説明

映像監視システムの監視領域設定装置及び監視領域設定方法

【課題】映像監視システムにおいて監視領域を設定する際に、監視領域の設定や把握を視覚的に容易に行えるようにする。
【解決手段】取得した監視映像において監視領域の設定入力を行う監視領域入力部113、監視領域に関する情報を取得する領域情報取得部114、監視領域の色情報に基づき、監視領域を着色するための透過画像の色情報として元映像と異なる色を設定する色情報設定部115、透過画像の透過率を設定する透過率設定部116、色情報及び透過率に基づいて透過画像を生成し、監視映像の監視領域に重畳表示するように出力する透過画像重畳制御部の機能を持つ制御部118とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影装置で撮影した映像を用いて監視を行う映像監視システムに関し、詳しくは、監視映像上で監視用の監視領域を設定する映像監視システムの監視領域設定装置及び監視領域設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ等の撮影装置で撮影した映像を利用した監視方法は、多数の領域を遠隔の一箇所で集中して監視できるという利点から多方面で普及している。近年は、画像解析技術を応用して装置自体に監視機能を付与し、監視者の作業負荷を軽減することができる映像監視システムが提案されている。
【0003】
その一例として、監視映像の画面上の任意部分を複数の線分で囲んで監視領域として設定し、当該監視領域を囲む線分の状態(色情報)を所定周期で確認することにより異常を検知する異常監視装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この異常監視装置によれば、監視が必要な部分を監視者が任意に設定することができ、精度の高い異常検知、即ち、監視を自動的に行うことができる。
【特許文献1】特開2001−224011号公報 図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された異常監視装置は、監視映像中の監視対象領域を線分のみで表示するため、監視領域の把握が行いにくいという課題があった。例えば、図22に示すように、矩形で2つの監視領域が設定され、双方の一部が重複しているような場合、範囲の設定を行った者以外の監視者には重複した部分が監視領域に設定されているのか否かを容易に判断できないという問題点があった。
【0005】
具体的には、図23に示すように、同じように線分で領域2200及び領域2201の範囲が設定されていても(図23(a))、種々の場合が考えられ、監視者が誤解するおそれがある。この例では、領域2202のように領域2200及び領域2201の一部として設定されている場合(図23(b))、領域2203のように領域2200及び領域2201から独立した領域として設定されている場合(図23(c))、領域2204のように領域2200にも領域2201にも含まれない非監視領域として設定されている場合(図23(d))、領域2205のように領域2200の一部としてのみ設定されている場合(図23(e))、領域2206のように領域2201の一部としてのみ設定されている場合(図23(f))などが考えられる。
【0006】
また、ズーム(拡大)機能、パン(左右)機能、チルト(上下)機能等の撮影範囲制御機能を備えた監視用カメラの場合にも同様の問題点が生じる。例えば、図24に示すように、ズームを行わない撮影映像の状態から(図24(a))、ズーム機能を有効にして画像を拡大すると、監視対象を囲む矩形の線分の一部または全てが画面上から消失する(図24(b))。このため、監視領域が領域2300に設定されているのか、領域2301に設定されているのかが判断できない。このような場合、線分の全体が表示されるまでズームアウトしなければ監視領域の内外を判断できないという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、映像監視システムにおいて監視領域を設定する際に、監視領域の設定や把握を視覚的に容易に行うことが可能な映像監視システムの監視領域設定装置及び監視領域設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の映像監視システムの監視領域設定装置は、取得した監視映像において監視領域の設定入力を行う監視領域入力部と、前記監視領域に関する情報を取得する領域情報取得部と、前記監視領域の色情報に基づき、前記監視領域を着色するための透過画像の色情報として元映像と異なる色を設定する色情報設定部と、前記透過画像の透過率を設定する透過率設定部と、前記色情報及び前記透過率に基づいて透過画像を生成し、前記監視映像の監視領域に重畳表示するように出力する透過画像重畳制御部と、を備えるものである。
これにより、映像監視システムにおいて監視領域を設定する際に、透過画像の重畳表示によって、監視領域の設定や把握を視覚的に容易に行うことが可能となる。
【0009】
また、本発明は、上記の映像監視システムの監視領域設定装置であって、前記領域情報取得部は、監視領域内で最も出現頻度の高い色に係る色情報を取得する機能を有し、前記色情報設定部は、前記出現頻度の高い色と異なる色を前記透過画像の色情報として設定するものを含む。
これにより、監視領域の映像の主要な色と異なる色の透過画像によって監視領域を塗布するように重畳表示されるため、監視領域の設定や把握を視覚的に明瞭に行うことが可能となる。
【0010】
また、本発明は、上記の映像監視システムの監視領域設定装置であって、前記色情報設定部は、前記出現頻度の高い色に対して特性値が所定値以上離れた異なる色を前記透過画像の色情報として設定するものを含む。
これにより、監視領域の映像の主要な色と明確に区別が可能な異なる色によって、監視領域に透過画像を重畳表示することが可能となる。
【0011】
また、本発明は、上記の映像監視システムの監視領域設定装置であって、前記領域情報取得部は、設定された前記監視領域の位置、重複状態の少なくとも一方を含む設定情報を取得する機能を有し、前記透過画像重畳制御部は、前記設定情報に基づいて前記透過率設定部において設定する透過画像の透過率を変化させるものを含む。
これにより、例えば複数の監視領域が重複した場合に重複数に応じて透過画像の透過率を変化させる等が可能であり、監視領域が重複するような場合でも、監視領域の原映像が視認しにくくなることを防止しつつ、複数の監視領域を容易に把握することが可能となる。
【0012】
また、本発明は、上記の映像監視システムの監視領域設定装置であって、前記透過画像重畳制御部は、前記監視領域入力部により監視領域の設定を行う際に、他の監視領域における前記透過画像の透過率を一時的に変化させるものを含む。
これにより、監視領域の設定を行う際に、例えば他の既設定の監視領域における透過画像の透過率を上げるなどして一時的に変化させる等が可能であり、他の監視領域との関係を視覚的に容易に把握することが可能となる。
【0013】
また、本発明は、上記の映像監視システムの監視領域設定装置であって、前記領域情報取得部は、設定された前記監視領域の位置、重複状態の少なくとも一方を含む設定情報を取得する機能を有し、前記透過画像重畳制御部は、前記設定情報に基づいて前記監視領域に関する情報を階層表示させるものを含む。
これにより、監視領域に関する情報を階層表示することで、複数の監視領域を設定した場合でも、監視領域の位置、重複、包含等の関係を容易かつ適切に把握することが可能となる。
【0014】
また、本発明は、上記の映像監視システムの監視領域設定装置であって、前記透過画像重畳制御部は、前記監視映像の撮影範囲の変化を検知し、前記撮影範囲の変化に合わせて前記監視領域に対応する透過画像の位置、大きさ、形の少なくとも一つを変更して重畳表示させるものを含む。
これにより、表示画面において監視映像の撮影範囲が変化した場合でも、これに合わせて監視領域の透過画像を適切に重畳表示可能であり、監視領域を適切に視認、把握することが可能となる。
【0015】
また、本発明の映像監視システムの監視領域設定方法は、取得した監視映像において監視領域の設定入力を行う監視領域入力ステップと、前記監視領域に関する情報を取得する領域情報取得ステップと、前記監視領域の色情報に基づき、前記監視領域を着色するための透過画像の色情報として元映像と異なる色を設定する色情報設定ステップと、前記透過画像の透過率を設定する透過率設定ステップと、前記色情報及び前記透過率に基づいて透過画像を生成し、前記監視映像の監視領域に重畳表示するように出力する透過画像重畳制御ステップと、を有するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、映像監視システムにおいて監視領域を設定する際に、監視領域の設定や把握を視覚的に容易に行うことが可能な映像監視システムの監視領域設定装置及び監視領域設定方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る映像監視システムの監視領域設定装置の概略構成を示すブロック図である。本実施形態では、ズーム(拡大)、パン(左右)、チルト(上下)等の撮影範囲制御機能を備えた監視用カメラで撮影した監視映像を用いる映像監視システムにおける構成例を示す。
【0018】
映像監視システムの監視領域設定装置100は、入力部111、出力部112、監視領域入力部113、領域情報取得部114、色情報設定部115、透過率設定部116、監視領域情報記憶部117、制御部118、などを有して構成される。
【0019】
入力部111は、信号線110を介して入力されるR(赤)信号、G(緑)信号、B(青)信号による監視映像の撮影映像信号を入力して検出する。入力した撮影映像信号は、後述する出力部112と、監視領域入力部113とに送出される。
【0020】
なお、入力部111は、監視対象を撮影するカメラ(図示省略)に対して、ズーム(拡大)やパン(左右)、チルト(上下)など、撮影範囲を変化させるための機能を有効にする撮影範囲制御部120を含む。撮影範囲制御部120は、監視者の遠隔からの操作により、ズーム、パン、チルトの各動作をカメラに指示することができる。
【0021】
監視領域入力部113は、キーボード、マウス、タッチペンなどの入力装置を有して構成され、撮影映像信号による監視映像上の監視領域の設定入力を行う。領域情報取得部114は、監視領域入力部113で設定した監視領域に対して走査を行い、色情報の取得、識別を行う。また、複数の監視領域が設定されている場合に、監視領域の位置や重複状態等に関する設定情報の取得も行う。
【0022】
色情報設定部115は、領域情報取得部114で識別された元映像中の監視領域の色情報を所定のルールに従って変換し、重畳する透過画像の色情報として、設定した監視領域に対して変換した元映像と異なる色情報を設定する。透過率設定部116は、設定した監視領域の透過画像に対し、予め指定した透過率の設定を行う。
【0023】
監視領域情報記憶部117は、監視領域入力部113で設定した監視領域の位置に係る位置情報、領域情報取得部114で識別した監視領域の色情報、監視領域の位置や重複状態等に関する設定情報、色情報設定部115で設定した透過画像の色情報、透過率設定部116で設定した透過率、などの各種情報を記憶して保存する。
【0024】
制御部118は、監視領域設定装置100の動作全般に係る制御を行う。後述する監視領域設定装置100の各動作は、予め設定されたプログラムを制御部118を主とした各部において実行することにより実現される。例えば、制御部118は透過画像重畳制御部の機能を有し、色情報設定部115で設定した色情報と透過率設定部116で設定した透過率とに基づき、制御部118により監視領域に対応する透過画像を生成し、この透過画像を入力部111から入力された監視映像に適切に重畳する。出力部112は、透過画像が重畳された監視映像などをディスプレイなどの表示装置に出力する。これにより、監視領域に対して元映像の色を変換した異なる色が着色されて表示される。
【0025】
なお、上記の実施形態において、領域情報取得部114で色情報を識別する際の監視領域の走査方法は、どのような方法を用いてもかまわない(例えば、中心の点のみの走査であってもよい)。また、色情報や透過率情報は、色情報設定部115や透過率設定部116で設定するだけでなく、監視者などが直接指示して設定したり、選択したりするなど、別の方法で決定できるようにしてもよい。
【0026】
次に、上記のように構成された監視領域設定装置の動作について説明する。始めに、監視領域上に重畳させる透過画像の色設定処理について説明する。
【0027】
図2は、本実施形態の監視領域設定装置における監視領域上に重畳させる透過画像の色設定処理手順を示すフローチャートである。領域情報取得部114は、監視映像において監視領域入力部113で指定された監視領域に該当する領域を走査する(ステップS101)。そして、制御部118は、監視領域内の走査した位置の色が色情報判定チャートのどの範囲に該当するかチェックし、監視領域において最も使用されている色を識別する(ステップS102)。
【0028】
図3は、16進数コードで表現した色情報判定チャートを示す模式図である。例えば、走査した位置の色がFFFF22(R,G,Bの各色の16進数表記、以下同様)の場合、FFFF00〜FFFF33の範囲に該当する。全ての監視領域内の走査終了後、色情報判定チャートに基づいて、監視領域において最も出現頻度の高い色情報が判別されて決定される。例えば、最も出現頻度の高い色がFFFF22である場合、FFFF00〜FFFF33の範囲の代表色であるFFFF00となる。
【0029】
そして、制御部118は、決定された最も出現頻度が高い色が、R、G、Bの有彩色/無彩色判定チャートのどのゾーンに該当するかを判断する(ステップS103)。
【0030】
図4は、決定した監視領域の色について、有彩色であるか無彩色であるかを判定するための有彩色/無彩色判定チャートを示す模式図である。
【0031】
監視領域において最も出現頻度が高い色が、R、G、Bの有彩色/無彩色判定チャートで予め設定した無彩色ゾーンに該当する場合(ステップS103のYes)、色情報設定部115は、R、G、Bの色コードのいずれかを00(16進数コード)に変換する(ステップS104)。
【0032】
図5は、監視領域において最も出現頻度が高い色が無彩色である場合の透過画像の重畳例を示す図である。例えば、図5(a)に示すように、監視領域設定中の画面において、道路を含む領域が監視領域の暫定領域500として暫定的に選択され、この領域における最も出現頻度が高い色がグレー(R:80、G:80、B:80 (RGB全て16進数コード))として判別されて決定された場合、図4に示す有彩色/無彩色判定チャートによって無彩色ゾーンであると判定される。ここでは、図4において例えばα=3Fとして有彩色/無彩色を判定する。
【0033】
この場合、色情報設定部115は、R、G、Bのうち、例えばRの値を00(16進コード)に変換する。変換した色はグレーから暗い緑がかった青色となり、元映像の色の特性値に対して所定値以上離れた特性値を持つ異なる色となる。さらに、透過率設定部116は、あらかじめ設定した透過率を用いて、ここでは変換した色を10%透過させた透過画像とし、この透過画像の情報を監視領域情報記憶部117に記憶する。そして、制御部118は、生成された透過画像を監視領域設定中の監視映像の暫定領域500に重畳する。これにより、色変換及び透過処理された透過色によって暫定領域500が着色され、画面上では図5(b)に示すように、他の領域と容易に区別可能な監視領域510として着色表示される。
【0034】
一方、監視領域において最も出現頻度が高い色が、R、G、Bの有彩色/無彩色判定チャートで予め設定した有彩色ゾーンに該当する場合(ステップS103のNo)、色情報設定部115は、R、G、Bの色コードの反転処理を行う(ステップS105)。
【0035】
図6は、監視領域において最も出現頻度が高い色が有彩色である場合の透過画像の重畳例を示す図である。例えば、図6(a)に示すように、監視領域設定中の画面において、路肩の草を含む領域が監視領域の暫定領域600として暫定的に選択され、この領域における最も出現頻度が高い色が濃い黄緑(R:59、G:62、B:2A (RGB全て16進数コード))として判別されて決定された場合、図4に示す有彩色/無彩色判定チャートによって有彩色ゾーンであると判定される。ここでは、図4において例えばα=3Fとして有彩色/無彩色を判定する。
【0036】
この場合、色情報設定部115は、R、G、Bの各値をFF(16進数コード)から減算して変換する。変換した色は薄紫(R:A6、G:9D、B:D5 (RGB全て16進数コード))となり、元映像の色の特性値に対して所定値以上離れた特性値を持つ異なる色となる。さらに、透過率設定部116は、あらかじめ設定した透過率を用いて、ここでは変換した色を10%透過させた透過画像とし、この透過画像の情報を監視領域情報記憶部117に記憶する。そして、制御部118は、生成された透過画像を監視領域設定中の監視映像の暫定領域600に重畳する。これにより、色変換及び透過処理された透過色によって暫定領域600が着色され、画面上では図6(b)に示すように、他の領域と容易に区別可能な監視領域610として着色表示される。
【0037】
なお、上記の実施形態では、信号線110に入力する信号がRGB信号の場合について説明したが、Y(輝度信号)、U(輝度信号と青色成分の差)、V(輝度信号と赤色成分の差)信号を入力信号にするなど、他の撮影映像信号の入力信号を用いても同様に実施可能である。その際は、色情報判定チャートや有彩色/無彩色判定チャートも、RGBではなくYUVを用いた色表現をチャートにするなど入力信号に適合する他のチャートを使用すればよい。また、色情報判定チャートの色情報の範囲幅及び範囲幅の代表する色情報、有彩色/無彩色判定チャートの無彩色ゾーンの範囲幅、色情報設定部で変換するための変換値などは、上記に限定されるものではなく、またこれらの値の設定は、監視者などが直接設定したり選択したりするなど、別の方法で決定できるようにしてもよい。
【0038】
このように、本実施形態では、指定した監視領域の範囲で最も出現頻度が高い色を検出してこれを異なる色に変換し、この変換色により監視領域の形状を示す透過画像として監視領域に重畳するようにしている。これにより、透過色の重畳によって監視領域の原映像が視認しにくくなることを防止しつつ、監視領域に元映像と異なる色を着色する状態にすることによって色の識別が明確になり、どの部分が設定した監視領域であるのか監視領域の範囲を監視者等が視覚的に容易に認識、把握することが可能となる。また、監視領域を設定する際にも、既設定の他の監視領域との関係を容易に把握することができる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態として、監視領域の重複に応じた透過率の変更処理について説明する。図7は、本実施形態の監視領域設定装置における監視領域の重複に応じた透過率設定処理手順を示すフローチャートである。
【0040】
本実施形態では、複数の監視領域が重複して設定される場合に、透過画像の透過率を重複数によって変更し、原映像の監視領域に重畳する処理を行う。制御部118は、監視領域入力部113で指定した監視領域について、監視領域の重なり度合いとして重複数の情報を監視領域情報記憶部117から取得する(ステップS201)。そして、取得した重複数に応じて、各監視領域を透過させる割合、すなわち重畳する透過画像全体の透過率を算出し(ステップS202)、色情報設定部115で設定した色情報に適用させる(ステップS203)。
【0041】
図8は、複数の監視領域が重複する場合に透過率を変化させて透過画像を重畳表示する様子を説明する図である。図8(a)のように、設定した監視領域が単一である場合は、上述した第1の実施形態と同様にあらかじめ設定した透過率(例えば10%)で監視領域に変換色を塗布するように透過画像を重畳する。監視領域が複数(ここでは2つ)あり、これらが重複する場合は、図8(b)のように、単一の場合と比較して、各監視領域の透過率をさらに10%大きくして透過度を増加させ、それぞれの監視領域に変換色を塗布するように透過画像を重畳する。これにより、監視領域の透過画像が重複しても、原映像が視認しにくくなることが防止される。
【0042】
なお、上記の実施形態では、監視領域の重複数に応じて変更する透過率を10%としたが、これに限定されるものではなく、またこれらの値の設定は、監視者などが透過率の変化量を直接設定したり選択したりするなど、別の方法で決定できるようにしてもよい。
【0043】
このように、本実施形態では、設定した監視領域の重複数に応じて監視領域の透過率を変更することによって、多くの監視領域を設定した場合でも、監視領域の原映像が視認しにくくなることを防止でき、元の監視映像と設定したそれぞれの監視領域とを容易かつ適切に把握できるようにすることが可能である。
【0044】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態として、監視領域設定時の透過率の一時的な変更処理について説明する。図9は、本実施形態の監視領域設定装置における設定領域が既設定の監視領域と重複する場合の透過率の一時的な変更処理手順を示すフローチャートである。
【0045】
本実施形態では、監視領域を設定する場合に、あらかじめ設定された他の監視領域の透過画像の透過率を一時的に変更し、原映像の監視領域に重畳する処理を行う。制御部118は、監視領域入力部113による監視領域の追加指定を検知すると(ステップS301)、監視領域情報記憶部117に格納された既設定領域の位置情報を参照し、追加設定の監視領域が既設定の他の監視領域と重複するかを判定する(ステップS302)。既設定の監視領域と重複する場合には、透過率設定部116による透過率を変更し、他の全ての監視領域の透過画像を高透過率表示(例えば、透過率70%)に変更する(ステップS303)。
【0046】
その後、制御部118は、監視領域入力部113による監視領域の追加設定が完了した時点でこれを検知し(ステップS304)、既設定の監視領域の高透過率表示を解除する(ステップS305)。また、監視領域の追加指定がキャンセルされた場合も、同様に、既設定の監視領域の高透過率表示を解除する。
【0047】
図10は、設定領域が既設定の監視領域と重複する場合に一時的に透過率を変化させて透過画像を重畳表示する様子を説明する図である。図10(a)のように、設定した監視領域が単一である場合は、上述した第1の実施形態と同様にあらかじめ設定した透過率(例えば10%)で監視領域に変換色を塗布するように透過画像を重畳する。設定する監視領域が既設定の監視領域と重複する場合は、図10(b)のように、単一の場合と比較して、既設定の監視領域の透過率を一時的に70%と大きくして透過度を増加させ、当該監視領域に透過画像を重畳する。これにより、既設定の監視領域が重複しても、設定中の監視領域との区別が容易に可能となる。そして、監視領域の追加設定が完了した時点で、図10(c)のように、一時変更した既設定の監視領域の透過率を元に戻し、各監視領域に変換色を塗布するように透過画像を重畳する。
【0048】
なお、上記の実施形態では、一時的に変更する既設定の監視領域の透過率を70%としたが、これに限定されるものではなく、またこれらの値の設定は、監視者などが透過率の変化量を直接設定したり選択したりするなど、別の方法で決定できるようにしてもよい。また、透過率の変更は、既設定の全ての監視領域に適用せず、例えば、重複が生じている領域のみに適用するなどとしてもよい。
【0049】
このように、本実施形態では、監視領域を設定する際、既設定の監視領域が重複する場合に透過率を一時的に変化することによって、既設定の監視領域と元映像の両方を適切に視認して把握しながら、新たに監視領域を設定することが可能である。
【0050】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態として、監視領域の階層表示処理について説明する。図11は、本実施形態の監視領域設定装置における監視領域の階層表示処理手順を示すフローチャートである。
【0051】
本実施形態では、監視領域の階層表示モードを設け、複数の監視領域を設定する場合に別の表示領域において監視領域に関する情報の階層表示を行う。制御部118は、所定の操作等により階層表示モードが選択されると(ステップS401)、監視領域情報記憶部117に格納された既設定の監視領域の位置情報を参照し(ステップS402)、画面中の監視領域階層表示エリアにおいて監視領域の設定状況を階層的に表示する(ステップS403)。
【0052】
図12は、設定された複数の監視領域に関する階層表示の第1例を示す図である。この例では、透過画像を重畳した監視映像と異なる領域(画面の下部)に監視領域階層表示エリア1205を設け、設定された各監視領域1201、1202、1203の画面横方向の位置及び重複状態を階層的に表示し、複数の監視領域についての階層表示を行う。このような階層表示により、例えば、監視領域1203は、監視領域1201と一部が重複し、監視領域1202の上に重複して設定されていることが容易に把握可能である。
【0053】
図13は、設定された複数の監視領域に関する階層表示の第2例を示す図である。この第2例では、画面の右側部に監視領域階層表示エリア1206を設け、監視領域の縮小表示(サムネイル)階層表示する。この場合、階層表示した各監視領域に選択ボックスを設け、選択された監視領域だけを主画面の監視映像において重畳表示するように、選択的に表示可能とすることもできる。
【0054】
このように、本実施形態では、監視領域に関する情報を表示画面上の別領域に階層表示することにより、複数の監視領域が重複してある監視領域が他の監視領域に覆われた場合とか、ある監視領域の中に他の監視領域を設定した場合などであっても、設定した監視領域の位置、重複、包含等の関係を容易かつ適切に把握することが可能である。
【0055】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態として、監視映像の撮影範囲が変化する場合の監視領域の透過画像の変形表示処理について説明する。本実施形態では、撮影範囲制御部120によりズーム動作などを行う場合に、監視映像の撮影範囲の変化に応じて監視領域の透過画像を変形させて重畳表示する。
【0056】
図14は、本実施形態の監視領域設定装置におけるズーム動作を行う際の監視領域の透過画像の変形処理手順を示すフローチャートである。ここではまず、監視映像に監視領域を透過画像で重畳表示した状態から、撮影範囲制御部120のズーム機能が監視者等により動作された場合を示す。制御部118は、ズーム機能の動作を検知すると(ステップS501)、ズーム機能の制御と連動させて、撮影される監視映像に合わせて監視領域の範囲を拡大、縮小し(ステップS502)、これに対応させて監視領域の透過画像の領域を変形させる(ステップS503)。そして、大きさの調整及び変形を行った監視領域の透過画像をズーム変化後の監視映像に重畳して出力部112に出力させる(ステップS504)。
【0057】
図15は、ズーム動作による監視映像の撮影領域の変化に応じて透過画像を変形させて重畳表示する様子を説明する図である。図15(a)のように、撮影された監視映像に監視領域1500を変換色で重畳表示した状態から、ズーム機能により監視映像を拡大すると、図15(b)のような状態になる。すなわち、監視映像の拡大に合わせて監視領域1510が拡大、変形すると、これに応じて透過画像も拡大、変形されて重畳される。
【0058】
図16は、本実施形態の監視領域設定装置におけるパン動作を行う際の監視領域の透過画像の変形処理手順を示すフローチャートである。次に、監視映像に監視領域を透過画像で重畳表示した状態から、撮影範囲制御部120のパン機能が監視者等により動作された場合を示す。制御部118は、パン機能の動作を検知すると(ステップS601)、パン機能の制御と連動させて、撮影される監視映像に合わせて監視領域の範囲を水平方向に移動し(ステップS602)、これに対応させて監視領域の透過画像の領域を移動、変形させる(ステップS603)。そして、位置の調整及び変形を行った監視領域の透過画像をパン変化後の監視映像に重畳して出力部112に出力させる(ステップS604)。
【0059】
図17は、パン動作による監視映像の撮影領域の変化に応じて透過画像を変形させて重畳表示する様子を説明する図である。図17(a)のように、撮影された監視映像に監視領域1700を変換色で重畳表示した状態から、パン機能により監視映像を移動すると、図17(b)のような状態になる。すなわち、監視映像の移動に合わせて監視領域1710が移動、変形すると、これに応じて透過画像も移動、変形されて重畳される。
【0060】
図18は、本実施形態の監視領域設定装置におけるチルト動作を行う際の監視領域の透過画像の変形処理手順を示すフローチャートである。次に、監視映像に監視領域を透過画像で重畳表示した状態から、撮影範囲制御部120のチルト機能が監視者等により動作された場合を示す。制御部118は、チルト機能の動作を検知すると(ステップS701)、チルト機能の制御と連動させて、撮影される監視映像に合わせて監視領域の範囲を垂直方向に移動し(ステップS702)、これに対応させて監視領域の透過画像の領域を移動、変形させる(ステップS703)。そして、位置の調整及び変形を行った監視領域の透過画像をチルト変化後の監視映像に重畳して出力部112に出力させる(ステップS704)。
【0061】
図19は、チルト動作による監視映像の撮影領域の変化に応じて透過画像を変形させて重畳表示する様子を説明する図である。図19(a)のように、撮影された監視映像に監視領域1900を変換色で重畳表示した状態から、チルト機能により監視映像を移動すると、図19(b)のような状態になる。すなわち、監視映像の移動に合わせて監視領域1910が移動、変形すると、これに応じて透過画像も移動、変形されて重畳される。
【0062】
上記のズーム、パン、チルト動作を、適宜組み合わせて用いた場合においても、同様に処理を行うことができる。図20は、ズーム動作とパン動作を組み合わせた場合の監視映像及び透過画像の表示例を示す図である。図20(a)のように、撮影された監視映像に監視領域2000を変換色で重畳表示した状態から、ズーム機能による監視映像の拡大、及びチルト機能による監視映像の移動を行うと、図20(b)のような状態になる。すなわち、監視映像の拡大及び移動に合わせて監視領域2010が拡大、移動、変形すると、これに応じて透過画像も拡大、移動、変形されて重畳される。
【0063】
図21は、複数の映像領域を持つパノラマ映像において監視領域を指定した場合の表示例を示す図である。図21のように、複数の撮影映像を組み合わせる等して、監視映像が複数の映像領域を持つパノラマ映像2100とした場合、このパノラマ映像2100における第1の領域2101と第2の領域2102とを切り替えて監視を行うことになる。この場合、制御部118は、監視映像中の注目領域の切り替えに合わせて、監視領域の切り替えを行い、その監視領域の透過画像を重畳表示する。なお、パノラマ映像の切り替え方法については、上記のように半分の領域を交互に切り替えるものに限定されるものではなく、所定のサイズ分ずつ移動するなど、どのような切り替え方を行ってもよい。
【0064】
このように、本実施形態では、カメラのズーム、パン、チルト機能等を用いて撮影領域を変更し、当初設定した監視領域の全体が表示されない状態になった場合でも、監視映像に合わせて監視領域を示す透過画像が画面上の該当部分に適切に重畳表示される。これにより、監視領域を的確に視認して把握することが可能である。
【0065】
なお、本発明は上記の実施形態において示されたものに限定されるものではなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、映像監視システムにおいて監視領域を設定する際に、監視領域の設定や把握を視覚的に容易に行うことが可能となる効果を有し、撮影装置で撮影した映像を用いて監視を行う際に、監視映像上で監視用の監視領域を設定する映像監視システムの監視領域設定装置及び監視領域設定方法等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態に係る映像監視システムの監視領域設定装置の概略構成を示すブロック図
【図2】本実施形態の監視領域設定装置における監視領域上に重畳させる透過画像の色設定処理手順を示すフローチャート
【図3】本実施形態において用いる16進数コードで表現した色情報判定チャートを示す模式図
【図4】監視領域の色を判定するための有彩色/無彩色判定チャートを示す模式図
【図5】監視領域において最も出現頻度が高い色が無彩色である場合の透過画像の重畳例を示す図
【図6】監視領域において最も出現頻度が高い色が有彩色である場合の透過画像の重畳例を示す図
【図7】本実施形態の監視領域設定装置における監視領域の重複に応じた透過率設定処理手順を示すフローチャート
【図8】複数の監視領域が重複する場合に透過率を変化させて透過画像を重畳表示する様子を説明する図
【図9】本実施形態の監視領域設定装置における設定領域が既設定の監視領域と重複する場合の透過率の一時的な変更処理手順を示すフローチャート
【図10】設定領域が既設定の監視領域と重複する場合に一時的に透過率を変化させて透過画像を重畳表示する様子を説明する図
【図11】本実施形態の監視領域設定装置における監視領域の階層表示処理手順を示すフローチャート
【図12】設定された複数の監視領域に関する階層表示の第1例を示す図
【図13】設定された複数の監視領域に関する階層表示の第2例を示す図
【図14】本実施形態の監視領域設定装置におけるズーム動作を行う際の監視領域の透過画像の変形処理手順を示すフローチャート
【図15】ズーム動作による監視映像の撮影領域の変化に応じて透過画像を変形させて重畳表示する様子を説明する図
【図16】本実施形態の監視領域設定装置におけるパン動作を行う際の監視領域の透過画像の変形処理手順を示すフローチャート
【図17】パン動作による監視映像の撮影領域の変化に応じて透過画像を変形させて重畳表示する様子を説明する図
【図18】本実施形態の監視領域設定装置におけるチルト動作を行う際の監視領域の透過画像の変形処理手順を示すフローチャート
【図19】チルト動作による監視映像の撮影領域の変化に応じて透過画像を変形させて重畳表示する様子を説明する図
【図20】ズーム動作とパン動作を組み合わせた場合の監視映像及び透過画像の表示例を示す図
【図21】複数の映像領域を持つパノラマ映像において監視領域を指定した場合の表示例を示す図
【図22】監視映像において監視領域を重複して設定した例を説明する図
【図23】線分で複数の領域を表現した場合の説明図
【図24】監視映像をズームした場合の監視領域の輪郭線を示す図
【符号の説明】
【0068】
100 監視領域設定装置
111 入力部
112 出力部
113 監視領域入力部
114 領域情報取得部
115 色情報設定部
116 透過率設定部
117 監視領域情報記憶部
118 制御部
120 撮影範囲制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取得した監視映像において監視領域の設定入力を行う監視領域入力部と、
前記監視領域に関する情報を取得する領域情報取得部と、
前記監視領域の色情報に基づき、前記監視領域を着色するための透過画像の色情報として元映像と異なる色を設定する色情報設定部と、
前記透過画像の透過率を設定する透過率設定部と、
前記色情報及び前記透過率に基づいて透過画像を生成し、前記監視映像の監視領域に重畳表示するように出力する透過画像重畳制御部と、
を備える映像監視システムの監視領域設定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の映像監視システムの監視領域設定装置であって、
前記領域情報取得部は、監視領域内で最も出現頻度の高い色に係る色情報を取得する機能を有し、
前記色情報設定部は、前記出現頻度の高い色と異なる色を前記透過画像の色情報として設定する映像監視システムの監視領域設定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の映像監視システムの監視領域設定装置であって、
前記色情報設定部は、前記出現頻度の高い色に対して特性値が所定値以上離れた異なる色を前記透過画像の色情報として設定する映像監視システムの監視領域設定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の映像監視システムの監視領域設定装置であって、
前記領域情報取得部は、設定された前記監視領域の位置、重複状態の少なくとも一方を含む設定情報を取得する機能を有し、
前記透過画像重畳制御部は、前記設定情報に基づいて前記透過率設定部において設定する透過画像の透過率を変化させる映像監視システムの監視領域設定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の映像監視システムの監視領域設定装置であって、
前記透過画像重畳制御部は、前記監視領域入力部により監視領域の設定を行う際に、他の監視領域における前記透過画像の透過率を一時的に変化させる映像監視システムの監視領域設定装置。
【請求項6】
請求項1に記載の映像監視システムの監視領域設定装置であって、
前記領域情報取得部は、設定された前記監視領域の位置、重複状態の少なくとも一方を含む設定情報を取得する機能を有し、
前記透過画像重畳制御部は、前記設定情報に基づいて前記監視領域に関する情報を階層表示させる映像監視システムの監視領域設定装置。
【請求項7】
請求項1に記載の映像監視システムの監視領域設定装置であって、
前記透過画像重畳制御部は、前記監視映像の撮影範囲の変化を検知し、前記撮影範囲の変化に合わせて前記監視領域に対応する透過画像の位置、大きさ、形の少なくとも一つを変更して重畳表示させる映像監視システムの監視領域設定装置。
【請求項8】
取得した監視映像において監視領域の設定入力を行う監視領域入力ステップと、
前記監視領域に関する情報を取得する領域情報取得ステップと、
前記監視領域の色情報に基づき、前記監視領域を着色するための透過画像の色情報として元映像と異なる色を設定する色情報設定ステップと、
前記透過画像の透過率を設定する透過率設定ステップと、
前記色情報及び前記透過率に基づいて透過画像を生成し、前記監視映像の監視領域に重畳表示するように出力する透過画像重畳制御ステップと、
を有する映像監視システムの監視領域設定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2008−301238(P2008−301238A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145683(P2007−145683)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】