説明

既設管改築推進用カッターヘッド

【課題】老朽化した塩化ビニル管を更新する場合に、カッターで切削しても連続した切り屑とならずに短く細断した形状の切り屑にして、容易にスクリューで排出させることができるようにする。
【解決手段】ローラ形のカッター本体を有しカッター本体に、押圧により前記既設管の端面に溝を形成する押圧歯が軸方向に複数形成されたローラ型カッター36と、直線状の一つの切削刃を有する切削ビット40と、を組み合わせてカッターヘッド20の面板30に配置し、ローラ型カッター36がカッターヘッド20の面板30の半径上に位置するように回転自在に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開削せずに老朽化した既設管を新らしい管に更新する改築推進機用のカッターヘッドに係り、特に、老朽化した既設管が塩ビ管であるような場合に、塩ビ管をカッタで切削するときの切屑を細かくして、円滑な推進を可能にする既設管改築推進用カッターヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道、ガス等のライフラインとして地中に埋設されている管は、経年により老朽化が進むので、耐用年数を越えないうちに、適時に新たな管に更新する必要がある。
かつては、老朽化した既設管を更新するために、地表から開削することで既設管を掘り出し、新たな管に埋設し直していた。近時は、開削することなく、既設管を破砕しながら、同時に更新管を推進する改築推進工法が開発されている。
【0003】
従来の既設管改築推進工法には種々のものがあるが、既設管をカッターで切削しながら更新管を推進する工法が一般的になっている。
【0004】
この種の改築推進工法としては、例えば、特許文献1に開示されている工法を挙げることができる。この改築推進工法で使用する先導管の先端には、既設管を破砕するためのカッターヘッドが取り付けられており、このカッターヘッドのカッタで既設管を破砕し、その破片および土砂は排土用のスクリューで発進抗に移送される。そして、推進機は、埋設管の破砕と同時に、新たな更新管に推進力を与え、破砕された埋設管の替わりに更新管を押し込んでいく。
【0005】
この改築推進工法によれば、既設管をカッターで破砕し、その切り屑を排出しながら更新管を推進していくことができるので、既設管が曲がっている場合にも更新管の埋設精度を確保でき、また、既設管の管径とは関係なく更新管を推進することができる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−249678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、老朽化した既設管には、陶管であったり、ヒューム管であったり、あるいは、年代が下ると塩化ビニル製の管であったりというように様々な種類の管がある。このうち、陶管やヒューム管は、細かく破砕することが容易なためカッターによる破砕に適している。
【0008】
これに対して、塩化ビニル製の既設管は、カッターで切削すると、連続した細長い切り屑が発生する。しかも、この切り屑は、既設管の内部に溜ったり、排土用のスクリューに絡まったりして排出させることが困難になる。最悪の場合、スクリューの入っているケーシング内で閉塞を起こし、推進を継続することが不能になることがある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、老朽化した塩化ビニル管を更新する場合に、カッターで切削しても連続した切り屑とならずに短く細断した形状の切り屑にして、容易にスクリューで排出させることができるようにした既設管改築推進用カッターヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、地中に埋設された既設管を切削若しくは破砕しながら、同時に、先行させる先導管とともに新しい更新管を推進する改築推進装置で用いるカッターヘッドにおいて、ローラ形のカッター本体を有し前記カッター本体に、押圧により前記既設管の端面に溝を形成する押圧歯が軸方向に複数形成されたローラ型カッターと、直線状の一つの切削刃を有する切削ビットと、を組み合わせてカッターヘッドの面板に配置し、前記ローラ型カッターが前記カッターヘッドの面板の半径上に位置するように前記ローラ型カッターを前記面板上に回転自在に取り付けたことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明では、前記ローラ型カッターは、円筒歯車状に複数の押圧歯が一定のピッチでカッター本体に形成されたカッターからなることを特徴としている。
【0012】
また、本発明では、前記切削ビットは、平爪形の切削ビットからなることを特徴としている。
【0013】
前記ローラ型カッターは、前記面板の回転中心に向かって上り勾配の傾斜をつけた姿勢で前記面板に取り付けることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、老朽化した塩化ビニル管を更新する場合に、カッターで切削しても連続した切り屑とならずに短く細断した形状の切り屑になり、容易にスクリューで排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の既設管改築推進用カッターヘッドが適用される推進機を示す側面図である。
【図2】図1の推進機に接続される先導管およびカッターヘッドの縦断面図である。
【図3】本発明の既設管改築推進用カッターヘッドの正面図である。
【図4】図3のカッターヘッドに取り付けられるローラ型カッターの横断面図である。
【図5】本発明によるカッターヘッドの切削作用の説明図。
【図6】本発明によるカッターヘッドのステンレスカラーに対する作用の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による既設管改築推進用カッターヘッドの一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のカッターヘッドが用いられる既設管改築推進機を示す。
図1において、参照番号10は、推進機の全体を示す。この推進機10には、非開削で埋設管を地中に推進する工法で広く用いられる公知の推進機が利用される。参照番号50は老朽化した既設管である。この実施形態の既設管50は、小口径低耐荷力管の代表的な管である塩化ビニル管が想定されている。参照番号60は、更新管を示している。この更新管60は、例えば、ヒューム管である。
【0017】
更新管60の始端位置には発進立坑14が開削され、推進機10は発進立坑14に運び込まれる。
推進機10では、ベースとなるガイドフレーム15の上に推進機本体が移動可能に設置されている。この推進機本体の左右両側には、更新管60を押し出す推力を発生する油圧シリンダ16が配設されている。この油圧シリンダ16のピストンロッドの先端部は、反力受け17に固定されている。
【0018】
推進機10には、次のような構成のアタッチメントが接続されている。すなわち、アタッチメントは、先頭から順に、カッターへッド20と、先導管21と、1本ずつ継ぎ足される更新管60と、から構成されている。
【0019】
次に、図2は、先導管21の縦断面を示す。この先導管21は、先頭の更新管60に接続されるものである。そして、先導管21の先端には、カッターヘッド20が取り付けられている。このカッターヘッド20は、スクリュー22と一体で回転するようになっている。スクリュー22には螺旋状のブレード23が軸方向に延びている。このスクリュー22は、ケーシング24に同軸に収容されている。このスクリュー22およびケーシング24は、更新管60の内部を推進機10まで延びている。
【0020】
推進機10の備える油圧モータの駆動トルクは図示しない中空式減速機を介してスクリュー22に伝えられる。これと同時に、更新管60には、推進機10から油圧シリンダ16で発生する推力が加えられる。なお、更新管60、ケーシング24およびスクリュー22は、推進が延びるにしたがって、1本づつ継ぎ足されながら推進作業が行われる。
【0021】
なお、先導管21では、推進方向を既設管50の傾斜に対応させるために、複数の方向修正用シリンダ25が設けられており、この方向修正用シリンダ25を作動させることによって、カッタヘッド20を傾かせて、推進方向を修正することができる。
【0022】
次に、本実施形態によるカッターヘッド20について説明する。
このカッターヘッド20は、ヘッド本体を構成する円板状の面板30と、この面板30を回転自在に支持するベアリング支持機構部32を含む。
【0023】
図2に示されるように、ベアリング支持機構部32には、推進時に作用する軸方向のスラスト荷重を受けるスラスト軸受35と、ラジアル荷重を受けるラジアル軸受33が組み込まれている。
【0024】
この面板30には、図3に示すように、異なる種類を組み合わせた刃具が取り付けられている。
この図3において、参照番号36は、ローラ型カッターを示し、参照番号40は切削ビットを示している。
【0025】
まず、ローラ型カッター36は、カッター本体がローラ形をしており、押圧することにより食い込んでいく押圧歯36aを有している。押圧歯36aの歯すじは、カッター本体の軸方向に平行に延びるようになっている。図4は、このローラ型カッター36の横断面を示す。この実施形態のローラ型カッター36では、12枚の押圧歯36aが一定のピッチで形成されており、全体として、円筒歯車状の外形を有するカッターを構成している。そして、このローラ型カッター36は、その回転軸37の両端が支持部38a、38bによって支持されることによって、回転することができる。このローラ型カッター36の回転軸37は、面板30の半径上に位置している。
次に、切削ビット40としては、いわゆる平爪形の切削ビットが用いられている。この切削ビット40は、直線状に延びる一つの切削刃40aを有する切削ビットである。
【0026】
本実施形態では、ローラ型カッター36は、面板30の回転中心に関して180度対称に2つ配置されている。そして、切削ビット40は、ローラ型カッター36に対して90度偏位させるようにして、面板30の回転中心に関して180度対称な位置に2つ配置されている。また、ローラ型カッター36および切削ビット40については、面板30の回転中心に向かって上り勾配の傾斜をつけた姿勢で面板40に取り付けられている(図2参照)。
【0027】
図3に示されるように、面板30には、土砂や切り屑を導入する開口42が形成されている。また、面板30の後方にあっては、スクリュー22への導入口を形成する刃口44が区画されており、土砂や切り屑はこの刃口44からスクリュー22に導入される。
【0028】
本実施形態による既設管改築推進用カッターヘッド20は、以上のように構成されるものであり、次に、このカッターヘッド20を使って老朽化した塩化ビニル製の既設管50に沿って更新管60を推進し、下水道管を改築する工程を順を追って説明する。
まず、図1に示すように、既設管50の始端位置に発進立坑14を掘削しておく。推進機10はこの発進立坑14に設置することになる。
【0029】
推進機10では、スクリュー22とともにカッターヘッド20を回転させながら既設管50を切削しつつ、推進機10の油圧シリンダ16のピストンロッドを伸長させて先導管21を推進する。そして先導管21の推進を延ばしつつ、更新管60、スクリュー22、ケーシング24を順次継ぎ足しなから推進していく。
【0030】
従来、塩化ビニルなどの樹脂製の柔らかい材料からなる既設管50では、切り屑はひも状に連続した長い切り屑になることが多かった。
【0031】
これに対して、本実施形態のカッターヘッド20では、ローラ型カッター36と切削ビット40とを組み合わせているので、これらローラ型カッター36と切削ビット40とが協働する切削作用により、次のようにして切り屑を短く細断することが可能となり、スクリュー22で円滑に後方に排出させることができる。
【0032】
ここで、図5は、ローラ型カッター36と切削ビット40の切削作用を説明する図である。
塩化ビニル製の既設管50の端面にカッターヘッド20を押圧しながら回転させると、まずローラ型カッター36は、既設管50の端面を転動しながら、その押圧歯36aが端面に食い込み、短い間隔で溝52を次々に形成していくことになる。このようにローラ型カッター36は、専ら、既設管50の端面に次々と溝56を形成していく作用を行う。
【0033】
図5に示すように、切削ビット40は、ローラ型カッター36による溝56の切り込みに引き続いて、溝52の間を切削刃40aで切削していく。このカッターヘッド20の場合、ローラ型カッター36の押圧歯36aの高さの方が、切削ビット40の切削刃40aの高さよりも若干高くなっているので、ローラ型カッター36を押圧することにより、ローラ型カッター36は、切削ビット40の切込量よりも深い溝52を形成していくことになる。このため、切削ビット40が隣合う溝52の間を切削していくと、溝52と溝52の間の断続的な切削となって、切り屑は連続することなく、溝52の間隔に対応した短い切り屑70となる。
【0034】
こうして、ローラ型カッター36と切削ビット40との協働により、塩化ビニル製の既設管50の切削を継続していくと、切り屑70は土砂とともに開口42から面板30の後方に排出される。そして、刃口44からスクリュー22に導かれ、スクリュー22の回転によって土砂とともに後方に移送される。
【0035】
以上のようにして、塩化ビニール製の既設管50であっても、切り屑70は連続した長いものにならずに、短く断片化することにより、スクリュー22での排出性が良好になり、切り屑がスクリュー22のブレードに途中で絡まって排出できなくなるような事態を未然に防止することができる。
【0036】
以上は、塩化ビニル管の切削についての説明であるが、本実施形態のカッターヘッド20は、継手部分などにステンレスカラーが嵌め込まれた塩化ビニル管についても対応することができる。
【0037】
ここで、図6は、ローラ型カッター36のステンレスカラー80に対する作用を模式的に示す図である。
ローラ型カッター36は、面板30の回転中心に向かって上り勾配に傾斜をもつように取り付けられているので、図6において、ローラ型カッター36をステンレスカラー80の端面に押圧した場合、押圧力Fは、軸方向の成分F1と、半径方向の成分F2をもつことになる。この押圧力Fのうち、軸方向の成分F1は、ステンレスカラー80の端面に溝を形成する力として働き、半径方向の成分F2は、ステンレスカラー80を半径方向外側に押し拡げる力として働く。
【0038】
したがって、ローラ型カッター36を押圧することにより、ステンレスカラー80の端面に切り込んだ溝を起点にステンレスカラー80に亀裂を生じさせながらこれを押し拡げ、更新管の進路外に押し出すことができる。進路外に押し出したステンレスカラー80は、そのままに残置したまま更新管を推進することになる。
【0039】
このようにして、ステンレスカラー80を押し拡げながら、塩化ビニル管の切削を同時に行なうことができる。
【符号の説明】
【0040】
10…推進機、14…発進立坑、15…ガイドフレーム、16…油圧シリンダ、20…カッターヘッド、21…先導管、22…スクリュー、23…ブレード、30…面板、32…ベアリング支持機構、36…ローラ型カッター、36a…押圧歯、40…切削ビット、40a…切削刃、50…既設管、52…溝、60…更新管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された既設管を切削若しくは破砕しながら、同時に、先行させる先導管とともに新しい更新管を推進する改築推進装置で用いるカッターヘッドにおいて、
ローラ形のカッター本体を有し前記カッター本体に、押圧により前記既設管の端面に溝を形成する押圧歯が軸方向に複数形成されたローラ型カッターと、直線状の一つの切削刃を有する切削ビットと、を組み合わせてカッターヘッドの面板に配置し、前記ローラ型カッターが前記カッターヘッドの面板の半径上に位置するように前記ローラ型カッターを前記面板上に回転自在に取り付けたことを特徴とする既設管改築推進用カッターヘッド。
【請求項2】
前記ローラ型カッターは、円筒歯車状に複数の押圧歯が任意のピッチでカッター本体に形成されたカッターからなることを特徴とする請求項1に記載の既設管改築推進用カッターヘッド。
【請求項3】
前記切削ビットは、平爪形の切削ビットからなることを特徴とする請求項1に記載の既設管改築推進用カッターヘッド。
【請求項4】
前記ローラ型カッターは、前記面板の回転中心に向かって上り勾配の傾斜をつけた姿勢で前記面板に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の既設管改築推進用カッターヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−275831(P2010−275831A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132113(P2009−132113)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【Fターム(参考)】