説明

新規脂質粉末

本発明は、全卵又は卵黄ベースの脂肪製品であって、少なくとも20炭素原子を有する長鎖多価不飽和脂肪酸の、及び特異的不飽和C18脂肪酸の、トリグリセリド及び/又はリン脂質の高含量を有する当該脂肪製品に関する。これらの製品は、低い炭水化物含量、及び生物活性脂肪酸の高い酸化安定性、及び高い生物学的利用能により特徴付けられる。当該脂肪製品は、動物、及びヒトの栄養セクターにおいて使用される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ヒト、及び動物の栄養のための動物性、及び植物性脂肪は、多くの異なる脂肪酸からなる。多くの研究により、多くの異なる脂肪酸の間で、代謝について特に生理学的重要性を有するものはほとんどなく、一方、主にエネルギー供給のため、及び貯蔵脂肪として使用されることが示されている。
【0002】
当該生理学的に重要な生物活性の脂肪酸は、オメガ−3及びオメガ−6型のいわゆる長鎖多価不飽和脂肪酸(20以上の炭素原子を有するLCPUMA)を含む。このクラスの脂肪酸の最も顕著な代表は、アラキドン酸(ARA;20−4ω6)、エイコサペンタエン酸(EPA;20−5ω3)、ドコサヘキサエン酸(DHA;22−6ω3)、及びドコサペンタエン酸(DPA;22−5ω3)である。他の重要な生物活性脂肪酸は、特定のC18脂肪酸、特にγ−リノレン酸(GLA;18−3ω6)、ステアリドン酸(SDA;18−4ω3)、及び共役リノール酸(CLA)である。
【0003】
生理学的に有用な生物活性脂肪酸、特に長鎖多価不飽和オメガ−3脂肪酸(例えば、魚油などから)の高含量を有する油、及び脂肪は、化学的に、比較的不安定であり、穏和な条件下でさえ、酸化する傾向にある。このことが意味するところは、これらの油及び脂肪の工業的に製造される食品への混和は、特別な製法を必要とし、又は天然の及び/又は人工の抗酸化物質の添加を必要とすることである。
【0004】
本分野の技術
食品への混和のために、生理学的に有用な生物活性脂肪酸の高含量を有する油及び脂肪は、現在では、特別な方法によりマイクロカプセル化される。これは、当該油及び脂肪を容易に加工させるだけではなく、改良された化学的安定性をもたらし、及びそれ故、当該工業製品の特性のよりよい保護を保証する。
【0005】
マイクロカプセル化された油及び脂肪の不利点の1つは、費用のかかる製造技術の使用による高値である。他の不利点は、当該脂質粉末乾物の約25〜30重量%の脂肪分を有するマイクロカプセル化された製品に対する制限である。さらに、今のところ入手できる当該マイクロカプセル化された油及び脂肪は、カプセル化する材料(例えば、ゼラチン、及び他の蛋白質)の生理学的有用性及び許容性に関する、及び当該カプセル化された油及び脂肪の吸収、及び生物学的利用能に関する不利点を有する。
【0006】
本発明の目的は、マイクロカプセル化技術を避け、そして単純に、経済的に製造され得る安定した脂肪製品を提供することである。当該脂肪製品は、乾物基準で、30重量%超の脂肪分を有することも可能でなければならない
【発明の開示】
【0007】
本発明の説明
この目的は、請求項1又は13に記載の全卵又は卵黄ベースの脂肪製品の提供により、本発明に関して達成される。
【0008】
驚くべきことに、本発明に関する脂肪製品は、長鎖多価不飽和の生物活性脂肪酸の高い酸化安定性、及び生物学的利用能を示すことが判明した。これらの脂肪製品の化学安定性は、本分野における通常の知識に従って製造されるマイクロカプセル化された油、及び脂肪の安定性を上回る。
【0009】
さらに、全卵又は卵黄ベースの生物活性脂肪酸が、対応する脂肪酸の純粋な油より、より高い吸収率、及び生物学的利用能を有することが立証された。これは、とりわけ、リン脂質、主にホスファチジルコリンの高含量に起因する。さらに、本発明に関する卵黄蛋白質の形態における脂肪製品は、十分な比率の生理学的に非常に高価値な蛋白質、及び非常に低い比率のコレステロールのみを含む。
【0010】
加えて、安価な製造方法であって、工業規模でも稼動され得る当該方法を使用して、本発明に関する脂肪製品は、経済的に製造され得る。
【0011】
本発明の他の利点は、乾物基準で30重量%超、好ましくは50重量%の脂肪又は油含量を有する安定した脂肪製品を提供することが可能なことである。
【0012】
本発明に関する脂肪製品は、全卵又は卵黄ベースであり、すなわち、当該製品の無脂肪成分は、全卵又は卵黄成分を本質的に含む。本発明の範囲内において、めんどりの卵の使用が好まれるが、しかし、かなり一般的に、トリの卵であって、そして特に家禽卵の使用が可能である。卵、及び卵黄粉末は、食品産業において様々な用途を有し、場合により、酵素的に又は細菌的に前処理(蛋白質、リン脂質、及び/又は炭水化物の分解)される個別製品、又は特別に添加される材料(例えば、塩、炭水化物、など)を有する。
【0013】
卵、及び卵黄粉末の当該脂肪酸成分は、生物活性脂肪酸の脂肪酸を少量のみ有する。長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)は、総卵黄の全脂肪酸成分の約5重量%以下の割合のみを占める。これは、LCPUFAが、卵黄粉末中、ほぼ例外なくリン脂質の形態で存在する事実に起因する。特定のめんどり飼料を使用することにより、卵黄脂肪の約60重量%を構成するトリグリセリドは、18炭素原子以下を有する多価不飽和脂肪酸の含有量を豊富にさせられ得るが、LCPUFAはそうではない。卵黄中の当該特別な脂肪酸であるGLA、SDA、及びCLAは、各々、総脂肪酸含有量の最大でたった1%の割合を示し、そして、それらの比率は、当該飼料を通して、同様に僅かに増大され得るのみである。
【0014】
本発明に関する脂肪製品は、少なくとも20炭素原子を有する長鎖多価不飽和脂肪酸のトリグリセリド、及び/又はリン脂質を含む脂肪又は油成分を含み、当該少なくとも20炭素原子を有する長鎖多価不飽和脂肪酸の比率が、当該総脂肪酸量の5重量%超、特に6重量%超、好ましくは10〜70重量%、特に好ましくは15〜50重量%、そして非常に好ましくは20〜30重量%である。本発明の範囲内において、当該記載‘脂肪又は油含有量’とは、可能性のある全脂肪又は油が、例えば、油、脂肪(トリグリセリド)、リン脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質、ステロール、脂溶性ビタミンなどに分類される下、いわゆる総脂肪量(総脂質含量)を意味するとして理解される。
【0015】
当該長鎖多価不飽和脂肪酸は、少なくとも20炭素原子、好ましくは20又は22炭素原子を有するオメガ−3、及びオメガ−6脂肪酸である。これらの脂肪酸は、好ましくは4、5、又は6個のC−C二重結合を有する。このクラスの脂肪酸の最も顕著な代表は、アラキドン酸(ARA;20−4ω6)、エイコサペンタエン酸(EPA;20−5ω3)、ドコサヘキサエン酸(DHA;22−6ω3)、及びドコサペンタエン酸(DPA;22−5ω3)である。加えて、当該脂肪及び油含量は、他の脂肪酸リン脂質、及び/又は脂肪酸トリグリセリドをも含み得る。これらの脂肪酸は、飽和されるか、又は単不飽和又は多価不飽和脂肪酸であり、例えば、いわゆる当業者にとって一般的に知られるようなものである。
【0016】
本発明に関する脂肪製品は、慣習的に知られる添加剤、例えば、安定剤、保存料、抗酸化物質、香味料、及び/又は他の油溶性栄養(例えば、ベータ−カロチン、ルテイン、リコピン、コエンザイムQ10、アスタキサンチン、など)をも含み得る。
【0017】
本発明に関する脂肪製品の脂肪又は油含有量は、乾物基準で、10重量%超、好ましくは30重量%超、及び特に好ましくは50重量%超である。当該脂肪又は油含有量は、好ましくは、50〜60重量%である。
【0018】
本発明に関する脂肪製品は、好ましくは固形である。固形は、例えば、粉末、顆粒、凝集体、あるいは異なる粒径の砂粒である。当該脂肪製品は、好ましくは粉末形状である。本発明に関する脂肪製品は、液体形態をもとり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
ある好ましい態様において、長鎖多価不飽和脂肪酸を含む当該脂肪又は油成分は、動物性脂肪、魚油、及び発酵油由来である。これらは、魚油、海産動物油、海洋哺乳類油、例えば、アザラシ油、細菌性油、藻類油、真菌性油又は単細胞油を特に含む。使用される魚油の例は、サバ油、サーモン油、マグロ油、ニシン油、及び鰯油である。マグロ油、魚油、単細胞油又はアザラシ油の使用が好ましい。これらの混合油もまた使用され得る。長鎖多価不飽和脂肪酸を含む合成脂肪又は油の使用もまた可能である。反対に、植物油は、少なくとも20炭素原子を有する長鎖多価不飽和脂肪酸を含まない。
【0020】
さらに、本発明に関する脂肪製品は、好ましくは最大15重量%、特に好ましくは最大10重量%、及び特に最大5重量%の炭水化物含量を有する。
【0021】
本発明に関する脂肪製品は、ヒトの栄養セクター、並びに動物の栄養セクターのための製品の製造に有利に使用され得る。
【0022】
当該ヒト栄養セクターにおいて、本発明に関する脂質粉末の使用は、少なくとも20炭素原子を有する長鎖多価不飽和脂肪酸の高含有量を有する食品、食品補足、及び特別食の提供を可能にさせる。本発明は、さらに、本発明に関する脂肪製品を含む食品、食品補足、及び特別食に関する。
【0023】
慣習的脂質粉末であって、修飾されたデンプン、マルトデキストリンなどをベースに頻繁に製造されるものは除外して、本発明に関する脂肪製品の使用は、加えて、炭水化物は乏しいが、生体活性の脂肪酸が豊富であって、そしてそれ故、例えば、低炭水化物ダイエット(例えば、アトキンス・ダイエット、アガストン・ダイエット、サウス・ビーチ・ダイエット、及びグリックス・ダイエット)の要求を満足させる食品の製造を可能とさせる。
【0024】
伝統的な、及び新規食品(機能食品)、食品補足、及び特別食の製造のためにヒト栄養セクターに使用されるのと同様に、本発明に関する脂肪製品は、動物栄養セクター、及び特別動物食品補足セクターにもまた使用され得る。
【0025】
このさらなる使用は、少なくとも20炭素原子を有する長鎖多価不飽和脂肪酸のトリグリセリド、及び/又はリン脂質を含む脂肪又は油成分を含む全卵又は卵黄ベースの固形脂肪製品、及びγ−リノレン酸、ステアリドン酸、及び/又は共役リノール酸のトリグリセリド、及び/又はリン脂質を含む脂肪又は油成分を含む全卵又は卵黄ベースの固形脂肪製品の双方に適用する。
【0026】
当該製品が使用され得る際の当該動物栄養セクターは、とりわけ以下を含む。
・食肉動物(ブタ、子ブタ、乳牛、子牛、ウサギ、野ウサギなど)の飼料
・家畜(イヌ、ネコなど)の飼料
・スポーツ(跳躍、競馬、調馬)に使用する馬の飼料
・競争犬の飼料
・観賞魚の飼料
・養殖魚(サケ、タラ、タイ、アオザメなど)の飼料
・水産養殖(エビ、カニなど)の他型の飼料
・魚肉(アルテミア、ワムシなど)として使用される幼魚、及び幼少動物の飼育飼料
【0027】
動物栄養の上記適用セクターにおいて、本発明に関する脂質粉末は、例えば、長持ちする飼料、幼少の動物の飼育飼料、妊娠している、及び授乳している雌のための特別飼料、及び他の特別飼料に使用される。本発明は、さらに、本発明に関する脂肪製品を含む動物飼料に関する。
【0028】
本発明に関する脂肪製品を製造するために、全卵又は卵黄の当該内因性の脂肪成分は、長鎖多価不飽和脂肪酸トリグリセリド、及び/又はリン脂質を含む脂肪又は油成分で置換される。より正確に言えば、乾燥基準で約35〜40重量%の比率において卵黄中に存在する当該卵油(トリグリセリド)プラス、コレステロールは、できる限り除去され、そして長鎖多価不飽和の生物活性脂肪酸の所望の組成、及び所望の含量を有する脂肪又は油で置換される。前述の通り、これらは、好ましくは、動物性脂肪、魚油、発酵油、特別植物油、及び/又はそれらの混合油である。
【0029】
通常、当該脂肪製品、特に脂質粉末の製造のための出発物質は、好ましくは、液状又はスプレー乾燥された卵黄のいずれかである。液状卵黄の場合、内因的に存在する当該卵油は、遠心分離技術により除去され得る(場合により、乳濁液の分離の後に実施する。)。所望の脂肪又は油、又は当該脂肪又は油の混合物は、当該油が除去された当該液状卵黄に添加され、前者は通常、好適な抗酸化物質(例えば、ビタミンE、アスコルビル・パルミテート、ローズマリー抽出物、緑茶抽出物など)で安定化されている。次いで、当該2つの成分の均質な混合物は、いわゆる当業者に知られる好適な方法、例えばスプレー乾燥法又は凍結乾燥法を用いることにより乾燥させられ得、もし適しているならば、凝集又は粉砕といった、いわゆる当業者に一般的によく知られる他の方法により、当該粒径及び流動性を特別に調整することが可能である。当該固形脂肪製品は、好ましくは粉末状であるが、しかし、例えば好適な加工方法により得られる、顆粒又は粗粒形態の製品である。
【0030】
スプレー乾燥された卵黄を出発物質とする脂質粉末の製造において、内因性卵油は、一段階法又は多段階法において除去され得、そして当該油又は脂肪で置換され得る。そのような方法は、いわゆる当業者に知られており、及び超臨界ガスでの抽出(例えば、CO高圧抽出)に加えて、例えば、油ベースの処理剤が、当該乾燥卵製品を通してプレスされる圧迫方法も含む。続く乾燥方法は、通常この手順を必要としないが、場合により実施される。当該粒径及び流動性は、上記記載のように特別に調整され得る。
【0031】
本発明は、さらに、全卵又は卵黄の使用は脂肪又は油の安定化の一因となる所見に関する。当該安定化法は、生物活性のある脂肪酸であって、例えば18〜22炭素原子の鎖長を有する長鎖多価不飽和脂肪酸を含む脂肪又は油の安定化に、特に適する。
【0032】
本発明は、さらに、γ−リノレン酸、ステアリドン酸、及び/又は共役リノール酸を含むトリグリセリド及び/又はリン脂質を含む、脂肪又は油成分を含む全卵又は卵黄ベースの脂肪製品に関し、これらの脂肪酸の内の少なくとも1つの比率は、当該総脂肪酸の1重量%超、特に2重量%超、好ましくは5〜70重量%、特に好ましくは10〜50重量%、及び非常に好ましくは20〜40%である。ある好ましい態様において、この油成分は、特別な植物油に由来し、当該植物油は、例えば、ルリヂサ油又は高CLA含量植物油であって、例えば植物原材料から、化学的又は酵素的方法により製造され得る。当該共役リノール酸の異性体は、特に、9,11−c/t−リノール酸(CLA)、及び10,12−t/c−リノール酸(CLA)である。
【0033】
γ−リノレン酸、ステアリドン酸、及び/又は共役リノール酸を含む当該脂肪製品、食品中のこれらの使用、これらの脂肪製品の製造方法、及びこれらの脂肪酸のトリグリセリドを含む脂肪又は油の安定化のための全卵又は卵黄の使用、の好ましい態様に関しては、先の記載を参照のこと。
【実施例】
【0034】
本発明を、実施例の目的とともに、以下により詳細に例示する。当該実施例における脂肪製品の全脂肪酸組成物は、当該表中に再現される。
【0035】
実施例1
アザラシ油ベースの、エイコサペンタエン酸(EPA)、及びドコサヘキサエン酸(DHA)の高含量を有する脂質粉末。
【0036】
卵黄ベースの当該脂質製品を、遠心分離法を用いて当該液状卵黄から卵油を分離することにより製造した。次いで、アザラシ油を、当該油を除去した卵黄に対して2:1(v/v)の比(当該アザラシ油:当該卵黄)で添加し、そして当該製品を均質化し、次いで凍結乾燥法により乾燥した。
【0037】
当該得られた製品は、乾物の50重量%超の脂質成分を有し、当脂質成分は、リン脂質の約35重量%、及びトリグリセリドの約65重量%からなる。当該蛋白質含量は、乾物の約40重量%である。アザラシ油を使用することにより、EPAの比率は総脂肪酸の約5.2重量%であり、DPAの比率は総脂肪酸の重量%であり、及びDHAの比率は総脂肪酸の重量%である。
【0038】
実施例2
マグロ油ベースの、ドコサヘキサエン酸の高含量を有する脂質粉末。
【0039】
卵黄ベースの当該脂質製品を、遠心分離法を用いて当該液状卵黄から卵油を分離することにより製造した。次いで、マグロ油を、当該油を除去した卵黄に対して2:1(v/v)の比(当該マグロ油:当該卵黄)で添加し、そして当該製品を均質化し、次いで凍結乾燥法により乾燥した。
【0040】
当該得られた製品は、乾物の50重量%超の脂質成分を有し、当脂質成分は、リン脂質の約35重量%、及びトリグリセリドの約65重量%からなる。当該蛋白質含量は、乾物の約40重量%である。マグロ油を使用することにより、EPAの比率は総脂肪酸の約4.3重量%であり、及びDHAの比率は総脂肪酸の20.3重量%である。
【0041】
実施例3
魚油ベースの、エイコサペンタエン酸、及びドコサヘキサエン酸の高含量を有する脂質粉末。
【0042】
卵黄ベースの当該脂質製品を、当該マグロ油を南アメリカ源のEPAが豊富な魚油(アンチョビ、サバ)で置換することを除いては実施例2に記載のように、製造した。
【0043】
当該得られた製品は、乾物の50重量%超の脂質成分を有し、当脂質成分は、リン脂質の約35重量%、及びトリグリセリドの約65重量%からなる。当該蛋白質含量は、乾物の約40重量%である。魚油を使用することにより、EPAの比率は総脂肪酸の約13.7重量%であり、及びDHAの比率は総脂肪酸の10重量%である。
【0044】
実施例4
単細胞油ベースの、ドコサヘキサエン酸の高含量を有する脂質粉末。
【0045】
卵黄ベースの当該脂質製品を、当該アザラシ油を、DHAが豊富な単細胞油(微細藻類)で置換することを除いては実施例1に記載のように製造した。
【0046】
当該得られた製品は、乾物の50重量%超の脂質成分を有し、当脂質成分は、リン脂質の約35重量%、及びトリグリセリドの約65重量%からなる。当該蛋白質含量は、乾物の約40重量%である。微生物油を使用することにより、総脂肪酸のDPAの比率は総脂肪酸の約12重量%であり、及びDHAの比率は総脂肪酸の30重量%である。
【0047】
実施例5
共役リノール酸(ω3−LCPUFA)の高含量を有する脂質粉末。
【0048】
卵黄ベースの当該脂質製品を、当該アザラシ油を、CLAが豊富な植物油で置換することを除いては実施例1に記載のように製造した。
【0049】
当該得られた製品は、乾物の50重量%超の脂質成分を有し、当脂質成分は、リン脂質の約35重量%、及びトリグリセリドの約65重量%からなる。当該蛋白質含量は、乾物の約40重量%である。高CLA含量を有する特定の植物油を使用することにより、CLA、特に9,11−c/t−リノール酸(CLA)、及び10,12−t/c−リノール酸(CLA)の異性体の比率は、総脂肪酸の約60重量%である。
【0050】
実施例6
ガンマ−リノール酸(ω6−PUFA)の高含量を有する脂質粉末。
【0051】
卵黄ベースの当該脂質製品を、当該アザラシ油を、GLAが豊富なルリヂサ油で置換することを除いては実施例1に記載のように製造した。
【0052】
当該得られた製品は、乾物の50重量%超の脂質成分を有し、当脂質成分は、リン脂質の約35重量%、及びトリグリセリドの約65重量%からなる。当該蛋白質含量は、乾物の約40重量%である。特定の植物油(ルリヂサ油)を使用することにより、GLAの比率は、総脂肪酸の約19重量%である。
【0053】
【表1】

【0054】
実施例7
当該動物飼料セクターの本発明に関する脂質粉末製品を、以下の実施例により例証する。当該製品組成は、表2に再現する。
【0055】
エイコサペンタン酸(EPA)、及びドコサヘキサエン酸(DHA)の豊富なこの脂質粉末を、成形し、そしてその後粉砕する方法を用いて、内因性の卵油をEPA/DHAの豊富な魚油で物理的に置換することにより製造した。
【0056】
当該得られた製品は、乾物の60重量%超の脂質成分を有し、リン脂質形態が、乾物の少なくとも約10重量%である。当該蛋白質含量は、乾物の少なくとも30重量%である。使用された魚油の型により、EPA含量は乾物の約3%であり、DHA含量は乾物の約5%である(総脂肪酸の約6%、及び約8%の各比率に相当する。)。
【0057】
表2:動物飼料セクター(幼い動物の飼育)のためのオメガ−3−リッチ脂質粉末
組成: 魚油
植物油
卵黄
解析データ: 総脂肪 >60%DM
蛋白質 >30%DM
レシチン >10%DM
炭水化物 <5%DM
残留湿気 <5%DM
コレステロール <1%DM
脂肪酸成分: EPA(20−5ω3) 約3%DM
DHA(22−6ω3) 約5%DM
総オメガ−3含量 約10%DM
物理的化学的パラメーター: 色 帯黄色
溶解性 水溶性
風味 典型的

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全卵又は卵黄ベースの脂肪製品であって、少なくとも20炭素原子を有する長鎖多価不飽和脂肪酸のトリグリセリド、及び/又はリン脂質を含む脂肪又は油成分を含み、当該少なくとも20炭素原子を有する長鎖多価不飽和脂肪酸の比率が、前記総脂肪酸量の5重量%超である、前記脂肪製品。
【請求項2】
固形、好ましくは粉末形態であることを特徴とする、請求項1に記載の脂肪製品。
【請求項3】
前記長鎖多価不飽和脂肪酸が、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、又はそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の脂肪製品。
【請求項4】
さらに、他の脂肪酸リン脂質、脂肪酸トリグリセリド、及び/又は抗酸化物質を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の脂肪製品。
【請求項5】
乾物基準で最大15重量%、好ましくは最大5%の炭水化物含量を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の脂肪製品。
【請求項6】
乾物基準で、30重量%超の脂肪又は油含量を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の脂肪製品。
【請求項7】
前記脂肪又は油成分の少なくとも一部が、動物性脂肪、魚油、海産動物油、発酵油、単細胞油又はそれらの混合物を由来とすることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の脂肪製品。
【請求項8】
全卵又は卵黄の内因性の脂肪成分が、少なくとも20炭素原子を有する長鎖多価不飽和脂肪酸のトリグリセリド、及び/又はリン脂質を含む脂肪又は油成分で置換され、かつ、当該少なくとも20炭素原子を有する長鎖多価不飽和脂肪酸の比率が、前記総脂肪酸量の5重量%超であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の脂肪製品の製造方法。
【請求項9】
少なくとも20炭素原子を有する長鎖多価不飽和脂肪酸のトリグリセリドを含む、脂肪又は油の安定化のための全卵又は卵黄の使用。
【請求項10】
前記脂肪、又は油が、動物性脂肪、魚油、発酵油又はそれらの混合油を含むことを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
少なくとも20炭素原子を有する長鎖多価不飽和脂肪酸の供給のための食品、食品補足、及び特別食における、請求項1〜7のいずれか1項に記載の脂肪製品の使用。
【請求項12】
少なくとも20炭素原子を有する長鎖多価不飽和脂肪酸の供給のための動物飼料における、請求項1〜7のいずれか1項に記載の脂肪製品の使用。
【請求項13】
全卵又は卵黄ベースの脂肪製品であって、ガンマ-リノレン酸、ステアリドン酸、及び/又は共役リノール酸のトリグリセリド、及び/又はリン脂質を含む脂肪又は油成分を含み、これらの脂肪酸の少なくとも1つの比率が、総脂肪酸量の1重量%超である、前記脂肪製品。
【請求項14】
ガンマ−リノレン酸、ステアリドン酸、及び/又は共役リノール酸のトリグリセリドを含む、脂肪又は油の安定化のための全卵又は卵黄の使用。
【請求項15】
前記脂肪又は油が、植物油、魚油、発酵油、酵素的に又は化学的に修飾された油又はそれらの混合油を含むことを特徴とする、請求項14の使用。
【請求項16】
ガンマ−リノレン酸、ステアリドン酸、及び/又は共役リノール酸の前記供給のための食品、食品補足、及び特別食における、請求項13に記載の脂肪製品の使用。
【請求項17】
ガンマ−リノレン酸、ステアリドン酸、及び/又は共役リノール酸の前記供給のための動物飼料における、請求項13に記載の脂肪製品の使用。
【請求項18】
全卵又は卵黄の前記内因性の脂肪成分が、ガンマ−リノレン酸、ステアリドン酸、及び/又は共役リノール酸のトリグリセリド及び/又はリン脂質を含む脂肪又は油成分で置換され、かつ、これらの脂肪酸の少なくとも1つの比率が、前記総脂肪酸量の1重量%超であることを特徴とする、請求項13に記載の脂肪製品の製造方法。
【請求項19】
請求項1〜7又は13のいずれか1項に記載の脂肪製品を含む食品。
【請求項20】
請求項1〜7又は13のいずれか1項に記載の脂肪製品を含む飼料。

【公表番号】特表2007−516711(P2007−516711A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545929(P2006−545929)
【出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006373
【国際公開番号】WO2005/065460
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(506224757)オメガ フォー ライフ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】