説明

暖房便座とそれを搭載したトイレ装置

【課題】暖房便座において、省エネルギーでかつ安全な制御を行うことを課題とする。
【解決手段】着座部を有する便座22と、前記着座部を瞬時に加熱する発熱体29と、前記発熱体29に直列に接続し、かつ前記発熱体に対向して設けたバイメタルを有する非復帰型サーモスタットと、前記発熱体に直列に接続し、かつ前記発熱体に対向して設けたバイメタルを有する復帰型サーモスタットとを備え、前記非復帰型サーモスタットは、前記復帰型サーモスタットよりも高い温度で遮断動作することを特徴とした暖房便座。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房機能を有する便座に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の暖房便座では、図11に示すように内部に空洞部1を形成し、便器上に載せて使用する輪状の便座2の着座部3を透明ポリプロピレン樹脂で構成し、空洞部1に便座2の輪状の全体に沿って設けたランプヒーター4からの輻射熱を着座部3にすばやく伝えて使用者が着座する面である採暖面をすばやく昇温させ、一方、ランプヒーター4に直列に接続したサーモスタット5により便座2の温度過昇を防止するという構成であった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、図11の構成ではサーモスタット5を設置して温度過昇に対する安全が図られているが、このサーモスタット5についての詳しい記述が無く、一般的に用いられているバイメタル式のサーモスタットを用いた場合は、図12に示すようにランプヒーター4の輻射熱を受ける金属製のキャップである感熱面6とバイメタル7間は僅かな間隙dが形成されているため、感熱面6からバイメタル7への熱伝達は感熱面6からの輻射と空気を介した熱伝導になるために、バイメタル7の温度上昇に時間がかかり、この応答遅れから温度過昇の検知遅れにより安全面が危ぶまれることが考えられる。
【0004】
すなわち、この種の暖房便座において、ランプヒーター4は省電力のため使用者の便座への着座直前に通電して着座するまでの短時間に、すばやく便座を適温にしなければならないので、瞬間的に温度上昇する形態のランプヒーターを使用している。従って、このようなランプヒーターの通電回路に、上記した形態のサーモスタットを接続して温度過昇防止手段として使用した場合には、通常の暖房器具、例えば電気ヒーターでは殆ど問題にならないサーモスタットの応答遅れでも、お尻を直接に乗せ、かつ瞬間的に温度上昇していくランプヒーターを使用した暖房便座では、即座に適温を越えて熱くなり使用者に不快感を与え、更には不快感を越えた熱さになれば使用者が便座から立ち上がらなければならなくなる事態も考えられる。
【特許文献1】特開2000−210230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の技術の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、輻射型発熱体の温度変化を速やかに検知し、安全で快適に使用できる暖房便座を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明は、着座部を有する便座と、前記着座部を瞬時に加熱する発熱体と、前記発熱体に直列に接続し、かつ前記発熱体に対向して設けたバイメタルを有する非復帰型サーモスタットと、前記発熱体に直列に接続し、かつ前記発熱体に対向して設けたバイメタルを有する復帰型サーモスタットとを備え、前記非復帰型サーモスタットは、前記復帰型サーモスタットよりも高い温度で遮断動作することを特徴とした暖房便座である。
【0007】
この構成によって、瞬時加熱する暖房便座において、復帰型サーモスタットが遮断作動する温度よりも高い温度で非復帰型サーモスタット遮断作動するため、瞬時加熱時の温度変化を速やかに検知でき応答遅れのない動作が可能であるとともに、温度制御に不具合が生じ、便座温度が徐々に上昇した場合にも熱伝導型サーモスタットで遮断することにより
安全で快適に暖房便座を使用できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の暖房便座は、発熱体に対向して設けた復帰型サーモスタットと非復帰型のサーモスタットにより便座の急激な温度異常も、緩慢な温度異常も検知でき、便座を安全に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、着座部を有する便座と、前記着座部を瞬時に加熱する発熱体と、前記発熱体に直列に接続し、かつ前記発熱体に対向して設けたバイメタルを有する非復帰型サーモスタットと、前記発熱体に直列に接続し、かつ前記発熱体に対向して設けたバイメタルを有する復帰型サーモスタットとを備え、前記非復帰型サーモスタットは、前記復帰型サーモスタットよりも高い温度で遮断動作することを特徴とした暖房便座である。この構成により、瞬時加熱する発熱体を備えた暖房便座において、復帰型サーモスタットと遮断動作温度が前記復帰型サーモスタットより高い非復帰型サーモスタットとで十分な応答速度で、多段階の安全制御することができる。
【0010】
第2の発明は、便座の温度を検知する温度検知手段と、制御部とを備え、前記制御部は前記温度検知手段の信号により発熱体の通電を制御するものである。この構成により、第一段階は温度検知手段による温度コントロール、第二段階は復帰型サーモスタットのオフによる発熱体の通電回路の遮断(ただし、温度低下により回路は復帰)、第三段階は非復帰型サーモスタットによる発熱体の通電回路の遮断(回路の復帰は不能)と、 多段階の安全機能を設定することにより長期間、安全かつ快適に使用することができる。
【0011】
第3の発明は、人体の入室を検知する人体検知手段を備え、前記人体検知手段で人体を検知すると発熱体に電力を投入し、人体が便座に着座するまでに着座部を適温に加温するようにしたものである。この構成により便座の瞬時加熱を行うので、省電力化が可能となる。
【0012】
第4の発明は、上記の第1〜第3の発明のいずれか一つの発明に記載の暖房便座を便器に備えたトイレ装置で、上記した各発明の作用効果を期待できるトイレ装置が得られ、快適に使用することができる。
【0013】
本発明の目的は、第1の発明から第4の発明を実施の形態の要部とすることにより達成できるので、各請求項に対応する実施の形態の詳細を、以下に図面を参照しながら説明し、本発明を実施するための最良の形態の説明とする。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、本実施の形態の説明において、同一構成並びに作用効果を奏するところには同一符号を付して重複した説明を行わないものとする。
【0014】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における暖房便座の要部を断面した概略構成図で、図2は同暖房便座を搭載したトイレ装置の斜視図で、図3は同暖房便座の着座部を取り外して示した平面図で、図4は同暖房便座の分解斜視図、図5は同暖房便座の着座部の要部断面図である。
【0015】
図1から図5において、用便後の肛門およびビデを洗う温水洗浄機能付きの暖房便座は、トイレ装置の便器20の後端部に横長の本体21が取り付けられており、この本体21内には温水洗浄機能の一部が内装され、かつ便器20上に載せられた輪状の便座22および便蓋23が回動自在に設けられている。また、本体21の袖部にはトイレ室の人体の有無を検知する人体検知センサー25が内蔵されている。便座22は、図1に示すように合
成樹脂製の下枠体26の上部にアルミニウム製の着座部24をシール材を介して固定結合して形成し、その内部には水滴等の浸入を阻止できる防滴シールされた空洞部27を有する構造となっている。
【0016】
空洞部27の内部には、トイレ装置を使用する使用者が腰掛ける便座22の着座部24に対向して、アルミ板を鏡面仕上げした輻射光反射板28(反射体)と、着座部24の両側において複数の輻射型発熱体である前ランプヒーター29、後ランプヒーター29b(以降、区別する必要のないときはランプヒーター29と示す)とが設けられている。輻射光反射板28は、図1に示すように、その内外端部の全周に上方への折り曲げ部28aを有しており、その折り曲げ部28aによりランプヒーター29からの輻射光が偏向されるので、ランプヒーター29から離れている着座部24の外周縁部および内周縁部の輻射密度を上げるように作用し、着座部24への輻射熱分布の均一化を図っている。このランプヒーター29の近傍には、ランプヒーター29と電気的に直列接続された輻射応答型サーモスタット30が設けられ、万一の不安全事態に対して便座22の着座部24の温度過昇を防止するよう作用する。なお、輻射光反射板28は、軽量にするためにアルミ板にしたが、ステンレス板やメッキ鋼板などを用いてもよい。
【0017】
ランプヒーター29は、ガラス管32の内部にタングステンからなるフィラメント33およびアルゴンなどの不活性ガス34に微量のハロゲンを封入して構成されており、フィラメント33の発熱に伴ってハロゲン化タングステンを形成するハロゲンサイクル反応を繰り返すことにより、フィラメント33の消耗を防止するよう作用している。この作用により熱容量の非常に小さいフィラメント33を熱源とすることができ、輻射エネルギーの極めて急峻な立ち上がりを行わせることができる。つまり、ランプヒーター29は、使用者がトイレ室に入室し、衣服を下ろし、お尻を便座22の着座部24に着座するまでの例えば、数秒間というきわめて短時間に便座22の着座部24を適温まで高速に昇温させることができる輻射型発熱体である。なお、ランプヒーター29は、要求される特性の度合いにより必ずしもハロゲンランプヒータ−である必要はない。
【0018】
このランプヒーター29は、板バネ材で形成したランプヒーター固定具36により輻射光反射板28に固定され、輻射光反射板28は樹脂製の下枠体26のボス37にビスで固定されている。
【0019】
図5に、便座22を構成するアルミニウム製の着座部24の一部を拡大断面で示した。図5において、便座22の空洞部27側、すなわちランプヒーター29の輻射光が照射される内側表面はその輻射光をよく吸収しやすい黒色塗装した輻射吸収層42を形成し、外側すなわち着座する側は、防食効果のあるアルマイト層41およびその上に好みの外観効果のために塗装した表面化粧層43が形成してある。なお、アルマイト層41および塗装した表面化粧層43は、必ずしも両方ある必要はなく、アルマイト層41または塗装した表面化粧層43のどちらか一つだけでも、相当の耐薬品性等の防食効果と光沢や色合い等のデザイン性を付加することができる。ただし、アルマイト層41および塗装した表面化粧層43の両方有することで、より高い防食効果とたとえば除菌材入りの塗料を用いることで除菌効果も付加することができる。また、輻射吸収層42の色について、各種色について確認した結果、黒色が最も吸熱効率が良く、着座部24の昇温速度を早くすることができるという結果が得られた。なお、最高速度にこだわらず、実用になればよいという観点であれば、灰色や赤色、青色などでも、昇温はできる。黒色についても、必ずしも塗装に限る必要は無く、染色などの表面処理でもよい。アルミの場合ベーマイト処理なども実用になる。また、図5の着座部24の外側表面に施した表面化粧層43は染色処理にすることもできるが、少なくとも着座部表面に塗装を施せば、防食効果だけでなくアルミなどの金属便座であっても見た感じ冷たい感じを払拭でき、たとえば、真珠のようなパール塗装等によって、やわらかいイメージや高級なイメージを演出することができる。
【0020】
便座22の着座部24に金属しかもアルミニウムのプレス(絞り)加工品を用いたことにより、熱伝導率が約200W・mKと樹脂の約0.1〜1W・mKに較べて桁違いに高いため、ランプヒーター29の輻射光を受け輻射吸収層42が昇温されると同時に、すばやく着座部24の外側表面つまり表面化粧層43まで熱伝達することができる。しかも、熱伝導率の高いアルミニウムであるため、温度分布をより均一にする均熱効果が得られる。また、アルミニウムのプレス(絞り)加工により加工硬化により板厚を薄くしても必要な強度を確保することができる。たとえば、樹脂の場合は強度の面から3mm程度の肉厚が必要なのに対し、アルミ板の絞り加工品であれば半分の1.5mm以下で十分である。薄くすればするほど、熱容量を少なくできるため、昇温に要する熱量および時間を少なくすることができる。実験の結果、強度と昇温時間の面から、アルミニウムの板厚は0.8〜1.2mmが好ましいという結論を得た。
【0021】
また便座22を構成する下枠体26には、その内面に輻射光反射板28が取り付けられ、その輻射光反射板28に前ランプヒーター29および後ランプヒーター29bと直列接続した輻射応答型サーモスタット30、熱伝導型サーモスタット31が取り付けられている。また、下枠体26の上部にはアルミ製の着座部24が取り付けられ、そのアルミの着座部24の温度を検知するために着座部24の内側表面に便座温度検知手段であるサーミスタ44が取り付けられている。また便座22は、その回動軸45に電極46が形成され、本体21の軸受け部(図示せず)とともに便座位置検知手段47を構成し、便座22が起立状態にあるか、着座して使用できる便器20上に略水平の使用位置にあるかを検出するようになっている。
【0022】
本体21には、室温検知手段としての室温サーミスタ48の検知信号を取り込んでランプヒーター29の温度制御を行い、かつ便座22のランプヒーター29に通電することにより昇温を開始した時点からの経過時間をカウントするタイマー部49を有するマイクロコンピュータを主体とする制御部50が設けられている。そして、制御部50は人の入室を検知する人体検知センサー25や着座検知手段38と便座位置検知手段47の信号を取り込んでランプヒーター29への通電の開始と停止の制御と、サーミスタ44、室温サーミスタ48からの信号を取り込んで採暖面である着座部24の温度が適温である所定の温度になるようランプヒーター29の温度制御が行えるようになっている。
【0023】
図6において、輻射応答型サーモスタット30はバイメタル51がランプヒーター29の輻射光を受光するように空洞部27内に露出させた構成でありランプヒーター29にバイメタル51を対向させて設置している。また、バイメタル51の受光表面には輻射熱吸収材52として耐熱性の黒色塗料を塗布している。そして、輻射応答型サーモスタット30は輻射熱吸収材52により輻射型発熱体からバイメタル51に向けて輻射された熱を効率よく吸収し、より速やかにバイメタルの温度を上げるように構成している。また、輻射応答型サーモスタット30は、ランプヒーター29とバイメタル51との間の距離bより、ランプヒーター29と便座22の着座部24との間の距離aが大きくなるように設定されている。この距離aは、本実施の形態では着座部24の内側表面に設けられた受光面である輻射吸収層42までの距離を示す。
【0024】
図7において熱伝導型サーモスタット31はバイメタル51がランプヒーター29の輻射光を直接受光しないようにバイメタル51の前面にキャップ54を有しており、ランプヒーター29に対向して設定されている。キャップ54は熱伝導性の良好な金属、ここではアルミ合金で形成しており、その表面に黒色塗料からなる輻射熱吸収材が設けられている。
【0025】
輻射応答型サーモスタット30および熱伝導型サーモスタット31は2本のランプヒー
ター29、29bに直列に接続されている。
【0026】
上記実施の形態において、使用者がトイレに入室した場合、人体検知センサー25が入室を検知し、その信号が制御部50に送られる。このとき、便座位置検知手段47の信号により便座22が略水平の使用位置にあるのを確認すると、制御部50はランプヒーター29に通電を開始する。この初期通電により投入エネルギーは瞬時に輻射エネルギーに変換され、フィラメント33からガラス管32および輻射光反射板28を経て便座22の着座部24の方向に放射される。さらに、ランプヒーター29の輻射エネルギーは便座22の着座部24の内側表面に設けた輻射吸収層42および着座部24を昇温する。このように本実施の形態においては、使用者がトイレに入室すると、ランプヒーター29に通電し、便座22の着座部24の採暖面をほぼ瞬時に加温することができ、かつ制御部50の故障などによる万一の不安全事態に対しても、ランプヒーター29の輻射光をバイメタル51が受光する高速応答の輻射応答型サーモスタット30によりランプヒーター29の通電を遮断できるので、従来一般的に使用されている暖房便座のように常時通電保温して放熱ロスが大きいものと違って、放熱ロスがほとんどなく極めて省エネ型でかつ安全な暖房便座を実現するものとなる。なお、図3および図4で示したヒンジカバー56の部分は、従来から一般的に使用されている樹脂の暖房便座(図示せず)の場合は着座部24と一体に成形されている。上記実施の形態においては、図3および図4で示す着座部24は金属(アルミ材)でヒンジカバー56はプロピレン樹脂で成形してある。なぜならば、ランプヒーター29で加熱する箇所を必要最小限にして、加熱すべき熱容量を小さくすることにより、より少ない電力でさらに速く瞬間的に着座部24を昇温することができるようになり、さらに省電力にできる。つまり、着座部24のアルミ材は熱伝導率が高く熱伝導し温度は均一になるように作用するが、ヒンジカバー56は樹脂で熱伝導率が低いため着座部24の熱はヒンジカバー56にはほとんど奪われない。このように便座22の上側の部材を熱伝導率の異なる複数の部材で構成することで、暖める必要がない部分に余分に熱を奪われることを抑制でき、熱のロスを少なくすることができる。以上のように、便座22の上側構成部材である着座部24およびヒンジカバー56と下枠体26で構成され、内部に空洞部27を有する便座22と、空洞部27に設けた輻射型発熱体29と、その輻射型発熱体29に対向して下枠体26側に設けた反射体28とを備え、少なくとも上枠体の着座部24は金属(アルミ材)からなり、上枠体の着座部24内面に輻射吸収層42を設けた構成により、より少ない電力でさらに速く瞬間的に着座部24を昇温することができる省エネの瞬間暖房便座を実現することができる。
【0027】
また、制御部50は、通電開始時のサーミスタ44および室温サーミスタ48の信号をもとに、両者の温度差やそれぞれの温度から演算を行い、あらかじめ設定・記憶されている初期通電の通電制限時間の最適値を選択し、タイマー部49でカウントしている経過時間が通電制限時間に到達すると通電量を低減または零にし、その後サーミスタ44の信号をもとに便座22の着座部24が適温になるよう通電量を制御する。
【0028】
これにより、サーミスタ44は実際に使用者が触れる着座部24付近の温度を検知し、制御部50は精度良く適温まで昇温・維持するので、便座22の使用が快適であり、さらにサーミスタ44および室温サーミスタ48の信号をもとに負荷量に合わせて輻射エネルギーの投入量を制御するので、より精度良く安全に適温まで加熱することができる。
【0029】
また、初期通電時間制御を優先的に行うことで通電制限時間後は通電量を低減し昇温速度を減ずるので、たとえ便座温度検知手段の応答速度が遅くても安全に便座を加温することができ、また安価な便座温度検知手段を使用することもできる。通常、一般的なヒーターでは、印加電圧を低減させて温度を制御するものが多いが、ランプヒーター29はフィラメント33の発熱に伴ってハロゲン化タングステンを形成するハロゲンサイクル反応を繰り返すことにより、フィラメント33の消耗を防止しているため、ガラス管の温度が2
00℃以下になるとハロゲンサイクルが不調となる。従って、ランプヒーター29で着座部24を適温にするためには、ハロゲンサイクルが有効な出力範囲で通電サイクルを変化させて行う。
【0030】
一方、便座22が起立状態にあったり、男子使用者がトイレ室に入室後小用のために便座22を起立状態に立てた時は、便座位置検知手段47の信号をもとに制御部50がランプヒーター29への通電を停止する。これにより、無駄に便座22を加温することを低減でき、さらに省エネを図ることができるとともに、通電状態で、かつフィラメント33の張力方向である長さ方向に重力がかかって断線に至る寿命を短くすることを防止できる。
【0031】
また、使用者が目的に合わせて便座22を起立状態と略水平状態の倒立に開閉しても、弾性材である板バネ材のランプヒーター固定具36の衝撃を緩和することにより、ガラス管やフィラメントの破損を防ぐことができる。
【0032】
次に、使用者が排便のために着座すると、着座検知手段38の信号によりランプヒーター29への通電量を零または便座温度が過昇しないところまで、通電量を変化させて制御する。これにより、使用中に便座温度が過昇することなく、火傷等が生じる心配なく安全に使用できる。
【0033】
特に、暖房便座はランプヒーターを内蔵した便座に直接皮膚を接触させて着座するため、安全に対しては十分な配慮が必要である。通常の使用状態では、上述のように安全に快適に使用できるが、万一何らかの原因でマイコン(図示せず)等、制御部50に不具合が生じ、ランプヒーター29への通電が継続して行われた場合などにも安全装置が確実に動作することが必要である。使用中に便座温度が過昇する場合として次の場合が考えられる。すなわち、マイコン(図示せず)等、制御部50に不具合が生じ、ランプヒーター29への通電が継続して行われた場合と、サーミスタ44に不具合が生じ、便座温度が徐々に上昇した場合である。
【0034】
サーモスタットは通常、図12に示すようにバイメタル7が金属のキャップ6に内包され光を遮断するような構成のものが使用され、この構成ではまずキャップ6が加熱され、バイメタルの加熱はキャップ6からの輻射によって行われるため、バイメタルが所定の温度に達するまで時間を要するので、短時間で便座22の温度が変化するような場合には回路の遮断に遅れが生じる場合があった。本実施の形態ではそれを解決するため、輻射応答型サーモスタット30と熱伝導型サーモスタット31を複数本のランプヒーター29に対応して設け、これらを直列接続する構成としている。
【0035】
まず、輻射応答型サーモスタットについて説明する。輻射応答型サーモスタット30はバイメタル51を露出し、バイメタル51の表面に輻射熱吸収材52として耐熱性の黒色塗料を塗布している。従って、バイメタル51がランプヒーター29の輻射光を直接受光するので、ランプヒーター29からの輻射光で直接、バイメタル51が加熱されるのに加えて、バイメタル51表面に輻射熱吸収材52として耐熱性の黒色塗料を施しているので、ランプヒーター29からバイメタル51へ到達する輻射熱の殆どがバイメタル51に吸収され便座22の温度の急激な変動にも迅速に追従し、輻射応答型サーモスタット30はランプヒーター29と直列に電気接続されているので、温度過昇の際にはランプヒーター29の通電を遮断することができる。
【0036】
さらに、輻射応答型サーモスタット30はランプヒーター29と輻射応答型サーモスタット30間の距離bよりランプヒーター29と便座22表面間の距離aが大きくなるような位置に設定している。これにより、便座22表面温度の上昇より早く、バイメタル51の温度を上昇させるので、異常時に便座22表面温度が過昇して火傷等の危険な状態にな
らないうちにランプヒーター29の通電回路を遮断することができ安全にできる。
【0037】
また本実施の形態では、バイメタル51の温度を早く上昇させることができれば、輻射応答型サーモスタット30の誤動作も防止することができる。すなわち、バイメタル51の温度を早く上昇させることができれば、輻射応答型サーモスタット30のオフ(ランプヒーター29の通電回路を開く)動作温度を、便座22の通常使用温度よりも高く設定することができるので、通常使用時に輻射応答型サーモスタット30が作動して便座の暖房機能が使用できなくなる危険性を回避できる。
【0038】
つまり、図8は図6に示す構成の輻射応答型サーモスタット30において、距離b=7mm、距離a=15mmとしてランプヒーター29に通電した場合のバイメタル51近傍温度と着座部24の表面温度を測定した結果である。図8において曲線(A)は着座部24の表面温度であり、室温5℃では、約7.5秒(t)で通常の便座制御温度(T)までの昇温が可能である。一方、輻射応答型サーモスタット30のバイメタル51の温度は曲線(B)に示すように、着座部24より速くt時間で便座制御温度(T)まで上昇する。着座部24が便座22の最高設定温度(T)以上となったときバイメタル51の温度は輻射応答型サーモスタット30のオフ(開く)動作温度(T)に達し、ランプヒーター29の通電回路を遮断する。
【0039】
したがって、マイコン等に不具合が生じ、ランプヒーター29の通電回路が遮断できない状態になった場合は、安全限界温度に達する前に、輻射応答型サーモスタット30が作動してランプヒーター29の通電回路を遮断する。このとき便座22表面温度は、安全限界温度(T)に達することは無い。また、輻射応答型サーモスタット30は非復帰型としているので、輻射応答型サーモスタット30が作動した場合は、以降、便座温度が過昇するようなことはない。
【0040】
次に、熱伝導型サーモスタット31について説明する。熱伝導型サーモスタット31は図7に示すように、すでに図12で示した従来のサーモスタット5と構成は同様であり、バイメタル51が金属のキャップ54に内包され、ランプヒーター29からの輻射光を遮断するような構成となっている。この構成ではまずキャップ54が加熱され、キャップ54からの熱伝導および輻射によって行われるため、バイメタルが所定の温度に達するまで時間を要する。しかし、使用者が、便座22に着座し、ランプヒーター22が低出力で保温状態にあるときには、熱伝導型サーモスタット31は便座温度とほぼ同一の温度となる。
【0041】
図9はサーミスタ44に不具合が生じ、便座22の温度を正確に検知できなくなり、便座温度が徐々に上昇した場合の便座22の温度(曲線C)と熱伝導型サーモスタット31のバイメタル51の温度(曲線D)を示したものである。便座温度は徐々に上昇するが、バイメタル51の温度も同様に上昇し、着座部24が便座22の最高設定温度(T)以上となり、さらに、バイメタル51の温度が熱伝導型サーモスタット31のオフ(開く)動作温度(T)に達した時、ランプヒーター29の通電回路を遮断する。バイメタル51と便座22の温度はほぼ同等であるので、便座が安全限界温度(T)に達する前に確実にランプヒーター29の通電回路を遮断する。
【0042】
熱伝導型サーモスタット31のオフ動作温度(T)は輻射応答型サーモスタット30オフ動作温度(T)に対して低いため、例えば使用環境によっては、便座に異常が無い場合に作動する場合も考えられる。したがって、熱伝導型サーモスタット31は復帰型としバイメタル51温度がオフ動作温度(T)より低い温度で復帰し、再び使用が可能となる。
【0043】
また、輻射応答型サーモスタット30は便座表面温度が便座22の最高設定温度(T)以上、かつ安全限界温度(T)以下でオフ動作を行うようにしているが、実質的に輻射応答型サーモスタット30のオフ動作温度(T)は便座の安全限界温度(T)、より高い温度に設定できるため安易に輻射応答型サーモスタット30によるランプヒーター29の通電回路の遮断が起こり、便座22の暖房機能が使用できなくなる危険性も無くなる。すなわち、初期通電時間の第一段階は制御部50のタイマー部49およびサーミスタ44による温度コントロール、第二段階は熱伝導型サーモスタット31のオフによるランプヒーター29の通電回路の遮断(ただし、温度低下により回路は復帰)、第三段階は非復帰型の輻射応答型サーモスタット30によるランプヒーター29の通電回路の遮断(回路の復帰は不能)と、多段階の安全機能を設定することにより長期間、安全かつ快適に使用することができる。
【0044】
すなわち、図3に示すように前側のランプヒーター29および後ろ側のランプヒーター29bは便座22の前後に配置して複数本数設置し、各々のランプヒーター29、29bに対向して輻射応答型サーモスタット30、30bと熱伝導型サーモスタット31、31bを設け、各々の電気的に直列に接続している。なお、復帰型の熱伝導型サーモスタット31、31bは、低い温度で遮断作動し、非復帰型のサーモスタット30、30bは復帰型の熱伝導型サーモスタット31、31bより高い温度で遮断作動する作動温度にすることによって、より高い多重安全性および長期間、安全かつ快適に使用することができる。
【0045】
なお、本実施の形態ではランプヒータのそれぞれに輻射応答型と熱伝導型のサーモスタットを対向させて設けたが、複数のランプヒータを備えた場合、一連のランプヒータのうちのいずれかの位置で、各サーモスタットを対向して設けることで、同様の安全動作を行うことができる。また、同種のサーモスタットが複数あれば、同種のサーモスタットのうちの1つが異常となっても、他のもので確実に安全動作を行える。
【0046】
また、ランプヒーター29、29bは複数本に分割しているので、図11に示す従来の輪状の便座2において、輪状の1本のランプヒーター4を便座2の空洞部1の略全体に配置したことにより、便座2の撓みとランプヒーター4の設置誤差等により直接、ランプヒーター4に応力がかかる問題が解消され、便座22の撓み等によるランプヒーター29の破損の危険を解消することができる。
【0047】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2における暖房便座の要部断面図で、特にサーモスタットの部分断面図を示すものである。本実施の形態は、実施の形態1の発明と基本的な構成は同じで、異なるのはランプヒーターに直列接続したサーモスタットの構造に改良を加えたもので、従って異なるサーモスタットの構造のみについて説明する。
【0048】
図8において、輻射応答型サーモスタット30cはバイメタル51がランプヒーター29の輻射光を受光するようにキャップ53は透明ガラスにしてある。なお、透明ガラスのキャップ53を設けたことにより、輻射応答型サーモスタット30cの内部に水滴やほこりが侵入しない防滴あるいは防水タイプにすることができ、万が一、空洞部27が浸水した場合でも輻射応答型サーモスタット30cの通電部への浸水を防止でき、電気絶縁を維持できるため感電を防止することができる。また輻射応答型サーモスタット30cは、図6と同様にバイメタル51の受光表面には輻射熱吸収材52として耐熱性の黒色塗料を塗布している。そして、輻射応答型サーモスタット30は輻射熱吸収材52により輻射型発熱体からバイメタル51に向けて輻射された熱を効率よく吸収し、より速やかにバイメタルの温度を上げるように構成している。また、輻射応答型サーモスタット30cは、ランプヒーター29とバイメタル51との間の距離bより、ランプヒーター29と便座22の表面との間の距離aが大きくなるように設定されている。従って、バイメタル51がラン
プヒーター29の輻射光を直接受光するので、ランプヒーター29からの輻射光で直接、バイメタル51が加熱されるのに加えて、バイメタル51表面に輻射熱吸収材52として耐熱性の黒色塗料を施しているので、ランプヒーター29からバイメタル51へ到達する輻射熱の殆どがバイメタル51に吸収され便座22の温度の急激な変動にも迅速に追従し、輻射応答型サーモスタット30はランプヒーター29と直列に電気接続されているので、温度過昇の際にはランプヒーター29の通電を遮断することができる。
【0049】
なお、キャップ53の透明ガラスは、石英ガラスを用いることでランプヒーター29の輻射光の透過特性が優れ、より高速応答にすることができ、遮断安全性を高めることができる。もちろん、必要の度合いによりその他のガラスでも実用になることはいうまでもない。また、透明ガラス53の板圧は厚くしすぎると透過性能が低下することから板厚1.5mm以下がよく好ましくは1.2mm以下が望ましい。また、上記の各実施の形態では着座部の材料をアルミニウム板のプレス加工品としたが、アルミダイカストなど、他の加工法であっても同様の効果を得ることができる。金属の種類も銅板や鋼板であってもよい。
【0050】
上記実施の形態において、輻射応答型サーモスタットは便座表面温度が便座の最高設定温度以上で、かつ便座の安全限界温度以下でオフ動作を行うように設定したもので、通常の使用状態でサーモスタットが作動するような誤動作が無く、かつ便座表面温度が異常過昇した場合でも火傷の危険があるような安全限界温度より低い温度で確実に輻射型発熱体の通電回路を遮断することができる。
【0051】
さらに、輻射型発熱体を複数個とし、前記各々の輻射型発熱体に対向して設け、かつ電気的に直列に接続した輻射応答型サーモスタットと熱伝導型サーモスタットを備えたもので、各輻射型発熱体のそれそれに対向して異種のサーモスタットを電気的に直列に接続することにより、何れの輻射型発熱体に異常過昇が発生しても何れかのサーモスタットで確実に輻射型発熱体の通電回路を遮断することができる。
【0052】
また、熱伝導型サーモスタットのキャップを熱伝導性の優れた金属で形成し、輻射型発熱体に対向した表面に輻射熱吸収材を備えたことにより、便座の温度制御に異常が発生し、便座温度が徐々に上昇した場合でもバイメタルへの熱伝導を良好にして、バイメタルの温度を便座温度に追従させることができるので、安全限界温度より低い温度で確実に輻射型発熱体の通電回路を遮断することができる。
【0053】
さらに、熱伝導型サーモスタットのオフ動作を便座の最高設定温度以上で、かつ便座の安全限界温度以下で行うように設定したもので、通常の使用状態でサーモスタットが作動するような誤動作が無く、かつ便座表面温度が異常過昇した場合でも火傷の危険があるような安全限界温度より低い温度で確実に輻射型発熱体の通電回路を遮断することができる。
【0054】
さらに、熱伝導型サーモスタットは復帰型、輻射応答型サーモスタットは非復帰型とすることにより、例えば、異常な環境で使用されて、オフ動作温度が比較的低い熱伝導型サーモスタットが作動し場合でも、ある一定温度以下の環境に戻すことにより熱伝導型サーモスタットは復帰して再び便座は使用可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明の暖房便座は、輻射型発熱体からの輻射光でサーモスタットのバイメタルが加熱され温度変化を速やかに検知でき、安全に使用し得る暖房便座が得られる。使用者が着座のほか、直接または間接的に人体に接触して使用する機器の暖房技術として適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態1における暖房便座の便座の要部を断面した概略構成図
【図2】同実施の形態1における暖房便座を便器に搭載したトイレ装置の斜視図
【図3】同実施の形態1における暖房便座の着座部を取り外した平面図
【図4】同実施の形態1における暖房便座の要部分解斜視図
【図5】同実施の形態1における暖房便座の着座部断面図
【図6】同実施の形態1における暖房便座の要部断面図
【図7】同実施の形態1における暖房便座の要部断面図
【図8】同実施の形態1における暖房便座の温度制御の特性図
【図9】同実施の形態1における暖房便座の温度制御の特性図
【図10】同実施の形態2における暖房便座の要部断面図
【図11】従来の暖房便座の要部の断面図
【図12】従来の暖房便座のサーモスタットの断面図
【符号の説明】
【0057】
22 便座
24 着座部
27 空洞部
29 ランプヒーター(輻射型発熱体)
30 輻射応答型サーモスタット
31 熱伝導型サーモスタット
41 アルマイト層
42 輻射吸収層
43 表面化粧層
44 サーミスタ(温度検知手段)
48 室温サーミスタ(室温検知手段)
50 制御部
51 バイメタル
52 輻射熱吸収材
53 透明ガラス(キャップ)
54 キャップ
55 輻射熱吸収材
a 輻射型発熱体と便座表面との間の距離
b 輻射型発熱体とサーモスタットとの間の距離
便座の最高設定温度
熱伝導型サーモスタットのオフ動作温度
便座の安全限界温

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座部を有する便座と、前記着座部を瞬時に加熱する発熱体と、前記発熱体に直列に接続し、かつ前記発熱体に対向して設けたバイメタルを有する非復帰型サーモスタットと、前記発熱体に直列に接続し、かつ前記発熱体に対向して設けたバイメタルを有する復帰型サーモスタットとを備え、前記非復帰型サーモスタットは、前記復帰型サーモスタットよりも高い温度で遮断動作することを特徴とした暖房便座。
【請求項2】
便座の温度を検知する温度検知手段と、制御部とを備え、前記制御部は前記温度検知手段の信号により発熱体の通電を制御する請求項1記載の暖房便座。
【請求項3】
人体の入室を検知する人体検知手段を備え、前記人体検知手段で人体を検知すると発熱体に電力を投入し、人体が便座に着座するまでに着座部を適温に加温するようにした請求項1または2に記載の暖房便座。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の暖房便座を便器に備えたトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−75647(P2007−75647A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345526(P2006−345526)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【分割の表示】特願2005−251180(P2005−251180)の分割
【原出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】