説明

方法

本発明は、以下の工程を含む、サンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度を判定する方法に関連する:(a)サンプルの1つまたはそれ以上の(例えば複数の)アリコートを提供する、ここで各アリコートは、アリコートあたり1ゲノムより少ない量で核酸を含む;(b)第1の増幅反応において、各アリコートの1つまたはそれ以上の核酸配列を増幅する;(c)2回目の増幅反応で、工程(b)から得た、または得られるアリコートそれぞれの、1つまたはそれ以上の核酸配列を増幅する、ここで少なくとも1つの核酸配列はテストマーカーである;および(d)テストマーカーの増幅産物の数と、参照マーカーのものを比較することによって、テストマーカーのコピー数を計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ゲノムDNAのような、核酸配列のコピー数の変化を検出する方法、およびこの方法の様々な適用に関連する。例として、本方法を、ゲノムの変化の検出および癌のような疾患の診断のために使用し得る。さらに、本発明の方法によって同定された非相互的t(3;5)転座も記載される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
染色体の変化(例えば異常)は多くの場合、遺伝的異常、変性性疾患、および癌と関連する。染色体全体のコピーの欠失または増殖、および染色体の区域または特定の領域の欠失または増幅は、癌のような疾患においてよく起こる(非特許文献1;非特許文献2)。実際、DNA配列の増幅および欠失は、疾患の原因であり得る。例えば、原癌遺伝子および腫瘍抑制遺伝子はそれぞれ、多くの場合腫瘍形成に特徴的である(非特許文献3)。明らかに、疾患に関連する特定のゲノム領域の同定およびクローニングは、疾患の研究および診断および予後のより良い手段の開発の両方において重要である。
【0003】
従って、個人化した、予防的、および予測的医学の目的を実行するために、ゲノム配列決定後の時代において、個々のゲノムの状態を決定する方法が必要である。疾患の(例えば癌)ゲノムは、多くの異常を示すが、遺伝性の染色体異常は、多くの複雑な症候群および疾患素因と関連している。実際、癌ゲノム全体のある範囲の提案された配列決定は、そのような変化に関してゲノムをスキャンする方法を用いて、異常が位置する領域によりよく焦点を合わせ得る。新生物は多くの場合、欠失、増幅および転座を含む、複雑な細胞遺伝学的異常を有する。白血病および肉腫は、典型的に相互染色体転座(2)を示すが、上皮の腫瘍(それはヒト癌の90%以上を含む)は、はるかにより不均一である(1)。上皮腫瘍では、染色体の獲得または喪失および不均衡な転座が主に起こる。これに加えて、小さな細胞遺伝学的に目に見えない異常、例えば染色体の転座に伴って時々見出されるものが腫瘍に存在する(3)。特によく特徴付けられた、非相互的染色体転座は、腎細胞癌における不均衡なder3t(3;5)である(4、5)。これらの異常は、非乳頭状腎細胞癌と特異的に関連し、ここでそれは少なくとも15%の頻度で起こる(6)。これらの転座のder(3)t(3;5)の限界点の解明は、それらが非相互的であるので妨げられてきた。
【0004】
この問題へのアプローチは、非相互的転座は、ゲノム配列のコピー数の変化を引き起こすという事実に基づき得る。多くのハイブリダイゼーションに基づく技術が、ゲノム内のコピー数をスキャンするために利用可能である。これらの方法は、ゲノムDNA(7)を、BACSまたはPACS(8、9)またはヒト参照配列を示すオリゴヌクレオチド(10、11)のアレイのためのプローブとして使用する、または代表的なゲノムプローブ(ROMA)(12−14)またはSNPアレイ(15)を使用する。しかし、アレイに基づく方法は、調査する標的の各セットのために新しいアレイを作成しなければならないので、柔軟性を欠く。さらに、ハイブリダイゼーションシグナルは、プローブに対応するゲノムの特定の領域のコピー数を反映するので、これらのアプローチは、常に定量的であるわけではない。定量的PCRに基づく他のアプローチは、評価する各遺伝子座に関して最適化を必要とする。
【0005】
本発明は、1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数の変化の検出における改善に関連する。
【非特許文献1】Breast Cancer Res.Treat.18:Suppl.1:5−14
【非特許文献2】Biochim.Biophys.Acta.1072:33−50
【非特許文献3】Cancer Genet.Cytogenet.49:203−217
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
本明細書中で記載される方法(Molecular Copynumber Counting、またはMCCと呼ばれる)は、限界DNA希釈において、ゲノムマーカーのような核酸配列の増幅が起こる頻度を分析することによって、コピー数の頻度を判定する。
【0007】
その方法は、腎細胞癌におけるヒト第3染色体の短腕をコピー数スキャニングして、非相互的転座の限界点の位置を300bp以内に決めて、それをクローニングすることを可能にすることによって実証された。これは初めて腎細胞癌における新生非相互的転座の限界点をクローニングした。
【0008】
(本発明の概要局面)
最初の局面において、以下の工程を含む、サンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度を判定する方法を提供する:(a)サンプルの1つまたはそれ以上(例えば複数)のアリコートを提供すること、ここで各アリコートはアリコートあたり1ゲノムより少ない量で核酸を含む;(b)第1の増幅反応において、アリコートそれぞれの1つまたはそれ以上の核酸配列を増幅する;(c)2回目の増幅反応において、工程(b)から得た、または得られるアリコートそれぞれの1つまたはそれ以上の核酸配列を増幅する、ここで少なくとも1つの核酸配列はテストマーカーである;および(d)テストマーカーの増幅産物の数を、参照マーカーと比較することによって、テストマーカーのコピー数を計算する。
【0009】
2番目の局面において、以下の工程を含む、核酸のサンプル中の1つまたはそれ以上の変化を同定する方法を提供する;(a)本発明の最初の局面の方法によって、1番目および2番目のサンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度を判定する;(b)任意でそれぞれのサンプルに関して、徐々により高い分解能で、その方法を反復する;および(c)第1および2番目のサンプルにおける、1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度の1つまたはそれ以上の違いを同定する。
【0010】
3番目の局面において、以下の工程を含む、被験体において疾患を診断する方法を提供する;(a)本発明の最初の局面の方法によって、サンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度を判定する;および(b)1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数を、1つまたはそれ以上の核酸配列の正常なコピー数と比較する;ここでサンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数および1つまたはそれ以上の核酸配列の正常コピー数の間の違いは、その被験体がその疾患に罹患していることを示す。
【0011】
本発明の4番目の局面において、以下の工程を含む、核酸のサンプル中の1つまたはそれ以上の変化をクローニングする方法を提供する:(a)本発明の2番目の局面によって、核酸のサンプル中の1つまたはそれ以上の変化を同定する;および(b)その1つまたはそれ以上の変化をクローニングする。
【0012】
本発明の5番目の局面は、非相互的t(3;5)転座をコードする単離された核酸に関連し、ここで座標105386443bpまでの染色体5q21.3が、座標74111893bpからの染色体3p13と融合しており、そしてここで接合部のアデニン残基はいずれかの染色体由来である。
【0013】
6番目の局面は、請求24−27のいずれかによって、非相互的t(3;5)転座の存在を決定する工程を含む、被験体において癌を診断する方法に関連し、ここで転座の存在は、その被験体が癌を有することを示す。
【0014】
(好ましい実施態様)
好ましくは、第1の増幅反応における各アリコートは、増幅反応あたり約0.1−0.9ゲノムのDNAを含む。
【0015】
好ましくは、テストマーカーのコピー数を、テストマーカーおよび参照マーカーの増幅産物の数を手作業で算出することによって計算する。
【0016】
好ましくは、テストマーカーのコピー数を、等式:Np=N(1−e−Z)を用いて計算し、ここでNはアリコートの数である;Zはアリコートあたりの増幅産物の平均数である;そしてNpは、ポアソン分布によって少なくとも1分子の核酸を含むことが期待されるアリコートの数である。
【0017】
好ましくは、テストマーカーのコピー数を、等式:Z=−ln(1−Np/N)を用いて計算し、ここでNは所与配列に関して試験した核酸のアリコートの数である;Npはその核酸に関して陽性であったアリコートの数である。
【0018】
好ましくは、増幅反応を、PCRを用いて行う。
【0019】
好ましくは、第1の増幅反応を、フォワードプライマーおよびリバースプライマーペアを用いて行う。
【0020】
好ましくは2番目の増幅反応を、フォワード内部プライマーおよびリバースプライマーペアを用いて行う。
【0021】
好ましくは、サンプルを、第1染色体、第2染色体、第3染色体、第4染色体、第5染色体、第6染色体、第7染色体、第8染色体、第9染色体、第10染色体、第11染色体、第12染色体、第13染色体、第14染色体、第15染色体、第16染色体、第17染色体、第18染色体、第19染色体、第20染色体、第21染色体、第22染色体、X染色体およびY染色体からなるグループから得る、または得ることができる。
【0022】
好ましくは、アリコートにする前のサンプルにおける核酸の濃度を、UV分光測定によって決定する。
【0023】
好ましくは、アリコートにする前のサンプルにおける核酸の濃度を、一倍体ゲノムあたり1つのコピーしか存在しないと考えられる1つまたはそれ以上の核酸を、2つまたはそれ以上の異なる希釈において増幅することによって決定し、ここで1つまたはそれ以上の核酸に関して陽性であることが見出された各希釈におけるサンプルの割合を、DNA濃度の推定を正確にし、そして従って続く分析に必要な希釈を決定するために使用する。
【0024】
好ましくは、4つの核酸を増幅し、そして6つの希釈を調製する。
【0025】
好ましくは、サンプルは疾患を持つ被験体、または疾患を持たない被験体またはそれ由来である。
【0026】
好ましくは、さらなる研究のために1つの領域に焦点を合わせる前に、染色体全体を最初にスキャンする。
【0027】
好ましくは、本方法を最初は約2Mbの分解能で行い、徐々に約100塩基対またはそれ以下に下げる。
【0028】
好ましくは、その変化は転座、増幅、重複または欠失である。
【0029】
好ましくは、もし被験体由来の核酸のサンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数が、正常コピー数より多いなら、転座、増幅または重複を示す。
【0030】
好ましくは、もし被験体由来の核酸のサンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数が、正常コピー数より少ないなら、欠失を示す。
【0031】
好ましくは、その疾患は癌である。
【0032】
好ましくは、その癌は腎臓癌である。
【0033】
好ましくは、その被験体を、以下のものからなるグループから選択する:(i)疾患に罹患した、または罹患していることが疑われる被験体;(ii)疾患の素因があることが公知の被験体;(iii)疾患を引き起こすことが公知である、または疑われる、1つまたはそれ以上の因子または状況に接触した被験体;および(iv)疾患を発症する過程にある、またはその過程にあることが疑われる被験体。
【0034】
好ましくは、インバースPCR法を用いて、その変化をクローニングする。
【0035】
好ましくは、染色体5q21.3は、配列TATACATACATACGGATATATGTATAAAATCを含む。
【0036】
好ましくは、染色体3p13は、配列TAGGGAGTGAAGTAGTGGCCAAGAAAACATGCCAGを含む。
【0037】
好ましくは、非相互的t(3;5)転座は、配列TATACATACATACGGATATATGTATAAAATCATAGGGAGTGAAGTAGTGGCCAAGAAAACATGCCAGを含む。
【0038】
好ましくは、その癌は、腎細胞癌である。
【0039】
利点
本発明は、多くの利点を有する。これらの利点は、以下の説明において明らかとなる。
【0040】
例として、その方法は、配列を数百塩基対までの間隔で調査し得るので、有効に無制限の分解能を提供し、そして増幅した領域の特徴付けに同様に適用可能であるので、本発明は有利である。
【0041】
さらなる例として、それは染色体の領域または完全なゲノムの迅速なスキャニングを可能にするために、その操作のためのゲノムデータベースおよびPCRプライマーのライブラリーしか必要としないので、本発明は有利である。
【0042】
さらなる例として、選択したマーカーの密度に依存して、あらゆるレベルの分解能を達成し得るので、本発明は有利である。従って、研究の領域を容易に制御し得る。
【0043】
さらなる例として、他のDNA計測技術と異なり、本明細書中で記載される方法は、ゲノム全体の増幅またはいかなるハイブリダイゼーション工程も必要としないので、本発明は有利である。これは、領域特異的ゲノム増幅、プローブ内の反復配列の不完全な抑制から起こり得るあらゆる問題を回避し、そして短いオリゴアレイまたはアレイCGHのためのE.coliDNAが混入したBAC/PACの増幅において起こり得るような、交差ハイブリダイゼーションのリスクを除去する(9)。
【0044】
さらなる例として、その方法は実質的にデジタル(分子コピー数を算出する)であり、それは結果の解釈を簡単にするが、一方マイクロアレイアプローチは、解釈のために計算アルゴリズムを必要とし得るので、本発明は有利である(23)。
【0045】
さらなる例として、その方法は自動化に向いており、そしてハイスループットに基づいて分析できるが、それはまた手作業での操作にも容易に適用可能であり、そして従って、アレイヤーのような機械の必須の必要性はないので、本発明は有利である。
【0046】
さらなる例として、その方法は、きわめて少ない量のゲノムDNAを必要とし、数十から数百と少ない細胞からのDNAに適用可能であり、そしてDNAは高分子量である必要はないので、本発明は有利である。その方法は、被験体からの前新生物生検材料の詳細な分析、保管された腫瘍サンプルのレトロスペクティブな分析、または腫瘍の異なる小さい領域間のゲノム変動性の調査のような、今まで実行不能だった研究を可能にする。
【0047】
さらなる例として、本明細書中で記載された方法はまた、疾患に関係するか、またはヒトの変動の正常な範囲の一部を形成するかに関わらず、コピー数に影響を与える遺伝性染色体異常の分析を簡単にするので、本発明は有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
変化
本明細書中で使用する場合、「変化」という用語は、遺伝物質の喪失または獲得を含む、公知のまたは隠された変化のような、変化を指す。
【0049】
適切に、変化は、2倍体状態からのコピー数の変化のような、コピー数の変化であり、それを本明細書中で記載された方法を用いて、DNA反復頻度を判定することによって決定し得る。
【0050】
1つの実施態様において、その変化は、染色体異常のような異常である。
【0051】
1つの実施態様において、その変化は、転座(例えば不均衡な転座または非相互的転座)、増幅、複製、または欠失から成るグループから選択される。
【0052】
特に好ましい実施態様において、その変化は、癌または腫瘍細胞由来の、またはそれから得られる核酸において検出される非相互的転座のような、非相互的転座である。
【0053】
コピー数
「コピー数」という用語は、ヒトのような特定の有機体のゲノムにおける、特定の核酸配列(例えば遺伝子座)のコピー数を意味する。
【0054】
テストマーカー
本明細書中で使用される場合、「テストマーカー」という用語は、核酸配列を指し、そのコピー数は本発明の方法によって決定される。
【0055】
参照マーカー
本明細書中で使用される場合、「参照マーカー」という用語は、核酸配列を指し、そのコピー数は既知である、またはテストマーカーのコピー数を計算するために決定される。本明細書中で記載されるように、テストマーカーのコピー数は、テストマーカーの増幅産物の数を、参照マーカーのものと比較することによって計算する。
【0056】
参照マーカーのコピー数を、本明細書中で記載された方法、または比較ゲノムハイブリダイゼーションまたはアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション等のような、核酸のコピー数を決定するために使用し得るあらゆる他の方法を用いて決定し得る。もちろん、そのコピー数は以前に記載されたかもしれないので、参照マーカーのコピー数を、文献を参照することによっても決定し得る。
【0057】
本発明の1つの実施態様において、テストマーカーおよび/または参照マーカーを増幅する。
【0058】
サンプル
本明細書中で使用される「サンプル」という用語は、本明細書中で記載されたような増幅による検出に適当な形式で、核酸、典型的にはDNA(好ましくはゲノムDNA)を含む、またはそれから成るサンプルを指す。本方法において使用されるサンプルは、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウマ、およびウシを含むがこれに限らない、あらゆる真核生物のような、実質的にあらゆる有機体由来であり得る。
【0059】
好ましくは、そのサンプルはヒトである、またはヒト由来である。
【0060】
そのサンプルは、個体または個体のグループから得られた、組織および/または液体のサンプルのような、有機体と関連する実質的にあらゆる供給源由来であり得る。説明的な例は、皮膚、血漿、血清、血液、尿、涙、臓器、脊髄液、リンパ液および腫瘍を含む。そのサンプルを、増殖培地、組み換え細胞、および細胞構成成分を含む、インビトロの細胞培養物から得ることさえできる。
【0061】
サンプルを腫瘍の診断または研究のために取る場合、そのサンプルを、典型的には腫瘍組織または腫瘍形成の初期であることが疑われる組織から取る。濃縮技術によって、腫瘍の存在の評価のために必要なサンプルを、例えば血漿から腫瘍細胞またはDNAを濃縮することによって得ることができる。
【0062】
従って、多くの場合、そのサンプルは組織、または細胞サンプルであり、ここで核酸が単離および/またはクローニングおよび/または増幅される。それは例えば特定の染色体由来のゲノムDNA、または単位複製配列または欠失のような、特定の変化内の選択された配列(例えば特定のプロモーター、遺伝子、増幅または制限断片)であり得る。
【0063】
細胞および組織サンプルを単離する方法は、当業者に周知であり、そして吸引、組織切片、針生検等を含むがこれに限らない。多くの場合、そのサンプルは「医学的サンプル」であり、それは組織学的目的のために取られた、凍結切片またはパラフィン切片のような組織の切片を含む、被験体由来のサンプルである。そのサンプルはまた、染色体の異常を検出する、および/またはコピー数を決定することが望ましくあり得る、細胞培養物からの上清(細胞の)または細胞自体、組織培養物および他の媒体からの細胞由来であり得る。
【0064】
当該分野において公知の標準的な手順を用いて、必要な核酸をサンプルから単離し得る。
【0065】
本明細書中で記載された方法の特定の適用は、例えば腫瘍および胎児組織を含む医学的標本由来の、対象の細胞または細胞集団からのDNA配列を分析するためである。
【0066】
しかし、もし核酸、例えばDNAを少数の細胞から(例えば特定の腫瘍小領域から)、または単一の細胞から抽出するなら、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)手順によって、または非ポリメラーゼ連鎖反応(非PCR)手順によって、その核酸を増幅することが必要であり得る場合もある。PCRおよび好ましいPCR手順を、本明細書中で記載する。代表的な非PCR手順は、リガーゼ連鎖反応(LCR)および本明細書中で記載されたような適当なプライマーおよびその伸長(ランダムプライミング)を用いることによる直線状の増幅を含む。
【0067】
好都合なことに、保存された組織標本、例えばパラフィン包埋またはホルマリン固定病理学標本由来の核酸を、本明細書中で記載された方法によって試験し得る。そのような標本由来の核酸を、Anatomic Pathology 95(2):117−124(1991)およびCancer Res.46:2964−2969(1986)において記載されたもののような、公知の技術によって抽出し得、そしてもし必要なら、試験のために増幅し得る。そのような核酸を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)手順を用いることによって増幅し得、ここで例えばパラフィン包埋組織由来のDNAをPCRによって増幅する。
【0068】
そのような保存された核酸を試験することに特に価値があるのは、そのような標本は通常、その標本が取られた被験体の医学的記録を伴うということである。従って、被験体の核酸材料の明らかになった状態および治療の医学的履歴およびそれらの被験体の予後の間に、貴重な診断的/予後的関連付けがなされ得る。例えば、本明細書中で記載された方法によって集められた情報を、その予後が公知である被験体の同様のパターンとの関連にマッチする増幅および/または欠失パターンに基づいて、腫瘍の浸潤性を予測するために使用し得る。
【0069】
同様に、天然の固定過程によって保存された考古学的材料のような、他の方法によって固定された他の核酸も研究し得る。種間のコピー数の差異は、研究している種の類似性および相違の程度についての情報を提供する。従って、本明細書中で記載された方法を用いることによって、実存のまたは絶滅した種の間またはその中での進化的に重要な連結および分離をなし得る。
【0070】
本明細書中で記載されたように、一旦サンプルが調製されたら、それを1つまたはそれ以上のアリコート(例えば複数のアリコート)に分け得る。アリコートの数の関係において、「複数」という用語は、2またはそれ以上、好ましくは10またはそれ以上、好ましくは20またはそれ以上、好ましくは30またはそれ以上、好ましくは40またはそれ以上、好ましくは60またはそれ以上、好ましくは80またはそれ以上、好ましくは90またはそれ以上、またはさらに好ましくは100、200、300、400、600、800またはさらに1000またはそれ以上を意味する。
【0071】
特に好ましい実施態様において、本発明の方法を、複数のウェルを含む1つまたはそれ以上のプレートで行う。好ましくは、そのプレートは96穴または384穴を含む。他の適当なサイズのプレートも使用し得る。よって、サンプルのアリコートの数は、典型的にはプレートのウェルの数に関係する。しかし、そのようなプレートを使用する場合、1つまたはそれ以上のウェルをコントロールとして使用し得るので、サンプルは必ずしもそれぞれおよび全てのウェルにアリコートに分ける必要はない。例として、もし実験を1つまたはそれ以上の96穴プレートで行うなら、各プレートの約8またはそれくらいのウェルを、ネガティブコントロールとして使用し得、それはサンプルのアリコートと接触しない。言い換えると、ネガティブコントロールは、サンプルである、またはサンプル由来の、ゲノムDNAのような核酸を欠く
本発明によって使用されるサンプルの各アリコートは、HAPPYマッピングに関して記載されたように、増幅反応あたり1ゲノム未満を含む(22)。好ましくは、本発明によって使用されるサンプルの各アリコートは、増幅反応あたり約0.9、約0.8、約0.7、約0.6、約0.5、約0.4、約0.3、約0.2または約0.1ゲノムまたはそれより少ない量を含む。より好ましくは、本発明によって使用されるサンプルの各アリコートは、増幅反応あたり約0.1−0.9ゲノムまたは増幅反応あたり約0.3−0.5ゲノムのような、増幅反応あたりあらゆる適当な開始または終了点からなる範囲の数のゲノムを含む。最も好ましくは、本発明によって使用されるサンプルの各アリコートは、増幅反応あたり約0.3ゲノムを含む。
【0072】
アリコートに分ける前にサンプル中の正確なDNA濃度を決定するために、サンプルあたり0.25および8ゲノムの間のDNAを与えることが予測される(UV分光光度法によって決定されたDNA濃度に基づいて)範囲のDNA希釈を用いて、最初の試験を行い得る。核酸サンプルあたり約4つの核酸配列を、1倍体ゲノムあたり1コピーしか存在しないと考えられる、異なる核酸配列に関して、6つの希釈のような、異なる希釈において分析し得る。これらのマーカーに関して陽性であることが見出された各希釈におけるサンプルの割合を使用して、核酸濃度の推定を正確にし、そして従って続く分析に必要な希釈を決定する。
【0073】
増幅
本明細書中で使用される場合、「増幅」は、インビトロで、ゲノムDNAのような核酸の鎖を増加させるあらゆる過程を指す。
【0074】
好ましくはその過程は酵素的であり、そして特徴において線形または指数関数的である。
【0075】
増幅技術は、サーマルサイクリング増幅法および等温増幅法として広く分類される方法を含むがこれに限らない。適当なサーマルサイクリング法は、例えばリガーゼ連鎖反応を含む(Genomics 4:560(1989);およびScience 241:1077(1988))。リガーゼ連鎖反応は、DNAリガーゼ、および標的鎖あたり2つの、4つのオリゴヌクレオチドを使用する。オリゴヌクレオチドは増幅される核酸の隣接する配列にハイブリダイズし、そしてリガーゼによって連結される。反応は熱変性され、そしてサイクルを反復する。本発明において有用な等温増幅法は、例えば鎖置換増幅(SDA)(Proc.Nat.Acad.Sci.USA 89:392−396(1992))、Q−ベータ−レプリカーゼ(Bio/Technology 6:1197−1202(1988));核酸に基づく配列増幅(NASBA)(Bio/Technology 13:563−565(1995));および自家持続配列複製法(Proc.Nat.Acad.Sci.USA 87:1874−1878(1990))を含む。
【0076】
特に好ましい増幅法はPCRである。当業者に周知であるように、これは実質的にあらゆる核酸配列を、選択的に増幅し得る方法である。その方法は、DNAの反対の鎖にハイブリダイズし、そして増幅する配列の限界を規定する、前もって決定した配列の、対になったオリゴヌクレオチドのセットを使用することを含む。そのオリゴヌクレオチドは、熱安定性のDNAポリメラーゼによって触媒される、連続する複数回のDNA合成を開始する。合成の各回を、典型的には溶解および再アニーリング工程によって分け、当該DNA配列を1時間以内で数百倍に増幅することを可能にする(Science 239:487、1988)。本明細書中で記載されるように、1つ以上の核酸を、複数の対になったプライマーを採用する多重PCRによって、同時に増幅し得る。
【0077】
核酸を、増幅の間またはその後に、1つまたはそれ以上のヌクレオチドにおいて標識し得る。
【0078】
本明細書中で記載されるように、その方法を、2相増幅反応を用いて行う。
【0079】
第1の増幅反応
第1の増幅反応は、典型的には、1つまたはそれ以上、好ましくは2つまたはそれ以上(例えば複数)の核酸配列を増幅するために、複数の外側プライマーによる増幅工程である。大きな遺伝子および転写物、または規定されていない遺伝子を分析する場合、変化を同定するために、多くの場合複数の個々の増幅反応が必要である。従って、大きく複雑な遺伝子の分析を能率的にするために、単一の増幅反応において、異なる核酸配列を同時に増幅するための多重プライマーを利用し得る。多重プライマーの調製方法は、例えば米国特許第6,207,372号において報告されるように、当該分野で公知である。
【0080】
1つの実施態様において、1つまたはそれ以上のマーカーを増幅する(例えばテストマーカーおよび/または参照マーカー)。
【0081】
別の実施態様において、2つまたはそれ以上のマーカーを増幅する(例えばテストマーカーおよび/または参照マーカー)。
【0082】
別の実施態様において、全てのマーカーを増幅する。
【0083】
別の実施態様において、1つまたはそれ以上の配列またはマーカーの全てのコピーを増幅する。
【0084】
別の実施態様において、関心のある染色体またはゲノム領域または遺伝子座における、1つまたはそれ以上のマーカー、2つまたはそれ以上のマーカー、または全てのマーカーを増幅する。
【0085】
第1の反応に関して、核酸を調製し、そしてアリコートあたり約1ゲノム未満に希釈する。選択した増幅方法がPCRなら、Gold PCR緩衝液(Perkin−Elmer)のようなPCR緩衝液、約2mMのMgCl2のようなMgCl2、約200μMの各dNTPのようなdNTP、および約0.1U/μlのTaq Gold DNAポリメラーゼ(Perkin−Elmer)のようなTaqDNAポリメラーゼ−中に、増幅する全ての配列のプライマーを含む、マスターミックスを調製し得る。
【0086】
適切に、核酸を複数のアリコートに分ける。
【0087】
適切に、核酸を、複数の同一のまたは実質的に同一のアリコートに分ける。
【0088】
適切に、調製したアリコートのそれぞれを、ウェルまたは容器に入れる。よって、本発明の1つの実施態様において、増幅反応を、例えば96穴プレートを用いて、並行して行う。従って、マスターミックスのアリコートを、96穴プレートの8ウェルに分配し(ネガティブコントロール)、そして続いて約0.03ゲノム/μlのゲノムDNAを分析のためにマスターミックスに加える。このミックスのアリコート(それぞれ約0.3ゲノムのDNAを含む)を、残りのウェルのそれぞれにアリコートに分けて、そしてコントロールウェルにゲノムDNAを欠く等価な混合物を加える(ネガティブコントロール)。全てのサンプルを、鉱油(約20μl)で覆う。
【0089】
アリコートのそれぞれにおいて1つまたはそれ以上のマーカーを増幅するために、第1の増幅反応を行い得る。好ましくは、アリコートのそれぞれにおける全てのマーカーを増幅する。サーモサイクリングを、典型的には約93℃で約9分間のホットスタート、続いて約94℃で約20秒間、約52℃で約30秒間、および約72℃で1分間の約25サイクルによって行う。当業者は、このサーモサイクリング反応を変化させ得ることを認識する。
【0090】
増幅産物のそれぞれを、そこに含まれる核酸を増幅するための、2番目の増幅反応に十分な量まで希釈する。
【0091】
本発明の1つの実施態様において、第1の増幅反応を自動化することが望ましい。
【0092】
2番目の増幅反応
適切に、第1の増幅反応からの1つまたはそれ以上(例えばそれぞれの)増幅産物を、1つまたはそれ以上のレプリカサンプルまたはレプリカアリコートに再分する、または分ける。
【0093】
適切に、第1の増幅反応からの1つまたはそれ以上(例えばそれぞれの)増幅産物を、1つまたはそれ以上のレプリカウェルまたはレプリカ容器に再分する、分ける、または分配する。
【0094】
よって、2番目の増幅反応の前に、第1の増幅反応からの増幅産物の、1つまたはそれ以上のレプリカセットを調製する。適切に、増幅産物のレプリカセットは、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の、第1の増幅反応からのそれぞれの増幅産物を含む。好ましくは、増幅産物のレプリカセットは、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の、第1の増幅反応からのそれぞれの増幅産物を含む。
【0095】
典型的には、第1の増幅反応からの、1つまたはそれ以上の(例えばそれぞれの)アリコートを、増幅されるマーカーの数と関連する、多くのレプリカサンプル、アリコート、ウェル、または容器に再分する、または分ける、または分配する。適切に、1つのマーカーをレプリカサンプル、アリコート、ウェルまたは容器のそれぞれにおいて増幅する。従って、例として、4つのマーカーを増幅するなら、第1の増幅反応からの各アリコートを、4つのレプリカサンプル、アリコート、ウェルまたは容器に、再分する、分ける、または分配する。最初のマーカーを最初のレプリカサンプル、アリコート、ウェルまたは容器で増幅し、2番目のマーカーを2番目のレプリカサンプル、アリコート、ウェルまたは容器で増幅する等である。
【0096】
本発明の1つの実施態様において、第1の増幅反応から得た、または得ることができる、1つまたはそれ以上の増幅産物を増幅する。
【0097】
典型的には、2番目の増幅反応を、セミネステッド増幅反応を用いて行い、ここで第1の増幅反応で使用したのと同じリバースプライマーを、増幅する各マーカーのためのフォワード内部プライマーと組み合わせて使用する。
【0098】
もし2番目の増幅反応を、PCRを用いて行うなら、典型的には、セミネステッドPCRは、約1.5mMのMgCl2のようなMgCl2、および約1μMの関連するフォワード内部プライマーおよびリバースプライマーを利用する。他の濃度は、前のような、第1の増幅反応で使用したものとほぼ同じである。
【0099】
1つの実施態様において、サーモサイクリングを、約93℃で約9分間、続いて約94℃で20秒間、約52℃で約30秒間、および約72℃で約1分間の約33サイクルで行う。当業者は、このサーモサイクリング反応が変化し得ることを認識する。
【0100】
好都合なことに、2番目の段階の増幅反応を、複数の384穴マイクロタイタープレートで機械的に設定し、96個の第1の増幅反応のそれぞれを、異なるマーカーのそれぞれに関してスクリーニングし得る。従って、例として、4つの核酸配列を2番目の増幅でスクリーニングするなら、384穴プレートを使用して、それによって4つの核酸配列それぞれに関して96穴を提供し得る。あるいは、もし機械化システムではなく、マルチチャンネルピペットを移動のために使用するなら、2番目のセミネステッド増幅段階を、2番目の96穴プレートで行い得る。
【0101】
本発明の1つの実施態様において、2番目の増幅を自動化することが好ましい。
【0102】
本発明の1つの実施態様において、第1および2番目の増幅を自動化することが好ましい。
【0103】
好都合なことに、本明細書中で記載した方法を、他の増幅反応と組み合わせて使用し得る。例として、本明細書中で記載した方法を、相互的転座のような遺伝的異常を検出する、1つまたはそれ以上のPCR反応と組み合わせて使用し得る。
【0104】
さらなる局面において、以下の工程を含む、サンプル中で1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度を判定する方法を提供する:(a)サンプルの複数のアリコートを提供する、ここで各アリコートは、アリコートあたり1ゲノムより少ない量で核酸を含む;(b)第1の増幅反応において、複数のアリコートのそれぞれからの、1つまたはそれ以上の核酸配列を増幅する;(c)2番目の増幅反応において、工程(b)によって調製した複数のアリコートのそれぞれからの、1つまたはそれ以上の核酸配列を増幅する、ここで少なくとも1つの核酸配列はテストマーカーである;および(d)テストマーカーの増幅産物の数と、参照マーカーのものを比較することによって、テストマーカーのコピー数を計算する。
【0105】
さらなる局面において、以下の工程を含む、サンプル中で1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度を判定する方法を提供する:(a)サンプルの複数のアリコートを提供する、ここで各アリコートは、アリコートあたり1ゲノムより少ない量で核酸を含む;(b)第1の増幅反応において、複数のアリコートのそれぞれからの、1つまたはそれ以上の核酸配列を増幅する;(c)2番目の増幅反応において、工程(b)によって調製した複数のアリコートのそれぞれからの、2つまたはそれ以上の核酸配列を増幅する、ここで少なくとも1つの核酸配列はテストマーカーであり、そして少なくとも1つの核酸配列は参照マーカーである;および(d)テストマーカーの増幅産物の数と、参照マーカーのものを比較することによって、テストマーカーのコピー数を計算する。
【0106】
さらなる局面において、以下の工程を含む、サンプル中で1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度を判定する方法を提供する:(a)サンプルの1つまたはそれ以上の(例えば複数の)アリコートを提供する、ここで各アリコートは、アリコートあたり1ゲノムより少ない量で核酸を含む;(b)第1の増幅反応において、各アリコートからの、1つまたはそれ以上の(好ましくは全ての)マーカーを増幅する;(c)第1の増幅反応からの増幅産物をそれぞれ、レプリカサンプルに分配する;(d)2番目の増幅反応において、工程(c)によって調製されたレプリカサンプルにおける各アリコートから1つまたはそれ以上のマーカーを増幅する、ここで少なくとも1つの核酸配列はテストマーカーである;および(e)テストマーカーの増幅産物の数と、参照マーカーのものを比較することによって、テストマーカーのコピー数を計算する。
【0107】
さらなる局面において、以下の工程を含む、サンプル中で1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度を判定する方法を提供する:(a)サンプルの1つまたはそれ以上の(例えば複数の)アリコートを提供する、ここで各アリコートは、アリコートあたり1ゲノムより少ない量で核酸を含む;(b)第1の増幅反応において、各アリコートからの、1つまたはそれ以上の(好ましくは全ての)マーカーを増幅する;(c)第1の増幅反応からの増幅産物をそれぞれ、レプリカサンプルに分配する;(d)2番目の増幅反応において、工程(c)によって調製されたレプリカサンプルにおける、各アリコートから2つまたはそれ以上のマーカーを増幅する、ここで少なくとも1つの核酸配列はテストマーカーであり、そして少なくとも1つの核酸配列は参照マーカーである;および(e)テストマーカーの増幅産物の数と、参照マーカーのものを比較することによって、テストマーカーのコピー数を計算する。
【0108】
プライマー
増幅において使用するプライマーを、増幅する核酸配列(例えば遺伝子座)の隣接領域の配列にハイブリダイズし得るように選択する。プライマーを、増幅する核酸の異なる鎖と、少なくとも実質的な相補性を有するよう選択する。
【0109】
プライマーは、重合のための薬剤の存在下で、伸長産物の合成を開始し得るように十分な長さを有していなければならない。プライマーの長さおよび組成は、例えばアニーリング反応を行う温度、プライマーの濃度、およびプライマーの特定の核酸組成を含む、多くのパラメーターに依存する。典型的には、プライマーは15−30ヌクレオチド、好ましくは18−20bpを含む。本発明のいくつかの実施態様に関して、プライマーが約52−60℃の間のTmを有することが好ましい(計算Tm=2×(A+T)+4×(G+C))に基づく)。好ましくは、そのデザインは、3’末端に少なくとも2つのGまたはC塩基、および5’末端に少なくとも1つを含む。典型的には、4塩基より長い単一塩基の一続きを有するプライマーは使用しない。内側アンプライマーの長さを、約80−150bpの間であるようデザインし、そして外側プライマーの位置はフォワード内側プライマーの約150bpより上流ではない。
【0110】
プライマーの長さは、当業者に公知のものに加えて、プライマー結合部位の複雑性および上記で列挙した因子に多少は依存し得る。
【0111】
典型的には、プライマーは特定のヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズする。本明細書中で使用される場合「特異的にハイブリダイズする」という用語は、ストリンジェントな条件下で、特定のヌクレオチド配列に選択的な核酸の結合、2本鎖形成、またはハイブリダイズを指す。「ストリンジェントな条件」という用語は、プライマーがその標的サブ配列に選択的にハイブリダイズし、そして他の配列により少ない程度ハイブリダイズする、または全くハイブリダイズしない条件を指す。
【0112】
プライマーを、当該分野において周知の方法によって合成し得る。
【0113】
プライマーの選択を、例えば、Repeatmasker(http://www.repeatmasker.org)を用いてゲノム配列(Assembly NCBI 35、http://www.ensembl.org)から反復要素をマスキングした後、Universal Primer Designerを含む、当該分野で公知の様々な方法を用いて行い得る(例えばPCRの従来の使用のためのデザインと同様)。
【0114】
上記で記載したような第1の増幅反応において、典型的には、増幅する各核酸配列に関してフォワードプライマーおよびリバースプライマーを含む、プライマーを使用する。第1の増幅反応において、全てのマーカーのような複数の核酸配列を増幅するように、複数のプライマーペアを単一の多重反応において組み合わせ得る。
【0115】
上記で記載されたような2番目の増幅反応において、セミネステッド増幅反応を、典型的には増幅する特定の核酸配列それぞれに関して行う。使用するプライマーは、フォワード内部プライマーと組み合わせた、第1の増幅反応で使用したような適当なリバースプライマーである。本発明のいくつかの実施態様に関して、使用するプライマーはフォワードプライマーおよびリバース内部プライマーであることが好ましい。本発明のいくつかの実施態様に関して、使用するプライマーが、第1の増幅反応で使用したものと同じまたは実質的に同じであることが好ましい。典型的には、約0.15μMの各プライマーを、第1の増幅反応で使用する。典型的には、約1μMの関連するフォワード内部プライマーおよびリバースプライマーを、2番目の増幅反応に使用する。
【0116】
本発明の1つの実施態様において、単一の反応において、それぞれ特定の染色体再編成に関するいくつかのプライマーペアを使用する。プライマーの各ペアは、異なる長さの増幅産物を生じ、そしてそのために増幅産物を区別し得る。
【0117】
本発明のさらなる実施態様において、標識したプライマーを使用し、ここで各プライマーペアを異なる標識で標識し、そしてそのために増幅産物を区別し得る。
【0118】
従って、好都合なことに、複数の染色体再編成を分析し得る。
【0119】
コピー数の決定
2番目の増幅反応の後、増幅産物を様々な方法で分析して、増幅した配列のコピー数を決定し得る。
【0120】
例として、サンプルの各アリコートにおける増幅産物の存在または欠如を評価するために、電気泳動を用いて増幅産物を分離することによって、増幅産物を分析し得る。
【0121】
さらなる例として、その結果を、融解曲線分析によって評価し得る。
【0122】
その結果を、陽性ウェルの数の視覚的評価によって評価し得る。例として、もし2つの核酸マーカー(AおよびB)を88アリコートの同じセットにおいて評価するなら、そしてもし各マーカーに関して陽性と評価されるアリコートの数がそれぞれ34および56であるなら、2つの配列の平均濃度は、それぞれアリコートあたり0.49および1.0コピーと計算し得る。従って、もし配列Aが、ゲノムあたりNコピー存在することが公知であるなら、配列Bはゲノムあたり2Nコピー存在することを推測し得る。
【0123】
核酸分子がN個のアリコートの中で無作為に分布して、アリコートあたり平均Z分子を与えるなら、ポアソン分布によって、少なくとも1分子の核酸を含むことが予測されるアリコートの数Npは、以下の等式によって与えられる:
Np=N(1−e−Z) (i)
逆に、もし核酸のN個のゲノム以下の(sub−genomic)アリコートのパネルを、所定の配列の存在に関して試験するなら、そしてもしこれらのアリコートのNp個がその配列に関して陽性と評価されるなら(すなわち少なくとも1コピーのその配列を含むなら)、アリコートあたりのその配列の平均分子数は、以下のように計算し得る:
Z=−ln(1−Np/N) (ii)
従って、あらゆる所定の配列に関して陽性と評価されるアリコートの数から、その配列の濃度(アリコートあたりのコピー数で表される)を決定し得る。もし核酸のアリコートの同じセット(または同様のセット)について、2つまたはそれ以上の配列をこの方法で分析するなら、その相対的な濃度、および従ってその相対的な量を計算し得る。
【0124】
変化の同定
本発明のさらなる局面において、以下の工程を含む、核酸のサンプルにおいて1つまたはそれ以上の変化を同定する方法を提供する:(a)本発明の最初の局面の方法によって、核酸のサンプルにおいて1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数を決定する;および(b)徐々により高い分解能で、その方法を反復する。
【0125】
よって、本発明の最初の局面の方法を、徐々により小さい間隔をあけた核酸配列を増幅することによって反復する。典型的には、ゲノム変化の粗い画像を、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)のような、当該分野で既知の方法を用いて得ることができる。そのような方法は、例えば限界点のような、ゲノム変化の付近の特定の染色体における配列のコピー数の推定を提供するために有用であり得る。しかし、関心のあるゲノム変化をさらに規定するために、本発明の方法を、徐々により高い分解能で反復することによって、有利に使用し得る。従って、例えば1回目において、ゲノム変化が起こることが以前に見出された染色体の領域における、約3.8Mbにわたる約0.2−0.5Mbの間隔をあけたマーカーを使用し得る。推定のゲノム変化を約40kb以内にさらに精密にするために、約50kbの間隔のマーカーを使用して、続く回を行い得る。ゲノム変化の位置を、約1−4kbおよび次いで500bp以下に決定するために、またさらなる回を行い得る。そのような高い分解能において、その方法をさらに、転座のセントロメア側の欠失のような、他のゲノム変化を同定するために使用し得る。
【0126】
疾患
疾患細胞において、多くの染色体領域または特定の遺伝子が、変化したコピー数で存在すると同定された。あらゆる特定の核酸配列のコピー数は、典型的には、2倍体の個体においては2であり、各染色体上の、1コピーの核酸配列の存在を反映する。コピー数の変化は、これらの領域によってコードされるタンパク質の異常なレベル、または活性を引き起こし、そして最終的には疾患の表現型を引き起こすことが、広く受け入れられている。
【0127】
1つの局面において、以下の工程を含む、核酸のサンプルにおいて1つまたはそれ以上の変化を同定する方法が提供される:(a)本発明の最初の局面の方法によって、第1のサンプルおよび2番目のサンプル中の、1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度を判定する;(b)各サンプルに関して、徐々により高い分解能でその方法を反復する;および(c)第1および2番目のサンプルにおいて、1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度の、1つまたはそれ以上の差異を同定する。
【0128】
好ましい実施態様において、そのサンプルは、疾患を持つ被験体、または疾患を持たない被験体であるか、またはそれ由来である。特に好ましい実施態様において、疾患の核酸は、癌に罹患した被験体または被験体由来である。よって、その方法を、癌ゲノムおよび正常ゲノムの間の、1つまたはそれ以上の変化を同定するために使用し得る。
【0129】
本発明はまた、核酸のコピー数の変化を検出することに基づく、疾患に罹患した、または罹患したことが疑われる被験体において、疾患を診断する方法も提供する。試験する被験体は、疾患の症状または疾患と関連し得る症状を示し得る。その被験体は、いかなる症状も示さない可能性があるが、その代わり家族歴または例えば本明細書中の下記で記載したような遺伝的試験(例えば遺伝的フィンガープリンティング)によって、疾患にかかりやすい、または素因を有することが疑われ得る。その被験体は、疾患を引き起こすことが公知である、または疑われる、1つまたはそれ以上の因子または状態に接触した被験体であり得る。その被験体はさらに、疾患を発症する過程である、またはその過程であることが疑われる被験体でもあり得る。1つの局面において、以下の工程を含む、疾患に罹患している、または罹患していると疑われる被験体において、疾患を診断する方法を提供する:(a)本発明の最初の局面の方法によって、サンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度を判定する;および(b)1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数を、1つまたはそれ以上の核酸配列の正常な(例えば疾患でない)コピー数と比較する;ここでコピー数の間の差異は、その被験体がその疾患に罹患していることを示す。
【0130】
典型的には、正常なコピー数を、試験するその疾患に罹患していない被験体または複数の被験体からのサンプルを分析することによって決定する。
【0131】
試験する被験体における1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数および正常コピー数の間の差異は、変化が存在すること、およびその被験体がその疾患に罹患していることを示す。
【0132】
共通の疾患を有することが公知である、多くの異なる個体からのサンプルも使用し得る。変化したコピー数を有する核酸配列を同定するために、疾患の個人のそれぞれに関して、多くの異なる核酸配列のコピー数頻度を決定するためのスクリーニングテストを行い得る。例えば腫瘍を有する個人に関して、サンプルを各個人に関して腫瘍領域から取り得、そして変化したコピー数を有するゲノムの領域を同定するためにスクリーニングを行う。そのような情報によって、変化したコピー数を有する核酸配列および特定の疾患の間の関連付けを行い得る。従って、本発明の方法を、特定の疾患と関連している、核酸配列の変化を同定するために使用し得る。
【0133】
従って、さらなる局面において、以下の工程を含む、疾患に罹患している、または罹患していることが疑われる、疾患の素因を有することが公知である(例えば家族歴または遺伝的フィンガープリンティングのような遺伝的試験によって)、疾患を引き起こすことが公知である、または疑われる、1つまたはそれ以上の因子または状態に接触した、または疾患を発症する過程にある、またはその過程にあることが疑われる被験体において、疾患を診断する方法を提供する:(a)疾患の原因である、または疾患に関連していることが公知である、サンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度を判定する;および(b)サンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数を、疾患の原因である、または疾患に関連していることが公知であるサンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度と比較する;ここでコピー数の間の関連は、その被験体がその疾患に罹患していることを示す。
【0134】
1つの実施態様において、その疾患は、腎臓癌のような癌であり得る。
【0135】
本発明はさらに、腫瘍細胞である、または腫瘍細胞由来であるサンプルのような、1つまたはそれ以上のサンプルにおいて、増幅および/または欠失のような、1つまたはそれ以上の変化を検出する方法を提供する。得られる結果を使用して、続くサンプルの性質を決定し得る。サンプル中の変化のパターンを、そのサンプルの性質と関連付けることによって、決定し得る。例えば診療記録と関連した保存サンプル由来のDNAを試験することによって、または新規のサンプルを本明細書中で記載された方法によって試験し、そして被験体をフォローする場合に、そのような関連付けを行い得る。
【0136】
本発明の別の局面は、好ましくは発症の早い段階で、異常が疑われる細胞または組織由来の細胞を分析する方法を提供することである。本明細書中で記載された方法の利点は、分析のために少量のゲノム核酸しか必要としないことである。そのような細胞または組織における、増幅および/または欠失のような変化の早期検出は、遺伝的再編成に合わせて作り得る、早期の治療的介入を可能にする。さらに、そのような早期検出は、細胞または組織の進行を、本発明の方法によって検出される遺伝的再編成と関連付ける手段を提供する。
【0137】
これらの方法を用いて、スクリーニングを、迅速におよび安価に行い得る。従って、その方法は、分子病理学プロファイルの発達に適切であり得、それは医師がより多くの情報に基づいて患者の予後を診断し、そして異なる治療に対する患者の反応をよりよく予測することを可能にして、従って臨床結果を改善する。
【0138】
疾患の症状を有する被験体に関して、本明細書中で記載された方法をまた使用して、その被験体が有する症状と関連している疾患と関連していることが公知であるコピー数の変化を、その被験体が有するかどうかを決定し得る。例えば、腫瘍を有する被験体に関して、医師は腫瘍のサンプルを得る。特定の腫瘍型に関連することが公知である核酸配列にコピー数の変化が存在するかどうかを同定するための、腫瘍サンプルのスクリーニングを、本明細書中で記載された方法を用いて迅速に達成し得る。コピー数の変化に関する特定の情報、および特定の変化に関する、疾患の予後および異なる治療戦略の効果の間の関連についての知識によって、医師は、患者の予後および最も効果的な治療選択肢に関して、情報に基づく決定をし得る。例えば、その方法が、特定の核酸配列が増幅していること、およびその遺伝子座の増幅は、低い回復率と関連していることを示すなら、医師は、攻撃的治療の選択肢の可能性のある有効性、および特に疾患がかなり進行しているなら、そのような治療をただ見合わせるという選択肢に関して、依頼人に助言し得る。他方、高い回復率と関連する遺伝子座でコピー数が変化しているなら、医師は、ただ疾患をモニターして病状が悪化するかどうか見ることから、または疾患が悪化する前に攻撃することを保証するためのより攻撃的な処置まで、様々な範囲の治療選択肢を説明し得る。
【0139】
従って、さらなる局面において、その被験体が罹患していることが疑われる疾患と関連していることが公知である、1つまたはそれ以上の核酸配列において、本発明の最初の局面による方法を用いて、コピー数の変化が存在するかどうかを同定する工程を含む、被験体が、疾患と関連していることが公知である、1つまたはそれ以上のコピー数の変化を有するかどうかを決定するための方法を提供し、ここで被験体におけるコピー数の変化および疾患におけるコピー数の変化の間の関連は、その被験体がその疾患に罹患していることを示す。
【0140】

「腫瘍」または「癌」という用語は、制御不能の増殖、不死、転移可能性、速い成長および増殖速度、およびある特徴的な形態学的特徴のような、癌を引き起こす細胞に典型的な特徴を有する細胞の存在を指す。
【0141】
多くの場合、癌細胞は腫瘍の形式であるが、そのような細胞は単独で動物内に存在し得る、または白血病細胞のような、非腫瘍原性癌細胞であり得る。
【0142】
癌は、黒色腫、乳癌、肺癌、気管支癌、結腸直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳または中枢神経系の癌、末梢神経系の癌、食道癌、子宮頸癌、子宮または子宮内膜癌、口腔または咽頭癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆管癌、小腸または盲腸癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉種、軟骨肉腫等を含むがこれに限らない。
【0143】
腫瘍は、核型が不均一であり得、それぞれ異なる型の遺伝的再編成を有する、様々な細胞の集団を含む。腫瘍細胞は培養するのが困難であり、そして培養細胞が、もとの腫瘍細胞集団を代表するかどうかは明らかでない。本発明は、少量の核酸しか必要としないため、培養の障害を回避する手段を提供し、そして従って腫瘍細胞、および従って腫瘍の不均一性の遺伝的特徴付けを可能にする。
【0144】
多くの腫瘍細胞からの大規模な核酸の抽出も、腫瘍内の一致する変化に関して試験するために使用し得る。
【0145】
本発明のさらなる局面において、被験体において本明細書中で記載されたように、非相互的t(3;5)転座の存在を決定する工程を含む、被験体の癌に対する罹患率を検出する、診断する、または決定する方法も提供し、ここで転座の存在は、その被験体が癌を有する、発症しそうである、またはその素因を有することを示す。好ましくは、その癌は腎細胞癌である。
【0146】
さらなる適用
好都合なことに、本明細書中で記載された方法は、1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度を決定するための、迅速、正確、および安価な方法を提供する。これは、その方法を、多くの疾患の分子分析、および例えば健康を脅かす症候群と関連する染色体の不均衡の評価に理想的にする。
【0147】
予後
本明細書中で記載された方法を用いて、ある疾患の表現型および被験体の予後の間の関連を発達させ得る。例えば、その方法を用いて、異常なコピー数を有する核酸を同定するために、同じみかけの疾患の症状を有する、様々な異なる被験体からの、多数の核酸をスクリーニングし得る。この場合、疾患の組織からサンプルを得る。変化したコピー数を有する核酸および疾患の予後の間に関連をつけるために、試験した個人それぞれの健康歴を維持し得る。この方法において、コピー数の変化および被験体の予後の間を関連付け得る。
【0148】
よって、さらなる局面において、以下の工程を含む、被験体の予後を決定する方法も提供する:(a)本発明の最初の局面による方法を用いる被験体と、同じ見かけの疾患症状を有する、1人またはそれ以上の被験体から、1つまたはそれ以上の核酸のコピー数頻度を決定する;(b)異常なコピー数を有する核酸を同定する;(c)変化したコピー数を有する核酸と、疾患の予後を関連付ける;および(d)被験体において疾患の予後を予測する。
【0149】
最適な治療戦略
薬剤を初めて被験体に投与する前に、本明細書中で記載された方法を日常的に適用し得る。もしその被験体が、特定の薬物の解毒に必要な酵素を発現する遺伝子の両方のコピーを欠くことが見出されたら、一般的に被験体にその薬剤を投与すべきでない、または正常レベルの酵素を有する被験体と比較してより低い投与量でその薬剤を投与すべきである。代替治療が利用可能でないなら、後者の過程が必要であり得る。もしその被験体が、特定の薬物の活性化に必要な酵素を発現する遺伝子のコピーを両方とも欠くことが見出されたなら、その薬剤はその被験体に対して有利な効果を有さず、そして投与すべきでない。遺伝子の1つの野生型コピー、および遺伝子の1つの変異コピーを有し、そして低レベルの酵素を有するリスクのある被験体に、再び代替が利用可能かどうかに依存して、注意した場合にのみ、その酵素によって代謝される薬物を投与すべきである。もしその薬剤が問題の酵素によって解毒されるなら、一般的にその被験体により低投与量の薬剤を投与すべきである。もしその薬剤が酵素によって活性化されるなら、ヘテロ接合体の被験体に、より高い投与量の薬物を投与すべきである。特定の生体内変換遺伝子のさらなるコピーを有し、高いレベルの酵素を有するリスクのある被験体に関して、逆があてはまる。スクリーニングの利点によってなされ得る、治療薬のより合理的な選択は、代謝の低い被験体において、より少ない副作用およびより高い薬剤の有効性を引き起こす。
【0150】
その方法はまた、新規薬剤の臨床試験に使用する被験体の集団をスクリーニングするために有用であり得る。そのスクリーニングは被験体のプールを同定し、そのそれぞれは野生型レベルの、生体内変換酵素の完全な全量を有する。被験体のプールを次いで薬剤の安全性および有効性を決定するために使用する。そのような試験によって有効であることが示された薬剤を、滅菌蒸留水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス液のような、薬剤学的な担体と共に、治療的使用のために処方する。
【0151】
疾患に対する感受性
本明細書中で記載された方法をまた、疾患に罹患しやすいことが公知である個人をスクリーニングするために使用し得る。このシナリオにおいて、例えば、個人は、彼または彼女が特定の疾患に罹患しやすいかどうかを、疾患マーカーの存在を示す試験結果または家族歴から知る。サンプルを、被験体が罹患しやすい疾患が関連している組織からから除去する。単なる例として、もし被験体が皮膚癌の既往歴を有する家族出身であるなら、医師は皮膚の生検を行ってサンプルを得る。次いでその被験体が罹患しやすい特定の疾患と関連する遺伝子座または複数の遺伝子座のコピー数頻度値を、本明細書中で記載された方法を用いて決定し得る。もしその決定が異常なコピー数を示すなら、次いでその被験体は、その被験体が疾患にかかり始める可能性、および異なる治療選択肢に関する賛否について相談し得る。被験体がまだ疾患の症状を示していないこの例において、最も適切な行動は、単に被験体をしっかりモニターすることであり得る。しかし、適切な相談の後に、被験体が、後日の問題を避けるために、積極的な予防措置を取ることを選択し得る。
【0152】
疾患の症状なし、および疾患に対する感受性が未知である
本明細書中で記載された方法はまた、疾患の症状を有さない、または疾患に対する感受性が未知である個人のスクリーニングにも有用であり得る。このカテゴリーの個人は一般的に、疾患の症状を有さず、疾患の家族歴を有さず、そして彼または彼女が疾患に関連するマーカーを有するかどうか知らない。そのような場合には、その方法を、予防的スクリーニングツールとして使用し得る。これに関して、ある疾患に関連していることが公知である、多くの選択された遺伝子座を調査して、異常なコピー数を有する遺伝子座を同定し得る。この場合、サンプルを、試験する疾患によって影響を受ける異なる組織または液体から得る。もし変化したコピー数を有する遺伝子座または複数の遺伝子座を同定したなら、被験体に、疾患が発症する可能性および、利用可能な治療選択肢の範囲について助言する。
【0153】
出生前診断
記載した方法の別の使用法は、出生前診断の領域において、特に胚または胎児においてコピー数の異常を同定する方法としてである。女性が、子供を持つことを人生のより遅くまで待つことは、増加している共通の傾向である。この遅延と関連して、子供が先天性の欠損を持って生まれる危険性が増加する。
【0154】
胚(すなわち受精から発生の8週までの発達中の赤ん坊)または胎児(すなわち発生の9週から出産までの発達中の赤ん坊)細胞から核酸を得る方法は、当該分野で周知である。例は、母体の生検(例えば子宮頸部のサンプリング、羊水穿刺サンプリング;血液サンプリング)、胎児の生検(例えば肝臓生検)、および絨毛膜絨網サンプリング(米国特許第6,331,395号)を含むがこれに限らない。
【0155】
発達中の赤ん坊に危険性を与えない非侵襲的な手順であるので、好ましくは、母体血液からの胎児核酸の分離を、本発明のこの局面によって使用する(Am.J.Hum.Genet.(1998)62(4):768−75)。細胞を含まない胎児核酸を、母体の循環から採取し、そして上記で記載したように分析し得る(Am.J.Obstet.Gynecol.(2002)186:117−20)。典型的には、胎児核酸の相対的な量を増加し、そして従って分析を可能にするために、PCR技術を、これらの方法と組み合わせて使用する。
【0156】
核酸
本明細書中で使用される「核酸」という用語は、1本鎖または2本鎖の形式のいずれかの、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを指す。その用語は、同様の、または改善した結合性質を有する、天然ヌクレオチドの公知のアナログを含む、核酸、すなわちオリゴヌクレオチドを含む。その用語はまた、合成バックボーンを有する核酸様構造も含む。DNAバックボーンアナログは、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホロアミデート、アルキルホスホトリエステル、スルファミン酸、3’−チオアセタール、メチレン(メチルイミノ)、3’−N−カルバメート、モルホリノカルバメート、およびペプチド核酸(PNA)を含む;Oligonucleotides and Analogues,a Practical Approach、F.Eckstein編、IRL Press at Oxford University Press(1991);Antisense Strategies,Annals of the New York Academy of Sciences、第600巻、BasergaおよびDenhardt編(NYAS 1992);Milligan(1993)J.Med.Chem.36:1923−1937;Antisense Research and Applications(1993、CRC Press)を参照のこと。PNAは、N−(2−アミノエチル)グリシンユニットのような、非イオン性バックボーンを含む。ホスホロチオエート結合は、WO97/03211;WO96/39154;Mata(1997)Toxicol.Appl.Pharmacol.144:189−197において記載されている。その用語によって含まれる他の合成バックボーンは、メチルホスホネート結合、または交互のメチルホスホネートおよびホスホジエステル結合(Strauss−Soukup(1997)Biochemistry 36:8692−8698)、およびベンジルホスホネート結合(Samstag(1996)Antisense Nucleic Acid Drug Dev 6:153−156)を含む。
【0157】
その核酸は、ゲノム、合成または組み換え起源のDNAまたはRNA、例えばcDNAであり得る。その核酸は、センスまたはアンチセンス鎖またはその組み合わせのいずれかを示す、2本鎖または1本鎖であり得る。
【0158】
好ましくは、その核酸はDNA、より好ましくはゲノムDNAである。
【0159】
その核酸を、組み換えDNA技術の使用によって調製し得る(例えば組み換えDNA)。
【0160】
本発明の1つの局面において、非相互的t(3;5)転座をコードする単離された核酸を提供し、ここで座標105386443bpまでの染色体5q21.3が、座標74111893bpからの染色体3p13に融合しており、そしてここで接合部のアデニン残基は、どちらかの染色体由来である。
【0161】
好ましくは、染色体5q21.3は、配列TATACATACATACGGATATATGTATAAAATCまたはその変異体、ホモログ派生物(deviate)、または断片を含む。
【0162】
好ましくは、染色体3q13は、配列TAGGGAGTGAAGTAGTGGCCAAGAAAACATGCCAGまたはその変異体、ホモログ派生物、または断片を含む。
【0163】
好ましくは、非相互的t(3;5)転座は、配列TATACATACATACGGATATATGTATAAAATCATAGGGAGTGAAGTAGTGGCCAAGAAAACATGCCAGまたはその変異体、ホモログ派生物、または断片を含む。
【0164】
構築物
本発明の方法によって同定された変化に対応する核酸を、構築物にクローニングおよびライゲーションし得る。
【0165】
「結合物」、「カセット」、および「ハイブリッド」のような用語と同義語である「構築物」という用語は、プロモーターに直接または間接的に結合したヌクレオチド配列を含む。
【0166】
その構築物は、マーカーを含むまたは発現し得、それは細菌、植物、または哺乳類細胞のような細胞において、ヌクレオチド配列構築物の選択を可能にする。使用し得る様々なマーカー、例えばマンノース−6−リン酸イソメラーゼをコードするもの(特に植物のために)、または抗生物質耐性、例えばG418、ハイグロマイシン、ブレオマイシン、カナマイシンおよびゲンタマイシンに対する耐性を提供するマーカーが存在する。
【0167】
ベクター
本発明の方法によって同定された変化に対応する核酸を、ベクターにクローニングおよびライゲーションし得る。
【0168】
「ベクター」という用語は、発現ベクター、形質転換ベクターおよびシャトルベクターを含む。
【0169】
「形質転換ベクター」という用語は、1つの存在から、その種であり得る、または異なる種であり得る、別の存在へ移動し得る構築物を意味する。その構築物が1つの種から別の種へ、例えばE.coliプラスミドからBacillus属のようなバクテリアへ移動し得るなら、その形質転換ベクターは「シャトルベクター」と呼ばれることがある。それはE.coliからアグロバクテリウムへ、植物へ移動し得る構築物でもあり得る。
【0170】
そのベクターを、下記で記載するような適当な宿主細胞へ形質転換して、ポリペプチドの発現を提供し得る。
【0171】
そのベクターは、例えば、複製の起点、任意で当該ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーター、および任意でプロモーターの制御因子と共に提供された、プラスミド、ウイルスまたはファージベクターであり得る。
【0172】
そのベクターは、1つまたはそれ以上の選択可能なマーカーヌクレオチド配列を含み得る。産業的微生物の最も適当な選択システムは、宿主生物の変異を必要としない選択マーカーのグループによって形成されるものである。真菌選択マーカーの例は、アセトアミダーゼ(amdS)、ATPシンセターゼ、サブユニット9(oliC)、オロチジン−5’−リン酸脱炭酸酵素(pvrA)、フレオマイシンおよびベノミル耐性(benA)のヌクレオチド配列である。非真菌選択マーカーの例は、細菌G418耐性ヌクレオチド配列(これは酵母においても使用し得るが、糸状菌においては使用しない)、アンピシリン耐性ヌクレオチド配列(E.coli)、ネオマイシン耐性ヌクレオチド配列(Bacillus)およびβ−グルクロニダーゼ(GUS)をコードするE.coli uidAヌクレオチド配列である。
【0173】
ベクターをインビトロで、例えばRNAの産生のために使用し得る、または宿主細胞をトランスフェクトまたは形質転換するために使用し得る。
【0174】
従って、ポリヌクレオチドを組み換えベクター(典型的には複製可能なベクター)、例えばクローニングまたは発現ベクターに組み込み得る。そのベクターを使用して、適合性の宿主細胞中で核酸を複製し得る。
【0175】
変異体/ホモログ/誘導体/断片
本発明は、その変異体、ホモログ、誘導体および断片の使用を含む。
【0176】
「変異体」という用語は、野生型配列と異なる、天然に存在するポリペプチドまたはヌクレオチド配列を意味するよう使用する。
【0177】
「断片」という用語は、野生型配列の部分を含む、ポリペプチドまたはヌクレオチド配列を示す。それは1つまたはそれ以上の大きな連続的な配列の部分、または複数の小さな部分を含み得る。その配列はまた、配列の他の要素を含み得る、例えばそれは別のタンパク質との融合タンパク質であり得る。好ましくは、その配列は少なくとも50%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の野生型配列を含む。
【0178】
好ましくは、その断片は50%、より好ましくは60%、より好ましくは70%、より好ましくは80%、より好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、より好ましくは96%、より好ましくは97%、より好ましくは98%、または最も好ましくは99%の、野生型ポリペプチドまたはヌクレオチド配列の活性を保持する。
【0179】
その断片は、機能的断片であり得る。
【0180】
分子の「機能的断片」によって、そのままの分子と実質的に同じ生物学的活性を保持するまたは有する断片と理解される。全ての場合において、分子の機能的断片は、そのままの分子の生物学的活性の、少なくとも10%、および少なくとも約25%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%を保持する。
【0181】
「ホモログ」という用語は、問題のアミノ酸配列および問題のヌクレオチド配列とある相同性を有する存在を意味する。ここで、「相同性」という用語は、「同一性」と同等と考え得る。
【0182】
本関係において、相同的な配列は、問題の配列と少なくとも75、85、または90%同一、好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であり得るアミノ酸配列を含むよう解釈される。相同性はまた類似性(すなわち、類似の化学的性質/機能を有するアミノ酸残基)の点から考え得るが、本発明の関係においては、配列同一性の点から相同性を表すことが好ましい。
【0183】
本関係において、相同的な配列は、問題の配列と少なくとも75、85、または90%同一、好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であり得るヌクレオチド配列を含むよう解釈される。相同性はまた類似性(すなわち、類似の化学的性質/機能を有するアミノ酸残基)の点から考え得るが、本発明の関係においては、配列同一性の点から相同性を表すことが好ましい。
【0184】
相同性の比較を、目によって、またはより通常には、容易に入手可能な配列比較プログラムの助けにより行い得る。これらの市販で入手可能なコンピュータープログラムは、2つまたはそれ以上の配列間の相同性%を計算し得る。
【0185】
連続的な配列で相同性%を計算し得る、すなわち、1つの配列を他の配列と整列させ、そして1つの配列における各アミノ酸を、他の配列の対応するアミノ酸と、1度に1残基ずつ、直接比較する。これは「ギャップなしの」アラインメントと呼ばれる。典型的には、そのようなギャップなしのアラインメントを、比較的短い数の残基に対してのみ行う。
【0186】
これは非常に単純および一貫した方法であるが、例えば他は同一の配列のペアにおいて、1つの挿入または欠失が続くアミノ酸残基をアラインメントからはずし、従って全体のアラインメントを行ったときに相同性%が大きく減少する可能性があることを考慮できない。従って、ほとんどの配列比較法は、全体の相同性スコアを過度に不利にすることなく、可能性のある挿入および欠失を考慮する、最適なアラインメントを生ずるようデザインされる。これは、局所的な相同性を最大にしようとするために、配列アラインメントに「ギャップ」を挿入することによって達成される。
【0187】
しかし、これらのより複雑な方法は、アラインメントに生じる各ギャップに「ギャップペナルティー」を与え、同じ数の同一アミノ酸に関しては、可能な限り少ないギャップを有する配列アラインメント−2つの比較配列間のより高い関連性を反映する−が、多くのギャップを有するものよりも高いスコアを達成する。「アフィンギャップコスト」が、典型的には使用され、それはギャップの存在に関して比較的高いコストを課し、そしてギャップ内の続く残基それぞれに関してはより少ないペナルティーを課す。これが、最もよく使用されるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティーは、もちろんより少ないギャップを有する最適化されたアラインメントを生じる。ほとんどのアラインメントプログラムは、ギャップペナルティーを修飾することが可能である。しかし、配列比較のためにそのようなソフトウェアを使用する場合には、デフォルト値を使用することが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用する場合、アミノ酸配列のデフォルトギャップペナルティーは、ギャップに関しては−12、そして各伸長部分に関して−4である。
【0188】
従って、最大相同性%の計算は、まずギャップペナルティーを考慮した最適なアラインメントの産生を必要とする。そのようなアラインメントを実施するための適当なコンピュータープログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージである(University of Wisconsin、U.S.A.;Devereuxら、1984、Nucleic Acids Research 12:387)。配列比較を行い得る他のソフトウェアの例は、BLASTパッケージ(Ausubelら、1999同書−第18章を参照のこと)、FASTA(Atschulら、1990、J.Mol.Biol.403−410)、比較ツールのGENEWORKSソフトウェアおよびCLUSTALを含むがこれに限らない。BLASTおよびFASTAはどちらも、オフラインおよびオンライン探索に利用可能である(Ausubelら、1999同書、7−58から7−60頁を参照のこと)。しかし、いくつかの適用に関しては、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。BLAST2 Sequencesと呼ばれる新しいツールも、タンパク質およびヌクレオチド配列を比較するために利用可能である(FEMS Microbiol Lett 1999 174(2):247−50;FEMS Microbiol Lett 1999 177(1):187−8を参照のこと)。
【0189】
最終的な相同性%を同一性の点から判定し得るが、アラインメント手順そのものは、典型的には全か無かのペア比較に基づくものではない。その代わり、一般的には一定の割合の類似性スコアマトリックスを使用し、それは化学的類似性または進化的距離に基づいて対になった比較それぞれにスコアを割り当てる。よく使用されるそのようなマトリックスの例は、BLOSUM62マトリックス−BLASTソフトウェアプログラムのデフォルトマトリックスである。GCG Wisconsinプログラムは、一般的に公開されたデフォルト値またはもし供給されるならカスタムシンボル比較表のいずれかを使用する(さらなる詳細に関してはユーザーマニュアルを参照のこと)。いくつかの適用に関しては、GCGパッケージのために公開デフォルト値を、または他のソフトウェアの場合には、BLOSUM62のようなデフォルトマトリックスを使用することが好ましい。
【0190】
ソフトウェアが最適なアラインメントを産生したら、相同性%、好ましくは配列同一性%を計算することが可能である。そのソフトウェアは、典型的には、配列比較の一部としてこれを行い、そして数字の結果を生じる。
【0191】
配列同一性を決定する場合にギャップペナルティーを使用するなら、好ましくは以下のパラメーターを使用する:
【0192】
【化1】

ポリペプチド配列の比較に関しては、以下の設定を使用し得る:3.0のギャップ生成ペナルティーおよび0.1のギャップ延長ペナルティー。適切に、アミノ酸配列に関する同一性の程度を、少なくとも5個の連続するアミノ酸に対して決定する、少なくとも10個の連続するアミノ酸、少なくとも15個の連続するアミノ酸、少なくとも20個の連続するアミノ酸、少なくとも30個の連続するアミノ酸、少なくとも40個の連続するアミノ酸、少なくとも50個の連続するアミノ酸、または少なくとも60個の連続するアミノ酸に対して決定する。
【0193】
その配列はまた、アミノ酸残基の欠失、挿入または置換を有し得、それはサイレントな変化を引き起こし、そして機能的に等価の物質を生ずる。その物質の2次結合活性が保持される限り、残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性および/または両親媒性の性質における類似性に基づいて、計画的にアミノ酸置換をし得る。例えば、陰性に荷電したアミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む;陽性に荷電したアミノ酸は、リシンおよびアルギニンを含む;そして同様の親水性値を有する、無電荷の極性頭部グループを有するアミノ酸は、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、およびチロシンを含む。
【0194】
例えば、以下の表によって、保存的置換をし得る。2番目の列の同じブロックにある、および好ましくは3番目の列の同じ行にあるアミノ酸は、相互に置換し得る:
【0195】
【化2】

本発明はまた、相同的置換(置換(substitution)および置換(replacement)はどちらも、本明細書中で、存在するアミノ酸残基の、代わりの残基との交換を意味して使用される)を含み、すなわち塩基性と塩基性、酸性と酸性、極性と極性等のような、似たものと似たものの置換が起こり得る。すなわち1つのクラスの残基から別のクラスへの、またはオルニチン(下でZと呼ばれる)、ジアミノ酪酸オルニチン(下でBと呼ばれる)、ノルロイシンオルニチン(下でOと呼ばれる)、ピリジルアラニン、チエニルアラニン、ナフチルアラニンおよびフェニルグリシンのような、非天然アミノ酸の含有を代わりに含む、非相同性置換も起こり得る。
【0196】
アルファおよびアルファ−二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸、トリフルオロチロシン、p−Cl−フェニルアラニン、p−Br−フェニルアラニン、p−I−フェニルアラニンのような、天然アミノ酸のハロゲン化物誘導体、L−アリル−グリシン、β−アラニン、L−α−アミノ酪酸、L−γ−アミノ酪酸、L−α−アミノイソ酪酸、L−ε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、L−メチオニンスルホン#*、L−ノルロイシン、L−ノルバリン、p−ニトロ−L−フェニルアラニン、L−ヒドロキシプロリン、L−チオプロリン、4−メチル−Phe、ペンタメチル−Pheのようなフェニルアラニン(Phe)のメチル誘導体、L−Phe(4−アミノ)、L−Tyr(メチル)、L−Phe(4−イソプロピル)、L−Tic(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸)、L−ジアミノプロピオン酸およびL−Phe(4−ベンジル)を含む非天然アミノ酸によっても置換し得る。の表示は、上記の議論(相同的または非相同的置換に関連する)の目的のために使用して誘導体の疎水性の性質を示し、一方は誘導体の親水性の性質を示すために使用し、#*は両親媒性の特徴を示す。
【0197】
変異アミノ酸配列は、グリシンまたはβ−アラニン残基のようなアミノ酸スペーサーに加えて、メチル、エチル、またはプロピル基のようなアルキル基を含む、その配列のあらゆる2つのアミノ酸残基の間に挿入し得る、適当なスペーサーグループを含み得る。変異のさらなる形式は、当業者によってよく理解される、ペプトイド形式の1つまたはそれ以上のアミノ酸残基の存在を含む。疑いを避けるために、「ペプトイド形式」は、α−炭素置換基が、α炭素ではなく残基の窒素原子にある変異アミノ酸残基を指して使用される。ペプトイド形式のペプチドを調製する手順は、当該分野で公知である、例えばSimon RJら、PNAS(1992)89(20)、9367−9371およびHorwell DC、Trends Biotechnol.(1995)13(4)、132−134。
【0198】
本発明で使用するためのヌクレオチド配列は、それらの中に合成または修飾ヌクレオチドを含み得る。オリゴヌクレオチドに対する多くの異なる型の修飾が、当該分野で公知である。これらは、メチルホスホネートおよびホスホロチオエートバックボーンおよび/または分子の3’および/または5’末端におけるアクリジンまたはポリリシン鎖の付加を含む。本発明の目的のために、そのヌクレオチド配列を、当該分野で利用可能なあらゆる方法によって修飾し得ることが理解される。そのような修飾を、本発明で有用なヌクレオチド配列のインビボ活性または寿命を増強するために行い得る。
【0199】
キット
本発明の方法で使用するための材料は、理想的にはキットの調製に適当である。
【0200】
そのようなキットは、本明細書中で記載した、本発明の方法で利用する1つまたはそれ以上の様々な試薬(典型的には濃縮した形式で)をそれぞれ含む容器を含み得、例えば緩衝液および適当なヌクレオチド3リン酸(例えばdATP、dCTP、dGTP、およびdTTP;またはrATP、rCTP、rGTP、およびUTP)を含み、本発明において使用するためのDNAポリメラーゼおよび1つまたはそれ以上のプライマーも含み得る。
【0201】
容器中のオリゴヌクレオチドは、あらゆる形式、例えば凍結乾燥、または溶液中(例えば蒸留水または緩衝化溶液)等であり得る。同じ増幅反応で使用するために用意したオリゴヌクレオチドは、単一の容器中で組み合わせ得る、または別々の容器中であり得る。
【0202】
そのキットは、任意でさらにコントロール核酸を含む。
【0203】
典型的には説明書のセットも含まれる。
【0204】
さらなる局面
さらなる局面において、以下の工程を含む、サンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度を判定する方法が提供される:(a)サンプルの1つまたはそれ以上のアリコートを提供する、ここで各アリコートは、アリコートあたり1ゲノムより少ない量で核酸を含む;(b)第1の増幅反応において、アリコート中の1つまたはそれ以上の核酸配列を増幅する;(c)2番目の増幅反応において、工程(b)によって調製したアリコートから、2つまたはそれ以上の核酸配列を増幅する、ここで少なくとも1つの核酸配列は、テストマーカーであり、そして少なくとも1つの核酸配列は参照マーカーである;および(d)テストマーカーの増幅産物の数と、参照マーカーのものを比較することによって、テストマーカーのコピー数を計算する。
【0205】
さらなる局面において、以下の工程を含む、サンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度を判定する方法が提供される:(a)サンプルの1つまたはそれ以上のアリコートを提供する、ここで各アリコートは、アリコートあたり1ゲノムより少ない量で核酸を含む;(b)第1の増幅反応において、各アリコート中のテストマーカーを増幅する;(c)第1の増幅反応からの増幅産物のそれぞれを、少なくとも2つのレプリカアリコートに分ける;(d)2番目の増幅反応において、工程(c)によって調製した、少なくとも1つのレプリカアリコート中のテストマーカーを増幅する;および(e)テストマーカーの2番目の増幅反応からの増幅産物の数と、参照マーカーのものを比較することによって、コピー数を計算する。
【0206】
さらなる局面において、以下の工程を含む、サンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度を判定する方法が提供される:(a)サンプルの1つまたはそれ以上のアリコートを提供する、ここで各アリコートは、アリコートあたり1ゲノムより少ない量で核酸を含む;(b)第1の増幅反応において、各アリコートからテストマーカーおよび参照マーカーを増幅する;(c)第1の増幅反応からの増幅産物をそれぞれ、少なくとも2つのレプリカアリコートに分ける;(d)2番目の増幅反応において、第1のレプリカアリコートからのテストマーカーおよび工程(c)によって調製された、2番目のレプリカアリコートからの参照マーカーを増幅する;および(e)テストマーカーおよび参照マーカーの増幅産物の数を比較することによって、コピー数を計算する。
【0207】
さらなる局面において、以下の工程を含む、サンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度を判定する方法が提供される:(a)サンプルの1つまたはそれ以上のアリコートを提供する、ここで各アリコートは、アリコートあたり1ゲノムより少ない量で核酸を含む;(b)第1の増幅反応において、各アリコートから1つまたはそれ以上の核酸配列を増幅する、ここで少なくとも1つの核酸配列はテストマーカーであり、そして少なくとも1つの核酸配列は参照マーカーである;(c)第1の増幅反応からの増幅産物をそれぞれ、少なくとも2つのレプリカアリコートに分ける;(d)2番目の増幅反応において、第1のレプリカアリコートからのテストマーカーおよび工程(c)において調製された、2番目のレプリカアリコートからの参照マーカーを増幅する;および(e)テストマーカーの増幅産物の数と、参照マーカーのものを比較することによって、テストマーカーのコピー数を計算する。
【0208】
一般的な組み換えDNA法の技術
本発明は、他に示さなければ、分子生物学、微生物学、および組み換えDNA技術の従来の技術を採用し、それは当業者の能力の範囲内である。そのような技術は、文献において説明される。例えば、J.Sambrook、E.F.Fritsch、およびT.Maniatis、1989、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、1−3巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.ら(1995および定期的な増補;Current Protocols in Molecular Biology、第9、13、および16章、John Wiley & Sons、New York、N.Y.);B.Roe、J.Crabtree、およびA.Kahn、1996、DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques、John Wiley & Sons;M.J.Gait(編)、1984、Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach、Irl Press;およびD.M.J.LilleyおよびJ.E.Dahlberg、1992、Methods of Enzymology: DNA Structure Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA、Methods in Enzymology、Academic Pressを参照のこと。これらの一般的なテキストはそれぞれ、本明細書中で参考文献に組み込まれる。
【0209】
本発明を今、実施例によってさらに説明し、それは本発明の実施において当業者を助けるために役立つことを意味し、そしていかなる方法においても、本発明の範囲を制限することを意図しない。さらに、上で詳細に描写したような、および下記の請求部分において請求されるような、様々な本発明の実施態様および局面のそれぞれは、以下の実施例において実験的な支持を見出す。
【実施例】
【0210】
実施例1
材料および方法
分子コピー数算出(MCC)
SK−RC−9およびSK−RC−12細胞系統20を、DMEMプラス10%の胎児ウシ血清中で培養した。SK−RC−9およびSK−RC−12細胞からのゲノムDNAを、Qiagen DNeasy Tissueキット(Qiagen Ltd.UK)を用いて調製した。DNAを、蒸留水で約10ゲノム/μl(約30pg/μl)に希釈し、そしてアリコートにおいて−70℃で保存した。
【0211】
概略において、MCCにおいて、複数の配列に関するゲノムサンプルのアッセイを、図1で図式的に示すように、2段階PCR増幅を用いて行う。3つのPCRプライマー(フォワードプライマーおよびリバースプライマー、およびネステッドフォワード内部プライマー)を、アッセイする各遺伝子座(すなわちゲノムマーカー)に関して使用する。最初の段階において、複数のPCRプライマーペア(フォワードプライマーおよびリバースプライマー)を、単一の多重反応において組み合わせる。この反応の産物を、2番目の段階のPCR反応の鋳型として使用し、それはそれぞれ単一の配列に関するフォワード内部プライマーおよびリバースプライマーを使用する。Repeatmasker(http://www.repeatmasker.org)を用いて、ゲノム配列から反復要素をマスキングした後(Assembly NCBI 35、http://www.ensembl.org)、プライマーの選択を、単純な基準を用いて行った(従来のPCRの使用のためのデザインと類似している)。典型的には、プライマーの長さは18−20bpであり、52−60℃の間のTmを有する(Tm=2×(A+T)+4×(G+C)の計算に基づく)。デザインは、3’末端において少なくとも2つ、そして5’末端において少なくとも1つのGまたはC塩基を必要とする。4塩基より長いいかなる単一の塩基の一続きも許されない。内部アンプライマーの長さが80−150bpの間であり、そして外部プライマーの位置がフォワード内部プライマーの上流150bp以下であるようにデザインする。
【0212】
DNA濃度は、MCC分析において重要であるが、アリコートあたり〜02−06一倍体ゲノムの平均DNA含量で正確さを得るので、非常に正確である必要はない。ゲノムDNA調製物の開始濃度を、紫外線分光測定を用いて決定し、そしてこれに基づいて、サンプルあたり0.25および8ゲノムの間のDNAを与えることが予測される、一連の希釈(簡便には6)を作成した。1倍体ゲノムあたり1コピー存在すると考えられるDNA部分に対応する、4つのマーカーそれぞれに関して、各希釈の16個のアリコートをアッセイした(上記で記載したように、96穴プレートでMCCを用いて)。陽性と評価された(4つのマーカー全てにわたって平均した)アリコート(ウェル)の割合を使用して、各希釈における実際のDNA濃度を計算した。これらのデータを、今度はMCC分析のために必要な希釈の正確な程度を決定するために使用した。有効なMCCの濃度が決定された場合、そのDNA希釈を全てのMCC工程に関して使用し得る。DNAの新規調製物はそれぞれ、独立した用量設定を必要とする。
【0213】
MCCに関して、アッセイする全ての配列に関するフォワードプライマーおよびリバースPCRプライマー(0.15μMの各オリゴ)、1×Gold PCR緩衝液(Perkin−Elmer)、2mMのMgCl、200μMの各dNTP、および0.1u/μlのTaq Gold DNAポリメラーゼ(Perkin−Elmer)および約0.03ゲノム/μl(0.09pg/μl)のゲノムDNAを含む、マスターミックスを調製した。10μlのこのミックスを、96穴プレートの88個のウェルそれぞれに分配し、そして残りの8個のウェル(ネガティブコントロール)に10μlの、似ているがDNAを欠くミックスを入れた。全てのサンプルを、20μlの鉱油で覆った。サーモサイクリングを、93℃で9分間のホットスタート、続いて94℃で20秒間、52℃で30秒間、および72℃で1分間の25サイクルで行った。各PCR反応を、水で500μlに希釈し、そして5μlのサンプルを、2番目の段階の(マーカー特異的)セミネステッドPCRのそれぞれにおいて鋳型として使用した(1.5mMのMgCl、1μMの関連するフォワード内部プライマーおよびリバースプライマー、他の濃度は前と同様、93℃で9分間、続いて94℃で20秒間、52℃で30秒間、そして72℃で1分間の33サイクルのサーモサイクリング)。セミネステッドPCRの後、8μlの2×添加緩衝液(15%w/v Ficoll 400、0.1mg/mlのブロモフェノールブルー、4×Sybr Green、1×TBE)を各ウェルに加え、そして増幅産物を、成形済み108ウェル水平6%ポリアクリルアミドゲル(MIRAGEゲル;Genetix Ltd.、UK)において10V/cmで10分間電気泳動することによって分析し、各サンプルにおけるPCR産物の存在または欠如を評価した。後者の実験において、結果を、製造者のSDSソフトウェアによるABI7900HTを用いて、融解曲線分析によって評価した。
【0214】
これらの場合において、第2段階のPCRのPCR混合物を、4mMのMgClおよび0.5×SyBr GreenI(Cambrex、UK)を含むよう修飾した。全ての第2段階PCR反応を、複数の384穴マイクロタイタープレート(各プレートは、4つのマーカーそれぞれに関して96個の反応を含む)において自動的に設定した。(注:2番目の、セミネステッドPCR段階を、自動化システムではなく、移動のためにマルチチャンネルピペットを用いて、2番目の96穴プレートにおいて行い得る。)
MCCデータの統計学的分析
DNA分子が、一連のアリコートの中で無作為に分布しているなら、あらゆる所定の配列に関して陽性と評価されたアリコートの数から、その配列の濃度(アリコートあたりのコピー数で表される)を、ポアソン方程式から決定し得る(補足の情報を参照のこと)。ゲノムDNAのアリコートの同じセットで、この方法で2つまたはそれ以上の配列を分析するなら、その相対的濃度、および従ってゲノムDNAにおけるその相対的な量を計算し得る。
【0215】
例えば、もし2つのDNAマーカー(AおよびB)を、88個のアリコートの同じセットで評価するなら、そしてもし各マーカーに関して陽性と評価されたアリコートの数がそれぞれ34および56であるなら、2つの配列の平均濃度を、それぞれアリコートあたり0.49および1.0コピーと計算し得る(方程式iiより、補足情報パートAオンライン)。従って、もし配列Aが、ゲノムあたりnコピー存在することが公知であるなら、配列Bは、ゲノムあたり2nコピー存在することを推測し得る。
【0216】
蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)
FISH分析を、製造会社の指示によって、標準的なプロトコールに従って、染色体全体のペイント(Vysis)またはDIG検出のために、DIG−nick−translationおよび蛍光抗体エンハンサーキット(Roche Diagnostics Ltd、UK)によって蛍光にした、BAC DNA(Invitrogen Ltd.からのBACクローン)を用いて行った。SK−RC−9のこの研究において使用したBACクローンは、第3染色体短腕のRP11−24E1、RP11−781E19、RP11−413E6、および第5染色体長腕のCTD−2193G5、CTD−2197I11であった。SK−RC−12のこの研究において使用したBACクローンは、RP11−328N12、RP11−24E1、RP11−413E6、RP11−528E14、RP11−424C9であった。BACクローンの位置は、Ensembl HumanGenome Server、Assembly NCBI35由来である。
【0217】
フィルターハイブリダイゼーション分析
ゲノムDNAを制限酵素によって完全に消化し、0.8%アガロースゲルで分画し、そしてHybondN(Amersham)膜に移した。サザンフィルターハイブリダイゼーションを、プラスミドベクター24から単離され、記載されたような無作為オリゴヌクレオチドプライミング反応によって放射性標識された断片を用いて行った25
【0218】
SK−RC−9DNAにおける5qおよび3pの分析のためのゲノムプローブを、PCRによってヒトDNAから増幅し、そしてTOPOクローニングシステム(Invitrogen)を用いて産物をクローニングし、そして配列を検証した。第3染色体プローブ3pAのプライマー配列は、AAGCAGGTTAAGGGAGAAGATGAC(ゲノム位置74112725から74112748bp)およびCTCTGAACTCTCTTATTTAAAG(ゲノム位置74113146から74113167bp)であり、第3染色体プローブ3pBのプライマー配列は、CCCATTGCTCCCCAGCC(ゲノム位置74114114から74114137bp)およびGCTGTTGGAGGATGAGAGG(ゲノム位置74114239から74114257bp)、および染色体5qプローブのプライマー配列は、CTGTTCATTCCTTCAACTTCCTA(ゲノム位置105386013から105386035bp)およびGCTGATTTTATACATATATCTGTATG(ゲノム位置105386412から105386437bp)であった。
【0219】
SK−RC12DNAのフィルターハイブリダイゼーションのための第3染色体プローブを、プライマーGAATTCAGCTATTCAACGC(ゲノム位置81.938.151)およびGGAAGTGCTAAACACAATGG(ゲノム位置81.938.388)を用いてゲノムPCR産物をクローニングすることによって作成した。
【0220】
インバースPCRクローニング
インバースPCRクローニングを、記載されたように行った21。SK−RC−9DNA(5μg)を、100ユニットのXbaI(New England Biolabs)で、37℃で一晩消化した。消化したDNAを、フェノールで抽出し、そしてエタノール沈殿で回収した。消化したDNAを、600μlの容量で、16℃で16時間、3200ユニットのT4DNAリガーゼ(New England Biolabs)でライゲーションすることによって環状化した。ライゲーションしたDNAを、エタノールで沈殿し、そして25℃の40μlのTris−HCl pH7.4、1mMのEDTAに溶解した。5μl(〜0.6μgDNA鋳型)を、500μMの各dNTP、1μMのフォワードプライマーおよびリバースプライマー、1×緩衝液(Expand Long Template Buffer2、Roche)および3.75uのExpand Long Template酵素(Roche)を含む、50μlのPCR反応で使用した。PCR増幅条件は、94℃で2分間、続いて94℃で15秒間、60℃で30秒間、68℃で15分間の35サイクル、そして68℃で30分間の最後の伸長工程であった。PCR産物を、1%アガロースゲルで分離し、QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen)を用いて精製し、そしてTOPOクローニングベクター(Invitrogen)へクローニングした。転座接合部のインバースPCRのプライマー配列は、CTTCCATACCACTTATGGTGTCTAリバース(染色体3pゲノム位置74112296から74112319bp)およびAATGCAGACCCTCAAACTATACCフォワード(染色体3pゲノム位置74112472から74112494bp)であった。
【0221】
SK−RC−12における第3染色体の欠失融合領域のPCR増幅のためのプライマー配列は、5’−AATGTCATGCAGCATATGAC(ゲノム位置81.648.380)およびTGATCTTGATTACATAGCATT(ゲノム位置81.937.983)であった。
【0222】
実施例2
分子コピー数算出(MCC)
正常細胞は、常染色体遺伝子に関して二倍体であるが、癌細胞は、染色体の転座、欠失、増幅、または反転を有し得る。もしこれらの変化が、二倍体状態からのコピー数の変化を含むなら、DNA反復の頻度を判定することによって、これを決定することが可能である。MCC法は、限界DNA希釈(事実上単一のDNA分子)においてゲノムマーカーのPCR増幅が起こる頻度を分析することによって、これを達成する。複数のPCR反応を、96穴形式で行い、そして相対的なコピー数を、PCR産物を有するウェルの数に依存して、隣接したマーカーに関して決定する。
【0223】
MCC法の本質を、不均衡な転座の見本と共に、図1に示す。腎細胞癌は、多くの場合、染色体3および5(p;q)の間に、非相互的転座を有し4、5、17、18、コピー数の不均衡を引き起こす。これを図1Cで示し、ここで転座は黒い染色体の遠位部分に関して1nのコピー数、および転座の近位で2nを生じる。ゲノムDNAは、HAPPYマッピング19に関して記載されたように高度に希釈され、そして1つの一倍体ゲノムより少ないDNAを含むアリコートを、96穴マイクロタイタープレートの88個のウェルに分配し、8個のウェルはネガティブPCRコントロールのために残しておく。PCR分析の最初の回は、単一の96穴プレート(図1D)の各ウェルに、全てのプールした外側プライマーを有する各アリコートの多重増幅工程であり、あらゆる標的配列の全てのコピーは、ある程度増幅される。2回目のPCRは、鋳型として多重プレートから新しいレプリカプレートに移したPCR産物を使用する、個々のマーカーそれぞれに関するセミネステッドPCR工程(すなわち多重ではない)である(図1E、F)。これらの2回目のPCR産物を、ポリアクリルアミドゲルにおいて分離し(図1G、H)、そして評価する。あらゆる特定のマーカーに関して陽性であるアリコートの割合は、ゲノムにおけるそのマーカーの相対的コピー数を反映する。ここで示した実験において、陽性PCR反応の数を、手作業で算出した。簡便さのために、様々な工程を、PCRおよびセミネステッドPCRのマイクロタイタープレートの間、および2番目のマイクロタイタープレートからゲルへサンプルを移動するための、自動化移動システムを採用して行う。もし自動化が利用可能でなければ、マルチチャンネルピペットを用いて、これを手作業で容易に行い得る。
【0224】
腎細胞癌に適用されたMCCにおける、PCR産物のゲル視覚化の例を、非相互的限界点の遠位または近位それぞれのマーカーに関して、図1GおよびHにおいて示す。前者において、24個のウェルがPCR産物を示し、一方後者において、46個のウェルが産物を示し、マーカー間の約2倍のコピー数の差異を示す。(統計学的分析の詳細を、補足情報において見出し得る。)染色体領域の最初のスキャンを行う場合、広い間隔のマーカーを使用し得、そしてそれらの間の距離を、必要に応じて変化させ得る。例えば、もし細胞遺伝学的データが利用可能でなければ(小さい生検サンプルから得られたDNAの場合にそうであり得るように)、より詳細な研究のために1つの領域に焦点を合わせる前に、染色体全体をスキャンすることが有利であり得る。約2Mbの間隔の約70個のマーカーが、第3染色体全体に関してこの情報を与える。
【0225】
実施例3
腎臓癌における非相互的転座の同定およびクローニング
MCC法の開発の背後にある動機の1つは、そのクローニングの前置きとして、腎細胞癌における再発する非相互的染色体転座t(3;5)(p;q)の限界点の位置を、正確に特定することであった。これらの重要な染色体転座は、細胞遺伝学によって徹底的に研究され、そして3つの主な限界点領域が、第3染色体の短腕について記載された。非乳頭状および乳頭状腎細胞癌細胞系統を、一次および転移腫瘍材料から確立した20。第3および第5染色体ペイントを用いた、転移性腎細胞癌腫SK−RC−9細胞系統のFISH分析は、非相互的t(3;5)染色体転座の存在を明らかにした(補足図1オンライン)。t(3;5)染色体転座限界点の位置を、最初に、染色体3pの約3Mb領域(73.2から75.8Mb)からのBACクローンを用いて、FISHによって調査した(図2)。腎癌腫t(3;5)において相互誘導体染色体は存在しないので、BACSはder(3;5)染色体にハイブリダイズするまたはしないかのいずれかであるので、限界点にまたがるBACクローンの十分なマッピングを得ることが不可能である。従って、非相互的転座のBAC−FISH分析は、限界点の側面に位置するBACSの位置を特定することに依存する(図2)。
【0226】
このBACは、正常第3染色体に結合するが、t(3;5)には結合しないので(図2A)、t(3;5)限界点のテロメア側に位置する、最も近位のBACクローンは、RP11−24E1(3pテロメアから73256358−73419679bp)であった。BACクローンRP11−781E19(3pテロメアから74210885−74236089)は、正常第3およびt(3;5)染色体の両方にハイブリダイズするので(図2B)、限界点のちょうど近位に位置する。これらのデータは、SK−RC−9における限界点を、多くても染色体3p13−p12.3の1Mbに位置を特定した(図2C等)。
【0227】
我々は、徐々により高い分解能で複数回のMCCを用いて、第3染色体における転座限界点の位置を規定しようとした。FISHデータ(図2)は、限界点のテロメア側にある第3染色体短腕配列は、細胞あたり2コピー存在することが期待され(SK−RC−9細胞の倍数性のため)、一方限界点の近位にあるもの、または長腕にあるものは、4コピー存在する(すなわち、2つの正常第3染色体および2つのder3;5染色体を含む)ことが期待されることを示した。我々は、染色体3p13−p12.3の領域において、約3.8Mbにわたって、0.2−0.5Mbの間隔をあけた12個のマーカーのコピー数を調査する、最初の回のMCCを行った。その結果(図3、第1回)は、73760583bpおよび74333559bpに位置するマーカーの間における、相対的コピー数の2倍のシフトを明らかにし、推定転座限界点を、約570kbの領域内に規定した。続く回のMCCを、約50kbの間隔の12個のマーカーを用いて行い(図3、第2回)、さらに推定限界点領域を約40kbの範囲内に規定した。さらなる2回のMCC(図3、第3および4回)が、さらにコピー数のシフトの位置を、それぞれ約1−4kbおよび次いで300bpまでに特定した。それに加えて、4回目のMCCは、推定転座のセントロメア側の明らかな欠失を明らかにした(下記で議論する)。
【0228】
我々は、フィルターハイブリダイゼーションを用いて、MCCデータがゲノム変化に対応することを確認した。コピー数シフトに対応する染色体3pの領域からプローブを作成し(図4、プローブ3pA)、そしてSK−RC−9細胞、およびt(3;5)限界点が、SK−RC−9のものの近位にある(AD、GCおよびTHR、未発表)、異なる腎細胞系統SK−RC−12由来の制限酵素消化ゲノムDNAを有するフィルターにハイブリダイズさせた。SK−RC−9の2つの異なる制限酵素消化によって再編成されたバンドが観察され、MCC法はこの細胞系統の第3染色体における本物の異常を同定したことを示す。
【0229】
実施例4
非相互的t(3;5)転座限界点のクローニング
SK−RC−9DNAの4回目のMCC分析は、コピー数のシフトを示し、それはそのゲノム位置を考慮すれば、第3および第5染色体の間の非相互的転座の接合部の候補であった。染色体3pのこの領域の正常配列は公知であるので、我々はその異常に対応するDNAのインバースPCRクローニングのために、第3染色体プライマーのペアをデザインした。公知のDNA部分に関連する未知のDNAをクローニングするこの方法は、環状化したDNA鋳型上を反対方向に伸長し得る(図5Aで説明する)PCRプライマーのデザインに依存する21。よって、SK−RC−9DNAを、XbaIで消化し、分子内環を産生し、そしてPCRを行って〜1.5kbのバンドを産生した。このPCR産物の配列は、それはt(3;5)非相互的染色体転座の接合部を含むことを示し(図5B)、ここで染色体5qの領域(位置を図5Cで示す、座標105386443bp)が、染色体3pの領域(図5D、座標74111893bp)に融合していた。接合部のアデニン残基は、どちらかの染色体由来であり得る。SK−RC−9細胞由来のDNAにおけるこの第5染色体部分の再編成は、フィルターハイブリダイゼーション研究を用いて正式に示された(図3B、プローブ5q)。
【0230】
実施例5
MCCは、潜在性の染色体変化を検出し得る
MCC分析による転座限界点の規定の間に、我々は限界点のすぐセントロメア側約700bpにわたる領域において、さらなるコピー数の減少を観察した(図3、第4回)。この発見を、SK−RC−9DNAを、異なる3pクラスター領域に位置するt(3;5)を有する別の腎癌腫(SK−RC−12)と比較する、2回の独立したMCC分析によって実証した(補足図2)。
【0231】
SK−RC−9DNAにおけるこの異常の、可能性のある説明は、転座限界点のすぐセントロメア側の、t(3;5)染色体における小さな欠失であり得る。我々は、その領域の側面に位置するプライマーによるゲノムPCRによって、これを実証しようとした。我々は、正常第3染色体から、期待されるサイズ(907bp)の断片を増幅し得たが、DNAの欠失した部分を横切って増幅されるはずのより小さい産物の証拠は存在しなかった(データは示していない)。従って、この短い欠失は、別の位置からの配列の挿入を伴っていなければならない。図4のフィルターハイブリダイゼーション分析は、この可能性を確認する。もし転座が単に小さな欠失と関連するだけなら、SK−RC−9DNAをBglIIで消化する場合、我々は5qプローブとハイブリダイズした場合約4.3kbのder(3;5)染色体からの再編成された断片を予測する。その代わりに、我々は約5kbの大きな断片を観察した(図4B)。さらに、3pBプローブを用いて観察されたNcoIおよびSacI断片の大きさは(図4C)、どちらも単純な欠失に関して予測されるよりも有意に大きかった(それぞれ11.5kbまたは9.5kbと観察され、そして4.5または4kbと予測された)。3pBプローブは、転座接合部を検出せず、さらなる異常のみを検出するので、NcoIハイブリダイゼーションデータは、特に重要である。これらのデータは、欠失と共に挿入を示唆し、そして3pのマイクロ欠失を伴う挿入は、7kbより大きいようであることを示唆する。
【0232】
実施例6
MCCによって検出された、腎癌細胞系統における第3染色体の289kbの欠失
MCCの感受性のさらなる具体例は、非相互的t(3p;5q)転座を有する(データは示していない)、明細胞腎癌腫SK−RC−12細胞系統における、潜在性の欠失の特徴付けによって提供された。BACクローンRP11−528E14(第3染色体76.7−76.9Mb)およびRP11−424C9(第3染色体87.7−88.0Mb)によるFISH分析は、t(3;5)の限界点領域を、約10Mbの大きな領域に線引きした。約0.25Mbの間隔でこの領域に広がるマーカーのパネルを用いて、MCC分析を行った(図6A、第1回)。コピー数のシフトがマーカー22および23の間に観察された(マーカー21、22、24、および25のPCR産物の分析ゲルを、補足図3に示す)。より近い間隔のマーカーによるMCCの続く回(図6A、第2および3回)は、その領域を約2kbまで解明し、そしてMCCの最終回は、コピー数のシフトの位置を400bp以内に特定した(図6、第4回)。ゲノム変化の存在を、第3染色体からの237bpのプローブを用いたフィルターハイブリダイゼーションによって、およびSK−RC−12DNAの制限断片を、リンパ芽球様細胞系統(LCL)のものと比較することによって、確認した。再編成された断片を、SK−RC−12DNAによる各場合において観察した(補足図4)。
【0233】
第4回のコピー数シフトに対応するゲノム領域を、インバースPCRを用いて得た。この接合部領域配列を得るために、ゲノムDNAをNcoIで消化し、そして自己ライゲーションして環状DNA鋳型を形成し、MCC第4回で位置を特定した第3染色体配列を用いて増幅した。PCR産物をクローニングし、そして配列を得て、コピー数の変化が〜289kbの染色体3pの単純な欠失から生じたことを明らかにした(図6B、81.64および81.94Mb)。正常第3染色体由来の、欠失点の側面に位置する領域の配列を、SK−RC−12の融合した第3染色体と比較する(図6B)。これは、欠失部分の両末端における6bpの領域の同一性を開示し(図6B)、この微小な相同性が、2本鎖の切断を修復するための非相同的末端接合に使用されたかもしれないことを示唆する。
【0234】
実施例7
MCC結果の統計学的分析
もしDNA分子がN個のアリコート中にランダムに分布して、アリコートあたり平均Z個の分子を与えるなら、ポアソン分布に従って、少なくとも1分子のDNAを含むことが期待されるアリコートの数Npは、
Np=N(1−e−Z) (i)
によって与えられる。
【0235】
逆に、もしN個のゲノム以下のDNAのアリコートのパネルを、当該配列に関してPCRによって試験するなら、そしてもしこれらのアリコートのNp個がその配列に関して陽性である(すなわち、少なくとも1コピーの配列を含む)なら、アリコートあたりのその配列の平均分子数は、
Z=−ln(1−Np/N) (ii)
のように計算し得る。
【0236】
従って、あらゆる所定の配列に関して陽性であるアリコートの数から、その配列の濃度(アリコートあたりのコピー数で表される)を決定し得る。もし2つまたはそれ以上の配列を、同じセット(または類似のセット)のゲノムDNAのアリコートで、この方法で分析するなら、その相対的濃度、および従ってゲノムDNAにおけるその相対的な量を計算し得る。
【0237】
実施例8
MCC分析に使用するBACクローンおよびPCRプライマー
BACクローン
SK−RC−9細胞においてt(3;5)の位置を規定するために使用するBACクローンを、http://www.ensembl.org/の、Ensembl Human Genomeデータベース、アセンブリーNCBI35を用いて、第3および5染色体において位置を特定した。
【0238】
BACクローンのリスト
3pにおけるBACの座標(残基1が染色体3pのテロメアに位置する)
RP11−24E1 73256358−73419679bp
RP11−781E19 74210885−74236089bp
RP11−413E6 75698634−75885406bp
5qにおけるBACの座標(残基1が第5染色体のセントロメアに位置する)
CTD−2193G5 102719818−102903604bp
CTD−2197I11 108078031−108252168bp
SK−RC−9のMCC分析において使用したプライマー
プライマーは、Ensembl Human Genome Server、Build35から得、そして与えられた座標はその配列情報を指す。これは継続して改訂中であるので、将来における正確な位置は、ゲノムデータベースのBLASTサーチを用いて決定するべきである。
【0239】
SK−RC−9の分析に使用したプライマーを、表1に示す
SK−RC−12 FISHに使用したBACクローンのリスト
3pにおけるBAC座標(残基1は染色体3pのテロメアに位置する)
RP11−328N12 第3染色体の72.5−72.7Mb
RP11−24E1 第3染色体の73.1−73.3Mb
RP11−413E6 第3染色体の75.5−75.7Mb
RP11−528E14 第3染色体の76.7−76.9Mb
RP11−424C9 第3染色体の87.7−88.0Mb
ディスカッション
腎臓癌のt(3;5)転座
我々は、コピー数の局所的変異を同定するために染色体またはゲノム領域をスキャンしながら、MCCが異なる配列のコピー数を直接算出し得ることを示した。この方法の反復は、我々が非相互的染色体転座の限界点の位置を特定およびクローニングすることによって示したように、異常な部分の正確な境界の位置を迅速に特定することを可能にする。我々がクローニングした特定の限界点は、新規の非相互的染色体転座のクローニングの最初の例を示す。腎臓癌は、非常に悪い予後を有し22、そして近位尿細管に起こる腫瘍(非乳頭状腎臓癌)は、多くの場合非相互的染色体転座t(3;5)を有する。第3染色体の限界点は、短腕の3つの異なる領域に集中しており、そしてこの論文で我々が記載したものは(SK−RC−9細胞において)、最も遠位のクラスター(染色体3p13)に位置する。SK−RC−9における染色体3pまたは5qいずれかからの限界点DNA配列の分析は、特に接合部において物質の喪失または獲得は存在しないことを示し、正確な末端の切断および修復を意味する。それに加えて、その切断は、いかなる公知のまたは推定遺伝子内の切断を含まない(図5を参照のこと)。従って、その転座は融合遺伝子を生じず、そして非相互的転座の主な発癌性の結果に関する異なるメカニズムを示唆する。他の腎癌腫非相互的転座の限界点を分析およびクローニングするためにMCCを使用することは、これにより光を当て、そして異なる転座の間の限界点配列の比較は、転座の配列特異的メカニズムが存在するかどうかを明らかにするのを助けるであろう。
【0240】
腎臓癌において、染色体の変化が非相互的転座と同時に存在する
この研究において、新しいMCC技術を使用して、非相互的転座限界点の位置および第3染色体における2つの潜在性の欠失の存在を決定した。増加する分解能を有するコピー数決定を、繰り返して用いることにおけるその技術の効果を、2つの癌に関連する変化をクローニングおよび配列決定するために適用した。欠失および増幅が染色体転座に伴うという証拠が増加しているが、それが機能的に有意であるかどうかは、機能的テストが不十分であるために決定するのが困難であった。染色体間転座に関わる染色体は、2本鎖の切断時には本質的に不安定であり、さらなる変化の発生は、それほど驚くべきことではないようであり得る。しかし、DNA修復メカニズムは、本質的に高い忠実度を有し、変化は機能的に重要であり得るという考えに信憑性を加える。
【0241】
ゲノム分析に対するMCCアプローチ
MCCは、コピー数の変化の位置の特定に関して、他の方法に比べていくつかの利点を有する。その方法は、配列を広い間隔から数百塩基対まで調査し得るので、有効に無制限の分解能を提供する。MCCはゲノム配列情報を利用するので、それはその操作のためのゲノムデータベース、および一連のPCRプライマーしか必要としない。MCCで使用するために形式を定めたPCRプライマーのライブラリーを、染色体領域または完全なゲノムの迅速なスキャニングを可能にするために確立し得る。さらに、その方法は、ゲノム増幅の領域、および欠失に適用可能であろう。
【0242】
コピー数決定のためのアレイに基づく技術と異なり、MCCはゲノム全体の増幅、またはいかなるハイブリダイゼーション工程も必要としない。これは短いオリゴアレイを使用する場合、またはE.coliDNAが混入したアレイCGHのためのBAC/PACの増幅によって起こり得るような、偏った増幅、プローブ中のリピート配列の不完全な抑制、または交差ハイブリダイゼーションから生じ得るあらゆる問題を回避する。MCCによる正確なコピー数の定量は、アリコートのパネルにおける遺伝子座の全てのコピーの好結果の増幅に依存する。ほとんどのPCRプライマーセットは、よく作用する(ほとんどまたは全てのコピーを検出する)か、または全く作用しない(コピーを検出しない、または全ての場合において非常に少ないPCR産物しか生じない)かいずれかである。後者は明らかであり、そしてマーカー5および7においてしたように(図3、第1回)、分析から放棄し得る。やはり、明らかに低いコピー数の単一のマーカーは、単にその遺伝子座のコピーのいくつかを検出できなかったことから生じ得るので、注意して見なければならない。実際には、明らかなコピーの喪失は、分析がより高い分解能へ進むにつれて確認される(またはされない)ので、これは不利益ではない。マイクロアレイアプローチは定量的であり、多くの場合解釈のために複雑なアルゴリズムを必要とするが、MCCは本質的にデジタルアプローチであり、それは結果の解釈を単純にする23。MCCは手動の操作に容易に適用可能であるが、それはまた自動化にもふさわしく、そしてハイスループットPCR分析のための他のプラットフォームにも適応可能であり、時間およびコストの節約の可能性がある。
【0243】
MCCは、きわめて少ない量のゲノムDNAを必要とし、数十から数百の少ない細胞に適用可能であり、そしてDNAは高分子量である必要はない。従って我々は、被験体からの新生物発生前の生検材料の詳細な分析、保管された腫瘍サンプルのレトロスペクティブな分析、または腫瘍の異なる小領域間のゲノム変異性の探究のような、今まで実行不能であった研究を、MCCが可能にすることを示唆する。MCCはまた、疾患に関連するか、またはヒト変異の正常なスペクトルの一部を形成するかに関わらず、コピー数に影響を与える遺伝性の染色体異常の分析を簡単にするであろう。我々の現在の仕事におけるMCCの使用は、不均衡が細胞の間で一定である細胞系統を採用する。MCCの構成的なコピー数の差異(例えば遺伝した症候群)への適用は、DNAが同一であるので、同様である。これは、サンプリングの「質」が有用性に影響を与え得る(他のコピー数に基づく方法と同様)、疾患に基づく材料の生検の場合には必ずしもあてはまらない。腫瘍サンプルは、切除が癌細胞、間質細胞(おそらく正常な核型)、および炎症性細胞を含むので、特に問題であり得る。それにも関わらず、MCCに必要な少量の材料およびそのアプローチの感受性は、正常DNAのいくらかのバックグラウンドに対してさえも、コピー数の異常の検出を可能にするであろう。
【0244】
【表1A】

【0245】
【表1B】

【0246】
【表1C】

【0247】
【表1D】

【0248】
【表1E】

【0249】
【化3】

【0250】
【化4】

上記の明細書において言及された全ての出版物は、本明細書中で参考文献に組み込まれる。記載された方法および本発明のシステムの様々な修飾および変異が、本発明の範囲および意図から離れることなく、当業者に明らかである。本発明を、特定の好ましい実施態様に関して記載したが、請求される本発明は、そのような特定の実施態様に過度に制限されるべきでないことが理解されるべきである。実際、分子生物学または関連する分野の当業者に明らかな、本発明を実施するための記載された方法の様々な修飾が、以下の請求の範囲内であると意図される。
【図面の簡単な説明】
【0251】
【図1】分子コピー数算出方法の概説 分子コピー数算出(MCC)は、染色体の部分に沿った染色体マーカーに対応する、ゲノムDNAからのPCR増幅産物の頻度に依存する。MCCは2段階の手順である。この図において、(A)細胞は非相互的転座を有し、そして従って1つのマーカー配列(緑で示す)は、転座限界点のテロメア側に存在する2番目のマーカー(赤で示す)の2倍のコピー数で存在する。(B)DNAを標的細胞から調製し、そしてアリコートあたり1ゲノムより少なく希釈する。(C)これらのアリコートを96穴プレートのウェルに入れる;単純さのために、赤および緑のマーカーのみを図示し、赤および緑のマーカーゲノムDNAを有する、限られた数のウェルを示す。(D)全てのマーカーを適度な量増幅するために、最初の多重PCR増幅を行い、そして赤および緑のマーカーが増幅する仮説のウェルを例示する。(E、F)多重反応産物を、レプリカプレートに分割し、そしてさらなるPCRを、各マーカーに関してセミネステッドプライマーを用いて行う(Eは赤いマーカー産物の仮定の分布を示す、およびFは緑のマーカー産物の仮定の分布を示す)。(G、H)セミネステッド工程のPCR産物を、ゲル電気泳動によって分析する。この例示において、赤いマーカーは24個のウェルで、そして緑のマーカーは46個のウェルで見出され、コピー数の2倍の増加に対応する。
【図2】t(3;5)転座限界点の位置を決定するための、BACクローンのSK−RC−9染色体とのインサイツハイブリダイゼーション 第3および第5染色体ペインティング(補足図1オンライン)を用いて、非乳頭状腎細胞癌に典型的なt(3;5)非相互的染色体転座の存在が、SK−RC−9細胞(不完全な4倍体系統)において見出された。t(3;5)の局所の位置を、第3染色体由来のBACクローンによるFISHを用いて決定した。ヒト第3染色体短腕の約1Mbの領域を規定するBACクローン(73256358−73419679bpに位置するクローンRP11−24E1、パネルAおよび74210885−74236089bpに位置するクローンRP11−781E19、パネルB)を、第5染色体全体のペインティング(赤い蛍光)と組み合わせて、SK−RC−9染色体からの分裂中期の拡散のFISH分析のために、蛍光的に緑に標識した。BACクローンRP11−24E1は、2つの正常な第3染色体の短腕にハイブリダイズするが(パネルA、緑の丸)、キメラ転座染色体t(3;5)にはせず(パネルA、白い丸)、このBACは、転座t(3;5)限界点のテロメア側であることを示す。BACクローンRP11−781E19は、正常第3染色体(パネルB、緑の丸)およびキメラ染色体t(3;5)(パネルB、白い丸)の両方にハイブリダイズする。従って、このBACはt(3;5)限界点のセントロメア側に位置する。これらのデータは、転座限界点は、これら2つのBACクローンによって規定される染色体領域の間またはその中にあることを示す。
【0252】
C.FISHによって決定された、推定t(3;5)転座限界点を含む第3染色体の領域を示す、SK−RC−9における正常第3染色体およびキメラt(3;5)の概略図表示。第3染色体を緑で、および第5染色体を赤で示す。およそ染色体3p13−p12.3の領域を含む、限界点を含む領域を白で示し、そして下に拡大する。
【図3】MCC法は、第3染色体の300bp以内にt(3;5)限界点の位置を決定する 各グラフは、染色体3pに広がる配列の相対的コピー数(縦軸)を示す(横軸:テロメア−セントロメア方向は左から右である)。
【0253】
第1回:3p13−p12.3に含まれる、〜3.7Mbに広がる約200から500kbの間隔で配列を選択した(正確な染色体位置および距離は、プライマー配列と共に表1で提供する)。プライマーのセット、すなわちセット5および7は、産物を生じなかった(点線で示す)。目で見た調査は、マーカー8および9の間にコピー数の2倍のシフトを示した(四角で囲って示す)。続く第2、3および4回において、徐々により短いマーカー間の距離を有する新規配列を選択した。第4回は、〜300bp(50−300bp)離れたマーカーを使用し、そしてt(3;5)非相互的転座限界点を示すコピー数のシフト(四角で囲って示す)、および転座接合点のセントロメア側にある、第3染色体の領域における約700bpの短い欠失(点線の四角で示す)を表す2番目の異常を示した。
【図4】SK−RC−9DNAのフィルターハイブリダイゼーションは、再編成した部分を示し、そしてマイクロ欠失を伴う挿入を明らかにする。
【0254】
A−C.SK−RC−9またはSK−RC−12(SK−RC−9のものより近位のder(3;5)を有する腎癌腫)のゲノムDNAを、示された制限酵素で消化し、分画し、そして染色体3p(3pAまたは3pB)または5qのいずれか由来のクローン化PCRプローブへハイブリダイゼーションするためにフィルターへ移す。染色体3pプローブは、図3のMCCデータから位置を決定し、そしてこの領域由来の反復を含まないゲノム配列を、ヒトゲノム配列データベースを用いて同定した。同様に、染色体5q由来のプローブを、t(3;5)接合部のクローニングおよび配列決定後に、ヒトゲノム配列データベースから決定した。
【0255】
D.t(3;5)限界点の両側のハイブリダイゼーションプローブの位置を示す、染色体5q、t(3;5)および3pの関連する領域の部分的制限地図(染色体3pには3pAおよび3pBと呼ばれる、2つのプローブが存在した)。小さい欠失を伴う挿入の長さは確実でなく、そして小さい灰色の領域によって示され、それはBにおいて示されるフィルターハイブリダイゼーションによって示されるようなBglII制限酵素部位を含む。
B=BglII;H=HindIII;N=NcoI;RV=EcoRV;S=SpeI
C=SK−RC−12由来のコントロールゲノムDNA;R9=SK−RC−9ゲノムDNA
【図5】t(3;5)非相互的転座接合部の配列および染色体位置 SK−RC−9ゲノム内のt(3;5)転座接合部の位置を、MCC法によって300bp以内に決定した。ヒトゲノム配列データベースが、この推定される転座周囲の制限部位の同定を可能にし、そしてインバースPCRを用いて接合部をクローニングした。SK−RC−9のDNAをXbaIで消化し、高希釈で自己ライゲーションして分子内環を得て、そしてPCR産物を、プライマーFおよびR(パネルA)(プライマー配列に関しては方法を参照のこと)で増幅して得た。PCR産物の配列は、t(3;5)非相互的転座の接合部がクローニングされ、そして接合部は隣接する5q(パネルB、赤で囲った配列)および3p(パネルB、緑で囲った配列)配列を含むことを確認した。融合した配列の接合部における単一のさらなるA残基(矢印で示す位置)は、いずれかの染色体由来であり得ることに注意する。転座限界点の位置を、ヒトEnsemblデータベース(NCBIリリース35)を用いて、染色体5qおよび3pで決定し、そしてパネルC(5q)およびD(3p)において示した。これらのパネルのそれぞれにおいて、上の線は関連する染色体の帯およびMb距離を示し、そして下は様々な公知または推定遺伝子を示す。Ensembl遺伝子の位置を、第5染色体(C)および第3染色体(D)の両方に関して示す。Genscan予測転写物(AN038241)を第5染色体の106.58Mbに示し、2つのmRNA、BC040672(Riken cDNA)およびHSP90が、それぞれ第3染色体の74.10および74.2に位置する。SK−RC−9のt(3;5)転座は、第3染色体または第5染色体のいずれにおいても遺伝子を分割しない。
【図6】SK−RC−12における第3染色体の欠失のMCCマッピングA.MCC第1回マッピングに関して、35個のマーカーのパネルを用いて、約0.25Mb離れた間隔のマーカーを有するゲノム領域〜9Mbをスクリーニングした。マーカー22および23の間でコピー数のシフトが検出された。その結果を、ゲノム/アリコートをy軸に、そしてマーカー番号をx軸に、マーカーパネルに関して示す。マーカーの間の距離は、ゲノムの距離を反映するのではなく数値のものである。四角で囲った領域は、低コピーから高コピーのシフトを表す。第1回のデータに基づいて、2番目のセットのプライマーを、平均30kb離してデザインした;コピー数の変化はマーカー9および13の間にマッピングされたことを示す。続いて、さらに2回のMCCを、約3Kb(第3回)および400bp(第4回)離れたマーカーを用いて行った。コピー数のシフトが、第4回においてマーカー6および7の間で起こり、シフトの位置を第3染色体の800bp以内に規定した。B.このコピー数のシフトを有するSK−RC−12DNAのゲノム領域を、インバースPCRの後にクローニングし、そしてSK−RC−12細胞における第3染色体の潜在性の欠失を明らかにした。上の配列(大文字)は、染色体3pの欠失のテロメア末端に広がり、そして下の配列(小文字)は染色体3pの欠失のセントロメア末端に広がり、一方中央の配列は、81.64および81.94Mbに位置する、SK−RC−12DNAにおける欠失の接合部に見出される融合物である。
【図7】SK−RC−9中期染色体のペインティング 第3染色体(赤)および第5染色体(緑)によるハイブリダイゼーションシグナルおよびSK−RC−9培養物(この系統は不完全な4倍体である)の中期のDAPI染色における、融合した画像を示し、非乳頭状腎細胞癌に典型的な非相互的t(3;5)染色体転座の存在を示す。染色体のペインティングを、Vysisから得た。
【図8】SK−RC−9染色体t(3;5)におけるマイクロ欠失の同定 2組の実験においてSK−RC−9を、またはコントロールとしてSK−RC−12を用いて、MCCデータを第4回PCR(主文図3におけるように)から得た。転座およびマイクロ欠失領域は、再現性のあるコピー数のシフトを示し、一方コントロールSK−RC−12DNAは、この領域においてコピー数のシフトを有さない水平の曲線を示す。
【図9】SK−RC−12DNAの第1回MCCに関するPCR産物のアガロースゲル分画 SK−RC−12DNAで、染色体3pの約0.25Mbの領域にわたるマーカーを用いて、第1回MCC分析を行い(図6A、第1回を参照のこと)、マーカー22および23の間にコピー数のシフトを示した。マーカー21、22、24、および25のセミネステッドPCR産物に関する分析ゲルを示す。
【図10】MCCによって検出されたゲノムの変化を確認するための、SK−RC−12DNAのフィルターハイブリダイゼーション SK−RC−12染色体3pDNAのMCCは、コピー数のシフトを400bpの領域内に同定し(図6A、第4回を参照のこと)、ゲノムの変化を示した。これを、コントロールリンパ芽球様細胞系統(LCL)から調製したDNAと比較して、SK−RC−12ゲノムDNAのフィルターハイブリダイゼーションによって確認した。237bpのプローブを第3染色体から増幅し、そして示した制限消化物とハイブリダイズした。LCLと比較して、SK−RC−12DNAを有する各場合において、再編成された断片を観察した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度を判定する方法であって、以下:
(a)サンプルの1つ以上の(例えば、複数の)アリコートを提供する工程であって、ここで各アリコートが、アリコートあたり1ゲノムより少ない量で核酸を含有する工程;
(b)第1の増幅反応において、各アリコート中の1つまたはそれ以上の核酸配列を増幅する工程;
(c)第2の増幅反応において、工程(b)から得た、または得られる各アリコート中の1つまたはそれ以上の核酸配列を増幅する工程であって、ここで少なくとも1つの核酸配列がテストマーカーである工程;および
(d)テストマーカーの増幅産物の数を、参照マーカーの増加産物の数と比較することによって、テストマーカーのコピー数を計算する工程、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、第1の増幅反応における各アリコートが、増幅反応あたり約0.1〜0.9ゲノムのDNAを含む、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記テストマーカーのコピー数を、テストマーカーおよび参照マーカーの増幅産物の数を手作業で算出することによって計算する、方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法であって、前記テストマーカーのコピー数を、等式:
Np=N(1−e−Z
を用いて計算し、
ここでNはアリコートの数であり;Zはアリコートあたりの増幅産物の平均数であり;そしてNpはポアソン分布によって少なくとも1分子の核酸を含むことが期待されるアリコートの数である、方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法であって、テストマーカーのコピー数を、等式:
Z=−ln(1−Np/N)
を用いて計算し、
ここでNは所与の配列に関して試験した核酸のアリコートの数であり;Npは該核酸に関して陽性であったアリコートの数である(すなわち、少なくとも1コピーの核酸配列が増幅される)、方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法であって、増幅反応を、PCRを用いて行う、方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法であって、第1の増幅反応を、フォワードプライマーおよびリバースプライマーペアを用いて行う、方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法であって、2番目の増幅反応を、フォワード内部プライマーおよびリバースプライマーを用いて行う、方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法であって、サンプルを、第1染色体、第2染色体、第3染色体、第4染色体、第5染色体、第6染色体、第7染色体、第8染色体、第9染色体、第10染色体、第11染色体、第12染色体、第13染色体、第14染色体、第15染色体、第16染色体、第17染色体、第18染色体、第19染色体、第20染色体、第21染色体、第22染色体、X染色体およびY染色体からなるグループから得る、または得ることができる、方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法であって、アリコートにする前のサンプルにおける核酸の濃度を、UV分光測定によって決定する、方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法であって、アリコートにする前のサンプルにおける核酸の濃度を、一倍体ゲノムあたり1つのコピーしか存在しないと考えられる1つまたはそれ以上の核酸を、2つまたはそれ以上の異なる希釈において増幅することによって決定し、ここで1つまたはそれ以上の核酸に関して陽性であることが見出された各希釈におけるサンプルの割合を使用して、DNA濃度の推定を正確にし、そして従って続く分析に必要な希釈を決定するために使用する、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、4つの核酸を増幅し、そして6つの希釈を調製する、方法。
【請求項13】
核酸のサンプルにおける1つまたはそれ以上の変化を同定する方法であって、以下:
(a)請求項1〜12のいずれかに記載の方法によって、1番目および2番目のサンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度を判定する工程;
(b)任意でそれぞれのサンプルに関して、徐々により高い分解能で、該方法を反復して繰り返す工程;および
(c)1番目および2番目のサンプルにおける、1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度の1つまたはそれ以上の違いを同定する工程、
を含む方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記サンプルが、疾患を持つ被験体および疾患を持たない被験体であるか、または疾患を持つ被験体および疾患を持たない被験体に由来する、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記疾患が癌である、方法。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれかに記載の方法であって、さらなる研究のために1つの領域に焦点を合わせる前に、染色体全体が最初にスキャンされる、方法。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれかに記載の方法であって、該方法を最初は2Mbの分解能で行い、徐々に100塩基対またはそれ以下に下げる、方法。
【請求項18】
請求項13〜17のいずれかに記載の方法であって、変化が、転座、増幅、重複または欠失である、方法。
【請求項19】
被験体において疾患を診断する方法であって、以下:
(a)請求項1〜12のいずれかに記載の方法によって、サンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数頻度を判定する工程;および
(b)1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数を、1つまたはそれ以上の核酸配列の正常なコピー数と比較する工程;
を含み、ここでサンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数と、1つまたはそれ以上の核酸配列の正常なコピー数との間の違いは、該被験体が疾患に罹患していることを示す、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、被験体由来の核酸のサンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数が、正常コピー数より多い場合、転座、増幅または重複を示す、方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法であって、被験体由来の核酸のサンプル中の1つまたはそれ以上の核酸配列のコピー数が、正常コピー数より少ない場合、欠失を示す、方法。
【請求項22】
請求項19〜21のいずれかに記載の方法であって、ここで前記疾患が癌である、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、ここで前記癌が腎臓癌である、方法。
【請求項24】
請求項19〜23のいずれかに記載の方法であって、ここで前記被験体が、以下:(i)疾患に罹患した、または罹患していることが疑われる被験体;(ii)疾患の素因があることが既知の被験体;(iii)疾患を引き起こすことが既知である、または疑われる、1つまたはそれ以上の因子または状況に曝露された被験体;および(iv)疾患を発症する過程にある、またはその過程にあることが疑われる被験体、からなる群より選択される、方法。
【請求項25】
核酸のサンプル中の1つまたはそれ以上の変化をクローニングする方法であって、以下:
(a)請求項13〜18のいずれかに記載の方法によって、核酸のサンプル中の1つまたはそれ以上の変化を同定する工程;および
(b)1つまたはそれ以上の変化をクローニングする工程、
を含む方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、前記変化がインバースPCRクローニングを用いて、クローニングされる方法。
【請求項27】
非相互的t(3;5)転座をコードする単離された核酸であって、ここで座標105386443bpまでの染色体5q21.3が、座標74111893bpからの染色体3p13と融合しており、そしてここで接合部のアデニン残基が、いずれかの染色体由来である核酸。
【請求項28】
請求項27に記載の単離された核酸であって、ここで染色体5q21.3が、配列TATACATACATACGGATATATGTATAAAATCを含む、核酸。
【請求項29】
請求項28に記載の単離された核酸であって、ここで染色体3p13が、配列TAGGGAGTGAAGTAGTGGCCAAGAAAACATGCCAGを含む、核酸。
【請求項30】
請求項27〜29のいずれかに記載の単離された核酸であって、ここで前記非相互的t(3;5)転座は、配列TATACATACATACGGATATATGTATAAAATCATAGGGAGTGAAGTAGTGGCCAAGAAAACATGCCAGを含む、核酸。
【請求項31】
被験体において癌を診断する方法であって、請求項27〜30のいずれかに記載の、非相互的t(3;5)転座の存在を決定する工程を含み、ここで該転座の存在は、該被験体が癌を有することを示す、方法。
【請求項32】
請求項30に記載の方法であって、前記癌が腎細胞癌である、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−533040(P2009−533040A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504815(P2009−504815)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001340
【国際公開番号】WO2007/129000
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(597166578)メディカル リサーチ カウンシル (60)
【Fターム(参考)】