説明

易開封性包装体

【課題】 内容物が取り出し易い包装体を提供する。
【解決手段】 この包装体100は積層フィルム110で構成されており、積層フィルム110のシール層は、層間で剥離可能な共押出し層からなり、ポリプロピレンを主体とするサポート層と、ポリプロピレン及びポリエチレンからなる樹脂組成物を主体とした剥離層とからなる。包装体100の表面には切込み線111が設けられて開口領域150が形成され、開口領域150から仮想線160に沿って積層フィルム110が引き裂かれ、そのまま横シール部132で層間剥離して切り取られ、大きな開口部110a’が形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容する内容物が取り出し易い包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
スナック菓子などに多く用いられるピロー包装袋の開封手段としては、包装体の縦シールの部分とその反対面とを指で摘んで、横シール部と垂直方向に引っ張り、横シール部全体を剥がすようにして開封することが通常行われている。また、周縁シール部に、いわゆるIノッチやVノッチなどの切込みを形成して開封性を向上させることも広く行われている。
【0003】
一方、例えば、ゼリー容器の蓋材などの易開封性手段としては、シール層(シーラント層)としてイージーピールフィルムを用いる手法が広く行われていたが、近年、このイージーピールフィルムをピロー包装などのフィルム包装体にも適用し、いわゆる「面々シール」の状態で、フィルム包装体のヒートシール部に易開封性を持たせることが検討されている。
【0004】
この場合、フィルム包装体においては、開封箇所を含めた全シール部が易開封シールとなるので、容器の蓋材に比べて高度なシール強度の管理が必要となる。例えば、フィルム包装体は剛性容器に比べて内外圧によって変形し易く、包装、流通、保管時に破袋が生じ易いので、シール部の耐圧性の要求レベルも高い。また、例えば、内容物がウエットティッシュ等の場合には、未開封時には長期保管時の乾燥を防ぐ必要があり高度な防湿性が要求される。また、開封後も内容物を一度に使い切らない場合があるので、必要な開封箇所以外のシール性は開封後もある程度維持されている必要がある。このように、フィルム包装体の面々シールにおいては、適度な易開封性と密封性という、本来、相反する性能が容器の蓋材に比べてより高度に要求され、周縁シール部の強度をより厳密に制御する必要がある。
【0005】
シール層のイージーピールの機構としては、凝集剥離、層間剥離、界面剥離によるものがあるが、フィルム包装体の面々シールにおいては、上記のように安定したシール強度が求められることから、従来は、一般的にシール安定性に優れると言われている凝集剥離タイプのシーラントが主に用いられている。
【0006】
このような凝集破壊タイプのシーラントとして、例えば、下記の特許文献1には、フィルム基材上に、ポリオレフィン系樹脂あるいはポリオレフィン共重合体樹脂からなる層(第1層)、ポリプロピレン系樹脂(樹脂A)、ポリスチレン樹脂(樹脂B)、ポリプロピレンにポリスチレンがグラフトされた構造を持つグラフトポリマー(樹脂C)で構成される樹脂組成物からなる層(第2層)の順で積層した構成が開示されており、第2層として用いた樹脂組成物が、ポリプロピレン系樹脂を用いた被着体とのシールにおいて、凝集破壊による易開封性を示すシーラント材として用いることが開示されている。
【0007】
一方、例えば、携帯用のウエットティッシュなどの水分を含んだ内容物を収容する包装体においては、携帯に便利なように小型でありながら、内容物を取り出し易くするという要求性能もある。このような包装体として、例えば、下記の特許文献2には、袋本体に切れ目を形成して開口部を形成し、その上から、接着剤を介して剥離可能な蓋部材を設けた、化粧用繊維素材等の封入袋が記載されており、開口部を有し、かつ、その開口部の再封止ができるフィルム包装体が開示されている。
【特許文献1】特開2002−361798号公報
【特許文献2】実開昭59−99974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1のような、従来の凝集剥離によるシール層においては、フィルム包装体の面々シールにおけるシール安定性が未だ不充分であった。特に、耐熱性に優れ、フィルムのコシが強く、高速充填包装が可能なポリプロピレン系のイージーピールシーラントの場合、凝集剥離タイプでは適度な易開封性が得られるシール条件の幅が非常に狭く、シール条件が弱過ぎて密封性が不充分となるか、又は、シール条件が強過ぎて易開封性が不充分となる場合が多いという問題がある。
【0009】
一方、特許文献2に示すような包装体300の場合、形成できる開口部の大きさに限度があるので、内容物が取り出し難いという問題がある。特に、携帯用ウエットティッシュのように、携帯に便利なように包装体を小型化したい場合には、開口面積を大きくするにも限度があるため、このような問題が顕著となる。
【0010】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルム包装体の面々シールにおいて、凝集破壊タイプのシーラントよりシール安定性に優れ、易開封性と密封性とを両立できる包装体を提供することにある。また、そのような面々シールを用いて、包装体からの内容物の取り出し用の開口面積が大きくできる包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
より具体的には、本発明は、以下の構成からなる易開封性包装体を提供する。
【0012】
(1) 耐熱性を有する基材層と、ヒートシール可能なシール層とを備える2層以上の積層フィルムからなり、前記シール層同士をヒートシールしてなる包装体であって、前記シール層は層間で剥離可能な共押出し層からなり、当該共押出し層は、ポリプロピレンを主体とし前記基材層側に配置されるサポート層と、ポリプロピレン及びポリエチレンからなる樹脂組成物を主体とし前記積層フィルムの最内層に配置される剥離層と、を含む多層を形成しているものである易開封性包装体。
【0013】
本発明の易開封性包装体によれば、易開封性をもたらすシール層として、ポリプロピレン系の層間で剥離可能な共押出し層を用いたので、剥離時には、最内層の剥離層のみが層間剥離する。これにより、フィルム包装体の面々シールにおいて、従来より安定したシール強度を得ることができ、より幅広いシール条件(温度、圧力、時間)で易開封性と密封性とを両立できる。
【0014】
なお、耐熱性を有する「基材層」とは、ヒートシール時に最外層となり、ヒートシール温度より高い耐熱性を有する層であり、例えば、延伸ポリエステル、延伸ポリアミド、延伸ポリプロピレンなどを一軸又は二軸に延伸配向させたフィルムが挙げられる。また、ヒートシール可能な「シール層」とは、ヒートシール時に最内層となり、ヒートシール温度以下で熱溶着可能な層である。また、共押出し層における「サポート層」とは、ヒートシール部を剥離した際に基材層側に残る層であり、共押出し層における「剥離層」とは、ヒートシール部を剥離した際に前記サポート層から離れて剥離される層である。
【0015】
(2)前記サポート層のポリプロピレンがホモポリマーであり、前記剥離層のポリプロピレンがランダムポリマーである(1)記載の易開封性包装体。
【0016】
この態様によれば、サポート層のポリプロピレンを、結晶性の高いホモポリマーとすることで、ポリプロピレンが本来有するフィルムのコシを得ることができ、高速充填に適することができる。更に、剥離層のポリプロピレンを結晶性の低いランダムポリマーすることで、サポート層と剥離層との相溶性を適度に調節し、層間剥離による易開封性、すなわち適度な層間接着強度を得ることができる。また、剥離層のポリプロピレンがエチレンを含むランダムポリマーであることによって、剥離層の他の成分であるポリエチレンとの相溶性が増すので、剥離層を均一にすることができ、剥離層が凝集破壊するのを防止できる。
【0017】
なお、プロピレンのホモポリマーとは、プロピレンの単独重合体である。また、プロピレンのランダムポリマーとは、エチレンや1−プテンなどの共重合モノマーがプロピレン連鎖中にランダムに取り込まれているポリマーである。
【0018】
(3)前記積層フィルムのシール強度が4N/15mm以上7N/15mm以下である(1)又(2)記載の易開封性包装体。
【0019】
この態様によれば、シール強度を4N/15mm以上とすることで、充分な密封性を得ることができ、フィルム包装体の製造、流通、保管時の破袋を防止できる。また、例えば内容物がウエットティッシュなどの場合にも防湿性を維持して内容物の乾燥を防ぐことができる。また、シール強度を7N/15mm以下とすることで、適度な易開封性を付与することができる。
【0020】
なお、上記のシール強度は、例えば、シール時間0.5秒、シール圧0.98MPa/cm、試験片の引張速度300mm/分の条件下での測定値であり、上記範囲のシール強度は、シール温度140から160℃の広い範囲で得られる。なお、シール機としては特に限定されないが、例えば、テストシーラーTP−701−C(商品名:テスター産業株式会社製)のような公知のヒートシール試験機が使用できる。
【0021】
(4)前記包装体がピロー包装体である(1)から(3)いずれか記載の易開封性包装体。
【0022】
通常、ピロー包装体はノッチなどの開封のきっかけがないと開封が困難であるが、この点、本発明においてはノッチが不要で簡単に手で開封することができる。
【0023】
(5)前記ヒートシールによって、前記ピロー包装体に上下の横シール部及び縦シール部が形成されており、前記積層フィルムには、前記ピロー包装体から内容物を取出すための開口領域を形成するように切り込み線が設けられ、前記積層フィルムと剥離可能な蓋材が、前記開口領域を覆うように、前記積層フィルムの表面に粘着されており、前記蓋材を剥離することよって、前記積層フィルムを前記開口領域から引き裂き、前記開口領域から前記横シール部にかけて連続した開口部が形成されるように、前記積層フィルムの引き裂きをガイドする引き裂き誘導手段が形成されている(4)記載の易開封性包装体。
【0024】
この態様によれば、蓋材を剥離すると、蓋材の裏面の粘着剤によって開口領域が切込み線に沿って切り離されて持ち上げられ、蓋材と一体となって離れる。これによって、切込み線が囲む領域は、開口部となり、内容物の取出口が形成される。そして、更に、引き裂き誘導手段に沿って開口領域からの引き裂きを続けると、開口領域から横シール部にかけて連続した開口部が形成され、更に、横シール部は易開封性を有しているので、引き裂き部をそのまま取り去ることができる。よって、ピロー包装体においても大きな開口面積を得ることができ、内容物を容易に取り出すことができ利便性が向上する。
【0025】
なお、切込み線によって形成される「開口領域」は、開封時において、内容物の取出しが可能な開口部を形成するものである。このため、切込み線は、開封のきっかけとなるような形状、例えばコの字状のように閉じていないものであることが好ましい。また、切込み線は連続線であってもよく、ミシン目であってもよい。
【0026】
「引き裂き誘導手段」としては、後述する延伸フィルムを用いることの他、例えば、積層フィルムの少なくとも一部の層に連続線又はミシン目を形成してもよい。この場合、積層フィルムを貫通するように形成されていてもよく、積層フィルムの厚さ方向に対して非貫通となるように切れ目線を形成する、いわゆる「ハーフカット」の状態で形成してもよい。
【0027】
(6)前記引き裂き誘導手段は、前記積層フィルムを構成する延伸フィルムの延伸方向を、前記引き裂き方向とすることにより形成されているものである(5)記載の易開封性包装体。
【0028】
この態様によれば、積層フィルムの一部として延伸フィルムを用いればよいので、引き裂き誘導手段を別途物理的に形成する工程が不要となる。なお、延伸フィルムとしては、配向性の高い一軸又は二軸延伸フィルムが好ましく、いわゆる易引き裂き性(直線カット性)の一軸延伸フィルムがより好ましい。このようなフィルムは従来公知であり、市販品を適宜使用できる。
【0029】
(7)前記包装体に収容される内容物が携帯用のウエットティッシュである(1)から(6)いずれか記載の易開封性包装体。
【0030】
この態様によれば、携帯用のウエットティッシュは、通常ピロー包装体に収容されており、そこから簡単にウエットティッシュを取り出す必要があり、また、小型の包装体であるので、特に大きな開口部が必要である。この点、本発明の易開封性包装体のうち、特に上記の(5)又は(6)の包装体であれば大きな開口部を形成でき、容易にウエットティッシュを取り出すことができる。また、密封性も充分であるので、内容物の乾燥を防止して長期の流通保存にも耐え得る包装体を提供できる。
【0031】
(8)前記横シール部が、シール幅2mm以上の面シールである(7)記載の易開封性包装体。
【0032】
この態様によれば、上記の携帯用ウエットティッシュのように小型のピロー包装体の場合には、上下シール部の幅が狭くなる。よって、確実な密封性を得るために、線シールではなく、シール幅2mm以上の面シールを行う場合がある。このような面シールの場合、通常はシール強度が非常に高くなるが、本発明の易開封性包装体であれば、面シールが2mm以上の場合であっても、シール部の易開封性を得ることができるので、大きな開口部を簡単に形成できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、フィルム包装体の面々シールにおいて、凝集破壊タイプのシーラントよりシール安定性に優れ、易開封性と密封性とを両立できる包装体を提供できる。また、これを用いて、包装体からの内容物の取り出し用の開口面積が大きくでき、携帯用ウエットティッシュとなどに好適な包装体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態の一例について、図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明においては、同一の構成要件については同一符号を付し、その説明は省略もしくは簡略化する。
【0035】
<易開封性包装体の全体構成>
図1から図3は、本発明の易開封性包装体の実施形態の一例を示す図であり、図1は易開封性包装体の概略を示す斜視図、図2は図1における積層フィルムの拡大断面図、図3は図1のA−A’断面図における横シール部付近の拡大図である。
【0036】
図1に示すように、この包装体100は、軟包装材料からなる積層フィルム110で構成されたピロー包装体である。図1における131、132は、それぞれ上下の横シール部であり、図1の背面側の中央部には図示しない縦シール(背シール)部がある。
【0037】
包装体100の積層フィルム110の上面側には、図1に示すように、コの字状に切込み線111が形成されている。そして、このコの字状の切込み線111によって、コの字の内側に開口領域150が設けられる。この開口領域150は、後に蓋材120の剥離によって切り起こされる部分になる。そして、開口領域150を覆うように、舌片部121を有する蓋材120が粘着されている。蓋材120の下面側の舌片部121を除く部分には、図示しない粘着剤層が設けられている。そして、この粘着剤層を介して、積層フィルム110と蓋材120とが剥離可能に粘着されている。ここで「粘着」とは、再剥離および再封止が可能な状態をいう。
【0038】
積層フィルム110の上面における切込み線111のコの字の両終点の延長上には、そこから横シール部132にかけて続く、2本の平行な引き裂き誘導手段160が設けられている。この実施形態においては、引き裂き誘導手段160は仮想線として記載されており、実際には、積層フィルム110を構成する延伸フィルムの延伸方向が、仮想線の方向に一致しており、この延伸フィルムの配向が引き裂き誘導手段160となっている。
【0039】
<積層フィルムの構成>
包装体100を構成する積層フィルム110としては、基材層とシール層とを有する積層フィルムが用いられる。図2には、積層フィルム110の構成の一例が示されている。この積層フィルム110は、外層から順に、基材層A/中間層B/シール層Cの順に接着剤を介してドライラミネート法により積層されている。
【0040】
シール層Cは、更に中間層B側に配置されるサポート層Cと、最内面に配置される剥離層Cとからなる共押出しフィルムになっている。そして、図3に示すように、包装体100の横シール部132においては、ヒートシールによって、2枚の積層フィルム110が熱溶着されている。すなわち、対向する最内層の剥離層C同士は溶着によって接合面が消えて一体となっている。
【0041】
積層フィルム110の構成としては、従来公知の構成を用いることができ特に限定されない。例えば、それぞれ外層側から順に、基材層/シール層の2層構成、基材層/中間層/シール層の3層構成、基材層/第1中間層/第2中間層/シール層の4層構成、などが例示できる。積層方法は接着剤を介して積層するドライラミネート法であってもよく、ポリエチレンやポリプロピレンによる押し出しコートによって積層してもよい。
【0042】
<基材層A及び中間層B>
基材層A(最外層)としては、延伸ポリエステル、延伸ポリアミド、延伸ポリプロピレン等の公知の延伸フィルムが例示できる。また、中間層Bとしては、前記の延伸フィルムの他、紙、不織布、アルミ箔などのバリア層、などを適宜組み合わせることができる。延伸フィルムの延伸は、一軸延伸でもよく、二軸延伸でもよい。
【0043】
<シール層C>
本発明においては、このシール層Cが、層間で剥離可能な共押出し層からなり、当該共押出し層は、基材層A側に配置され、ポリプロピレンを主体とするサポート層Cと、ポリプロピレン及びポリエチレンからなる樹脂組成物を主体とし前記積層フィルムの最内層に配置される剥離層Cと、を含む多層を形成していることを特徴としている。
【0044】
シール層C全体は、層間で剥離可能な共押出し層からなる。シール層Cの厚さは25μmから40μmであることが好ましい。
【0045】
サポート層Cは、ポリプロピレンを主体とし、好ましくはホモポリマーのポリプロピレンであることが好ましい。また、サポート層Cの厚さは、シール層C全体の80%から90%であることが好ましく、具体的には20から35μmであることが好ましい。
【0046】
剥離層Cは、ポリプロピレン及びポリエチレンからなる樹脂組成物を主体とし、ポリプロピレンとしてはランダムポリマーであることが好ましい。また、サポート層Cの厚さは、シール層C全体の10%から20%であることが好ましく、具体的には5μmから10μmであることが好ましい。
【0047】
上記のような構成からなる、共押出し層は、共押出しコートによって形成してもよく、共押出しフィルムを、接着剤やポリサンドラミ等によって積層してもよい。共押出しフィルムとしては市販のフィルムを用いてもよい。このような層間剥離する共押出しフィルムとしては、アロマーTP6(商品名:昭和電工プラスチックプロダクツ)が挙げられる。なお、シール層Cは、図2のような2層構成には限定されず、3層以上の構成であってもよい。
【0048】
<切込み線と開口領域>
切込み線111は、開口領域150を生じるように設けられていればよく、切込み線111の形状や長さは特に限定されない。また、取出口となる開口領域150の大きさも、包装体100の大きさや、取り出す内容物の大きさや形状に応じて適宜選択可能である。例えば、内容物が携帯用ウエットティッシュの場合には、開口領域150の大きさが5×20mmから40×60mm程度であることが好ましい。
【0049】
また、この実施形態においては、切込み線111は、フィルム110を貫通するように形成される連続線であるが、切込み線111は必ずしも連続線でなくてもよく、ミシン目状に形成されていてもよい。
【0050】
<引き裂き誘導手段>
上記のように、この実施形態においては、引き裂き誘導手段160は仮想線として記載されており、実際には、積層フィルム110を構成する延伸フィルムの延伸方向が、仮想線の方向に一致しており、この延伸フィルムの配向が引き裂き誘導手段160となっている。具体的には、例えば、図2における基材層Aを延伸フィルムとすればよく、好ましくは配向性の高い一軸又は二軸延伸フィルムが好ましく、なかでも、いわゆる易引き裂き性(直線カット性)の一軸延伸フィルムがより好ましい。これらの延伸フィルムは従来公知の市販品を使用できる。
【0051】
引き裂き誘導手段160は、上記の延伸配向に限定されず、例えば切れ目線を積層フィルム110上に形成してもよい。この場合、切れ目線は積層フィルム110を貫通するように形成されていてもよく、いわゆるハーフカットの状態であってもよいが、包装体全体の密封性を維持するためには、ハーフカットの状態であることが好ましい。なお、ハーフカットは、例えばレーザー光の照射や、機械的な抜き刃加工などの公知の方法によって、例えば基材層Aのみに形成することができる。
【0052】
<蓋材>
蓋材120としては、所定の剛性を有しているシート状のものが好ましく、例えばOPP20μm/PET70μmの積層フィルムなどが例示できる。また、粘着剤層としては、公知のホットメルトなどが使用できる。
【0053】
<作用>
次に、図4から図7を用いて、この包装体100の作用について説明する。図4は、図1において蓋材120を剥離開始した状態を示す斜視図であり、図5は、剥離後に引き裂き誘導手段に沿って横シール部132の途中まで引き裂いた状態を示す斜視図であり、図6は、図5におけるA−A’線に沿った断面であって横シール部付近の拡大図であり、図7は、引き裂き部分を取り去った状態を示す斜視図である。
【0054】
まず、図4に示すように、包装体100において、蓋材120の舌片部121側から、矢印の方向に沿って蓋材120を剥離する。すると、蓋材120の裏面側の粘着剤層によって開口領域150が粘着され、積層フィルム110の開口領域150が切込み線111に沿って切り離されて持ち上げられる。これによって、積層フィルム110の上面に開口部110aが形成され、内容物が視認できる状態となる。
【0055】
次に、図5に示すように、更に蓋材120の剥離を続けると、コの字状の切込み線111の両終端部に続いて形成される2本の平行な仮想線160に沿って積層フィルム110が引き裂かれ、そのまま横シール部132に到達する。
【0056】
このとき、横シール部132において、シール層Cは層間剥離タイプのシール層であるので、図6に示すように、横シール部132にかかったところで剥離層Cの一部(図6における上面側の剥離層C)が根切れ部180となり、ここからサポート層Cと剥離層Cとが剥離面170で層間剥離する。これにより、横シール部132にかかった部分の積層フィルム110を容易に切り取ることができ、最終的には、図7に示すように、開口領域150から横シール部132にかけて、より大きな開口部110a’を形成することができる。
【0057】
横シール部132のシール強度としては、4N/15mm以上7N/15mm以下であることが好ましい。シール強度が4N/15mm未満であると、シール抜けが発生して密封性が低下したり、流通保管時の外圧によって破袋するなどの不良品が発生するおそれがあるので好ましくない。また、シール強度が7N/15mmを超えると、易開封性が得られずに引き裂き部分が残ってしまうので好ましくない。なお、本発明の易開封性包装体によれば、従来の凝集剥離タイプのシール層に比べて、より広いシール条件(温度、時間、圧力)で上記の値を得ることができる。よって、シール条件の管理が容易であり、結果として、シール抜けや開封困難などの不良品の発生率を大幅に低下することができる。
【0058】
以上のように、この包装体100は、従来より大きな開口部を形成することが可能になり、加えてシール部が易開封性となっているので、引き裂いた部分の積層フィルムを容易に取り去ることができる。したがって、包装体から取り出し難い内容物、例えばウエットティッシュのように、包装袋と内容物との隙間の空間が少なく、摩擦も大きいために内容物が引き出し難いものや、ネジや菓子のような小さな商品が複数収容されており、一度に多数の収容物を取り出したい場合などの包装体として好適に用いられる。
【0059】
なお、包装体100は単独でこのまま使用してもよく、包装体100を更に外装容器に収容してもよい。これによれば、開封後に包装体100の開口部が露出してしまう場合であっても、外装容器によって再度内容物を保護することができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
<実施例1>
以下の仕様、PET12μ/インキ/接着剤/アルミ箔6μ/接着剤/イージーピールフィルム(I)35μ、からなる積層フィルムを製造した。
ここで、イージーピールフィルム(I)35μとしては、層間剥離タイプのアロマーTP6(商品名:昭和電工プラスチックプロダクツ社製)を用いた。なお、アロマーTP6は、ホモポリプロピレン28μ/(ランダムポリプロピレン+ポリエチレン)7μからなる共押出しフィルムである。
【0061】
<比較例1>
以下の仕様、PET12μ/インキ/接着剤/アルミ箔6μ/接着剤/イージーピールフィルム(II)30μ、からなる積層フィルムを製造した。
ここで、イージーピールフィルム(II)30μとしては、凝集剥離タイプのトレファン9151(商品名:東レ合成社製)を用いた。なお、トレファン9151は、ランダムポリプロピレン24μ/(ポリプロピレン+ポリエチレン)6μからなる共押出しフィルムである。
【0062】
<比較例2>
以下の仕様、PET12μ/インキ(パターン離型ニス)/接着剤/アルミ箔6μ/接着剤/CPP30μ、からなる積層フィルムを製造した。
【0063】
<比較例3>
以下の仕様、一軸延伸OPP20μ/インキ/接着剤/アルミ箔6μ/接着剤/イージーピールフィルム(III)30μ、からなる積層フィルムを製造した。
ここで、イージーピールフィルム(III)30μは、凝集剥離タイプであり、ポリエチレン25μ/エチレンコポリマー5μからなるフィルムである。
【0064】
<試験例1>
実施例1、比較例1、2の積層フィルムについて、シール時間0.5秒、シール圧0.98MPa/cm、試験片の引張速度300mm/分、シール温度100℃から170℃の条件でヒートシールし、そのシール強度を90度T字剥離で測定した。その結果を表1、図8に示す。なお、表1中の数値単位はN/15mmである。なお、ヒートシール試験機シール機としてはテストシーラーTP−701−C(商品名:テスター産業株式会社製)を用いて測定した。
【0065】
【表1】

【0066】
表1、図8の結果より、層間剥離タイプのイージーピールフィルムを用いた実施例1においては、シール温度140℃から160℃の間でシール強度が4N/15mm以上7N/15mm以下となっており、易開封性と密封性を同時に達成できるシール強度(4N/15mm以上7N/15mm以下)を達成できるシール温度の範囲が約20℃と広いことがわかる。
【0067】
一方、凝集剥離タイプのイージーピールフィルムを用いた比較例1においては、シール温度140℃におけるシール強度が4N/15mm未満と低く、密封性が不充分である。また、シール温度160℃におけるシール強度が7N/15mmを超えており易開封性が不充分であり、易開封性と密封性を同時に達成できるシール強度を達成できるシール温度の範囲が150℃のみであって実施例1より狭いことがわかる。また、パターン離型ニスを用いた比較例2(インキ層で剥離させる構成)においては、120℃におけるシール強度が既に7N/15mmを超えており、また、剥離状態もCPPの根切れが発生しておらず、易開封性が得られなかった。
【0068】
<試験例2>
実施例1、比較例1、3の積層フィルムを用いてピロー包装体を作成し、横シール部のシール強度の測定、手で剥離した場合の手感、剥離状態について評価した。その結果をまとめて表2(実施例1)、表3(比較例1)に示す。
【0069】
なお、ピロー包装体はガセット形態であり、縦104mm×横42mm(横ガセット部の耳を伸ばした状態)×高さ18.5mm、縦シール部のシール幅8mm、上下の横シール部のシール幅5mm(面シール)となるように作成し、試験片のサンプリングは、図9に示すように袋上面の横シール部に10mm幅の帯状にスリットを設け、試験片112、113についてそれぞれ評価した。なお、試験片112は、図9に示すように縦シール190が倒れていない側(横シールは上下の積層フィルム2枚の状態で行われる)でサンプリングし、試験片113は、縦シール140が倒れた側(横シールは上下の積層フィルム2枚+縦シール部の状態で行われる)の2箇所でサンプリングした。そして、左右の試験片112、113のうち、高い数値のほうをシール強度とした。なお、数値はn=4の平均である。
【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
表2、表3の結果より、層間剥離タイプのイージーピールフィルムを用いた実施例1においては、シール温度120℃から150℃という広い範囲で、手感が良好であり、剥離状態も安定しており、かつ、シール不良や破断も認められなかった。
【0073】
これに対して、凝集剥離タイプのイージーピールフィルムを用いた比較例1においては、120℃以下ではシール強度が不充分であり、一方、130℃以上では手感が不良で良好な易開封性が得られなかった。また、同じく凝集剥離タイプのイージーピールフィルムを用いた比較例3においては、手で剥離した場合の手感は良好であったが、いずれのシール温度においてもシール強度が不充分であった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、収容する内容物が取り出しやすい易開封性の包装体、例えば、携帯用ウエットティッシュ用の包装体として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の包装体の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1における積層フィルムの拡大断面図である。
【図3】図1におけるX−X’線に沿った断面図であって、横シール部付近の拡大図である。
【図4】図1において蓋材を剥離した状態を示す斜視図である。
【図5】図4において更に横シール部の途中まで積層フィルムを引き裂いた状態を示す斜視図である。
【図6】図5におけるX−X’線に沿った断面図であって、横シール部付近の拡大図である。
【図7】図5において引き裂き部分を取り除いた状態を示す斜視図である。
【図8】実施例における、試験例1のシール強度の測定結果を示す図表である。
【図9】実施例における、試験例2のサンプリング方法を示す図表である。
【符号の説明】
【0076】
100 包装体
110 積層フィルム
110a、110a’ 開口部
111 切込み線
112、113 試験片
120 蓋材
121 舌片部
131、132 横シール部
140 縦シール部
150 開口領域
160 仮想線
170 剥離面
180 根切れ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性を有する基材層と、ヒートシール可能なシール層とを備える2層以上の積層フィルムからなり、前記シール層同士をヒートシールしてなる包装体であって、
前記シール層は層間で剥離可能な共押出し層からなり、当該共押出し層は、ポリプロピレンを主体とし前記基材層側に配置されるサポート層と、ポリプロピレン及びポリエチレンからなる樹脂組成物を主体とし前記積層フィルムの最内層に配置される剥離層と、を含む多層を形成しているものである易開封性包装体。
【請求項2】
前記サポート層のポリプロピレンがホモポリマーであり、前記剥離層のポリプロピレンがランダムポリマーである請求項1記載の易開封性包装体。
【請求項3】
前記積層フィルムのシール強度が4N/15mm以上7N/15mm以下である請求項1又は2記載の易開封性包装体。
【請求項4】
前記包装体がピロー包装体である請求項1から3いずれか記載の易開封性包装体。
【請求項5】
前記ヒートシールによって、前記ピロー包装体に上下の横シール部及び縦シール部が形成されており、
前記積層フィルムには、前記ピロー包装体から内容物を取出すための開口領域を形成するように切り込み線が設けられ、
前記積層フィルムと剥離可能な蓋材が、前記開口領域を覆うように、前記積層フィルムの表面に粘着されており、
前記蓋材を剥離することよって、前記積層フィルムを前記開口領域から引き裂き、前記開口領域から前記横シール部にかけて連続した開口部が形成されるように、前記積層フィルムの引き裂きをガイドする引き裂き誘導手段が形成されている請求項4記載の易開封性包装体。
【請求項6】
前記引き裂き誘導手段は、前記積層フィルムを構成する延伸フィルムの延伸方向を、前記引き裂き方向とすることにより形成されているものである請求項5記載の易開封性包装体。
【請求項7】
前記包装体に収容される内容物が携帯用のウエットティッシュである請求項5又は6記載の易開封性包装体。
【請求項8】
前記横シール部が、シール幅2mm以上の面シールである請求項7記載の易開封性包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−27676(P2006−27676A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210105(P2004−210105)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】