答の高いばらつきは、異なるF4成分、特にp24およびRT(図12aおよび12bにそれぞれ示される)に対する高い力価を示す一匹の動物(3匹のなかの)より生じる。抗F4 抗体応答は主にp24およびRT、この他にもNefおよびp17を標的とする抗体からなる。
【0241】
結論:
リンパ球増殖および抗体応答は、免疫原性ポリペプチド、免疫原性ポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドを含むアデノウイルスベクターおよびアジュバントを含む組成物の2回の接種後ウサギにおいて誘導し得た。さらに、本発明者らはリンパ球増殖応答が上記組成物の3回目の接種後に再度生じ得るという証拠を有する。最後に、最良の抗体応答 (強度および持続性について)はアデノウイルス/タンパク質/アジュバントの組み合わせにより観察される。
【0242】
(実施例4)
CB6F1マウスに組み合わせとして投与された場合のF4 (コドン最適化されている)/アジュバント BおよびC7−GRNの免疫原性
実験計画
CB6F1マウスを以下に示す様々な組み合わせにより2回(0日目および21日目)免疫化した。F4co/ アジュバント Bは、50μlのアジュバントB中9μgのF4co/動物 (1/10 ヒト用量)および108 ウイルス粒子/動物のC7-GRNウイルスにて用いた。実施例4のF4coとはWO2006/013106 実施例1のコドン最適化法に記載されるように調製されたF4である。
【0243】
組み合わせ
C7-GRN
C7-GRN/ アジュバント B
C7-GRN/F4co
C7-GRN/F4co/ アジュバント B
F4co
F4co/ アジュバント B
アジュバント B
C7空
C7空/ アジュバント B
C7空/F4co
C7空/F4co/ アジュバント B
免疫化のスケジュールおよび免疫応答の分析
免疫化を0日目および21日目に実施した。細胞内サイトカイン染色 (ICS)を21日目、28日目(2回目の免疫化から7日目)、42日目(2回目の免疫化から21日目)および77日目(2回目の免疫化から56日目)実施した。
【0244】
結果
HIV特異的CD4T細胞応答
結果を以下の図面に示す:
図13. HIV-1特異的CD4 T細胞の定量 IFN-γおよび/またはIL-2を分泌するCD3 CD4 T細胞の%を4回の時点にて免疫化する各プロトコルについて示す。末梢血リンパ球 (PBL)をF4配列をカバーするペプチドのプールを用いてex vivoにて刺激し(Brefeldinの添加2時間前から一晩)、サイトカイン産生をICSによって測定した。各値は3匹のマウスの5つのプールに由来する幾何平均である。
【0245】
図14. 2回の免疫化から7日後のF4特異的CD4 T細胞の度数分布 2回の免疫化から7日後のF4特異的循環CD4 T細胞の度数を各プロトコルについて示す。各ドットは3匹のマウスの1つのプールについて得られた値を示す。
【0246】
図15. 2回の免疫化から7日後のF4特異的CD4 T細胞のサイトカイン産生 IL-2および/またはIFN-γを分泌するF4特異的CD4 T細胞の%を3匹のマウスの5つのプールについて示す。F4co/ アジュバント B (A), F4co/ アジュバント B /C7空 (B)およびF4co/ アジュバント B /C7-GRN (C)を用いた免疫化の結果を示す。
【0247】
F4特異的循環CD4 T細胞の度数はF4co/ アジュバント Bの組み合わせを用いた2回の免疫化から21日目に2.82%に達し、免疫化から56日後に0.91%に減少する (図13)。C7-GRNウイルスのみからなる2回の接種により最後の免疫化から21日後に0.52%のF4特異的循環CD4 T細胞を生じ、アジュバント(アジュバント B)の存在によりこの応答は変化しない。
【0248】
F4co/ アジュバント Bミックスに加え空ベクターC7または組み換えC7-GRNウイルスの存在はF4特異的CD4T細胞応答の度数を増加させないし、また妨げることもない (最後の免疫化から21日後においてそれぞれ3.58%および2.82%)。統計学的分析が実施されていなくても、集団分布はF4特異的CD4T細胞応答の強度が3つのプロトコル、すなわちF4co/ アジュバント B、F4co/ アジュバント B /C7空およびF4co/ アジュバント B /C7-GRN の間で異ならないことを示唆する (図14)。
【0249】
予測したとおり、アジュバント Bを伴わないF4coの投与により、かなりの量のF4特異的CD4 T細胞が誘導されることはない。
【0250】
サイトカイン産生のプロファイルはF4co/ アジュバント Bを用いて免疫化した後、F4特異的CD4 T細胞がIFN-γおよびIL-2の両方を分泌することを示す。免疫化プロトコルにC7空またはC7-GRNを加えても当該プロファイルは変化しない。
【0251】
結果として、これらのデータはF4co/ アジュバント Bの組み合わせを用いて免疫化した後に最も高いF4特異的CD4T細胞応答が得られることおよびC7-GRNウイルスの存在は当該応答を改善も変化もさせないことを示唆する。
【0252】
抗原特異的 CD8T細胞応答
結果を以下の図面に示す:
図16. HIV-1特異的CD8 T細胞の定量 IFN-γおよび/またはIL-2を分泌するCD3 CD8 T細胞の%を4つの時点にて免疫化する各プロトコルについて示す。末梢血リンパ球 (PBL) をF4をカバーするペプチドのプールを用いてex vivoにて刺激し(Brefeldinを添加する2時間前から一晩)、サイトカイン産生をICSにより測定した。各値は3匹のマウスの5つのプールの幾何平均である。
【0253】
図17. 2回の免疫化から7日後のF4特異的CD8 T細胞のサイトカイン産生 IL-2および/またはIFN-γを分泌するF4特異的CD8 T細胞の%を3匹のマウスの5つのプールについて示す。C7-GRN (A), C7-GRN/ アジュバント B (B)およびC7-GRN+F4co/ アジュバント B (C)による免疫化の結果を示す。
【0254】
1回の接種の後、組み換えベクターC7-GRNはF4特異的循環CD8 T細胞の高い度数を誘導する(総CD8 T細胞の9,70%、免疫化から21日後) (図4)。2回目の接種はF4特異的CD8T細胞応答を高めない。F4co/ アジュバント Bの組み合わせは低いまたは検出できない程度のF4特異的CD8 T細胞を誘導し、この組み合わせをC7-GRNに加えても、F4特異的CD8T細胞応答を改善も損ないもしない。
【0255】
アジュバント B をC7-GRNに加えた場合、F4特異的CD8T細胞応答が遅れるが、2回目の免疫化から21日後にはC7-GRNのみまたはC7-GRN/F4co/ アジュバント Bの組み合わせを用いた場合と同程度のレベルに達する。
【0256】
F4特異的CD8 T細胞は、C7-GRNベクターを単独で接種しようと、F4co/ アジュバント Bと組み合わせて接種しようと、主にIFN-γを分泌する(図17)。
【0257】
興味深いことに、F4特異的CD8T細胞応答は最後の免疫化から56日後まで減少することなく持続し、これはC7ベクターが高いかつ持続性のCD8 T細胞を誘発することを示唆する。
【0258】
結論
F4co/アジュバント Bワクチンは、CB6F1マウスにおいて高度数の多機能性HIV特異的CD4 T細胞を誘導するが、HIV特異的CD8 T細胞は誘導しない。同じ動物モデルにおいて、Gag, RTおよびNefを発現する組み換えアデノウイルス C7 (Ad C7-GRN)は高い抗原特異的 CD8T細胞応答を誘導するが、抗原特異的 CD4 T細胞応答は低いか検出できない。F4/ アジュバント BおよびAd C7-GRNの組み合わせは、同時に抗原特異的 CD4およびCD8 T細胞を誘発する。3つの成分、すなわちF4co、アジュバントBおよびC7-GRNの組み合わせは、最も高いレベルの抗原特異的CD4およびCD8 T細胞を同時に誘発する。F4/ アジュバント BおよびAd C7-GRNを組み合わせることによって、細胞性免疫応答に関する両細胞の強度について付加的な効果を有する。抗原特異的 CD8T細胞応答の機能に対する抗原特異的 CD4T細胞応答の影響については本モデルにおいて未だ調べられていない。
【0259】
(実施例 5)
単独で投与された場合のPlasmodium falciparum 由来のCSP タンパク質のチンパンジーアデノウイルス C7発現CS2 構築物 (C7-CS2) の免疫原性
実験計画:
CB6F1マウスをCSPマラリア抗原を発現するC7 チンパンジーアデノウイルス の用量範囲 (1010, 109 および 108 ウイルス粒子)を用いて1回筋肉内にて免疫化し、CSP特異的(C末端およびN末端) CD4およびCD8T細胞応答をICS (細胞内サイトカイン染色)により接種から21, 28および35日後に測定した。
【0260】
CSP特異的CD4T細胞応答
結果を以下の図面に示す:
図18. CSP特異的CD4 T細胞の定量 IFN-γおよび/またはIL-2を分泌するCD4 T細胞の%を3つの時点にて、免疫化に関する各プロトコルについて示す。末梢血リンパ球 (PBL)をCSPのN末端またはCSPのC末端配列をカバーするペプチドのプールを用いてex vivoにて刺激し(添加2時間前から一晩)、サイトカイン産生をICSにより測定した。C末端およびN末端ペプチドプールに対する応答を集計した。各値は4匹のマウスの5つのプールの平均値である。
【0261】
図19. CSP特異的CD8 T細胞の定量 IFN-γおよび/またはIL-2を分泌するCD8 T細胞の%を3つの時点にて、免疫化に関する各プロトコルについて示す。末梢血リンパ球 (PBL)をCSPのN末端またはCSPのC末端配列をカバーするペプチドのプールを用いてex vivoにて刺激し(Brefeldinの添加2時間前から一晩)、サイトカイン産生をICSにより測定した。C末端およびN末端ペプチドプールに対する応答を集計した。各値は4匹のマウスの5つのプールの平均値である。
【0262】
これらの結果は、1010および109 用量のC7-CS2が共に同レベルのCSP特異的CD4T細胞応答 (ピークは0.5%)および同レベルのCSP特異的CD8T細胞応答 (ピークは 8%)を惹起することを示す。用量1010のC7-CS2を後の実験においては選択し、RTS,Sとの組み合わせにおけるC7-CS2の免疫原性を試験した(以下を参照のこと)。
【0263】
(実施例6)
組み合わせとして投与した場合のCB6F1マウスにおけるC7-CS2およびRTS,Sの免疫原性
実験計画:
CB6F1マウスを50μlのアジュバント B中 マラリアワクチン候補RTS,S(5μg)の組み合わせ(以下の図面中P-P-Pとして記載)または50μl のアジュバント B中RTS,S (5μg)およびC7-CS2(1010 ウイルス粒子)の組み合わせ (以下の図面中 C-C-Cとして記載)のいずれかを用いて3回(0日目, 14日目および28日目)筋肉内にて免疫化した。CSP特異的( C末端およびN末端) CD4およびCD8T細胞応答を以下の時点にて測定した:
・2回の免疫化から7日後
・3回の免疫化から7, 21, 35および49日後
CSP特異的T細胞応答をICS (細胞内サイトカイン染色)によって測定した。
【0264】
免疫化した動物に由来する血清におけるCSP特異的抗体応答についても、3回目の免疫化から 14および42日後にELISAによって測定した。
【0265】
CSP特異的CD4T細胞応答
結果を以下の図面に示す:
図20. CSP(N末端)特異的CD4 T細胞の定量 IFN-γおよび/またはIL-2を分泌するCD4 T細胞の%を5つの時点にて、免疫化に関する各プロトコルについて示す。末梢血リンパ球 (PBL)をCSPのN末端配列をカバーするペプチドのプールを用いてex vivoにて刺激し(Brefeldinの添加2時間前から一晩)、サイトカイン産生(IFNgおよび/またはIL-2)をICSにより測定した。各値は7匹のマウスの4つのプールの平均値である。
【0266】
図21. CSP( C末端)特異的CD4 T細胞の定量 IFN-γおよび/またはIL-2を分泌するCD4 T細胞の%を5つの時点にて、免疫化に関する各プロトコルについて示す。末梢血リンパ球(PBL)をCSPのC末端配列をカバーするペプチドのプールを用いてex vivoにて刺激し(Brefeldinの添加2時間前から一晩)、サイトカイン産生(IFNgおよび/またはIL-2)をICSにより測定した。各値は7匹のマウスの4つのプールの平均値である。
【0267】
これらの結果は、組み合わせ [RTS,S + C7-CS2 1010 +アジュバント B] を用いた3回の接種により免疫化したマウスが、RTS,S+アジュバント Bの3回の接種により免疫化したマウスよりも高い抗原特異的 CD4T細胞応答 (CSPのC末端およびN末端部分に対する)を示すことを示す。
【0268】
CSP特異的CD8T細胞応答
結果を以下の図面に示す:
図22. CSP(N末端)特異的CD8 T細胞の定量 IFN-γおよび/またはIL-2を分泌するCD8 T細胞の%を5つの時点にて、免疫化に関する各プロトコルについて示す。末梢血リンパ球 (PBL) をCSPのN末端配列をカバーするペプチドのプールを用いてex vivoにて刺激し(Brefeldinの添加2時間前から一晩)、サイトカイン産生(IFNgおよび/またはIL-2)をICSにより測定した。各値は7匹のマウスの4つのプールの平均値である。
【0269】
図23. CSP( C末端)特異的CD8 T細胞の定量 IFN-γおよび/またはIL-2を分泌するCD8 T細胞の%を5つの時点にて、免疫化に関する各プロトコルについて示す。末梢血リンパ球 (PBL) をCSPのC末端配列をカバーするペプチドのプールを用いてex vivoにて刺激し(Brefeldinの添加2時間前から一晩)、サイトカイン産生(IFNgおよび/またはIL-2)をICSにより測定した。各値は7匹のマウスの4つのプールの平均値である。
【0270】
これらの結果は、組み合わせ [RTS,S + C7-CS2 1010 + アジュバント B ] を用いた3回の接種により免疫化したマウスが、RTS,S+アジュバント Bの3回の接種により免疫化したマウスよりも高い抗原特異的 CD8T細胞応答(CSPのC末端およびN末端部分に対する)を示すことを示す。
【0271】
CSP特異的抗体応答
結果を以下の図面に示す:
図24. CSP特異的抗体力価の定量 3回目の免疫化から14および42日後にマウスから血清を採取した。これら個々の血清のそれぞれについて、抗CSP抗体力価をELISAによって測定した。示されるデータは幾何平均抗体力価 + 95%信頼区間である。
【0272】
これらの結果は、組み合わせ [RTS,S + C7-CS2 1010 + アジュバント B ]を用いた3回の接種により免疫化したマウスが、RTS,S+アジュバント Bの3回の接種により免疫化したマウスと同程度のCSP特異的抗体力価を示すことを示す。
【0273】
結論
RTS,S/アジュバント Bワクチンは高度数のCSP C末端特異的CD4 T細胞を誘導するが、CSP N末端特異的 CD4 T細胞は誘導しない。さらに、RTS,S/アジュバント Bワクチンは、低いCSP C末端およびN末端特異的CD8 T細胞を誘導するか、検出可能な程度に誘導しない。同じ動物モデルにおいて、CSPを発現する組み換えアデノウイルス C7は高いCSP(C末端およびN末端)特異的CD8T細胞応答および低いCSP(C末端およびN末端)特異的CD4T細胞応答を誘導する。RTS,S/ アジュバント BおよびAd C7-CS2の組み合わせは、高レベルのCSP(C末端およびN末端)特異的CD4およびCD8T細胞を同時に惹起する。RTS,S/ アジュバント BおよびAd C7-CS2を組み合わせることによって、T細胞応答に関する両細胞の強度について付加的な効果を有する。最後に、RTS,S/ アジュバント BおよびAd C7-CS2の組み合わせは、高レベルのCSP特異的抗体応答を惹起し、この応答はRTS,S/アジュバント Bによって誘導される応答と同程度である。
【0274】
配列














































本明細書において引用される全ての参考文献(特許および特許出願を含む)は本明細書中においてその全体が参照により援用される。
本明細書および特許請求の範囲にわたって、特記しない限り「含む」という用語は、示された整数、ステップ、整数群またはステップ群を含むだけでなく、その他の整数、ステップ、整数群またはステップ群をグループも排除しないこと意味すると理解されるであろう。
【0275】
本明細書および特許請求の範囲はその後の出願における優先権主張の基礎として用い得る部分を形成する。後の出願における特許請求の範囲は本明細書中に記載されるいずれかの特性または特性の組み合わせに関するものであり得る。それらは、生成物、組成物、方法または使用の形態であるかもしれないし、一例として限定されること無く、以下の特許請求の範囲を含んでも良い。
【0276】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原体に対する免疫応答を惹起する方法であって、(i)該病原体に由来する第一の免疫原性ポリペプチドを一以上;(ii) 該病原体に由来する一以上の第二の免疫原性ポリペプチドをコードする一以上の異種ポリヌクレオチドを含むアデノウイルスベクターを一以上;および(iii) アジュバントを投与する工程を含み、ここで一以上の第一の免疫原性ポリペプチド、一以上のアデノウイルスベクターおよびアジュバントは併用投与される、上記方法。
【請求項2】
病原体に対する免疫応答を惹起する方法であって、(i)アジュバントと一緒に製剤化されている該病原体に由来する一以上の第一の免疫原性ポリペプチド;および(ii) 該病原体に由来する一以上の第二の免疫原性ポリペプチドをコードする一以上の異種ポリヌクレオチドを含む一以上のアデノウイルスベクターを投与する工程を含み、ここで一以上の免疫原性ポリペプチドおよびアジュバントならびに一以上のアデノウイルスベクターは併用投与される、上記方法。
【請求項3】
哺乳動物において病原体特異的 CD4+および/またはCD8+ T細胞および/または抗体の産生を刺激するための方法であって、該哺乳動物に (i) 病原体に由来する一以上の第一の免疫原性ポリペプチド;(ii) 該病原体に由来する一以上の第二の免疫原性ポリペプチドをコードする一以上の異種ポリヌクレオチドを含む一以上のアデノウイルスベクター;および (iii) アジュバントを投与する工程を含み、ここで一以上の第一の免疫原性ポリペプチド、一以上のアデノウイルスベクターおよびアジュバントは例えば免疫学的有効量にて併用投与される、上記方法。
【請求項4】
病原体に対する免疫応答を惹起する方法であって、(a) (i) 該病原体に由来する一以上の第一の免疫原性ポリペプチド;(ii) 該病原体に由来する一以上の第二の免疫原性ポリペプチドをコードする一以上の異種ポリヌクレオチドを含む一以上のアデノウイルスベクター;および (iii) アジュバントを投与する工程であって、ここで一以上の免疫原性ポリペプチド、一以上のアデノウイルスベクターおよびアジュバントは併用投与される上記工程;ならびに (b) 必要に応じて工程 (a)を繰り返す工程からなる、上記方法。
【請求項5】
病原体に対する免疫応答を惹起する方法であって、 (i) 該病原体に由来する一以上の第一の免疫原性ポリペプチド;(ii) 該病原体に由来する一以上の第二の免疫原性ポリペプチドをコードする一以上の異種ポリヌクレオチドを含む一以上のアデノウイルスベクター;および (iii) アジュバントを投与する工程を含み、ここで一以上の第一の免疫原性ポリペプチド、一以上のアデノウイルスベクターおよびアジュバントは併用投与される方法であって、プライミング量の免疫原性ポリペプチドまたは免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを投与する工程を含まない、上記方法。
【請求項6】
一以上の免疫原性ポリペプチド、一以上のアデノウイルスベクターおよびアジュバントが一緒に製剤化されている、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
病原体特異的CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞ならびに抗体の産生が刺激される、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
(i) 病原体に由来する一以上の第一の免疫原性ポリペプチド;(ii) 該病原体に由来する一以上の第二の免疫原性ポリペプチドをコードする一以上の異種ポリヌクレオチドを含む一以上のアデノウイルスベクター;および(iii) アジュバントを含む、ワクチン組成物。
【請求項9】
前記一以上の第一の免疫原性ポリペプチドの一以上が前記一以上の第二の免疫原性ポリペプチドの一以上と実質的に同じである、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項10】
前記一以上の第一の免疫原性ポリペプチドの一以上が、前記一以上の第二の免疫原性ポリペプチドの一以上に含まれる抗原と実質的に同じ抗原を少なくとも1つ含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項11】
一以上の第一の免疫原性ポリペプチドが少なくとも1つのT細胞エピトープを含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項12】
一以上の第一の免疫原性ポリペプチドが少なくとも1つのB細胞エピトープを含む、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項13】
前記一以上の第一の免疫原性ポリペプチドの一以上および前記一以上の第二の免疫原性ポリペプチドの一以上が、一以上の同一のB細胞および/またはT細胞エピトープを共有する、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項14】
前記一以上の第一の免疫原性ポリペプチドの一以上が、前記一以上の第二の免疫原性ポリペプチドの一以上と実施的に同一でもなく、該一以上の第二の免疫原性ポリペプチドの一以上と共通の抗原を含むものでもない、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項15】
一以上のアデノウイルスベクターがヒトアデノウイルスに由来する、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項16】
ヒトアデノウイルス血清型がAd1, Ad2, Ad4, Ad5, Ad6, Ad11, Ad 24, Ad34およびAd35より選択される、請求項15記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項17】
一以上のアデノウイルスベクターが非ヒト霊長類アデノウイルスに由来する、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項18】
非ヒト霊長類アデノウイルス血清型がチンパンジーアデノウイルス血清型のPan5, Pan6, Pan7およびPan9より選択される、請求項17記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項19】
病原体がHIVである、請求項1〜18のいずれか1項記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項20】
免疫原性ポリペプチドがEnv, Nef, GagおよびPolならびにそれらの免疫原性誘導体およびそれらの免疫原性断片より選択されるHIV由来の抗原を含む、請求項19記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項21】
第一の免疫原性ポリペプチドがp24-RT-Nef-p17である、請求項20記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項22】
第二の免疫原性ポリペプチドがGag-RT-Nefである、請求項20または21記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項23】
病原体がPlasmodium falciparumおよび/またはPlasmodium vivaxである、請求項1〜18のいずれか1項記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項24】
免疫原性ポリペプチドがスポロゾイト周囲 (CS) タンパク質, MSP-1, MSP-3, AMA-1, LSA-1, LSA-3およびそれらの免疫原性誘導体またはそれらの免疫原性断片より選択されるPlasmodium falciparumおよび/またはPlasmodium vivax に由来する抗原を含む、請求項23記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項25】
免疫原性ポリペプチドがハイブリッドタンパク質RTSである、請求項24記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項26】
RTSがRTS,Sとして公知の混合粒子の形態で提示される、請求項25記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項27】
ポリヌクレオチドによってコードされる免疫原性ポリペプチドがPlasmodium falciparum に由来するCSタンパク質またはその免疫原性断片である、請求項24〜26のいずれか1項記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項28】
病原体がヒト型結核菌である、請求項1〜18のいずれか1項記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項29】
アジュバントがTh1応答の選択的促進剤を含む、請求項1〜28のいずれか1項記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項30】
アジュバントがQS21および/または3D-MPLおよび/またはCpGを含む、請求項29記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項31】
アジュバントがQS21および3D-MPLを含む、請求項30記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項32】
アジュバントが水中油型エマルジョンを含む、請求項1〜31のいずれか1項記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項33】
アジュバントがリポソームを含む、請求項1〜31のいずれか1項記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項34】
哺乳動物において免疫応答を刺激する方法であって、請求項8〜33のいずれか1項記載のワクチン組成物の免疫学的有効量を被験体に投与することを含む、上記方法。
【請求項35】
哺乳動物において免疫応答を刺激するための薬剤の製造における請求項8〜33のいずれか1項記載のワクチン組成物の使用。
【請求項36】
哺乳動物における免疫応答の刺激に使用するための請求項8〜33のいずれか1項記載のワクチン組成物。
【請求項37】
(i) 病原体に由来する一以上の第一の免疫原性ポリペプチド;(ii) 該病原体に由来する一以上の第二の免疫原性ポリペプチドをコードする一以上の異種ポリヌクレオチドを含む一以上のアデノウイルスベクター;および(iii) アジュバントを含むキット。
【請求項38】
(i) 病原体に由来する一以上の第一の免疫原性ポリペプチドおよびアジュバント;ならびに(ii)該病原体に由来する一以上の免疫原性ポリペプチドをコードする一以上の異種ポリヌクレオチドを含む一以上の第二のアデノウイルスベクターを含むキット。
【請求項39】
第一の免疫原性ポリペプチドがp24-RT-Nef-p17を含み、アジュバントがリポソーム中の3D-MPLおよびQS21を含み(本明細書中におけるアジュバントB)、アデノウイルスベクターが必要に応じてコドン最適化されている、免疫原性ポリペプチド Gag-RT-Nefをコードするポリヌクレオチドを含むチンパンジーアデノウイルス血清型 Pan7ベクターを含む、請求項1〜38のいずれか1項記載の方法、ワクチン、キットまたは使用。
【請求項40】
一または二または全てのポリペプチド、アデノウイルスベクターおよびアジュバント成分が医薬的に受容可能な賦形剤と組み合わされている、請求項1〜39のいずれか1項記載の方法、ワクチン、キットまたは使用。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2010−520177(P2010−520177A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551219(P2009−551219)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052448
【国際公開番号】WO2008/107370
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】