説明

昇降機の保守管理システム

【課題】地図上で異常発生した物件の場所を簡単に特定できると共に、その物件の周辺に存在する保守員をレベル別に確認する。
【解決手段】エレベータの監視センタに設置されたサーバ31は、物件データベース43aと地図データベース43cを用いて、指定地域の地図に各物件のマークを付してオペレータの端末装置に表示する。ここで、所定の操作により任意の物件マークが選択されると、サーバ31は、その選択された物件マークがほぼ画面中心にくるように表示範囲を変更する。また、その変更後の地図上に当該物件周辺の保守員の位置とそのスキルレベルを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータやエスカレータなどの昇降機の保守点検を行う保守員の動静を管理するための昇降機の保守管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各物件のエレベータは、通信ネットワークを介して監視センタに接続されている。監視センタには、多数のオペレータが就役している。各オペレータは、それぞれに監視卓と呼ばれる端末装置の画面を通じて各物件のエレベータの動作状態を遠隔監視すると共に、これらのエレベータの保守点検を行う保守員の動静を管理している。
【0003】
ここで、保守員の動静を管理するシステムとして、例えば特許文献1がある。この特許文献1には、異常発生の発報があった場合に、モニタの地図上に異常発生した物件(ビル)の位置を表示すると共に、その発生場所に対する保守員の対応可能範囲を表示することが開示されている。
【特許文献1】特開2004−110117号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の保守管理システムにおいて、地図の表示範囲を変更(拡大/縮小)すると、当該物件の表示位置がずれてしまい、見失うことがある。そのため、異常発生時に物件の場所をすぐに特定できず、その対応に遅れが生じることがある。
【0005】
また、上記特許文献1では、物件と保守員との位置関係を確認することができても、保守員の保守点検に関わる技術的なレベル(スキルレベル)までは分からない。このため、何らかの異常が生じた場合、その物件に近い保守員を派遣しても、そのときの異常の状況によっては適切に対応できないことがある。
【0006】
本発明は上記のような点に鑑みなされたもので、地図上で異常発生した物件の場所を簡単に特定できると共に、その物件の周辺に存在する保守員をレベル別に確認して適切に対応することのできる昇降機の保守管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の昇降機の保守管理システムは、各地域に点在する物件を保守点検する各保守員の動静を管理する昇降機の保守管理システムにおいて、上記各物件に関する情報を記憶した物件データベースと、上記各地域の地図情報を記憶した地図データベースと、上記物件データベースから指定地域の地図を検索すると共に、上記指定地域に存在する物件の位置を上記物件データベースから検索するデータベース検索手段と、このデータベース検索手段によって得られた上記指定地域の地図上に物件マ−クを付して所定の端末装置に表示する地図表示手段と、この地図表示手段によって表示された地図上で任意の物件マークが選択された際に、その選択された物件マークがほぼ画面中心にくるように表示範囲を変更すると共に、変更後の地図上に当該物件周辺に存在する保守員の位置とその保守員のスキルレベルを表示する表示処理手段とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、地図上で異常発生した物件の場所を簡単に特定できると共に、その物件の周辺に存在する保守員をレベル別に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施形態に係る昇降機としてエレベータを例にした場合の保守管理システムの構成を示す図である。図中の11a,11b,11c…は、顧客の物件(建物)を示している。
【0011】
これらの物件11a,11b,11c…は、それぞれにエレベータ(EL)12a,12b,12c…が設置されている。なお、物件によって、エレベータの設置台数が異なる。つまり、1台のエレベータしか設置されていない物件や、多数のエレベータが設置されていない物件が混在する。
【0012】
エレベータ12a,12b,12c…は、公衆回線等の通信ネットワーク13を介して監視センタ14に接続されている。監視センタ14では、各エレベータ12a,12b,12c…から発報される信号を受信して、これらの動作状態を常時監視している。
【0013】
ここで、エレベータ12aを代表として、図2にその構成を示す。
【0014】
エレベータ12aは、巻上機21と、この巻上機21に巻き掛けられたロープ22と、そのロープ22の一端に取り付けられた乗りかご23と、他端に取り付けられたカウンタウェイト24とを備える。巻上機21は、物件(建物)11aの機械室などに設置されている。この巻上機21の回転駆動により、ロープ22を介して乗りかご23とカウンタウェイト24が昇降路内をつるべ式に移動する。
【0015】
制御装置25は、CPU、ROM、RAMなどを搭載したコンピュータからなり、巻上機21の駆動制御などを含むエレベータ全体の制御を行う。また、この制御装置25は通信機能を備えており、上記通信ネットワーク13を介して監視センタ14との間でデータの送受信を行う。
【0016】
次に、本実施形態における監視センタ14の構成について詳しく説明する。
【0017】
図3は監視センタ14の構成を示すブロック図である。
【0018】
監視センタ14には、サーバ31と、PC(Personal Computer)32a,32b,32c…が設置されている。
【0019】
サーバ31は、監視センタ14の制御装置として存在する。PC32a,32b,32c…は、このサーバ31にLAN(Local Area Network)等の通信回線33を介して接続されている。このPC32a,32b,32c…は、各オペレータが監視卓として使用する端末装置であり、様々な機能を備えている。
【0020】
図4は監視センタ14に設置されたサーバ31の構成を示すブロック図である。
【0021】
サーバ31は、制御部41、記憶部42、各種データベース43、通信部44、インタフェース(I/F)45を備えている。
【0022】
制御部41は、CPUからなり、記憶部42に記憶されたプログラム42aを読み込むことにより各種処理を実行する。また、この制御部41には、本システムを実現するための機能部として、データベース検索部41a、地図表示部41b、識別表示部41c、表示処理部41d、保守員検出部41e、縮尺率変更部41fが設けられている。
【0023】
データベース検索部41aは、各種データベース43に含まれる物件データベース43aから指定地域の地図を検索すると共に、上記指定地域に存在する物件11a,11b,11c…の位置を地図データベース43cから検索する。
【0024】
地図表示部41bは、このデータベース検索部41aによって得られた上記指定地域の地図上に物件マークを付して、各オペレータの端末装置であるPC32a,32b,32c…に表示する。
【0025】
識別表示部41cは、各物件11a,11b,11c…のエレベータ12a,12b,12c…から発報される信号に基づいて、上記物件マークを識別表示する。具体的には、各物件毎にそれぞれのエレベータの状態を判断し、その状態に応じた色(「赤色」,「黄色」,「青色」)で地図上の物件マークを識別表示する。
【0026】
表示処理部41dは、地図表示部41bによって表示された地図上で任意の物件マークが選択された際に、その選択された物件マークがほぼ画面中心にくるように表示範囲を変更すると共に、当該物件周辺の保守員の位置とスキルレベルを特定の表示形態(後述するスキルレベルマーク)で表示する。
【0027】
保守員検出部41eは、各物件で保守員が所持する携帯端末などから発信される信号に基づいて、各物件の位置を基準にして保守員の位置を検出する。
【0028】
縮尺率変更部41fは、表示処理部41dによって画面中心に表示された物件マークの位置を基準にして地図の縮尺率を変更する。
【0029】
記憶部42は、ROM、RAMなどのメモリからなり、プログラム42aの他、制御部41の処理に必要な各種データを記憶している。また、この記憶部42には、各物件のエレベータの状態に応じて物件マークを識別表示するための識別表示テーブル42bが設けられている。
【0030】
今、エレベータの状態として、何らかの異常が発生し、エレベータの運行に支障のある状態を示す「発生」、エレベータに何らかの管制運転がはたらき、最寄階に着床した状態を示す「管制」、エレベータの運転が復帰した状態を示す「復帰」の3パターンを想定する。上記識別表示テーブル42bには、「発生」の状態のときに「赤色」、「管制」のときに「黄色」、「復帰」のときに「青色」で物件マークを識別表示することが設定されている。
【0031】
さらに、この記憶部42には、異常発生した物件に保守員を自動的に派遣するための規則を記憶した派遣規則テーブル42cが設けられている。
【0032】
一方、サーバ31に設けられた各種データベース43には、物件データベース(物件DB)43a、保守員データベース(保守員DB)43b、地図データベース(地図DB)43cなどが含まれる。なお、これらのデータベース43a〜43cは、実際には記憶部42などに設けられる。
【0033】
物件データベース43aは、各物件11a,11b,11c…に関する情報を記憶している。具体的には、図5に示すように、各物件の識別番号(物件ID)、物件名、住所、その物件に設置されているエレベータの台数や号機の情報などを記憶している。
【0034】
保守員データベース43bは、各保守員に関する情報を記憶している。具体的には、図6に示すように、各保守員の識別番号(保守員ID)、氏名、所属、その保守員が所持している携帯端末(携帯電話機等)の情報、そして、保守員の現在位置とスキルレベル情報、表示モードなどを記憶している。なお、保守員の現在位置は、後述するように物件位置を基準にして管理されている。
【0035】
また、スキルレベル情報は、保守員の保守点検作業に関わるスキル(技量)を示したものであり、「A」,「B」,「C」の3種類のレベルが段階的に設定されている。これらのレベルは、例えば各保守員が予め定められた訓練を受けて検定試験に合格することで与えられる。
【0036】
なお、レベル「C」は、定期点検の補助的な作業や、利用者がかごドアの隙間から物を落とした場合の処理作業、かご内の蛍光灯の交換作業など、最低限の作業に対応可能なスキルを必要とする。レベル「B」は、管制発報などのエレベータの運行に支障のない軽度の故障に対応可能なスキルを必要とする。レベル「A」は、エレベータの運行に支障のある重度の故障に対応可能であり、利用者がかご内に閉じ込められた場合などの非常事態にも対応可能なスキルを必要とする。
【0037】
レベル「B」の保守員はレベル「C」の作業に対応可能であり、レベル「A」の保守員はレベル「B」、「C」の作業に対応可能である。レベル「A」の作業が最も高いスキルを必要とし、続いて、レベル「B」、「C」の順となる(A>B>C)。
【0038】
また、上記表示モードとは、地図上に保守員の位置を表示するか否かを示す情報であり、「ON」のときに表示、「OFF」のときに非表示を示す。後述するように、保守員の位置は、その保守員が作業している物件の位置を基準にして表示され、そのときの表示マークは当該保守員のスキルレベルによって異なる(図11のスキルレベルマーク68a,68b参照)。
【0039】
地図データベース43cは、各地域の地図情報(画像情報)を記憶している。具体的には、図7に示すように、縮尺率に応じて複数の地図情報が分類して記憶されている。この場合、地図の縮尺率が高いほど広域を表わし、縮尺率が低いほど狭域を表わすことになる。
【0040】
また、サーバ31に設けられた通信部44は、各物件11a,11b,11c…に設置されたエレベータ12a,12b,12c…との間で通信ネットワーク13を介してデータの送受信を行う。インタフェース45は、サーバ31に接続されたPC32a,32b,32c…との間のデータの入出力処理を行う。
【0041】
図8は監視センタ18に設置されたオペレータのPC32aの構成を示すブロック図である。なお、他のPC32b,32c…についても同様の構成である。
【0042】
PC32aは、制御部51、記憶部52、インタフェース(1/F)53、入力部54、表示部55を備えている。
【0043】
制御部51は、CPUからなり、記憶部52に記憶されたプログラム52aを読み込むことにより各種処理を実行する。記憶部52は、ROM、RAMなどのメモリからなり、プログラム52aの他、制御部51の処理に必要な各種データを記憶している。インタフェース53は、サーバ31との間のデータの入出力処理を行う。
【0044】
入力部54は、例えばキーボード、マウスなどの入カデバイスからなり、オペレータがデータやコマンドの入力操作や画面上での選択操作を行う場合に用いられる。表示部55は、例えばCRT(Cathode-ray tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等の表示デバイスからなり、各種データの表示を行う。
【0045】
次に、本システムの動作について説明する。
【0046】
図9は監視センタ14内のサーバ31によって実行される遠隔監視処理の流れを示すフローチャートである。なお、このフローチャートで示される処理は、サーバ31に設けられた制御部41が記憶部42に記憶されたプログラム42aを読み込むことにより実行される。
【0047】
今、監視センタ14のオペレータがPC32aを操作して、ある地域の地図を表示する場合を想定する。
【0048】
PC32aから地図表示要求があると、サーバ31は、まず、オペレータが所定の操作によって指定した地域の地図を地図データベース43cから検索すると共に(ステップS11)、上記指定地域に存在する物件の位置を物件データべース43aから検索する(ステップS12)。
【0049】
該当する物件があると、サーバ31は、その物件の位置情報(住所)に基づいて、上記地図データベース43cから読み出した地図上に、物件マークを付してオペレータのPC32a(詳しくは、PC32aの表示部55)に表示する(ステップS13)。
【0050】
図10にオペレータベース32aに表示される地図表示画面61の一例を示す。
【0051】
図中の62は指定地域の地図である。また、63a〜63gは物件マーク、64はスケーラである。65は物件マーク説明欄、66はスキルレベルマーク説明欄、67は縮尺率表示部である。なお、起動時には所定の縮尺率の地図が表示される。スケーラ64をスライド操作することにより、地図の縮尺率を任意に変えることができる。
【0052】
この地図表示画面61において、地図62上の各物件の位置に直方体形状の物件マーク63a〜63gが所定のサイズで表示される。この物件マーク63a〜63gは、監視対象とする物件の位置とエレベータの状態を表している。
【0053】
各物件のエレベータから何らかの信号が発報されると、サーバ31は、その信号から現在の状態を判断し、識別表示テーブル42bを参照して、そのときの状態に応じた色で物件マーク63a〜63gを識別表示する(ステップS14)。
【0054】
詳しくは、エレベータの異常信号が発報されたときには、「発生」の状態を示す「赤色」で物件マーク63aを識別表示する。また、管制信号が発報されたときには、「管制」の状態を示す「黄色」で物件マーク63dを識別表示し、エレベータの運転復帰信号が発報されたときには、「復帰」の状態を示す「青色」で物件マーク63eを識別表示する。
【0055】
なお、上記異常信号・管制信号は、エレベータに何らかの異常が生じた場合に、図2に示した制御装置25から自動的に発報される。上記運転復帰信号は、エレベータの運転が復帰すると、図2に示した制御装置25から自動的に発報される。
【0056】
また、1物件につき1マークの表示とし、複数台のエレベータが設置された物件については、その中で最も重要度の高い状態に合わせて物件マークを識別表示するものとする。ここでは、「発生」が最も重要度が高い状態であり。続いて「管制」、「復帰」の順である。
【0057】
また、無色の物件マーク63b,63c,63g,63fは、これらの物件に設置されたエレベータが平常な状態であることを表している。
【0058】
ここで、オペレータが地図62上の任意の物件マーク63aをクリック操作により選択すると(ステップS15のYes)、サーバ31は、その選択された物件マーク63aがほぼ画面中心にくるように地図62の表示範囲を変更する(ステップS16)。
【0059】
このときの状態を図11に示す。
【0060】
表示範囲変更後の地図62では、オペレータによって選択された物件マーク63aが画面の中心位置に表示される。したがって、画面中心を見れば、たとえ複雑な地形であっても、一目で当該物件の揚所を特定することができる。
【0061】
また、物件マーク63aの選択操作に伴い、サーバ31は、その物件マーク63aの周辺にいる保守員を検出する(ステップS17)。詳しくは、物件マーク63aで示される物件の位置を基準にして、現在表示されている地図62の範囲内で保守員の有無を検出する。該当する保守員がいれば、サーバ31は、当該保守員のスキルレベル情報を図6の保守員データベース43bから読み出し、そのスキルレベル情報に基づいて当該保守員のスキルレベルを地図62上に特定の表示形態で表示する(ステップS18)。
【0062】
なお、上記ステップSl7での保守員の検出方法については、後に図14及び図15を参照して詳しく説明する。
【0063】
ここで、本実施形態では、上記特定の表示形態として、図11に示すようなスキルレベルマーク68a,68bを用いる。このスキルレベルマーク68a,68bは、保守員のスキルレベルを識別するためのマークであり、保守員が作業中の物件あるいは直前に作業していた物件の位置に表示される。上述したように、スキルレベル情報には、レベル「A」,「B」,「C」の3種類があり、それぞれにマークの種類が異なる。
【0064】
図11の例では、地図62上の物件マーク63bの位置にレベル「A」のスキルレベルマーク68aが表示され、物件マーク63cの位置にレベル「B」のスキルレベルマーク68bが表示されている。これにより、物件マーク63aで示される物件の近くに2人の保守員がいて、一方の保守員のスキルレベルは「A」、他方の保守員のスキルレベルは「B」であることを確認できる。
【0065】
このように、保守員の位置とスキルレベルが表示されるので、何らかの異常が発生した際に、その物件との距離とスキルレベルを考慮して最適な保守員を選んで現場に派遣することができる。この場合、オペレータが画面上で任意のスキルレベルマークを選択すると、該当する保守員の連絡先に関する情報がリンク表示されるようになっている。オペレータはその連絡先情報を見て保守員に派遣指令を出すことができる。
【0066】
なお、このときの保守員の派遣を自動化することも可能である。
これは、サーバ31が記憶部42に設けられた派遣規則テーブル42cを参照して、当該物件の周辺の近くにする各保守員の中から適切な保守員を選択し、その保守員の持つ携帯端末(図14の携帯端末16参照)に、例えば「××物件で異常が発生しました。直ちに現場に向かって下さい」といったようなメッセージを送信することで実現できる。
【0067】
上記派遣規則テーブル42cには、例えば以下のような規則が記憶されている。
【0068】
・管制発報の現場近くにレベル「B」の保守員とレベル「A」の保守員が存在する場合には、レベル「B」の保守員を優先して派遣する。
【0069】
・管制発報の現場近くにレベル「B」の保守員が多数存在する場合には、現場に最も近い保守員を優先して派遣する。
【0070】
・管制発報の現場近くにレベル「A」の保守員しかいない場合には、現場に最も近い保守員を優先して派遣する。
【0071】
また、オペレータが現場の位置を確認するために、地図表示画面61に設けられたスケーラ64をスライド操作して縮尺率の変更を指示すると(ステップS19のYes)、サーバ31は、そのときに指示された縮尺率で地図62を表示する(ステップS20)。
【0072】
詳しくは、図7に示したように、指示された縮尺率に対応した地図情報を地図データベース43cから読み出して当該オペレータのPC32aに表示する。その際、サーバ31は、図12および図13に示すように、物件マーク63aを画面中心にして縮尺率変更後の地図62を表示する。
【0073】
このように、物件マーク63aを中心にして地図62の縮尺率が変更されるので、縮尺率の変更によって物件の場所を見失うようなことがなく、その物件の近くにいる保守員を簡単に探すことができる。
【0074】
なお、地図上に付加された各物件のマーク(物件マーク63a〜63g)や各保守員のマーク(スキルレベルマーク68a,68b)は、このような縮尺率の変更に関係なく、常に同じ大きさで表示されるようになっている。
【0075】
次に、本実施形態における保守員の検出方法について説明する。
【0076】
図14に示すように、保守員15は通信機能付きの携帯端末16を所持している。携帯端末16は、例えば携帯電話機等からなり、監視センタ14との間の通信機能の他に、保守点検作業に必要な各種アプリケーションが搭載されている。図中の16aは携帯端末16の表示部、16bは携帯端末16の操作部であり、各種操作ボタンを有する。
【0077】
また、この携帯端末16に関する情報(識別番号,電話番号,メールアドレス等)は、所持者である保守員15の情報と共に、監視センタ14内のサーバ31に設けられた保守員データベース43bに予め登録されている(図6参照)。
【0078】
ここで、各物件で保守員15が作業を開始するときに、携帯端末16を操作して、作業対象となる物件の識別番号(物件ID)と作業開始の信号を監視センタ14に送る。このとき、携帯端末16に固有の識別番号(端末ID)がその信号に自動的に付加されて監視センタ14に送られる。
【0079】
これにより、監視センタ14内のサーバ31では、上記携帯端末16の識別番号に基づいて保守員データベース43bを検索して発信元の保守員15を特定する。そして、その保守員15の現在位置として、上記携帯端末16から得られた物件IDを保守員データベース43bに記録する。また、サーバ31は、保守員15から作業開始の信号を受けたときに、表示モードを「ON」に設定する。
【0080】
保守員15は作業を終えて他の場所に移動するときに、携帯端末16から作業終了の信号を監視センタ14に送る。これにより、監視センタ14内のサーバ31では、保守員15が移動中にあると認識し、その保守員15の表示モードを「ON」から「OFF」に切り替える。
【0081】
このように、サーバ31では、保守員15の作業開始と終了時に携帯端末16から送られてくる信号に基づいて、保守員15の現在位置を判断して保守員データベース43bの内容を適宜更新すると共に表示モードの切り替えを行う。地図表示時において、サーバ31は、この保守員データベース43bを参照して、図11に示したようなスキルレベルマーク68a,68bを地図62上の該当する位置に表示する。
【0082】
このスキルレベルマーク68a,68bは、上記表示モードが「ON」のときに表示される。つまり、スキルレベルマーク68a,68bは、保守員15の場所が特定されているときに表示され、移動中のように場所が特定できない場合には表示されない。
【0083】
なお、保守員15が他の場所に移動するときに監視センタ14に連絡を忘れたり、あるいは、何らかの理由で連絡できないことがある。サーバ31では、作業開始の信号を受信してから所定の時間(例えば90分)が経過しても作業終了の信号を受信できなかった場合には、その保守員15の場所を特定できないものと判断し、表示モードを「ON」から「OFF」に切り替える。
【0084】
また、監視センタ14に対する別の連絡方法として、図15に示すように、乗りかご23内に設置された非常呼び用の電話機75を用いても良い。
【0085】
図15は乗りかご23の内部構成を示す図である。図中の70はかごドアであり、乗りかご23の着床時に図示せぬ乗り場ドアと係合して開閉動作する。このかごドア70の横に操作盤71が設置されている。この操作盤71上には、各階の行先ボタン72や、戸開を指示するための戸開ボタン73、戸閉を指示するための戸閉ボタン74などが配設されている。
【0086】
さらに、この操作盤71上には、非常呼び用の電話機75が設置されている。この電話機75は非常呼びボタン75aを有し、この非常呼びボタン75aを押下することで、監視センタ14に自動的に電話回線が繋がるようになっている。
【0087】
保守員が現場にて作業を開始するときと作業を終了するときに、乗りかご23内の非常呼び用の電話機75を通じて監視センタ14に連絡する。これにより、サーバ31では、上記非常呼び用の電話機75に固有の電話番号から当該物件を特定し、その物件の位置を保守員の現在位置として検出できる。
【0088】
また、保守員からの作業開始と終了の連絡を受けて、その保守員が作業中であるのか、移動中であるのかを管理することができる。この場合、保守員が監視センタ14のオペレータと直接通話して、作業の開始と終了を知らせても良いし、例えば操作盤71上のボタン操作により作業の開始と終了の信号を発信することでも良い。
【0089】
以上のように本システムによれば、各物件の位置がマーカされた地図表示画面において、オペレータによって選択された物件をほぼ画面中心に表示すると共に、その物件周辺の保守員の位置とスキルレベルを表示する。これにより、地図の縮尺率を変更するなどして表示範囲を変えても、画面の中心で異常発生した物件の場所を簡単に確認することができる。
【0090】
その際、当該物件の周辺にいる保守員の位置をそのスキルレベルと共に確認できるので、現場での状況に応じて適切な保守員を派遣して迅速に対応することができる。すなわち、例えばエレベータの運行に支障のある重度の故障が発生し、その物件の最も近くにレベル「B」の保守員、少し離れた場所にレベル「C」の保守員がいた場合に、各保守員に関する情報を別の管理画面で確認しなくとも、地図上に表示されたスキルレベルマークからレベル「C」の保守員を適任者として選び、現場に直ぐに派遣して適切に対応することができる。
【0091】
なお、上記実施形態では、物件マーク63a〜63fの表示色を変えることで識別したが、例えばマークの形状を変えるなどして識別することでも良い。
【0092】
また、物件マーク63a〜63fの形状は、直方体に限らず、例えば矩形や円形などであっても良く、地図上で他の記号類と混同しない形であれば、どのような形状であっても良い。
【0093】
スキルレベルマーク68a,68bについても同様であり、上記実施形態に限定されず、レベル別に形状を変えたり、色を変えるなどしても良い。
【0094】
また、上記実施形態では、保守員のスキルレベルを3段階に分けて識別表示したが、さらにレベル別に細かく分けて識別表示することでも良い。
【0095】
また、上述した地図表示に関する一連の処理を監視センタ14内のサーバ31が行う構成としたが、各オペレータのPC32a,32b,32c…側で行うことでも良い。
【0096】
また、例えば保守員の持つ携帯端末にGPS(global positioning system)受信機能を搭載しておき、その携帯端末から発信される位置情報をサーバ31で受信する構成としても良い。このような構成とすれば、保守員が移動中であっても、地図画面上にその保守員の位置とスキルレベルをリアルタイムで表示することができる。
【0097】
また、上記実施形態では、監視対象としてエレベータを例にして説明したが、例えばエスカレータなどの他の昇降機の遠隔監視を行う場合にも同様に適用可能である。
【0098】
要するに、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の形態を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を省略してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る昇降機としてエレベータを例にした場合の保守管理システムの構成を示す図である。
【図2】図2は同実施形態におけるエレベータの構成を示す図である。
【図3】図3は同実施形態における監視センタの構成を示すブロック図である。
【図4】図4は同実施形態における監視センタに設置されたサーバの構成を示すブロック図である。
【図5】図5は同実施形態におけるサーバに設けられた物件データベースの一例を示す図である。
【図6】図6は同実施形態におけるサーバに設けられた保守員データベースの一例を示す図である。
【図7】図7は同実施形態におけるサーバに設けられた地図データベースの地図情報の構成を説明するための図である。
【図8】図8は同実施形態における監視センタに設置されたPCの構成を示すブロック図である。
【図9】図9は同実施形態における監視センタ内のサーバによって実行される地図表示処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】図10は同実施形態における監視センタの地図表示画面の一例を示す図である。
【図11】図11は同実施形態における監視センタの地図表示画面の一例を示す図である。
【図12】図12は同実施形態における監視センタの地図表示画面の一例を示す図である。
【図13】図13は同実施形態における監視センタの地図表示画面の一例を示す図である。
【図14】図14は同実施形態における保守員の携帯端末を用いて監視センタへの連絡方法を説明するための図である。
【図15】図15は同実施形態におけるエレベータの乗りかご内の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
11a,11b,11c…物件、12a,12b,12c…エレベータ、13…通信ネットワーク、14…監視センタ、15…保守員、16…携帯端末、16a…表示部、16b…操作部、21…巻上機、22…ロープ、23…乗りかご、24…カウンタウェイト、25…制御装置、31…サーバ、32a,32b,32c…PC、33…通信回線、41…制御部、41a…データベース検索部、41b…地図表示部、41c…識別表示部、41d…表示処理部、41e…保守員検出部、41f…縮尺率変更部、42…記憶部、42a…プログラム、42b…識別表示テーブル、42c…派遣規則テーブル、43…各種データベース、43a…物件データベース、43b…保守員データベース、43c…地図データベース、44…通信部、45…インタフェース、51…制御部、52…記憶部、52a…プログラム、53…インタフェース、54…入力部、55…表示部、61…地図表示画面、62…地図、63a〜63f…物件マーク、64…スケーラ、65…物件マーク説明欄、66…スキルレベルマーク説明欄、67…縮尺率表示部、68a,68b…スキルレベルマーク、70…かごドア、71…操作盤、72…行先ボタン、73…戸開ボタン、74…戸閉ボタン、75…電話機、75a…非常呼びボタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各地域に点在する物件を保守点検する各保守員の動静を管理する昇降機の保守管理システムにおいて、
上記各物件に関する情報を記憶した物件データベースと、
上記各地域の地図情報を記憶した地図データベースと、
上記物件データベースから指定地域の地図を検索すると共に、上記指定地域に存在する物件の位置を上記物件データベースから検索するデータベース検索手段と、
このデータベース検索手段によって得られた上記指定地域の地図上に物件マ−クを付して所定の端末装置に表示する地図表示手段と、
この地図表示手段によって表示された地図上で任意の物件マークが選択された際に、その選択された物件マークがほぼ画面中心にくるように表示範囲を変更すると共に、変更後の地図上に当該物件周辺に存在する保守員の位置とその保守員のスキルレベルを表示する表示処理手段と
を具備したことを特徴とする昇降機の保守管理システム。
【請求項2】
上記各保守員のスキルレベル情報を記憶した保守員データベースを備え、
上記表示処理手段は、表示対象とする保守員のスキルレベル情報を上記保守員データベースから読み出し、そのスキルレベル情報に基づいて当該保守員のスキルレベルを識別可能なマークを表示することを特徴とする請求項1記載の昇降機の保守管理システム。
【請求項3】
上記スキルレベル情報には、少なくとも第1乃至第3までのレベルが設定されており、
上記第1のレベルは、定期点検の補助的な作業を含む最低限の作業に対応可能なスキルを必要とするレベル、
上記第2のレベルは、昇降機の運行に支障のない軽度の故障に対応可能なスキルを必要とするレベル、
上記第3のレベルは、昇降機の運行に支障のある重度の故障に対応可能であり、非常事態にも対応可能なスキルを必要とするレベルであり、
上記第3のレベルの作業が最も高いスキルを必要とし、続いて、上記第2のレベル、上記第1のレベルの順であることを特徴とする請求項2記載の昇降機の保守管理システム。
【請求項4】
上記各物件で保守員の作業開始と終了を示す信号を発信する信号発信手段と、
この信号発信手段によって発信された信号に基づいて、上記各物件の位置を基準にして保守員を検出する保守員検出手段とを備え、
上記表示処理手段は、上記保守員検出手段によって検出された保守員が作業中あるいは直前に作業していた物件の位置に当該保守員のスキルレベルを識別可能なマークを表示することを特徴とする請求項2記載の昇降機の保守管理システム。
【請求項5】
上記信号発信手段は、保守員が所持する通信機能を備えた携帯端末であり、その携帯端末の操作により作業開始と終了を示す信号を発信することを特徴とする請求項4記載の昇降機の保守管理システム。
【請求項6】
上記信号発信手段は、上記各物件毎に設置された非常呼び用の電話機であり、その電話機の操作により作業開始と終了を示す信号を発信することを特徴とする請求項4記載の昇降機の保守管理システム。
【請求項7】
上記表示処理手段によって画面中心に表示された物件マークの位置を基準にして地図の縮尺率を変更する縮尺率変更手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の昇降機の保守管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−214964(P2009−214964A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58418(P2008−58418)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】