説明

昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法

【課題】昇華型感熱転写リボンへの加工性に優れ、さらに熱転写プリンターで高速で印画しても、伸びシワや収縮シワや破断等が発生せず、かつ印画性に優れたリボンを作製するのに好適な昇華型感熱転写リボン用二軸延伸PEsフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】未延伸PEsシートを横−縦−横の順に逐次二軸延伸して製造される昇華型感熱転写リボン用二軸延伸PEsフィルムの製造方法であって、平均粒径2.0〜5.0μmの大粒子を200〜800ppmと平均粒径0.1〜1.5μmの小粒子を1000〜3000ppm含有する未延伸PEsシートを、二軸延伸フィルムの縦方向の5%伸張強度が100MPaPa以上かつ縦方向と横方向の破断強度差が20〜90MPaとなるように、第1段目の横延伸の倍率を3.0〜4.5倍、第2段目の縦延伸の倍率を3.2〜4.5倍、第3段目の横延伸の倍率を1.1〜1.5倍にして製造することを特徴とする昇華型感熱転写リボン用二軸延伸PEsフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法に関し、さらに詳細には、昇華型感熱転写プリンターで高速で印画してもインクのかすれがなく、かつサーマルヘッドと接触した際、伸びシワまたは収縮シワが発生しにくいリボンを作製するのに好適な昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感熱転写記録方式は、基材フィルム表面に設けられたインク層を、サーマルヘッドの加熱状態に応じて受像紙などの表面に転写する記録方式であり、印画が鮮明であるとともに、装置の簡便さや低騒音の観点から広く普及しつつある。その中でも昇華型感熱転写法は、基材上に塗布されたインク層のインクをサーマルヘッドにより加熱・気化させることにより受像紙に転写するものである。昇華型感熱転写法は、溶融型感熱転写法に比べ階調性が優れていることから、ビデオプリンター、デジタルカメラやデジタルビデオなどのフルカラー映像コピー用を中心に需要が拡大しつつある。
【0003】
また、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルフィルムは、機械的強度、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性など、多くの性能に優れており、コストパフォーマンスに優れているため、昇華型感熱転写リボン用基材フィルムとして一般に使用されている。
【0004】
感熱転写リボンに用いるポリエステルフィルムとして、縦方向の5%伸張強度を14kgf/mm以上に制御したポリエステルフィルムや縦方向の5%伸張強度を100MPa以上に制御したポリエステルフィルムが開示されている。(例えば、特許文献1、2を参照)。
【0005】
しかしながら、これらのポリエステルフィルムから作製したリボンを用いて熱転写プリンターで印画させた場合、シワが発生しやすいという問題があった。
【特許文献1】特開平9−052457号公報
【特許文献2】特開2005−238623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点に鑑み、昇華型感熱転写リボンへの加工性に優れ、さらに熱転写プリンターで高速で印画しても、シワが発生せず、かつ印画性に優れたリボンを作製するのに好適な昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、未延伸ポリエステルシートを、横延伸、縦延伸、横延伸の順に逐次二軸延伸して製造される昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であって、
平均粒径2.0〜5.0μmの粒子(大)を200〜800ppmと平均粒径0.1〜1.5μmの粒子(小)を1000〜3000ppm含有する未延伸ポリエステルシートを、二軸延伸ポリエステルフィルムの縦方向の5%伸張強度が100MPa以上かつ縦方向と横方向の破断強度差(縦方向−横方向)が20〜90MPaとなるように、第1段目の横延伸の倍率を3.0〜4.5倍に、第2段目の縦延伸の倍率を3.2〜4.5倍に、第3段目の横延伸の倍率を1.1〜1.5倍にして製造することを特徴とする昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法で得られる二軸延伸ポリエステルフィルムは、昇華型感熱転写リボンへの加工工程でシワまたはタルミ等が発生しにくく、さらに本発明の方法で得られたポリエステルフィルムの一方の面に熱転写インキ層を設け、他方の面に耐熱層を設けた昇華転写型感熱転写リボンは熱転写プリンターの印字速度の高速化に対応し、サーマルヘッドによる印加エネルギーが高い条件下で印画させた際、伸びシワや収縮シワや破断等が発生することなく、優れた印画性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明では、フィルムを構成するポリエステルは、エチレンテレフタレート成分を主たる構成成分とすることが昇華型感熱転写リボンへの加工工程やリボンを熱転写プリンターで印画した際にシワやタルミや破断等を抑制する点で重要である。
【0010】
本発明では、フィルムを構成するポリエステルは、その目的を阻害しない範囲で他の共重合成分を含むことができる。使用できる他の共重合成分のうち、ジカルボン酸成分として、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸,コハク酸,アジピン酸,セバシン酸,デカンジカルボン酸,マレイン酸,フマル酸,ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が使用できる。使用できる上記のジカルボン酸およびそれらのエステル誘導体の量は10モル%以下が好ましく、5モル%以下がさらに好ましい。他のジカルボン酸およびそれらのエステル誘導体の使用量が10モル%を超えるとポリエステルの熱安定性が悪くなる。
【0011】
また、グリコール成分として、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物,ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が使用できる。このほか少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を含有する化合物を含んでいてもよい。ここで、使用できる他のグリコール成分の量は10モル%以下が好ましく、5モル%以下がさらに好ましい。他のグリコール成分の使用量が10モル%を超えるとポリエステルの熱安定性が悪くなる。
【0012】
本発明の製造方法では、横方向に第1段目の延伸を行い、次いで縦方向に第2段目の延伸を行い、さらに横方向に第3段目の延伸を行って、得られるポリエステルフィルムの縦方向の5%伸張強度を100MPa以上かつ縦方向と横方向の破断強度差(縦方向−横方向)を20〜90MPaに制御することが、サーマルヘッドによる印加エネルギーが高い条件下での印画性を良好にするために重要である。
【0013】
縦方向の5%伸張強度を100MPa以上で、かつ、縦方向と横方向の破断強度差(縦方向−横方向)が20MPa以上の場合、熱転写プリンターで印画させた際に、伸びシワによる印画性の不良を抑制することができる。また、破断強度差(縦方向−横方向)が90MPa以下の場合、熱転写プリンターで印画させた際に、収縮シワによる印画性の不良を抑制することができる。
【0014】
本発明では、第1段目の横延伸は、ポリエステルのガラス転移温度以上の温度で3.0〜4.5倍に延伸し、第2段目の縦延伸は、ポリエステルのガラス転移温度以上の温度で3.2〜4.5倍に延伸し、第3段目の横延伸は、ポリエステルのガラス転移温度以上の温度で1.1〜1.5倍に延伸する。
【0015】
第1段目の横延伸において、延伸倍率を3.0以上とすることで、フィルムの平面性を向上させ、熱転写プリンターで印画させた際に、リボンの受像紙への密着性が向上し、印画性が良好になる。
【0016】
第2段目の縦延伸において、延伸倍率を3.2以上とすることで、縦方向の5%伸張強度を100MPa以上に制御しやすくなる。
【0017】
また、第3段目の横延伸において、延伸倍率を1.1倍以上とすることで、縦方向と横方向の破断強度差(縦方向−横方向)を90MPa以下に制御しやすくなる。
【0018】
一方、第1段目の横延伸の倍率を4.5倍以下にし、かつ第2段目の縦延伸の倍率を4.5倍以下にすることで、第2段目の縦延伸後にシワが発生することを抑制でき、第3段目延伸で破断することを抑制することができる。また、第3段目の横延伸倍率を1.5倍以下にすることで、第3段目の横延伸で破断することができる。
【0019】
本発明では、第3段目の横延伸の後、140〜230℃で巾方向を一定長とした熱固定(例えば、フィルムの両端をクリップで把持して行う熱固定)を行い、次いで、140〜230℃の温度範囲で巾方向に1〜8%の緩和処理を行うことは、寸法安定性の向上の点から好ましい。
【0020】
本発明では、二軸延伸ポリエステルフィルムの表面の10点平均粗さ(SRz)が1500nmを超え2200nm以下に制御することは、フィルム製造工程または昇華型感熱転写リボンに加工する工程における巻取り性や走行性を良好にし、かつ熱転写プリンターでのリボンの印画性を良好にさせる点から好ましい。
【0021】
二軸延伸ポリエステルフィルムの表面の10点平均粗さ(SRz)を、1500nmを超えるようにすることで、フィルム製造工程または昇華型感熱転写リボンに加工する工程における巻取り性や走行性が良好になる。一方、SRzを2200nm以下にすることで、熱転写プリンターとした際に、リボンの印画性が良好になる(かすれが発生しにくくなる)。
【0022】
ポリエステルフィルムの表面の10点平均粗さ(SRz)を上記範囲に制御するには、ポリエステルフィルムに平均粒径2.0〜5.0μmの粒子(大)を0.02〜0.08質量%と平均粒径0.1〜1.5μmの粒子(小)を0.10〜0.30質量%含有させることが好ましい。大粒径の粒子としてシリカを、小粒径の粒子として、炭酸カルシウムとカオリンの2種類を用いることがさらに好ましい。
【0023】
本発明では、二軸延伸ポリエステルフィルムの固有粘度は、0.52〜0.65dl/gであることが好ましい。フィルムの固有粘度を0.52dl/g以上とすることで、ポリエステルフィルム製造時や、昇華型感熱転写リボンに加工する工程において、破断を抑制することができる。一方、フィルムの固有粘度を0.65dl/g以下にすることで、、所定の製品巾に裁断するスリット工程において寸法不良が起こりにくくなる。
【0024】
本発明では、二軸延伸ポリエステルフィルムを昇華熱転写用基材として用いるため、フィルムの厚みは2〜7μmが好ましい。厚みの下限は3μmがさらに好ましく、厚みの上限は6μmがさらに好ましい。ポリエステルフィルムの厚みを2μm以上にすることで、ポリエステルフィルム製造時や昇華型感熱転写リボンに加工する工程において、破断を抑制することができる。一方、ポリエステルフィルムの厚みを7μm以下にすることで、フィルムの厚み方向の熱伝導が良好になり、また熱が2次元的に拡散することを抑制することができるため、高速で印画する際の印画性に優れる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例をもとに本発明を説明する。まず、実施例および比較例に用いた評価方法について説明する。
【0026】
(1)ポリエステルの固有粘度(IV)
ポリエステル試料0.1gを、フェノール/テトラクロロエタン(容積比で3/2)の混合溶媒25ml中に溶解させ、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。
【0027】
(2)粒子の平均粒径
粒子を水に分散させたスラリー化した後、レーザー回折式粒度分布計(リーズアンドノースラップ社製、マイクロトラックHRA)を用いて平均粒径を測定した。
【0028】
(3)ポリエステルフィルムの5%伸張強度と破断強度
JIS−C−2151に準拠して測定する。
【0029】
(4)ポリエステルフィルム表面の10点平均粗さ(SRz)
JIS−B0602で定義される値であり、(株)小坂研究所の触針式表面粗さ計(SE−3AKとSPA−11)を用いて測定し、n=5の平均値をSRzとした。
【0030】
(測定条件)
触針先端半径:2μm
測定圧力 :30mg
カットオフ :0.25mm
測定長 :1mm
走査回数:150回
【0031】
(5)昇華型感熱転写リボンの作製
下記組成の耐熱性バックコート層用塗布液を、塗膜の厚みが0.7μmになるようにグラビアコーターで塗工し、80℃で乾燥した後巻取った。次いで、耐熱性バックコート層とは反対面に、易接着層用塗布液を塗膜の厚みが0.1μmになるようにグラビアコーターで塗工し、80℃で乾燥した後、昇華型感熱転写インク層用塗液を塗膜厚みが1.0μmになるようにグラビアコーターで塗工し、100℃で乾燥させて昇華型感熱転写リボンを作製した。塗工条件は100m/分、張力49N/mで行い、巻取り時の接圧は490N/mとした。
【0032】
(易接着層用塗布液組成)
・アクリル変性ポリエステル 2.78質量%
・エポキシ樹脂 0.02質量%
・ノニオン型界面活性剤 0.20質量%
・水 97.00質量%
【0033】
(耐熱性バックコート層用塗布液組成)
・ポリビニルブチラール樹脂 1.60質量部
・ポリイソシアネート 8.46質量部
・リン酸エステル系界面活性剤 1.36質量部
・タルク 0.32質量部
・メチルエチルケトン 38.43質量部
・トルエン 38.43質量部
【0034】
(昇華型感熱転写インク層用塗布液組成)
・マゼンタ染料(MSRedG) 3.5質量%
・ポリビニルアセトアセタール樹脂 3.5質量%
・メチルエチルケトン 46.5質量%
・トルエン 46.5質量%
【0035】
(6)昇華型感熱転写リボンの印画性評価
印画性受像シートVY・200((株)日立製作所製 標準ペーパー 商品名)に、プリンター日立VY・200((株)日立製作所製 商品名)を用いて光学濃度が最大になるように印画した。なお、○を実用性ありと評価した。
○:鮮明に印画できる
△:リボンの伸びシワにより印画濃度が均一とならない
×:リボンの収縮シワまたはリボンの受像紙への密着不良により印画が乱れる
××:印画抜け(かすれ)が発生する
【0036】

実施例および比較例に用いた製造条件(粒子の種類、含有率、延伸倍率)を表1に、二軸延伸ポリエステルフィルムの物性(5%伸張強度、縦方向と横方向との破断強度差(縦方向−横方向)、ポリエステルフィルム表面の10点平均粗さ(SRz))及び昇華型感熱転写リボンの印画性を表2に示す。
【0037】
実施例および比較例に用いたポリエステル原料A〜D(いずれも、固有粘度が0.58dl/gで粒子の含有量が異なるポリエステル原料)は、下記に示すものを使用した。
【0038】
(1)ポリエステルA
ポリエステルAは、平均粒径が3.5μmの凝集シリカを500ppm、平均粒径が0.8μmのカオリンを800ppm、平均粒径が0.8μmの合成炭酸カルシウムを1500ppm含有するポリエチレンテレフタレートである。
【0039】
(2)ポリエステルB
ポリエステルBは、平均粒径が3.5μmの凝集シリカを300ppm、平均粒径が0.8μmのカオリンを500ppm、平均粒径が0.8μmの合成炭酸カルシウムを1900ppm含有するポリエチレンテレフタレートである。
【0040】
(3)ポリエステルC
ポリエステルCは、平均粒径が3.5μmの凝集シリカを100ppm、平均粒径が0.8μmのカオリンを200ppm、平均粒径が0.8μmの合成炭酸カルシウムを2300ppm含有するポリエチレンテレフタレートである。
【0041】
(4)ポリエステルD
ポリエステルDは、平均粒径が3.5μmの凝集シリカを900ppm、平均粒径が0.8μmのカオリンを1700ppm、平均粒径が0.8μmの合成炭酸カルシウムを500ppm含有するポリエチレンテレフタレートである。
【0042】
[実施例1] ポリエステルAを120℃で24時間減圧乾燥(1.3hPa)し、単軸押出機を用いて280℃で溶融させた後、45cm幅のTダイより冷却ロール(周速50m/分)上へキャストして未延伸シートを得た。なお、キャストの際に、冷却ロール周面に対向するように設置した直径が30μmのタングステンワイヤー電極から7.2kVの電圧を印加し、0.2mAの電流を流して静電密着させた。
該未延伸シートをテンターで予熱温度92℃、延伸温度86℃で横方向に3.7倍延伸し(第1段目延伸)、予熱温度80℃、延伸温度105℃で縦方向に3.8倍延伸し(第2段目延伸)、180℃で1.15倍再横延伸し(第3段目延伸)、220℃で定長巾熱処理した後、220℃で横方向に1.3%緩和処理し、さらに170℃で横方向に2.0%緩和処理して、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表2に示すとおり、5%伸張強度が115MPaであり、縦方向と横方向との破断強度差(縦方向−横方向)が51MPaであり、SRzが1710nmであった。そのため、この二軸延伸ポリエステルフィルムを用いて作製した昇華型感熱転写リボンは、印画性に優れていた。したがって、本実施例1の製造方法は、昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法として好適である。
【0043】
[実施例2]
第2段目延伸倍率を4.0倍とした以外は実施例1と同様にして、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表2に示すとおり、5%伸張強度が119MPaであり、縦方向と横方向との破断強度差(縦方向−横方向)が72MPaであり、SRzが1740nmであった。そのため、この二軸延伸ポリエステルフィルムを用いて作製した昇華型感熱転写リボンは、印画性に優れていた。したがって、本実施例2の製造方法は、昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルム製造方法として好適である。
【0044】
[実施例3]
ポリエステルBを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表2に示すとおり、5%伸張強度が115MPaであり、縦方向と横方向との破断強度差(縦方向−横方向)が51MPaであり、SRzが1550nmであった。そのため、この二軸延伸ポリエステルフィルムを用いて作製した昇華型感熱転写リボンは、印画性に優れていた。したがって、本実施例3の製造方法は、昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法として好適である。
【0045】
[比較例1]
実施例1と同様にして得た未延伸シートを、テンターで予熱温度101℃、延伸温度94℃で横方向に3.8倍延伸し(第1段目延伸)、予熱温度80℃、延伸温度105℃で縦方向に4.6倍延伸し(第2段目延伸)、215℃で定長巾熱処理した後、215℃で横方向に4.5%緩和処理して、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表2に示すとおり、5%伸張強度が144MPaであり、縦方向と横方向との破断強度差(縦方向−横方向)が99MPaであり、SRzが1760nmであった。そのため、この二軸延伸ポリエステルフィルムを用いて作製した昇華型感熱転写リボンは、印画性に劣っていた。したがって、本比較例1の製造方法は、昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法として好ましくない。
【0046】
[比較例2]
実施例1と同様にして得た未延伸シートを、テンターで予熱温度92℃、延伸温度86℃で横方向に3.2倍延伸し(第1段目延伸)、予熱温度80℃、延伸温度105℃で縦方向に3.1倍延伸し(第2段目延伸)、170℃で1.3倍再横延伸した以外は実施例1と同様にして厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すとおり、5%伸張強度が94MPaであり、縦方向と横方向との破断強度差(縦方向−横方向)が6MPaであり、SRzが1710nmであった。そのため、この二軸延伸ポリエステルフィルムを用いて作製した昇華型感熱転写リボンは、印画性に劣っていた。したがって、本比較例2の製造方法は、昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法として好ましくない。
【0047】
[比較例3]
第3段目の横延伸の倍率を1.6倍とした以外は実施例1と同様にして製膜しようとしたが、熱固定ゾーンでフィルムが破断し、ポリエステルフィルムを安定して得ることができなかった。
【0048】
[比較例4]
第1段目の横延伸倍率を2.8倍とした以外は実施例1と同様にして厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表2に示すとおり、5%伸張強度が123MPaであり、縦方向と横方向との破断強度差(縦方向−横方向)が89MPaであり、SRzが1710nmであった。そのため、この二軸延伸ポリエステルフィルムを用いて作製した昇華型感熱転写リボンは、リボンの受像紙への密着不良が起こり、昇華型感熱転写リボンの印画性に劣っていた。したがって、本比較例4の製造方法は、昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法として好ましくない。
【0049】
[比較例5]
ポリエステルCを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得ようとしたが、緩和処理後にフィルムを巻取る際にシワが入った。そのため、この二軸延伸ポリエステルフィルムを用いて昇華型感熱転写リボンを作製することを止めた。したがって、本比較例5の製造方法は、昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法として好ましくなかった。
なお、得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表2に示すとおり、5%伸張強度が115MPaであり、縦方向と横方向との破断強度差(縦方向−横方向)が51MPaであり、SRzが1170nmであった。
【0050】
[比較例6]
ポリエステルDを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すとおり、表2に示すとおり、5%伸張強度が115MPaであり、縦方向と横方向との破断強度差(縦方向−横方向)が51MPaであり、SRzが2330nmであった。そのため、この二軸延伸ポリエステルフィルムを用いて作製した昇華型感熱転写リボンは、印画性に劣っていた。したがって、本比較例6の製造方法は昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法として好ましくない。
【0051】
【表1】

注1)熱固定ゾーンで破断し、フィルムを製造できず。
注2)フィルム製造時の巻取り工程でシワ発生。
【0052】
【表2】

【0053】
以上、本発明の昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲において、明細書に開示した材料、製造条件を適宜組み合わせることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の製造方法により得られた二軸延伸ポリエステルフィルムを用いて作製した昇華型感熱転写リボンは、熱転写プリンターの印画速度の高速化に対応し、サーマルヘッドによる印加エネルギーが高い条件下で印画させた際、伸びシワや収縮シワや破断等が発生することなく、優れた印画性を示すため極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未延伸ポリエステルシートを、横延伸、縦延伸、横延伸の順に逐次二軸延伸して製造される昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であって、
平均粒径2.0〜5.0μmの粒子(大)を200〜800ppmと平均粒径0.1〜1.5μmの粒子(小)を1000〜3000ppm含有する未延伸ポリエステルシートを、二軸延伸ポリエステルフィルムの縦方向の5%伸張強度が100MPa以上かつ縦方向と横方向の破断強度差(縦方向−横方向)が20〜90MPaとなるように、第1段目の横延伸の倍率を3.0〜4.5倍に、第2段目の縦延伸の倍率を3.2〜4.5倍に、第3段目の横延伸の倍率を1.1〜1.5倍にして製造することを特徴とする昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項2】
粒子(大)がシリカ、粒子(小)が炭酸カルシウムまたはカオリンの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2008−80772(P2008−80772A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266793(P2006−266793)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】