説明

映像表示装置

【課題】SD素材をHDフォーマットにアップコンバートしたS−HD信号と、HD素材
に基づくオリジナルHD信号とを良好に判別し、それぞれに対応した良好な画質補正を行
う技術を提供する。
【解決手段】入力された映像信号が、SD素材をHDフォーマットにアップコンバートし
て得られた第1HD信号か、HD素材に基づく第2HD信号かを判別する判別部と、映像
信号の色補正を行う色補正部と、前記該判別部での判別結果に応じて前記色補正部を制御
する制御部とを備える。上記判別部は、映像信号のクロスカラー成分を検出するか、EP
G情報内の文字情報から所定のキーワードを検索して行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばテレビジョン受像機等の映像表示装置に係り、特に、入力映像信号(デジタルテレビジョン放送信号)の種類に応じて画質補正を行うように構成された映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放送局側から送信されるデジタルテレビジョン放送信号は、様々なフォーマットのものが存在する。代表的な信号としては、総走査線数が1125本(有効走査線数1080本)のHD(High definition)フォーマットの信号(以下、HD信号と呼ぶ)と、総走査線数が525本(有効走査線数480本)のSD(Standard definition)フォーマットの信号(以下、SD信号と呼ぶ)とがある。
【0003】
上記HD信号は、放送局側で総走査線数525本のSD素材の信号を1125本にアップコンバートしてHDフォーマットに変換した信号(以下、このような信号をS−HD信号と呼ぶ)と、ハイビジョンカメラで撮影された映像に基づき生成された、元々HDフォーマットを持つHD素材の信号(以下、このような信号をオリジナルHD信号と呼ぶ)とがある。このようなS−HD信号とオリジナルHD信号とを判別するための従来技術としては、例えば下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−289753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1は、S−HD信号及びオリジナルHD信号は同じHDフォーマットであってもそれぞれ映像周波数帯域が異なっているため、これらの信号に応じた画質調整を行い得るように構成したものである。しかしながら、特許文献1には、その段落番号0005に記載されているように、画質調整としてシャープネス(輪郭補正)しか考慮されていない。S−HD信号とオリジナルHD信号とは、互いに色再現範囲が異なっており、S−HDはNTSC信号と近い色再現範囲を有している。従って、S−HD信号とオリジナルHD信号とで異なる色補正を加える必要があるが、特許文献1には、そのようなことについては考慮されていない。
【0006】
また、特許文献1は、S−HD信号とオリジナルHD信号とを判別する手段として、デジタルテレビジョン放送信号に付加されるAspect Ratio Informationを用いること、そして映像の左右両端に付加されたサイドパネルを検出すること、を開示している。しかしながら、上記Aspect Ratio Informationはデジタルテレビジョン放送信号に付加されていない場合が多く、そのような場合はS−HD信号とオリジナルHD信号との判別ができない。また、映像の左右両端に付加されたサイドパネルを検出することは、図2(a)に示されるように、映像のアスペクト比が4:3であることが前提となる。S−HD信号には、図2の符号204に示されるように、映像のアスペクト比が16:9のものも存在する。映像のアスペクト比が4:3であっても、図2の符号203に示されるようにサイドパネルが黒レベルではなく所定の輝度レベルを有する場合やサイドパネルが所定の画像を含む場合は、サイドパネルの検出が困難となり、当該映像は16:9のアスペクト比率を持つものと識別される可能性がある。すなわち、特許文献1に記載の技術でS−HD信号とオリジナルHD信号とを良好に判別することは困難である。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みて為されたものである。その第1の目的は、S−HD信号とオリジナルHD信号のそれぞれに対応した良好な色補正が行い得る技術を提供することにある。また本発明の第2の目的は、S−HD信号とオリジナルHD信号とを良好に判別することを可能にするための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記第1の目的を達成するための本発明に係る映像表示装置は、入力された映像信号が第1HD信号、すなわちS−HD信号か、第2HD信号、すなわちオリジナルHD信号かを判別し、その判別結果に応じて映像信号の色補正を行う色補正部を制御することを特徴とするものである。具体的には、上記色補正部は、入力信号がS−HD信号のときはSD材の信号に対応した第1の色設定値を用いて色補正を行い、オリジナルHD信号のときはHD素材の信号に対応する第2の色設定値を用いて色補正を行う。この色補正は、例えば特定色相範囲にある映像信号の色相、及び/または特定色相範囲にある映像信号の彩度を補正するものである。上記の判別は、入力されたHDフォーマットの信号のクロスカラー成分を検出して行ってもよいし、EPG(電子番組ガイド)情報を用いて行ってもよい。
【0009】
また、上記第2の目的を達成するための本発明に係る映像表示装置は、入力された映像信号からクロスカラー成分を検出するクロスカラー検出部を設け、このクロスカラー検出部からの検出情報に応じて画質補正を制御することを特徴とするものである。このクロスカラー検出部によって、例えば入力されたHDフォーマットの信号からクロスカラー成分を検出された場合は当該信号がS−HD信号と判別し、クロスカラー成分が検出されなかった場合はオリジナルHD信号と判別する。
【0010】
また、上記第2の目的を達成するための本発明に係る映像表示装置は、映像信号とともに入力されるEPG情報を用いてS−HD信号かオリジナルHD信号かを判別し、その判別結果に応じて画質補正部制御することを別の特徴とするものである。上記の判別は、上記EPG情報に含まれる文字情報から所定のキーワードを検索して行ってもよい。例えばその文字情報から「ハイビジョン放送」等のキーワード文字列を検索し、この文字列が含まれる番組はオリジナルHDとして判別してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、S−HD信号とオリジナルHD信号とに応じた良好な色を得ることが可能となる、高画質な映像が表示可能となる。また、S−HD信号とオリジナルHD信号との判別を良好に行うことができ、HD信号の種類に応じた適切な画質補正を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るテレビジョン受信機の一実施形態を示す図
【図2】S−HD映像の例を示す図
【図3】本実施例に用いられるフラグ信号の種類と論理を示す図
【図4】本実施例に係る画質補正制御回路における処理の一例を示す図
【図5】本実施例に係る画質補正制御回路における処理の他の例を示す図
【図6】本実施例に係る色補正の補正量の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好ましい形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る映像表示装置の一実施例を示すブロック図である。図1に示される映像表示装置は、デジタルテレビジョン放送信号(地上波デジタル放送、BS/CSデジタル放送信号等。以下、DTV信号と略す)を受信して表示可能なテレビジョン受像機を例にしている。
【0015】
ここで、DTV信号は、例えばMPEG形式で圧縮符号化されたデジタル映像信号を含むMPEGストリームで構成されており、次の4種類のフォーマットがある。(a)総走査線数1125本(有効走査線数1080本)のインターレース形式。(b)総走査線数750本(有効走査線数720本)の順次走査(プログレッシブ)形式。(c)総走査線数が525本(有効走査線数480本)のプログレッシブ形式。(d)総走査線数が525本(有効走査線数480本)のインターレース形式。以下の実施例の説明では、上記(a)及び(d)のフォーマットの信号を例にして説明する。また以下では、上記(a)のフォーマットのDTV信号をHD信号または1125i、上記(d)のフォーマットのDTV信号をSD信号または525iと呼ぶ。また上記MPEGストリームは、様々な付加情報を含んでいる。この付加情報は、例えば、EPG(番組電子ガイド)情報や、受信したDTV信号のフォーマット種類を示す情報、例えば受信DTV信号が1125iであるか525iであるかを判別するためのフォーマット情報を含む。
【0016】
また、HD信号は、上述したように2種類存在する。すなわち、放送局側で総走査線数525本のSD素材の信号を1125本にアップコンバートしてHDフォーマットに変換したS−HD信号と、ハイビジョンカメラで撮影された映像に基づき生成された、元々HDフォーマットを持つHD素材のオリジナルHD信号である。S−HD信号の形態は、例えば図2示される。すなわち、S−HD信号の形態としては、アスペクト比4:3の映像の左右両端に無画部を付加して全体的なアスペクト比を16:9としたもの(202)、アスペクト比4:3の映像の左右両端に所定輝度レベルの映像または他の画像やデータなどを付加して全体的なアスペクト比を16:9としたもの(203)、及び映像を水平及び垂直方向に拡大して映像自身のアスペクト比を16:9としたもの(204)、である。
【0017】
本実施例は、上記S−HD信号が符号203や204に示される形態の場合でも、オリジナルHD信号とを識別を良好に行って適切な画質補正、特に色補正を行うものである。
その詳細について以下に説明する。
【0018】
図1において、選局された所望チャンネルのデジタルテレビジョン放送信号は、アンテナ101を介して、デジタルチューナ102で受信される。デジタルチューナ102で受信されたDTV信号は、MPEGデコーダ103に供給される。MPEGデコーダ103は、DTV信号を復調及び複合するとともに、映像信号と上記EPG情報及びフォーマット情報を含む付加情報とを分離する。MPEGデコーダ103で複合されたデジタル映像信号は、輝度信号Y[0]、色差信号(B−Y)信号(=Cb[0])、及び色差信号(R−Y)信号(=Cr[0])を含むデジタルコンポーネント信号としてクロスカラー除去回路に供給される。クロスカラー除去回路104に動作について以下に説明する。
【0019】
放送局側の番組コンテンツ製作過程において、一旦、NTSC信号やPAL信号などのアナログテレビジョン放送信号のような輝度信号Yと色信号Cとが混合されたコンポジットビデオ信号に変換される場合がある。放送局側において、例えば2次元YC分離によって上記コンポジットビデオ信号からDTV信号用のコンポーネント信号を生成する場合、絵柄によってはクロスカラー妨害が発生する。例えば、通常の映像に白い字幕が重畳されたような絵柄において、その白い字幕のエッジ部分にクロスカラー妨害が発生しやすい。またHD信号は、SD素材のアナログテレビジョン放送信号、すなわちコンポジットビデオ信号をベースに作成される場合が多く、そのような場合も上記理由によりクロスカラー妨害が発生する場合がある。上記クロスカラー除去回路104は、このようなクロスカラー妨害を除去するものであり、すなわち上記デジタルコンポーネント信号からクロスカラー成分を取り除くように動作する。
【0020】
具体的には、クロスカラー除去回路104は、まず輝度信号Y[0]を用いて画素毎に動画か静止画かを画素単位で検出する。そして静止画の画素に対しては、2つの色差信号Cb[0]、Cr[0]について、それぞれ独立に、画素単位で時間方向(フレーム方向)のフィルタ処理が行われる。このフィルタ処理は、例えばある位置の画素について、連続する2つのフレームの信号を互いに加算して2で除算する処理を含む。このようなフィルタ処理によって、連続する2つのフレーム間において互いに逆方向に発生する(すなわち互いに逆極性の)クロスカラー成分が相殺され、クロスカラーが除去される。このクロスカラーが除去された色差信号Cb[1]、Cr[1]はクロスカラー除去回路104から色差画質補正回路110へ出力される。一方、輝度信号Y[0]は、上記色差信号に対するクロスカラー除去処理にかかる時間と同じ時間分遅延され、輝度信号Y[1]として輝度画質補正回路109に出力される。またクロスカラー除去回路104は、受信DTV信号が静止画の場合に、連続する2つのフィールド間の差分を演算する機能を有している。その差分の結果を、クロスカラー成分に関する情報としてクロスカラー検出回路105に供給される。
【0021】
クロスカラー検出回路105は、クロスカラー除去回路104からの上記差分信号について時間的な積分を行う。そして、その積分された差分信号と予め定めた閾値とを比較し、差分信号が閾値よりも小さいならば受信DTV信号はクロスカラー成分を含まないと判定してCフラグ信号“0”を発生する。差分信号が閾値よりも大きいならば受信DTV信号はクロスカラー成分を含むと判定してCフラグ信号“1”を発生する。このCフラグ信号は、画質制御回路108に供給される。尚、クロスカラー検出回路105は、上記差分信号ではなく、クロスカラー除去回路104から2つの色差信号Cb[0]、Cr[0]のいずれか、またはその両方が供給されるようにしてもよい。この場合、クロスカラー検出回路105は、上記2つの差分信号のいずれか、もしくはその両方を用いて上記連続する2フレーム間の差分の演算及びその差分と閾値との演算の両方を行うように構成される。
【0022】
一方、上記MPEGデコーダ103で分離された付加情報は、番組情報検出回路107に供給される。番組情報検出回路107は、上記付加情報を用いて、受信DTV信号がHDフォーマットかSDフォーマットかを判別するフォーマット判別機能と、上記EPG情報に含まれる文字情報から予め定めた特定のキーワードを検索する検索機能とを有している。フォーマット判別機能は、付加情報に含まれるフォーマット情報を用いることで容易に実行される。例えばフォーマット情報が1125iを示すものであれば、受信DTV信号がHD信号であるとしてVフラグ信号“0”を発生する。それ以外、例えばフォーマット情報が525iを示すものであれば、受信DTV信号がSD信号であるとしてVフラグ信号“1”を発生して画質制御回路108へ出力する。また、検索機能は、上述したようにEPG情報に含まれる文字情報を用いて実行される。EPG情報は、番組のチャンネル、番組の開始及び終了時刻、番組のタイトルの情報以外に、番組の出演者や概要を記述するための文字情報を含んでいる。この文字情報は、例えばASCIIコードで構成される。ある番組がハイビジョンカメラで撮影されたHD素材のハイビジョン放送である場合には、その番組の概要を記述するための文字情報に、例えば「ハイビジョン放送」、「ハイビジョン映像」または「HD放送」等の文字列が含まれる場合がある。よって、上記検索機能は、予めハイビジョン放送に関連するキーワード、例えば「ハイビジョン」または「HD」等のキーワードを記憶しておき、この記憶されたキーワードをEPG情報に含まれる文字情報から検索する。この検索の結果、記憶されたキーワードがヒットしたならば、受信DTV信号がオリジナルHD信号であるとしてEフラグ信号“0”を発生する。またヒットしなければ、受信DTV信号がSD信号またはS−HD信号であるとしてEフラグ信号0”を発生して、画質制御回路108へ出力する。
【0023】
また、MPEGデコーダ103から出力された輝度信号Y[0]は、クロスカラー除去回路104以外に、入力帯域検出回路107にも供給される。入力帯域検出回路107は、入力された輝度信号から高域信号を生成して映像周波数帯域を検出する。例えば、入力帯域検出回路107は、周波数成分を横軸、その出現度数(画素数)を縦軸とした、映像1フィールドもしくは1フレーム期間の周波数ヒストグラムを生成する。これにより、各周波数成分に対応する画素が、映像1フィールドもしくは1フレーム期間においてどれだけ存在するかが検出される。ところで、SD素材の信号の映像周波数帯域は約4.2MHzであり、HD素材の信号の映像周波数帯域は約8MHzである。従って、作成された周波数ヒストグラムにおいて、例えば0〜4.3MHzの周波数範囲の出現度数(画素数)が基準値よりも高く、かつ4.3MHz以上の周波数領域の出現度数が基準値よりも低ければ、受信DTV信号がS−HD信号であるとしてFフラグ信号“1”を発生する。一方、作成された周波数ヒストグラムにおいて、例えば8MHzを中心とした所定周波数範囲の出現度数が予め定めた基準値よりも高ければ、受信DTV信号がオリジナルHD信号であるとしてFフラグ信号“0”を発生する。このFフラグ信号は、画質制御回路108に出力される。
【0024】
上記説明したクロスカラー検出信号105からのCフラグ信号、入力帯域検出回路106からのFフラグ信号、番組情報検出回路107からのEフラグ信号及びVフラグ信号の発生条件を図3に纏めて示している。図3に示されるように、各フラグ信号は、各回路に入力される信号の状態に応じてその論理が決定される。
【0025】
画質制御回路108は、例えばマイクロコンピュータで構成されており、上記各フラグ信号に応じて色差画質補正回路110及び輝度画質補正回路を制御する。この画質制御回路108における処理の一具体例について、図4に示されたのフローチャートに従って説明する。なお、ここでは、色差画質補正回路110は、入力された色差信号を用いて特定色相範囲(例えば、赤、青、緑の色相範囲)の色合い及び/または彩度(色の濃淡)を補正するカラーマネージメント機能を有するものとする。また、輝度画質補正回路109は入力された輝度信号に対しエンハンサ処理(輪郭補正)を行うものとする。
【0026】
画質制御回路108は、まず図4のステップ10において、Vフラグ信号の論理を判別する。ここでVフラグ信号の論理が1であれば、受信DTV信号が525iのSD信号であると判定してステップ15に進む。ステップ15では、SD信号用の画質補正を行わせるための第1制御信号を色差画質補正回路110及び輝度画質補正回路に出力する。一方、Vフラグ信号の論理が0であれば、受信DTV信号が1125iのHD信号であると判定してステップ11に進む。尚、ステップ11〜13では、受信DTV信号がHD信号のときに、それがオリジナルHD信号かS−HD信号かを判別する処理を行う。ステップ11では、Cフラグ信号の論理を判定する。ここでCフラグ信号の論理が0であれば、受信したHD信号がHD素材をベースにしたHD信号、すなわちオリジナルHD信号と判定してステップ14に進む。ステップ14では、HD信号用の画質補正を行わせるための第2制御信号を色差画質補正回路110及び輝度画質補正回路に出力する。一方、Cフラグの論理が1であれば、受信DTV信号にクロスカラー成分が存在するので、ステップ12に進むとともにステップ16に進む。ステップ16では、クロスカラー除去回路104を動作させるように制御してクロスカラーが除去処理を行う。ステップ12では、Fフラグ信号の論理を判定する。ここでFフラグ信号の論理が0であれば受信したHD信号がオリジナルHD信号と判定してステップ14に進み、上記の画質補正の制御処理を行う。一方、Fフラグ信号の論理が1であればステップ13に進み、Eフラグ信号の論理を判定する。ここでEフラグ信号の論理が0であれば、受信したHD信号がオリジナルHD信号と判定してステップ14に進み、上記の画質補正の制御処理を行う。一方、Eフラグ信号の論理が1であれば、受信したHD信号がSD素材をアップコンバートしたHD信号、すなわちS−HD信号と判定してステップ15へ進み、上記の画質補正の制御処理を行う。
【0027】
以上説明した例では、Vフラグ信号、Cフラグ信号、Fフラグ信号、Eフラグ信号の全てを用いて画質補正をSD信号用にするかHD信号用にするかの制御を行ったが、この全てを用いる必要はない。例えば、図5に示されるように、Vフラグ信号とCフラグ信号、Vフラグ信号とFフラグ信号、またはVフラグ信号とEフラグ信号のいずれか組み合わせで上記画質補正の制御を行ってもよい。すなわち、まず図5のステップ21において、Vフラグ信号の論理を判別する。ここでVフラグ信号の論理が1であれば、受信DTV信号が525iのSD信号であると判定してステップ24に進む。ステップ24では、図4に示されたステップ15と同様な処理を行う。一方、Vフラグ信号の論理が0であれば、ステップ22に進み、C、FまたはEフラグ信号の論理を判定する。C、FまたはEフラグ信号の論理が0であれば、受信したHD信号がオリジナルHD信号と判定してステップ23に進み、図4に示されたステップ14と同様な処理を行う。一方、FまたはEフラグ信号の論理が1であれば、受信したHD信号がS−HD信号と判定してステップ24に進み、図4に示されたステップ15と同様な処理を行う。尚、図5のフローチャートでは、クロスカラー除去処理については省略してある。
【0028】
輝度補正回路109及び色差補正回路110は、画質制御回路108からの第1の制御信号及び第2の制御信号により制御されて画質補正を行う。本実施例における画質補正は、主として、色補正と輪郭補正の2つである。まず色補正について説明する。
【0029】
SD素材の信号とHD素材の信号は、放送局において撮影に用いられるテレビジョンカメラの違いや、信号フォーマットの違いなどにより色再現範囲が異なる。例えばSD素材の信号は、NTSC信号に近い色再現範囲を有しており、HD素材の信号との色再現範囲とは相違している。従って、本実施例では、SD素材の信号とHD素材の信号とで、それぞれ異なる色(色相/彩度)補正を行っている。その色補正量の一例を図6に示す。図6に示されるように、例えばSD信号及びS−HD信号については、例えば3つの色相範囲を設定し、それぞれの色相範囲に対して色相と彩度の補正量を設定している。またオリジナルHD信号については、例えば4つの色相範囲を設定し、それぞれの色相範囲に対して色相と彩度の補正量を設定している。
【0030】
色補正を行うに当たり、色差補正回路110は、まず2つの色差信号を用いて次の数1の演算をして色相信号Hを求め、数2演算をして彩度信号Sを生成する。
(数1)H=tan−1(Cr/Cb)
(数2)S=(Cb+Cr)1/2
画質制御回路108は、SD/S−HD信号とオリジナルHD信号用の、図6に示されるような2つの色補正設定値のテーブルを有している。そして、画質制御回路108は受信DTV信号がSD信号またはS−HD信号と判別した場合は、図6の(1)のテーブルを選択して、上記第1の制御信号として、該(1)のテーブルに対応する色相範囲、色相補正量及び彩度補正量を色差補正回路110に出力する。色差補正回路110は、上記数1で求めた色相信号Hのうち、画質制御回路108から入力されたH-range1、H-range2、及びH-range3の各色相範囲内にある色相信号Hについて、それぞれ対応する色相補正量αS1、αS2、αS3を加算する。例えばH-range1の色相範囲にある色相信号Hに対して色相補正量αS1が加算される。H-range2及び3についても同様である。これにより、指定された色相範囲の色合いが補正される。更に、色差補正回路110は、上記数1で求めた彩度信号Sのうち、画質制御回路108から入力されたH-range1、H-range2、及びH-range3の各色相範囲内にある彩度信号Sについて、それぞれ対応する彩度補正量βS1、βS2、βS3を乗算する。例えばH-range1の色相範囲にある彩度信号Sに対して彩度補正量βS1が乗算される。H-range2及び3についても同様である。これにより、指定された色相範囲の色の濃淡が補正される。
【0031】
尚、本実施例においては、色補正を行うための色差画質補正回路110は、クロスカラー除去回路104の後段に配置される。これによって、クロスカラー除去前に色補正が為されることが防止され、色補正によるクロスカラー除去の誤動作が防止される。
【0032】
また、画質制御回路108は受信DTV信号がオリジナルHD信号と判別した場合は、図6の(2)のテーブルを選択して、上記第2の制御信号として、該(2)のテーブルに対応する色相範囲、色相補正量及び彩度補正量を色差補正回路110に出力する。色差補正回路110は、上記数1で求めた色相信号Hのうち、画質制御回路108から入力されたH-range1、H-range2、H-range3及びH-range4の各色相範囲内にある色相信号Hについて、それぞれ対応する色相補正量αH1、αH2、αH3、αH4を加算する。例えばH-range1の色相範囲にある色相信号Hに対して色相補正量αH1が加算される。H-range2〜4についても同様である。これにより、指定された色相範囲の色合いが補正される。更に、色差補正回路110は、上記数1で求めた彩度信号Sのうち、画質制御回路108から入力されたH-range1、H-range2、及びH-range3の各色相範囲内にある彩度信号Sについて、それぞれ対応する彩度補正量βH1、βH2、βH3、βH4を乗算する。例えばH-range1の色相範囲にある彩度信号Sに対して彩度補正量βH1が乗算される。H-range2〜4についても同様である。これにより、指定された色相範囲の色の濃淡が補正される。
【0033】
上記の例では、色相及び彩度を補正する色相範囲は、SD/S−HD信号では3つ、オリジナルHDでは4つとしたが、これに限られるものではない。当然ながら、これよりも多くてもよく、また少なくともよい。また上記の例では、色相範囲の数をSD/S−HD信号とオリジナルHDとで異ならせたが、これらを等しくしてもよい。
【0034】
次に輪郭補正(エンハンサ)について以下説明する。一般にテレビジョン受信機では、SD素材の信号とHD素材の信号とでは映像周波数帯域が異なること等から、強調したい輪郭のピーク周波数値を可変してそれぞれ最適な画質補正を行っている。映像の水平方向の輪郭(エッジ)を補正する水平エンハンサを例にすると、例えば強調したいエッジの中心周波数を、SD信号の方をHD信号よりも低くする。これにより、信号の種類に応じた効果的なエッジ強調を行うことができ、映像のクッキリ感が得られる。輝度補正回路109は、受信DTV信号がSD信号/S−HD信号かオリジナルHD信号かで、強調したいエッジの中心周波数(映像のピーク周波数)変更してエンハンサを行う。例えば、受信DTV信号がSD信号/S−HD信号であれば、ピーク周波数2.5MHz付近の信号を強調し、オリジナルHD信号であれば、ピーク周波数8MHz付近の信号を強調する。すなわち、画質制御回路108は、受信DTV信号がSD信号/S−HD信号と判定した場合は、上記第1の制御信号として、ピーク周波数を約2.5MHzとするための制御信号を輝度補正回路109に出力する。また、受信DTV信号がオリジナルHD信号と判別した場合は、上記第2の制御信号として、ピーク周波数を約8MHzとするための制御信号を輝度補正回路109に出力する。
【0035】
輝度画質補正回路109から出力された輝度信号Y[2]と、色差画質補正回路110から出力された2つの色差信号Cb[2]、Cr[2]は、映像表示処理回路111に入力され、マトリクス変換される。このマトリクス変換によりデジタルRGB信号が生成され、表示装置112へ供給される。この表示装置は、例えばPDP、LCD、FED等で構成されており、デジタルRGB信号に基づき映像を形成する。
【0036】
以上のように、本実施例によれば、S−HD信号とオリジナルHDとの判別を良好に行うことができる。そして、S−HD信号かオリジナルHDかによって、適切な色補正及びエンハンサ処理を行うことができる。また、S−HD信号とオリジナルHDとの判別において、クロスカラー成分、入力映像信号の周波数帯域情報、番組情報を組み合わせて判別すれば、より高精度でHD映像とSD映像を区別することができる。
【0037】
また、EPG情報に含まれる時刻やチャンネル情報を用いてS−HD信号とオリジナルHDとの判別を行ってもよい。また、特定の番組がS−HD信号で放送される場合に、強制的に、その番組の画質をSD画質かHD画質にするかをユーザーに選択させることも可能である。この選択は、例えば、複数のスイッチやキーを含むユーザー登録回路に対する操作により行われる。
【0038】
また本実施例では説明しなかったが、クロスカラー妨害ではなくドット妨害を検出してS−HD信号とオリジナルHDとの判別を行ってもよい。このドット妨害の検出は、例えば輝度信号を用いて行われる。例えば、上記クロスカラー成分の検出と同様に、入力映像が静止画の場合に、連続する2つのフレームの映像信号を互いに加算する。ドット妨害は、連続する2つのフレームにおいて互いに逆方向に発生する。このため、輝度信号がドット妨害を含んでいる場合にこれらのフレームの信号を互いに加算すれば、ドット妨害は相殺される。従って、上記加算の結果、ドット妨害の成分が所定の閾値以下の場合はドット妨害を含み、そうでない場合はドット妨害を含むものと判定すればよい。そして、例えば
ドット妨害が輝度信号に含まれている場合は、HDフォーマットの受信DTV信号はS−HD信号と判定し、含まれていない場合はオリジナルHD信号と判定する。この判定結果を用いた画質補正の処理については、上記実施例の説明を参照されたい。また、図1の構成において、ドット妨害を除去するための回路を更に組み込んでもよい。
【符号の説明】
【0039】
101…アンテナ、102…デジタルチューナ、103…MPEGデコーダ、104…クロスカラー除去回路、105…クロスカラー検出回路、106…入力帯域検出回路、107…番組情報検出回路、108…画質制御回路、109…輝度画質補正回路、110…色差画質補正回路、111…映像表示処理回路、112…映像表示装置、113…ユーザー登録回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像表示装置において、
入力された映像信号が、SD素材をHDフォーマットにアップコンバートして得られた第1HD信号か、HD素材に基づく第2HD信号かを判別する判別部と、映像信号の色補正を行う色補正部と、前記該判別部での判別結果に応じて前記色補正部を制御する制御部と、を備え、前記判別部は、映像信号とともに入力されるEPG情報に含まれる文字情報から所定のキーワードを検索する検索部を含み、該検索部の検索結果を用いて前記第1HD信号か前記第2HD信号の判別を行うことを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
映像表示装置において、
入力映像信号からクロスカラー成分を検出することによって、該入力映像信号がSD素材の信号をHDフォーマットにアップコンバートして得られた第1HD信号か、HD素材に基づく第2HD信号かを判別するクロスカラー検出部と、前記映像信号の画質補正を行う画質補正部と、前記クロスカラー検出部による判別結果に応じて前記画質補正部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする映像表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の映像表示装置において、更に、前記映像信号からクロスカラー成分を除去するクロスカラー除去部を更に備えることを特徴とする映像表示装置。
【請求項4】
請求項2に記載の映像表示装置において、前記クロスカラー検出部は、前記映像信号に含まれるコンポーネントの色信号から前記クロスカラー成分を検出することを特徴とする映像表示装置。
【請求項5】
請求項2に記載の映像表示装置において、前記画質補正部は、特定色相範囲にある映像信号の色相、及び/または特定色相範囲にある映像信号の彩度を補正する色補正部を含むことを特徴とする映像表示装置。
【請求項6】
請求項2に記載の映像表示装置において、前記画質補正部は、前記映像信号の輪郭部を補正する輪郭補正部を含むことを特徴とする映像表示装置。
【請求項7】
請求項3に記載の映像表示装置において、前記画質補正部は、特定色相範囲にある映像信号の色相、及び/または特定色相範囲にある映像信号の彩度を補正する色補正部を含み、該色補正部が前記クロスカラー除去部の後段に配置されることを特徴とする映像表示装置。
【請求項8】
映像表示装置において、
映像信号とともに入力されるEPG情報を用いて、入力された映像信号がSD素材をHDフォーマットにアップコンバートして得られた第1HD信号か、HD素材に基づく第2HD信号かを判別する判別部と、前記映像信号の画質補正を行う画質補正部と、前記判別部での判別結果に応じて前記画質補正部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする映像表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載の映像表示装置において、前記判別部は、前記EPG情報に含まれる文字情報から所定のキーワードを検索する検索部を含み、該検索部の検索結果を用いて前記判別を行うことを特徴とする映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−259084(P2010−259084A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140105(P2010−140105)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【分割の表示】特願2005−160864(P2005−160864)の分割
【原出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】