新規植物およびその入手法
【課題】植物中の正常なデンプン合成経路を変化させるゲノム成分を有するトランスジェニック植物または突然変異した植物の提供。
【解決手段】新しい形のデンプンを有意の量で生成する遺伝子型を有する植物、特に2種類またはそれ以上の野生型遺伝子のヘテロ接合の遺伝子型(例えば、Aa/Bb)を含む胚および該遺伝子のヘテロ接合の遺伝子型(例えば、AAa/BBbまたはAAa/bbBまたはaaA/BBbまたはaaA/bbB)を有する内胚乳を有する穀粒、並びにそれから生産されるデンプン。
【解決手段】新しい形のデンプンを有意の量で生成する遺伝子型を有する植物、特に2種類またはそれ以上の野生型遺伝子のヘテロ接合の遺伝子型(例えば、Aa/Bb)を含む胚および該遺伝子のヘテロ接合の遺伝子型(例えば、AAa/BBbまたはAAa/bbBまたはaaA/BBbまたはaaA/bbB)を有する内胚乳を有する穀粒、並びにそれから生産されるデンプン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物中の正常なデンプン合成経路を変化させるゲノム成分を有するトランスジェニック植物または突然変異した植物に関する。更に詳しくは、本発明は、新しい形のデンプンを有意の量で生成する遺伝子型を有する植物に関する。特に、本発明は、2種類またはそれ以上の野生型遺伝子のヘテロ接合の遺伝子型(例えば、Aa/Bb)を含む胚および該遺伝子のヘテロ接合の遺伝子型(例えば、AAa/BBbまたはAAa/bbBまたはaaA/BBbまたはaaA/bbB)を有する内胚乳を有する穀粒並びにそれから生産されるデンプンに関する。
【0002】
このような穀粒は、少なくとも1種類の遺伝子の劣性ホモ接合の遺伝子型およびもう一つの遺伝子の野生型(例えば、aa/BB)を有する植物に、少なくとも1種類の他の遺伝子の劣性ホモ接合の遺伝子型および他の遺伝子の野生型(例えば、AA/bb)を有する別の植物からの花粉を授粉することによって生産される。
【背景技術】
【0003】
大部分の植物は、デンプンを生産し且つ貯蔵する。これらの植物は、デンプン生産のためのデンプン合成経路を有する。生産されたデンプンの量は、植物の種類によって異なる。最も一般的に知られるデンプン生産性植物は穀物穀粒である。これらの穀物としては、コメ、トウモロコシ、モロコシ、オオムギ、コムギ、ライムギおよびオートムギがある。更に、サツマイモを含めたイモ類およびバナナのようないくつかの果実がデンプン生産性として知られている。
【0004】
デンプンは、葉の光合成の際の炭素固定の重要な最終生成物であり且つ種子および果実の重要な貯蔵産物である。経済的条件で、コムギ、コメおよびトウモロコシの3種類の穀粒作物の食用部分によって生産されるデンプンは、熱量として計算された世界の食糧の約3分の2を与える。
【0005】
植物からのデンプンは様々な方法で用いられる。例えば、それを抽出し、そして料理用および食品加工用に用いることができる。デンプンは、穀粒すなわち植物中にあり且つ動物およびヒトの消費用に用いられうる。デンプンはまた、アルコールを加工する蒸留法において用いることができ、例えば、デンプンをエタノールに転化することができる。更に、デンプンは、高フルクトースシロップおよび他の産業用成分に転化することができる。
【0006】
デンプンは、辞書においては、接着剤、サイズ剤、食品、化粧品、医薬品等で用いられる化学的に複雑な炭水化物である粒状固体として定義されている。より一般的には、デンプンは、アミロースおよびアミロペクチンから成る。アミロースおよびアミロペクチンは、色素体区分(光合成細胞における葉緑体または非光合成細胞におけるアミロプラスト)で合成される。種々の植物は、異なった比率のアミロペクチンおよびアミロースを生産する。更に、アミロペクチンの種々の分岐パターン並びにアミロースおよびアミロペクチン鎖の種々の鎖長は、種々のデンプン性状を生じさせる。例えば、アミロースおよびアミロペクチンの微細構造は、種々の植物において異なるので、分岐パターンおよび鎖長はかなり異なり、種々の用途で有用である新しい且つ新規な性状をもたらす。これまでに、独特の性状を有するデンプンを製造する4種類の方法、(i)種々の植物種から抽出されたデンプンを用いること、(ii)特定の植物の突然変異系統から抽出されたデンプンを用いること、(iii)化学的に変性された天然および突然変異デンプンを用いること、および(iv)物理的に変性された天然および突然変異デンプンを用いることがあった。いずれの場合にも、新しいデンプンは、新しいデンプン種によって与えられる独特の性状ゆえに有益であった。
【0007】
植物中の突然変異遺伝子がデンプンの性状に影響を与えることは知られている。トウモロコシにおけるデンプン関連の種々の突然変異遺伝子が確認されており、クローン化されているものもある。これらの突然変異遺伝子を、トウモロコシ穀粒の物理的外観(表現型)またはデンプンの性状によって命名した。これらの劣性突然変異遺伝子としては、ワクシー(waxy)(wx)、糖質(sugary)(su)[糖質−1(su1)、糖質−2(su2)、糖質−3(su3)、糖質−4(su4)を含むが、これらに限定されない]、艶なし(dull)(du)、アミロースエキステンダー(amyloseextender)(ae)、角質(horny)(h)、縮み(shrunken)(sh)[縮み−1(sh−1)、縮み−2(sh−2)を含むが、これらに制限されない]がある。これらの劣性遺伝子突然変異体の多くは、デンプン合成経路において既知の酵素のイソ型を生産する。これらの遺伝子の劣性突然変異対立遺伝子は、植物においてホモ接合である場合またはトランスジェニック植物において十分な量で発現される場合、該経路において一つの酵素の特定のイソ型の活性の完全なまたはほぼ完全な低下(以下、酵素イソ型活性の完全な低下と定義する)を引き起こす。デンプン合成経路におけるこの変化は、種々の性状を有するデンプンの生成を引き起こす。
【0008】
異なる種類のデンプンを生産するいくつかの作物品種は知られている。上質の種類のデンプンは、特定の加工法または特定の最終用途を含めたいくつかの目的に適するようになる。天然に存在するトウモロコシ突然変異体は、各種食品および他の用途において用いるのに適当な異なった微細構造を有するデンプンを生産する。既知の突然変異体は変化したデンプンを生産するが、これらの系統の多くは、作物育種および/または農場経営者の目的には不適当である。例えば、それらは、収量が比較的少ないことがあるし、および/または加工するのが難しいし、および/または発芽が不十分であることがある。
【0009】
種々のデンプンを生じるために、単一および二重突然変異植物を育種した。単一突然変異体は、一つの劣性突然変異遺伝子のホモ接合である植物である。例えば、ワクシートウモロコシ、ワクシーコメ、ワクシーオオムギおよびワクシーモロコシは、ホモ接合突然変異ワクシー(wx)遺伝子を有する。ワクシー遺伝子型からのデンプンはアミロースを含まないかまたは極めて少量しか含まないが、アミロースエキステンダー(ae)として知られる別の突然変異は、高アミロースのデンプンを生じる。二重突然変異体は、二つの劣性突然変異遺伝子のホモ接合(または完全な発現)を有する1種類の植物である。例えば、wxfl1二重突然変異体が米国特許第4,789,738号明細書で示されている。多数の他の新規なデンプンは、他のデンプン特許で与えられており、そこでは、二重または三重突然変異体が生産されている(例えば、各種食品において用いるのに適当な異なった微細構造を有するデンプンを生産する天然に存在するトウモロコシ突然変異体を記載している米国特許出願第4789557号明細書、同第4790997号明細書、同第4774328号明細書、同第4770710号明細書、同第4798735号明細書、同第4767849号明細書、同第4801470号明細書、同第4789738号明細書、同第4792458号明細書および同第5009911号明細書)。本発明は、変化したデンプンを生産し且つ二重または三重突然変異体を必要としないので、これらの出願から考えると、本発明は極めて意外である。
【0010】
正常なデンプンは、(人為的に)化学的に変性されていない、またはデンプン合成経路を調節する予想の遺伝子(野生型)を有する植物から生産されるデンプンとして定義される。簡単に解釈すると、二重の小文字、例えば、aaは、ホモ接合劣性突然変異遺伝子を意味し、二重の大文字、例えば、AAは、ホモ接合の非突然変異遺伝子(野生型)を意味し、そして小文字一つと大文字一つ、例えば、Aaは、一つが突然変異体で一つが非突然変異体の非ホモ接合の遺伝子対を意味するものである。同じ大きさの異なる文字は異なる遺伝子を意味し、「aa/bb」は二重突然変異体であり、「aa/bB」は、植物のゲノム中の単一ホモ接合突然変異遺伝子およびヘテロ接合突然変異遺伝子であると考えられる。本出願の目的に対して、斜線の片側の任意の三文字の順序は交換することができ、遺伝子を与えた親を規定するものではない。例えば、AAa/bbBは、aAA/bBb、AaA/Bbb、AaA/bBb,aAA/Bbb等と同等であると定義される。
【0011】
トウモロコシ植物およびその胚は二倍体であるが、トウモロコシ内胚乳は三倍体である。内胚乳遺伝子型は、雌性植物部分に由来する2遺伝子量および花粉すなわち雄性植物部分に由来する1遺伝子量を有する。したがって、単一突然変異植物「aa」を雌性として用い且つ非突然変異植物「AA」雄性に対して交雑する場合、この雌性植物の穀粒の内胚乳は「aaA」であろう。非突然変異植物「AA」を突然変異植物「aa」に対して、該非突然変異体を雌性として用いて交雑する場合、2遺伝子量は雌性に由来し且つ1遺伝子量が雄性植物に由来するので、雌性植物の穀粒の内胚乳は「Aaa」であろう。古典的教示は、突然変異遺伝子が劣性であり且つ非突然変異体が優性であるということであり、したがって、内胚乳中に以下の遺伝子量、すなわち、「aaA」または「AAA」または「AAa」を有する植物によって生産されたデンプンは、期待された量の正常なデンプンとなる。しかしながら、雄性として働くホモ接合突然変異植物「aa」に対して交雑された雌性として働くホモ接合突然変異植物「aa」の内胚乳は、遺伝子量「aaa」を有する内胚乳となる。この内胚乳は、正常なデンプンとは異なる性状を有するデンプンを生じる。同様に、「aaa/bbb」である内胚乳を有する二重突然変異体からのデンプンは、正常なデンプンとのデンプン性状の違いを示す。これらのデンプンの違いは、それらが、化学的に変性されたデンプンに代わりうるし、或いは食品と一緒に若しくは中にまたはアルコール製造における穀粒としてまたは一般的なデンプン産業用途において用いることができるという点で有用である。
【0012】
明らかに、デンプンの種々の物理的性質を有するデンプンを有する穀粒の生産は、2種類の突然変異した植物を、両方の遺伝子の劣性ホモ接合である穀粒を生じるように交雑することを必要とする。突然変異植物は、標準的な植物よりも予測性の度合いが低い。
【0013】
二重突然変異雑種および/または同系繁殖体(inbred)および若干の単一突然変異体からの穀粒の生産およびデンプンの抽出には問題が頻発している。生産されるデンプンの量は、通常、非突然変異植物によって生産されるデンプンの量よりも少なく、更に、デンプン粒の大きさおよび/またはデンプン粒保全性が低下している。作物中で生産されたデンプンの量が比較的低い、構造的に変化したデンプンを生産する既知の二重突然変異系統によるこの問題は、種子の発芽能力を不十分にるすことがある。更に、種子の低下したデンプンの収量は、突然変異が、細胞の正常なデンプン合成機能を破壊させるので、避けられないと考えられる。収量の有意の減損または低下したデンプン粒の大きさ若しくは保全性を伴うことなく、構造的に変化したデンプンまたは変化した性状を有する穀粒を生産する方法がなお必要とされている。
【発明の開示】
【0014】
発明の概要
本発明の第一の目的は、二重突然変異同系繁殖体の交雑を必要としない、複合糖質含量の変化した穀粒を有する雑種植物を発生させる方法を提供することである。
【0015】
本発明の目的は、変化したデンプン性状を有する穀粒を生産する植物を提供することである。
【0016】
本発明のもう一つの目的は、変化したデンプン性状を有する穀粒を生産するトランスジェニック植物を提供することである。
【0017】
本発明の更にもう一つの目的は、変化したデンプンおよび関連した突然変異植物が生産するよりも多量のデンプン両方を生産するトウモロコシ植物を提供することである。
【0018】
本発明の更にもう一つの目的は、植物のデンプン合成経路において特定の酵素の少なくとも2種類のイソ型の活性を不完全に低下させる遺伝子を含む新しい植物を提供することである。
【0019】
本発明のもう一つの目的は、遺伝子型「AAa/BBbまたはAAa/bbBまたはaaA/BBbまたはaaA/bbB」を有する内胚乳を有するトウモロコシ植物を提供することである。
【0020】
本発明の更に別の目的は、以下の内胚乳遺伝子型「wxwxWX/AeAeae」を生じる植物である。
【0021】
本発明のまた更に別の目的は、遺伝子型「AAa/BBbまたはAAa/bbBまたはaaA/BBbまたはaaA/bbB」を有する植物によって生産されうる変化したデンプンを提供することである。
【0022】
本発明の更にもう一つの目的は、本発明のトウモロコシ植物から得られたデンプンの新規な用途を提供することである。
【0023】
本発明は、概して、AAa/bbBの内胚乳遺伝子型を有するインターミュータント、およびワクシー、ワクシー、アミロースエキステンダー(wxwxWx/AEAEae)である内胚乳を含むいくつかのインターミュータントを生産する方法を包含する。変化したデンプン特性を有する穀粒を生産する方法は、花をつけることができる雌性として働く親を植付ける工程を含む。デンプン合成経路において少なくとも1種類の特定のイソ型酵素がほぼ完全に低下している雌性親。これは、ホモ接合劣性突然変異体によるか、或いは、アンチセンスまたは同時抑圧(co−suppression)またはセンス−ダウンレギュレーション(sense−downregulation)として一般的に知られる技法を用いるクローン化遺伝子の使用による野生型遺伝子の部分ダウンレギュレーションによることがある。更に、雌性は、デンプン合成経路において少なくとも1種類の特定のイソ型酵素が不完全に低下している。これは、ヘテロ接合劣性突然変異遺伝子または部分ダウンレギュレーションによることがある。雌性がどのように生じるかにかかわりなく、それは単に雌性部分として働くべきである。これを確実にするために、工程は、花粉を生じる第一の親の能力を除去することを含む。本方法は、非突然変異親である雄性として働く親の花粉を雌性として働く親に授粉する工程を含む。前記第一の親によって生産された穀粒を収穫する。更に、本方法は、穀粒からのデンプンの抽出を含むことかできる。
【0024】
本発明は、更に、前記植物のデンプン合成経路において酵素の少なくとも2種類の特定のイソ型の活性を不完全に低下させる遺伝子を含むゲノム成分を有する植物を包含する。そしてそれが生産するデンプンは、記載されたのと同様の植物によって生成されるデンプンと比較した場合、変化した構造を有するが、植物のデンプン合成経路において酵素のイソ型を生成しないゲノム成分を含む。
【0025】
穀物穀粒などの穀粒中の前記デンプンを生じる植物。穀粒の内胚乳の遺伝子型がwxwxWx/AeAeaeであるアミロースエキステンダー遺伝子型(aeae)などを有する雄性植物と交雑されたワクシー遺伝子型(wxwx)などを有する雌性植物によって生産された穀粒。
【0026】
言い換えると、本発明は、デンプン生産性植物であって、前記植物のデンプン合成経路において少なくとも2種類の特定のイソ型酵素の活性を不完全に低下させる遺伝子を含むゲノム成分を含み、それによって前記植物が、前記遺伝子がデンプン合成経路中の酵素の同様の2種類の特定イソ型の活性を完全に低下させた場合に前記植物が生産するであろうよりも実質的に多量のデンプンを生産する上記デンプン生産性植物である。
【0027】
劣性突然変異遺伝子の1遺伝子量および野生型の2遺伝子量を含む;および劣性突然変異体の2遺伝子量および野生型の1遺伝子量を有する2種類の遺伝子を有する内胚乳を有する穀粒。本明細書中において、本発明は、wxwxWx/AeAeae、またはaeaeAe/WxWxwx、またはwxwxWx/DuDudu、またはduduDu/WxWxwx、またはaeaeAe/DuDudu、またはduduDu/AeAeae、またはwxwxWx/SuSusu、またはsusuSu/WxWxwx、またはaeaeAe/SuSusu、またはsusuSu/AeAeae、またはduduDu/SuSusu、またはsusuSu/DuDudu等の内胚乳遺伝子型を有する穀粒を包含する。
【0028】
wxwxWx/AeAeaeの遺伝子型を有する穀粒からのデンプン。Aeaeae/WxWxwxの遺伝子型を有する穀粒からのデンプン。
【0029】
aa/BBの二倍体遺伝子型を有し且つaaA/BBbの三倍体遺伝子型を有し、ここにおいて、aは劣性突然変異遺伝子であり且つAは野生型遺伝子であり、そしてbは劣性突然変異遺伝子であり且つBは野生型遺伝子であり、デンプンは正常なデンプンから変化しているようにあり、ここにおいてaおよびbは、ae、wx、sh、bt、h、su、fl、opから選択することができ且つBおよびAは、Ae、Wx、Sh、Bt、H、Su、Fl、Opから選択することができる雌性植物。
【0030】
本発明によって得られたデンプンは、独特の速さで口中で砕けてなくなる強弾性ゲルを生じる。本発明のデンプンは、従来のデンプンと比較して独特の且つ特殊なテキスチャーを有するゲルを生じる。独特の且つ特殊なテキスチャーは、本発明のデンプンを、食品の全体または一部分での、天然ガムおよびゼラチンなどの従来のゲル化ガムの代用物として適当にさせる。本発明のデンプンはまた、普通のデンプンよりも弾性のゲルを生じることが分かった。更に、トウモロコシから製造されたコーンスターチは、普通のデンプンから製造されたゲルと比較して向上した透明性を有するゲルを生じることが分かった。このような向上した透明性は、ヒトの眼で見えるし且つ一層食欲をそそる食品にかなっている。
【0031】
本発明をここで、例として、添付の図面に関する以下の記載および例によって記載する。
【0032】
発明の詳細な説明
概して、本発明は、デンプンの量および種類を変化させ、そしてその結果として、植物によって生産される穀粒を変化させる少なくとも2種類のデンプン合成性酵素の操作された発現を有する改良された作物系統である。
【0033】
デンプン合成経路において酵素の特定のイソ型の活性を部分的にダウンレギュレートするまたは低下させる少なくとも2種類の遺伝子を有する植物は、意外にも、穀粒中に有意の量のデンプンを生産し且つ変化したデンプン種を生産することが発見された。
【0034】
特殊トウモロコシすなわち突然変異植物は、その変化した内胚乳のために、「正常な」トウモロコシとは異なる。変化した内胚乳は、高度のデンプン分岐、または変化した糖含量、または異なる穀粒構造をもたらす。内胚乳は、当然ながら、精子および胚珠から生成され、そして両親の選択は内胚乳の構成に影響を与える。
【0035】
本発明は、二つの基本的な方法によって生産することができる。本発明は、突然変異体育種の使用によってある選択された作物種中で生産することができる。そして本発明は、デンプン合成経路において2種類またはそれ以上の酵素を部分的にダウンレギュレートする遺伝子による植物の形質転換の使用によって種々の植物において生産することができる。更に詳しくは、デンプン合成経路における酵素のイソ型の一つの、正常活性の約1/3および他のイソ型酵素の正常活性の2/3までのダウンレギュレーションまたは正常活性の約2/3までのデンプン合成経路における両方のイソ型酵素のダウンレギュレーション。これらの方法にはそれぞれ利点がある。
【0036】
第一に、独特の穀粒および穀草作物中のデンプンを開発するための突然変異体の使用は広く知られている。しかしながら、本発明は、正常なデンプン特性を有する穀粒を生産すると期待されるので、それは極めて独特であり且つ意外である。
以下の表は、本発明がいかに意外であるかを説明する。
【0037】
【表1−1】
【0038】
明らかに、表で示された本発明の内胚乳の遺伝子型は、完全に劣性の遺伝子を有していなかったので、デンプン収量および構造は正常であると予想された。実際に、本発明によれば、穀粒は、正常なデンプン構造が変化したデンプンを示していない。歴史的に、変化したデンプンが生産される場合、通常、少量しか生産されない。本発明の変化したデンプンは、意外にも、予想の量よりも多量に生産された。更に、このデンプンの生産は、二重突然変異作物の生産よりもはるかに簡単である。従来、単一突然変異体雑種だけが大規模デンプン生産用に広く用いられてきた。従来、二重突然変異体を開発するために、両方の親は、かなりの研究および開発努力を必要とし且つ不十分なデンプン収量および不十分な種子発芽能力をもたらす両方の突然変異を有していなければならなかった。したがって、二重突然変異体の小規模生産だけが可能であった。
【0039】
本発明は、変化したデンプン特性を有する穀粒を生産する方法であって、花をつけることができる親に授粉する工程を含み、この親は、デンプン合成経路において酵素(A)の少なくとも一つの特定のイソ型がほぼ完全に低下していて且つデンプン合成経路において酵素(B)の少なくとも一つの他の特定のイソ型がほぼ完全に低下している上記工程を包含する。他の親は、デンプン合成経路において酵素(A)の一つのイソ型が低下していないし且つ酵素(B)の少なくとも一つの他の特定のイソ型がほぼ完全に低下している。次に、花粉を生産する前記第一の親の能力を排除し且つ前記第二の突然変異体親から花粉を生じさせ、そして最後に前記第一の親によって生産された穀粒を収穫する必要がある。更に、該方法は、穀粒からのデンプンの抽出および有益であることが分かっている種々の用途に対する特殊なデンプンとしての該デンプンの使用を包含することができる。
【0040】
本発明によってゾルを製造するために、水および有効量の本発明のデンプンを含むスラリーを調製し、そしてゾルに煮沸工程を施してペーストを生成する。概して、煮沸は、スラリーの温度をほぼデンプンの糊化温度を越えて上昇させること、および顆粒が破裂し且つペーストが生成されるような十分な剪断応力を施すことを伴う。顆粒が全て破裂する必要はない。好ましくは、ゾルは、本発明のデンプンを全ゾル重量の約1〜約20%の量で含む。スラリーを約90℃以上の温度で煮沸して増粘性を与えた後、食品に加える。煮沸時間は約10分間である。
【0041】
本発明によるゾルは、デンプンが既に、それを冷水膨潤性にする工程を施されていた場合、煮沸する必要はない。煮沸は、概して、本発明のデンプンの水性スラリーの温度をデンプンの糊化温度まで上昇させること、およびデンプン粒が破壊し且つペーストを生成するような剪断応力をデンプンに施すことを含む。
【0042】
本発明のデンプンのゾルまたは増粘剤組成物を慣用法で食品に加えて、本発明のデンプンの利点を食品に与える。
【0043】
増粘された食品を製造するために、本発明によって製造されたゾルを食品と混合し、そして組成物を、増粘された食品を与えるのに必要な程度まで煮沸する。慣用的な混合法を用いて、ゾルと食品とを混合する。ゾルおよび食品組成物の煮沸はまた、慣用法で行われる。
【0044】
或いは、本発明のデンプンを食品と混合するかまたは、本発明のデンプンおよび水を含むスラリーを食品と混合し、そして得られた混合物を、増粘された食品を得るのに望ましい程度まで煮沸する。デンプン自体またはデンプン自体を含むスラリーを食品と混合する場合、得られた混合物を煮沸して、増粘された食品を与える必要がある。混合並びに煮沸は、慣用法で行われる。煮沸は、約90℃以上の温度で行われる。煮沸時間は約10分間であるが、存在する食品の量および煮沸中に配合物に施される剪断応力の量に応じて変更してよい。
【0045】
このような増粘剤組成物は、使用者に対してかなりの経済的利点を与えることができる。当業者は、長い間、種々のゲル化ガムをそれらの優れた破壊テキスチャーのために用いてきた。本発明の出願としては、これらに限定されるものではないが、ガムキャンデー、ゲルデザート、グレーズ(glaze)およびスプレッドが挙げられ、従来のゲル化ガム、例えば、κカラゲニン、寒天、ペクチンまたはゼラチンに代用して用いることができる。これらの従来のゲル化ガムは極めて高価でありうるが、しかも、風味がよくないこと、熱若しくは酸安定性に欠けること、限定された利用可能性または適性認可を欠いていることを含めた他の欠点を有する。本発明のデンプンは、これら従来のゲル化ガムの全部または一部分に代用することができる。
【0046】
食品中のゲル化ガムに代用するために、本発明のデンプン:ゲル化ガムを約1:1の重量比で用いることができる。更に多量または少量の本発明のデンプンを用いてゲル化ガムに代用してよい。このようなゲル化ガムとしては、ゼラチン、ペクチン、カラゲニン、アラビアゴム、トラガカントゴム、グアー(guar)、イナゴマメ(locustbean)、ザンタン(zanthan)、寒天、アルギンおよびカルボキシメチルセルロースがある。
【0047】
当然ながら、本発明のデンプンは、ゲル特性および口中での砕けやすさ(clean break)を与える必要があるいずれの食品中でも用いることができる。例えば、本発明のデンプンを、普通のデンプンが従来用いられてきた食品中で用い、それによって、普通のデンプンを用いた同様の食品と比較した場合に、食品に向上した性状、すなわち、砕けやすさを与えることができる。
【0048】
本発明のデンプンによって得られたゲルの砕けやすさは、種々の食品用途において有用である。デンプンゲルの砕けやすさは、種々の製菓用途、例えば、パイ用のクリームまたは果実詰め物、例えば、レモン、バナナクリームまたはババロア;およびクッキー用の低または減脂肪高固形分果実芯、例えば、イチジクバーで有用である。本発明のデンプンはまた、ムース、エッグカスタード、フラン(flan)およびアスピック(aspic)において向上したテキスチャーを生じる。
【0049】
明細書および請求の範囲において用いられるデンプンという用語は、デンプン含有植物から抽出される実質的に純粋なデンプン粒のみならず、デンプン粒の穀粒製品、例えば、粉末、粗粒、ホミニー(hominy)およびひき割りを意味する。
【0050】
本発明の以下の実施例を単に例証するために与える。これらの実施例は、本発明の形式または用途を制限するものではない。本発明またはその穀粒若しくはデンプン若しくは糖は、限定されなくてよいが、食品、紙、プラスチック、接着剤、ペイントの製造、エタノールの製造およびコーンシロップ製品において有用でありうる。
【実施例1】
【0051】
本発明の種々の実施態様の物理的性質(類似の遺伝子型は種々のトウモロコシ交雑種に由来する)。これらの表は、新しい且つ新規なデンプンを評価する当業者に周知のデータを示す。水分並びに油、タンパク質、可溶性物およびデンプン%のデータは、収量および微粉砕可能性を評価する場合に有用である。デンプンDSC(示差走査熱量測定)データは、デンプンの煮沸および糊化特性を評価するのに有効である。デンプン粒度データは、デンプンの微粉砕および分離特性について決定を行うのに有効である。ブラベンダーおよびデンプンペーストデータは、主として、特定のデンプン増粘性並びにペースト化および糊化特性が望まれる向上した食品用途のための新しいデンプンの可能性を評価するのに最も重要である。このようなデータは、情報収集を総括して判断する場合、デンプン性状および可能性について更に詳細な試験を行うかどうかを当業者に決定させる。
【0052】
【表1−2】
【0053】
【表2−1】
【0054】
【表2−2】
【0055】
【表2−3】
【0056】
【表2−4】
【0057】
【表2−5】
【0058】
定義:
示差走査熱量測定(DSC)
IRは、初期上昇を示す。
HPは、熱ピークを示す。
HFは、最終熱を示す。
CPは、冷却ピークを示す。
CFは、最終冷却を示す。
ブルックフィールド粘度計
ブルックフィールド粘度計は、剪断強さ(センチポアズ、cPで)およびデンプンペーストの安定性を測定する。
ブラベンダー粘度計(BRABENDER VISCO-AMYLOGRAPH)データ
ペースト化温度は、ペースト生成温度を示す。
ピーク粘度は、使用しうるペーストを与えるのに必要な温度を示す。
95℃での粘度は、デンプンの煮沸の容易さを示す。
50℃での粘度は、熱ペーストの煮沸中のペースト粘度の後退を示す。
50℃で1時間後の粘度は、煮沸ペーストの安定性を示す。
トウモロコシのタンパク質、デンプン、油および水分%
トウモロコシ中の油、テンプンおよびタンパク質の百分率は、デンプンがいかに回復しうるかというデンプン収量の目安を与える。
デンプンのタンパク質、デンプン、油および水分%
デンプン中の油、デンプンおよびタンパク質の百分率は、デンプンがいかに十分に精製されているかおよび微粉砕可能性を示すかという目安を与える。
アミロース%およびL−最大
これらのデータは、デンプン中の見掛けのアミロース濃度の尺度を与える。
デンプン粒度データ
デンプン粒度は、デンプン収量の指標および微粉砕工程による回復可能性を与える。
便法
表2におけるaeaewxは、aeaeAE/wxWxWxを意味し、同様に、duduwx=duduDU/wxWxWxを意味する。この表中には、野生型は挙げられていない。
【0059】
図1は、アミロースエキステンダーおよび艶なしの単一突然変異体の突然変異対立遺伝子の個々の遺伝子量(例えば、MMM、mMM、mmM、mmm)の酵素活性のグラフである。これらのデータは、スクロースシンターゼ(SS)、UDP−グルコースピロホスホリラーゼ(UDPG−PP)、グルコキナーゼ(GK)、フルクトキナーゼ(FK)、ホスホグルコムターゼ(PGM)、ホスホグルコースイソメラーゼ(PGI)、ATP−依存性ホスホフルクトキナーゼ(PFK)、PPi依存性ホスホフルクトキナーゼ(PFP)、ADP−グルコースピロホスホリラーゼ(ADPG−PP)、可溶性デンプンシンターゼ(SSS)、分岐酵素(BE)および結合性デンプンシンターゼ(BSS)の酵素活性を示す。酵素活性は、野生型対照(MMM)に相対する百分率として示される。完全な突然変異体(mmm)の場合、デンプン合成経路における種々の酵素の発現レベルに対して劇的な効果がある。部分突然変異体(mMMおよびmmM)の場合、発現レベルには検出しうる変化がほとんどない。これらのデータは、単一突然変異体に見られたデンプン特性の変化が、いくつかの酵素の過発現並びに突然変異した対立遺伝子によってコードされた酵素の除去の結果であることを示した。2種類の突然変異体量(例えば、wxwxWx)と別の突然変異の他の量(例えば、AeAeae)とを組合わせることにより、2種類の酵素は、残りの経路で見られた過発現を伴うことなく部分的に減少するであろう。
【0060】
図2は、ワクシー、アミロースエキステンダーおよび普通の(野生型)トウモロコシから得られた穀粒から抽出されたデンプンのDSC走査のグラフである。このようなDSC走査は、当業者が多数のデータを与えるのを容易にする(ピーク温度、ΔH、ピークII温度、開始温度および終了温度のデータについては本文中の表を参照されたい)。高アミロースデンプンのプロフィールは普通のデンプンおよびワクシーデンプンとは異なることが特に注目に値する。
【0061】
図2bは、二重突然変異体(aeaeae/wxwxwx)トウモロコシから得られた穀粒から抽出されたブンテンのDSC走査のグラフである。このようなDSC走査は、当業者が多数のデータを与えるのを容易にする(ピーク温度、ΔH、ピークII温度、開始温度および終了温度のデータについては本文中の表を参照されたい)。二重突然変異体のプロフィールは、普通のデンプン並びに単一突然変異体、ワクシーおよび高アミロースについて図2aで与えられたデータとは異なることが特に注目に値する。
【0062】
図2cは、インターミュータント(aeaeAe/WxWxwx)トウモロコシから得られた穀粒から抽出されたデンプンのDSC走査のグラフである。このようなDSC走査は、当業者が多数のデータを与えるのを容易にする(ピーク温度、ΔH、ピークII温度、開始温度および終了温度のデータについては本文中の表を参照されたい)。インターミュータントデンプンのプロフィールは二重突然変異体のデンプンとは異なり且つワクシーデンプンのそれと似ているらしいことが特に注目に値する。
【0063】
図2dは、インターミュータント(wxwxWx/AeAeae)トウモロコシから得られた穀粒から抽出されたブンテンのDSC走査のグラフである。このようなDSC走査は、当業者が多数のデータを与えるのを容易にする(ピーク温度、ΔH、ピークII温度、開始温度および終了温度のデータについては本文中の表を参照されたい)。インターミュータントデンプンのプロフィールは二重突然変異体のデンプンとは異なり且つワクシーデンプンのそれと似ているらしいことが特に注目に値する。
【0064】
図3aは、中性かまたは酸性条件において普通のデンプンから得られたブラベンダーデータのグラフである。普通のトウモロコシデンプンは、酸性条件を用いると粘度の実質的な低下を示す。
【0065】
図3bは、中性かまたは酸性条件においてワクシーデンプンから得られたブラベンダーデータのグラフである。ワクシー突然変異は、中性条件においてデンプンの粘度に顕著に影響を与える。
【0066】
図3cは、中性かまたは酸性条件においてアミロースエキステンダー(70%アミロース)デンプンから得られたブラベンダーデータのグラフである。高アミロースデンプンは、酸性かまたは中性条件において粘度が増加する。
【0067】
図3dは、中性条件において二重突然変異体(aeaeae/wxwxwx)デンプンから得られたブラベンダーデータのグラフである。二重突然変異体デンプンは、ワクシー突然変異のホモ接合であるにもかかわらず、粘度を維持する。
【0068】
図3eは、中性条件においてインターミュータント(aeaeAe/WxWxwx)デンプンから得られたブラベンダーデータのグラフである。これらのデータから、新しいインターミュータントデンプンは、見掛けのアミロース含量が増加していないにもかかわらず、高アミロース突然変異体について見られたのと同様の粘度の増加度を与えることが特に注目に値する。
【0069】
図3fは、中性条件においてインターミュータント(wxwxWx/AeAeae)デンプンから得られたブラベンダーデータのグラフである。これらのデータから、新しいインターミュータントデンプンは、見掛けのアミロース含量が増加していないにもかかわらず、高アミロース突然変異体について見られたのと同様の粘度の増加度を与えることが特に注目に値する。
【実施例2】
【0070】
この実施例は、本発明のトウモロコシ穀粒加工デンプンの製造を例証する。様々な背景のトウモロコシ植物は、伝統的な育種および/または戻し交雑技術を用いるかまたはさもなければ花粉の化学的処理などの突然変異誘発を用いて突然変異遺伝子型に変換することができる。或いは、ワクシー同系繁殖体および雑種を、多数の供給者および財団設立種子会社から購入することもできる。良好な作物学的特色および比較的高い収量を有するトウモロコシ系統はいずれも用いることができる。本発明において、正常な同系繁殖体系は、化学的突然変異誘発に続いて、分離子孫からの突然変異体穀粒種の慎重な選択を用いて、突然変異同系繁殖体系に変換される。この方法は当業者に周知である(例えば、ノイファー(Neuffer),M.G.およびチャン(Chang),M.T.、1989年、生物学および作物学研究における誘発突然変異、Vortr.Pfalzenzuchtg.16,165〜178を参照されたい)。商業的に入手可能な同系繁殖系はいずれも、この目的に用いることができる。該系統は、系統を既知の突然変異系と交雑させることができる当業者に周知の方法である対立性検定によって目的の突然変異を有することが確証された。更に、該系統からの穀粒は、選択された突然変異に特有の外観およびヨウ素染色性を有するであろう。当業者に周知の方法。植物から最高の収量を得るためには、両者が同じ突然変異を有する(例えば、両方の同系繁殖体がワクシーまたはアミロースエキステンダー種である)2種類の同系繁殖体間に雑種交雑を生じることが最も近い。一方が雄性であり且つ一つの突然変異のホモ接合であり、そしてもう一方が雌性であり且つ他の突然変異のホモ接合である2種類の雑種を生じることは好ましい。雄性および雌性雑種は、同じまたは異なる遺伝的背景から構成されることができ、二つの系統が現場において同様に成熟する(すなわち、発芽から開花および花粉が落ちるまで同様の熱単位を必要とする)ことが単に重要である。現場でインターミュータントを交雑させるためには、雌性からの花粉生産を除去する必要がある。これは、限定するものではないが、人工授粉、手作業でおよび機械的に雄花の穂を取り除くこと、遺伝子または細胞質雄性不稔性を雌性植物中に遺伝子移入すること、遺伝的形質転換および化学的に雄花の穂を除去する薬剤の使用による雄性不稔性の導入を含む種々の方法によって行うことができる。この交雑からの穀粒は、内胚乳の遺伝子型がaaA/BBbの本発明を含み、この遺伝子型からのデンプンをインターミュータントデンプンと称する。遺伝的背景を最良のデンプン特性に最適化しうることは当業者に周知である。
【実施例3】
【0071】
デンプンは、多数の異なる方法によって穀粒から抽出することができる。最も一般的に用いられる方法は、世界中で知られ且つ用いられている「湿式磨砕」法を必要とする。基本原理は、浸漬およびデンプン分離を必要とする。この方法において不可欠な工程は、穀粒を浸漬タンク中で軟化させることを必要とし、方法は、トウモロコシ穀粒成分を最適分離できるように最適化された。この方法を用いて、実施例2によって生じたインターミュータントの穀粒からデンプンwxwxWx/AeAeaeを抽出した。胚芽は、そのままで容易に遊離し、そして付着している内胚乳および外皮から分離された。内胚乳を水で浸軟させ、デンプンは白色凝集塊として容易に分離されて、そしてグルテンタンパク質を黄色凝集塊として得る。穀粒を、通常は50〜90メートルトンの穀粒を収容するタンク中に48〜52℃で30〜40時間浸漬した。浸漬水は0.2%二酸化硫黄(SO2ガスを通気する)を含み、そしてそれによって弱酸性(pH4.0)である。二酸化硫黄はタンパク質基質の分解を促進し、内胚乳基質を分解させて顆粒にする。浸漬後、穀粒を粗びきするかまたはパルプにした。油の多い胚は表面に浮かび且つ稠密なデンプン質内胚乳は沈む。分離は、ヒドロクローン(連続分離)によって達成される。デンプンは、焼入鋼合金製の逆転溝付きプレートによって高速でスラリーを粉砕する「エントレター(Entoleter)微粉砕機として知られる衝撃微粉砕機」に続いて外部衝撃環による衝撃によって微粉砕された後に更に精製された。脱繊維デンプンを遠心分離によってグルテンから分離して、タンパク質(70%タンパク質)およびデンプン(2%タンパク質)の二つの画分を与えた。加工温度は、微生物の増殖を防止するように45℃を越えて維持された。デンプンは、200〜260°Fまで加熱された空気流中へ注入することによるフラッシュ乾燥によって乾燥された。
【0072】
種々のインターミュータント穀粒は、各種食品、飼料および産業用途に適当であるこの方法で精製され且つ製造されたデンプンを有することができる。それは、未変性トウモロコシデンプンとして直接的に用いることができる。それは、顆粒構造を保つ化学的または物理的処理によって変性されてよく、そして顆粒を洗浄して残留する反応物を除去してよい。時々、漂白を用いて超白色デンプンを生成する。デンプンは、高温処理を用いて糊化され且つ糊化デンプンとして直接的に販売されうる。このようなデンプンは、化学的に変性され且つ乾燥されうる。ポリマー自体は、部分的にまたは完全に加水分解されて、マルトデキストリンまたはグルコースを生成することができる。このような製品は、発酵によって更に変性されて、ガソリン製造業用のエタノールを製造することができるし、またはグルコースを甘味剤製造業用の高フルクトースコーンシロップに変換することができる。
【実施例4】
【0073】
縮み−2(sh2)、脆い(brittle)−2(bt2)、艶なし(du)、糖質(su)、ワクシー(wx)およびアミロースエキステンダー(ae)と称される突然変異は、ADPグルコースピロホスホリラーゼ、脱分岐酵素、可溶性デンプンシンターゼ、結合性デンプンシンターゼおよび分岐酵素のイソ型をコードする。
【0074】
縮み−2は、ADPグルコースピロホスホリラーゼの一つのサブユニットをコードし、
脆い−2は、ADPグルコースピロホスホリラーゼの一つのサブユニットをコードし、
ワクシーは、顆粒結合性デンプンシンターゼをコードし、
アミロースエキステンダーは、分岐酵素のイソ型をコードし、
艶なしは、可溶性デンプンシンターゼおよび分岐酵素のイソ型の発現を変更し、
糖質は、可溶性デンプンシンターゼおよび脱分岐酵素の発現および活性を変更する。
【0075】
既知の突然変異体および遺伝子量交雑法を用いて、本発明者は、穀粒中のデンプン貯蔵に対する変化した遺伝子発現の効果を調べた(図を参照されたい)。bt2突然変異体について、本発明者は、穀粒中のデンプン合成の減少と十分に相関する測定可能なADP Glcピロホスホリラーゼ活性の漸進的減少を知見している。デンプンへのフラックスに対してこの酵素によって与えられる調節強度は、これらのデータから定量することができない。実際に、本研究は、この酵素がデンプン合成期間中の主要決定因子の一つであるが、デンプン合成速度をほとんど調節しないかもしれないことを示している。この突然変異は、デンプン構造をほとんど変化させない。突然変異が糖質、艶なし、ワクシーおよびアミロースエキステンダーによる場合、本発明者は、ここで、デンプン微細構造の変化(分岐鎖長変化並びにアミロース/アミロペクチン比の変化)を検出する。これらの場合、(スイートコーン遺伝子型を製造するのに用いられる糖質突然変異体を除く)デンプンへのフラックスの調節は更に少ない。これらの場合のいずれにおいても、それは、デンプン微細構造を変化させたデンプンシンターゼおよび分岐酵素の比率の変化である。これらの研究における劇的な新しい知見は、突然変異が鍵酵素の発現を減少させるのみならず、それが経路中の他の酵素の過発現も誘導するという発見であった。更に、それは、本発明者がデンプン微細構造の変化を知見している完全な突然変異体(mmm)遺伝子型においてのみ、酵素イソ型過発現と一緒に酵素イソ型減少が存在する場合にだけ構造の変化が起こることを実証している。この提案に拘束されたくはないが、これらのデータは、デンプン構造が、(例えば、アンチセンス構築物を用いて)発現を減少させることによってのみ影響されることができるのではなく、酵素もまた(例えば、センス構築物を用いて)発現を同時に増加させることができる手段を例証する。
【0076】
本発明の方法において用いるための植物形質転換ベクターは、標準的な技法を用いて構築することができる。これらの酵素は細胞のアミロプラスト区分に局在しているので、遺伝子構築物は、アミロプラスト中のその正確な位置を確認するためにアミロプラスト輸送ペプチドの存在を必要とする。形質転換構築物は、部分センス配向かまたはアンチセンス配向の遺伝子を有することができる。植物における該遺伝子の発現は、当該技術分野において「センス同時抑圧すなわちアンチセンス」として周知の作用によって酵素の発現の減少を引き起こす。発現の減少だけが必要である場合、該輸送ペプチドは必要とされない。しかしながら、酵素過発現が必要とされる場合、正確な色素体集中配列は構築物中に必要とされる。本発明に必要な鍵酵素としては、分岐酵素並びに可溶性および結合性デンプンシンターゼがある。分岐酵素[1,4−α−D−グルカン:1,4−α−D−グルカン 6−α−D−(1,4−α−D−グルカノ)トランスフェラーゼ]は、アミロースをアミロペクチンに変換し、(1,4−α−D−グルカン鎖のセグメントを、同様のグルカン鎖中の第一ヒドロキシル基に転移する)Q−酵素と称されることが多い。可溶性デンプンシンターゼ[ADPグルコース:1,4−α−D−グルカン 4−α−D−グルコシルトランスフェラーゼ]は、アミロペクチンおよびおそらくは更にアミロースの鎖長を延長する。結合性デンプンシンターゼ[ADPグルコース:1,4−α−D−グルカン 4−α−D−グルコシルトランスフェラーゼ]は、アミロースおよびおそらくは更にアミロペクチンの鎖長を延長する。
【0077】
任意のアンチセンスすなわちセンス同時抑圧構築物のために、部分cDNAクローンだけが、トランスジェニック植物において発現される必要がある。酵素過発現が必要とされる場合、完全長さcDNAクローンが必要である。トウモロコシ分岐酵素−Iの配列は、ババ(Baba),T.、ニシハラ(Nishihara),M.、ミズノ(Mizuno),K、カワサキ(Kawasaki),T.、シマダ(Shimada),H.、コバヤシ(Kobayashi),E.、オーニシ(Ohnishi),S.、タナカ(Tanaka),K.およびアライ(Arai),Y.(コメ(オリザサティバ(Oryza−sativa)
L)の可溶性デンプンシンターゼの識別、cDNAクローニングおよび遺伝子発現)ImmatureSeeds.Plant Physiology.103:565〜573,1993年)によって研究された。トウモロコシ内胚乳からのデンプン分岐酵素−11は、フィッシャー(Fisher),D.K.、ボイヤー(Boyer),C.D.およびハナー(Hannah),L.C.(トウモロコシ内胚乳からのデンプン分岐酵素−IIPlant Physiology.102:1045〜1046,1993年)によって研究された。ムー(Mu),C.、ハーン(Harn),C.、コー(Ko),Y.、シングレタリー(Singletary),G.W.、キーリング(Keeling),P.L.およびワッサーマン(Wasserman),B.P.による論分は、トウモロコシ(cv B73)内胚乳における76kDaポリペプチドと可溶性デンプンシンターゼI活性との関係を示している。Plant Journal6,151〜159(1994)。UDP−グルコースデンプングリコシルトランスフェラーゼのトウモロコシワクシー遺伝子座は、1986年にクロースゲン(Kloesgen),R.B.、ギール(Gierl),A.、シュワルツ・ゾンマー(Schwarz−Sommer),Z.およびゼドラー(Saedler),H.(ケア島のワクシー遺伝子座の分子分析Mol.Gen.Genet.203,237〜244)によってクローン化された。最近、トウモロコシ糖質遺伝子座の配列が、ジェームス(James),M.およびライト(Wright),A.(ThePlant Journal)によって、遺伝子を位置決定するようにトランスポゾン突然変異誘発を用いて観察された。任意のこのようなタンパク質の遺伝子は脱分岐酵素であると考えられ、しかも本発明によって構築物中で用いることができる。
【0078】
葉緑体輸送ペプチドは、同様の配列を有すると考えられる(ハイジュン(Heijne)らは、1991年にPlantMol Biol Reporter,9(2):104〜126で葉緑体輸送ペプチドのデータベースを記載している)。他の可能な輸送ペプチドは、ADPGピロホスホリラーゼ(1991年、PlantMolB iolReporter,9:104〜126)、小サブユニットRUBISCO、アセトラクテートシンターゼ、グリセルアルデヒド−3P−デヒドロゲナーゼおよび亜硝酸レダクターゼのものである。例えば、多数の遺伝子型からの小サブユニットRUBISCOの輸送ペプチドの共通配列は、配列
MASSMLSSAAVATRTNPAQASM VAPFTGLKSAAFPVSRKQNLDITSIASNGGRVQC
を有する。RUBISCOのトウモロコシ小サブユニット輸送ペプチドは、配列
MAPTVMMASSATATRTNPAQAS AVAPFQGLKSTASLPVARRSSRSLGNVASNGGRIRC
を有する。トウモロコシからの葉デンプンシンターゼの輸送ペプチドは、配列
MAALATSQLVATRAGLGVPDAS TFRRGAAQGLRGARASAAADTLSMRTASARAAPRHQQQARRGGR FPSLVVC
を有する。
【実施例5】
【0079】
稔性トランスジェニックトウモロコシ植物の生産は、1990年から行われてきた。多数のDNA供給システムが知られているが、選択は粒子衝撃である。上記のように、種々のトウモロコシ突然変異遺伝子の構築物は、米国および欧州の受託機関から入手可能である。挙げられているのは図4a〜dで示される多くのこれらの構築物の数例である。図4cは、CaMv(カリフラワーモザイクウイルス)であるプロモーター、Adh1、ワクシー遺伝子、nos(ノポリン)、および選択可能なマーカーとして有用であるpat遺伝子並びにampを示す。
【0080】
図4dは同様であるが、構築物中の可溶性デンプンシンターゼ第一イソ型遺伝子を示す。図4aもまた同様の構築物を有するが、分岐酵素第一イソ型を示す。図4bは、第二分岐酵素第二イソ型を示す。当然ながら、トウモロコシ育種において用いられる遺伝子突然変異体と結合した他の構築物もまた入手可能である。
【0081】
この実施例の目的に対して、ワクシー構築物である図4cを論及する。この実験の目的は、ワクシー遺伝子の部分ダウンレギュレーションを有する同系繁殖体を作ることである。選択された同系繁殖体が既にaeの突然変異体である場合、非突然変異同系繁殖体との交雑によって生じた穀粒は、インターミュータントの穀粒であろう。ダウンレギュレーションの強さに応じて、雌性同系繁殖穀粒は、mm*/mm*またはmm*/m*の種類のデンプンおよび穀粒に似ているであろう。明らかに、形質転換は、デンプンの変化を微細に調整することができるような、デンプン合成活性のダウンレギュレーションの一層正確な方法を可能にする。
【0082】
ワクシー遺伝子の適当なレベルのダウンレギュレーションを確実にするために、形質転換標的組織は未熟な接合胚であり、胚形成カルスによっても用いることができる。同系繁殖体B73aeを授粉して12日後の植物A188からの未熟な接合胚を選択することができる。カルスの培地は、6mM L−プロリン、2%(w/v)スクロース、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)2mg/lおよび0.3%(w/v)ゲルライト(Gelrite)(カロリン・バイオロジカル・サプライ(CarolineBiological Supply))(pH6.0)であった。カルスを増殖させ且つ懸濁培養を開始した。
【0083】
ミオイノシトール100mg/l、2,4−D 2mg/l、1−ナフタレン酢酸(NAA)2mg/l、6mMプロリン、カゼイン加水分解産物(ディフコ・ラボラトリーズ(DifcoLaboratories))200mg/l、3%(w/v)スクロースおよび5%(v/v)ココナツ水(ディフコ・ラボラトリーズ)(pH6.0)を含むMS基剤液体培地。細胞懸濁液を、125mlエルレンマイヤーフラスコ中のこの培地中において28℃で、暗所中の125rpmでの回転振とう機上において維持した。
【0084】
図4cの形質転換ベクターを選択する。このプラミスドは、355−1adh−pat nos3′選択可能遺伝子発現カセットを含む。
【0085】
細胞懸濁液をふるいにかけた後、懸濁培地5ml中に懸濁させ、そして真空によって濾紙上に置く。構築物を、当該技術分野において知られているように被覆して粒子にした。次に、プレートを衝撃した。次に、細胞をN−6培地に移し、そして14日後に形質転換細胞をビアラホス1mg/lによって選択する。次に、細胞を、0.6%(w/v)(シー・プラーク(Sea−Plaque);FMC)含有培地中に懸濁させ且つ37℃で保持した。
【0086】
2〜5週間後、増殖したカリ(calli)を取出し且つ新鮮な選択培地表面に移した。植物を、6%スクロース、ミオイノシトール1g/l、NAA(34)1mg/lおよび0.3%(w/v)ゲルライト(pH6.0)を含むMS基剤培地中で再生させた。次に、胚発芽が、NAA 0.25mg/lおよび3%(w/v)スクロースのMS培地並びに光中で起こった。植物を成長させ且つ温室に移す。次に、植物の発現レベルを評価することができる。
【0087】
植物を育種し且つ発育させて、突然変異体およびダウンレギュレート経路を有する同系繁殖体にした。或いは、選択された同系繁殖体は、トランスジェニック植物を雌性として用いる場合に穀粒中に所望のデンプンを生成するように形質転換後にトランスジェニックに交雑された突然変異体を有することができる。
【実施例6】
【0088】
この実施例は、他のデンプンと比較した本発明のデンプンの糊化温度を例証する。糊化温度を以下の表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
試料1は、ハモンド、インディアナ州のアメリカン・メイズ・プロダクツ・カンパニー(AmericanMaize−Products Company)によって販売された商品であった。上記試料1のアミロース%および糊化温度は、製品の無作為の試料採取によって決定された平均値である。アミロース%および糊化温度の99%信頼水準は、それぞれ25.9〜29.3および68.7〜72.9である。
【0091】
AMY VおよびAMY VIIは、ハモンド、インディアナ州のアメリカン・メイズ・プロダクツ・カンパニーによって販売された市販の高アミロースコーンスターチである。上記表3のアミロース%および糊化温度は、製品の無作為の試料採取によって決定された平均値である。AMYVおよびAMY VII中のアミロース%の99%信頼区間は、それぞれ53.4〜62.5および65.5〜73.8であった。AMYVおよびAMY VIIの糊化温度の99%信頼区間は、それぞれ72.8〜84.4および83.1〜90.8であった。AMYVおよびAMY VIIは両方とも天然トウモロコシ中で生産された。
【0092】
デンプン試料4は本発明に対応するが、試料5は、米国特許第5,009,911号明細書の実施例1からの平均値に対応する。試料6は、アメリカン・メイズ・プロダクツ・カンパニーによって販売された市販のワクシーデンプンに対応する。
【0093】
アミロース%および糊化温度両方を決定する方法は以下であった。
【0094】
アミロース%は、デンプンを最初に水酸化ナトリウムによって糊化した後、ヨウ素溶液と反応させ、そして得られた試料を、2%ヨウ素溶液のプランクに対して1cmセル中において600nmで分光光度計を用いて測定する標準的な熱量測定ヨウ素法を用いて決定された。
【0095】
DSC糊化温度は、30%デンプン固体を用いるメトラー(Mettler)製の走査型熱量計300型を用いて、その型の製造者マニュアルに概説された手順にしたがって測定された。
【0096】
本発明のデンプンの糊化温度が普通のコーンスターチに匹敵することは、上記表3から容易に明らかである。
【実施例7】
【0097】
この実施例は、aewxコーンスターチから製造されたゾル、普通のコーンスターチから製造されたゾルおよびwxwxwxデンプンから製造されたゾルと比較した本発明のコーンスターチから製造されたゾルのゲル強度を例証する。試験の結果を以下の表4に報告する。
【0098】
【表4−1】
【0099】
上記表4で報告されたゲル強度試験を行うために、水とデンプンとを混合し、そしてそのスラリーにブラベンダー粘度計の急熱様式を施して試料を50℃まで加熱することによってゾルを製造した。いったん50℃に達したら、95℃の温度に達するまで1.5℃/分の一定の加熱速度で装置を設定した。次に、試料を95℃で30分間保持した。次に、試料を1.5℃において50℃の温度まで30分間冷却した。これらのゾルの一部分を、プランジャーが入っている4オンスジャーに別々に加えた。次に、ゾルを周囲条件で24時間放置した。ゲル強度は、プランジャーをゾルから取出すのに必要な力を決定することによって測定された。
【0100】
この実施例は、本発明によって製造されたゾルのゲル強度が普通のコーンスターチゾルに匹敵することを例証している。
【実施例8】
【0101】
この実施例は、aewxデンプンと、植物が三倍量のワクシー遺伝子を有していたワクシーデンプンと、本発明のデンプンとの相違を例証する。デンプンは全てトウモロコシから得られた。
【0102】
全てのデンプンの流動学的性質について試験した。それぞれのデンプンに、同様の方法を用いる同様の試験法を施した。デンプン粒を、ブラベンダー粘度計を用いて冷却プローブダウンおよび750g cmカートリッジによってペーストにした。5.5%初期固体のデンプンスラリーを、ブラベンダーカップ中において60℃で急速に加熱した後、温度を1.5℃/分で95℃まで増加させながらペーストにした。デンプンペーストをこの温度で20分間保持した後、速やかに、70℃まで予熱された流動計の測定用配置上に装填した。四部レオロジー特性決定を行った。0.2ヘルツおよび0.2%歪(十分に線形粘弾性範囲内)で構造体の形成を監視したゲル硬化セグメントは、試料を70℃〜25℃まで冷却し且つ4時間保持しながら測定された。更に測定されたのは、25℃においてやはり0.2ヘルツで増加量の歪に対するペーストまたはゲルの流動学的応答を測定する歪曲線であった。
【0103】
この技法を用いて、aewxデンプンと本発明のデンプンとの明確な相違を見出した。図5は、ゲル硬化分析の結果を示す。本発明のデンプンは、aewxデンプンより低い初期弾性率(G′)を有する間に、G′の急上昇によって示されるように一層速やかに構造体を形成するかまたはゲル化した。したがって、本発明のデンプンは、同様の見掛けのヨウ素結合含量にもかかわらず、ゲル生成の速度がaewxデンプンとは異なった。図6は、本発明のデンプンおよびaewxデンプンのみについての歪曲線分析の結果を示す。ここで、本発明のデンプンは、歪量が増加するにつれて、G′の増加によって示されるダイラタント作用を示した。与えられた量の歪の下では、構造は破壊されなかった。対照的に、aewxデンプンの構造は、与えられた歪が4%より大になった場合に速やかに破壊された。したがって、aewxデンプンと比較した場合、本発明のデンプンは、この試験の与えられた歪の下では砕けなかったゲルを生成した。対照的に、aewxデンプンは、はるかに少ない時間依存性構造体形成を示し、そして「砕ける」かまたはこの技法で与えられた歪によって破壊された。
【実施例9】
【0104】
この実施例は、本発明による増粘剤組成物の製造を例証する。
【0105】
本発明のデンプンを、10重量%のデンプンを有するスラリーを生じる量の水と混合する。ゾルは砕けやすいテキスチャーおよび刺激のない風味を有する。ゾルは、約90℃で10分間煮沸された場合、普通のコーンスターチから製造された同様の増粘剤組成物よりも透明で且つ砕けやすいテキスチャーの増粘剤組成物を生じる。
【実施例10】
【0106】
この実施例は、本発明のデンプンから製造されたゲルの食感を普通のデンプンによって製造されたゲルと比較する。
【0107】
普通のデンプンおよび本発明のデンプンを、ブラベンダー粘度計を用いてペーストにした。デンプンを5.5%固体のスラリーにした後、急熱様式を用いて50℃まで加熱した。1.5℃/分の制御熱を用いて、スラリーを95℃まで加熱した後、この温度で30分間保持した。最終固体は5.9%であった。次に、試料デンプンペーストを小ゼリージャーに注入し、セロファンで覆い、そして分析する前に24時間熟成させた。次に、風味パネルに質問して以下の属性について試料を等級付けした。
【0108】
最初に、それらを手で触れた相対的堅さで二つに分類した。
【0109】
【表4−2】
【0110】
次に、それらを咀嚼した時のこの試料の相対的砕けやすさ、堅さおよび透明さを等級付けした。
【0111】
【表4−3】
【0112】
これらの結果は、これらの試料の堅さが同様であることを示している。しかしながら、本発明のデンプンは咀嚼した時にはるかに砕けやすい。
【0113】
更に、それは、普通に基くデンプンゲルよりも速く口からなくなる傾向がある。パネルは全員、本発明のデンプンが、ゼラチンまたはペクチンの場合と同様の「さっぱりした」食感のゲルを生じたことに同意した。
【実施例11】
【0114】
この実施例は、本発明のデンプンを用いるガムキャンディーの製造を例証する。
【0115】
以下の成分および手順を用いる。
【0116】
【表5】
【0117】
手順
全成分を混合した後、ジェットクッカーなどの慣用的な装置を用いて340°Fまで煮沸する。次に、煮沸したスラリーをキャンディー金型に注入し且つ凝固させる。
【実施例12】
【0118】
この実施例は、本発明のデンプンを用いるババロアパイの製造を例証する。
【0119】
以下の成分および手順を用いる。
【0120】
【表6】
【0121】
手順
卵黄以外のパイ詰め物成分全部を混合し且つ195°Fで3〜5分間煮沸する。
次に、成分を絶えず撹拌しながら120°Fまで冷却する。次に、卵黄を加え、添加物を十分にブレンドする。次に、この混合物を慣用的なパイ皮に加え、そして配膳する前に室温まで冷却する。
【実施例13】
【0122】
この実施例は、本発明のデンプンを用いるレモンパイ詰め物の製造を例証する。
【0123】
以下の成分および手順を用いる。
【0124】
【表7】
【0125】
手順
半分の水を砂糖と混合し且つ沸騰させる。残りの成分を全部一緒にスラリーにした後、沸騰している砂糖および水に加える。次に、この混合物の温度を200°Fに調整し且つそこで2分間保持する。次に、混合物を、用意されたパイ皮に注入し、そして冷却し且つ凝固させる。
【実施例14】
【0126】
この実施例は、本発明のデンプンを用いるチョコレートムースの製造を例証する。表8の配合物を用いてムースミックスを製造する。
【0127】
【表8】
【0128】
手順
成分を混合して均一ブレンドを生成する。
使用
ムースミックス200gとミルク1カップ(250g)とを混合する。電気ミキサーを用いて低速で1分間混合する。ボウルを掻取る。軽くふわふわになるまで高速で3分間混合する。取分け用の皿にスプーンですくい取り、1時間冷蔵した後に配膳する。
【0129】
ムースミックスを製造するには、成分を全部混合する。ムース自体を調理するには、ムースミックス200グラムをミルク250グラムと混合し且つ低速で混合する。次に、混合物を高速で撹拌してそれが軽くふわふわになるようにし、そして混合物を1時間冷蔵する。この方法で、軽くふわふわのムースが調理される。
【0130】
したがって、本発明は、本発明の好ましい実施態様に関してある程度具体的に記載された。しかしながら、本発明は、先行技術に照らして解釈される請求の範囲によって規定されるので、本明細書中に包含される発明の概念から逸脱することなく、本発明の好ましい実施態様に対して修正または変更を行うことができるということは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】単一突然変異体の種々の遺伝子量の酵素活性のグラフである。
【図2A】ワクシー、アミロースエキステンダーおよび普通のトウモロコシのDSC走査のグラフである。
【図2B】二重突然変異体(aeaeae/wxwxwx)のDSC走査のグラフである。
【図2C】インターミュータント(aeaeAe/wxwxwx)からのデンプンのDSC走査のグラフである。
【図2D】もう一つのインターミュータント(wxwxWx/AeAeae)からのデンプンのDSC走査のグラフである。
【図3A】種々のpHでの普通のデンプンのブラベンダー(Brabender)データのグラフである。
【図3B】種々のpHでのワクシーデンプンのブラベンダーデータのグラフである。
【図3C】種々のpHでの70%アミロースデンプンのブラベンダーデータのグラフである。
【図3D】種々のpHでの二重突然変異体デンプンのブラベンダーデータのグラフである。
【図3E】種々のpHでの第一インターミュータントデンプンのブラベンダーデータのグラフである。
【図3F】種々のpHでの第二インターミュータントデンプンのブラベンダーデータのグラフである。
【図4A】分岐酵素Iの遺伝子発現レベルを変化させるのに用いられる植物形質転換ベクターの設計および制限部位を示す図である。
【図4B】分岐酵素IIの遺伝子発現レベルを変化させるのに用いられる植物形質転換ベクターの設計および制限部位を示す図である。
【図4C】結合型デンプンシンターゼ(ワクシー)の遺伝子発現レベルを変化させるのに用いられる植物形質転換ベクターの設計および制限部位を示す図である。
【図4D】可溶性デンプンシンターゼの遺伝子発現レベルを変化させるのに用いられる植物形質転換ベクターの設計および制限部位を示す図である。
【図5】本発明のデンプンから製造されたゲルを、aewxデンプンから製造されたゲルおよびワクシー(wx)デンプンから製造されたゲルに対して比較した時間に対する弾性率(G′)のプロットである。
【図6】本発明のおよびaewxデンプン両方の歪に対してプロットされた弾性率(G′)のプロットである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物中の正常なデンプン合成経路を変化させるゲノム成分を有するトランスジェニック植物または突然変異した植物に関する。更に詳しくは、本発明は、新しい形のデンプンを有意の量で生成する遺伝子型を有する植物に関する。特に、本発明は、2種類またはそれ以上の野生型遺伝子のヘテロ接合の遺伝子型(例えば、Aa/Bb)を含む胚および該遺伝子のヘテロ接合の遺伝子型(例えば、AAa/BBbまたはAAa/bbBまたはaaA/BBbまたはaaA/bbB)を有する内胚乳を有する穀粒並びにそれから生産されるデンプンに関する。
【0002】
このような穀粒は、少なくとも1種類の遺伝子の劣性ホモ接合の遺伝子型およびもう一つの遺伝子の野生型(例えば、aa/BB)を有する植物に、少なくとも1種類の他の遺伝子の劣性ホモ接合の遺伝子型および他の遺伝子の野生型(例えば、AA/bb)を有する別の植物からの花粉を授粉することによって生産される。
【背景技術】
【0003】
大部分の植物は、デンプンを生産し且つ貯蔵する。これらの植物は、デンプン生産のためのデンプン合成経路を有する。生産されたデンプンの量は、植物の種類によって異なる。最も一般的に知られるデンプン生産性植物は穀物穀粒である。これらの穀物としては、コメ、トウモロコシ、モロコシ、オオムギ、コムギ、ライムギおよびオートムギがある。更に、サツマイモを含めたイモ類およびバナナのようないくつかの果実がデンプン生産性として知られている。
【0004】
デンプンは、葉の光合成の際の炭素固定の重要な最終生成物であり且つ種子および果実の重要な貯蔵産物である。経済的条件で、コムギ、コメおよびトウモロコシの3種類の穀粒作物の食用部分によって生産されるデンプンは、熱量として計算された世界の食糧の約3分の2を与える。
【0005】
植物からのデンプンは様々な方法で用いられる。例えば、それを抽出し、そして料理用および食品加工用に用いることができる。デンプンは、穀粒すなわち植物中にあり且つ動物およびヒトの消費用に用いられうる。デンプンはまた、アルコールを加工する蒸留法において用いることができ、例えば、デンプンをエタノールに転化することができる。更に、デンプンは、高フルクトースシロップおよび他の産業用成分に転化することができる。
【0006】
デンプンは、辞書においては、接着剤、サイズ剤、食品、化粧品、医薬品等で用いられる化学的に複雑な炭水化物である粒状固体として定義されている。より一般的には、デンプンは、アミロースおよびアミロペクチンから成る。アミロースおよびアミロペクチンは、色素体区分(光合成細胞における葉緑体または非光合成細胞におけるアミロプラスト)で合成される。種々の植物は、異なった比率のアミロペクチンおよびアミロースを生産する。更に、アミロペクチンの種々の分岐パターン並びにアミロースおよびアミロペクチン鎖の種々の鎖長は、種々のデンプン性状を生じさせる。例えば、アミロースおよびアミロペクチンの微細構造は、種々の植物において異なるので、分岐パターンおよび鎖長はかなり異なり、種々の用途で有用である新しい且つ新規な性状をもたらす。これまでに、独特の性状を有するデンプンを製造する4種類の方法、(i)種々の植物種から抽出されたデンプンを用いること、(ii)特定の植物の突然変異系統から抽出されたデンプンを用いること、(iii)化学的に変性された天然および突然変異デンプンを用いること、および(iv)物理的に変性された天然および突然変異デンプンを用いることがあった。いずれの場合にも、新しいデンプンは、新しいデンプン種によって与えられる独特の性状ゆえに有益であった。
【0007】
植物中の突然変異遺伝子がデンプンの性状に影響を与えることは知られている。トウモロコシにおけるデンプン関連の種々の突然変異遺伝子が確認されており、クローン化されているものもある。これらの突然変異遺伝子を、トウモロコシ穀粒の物理的外観(表現型)またはデンプンの性状によって命名した。これらの劣性突然変異遺伝子としては、ワクシー(waxy)(wx)、糖質(sugary)(su)[糖質−1(su1)、糖質−2(su2)、糖質−3(su3)、糖質−4(su4)を含むが、これらに限定されない]、艶なし(dull)(du)、アミロースエキステンダー(amyloseextender)(ae)、角質(horny)(h)、縮み(shrunken)(sh)[縮み−1(sh−1)、縮み−2(sh−2)を含むが、これらに制限されない]がある。これらの劣性遺伝子突然変異体の多くは、デンプン合成経路において既知の酵素のイソ型を生産する。これらの遺伝子の劣性突然変異対立遺伝子は、植物においてホモ接合である場合またはトランスジェニック植物において十分な量で発現される場合、該経路において一つの酵素の特定のイソ型の活性の完全なまたはほぼ完全な低下(以下、酵素イソ型活性の完全な低下と定義する)を引き起こす。デンプン合成経路におけるこの変化は、種々の性状を有するデンプンの生成を引き起こす。
【0008】
異なる種類のデンプンを生産するいくつかの作物品種は知られている。上質の種類のデンプンは、特定の加工法または特定の最終用途を含めたいくつかの目的に適するようになる。天然に存在するトウモロコシ突然変異体は、各種食品および他の用途において用いるのに適当な異なった微細構造を有するデンプンを生産する。既知の突然変異体は変化したデンプンを生産するが、これらの系統の多くは、作物育種および/または農場経営者の目的には不適当である。例えば、それらは、収量が比較的少ないことがあるし、および/または加工するのが難しいし、および/または発芽が不十分であることがある。
【0009】
種々のデンプンを生じるために、単一および二重突然変異植物を育種した。単一突然変異体は、一つの劣性突然変異遺伝子のホモ接合である植物である。例えば、ワクシートウモロコシ、ワクシーコメ、ワクシーオオムギおよびワクシーモロコシは、ホモ接合突然変異ワクシー(wx)遺伝子を有する。ワクシー遺伝子型からのデンプンはアミロースを含まないかまたは極めて少量しか含まないが、アミロースエキステンダー(ae)として知られる別の突然変異は、高アミロースのデンプンを生じる。二重突然変異体は、二つの劣性突然変異遺伝子のホモ接合(または完全な発現)を有する1種類の植物である。例えば、wxfl1二重突然変異体が米国特許第4,789,738号明細書で示されている。多数の他の新規なデンプンは、他のデンプン特許で与えられており、そこでは、二重または三重突然変異体が生産されている(例えば、各種食品において用いるのに適当な異なった微細構造を有するデンプンを生産する天然に存在するトウモロコシ突然変異体を記載している米国特許出願第4789557号明細書、同第4790997号明細書、同第4774328号明細書、同第4770710号明細書、同第4798735号明細書、同第4767849号明細書、同第4801470号明細書、同第4789738号明細書、同第4792458号明細書および同第5009911号明細書)。本発明は、変化したデンプンを生産し且つ二重または三重突然変異体を必要としないので、これらの出願から考えると、本発明は極めて意外である。
【0010】
正常なデンプンは、(人為的に)化学的に変性されていない、またはデンプン合成経路を調節する予想の遺伝子(野生型)を有する植物から生産されるデンプンとして定義される。簡単に解釈すると、二重の小文字、例えば、aaは、ホモ接合劣性突然変異遺伝子を意味し、二重の大文字、例えば、AAは、ホモ接合の非突然変異遺伝子(野生型)を意味し、そして小文字一つと大文字一つ、例えば、Aaは、一つが突然変異体で一つが非突然変異体の非ホモ接合の遺伝子対を意味するものである。同じ大きさの異なる文字は異なる遺伝子を意味し、「aa/bb」は二重突然変異体であり、「aa/bB」は、植物のゲノム中の単一ホモ接合突然変異遺伝子およびヘテロ接合突然変異遺伝子であると考えられる。本出願の目的に対して、斜線の片側の任意の三文字の順序は交換することができ、遺伝子を与えた親を規定するものではない。例えば、AAa/bbBは、aAA/bBb、AaA/Bbb、AaA/bBb,aAA/Bbb等と同等であると定義される。
【0011】
トウモロコシ植物およびその胚は二倍体であるが、トウモロコシ内胚乳は三倍体である。内胚乳遺伝子型は、雌性植物部分に由来する2遺伝子量および花粉すなわち雄性植物部分に由来する1遺伝子量を有する。したがって、単一突然変異植物「aa」を雌性として用い且つ非突然変異植物「AA」雄性に対して交雑する場合、この雌性植物の穀粒の内胚乳は「aaA」であろう。非突然変異植物「AA」を突然変異植物「aa」に対して、該非突然変異体を雌性として用いて交雑する場合、2遺伝子量は雌性に由来し且つ1遺伝子量が雄性植物に由来するので、雌性植物の穀粒の内胚乳は「Aaa」であろう。古典的教示は、突然変異遺伝子が劣性であり且つ非突然変異体が優性であるということであり、したがって、内胚乳中に以下の遺伝子量、すなわち、「aaA」または「AAA」または「AAa」を有する植物によって生産されたデンプンは、期待された量の正常なデンプンとなる。しかしながら、雄性として働くホモ接合突然変異植物「aa」に対して交雑された雌性として働くホモ接合突然変異植物「aa」の内胚乳は、遺伝子量「aaa」を有する内胚乳となる。この内胚乳は、正常なデンプンとは異なる性状を有するデンプンを生じる。同様に、「aaa/bbb」である内胚乳を有する二重突然変異体からのデンプンは、正常なデンプンとのデンプン性状の違いを示す。これらのデンプンの違いは、それらが、化学的に変性されたデンプンに代わりうるし、或いは食品と一緒に若しくは中にまたはアルコール製造における穀粒としてまたは一般的なデンプン産業用途において用いることができるという点で有用である。
【0012】
明らかに、デンプンの種々の物理的性質を有するデンプンを有する穀粒の生産は、2種類の突然変異した植物を、両方の遺伝子の劣性ホモ接合である穀粒を生じるように交雑することを必要とする。突然変異植物は、標準的な植物よりも予測性の度合いが低い。
【0013】
二重突然変異雑種および/または同系繁殖体(inbred)および若干の単一突然変異体からの穀粒の生産およびデンプンの抽出には問題が頻発している。生産されるデンプンの量は、通常、非突然変異植物によって生産されるデンプンの量よりも少なく、更に、デンプン粒の大きさおよび/またはデンプン粒保全性が低下している。作物中で生産されたデンプンの量が比較的低い、構造的に変化したデンプンを生産する既知の二重突然変異系統によるこの問題は、種子の発芽能力を不十分にるすことがある。更に、種子の低下したデンプンの収量は、突然変異が、細胞の正常なデンプン合成機能を破壊させるので、避けられないと考えられる。収量の有意の減損または低下したデンプン粒の大きさ若しくは保全性を伴うことなく、構造的に変化したデンプンまたは変化した性状を有する穀粒を生産する方法がなお必要とされている。
【発明の開示】
【0014】
発明の概要
本発明の第一の目的は、二重突然変異同系繁殖体の交雑を必要としない、複合糖質含量の変化した穀粒を有する雑種植物を発生させる方法を提供することである。
【0015】
本発明の目的は、変化したデンプン性状を有する穀粒を生産する植物を提供することである。
【0016】
本発明のもう一つの目的は、変化したデンプン性状を有する穀粒を生産するトランスジェニック植物を提供することである。
【0017】
本発明の更にもう一つの目的は、変化したデンプンおよび関連した突然変異植物が生産するよりも多量のデンプン両方を生産するトウモロコシ植物を提供することである。
【0018】
本発明の更にもう一つの目的は、植物のデンプン合成経路において特定の酵素の少なくとも2種類のイソ型の活性を不完全に低下させる遺伝子を含む新しい植物を提供することである。
【0019】
本発明のもう一つの目的は、遺伝子型「AAa/BBbまたはAAa/bbBまたはaaA/BBbまたはaaA/bbB」を有する内胚乳を有するトウモロコシ植物を提供することである。
【0020】
本発明の更に別の目的は、以下の内胚乳遺伝子型「wxwxWX/AeAeae」を生じる植物である。
【0021】
本発明のまた更に別の目的は、遺伝子型「AAa/BBbまたはAAa/bbBまたはaaA/BBbまたはaaA/bbB」を有する植物によって生産されうる変化したデンプンを提供することである。
【0022】
本発明の更にもう一つの目的は、本発明のトウモロコシ植物から得られたデンプンの新規な用途を提供することである。
【0023】
本発明は、概して、AAa/bbBの内胚乳遺伝子型を有するインターミュータント、およびワクシー、ワクシー、アミロースエキステンダー(wxwxWx/AEAEae)である内胚乳を含むいくつかのインターミュータントを生産する方法を包含する。変化したデンプン特性を有する穀粒を生産する方法は、花をつけることができる雌性として働く親を植付ける工程を含む。デンプン合成経路において少なくとも1種類の特定のイソ型酵素がほぼ完全に低下している雌性親。これは、ホモ接合劣性突然変異体によるか、或いは、アンチセンスまたは同時抑圧(co−suppression)またはセンス−ダウンレギュレーション(sense−downregulation)として一般的に知られる技法を用いるクローン化遺伝子の使用による野生型遺伝子の部分ダウンレギュレーションによることがある。更に、雌性は、デンプン合成経路において少なくとも1種類の特定のイソ型酵素が不完全に低下している。これは、ヘテロ接合劣性突然変異遺伝子または部分ダウンレギュレーションによることがある。雌性がどのように生じるかにかかわりなく、それは単に雌性部分として働くべきである。これを確実にするために、工程は、花粉を生じる第一の親の能力を除去することを含む。本方法は、非突然変異親である雄性として働く親の花粉を雌性として働く親に授粉する工程を含む。前記第一の親によって生産された穀粒を収穫する。更に、本方法は、穀粒からのデンプンの抽出を含むことかできる。
【0024】
本発明は、更に、前記植物のデンプン合成経路において酵素の少なくとも2種類の特定のイソ型の活性を不完全に低下させる遺伝子を含むゲノム成分を有する植物を包含する。そしてそれが生産するデンプンは、記載されたのと同様の植物によって生成されるデンプンと比較した場合、変化した構造を有するが、植物のデンプン合成経路において酵素のイソ型を生成しないゲノム成分を含む。
【0025】
穀物穀粒などの穀粒中の前記デンプンを生じる植物。穀粒の内胚乳の遺伝子型がwxwxWx/AeAeaeであるアミロースエキステンダー遺伝子型(aeae)などを有する雄性植物と交雑されたワクシー遺伝子型(wxwx)などを有する雌性植物によって生産された穀粒。
【0026】
言い換えると、本発明は、デンプン生産性植物であって、前記植物のデンプン合成経路において少なくとも2種類の特定のイソ型酵素の活性を不完全に低下させる遺伝子を含むゲノム成分を含み、それによって前記植物が、前記遺伝子がデンプン合成経路中の酵素の同様の2種類の特定イソ型の活性を完全に低下させた場合に前記植物が生産するであろうよりも実質的に多量のデンプンを生産する上記デンプン生産性植物である。
【0027】
劣性突然変異遺伝子の1遺伝子量および野生型の2遺伝子量を含む;および劣性突然変異体の2遺伝子量および野生型の1遺伝子量を有する2種類の遺伝子を有する内胚乳を有する穀粒。本明細書中において、本発明は、wxwxWx/AeAeae、またはaeaeAe/WxWxwx、またはwxwxWx/DuDudu、またはduduDu/WxWxwx、またはaeaeAe/DuDudu、またはduduDu/AeAeae、またはwxwxWx/SuSusu、またはsusuSu/WxWxwx、またはaeaeAe/SuSusu、またはsusuSu/AeAeae、またはduduDu/SuSusu、またはsusuSu/DuDudu等の内胚乳遺伝子型を有する穀粒を包含する。
【0028】
wxwxWx/AeAeaeの遺伝子型を有する穀粒からのデンプン。Aeaeae/WxWxwxの遺伝子型を有する穀粒からのデンプン。
【0029】
aa/BBの二倍体遺伝子型を有し且つaaA/BBbの三倍体遺伝子型を有し、ここにおいて、aは劣性突然変異遺伝子であり且つAは野生型遺伝子であり、そしてbは劣性突然変異遺伝子であり且つBは野生型遺伝子であり、デンプンは正常なデンプンから変化しているようにあり、ここにおいてaおよびbは、ae、wx、sh、bt、h、su、fl、opから選択することができ且つBおよびAは、Ae、Wx、Sh、Bt、H、Su、Fl、Opから選択することができる雌性植物。
【0030】
本発明によって得られたデンプンは、独特の速さで口中で砕けてなくなる強弾性ゲルを生じる。本発明のデンプンは、従来のデンプンと比較して独特の且つ特殊なテキスチャーを有するゲルを生じる。独特の且つ特殊なテキスチャーは、本発明のデンプンを、食品の全体または一部分での、天然ガムおよびゼラチンなどの従来のゲル化ガムの代用物として適当にさせる。本発明のデンプンはまた、普通のデンプンよりも弾性のゲルを生じることが分かった。更に、トウモロコシから製造されたコーンスターチは、普通のデンプンから製造されたゲルと比較して向上した透明性を有するゲルを生じることが分かった。このような向上した透明性は、ヒトの眼で見えるし且つ一層食欲をそそる食品にかなっている。
【0031】
本発明をここで、例として、添付の図面に関する以下の記載および例によって記載する。
【0032】
発明の詳細な説明
概して、本発明は、デンプンの量および種類を変化させ、そしてその結果として、植物によって生産される穀粒を変化させる少なくとも2種類のデンプン合成性酵素の操作された発現を有する改良された作物系統である。
【0033】
デンプン合成経路において酵素の特定のイソ型の活性を部分的にダウンレギュレートするまたは低下させる少なくとも2種類の遺伝子を有する植物は、意外にも、穀粒中に有意の量のデンプンを生産し且つ変化したデンプン種を生産することが発見された。
【0034】
特殊トウモロコシすなわち突然変異植物は、その変化した内胚乳のために、「正常な」トウモロコシとは異なる。変化した内胚乳は、高度のデンプン分岐、または変化した糖含量、または異なる穀粒構造をもたらす。内胚乳は、当然ながら、精子および胚珠から生成され、そして両親の選択は内胚乳の構成に影響を与える。
【0035】
本発明は、二つの基本的な方法によって生産することができる。本発明は、突然変異体育種の使用によってある選択された作物種中で生産することができる。そして本発明は、デンプン合成経路において2種類またはそれ以上の酵素を部分的にダウンレギュレートする遺伝子による植物の形質転換の使用によって種々の植物において生産することができる。更に詳しくは、デンプン合成経路における酵素のイソ型の一つの、正常活性の約1/3および他のイソ型酵素の正常活性の2/3までのダウンレギュレーションまたは正常活性の約2/3までのデンプン合成経路における両方のイソ型酵素のダウンレギュレーション。これらの方法にはそれぞれ利点がある。
【0036】
第一に、独特の穀粒および穀草作物中のデンプンを開発するための突然変異体の使用は広く知られている。しかしながら、本発明は、正常なデンプン特性を有する穀粒を生産すると期待されるので、それは極めて独特であり且つ意外である。
以下の表は、本発明がいかに意外であるかを説明する。
【0037】
【表1−1】
【0038】
明らかに、表で示された本発明の内胚乳の遺伝子型は、完全に劣性の遺伝子を有していなかったので、デンプン収量および構造は正常であると予想された。実際に、本発明によれば、穀粒は、正常なデンプン構造が変化したデンプンを示していない。歴史的に、変化したデンプンが生産される場合、通常、少量しか生産されない。本発明の変化したデンプンは、意外にも、予想の量よりも多量に生産された。更に、このデンプンの生産は、二重突然変異作物の生産よりもはるかに簡単である。従来、単一突然変異体雑種だけが大規模デンプン生産用に広く用いられてきた。従来、二重突然変異体を開発するために、両方の親は、かなりの研究および開発努力を必要とし且つ不十分なデンプン収量および不十分な種子発芽能力をもたらす両方の突然変異を有していなければならなかった。したがって、二重突然変異体の小規模生産だけが可能であった。
【0039】
本発明は、変化したデンプン特性を有する穀粒を生産する方法であって、花をつけることができる親に授粉する工程を含み、この親は、デンプン合成経路において酵素(A)の少なくとも一つの特定のイソ型がほぼ完全に低下していて且つデンプン合成経路において酵素(B)の少なくとも一つの他の特定のイソ型がほぼ完全に低下している上記工程を包含する。他の親は、デンプン合成経路において酵素(A)の一つのイソ型が低下していないし且つ酵素(B)の少なくとも一つの他の特定のイソ型がほぼ完全に低下している。次に、花粉を生産する前記第一の親の能力を排除し且つ前記第二の突然変異体親から花粉を生じさせ、そして最後に前記第一の親によって生産された穀粒を収穫する必要がある。更に、該方法は、穀粒からのデンプンの抽出および有益であることが分かっている種々の用途に対する特殊なデンプンとしての該デンプンの使用を包含することができる。
【0040】
本発明によってゾルを製造するために、水および有効量の本発明のデンプンを含むスラリーを調製し、そしてゾルに煮沸工程を施してペーストを生成する。概して、煮沸は、スラリーの温度をほぼデンプンの糊化温度を越えて上昇させること、および顆粒が破裂し且つペーストが生成されるような十分な剪断応力を施すことを伴う。顆粒が全て破裂する必要はない。好ましくは、ゾルは、本発明のデンプンを全ゾル重量の約1〜約20%の量で含む。スラリーを約90℃以上の温度で煮沸して増粘性を与えた後、食品に加える。煮沸時間は約10分間である。
【0041】
本発明によるゾルは、デンプンが既に、それを冷水膨潤性にする工程を施されていた場合、煮沸する必要はない。煮沸は、概して、本発明のデンプンの水性スラリーの温度をデンプンの糊化温度まで上昇させること、およびデンプン粒が破壊し且つペーストを生成するような剪断応力をデンプンに施すことを含む。
【0042】
本発明のデンプンのゾルまたは増粘剤組成物を慣用法で食品に加えて、本発明のデンプンの利点を食品に与える。
【0043】
増粘された食品を製造するために、本発明によって製造されたゾルを食品と混合し、そして組成物を、増粘された食品を与えるのに必要な程度まで煮沸する。慣用的な混合法を用いて、ゾルと食品とを混合する。ゾルおよび食品組成物の煮沸はまた、慣用法で行われる。
【0044】
或いは、本発明のデンプンを食品と混合するかまたは、本発明のデンプンおよび水を含むスラリーを食品と混合し、そして得られた混合物を、増粘された食品を得るのに望ましい程度まで煮沸する。デンプン自体またはデンプン自体を含むスラリーを食品と混合する場合、得られた混合物を煮沸して、増粘された食品を与える必要がある。混合並びに煮沸は、慣用法で行われる。煮沸は、約90℃以上の温度で行われる。煮沸時間は約10分間であるが、存在する食品の量および煮沸中に配合物に施される剪断応力の量に応じて変更してよい。
【0045】
このような増粘剤組成物は、使用者に対してかなりの経済的利点を与えることができる。当業者は、長い間、種々のゲル化ガムをそれらの優れた破壊テキスチャーのために用いてきた。本発明の出願としては、これらに限定されるものではないが、ガムキャンデー、ゲルデザート、グレーズ(glaze)およびスプレッドが挙げられ、従来のゲル化ガム、例えば、κカラゲニン、寒天、ペクチンまたはゼラチンに代用して用いることができる。これらの従来のゲル化ガムは極めて高価でありうるが、しかも、風味がよくないこと、熱若しくは酸安定性に欠けること、限定された利用可能性または適性認可を欠いていることを含めた他の欠点を有する。本発明のデンプンは、これら従来のゲル化ガムの全部または一部分に代用することができる。
【0046】
食品中のゲル化ガムに代用するために、本発明のデンプン:ゲル化ガムを約1:1の重量比で用いることができる。更に多量または少量の本発明のデンプンを用いてゲル化ガムに代用してよい。このようなゲル化ガムとしては、ゼラチン、ペクチン、カラゲニン、アラビアゴム、トラガカントゴム、グアー(guar)、イナゴマメ(locustbean)、ザンタン(zanthan)、寒天、アルギンおよびカルボキシメチルセルロースがある。
【0047】
当然ながら、本発明のデンプンは、ゲル特性および口中での砕けやすさ(clean break)を与える必要があるいずれの食品中でも用いることができる。例えば、本発明のデンプンを、普通のデンプンが従来用いられてきた食品中で用い、それによって、普通のデンプンを用いた同様の食品と比較した場合に、食品に向上した性状、すなわち、砕けやすさを与えることができる。
【0048】
本発明のデンプンによって得られたゲルの砕けやすさは、種々の食品用途において有用である。デンプンゲルの砕けやすさは、種々の製菓用途、例えば、パイ用のクリームまたは果実詰め物、例えば、レモン、バナナクリームまたはババロア;およびクッキー用の低または減脂肪高固形分果実芯、例えば、イチジクバーで有用である。本発明のデンプンはまた、ムース、エッグカスタード、フラン(flan)およびアスピック(aspic)において向上したテキスチャーを生じる。
【0049】
明細書および請求の範囲において用いられるデンプンという用語は、デンプン含有植物から抽出される実質的に純粋なデンプン粒のみならず、デンプン粒の穀粒製品、例えば、粉末、粗粒、ホミニー(hominy)およびひき割りを意味する。
【0050】
本発明の以下の実施例を単に例証するために与える。これらの実施例は、本発明の形式または用途を制限するものではない。本発明またはその穀粒若しくはデンプン若しくは糖は、限定されなくてよいが、食品、紙、プラスチック、接着剤、ペイントの製造、エタノールの製造およびコーンシロップ製品において有用でありうる。
【実施例1】
【0051】
本発明の種々の実施態様の物理的性質(類似の遺伝子型は種々のトウモロコシ交雑種に由来する)。これらの表は、新しい且つ新規なデンプンを評価する当業者に周知のデータを示す。水分並びに油、タンパク質、可溶性物およびデンプン%のデータは、収量および微粉砕可能性を評価する場合に有用である。デンプンDSC(示差走査熱量測定)データは、デンプンの煮沸および糊化特性を評価するのに有効である。デンプン粒度データは、デンプンの微粉砕および分離特性について決定を行うのに有効である。ブラベンダーおよびデンプンペーストデータは、主として、特定のデンプン増粘性並びにペースト化および糊化特性が望まれる向上した食品用途のための新しいデンプンの可能性を評価するのに最も重要である。このようなデータは、情報収集を総括して判断する場合、デンプン性状および可能性について更に詳細な試験を行うかどうかを当業者に決定させる。
【0052】
【表1−2】
【0053】
【表2−1】
【0054】
【表2−2】
【0055】
【表2−3】
【0056】
【表2−4】
【0057】
【表2−5】
【0058】
定義:
示差走査熱量測定(DSC)
IRは、初期上昇を示す。
HPは、熱ピークを示す。
HFは、最終熱を示す。
CPは、冷却ピークを示す。
CFは、最終冷却を示す。
ブルックフィールド粘度計
ブルックフィールド粘度計は、剪断強さ(センチポアズ、cPで)およびデンプンペーストの安定性を測定する。
ブラベンダー粘度計(BRABENDER VISCO-AMYLOGRAPH)データ
ペースト化温度は、ペースト生成温度を示す。
ピーク粘度は、使用しうるペーストを与えるのに必要な温度を示す。
95℃での粘度は、デンプンの煮沸の容易さを示す。
50℃での粘度は、熱ペーストの煮沸中のペースト粘度の後退を示す。
50℃で1時間後の粘度は、煮沸ペーストの安定性を示す。
トウモロコシのタンパク質、デンプン、油および水分%
トウモロコシ中の油、テンプンおよびタンパク質の百分率は、デンプンがいかに回復しうるかというデンプン収量の目安を与える。
デンプンのタンパク質、デンプン、油および水分%
デンプン中の油、デンプンおよびタンパク質の百分率は、デンプンがいかに十分に精製されているかおよび微粉砕可能性を示すかという目安を与える。
アミロース%およびL−最大
これらのデータは、デンプン中の見掛けのアミロース濃度の尺度を与える。
デンプン粒度データ
デンプン粒度は、デンプン収量の指標および微粉砕工程による回復可能性を与える。
便法
表2におけるaeaewxは、aeaeAE/wxWxWxを意味し、同様に、duduwx=duduDU/wxWxWxを意味する。この表中には、野生型は挙げられていない。
【0059】
図1は、アミロースエキステンダーおよび艶なしの単一突然変異体の突然変異対立遺伝子の個々の遺伝子量(例えば、MMM、mMM、mmM、mmm)の酵素活性のグラフである。これらのデータは、スクロースシンターゼ(SS)、UDP−グルコースピロホスホリラーゼ(UDPG−PP)、グルコキナーゼ(GK)、フルクトキナーゼ(FK)、ホスホグルコムターゼ(PGM)、ホスホグルコースイソメラーゼ(PGI)、ATP−依存性ホスホフルクトキナーゼ(PFK)、PPi依存性ホスホフルクトキナーゼ(PFP)、ADP−グルコースピロホスホリラーゼ(ADPG−PP)、可溶性デンプンシンターゼ(SSS)、分岐酵素(BE)および結合性デンプンシンターゼ(BSS)の酵素活性を示す。酵素活性は、野生型対照(MMM)に相対する百分率として示される。完全な突然変異体(mmm)の場合、デンプン合成経路における種々の酵素の発現レベルに対して劇的な効果がある。部分突然変異体(mMMおよびmmM)の場合、発現レベルには検出しうる変化がほとんどない。これらのデータは、単一突然変異体に見られたデンプン特性の変化が、いくつかの酵素の過発現並びに突然変異した対立遺伝子によってコードされた酵素の除去の結果であることを示した。2種類の突然変異体量(例えば、wxwxWx)と別の突然変異の他の量(例えば、AeAeae)とを組合わせることにより、2種類の酵素は、残りの経路で見られた過発現を伴うことなく部分的に減少するであろう。
【0060】
図2は、ワクシー、アミロースエキステンダーおよび普通の(野生型)トウモロコシから得られた穀粒から抽出されたデンプンのDSC走査のグラフである。このようなDSC走査は、当業者が多数のデータを与えるのを容易にする(ピーク温度、ΔH、ピークII温度、開始温度および終了温度のデータについては本文中の表を参照されたい)。高アミロースデンプンのプロフィールは普通のデンプンおよびワクシーデンプンとは異なることが特に注目に値する。
【0061】
図2bは、二重突然変異体(aeaeae/wxwxwx)トウモロコシから得られた穀粒から抽出されたブンテンのDSC走査のグラフである。このようなDSC走査は、当業者が多数のデータを与えるのを容易にする(ピーク温度、ΔH、ピークII温度、開始温度および終了温度のデータについては本文中の表を参照されたい)。二重突然変異体のプロフィールは、普通のデンプン並びに単一突然変異体、ワクシーおよび高アミロースについて図2aで与えられたデータとは異なることが特に注目に値する。
【0062】
図2cは、インターミュータント(aeaeAe/WxWxwx)トウモロコシから得られた穀粒から抽出されたデンプンのDSC走査のグラフである。このようなDSC走査は、当業者が多数のデータを与えるのを容易にする(ピーク温度、ΔH、ピークII温度、開始温度および終了温度のデータについては本文中の表を参照されたい)。インターミュータントデンプンのプロフィールは二重突然変異体のデンプンとは異なり且つワクシーデンプンのそれと似ているらしいことが特に注目に値する。
【0063】
図2dは、インターミュータント(wxwxWx/AeAeae)トウモロコシから得られた穀粒から抽出されたブンテンのDSC走査のグラフである。このようなDSC走査は、当業者が多数のデータを与えるのを容易にする(ピーク温度、ΔH、ピークII温度、開始温度および終了温度のデータについては本文中の表を参照されたい)。インターミュータントデンプンのプロフィールは二重突然変異体のデンプンとは異なり且つワクシーデンプンのそれと似ているらしいことが特に注目に値する。
【0064】
図3aは、中性かまたは酸性条件において普通のデンプンから得られたブラベンダーデータのグラフである。普通のトウモロコシデンプンは、酸性条件を用いると粘度の実質的な低下を示す。
【0065】
図3bは、中性かまたは酸性条件においてワクシーデンプンから得られたブラベンダーデータのグラフである。ワクシー突然変異は、中性条件においてデンプンの粘度に顕著に影響を与える。
【0066】
図3cは、中性かまたは酸性条件においてアミロースエキステンダー(70%アミロース)デンプンから得られたブラベンダーデータのグラフである。高アミロースデンプンは、酸性かまたは中性条件において粘度が増加する。
【0067】
図3dは、中性条件において二重突然変異体(aeaeae/wxwxwx)デンプンから得られたブラベンダーデータのグラフである。二重突然変異体デンプンは、ワクシー突然変異のホモ接合であるにもかかわらず、粘度を維持する。
【0068】
図3eは、中性条件においてインターミュータント(aeaeAe/WxWxwx)デンプンから得られたブラベンダーデータのグラフである。これらのデータから、新しいインターミュータントデンプンは、見掛けのアミロース含量が増加していないにもかかわらず、高アミロース突然変異体について見られたのと同様の粘度の増加度を与えることが特に注目に値する。
【0069】
図3fは、中性条件においてインターミュータント(wxwxWx/AeAeae)デンプンから得られたブラベンダーデータのグラフである。これらのデータから、新しいインターミュータントデンプンは、見掛けのアミロース含量が増加していないにもかかわらず、高アミロース突然変異体について見られたのと同様の粘度の増加度を与えることが特に注目に値する。
【実施例2】
【0070】
この実施例は、本発明のトウモロコシ穀粒加工デンプンの製造を例証する。様々な背景のトウモロコシ植物は、伝統的な育種および/または戻し交雑技術を用いるかまたはさもなければ花粉の化学的処理などの突然変異誘発を用いて突然変異遺伝子型に変換することができる。或いは、ワクシー同系繁殖体および雑種を、多数の供給者および財団設立種子会社から購入することもできる。良好な作物学的特色および比較的高い収量を有するトウモロコシ系統はいずれも用いることができる。本発明において、正常な同系繁殖体系は、化学的突然変異誘発に続いて、分離子孫からの突然変異体穀粒種の慎重な選択を用いて、突然変異同系繁殖体系に変換される。この方法は当業者に周知である(例えば、ノイファー(Neuffer),M.G.およびチャン(Chang),M.T.、1989年、生物学および作物学研究における誘発突然変異、Vortr.Pfalzenzuchtg.16,165〜178を参照されたい)。商業的に入手可能な同系繁殖系はいずれも、この目的に用いることができる。該系統は、系統を既知の突然変異系と交雑させることができる当業者に周知の方法である対立性検定によって目的の突然変異を有することが確証された。更に、該系統からの穀粒は、選択された突然変異に特有の外観およびヨウ素染色性を有するであろう。当業者に周知の方法。植物から最高の収量を得るためには、両者が同じ突然変異を有する(例えば、両方の同系繁殖体がワクシーまたはアミロースエキステンダー種である)2種類の同系繁殖体間に雑種交雑を生じることが最も近い。一方が雄性であり且つ一つの突然変異のホモ接合であり、そしてもう一方が雌性であり且つ他の突然変異のホモ接合である2種類の雑種を生じることは好ましい。雄性および雌性雑種は、同じまたは異なる遺伝的背景から構成されることができ、二つの系統が現場において同様に成熟する(すなわち、発芽から開花および花粉が落ちるまで同様の熱単位を必要とする)ことが単に重要である。現場でインターミュータントを交雑させるためには、雌性からの花粉生産を除去する必要がある。これは、限定するものではないが、人工授粉、手作業でおよび機械的に雄花の穂を取り除くこと、遺伝子または細胞質雄性不稔性を雌性植物中に遺伝子移入すること、遺伝的形質転換および化学的に雄花の穂を除去する薬剤の使用による雄性不稔性の導入を含む種々の方法によって行うことができる。この交雑からの穀粒は、内胚乳の遺伝子型がaaA/BBbの本発明を含み、この遺伝子型からのデンプンをインターミュータントデンプンと称する。遺伝的背景を最良のデンプン特性に最適化しうることは当業者に周知である。
【実施例3】
【0071】
デンプンは、多数の異なる方法によって穀粒から抽出することができる。最も一般的に用いられる方法は、世界中で知られ且つ用いられている「湿式磨砕」法を必要とする。基本原理は、浸漬およびデンプン分離を必要とする。この方法において不可欠な工程は、穀粒を浸漬タンク中で軟化させることを必要とし、方法は、トウモロコシ穀粒成分を最適分離できるように最適化された。この方法を用いて、実施例2によって生じたインターミュータントの穀粒からデンプンwxwxWx/AeAeaeを抽出した。胚芽は、そのままで容易に遊離し、そして付着している内胚乳および外皮から分離された。内胚乳を水で浸軟させ、デンプンは白色凝集塊として容易に分離されて、そしてグルテンタンパク質を黄色凝集塊として得る。穀粒を、通常は50〜90メートルトンの穀粒を収容するタンク中に48〜52℃で30〜40時間浸漬した。浸漬水は0.2%二酸化硫黄(SO2ガスを通気する)を含み、そしてそれによって弱酸性(pH4.0)である。二酸化硫黄はタンパク質基質の分解を促進し、内胚乳基質を分解させて顆粒にする。浸漬後、穀粒を粗びきするかまたはパルプにした。油の多い胚は表面に浮かび且つ稠密なデンプン質内胚乳は沈む。分離は、ヒドロクローン(連続分離)によって達成される。デンプンは、焼入鋼合金製の逆転溝付きプレートによって高速でスラリーを粉砕する「エントレター(Entoleter)微粉砕機として知られる衝撃微粉砕機」に続いて外部衝撃環による衝撃によって微粉砕された後に更に精製された。脱繊維デンプンを遠心分離によってグルテンから分離して、タンパク質(70%タンパク質)およびデンプン(2%タンパク質)の二つの画分を与えた。加工温度は、微生物の増殖を防止するように45℃を越えて維持された。デンプンは、200〜260°Fまで加熱された空気流中へ注入することによるフラッシュ乾燥によって乾燥された。
【0072】
種々のインターミュータント穀粒は、各種食品、飼料および産業用途に適当であるこの方法で精製され且つ製造されたデンプンを有することができる。それは、未変性トウモロコシデンプンとして直接的に用いることができる。それは、顆粒構造を保つ化学的または物理的処理によって変性されてよく、そして顆粒を洗浄して残留する反応物を除去してよい。時々、漂白を用いて超白色デンプンを生成する。デンプンは、高温処理を用いて糊化され且つ糊化デンプンとして直接的に販売されうる。このようなデンプンは、化学的に変性され且つ乾燥されうる。ポリマー自体は、部分的にまたは完全に加水分解されて、マルトデキストリンまたはグルコースを生成することができる。このような製品は、発酵によって更に変性されて、ガソリン製造業用のエタノールを製造することができるし、またはグルコースを甘味剤製造業用の高フルクトースコーンシロップに変換することができる。
【実施例4】
【0073】
縮み−2(sh2)、脆い(brittle)−2(bt2)、艶なし(du)、糖質(su)、ワクシー(wx)およびアミロースエキステンダー(ae)と称される突然変異は、ADPグルコースピロホスホリラーゼ、脱分岐酵素、可溶性デンプンシンターゼ、結合性デンプンシンターゼおよび分岐酵素のイソ型をコードする。
【0074】
縮み−2は、ADPグルコースピロホスホリラーゼの一つのサブユニットをコードし、
脆い−2は、ADPグルコースピロホスホリラーゼの一つのサブユニットをコードし、
ワクシーは、顆粒結合性デンプンシンターゼをコードし、
アミロースエキステンダーは、分岐酵素のイソ型をコードし、
艶なしは、可溶性デンプンシンターゼおよび分岐酵素のイソ型の発現を変更し、
糖質は、可溶性デンプンシンターゼおよび脱分岐酵素の発現および活性を変更する。
【0075】
既知の突然変異体および遺伝子量交雑法を用いて、本発明者は、穀粒中のデンプン貯蔵に対する変化した遺伝子発現の効果を調べた(図を参照されたい)。bt2突然変異体について、本発明者は、穀粒中のデンプン合成の減少と十分に相関する測定可能なADP Glcピロホスホリラーゼ活性の漸進的減少を知見している。デンプンへのフラックスに対してこの酵素によって与えられる調節強度は、これらのデータから定量することができない。実際に、本研究は、この酵素がデンプン合成期間中の主要決定因子の一つであるが、デンプン合成速度をほとんど調節しないかもしれないことを示している。この突然変異は、デンプン構造をほとんど変化させない。突然変異が糖質、艶なし、ワクシーおよびアミロースエキステンダーによる場合、本発明者は、ここで、デンプン微細構造の変化(分岐鎖長変化並びにアミロース/アミロペクチン比の変化)を検出する。これらの場合、(スイートコーン遺伝子型を製造するのに用いられる糖質突然変異体を除く)デンプンへのフラックスの調節は更に少ない。これらの場合のいずれにおいても、それは、デンプン微細構造を変化させたデンプンシンターゼおよび分岐酵素の比率の変化である。これらの研究における劇的な新しい知見は、突然変異が鍵酵素の発現を減少させるのみならず、それが経路中の他の酵素の過発現も誘導するという発見であった。更に、それは、本発明者がデンプン微細構造の変化を知見している完全な突然変異体(mmm)遺伝子型においてのみ、酵素イソ型過発現と一緒に酵素イソ型減少が存在する場合にだけ構造の変化が起こることを実証している。この提案に拘束されたくはないが、これらのデータは、デンプン構造が、(例えば、アンチセンス構築物を用いて)発現を減少させることによってのみ影響されることができるのではなく、酵素もまた(例えば、センス構築物を用いて)発現を同時に増加させることができる手段を例証する。
【0076】
本発明の方法において用いるための植物形質転換ベクターは、標準的な技法を用いて構築することができる。これらの酵素は細胞のアミロプラスト区分に局在しているので、遺伝子構築物は、アミロプラスト中のその正確な位置を確認するためにアミロプラスト輸送ペプチドの存在を必要とする。形質転換構築物は、部分センス配向かまたはアンチセンス配向の遺伝子を有することができる。植物における該遺伝子の発現は、当該技術分野において「センス同時抑圧すなわちアンチセンス」として周知の作用によって酵素の発現の減少を引き起こす。発現の減少だけが必要である場合、該輸送ペプチドは必要とされない。しかしながら、酵素過発現が必要とされる場合、正確な色素体集中配列は構築物中に必要とされる。本発明に必要な鍵酵素としては、分岐酵素並びに可溶性および結合性デンプンシンターゼがある。分岐酵素[1,4−α−D−グルカン:1,4−α−D−グルカン 6−α−D−(1,4−α−D−グルカノ)トランスフェラーゼ]は、アミロースをアミロペクチンに変換し、(1,4−α−D−グルカン鎖のセグメントを、同様のグルカン鎖中の第一ヒドロキシル基に転移する)Q−酵素と称されることが多い。可溶性デンプンシンターゼ[ADPグルコース:1,4−α−D−グルカン 4−α−D−グルコシルトランスフェラーゼ]は、アミロペクチンおよびおそらくは更にアミロースの鎖長を延長する。結合性デンプンシンターゼ[ADPグルコース:1,4−α−D−グルカン 4−α−D−グルコシルトランスフェラーゼ]は、アミロースおよびおそらくは更にアミロペクチンの鎖長を延長する。
【0077】
任意のアンチセンスすなわちセンス同時抑圧構築物のために、部分cDNAクローンだけが、トランスジェニック植物において発現される必要がある。酵素過発現が必要とされる場合、完全長さcDNAクローンが必要である。トウモロコシ分岐酵素−Iの配列は、ババ(Baba),T.、ニシハラ(Nishihara),M.、ミズノ(Mizuno),K、カワサキ(Kawasaki),T.、シマダ(Shimada),H.、コバヤシ(Kobayashi),E.、オーニシ(Ohnishi),S.、タナカ(Tanaka),K.およびアライ(Arai),Y.(コメ(オリザサティバ(Oryza−sativa)
L)の可溶性デンプンシンターゼの識別、cDNAクローニングおよび遺伝子発現)ImmatureSeeds.Plant Physiology.103:565〜573,1993年)によって研究された。トウモロコシ内胚乳からのデンプン分岐酵素−11は、フィッシャー(Fisher),D.K.、ボイヤー(Boyer),C.D.およびハナー(Hannah),L.C.(トウモロコシ内胚乳からのデンプン分岐酵素−IIPlant Physiology.102:1045〜1046,1993年)によって研究された。ムー(Mu),C.、ハーン(Harn),C.、コー(Ko),Y.、シングレタリー(Singletary),G.W.、キーリング(Keeling),P.L.およびワッサーマン(Wasserman),B.P.による論分は、トウモロコシ(cv B73)内胚乳における76kDaポリペプチドと可溶性デンプンシンターゼI活性との関係を示している。Plant Journal6,151〜159(1994)。UDP−グルコースデンプングリコシルトランスフェラーゼのトウモロコシワクシー遺伝子座は、1986年にクロースゲン(Kloesgen),R.B.、ギール(Gierl),A.、シュワルツ・ゾンマー(Schwarz−Sommer),Z.およびゼドラー(Saedler),H.(ケア島のワクシー遺伝子座の分子分析Mol.Gen.Genet.203,237〜244)によってクローン化された。最近、トウモロコシ糖質遺伝子座の配列が、ジェームス(James),M.およびライト(Wright),A.(ThePlant Journal)によって、遺伝子を位置決定するようにトランスポゾン突然変異誘発を用いて観察された。任意のこのようなタンパク質の遺伝子は脱分岐酵素であると考えられ、しかも本発明によって構築物中で用いることができる。
【0078】
葉緑体輸送ペプチドは、同様の配列を有すると考えられる(ハイジュン(Heijne)らは、1991年にPlantMol Biol Reporter,9(2):104〜126で葉緑体輸送ペプチドのデータベースを記載している)。他の可能な輸送ペプチドは、ADPGピロホスホリラーゼ(1991年、PlantMolB iolReporter,9:104〜126)、小サブユニットRUBISCO、アセトラクテートシンターゼ、グリセルアルデヒド−3P−デヒドロゲナーゼおよび亜硝酸レダクターゼのものである。例えば、多数の遺伝子型からの小サブユニットRUBISCOの輸送ペプチドの共通配列は、配列
MASSMLSSAAVATRTNPAQASM VAPFTGLKSAAFPVSRKQNLDITSIASNGGRVQC
を有する。RUBISCOのトウモロコシ小サブユニット輸送ペプチドは、配列
MAPTVMMASSATATRTNPAQAS AVAPFQGLKSTASLPVARRSSRSLGNVASNGGRIRC
を有する。トウモロコシからの葉デンプンシンターゼの輸送ペプチドは、配列
MAALATSQLVATRAGLGVPDAS TFRRGAAQGLRGARASAAADTLSMRTASARAAPRHQQQARRGGR FPSLVVC
を有する。
【実施例5】
【0079】
稔性トランスジェニックトウモロコシ植物の生産は、1990年から行われてきた。多数のDNA供給システムが知られているが、選択は粒子衝撃である。上記のように、種々のトウモロコシ突然変異遺伝子の構築物は、米国および欧州の受託機関から入手可能である。挙げられているのは図4a〜dで示される多くのこれらの構築物の数例である。図4cは、CaMv(カリフラワーモザイクウイルス)であるプロモーター、Adh1、ワクシー遺伝子、nos(ノポリン)、および選択可能なマーカーとして有用であるpat遺伝子並びにampを示す。
【0080】
図4dは同様であるが、構築物中の可溶性デンプンシンターゼ第一イソ型遺伝子を示す。図4aもまた同様の構築物を有するが、分岐酵素第一イソ型を示す。図4bは、第二分岐酵素第二イソ型を示す。当然ながら、トウモロコシ育種において用いられる遺伝子突然変異体と結合した他の構築物もまた入手可能である。
【0081】
この実施例の目的に対して、ワクシー構築物である図4cを論及する。この実験の目的は、ワクシー遺伝子の部分ダウンレギュレーションを有する同系繁殖体を作ることである。選択された同系繁殖体が既にaeの突然変異体である場合、非突然変異同系繁殖体との交雑によって生じた穀粒は、インターミュータントの穀粒であろう。ダウンレギュレーションの強さに応じて、雌性同系繁殖穀粒は、mm*/mm*またはmm*/m*の種類のデンプンおよび穀粒に似ているであろう。明らかに、形質転換は、デンプンの変化を微細に調整することができるような、デンプン合成活性のダウンレギュレーションの一層正確な方法を可能にする。
【0082】
ワクシー遺伝子の適当なレベルのダウンレギュレーションを確実にするために、形質転換標的組織は未熟な接合胚であり、胚形成カルスによっても用いることができる。同系繁殖体B73aeを授粉して12日後の植物A188からの未熟な接合胚を選択することができる。カルスの培地は、6mM L−プロリン、2%(w/v)スクロース、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)2mg/lおよび0.3%(w/v)ゲルライト(Gelrite)(カロリン・バイオロジカル・サプライ(CarolineBiological Supply))(pH6.0)であった。カルスを増殖させ且つ懸濁培養を開始した。
【0083】
ミオイノシトール100mg/l、2,4−D 2mg/l、1−ナフタレン酢酸(NAA)2mg/l、6mMプロリン、カゼイン加水分解産物(ディフコ・ラボラトリーズ(DifcoLaboratories))200mg/l、3%(w/v)スクロースおよび5%(v/v)ココナツ水(ディフコ・ラボラトリーズ)(pH6.0)を含むMS基剤液体培地。細胞懸濁液を、125mlエルレンマイヤーフラスコ中のこの培地中において28℃で、暗所中の125rpmでの回転振とう機上において維持した。
【0084】
図4cの形質転換ベクターを選択する。このプラミスドは、355−1adh−pat nos3′選択可能遺伝子発現カセットを含む。
【0085】
細胞懸濁液をふるいにかけた後、懸濁培地5ml中に懸濁させ、そして真空によって濾紙上に置く。構築物を、当該技術分野において知られているように被覆して粒子にした。次に、プレートを衝撃した。次に、細胞をN−6培地に移し、そして14日後に形質転換細胞をビアラホス1mg/lによって選択する。次に、細胞を、0.6%(w/v)(シー・プラーク(Sea−Plaque);FMC)含有培地中に懸濁させ且つ37℃で保持した。
【0086】
2〜5週間後、増殖したカリ(calli)を取出し且つ新鮮な選択培地表面に移した。植物を、6%スクロース、ミオイノシトール1g/l、NAA(34)1mg/lおよび0.3%(w/v)ゲルライト(pH6.0)を含むMS基剤培地中で再生させた。次に、胚発芽が、NAA 0.25mg/lおよび3%(w/v)スクロースのMS培地並びに光中で起こった。植物を成長させ且つ温室に移す。次に、植物の発現レベルを評価することができる。
【0087】
植物を育種し且つ発育させて、突然変異体およびダウンレギュレート経路を有する同系繁殖体にした。或いは、選択された同系繁殖体は、トランスジェニック植物を雌性として用いる場合に穀粒中に所望のデンプンを生成するように形質転換後にトランスジェニックに交雑された突然変異体を有することができる。
【実施例6】
【0088】
この実施例は、他のデンプンと比較した本発明のデンプンの糊化温度を例証する。糊化温度を以下の表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
試料1は、ハモンド、インディアナ州のアメリカン・メイズ・プロダクツ・カンパニー(AmericanMaize−Products Company)によって販売された商品であった。上記試料1のアミロース%および糊化温度は、製品の無作為の試料採取によって決定された平均値である。アミロース%および糊化温度の99%信頼水準は、それぞれ25.9〜29.3および68.7〜72.9である。
【0091】
AMY VおよびAMY VIIは、ハモンド、インディアナ州のアメリカン・メイズ・プロダクツ・カンパニーによって販売された市販の高アミロースコーンスターチである。上記表3のアミロース%および糊化温度は、製品の無作為の試料採取によって決定された平均値である。AMYVおよびAMY VII中のアミロース%の99%信頼区間は、それぞれ53.4〜62.5および65.5〜73.8であった。AMYVおよびAMY VIIの糊化温度の99%信頼区間は、それぞれ72.8〜84.4および83.1〜90.8であった。AMYVおよびAMY VIIは両方とも天然トウモロコシ中で生産された。
【0092】
デンプン試料4は本発明に対応するが、試料5は、米国特許第5,009,911号明細書の実施例1からの平均値に対応する。試料6は、アメリカン・メイズ・プロダクツ・カンパニーによって販売された市販のワクシーデンプンに対応する。
【0093】
アミロース%および糊化温度両方を決定する方法は以下であった。
【0094】
アミロース%は、デンプンを最初に水酸化ナトリウムによって糊化した後、ヨウ素溶液と反応させ、そして得られた試料を、2%ヨウ素溶液のプランクに対して1cmセル中において600nmで分光光度計を用いて測定する標準的な熱量測定ヨウ素法を用いて決定された。
【0095】
DSC糊化温度は、30%デンプン固体を用いるメトラー(Mettler)製の走査型熱量計300型を用いて、その型の製造者マニュアルに概説された手順にしたがって測定された。
【0096】
本発明のデンプンの糊化温度が普通のコーンスターチに匹敵することは、上記表3から容易に明らかである。
【実施例7】
【0097】
この実施例は、aewxコーンスターチから製造されたゾル、普通のコーンスターチから製造されたゾルおよびwxwxwxデンプンから製造されたゾルと比較した本発明のコーンスターチから製造されたゾルのゲル強度を例証する。試験の結果を以下の表4に報告する。
【0098】
【表4−1】
【0099】
上記表4で報告されたゲル強度試験を行うために、水とデンプンとを混合し、そしてそのスラリーにブラベンダー粘度計の急熱様式を施して試料を50℃まで加熱することによってゾルを製造した。いったん50℃に達したら、95℃の温度に達するまで1.5℃/分の一定の加熱速度で装置を設定した。次に、試料を95℃で30分間保持した。次に、試料を1.5℃において50℃の温度まで30分間冷却した。これらのゾルの一部分を、プランジャーが入っている4オンスジャーに別々に加えた。次に、ゾルを周囲条件で24時間放置した。ゲル強度は、プランジャーをゾルから取出すのに必要な力を決定することによって測定された。
【0100】
この実施例は、本発明によって製造されたゾルのゲル強度が普通のコーンスターチゾルに匹敵することを例証している。
【実施例8】
【0101】
この実施例は、aewxデンプンと、植物が三倍量のワクシー遺伝子を有していたワクシーデンプンと、本発明のデンプンとの相違を例証する。デンプンは全てトウモロコシから得られた。
【0102】
全てのデンプンの流動学的性質について試験した。それぞれのデンプンに、同様の方法を用いる同様の試験法を施した。デンプン粒を、ブラベンダー粘度計を用いて冷却プローブダウンおよび750g cmカートリッジによってペーストにした。5.5%初期固体のデンプンスラリーを、ブラベンダーカップ中において60℃で急速に加熱した後、温度を1.5℃/分で95℃まで増加させながらペーストにした。デンプンペーストをこの温度で20分間保持した後、速やかに、70℃まで予熱された流動計の測定用配置上に装填した。四部レオロジー特性決定を行った。0.2ヘルツおよび0.2%歪(十分に線形粘弾性範囲内)で構造体の形成を監視したゲル硬化セグメントは、試料を70℃〜25℃まで冷却し且つ4時間保持しながら測定された。更に測定されたのは、25℃においてやはり0.2ヘルツで増加量の歪に対するペーストまたはゲルの流動学的応答を測定する歪曲線であった。
【0103】
この技法を用いて、aewxデンプンと本発明のデンプンとの明確な相違を見出した。図5は、ゲル硬化分析の結果を示す。本発明のデンプンは、aewxデンプンより低い初期弾性率(G′)を有する間に、G′の急上昇によって示されるように一層速やかに構造体を形成するかまたはゲル化した。したがって、本発明のデンプンは、同様の見掛けのヨウ素結合含量にもかかわらず、ゲル生成の速度がaewxデンプンとは異なった。図6は、本発明のデンプンおよびaewxデンプンのみについての歪曲線分析の結果を示す。ここで、本発明のデンプンは、歪量が増加するにつれて、G′の増加によって示されるダイラタント作用を示した。与えられた量の歪の下では、構造は破壊されなかった。対照的に、aewxデンプンの構造は、与えられた歪が4%より大になった場合に速やかに破壊された。したがって、aewxデンプンと比較した場合、本発明のデンプンは、この試験の与えられた歪の下では砕けなかったゲルを生成した。対照的に、aewxデンプンは、はるかに少ない時間依存性構造体形成を示し、そして「砕ける」かまたはこの技法で与えられた歪によって破壊された。
【実施例9】
【0104】
この実施例は、本発明による増粘剤組成物の製造を例証する。
【0105】
本発明のデンプンを、10重量%のデンプンを有するスラリーを生じる量の水と混合する。ゾルは砕けやすいテキスチャーおよび刺激のない風味を有する。ゾルは、約90℃で10分間煮沸された場合、普通のコーンスターチから製造された同様の増粘剤組成物よりも透明で且つ砕けやすいテキスチャーの増粘剤組成物を生じる。
【実施例10】
【0106】
この実施例は、本発明のデンプンから製造されたゲルの食感を普通のデンプンによって製造されたゲルと比較する。
【0107】
普通のデンプンおよび本発明のデンプンを、ブラベンダー粘度計を用いてペーストにした。デンプンを5.5%固体のスラリーにした後、急熱様式を用いて50℃まで加熱した。1.5℃/分の制御熱を用いて、スラリーを95℃まで加熱した後、この温度で30分間保持した。最終固体は5.9%であった。次に、試料デンプンペーストを小ゼリージャーに注入し、セロファンで覆い、そして分析する前に24時間熟成させた。次に、風味パネルに質問して以下の属性について試料を等級付けした。
【0108】
最初に、それらを手で触れた相対的堅さで二つに分類した。
【0109】
【表4−2】
【0110】
次に、それらを咀嚼した時のこの試料の相対的砕けやすさ、堅さおよび透明さを等級付けした。
【0111】
【表4−3】
【0112】
これらの結果は、これらの試料の堅さが同様であることを示している。しかしながら、本発明のデンプンは咀嚼した時にはるかに砕けやすい。
【0113】
更に、それは、普通に基くデンプンゲルよりも速く口からなくなる傾向がある。パネルは全員、本発明のデンプンが、ゼラチンまたはペクチンの場合と同様の「さっぱりした」食感のゲルを生じたことに同意した。
【実施例11】
【0114】
この実施例は、本発明のデンプンを用いるガムキャンディーの製造を例証する。
【0115】
以下の成分および手順を用いる。
【0116】
【表5】
【0117】
手順
全成分を混合した後、ジェットクッカーなどの慣用的な装置を用いて340°Fまで煮沸する。次に、煮沸したスラリーをキャンディー金型に注入し且つ凝固させる。
【実施例12】
【0118】
この実施例は、本発明のデンプンを用いるババロアパイの製造を例証する。
【0119】
以下の成分および手順を用いる。
【0120】
【表6】
【0121】
手順
卵黄以外のパイ詰め物成分全部を混合し且つ195°Fで3〜5分間煮沸する。
次に、成分を絶えず撹拌しながら120°Fまで冷却する。次に、卵黄を加え、添加物を十分にブレンドする。次に、この混合物を慣用的なパイ皮に加え、そして配膳する前に室温まで冷却する。
【実施例13】
【0122】
この実施例は、本発明のデンプンを用いるレモンパイ詰め物の製造を例証する。
【0123】
以下の成分および手順を用いる。
【0124】
【表7】
【0125】
手順
半分の水を砂糖と混合し且つ沸騰させる。残りの成分を全部一緒にスラリーにした後、沸騰している砂糖および水に加える。次に、この混合物の温度を200°Fに調整し且つそこで2分間保持する。次に、混合物を、用意されたパイ皮に注入し、そして冷却し且つ凝固させる。
【実施例14】
【0126】
この実施例は、本発明のデンプンを用いるチョコレートムースの製造を例証する。表8の配合物を用いてムースミックスを製造する。
【0127】
【表8】
【0128】
手順
成分を混合して均一ブレンドを生成する。
使用
ムースミックス200gとミルク1カップ(250g)とを混合する。電気ミキサーを用いて低速で1分間混合する。ボウルを掻取る。軽くふわふわになるまで高速で3分間混合する。取分け用の皿にスプーンですくい取り、1時間冷蔵した後に配膳する。
【0129】
ムースミックスを製造するには、成分を全部混合する。ムース自体を調理するには、ムースミックス200グラムをミルク250グラムと混合し且つ低速で混合する。次に、混合物を高速で撹拌してそれが軽くふわふわになるようにし、そして混合物を1時間冷蔵する。この方法で、軽くふわふわのムースが調理される。
【0130】
したがって、本発明は、本発明の好ましい実施態様に関してある程度具体的に記載された。しかしながら、本発明は、先行技術に照らして解釈される請求の範囲によって規定されるので、本明細書中に包含される発明の概念から逸脱することなく、本発明の好ましい実施態様に対して修正または変更を行うことができるということは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】単一突然変異体の種々の遺伝子量の酵素活性のグラフである。
【図2A】ワクシー、アミロースエキステンダーおよび普通のトウモロコシのDSC走査のグラフである。
【図2B】二重突然変異体(aeaeae/wxwxwx)のDSC走査のグラフである。
【図2C】インターミュータント(aeaeAe/wxwxwx)からのデンプンのDSC走査のグラフである。
【図2D】もう一つのインターミュータント(wxwxWx/AeAeae)からのデンプンのDSC走査のグラフである。
【図3A】種々のpHでの普通のデンプンのブラベンダー(Brabender)データのグラフである。
【図3B】種々のpHでのワクシーデンプンのブラベンダーデータのグラフである。
【図3C】種々のpHでの70%アミロースデンプンのブラベンダーデータのグラフである。
【図3D】種々のpHでの二重突然変異体デンプンのブラベンダーデータのグラフである。
【図3E】種々のpHでの第一インターミュータントデンプンのブラベンダーデータのグラフである。
【図3F】種々のpHでの第二インターミュータントデンプンのブラベンダーデータのグラフである。
【図4A】分岐酵素Iの遺伝子発現レベルを変化させるのに用いられる植物形質転換ベクターの設計および制限部位を示す図である。
【図4B】分岐酵素IIの遺伝子発現レベルを変化させるのに用いられる植物形質転換ベクターの設計および制限部位を示す図である。
【図4C】結合型デンプンシンターゼ(ワクシー)の遺伝子発現レベルを変化させるのに用いられる植物形質転換ベクターの設計および制限部位を示す図である。
【図4D】可溶性デンプンシンターゼの遺伝子発現レベルを変化させるのに用いられる植物形質転換ベクターの設計および制限部位を示す図である。
【図5】本発明のデンプンから製造されたゲルを、aewxデンプンから製造されたゲルおよびワクシー(wx)デンプンから製造されたゲルに対して比較した時間に対する弾性率(G′)のプロットである。
【図6】本発明のおよびaewxデンプン両方の歪に対してプロットされた弾性率(G′)のプロットである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物のデンプン合成経路において酵素の少なくとも2種類の特定のイソ型の活性を不完全に低下させる遺伝子を含むゲノム成分を含む植物。
【請求項2】
請求項1に記載されたのと同様の植物によって生成されるデンプンとは異なる分岐構造を有するデンプンを生成し、該植物のデンプン合成経路において酵素のイソ型を生成しないゲノム成分を含む請求項1に記載の植物。
【請求項3】
前記デンプンが穀粒中に生成する請求項2に記載の植物。
【請求項4】
穀粒の遺伝子型がmm*/n**であり、ここにおいて、m=第一突然変異体、n=第二突然変異体、そして*は野生型である、植物によって生産された穀粒。
【請求項5】
デンプン生産性植物であって、
該植物のデンプン合成経路において少なくとも2種類の特定のイソ型酵素の活性を不完全に低下させる遺伝子を含むゲノム成分を含み、それによって該植物が、該遺伝子がデンプン合成経路内において同じ2種類の特定のイソ型酵素の活性を完全に低下させた場合に該植物が生産するであろうよりも実質的に多量のデンプンを生産する上記植物。
【請求項6】
wxwxWx/AeAeae、aeaeAe/WxWxwx、wxwxwx/SuSusu、susuSu/wxWxwx、aeaeAe/SuSusu、susuSu/AeAeae、wxwxWx/DuDudu、aeaeAe/DuDudu、susuSu/DuDuduから成る群より選択される内胚乳遺伝子型を有する穀粒。
【請求項7】
デンプン構造に影響を与える遺伝子の第一突然変異対立遺伝子を2遺伝子量およびデンプン構造に影響を与える第二遺伝子の第二突然変異対立遺伝子を1遺伝子量含む内胚乳遺伝子型を有する穀粒であって、該遺伝子が、ワクシー、アミロースエキステンダー、艶なし、角質、糖質、縮み、脆性、粉質、不透明から選択することができる上記穀粒。
【請求項8】
遺伝子型がwxwxWx/AeAeaeである請求項7に記載の穀粒から抽出されたデンプン。
【請求項9】
遺伝子型がAeaeae/WxWxwxである請求項7に記載の穀粒から抽出されたデンプン。
【請求項10】
デンプンを有するaa/BBの二倍体遺伝子型およびaaA/BBbの三倍体遺伝子型を有し、ここにおいて、aは劣性突然変異遺伝子であり且つAは野生型遺伝子であり、そしてbは劣性突然変異遺伝子であり且つBは野生型遺伝子であり、そして該デンプンは正常なデンプンから変化していて、aおよびbは、ae、du、wx、sh、bt、h、su、fl、opから選択することができ且つBおよびAは、Ae、Du、Wx、Sh、Bt、H、Su、Fl、Opから選択することができる植物。
【請求項11】
aA/Bb/Ccの二倍体遺伝子型およびaaA/BBb/CCc(およびそれらの他の組合わせ)の三倍体内胚乳遺伝子型を有し、ここにおいて、aは劣性突然変異遺伝子であり且つAは野生型遺伝子であり、そしてbは劣性突然変異遺伝子であり且つBは野生型遺伝子であり、そしてcは劣性突然変異遺伝子であり且つCは野生型遺伝子であり、そしてデンプンは正常なデンプンから変化していて、そこにおいて、aおよびbは、ae、wx、sh、bt、h、su、fl、op、duから選択することができ且つBおよびAは、Ae、Wx、Sh、Bt、H、Su、Fl、Op、Duから選択することができる植物。
【請求項12】
デンプン量が変化した穀粒を生産する方法であって、
(a)花をつけることができ且つデンプン合成経路において少なくとも1つの特定のイソ型酵素が完全に低下している親を植付け;
(b)デンプン合成経路において少なくとも一つの他の特定のイソ型酵素が完全に低下している第二の親を植付け;
(c)該第一の親の花粉を生産する能力を除去し;
(d)該花をつける第一の親に、該第二の親の花粉を授粉し;そして
(e)該第一の親によって生産された穀粒を収穫する
工程を含む上記方法。
【請求項13】
前記変化したデンプンを前記穀粒から抽出する工程を含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
aおよびbが同じ突然変異体を示し且つBおよびAが同じ野生型を示す請求項4に記載の穀粒から抽出されたデンプン。
【請求項15】
遺伝子型が両側に野生型を有するように少なくとも4遺伝子量の突然変異体および2遺伝子量の野生型を有する穀粒から抽出されたデンプン。
【請求項16】
遺伝子型が両側に突然変異を有するように少なくとも3遺伝子量の突然変異体および3遺伝子量の野生型を有する穀粒から抽出されたデンプン。
【請求項17】
突然変異体が、ae、wx、sh、bt、h、su、fl、op、duから選択される単一突然変異雄性不稔性植物。
【請求項18】
ワクシー、ワクシー、アミロースエキステンダー遺伝子型を有するデンプン含有植物から抽出された有効量のデンプンおよび水を含むゾル。
【請求項19】
デンプンが約1重量%〜約20重量%の量で存在する請求項18に記載のゾル。
【請求項20】
植物がトウモロコシである請求項18に記載のゾル。
【請求項21】
デンプンが冷水可溶性である請求項18に記載のゾル。
【請求項22】
前記デンプンが顆粒状である請求項18に記載のゾル。
【請求項23】
前記デンプンがトウモロコシから抽出されている請求項21に記載のゾル。
【請求項24】
フードスタブ(foodstubb)を含み且つ必須成分として、ワクシー、ワクシー、アミロースエキステンダー遺伝子型を有するデンプン含有植物から抽出された有効量のデンプンを有する食品。
【請求項25】
前記デンプンが、食品の約0.1重量%〜約10重量%の量で存在する請求項24に記載の食品。
【請求項26】
前記デンプンがトウモロコシから抽出されている請求項24に記載の食品。
【請求項27】
デンプンを含むゾルを製造する方法であって、
ワクシー、ワクシー、アミロース遺伝子型を有するデンプン含有植物から抽出された有効量のデンプンおよび水を含むスラリーを生成し;そして
該デンプンを煮沸して該デンプンを糊化する
工程を含む上記方法。
【請求項28】
前記有効量が、スラリーの約1重量%〜約20重量%である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記デンプンがトウモロコシから抽出されている請求項27に記載の方法。
【請求項30】
食品を増粘する方法であって、
ワクシー、ワクシー、アミロースエキステンダー遺伝子型を有するデンプン含有植物から抽出された有効量のデンプンを食品と混合し;そして
該食品を煮沸して該食品を増粘する
工程を含む上記方法。
【請求項31】
前記デンプンがトウモロコシから抽出されている請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記デンプンが、前記食品の約0.1重量%〜約10重量%の量で存在する請求項30に記載の方法。
【請求項33】
ゼラチンを含む食品を製造する改良された方法であって、該改良が、該食品中のゼラチンの少なくとも一部分を請求項18に記載のゾルによって置き換えることを含む上記方法。
【請求項34】
天然ガムを含む食品を製造する改良された方法であって、該改良が、該天然ガムの少なくとも一部分を請求項18に記載のゾルによって置き換えることを含む上記方法。
【請求項35】
前記食品が、ガムキャンディー、ゲル化デザート、グレーズまたはスプレッドである請求項34に記載の方法。
【請求項1】
植物のデンプン合成経路において酵素の少なくとも2種類の特定のイソ型の活性を不完全に低下させる遺伝子を含むゲノム成分を含む植物。
【請求項2】
請求項1に記載されたのと同様の植物によって生成されるデンプンとは異なる分岐構造を有するデンプンを生成し、該植物のデンプン合成経路において酵素のイソ型を生成しないゲノム成分を含む請求項1に記載の植物。
【請求項3】
前記デンプンが穀粒中に生成する請求項2に記載の植物。
【請求項4】
穀粒の遺伝子型がmm*/n**であり、ここにおいて、m=第一突然変異体、n=第二突然変異体、そして*は野生型である、植物によって生産された穀粒。
【請求項5】
デンプン生産性植物であって、
該植物のデンプン合成経路において少なくとも2種類の特定のイソ型酵素の活性を不完全に低下させる遺伝子を含むゲノム成分を含み、それによって該植物が、該遺伝子がデンプン合成経路内において同じ2種類の特定のイソ型酵素の活性を完全に低下させた場合に該植物が生産するであろうよりも実質的に多量のデンプンを生産する上記植物。
【請求項6】
wxwxWx/AeAeae、aeaeAe/WxWxwx、wxwxwx/SuSusu、susuSu/wxWxwx、aeaeAe/SuSusu、susuSu/AeAeae、wxwxWx/DuDudu、aeaeAe/DuDudu、susuSu/DuDuduから成る群より選択される内胚乳遺伝子型を有する穀粒。
【請求項7】
デンプン構造に影響を与える遺伝子の第一突然変異対立遺伝子を2遺伝子量およびデンプン構造に影響を与える第二遺伝子の第二突然変異対立遺伝子を1遺伝子量含む内胚乳遺伝子型を有する穀粒であって、該遺伝子が、ワクシー、アミロースエキステンダー、艶なし、角質、糖質、縮み、脆性、粉質、不透明から選択することができる上記穀粒。
【請求項8】
遺伝子型がwxwxWx/AeAeaeである請求項7に記載の穀粒から抽出されたデンプン。
【請求項9】
遺伝子型がAeaeae/WxWxwxである請求項7に記載の穀粒から抽出されたデンプン。
【請求項10】
デンプンを有するaa/BBの二倍体遺伝子型およびaaA/BBbの三倍体遺伝子型を有し、ここにおいて、aは劣性突然変異遺伝子であり且つAは野生型遺伝子であり、そしてbは劣性突然変異遺伝子であり且つBは野生型遺伝子であり、そして該デンプンは正常なデンプンから変化していて、aおよびbは、ae、du、wx、sh、bt、h、su、fl、opから選択することができ且つBおよびAは、Ae、Du、Wx、Sh、Bt、H、Su、Fl、Opから選択することができる植物。
【請求項11】
aA/Bb/Ccの二倍体遺伝子型およびaaA/BBb/CCc(およびそれらの他の組合わせ)の三倍体内胚乳遺伝子型を有し、ここにおいて、aは劣性突然変異遺伝子であり且つAは野生型遺伝子であり、そしてbは劣性突然変異遺伝子であり且つBは野生型遺伝子であり、そしてcは劣性突然変異遺伝子であり且つCは野生型遺伝子であり、そしてデンプンは正常なデンプンから変化していて、そこにおいて、aおよびbは、ae、wx、sh、bt、h、su、fl、op、duから選択することができ且つBおよびAは、Ae、Wx、Sh、Bt、H、Su、Fl、Op、Duから選択することができる植物。
【請求項12】
デンプン量が変化した穀粒を生産する方法であって、
(a)花をつけることができ且つデンプン合成経路において少なくとも1つの特定のイソ型酵素が完全に低下している親を植付け;
(b)デンプン合成経路において少なくとも一つの他の特定のイソ型酵素が完全に低下している第二の親を植付け;
(c)該第一の親の花粉を生産する能力を除去し;
(d)該花をつける第一の親に、該第二の親の花粉を授粉し;そして
(e)該第一の親によって生産された穀粒を収穫する
工程を含む上記方法。
【請求項13】
前記変化したデンプンを前記穀粒から抽出する工程を含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
aおよびbが同じ突然変異体を示し且つBおよびAが同じ野生型を示す請求項4に記載の穀粒から抽出されたデンプン。
【請求項15】
遺伝子型が両側に野生型を有するように少なくとも4遺伝子量の突然変異体および2遺伝子量の野生型を有する穀粒から抽出されたデンプン。
【請求項16】
遺伝子型が両側に突然変異を有するように少なくとも3遺伝子量の突然変異体および3遺伝子量の野生型を有する穀粒から抽出されたデンプン。
【請求項17】
突然変異体が、ae、wx、sh、bt、h、su、fl、op、duから選択される単一突然変異雄性不稔性植物。
【請求項18】
ワクシー、ワクシー、アミロースエキステンダー遺伝子型を有するデンプン含有植物から抽出された有効量のデンプンおよび水を含むゾル。
【請求項19】
デンプンが約1重量%〜約20重量%の量で存在する請求項18に記載のゾル。
【請求項20】
植物がトウモロコシである請求項18に記載のゾル。
【請求項21】
デンプンが冷水可溶性である請求項18に記載のゾル。
【請求項22】
前記デンプンが顆粒状である請求項18に記載のゾル。
【請求項23】
前記デンプンがトウモロコシから抽出されている請求項21に記載のゾル。
【請求項24】
フードスタブ(foodstubb)を含み且つ必須成分として、ワクシー、ワクシー、アミロースエキステンダー遺伝子型を有するデンプン含有植物から抽出された有効量のデンプンを有する食品。
【請求項25】
前記デンプンが、食品の約0.1重量%〜約10重量%の量で存在する請求項24に記載の食品。
【請求項26】
前記デンプンがトウモロコシから抽出されている請求項24に記載の食品。
【請求項27】
デンプンを含むゾルを製造する方法であって、
ワクシー、ワクシー、アミロース遺伝子型を有するデンプン含有植物から抽出された有効量のデンプンおよび水を含むスラリーを生成し;そして
該デンプンを煮沸して該デンプンを糊化する
工程を含む上記方法。
【請求項28】
前記有効量が、スラリーの約1重量%〜約20重量%である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記デンプンがトウモロコシから抽出されている請求項27に記載の方法。
【請求項30】
食品を増粘する方法であって、
ワクシー、ワクシー、アミロースエキステンダー遺伝子型を有するデンプン含有植物から抽出された有効量のデンプンを食品と混合し;そして
該食品を煮沸して該食品を増粘する
工程を含む上記方法。
【請求項31】
前記デンプンがトウモロコシから抽出されている請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記デンプンが、前記食品の約0.1重量%〜約10重量%の量で存在する請求項30に記載の方法。
【請求項33】
ゼラチンを含む食品を製造する改良された方法であって、該改良が、該食品中のゼラチンの少なくとも一部分を請求項18に記載のゾルによって置き換えることを含む上記方法。
【請求項34】
天然ガムを含む食品を製造する改良された方法であって、該改良が、該天然ガムの少なくとも一部分を請求項18に記載のゾルによって置き換えることを含む上記方法。
【請求項35】
前記食品が、ガムキャンディー、ゲル化デザート、グレーズまたはスプレッドである請求項34に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2007−267740(P2007−267740A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103467(P2007−103467)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【分割の表示】特願平8−502568の分割
【原出願日】平成7年6月20日(1995.6.20)
【出願人】(501008820)シンジェンタ リミテッド (33)
【出願人】(507079105)セレスター・ユーエスエイ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【分割の表示】特願平8−502568の分割
【原出願日】平成7年6月20日(1995.6.20)
【出願人】(501008820)シンジェンタ リミテッド (33)
【出願人】(507079105)セレスター・ユーエスエイ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
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