説明

時分割多重PWM増幅器

【課題】好適な時分割多重PWM増幅器を提供すること。
【解決手段】独立した負荷(32、42)間で共通の導線を共有することができるブリッジ増幅器出力段が開示される。複数のチャネルパルス幅変調出力信号(39、49)は、時分割多重化され、必要とされる導線の数を低減する。出力段は、非共通導線時間多重オフチャネル(単数または複数)は、共有される共通信号(50)のコピーを受け取る。これにより、共通の導線(50)がオンチャネルによって用いられるように信号を搬送する場合であっても、オフチャネル(単数または複数)上の差動信号はキャンセルされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、概して、ブリッジ回路に関し、より具体的には、増幅器用のブリッジ出力ドライブ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
本発明の有利な点を理解するために、当業者に公知の特定のアナログ増幅器および特定のデジタル増幅器の特徴を検討することは有用である。
【0003】
アナログ増幅器の不利な点は周知であり、これらの欠陥を克服するために、多数のメカニズムが実現された。アナログ増幅器の効率の悪さを克服する努力により、特に、比較的高効率のスイッチング増幅器が発達した。しかしながら、スイッチング増幅器は、所望でない歪みなしに、小さい信号を処理することが難しいという固有の欠陥を有する。2進スイッチング増幅器は、特に、変調搬送周波数が増幅された信号から除去された場合、小さい出力信号にリップルを生成することが知られている。
【0004】
2進スイッチング増幅器の性能を向上するためのメカニズムは、より多くの出力スイッチング状態を実現することを含んでいる。第3の(「3進の」および第4の(「4進の」)出力スイッチング状態を実現する公知のスイッチング増幅器によって、2進スイッチング増幅器の従来の2つの出力状態が補完され、性能が改善された。例えば、本譲受人によって所有され、参考のため、本明細書中に援用される米国特許第5,077,539号(「’539特許」)(1991年12月31日発行)は、スイッチング増幅器への小さい信号入力に影響を及ぼす歪みを克服するために、増幅器の設計において実現されたスイッチング動作の3進および4進モードを記載する。
【0005】
3進またはトライステートモード波形は、ゼロの離散振幅、正または負の極性を含む入力信号振幅情報を時間付き幅(timed width)および極性パルスとして表す。3進技術を用いて、信号情報が、正または負の極性の適切な幅のパルスに直接変換される。
【0006】
しかしながら、上述の特許に開示されるような3進の実現は、オーディオまたはサーボモーター増幅器の用途に使用を制限するエラーソースを含む。このエラーソースは、特に、ゼロを通る入力信号遷移としての、小さい入力信号の出力伝達関数における非線形性が原因で出力信号の歪みを生成する。小さい入力信号の場合、性能の劣化は、パワースイッチング回路によって生成された出力信号の有限な立ち上がりおよび立下り時間に基づく。これらのスイッチ時間は、非線形ゲイン特性および信号の歪みを生成する、減衰する大きさの信号から減算された固定の大きさの誤差を表す。
【0007】
トリステートの実施形態の非線形挙動を克服するために、従来技術において、ゼロを通る出力遷移を線形化するために、第4の状態を導入すること、特に、ゼロを通る出力遷移を線形化することが知られている。小さい入力信号に関して、上述の特許にて詳細に記載される第4の状態または4進の実施形態は、ゼロを通る線形遷移に影響を及ぼすアナログ増幅器を用いる。この第4の出力状態は、小さい信号性能を線形化するために、線形アナログ増幅器を3進スイッチングと共に用いる。所定の信号の大きさ未満で、負荷が線形アナログ増幅器にスイッチングされ、3進パワースイッチが不能にされる。大きさの閾値を越えると、パワースイッチは使用可能にされ、負荷は、線形増幅器から切り離される。し
かしながら、この妥協的解決策は、2進および3進の実装等の特定の利点を提供するが、特定の不利な点を有する。
【0008】
従来技術にて公知の3進および4進技術は、このアナログ実装において、線形アナログ増幅器にインターフェースする信号変換手段を必要としないアナログ入力信号を受取る。これらの実装例において、すべての信号処理は、アナログ手段、すなわち、アナログ回路は、信号変換、パルス幅変調制御、および小さい信号の出力線形化を実現するために用いられる。しかしながら、これらのアナログでの実現は費用効果的でない。なぜなら、例えば、非常に大きい規模の集積回路は、アナログ設計を実現する際に経済的に使用され得ないからである。これに代わる非集積構成は、空間を過度に占有する。
【0009】
さらに、デジタルオーディオメディア、CD−ROM、デジタル制御システム等の出力からのもののように元来デジタルである増幅器入力信号に関して、アナログの従来技術は、アナログスイッチング増幅実装(単数または複数)とインターフェースするために、信号変換回路を必要とする。増幅器の前端部におけるインターフェース回路は、性能を劣化し、システムコストをさらに課する。
【0010】
低コスト用途専用の集積器回路において実装され得る全デジタルスイッチング増幅器は、本譲受人によって所有され、参考のため、本明細書中に援用される、Adrianらによる米国特許第5,617,058号(’058特許)に開示される。’058特許のすべてのデジタルスイッチング増幅器は、端に3つの状態を用いることによってパワースイッチの線形化を提供する。
【0011】
’058特許によると、全デジタルの実現において、小さい固定幅のバイステート補償パルス波形が、補償された波形を生成するオーバーサンプリングされたメイン入力パルスのリーディングエッジまたはトレーリングエッジに付加される。この補償パルスは、スイッチ時間誤差のコモンモードのキャンセレーションを行うことによってパワースイッチからの出力を線形化する。補正メカニズムは、変調レベルまたはインデックスに依存し、パルス搬送波または搬送波とも呼ばれる補償パルスから生じた高調波ひずみを補正するように実現される。高調波歪みは、変調誘導歪みの逆を入力信号振幅情報の事前処理に適用する補正メカニズムによって補正され、これにより、トリステートパワースイッチの性能を線形化するために小さい搬送波を付与するために用いられる変調スキーマから歪みのない生成物が生じる。
【0012】
補正メカニズムは、オーバーサンプリングされた入力信号への変調誘導歪みの逆を付与することを容易にするデジタル信号処理(DSP)を用いて実現される。誘導された歪み補正をコンピュータ計算するために、補正メカニズムによって必要とされる係数は、入力信号の推定された振幅によって参照されるルックアップテーブルから導出される。
【0013】
’058特許によると、さらに、パワースイッチのデッドバンドのデジタルタイミング制御が行われる。デジタルデッドバンド制御は、パワースイッチHブリッジ内の個々のスイッチがオフおよびオンにされるタイミングおよびシーケンスの精度を保証し、これにより、ブリッジの一方の側の上部および下部スイッチの両方が、同時に両方ともオンにされる状態を防ぐ。正確なデジタルタイミングは、パワーサプライにわたる短絡を回避するために、ブレークビフォアメイクタイミング(break−before−make timing)を適切に順序付ける。’058特許による全デジタル設計において、スイッチタイムエラーのコモンモードのキャンセレーションによってパワースイッチからの出力を線形化するために、パルス幅変調波形を生成するために用いられる高速クロックが、さらに、パワースイッチがさらに安定したスイッチング状態を生成するために必要とされる必要なデッドバンドタイミング遅延を生成するように、タイミング位準を提供するために用
いられ得る。
【0014】
さらに、’058特許による全デジタルオーディオ増幅器の実施形態において、各個々のスイッチのタイミングは、スイッチのnon−eがオンにされる短い期間を提供することによってメインパルスと補償パルスとの間にゼロ電圧スイッチ遷移を適切に達成するように調整され得る。従来のブリッジは、強化モードMOSFETを用いて実現され、これにより、電流は、ダイオードが順方向バイアスされるように同調されるべき代替的な2つのスイッチのボディソース−ドレインダイオードを通って流れ続ける。ダイオードが順方向にバイアスされた場合、オフスイッチにわたる電圧は、実質的にゼロであり、よりクリーンなオンが可能になる。Hブリッジスイッチ構成における強化モードMOSFETの使用は、全デジタル増幅器の実施形態の関連で、より高効率、より速いスイッチング速度、および低減された電磁干渉(EMI)のよりクリーンな出力を提供する。
【0015】
増幅器回路用のブリッジパワー出力ドライブが周知である。一般に、このようなブリッジパワー出力を用いて、電気負荷を駆動するすべての方法は、この負荷が2つの出力段間に接続されること、および、これらの2つの出力段が、ゲイン極性が逆であることを必要とする。例えば、ブリッジ出力ドライブを有する任意のタイプの連続的なアナログまたはパルス幅変調出力段は、負荷にわたって逆位相ゲイン増幅器で構成される。
【0016】
典型的なブリッジ出力ドライブが図1に示される。Vinに印加された信号が正の極性を有する場合、電流の流れは、駆動電流は、Vdd(A)から負荷を通ってVss(B)に流れる。Vinに印加された信号が負の極性を有する場合、駆動電流は、Vdd(B)から負荷を通ってVss(A)に流れる。出力段のパワーサプライは、単極であり、すなわち、Vss=グラウンドまたはバイポーラであり、すなわち、Vss=−Vddであり得る。
【0017】
ブリッジ出力構成は、有利にも、同じパワーサプライ電圧を有する単一の出力段によって駆動される負荷と比較して、負荷にわたって2倍の電圧(2(Vdd−Vss)ピークツーピーク)を提供する。図2は、このようなシングルエンド型出力ドライブ回路を示し、ここで、負荷にわたる最大のピークツーピーク電圧はVdd−Vssである。図3による構成は、単一のサプライ電圧を有する接地負荷すなわち、Vss=グラウンドを駆動するシングルエンド型出力段のために必要とされる。
【0018】
図3に示されるように、接地された負荷を有するシングルエンド型出力構成のAC用途は、不利なことに、コモンモードDCコンポーネントを遮断するために、出力カップリングキャパシタを必要とし、これにより、直流が負荷を通って流れることを防ぐ。接地負荷を駆動するAC用途における適正な動作は、入力信号が、出力信号に約Vdd/2対称的にスイングさせることを必要とする。従って、負荷にわたって利用可能な最大のピークツーピーク電圧は、Vddである。比較すると、図1に示されるようなブリッジ構成は、Vss=グラウンドの負荷で、Vddの最大ピークツープーク電圧を提供する。従って、ブリッジ構成は、シングルエンド型出力構成の4倍のパワーを提供する。
【0019】
公知のブリッジ構成は、不利なことに、独立した「共通」コネクタを必要とする。複数のブリッジ出力回路は、それぞれの負荷への少なくとも4つのワイヤ接続を必要とする。なぜなら、各負荷の両方の側がアクティブ出力段コンポーネントに接続されるからである。これは、特定の低コストオーディオシステムにおいて特に不利であり、ここで、例えば、オーディオスピーカまたはヘッドホンにおいて、2つの負荷を駆動するために導体の数を最小化することが望ましく、実質的なコスト削減は、部品の節減および/または空間の節約によって達成され得る。
【0020】
Stricklandによる「Method and Device for Improved Class BD Amplification Having Single−Terminal Alternating−Rail Dual−Sampling Topology」(本明細書では、以後、「the Strickland patent」)と呼ばれる米国特許第6,097,249号は、クラスBD、(3進)、増幅器をグラウンドリファレンス(ground referencing)する方法を教示する。Strickland特許において開示されるこの発明は、クラスAD、(2進)出力増幅器を負荷素子として2つのさらなるクラスADパワーサプライ増幅器間に効果的に配置することによって、ブリッジ出力段を用いることを回避する。AD増幅器は、1つは、Vddとグラウンドとの間で動作し、もう1つはグラウンドとVssとの間で動作する半波ブリッジから構成される。この構成により、グラウンドリファレンスされた負荷に出力増幅器が3つの状態出力を提供することが可能になり、ここで、正の電圧、Vdd;ゼロ電圧、グラウンド;および負の電圧、Vssの3つの状態がある。これにより、クラスBD、(3進)出力は、ブリッジ出力段なしで生成される。
【0021】
Strickland特許によって教示された方法が共通の導線を2つの負荷間で共有することを可能にするために用いられ得るが、これは、低コストを必要とする用途、または集積回路の解決策にはあまりにも複雑である。例えば、ある実施形態において、Stricklandの発明は、少なくとも2つのパワーレール、VddおよびVss、ならびにVddとグラウンドまたはVssとグラウンドとの間で動作させるために出力増幅器パワーレールをスイッチングする手段を必要とする。単一チャネルの場合、これは、従来のHブリッジ構成における4つの機能を実行するために最小の6個のスイッチを必要とする。複数のスイッチが必要とされるために、このような実施形態は複数の用途にとって非現実的になる。これらの実施形態は、さらに、さらなるスイッチ、すなわち、デュアルサンプリングの制御をさらに複雑にする。
【0022】
Stricklandの発明の代替的実施形態において、レールalternationスイッチの一方の極が除去され、すなわち、6個のスイッチのうちの2つが除去されるフローティングパワーサプライシステムが記載される。しかしながら、Strickland特許が記載するように、この実施形態は、抑制することが困難な著しい電磁放射を生成するという点で重大な不利な点を有する。
【0023】
どちらの実施形態においても、Strickland特許に開示された方法および装置は、低コスト、低パワー、または、集積回路への組み込みの任意の組み合わせを必要とする用途に対する解決を提供しない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0024】
(発明の要旨)
本発明は、パルス幅可変パワー出力の2つの独立したチャネルを2つの負荷(ステレオスピーカまたはヘッドホン)に提供することができる(ダイレクトデジタル)PWMブリッジ出力ドライブを提供し、これは、ブリッジ増幅器出力構成の2つのチャネルのために通常必要な4つの導線に代わって、3つの導線のみを用いる。
【0025】
本発明により、3つの導線のみにわたる2つのチャネルの実現は、2つの負荷間の共通のリード線を時分割多重化使用によって達成される。共通の導線上の信号は、出力チャネルを半フレーム分オフセットすることによって時分割多重化される。
【0026】
本発明の例示的実施形態において、2つのチャネルを駆動するHブリッジドライバから4つの出力導線が例示的出力段に接続される。3つの適切に接続されたORゲートのセッ
トの入力に4つの導線が付与される。ORゲートは、組み合わされた場合に、単一の共通の導線を共有する一対の非干渉性(non−interfering)時分割多重信号を提供する3つの信号のセットを提供する。ORゲートのセットは、オフチャネル上の非共通コンダクタによって共通の導線のトラッキングを用意にするように構成される。このようなトラッキングは、オフチャネル上の差動信号が零であることを保証する。
【0027】
グラウンドにリファレンスされた負荷を駆動する従来技術の単一の供給増幅器(例えば、図3におけるような)が必要とするようなACカップリングキャパシタを必要とせずに、本発明による単一の供給構成を用いた場合、グラウンドが共通の導線として用いられる方法と同様に、負荷は共通の導線にリファレンスされ得る。本発明により、単一のパワーサプライ電圧によってこのような負荷に送達されたパワーは、従来技術の増幅器によって送達されたパワーと同じであるが、最大半分の時間しか動作せず、実質的に効率を高める。
【0028】
本発明の特徴は、単一のパワーサプライ電圧からの従来のブリッジ構成で動作する一方で、別の負荷と共通の導線を共有する負荷を駆動する増幅器の提供を含む。これは、負荷をグラウンドにリファレンスする他の単一の供給増幅器用途(例えば、図3に示される)のように、低周波数応答を制限するACカップリング(DCブロッキング)キャパシタを必要としない。本発明は、従来技術のいくつかの制限を克服し、ブリッジ出力回路を多重化して、必要とされる出力段導線の数を低減し、複数の負荷を駆動する一方で、ブリッジ出力構成の利点を維持する方法および装置を明確にする。本発明は、さらに、数が低減された導線および低減された数の出力段を用いてAC用途のためのブリッジ出力を多重化し、かつ、ACカップリングキャパシタを必要としない方法および装置を明確にする。本発明は、さらに、‘058特許に記載される線形化されたトリステートパワースイッチブリッジドライブ構成の利益のすべてを保持する。ブリッジアーキテクチャは、図3のAC接続された増幅器と同じパワーを生成するので、最大半分の時間で動作する一方で、従来技術のアーキテクチャに最小で2倍の効率を提供する。
【0029】
本発明のこれらおよび他の特徴は、以下の詳細な説明を添付の図面とともに読むことによってより良く理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
本発明は、従来技術による4つの出力段を有する2つの負荷出力を駆動するブリッジ出力増幅器を示す図4を参照して理解され得る。第1の負荷12への信号の正の部分10は、正のゲインを有する第1の出力段16によって増幅される。第1の負荷12への信号の負の部分14は、負のゲインを有する第2の出力段18によって増幅される。パワーサプライ(図示せず)は、Vdd−Vssボルトでパワーを各増幅器段に提供する。第1の出力段16および第2の出力段18の同時のプッシュおよびプルは、入力信号の最大増幅を2倍のパワーサプライ電圧(2*(Vdd−Vss))に提供する。
【0031】
同様に、第2の負荷2に関して、第2の負荷22への信号の正の部分20は、正のゲインを有する第1の出力段26によって増幅され、第2の負荷22への信号の負の部分24は、負のゲインを有する第2の出力段28によって増幅される。従って、第2の負荷22への信号は、さらに、2倍のパワーサプライ電圧(2*(Vdd−Vss))の最大ゲインを有する。
【0032】
図4のブリッジ出力増幅器構成は、各負荷に対して1対の導線、すなわち、各増幅器段から1つの導線を必要とする。複数の用途において、負荷のセットを駆動するために用いられる導線および増幅器段の数を最小限にする一方で、ブリッジ構成の有利な点を保持す
ることが望ましい。例えば、低コストのオーディオスピーカシステムおよびオーディオヘッドホンにおいて導線の数を4つから3つに低減することによって、著しいコスト削減が提供される。
【0033】
本発明の少なくとも1つの実施形態によるブリッジ出力増幅器が図5に示される。各負荷32、42の第1の側は、共通の増幅器段38に接続される。第2の増幅器段36は、第1の負荷32の第2の側に接続される。第3の増幅器段46は、第2の負荷42の第2の側に接続される。すべての3つの増幅器段は、正のゲインを有する。第1の負荷32への信号の非共通部分30は、第1の回路コンポーネント31および第2の増幅器段36を通じて提供される。第1の負荷32への信号の共通部分34’は、共通回路35および第1の増幅器段38を通じて第1の負荷32の第1の側に提供される。第1の負荷32への信号の非共通部分34は、さらに、第2の回路コンポーネント41および第3の増幅器段46を通じて第2の負荷42の第2の側に提供される。同様に、第2の負荷42への信号の非共通部分40は、第2の回路コンポーネント41および第3の増幅器段46を通じて提供される。第2の負荷42への信号の共通部分44’は、共通回路35および第1の増幅器段38を通じて第2の負荷42の第1の側に提供される。第2の負荷への信号の共通部分44は、さらに、第1の回路コンポーネント31および第2の増幅器段36を通じて第1の負荷32の第2の側に提供される。
【0034】
本発明の少なくとも1つの実施形態による出力構成は、図6に模式的に示される。図6は、図5と共に理解され得、ここで、信号IN1Aが、第1の負荷32への信号の正の部分30に対応し、信号IN1Bは、第1の負荷32への信号の部分34、34’に対応し、信号IN2Aは、第2の負荷42への信号の負の部分に対応する。
【0035】
ここで、4つの信号が各々Hブリッジを駆動する2つのチャネル補償パルス幅変調オーディオ増幅器構成を示す‘058特許の図13を参照する。‘058特許の図12は、これらの4つの信号をAHO、ALO、BHOおよびBLOとして詳細に示す。これらの信号は、2つの半波ブリッジにおける上部および下部MOSFETを制御することが意図され、ここで、xLOは下部MOSFETを制御し、AおよびBは、全波Hブリッジを形成する2つの独立した半波ブリッジを表す。
【0036】
図6に示されるように、相補の対から、すなわち、PchおよびNch MOSFETから構成される半波ブリッジが、本明細書中に記載されるように、xHOおよびxLOの同じ機能を実行するために単一の信号INxxによって制御され得ることが当業者に明らかである。さらに、任意の必要とされるデッドバンド遅延は、集積回路に提供されてもよいし、そうでない場合、必要に応じて、INxxをxHOおよびxLOに分解してもとに戻すことによって交差伝導(cross conduction)を防止することが、当業者に明らかである。
【0037】
3つのORゲート31’、35’および41’は、第1の回路コンポーネント31、共通回路35および第2の回路コンポーネント41に対応する。信号IN1A30およびIN2B44は、第1のORゲート31’に入力される。信号IN1B34’およびIN2B44’は、第2のORゲート35’に入力される。信号IN2A40およびIN1B34は、第3のORゲート41’に入力される。第1のORゲート31’からの出力は、Q1およびQ4を含む第1の半波ブリッジ36’に提供される。第2のORゲート35’からの出力は、Q2およびQ5を含む第2の半波ブリッジ38’に提供される。第3のORゲート41’からの出力は、Q3およびQ6を含む第3の半波ブリッジ46’に提供される。
【0038】
第1の半波ブリッジ36’は、増幅された出力39を第1の負荷に提供する。第3の半
波ブリッジ46’は、第2の負荷に増幅された出力49を提供する。第2の半波ブリッジ38’は、第1および第2の負荷に共通の増幅された出力50を提供する。増幅器段36’、38’および46’をVcc54のパワーサプライとグラウンド56、56’、56’’との間で接続することによって、これらにパワーが提供される。ヘッドホン用途において、ヘッドホンスピーカへの出力は、ヘッドホンジャック52を通じて3つの導線に沿って提供される。
【0039】
図6による構成は、共通の増幅器段および共通の出力導線が、各負荷の信号が互いに干渉することを許すことなく、1対の負荷によって共有されることを可能にする。本発明の例示的実施形態の動作は、図5および図6を図7における信号のタイミングの例示と共に参照して理解され得る。
【0040】
各負荷の一方の端部は、共に出力段に繋がれる。各チャネルが個別に考慮される場合、従来技術による通常のブリッジ構成(図4を参照)、すなわち、第1の回路コンポーネントへの入力=Vin1および共通回路への入力−Vin1等が保たれる。しかしながら、負荷間の共通接続は、同時に−Vin1および−Vin2になり得ない。第1および第2の回路コンポーネントおよび共通の回路は、どの信号が負荷に印加されるかを選択するように機能し、これにより、ただ1つの負荷が任意の時間の瞬間にオンになる。第1の負荷で開始して、第1の回路コンポーネントへの入力=Vin1、共通回路への入=−Vin1、および第2の回路コンポーネントへの入力=−Vin1である場合、適正な信号が印加される。このようにして、第2の負荷は、各終了時に−Vin1を見、第2の負荷にわたってネット信号(net signal)をもたらさない。同様に、第2の負荷について、第2の回路コンポーネントへの入力=Vin2、共通回路への入力=−Vin2、および第1の回路コンポーネントへの入力=−Vin2の場合、適正な信号が印加され、従って、第1の負荷への信号がキャンセルされる。第1および第2の回路コンポーネントおよび共通回路および出力ドライバが、出力信号の正確さ(fidelity)を減衰させることを回避するために十分な余有の分、入力信号周波数を超過するレートで、Vin1とVin2との間でスイッチングするために十分な大域幅を有する場合、このような信号がアナログ入力信号を用いて提供される。このような高周波数スイッチングは、実際の増幅器回路において実現することが困難である。
【0041】
共通接続の時間多重化は、クラスD増幅器(パワー出力段)を用いて可能である。一般に、クラスD増幅器は、入力信号に比例するパルス幅を生成するか、入力信号に比例する単位時間当たりのパルスの密度を提供するためにスイッチングされた波形を時間変調することによって動作する。クラスD増幅器は、再生される信号の周波数に対して高周波数の信号をスイッチングする。これらの性質により、クラスD増幅器は、パワーを時間のパケットで送達し、従って、信号の時分割多重化(TDM)に向いている。‘058特許による、補償搬送波波形でパルス幅が変調された信号は、例示的出力段を駆動するために得に適切である。なぜなら、これらは、本質的に正および負の部分に時分割多重化され、半波フレーム分オフセットされ、半フレームにわたって変調することに制約され得る。
【0042】
本発明の少なくとも1つの機能は、図6を参照してさらに理解され得る。入力ドライブ信号IN1A、IN1B、IN2A、およびIN2Bは、Adrianらによる米国特許第5,617,058号(Adrian‘058特許)(この特許は、参考のため、本明細書中に援用される)によって教示される手段のようなデジタル信号処理手段によって生成される。信号INxAを1つの半波ブリッジ(Q1、Q4の組み合わせ)に印加すること、および、INxBを別の半波ブリッジ(Q2、Q5の組み合わせ)に印加すること、ならびに、ポイント1およびCにて2つの半波ブリッジ間に負荷を接続することによって、Adrian‘058に記載されるように、線形化されたトリステート波形がもたらされる。Q2、Q5の組み合わせおよびQ1、Q4の組み合わせは、図1〜図5に表される
パワー出力段の実施形態である。実際、再生フィルタは、放射性雑音(radiated
emission)が規制限度を超過した場合にのみ必要とされる。そうでない場合、フィルタリングは、ヘッドホンおよび低パワースピーカ等の低パワー用途には必要ないと判定されている。
【0043】
図7は、入力IN1A、IN1B、IN2AおよびIN2Bへの出力1、Cおよび2のタイミング関係を示す。2つの出力チャネルを半フレーム分オフセットし、かつ、最大変調を半フレームインターバルに制限することによって対向チャネルの動作を妨げることなく、半フレームインターバルにわたって変調が行われる。これにより、2つのチャネルが信号フレームの時間内で時間多重化されることが可能になり、従って、同じ出力スイッチレートを維持する。非動作チャネルには、コモンと同じ信号が提供され、これにより、非動作負荷を通る信号の流れが防止される。例えば、チャネル1が動作している場合、チャネル2およびCは、同相で動作して互いに相殺する。これにより、Adrian‘058特許によって教示されるように、正味の出力が差1〜Cを示す。
【0044】
本発明のある実施形態は、図6に示されるように、ApogeeDDX2000/DDX2060デジタル増幅器チップセットの、さらなるロジックとの組み合わせを用いて首尾よく示された。DDX2060パワーデバイスは、8Vの電圧から動作され、デバイスにおける不足電圧カットオフを作動させることを回避する。負荷インピーダンスは8オームであった。示されたデータセットのすべては、これらの状態に対応する。本発明の実施形態は、ヘッドホン用途等の低パワー増幅器用途のニーズに利用される。結果は、3.3Vおよび5Vの両方のパワーサプライを用いる典型的な代表的用途、および、8オーム〜16オームの範囲の負荷について外挿され、適切なパワーがこの用途において生成され得ることを示す。全高調波歪みおよびノイズ(THD+N)は、0.2%以下であると測定され、これは、80デシベル振るスケール(dBFS)の信号対ノイズ比に対応する。まとめると、8Vで動作する実施形態に関して、以下の結果が達成された。全高調波歪みおよびノイズ(THD+N)は、0.2%以下であると測定され、信号対ノイズ比は、フルスケールの1/2フレーム変調信号に対する80dB A−重みつき以上であると測定された。代表的データが図8〜図10に示され、8オーム負荷が8Vで動作するDDX2060によって駆動される。DDX2060データシートに記載されるように二次ローパスフィルタがデータを取得するための試作品において用いられた。2次フィルタは、可聴性の任意の理由で用途において必要でないと判定された。
【0045】
図8は、供給電圧が3.3Vの場合の16オームの負荷で24mW、または、8オームの負荷で48mWの等価のパワーを有する単一チャネル出力のヘルツ(Hz)での信号周波数の関数としての全高調波歪みおよびノイズ(THD+N)のグラフである。図8におけるグラフの垂直軸は、理想的信号に対する全高調波歪みおよびノイズのパーセントの単位での歪みを示す。
【0046】
図9は、全波半フレーム変調に駆動された単一チャネルに対して、ワットでの(平均平方根)(W rms)信号パワーの関数としての1kHzの全高調波歪みおよびノイズ(THD+N)のグラフであり、全波フレーム変調に駆動された単一チャネルは、700ミリワット(mW)まで8オーム負荷に送達する。16オーム負荷への等価のパワーは、3.3Vの供給からの60mWまたは5Vの供給からの137mWであり得る。8オーム負荷への3.3Vを用いるパワー出力の供給は、119mWである。
【0047】
本発明による、本明細書中に記載された回路コンポーネントおよび共通回路は、ORゲートの形態で例示的に実現されたが、本発明のこれらの局面は、種々の回路構成および/または組み合わされる論理素子によって実現され得ることが理解されるべきである。本発明の例示的実施形態がパルス幅変調信号に関して記載されるが、本発明は、パルス密度変
調、パルス振幅変調、および時分割多重化に向いた任意の他の変調技術等の、種々のタイプの信号の動作によって実現されことが理解されるべきである。さらに、本発明による方法がフレームを1/Nセグメントに分割することによって共通の導線を共有すること、および必要な駆動ロジックを配置して、アクティブチャネル以外のすべてに共通の導線の変調をトラッキングさせて、任意の数またはチャネルに拡張することができることが当業者に明らかである。
【0048】
本発明は、その例示的実施形態に関して本明細書中に記載されたが、形態およびその詳細における上述の、および種々の他の変更、省略、または追加が、本発明の主旨および範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、従来技術による、負荷を駆動する2つの出力段を有する出力ブリッジ構成を示す。
【図2】図2は、従来技術による、負荷を駆動するシングルエンド型出力段を示す。
【図3】図3は、従来技術による、接地された負荷を駆動し、ACカップリングキャパシタを含むシングルエンド型出力段を示す。
【図4】図4は、従来技術による、4つの導線を有する1対の負荷を駆動する一対のブリッジ出力状態を示す。
【図5】図5は、本発明の少なくとも1つの実施形態による、3つの導線を用いる1対の負荷を駆動する1対のブリッジ出力段を示す。
【図6】図6は、2つの負荷を駆動する3つの導線を有する本発明の実施形態を実現する論理回路の模式図である。
【図7】図7は、本発明の少なくとも1つの実施形態による、3つの負荷導線上の信号に対する4つの入力信号ワイヤ上の信号のタイミング図を表す。
【図8】図8は、8Vで動作するDDX2060によって駆動される8オームの負荷の代表的データを示し、単一チャネルが駆動される周波数に対するTHD+N(全高調波歪み+ノイズ)を示す。
【図9】図9は、8Vで動作するDDX2060によって駆動される8オームの負荷の代表的データを示し、単一チャネルが駆動される振幅に対するTHD+Nが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のチャネルと、第2のチャネルと、第1の論理手段と、第2の論理手段と、第3の論理手段とを備えたブリッジ出力増幅器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−187747(P2008−187747A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120020(P2008−120020)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【分割の表示】特願2003−544900(P2003−544900)の分割
【原出願日】平成14年10月11日(2002.10.11)
【出願人】(502169283)アポジー テクノロジー インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】