説明

時空間チャネルシミュレータ

【課題】実際の通信環境において測定した電波伝搬特性を基に移動局を評価する。
【解決手段】この発明の時空間チャネルシミュレータは、測定部と再生部を具備する。測定部は、移動体通信システムにおける基地局と移動局との間の電波伝搬特性と、自身の移動ベクトルとを測定する。再生部は、電波伝搬特性と移動ベクトルと入力模擬基地局信号を入力として、電波伝搬特性から抽出した伝搬パラメータを用いて実環境を模擬した伝搬パスの伝搬特性を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動通信システムにおける移動局の性能評価に用いる性能評価装置に関し、特に複数の伝搬パスのパラメータに時変パス変動を付加することにより多重波フェージングのシミュレーションを可能にする時空間チャネルシミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、移動通信システムの特性評価を実伝搬環境(屋外)で実施することは容易ではなく、チャネルシミュレータと呼ばれる屋内実験系にて評価・検証するための装置が必要とされている。基地局と移動局間に見通し条件が成立する確率の低い移動通信環境においては、基地局から放射された電波は周辺の建築物において反射・回折・散乱を繰り返して移動局に到来することから、電波の受信強度(フェージング)、遅延時間、出射方向、到来方向、偏波方向に広がりが生じる事が特徴とされる。更に、LTE(Long Term Evolution)やIMT−Advancedのような次世代移動通信システムでは、電波の空間的な分布特性を積極的に利用するマルチアンテナ技術(MIMO伝送・アダプティブアレー)の採用が有力視されることから、電波の空間的な分布特性もチャネルシミュレータにおいて模擬することが重要である。
【0003】
移動局が移動することにより発生する電波の空間的な分布特性、つまりパス遮蔽による伝搬パスパラメータの時間変動特性を考慮したチャネルシミュレータとしては、特許文献1に開示されたものが知られている。図10にその従来のチャネルシミュレータ9の機能構成を示してその動作を簡単に説明する。なお、チャネルシミュレータ9は特許文献1において時変マルチパス生成装置9と表記されている。
【0004】
チャネルシミュレータ9は、入力デバイス1、パラメータ入力・制御部2、データ記憶部3、乱数生成部4、パス生成部5、時変関数生成部6、出力データバッファメモリ7、出力インターフェース部8を備える。データ記憶部3には、パス生成パラメータファイル、時変関数ファイル、アンテナの指向特性パターンファイル、到来波方向密度関数ファイル、分布関数ファイルが保存される。パス生成パラメータとは、例えば遮蔽時間間隔の平均値と標準偏差、遮蔽振幅の平均値と標準偏差、などの値である。また、時変関数ファイルには、パラメータ入力・制御部2から入力されるパスの振幅及び位相に対する複数の遮蔽変動の関数が格納されている。また、到来波方向密度関数ファイルには、到来波方向に対するパスの生起確率を規定した確率密度関数が複数個格納されている。このようにデータ記憶部3の各ファイルに記憶されたデータは予め用意した統計モデルである。
【0005】
パス生成部5は、パラメータ入力・制御部2からの生成要求により、パス生成を行う。その方法は、伝搬パス数分の伝搬パスパラメータを、データ記憶部3に記憶されている各パラメータを基準として、乱数生成部4が生成する乱数に基づいて変動させて生成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−254250号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のチャネルシミュレータ9では、シミュレーションに用いる伝搬パスパラメータが統計モデルであった。よって、実際の現場における固有の電波状況を模擬した移動局の評価を行えない課題がある。
【0008】
この発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、実際の通信環境において測定した電波伝搬特性を基に移動局を評価する伝搬パラメータを生成する時空間チャネルシミュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の時空間チャネルシミュレータは、測定部と再生部を具備する。測定部は、移動体通信システムにおける基地局と移動局との間の電波伝搬特性と、自身の移動ベクトルとを測定する。再生部は、電波伝搬特性と移動ベクトルと入力模擬基地局信号を入力として、電波伝搬特性から抽出した伝搬パラメータを用いて実環境を模擬した伝搬パスの伝搬特性を生成する。
【発明の効果】
【0010】
この発明の時空間チャネルシミュレータによれば、測定部が実際の現場で電波伝搬特性を測定し、再生部がその実測した電波伝搬特性から移動局を評価する伝搬パラメータを生成するので、より実際に近い環境での移動局の評価を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の時空間チャネルシミュレータ100の機能構成例を示す図。
【図2】時空間チャネルシミュレータ100が使用される一例の状況を概念的に示す図。
【図3】時空間チャネルシミュレータ100のより具体的な機能構成例を示す図。
【図4】時空間チャネルシミュレータ100の動作フローを示す図。
【図5】基地局50と移動局51との間に定義できる伝搬パラメータを概念的に示す図。
【図6】時空間チャネルシミュレータ100の各変換部のより具体的な機能構成例を示す図。
【図7】この発明の時空間チャネルシミュレータ700の機能構成例を示す図。
【図8】時空間チャネルシミュレータ700の使用状況の一例を示す図。
【図9】パス縮退行列変換部71の動作を概念的に示す図。
【図10】従来のチャネルシミュレータ9の機能構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。複数の図面中同一のものには同じ参照符号を付し、説明は繰り返さない。
【実施例1】
【0013】
図1にこの発明の時空間チャネルシミュレータ100の機能構成例を示す。時空間チャネルシミュレータ100は、移動体通信システムにおける基地局と移動局との間の電波伝搬特性Xと、自身の移動ベクトルdを測定する測定部10と、電波伝搬特性Xと、移動ベクトルdと、入力模擬基地局信号Xを入力として、電波伝搬特性Xから抽出した伝搬パラメータを用いて実環境を模擬した伝搬パスの伝搬特性を生成する再生部20と、を具備する。
【0014】
測定部10は、例えばマルチアンテナ技術に基づく複数のアンテナから入力される基地局からの無線信号を受信して、基地局と測定部10との間の電波伝搬特性Xを測定すると共に自身の移動ベクトルdを測定する。移動ベクトルdは、例えば測定部10内に設けられたGPS受信器で受信した座標情報から入手しても良いし、測定部10内にジャイロや加速度計を備え自律的に移動ベクトルdを生成しても良い。
【0015】
このように時空間チャネルシミュレータ100の再生部20は、電波伝搬特性Xと移動ベクトルdと入力模擬基地局信号Xを入力として、電波伝搬特性Xから抽出した伝搬パラメータを用いて実環境を模擬した伝搬パスの伝搬特性を生成する。よって、より実際に近い環境での移動局の評価を可能にする。
【0016】
図2に、時空間チャネルシミュレータ100が使用される一例の状況を概念的に示す。測定車200は、時空間チャネルシミュレータ100を積んで、移動局を評価したい目的の環境である例えば都市部のビルが林立する道路を走行する。時空間チャネルシミュレータ100は、測定車200が走行中、複数の基地局から放射され、ビルや地形等の障害物によって反射・回折し、マルチパスが発生している状態の電波を受信する。
【0017】
測定部10は、そのパルチパスが発生している状態の電波から電波伝搬特性Xと測定車200の移動ベクトルdとを測定する。再生部20は、その電波伝搬特性Xと移動ベクトルdとから伝搬パラメータを抽出し、複数の伝搬パスの伝搬特性を生成する。測定車200に評価対象の移動局を予め用意しておけば、再生部20に入力模擬基地局信号Xを入力することで、その場で移動局を評価することも可能である。この時空間チャネルシミュレータ100を用いれば、実環境の電波状況を定量的に把握した上で移動局のスピーディーな評価を可能にする。
【0018】
また、時空間チャネルシミュレータ100を測定車200から降ろし、実験室内において入力模擬基地局信号Xを入力することで、より実際に近い環境での移動局の評価を可能にする。このように、時空間チャネルシミュレータ100は、移動局の評価を機動的で、且つ、正確なものにする優れた効果を奏する。なお、必ずしも時空間チャネルシミュレータ100を測定車200から移動させる必要はない。実験室に同じ時空間チャネルシミュレータ100を用意し、車載した時空間チャネルシミュレータ100から伝搬パラメータと移動ベクトルdとを記録媒体を介して移動させても良い。
【0019】
図3により具体的な機能構成例を示して更に詳しく時空間チャネルシミュレータ100の動作を説明する。図4にその動作フローを示す。測定部10は、受信部11と位置・移動方向測定部12を備える。再生部20は、伝搬パラメータ抽出部21と、基地局信号変換部24と、伝搬モード変換部25と、移動局信号変換部26と、制御部27とを備える。
【0020】
受信部11は電波伝搬特性を再生部20に出力する(ステップS11)。位置・移動方向測定部12は、移動ベクトルdを再生部20に出力する(ステップS12)。伝搬パラメータ抽出部21は、電波伝搬特性から伝搬パスの数Lと、それら伝搬パスLの出射角度φと、到来角度ψと、複素振幅αと、遅延時間τとを伝搬パラメータとして抽出する(ステップS21)。
【0021】
ここで図5を参照して各伝搬パラメータを説明する。図5は、基地局50と移動局51との間に定義できる伝搬パラメータを概念的に示す図である。伝搬パス数Lは、図5中に示す直線矢印の数である。出射角度φは、基地局アンテナの中心を原点とする座標系における角度である。複素振幅αと遅延時間τは、各伝搬パス毎の値である。到来角度ψは、移動局アンテナの中心を原点とする座標系における角度である。
これら伝搬パラメータによって、各伝搬パスLのチャネル応答h(n,m)(i=1,…,L)が式(1)で表せる。
【0022】
【数1】

【0023】
ここでφ ̄(式及び図中の表記が正しい)は、出射方向の単位ベクトル、ψ ̄は、到来方向の単位ベクトルである。mは基地局50のアンテナのM本の中の特定の一本を表す。nは移動局のアンテナのN本の中の特定の一本を表す。kは波数(2π/波長)である。dは移動ベクトル(大きさが距離、向きが移動方向に相当)である。
【0024】
L本分の伝搬パスを考慮したチャネル応答は、各伝搬パスのチャネル応答h(n,m)を要素とする行列Hとして表せ、その行列Hは式(2)に示す3つのチャネル応答行列に分割することができる。
【0025】
【数2】

【0026】
ここで、Hは、移動局側の伝搬パスの位相関係を表すN行×L列の移動局側ステアリン
グ行列である。行列の各要素は式(3)で計算され、移動局側の伝搬パスの位相関係を表
すものである。
【0027】
【数3】

【0028】
は、複素振幅α、遅延時間τ等から成る伝搬パス定数βの対角行列であり、各要素は式(4)で計算される。
【0029】
【数4】

【0030】
は、基地局アンテナの数M行×伝搬パス数L列の基地局側ステアリング行列であり、式(5)で各要素が計算される。Hは基地局側の伝搬パスの位相関係を表す。
【0031】
【数5】

【0032】
再生部20は、これらのチャネル応答行列H,H,Hを用いて複数の伝搬パスで構成される伝搬特性を生成し、移動局評価信号Yを出力するものである。基地局信号変換部24は、伝搬パス数Lと、伝搬パスの出射角度φと、基地局アンテナの位置情報Sと、入力模擬基地局信号Xとを入力として入力模擬基地局信号Xを、基地局アンテナ位置情報Sに対応させた模擬基地局信号Hに変換する(ステップS24)。
【0033】
伝搬モード変換部25は、模擬基地局信号Hと、伝搬パス数Lと、移動ベクトルdと伝搬パスの遅延時間τと、伝搬パスの複素振幅αと、伝搬パスの到来角度ψとを入力として、模擬基地局信号Hを自身の移動速度・方向を考慮した伝搬パス信号Hに変換する(ステップS25)。
【0034】
移動局信号変換部26は、伝搬パス信号Hと、移動局のアンテナ位置情報uと、伝搬パス数Lと、伝搬パスの到来角度ψを入力として、伝搬パス信号Hを、移動局を有線接続で評価する移動局評価信号Yに変換して出力する(ステップS26)。
【0035】
各変換部24〜26は、各行列生成部240〜260と、各行列乗算部241〜261の構成に分解できる。図6にその構成例を示す。基地局信号変換部24は、基地局側ステアリング行列生成部240と、基地局側ステアリング行列乗算部241とを含む。基地局側ステアリング行列生成部240は、伝搬パス数Lと、伝搬パスLの出射角度φを入力として式(2)に示した基地局側ステアリング行列Hを生成する(ステップS240)。基地局側ステアリング行列乗算部241は、入力模擬基地局信号Xに基地局側ステアリング行列Hを乗じて模擬基地局信号Hに変換する(ステップS241)。
【0036】
伝搬モード変換部25は、伝搬モード行列生成部250と、伝搬モード行列乗算部251とを含む。伝搬モード行列生成部250は、伝搬パス数Lと、移動ベクトルdと、伝搬パスの遅延時間τと、伝搬パスの複素振幅αと、伝搬パスの到来角度ψとを入力として式(2)に示した伝搬モード行列Hを生成する(ステップS250)。伝搬モード行列乗算部251は、模擬基地局信号Hに伝搬モード行列Hを乗じて伝搬パス信号Hを生成する(ステップS251)。
【0037】
移動局信号変換部26は、移動局側ステアリング行列生成部260と、移動局側ステアリング行列乗算部261とを含む。移動局側ステアリング行列生成部260は、伝搬パス数Lと、伝搬パスの到来角度ψと、移動局のアンテナ位置情報uとを入力として式(2)に示した移動局側ステアリング行列Hを生成する(ステップS260)。移動局側ステアリング行列乗算部261は、伝搬パス信号Hに移動局側ステアリング行列Hを乗じて移動局を有線接続で評価する移動局評価信号Yを生成する(ステップS261)。
【0038】
以上述べたように時空間チャネルシミュレータ100は、実際に測定した基地局と移動局との間の電波伝搬特性から、伝搬パラメータを求め、その伝搬パラメータを用いて移動局の評価信号を生成するので、より実際に近い環境での移動局の評価を可能にする。また、時空間チャネルシミュレータ100は、複数存在する伝搬パスのチャネル応答h(n,m)を、3つのチャネル応答行列に分割する考えを導入している。この考えによれば、基地局側と移動局側の伝搬パス毎の条件設定を容易に行うことを可能にする。これは、実際の電波伝搬特性を基にしてより細かな移動局の評価が、容易に行えることを意味する。
【0039】
なお、各変換部24〜26は、電波伝搬特性から抽出した伝搬パラメータをそのまま使う例で説明を行ったが、伝搬パラメータを加工して用いても良い。その構成を、図3〜図6中に破線で示す。モデルパラメータ生成部22は、例えば伝搬パラメータ抽出部21が抽出した伝搬パラメータの平均と分散を計算するものである。乱数生成部23は、例えば正規分布或いは矩形分布に従った乱数を生成するものである。モデルパラメータ生成部22は、その乱数に応じて伝搬パラメータを変動させて出力する。その変動させて出力する周期は、制御部27によって制御される。このように、実際に測定された各伝搬パラメータを時間で変動させ、時間経過で変動する時変パス変動の移動局評価信号Yを出力するようにしても良い。
【0040】
また、移動局を無線接続で評価することも可能である。次に実施例2として移動局を無線接続で評価するようにした時空間チャネルシミュレータ700の動作を説明する。
【実施例2】
【0041】
図7に実施例2の時空間チャネルシミュレータ700の機能構成例を示す。時空間チャネルシミュレータ700は、移動局を無線接続で評価するようにしたものであり、実施例1の時空間チャネルシミュレータ100の移動局信号変換部26が、パス縮退行列変換部71に置き換わり、複数個の散乱素子80(図8を参照)を備える点が異なる。なお、パス縮退行列変換部71と散乱素子80との間に設けられる増幅器やフィルタ等は省略している。
【0042】
図8に時空間チャネルシミュレータ700の使用状況の一例を示す。散乱素子80は複数個あり、各散乱素子80にパス縮退行列変換部71の出力信号がそれぞれ接続される。この例では散乱素子80の数が12個である。その12個の散乱素子80の中央に、例えば、被評価用の移動局51と、必要に応じて人体ファントム82が配置される。
【0043】
パス縮退行列変換部71は、伝搬モード変換部25が出力する伝搬パス信号Hと、伝搬パラメータ抽出部21が出力する伝搬パス数Lと、伝搬パスの到来角度ψと、散乱素子数情報Kとを入力として伝搬パス信号Hを、移動局を無線接続で評価するパス縮退信号に変換する。
【0044】
パス縮退行列変換部71は、伝搬パス信号HLTと伝搬パス数Lと散乱素子数Kを入力としてパス縮退行列Hを生成するパス縮退行列生成部711と、伝搬パス信号Hにパス縮退行列Hを乗じて移動局を無線接続で評価するパス縮退信号Y′を生成するパス縮退行列乗算部712とを含む。
【0045】
図9にパス縮退行列変換部71の動作を概念的に示す。パス縮退行列変換部71は、伝搬パス信号Hを散乱素子80の数に集約する動作を行う。図9では、伝搬パス数Lを散乱素子数Kで除した値L/K=4の例を示している。つまり、48個の伝搬パスを12個に集約する様子を概念的に示している。
パス縮退行列Hは、式(6)で与えられる。
【0046】
【数6】

【0047】
行列μは、L/K個の数の1が並ぶ行列であり、図9に示した例では1が4つ並んだものである。
このように時空間チャネルシミュレータ700は、実際の現場で電波伝搬特性に基づいた伝搬パラメータを用いて無線接続での移動局の評価を可能にする。その結果、人体の影響等を含めたより詳細なシミュレーションを可能にする。
【0048】
この発明の装置は上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱し
ない範囲で適宜変更が可能である。例えば、伝搬パラメータ抽出部21で抽出した伝搬パ
ラメータと移動ベクトルdとを記録する記録部を備えても良い。その記録部から逐次デー
タを読み出すことで異なる環境における移動局の評価を、繰り返しておこなうことが可能
になる。
【0049】
また、上記方法及び装置において説明した処理は、記載の順に従って時系列に実行され
るのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されるとしてもよい。また、上記装置における処理手段をコンピュータによって実現しても良い。その場合、各部が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、各装置における処理手段がコンピュータ上で実現される。また、これらの処理手段の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体通信システムにおける基地局と移動局との間の電波伝搬特性と、自身の移動ベクトルとを測定する測定部と、
上記電波伝搬特性と移動ベクトルと入力模擬基地局信号を入力として、上記電波伝搬特性から抽出した伝搬パラメータを用いて実環境を模擬した伝搬パスの伝搬特性を生成する再生部と、
を具備する時空間チャネルシミュレータ。
【請求項2】
請求項1に記載の時空間チャネルシミュレータにおいて、
上記再生部は、上記電波伝搬特性を入力として伝搬パスの数と、それら伝搬パスの出射角度と、到来角度と、複素振幅と、遅延時間と、を上記伝搬パスの伝搬パラメータとして抽出する伝搬パラメータ抽出部を、
備えることを特徴とする時空間チャネルシミュレータ。
【請求項3】
請求項2に記載の時空間チャネルシミュレータにおいて、
上記入力模擬基地局信号と上記伝搬パス数と上記伝搬パスの出射角度と基地局のアンテナ位置情報とを入力として上記入力模擬基地局信号を、基地局アンテナ位置情報に対応させた模擬基地局信号に変換する基地局信号変換部と、
上記模擬基地局信号と上記伝搬パス数と上記移動ベクトルと上記伝搬パスの遅延時間と上記伝搬パスの複素振幅と上記伝搬パスの到来角度を入力として上記模擬基地局信号を、自身の移動速度・方向を考慮した伝搬パス信号に変換する伝搬モード変換部と、
上記伝搬パス信号と移動局のアンテナ位置情報と上記伝搬パス数と上記伝搬パスの到来角度を入力として上記伝搬パス信号を、移動局を有線接続で評価する移動局評価信号に変換する移動局信号変換部と、
を更に備えることを特徴とする時空間チャネルシミュレータ。
【請求項4】
請求項3に記載の時空間チャネルシミュレータにおいて、
上記基地局信号変換部は、上記伝搬パス数と上記伝搬パスの出射角度とを入力として基地局側ステアリング行列を生成する基地局側ステアリング行列生成部と、上記入力模擬基地局信号に上記基地局側ステアリング行列を乗じて模擬基地局信号を生成する基地局側ステアリング行列乗算部とを含み、
上記伝搬モード変換部は、上記伝搬パス数と上記移動ベクトルと上記伝搬パスの遅延時間と上記伝搬パスの複素振幅と上記伝搬パスの到来角度を入力として伝搬モード行列を生成する伝搬モード行列生成部と、上記模擬基地局信号に上記伝搬モード行列を乗じて伝搬パス信号を生成する伝搬モード行列乗算部とを含み、
上記移動局信号変換部は、上記伝搬パス信号と移動局のアンテナ位置情報と上記伝搬パス数と上記伝搬パスの到来角度を入力として移動局側ステアリング行列を生成する移動局側ステアリング行列生成部と、上記伝搬パス信号に上記移動局側ステアリング行列を乗じて移動局を有線接続で評価する移動局評価信号を生成する移動局側ステアリング行列乗算部とを含む、
ことを特徴とする時空間チャネルシミュレータ。
【請求項5】
請求項2に記載の時空間チャネルシミュレータにおいて、
上記入力模擬基地局信号と上記伝搬パス数と上記伝搬パスの出射角度と基地局のアンテナ位置情報とを入力として上記入力模擬基地局信号を、基地局アンテナ位置情報に対応させた模擬基地局信号に変換する基地局信号変換部と、
上記模擬基地局信号と上記伝搬パス数と上記移動ベクトルと上記伝搬パスの遅延時間と上記伝搬パスの複素振幅と上記伝搬パスの到来角度を入力として上記模擬基地局信号を、自身の移動速度・方向を考慮した伝搬パス信号に変換する伝搬モード変換部と、
上記伝搬パス信号と上記伝搬パス数と散乱素子数とを入力として上記伝搬パス信号を、移動局を無線接続で評価するパス縮退信号に変換するパス縮退信号変換部と、
を更に備えることを特徴とする時空間チャネルシミュレータ。
【請求項6】
請求項5に記載の時空間チャネルシミュレータにおいて、
上記基地局信号変換部は、上記伝搬パス数と上記伝搬パスの出射角度とを入力として基地局側ステアリング行列を生成する基地局側ステアリング行列生成部と、上記入力模擬基地局信号に上記基地局側ステアリング行列を乗じて模擬基地局信号を生成する基地局側ステアリング行列乗算部とを含み、
上記伝搬モード変換部は、上記伝搬パス数と上記移動ベクトルと上記伝搬パスの遅延時間と上記伝搬パスの複素振幅と上記伝搬パスの到来角度を入力として伝搬モード行列を生成する伝搬モード行列生成部と、上記模擬基地局信号に上記伝搬モード行列を乗じて伝搬パス信号を生成する伝搬モード行列乗算部とを含み、
上記パス縮退信号変換部は、上記伝搬パス信号と上記伝搬パス数と上記散乱素子数を入力としてパス縮退行列を生成するパス縮退行列生成部と、上記伝搬パス信号に上記パス縮退行列を乗じて移動局を無線接続で評価するパス縮退信号を生成するパス縮退行列乗算部とを含む、
ことを特徴とする時空間チャネルシミュレータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−232976(P2010−232976A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78404(P2009−78404)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、総務省、「同一周波数帯における複数無線システム間無線リソース制御技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】