説明

映像信号処理装置及び映像表示装置

【課題】階調処理などの種々の映像信号処理によって、処理前より処理後の映像信号の階調性が局所的に低下する場合、処理前よりも画質の品位が低下する。
【解決手段】第一の特徴量算出回路は、階調処理後の映像信号に対して所定の画素数を対象に輝度の最大値と最小値の比率を算出し、第二の特徴量算出回路は、階調処理前の映像信号に対して所定の画素数を対象に輝度の最大値と最小値の比率を算出する。第一の平均輝度算出回路は階調処理後の映像信号に対して、所定の画素数を対象に平均輝度を算出する。第一の修正判断回路では、第一及び第二の特徴量算出回路の出力を比較し、階調処理後の映像信号に対して、輝度の階調の修正の要否を判断し、修正を制御する制御信号を生成する。第一の階調修正回路では、第一の修正判断回路からの制御信号と第一の平均輝度算出回路の出力を用いて、画素毎に輝度の修正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力される映像信号に対して、輝度レベルを制御する映像信号処理装置及び映像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
映像表示装置においては、映像の高画質化を目的とする様々な映像信号処理が行われている。特に、映像信号の輝度の階調を制御することによるコントラスト改善に注目した場合、例えば、特許文献1では、一般的なヒストグラムを用いず、人間の視覚モデルを基にしたコントラスト改善技術を提案しており、その構成図は図12のようになる。
図12において、画像処理装置は、入力画像をデジタル画像に変換する画像入力手段1201、コントラスト改善手段1202、及びデジタル画像とコントラスト改善手段1202で得られた強調画像とを合成する画像合成手段1203を備える。
【0003】
また、コントラスト改善手段1202は、比較画素決定手段1204、周囲平均手段1205、改善量算出手段1206、変換基準値算出手段1207及び画素値変換手段1208で構成される。
【0004】
比較画素決定手段1204は、コントラストを調整するための輝度変換を行う対象画素の周辺領域より比較対象にする周辺画素を決定する。周囲平均手段1205は、周辺画素における画素値の平均画素値を算出する。改善量算出手段1206は、周囲平均手段1205で得られた対象画素の局所的な特徴を表す平均画素値と、対象画素の画素値との比を基にコントラスト改善量を算出する。変換基準値算出手段1207は、改善量算出手段1206から得られたコントラスト改善量を実際の画素値に変換する際の変換基準値を求める。画素値変換手段1208は、変換基準値算出手段1207によって求められた変換基準値を基に改善量算出手段1206で得られたコントラスト改善量を対象画素におけるコントラスト改善後の画素値に変換する。
【0005】
人間の視覚は、対象画素に対して知覚された画素値のみで対象画素の情報(色及びコントラストなど)を認知するのではなく、対象画素とその周囲にある画素との相対的な関係により、対象画素の画素値を調整することで画素情報を知覚している。人間の視覚モデルを基にした上記のコントラスト改善技術はその他の手法よりもより鮮明なコントラスト変換画像を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−38842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図12で示すような人間の視覚モデルを利用したコントラスト改善技術は、対象画素の輝度とその周囲にある画素の輝度とを基にして対象画素の輝度を補正する。このため、隣接する画素の輝度が一定ではない画像領域では、コントラスト改善の効果が得られる。
この場合、対象画素とその周囲の画素の輝度の差が比較的大きい場合、補正度合いが大きくなる傾向にある。例えば、輝度が低い(暗い)映像の部位の中で、比較的輝度が高い画素の補正度合いは大きくなるが、映像信号のダイナミックレンジには限りがあるため、比較的輝度が高い画素の階調性が低下する。この結果、輝度の補正を行うことで、逆に入力映像信号よりも局所的に階調性が低下する場合があり、画質の品位が低下する虞がある。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、種々の映像信号の階調処理を行った結果、階調処理後の映像信号が、階調処理前の映像信号より階調性が低下した場合、階調処理後の映像信号の階調性を階調処理前の映像信号の階調性に近づけることができ、画質の品位低下を防ぐことができる映像信号処理装置及び映像表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る映像信号処理装置は、入力映像信号に対して、輪郭補正及びコントラスト補正を行う階調処理回路と、前記階調処理回路から出力する映像信号に対して、所定の画素数で映像信号の特徴量を算出する第一の特徴量算出回路と、前記入力映像信号に対して、所定の画素数で映像信号の特徴量を算出する第二の特徴量算出回路と、前記階調処理回路から出力する映像信号に対して、所定の画素数で平均輝度を算出する第一の平均輝度算出回路と、前記第一の特徴量算出回路の出力と前記第二の特徴量算出回路の出力を用いて、映像信号の階調の修正を判断する第一の修正判断回路と、前記第一の修正判断回路の出力と前記第一の平均輝度算出回路の出力に応じて、前記階調処理回路から出力する映像信号の階調を修正する第一の階調修正回路とを備える。
【0010】
また、上記映像信号処理装置において、前記第一の特徴量算出回路及び第二の特徴量算出回路は、修正対象となる画素を中心とし、左右に所定数の画素で構成される範囲内において、画素の最大輝度と最小輝度の比率を特徴量として算出することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、階調処理回路の入力映像信号及び出力映像信号に対して、水平方向に所定数の画素で構成される範囲内における画素の最大輝度と最小輝度の比率が特徴量として算出される。出力映像信号の特徴量の値が、入力映像信号の特徴量の値よりも小さいと判断された場合、所定の範囲で算出された平均輝度の値に応じて、階調処理回路から出力する映像信号の階調を修正する。これにより、前記階調処理回路における種々の輝度や色などの階調処理で、階調処理前と比較して、結果的に水平方向に階調性が低下し、局所的なコントラストが低下した場合においても、階調処理をする前のコントラストに近づけることができ、画質の品位低下を防ぐことができる。
【0012】
また、上記映像信号処理装置において、前記第一の特徴量算出回路及び第二の特徴量算出回路は、修正対象となる画素を中心として、左右に所定数の画素で構成される範囲内において輝度の分散値を特徴量として算出することが好ましい。
この構成によれば、階調処理回路の入力映像信号及び出力映像信号に対して、水平方向に所定数の画素で構成される範囲内における画素の輝度の分散が特徴量として算出される。出力映像信号の特徴量の値が、入力映像信号の特徴量の値よりも小さいと判断された場合、所定の範囲で算出された平均輝度の値に応じて、階調処理回路から出力する映像信号の階調を修正することができる。
【0013】
また、上記映像信号処理装置において、前記第一の特徴量算出回路及び第二の特徴量算出回路は、修正対象となる画素を中心として、上下に所定数の画素で構成される範囲内において、画素の最大輝度と最小輝度の比率を特徴量として算出することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、階調処理回路の入力映像信号及び出力映像信号に対して、垂直方向に所定数の画素で構成される範囲内における画素の最大輝度と最小輝度の比率が特徴量として算出される。出力映像信号の特徴量の値が、入力映像信号の特徴量の値よりも小さいと判断された場合、所定の範囲で算出された平均輝度の値に応じて、階調処理回路から出力する映像信号の階調を修正することができる。
【0015】
また、上記映像信号処理装置において、前記第一の特徴量算出回路及び第二の特徴量算出回路は、修正対象となる画素を中心とし、上下に所定数の画素で構成される範囲内において、画素の輝度の分散値を特徴量として算出することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、階調処理回路の入力映像信号及び出力映像信号に対して、垂直方向に所定数の画素で構成される範囲内における画素の輝度の分散値が特徴量として算出される。出力映像信号の特徴量の値が、入力映像信号の特徴量の値よりも小さいと判断された場合、所定の範囲で算出された平均輝度の値に応じて、階調処理回路から出力する映像信号の階調を修正することができる。
【0017】
本発明に係る映像信号処理装置は、入力映像信号に対して、輪郭補正及びコントラスト補正を行う階調処理回路と、前記階調処理回路から出力する映像信号に対して、水平方向に所定の画素数で映像信号の特徴量を算出する第一の特徴量算出回路と、前記入力映像信号に対して、水平方向に所定の画素数で映像信号の特徴量を算出する第二の特徴量算出回路と、前記階調処理回路から出力する映像信号に対して、水平方向に所定の画素数で平均輝度を算出する第一の平均輝度算出回路と、前記第一の特徴量算出回路の出力と前記第二の特徴量算出回路の出力を用いて、映像信号の水平方向の階調の修正を判断する第一の修正判断回路と、前記第一の修正判断回路の出力と前記第一の平均輝度算出回路の出力に応じて、前記階調処理回路から出力する映像信号の階調を水平方向に修正する第一の階調修正回路と、前記第一の階調修正回路の出力信号に対して、垂直方向に所定の画素数で映像信号の特徴量を算出する第三の特徴量算出回路と、前記入力映像信号に対して、垂直方向に所定の画素数で映像信号の特徴量を算出する第四の特徴量算出回路と、前記第一の階調修正回路から出力する映像信号に対して、垂直方向に所定の画素数で平均輝度を算出する第二の平均輝度算出回路と、前記第三の特徴量算出回路の出力と前記第四の特徴量算出回路の出力を用いて、映像信号の垂直方向の階調の修正を判断する第二の修正判断回路と、前記第二の修正判断回路の出力と前記第二の平均輝度算出回路の出力に応じて、前記第一の階調修正回路から出力する映像信号の階調を垂直方向に修正する第二の階調修正回路とを備える。
【0018】
また、上記映像信号処理装置において、前記第一及び第二の特徴量算出回路は、修正対象となる画素を中心として、左右に所定数の画素で構成される範囲内において、画素の最大輝度と最小輝度の比率もしくは輝度の分散値を特徴量として算出することが好ましい。
【0019】
また、上記映像信号処理装置において、前記第三及び第四の特徴量算出回路は、修正対象となる画素を中心として、上下に所定数の画素で構成される範囲内における画素の最大輝度と最小輝度の比率もしくは輝度の分散値を特徴量として算出することが好ましい。
【0020】
この構成によれば、階調処理回路において、結果的に水平方向及び垂直方向に映像信号の階調性が低下し、局所的なコントラストが低下した場合においても、水平、垂直方向ともに階調処理をする前の階調性及びコントラストに近づけることができ、画質の品位低下を防ぐことができる。
本発明に係る映像表示装置は、上記の映像信号処理装置と、前記映像信号処理装置によって階調が修正された映像信号を表示する表示装置とを備える。
【0021】
この構成によれば、階調処理によって、結果的に映像信号の階調性が低下した画素に対して、階調処理前の映像信号の階調性及びコントラストに近づけることができ、高品位な画質の映像を表示することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、種々の映像信号の階調処理によって、結果的に処理前と比較して、階調性が低下した場合に、階調処理前後の映像信号の特徴量を比較することで、階調処理前の階調性及びコントラストに近づけることができ、画質の品位低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の映像表示装置を示すブロック図
【図2】本発明の階調補正部の詳細な構成を示すブロック図
【図3】本発明の特徴量算出回路及び第二の特徴量算出回路の動作を示す図
【図4】本発明の第一の特徴量算出回路及び第二の特徴量算出回路における特徴量算出の動作を示す図
【図5】本発明の第一の特徴量算出回路及び第二の特徴量算出回路における輝度の分散値を算出する動作を示す図
【図6】本発明の階調補正部における第一の平均輝度算出回路の動作を示す図
【図7】平均輝度が修正対象画素の輝度よりも高い場合の、階調補正部の第一の階調修正回路の動作を示す図
【図8】平均輝度が修正対象画素の輝度よりも低い場合の、階調補正部の第一の階調修正回路の動作を示す図
【図9】階調補正部の第一の階調修正回路の動作を示す図
【図10】本発明の垂直方向の階調修正を説明する図
【図11】本発明の階調補正部の詳細な構成を示すブロック図
【図12】従来の映像表示装置の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施例1)
以下に、本発明の実施の形態について図1から図11を用いて説明する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
図1は、本発明の映像信号処理装置を適用した映像表示装置の概略構成図である。図1において、101はA/Dコンバータ、102は映像信号処理部、103はフィールドメモリ、104は階調補正部、105は駆動制御部、106は表示装置である。
【0025】
A/Dコンバータ101には、アナログ形式の映像信号AVDが与えられる。A/Dコンバータ101は与えられた映像信号AVDをデジタル形式に変換し、変換した映像信VD1を映像信号処理部102に与える。
【0026】
映像信号処理部102は、例えば、映像信号VD1に対してインターレース−プログレッシブ変換(以下、IP変換と略記する)を行う。映像信号処理部102は、IP変換時に、A/Dコンバータ101から与えられた映像VD1をフィールドメモリ103に書き込み、フィールドメモリ103に書き込まれた映像信号を読み出すことによりプログレッシブ方式の映像信号VD2を生成する。また、映像信号処理部102はフィールドメモリ103を用いる映像の表示領域の変更処理を含んでもよい。生成された映像信号VD2は階調補正部104に与えられる。
【0027】
フィールドメモリ103は内部にフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、もしくはSRAM(スタティックランダムアクセスメモリ)等の揮発性メモリおよびそのデータを保持するためのデータ保持用電源を備え、またはそれ以外のデータ保存のための手段を備えている。
【0028】
階調補正部104は、映像信号処理部102から与えられた映像信号VD2に対して、映像の明るさやコントラストを改善するための輝度あるいは色の補正を行い、映像信号VD3を駆動制御部105に与える。階調補正部104の詳細は後述する。
【0029】
駆動制御部105は与えられた映像信号VD3を基に、映像に対応した駆動信号D1を生成し、表示装置106を駆動させる。それにより、映像が表示装置106に表示される。表示装置106は例えばプラズマディスプレイパネルであってもよいし、液晶パネルであってもよい。
【0030】
同期分離部107は、映像信号AVDから水平同期信号HP及び垂直同期信号VPを分離し、映像信号処理部102及び駆動制御部105に与えられる。
【0031】
続いて、上記の階調補正部104の具体的な構成例を説明する。
【0032】
(第1の構成例)
図2は、第1の構成例に係るコントラスト補正部104の詳細な構成を示す図である。図2において、201は階調処理回路、202は第一の特徴量算出回路、203は第二の特徴量算出回路、204は第一の平均輝度算出回路、205は第一の修正判断回路、206は第一の階調修正回路である。
【0033】
階調処理回路201は、映像信号の輝度や色などの階調処理を行い、映像の明るさ、コントラストなどを改善する。代表的な処理としては、ガンマ補正、輝度の黒伸張、白伸張処理などが挙げられる。特にガンマ補正などにおいては、限られたダイナミックレンジの中で、過度に映像信号の階調を補正すると、白側あるいは黒側の階調が補正前と比較して低下し、結果的に白当たりや黒つぶれが発生する可能性がある。階調処理回路201は、一例として、階調処理を行った後の階調が失われた輝度信号を第一の特徴量算出回路202及び第一の平均輝度算出回路204に与える。また、一例として、階調処理を行う前の輝度信号(映像信号VD2の輝度信号)が第二の特徴量算出回路203に与えられる。なお、第一の特徴量算出回路202及び第二の特徴量算出回路203に与えられる映像信号は色信号であってもよい。
【0034】
次に、第一の特徴量算出回路202及び第二の特徴量算出回路203について説明する。図3は第一の特徴量算出回路202及び第二の特徴量算出回路203の動作を示す図である。図3の画素D1〜D10は映像信号のあるラインにおける連続した10画素を一例として示している。横軸は水平方向の画素の位置、縦軸は画素の輝度値を示す。第一の特徴量算出回路202及び第二の特徴量算出回路203では、注目する画素を中心とし、その近傍に位置する画素の輝度情報を元にして、注目画素の特徴量を算出する。
まず、特徴量を算出する範囲について説明する。例えば、図3の画素D6を注目画素とした場合、画素D6の特徴量を算出する範囲は、画素D6を中心として、右側の画素D7、D8及び左側の画素D4、D5を含めた計5個の画素とする。同様に、画素D5の特徴量を算出する範囲は画素D3〜D7とし、また画素D7の特徴量を算出する範囲は画素D5〜D9とする。なお、算出範囲に含まれる画素数は5個以外であってもよい。
【0035】
次に画素の特徴量の算出方法について説明する。図4は、第一の特徴量算出回路202及び第二の特徴量算出回路203における画素の特徴量算出の動作を示す図である。一般に輝度の階調性が失われた場合、各画素の輝度の大きさは一様に近づく。よって、画素の特徴量は、輝度の階調性を示す指標として、特徴量算出範囲内における画素の輝度の最大値と最小値の比率で表すことができる。例えば、図4上図の場合は、所定の範囲内において、輝度の最大値は画素D8のMAX_Aであり、輝度の最小値は画素D6のMIN_Aである。また、図4下図の場合は、所定の範囲内において、輝度の最大値は画素D8のMAX_Bであり、輝度の最小値は画素D6のMIN_Bである。ここで、輝度の階調性の指標値として、下記の式を用いる。
輝度の階調性の指標値=輝度の最大値/輝度の最小値 この式より、図4上図の指標値はMAX_A/MIN_Aとなる。また、図4下図の指標値はMAX_B/MIN_Bとなる。
よって、両者の値を比較した場合、MAX_A/MIN_A > MAX_B/MIN_B となり、指標値が大きいほど階調性が高いといえる。よって、この指標値を用いて、各画素の特徴量を表す。
すなわち、画素D6の特徴量C1_6AをMAX_A/MIN_A(あるいはC1_6BをMAX_B/MIN_B)で表す。例えば、図3の場合、画素D6の特徴量算出範囲である画素D4〜D8の中で、輝度の最大値は画素D8の値Y1_8で、輝度の最小値は画素D6の値Y1_6である。よって、第一の特徴量算出回路202及び第二の特徴量算出回路203における画素D6の特徴量C1_6は下記の式で表すことができる。
【0036】
画素D6の特徴量C1_6=算出範囲内の最大輝度/算出範囲内の最小輝度=Y1_8/Y1_6
同様に、画素D5の特徴量C1_5は、Y1_4/Y1_6となり、画素D7の特徴量C1_7は、Y1_8/Y1_6となる。
【0037】
また、画素の特徴量は、上記とは別の指標を用いて算出することも可能である。例えば、図5は第一の特徴量算出回路202及び第二の特徴量算出回路203において、画素の特徴量として輝度の分散値を用いた場合の動作を示す図である。一般に分散値は、サンプルの平均値と各サンプル値との差の2乗を加算して平均することで得られる。図5において、輝度の分散値を求める範囲は画素D4〜D8であり、APL1_6は画素D4〜D8の平均輝度である。図5左図の場合における輝度の分散値V1_6Aと、図5右図の場合における輝度の分散値V1_6Bを比較すると、V1_6A > V1_6Bとなり、分散値が大きいほど階調性が高いといえる。よって、この輝度の分散値を用いて、画素の特徴量を表すことができる。すなわち、画素D6の特徴量C1_6AをV1_6A(あるいはC1_6BをV1_6B)で表す。図3の場合、第一の特徴量算出回路202及び第二の特徴量算出回路203における画素D6の特徴量C1_6は、分散値を用いて、下記の式で表すことができる。
【0038】
画素D6の特徴量C1_6={(Y1_7−APL1_6)の2乗+(Y1_6−APL1_6)の2乗+(Y1_5−APL1_6)の2乗+(Y1_7−APL1_6)の2乗+(Y1_8−APL1_6)の2乗}÷5
画素D5の特徴量C1_5も輝度の分散値を算出する範囲をD3〜D7として同様に算出することができる。また、画素D7の特徴量C1_7も輝度の分散値を算出する範囲をD5〜D9として同様に算出することができる。
上述のように、第一の特徴量算出回路202において画素毎に求められた特徴量C1は図2に示すように、第一の修正判断回路205に与えられる。また、第二の特徴量算出回路203において画素毎に求められた特徴量C2も第一の修正判断回路205に与えられる。特徴量C1は階調処理回路201において階調処理された後の輝度信号の特徴を表し、特徴量C2は階調処理回路201に入力する階調処理前の輝度信号の特徴を表す。
【0039】
次に、第一の平均輝度算出回路204について説明する。第一の平均輝度算出回路204には、階調処理回路201の出力VD25が与えられる。第一の平均輝度算出回路204では、第一の特徴量算出回路202と同様、各画素に対して、所定数の画素で構成される範囲内の平均輝度を算出する。
図6は、第一の平均輝度算出回路204の動作を示す図である。図6の画素D1〜D10は映像信号のあるラインにおける連続した10画素を一例として示している。横軸は水平方向の画素の位置、縦軸は画素の輝度値を示す。例えば、図3の画素D6を注目画素とした場合、画素D6の平均輝度を算出する範囲は、画素D6を中心として、右側の画素D7、D8及び左側の画素D4、D5を含めた計5個の画素とする。よって、画素D6の平均輝度APL_6は、下記の式で算出される。
APL_6=(Y1_4+Y1_5+Y1_6+Y1_7+Y1_8)/5
同様に、画素D5の平均輝度を算出する範囲は画素D3〜D7とし、また画素D7の平均輝度を算出する範囲は画素D5〜D9とする。なお、算出範囲に含まれる画素数は5個以外であってもよいが、第一の特徴量算出回路202で算出される特徴量C1の算出範囲と合わせることが望ましい。また、階調処理回路201から出力する映像信号VD25が色信号であってもよいので、その場合は第一の平均輝度算出回路204では、色信号の平均を算出する。第一の平均輝度算出回路204で算出された画素毎の平均輝度APLは第一の階調修正回路206に与えられる。
【0040】
次に、第一の修正判断回路205について説明する。第一の修正判断回路205では、与えられた特徴量C1の値と特徴量C2の値を画素毎に比較し、第一の階調修正回路206における輝度信号VD25の輝度信号レベルの修正の有無を画素毎に判断する。まず、特徴量C1の値が特徴量C2の値よりも小さい場合、階調処理回路201での階調処理により、輝度信号の階調性が低下したと判断することができる。この場合、第一の修正判断回路205で生成される制御信号JUDGEは“1”(HIGH)とし、第一の階調修正回路206に与えられる。次に、特徴量C1の値が特徴量C2の値よりも大きい場合は、階調処理回路201での階調処理により、輝度信号の階調性が高くなったと判断することができる。この場合、第一の修正判断回路205で生成される制御信号JUDGEは“0”(LOW)とし、第一の階調修正回路206に与えられる。
【0041】
次に、第一の階調修正回路206について説明する。第一の階調修正回路206では、階調処理回路201の出力輝度信号VD25に対して、第一の修正判断回路205で生成された制御信号JUDGEを元に輝度レベルの修正を行い、階調性の低下を改善する。制御信号JUDGEが“1”の場合、階調処理回路201での階調処理により、輝度信号の階調性が低下したと判断されているため、第一の階調修正回路206で輝度信号VD25の輝度レベルを修正する。また、制御信号JUDGEが“0”の場合、階調処理回路201での階調処理により、輝度信号の階調性は高くなったと判断されているため、第一の階調修正回路206で輝度信号VD25の輝度レベルの修正を行わず、そのまま出力する(VD3=VD25)。
【0042】
次に、制御信号JUDGEが“1”のときの輝度信号VD25の輝度レベルの修正方法について説明する。図7、図8及び図9は第一の階調修正回路206の動作を示す図である。図7において、階調処理回路201での階調処理後の画素D6の輝度レベルY1_6を輝度レベルYO_6に修正する場合を考える。
まず、画素D6の輝度レベルY1_6と第一の平均輝度算出回路204で算出された画素D6の平均輝度APL_6の大きさを比較する。輝度レベルY1_6が平均輝度APL_6よりも小さい場合、画素D6の修正後の輝度レベルYO_6は、修正前の輝度レベルY1_6よりも輝度レベルを下げる。このとき、輝度レベルYO_6は一例として、下記の式で算出されてもよい。
【0043】
YO_6=(Y1_6−APL_6)×K+APL_6
ここで、Kは所定の係数を表す。例えば、Y1_6=50、APL_6=70、K=1.1とすると、YO_6=48となり、Y1_6よりも輝度を下げるように修正を行う。係数Kは固定でもよいし、特徴量C1と特徴量C2の値の差が大きいほど係数Kの値も大きくするなど、特徴量C1と特徴量C2の値に応じて制御してもよい。一般に係数Kが大きいほど、修正度合いは大きくなる。
【0044】
次に、図8において、階調処理回路201での階調処理後の画素D8の輝度レベルY1_8を輝度レベルYO_8に修正する場合を考える。まず、画素D8の輝度レベルY1_8と第一の平均輝度算出回路204で算出された画素D8の平均輝度APL_8の大きさを比較する。輝度レベルY1_8が平均輝度APL_8よりも大きい場合、画素D8の修正後の輝度レベルYO_8は、修正前の輝度レベルY1_8よりも輝度レベルを上げる。このとき、輝度レベルYO_8は上述の式と同様、一例として下記の式で算出されてもよい。
【0045】
YO_8=(Y1_8−APL_8)×K+APL_8
ここで、Kは所定の係数を表す。例えば、Y1_8=70、APL_8=50、K=1.1とすると、YO_6=72となり、Y1_8よりも輝度を上げるように修正を行う。やはり係数Kは固定でもよいし、特徴量C1と特徴量C2の値に応じて制御してもよい。
上述したように、画素毎に輝度レベルと平均輝度APLの大小関係に応じて、輝度レベルを修正する。これにより、図9に示すように、入力輝度信号VD2と比較して階調性が低下した輝度信号VD25の輝度レベルを第一の階調修正回路206で修正することで、修正後の輝度信号VD3は、入力輝度信号の階調性に近づけることができる。
【0046】
上述の説明は、水平方向の階調の修正について述べたが、同様に垂直方向の階調の修正であってもよい。図10は垂直方向の階調修正を説明するための図である。第一の特徴量算出回路202、第二の特徴量算出回路203及び第一の平均輝度算出回路204において、入力する映像信号をライン遅延させる回路を有することで、図10の画素D6の垂直方向の階調の修正を画素D4〜D8を用いて行うことができる。第一の特徴量算出回路202及び第二の特徴量算出回路203では、画素D4〜D8を用いて、上述のような輝度の最大値と最小値の比率や輝度の分散などの映像の特徴量を算出する。また、第一の平均輝度算出回路204では、画素D4〜D8を用いて、平均輝度を算出する。第一の修正判断回路205及び第一の階調修正回路206は上述と同様の動作を行うことで、階調処理回路201において、垂直方向の階調が低下した輝度信号VD3は、入力輝度信号の垂直方向の階調性に近づけることができる。
【0047】
(第二の構成例)
図11は第2の構成例に係る階調補正部104の詳細な構成を示す図である。図11において、階調補正部104は、図2の階調処理回路201、第一の特徴量算出回路202、第二の特徴量算出回路203、第一の平均輝度算出回路204、第一の修正判断回路205及び第一の階調修正回路206を備える。また、第三の特徴量算出回路1101、第四の特徴量算出回路1102、第二の平均輝度算出回路1103、第二の修正判断回路1104及び第二の階調修正回路1105を備える。
第一の特徴量算出回路202、第二の特徴量算出回路203、第一の平均輝度算出回路204、第一の修正判断回路205及び第一の階調修正回路206は、第1の構成例に係る階調補正部104の第一の特徴量算出回路202、第二の特徴量算出回路203、平均輝度算出回路204、第一の修正判断回路205及び階調修正回路206と上述した内容と同様の構成及び動作を有する。
また、第三の特徴量算出回路1101、第四の特徴量算出回路1102、第二の平均輝度算出回路1103、第二の修正判断回路1104及び第二の階調修正回路1105は、第1の構成例に係る階調補正部104の第一の特徴量算出回路202、第二の特徴量算出回路203、第一の平均輝度算出回路204、第一の修正判断回路205及び階調修正回路206と同様の構成及び動作を有する。第三の特徴量算出回路1101、第二の平均輝度算出回路1103及び第二の階調修正回路1105には、第一の階調修正回路206の出力VD275が与えられる。また、第四の特徴量算出回路1102には、入力映像信号VD2が与えられる。
次に、図11の動作について説明する。まず、第一の特徴量算出回路202、第二の特徴量算出回路203及び第一の平均輝度算出回路204では、水平方向の画素を対象として、特徴量及び平均輝度を算出する。第一の修正判断回路205では、階調処理回路201から出力する輝度信号VD25の輝度の階調を水平方向に修正する判断を行う。第一の修正判断回路の出力JUDGE1の値に応じて、第一の階調修正回路206において、輝度信号VD25の輝度の階調を水平方向に修正する。
【0048】
次に、第三の特徴量算出回路1101及び第二の平均輝度算出回路1103では、第一の階調修正回路206から出力する輝度信号VD275の垂直方向の画素を対象として、特徴量及び平均輝度を算出する。また、第四の特徴量算出回路1102では、入力輝度信号VD2の垂直方向の画素を対象として、特徴量を算出する。
第二の修正判断回路1104では、第三の特徴量算出回路1101の出力C3と第四の特徴量算出回路1102の出力C4の大小関係を比較して第一の階調修正回路206の出力輝度信号VD275の輝度の階調を垂直方向に修正する判断を行う。
また、第二の階調修正回路1105では、第二の修正判断回路1104から出力JUDGE2の値に応じて、第一の階調修正回路205の出力輝度VD275の輝度の階調を垂直方向に修正する。
この構成により、階調処理回路201において、低下した出力輝度信号VD25の輝度の階調を、水平方向及び垂直方向に修正することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、入力される映像信号に対して、輝度レベルを制御する映像信号処理装置及び映像表示装置に関するものである。
【符号の説明】
【0050】
101 A/Dコンバータ
102 映像信号処理部
103 フィールドメモリ
104 階調補正部
105 駆動制御部
106 表示装置
107 同期分離部
201 階調処理回路
202 第一の特徴量算出回路
203 第二の特徴量算出回路
204 第一の平均輝度算出回路
205 第一の修正判断回路
206 第一の階調修正回路
1101 第三の特徴量算出回路
1102 第四の特徴量算出回路
1103 第二の平均輝度算出回路
1104 第二の修正判断回路
1105 第二の階調修正回路
1201 画像入力手段
1202 コントラスト改善手段
1203 画像合成手段
1204 比較画素決定手段
1205 周囲平均手段
1206 改善量算出手段
1207 変換基準値算出手段
1208 画素値変換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力映像信号に対して、輪郭補正及びコントラスト補正を行う階調処理回路と、前記階調処理回路から出力する映像信号に対して、所定の画素数で映像信号の特徴量を算出する第一の特徴量算出回路と、前記入力映像信号に対して、所定の画素数で映像信号の特徴量を算出する第二の特徴量算出回路と、前記階調処理回路から出力する映像信号に対して、所定の画素数で平均輝度を算出する第一の平均輝度算出回路と、前記第一の特徴量算出回路の出力と前記第二の特徴量算出回路の出力を用いて、映像信号の階調の修正を判断する第一の修正判断回路と、前記第一の修正判断回路の出力と前記第一の平均輝度算出回路の出力に応じて、前記階調処理回路から出力する映像信号の階調を修正する第一の階調修正回路とを備えることを特徴とする映像信号処理装置。
【請求項2】
前記第一の特徴量算出回路及び前記第二の特徴量算出回路は、前記第一の階調修正回路にて修正する注目画素を中心として左右に所定の画素数を特徴量算出の範囲とし、範囲内の画素の輝度の最大値と最小値の比率を算出することを特徴とする請求項1記載の映像信号処理装置。
【請求項3】
前記第一の特徴量算出回路及び前記第二の特徴量算出回路は、前記第一の階調修正回路にて修正する注目画素を中心として左右に所定の画素数を特徴量算出の範囲とし、範囲内の画素の輝度の分散を算出することを特徴とする請求項1記載の映像信号処理装置。
【請求項4】
前記第一の特徴量算出回路及び前記第二の特徴量算出回路は、前記第一の階調修正回路にて修正する注目画素を中心として上下に所定の画素数を特徴量算出の範囲とし、範囲内の画素の輝度の最大値と最小値の比率を算出することを特徴とする請求項1記載の映像信号処理装置。
【請求項5】
前記第一の特徴量算出回路及び前記第二の特徴量算出回路は、前記第一の階調修正回路にて修正する注目画素を中心として上下に所定の画素数を特徴量算出の範囲とし、範囲内の画素の輝度の分散を算出することを特徴とする請求項1記載の映像信号処理装置。
【請求項6】
入力映像信号に対して、輪郭補正及びコントラスト補正を行う階調処理回路と、前記階調処理回路から出力する映像信号に対して、水平方向もしくは垂直方向に所定の画素数で映像信号の特徴量を算出する第一の特徴量算出回路と、前記入力映像信号に対して、水平方向もしくは垂直方向に所定の画素数で映像信号の特徴量を算出する第二の特徴量算出回路と、前記階調処理回路から出力する映像信号に対して、水平方向もしくは垂直方向に所定の画素数で平均輝度を算出する第一の平均輝度算出回路と、前記第一の特徴量算出回路の出力と前記第二の特徴量算出回路の出力を用いて、映像信号の水平方向もしくは垂直方向の階調の修正を判断する第一の修正判断回路と、前記第一の修正判断回路の出力と前記第一の平均輝度算出回路の出力に応じて、前記階調処理回路から出力する映像信号の階調を水平方向もしくは垂直方向に修正する第一の階調修正回路と、前記第一の階調修正回路の出力信号に対して、垂直方向もしくは水平方向に所定の画素数で映像信号の特徴量を算出する第三の特徴量算出回路と、前記入力映像信号に対して、垂直方向もしくは水平方向に所定の画素数で映像信号の特徴量を算出する第四の特徴量算出回路と、前記第一の階調修正回路から出力する映像信号に対して、垂直方向もしくは水平方向に所定の画素数で平均輝度を算出する第二の平均輝度算出回路と、前記第三の特徴量算出回路の出力と前記第四の特徴量算出回路の出力を用いて、映像信号の垂直方向もしくは水平方向の階調の修正を判断する第二の修正判断回路と、前記第二の修正判断回路の出力と前記第二の平均輝度算出回路の出力に応じて、前記第一の階調修正回路から出力する映像信号の階調を垂直方向もしくは水平方向に修正する第二の階調修正回路とを備え、映像信号の水平方向及び垂直方向の階調性を修正することを特徴とする映像信号処理装置。
【請求項7】
前記第一の特徴量算出回路、前記第二の特徴量算出回路、前記第三の特徴量算出回路および前記第四の特徴量算出回路は、いずれも所定の画素数を特徴量算出の範囲とし、範囲内の画素の輝度の最大値と最小値の比率を算出することを特徴とする請求項6記載の映像信号処理装置。
【請求項8】
前記第一の特徴量算出回路、前記第二の特徴量算出回路、前記第三の特徴量算出回路および前記第四の特徴量算出回路は、いずれも所定の画素数を特徴量算出の範囲とし、範囲内の画素の輝度の分散を算出することを特徴とする請求項6記載の映像信号処理装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の映像信号処理装置と、前記映像信号処理装置によって輝度が補正された映像信号を表示する表示装置とを備えることを特徴とする映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−252131(P2010−252131A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100528(P2009−100528)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】