説明

映像信号処理装置、映像表示装置および映像信号処理方法

【課題】どのような解像度の映像信号を入力しても、表示パネルで良好な表示が行えるようにする映像信号処理装置、映像表示装置および映像信号処理方法を提供する。
【解決手段】映像信号処理装置は、映像信号のスケーリング処理を行うスケーリング処理部と、映像信号の伸張処理を行う伸張処理部と、スケーリング処理部が伸張処理部により伸張した後の映像信号を用いるかまたは伸張処理部により伸張する前の映像信号を用いるかを伸張処理部に入力される映像信号の解像度に応じて切り替える切替手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力される映像信号のスケーリングを行う映像信号処理装置、映像表示装置および映像信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、映像を表示する映像表示装置は種々のタイプのものが実用化されている。従来の映像表示装置は、アナログ放送やデジタル放送の放送波を受信し、受信した放送波から取り出した映像データを用いて番組の映像を表示する据え置き型の映像表示装置とともに、近年、携帯端末装置向けの地上デジタル放送の映像を表示する携帯用の映像表示装置も広く普及している。
【0003】
携帯用の映像表示装置は据え置き型の映像表示装置に比べて画面サイズが小さいため、従来、解像度を高めた表示を行う工夫が施されている。例えば、特許文献1には、機器の動きに応じて表示する画像を変化させてディスプレイの解像度以上の解像度の画像を表示する画像処理装置が開示されている。
【特許文献1】特開2006−337771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、デジタル放送の普及や表示パネルの大型化の進展に伴い、デジタル放送の番組を受信し、受信した番組の映像を表示する映像表示装置は、解像度の高い表示を行える映像表示パネル(例えば、水平×垂直の画素数が1920×1080)を備えることが多くなっている。
【0005】
しかし、その一方で、映像表示装置に入力する映像信号(MPEGで圧縮されている映像信号)には、映像表示パネルとは解像度の異なる信号も存在している。例えば、映像表示パネルの解像度が1920×1080であっても、映像信号の解像度は1920×1080のほかに1440×1080もある。
【0006】
解像度が映像表示パネルの解像度と一致している映像信号を入力しているときは、その映像信号を用いて映像を表示すると、良好な表示内容が得られる。
【0007】
しかし、解像度が映像表示パネルの解像度と相違している映像信号を入力しているとき(特に、映像表示パネルの解像度よりも解像度の低い映像信号を入力しているとき)は、映像表示パネルのサイズに合わせるスケーリング処理を行って映像を表示すると、信号解像度とパネル解像度が一致している場合と比較して良好な表示内容を得ることができない。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたもので、どのような解像度の映像信号を入力しても、映像表示パネルで良好な表示を行えるようにする映像信号処理装置、映像表示装置および映像信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は映像信号のスケーリング処理を行うスケーリング処理部と、映像信号の伸張処理を行う伸張処理部と、スケーリング処理部が伸張処理部により伸張した後の映像信号を用いるかまたは伸張処理部により伸張する前の映像信号を用いるかを伸張処理部に入力される映像信号の解像度に応じて切り替える切替手段とを有する映像信号処理装置を特徴とする。
【0010】
また、本発明は、映像信号のスケーリング処理を行うスケーリング処理部と、映像信号の伸張処理を行う伸張処理部と、スケーリング処理部が伸張処理部により伸張した後の映像信号を用いるかまたは伸張処理部により伸張する前の映像信号を用いるかを伸張処理部に入力される映像信号の解像度に応じて切り替える切替手段と、スケーリング処理部によるスケーリング処理が行われた映像信号を用いて映像を表示する映像表示手段とを有する映像表示装置を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、映像信号のスケーリング処理を行うスケーリング処理部と、映像信号の伸張処理を行う伸張処理部とを備えた映像信号処理装置における映像信号処理方法であって、スケーリング処理部が伸張処理部により伸張した後の映像信号を用いるかまたは伸張処理部により伸張する前の映像信号を用いるかを伸張処理部に入力される映像信号の解像度に応じて切り替える映像信号処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
以上詳述したように、本発明によれば、どのような解像度の映像信号を入力しても、映像表示パネルで良好な表示を行えるようにする映像信号処理装置、映像表示装置および映像信号処理方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0014】
(テレビジョン放送受信装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係るテレビジョン放送受信装置21の構成を示すブロック図である。テレビジョン放送受信装置21は、アナログ放送の放送波とデジタル放送の放送波を受信し、受信したそれぞれの放送波から取り出した映像信号を用いて番組の映像を表示する据え置き型の映像表示装置である。
【0015】
テレビジョン放送受信装置21は、アンテナ22、入力端子23、チューナ24および復調器25を有している。
【0016】
アンテナ22は、デジタル放送の放送波を捕らえ、その放送波の放送信号を入力端子23を介してチューナ24に供給する。
【0017】
チューナ24は、入力されたデジタル放送の放送信号から所望のチャンネルの放送信号を選局する。
【0018】
そして、チューナ24から出力された放送信号は復調器25に供給される。復調器25は、放送信号に復調処理を施し、デジタル映像信号および音声信号を復調して、後述するセレクタ26に供給する。
【0019】
また、テレビジョン放送受信装置21は、アンテナ27、入力端子28、チューナ29およびアナログ復調器30を有している。
【0020】
アンテナ27はアナログ放送の放送波を捕らえ、その放送波の放送信号を入力端子28を介してチューナ29に供給する。
【0021】
チューナ29は、入力されたアナログ放送の放送信号から所望のチャンネルの放送信号を選局する。
【0022】
そして、チューナ29から出力された放送信号はアナログ復調部30により復調され、さらにデジタル信号に変換された後、セレクタ26に出力される。
【0023】
また、テレビジョン放送受信装置21は入力端子31,33、A/D変換部32、信号処理部34、スピーカ35および映像表示パネル36を有している。
【0024】
入力端子31は外部からアナログの映像信号および音声信号が入力され、入力端子33は外部からデジタルの映像信号および音声信号が入力される。A/D変換部32は入力端子31から供給されるアナログの映像信号および音声信号をデジタル信号に変換し、セレクタ26に供給する。
【0025】
セレクタ26は、復調器25、アナログ復調部30、A/D変換部32および入力端子33から供給されるデジタルの映像信号及び音声信号から1つを選択して、信号処理部34に供給する。
【0026】
信号処理部34は、入力される映像信号について、所定の信号処理やスケーリング処理等を施し、処理後の映像信号を映像表示パネル36に供給する。また、信号処理部34は、入力されたデジタル音声信号に所定の信号処理を施し、アナログ音声信号に変換してスピーカ35に出力する。なお、詳しくは後述するが、信号処理部34は図2に示す構成を含む。また、図1,2では、図示はしていないが、テレビジョン放送受信装置21は、少なくともTSデマルチプレクサおよびMPEGデコーダを有し、MPEGデコーダによってデコードされた後の信号が図2に示した信号処理部34に入力される。
【0027】
さらに、信号処理部34は、映像表示パネル36に表示させるためのOSD(On Screen display)信号も生成している。
【0028】
スピーカ35は、信号処理部34から供給される音声信号を入力し、その音声信号を用いて音声を出力する。
【0029】
そして、映像表示パネル36は、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイからなっている。映像表示パネル36は、信号処理部34から供給される映像信号を用いて映像を表示する。本実施の形態では、映像表示パネル36は、後述する高解像度での映像表示を行える。
【0030】
さらに、テレビジョン放送受信装置21は制御部37、操作部38、受光部39、HDD(Hard Disk Drive)40およびメモリ41を有している。
【0031】
制御部37は、テレビジョン放送受信装置21における種々の動作を統括的に制御する。制御部37は、CPU(central processing unit)等を内蔵したマイクロプロセッサであり、操作部38からの操作情報を入力する一方、リモートコントローラ42から送信された操作情報を受光部39を介して入力し、それらの操作情報にしたがい各部をそれぞれ制御する。
【0032】
この場合、制御部37は、メモリ41を使用している。メモリ41は、主として、制御部37に内蔵されているCPUが実行する制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、CPUに作業エリアを提供するためのRAM(Random Access Memory)と、各種の設定情報及び制御情報等が格納される不揮発性メモリとを有している。
【0033】
HDD40は、セレクタ26で選択されたデジタルの映像信号及び音声信号を記録する記録手段としての機能を有している。テレビジョン放送受信装置21はHDD40を有するため、セレクタ26で選択されたデジタルの映像信号及び音声信号をHDD部40により記録することができる。さらに、テレビジョン放送受信装置21は、HDD40に記録されたデジタルの映像信号及び音声信号を用いて映像および音声を再生することもできる。
【0034】
(信号処理部の構成)
信号処理部34は図2に示すように、フレームメモリ51、IP変換部52、超解像アルゴリズム処理部53およびスケーリングフィルタ54を有している。
【0035】
フレームメモリ51は、セレクタ26で選択されたデジタルの映像信号Vsg1を端子34aから入力して格納する。本実施の形態の場合、映像信号Vsg1は水平×垂直の画素数が1440×1080(以下「低解像度」という)の映像信号、または1920×1080(以下「高解像度」という)の映像信号で、いずれも、インターレース方式(飛び越し走査方式)の映像信号である。
【0036】
IP変換部52は、フレームメモリ51からの映像信号が入力される。IP変換部52は、インターレース方式の映像信号をプログレッシブ方式(順次走査方式)の映像信号に変換する変換手段であり、超解像アルゴリズム処理部53の前段に配置されている。
【0037】
超解像アルゴリズム処理部53は超解像アルゴリズムにしたがいIP変換部52で変換されたプログレッシブ方式の映像信号Vsg1について伸張処理を行い、映像表示パネル36の解像度(高解像度)の映像信号Vsg1に変換する。超解像アルゴリズム処理部53については後に詳述する。なお、超解像アルゴリズムとは、本来の映像に存在しない情報を推定により求める手法であり、詳細は後述する。
【0038】
スケーリングフィルタ54は超解像アルゴリズム処理部53に入力される映像信号Vsg1の解像度が低解像度の場合は超解像アルゴリズム処理部53から出力される映像信号Vsg2を選択し、入力される映像信号Vsg1の解像度が高解像度の場合はIP変換部52から出力される映像信号Vsg1を選択する。この選択は、制御部37の制御にしたがって行われる。
【0039】
そして、スケーリングフィルタ54は、入力される映像信号Vsg1(またはVsg2)について映像表示パネル36の画面サイズに適合させるためのスケーリング処理を行い、映像信号Vsg3を映像表示パネル36に出力する。なお、詳しくは後述するが、スケーリングフィルタ54が行うスケーリング処理はオーバースキャン処理を併有している。
【0040】
(信号処理部の動作内容)
次に、信号処理部34の動作内容について、図3を参照して説明する。図3は、制御部37が信号処理部34の動作を制御する制御手順を示すフローチャートである。信号処理部34は制御部37の制御にしたがい後述する動作の切替を行ってスケーリング処理を実行する。
【0041】
制御部37は動作を開始すると、信号処理部34のIP変換部52に指示する。すると、IP変換部52は入力される映像信号Vsg1をインターレース方式からプログレッシブ方式に変換する(S1)。
【0042】
次に、制御部37はS2に進む。制御部37は映像信号Vsg1が低解像度の映像信号であるか否か(映像表示パネル36の水平方向の画素数よりも映像信号Vsg1の水平方向の画素数が少ないか否か)を判定し、その判定結果にしたがって信号処理部34に動作の切替を行わせる。この場合、制御部37は切替手段としての動作を行う。
【0043】
すなわち、制御部37は映像信号Vsg1が低解像度の映像信号の場合は超解像度アルゴリズムを適用したスケーリング処理が行われ、映像信号Vsg1が高解像度の映像信号の場合は超解像度アルゴリズムを適用しないスケーリング処理が行われるように制御する。
【0044】
すると、信号処理部34では、映像信号Vsg1が低解像度の映像信号の場合は超解像度アルゴリズム53の伸張処理(S3)により伸張した後の映像信号Vsg2を用いてスケーリングフィルタ54がスケーリング処理(S4)を実行する。また、信号処理部34では、映像信号Vsg1が高解像度の映像信号の場合は伸張する前の映像信号Vsg1を用いてスケーリングフィルタ54がスケーリング処理を実行する。
【0045】
そして、超解像アルゴリズム処理部53は、超解像度アルゴリズムを適用した映像信号の伸張処理を実行して、低解像度の映像信号Vsg1を高解像度の映像信号Vsg2に変換する。詳しくは後述するが、超解像アルゴリズム処理部53は、低解像度の映像信号Vsg1の水平方向の画素数を1440から1920に変換する伸張処理を行い、低解像度の映像信号Vsg1を映像表示パネル36の水平方向の画素数に対応した画素数(1920)にしている。
【0046】
また、スケーリングフィルタ54は、IP変換部52から出力される映像信号Vsg1か、超解像度アルゴリズム53から出力される映像信号Vsg2のいずれかを選択した上でスケーリング処理(S4)を実行する。
【0047】
スケーリングフィルタ54がスケーリング処理を実行すると、信号処理部34の動作が終了する。
【0048】
以上のように、テレビジョン放送受信装置21では、信号処理部34に入力される映像信号Vsg1の解像度が低解像度であるときは、低解像度の映像信号Vsg1ではなく、超解像アルゴリズム処理部53の伸張処理により映像表示パネル36と同じ高解像度に伸張された映像信号Vsg2を用いている。
【0049】
そのため、入力される映像信号の解像度に依存せず、入力される映像信号の解像度がどのようなものであっても、映像表示パネル36によって画質の良好な映像を表示できるようになっている。
【0050】
通常、放送波に重畳されている放送信号には、映像のエッジ部分を構成する映像信号に不要な信号成分等が含まれている。そのため、映像表示パネル36に映像を表示するときは映像全体をパネル内に表示するのではなく、エッジ部分の映像がパネルの外側となるように映像信号をオーバースキャンさせるオーバースキャン処理を行っている。こうして、テレビジョン放送受信装置21では、ノイズ成分が含まれているエッジ部分の映像を映像表示パネル36で表示しないようにしている。
【0051】
一方、スケーリング処理では、アスペクト比4:3の映像信号をそのままの比率でアスペクト比16:9の画面の中央に表示させるノーマルモードのほか、アスペクト比4:3で画面の上下に黒い帯状の映像を含む映像信号を縦横に拡大してアスペクト比16:9の画面の中央に表示させるズームモードとよばれるものがある。このズームモードのスケーリング処理には、映像の端の部分に表示パネルからみだす部分が生じる。この場合、スケーリング処理はオーバースキャン処理としての動作を兼ねたものとなる。
【0052】
また、このようなスケーリング処理では、新たな画素を計算により求めているが、高解像度の映像信号Vsg1に合わせたスケーリング処理を低解像度の映像信号Vsg1にも適用すると、もともとなかった画素に基づき、画素を計算により求める格好となるため、スケーリング処理後の映像信号がなまるなどして画質を劣化させてしまう。
【0053】
低解像度の映像信号Vsg1に対する従来のスケーリング処理は、水平方向の画素数を1440から1920にする伸張処理を兼ねたものとなっており、その伸張の際に、映像信号のなまりが発生するなどして画質を劣化させていた。
【0054】
しかしながら、本実施の形態では、スケーリングフィルタ54の前段に超解像アルゴリズム処理部53を配置し、その超解像アルゴリズム処理部53によって低解像度の映像信号Vsg1を高解像度の映像信号Vsg1と同じ解像度に伸張すると、スケーリング処理の際に画素数を1440から1920に変換する伸張の必要がなくなり、映像信号のなまりを回避できる。しかも、スケーリングフィルタ54に入力される映像信号の解像度を固定でき、これによって、スケーリングの比率を固定して回路規模の増大などを回避し、回路規模を制限することもできる。
【0055】
そこで、テレビジョン放送受信装置21では、低解像度の映像信号Vsg1については超解像アルゴリズム処理部53による伸張処理を行い、映像表示パネル36と解像度の同じ映像信号Vsg2に伸張したうえで、スケーリングフィルタ54におけるスケーリング処理を行っている。
【0056】
以上のように、テレビジョン放送受信装置21では、解像感の増した鮮明な映像を表示することができる。つまり、テレビジョン放送受信装置21は放送波に重畳して伝送されてきた映像信号のフォーマットが低解像度の映像信号の場合でも、高解像度の映像信号の場合と同等の画質の表示内容を得ることができる。
【0057】
(超解像アルゴリズム処理部について)
上述したとおり、超解像アルゴリズム処理部53は、超解像アルゴリズムにしたがい映像信号の伸張処理を行う。超解像アルゴリズム処理部53による伸張処理では、スケーリングフィルタ54におけるスケーリング処理では再現できない画素を折り返し成分を用いるなどして予測に基づき再現している。
【0058】
ここで、超解像とは、解像度の低い低解像度の映像信号を用いて元の映像信号よりも高い解像度で映像信号を復元することを意味している。この種の手法に関しては、反復法、周波数領域法、統計法などがあるが、超解像アルゴリズム処理部53は、例えば反復法の超解像アルゴリズムにしたがい映像信号の伸張処理を行う。なお、反復法は、主として3つの段階(初期推量、イメージング・プロセスおよび再構成プロセス)からなっている。
【0059】
そして、超解像アルゴリズム処理部53が反復法の超解像アルゴリズムにしたがう場合、図4に示すフローチャートに沿って映像信号の伸張処理を行う。
【0060】
超解像アルゴリズム処理部53は、M個の第1の低解像度の画像を用いる。M個の第1の低解像度の画像は、異なる角度、距離、時間等の変位をもって同一の対象物(同一のシーン)を撮影した複数フレームの画像や、ビデオ映像における一連のシーケンス等、若干の相違を持つ画像列(観測画像列)である。
【0061】
本実施の形態では、ビデオ映像における一連のシーケンスを想定している。M個の第1の低解像度の画像は、同じシーンに関連しているので、M個の第1の低解像度の画像すべてが、同じシーンから捕捉されている。また、M個の第1の画像の各々は、均等にサンプリングされ、かつ量子化された一連のピクセルによって表示される。
【0062】
そして、超解像アルゴリズム処理部53は、まず、M個の第1の画像を所定の記憶部に記憶する(S10)。
【0063】
次に、超解像アルゴリズム処理部53は、M個の第1の画像の中の1つをプロトタイプ画像として選択し、選択されなかった残り(M−1)個の第1の画像を第2の画像に関連付ける(S11)。
【0064】
続いて、超解像アルゴリズム処理部53は、初期推量段階として次の動作を実行する(S12)。S12では、拡大係数に基づき、プロトタイプ画像内に特別なピクセルが補間される。S12では、その隣接するピクセルの値に従って特別なピクセルの値が計算される。また、補間済みのプロトタイプ画像が生成され、(M−1)個の第2の画像の各々と補間済みのプロトタイプ画像との間にそれぞれ存在する各並進の計算も行われる。
【0065】
次いでS13に進み、超解像アルゴリズム処理部53は自動画像選択段階としてのS13を実行する。超解像アルゴリズム処理部53はS13において、(M−1)個の第2の画像の並進を拡大係数で除算して、(M−1)個の第2の画像の並進に関するモジュラスを取得する。
【0066】
また、超解像アルゴリズム処理部53はS13において、ある基準に基づいて、その関連するモジュラスが同じである第2の画像の中から1つの画像を選択する。選択された第2の画像は、その関連するモジュラスが同じでない第2の画像の残りの画像と一緒に、N個の第3の画像と関連付けられる。ここで、Nは(M−1)以下である。
【0067】
その後、超解像アルゴリズム処理部53はS14に進み、N個の第3の画像の各々と補間済みのプロトタイプ画像との間の各並進により、補間済みのプロトタイプ画像をN回ダウン・サンプリングして、N個の第4の画像を生成する。N個の第4の画像の各々は、N個の第3の画像の中の1つの画像に対応する。
【0068】
超解像アルゴリズム処理部53はS14の後でS15を実行し、N個の第3の画像の各々と、対応する第4の画像との間の差を算出する。
【0069】
次に、超解像アルゴリズム処理部53はS16を実行し、S15で算出した差の平均により、補間済みのプロトタイプ画像のピクセルの値を調整する。
【0070】
さらに超解像アルゴリズム処理部53はS17を実行して、補間済みのプロトタイプ画像のピクセルの値が満足のいく結果に収束するかどうかを判定する。ここで、補間済みのプロトタイプ画像のピクセルの値が満足のいく結果に収束するときは超解像アルゴリズム処理部53はS18に進むが、そうでなければS14に戻り、S14からS17を繰り返し実行する。
【0071】
以上のようにすることで、そのピクセルの値が満足のいく結果に収束する補間済みのプロトタイプ画像が解像度の向上した画像と関連付けられる。
【0072】
そのほか、超解像アルゴリズム処理部53における超解像アルゴリズムとして、再構成型超解像処理もある。この構成型超解像処理では、まず初期の高解像度画像を設定し、そこからカメラモデルに基づき観測画像である低解像度画像の各画素値を推定する。そして、推定された画素値と実際の観測画素値の誤差を最小にするように高解像度画像を更新する。この更新処理を収束するまで繰り返すことによりって、高解像度画像を求める手法が再構成型超解像処理である。
【0073】
なお、以上の実施の形態では、水平×垂直の画素数が1440×1080の映像信号Vsg1が入力される場合を例にとって説明しているが、水平×垂直の画素数がこれと異なる映像信号Vsg1が入力される場合についても本発明を適用することができる。
【0074】
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態に係るテレビジョン放送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】信号処理部、制御部および映像表示パネルを示すブロック図である。
【図3】制御部が信号処理部の動作を制御する制御手順を示すフローチャートである。
【図4】超解像アルゴリズム処理部による伸張処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
21…テレビジョン放送受信装置、34…信号処理部
36…映像表示パネル、37…制御部
52…IP変換部、53…超解像アルゴリズム処理部
54…スケーリングフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号のスケーリング処理を行うスケーリング処理部と、
映像信号の伸張処理を行う伸張処理部と、
前記スケーリング処理部が前記伸張処理部により伸張した後の映像信号を用いるかまたは前記伸張処理部により伸張する前の前記映像信号を用いるかを前記伸張処理部に入力される前記映像信号の解像度に応じて切り替える切替手段とを有する映像信号処理装置。
【請求項2】
前記伸張処理部は、前記スケーリング処理部の前段に配置されている請求項1記載の映像信号処理装置。
【請求項3】
前記切替手段は、前記スケーリング処理が行われた映像信号を用いて映像を表示する映像表示手段の水平方向の画素数よりも前記伸張処理部に入力される前記映像信号の水平方向の画素数が少ないときは前記伸張処理部により伸張した後の映像信号を用いるようにして切り替えを行う請求項1記載の映像信号処理装置。
【請求項4】
前記伸張処理部は、前記映像信号を用いて元の映像信号よりも解像度の高い映像信号を復元する超解像アルゴリズムにしたがって前記伸張処理を行う請求項1〜3のいずれか一項記載の映像信号処理装置。
【請求項5】
前記映像信号をインターレース方式からプログレッシブ方式に変換する変換手段を更に有し、該変換手段が前記伸張処理部の前段に配置されている請求項1〜4のいずれか一項記載の映像信号処理装置。
【請求項6】
前記切替手段は、前記伸張処理部に入力される前記映像信号の水平方向の画素数が1440のときに前記伸張処理部により伸張した後の映像信号を用いるようにして切り替えを行う請求項1〜5のいずれか一項記載の映像信号処理装置。
【請求項7】
前記スケーリング処理部は、前記映像信号のスケーリング処理とともにオーバースキャン処理を行う請求項1〜6のいずれか一項記載の映像信号処理装置。
【請求項8】
映像信号のスケーリング処理を行うスケーリング処理部と、
映像信号の伸張処理を行う伸張処理部と、
前記スケーリング処理部が前記伸張処理部により伸張した後の映像信号を用いるかまたは前記伸張処理部により伸張する前の前記映像信号を用いるかを前記伸張処理部に入力される前記映像信号の解像度に応じて切り替える切替手段と、
前記スケーリング処理部による前記スケーリング処理が行われた映像信号を用いて映像を表示する映像表示手段とを有する映像表示装置。
【請求項9】
映像信号のスケーリング処理を行うスケーリング処理部と、映像信号の伸張処理を行う伸張処理部とを備えた映像信号処理装置における映像信号処理方法であって、
前記スケーリング処理部が前記伸張処理部により伸張した後の映像信号を用いるかまたは前記伸張処理部により伸張する前の前記映像信号を用いるかを前記伸張処理部に入力される前記映像信号の解像度に応じて切り替える映像信号処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−252701(P2008−252701A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93562(P2007−93562)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】