説明

映像音声記録再生装置及び記録再生方法

【課題】
著作権により制限されているディジタル放送を記録した第一のメディアから、第二のメディアにデータを高速に移動する技術を提供することである。
【解決手段】
上記課題を解決するために、ディジタルテレビ放送で用いられる第一の符号化方式によりディジタルデータを第一のメディアに記録する第一の記録手段と、前記ディジタルテレビ放送を、第二の記録メディアに記録する際に必要な第二の符号化方式に変換して前記第一のメディアに記録する第二の記録手段と、前記第二の記録手段によって記録されたデータを前記第一の記録メディアから前記第二のメディアに移動する際に、第二のメディアに転送する手段を備え、前記ディジタルテレビ放送が、著作権により制限されているときには、前記第一の符号化方式で記録されたデータと第二の符号化方式で記録されたデータの一方を視聴可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像音声データを記録媒体に記録し、再生する映像音声記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映像音声データをディジタル化し圧縮符号化して記録媒体に記録し、あるいは通信路を介して転送する、MPEGビデオ圧縮技術が多種多様な機器で用いられるようになってきた。例えば、MPEG−2Video(ISO/IEC13818−2)を用いたDVD記録再生装置が既知の民生用製品として挙げられる。また、テレビ放送に関しても、従来のアナログ放送に変わり、MPEG−2Videoをパケット多重化して放送するHD(HighDefinition)ディジタル放送が開始された。このディジタル放送をハードディスク(HDD)やDVDに記録する記録装置が製品化されている。
【0003】
一般にこれらの機器では、HDDに記録したデータをDVDに移動する機能を有する。現状のディジタル放送では、MPEG−2Systems(ISO/IEC13818−1Systems)規格におけるTransportストリーム(TS)と呼ばれる固定長のパケットによる多重化が行なわれており、HDDに記録する際には、このTS多重されたデータがHDD内に記録される。一方、DVD−R,DVD−RW、DVD−RAMに記録する際の規格である、DVD−VideoFormatやDVD Video Recording Formatなどでは、基本となる多重化方式として、MPEG−2SystemsにおけるPSフォーマットに準拠することが義務付けられている。HDD内にあるデータをDVDに移動する際には、TSからPSに変換する必要があった。また、HD放送では、例えば解像度が水平1920×垂直1080という高解像度で放送されているが、DVD記録時には、704×480という従来から用いられている解像度に変換する必要があった。これらの変換処理には処理時間を要するため、HDD、DVDのアクセススピードは十分に速い場合でも、HDDに記録したデータをDVDに移動するスピードを高速にできないという問題点があった。これらの問題を解決する手段として、たとえば、特許文献1などで、高解像度を持つTSのストリームとTSからPS解像度変換および多重化方式変換したストリームの両者をHDDに記録しておき、DVDに記録する時には、PSのデータをDVDに記録することで、移動を高速に行う手法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−111023公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1では、著作権により制限されているようなコンテンツを扱う際には、映像音声記録再生装置にTS、PSを同時に記録することを許可しないため、HDDからDVDへの高速移動を行うことができなかった。
【0006】
本発明では、著作権により制限されているディジタル放送を記録した第一のメディアから、第二のメディアにデータを高速に移動する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記課題を解決するために、ディジタルテレビ放送で用いられる第一の符号化方式によりディジタルデータを第一のメディアに記録する第一の記録手段と、前記ディジタルテレビ放送を、第二の記録メディアに記録する際に必要な第二の符号化方式に変換して前記第一のメディアに記録する第二の記録手段と、前記第二の記録手段によって記録されたデータを前記第一の記録メディアから前記第二のメディアに移動する際に、第二のメディアに転送する手段を備え、前記ディジタルテレビ放送が、著作権により制限されているときには、前記第一の符号化方式で記録されたデータと第二の符号化方式で記録されたデータの一方を視聴可能とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、著作権により制限されているディジタル放送などでも、第一のメディアから第二のメディアに高速に移動することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明について、実施例を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明における映像音声記録再生装置の第1の実施例の概略図である。本実施例では、本発明の一例としてHDディジタル放送を受信し、第一のメディアであるところのHDDに記録し、第二のメディアであるDVD−RAMに移動する機能を説明する。
【0011】
まず、HDディジタル放送を受信し、HDDに記録する際の動作を説明する。HDディジタル放送波が、図示していない地上波用アンテナもしくは衛星用パラボナアンテナなどから入力端子10に入力される。この放送波から、Tuner11において、ユーザーが所望のチャネルのデータが選択され、復調され、ディジタル信号として、TS−Demux12に送られる。TS−Demux12では、入力されたデータをTS多重化されたパケット列として解析し、所望のチャネルのビデオデータ、オーディオデータおよび、チャネル視聴に必要な管理情報を抽出する。抽出されたビデオデータ及びオーディオデータは、MPEG Decoder13に送られ、ビデオデータ及びオーディオデータがそれぞれデコードされ、ディジタルビデオ信号、ディジタルオーディオ信号として、それぞれ端子16、端子17から出力される。出力されたビデオ信号およびオーディオ信号は、図示していないディスプレイ機器にて映像および音声として出力され、ユーザーは番組が視聴可能となる。
【0012】
一方、選択された番組は、HDDに記録する際、TS−Demux12よりTSストリームのまま、Rec/Play Control29に送られる。Rec/Play Control29では、記録時には、所望のビデオデータおよびオーディオデータをTSデータの情報を保ったままで、さらにHDD上にファイルアクセス可能なファイルフォーマットとしてデータ整形を施す。ATA−IF21に送られたファイルは、ATAコマンドを介してHDDドライブ22に記録される。
【0013】
また、MPEG Decoder13でデコードされた映像と音声は、別のデータパスを通って、HDDドライブに記録される。このパスを以下に説明する。MPEG Decoder13でデコードされ、出力されたディジタル映像信号は、高解像度から低解像度へ解像度変換を行なうHD/SD Down Converter18において、各フレームごとに、解像度変換が行なわれる。この解像度変換後の映像信号と音声信号は、MPEG Encoder19において、再びMPEG2VideoおよびAudioのビットストリームとしてエンコードされる。VideoおよびAudioのそれぞれのストリームは、PS−Mux20において、PSデータとしてパケット化および多重化される。さらに、TS−Demux12から抽出された管理情報も同時にPSデータとしてパケット化され、データとして出力される。これらのデータは、ATA−IF21に送信され、前述したTSデータと時分割的にHDDに記録される。このPSデータは、後にDVD−RAMにコピーする際、解像度変換、多重化フォーマットの変換が生じないようなデータ形式にしておく。また、管理情報に関しても同様に、DVD−RAM内に記録する際に準拠すべきデータ形式にあらかじめコンバートしておく。TSデータと、PSデータは、例えば、UDF(Universal Disc Format)などのフォーマットに準拠したファイルとして扱うことで、別々のファイルとして、HDD上に両方が同時に記録され、管理される。番組の記録が終了した時点では、同一の番組コンテンツに対してTSデータを含むファイルと、PSデータを含むファイルが存在することとなる。
【0014】
図2に、HDDに記録したファイル内容概略を示す。受信した番組については、各番組ごとに映像データ、音声データがTSフォーマットのまま、101、102、103のようにファイルとして格納され、管理情報100がそれぞれの記録時間、番組情報などを格納する。一方、DVDメディアへ移動用に記録されたPSデータは、201、202、203に示すようにそれぞれオリジナルのTSデータに対応するように格納され、200のPSデータ管理情報において、それぞれの記録内容が管理される。なお、本実施例では、各番組ごとに別ファイルとしてTS,PSデータを格納するが、ファイル構成は、別構成として全ての番組がTSデータ,PSデータそれぞれにおいて1ファイルとして処理されていてもよい。また、逆に1番組を複数のファイルに分割して処理してもよい。
【0015】
次に、HDDに記録したデータをDVD−RAMに移動する場合を説明する。HDDに記録された番組データをDVD−RAMに移動する場合には、まず、Copy Control23がHDD Drive22より番組データをリードし、ATAPI−IF24を介してDVD−RAMに書き込む。このとき読み出すデータはHDD上のPSデータである。上記説明したように、あらかじめDVD−RAMに記録する際に準拠すべきフォーマットで記録してあるため、DVD−RAMには、単純なデータ転送のみでコピーすることが可能となる。ここで、HDDからのデータ読み出しスピードが264.4Mbps程度であり、6Mbps程度に圧縮されたPSデータを読み出す場合を考える。6Mbpsでリードするということは、通常視聴者が見るためにリードするのと等価であり、これを1倍速とすると、HDDとしては、266.4Mbps/6Mbps=44倍速のリードスピードを持つことになる。また、22.16Mbps程度で書き込み可能なRAMの場合には、22.16/6Mbps=3.69倍速での書き込みが可能となる。したがって、HDDのリードとDVD−RAMへの書き込み速度のうち、アクセススピードが低いDVD−RAM側のスループットを限界値として、HDDからDVD−RAMへの3.69倍速移動が可能となる。このデータ転送時には、解像度変換、TSデータからPSデータへの多重化方式の変換等がなくなるため、ほぼデータアクセススピードの限度値までの高速移動が行なえる。HDDにTSおよびPSのデータを冗長に2つ持つことになるが、実際に番組を記録する際には、1倍速程度の放送ビットレートを受信する必要があるため、これと同時にTSからPSへの変換、および解像度変換を行なう本構成では、ユーザーに対して変換のための時間を意識させる必要がなく、かつ必要時には、高速移動処理を行なうことが可能となる。
【0016】
HDDおよびDVD−RAMから再生する時の動作について説明する。HDD内には、高解像度のTS記録と低解像度のPS記録が存在する。通常、高解像度の方が画質が良いため、HDDから再生時には、Rec/Play Control29が、HDD Drive22よりTSデータのみを選択し読み出し、MPEG Decoder13に供給することで、記録した番組が再生される。ディジタル放送などでは、コンテンツの著作権保護のために、コピー保護機能の制限がつけられているものがある。例えば、CPRM(Content Protection for Recordable Media)と呼ばれるコピー保護の既定では、HDDに記録されたコンテンツは、一度だけ、他の記録メディアに移動することができ、移動のときには、もともとHDD内にあったコンテンツは削除する必要がある。また、受信した番組を記録する際には、HDD、DVDなどのメディアの中に2つ以上の視聴可能なストリームの複製をもつことが禁じられている。したがって、本実施例におけるTSとPSの2つのストリームがHDD記録されていて両者をユーザーに視聴可能な状態で開示してはいけない。この制約に従うため、本実施例における記録再生コントローラは、TS、PSのいずれかのコンテンツを選択して再生する機能を備える。例えば、ユーザーにGUIで選択画面を提供し、TS、PSいずれかの画面を選択して視聴させるようにする。また、記録後、通常時は、高画質のストリームを視聴させることを優先して、TSのみを再生可能とする。あるいは、HDDからDVD-RAMへユーザーが移動することを選択した場合には、その後DVD−RAM相当の画質をユーザーが視聴する意思を確認したとみなし、DVD−RAMに記録するデータのみが再生可能になるよう、PSのみを選択して再生する。また、HDDからDVDへ記録する内容をたとえばプレイリストの編集画面のような形で、編集する場合には、編集を開始する段階で、PS画像のみを再生可能にする。これにより、DVDに記録するコンテンツを直接編集でき、また、PSのデータ量や各フレームの画像などをユーザーに開示することができる。以上のような形でディジタルデータの移動が確定され、HDDからDVD−RAMへデータを移動する際には、TS記録されたストリームを消去する。このようにして、複製禁止の制約がかかっているコンテンツについても、複製禁止の制約を守りつつ、TS/PSを同時に記録しておき、後に高速コピーが可能となるような装置が実現できる。なお、HDDに記録したPSデータおよびDVDに記録したPSデータは、再生時にはいずれもPS−Demux26にて、PSデータのパケット多重分離が行なわれ、MPEG Decoder27において、デコードされSDサイズのストリームおよび、音声データとして出力される。映像に関しては、SDサイズのデータは、HDサイズにアップコンバート処理がSD/HD Up Converter28において施される。映像信号、音声信号は、それぞれVideo Selector14(図中ではV−Sel)、Audio Selector15(図中ではA−Sel)を介して、外部ディスプレイに出力される。
【0017】
本実施例では、DVD−RAMを第二の記録メディアとして説明したが、第二のメディアが、DVD-R、DVD-RWなどであっても同様の効果が得られることは言うまでもない。また、デコードパスとして、複数のMPEG DecoderをTS,PS用に備えているが、共通のデコーダを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明における映像音声記録再生装置システムの第1の実施例の概略図。
【図2】本発明におけるHDD内の記録内容について説明する図面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディジタルテレビ放送で用いられる第一の符号化方式によりディジタルデータを第一のメディアに記録する第一の記録手段と、
前記ディジタルテレビ放送を、第二の記録メディアに記録する際に必要な第二の符号化方式に変換して前記第一のメディアに記録する第二の記録手段と、
前記第二の記録手段によって記録されたデータを前記第一の記録メディアから前記第二のメディアに移動する際に、第二のメディアに転送する手段を備え、
前記ディジタルテレビ放送が、著作権により制限されているときには、前記第一の符号化方式で記録されたデータと第二の符号化方式で記録されたデータの一方を視聴可能とする映像音声記録再生装置。
【請求項2】
請求項1記載の映像音声記録再生装置であって、前記第一のメディアに記録したデータを再生する場合には、前記第一の符号化方式と前記第二の符号化方式のデータうち、高解像度の映像を持つ符号化方式のデータを選択して視聴可能とする映像音声記録再生装置。
【請求項3】
請求項1記載の映像音声記録再生装置であって、前記第一のメディアから第二のメディアにデータを移動するときは、前記第一の記録手段によって記録されたデータを削除する映像音声記録再生装置。
【請求項4】
請求項1記載の映像音声記録再生装置であって、第一のメディアから第二のメディアにデータを移動するときは、前記第二の記録手段によって記録されたデータを視聴可能とする映像音声記録再生装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の映像音声記録再生装置であって、第一のメディアから第二のメディアにデータを移動することをユーザーが選択する時点を、第二のメディアに移動させるコンテンツの編集開始時をもって確定する機能を備える映像音声記録再生装置。
【請求項6】
請求項1記載の映像音声記録再生装置であって、前記第一の多重化方式はISO/IEC13818−1に記載のTransport Streamであり、前記第二の多重化方式は、ISO/IEC13818−1に記載のProgram Streamである映像音声記録再生装置。
【請求項7】
ディジタルデータが入力される際に、
ディジタルデータを第一の符号化方式及び第二の符号化方式により第一の記録媒体に記録し、
前記ディジタルデータが、著作権により制限されているときには、前記第一の符号化方式で記録されたデータと前記第二の符号化方式で記録されたデータの一方を視聴可能とする映像音声記録再生方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−105965(P2009−105965A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25504(P2009−25504)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【分割の表示】特願2004−227417(P2004−227417)の分割
【原出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】