説明

昇圧型スイッチング電源装置

【課題】本発明は、起動時における出力キャパシタへの突入電流を低減することが可能な昇圧型スイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る昇圧型スイッチング電源装置は、外部端子T1と外部端子T2との間に、同期整流トランジスタM1よりもオン抵抗値の大きい電流制限トランジスタM5を有して成り、制御部1は、スタンバイ状態からアクティブ状態へ移行する際、同期整流トランジスタM1のスイッチング制御を開始するよりも先に、電流制限トランジスタM5を所定期間だけオンさせる構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力電圧を昇圧して出力電圧を生成する昇圧型スイッチング電源装置(チョッパ型電源装置)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5A〜図5Cは、それぞれ、昇圧型スイッチング電源装置の第1〜第3従来例を示す回路図である。なお、昇圧型スイッチング電源装置に関連する従来技術の一例としては、本願出願人による特許文献1を挙げることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2006−304500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
確かに、上記従来の昇圧型スイッチング電源装置であれば、出力トランジスタM2のオン/オフ制御を行うことにより、入力電圧(図5A〜図5Cでは電源電圧Vcc)を昇圧して所望の出力電圧Voutを得ることが可能である。
【0005】
しかしながら、図5Aに示した昇圧型スイッチング電源装置では、同期整流トランジスタM1に付随する寄生ダイオードD1を介して、電源電圧Vccの入力端から出力電圧Voutの出力端に至る電流リーク経路が存在していた。そのため、昇圧動作の停止中に電源電圧Vccが投入され、出力電圧Voutが電源電圧Vccよりも低い状態になると、同期整流トランジスタM1がオフされていても、上記の電流リーク経路を経由して、出力キャパシタC1に大きな突入電流が流れ込むおそれがあった。このとき、電源電圧Vccを供給する電源(例えばバッテリ)の電流供給能力が小さいと、上記の突入電流に起因して電源電圧Vccが低下してしまうため、電源電圧Vccの供給を受けて駆動する他のICやデバイス(図5A〜図5Cでは不図示)に悪影響を及ぼすおそれがあった。また、図5Bに示した昇圧型スイッチング電源装置でも、出力電圧Voutが電源電圧Vccよりも低い状態では、同期整流ダイオードD2が導通状態となるので、上記と同様の事象を生じるおそれがあった。
【0006】
なお、図5Cに示した昇圧型スイッチング電源装置であれば、昇圧動作を停止するに際して、同期整流トランジスタM1をオフするとともに、同期整流トランジスタM1のバックゲートとソースとの間に接続されたトランジスタM3をオフとすることにより、寄生ダイオードD1を介した電流リーク経路を遮断することができるので、昇圧動作の停止中における突入電流の発生及び電源電圧Vccの低下については、これを未然に回避することが可能である。しかしながら、本構成から成る昇圧型スイッチング電源装置では、昇圧動作の停止中に電源電圧Vccが投入されても、出力キャパシタC1は一切充電されないので、昇圧動作の起動時に同期整流トランジスタM1をオンした時点で、出力電圧Voutは電源電圧Vccよりも低い状態になっており、出力キャパシタC1には大きな突入電流が流れ込むため、上記と同様、電源電圧Vccの低下を招くおそれがあった。
【0007】
また、図5Aや図5Cに示した昇圧型スイッチング電源装置では、昇圧動作中に出力端が地絡(接地端やこれに準ずる低電位端への短絡)すると、同期整流トランジスタM1に過電流が流れて破壊に至るおそれがあった。また、図5Bに示した昇圧型スイッチング電源装置でも、地絡によって同期整流ダイオードD2が破壊に至るおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑み、起動時における出力キャパシタへの突入電流を低減することが可能な昇圧型スイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係る昇圧型スイッチング電源装置は、一端が入力電圧の入力端に接続されたインダクタと、前記インダクタの他端と接地端との間に接続された出力トランジスタと、前記インダクタの他端と出力電圧の出力端との間に接続された同期整流トランジスタと、前記出力電圧の出力端と接地端との間に接続された出力キャパシタと、前記出力トランジスタと前記同期整流トランジスタのスイッチング制御を行う制御部と、を有する昇圧型スイッチング電源装置であって、前記インダクタの他端と前記出力電圧の出力端との間、または、前記入力電圧の入力端と前記出力電圧の出力端との間に、前記同期整流トランジスタよりもオン抵抗値の大きい電流制限トランジスタを有して成り、前記制御部は、スタンバイ状態からアクティブ状態へ移行する際、前記同期整流トランジスタのスイッチング制御を開始するよりも先に、前記電流制限トランジスタを所定期間だけオンさせる構成(第1の構成)とされている。
【0010】
なお、上記第1の構成から成る昇圧型スイッチング電源装置は、前記同期整流トランジスタのバックゲートと前記出力電圧の出力端との間に接続された第1のバックゲート制御トランジスタと;前記同期整流トランジスタのバックゲートと前記インダクタの他端との間、または、前記同期整流トランジスタのバックゲートと前記入力電圧の入力端との間に接続された第2のバックゲート制御トランジスタと;を有して成る構成(第2の構成)にするとよい。
【0011】
また、上記第2の構成から成る昇圧型スイッチング電源装置において、前記制御部は、前記スタンバイ状態では、第2バックゲート制御トランジスタをオンとし、前記出力トランジスタ、前記同期整流トランジスタ、前記電流制限トランジスタ、及び、第1バックゲート制御トランジスタをいずれもオフとする一方、前記アクティブ状態では、第1バックゲート制御トランジスタをオンとし、第2バックゲート制御トランジスタ及び前記電流制限トランジスタをいずれもオフとした上で、前記出力トランジスタ及び前記同期整流トランジスタを相補的にスイッチング制御するものであって、さらに、前記スタンバイ状態から前記アクティブ状態へ移行する際、前半の第1起動状態では、第2バックゲート制御トランジスタ及び前記電流制限トランジスタをいずれもオンとし、前記出力トランジスタ、前記同期整流トランジスタ、及び、第1バックゲート制御トランジスタをいずれもオフとする一方、後半の第2起動状態では、第1バックゲート制御トランジスタ及び前記同期整流トランジスタをいずれもオンとし、前記出力トランジスタ、前記電流制限トランジスタ及び、第2バックゲート制御トランジスタをいずれもオフとする構成(第3の構成)にするとよい。
【0012】
また、上記第1〜第3いずれかの構成から成る昇圧型スイッチング電源装置において、前記制御部は、前記電流制限トランジスタをオンする際、その導通度を徐々に高めていくように、前記電流制限トランジスタのゲート電圧を制御する構成(第4の構成)にするとよい。
【0013】
また、上記第1〜第4いずれかの構成から成る昇圧型スイッチング電源装置は、前記電流制限トランジスタと直列に接続された電流制限抵抗を有して成る構成(第5の構成)にするとよい。
【0014】
また、上記第1〜第5いずれかの構成から成る昇圧型スイッチング電源装置は、前記出力電圧の出力端が地絡しているか否かを検出する地絡検出部を有して成り、前記制御部は地絡が検出されたときに、前記同期整流トランジスタをオフさせて、前記電流制限トランジスタをオンさせる構成(第6の構成)にするとよい。
【0015】
また、上記第1〜第6いずれかの構成から成る昇圧型スイッチング電源装置は、前記出力電圧に応じて変動する帰還電圧と所定の参照電圧との差分を増幅して誤差電圧を生成する誤差増幅器と、所定の三角波電圧を生成する発振器と、前記誤差電圧と前記三角波電圧を比較してPWM信号を生成するPWMコンパレータと、を有して成り、前記制御部は、前記アクティブ状態では、前記PWM信号に基づいて、前記出力トランジスタ及び前記同期整流トランジスタを相補的にスイッチング制御する構成(第7の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る昇圧型スイッチング電源装置であれば、起動時における出力キャパシタへの突入電流を低減することが可能となる。
ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明に係る昇圧型スイッチング電源装置の一実施形態を示す回路ブロック図である。図1に示す通り、本実施形態の昇圧型スイッチング電源装置は、制御部1と、誤差増幅器2と、発振器3と、PWM[Pulse Width Modulation]コンパレータ4と、地絡検出部5と、同期整流トランジスタM1と、出力トランジスタM2と、第1バックゲート制御トランジスタM3と、第2バックゲート制御トランジスタM4と、電流制限トランジスタM5と、インダクタL1と、出力キャパシタC1と、抵抗R1及び抵抗R2と、を有して成る。
【0018】
なお、上記構成要素のうち、インダクタL1、出力キャパシタC1、抵抗R1及びR2以外は半導体装置100に集積化すればよい。その際、半導体装置100には、上記構成要素のほか、他の回路ブロック(低電圧ロックアウト回路や温度保護回路など)を適宜組み込んでも構わない。
【0019】
トランジスタM1は、Pチャネル型MOS[Metal-Oxide-Semiconductor]電界効果トランジスタであり、そのドレインは、外部端子T1(スイッチ端子)に接続されている。トランジスタM1のソースは、外部端子T2(出力端子)に接続されている。トランジスタM1のゲートは、制御部1の第1ゲート信号出力端に接続されている。なお、図1では描写されていないが、トランジスタM1のドレインとバックゲートとの間には、アノードがドレインに接続され、カソードがバックゲートに接続された形で、寄生ダイオードが付随している。
【0020】
トランジスタM2は、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタであり、そのドレインは、外部端子T1に接続されている。トランジスタM2のソース及びバックゲートは、外部端子T3(グランド端子)に接続されている。トランジスタM2のゲートは、制御部1の第2ゲート信号出力端に接続されている。
【0021】
トランジスタM3は、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタであり、そのドレインは、外部端子T2に接続されている。トランジスタM3のソース及びバックゲートは、トランジスタM1のバックゲートに接続されている。トランジスタM3のゲートは、制御部1の第3ゲート信号出力端に接続されている。
【0022】
トランジスタM4は、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタであり、そのドレインは外部端子T1に接続されている。トランジスタM4のソース及びバックゲートは、トランジスタM1のバックゲートに接続されている。トランジスタM4のゲートは、制御部1の第4ゲート信号出力端に接続されている。なお、トランジスタM4のドレインは、外部端子T0(電源端子)に接続しても構わない。
【0023】
トランジスタM5は、トランジスタM1よりもオン抵抗値の大きいPチャネル型MOS電界効果トランジスタであり、そのドレインは、外部端子T1に接続されている。トランジスタM5のソースは、外部端子T2に接続されている。トランジスタM5のゲートは、制御部1の第5ゲート信号出力端に接続されている。トランジスタM5のバックゲートはトランジスタM1のバックゲートに接続されている。なお、トランジスタM5のドレインは、外部端子T0に接続しても構わない。
【0024】
誤差増幅器2の反転入力端(−)は、外部端子T4(帰還端子)に接続されている。誤差増幅器2の非反転入力端(+)は、参照電圧Vrefの印加端に接続されている。PWMコンパレータ4の非反転入力端(+)は、誤差増幅器2の出力端に接続されている。PWMコンパレータ4の反転入力端(−)は、発振器3の出力端に接続されている。PWMコンパレータ4の出力端は、制御部1のPWM信号入力端に接続されている。
【0025】
地絡検出部5は、外部端子T2が地絡(接地端やこれに準ずる低電位端への短絡)しているか否かを検出する手段であり、図1では、地絡検出部5として、反転入力端(−)が外部端子T2に接続され、非反転端(+)が閾値電圧Vthの印加端に接続され、出力端が制御部1の地絡検出信号入力端に接続されたコンパレータが用いられている。
【0026】
半導体装置100の外部において、外部端子T0及びインダクタL1の一端は、それぞれ、入力電圧(図1では電源電圧Vcc)の入力端に接続されている。なお、外部端子T0に与えられた電源電圧Vccは、半導体装置100の内部に集積化されている回路ブロック(図1では、制御部1、誤差増幅器2、発振器3、PWMコンパレータ4、及び、地絡検出部5)の駆動に用いられる。外部端子T1は、インダクタL1の他端に接続されている。外部端子T2は、図示しない負荷に接続されるとともに、出力キャパシタC1を介する経路、及び、抵抗R1と抵抗R2から成る分圧回路を介する経路で、それぞれ接地端に接続されている。外部端子T3は、接地端に接続されている。外部端子T4は、抵抗R1と抵抗R2との接続ノードに接続されている。外部端子T5は、図示しないホスト(セット側CPU[Central Processing Unit]など)のイネーブル信号出力端に接続されている。なお、外部端子T5に与えられたイネーブル信号XSHDNは、制御部1に入力され、昇圧動作のイネーブル/ディセーブル制御に用いられる。
【0027】
まず、上記構成から成る昇圧型スイッチング電源装置の基本動作(昇圧動作)について説明する。
【0028】
トランジスタM2は、制御部1からの第2ゲート電圧に応じてスイッチング制御(開閉制御)される出力トランジスタであり、トランジスタM1は、制御部1からの第1ゲート電圧に応じてスイッチング制御(開閉制御)される同期整流トランジスタである。
【0029】
制御部1は、電源電圧Vccを昇圧して出力電圧Voutを得るに際し、トランジスタM3をオンとし、トランジスタM4及びトランジスタM5をいずれもオフとした上で、トランジスタM1とトランジスタM2を相補的にスイッチング制御する。
【0030】
なお、本明細書中で用いている「相補的」という文言は、トランジスタM1、M2のオン/オフが完全に逆転している場合のほか、貫通電流防止の観点からトランジスタM1、M2のオン/オフ遷移タイミングに所定の遅延を与えている場合をも含むものとする。
【0031】
トランジスタM2がオン状態にされると、インダクタL1には、トランジスタM2を介して接地端に向けたインダクタ電流ILが流れ、その電気エネルギが蓄えられる。なお、トランジスタM2のオン期間において、すでに出力キャパシタC1に電荷が蓄積されていた場合、外部端子T2に接続される負荷(不図示)には、出力キャパシタC1からの電流が流れることになる。また、このとき、同期整流素子であるトランジスタM1は、トランジスタM2のオン状態に対して相補的にオフ状態とされるため、出力キャパシタC1からトランジスタM2に向けて電流が流れ込むことはない。
【0032】
一方、トランジスタM2がオフ状態にされると、インダクタL1に生じた逆起電圧によって、そこに蓄積されていた電気エネルギが放出される。このとき、トランジスタM1はトランジスタM2のオフ状態に対して相補的にオン状態とされるため、外部端子T1からトランジスタM1を介して流れる電流は、外部端子T2から負荷に流れ込むとともに、出力キャパシタC1を介して接地端にも流れ込み、この出力キャパシタC1を充電することになる。上記の動作が繰り返されることによって、負荷には、出力キャパシタC1によって平滑化された出力電圧Voutが供給される。
【0033】
このように、本実施形態の昇圧型スイッチング電源装置は、トランジスタM1、M2のスイッチング制御により、入力電圧Vinを昇圧して出力電圧Voutを生成する。
【0034】
次に、上記構成から成る昇圧型スイッチング電源装置の帰還制御について説明する。
【0035】
誤差増幅器2は、抵抗R1と抵抗R2との接続ノードから引き出される出力帰還電圧Vfb(出力電圧Voutの実際値に相当)と、所定の参照電圧Vref(出力電圧Voutの目標値に相当)との差分を増幅して誤差電圧Verrを生成する。すなわち、誤差電圧Verrの電圧レベルは、出力電圧Voutがその目標値よりも低いほど、高レベルとなる。一方、発振器3は、所定周波数の三角波電圧(鋸波電圧)Vsawを生成する。
【0036】
PWMコンパレータ4は、誤差電圧Verrと三角波電圧Vsawとを比較してPWM信号S1を生成する。すなわち、PWM信号S1のオンデューティ(単位期間に占めるトランジスタM2のオン期間の比)は、誤差電圧Verrと三角波電圧Vsawとの相対的な高低に応じて逐次変動する。具体的に述べると、出力電圧Voutがその目標値よりも低いほど、PWM信号S1のオンデューティは大きくなり、出力電圧Voutがその目標値に近付くにつれて、PWM信号S1のオンデューティは小さくなる。
【0037】
制御部1は、電源電圧Vccを昇圧して出力電圧Voutを得るに際し、PWM信号S1に応じてトランジスタM1及びトランジスタM2を相補的にスイッチング制御する。具体的に述べると、制御部1は、PWM信号S1のハイレベル期間には、トランジスタM2をオン状態、トランジスタM1をオフ状態とする一方、PWM信号S1のローレベル期間には、トランジスタM2をオフ状態、トランジスタM1をオン状態とする。
【0038】
このように、本実施形態の昇圧型スイッチング電源装置は、誤差電圧Verrに基づく出力帰還制御により、出力電圧Voutをその目標値に合わせ込むことができる。
【0039】
次に、上記構成から成る昇圧型スイッチング電源装置の起動動作と地絡保護動作について、図2及び図3を参照しながら詳細に説明する。図2は、昇圧型スイッチング電源装置の起動動作を説明するためのタイミングチャートであり、図3は、昇圧型スイッチング電源装置の動作状態とトランジスタM1〜M5のオン/オフ状態との相関図である。なお、図3では、上から順番に、電源電圧Vcc、出力電圧Vout、イネーブル信号XSHDN、インダクタ電流IL、スイッチ電圧Vsw(スイッチ端子T1に現れる電圧)、並びに、トランジスタM1〜M5のゲート電圧(第1〜第5ゲート信号)が描写されている。
【0040】
時刻t1にて、昇圧型スイッチング電源装置に電源電圧Vccが投入されてから、時刻t2にて、イネーブル信号XSHDNがローレベルからハイレベルに立ち上げられるまでの間、昇圧型スイッチング電源装置は、スタンバイ状態(昇圧動作の待機状態)となる。
【0041】
上記のスタンバイ状態において、制御部1は、トランジスタM4のみをオンとし、その余のトランジスタM1、トランジスタM2、トランジスタM3、及び、トランジスタM5をいずれもオフとする。すなわち、制御部1は、トランジスタM2とトランジスタM4のゲート電圧をローレベル(GND)とし、トランジスタM1、トランジスタM3、及び、トランジスタM5のゲート電圧をハイレベル(Vcc)とする。
【0042】
このようなゲート電圧制御により、トランジスタM1に付随する寄生ダイオードを介した電流リーク経路を含め、外部端子T1から外部端子T2に至る全ての電流リーク経路を確実に遮断することが可能となる。
【0043】
また、トランジスタM4をオンさせることにより、トランジスタM1、M3、M4、M5のバックゲートをスタンバイ状態での最高電位点(スイッチ電圧Vsw(=電源電圧Vcc))に接続することができるので、トランジスタM1、M3、M5のオフ状態をより確実なものとすることが可能となる。
【0044】
時刻t2にて、イネーブル信号XSHDNがローレベルからハイレベルに立ち上げられてから、所定期間Xが経過するまでの間(時刻t2〜時刻t3)、昇圧型スイッチング電源装置は、第1起動状態(出力キャパシタC1のプリチャージ状態)となる。
【0045】
上記の第1起動状態において、制御部1は、トランジスタM4及びトランジスタM5をいずれもオンとし、トランジスタM1〜M3をいずれもオフとする。すなわち、制御部1は、トランジスタM2、トランジスタM4、及び、トランジスタM5のゲート電圧をローレベル(GND)とし、トランジスタM1とトランジスタM3のゲート電圧をハイレベル(Vcc)とする。
【0046】
このようなゲート電圧制御により、スタンバイ状態からアクティブ状態へ移行するに際して、トランジスタM1のスイッチング制御を開始するよりも先に、トランジスタM1よりもオン抵抗値の大きいトランジスタM5を所定期間Xだけオンさせて、トランジスタM5を介する電流経路で出力キャパシタC1を緩やかに充電しておくことができるので、出力キャパシタC1に過大な突入電流が流れ込むことを未然に回避して、電源電圧Vccの低下を防止することが可能となる。
【0047】
なお、イネーブル信号XSHDNがハイレベルに立ち上げられた時点で、電源電圧Vccが投入されていない場合や、電源電圧Vccが所定の電圧レベルまで上昇していない場合、昇圧型スイッチング電源装置は、電源電圧Vccが所定の電圧レベルに達するのを待ってから、上記の第1起動状態に移行する。
【0048】
また、上記の第1起動状態において、制御部1は、トランジスタM5をオンする際、その導通度を徐々に高めていくように、トランジスタM5のゲート電圧をハイレベル(Vcc)からローレベル(GND)にスイープ制御する構成としてもよい。このような構成とすることにより、トランジスタM5を介して出力キャパシタC1に流れ込む電流を徐々に大きくすることができるので、突入電流をより一層抑制することが可能となる。
【0049】
時刻t3にて、上記の第1起動状態が満了されてから、さらに所定期間Yが経過するまでの間(時刻t3〜時刻t4)、昇圧型スイッチング電源装置は、第2起動状態(アクティブ状態への移行準備状態)となる。
【0050】
上記の第2起動状態において、制御部1は、トランジスタM1及びトランジスタM3をいずれもオンとし、トランジスタM2、トランジスタM4、及び、トランジスタM5をいずれもオフとする。すなわち、制御部1は、トランジスタM1〜M3のゲート電圧をローレベル(GND)とし、トランジスタM4とトランジスタM5のゲート電圧をハイレベル(Vcc)とする。
【0051】
このようなゲート電圧制御により、アクティブ状態への移行に先立ち、トランジスタM5をオフする際には、これと同時にトランジスタM1がオンされる形となるので、出力キャパシタC1のプリチャージを継続することが可能となる。
【0052】
なお、上記の所定期間X、Yを計時する手段としては、スタンバイ状態の解除と同時にカウント動作を開始するタイマ(カウンタ)を用いる構成としてもよいし、或いは、スタンバイ状態の解除と同時に電圧レベルが緩やかに上昇し始めるソフトスタート電圧Vssをモニタし、ソフトスタート電圧Vssと閾値電圧Vx、Vy(それぞれ所定期間X、Yに相当)との比較結果に基づいて、第1起動状態から第2起動状態への移行処理、及び、第2起動状態からアクティブ状態への移行処理を行う構成としてもよい。
【0053】
なお、上記のソフトスタート電圧Vssは、誤差増幅器2の非反転入力端(+)に入力される参照電圧Vrefとして用いてもよいし、或いは、PWMコンパレータ4の非反転入力端(+)に対して、誤差電圧Verrとソフトスタート電圧Vssを並列に入力しておき、PWMコンパレータ4において、誤差電圧Verrとソフトスター電圧Vssのいずれか低い方と、三角波電圧Vsawとを比較する構成としてもよい。
【0054】
時刻t4にて、上記の第2起動状態が満了されると、昇圧型スイッチング電源装置は、アクティブ状態(昇圧動作状態)となる。
【0055】
上記のアクティブ状態において、制御部1は、先述した通り、トランジスタM3をオンとし、トランジスタM4及びトランジスタM5をいずれもオフとした上で、トランジスタM1とトランジスタM2を相補的にスイッチング制御する。すなわち、制御部1は、トランジスタM3のゲート電圧をローレベル(GND)に固定し、また、トランジスタM4とトランジスタM5のゲート電圧をハイレベル(Vout)に固定した上で、トランジスタM1とトランジスタM2のゲート電圧をローレベル(GND)とハイレベル(Vout)の間でパルス駆動する。
【0056】
このようなゲート電圧制御により、トランジスタM1、M2の相補的なスイッチング制御を行い、入力電圧Vinを昇圧して出力電圧Voutを生成することが可能となる。
【0057】
また、制御部1は、地絡検出部5からの地絡検出信号S2をモニタしており、外部端子T2に地絡が生じていると判断したとき(すなわち、地絡検出信号S2が起動直後以外のタイミングでハイレベルとなっているとき)には、トランジスタM4及びトランジスタM5をいずれもオンとし、トランジスタM1〜M3をいずれもオフとする。すなわち、地絡検出時において、制御部1は、トランジスタM2、トランジスタM4、及び、トランジスタM5のゲート電圧をローレベル(GND)とし、トランジスタM1とトランジスタM3のゲート電圧をハイレベル(Vcc)とする。
【0058】
このようなゲート電圧制御により、地絡検出時には、トランジスタM1よりもオン抵抗値の大きいトランジスタM5を介する経路で電流を流すことができるので、過電流のピーク値を抑えることが可能となる。
【0059】
また、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【0060】
例えば、上記実施形態では、起動時ないしは出力地絡時に流れる電流を抑制するための電流制限素子として、トランジスタM5のみを設けた構成を例に挙げたが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、図4に示すように、トランジスタM5と直列に接続された電流制限抵抗R3を有して成る構成としても構わない。
【0061】
このような構成とすることにより、トランジスタM5のオン抵抗値を極端に大きく設計する必要がなくなるので、素子サイズの縮小に伴うトランジスタM5の耐圧不足などを解消することができる。また、電流制限抵抗R3を用いる構成であれば、レーザトリミングによって、電流制限抵抗R3の抵抗値を任意かつ容易に調整することができるので、半導体装置100の許容損失等に応じた電流制限を実施することが可能となる。
【0062】
なお、図4では、電流制限抵抗R3をトランジスタM5のソースと外部端子T2との間に挿入した構成を例示したが、その挿入位置についてはこれに限定されるものではなく、トランジスタM5のドレインと外部端子T1(または外部端子T0)との間に挿入してもよいし、上記双方の位置に挿入しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、昇圧型スイッチング電源装置の信頼性を高める上で有用な技術であり、入力電圧よりも高い出力電圧が必要な電子機器全て(例えば、ブルーレイディスクドライブなどの光ディスクドライブや、デジタルスチルカメラ/デジタルビデオカメラ/携帯電話などのポータブル機器)に利用可能な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】は、本発明に係る昇圧型スイッチング電源装置の一実施形態を示す回路ブロック図である。
【図2】は、昇圧型スイッチング電源装置の動作状態とトランジスタM1〜M5のオン/オフ状態との相関図である。
【図3】は、昇圧型スイッチング電源装置の起動動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】は、本発明に係る昇圧型スイッチング電源装置の一変形例を示す回路ブロック図である。
【図5A】は、昇圧型スイッチング電源装置の第1従来例を示す回路図である。
【図5B】は、昇圧型スイッチング電源装置の第2従来例を示す回路図である。
【図5C】は、昇圧型スイッチング電源装置の第3従来例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0065】
1 制御部
2 誤差増幅器
3 発振器
4 PWMコンパレータ
5 地絡検出部(コンパレータ)
100 半導体装置
M1 同期整流トランジスタ(Pチャネル型MOSトランジスタ)
M2 出力トランジスタ(Nチャネル型MOSトランジスタ)
M3 第1バックゲート制御トランジスタ(Pチャネル型MOSトランジスタ)
M4 第2バックゲート制御トランジスタ(Pチャネル型MOSトランジスタ)
M5 電流制限トランジスタ(Pチャネル型MOSトランジスタ)
L1 インダクタ
C1 出力キャパシタ
R1〜R2 抵抗
R3 電流制限抵抗
T1〜T5 外部端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が入力電圧の入力端に接続されたインダクタと、前記インダクタの他端と接地端との間に接続された出力トランジスタと、前記インダクタの他端と出力電圧の出力端との間に接続された同期整流トランジスタと、前記出力電圧の出力端と接地端との間に接続された出力キャパシタと、前記出力トランジスタと前記同期整流トランジスタのスイッチング制御を行う制御部と、を有する昇圧型スイッチング電源装置であって、
前記インダクタの他端と前記出力電圧の出力端との間、または、前記入力電圧の入力端と前記出力電圧の出力端との間に、前記同期整流トランジスタよりもオン抵抗値の大きい電流制限トランジスタを有して成り、
前記制御部は、スタンバイ状態からアクティブ状態へ移行する際、前記同期整流トランジスタのスイッチング制御を開始するよりも先に、前記電流制限トランジスタを所定期間だけオンさせることを特徴とする昇圧型スイッチング電源装置。
【請求項2】
前記同期整流トランジスタのバックゲートと前記出力電圧の出力端との間に接続された第1バックゲート制御トランジスタと;前記同期整流トランジスタのバックゲートと前記インダクタの他端との間、または、前記同期整流トランジスタのバックゲートと前記入力電圧の入力端との間に接続された第2バックゲート制御トランジスタと;を有して成ることを特徴とする請求項1に記載の昇圧型スイッチング電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記スタンバイ状態では、第2バックゲート制御トランジスタをオンとし、前記出力トランジスタ、前記同期整流トランジスタ、前記電流制限トランジスタ、及び、第1バックゲート制御トランジスタをいずれもオフとする一方、前記アクティブ状態では、第1バックゲート制御トランジスタをオンとし、第2バックゲート制御トランジスタ及び前記電流制限トランジスタをいずれもオフとした上で、前記出力トランジスタ及び前記同期整流トランジスタを相補的にスイッチング制御するものであって、さらに、
前記スタンバイ状態から前記アクティブ状態へ移行する際、前半の第1起動状態では、第2バックゲート制御トランジスタ及び前記電流制限トランジスタをいずれもオンとし、前記出力トランジスタ、前記同期整流トランジスタ、及び、第1バックゲート制御トランジスタをいずれもオフとする一方、後半の第2起動状態では、第1バックゲート制御トランジスタ及び前記同期整流トランジスタをいずれもオンとし、前記出力トランジスタ、前記電流制限トランジスタ、及び、第2バックゲート制御トランジスタをいずれもオフとすることを特徴とする請求項2に記載の昇圧型スイッチング電源装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記電流制限トランジスタをオンする際、その導通度を徐々に高めていくように、前記電流制限トランジスタのゲート電圧を制御することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の昇圧型スイッチング電源装置。
【請求項5】
前記電流制限トランジスタと直列に接続された電流制限抵抗を有して成ることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の昇圧型スイッチング電源装置。
【請求項6】
前記出力電圧の出力端が地絡しているか否かを検出する地絡検出部を有して成り、
前記制御部は、地絡が検出されたときに、前記同期整流トランジスタをオフさせて、前記電流制限トランジスタをオンさせることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の昇圧型スイッチング電源装置。
【請求項7】
前記出力電圧に応じて変動する帰還電圧と所定の参照電圧との差分を増幅して誤差電圧を生成する誤差増幅器と、所定の三角波電圧を生成する発振器と、前記誤差電圧と前記三角波電圧を比較してPWM信号を生成するPWMコンパレータと、を有して成り、
前記制御部は、前記アクティブ状態では、前記PWM信号に基づいて、前記出力トランジスタ及び前記同期整流トランジスタを相補的にスイッチング制御することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の昇圧型スイッチング電源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate


【公開番号】特開2010−130826(P2010−130826A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304252(P2008−304252)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】