説明

方向識別ラベル、試薬容器搬送構造、分析装置および読取モジュール

少なくとも1つの試薬容器(22)を保持する試薬容器搬送構造(20)であって、搬送構造(20)は、RFIDアセンブリ(16)と、搬送構造(20)の方向を定義する光学検出可能定義パターン(12.1、12.2;12.3、12.4、12.5)を有する。試薬容器搬送構造(20)は、前面(12)と背面(14)を有する方向識別ラベル(10)を備えていてもよい。さらに、背面(14)に配置されたRFIDアセンブリ(16)と、前面(12)上のラベルの方向を定義する光学検出可能定義パターン(12.1、12.2;12.3、12.4、12.5)を有してもよい。RFIDデータを、個々のラベルの方向を定義する光学検出可能データ(12.1、12.2;12.3、12.4、12.5)とともに読み取る読取モジュール(90、90’)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID技術を用いた方向識別ラベルに関する。本発明はさらに、試薬容器を少なくとも1つ保持し、RFID技術を用いて、個々の搬送構造内に保持されている試薬に関する情報を蓄積し、読み取り、書き込む、試薬容器搬送構造に関する。本発明はまた、化学的、生物学的、または薬学的な作業プローブを分析する分析装置とその分析装置を作動させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分析装置は、臨床分野、化学および薬学分野、免疫学分野などの実験室分析において、重要な作業ツールおよびシステムである。近年の分析装置は、モジュール方式で着想されており、完全に自動化された実験室作業を提供する。異なるモジュールが、例えばディスペンサー技術やピペット技術を用いて、異なる分析分野に関連している。分析作業に用いられる試薬は、通常は個々の試薬容器内で提供され、1以上の試薬容器が1つの試薬容器搬送構造内に配置される。試薬容器搬送構造は、この技術分野では、例えばラック、カセット、カートリッジなどの様々な用語でよく知られている。参照の容易のため、全てのこれら保持装置は、本出願を通して、搬送構造または試薬容器搬送構造として参照される。
【0003】
分析過程の途中において、それぞれ少なくとも1つの試薬容器を保持する1以上の搬送構造は、それぞれの分析装置内に配置される。分析装置が、挿入された搬送構造を適切に取り扱うことができるように、すなわちその内容物等を識別することができるように、個々の搬送構造は通常、その外表面にバーコードラベルを有する。分析装置は同様にバーコードリーダを備え、バーコードリーダは、搬送構造のラベル上に含まれるバーコード情報が読み取られ、分析装置の演算制御部に送信されるように設定されている。
【0004】
実験室作業におけるRFID技術、特に試薬作業プローブを識別するためのものが現実になりつつあり、試験管および他の試薬容器上のRFIDアセンブリが、より一層広がりを見せつつある。
【0005】
米国公開特許第2006/0239867号は、例えば受入およびブロック番号のような識別情報を提供するRFIDタグを有する実験室サンプルのための試料カセットを開示している。
【0006】
国際公開公報第2006/041482号は、患者の識別子および他の非常に重要な情報を自動的に、体液のサンプルを保持する容器上に、サンプルが採血されて分析された直後に直接印刷することができる、自動血液分析および識別プロセスを開示している。採血と識別の間には、サンプルに関する手作業は存在しない。体液を分析するプロセスは、液体分析器内に配置された容器内に体液サンプルを配置する過程を有する。サンプルは、体液の特性を判定するために分析され、この特性は次に容器に搬送される。システムは、無線周波数識別技術を利用して、容器に関連付けられたRFIDインレットに、情報を担う電子データを伝達する。
【0007】
米国公開特許第2006/0213964号は、サンプル容器の開口端に近くに位置するRFIDタグを有するサンプル容器を開示している。さらに、1以上のサンプル容器とともに動作し、サンプルプローブ装置とサンプルプローブ装置のガイドによって支持されたサンプルプローブを移動させるロボットアセンブリを有する、サンプル処理装置を開示している。
【0008】
米国公開特許第2005/0205673号は、RFID技術を採用し、情報を生物試薬に関連付ける、生物試薬搬送装置を開示している。搬送装置は、生物試薬と、搬送装置に連結された搬送RFIDアンテナを有する少なくとも1つのRFIDタグとを支持する。RFIDタグは、RFIDリーダによって読み取られるように動作可能で、RFIDタグは、生物試薬の識別、補足、および全ての権利情報を含むことができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
対照的に、本発明は請求項1の特徴を有する方向識別ラベルと、請求項12の特徴を有する試薬容器搬送構造と、請求項17の特徴を有する、化学的、生物学的、または薬学的な作業プローブを分析する分析装置と、請求項18の特徴を有する、化学的、生物学的、または薬学的な作業プローブを分析する分析装置を作動させる方法を提供する。
【0010】
本発明によれば、方向識別ラベルは、前面と背面を有するとともに、背面に位置するRFIDアセンブリ、およびラベルの方向を定義する光学検出可能定義パターンを前面に有する。これにより、本発明に基づく方向識別ラベルが取り付けられた任意の構造の物理的方向を検出することができる。これは特に、自動化された光検出装置との関連で適している。ラベルは、好適にはその背面上に、ラベルが取り付けられる任意の面上へ容易に取り付けることができるようにするための接着層を備えていてもよい。
【0011】
光学検出可能定義パターンは、方向を識別することができるようにするための幾何的デザインを有していてもよい。方向を明確な態様で識別することができるようにするための任意の幾何的デザインは、例えば、ラベルの横断方向軸または長手方向軸の少なくとも一方に対して非対称な幾何的デザイン、または検出する方向に対して実質的に垂直なデザインの軸に対して非対称な幾何的デザインを用いることができる。いずれのケースにおいても、点対称ではない。方向の誤認を最小化するために、幾何的デザインは、できる限りシンプルで複雑過ぎないように選択することができる。
【0012】
別の実施形態では、本発明に基づく光学検出可能定義パターンは、方向を識別することができる少なくとも2つの異なる色を有する。この出願において、「色」という用語は、黒、白および灰色も含むものとして理解される。したがって、本発明に基づく最も複雑さの少ない定義パターンは、2つの隣接する矩形を有し、その1つは白でもう1つは黒であるラベルとなる。しかし、他色の組み合わせおよび/または2色以上の組み合わせを用いることもできる。ここでも、誤検出のリスクを最小化するために、パターンは複雑過ぎないように選択することができる。本発明に基づく定義パターンは、少なくとも2つの異なるサブパターン、例えば2つの矩形を有するラベルであって、1つ目の矩形は白地に黒の水平線を複数有し、2つ目の矩形は白地に黒の垂直線を複数有するラベルを備えていてもよい。
【0013】
本発明はまた、少なくとも1つの試薬容器を保持し、RFIDアセンブリと、上述の本発明に基づく光学検出可能定義パターンを有する、試薬容器搬送構造を提供する。搬送構造上の定義パターンにより、搬送構造の方向を明確に識別することができる。これは搬送構造が実験室分析装置に提供される場合において有利となり得る。したがって、1以上の挿入された搬送構造が誤った方向に挿入されたか否かを判定することができる。
【0014】
本発明に基づく定義パターンとRFIDアセンブリは、個別に(そして場合によっては異なる位置に)、または本発明に基づく上述の方向識別ラベルによって、搬送構造に取り付けることができる。
【0015】
本発明はまた、個々のラベルの存在と方向を定義する光学検出可能データとともにRFIDデータを読み取る読取モジュール(reader module)を提供する。両データは、試薬容器搬送構造に取り付けられる方向識別ラベルに統合される。読取モジュールは、RFIDデータを検出するように構成された少なくとも1つのRFIDリーダと、光学検出可能データを検出するように構成された少なくとも1つの光学素子とを備える。RFIDデータと光学検出可能データをそれぞれ別のラベル上で提供し、その別々のラベルが組み合わさって方向識別ラベルを形成し、例えば互いの上面で対応する試薬容器搬送構造に接着することもできる。
【0016】
読取モジュールにより、個々のラベルの存在とともに方向を検出することができる。すなわち、読取モジュールにより、例えば試薬容器搬送構造に取り付けられた個々のラベルを介して、試薬容器搬送構造が対応するコンベヤシステム内に正しく配置されているか否かを判定することができる。
【0017】
本発明に基づく読取モジュールは、本発明に基づく方向識別ラベルのデータ、すなわち、ラベルの背面に位置するRFIDアセンブリ、およびラベルの前面のラベルの方向を定義する光学検出可能定義パターンを読み取るために用いることができる。
【0018】
本出願の記載は、本発明に基づく上述のプロセスを実行するのに適したプログラムコードを有するコンピュータプログラムも含む。このコンピュータプログラムは、コンピュータまたは分析装置の演算部上でそれぞれ実行される。コンピュータプログラム自体およびコンピュータ読取可能な媒体に記録されたコンピュータプログラムも、請求範囲に含まれる。
【0019】
さらなる特徴と実施形態は、発明の詳細な説明と添付する図面から明らかになるであろう。
【0020】
上述の特徴と下記の記載は、本出願の開示の範囲から逸脱することなく、特定の組み合わせのみならずそれらの他の組み合わせにおいても使用可能であることが理解されるであろう。
【0021】
様々な実装例が図面内で模式的に図示され、図面を参照して下記に詳細が説明される。上記の総括的な記載と下記の様々な実施形態の記載は、例示的で説明のみのためのものであり、制限的なものまたは特許請求の範囲を実施形態の記載のままに解釈することを意図したものではない。本明細書の構成要素に組み込まれている添付図面は、実施形態を示し、発明の詳細な説明とともに、ここに記載される実施形態の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1a】本発明に基づく方向識別ラベルの第1実施形態の前面を示す図である。
【図1b】本発明に基づく方向識別ラベルの第2実施形態の前面を示す図である。
【図2】本発明に基づく方向識別ラベルの実施形態の背面を示す図である。
【図3】本発明に基づく試薬容器搬送構造の第1実施形態を上側から見た斜視図を示す図である。
【図4】本発明に基づく試薬容器搬送構造の第2実施形態を上側から見た斜視図を示す図である。
【図5】本発明に基づく分析装置の実施形態の全体像を示す図である。
【図6】本発明に基づく試薬容器搬送構造が配置された、化学的、生物学的、または薬学的作業プローブを分析する分析装置の回転コンベヤシステムの例を上側から見た斜視図を示す図である。
【図7】RFID通信装置と光検出装置を備えた、本発明に基づく分析装置の設計の例示的な実施形態を、ごく概略的に示す図である。
【図8】本発明に基づく方向識別ラベルの第3実施形態の前面を示す図である。
【図9】本発明の方向識別ラベルの位置を別位置にした試薬容器搬送構造の第3実施形態をごく概略的に示す図である。
【図10】本発明に基づく読取モジュールの実施形態を示す図である。
【図11】本発明の方向識別ラベルの位置を別位置にした試薬容器搬送構造の第3実施形態をごく概略的に示す図である。
【図12】本発明に基づく試薬容器搬送構造が配置された、化学的、生物学的、または薬学的作業プローブを分析する分析装置の回転コンベヤシステムの例を、ごく概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以後、実施形態の詳細に言及し、その実施例が添付の図面に示される。できる限り、図面全体を通して、同様の構成部を参照する場合は同じ参照番号を用いる。
【0024】
Radio Frequency Identification(RFID)は、無線電磁信号を用いて、物体を識別し検出する便利な仕組みを提供する。基本的なRFIDシステムは、少なくとも1つのRFIDリーダと少なくとも1つのRFIDアセンブリ(後者は“トランスポンダ”または“RFIDタグ”という用語でも知られている)を有する。通常、RFIDリーダは、コイルまたはアンテナと、コイルまたはアンテナを用いて信号を送受信する回路とを備えることができる。RFIDアセンブリまたはタグまたはトランスポンダも、コイルまたはアンテナと、RFIDリーダが読み取ることのできるRFIDチップ上に格納された何らかの情報とを備える。
【0025】
RFIDリーダアンテナは、電磁界を生成し、これによりタグにエネルギーを送信する。タグの設計に依存して、タグに送信されたエネルギーの一部はリーダに反射され、タグについての情報を提供してリーダに戻す。RFIDシステムのなかには、RFIDタグからデータを読み取り、RFIDタグに光学的にデータを書き込むために用いることができるものもある。RFIDリーダは、RFIDリーダアンテナにおいて生成される周波数と信号のパワーに依存して、1cm未満から50m超までの距離で信号を生成することができる。
【0026】
通常、RFIDアセンブリまたはタグは、アクティブ型またはパッシブ型のいずれかに分類される。アクティブRFIDタグは、内部バッテリによって電力を供給され、読み書きを行う。すなわち、タグデータは再書き込みされ、および/または変更され得る。アクティブタグのメモリ容量は、アプリケーションの要求に基づき変化し、最大1MBのメモリまたはそれ以上を用いて動作するシステムもある。パッシブRFIDタグは、別個の外部電力源なしに動作し、リーダから生成された動作電力を取得する。したがってパッシブタグは、通常はアクティブタグよりも軽く、より低価格で、長い稼動寿命を提供する。パッシブタグは通常、アクティブタグよりも読取距離が短く、よりパワーの強いリーダを必要とする。読取専用タグは通常、パッシブ型であり、通常はタグの製造時点であらかじめ定められる固有データセット(通常は32〜128ビット)を用いてプログラムすることが可能である。パッシブ読取/書込タグは、本教示と合致した状態で採用され得ることが分かる。
【0027】
したがって、“RFIDアセンブリ”または“RFIDタグ”という用語それぞれは、本明細書で用いられる場合、情報を収容するアクティブRFIDまたはパッシブRFIDいずれかのことをいう。RFIDタグは、読取専用であってもよいし、読み書きできるものであってもよい。RFIDタグに関連付けられる情報は、製造時またはそれ以後の時点でRFIDタグにハードコードされてもよい。全てのRFIDタグは、その耐用年限を通して、RFIDタグに書き込まれる情報を収容することができる。
【0028】
“RFIDリーダ”という用語は、本明細書で用いられる場合、RFIDタグから情報を読み取り、および/またはRFIDタグに情報を書き込む装置を含む。
【0029】
“情報”という用語は、本明細書で用いられる場合、RFIDタグ内に電子的に記憶され、試薬および/または試薬容器搬送構造を処理するための機械読取可能または人間読取可能なデータとして用いるために取得することのできるデータ、および/または処理途中または後においてRFIDタグに書き込むことのできるデータのことをいう。このデータは、試薬の種類、ロットサイズ、製造日、製造場所、アプリケーションデータ、システムタイプ適合性、使用期限、設置ポイント、制御ポイント、較正データ、分析装置ログデータ、初回開封日、いずれの装置に使用されたか、サンプリングデータ、搬送構造制御データ、などを含むが、これに限られるものではない。
【0030】
“光検出装置”という用語は、本明細書で用いられるときは、光構造またはパターンを読み取りまたは検出することのできる任意の装置、例えば光学センサ、光検出器、または映像センサのことをいう。このような光検出装置は、当該技術分野ではよく知られており、2つのみ挙げると、例えばLDD技術またはCCD技術に基づいている。
【0031】
“光学検出可能定義パターン”という用語は、本明細書で用いられるときは、方向を定義することのできる任意のパターンのことをいう。定義パターンは、例えば矢型、円、矩形、正方形、および/または他の基本的な幾何的構造の組み合わせのような幾何的構造を有していてもよい。パターンは、代替的にまたは累積的に、様々な色および/または色の組み合わせを有していてもよい。しかし、一面では光検出装置が誤読取するリスクを最小化するため、別の一面ではパターンが人間のオペレータによって適切に認識されるように、パターンはあまり複雑過ぎないことが推奨される。
【0032】
“試薬”という用語は、本明細書で用いられるときは、例えば希釈剤、予備処理試薬、キャリーオーバー試薬、洗浄試薬、較正試薬、基準溶液、患者サンプルのような、実験室分析装置の容器内で用いられる任意種類の試薬のことをいう。
【0033】
図1aは、本発明に基づく方向識別ラベル10の第1実施形態の前面12の上面図を示す。方向識別ラベル10の前面12は、前面12の白色の第1部分12.1と、前面の黒色の第2部分12.2(この第2部分12.2の黒色は、全ての図面においてクロスハッチングで示されている)とを有する光学検出可能定義パターンを有する。前面12の第1部分12.1および第2部分12.2は、略同一サイズである。本発明に基づく方向識別ラベル10を実現するために、任意の適切な材料を用いることができる。ラベル10の材料は、紙、金属箔、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PET)、アセテートなどを含むことができる。ラベル技術分野の当業者は、実験室環境に対して十分耐性があり、および/または光検出装置によって正しく認識することのできる適切な表面特性を有する適切な材料を見つけることができる。
【0034】
図1bは、本発明に基づく方向識別ラベル10’の前面12’の第2実施形態を示す。第2実施形態でも、前面は、黒色と白色に維持され、白色の矩形12.3と白色の三角形12.4を有し、三角形12.4は矩形12.3に直接隣接している、光学検出可能定義パターンを有する。ラベル10’の前面12’の残領域12.5は、黒色である(ここでもクロスハッチングによって示されている)。したがって、パターン12.3、12.4、12.5は、黒色の背景に鋭い屋根または白色の矢型構成を有する白色家屋の概略図のような印象を与える。
【0035】
本発明の光学検出可能定義パターンは、もちろん、黒色と白色のパターンに限られない。下記により詳細に説明するように、選択する色が光検出装置によって適切に識別されるために十分な程度に対照的であれば、例えば製造業者のコーポレートカラーのように他の色を用いることもできる。パターンは、方向以外の情報を有することを意図したものではなく、対照的な色で単純な幾何的構成を有することを意図する。しかし、コーポレートカラーを用いることを超えて、パターンの光学的検出性が影響しない限りにおいて使用可能な、会社または取引上のロゴも含めたいと希望する製造業者もあるかもしれない。
【0036】
図2は、本発明に基づく方向識別ラベル10の背面14を示す。図2のごく概略的な図面から見て取れるように、RFIDアセンブリ16がラベル10の背面14に位置している。RFIDアセンブリ自体は、当該技術分野ではよく知られており、“トランスポンダ”または“RFIDタグ”としても知られている。RFIDアセンブリ16は、アンテナまたはコイル16.1と、RFIDチップ16.2を備える。アンテナ16.1は、下記により詳細に説明するように、適切なRFIDリーダまたはRFID通信装置と通信接続を確立する連結要素である。
【0037】
図3は、試薬容器搬送構造20を示す。図示する実施形態に基づく搬送構造20は、2つの試薬容器22を保持し、図3の斜視立図においてのみ、個々の(旋回または回転する)キャップ24が見て取れる。各キャップ24は、中央凹部26と、その底部にピペットプローブによって貫通される開口を有する。開口は、膜状部材28によって覆われ、プローブによって貫通される。
【0038】
搬送構造20は、実質的に立方形状を有し、試薬容器22は、搬送構造20の上面30に形成されている対応する空洞に、上方から配置される。
【0039】
上面30上および2つの試薬容器22の間の空間上には、本発明に基づく方向識別ラベル10が取り付けられる。ラベル10は、図1aに示されているラベル実施形態に対応し、特に図1aを参照して先に説明した光学検出可能定義パターン12.1、12.2を有する。
【0040】
図3の図面では、定義パターンの黒色部12.2は図面の底部に向かい、一方でパターンの白色部12.1は図面の頂部を向いている。ラベル10の定義パターンの黒色部12.2に隣接する搬送構造20の側面32には、製造業者情報を有する追加ラベル34が取り付けられている。
【0041】
1つの実施形態によれば(図面には詳細には示されていない)、方向識別ラベル10を製品ラベル34と統合し、製品または製造者情報が側面32に取り付けられ、方向識別部が搬送構造20の側面32と上面30の間のエッジ部33の周りに延長するようにし、かつ上面30に取り付けられるようにすることによって、2つのラベル10と34を結合することができる。
【0042】
図3に示す実施形態では、RFIDアセンブリ16は方向識別ラベル10の背面14に添付されている(図2に示すように)。ラベルの取り付けは、任意の公知手段、例えばラベル10の背面14に取り付けられた接着層18によって行うことができる。しかし、光学検出可能定義パターンをある一面に、RFIDアセンブリを他の面に、互いに分離して試薬容器構造20に取り付けることもまた、可能であり、本発明の範囲である。例えば、RFIDアセンブリを試薬容器搬送構造の側面に取り付け、定義パターンを上面(図示するように)またはこれに代えて底面に取り付けることもできる(すなわち光検出装置が下方から検出/読取を行うことを意味する)。RFIDアセンブリ位置に関するさらなる可能性は、RFIDアセンブリを側面と上面の間のエッジ部に隣接する搬送構造の側面に取り付け、または搬送構造のエッジ部のうち1つの周りに取り付けることである(例:図9)。これにより、RFIDアセンブリを搬送構造の横方向に位置するRFIDリーダによって読み取ることができる(挿入口を通して分析装置に同じものが挿入された場合)ほかに、搬送構造の上部に位置するRFIDリーダによっても読み取ることができる(同じものが運搬された場合。例えば下記により詳細に説明するローターにおいて)。もちろん、本発明に基づく方向識別ラベルを、例えば底面、側面のうち1つ、前面、または終端面のような、搬送構造の異なる位置に取り付けることもできる。さらには、RFIDアセンブリを1つ目のラベル上に、光学検出可能定義パターンを2つ目のラベル上に提供し、2つのラベルを互いの上面で試薬容器搬送構造に接着することもできる。
【0043】
方向識別ラベル10により、ラベル10が取り付けられた試薬容器搬送構造20の方向を明確な態様で判定することができる。搬送構造20が分析装置の支持部または固定部に配置されている場合、搬送装置20が分析装置に誤った方向で配置されて誤った試薬が用いられることになると、その後に実施される試験にとって致命的な結果となり得る。搬送構造20上のRFIDアセンブリ16によって搬送構造20の方向を判定することはできないので、分析装置に配置された後は、搬送構造20の方向を判定することのできる可能性はもはやないといえる。
【0044】
図4は、本発明に基づく試薬容器搬送構造20’の別の実施形態を示す。図4の搬送構造20’は、3つの区画40.1、40.2、40.3に分割された本体40と、各区画内に上部からそれぞれ配置される試薬容器22’を備える。試薬容器22’は、ヒンジキャップ24’によって閉じられる。本発明に基づく方向識別ラベル10を取り付けるための空きスペースは図4の搬送構造20’上にはないので、方向識別ラベル10は、図4から見て取れるように、ヒンジキャップ24’上に取り付けられる。図4の例では、ラベル10は中央のキャップ上に取り付けられている。しかし、分析装置の対応する光検出装置によって読み取ることができる限り、隣接するいずれのキャップ上に取り付けてもよい。
【0045】
図9は、本発明に基づく試薬容器搬送構造20’’の第3実施形態を示す。図9に示す搬送構造20’’は、ごく概略的に表されており、図3で示され説明されているような詳細は省略している。図9の搬送構造20’’は、図3の搬送構造20に外観上はよく似ている。図9の描写は、本発明に基づく方向識別ラベルの取り付け方の別態様、すなわち搬送構造の2つ(または3つ)の面の間のエッジ部33の周りに取り付ける態様を示している。これにより、上記で概括したように、搬送構造の2つの方向からラベルを光学的および/または電子的に読み取ることができる。図9の例では、搬送構造20’’の上面30からの方向と、搬送構造20’’の側面32の側方からの方向とがある。搬送構造20’’の上側エッジ部33の周りに取り付けられた方向識別ラベル10’’’は、−図1aのラベル10と比較して−2つの白色部12.1と2つの黒色部12.2からなる2重パターンを代わりに有し、2部分が上面30に、残りの2部分が側面32に、それぞれ位置する。これにより、上方および/または側方から搬送構造20’’の方向を光学的に検出することができる。したがって、エッジ部33の周りに延長しているラベル10’’’の背面のRFIDアセンブリは、両方向から接続し読み取ることができる。エッジ部分の各方向からの近傍かつ受診距離内(電磁場の強度に依存する)に配置されたRFIDリーダは、RFID情報を読み取ることができる。これにより、搬送構造を、リーダおよび/または検出器が異なる位置に配置された異なる種類の分析装置(いわゆる異なるファミリー装置)に採用することができる。
【0046】
方向識別ラベルが、試薬容器を閉じるキャップ上に取り付けられ(例えば図4に示すように)、キャップがピペットプローブ素子によって貫通するための開口(例えば図3の実施形態に示すキャップ)を備える場合がある。そのような場合には、方向識別ラベルは開口を覆い、ピペットプローブ素子がキャップの開口に容易に接近することを妨げる。したがって、本発明に基づく方向識別ラベルは、開口を有し、ピペットプローブ素子がラベルの開口を通して試薬容器キャップの開口に容易に接近できるようにしてもよい。そのようなラベル10’’の実施形態の例は、図8に示されている。図8に示すラベルは、図1bに示すラベルに概ね対応する。すなわち、図8に示すラベルは、図1bのラベルと同じ基本パターン12.3、12.4、12.5を有する。図1bのラベルとは対照的に、図8のラベルはさらに、適切な直径の中央開口70を有し、ピペットプローブ素子がラベル10’’をスムーズに貫通して通過することができるようになっている。ラベル10’’は、ラベル10’’の開口70が実質的に、対応するキャップの開口に同心状にかつ揃えられているような態様で、試薬容器のキャップに取り付けられる。ラベル10’’は、開口70を識別するための、追加の光学検出可能パターン12.6を有してもよい。図8の実施形態では、追加の光学検出可能パターン12.6は、太い放射状の複数の線を有する、開口70の周りの同心リングである。これにより、開口70を光検出装置によって検出することができ、したがって、ピペットプローブ素子を開口70に対して同心状に正確に揃えることを補助することができる。しかし、開口を識別する他の適当なパターンも可能である。さらなる実施形態(詳細には示していない)では、開口70を、追加の光学検出可能パターン12.6によって識別される位置でピペットプローブ素子がラベル10’’を貫通する時点においてのみ作成することもできる。
【0047】
図5は、化学的、生物学的、または薬学的な作業プローブを分析する分析装置を示す。このような分析装置は、当該技術分野においてよく知られており、最近の自動化された実験室作業で一般に用いられている。これらは例えば、臨床実験作業室において一般に見られる。このような分析装置の例は、本発明の出願人であるロシュ・ダイアグノスティックスのElecsys(R)とCobas(R)である。
【0048】
最近の分析装置は、試薬容器または試薬容器搬送構造を運搬するコンベヤシステムを備え、これらはそれぞれ分析装置に配置されている。このようなコンベヤシステムの可能な実施形態は、図6の個々の立面図に部分的に示されている回転コンベヤシステム52である。“コンベヤシステム”という用語は、試薬容器または試薬容器搬送構造を運搬しまたは輸送することのできる任意のシステムまたは装置、例えば回転またはリニアコンベヤ、ベルトまたはチェーンコンベヤ、またはロボット装置を含むことが理解されよう。
【0049】
回転コンベヤシステム52は、回転軸56の周りで回転するローター54を有する。ローター54は、試薬容器搬送構造20(図3に示す実施形態に基づく)を放射状に保持することになる区画58を有する。ローター54の個々の区画58に配置された試薬容器搬送構造20は、それぞれ上面に光学検出可能定義パターンを備え、定義パターンはそれぞれ、ローターの反時計回り方向を示す黒色部12.2と、ローターの時計回り方向を示す白色部12.1を有する。
【0050】
図7は、分析装置50がどのように構築されているかを示す概略図を示す。分析装置50は、コンベヤシステムを有する(図7においては、明瞭性のため、リニアコンベヤシステム52’を示す)。分析装置50はさらに、RFID通信装置60と光検出装置62を備える。分析装置50はまた、分析装置とは別に作成し(スタンドアロンコンピュータ)、または完全にもしくは部分的に分析装置に統合することのできる演算装置64を備える。分析装置64はまた、分析装置の制御部として動作することもできる。
【0051】
RFID通信装置60は、試薬容器搬送構造に取り付けられたRFIDアセンブリ16と通信することになる。光検出装置62は、試薬容器搬送構造上の光学検出可能定義パターンを光学的に検出することになる。図7から見て取れるように、コンベヤシステム52’に積み込まれる各搬送構造20は、上面30上にそれぞれ、本発明に基づく方向識別ラベル10を有する。方向識別ラベル10は、図1a、図1bおよび図2を参照して概括したように、前面12に本発明に基づく光学検出可能定義パターンを有し、背面14にRFIDアセンブリ16を有する。RFID通信装置60とRFIDアセンブリ16の間の結合は、当該技術分野でよく知られている手段によってなされ、したがって本明細書ではさらなる詳細は説明しない。
【0052】
光検出装置62は、検出場(光測定場)を交差する任意の光学検出可能定義パターンを光学的に検出することができるように配置される。光検出そのものは、当該技術分野でよく知られており、したがって本明細書ではさらなる詳細は説明しない。
【0053】
RFID通信装置60と光検出装置62が検出し取得する信号は、演算装置64に供給され、演算装置64は光検出装置から受信した光検出データを評価し、コンベヤシステム内の少なくとも1つの搬送構造20の方向が正しいか否かを判定する。
【0054】
搬送構造20の方向が正しいと分かった場合は、さらなる処理が継続する。1つ(またはそれ以上)の搬送構造の方向が誤っていると分かった場合は、適切な措置が取られる。適切な措置は、分析プロセスを中断し、および/またはアラームを生成して発する(出力する)こと、および/または搬送構造が誤った方向を向いている旨の示唆を(オペレータに)出力すること、および/または誤った方向を向いた搬送構造を自動的に再方向付けすることを含む。
【0055】
さらなる代替のまたは累積的な措置は、誤った方向を向いた搬送構造を自動的に排出してオペレータが正しく再挿入することができるようにすることである。
【0056】
本発明の1つの可能な実施形態によれば、はじめに、分析装置に挿入された全ての搬送構造をスキャンし、これにより全ての搬送構造が分析装置に正しく挿入されているか否かを判定し、全ての搬送構造が適切に方向付けされていることが分かった場合のみ分析プロセスを継続することが適切である場合もある。この継続方法は特に、複数の搬送構造が同時に挿入され得る分析装置、例えば図6に示す回転コンベヤシステムを有する分析装置に関しては、適切である。
【0057】
個々の搬送構造上の光学検出可能定義パターンによって、挿入された搬送構造の適切な向きをスキャンすることのみならず、同時にまたは後に、RFIDアセンブリの動作をスキャンすることも、さらに有用となり得る。これは、RFIDアセンブリ16がRFID通信装置の測定場を通過するときに、RFID通信装置60と個々のRFIDアセンブリ16の間にテスト接続(またはテスト結合)を確立することによってなし得る。RFID通信装置と光検出装置を互いに隣同士に配置し、個々の測定場が重なり合い、これによりRFIDアセンブリと所与の搬送構造の定義パターンを同時に読み取り、検出する(図7の矢印によって示されるように)ことができるようにすることもできる。この目的でRFIDリーダ/光センサの組み合わせを提供することは、有利となり得る。
【0058】
分析プロセスに入る前にRFIDアセンブリをスキャンすることは、不良または欠陥のあるRFIDチップを事前に判定することができ、搬送構造を即座に取り外して別のものに取り替えることができる点で、利点がある。この場合、RFIDチップに欠陥のある搬送構造を、分析装置に自動的に排出させることは、適切であろう。
【0059】
光検出装置62は、搬送構造が挿入されているか否か、すなわちコンベヤシステム内の区画が空であるか否かを判定することもできる。これに代えて、追加の光検出装置を提供し、方向定義パターンを検出することとは別個に、搬送構造の存在を検出することもできる。
【0060】
図10は、読取モジュール90の実施形態を示す。読取モジュール90は、2つのRFIDリーダ92と、4つの光素子94を備える。各光素子94は、送信器96と受信器98を備える。RFIDリーダ92は、コイルまたはアンテナと、コイルまたはアンテナを用いて信号(データ)を送受信する回路を備えることができる。2つの光素子94、すなわち送受信器の2つのペアは、それぞれRFIDリーダ92に対して互いに対称的に配置されている。受信器は従来の光センサであってもよい。送信器は光源である。これに代えて、個々の単一の送信器を置き換える一般的な拡散光源を提供することもできる。RFIDアセンブリが例えば図2に示すように方向識別ラベルに取り付けられているので、RFIDリーダ92を介して、ラベルに統合されたRFIDデータを読み取ることができる。光素子94は、その2つが2つのRFIDリーダ92のうち1つに関して相互に対称的に配置され、例えば図1に示す個々の方向識別ラベル上の光学検出可能定義パターンのような、個々のラベル上の光学検出可能データを光学的に検出する。図10から見て取れるように、2つのRFIDリーダ92それぞれは、光素子94のペアに局所的に割り当てられており、光素子94のペアは、個々のRFIDリーダ92に対して対称的に配置されている。図10に示されている読取モジュール90は、2つのラベルを読み取るために用いることができる。この2つのラベルそれぞれは、例えばいわゆる2レーン試薬ローター内の、運搬される2つの試薬容器搬送構造のうち1つに取り付けられる。読取モジュール90は、このような試薬ローターの上部に固定的に設置され、試薬ローターは、試薬容器搬送構造を例えば図6に示すように放射状に保持する区画を有する。試薬ローターは、それぞれ試薬容器搬送構造を保持する区画を有する内部レーンと外部レーンを有することもできる。ローター位置はあらかじめ定めておいてもよく、ローターはあらかじめプログラムされたステップで経時することもできる。ローターが停止する毎に、読取モジュール90は、試薬ローターの個々の停止位置における読取モジュール90の直下の対応する区画内に配置された個々の試薬容器搬送構造に取り付けられたラベルの、RFIDデータと光学検出可能定義パターンを読み取ることができる。試薬ローターの両レーンの区画、すなわち内部レーンと外部レーンが試薬容器搬送構造によって完全に専有され得る場合は、読取モジュール90は、2つのRFIDリーダ92と個々の光素子94の配置によって、内部レーンと外部レーンの試薬容器搬送構造のラベルのRFIDデータと光学検出可能データを読み取ることができる。試薬容器搬送構造が対応するコンベヤシステムの区画内に配置されている場合に存在するはずのRFIDデータと光学検出可能定義データによって、試薬容器搬送構造が試薬ローターの個々の区画内に実際に存在するか否かを検出することができる。さらに、個々の試薬容器搬送構造が、例えば図1a、図1b、図2で概括したような、本発明に基づく光学検出可能定義パターンとともに提供される場合、試薬容器搬送構造が試薬ローターに対して正しい方向を向いているか否かを検出することができる。1つのラベルを参照すると、光素子94の情報(データ)と、RFIDリーダ92を介して受信されたRFIDデータは、1つのデータプロトコルで一緒に、または個別に、分析器に送信することができる。特に、光データとRFIDデータが個別に送信された場合、RFIDデータと光素子によって読み取られたデータをほぼ同時に読み取り、異なるデータの相互割り当てが促進されるようにすることが、役に立つ。
【0061】
さらに、試薬ローターの筐体内はほぼ暗いため、光素子94それぞれまたは少なくとも一部は、LED光源を提供することができる。これに代えて、光素子または少なくとも光素子の一部は、統合光源を提供することもできる。
【0062】
読取モジュール90の同様の構成は、いわゆる1レーン試薬ローターの場合でも可能である。この場合、読取モジュール90は、1つのみのRFIDリーダ92と、RFIDリーダ92に対して対称的に配置された個々の光素子94のペアを備える。
【0063】
本発明によれば、RFIDリーダに対して適切に配置された1つのみの光素子または複数の光素子が存在することも可能である。さらに、光素子を光センサアレイまたはCCDチップとして提供することもできる。
【0064】
さらに、光環境によっては、例えばLED光源や点光源のような特別な光源を提供することもできる。
【0065】
あるいは、拡散光源を提供することもできる。光素子は、光源に依存して、適切に選択されるべきである。
【0066】
試薬ローターまたは他の種類の使用中の試薬筐体は、冷却する必要がある。これは、光素子の適切な筐体を提供することによって生じる凝縮水から光素子を保護するために必要なことになり得る。これに代えて、光素子を保護するために適切な封止を提供することもできる。光素子は、熱せられたウィンドウの後ろに配置することもできる。
【0067】
ラベルのRFIDデータと光学検出可能データを、読取モジュール90によって「移動中に」、すなわち、例えば試薬ローターが回転している間に、個々のコンベヤシステムを停止することなく、読み取ることもできる。この場合、読取モジュール90は、個々のデータを読み取るために、コンベヤシステムの区画内に配置された個々の試薬容器搬送構造の上部に停止しない。この場合、コンベヤシステムの運搬速度は、読取モジュール90が個々のデータを読み取るために必要な読取期間に調整される。読取期間は、一般に約200msにセットすることができる。
【0068】
ラベルが「移動中に」読み取られる場合、図6を参照して、例えば試薬容器上の個々のラベルをそれぞれ約90°回転させ、全ての容器が試薬ローター内で正しい方向に配置されている場合、読取モジュールにとって、2つの連続するレーン、すなわち白色レーンと黒色レーンがそれぞれ存在し、読み取られるように見えるようにすることもできる。したがって、誤って配置された容器、すなわち誤った方向に配置された容器は、容易に識別することができる。
【0069】
光素子94とRFIDリーダ92は、共通のボードまたは異なるボード上に設置することができる。
【0070】
しかし、図10の提案する形状に基づき、個々のRFIDリーダ92と対応する光素子94のペアが局所的に近接していることが要求される観点から、1つの共通ボードを双方のために提供し、個々のRFIDリーダ92と対応する光素子94のペアをそれに割り当てることができるようにすることは、有利となり得る。
【0071】
図11は、本発明に基づく試薬容器搬送構造のさらなる実施形態を示す。図11に示す試薬容器搬送構造20*は、ごく簡略化された態様で示されており、図3に示され説明されている詳細は省略している。図11の試薬容器搬送構造20*は、図3の搬送構造に外観上はよく似ている。図11の描写は、本発明に基づく方向識別ラベル10*を取り付ける別態様、すなわち試薬容器搬送構造20*の側面110または側面と上面の2面の間のエッジ部分の周りに取り付けた様子を示す。これにより、試薬容器搬送構造20*の側方から光学的および電子的にラベル10*を読み取ることができる。これにより、分析する試薬容器搬送構造を保持するコンベヤシステムの側方に読取モジュール90’を配置することができる。これにより、ラベル10*を1つのみ提供する、すなわち、試薬容器搬送構造20*の上面に1つ、側面にもう1つの2つのラベルを提供することに代えて、個々の試薬容器搬送構造20*の側面にラベル10*を提供することができる。
【0072】
ラベル10*の基本色が試薬容器搬送構造20*の色と異なっている場合、本発明に基づく読取モジュール90’が、少なくとも1つの光素子によって、試薬容器搬送構造20*が存在しているか否か、さらには、試薬容器搬送構造20*が個々のコンベヤシステム内に正しく配置されているか否かを検出することができるのに十分な、上記基本色を有するラベル10*の定義済み検出部を残すことができる。一般には、ラベル10*の光学検出可能定義パターンは、試薬容器搬送構造20*の色に対して輪郭が浮かび上がるような色でデザインすることができる。
【0073】
例えば、試薬容器搬送構造20*が“黒色”で、ラベルの基本色が“白色”である場合、後述する例示シナリオは、検出可能である。
【0074】
読取モジュールが、少なくとも1つの光素子を介して“白色”を検出し、RFIDリーダを介してRFID信号を検出した場合は、試薬容器搬送構造が正しい位置に存在することを示唆する。読取モジュールが、“白色”を検出しRFID信号を検出しなかった場合は、試薬容器搬送構造は存在するが、個々のラベルのRFIDデータを読み取ることができないことを示唆する。読取モジュールが“黒色”を検出したときは、試薬容器搬送構造は存在するが、試薬容器搬送構造が誤った位置、例えば誤った方向に挿入されていることを示唆する。
【0075】
読取モジュール、すなわち少なくとも1つの光素子が、“黒色”、“白色”、“反射面なし”を識別するように構成されている場合は、読取モジュールは試薬容器搬送構造が存在しないことを検出することもできる。
【0076】
試薬容器搬送構造の“黒色”とラベルの基本色の“白色”に代えて、様々なさらなる色の組み合わせを選択することもできる。試薬容器搬送構造は、例えば透明またはほぼ透明にすることができるし、ラベルの色は“白色”、“黒色”、または他の任意の適切な色にすることができる。ラベルの基本色が適切でない場合は、ラベルの検出部、すなわち光学検出可能定義パターンは、適切に印刷することもできる。
【0077】
ローター120をコンベヤシステムとした場合、読取モジュール90’’は、図12の矢印で示されるように、それぞれローター120の中央部またはローター120の外周の外側の適切な位置に配置することができる。両ケースにおいて、読取モジュール90’’は、ローター120の任意の区画130に対して側方に配置されており、区画130は、試薬容器搬送構造20**の例によって示されるように、試薬容器搬送構造を保持することになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方向識別ラベル(10)であって、
前面(12)と背面(14)を備え、さらに、
前記背面(14)に配置されたRFIDアセンブリ(16)と、
前記ラベルの方向を定義する前記前面(12)上の光学検出可能定義パターン(12.1、12.2;12.3、12.4、12.5)と、
を備えた方向識別ラベル。
【請求項2】
前記パターンは、方向を識別することのできる幾何的デザインを有する、
請求項1記載の方向識別ラベル。
【請求項3】
前記幾何的デザインは、少なくとも前記ラベルの横断方向軸または長手方向軸のうち1つに対して非対称であり、点対称ではない、
請求項2記載の方向識別ラベル。
【請求項4】
前記幾何的デザインは、識別する方向に対して実質的に垂直な前記デザインの軸に対して非対称であり、点対称ではない、
請求項2記載の方向識別ラベル。
【請求項5】
前記パターンは、方向を識別することのできる少なくとも2つの色を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の方向識別ラベル。
【請求項6】
前記パターンは、方向を識別することのできる少なくとも2つの異なるサブパターンを有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の方向識別ラベル。
【請求項7】
ピペットプローブ素子が貫通する開口(70)を有する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の方向識別ラベル。
【請求項8】
前記開口(70)は、追加の光学検出可能パターン(12.6)によって識別される、
請求項7記載の方向識別ラベル。
【請求項9】
前記RFIDアセンブリ(16)は、RFIDチップ(16.2)とRFIDアンテナ(16.1)を備える、
請求項1から8のいずれか1項に記載の方向識別ラベル。
【請求項10】
試薬容器搬送構造(20)に取り付けられるようにデザインされた、
請求項1から9のいずれか1項に記載の方向識別ラベル。
【請求項11】
前記背面(14)に接着層(18)を有する、
請求項1から10のいずれか1項に記載の方向識別ラベル。
【請求項12】
少なくとも1つの試薬容器(22)を保持する試薬容器搬送構造(20)であって、
RFIDアセンブリ(16)と、
前記搬送構造(20)の存在と方向を定義する光学検出可能定義パターン(12.1、12.2;12.3、12.4、12.5)と、
を備えた試薬容器搬送構造。
【請求項13】
前記ラベルの前記パターンは、前記試薬容器搬送構造の色に対して輪郭を浮かび上がらせる1つの色でデザインされている、
請求項12記載の試薬容器搬送構造。
【請求項14】
前記パターンは、前記搬送構造の方向を識別することのできる少なくとも2つの異なる色を有する、
請求項12記載の試薬容器搬送構造。
【請求項15】
前記パターンは、前記搬送構造の方向を識別することのできる少なくとも2つの異なるサブパターンを有する、
請求項12記載の試薬容器搬送構造。
【請求項16】
前記RFIDアセンブリ(16)は、RFIDチップ(16.2)とRFIDアンテナ(16.1)を備える、
請求項12から14のいずれか1項に記載の試薬容器搬送構造。
【請求項17】
請求項1から11のいずれか1項に記載の方向識別ラベル(10)が取り付けられている、
請求項12記載の試薬容器搬送構造。
【請求項18】
化学的、生物学的、または薬学的作業プローブを分析する分析装置(50)であって、
少なくとも1つの試薬容器(22)を保持する少なくとも1つの試薬容器搬送構造(20)を運搬するコンベヤシステム(52)と、
前記少なくとも1つの試薬容器搬送構造(20)に取り付けられたRFIDアセンブリ(16)と通信するRFID通信装置(60)と、
前記試薬容器搬送構造(20)上の、前記試薬容器搬送構造(20)の方向を定義する光学検出可能定義パターン(12.1、12.2;12.3、12.4、12.5)を光学的に検出する光検出装置(62)と、
前記光検出装置(62)から受信した光検出データを評価し、前記コンベヤシステム(52)内の前記少なくとも1つの搬送構造(20)の方向が正しいか否かを判定する、演算装置(64)と、
を備える分析装置。
【請求項19】
個々のラベルの存在と方向を定義する光学検出可能データ(12.1、12.2;12.3、12.4、12.5)とともにRFIDデータを読み取る読取モジュールであって、
両データは試薬容器搬送構造に取り付けられる方向識別ラベルに統合されており、
前記RFIDデータを検出するように構成された少なくとも1つのRFIDリーダ(92)と、
前記光学検出可能データ(12.1、12.2;12.3、12.4、12.5)を検出するように構成された少なくとも1つの適切に配置された光素子(94)と、
を備える読取モジュール。
【請求項20】
前記少なくとも1つの光素子は、1以上の光センサ、1以上の光センサアレイ、または1以上のCCDチップのうち少なくとも1つを備える、
請求項19記載の読取モジュール。
【請求項21】
前記読取モジュールは、分析器と通信するように構成されており、
前記RFIDリーダを介して読み取られた前記RFIDデータ、および前記少なくとも1つの光素子(94)によって読み取られた前記光学検出可能データ(12.1、12.2;12.3、12.4、12.5)は、1つのデータプロトコルで一緒に、またはそれぞれ個別に送信される、
請求項19または請求項20記載の読取モジュール。
【請求項22】
前記少なくとも1つの光素子(94)は、光源を備え、前記光源は統合光源またはLED光源を含む、
請求項19から21のいずれか1項に記載の読取モジュール。
【請求項23】
前記読取モジュール(90)は、前記ラベルの前記RFIDデータと前記光学検出可能データ(12.1、12.2;12.3、12.4、12.5)を略同時に読み取るように構成されている、
請求項19から22のいずれか1項に記載の読取モジュール。
【請求項24】
前記ラベルは、請求項1から11のいずれか1項に記載の方向識別ラベルである、
請求項19から23のいずれか1項に記載の読取モジュール。
【請求項25】
少なくとも2つの前記光素子(94)が、前記少なくとも1つのRFIDリーダ(92)に対して互いに対称的に配置されている、
請求項19から24のいずれか1項に記載の読取モジュール。
【請求項26】
前記少なくとも1つの光素子(94)は、色センサと輝度センサのグループから選ばれた少なくとも1つの光センサを有する、
請求項19から25のいずれか1項に記載の読取モジュール。
【請求項27】
前記読取モジュール(90)は、2つのRFIDリーダ(92)と、光素子(94)の2つのペアとを備え、
光素子の各ペアは前記2つのRFIDリーダ(92)のうち1つに対してそれぞれ局所的に配置され、前記読取モジュール(90)は2つのラベルからデータを読み取るように構成され、前記ラベルは互いから適切に離隔されている、
請求項19から26のいずれか1項に記載の読取モジュール。
【請求項28】
前記読取モジュール(90)は、請求項17記載の分析装置に統合されており、これにより前記RFID通信装置と前記光検出装置を置き換える、
請求項19から27のいずれか1項に記載の読取モジュール。
【請求項29】
化学的、生物学的、または薬学的作業プローブを分析する分析装置(50)を作動させる方法であって、
少なくとも1つの試薬容器搬送構造(20)が前記分析装置(50)のコンベヤシステム(52)に挿入され、
各試薬容器搬送構造(20)は、RFIDアセンブリ(16)と、前記搬送構造(20)の方向を定義する光学検出可能定義パターン(12.1、12.2;12.3、12.4、12.5)とを備え、
少なくとも1つの挿入された前記試薬搬送構造(20)をスキャンし、スキャンした前記試薬容器搬送構造(20)上の前記光学検出可能パターンを光学的に検出するスキャンステップと、
取得した前記光学検出データに基づき、前記コンベヤシステム(52)内の前記少なくとも1つの試薬容器搬送構造(20)の方向が正しいか否かを評価する評価ステップと、
前記スキャンステップと前記評価ステップを必要なだけ繰り返すステップと、
を有する方法。
【請求項30】
前記スキャンステップはさらに、
スキャンした前記少なくとも1つの試薬容器搬送構造(20)の前記RFIDアセンブリ(16)とテスト接続し、スキャンした前記少なくとも1つの試薬容器搬送構造(20)の前記RFIDアセンブリ(16)が応答するか否かを判定する、
請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記スキャンステップと前記評価ステップが肯定的な結果をもたらした場合のみ前記分析装置の分析プロセスを継続し、そうでなければ分析プロセスを中断する、
請求項29または30記載の方法。
【請求項32】
前記分析プロセスを中断する場合は、オペレータに対してアラームを生成して出力する、
請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記出力アラームは、いずれの前記試薬容器搬送構造(20)が誤った方向を向いているか、および/またはいずれの前記試薬容器搬送構造(20)が前記RFIDテスト接続に応答していないかの示唆を含む、
請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記分析プロセスを中断する場合は、誤った方向を向いている任意の試薬容器搬送構造(20)を自動的に再方向付けする、
請求項32記載の方法。
【請求項35】
前記分析プロセスを中断する場合は、誤った方向を向いている任意の前記試薬容器搬送構造(20)または前記RFIDテスト接続に応答していない任意の前記試薬容器搬送構造(20)を自動的に排出する、
請求項32記載の方法。
【請求項36】
コンピュータ上で実行するとき、特に請求項17記載の分析装置内に統合された演算装置上で実行するとき、請求項29から35のいずれか1項に記載の方法を実行するのに適したコンピュータプログラムコードを有する、コンピュータプログラム。
【請求項37】
請求項36記載のコンピュータプログラムを格納したコンピュータプログラム製品。
【請求項38】
請求項36記載のコンピュータプログラムを格納したコンピュータ読取可能な媒体。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−534827(P2010−534827A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517323(P2010−517323)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006150
【国際公開番号】WO2009/015839
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】