説明

施療機

【課題】 施療者の腕部または脚部などの肢体に対する施療を拡充し、施療者の全身に対する効果的な施療を実施する事が可能な施療機を提供する。
【解決手段】 足載部13aと座部11aと背凭れ部12aと肘掛部14aを備えた椅子本体10aの座部11a又は背凭れ部12aの適位置に、空気給排装置42aによる給排気により膨縮動作を行わせる膨縮袋4aを配備する。又、背凭れ部12aには、施療者背面に多様な形態で施療を施し得る昇降自在な施療機構3aを設ける。そして肘掛部14aに、肘掛部14aの内側後方から施療者の前腕部を挿入し得る前腕挿入開口部61aを開設すると共に、該前腕挿入開口部61aから延設して肘掛部14aの内部に施療者の前腕部を挿入保持し得る空洞部62aを設け、該空洞部62aの内部壁面621a各所に施療者の前腕部に施療を施し得る前腕部施療機構6aを設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施療者の腕部や脚部を含む全身に対する施療を行う施療機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の施療機において、施療者の背中のみならず、腕部または脚部などの肢体に及んで施療する構成のものは既に存在し、市場では商品化されている。
【0003】
例えば、図19に示すような、前腕部施療機構を備えた施療機が開示されている。すなわち、手揉機能付施療機1として、肘幅方向両側に各々立上り壁211・211を設けた肘掛部21を椅子本体2の両側に設けており、その肘掛部21の各立上り壁211・211間に人体手部を各々嵌脱自在で該人体手部に膨縮施療を付与し得るよう、圧縮空気給排気手段を配設して成り、施療者が着座状態で人体手部を両肘掛部21・21上面部に安定的に保持させて、人体手部及び腕部を効率良く空圧施療する事ができるよう構成したものである。
【0004】
さらに、図20に示すのは、凹部の内壁に、人体の肢体を挿入するための空間を設けるように空気袋を夫々取着して施療部を形成し、空気袋に空気を給排気して空気袋を膨張及び収縮させる給排気装置を連通して設けてなるエアーマッサージ機3を、椅子20の肘掛けの上部や、座部前側に配置した構成のものである。
【特許文献1】特開2003−180773号公報(第7頁、図11)
【特許文献2】特開2001−037829号公報(第3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記のような従来の施療機は、肘掛部の施療手段として、空気袋などの膨縮袋を配備した左右の立上り壁からなる凹部を全体的に構成したものであるため、該凹部への挿入口が常時開放している。(図19及び図20の肘掛部に形成する凹部は、上部が挿入口となっている。)そのため、該凹部内部では押圧施療、または挟圧施療を実施する事ができるのであるが、該凹部の挿入口付近の人体施療部位に対する施療がなされず、凹部内部における施療効果が偏ったものとなるという、凹部を有するがために生じる施療機の特有の問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点を解消する為に成されたものであり、腕部または脚部などの肢体に対する施療を拡充し、施療者の全身に対する効果的な施療を実施する事が可能な施療機を提供する事を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の施療機は、足載部と座部と背凭れ部と肘掛部を備えて椅子本体を形成し、該椅子本体の座部又は背凭れ部の適位置に、空気給排装置による給排気により膨縮動作を行わせる膨縮袋を配備すると共に、背凭れ部には、施療者背面に多様な形態で施療を施し得る昇降自在な施療機構を設けたものであり、肘掛部に、肘掛部の内側後方から施療者の前腕部を挿入し得る前腕挿入開口部を開設すると共に、該前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の前腕部を挿入保持し得る空洞部を設け、該空洞部の内部壁面各所に施療者の前腕部に施療を施し得る前腕部施療機構を設けた構成のものである。
【0008】
また、本発明の施療機は、前記椅子本体の座部に、施療者の臀部又は大腿部に多様な形態で施療を施し得る施療機構を設けた構成にする。
【0009】
さらに、本発明の施療機は、前記椅子本体の足載部を、施療者の脛部及び足先部を嵌入させる左右一対の凹部を備えた足載部に形成し、各凹部の適位置に前記空気給排装置による給排気により膨縮動作を行わせる膨縮袋を配備している。
【0010】
また、本発明の施療機は、前記椅子本体の背凭れ部を、左右両側に前方に向かって突出した側壁部が夫々配設された背凭れ部とし、該背凭れ部の各側壁部の適位置に、前記空気給排装置による給排気により膨縮動作を行わせる膨縮袋を配備した構成である。
【0011】
さらに、本発明の施療機は、前記椅子本体の空洞部に、その先端部に施療機構の作動、膨縮袋の膨縮、並びに前腕部施療機構の作動を開始又は瞬間停止させる安全作動スイッチを備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
よって、本発明の施療機は、足載部と座部と背凭れ部と肘掛部を備えて椅子本体を形成し、該椅子本体の座部又は背凭れ部の適位置に、空気給排装置による給排気により膨縮動作を行わせる膨縮袋を配備すると共に、背凭れ部には、施療者背面に多様な形態で施療を施し得る昇降自在な施療機構を設けており、肘掛部に、肘掛部の内側後方から施療者の前腕部を挿入し得る前腕挿入開口部を開設すると共に、該前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の前腕部を挿入保持し得る空洞部を設け、該空洞部の内部壁面各所に施療者の前腕部に施療を施し得る前腕部施療機構を設けた構成のものであるため、施療機構や膨縮袋及び前腕部施療機構による各種の施療が可能であると共に、前腕部に対する不必要な圧迫や摺擦をもたらす要因がなくなり、また、前腕部施療機構におけるスムーズな前腕部の載脱も可能となり、施療者が起立及び着座を快適に行う事ができる。
【0013】
また、本発明の施療機は、前記椅子本体の座部に、施療者の臀部又は大腿部に多様な形態で施療を施し得る施療機構を設けた構成であるため、前記前腕部施療機構による前腕部の施療を施しながら、施療子によるたたき、揉み、ローリング、振動、指圧などの多様な施療を施療者の臀部又は大腿部に対して実施する事ができる。
【0014】
さらに、本発明の施療機は、前記椅子本体の足載部を、施療者の脛部及び足先部を嵌入させる左右一対の凹部を備えた足載部に形成し、各凹部の適位置に前記空気給排装置による給排気により膨縮動作を行わせる膨縮袋を配備しているため、左右一対の凹部において施療者の脛部及び足先部を安定保持させた状態で、膨縮袋による押圧または挟圧施療を実施する事ができる。
【0015】
また、本発明の施療機は、前記椅子本体の背凭れ部を、左右両側に前方に向かって突出した側壁部が夫々配設された背凭れ部とし、該背凭れ部の各側壁部の適位置に、前記空気給排装置による給排気により膨縮動作を行わせる膨縮袋を配備した構成であるため、該膨縮袋の膨縮動作により施療者の左右両側部、特に左右の上腕部の両側部に対する施療を実施する事ができるし、膨縮袋が所定の間において膨張保持する場合は、背凭れ部に凭れた施療者の上半身を左右から固定した状態を保ちながら、背凭れ部に設けられた前記施療機構による背部からの施療を効果的に行う事が可能となる。
【0016】
さらに、本発明の施療機は、前記椅子本体の空洞部に、その先端部に施療機構の作動、膨縮袋の膨縮、並びに前腕部施療機構の作動を開始又は瞬間停止させる安全作動スイッチを備えるものであるため、施療者は肘掛部の空洞部に手腕部が保持された状態のままで、施療機構や膨縮袋、前腕部施療機構の作動を開始又は瞬間停止を行う事ができる。また、施療者が椅子本体から即座に離れて避難する必要が生じるなどの緊急事態において、膨縮袋の挟圧などにより施療者の身体、または手腕や脚などの肢体が拘束されていたとしても、指先で安全作動スイッチを操作して、直ちに膨縮袋の内部気圧を緩和させて、身体や肢体を離脱する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の施療機を、図面に示す一実施形態に基づきこれを詳細に説明する。図1は本発明の施療機の一実施形態を示す斜視図であり、図2は本発明の施療機の一実施形態を示す使用時の斜視図であり、図3及び図4は本発明の施療機の一実施形態を示す使用時の右側面図であり、図5は本発明の施療機における背凭れ部の一実施形態を示す横断面説明図であり、図6は本発明の施療機における肘掛部の一実施形態を示す使用時の平面説明図であり、図7乃至図12は本発明の施療機における肘掛部の一実施形態を示す縦断面説明図であり、図13乃至図16は本発明の施療機における肘掛部の一実施形態を示す斜視説明図であり、図17は、本発明の施療機の一実施形態を示す使用時の部分正面説明図であり、図18乃至図20は従来技術を示す参考図である。
【0018】
すなわち、本発明の施療機は、図1乃至図3の実施形態で示したように、施療者の脚部または足先部が当接する足載部13aと、施療者の臀部または大腿部が当接する座部11aと、施療者の背部が当接する背凭れ部12a、また、座部11aの左右に立設して施療者の手部または腕部が当接する肘掛部14aとを備えて椅子本体10aを形成した施療機1aである。
【0019】
前記背凭れ部12aは、前記座部11aの後側にリクライニング可能に連結され、前記足載部13aは、座部11aの前側に上下方向へ揺動可能に連結している。
【0020】
また、前記背凭れ部12aの左右両側に前方に向かって突出した側壁部2aを夫々配設している。
【0021】
図1に示すように、前記背凭れ部12aには、施療者背面に多様な形態で施療を施し得る昇降自在な施療機構3aを設けている。該施療機構3aは、左右一対の施療子31aを備えており、背凭れ部12aの内部左右に設けた左右一対のガイドレール32aに沿って背凭れ部12aの上端から下端にかけて昇降するようにしている。
【0022】
前記施療機構3aは、モータ等を駆動源として前記左右一対の施療子31aを作動させる機械式の施療機構であり、前記背凭れ部12aに凭れた施療者の首部、背部、腰部、臀部等の背面全域を、たたき、揉み、ローリング、振動、指圧などの多様な形態で施療するようにしたものである。
【0023】
また、前記施療機1aの各所定の位置には、空気給排装置42aによる給排気により膨縮動作を行わせる膨縮袋4aを配備している。該膨縮袋4aは、エアーコンプレッサー及び各膨縮袋4aに空気を分配するための分配器等からなる空気給排装置42aによる給排気により膨縮動作を行うようにしており、該空気給排装置42aは前記座部11aの下部空間に配備している。
【0024】
前記空気給排装置42aによる前記各膨縮袋4aの膨縮動作によって、施療者の所定の施療部位を押圧、指圧等を実施する事ができるものであり、また、複数の膨縮袋4aを対となるよう対設させた場合には、挟圧等の施療も行う事ができ、更に、各膨縮袋4aを膨張状態に保つようにした場合は、施療者の所定の部位を一定の時間保持する事も可能としている。
【0025】
また、前記背凭れ部12aの適位置に、前記膨縮袋4aを配備している。すなわち、図面のように、該背凭れ部12aの前面側左右上部及び左右下部に、各膨縮袋4aを設ける事ができる。
【0026】
これら前記膨縮袋4aを前記背凭れ部12aの適位置に配設することより、施療者の背中及び腰部を押圧、または左右両側から挟圧するような施療を行うよう構成することができる。
【0027】
また、前記座部11aの適位置にも、前記膨縮袋4aを配備する事ができる。図面のように、座部11aの前後に腿部用また臀下部用の各膨縮袋4aを夫々埋設して、主に下方から上方に押圧する施療を行うようにしている。
【0028】
さらに、図1に示すように、前記座部11aに施療者の臀部又は大腿部に多様な形態で施療を施し得る施療機構3aを設ける事ができる。該座部11aの施療機構3aは、前記背凭れ部12aに設けた施療機構3aのようにモータ等を駆動源とする左右一対の施療子と、該施療子の位置移動のためのガイドレールからなる構成であってもよいし、または、定位置で、施療子のみが多様な形態で作動して施療を実施できるものであってもよい。
【0029】
また、図6に示すように、前記座部11aの施療機構3aは、揉み動作を行う左右一対の施療子31a・31aと、該施療子31a・31aの離間において伸縮自在となるための伸縮部33aと、施療子31aを施療者の大腿部に沿って移動させるためのガイドレール32aを備える構成にしてもよい。左右一対の施療子31a・31aが施療者の大腿部を左右から揉みほぐしながら前後に往復移動する事により、施療者の大腿部に対する施療を十分に行う事ができる。尚、伸縮部33aは、大腿部における太さの個人差に対応するためのものであり、その内部にバネなどからなる伸縮部材を内装し、大腿部の自重に伴って該伸縮部材が伸縮し、施療子31a・31aの離間が自動的に調節されるように構成する事ができる。
【0030】
前記足載部13aは、施療者の脛部及び足先部を嵌入させる左右一対の凹部131aを備えたものとして形成する事ができ、各凹部131aの適位置に前記空気給排装置42aによる給排気により膨縮動作を行わせる膨縮袋4aを配備している。図1に示すように、前記足載部13aの前記各凹部131aに、前記膨縮袋4aを左右一対として対設するよう配設させて、凹部内部で施療者の脛部及び足先部に対する挟圧施療を実施するよう構成できる。
【0031】
前記背凭れ部12aに設けた左右の側壁部2aは、座部11aに着座した施療者の肩部または上腕側方となる位置に配設しており、該各側壁部2aの適位置に、前記空気給排装置42aによる給排気により膨縮動作を行わせる膨縮袋4aを配備している。
【0032】
図5に示すように、前記左右の側壁部2aの内側面において、夫々左右方向に重合した膨縮袋4aを並列状態に埋設して構成する事ができる。これら重合した膨縮袋4a・4aはその基端部のみを側壁部2aの基端部に取り付けているため、膨張時には重合した膨縮袋4a・4aが扇状に広がって施療者の肩部や上腕部の身体側部を挟圧しつつ、身体前方まで覆うようになる。
【0033】
よって、前記左右側壁部2aの前記膨縮袋4aは、上記したように、膨縮動作により身体側部を施療する事ができるだけでなく、一定の時間において膨張状態を保ちながら、施療者の身体が前記背凭れ部12aから離れないようにしっかりと保持する事ができ、図5に示すように施療者の身体を固定したままの状態で前記施療機構3aの前記施療子31aによる背部からの施療を効果的に受ける事が可能となるのである。
【0034】
本発明の施療機1aは、図1及び図6に示すように、前記肘掛部14aに、前記肘掛部14aの内側後方から施療者の前腕部を挿入し得る前腕挿入開口部61aを開設しており、また、該前腕挿入開口部61aから延設して肘掛部14aの内部に施療者の前腕部を挿入保持し得る空洞部62aを設けている。
【0035】
さらに、前記施療機1aは、前記空洞部62aの内部壁面621aの各所に施療者の前腕部に施療を施し得る前腕部施療機構6aを設けて構成している。
【0036】
前記空洞部62aは、前記肘掛部14aの幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁622a及び内側立上り壁623aと、底面部624aとから形成しており、該外側立上り壁622a及び内側立上り壁623aの前記各内部壁面621aに、前腕部施療機構6aを設けている。尚、適宜底面部624aにも該前腕部施療機構6aを設ける事ができる。
【0037】
前記底面部624aは、施療者の前腕部を載置しうるための載置面として形成されている。該底面部624aに手部や前腕部を載置した状態で、前腕部施療機構6aによる施療を実施できるようにしている。
【0038】
前記前腕部施療機構6aは、前記膨縮袋4aからなる形態のものでもよく、図6及び図7に示すように、施療者の手部と前腕部に対し夫々挟圧施療が行えるように、前記空洞部62aの長さ方向前後に左右一対の膨縮袋4a・4aを夫々設ける事ができる。すなわち、空洞部62aの長さ方向前側に設けられた前記左右一対の膨縮袋4aは、手部に対応し、また空洞部62aの長さ方向後側に設けられた前記左右一対の膨縮袋4aは、前腕部に対応するよう構成する事ができる。
【0039】
さらに、手部に対応した前記左右一対の膨縮袋4aと、前腕部に対応した左右一対の前記膨縮袋4aとを、同時に、または交互に膨縮させるようにする事により、変化に富んだ施療が実現できる。
【0040】
前記肘掛部14aの上面部には、前記空洞部62aを隔てて施療者の前腕部を載置しうるための載置面63aが形成されている。よって、施療者が前腕部施療機構6aによる施療を所望しない時に、該載置面63aに前腕部を載置しておく事ができる。該載置面63aは、前記底面部624aの位置より高いので、身長の高い施療者にとって便利な肘掛けとなる。
【0041】
図1に示すように、前記肘掛部14aには、前記外側立上り壁622a及び内側立上り壁623aの上面前端部に、着座した施療者が立ち上がる際、或いは着座する際において、体重を掛けるための手掛け部65aを設けている。すなわち、前記空洞部62aの先端部の上方を塞ぐような形態に手掛け部65aを形成している。
【0042】
また、図17に示すように、前記底面部624aと前記手掛け部65aとの各載置面は異なり、底面部624aよりも手掛け部65aの載置面の方が高い位置に形成されているため、施療者が着座状態から立ち上がろうとして、手掛け部65aを掴む際、既に前腕部は底面部624aから上方へ移動し、また、前記空洞部62aから脱出しているため、図18に示す従来の構成のように、前記内側立上り壁623aによる前腕部内側の摺擦を回避する事ができる。
【0043】
さらに、図13に示すように、前記手掛け部65aの下面部及び前記底面部624aの上面部に、前記膨縮袋4aを夫々設けて、手部を上下に挟圧するよう構成する事も可能である。
【0044】
このような、前記前腕部施療機構6aにおける手部に対する上下挟圧動作と、前述したような手部に対する左右からの挟圧動作とを、同時に、または交互に行うことにより、変化に富んだ施療が可能となる。
【0045】
また、図13に示すように、前記底面部624aにおいて、手部に対応した前記左右一対の膨縮袋4aの他にも前腕部に対応した左右一対の前記膨縮袋4aの位置に、適宜前記膨縮袋4aを設ける事ができる。
【0046】
前腕部に対応した前記各左右一対の膨縮袋4aと、それに対応するよう底面部624aに設けられた膨縮袋4aとを、同時に、または交互に行うことにより、変化に富んだ施療が可能となる。或いは、左右一対の膨縮袋4aを膨張保持させた状態で、底面部624aに設けられた膨縮袋4aを上方へ膨張させる事により、前腕部を安定させた状態で圧迫感のある施療を実施する事ができる。
【0047】
また、図13に示すように、前記空洞部62aにおいて前腕部に対応した前記各膨縮袋4aよりも後方である位置に、前記膨縮袋4aを設けてもよい。この後方の位置に、前腕挿入開口部61aを設けているため、前記内側立上り壁623aは形成されていないが、図8に示すように、前記外側立上り壁622a及び前記底面部624aの二面において、互いに対設するよう膨縮袋4a・4aを設ける事ができる。
【0048】
この場合、図8に示すように、前記外側立上り壁622aの下部において、膨縮袋4aの下部の縁部41aを止着すると共に、前記底面部624aの外側立上り壁622a側に、もう一つの膨縮袋4aの外側立上り壁622a側の縁部41aを止着して構成してもよい。これにより、外側立上り壁622a及び前記底面部624aの二面において、挟圧施療を実施する事ができる。
【0049】
図13に示す前記前腕部施療機構6aは、前部に口型施療部66a、中部に凹型施療部67a、後部にL型施療部68aを夫々備えた構成にしたものを例示している。すなわち、口型施療部66aは、前記底面部624a、前記外側立上り壁622a及び内側立上り壁623a、手掛け部65aにより口型に囲われた施療部であり、凹型施療部67aは、底面部624aと外側立上り壁622a及び内側立上り壁623aにより凹型に形成する施療部であり、L型施療部68aは、底面部624aと外側立上り壁622aとによりL型に形成する施療部である。
【0050】
図14に示す形態は、前部に口型施療部66a、中部にコ型施療部69a、後部にL型施療部68aを夫々備えたものである。該コ型施療部69aは、前記底面部624a、前記外側立上り壁622a、手掛け部65aによりコ型に形成する施療部となる。
【0051】
この形態は、特に前腕部の中腹に対する上下方向の挟圧を可能としている。また、手掛け部65aの面積が大きくなるため、施療者が手掛け部65a上面部に手を置いて起立または着座がし易くなる。
【0052】
また、図15に示すのは、前部及び中部に口型施療部66a、後部にL型施療部68aを夫々備えた構成であり、特に前腕部の中腹に対する施療をさらに充実させる形態のものである。
【0053】
図9に示すのは、前記口型施療部66aに設けた前記膨縮袋4aの、他の配置形態である。すなわち、下部を底辺とし上部を頂点とする三角型の空洞部62aの内面に夫々膨縮袋4aを設けている。このように構成する事により、図9に示すように手のひらを下にして載置したり、または図10に示すように手部を縦にして載置したりする事ができ、施療者の好みに応じられる。
【0054】
または、図11に示すように、前記空洞部62aを口型に形成すると共に、三角型になるよう複数の膨縮袋4aを連結し、膨縮袋4aで形成した三角型の内部に手部や前腕部を挿入する事も可能である。この場合、口型に形成した空洞部62aの内部で、自由に手部や前腕部を回転する事ができ、施療者は好みの姿勢で施療を受ける事ができる。
【0055】
或いは、口型に形成した空洞部62aの内部に、輪型の膨縮袋4aを設けてもよい。該輪型の膨縮袋4aは、図12に示すように手部や前腕部の周部を隈無く挟圧する事ができる。
【0056】
また、図4に示すように、前記肘掛部14aは、椅子本体10aに対して前後方向に移動可能に設けられており、前記背凭れ部12aのリクライニング角度に応じた所定の移動量を保持しながら前記背凭れ部12aのリクライニング動作に連動して前記肘掛部14aが椅子本体10aに対して前後方向に移動するようにしている。
【0057】
すなわち、前記肘掛部14aの下部に前後方向に回動するための回動部141aを設けると共に、肘掛部14aの後部で回動可能に前記背凭れ部12aの側部と連結する連結部142aを設けて構成している。
【0058】
または、図示しないが、前記回動部141aの代わりに、ガイドレールなどを採用した水平スライド機構を設けて、前記肘掛部14a全体が前記背凭れ部12aのリクライニング動作と連動して、水平にスライド移動するようにしてもよい。
【0059】
図1に示すように、前記椅子本体10aの空洞部62aにおいて、その先端部に施療機構3aの作動、膨縮袋4aの膨縮、並びに前腕部施療機構6aの作動を開始又は瞬間停止させる安全作動スイッチ64aが備えられており、該安全作動スイッチ64aを備える事により、施療者は空洞部62aに手腕部が保持された状態のままで、施療機構3aや膨縮袋4a、前腕部施療機構6aの作動を開始又は瞬間停止を行う事ができるようにしている。
【0060】
よって、施療者が椅子本体10aから即座に離れて避難する必要が生じるなどの緊急事態や施療者の都合による施療停止の意思に基づいて、安全作動スイッチ64aが使用できるものであり、例えば、膨縮袋4aの挟圧などにより施療者の身体、または手腕や脚などの肢体或いは肩部や上腕部が拘束されていた場合であっても、指先で安全作動スイッチ64aを操作して、直ちに膨縮袋4aの内部気圧を緩和させて、身体や肢体を離脱させる事ができるのである。
【0061】
前記施療機1aの操作を行うため、図1に示すように、リモートコントローラ等の操作部5aを前記背凭れ部12aの左右にある前記各側壁部2aのうち、片側前方に備えており、該操作部5aによって、電源の入切、前記施療機構3aや前記空気給排装置42a及び各前記膨縮袋4aによる施療の種類や強度等の選択、また、前記背凭れ部12aのリクライニングや前記足載部13aの上下動の調節等、施療機1aの全ての機能に対する操作を行うようにしている。尚、操作部5aの操作は、図示しないが、液晶画面等の操作表示部や操作ボタン、またはダイヤル等の操作指示部等で行うようにしてもよい。
【0062】
また、図16に示すように、前記空洞部62aの先端部に、前記操作部5aとは別に、操作具51aを取り付けて、操作部5aで行う操作を該操作具51aにて行い得るよう構成する事ができる。
【0063】
前記操作具51aは、施療者が手部にて操作し易いレバー511a及び実行ボタン512aを備えたスティック方式のものを採用できる。該レバー511aは、前後方向または左右方向に動かすか、或いは四方または八方など、周囲に動かす事により、選択操作する事ができる形態のもので、前記操作部5aの前記液晶画面を確認しながら選択を行い、次いで実行ボタン512aを押して決定する事ができる。
【0064】
尚、前記操作具51aは、施療者の腕部の長さの違いに対応するため、前後にスライド調節するためのスライド調節手段513aを備えてもよい。該スライド調節手段513aは、図示しないが摺動レール及び摺動部材から構成する事ができる。また、必要に応じて、前記操作具51aに前記安全作動スイッチ64aを配備してもよい。
【0065】
さらに、前記操作部5aまたは前記操作具51aによる前記施療機1aの操作に伴う制御は、電子制御であり、また、予めプログラムされたデータに基づく動作や、施療者が任意に入力したプログラムデータに基づいて動作するようにしてもよい。
【0066】
前記操作部5a及び前記操作具51aによる操作手順として、例えば、先ず操作部5aにおいて施療機1aの動作設定を行い、次いで施療者は両腕を前記前腕部施療機構6aの前記空洞部62aに挿入載置すると共に、操作具51aを掴んだ状態で前記実行ボタン512aを押して施療を開始させる事ができる。また、施療中でも施療者は操作部5aの前記操作表示部を見ながら操作具51aを用いて、所望する施療動作や椅子本体10aの動作を選択実行したり、または終了指示したりする事も可能である。
【0067】
前記施療機1aに関しては、これまで主に椅子型のものを示したが、これに限らず、例えば、他に少なくとも施療者の臀部または大腿部が当接する座部と施療者の背部が当接する背凭れ部を設けてなるマット型やベッド型にも上記の構成を適用する事ができ、そのような形態の場合は、該背凭れ部または座部の左右両側に、前述した前腕部施療機構6aを設けて構成する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の施療機の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の施療機の一実施形態を示す使用時の斜視図である。
【図3】本発明の施療機の一実施形態を示す使用時の右側面図である。
【図4】本発明の施療機の一実施形態を示す使用時の右側面図である。
【図5】本発明の施療機における背凭れ部の一実施形態を示す横断面説明図である。
【図6】本発明の施療機における肘掛部の一実施形態を示す使用時の平面説明図である。
【図7】本発明の施療機における肘掛部の一実施形態を示す縦断面説明図である。
【図8】本発明の施療機における肘掛部の一実施形態を示す縦断面説明図である。
【図9】本発明の施療機における肘掛部の一実施形態を示す縦断面説明図である。
【図10】本発明の施療機における肘掛部の一実施形態を示す縦断面説明図である。
【図11】本発明の施療機における肘掛部の一実施形態を示す縦断面説明図である。
【図12】本発明の施療機における肘掛部の一実施形態を示す縦断面説明図である。
【図13】本発明の施療機における肘掛部の一実施形態を示す斜視説明図である。
【図14】本発明の施療機における肘掛部の一実施形態を示す斜視説明図である。
【図15】本発明の施療機における肘掛部の一実施形態を示す斜視説明図である。
【図16】本発明の施療機における肘掛部の一実施形態を示す斜視説明図である。
【図17】本発明の施療機の一実施形態を示す使用時の部分正面説明図である。
【図18】従来技術を示す参考図である。
【図19】従来技術を示す参考図である。
【図20】従来技術を示す参考図である。
【符号の説明】
【0069】
1a 施療機
10a 椅子本体
11a 座部
12a 背凭れ部
13a 足載部
131a 凹部
14a 肘掛部
141a 回動部
142a 連結部
2a 側壁部
3a 施療機構
31a 施療子
32a ガイドレール
33a 伸縮部
4a 膨縮袋
41a 縁部
42a 空気給排装置
5a 操作部
51a 操作具
511a レバー
512a 実行ボタン
513a スライド調節手段
6a 前腕部施療機構
61a 前腕挿入開口部
62a 空洞部
621a 内部壁面
622a 外側立上り壁
623a 内側立上り壁
624a 底面部
63a 載置面
64a 安全作動スイッチ
65a 手掛け部
66a 口型施療部
67a 凹型施療部
68a L型施療部
69a コ型施療部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
足載部と座部と背凭れ部と肘掛部を備えて椅子本体を形成し、該椅子本体の座部又は背凭れ部の適位置に、空気給排装置による給排気により膨縮動作を行わせる膨縮袋を配備すると共に、背凭れ部には、施療者背面に多様な形態で施療を施し得る昇降自在な施療機構を設け、前記肘掛部に、肘掛部の内側後方から施療者の前腕部を挿入し得る前腕挿入開口部を開設すると共に、該前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の前腕部を挿入保持し得る空洞部を設け、該空洞部の内部壁面各所に施療者の前腕部に施療を施し得る前腕部施療機構を設けた事を特徴とする施療機。
【請求項2】
前記椅子本体の座部に、施療者の臀部又は大腿部に多様な形態で施療を施し得る施療機構が設けられている事を特徴とする請求項1記載の施療機。
【請求項3】
前記椅子本体の足載部を、施療者の脛部及び足先部を嵌入させる左右一対の凹部を備えた足載部に形成し、各凹部の適位置に前記空気給排装置による給排気により膨縮動作を行わせる膨縮袋を配備した事を特徴とする請求項1記載の施療機。
【請求項4】
前記椅子本体の背凭れ部は、左右両側に前方に向かって突出した側壁部が夫々配設された背凭れ部であり、該背凭れ部の各側壁部の適位置に、前記空気給排装置による給排気により膨縮動作を行わせる膨縮袋を配備した事を特徴とする請求項1記載の施療機。
【請求項5】
前記椅子本体の空洞部には、その先端部に請求項1又は請求項2の施療機構の作動、請求項1、請求項3、又は請求項4の膨縮袋の膨縮、並びに請求項1の前腕部施療機構の作動を開始又は瞬間停止させる安全作動スイッチを備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項記載の施療機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−43449(P2008−43449A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220455(P2006−220455)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000136491)株式会社フジ医療器 (137)
【出願人】(000162010)京和装備株式会社 (8)
【Fターム(参考)】