説明

新規物質及び熱硬化性組成物

【課題】ポリエステルアミド酸系熱硬化性組成物の硬化物の持つ耐熱性を維持しつつ、平坦性の良い硬化膜を形成することができる熱硬化性組成物を提供すること、ならびに低温硬化性に優れた熱硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】ジカルボン酸無水物(a1)、下記一般式(1)で表されるアミノ化合物(a2)、アミノ化合物(a2)以外の加水分解可能なケイ素化合物(a3)及び金属アルコキシド(a4)を反応させて得られる反応生成物(A)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な物質、それを含有する熱硬化性組成物および該組成物を加熱硬化することにより得られる硬化膜に関し、その硬化膜は、カラーフィルター及びLED発光体の保護膜や、薄膜トランジスタと透明電極との間及び透明電極と配向膜との間に形成される透明絶縁膜として利用できる。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子などの製造工程では、有機溶剤、酸、アルカリ溶液などによる種々の薬品処理がなされたり、スパッタリングにより配線電極を成膜する際には、素子表面が局部的に高温に加熱されたりすることがある。そのため、各種の素子の表面の劣化、損傷、変質を防止する目的で、素子の表面に保護膜が設けられる場合がある。
【0003】
これらの保護膜には、上記のような製造工程中の各処理に耐えることができる諸特性が要求される。具体的には、耐溶剤性、耐酸性および耐アルカリ性等の耐薬品性、耐水性、耐熱性、ガラスなどの下地基板への密着性、透明性、耐傷性、塗布性(保護膜形成材料を素子表面に塗布することができる性質)、平坦性、ならびに、長期に亘って着色などの変質が起こらないように耐候性などが要求される。
【0004】
前記特性のなかでも、前記保護膜がカラーフィルター保護膜として用いられる場合には、画素の段差による液晶セルギャップの変化を均一化する観点から、平坦性が重要視される。液晶セルギャップとは、図1に示すように、液晶表示素子中のカラーフィルター上に設けられる液晶層の厚みである。画素に段差があり、それが保護膜にも転写された状態であると、液晶セルギャップが均一にならない。
【0005】
前記の平坦性について、具体的には、前記保護膜を成膜した後のブラックマトリクスを含むR、G、B画素上の保護膜表面の最上部と最下部との差が、0.2μm以下であることが要求される。
【0006】
これらの優れた特性を有する保護膜形成材料としては、ポリエステルアミド酸含有熱硬化性組成物が提案されている(例えば特許文献1)。しかし、ポリエステルイミド硬化膜の形成に用いられる前記熱硬化性組成物中のポリエステルアミド酸は、比較的高分子量であり、平坦性が十分なポリエステルイミド硬化膜が得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−105264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記熱硬化性組成物の問題点を解決することであり、すなわち、ポリエステルアミド酸系熱硬化性組成物の硬化物の持つ耐熱性を維持しつつ、平坦性の良い硬化膜を形成することができる熱硬化性組成物を提供することにある。さらに本発明は、低温硬化性に優れた熱硬化性組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく種々検討した結果、ジカルボン酸無水物、特定のアミノ化合物、加水分解可能なケイ素化合物及び金属アルコキシドの反応から得られる、イミドを有する新規な反応生成物を含有する熱硬化性組成物が、上記目的を達成することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は以下の構成を有する。
[1]ジカルボン酸無水物(a1)、下記一般式(1)で表されるアミノ化合物(a2)、アミノ化合物(a2)以外の加水分解可能なケイ素化合物(a3)及び金属アルコキシド(a4)を反応させて得られる反応生成物(A):
【0011】
【化1】

(式(1)中、R1は単結合、炭素数1〜10のアルキレン又は炭素数6〜15のアリーレンであり、該アルキレンにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、また任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく(ただし、H2N−R1−Siにおいて、NH2に隣接した−CH2−およびSiに隣接した−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない)、該アリーレンにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、
2は水素、フッ素、炭素数1〜10のアルキル又は炭素数6〜15のアリールであり、該アルキルにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、また任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく(ただし、Si−R2において、Siに隣接した−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない)、該アリールにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、
3は水素又は炭素数1〜5のアルキルであり、該アルキルにおいて任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく(ただし、OR3におけるR3において、Oに隣接している−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない)、
iは1〜3の整数であり、
iが1の場合、2つのR2は互いに同一でも異なっていてもよく、
iが2以上の場合、複数存在するR3は互いに同一でも異なっていてもよい。)。
【0012】
[2]前記金属アルコキシド(a4)が、下記一般式(2)で表される化合物(a4−1)及び該化合物(a4−1)を重合して得られる重合体(a4−1p)からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属アルコキシドであることを特徴とする[1]に記載の反応生成物(A):
【0013】
【化2】

(式(2)中、R4は水素、フッ素、炭素数1〜10のアルキル又は炭素数6〜15のアリールであり、該アルキルにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、また任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく(ただし、M−R4において、Mに隣接した−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない)、該アリールにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、
5は、水素又は炭素数1〜5のアルキルであり、該アルキルにおいて任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく(ただし、OR5におけるR5において、Oに隣接している−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない)、
MはAl、Ba、B、Bi、Ca、Cu、Fe、Ga、Ge、Hf、In、K、La、Li、Mg、Mo、Na、Nb、Pb、P、Sb、Sn、Sr、Ta、Ti、V、W、Y、Zn及びZrから選択され、
kは0〜4の整数であり、kが2以上の場合、複数存在するR4は互いに同一でも異なっていてもよく、
mは1〜5の整数であり、mが2以上の場合には、複数存在するR5は互いに同一でも異なっていてもよく、
MがK、LiまたはNaの場合、k=0、m=1であり、
MがBa、Ca、Cu、Mg、Pb、SrまたはZnの場合、k+m=2であり、
MがAl、B、Bi、Fe、Ga、In、La、P、Sb、VまたはYの場合、k+m=3であり、
MがGe、Hf、Sn、TiまたはZrの場合、k+m=4であり、
MがMo、Nb、TaまたはWの場合、k+m=5である。)。
【0014】
[3]前記ジカルボン酸無水物(a1)が、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、フタル酸無水物、イタコン酸無水物及びトリメリット酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸無水物であることを特徴とする[1]または[2]に記載の反応生成物(A)。
【0015】
[4]前記アミノ化合物(a2)が、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランおよびp−アミノフェニルトリメトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ化合物であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の反応生成物(A)。
【0016】
[5]前記ケイ素化合物(a3)が、下記一般式(3)で表される化合物(a3−1)及び該化合物(a3−1)を重合して得られる重合体(a3−1p)からなる群より選ばれる少なくとも1種のケイ素化合物であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の反応生成物(A):
【0017】
【化3】

(式(3)中、R6は水素、フッ素、炭素数1〜10のアルキル又は炭素数6〜15のアリールであり、該アルキルにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、また任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく(ただし、Si−R6において、Siに隣接した−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない)、該アリールにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、
7は、水素又は炭素数1〜5のアルキルであり、該アルキルにおいて任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく(ただし、OR7におけるR7において、Oに隣接している−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない)、
jは1〜4の整数であり、
jが2以下の場合には、複数存在するR6は互いに同一でも異なっていてもよく、
jが2以上の場合には、複数存在するR7は互いに同一でも異なっていてもよい。)。
【0018】
[6]前記ケイ素化合物(a3)が、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン及びジフェニルジエトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種のケイ素化合物であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の反応生成物(A)。
【0019】
[7]前記金属アルコキシド(a4)が、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリプロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン及びテトラブトキシチタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属アルコキシドであることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の反応生成物(A)。
【0020】
[8]前記ジカルボン酸無水物(a1)がフタル酸無水物、トリメリット酸無水物およびシトラコン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸無水物であり、
前記アミノ化合物(a2)が3−アミノプロピルトリエトキシシランであり、
前記ケイ素化合物(a3)がテトラエトキシシラン、テトラエトキシシランを重合して得られる重合体およびジメチルジエトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種のケイ素化合物であり、
前記金属アルコキシド(a4)がトリメトキシボラン、トリイソプロポキシアルミニウム及びテトラブトキシチタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属アルコキシドであることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の反応生成物(A)。
【0021】
[9][1]〜[8]のいずれかに記載の反応生成物(A)を含有することを特徴とする熱硬化性組成物。
[10]さらに溶剤(B)を含むことを特徴とする[9]に記載の熱硬化性組成物。
【0022】
[11][9]または[10]に記載の熱硬化性組成物を加熱硬化することにより得られる硬化膜。
[12][11]に記載の硬化膜からなる保護膜を有するカラーフィルター。
【0023】
[13][12]に記載のカラーフィルターを有する表示素子。
[14][12]に記載のカラーフィルターを有する固体撮像素子。
[15][11]に記載の硬化膜が、薄膜トランジスタと透明電極との間に、透明絶縁膜として形成されてなるアレイ基板を有する表示素子。
【0024】
[16][11]に記載の硬化膜が、透明電極と配向膜との間に、透明絶縁膜として形成されてなるアレイ基板を有する液晶表示素子。
[17][11]に記載の硬化膜からなる保護膜を有するLED発光体。
【発明の効果】
【0025】
本発明の反応生成物を含有する熱硬化性組成物は、低温硬化性に優れ、該組成物を加熱硬化することによって得られる硬化膜は、高い耐熱性を有しながら高い平坦性を有し、顔料分散法により製造されたカラーフィルターの保護膜ならびに透明絶縁膜として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、液晶表示素子の液晶セルギャップを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[1.本発明の反応生成物(A)]
上記のごとく、本発明の反応生成物(A)は、ジカルボン酸無水物(a1)、一般式(1)で表されるアミノ化合物(a2)(以下単に「アミノ化合物(a2)」ともいう)、アミノ化合物(a2)以外の加水分解可能なケイ素化合物(a3)(以下単に「ケイ素化合物(a3)」ともいう)及び金属アルコキシド(a4)を反応させることで得られる。以下、上記4成分(a1)〜(a4)について説明する。
【0028】
本明細書において、例えばR3の定義に「複数存在するR3は互いに同一でも異なっていてもよい」との記載があるが、これは、全てのR3が同じ構造である場合、2つ以上のR3が同じ構造で、残りのR3は異なる構造である場合、全てのR3が異なる構造である場合の全てを含む。すなわち、任意の2つのR3は同じでも異なっていてもよい。このルールは他の基Rにも適用される。
【0029】
<1−1.ジカルボン酸無水物(a1)>
前記ジカルボン酸無水物(a1)は、酸無水物基を1つ有する化合物であれば、特に限定されない。酸無水物基が2つ以上存在すると、得られる反応生成物がゲル化を起こし、平坦な保護膜を形成可能な熱硬化性組成物は得られない。
【0030】
反応生成物(A)を得るにあたって、前記ジカルボン酸無水物(a1)は1種単独で用いても2種類以上を用いてもよい。
ジカルボン酸無水物(a1)およびアミノ化合物(a2)が反応することによって、アミド酸が形成され、このアミド酸が分子内脱水することによりイミドが形成される。このイミドが、本発明の反応生成物(A)を含有する熱硬化性組成物を硬化させて得られる硬化膜の耐熱性に寄与する。
【0031】
前記ジカルボン酸無水物(a1)としては、例えば、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、フタル酸無水物、4−メチルフタル酸無水物、3−メチルフタル酸無水物、イタコン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボンサン無水物、1,2−ナフタル酸無水物、グルタル酸無水物、3−メチルグルタル酸無水物、3,3−ジメチルグルタル酸無水物、2,2−ジメチルグルタル酸無水物、1,1−シクロペンタン二酢酸無水物、N−フタロイル−DL−グルタミン酸無水物及びトリメリット酸無水物を挙げることができる。
【0032】
これらの中でも、入手が容易であることから、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、フタル酸無水物、イタコン酸無水物およびトリメリット酸無水物が好ましい。
【0033】
さらに、ジカルボン酸無水物(a1)としてトリメリット酸無水物またはシトラコン酸無水物を使用すると、得られる反応生成物(A)を含有する熱硬化性組成物が、耐熱性の良好な硬化膜を与えるため好ましく、ジカルボン酸無水物(a1)としてフタル酸無水物を使用すると、前記熱硬化性組成物が、透明性及び平坦性の良好な硬化膜を与えるので、好ましい。これらの中でも、トリメリット酸無水物およびフタル酸無水物が特に好ましい。
【0034】
<1−2.アミノ化合物(a2)>
上記反応生成物(A)を得るにあたって、アミノ化合物(a2)は、1種単独で使用しても2種類以上を使用してもよい。
【0035】
上記のように、ジカルボン酸無水物(a1)およびアミノ化合物(a2)が反応することによってイミドが形成され、このイミドが、本発明の反応生成物(A)を含有する熱硬化性組成物を硬化させて得られる硬化膜の耐熱性に寄与する。
前記アミノ化合物(a2)は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0036】
【化4】

式(1)において、R1は単結合、炭素数1〜10のアルキレン又は炭素数6〜15のアリーレンである。前記アルキレンにおいては、任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、また任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよい。ただし、H2N−R1−において、NH2に隣接した−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはなく、R1−Siにおいて、Siに隣接した−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない。また、前記アリーレンにおいては、任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよい。
【0037】
1としては、アミノ化合物(a2)として安価であること及び入手の容易さの観点から、プロピレン又はフェニレンが好ましい。
上記式(1)において、R2は水素、フッ素、炭素数1〜10のアルキル又は炭素数6〜15のアリールである。前記アルキルにおいては、任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、また任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよい。ただし、Si−R2において、Siに隣接した−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない。また、前記アリールにおいては、任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよい。
【0038】
2としては、反応生成物(A)の、後述する本発明の熱硬化性組成物における他の各含有成分との相溶性及び該組成物の塗布性の観点から、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル又はフェニルが好ましい。
【0039】
上記式(1)において、R3は水素又は炭素数1〜5のアルキルである。前記アルキルにおいては、任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよい。ただし、OR3におけるR3において、Oに隣接した−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない。
【0040】
3としては、アミノ化合物(a2)としての入手の容易さ及び良好な反応性の観点から、メチル、エチル、n−プロピル又はi−プロピルが好ましい。
上記式(1)において、iは1〜3の整数であり、iが1の場合、2つのR2は互いに同一でも異なっていてもよく、iが2以上の場合、複数存在するR3は互いに同一でも異なっていてもよい。iは、本発明の反応生成物(A)を含有する熱硬化性組成物の良好な耐熱性の観点から、2または3であることが好ましい。
【0041】
アミノ化合物(a2)としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメトキシシラン、3−アミノプロピルエトキシジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルエチルメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルジエチルメトキシシラン、3−アミノプロピルジエチルエトキシシラン、3−アミノプロピルフェニルジメトキシシラン、3−アミノプロピルフェニルジエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリエトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシランおよびm−アミノフェニルトリエトキシシランを挙げることができる。
【0042】
これらの中でも、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランおよびp−アミノフェニルトリメトキシシランが、入手が容易であるので好ましい。また、アミノ化合物(a2)として3−アミノプロピルトリメトキシシランまたは3−アミノプロピルトリエトキシシランを使用すると、得られる反応生成物(A)を含有する熱硬化性組成物は、耐熱性の良好な硬化膜を与えるので好ましく、3−アミノプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0043】
本発明の反応生成物(A)を得る際のアミノ化合物(a2)の使用量については、上記硬化膜の透明性、耐熱性、耐薬品性の観点から、xモルのジカルボン酸無水物(a1)に対して、yモルのアミノ化合物(a2)を、下記式(101)のような比率で使用することが好ましく、下記式(102)のような比率で使用することがより好ましい。
0.5≦y/x≦1.5 ・・・(101)
0.8≦y/x≦1.2 ・・・(102)。
【0044】
<1−3.アミノ化合物(a2)以外の加水分解可能なケイ素化合物(a3)>
上記ケイ素化合物(a3)は、アミノ化合物(a2)以外の化合物であって、加水分解が可能であり、ケイ素を有する化合物であれば、特に限定されない。なお、ケイ素化合物(a3)は、反応生成物(A)を得るに際して、1種単独で使用しても2種類以上を使用してもよい。
【0045】
ケイ素化合物(a3)を使用することによって、反応生成物(A)から得られる硬化膜の光の透過率(透明性)が高まる。
このようなケイ素化合物(a3)としては、下記一般式(3)で表される化合物(a3−1)、該化合物(a3−1)を重合して得られる重合体(a3−1p)が挙げられる。
【0046】
【化5】

式(3)において、R6は、水素、フッ素、炭素数1〜10のアルキル又は炭素数6〜15のアリールである。前記アルキルにおいては、任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、また任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよい。ただし、Si−R6において、Siに隣接した−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない。また、前記アリールにおいては、任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよい。
【0047】
6としては、反応生成物(A)の、後述する本発明の熱硬化性組成物に含有される他の各成分との相溶性及び該組成物の塗布性の観点から、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル又はフェニルが好ましい。
【0048】
式(3)において、R7は水素又は炭素数1〜5のアルキルである。前記アルキルにおいては、任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよい。ただし、OR7のR7において、Oに隣接している−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない。
【0049】
7としては、良好な反応性の観点からメチル、エチル、n−プロピル又はi−プロピルが好ましい。
式(3)において、jは1〜4の整数であり、jが2以下の場合には、複数存在するR6は互いに同一でも異なっていてもよく、jが2以上の場合には、複数存在するR7は互いに同一でも異なっていてもよい。jは、本発明の反応生成物(A)を含有する熱硬化性組成物から得られる硬化膜の良好な耐熱性の観点から、2以上であることが好ましい。
【0050】
上記重合体(a3−1p)は、このような化合物(a3−1)を加水分解縮合させて得られる重合体であり、その分子量(GPCにより測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量)は、通常500〜3,000である。なお、加水分解縮合して重合体が生成するためには、上記式(3)において、jが2以上である必要がある。
【0051】
以上説明したケイ素化合物(a3)としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、トリメトキシシラン、ジメトキシエトキシシラン、メトキシジエトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシエトキシシラン、メチルメトキシジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルジメトキシエトキシシラン、エチルメトキシジエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルメトキシエトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルメトキシエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、ジメチルエチルメトキシシラン、ジメチルエチルエトキシシラン、メチルジエチルメトキシシラン、メチルジエチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、ならびにこれらを加水分解縮合させて得られる重合体を挙げることができる。
【0052】
これらの中でも、ケイ素化合物(a3)として安価であることおよび良好な透明性の観点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランおよびジフェニルジエトキシシランが好ましい。
【0053】
さらに、ケイ素化合物(a3)としてテトラエトキシシランまたはジメチルジエトキシシランを使用すると、本発明の反応生成物(A)を含有する熱硬化性組成物から耐熱性の良好な硬化膜が得られるので好ましく、テトラエトキシシランが特に好ましい。
【0054】
反応生成物(A)を得る際のケイ素化合物(a3)の使用量は、熱硬化性組成物の塗布性、上記硬化膜における透明性および耐熱性を向上させる観点から、ジカルボン酸無水物(a1)およびアミノ化合物(a2)の合計100重量部に対して10〜500重量部であることが好ましく、20〜200重量部であることがより好ましい。
【0055】
<1−4.金属アルコキシド(a4)>
上記金属アルコキシド(a4)は、金属原子およびアルコキシを有する化合物であれば、特に限定されない。なお、金属アルコキシド(a4)は、反応生成物(A)を得るに際して、1種単独で使用しても2種類以上を使用してもよい。
【0056】
金属アルコキシド(a4)を使用することによって、得られる反応生成物(A)の硬化スピードが上昇しているため、本発明の反応生成物(A)を含有する熱硬化性組成物は、硬化膜を基板上に成膜する途中の工程において、後述するプリベーク後からポストベーク後までにおける、製造中の前記硬化膜への異物の付着を低減させることができる。
【0057】
さらに、反応生成物(A)に金属アルコキシドを導入することにより、本発明の反応生成物(A)を含有する熱硬化性組成物は、耐熱性に優れた硬化膜を形成することが可能である。
【0058】
このような金属アルコキシド(a4)としては、下記一般式(2)で表される化合物(a4−1)、該化合物(a4−1)を重合して得られる重合体(a4−1p)が挙げられる。
【0059】
【化6】

式(2)において、R4は水素、フッ素、炭素数1〜10のアルキル又は炭素数6〜15のアリールである。前記アルキルにおいては、任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、また任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよい。ただし、M−R4において、Mに隣接した−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない。また、前記アリールにおいては、任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよい。
【0060】
4としては、反応生成物(A)の、本発明の熱硬化性組成物に含有されるその他の各成分との相溶性及び該組成物の塗布性の観点から、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル又はフェニルが好ましい。
【0061】
上記式(2)において、R5は水素又は炭素数1〜5のアルキルである。前記アルキルにおいては、任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよい。ただし、OR5におけるR5において、Oに隣接している−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない。
【0062】
5としては、良好な反応性の観点から、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチルまたはt−ブチルが好ましい。
上記式(2)において、MはAl、Ba、B、Bi、Ca、Cu、Fe、Ga、Ge、Hf、In、K、La、Li、Mg、Mo、Na、Nb、Pb、P、Sb、Sn、Sr、Ta、Ti、V、W、Y、Zn及びZrから選択される金属原子である。
【0063】
Mとしては、金属アルコキシド(a4)としての入手の容易さの観点から、Al、B、Ti、Ge、Mo及びPが好ましく、Al、BおよびTiがより好ましい。
上記式(2)において、kは0〜4の整数であり、kが2以上の場合には、複数存在するR4は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0064】
また、上記式(2)において、mは1〜5の整数であり、mが2以上の場合には、複数存在するR5は互いに同一でも異なっていてもよい。
なお、Mの種類(価数)によってkとmの合計は変化し、
MがK、LiまたはNaの場合はk=0かつm=1であり、
MがBa、Ca、Cu、Mg、Pb、SrまたはZnの場合はk+m=2であり(この場合、良好な反応性の観点から、kが0であり、mが2であることが好ましい。)、
MがAl、B、Bi、Fe、Ga、In、La、P、Sb、VまたはYの場合はk+m=3であり(この場合、良好な反応性の観点から、kが1以下であり、mが2以上であることが好ましい。)、
MがGe、Hf、Sn、TiまたはZrの場合はk+m=4であり(この場合、良好な反応性の観点から、kが2以下であり、mが2以上であることが好ましい。)、
MがMo、Nb、TaまたはWの場合はk+m=5である(この場合、良好な反応性の観点から、kが3以下であり、mが2以上であることが好ましい。)。
【0065】
上記重合体(a4−1p)は、前記化合物(a4−1)を加水分解縮合させて得られる重合体であり、その分子量(GPCにより測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量)は、通常500〜3,000である。なお、加水分解縮合して重合体が生成するためには、上記式(3)において、mが2以上である必要がある。
【0066】
以上説明した金属アルコキシド(a4)としては、例えば、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、メチルジメトキシボラン、メチルエトキシボラン、エチルジメトキシボラン、エチルジエトキシボラン、ジメチルメトキシボラン、ジメチルエトキシボラン、メチルエチルメトキシボラン、メチルエチルエトキシボラン、ジエチルメトキシボラン、ジエチルエトキシボラン、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリプロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタンおよびテトラブトキシチタンを挙げることができる。
【0067】
これらの中でも、金属アルコキシド(a4)としての入手の容易さの観点から、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリプロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン及びテトラブトキシチタンが好ましい。
【0068】
また、金属アルコキシド(a4)としてトリメトキシボラン、トリイソプロポキシアルミニウムまたはテトラブトキシチタンを使用すると、本発明の反応生成物(A)を含有する熱硬化性組成物は、硬化性が良好であるので好ましく、トリメトキシボラン及びテトラブトキシチタンが特に好ましい。
【0069】
反応生成物(A)を得る際の金属アルコキシド(a4)の使用量は、本発明の熱硬化性組成物の硬化性を向上させる観点から、ジカルボン酸無水物(a1)およびアミノ化合物(a2)の合計100重量部に対して0.1〜1,000重量部であることが好ましく、0.2〜100重量部であることがより好ましい。
【0070】
<1−5.反応生成物(A)の合成方法>
反応生成物(A)の合成方法は、特に制限されないが、上記(a1)〜(a4)成分を還流することによって合成する方法が好ましい。
還流温度は、(a1)〜(a4)成分の組成によって異なるが、通常50〜200℃の範囲内である。還流時間も特に限定されないが、通常1〜24時間の範囲内である。
【0071】
<1−6.反応生成物(A)の重量平均分子量およびその調整法>
例えば上記の合成方法によって得られる反応生成物(A)の重量平均分子量は、通常500〜6,000、好ましくは800〜3,000であり、従来の保護膜形成材料に使用されていたポリエステルアミド酸の重量平均分子量よりも低い。なお、本明細書において重量平均分子量とは、GPCにより測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。ここでGPCは、カラムとしてPLgel MIXED−D(VARIAN社製)を用い、移動相としてTHFを使用して、カラム温度:35℃、流速:1ml/minの条件で実施することができる。また前記標準ポリスチレンには、分子量が645〜132900のポリスチレン(例えば、VARIAN社製のポリスチレンキャリブレーションキットPL2010−0102)を使用することができる。
【0072】
本発明の反応生成物(A)を含有する熱硬化性組成物を加熱すると、加熱によって組成物がいったん流動(フロー)しやすくなり、それによって平坦に広がり、そして硬化が起こる。本発明の熱硬化性組成物を加熱硬化して得られる硬化膜の平坦性を高めるためには、前記反応生成物(A)の重量平均分子量が低いことが好ましい。
【0073】
前記反応生成物(A)は、上記(a1)〜(a4)成分を反応させることによって得られるが、ジカルボン酸無水物(a1)とアミノ化合物(a2)とが反応してイミドが形成される際に、水が放出される。この水によってアミノ化合物(a2)および加水分解可能なケイ素化合物(a3)の、ケイ素原子に結合したアルコキシ部分の加水分解縮合が起こる。したがって、ジカルボン酸無水物(a1)およびアミノ化合物(a2)の使用量を調整することによって、放出される水の量を調整することができ、それによって、反応生成物(A)の重量平均分子量の調整が可能である。また、外部から水を追加することによって、反応生成物(A)の重量平均分子量を高くすることもできる。さらに、(a1)〜(a4)成分としてどのような成分を使用するかの選択によっても、反応生成物(A)の重量平均分子量の調整が可能である。
【0074】
<1−7.重合溶剤>
前記反応生成物(A)を合成するに際しては、ジカルボン酸無水物(a1)を溶解することで反応生成物(A)の合成を容易にする観点から、重合溶剤を使用してもよい。なお、重合溶剤を使用した場合、反応生成物(A)は重合溶剤に溶解した状態で存在し、この重合溶剤は、後述する溶剤(B)としてそのまま使用することができる。重合溶剤を使用することによって、反応生成物(A)の保存安定性が向上する。
【0075】
重合溶剤の種類は特に限定されず、1種単独で使用しても2種類以上の混合溶媒として使用してもよい。
前記重合溶剤は、沸点が70〜300℃であることが好ましい。沸点が70〜300℃である溶剤としては、例えば水、エタノ−ル、メタノ−ル、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、ジオキサン、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、トリプロピレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、エチレングリコ−ルモノイソプロピルエ−テル、エチレングリコ−ルモノブチルエ−テル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テルアセテ−ト、プロピレングリコ−ルモノエチルエ−テルアセテ−ト、プロピレングリコ−ルモノプロピルエ−テルアセテ−ト、エチレングリコ−ルモノブチルエ−テルアセテ−ト、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコ−ルモノメチルエ−テル、ジエチレングリコ−ルモノメチルエ−テルアセテ−ト、ジエチレングリコ−ルモノエチルエ−テル、ジエチレングリコ−ルモノエチルエ−テルアセテ−ト、ジエチレングリコ−ルモノブチルエ−テル、ジエチレングリコ−ルモノブチルエ−テルアセテ−ト、ジエチレングリコ−ルジメチルエ−テル、ジエチレングリコ−ルジエチルエ−テル、ジエチレングリコ−ルメチルエチルエ−テル、トルエン、キシレン、γ−ブチロラクトンおよびN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0076】
重合溶剤としては、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テルアセテ−ト、プロピレングリコ−ルモノエチルエ−テルアセテ−ト、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコ−ルモノエチルエ−テルアセテ−ト、ジエチレングリコ−ルモノブチルエ−テルアセテ−ト、ジエチレングリコ−ルジメチルエ−テル、ジエチレングリコ−ルメチルエチルエ−テル、乳酸エチルおよび酢酸ブチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶剤が、本発明の反応生成物(A)の保存安定性を高める観点からより好ましい。
【0077】
さらに前記溶剤が、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テルアセテ−ト、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコ−ルメチルエチルエ−テル、乳酸エチルおよび酢酸ブチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶剤であると、本発明の反応生成物(A)の保存安定性を高める観点及び人体への安全性の観点からより一層好ましい。
【0078】
重合溶剤を使用する場合、その使用量は、ジカルボン酸無水物(a1)を十分に溶解する観点、および本発明の反応生成物(A)の保存安定性を向上する観点から、ジカルボン酸無水物(a1)100重量部に対して30〜300重量部であることが好ましく、50〜200重量部であることがより好ましい。
【0079】
[2.熱硬化性組成物]
本発明の熱硬化性組成物は、以上説明した反応生成物(A)を含み、反応生成物(A)の他に、以下で説明する溶剤(B)、エポキシ化合物(C)及び添加剤(D)を含んでもよい。また、反応生成物(A)は、本発明の熱硬化性組成物中に1種単独で含有されていても、2種類以上が含有されていてもよい。
【0080】
<2−1.溶剤(B)>
前記溶剤(B)は、本発明の熱硬化性組成物の塗布性、保存安定性等の特性を向上する観点から、添加することができる。溶剤(B)は特に限定されず、その具体例としては、上記の反応生成物(A)を得るに際して使用する重合溶剤の例として挙げた溶剤と同様の溶剤が挙げられる。
【0081】
本発明の熱硬化性組成物の塗布性や保存安定性を向上する観点から、溶剤(B)として好ましいのは、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テルアセテ−ト、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコ−ルメチルエチルエ−テル、乳酸エチルおよび酢酸ブチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶剤である。
【0082】
溶剤(B)は、1種単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
本発明の熱硬化性組成物に溶剤(B)を添加する場合、溶剤(B)の添加量は、熱硬化性組成物の塗布性、保存安定性等の特性を向上する観点から、反応生成物(A)100重量部に対して10〜1,000重量部であることが好ましく、20〜400重量部であることがより好ましい。
【0083】
<2−2.エポキシ化合物(C)>
前記エポキシ化合物(C)は、例えば本発明の熱硬化性組成物を加熱硬化して得られる硬化膜の耐久性を向上させる観点から、本発明の熱硬化性組成物に添加することができる。
【0084】
エポキシ化合物(C)は、エポキシを有すれば特に限定されず、1種単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
エポキシ化合物(C)としては、例えば、重合可能なエポキシ化合物の単独重合体、共重合体及びオリゴマー等の化合物、ビスフェノ−ルA型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、下記式(C−1)〜(C−5)で表される化合物が挙げられる。なお式(C−4)中、nは0〜10の整数を表す。
【0085】
【化7】

さらに具体的には、エポキシ化合物(C)としては、jER807、jER815、jER825、jER827(いずれも商品名、三菱化学株式会社)が挙げられる。
【0086】
式(C−1)で表される化合物の市販品としては、アラルダイト(Araldite)CY184(商品名、ハンツマン・ジャパン株式会社)が挙げられる。
式(C−2)で表される化合物の市販品としては、セロキサイド(CELLOXIDE)2021P(商品名、ダイセル化学工業株式会社)が挙げられる。
【0087】
式(C−3)で表される化合物の市販品としては、テクモア(TECHMORE)VG3101L(商品名、株式会社プリンテック)が挙げられる。
式(C−4)で表される化合物の市販品としては、jER828、jER190P、jER191P、jER1004、jER1256(いずれも商品名、三菱化学株式会社)、アラルダイトCY177(商品名、ハンツマン・ジャパン株式会社)が挙げられる。
【0088】
式(C−5)で表される化合物の市販品としては、「4,4'−メチレンビス(N,N−ジグリシジルアニリン)」(シグマ・アルドリッチ・ジャパン株式会社)が挙げられる。
【0089】
これらの中でも、式(C−4)で表される化合物(正確にはn=0〜4の化合物の混合物)である「jER828」(商品名、三菱化学株式会社)、式(C−1)で表される化合物である「アラルダイトCY184」(商品名、ハンツマン・ジャパン株式会社)、式(C−2)で表される化合物である「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社)、式(C−3)で表される化合物である「テクモアVG3101L」(商品名、株式会社プリンテック)、及び式(C−5)で表される化合物「4,4'−メチレンビス(N,N−ジグリシジルアニリン)」(シグマ・アルドリッチ・ジャパン株式会社)は、上記硬化膜の耐熱性を高める観点から好ましい。
【0090】
本発明の熱硬化性組成物にエポキシ化合物(C)を添加する場合、エポキシ化合物(C)の添加量は、上記硬化膜の物理的な耐久性を高める観点から、反応生成物(A)100重量部に対して30〜100重量部であることが好ましく、50〜80重量部であることがより好ましい。
【0091】
<2−3.添加剤(D)>
本発明の熱硬化性組成物は、塗布均一性、現像性、接着性、安定性等の特性を向上させる観点から、種々の添加剤(D)を含んでいてもよい。添加剤(D)としては、例えばアクリル系、スチレン系、ポリエチレンイミン系又はウレタン系の高分子分散剤、アニオン系、カチオン系、ノニオン系又はフッ素系の界面活性剤、シリコン系塗布性向上剤、シランカップリング剤等の密着性向上剤、アルコキシベンゾフェノン類等の紫外線吸収剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤、エポキシ化合物、メラミン化合物又はビスアジド化合物等の熱架橋剤、有機カルボン酸およびフェノ−ル化合物等のアルカリ溶解性促進剤、ならびにヒンダ−ド系フェノ−ル等の酸化防止剤を挙げることができる。
【0092】
(2−3−1.高分子分散剤)
本発明の熱硬化性組成物は、塗布均一性をさらに向上させる観点から、高分子分散剤をさらに含有することが好ましい。このような観点から、高分子分散剤の含有量は、熱硬化性組成物において、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.05〜8重量%であることがより好ましく、0.1〜5重量%であることがさらに好ましい。
【0093】
このような高分子分散剤としては、例えば、SOLSPERSE3000、SOLSPERSE5000、SOLSPERSE12000、SOLSPERSE20000、SOLSPERSE32000(以上いずれも商品名、日本ルーブリゾール株式会社)、ポリフローNo.38、ポリフローNo.45、ポリフローNo.75、ポリフローNo.85、ポリフローNo.90、ポリフローS、ポリフローNo.95、ポリフローATF、ポリフローKL−245(以上いずれも商品名、共栄社化学株式会社)が挙げられる。
【0094】
(2−3−2.界面活性剤)
本発明の熱硬化性組成物は、塗布均一性をさらに向上させる観点から、界面活性剤をさらに含有することが好ましい。このような観点から、界面活性剤の含有量は、熱硬化性組成物において、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.05〜8重量%であることがより好ましく、0.1〜5重量%であることがさらに好ましい。
【0095】
このような界面活性剤としては、例えば、ディスパーベイク(Disperbyk)161、同(Disperbyk)162、同(Disperbyk)163、同(Disperbyk)164、同(Disperbyk)166、同(Disperbyk)170、同(Disperbyk)180、同(Disperbyk)181、同(Disperbyk)182、サーフロンSC−101、サーフロンKH−40(以上いずれも商品名、AGCセイミケミカル株式会社)、フタージェント222F、フタージェント251、FTX−218、DFX−18(以上いずれも商品名、株式会社ネオス)、EFTOP EF−351、同EF−352、同EF−601、同EF−801、同EF−802(以上いずれも商品名、三菱マテリアル株式会社)、メガファックF−171、同F−177、同F−475、同R−08、同R−30(以上いずれも商品名、DIC株式会社)、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、及びアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩が挙げられる。
【0096】
これらの中でも、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、DFX−18等のフッ素系の界面活性剤は、熱硬化性組成物の塗布均一性を高める観点から好ましい。
【0097】
(2−3−3.シリコン系塗布性向上剤)
本発明の熱硬化性組成物は、塗布均一性をさらに向上させる観点から、シリコン系塗布性向上剤をさらに含有することが好ましい。このような観点から、シリコン系塗布性向上剤の含有量は、熱硬化性組成物において、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.05〜8重量%であることがより好ましく、0.1〜5重量%であることがさらに好ましい。
【0098】
このようなシリコン系塗布性向上剤としては、例えば、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK330、BYK344、BYK346(以上いずれも商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社)、KP−341、KP−358、KP−368、KF−96−50CS、KF−50−100CS(以上いずれも商品名、信越化学工業株式会社)が挙げられる。
これらの中でも、BYK306、BYK344、BYK346、KP−341、KP−358、及びKP−368は、熱硬化性組成物の塗布均一性を高める観点から好ましい。
【0099】
(2−3−4.密着性向上剤)
本発明の熱硬化性組成物は、該組成物から形成される硬化膜と基板との密着性をさらに向上させる観点から、密着性向上剤をさらに含有することが好ましい。このような観点から、密着性向上剤の含有量は、熱硬化性組成物の固形分100重量部に対し10重量部以下であることが好ましい。
【0100】
このような密着性向上剤としては、例えば、シラン系、アルミニウム系又はチタネート系のカップリング剤を用いることができ、具体的には、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤、及びテトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤を挙げることができる。
これらの中でも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが、密着性を向上させる効果が大きいため好ましい。
【0101】
(2−3−5.紫外線吸収剤)
本発明の熱硬化性組成物は、該組成物から得られる硬化膜の劣化防止能をさらに向上させる観点から、紫外線吸収剤をさらに含有することが好ましい。このような観点から、紫外線吸収剤の含有量は、熱硬化性組成物において、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.05〜8重量%であることがより好ましく、0.1〜5重量%であることがさらに好ましい。
【0102】
このような紫外線吸収剤としては、例えば、チヌビン(Tinuvin)P、チヌビン120、チヌビン144、チヌビン213、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン571、チヌビン765(以上いずれも商品名、BASFジャパン株式会社)が挙げられる。これらの中でも、チヌビンP、チヌビン120、チヌビン326が、透明性、相溶性の観点から好ましい。
【0103】
(2−3−6.ヒンダード系フェノール酸化防止剤)
ヒンダード系フェノール酸化防止剤としては、フェノールのOHのオルト位にt−ブチルを有し、さらにアルキル基等の置換基を有していてもよい化合物、及び、フェノール系化合物の2〜4量体化合物であって、フェノールのOHのパラ位に二価の有機基を有し、該二価の有機基を介して、前記フェノール系化合物がパラ連結した化合物のような公知の化合物が用いられる。
【0104】
そのようなヒンダード系フェノール酸化防止剤の市販品としては、イルガノックス(Irganox)1010(商品名、BASFジャパン株式会社)などがある。
ヒンダード系フェノール酸化防止剤を本発明の熱硬化性組成物に添加する場合、ヒンダード系フェノール酸化防止剤の添加量は、本発明の熱硬化性組成物の変色を抑制する観点から、反応生成物(A)100重量部に対して1〜30重量部であることが好ましく、1〜20重量部であることがより好ましい。
【0105】
<2−4.熱硬化性組成物の保存>
本発明の熱硬化性組成物は、温度−30〜25℃の範囲で遮光して保存すると、組成物の経時安定性が良好となり好ましい。保存温度が−20〜10℃であれば、析出物もなく一層好ましい。
【0106】
<2−5.熱硬化性組成物の特性>
本発明の熱硬化性組成物から得られる硬化膜は、例えば、表示素子等の製造において、保護膜などとして使用される硬化膜に対して一般的に求められている高透明性、高耐溶剤性、高耐水性、高耐酸性、高耐アルカリ性、高耐熱性、低誘電率性、下地との密着性等の各種特性を有する。
【0107】
前記熱硬化性組成物は、上記(a1)〜(a4)成分を反応させて得られる反応生成物(A)を含有しているため、加熱時のフロ−が大きい。そのため、前記熱硬化性組成物を凹凸のある表面(例えば基板上に画素が形成されてなるカラーフィルター)上に塗布し、加熱をすることによって、平坦な塗布面が得られる。さらに加熱によって硬化がおこるが、硬化が完了した後の硬化膜の冷却時の収縮が少ない。
【0108】
よって、前記熱硬化性組成物を加熱硬化して形成された硬化膜は、高い平坦性を有する。そのため、前記硬化膜を液晶表示素子等のカラーフィルターの保護膜として使用することで、表示品位向上の効果が得られる。
【0109】
また、前記反応生成物(A)の合成には、金属アルコキシド(a4)を使用しているため、前記熱硬化性組成物は低温硬化性に優れ、上記塗布の工程においてベタツキが残ったり、塗布膜に異物が付着したり傷が付くなどすることがほとんどない。さらに、低温硬化性に優れていることから、後述するスピンコート等の塗布方法によって塗布膜を形成しても、工程中に問題が生じる可能性が非常に低い。
【0110】
[3.本発明の硬化膜]
本発明の硬化膜は、前述した熱硬化性組成物の塗膜を加熱することにより得られる。本発明の熱硬化性組成物は、透明の重合体膜を形成するのに適しており、前記硬化膜の用途としては、カラーフィルターの保護膜及び絶縁膜が好ましく挙げられる。ここで、絶縁膜とは、例えば、層状に配置される配線間を絶縁するために設ける膜(層間絶縁膜)等をいう。
本発明の硬化膜は、レジスト分野において重合体膜を形成する通常の方法で形成することができ、例えば以下のようにして形成される。
【0111】
1)塗膜の形成
まず、本発明の熱硬化性組成物をスピンコート、ロールコート、スリットコート等の公知の方法により、ガラス等の基板上に塗布し、塗膜を形成する。次に、基板上の熱硬化性組成物の塗膜をホットプレート又はオーブンで、通常60〜150℃で1〜10分間乾燥(プリベーク)する。
【0112】
前記基板としては、例えば、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラス等の透明ガラス基板、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、アクリル重合体、塩化ビニール重合体、芳香族ポリアミド重合体、ポリアミドイミド、ポリイミド等の合成重合体製のシ−ト、フィルム又は基板、アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板等の金属基板、その他セラミック板、光電変換素子を有する半導体基板が挙げられる。
【0113】
これらの基板には所望により、シランカップリング剤等の薬品処理、プラズマ処理、イオンプレ−ティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の前処理を行うことができる。
【0114】
2)加熱硬化(焼成)
基板上の上記塗膜は、最後に100〜250℃で10〜120分間焼成される(ポストベーク)。これにより、通常0.5〜5μmの厚みの本発明の硬化膜が得られる。なお、本発明の熱硬化性組成物は低温硬化性に優れているため、100℃で3分程度という低温での短時間の加熱によっても硬化し、硬化膜の製造途中において問題のない程度の硬化が起こる。
【0115】
このようにして得られた所望の硬化膜の膜上に透明電極をスパッタリングにより形成し、エッチングによりパタ−ニングを行った後、透明電極上に配向処理を行う膜を形成させてもよい。前記硬化膜は、耐スパッタ性が高いため、透明電極を形成しても硬化膜にしわが発生せず、高い透明性を保つことができる。
【0116】
[4.本発明のカラーフィルター]
前記のように、本発明の熱硬化性組成物は加熱時のフローが大きいため、基板上に画素が形成されてなるカラーフィルターのような凹凸を有する表面上に塗布し、加熱硬化すると、平坦性に優れた硬化膜が得られる。
【0117】
この硬化膜は、前述のように透明性、耐溶剤性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性、低誘電率性および下地との密着性などに優れているため、カラーフィルターの保護膜として好適である。本発明のカラーフィルターは、このような本発明の硬化膜を保護膜として有することを特徴としている。前記カラーフィルターは、染色法、顔料分散法、電着法または印刷法のいずれの方法で製造されたものでもよい。
【0118】
[5.本発明の表示素子]
本発明の表示素子は、上述した本発明のカラーフィルター及び/又は後述するアレイ基板を有する。本発明の表示素子は、前記のカラーフィルターおよびアレイ基板以外の構成については、公知の表示素子と同様の構成とすることができる。表示素子としては、液晶表示素子、有機EL素子などが挙げられる。
【0119】
例えば前記表示素子の一つである液晶表示素子は、上記のようにしてカラーフィルター上に形成された硬化膜(保護膜)が設けられた基板と対向基板であるアレイ基板とを、位置を合わせて圧着し、その後熱処理して組み合わせ、対向する基板の間に液晶を注入し、注入口を封止することによって製作される。
【0120】
又は、上記カラーフィルター上に形成された硬化膜(保護膜)が設けられた基板及び上記アレイ基板の一方の基板に上に液晶を散布した後、他方の基板を重ね合わせ、液晶が漏れないように密封することによっても製作することができ、上記液晶表示素子は、このように製作された液晶表示素子であってもよい。
【0121】
さらに前記液晶表示素子は、透明電極と配向膜との間に透明絶縁膜が形成されてなるアレイ基板を有する構成であってもよく、この場合、本発明の硬化膜は、前記透明絶縁膜として形成することができる。本発明の硬化膜は耐熱性に優れているため、本発明の硬化膜を透明絶縁膜として有する本発明の液晶表示素子は、液晶表示素子を製造する工程の中で、硬化膜作成の後工程の加熱に耐えることができ、高い透明性が達成される。
【0122】
前述のように、本発明の表示素子は、本発明の熱硬化性組成物から形成された、平坦性に優れた保護膜を有するカラーフィルターを有する液晶表示素子とすることができる。なお、この液晶表示素子に用いられる液晶、すなわち液晶化合物及び液晶組成物の種類は特に限定されず、いずれの公知の液晶化合物及び液晶組成物をも使用することができる。
【0123】
さらに、本発明の表示素子は、薄膜トランジスタと透明電極との間に透明絶縁膜が形成されてなるアレイ基板を有する構成であってもよく、この場合、本発明の硬化膜は、前記透明絶縁膜として形成することができる。本発明の硬化膜は耐熱性に優れているため、本発明の硬化膜を透明絶縁膜として有する本発明の液晶表示素子は、液晶表示素子を製造する工程の中で、硬化膜作成の後工程の加熱に耐えることができ、高い透明性が達成される。
【0124】
本発明の表示素子は、前述のように、前記表示素子が有するカラーフィルター上の保護膜が、平坦性に優れているため、カラーフィルターの画素に凹凸があった場合でも、液晶セルギャップが均一になり、高い表示品位が達成される。
【0125】
[6.本発明の固体撮像素子]
本発明の固体撮像素子は、上述した本発明のカラーフィルターを有する。
本発明の固体撮像素子は、前記のカラーフィルターの構成以外は、公知の固体撮像素子と同様の構成とすることができる。固体撮像素子としては、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサなどが挙げられる。
【0126】
例えば、前記固体撮像素子の一つであるCCDイメージセンサは、上記のようにして本発明の硬化膜からなる保護膜を有するカラーフィルターが設けられた基板、受光素子及び電荷結合素子を組み合わせることによって製作される。
【0127】
本発明の固体撮像素子は、前述のように、前記カラーフィルターが有する保護膜が平坦性に優れているため、カラーフィルターの画素に凹凸があった場合でも、カラーフィルターを透過する光が、画素による差が少なくなり、高い撮像品位が達成される。
【0128】
[7.本発明のLED発光体]
本発明のLED発光体は、上述した本発明の硬化膜からなる保護膜を有する。本発明のLED発光体は、前記の保護膜の構成以外は、公知のLED発光体と同様の構成とすることができる。
【0129】
LED発光体は、n型半導体層、発光層及びp型半導体層がこれらの順に積層された積層体を有し、前記n型半導体層上及びp型発光体層上にそれぞれ異なる電極が形成される。前記n型半導体層、発光層、p型半導体層及び電極の保護及び絶縁のために本発明の硬化膜(保護膜)が形成される。
【0130】
本発明のLED発光体は、前述のように前記硬化膜(保護膜)が耐熱性に優れているため、LED発光体を製造する工程の中で、硬化膜作成の後工程の加熱に耐えることができ、高い透明性を持つので優れた発光効率が達成される。
【実施例】
【0131】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
下記の合成例及び比較合成例に使用した化合物を、成分毎に記す。
ジカルボン酸無水物(a1):
フタル酸無水物
トリメリット酸無水物
シトラコン酸無水物。
アミノ化合物(a2):
3−アミノプロピルトリエトキシシラン。
ケイ素化合物(a3):
テトラエトキシシラン
ジメチルジエトキシシラン
重合体1:テトラエトキシシランを加水分解縮合反応させることにより得られる重合体(重量平均分子量1,000)。
金属アルコキシド(a4):
トリメトキシボラン
トリイソプロポキシアルミニウム
テトラブトキシチタン。
溶剤(B):
3−メトキシプロピオン酸メチル(以下「MMP」と略記)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下「PGMEA」と略記)
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(以下「EDM」と略記)。
エポキシ化合物(C):
jER828。
添加剤(D):
DFX−18。
その他:
meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物
3,3'−ジアミノジフェニルスルホン
1,4−ブタンジオール
3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物。
【0132】
[合成例1]反応生成物(A1)の合成
温度計、攪拌機、原料投入仕込み口および窒素ガス導入口を備えた200mlの四つ口フラスコに、フタル酸無水物、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラエトキシシランおよびトリメトキシボランを下記の重量で仕込み、熱浴150℃で3時間加熱して還流して、反応生成物(A1)の合成を行った。
フタル酸無水物 28.06g(0.189mol)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン 41.94g(0.189mol)
テトラエトキシシラン 29.00g
トリメトキシボラン 1.00g。
【0133】
反応液を室温まで冷却し、溶液の一部をサンプリングし、GPC分析(ポリスチレン標準)により反応生成物(A1)の重量平均分子量を測定した。その結果、重量平均分子量は1,700であった。
【0134】
[合成例2]反応生成物(A2)の合成
下記の原料を下記の重量で仕込み、合成例1と同様の方法で反応生成物(A2)の合成を行った。
トリメリット酸無水物 23.23g(0.121mol)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン 26.77g(0.121mol)
テトラエトキシシラン 29.00g
トリイソプロポキシアルミニウム 1.00g
EDM 20.00g。
【0135】
反応液を室温まで冷却し、反応生成物(A2)のEDM溶液を得た。合成例1と同様にして前記反応生成物(A2)の重量平均分子量を測定した。その結果、重量平均分子量は1,800であった。
【0136】
[合成例3]反応生成物(A3)の合成
下記の原料を下記の重量で仕込み、合成例1と同様の方法で反応生成物(A3)の合成を行った。
フタル酸無水物 14.75g(0.100mol)
シトラコン酸無水物 11.16g(0.100mol)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン 44.09g(0.199mol)
重合体1 29.00g
テトラブトキシチタン 1.00g。
【0137】
反応液を室温まで冷却し、合成例1と同様にして反応生成物(A3)の重量平均分子量を測定した。その結果、重量平均分子量は2,600であった。
【0138】
[合成例4]反応生成物(A4)の合成
下記の原料を下記の重量で仕込み、合成例1と同様の方法で反応生成物(A4)の合成を行った。
フタル酸無水物 20.04g(0.135mol)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン 29.96g(0.135mol)
ジメチルジエトキシシラン 29.00g
トリメトキシボラン 1.00g
MMP 20.00g。
【0139】
反応液を室温まで冷却し、反応生成物(A4)のMMP溶液を得た。合成例1と同様にして反応生成物(A4)の重量平均分子量を測定した。その結果、重量平均分子量は1,400であった。
【0140】
[比較合成例1]反応生成物(A'5)の合成
下記の原料を下記の重量で仕込み、合成例1と同様の方法で反応生成物(A'5)の合成を行った。
フタル酸無水物 28.06g(0.189mol)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン 41.94g(0.189mol)
テトラエトキシシラン 30.00g。
【0141】
反応液を室温まで冷却し、合成例1と同様にして反応生成物(A'5)の重量平均分子量を測定した。その結果、重量平均分子量は1,500であった。
【0142】
[比較合成例2]反応生成物(A'6)の合成
下記の原料を下記の重量で仕込み、合成例1と同様の方法で反応生成物(A'6)の合成を行った。
フタル酸無水物 28.06g(0.189mol)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン 41.94g(0.189mol)
トリメトキシボラン 1.00g
EDM 29.00g。
【0143】
反応液を室温まで冷却し、反応生成物(A’6)のEDM溶液を得た。合成例1と同様にして反応生成物(A'6)の重量平均分子量を測定した。その結果、重量平均分子量は1,000であった。
【0144】
[比較合成例3]反応生成物(A'7)の合成
下記の原料を下記の重量で仕込み、合成例1と同様の方法で反応生成物(A'7)の合成を行った。
meso−ブタン−1,2,3,4−
テトラカルボン酸二無水物 15.46g(0.078mol)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン 34.54g(0.156mol)
テトラエトキシシラン 29.00g
トリメトキシボラン 1.00g
MMP 20.00g。
【0145】
反応液を室温まで冷却したが、ゲル化して、液体状態の反応生成物(A'7)を得られなかった。
【0146】
[比較合成例4]ポリエステルアミド酸(A'8)の合成
温度計、撹拌羽根の付いた500mlのセパラブルフラスコを窒素置換した後、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン(以下「DDS」と略記する)9.93g、及び1,4−ブタンジオール(以下「1,4−BD」と略記する)14.42gを仕込んだ後、脱水精製した3−メトキシプロピオン酸メチル(MMP)202gを仕込み、室温で撹拌し、DDS及び1,4−ブタンジオールを溶解させた。その後、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(以下「ODPA」と略記する)62.04gを投入した。オイルバスで130℃まで加温し、4hr攪拌後、冷却することにより淡黄色透明なポリエステルアミド酸(A'8)の30重量%溶液を得た。
【0147】
このポリエステルアミド酸(A'8)について、合成例1と同様にして重量平均分子量を測定した。その結果、重量平均分子量は7,600であった。
以上の結果を下記表1にまとめる。
【0148】
【表1】

表1中の略号は以下のとおりである。
PAH:フタル酸無水物
TMA:トリメリット酸無水物
CAH:シトラコン酸無水物
APTES:3−アミノプロピルトリエトキシシラン
TEOS:テトラエトキシシラン
DMDES:ジメチルジエトキシシラン
TMB:トリメトキシボラン
TIPA:トリイソプロポキシアルミニウム
4BT:テトラブトキシチタン
BDAH:meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物。
【0149】
[実施例1]
撹拌羽根の付いた50mlのセパラブルフラスコを窒素置換し、そのフラスコに、合成例1で得られた反応生成物(A1)とDFX−18を下記の重量で仕込み、室温で5hr撹拌して、均一に溶解させた。
反応生成物(A1) 20.00g
DFX−18 0.02g。
【0150】
次いで、得られた溶液をメンブランフィルター(0.2μm)で濾過して塗布液を調製した。次に、この塗布液をガラス基板上及びカラーフィルター基板上に1,100rpmで10秒間スピンコートした後、ホットプレート上で100℃で3分間プリベークして塗膜を形成させた。その後、オーブンで、230℃で30分間加熱することにより塗膜を硬化させ、膜厚1.5μmの硬化膜を得た。
このようにして得られた硬化膜または前記塗布液について、低温硬化性、平坦性、透明性および耐熱性を評価した。これらの評価結果は下記表3に示されている。
【0151】
[低温硬化性の評価方法]
前記の塗布液をスピンコートしたガラスまたはカラーフィルター基板をホットプレート上で100℃で3分間プリベークした。そして、形成された塗膜に対して、直径5mmのステンレス製のピンで50g重の加重をかけ、ピンを外して、目視で前記塗膜にピンの跡が残るかを評価した。跡が残らない場合を○、跡が残る場合を×とした。
【0152】
[平坦性の評価方法]
上記操作により得られた硬化膜付きカラーフィルター基板の硬化膜表面の段差を、段差・表面あらさ・微細形状測定装置(商品名;P−15、KLA TENCOR株式会社製)を用いて測定し、ブラックマトリクスを含むR、G、B画素上の保護膜表面の最上部と最下部との差(以下、最大段差と略記)を求めた。また、使用したカラーフィルター基板は、最大段差約2.0μmの顔料分散カラーフィルターである。
【0153】
[透明性の評価方法]
有限会社東京電色製TC−1800を使用し、透明膜を形成していないガラス基板をリファレンス(100T%)として、上記操作で得られた硬化膜付きガラス基板の波長400nmでの光透過率を測定した。透過率が95T%以上の場合は○、透過率が95T%未満の場合は×とした。
【0154】
[耐熱性の評価方法]
上記の透明性の評価方法に使用し、光透過率の測定を行った硬化膜付きガラス基板を、オーブンで、230℃で60分間加熱した。加熱後の硬化膜付き基板の、波長400nmでの光透過率を測定した。透過率が90T%以上の場合は○、透過率が90T%未満の場合は×とした。なお、リファレンスはガラス基板である。
【0155】
[実施例2]
下記の原料を下記の重量で仕込み、実施例1と同様の方法で塗布液の調製を行い、実施例1と同様に各特性を評価した。評価結果を下記表3に示す。
反応生成物(A2) 20.00g
PGMEA 10.00g
jER828 10.00g
DFX−18 0.02g。
【0156】
[実施例3]
下記の原料を下記の重量で仕込み、実施例1と同様の方法で塗布液の調製を行い、実施例1と同様に各特性を評価した。評価結果を下記表3に示す。
反応生成物(A3) 20.00g
DFX−18 0.02g。
【0157】
[実施例4]
下記の原料を下記の重量で仕込み、実施例1と同様の方法で塗布液の調製を行い、実施例1と同様に各特性を評価した。評価結果を下記表3に示す。
反応生成物(A4) 20.00g
DFX−18 0.02g。
【0158】
[比較例1]
下記の原料を下記の重量で仕込み、実施例1と同様の方法で塗布液の調製を行い、実施例1と同様に各特性を評価した。評価結果を下記表3に示す。
反応生成物(A'5) 20.00g
DFX−18 0.02g。
【0159】
[比較例2]
下記の原料を下記の重量で仕込み、実施例1と同様の方法で塗布液の調製を行い、実施例1と同様に各特性を評価した。評価結果を下記表3に示す。
反応生成物(A'6) 20.00g
DFX−18 0.02g。
【0160】
[比較例3]
下記の原料を下記の重量で仕込み、実施例1と同様の方法で塗布液の調製を行い、実施例1と同様に各特性を評価した。評価結果を下記表3に示す。
ポリエステルアミド酸(A’8) 20.00g
PGMEA 10.00g
jER828 10.00g
DFX−18 0.02g。
【0161】
以上の実施例および比較例で調製された塗布液の組成を下記表2にまとめる。
【0162】
【表2】

さらに、以上の実施例および比較例で行った、各特性の評価結果を下記表3にまとめる。
【0163】
【表3】

表3に示した結果から明らかなように、実施例1〜4で使用した熱硬化性組成物(塗布液)は、低温硬化性に優れ、実施例1〜4の硬化膜は、透明性および耐熱性に優れていながら、平坦性も優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明の熱硬化性組成物より得られた硬化膜は、平坦性や耐熱性などの光学材料としての特性に優れている点から、カラーフィルター、LED発光素子及び受光素子などの各種光学材料などの保護膜、並びに、アレイ基板において、TFTと透明電極との間及び透明電極と配向膜との間に形成される透明絶縁膜として利用できる。
【符号の説明】
【0165】
12 基板
14 画素
16 保護膜
18 液晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸無水物(a1)、下記一般式(1)で表されるアミノ化合物(a2)、アミノ化合物(a2)以外の加水分解可能なケイ素化合物(a3)及び金属アルコキシド(a4)を反応させて得られる反応生成物(A):
【化1】

(式(1)中、R1は単結合、炭素数1〜10のアルキレン又は炭素数6〜15のアリーレンであり、該アルキレンにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、また任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく(ただし、H2N−R1−Siにおいて、NH2に隣接した−CH2−およびSiに隣接した−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない)、該アリーレンにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、
2は水素、フッ素、炭素数1〜10のアルキル又は炭素数6〜15のアリールであり、該アルキルにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、また任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく(ただし、Si−R2において、Siに隣接した−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない)、該アリールにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、
3は水素又は炭素数1〜5のアルキルであり、該アルキルにおいて任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく(ただし、OR3におけるR3において、Oに隣接している−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない)、
iは1〜3の整数であり、
iが1の場合、2つのR2は互いに同一でも異なっていてもよく、
iが2以上の場合、複数存在するR3は互いに同一でも異なっていてもよい。)。
【請求項2】
前記金属アルコキシド(a4)が、下記一般式(2)で表される化合物(a4−1)及び該化合物(a4−1)を重合して得られる重合体(a4−1p)からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属アルコキシドであることを特徴とする請求項1に記載の反応生成物(A):
【化2】

(式(2)中、R4は水素、フッ素、炭素数1〜10のアルキル又は炭素数6〜15のアリールであり、該アルキルにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、また任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく(ただし、M−R4において、Mに隣接した−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない)、該アリールにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、
5は、水素又は炭素数1〜5のアルキルであり、該アルキルにおいて任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく(ただし、OR5におけるR5において、Oに隣接している−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない)、
MはAl、Ba、B、Bi、Ca、Cu、Fe、Ga、Ge、Hf、In、K、La、Li、Mg、Mo、Na、Nb、Pb、P、Sb、Sn、Sr、Ta、Ti、V、W、Y、Zn及びZrから選択され、
kは0〜4の整数であり、kが2以上の場合、複数存在するR4は互いに同一でも異なっていてもよく、
mは1〜5の整数であり、mが2以上の場合には、複数存在するR5は互いに同一でも異なっていてもよく、
MがK、LiまたはNaの場合、k=0、m=1であり、
MがBa、Ca、Cu、Mg、Pb、SrまたはZnの場合、k+m=2であり、
MがAl、B、Bi、Fe、Ga、In、La、P、Sb、VまたはYの場合、k+m=3であり、
MがGe、Hf、Sn、TiまたはZrの場合、k+m=4であり、
MがMo、Nb、TaまたはWの場合、k+m=5である。)。
【請求項3】
前記ジカルボン酸無水物(a1)が、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、フタル酸無水物、イタコン酸無水物及びトリメリット酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸無水物であることを特徴とする請求項1または2に記載の反応生成物(A)。
【請求項4】
前記アミノ化合物(a2)が、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランおよびp−アミノフェニルトリメトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反応生成物(A)。
【請求項5】
前記ケイ素化合物(a3)が、下記一般式(3)で表される化合物(a3−1)及び該化合物(a3−1)を重合して得られる重合体(a3−1p)からなる群より選ばれる少なくとも1種のケイ素化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反応生成物(A):
【化3】

(式(3)中、R6は水素、フッ素、炭素数1〜10のアルキル又は炭素数6〜15のアリールであり、該アルキルにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、また任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく(ただし、Si−R6において、Siに隣接した−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない)、該アリールにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、
7は、水素又は炭素数1〜5のアルキルであり、該アルキルにおいて任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく(ただし、OR7におけるR7において、Oに隣接している−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない)、
jは1〜4の整数であり、
jが2以下の場合には、複数存在するR6は互いに同一でも異なっていてもよく、
jが2以上の場合には、複数存在するR7は互いに同一でも異なっていてもよい。)。
【請求項6】
前記ケイ素化合物(a3)が、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン及びジフェニルジエトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種のケイ素化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の反応生成物(A)。
【請求項7】
前記金属アルコキシド(a4)が、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリプロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン及びテトラブトキシチタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属アルコキシドであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の反応生成物(A)。
【請求項8】
前記ジカルボン酸無水物(a1)がフタル酸無水物、トリメリット酸無水物およびシトラコン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸無水物であり、
前記アミノ化合物(a2)が3−アミノプロピルトリエトキシシランであり、
前記ケイ素化合物(a3)がテトラエトキシシラン、テトラエトキシシランを重合して得られる重合体およびジメチルジエトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種のケイ素化合物であり、
前記金属アルコキシド(a4)がトリメトキシボラン、トリイソプロポキシアルミニウム及びテトラブトキシチタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属アルコキシドであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の反応生成物(A)。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の反応生成物(A)を含有することを特徴とする熱硬化性組成物。
【請求項10】
さらに溶剤(B)を含むことを特徴とする請求項9に記載の熱硬化性組成物。
【請求項11】
請求項9または10に記載の熱硬化性組成物を加熱硬化することにより得られる硬化膜。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化膜からなる保護膜を有するカラーフィルター。
【請求項13】
請求項12に記載のカラーフィルターを有する表示素子。
【請求項14】
請求項12に記載のカラーフィルターを有する固体撮像素子。
【請求項15】
請求項11に記載の硬化膜が、薄膜トランジスタと透明電極との間に、透明絶縁膜として形成されてなるアレイ基板を有する表示素子。
【請求項16】
請求項11に記載の硬化膜が、透明電極と配向膜との間に、透明絶縁膜として形成されてなるアレイ基板を有する液晶表示素子。
【請求項17】
請求項11に記載の硬化膜からなる保護膜を有するLED発光体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−107094(P2012−107094A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255824(P2010−255824)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【Fターム(参考)】