説明

暖房便座装置及びトイレ装置

【課題】必要に応じて便座の表面温度を迅速に低下可能な暖房便座装置及びこれを備えたトイレ装置を提供する。
【解決手段】送風部と、前記送風部により送風される空気を加熱する加熱部と、吸引口と、内部に便座内風路を有する便座と、風路切替手段と、を備え、前記風路切替手段は、前記送風部と前記加熱部と前記便座内風路とを含む循環風路において空気を環流させる循環送風モードと、前記吸引口から吸引された外気を前記便座内風路に導入する外気導入モードと、を実行可能としたことを特徴とする暖房便座装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房便座装置及びトイレ装置に関し、より具体的には、温風により便座を暖房する暖房便座装置及びこれを備えたトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水洗便器の便座を暖房できると、気温の低い冬場などでもトイレを快適に使用することができる。便座を暖房する手段として、便座内に温風を循環させる方法を用いた暖房便座が開示されている(特許文献1)。すなわち、ファンから送り出された風はヒータにより加熱されて便座内の風路に送り込まれる。そして、便座内を通過した温風は、再びファンに帰還する。
【0003】
しかし、このような循環式の温風便座においては、便座の温度を下げる必要が生じた場合でも、ヒータへの通電を停止するだけでは、便座の温度を迅速に下げることができないという問題がある。
【特許文献1】特開平5−237047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、必要に応じて便座の表面温度を迅速に調整可能な暖房便座装置及びこれを備えたトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、送風部と、前記送風部により送風される空気を加熱する加熱部と、吸引口と、内部に便座内風路を有する便座と、風路切替手段と、を備え、前記風路切替手段は、前記送風部と前記加熱部と前記便座内風路とを含む循環風路において空気を環流させる循環送風モードと、前記吸引口から吸引された外気を前記便座内風路に導入する外気導入モードと、を実行可能としたことを特徴とする暖房便座装置が提供される。
【0006】
また、本発明のさらに他の一態様によれば、便器と、前記便器の上に設けられた上記のいすれかの暖房便座装置と、を備えたことを特徴とするトイレ装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、必要に応じて便座の温度を急速に調整可能な暖房便座装置及びこれを備えたトイレ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置の模式斜視図である。
【0009】
本具体例の暖房便座装置は、水洗便器300の上部に設けられたケーシング500を有する。なお、水洗便器300の洗浄機構としては、いわゆる「ロータンク式」でもよく、あるいはロータンクを用いない「水道直圧式」であってもよい。
【0010】
ケーシング500には、便座410及び便蓋400がそれぞれ回動自在に軸支されている。これら便座410及び便蓋400は、手動により開閉できるとともに、電動開閉機構により自動的に開閉可能としてもよい。そして、本実施形態においては、ケーシング500に温風供給手段550が設けられ、便座410の中に温風を導入することにより便座410の暖房が可能とされている。また、便座410の暖房のオンオフや温度の設定などは、ケーシング500に設けられたスイッチを操作することにより制御することも可能であり、または、ケーシング500とは別体として設けられたリモコン200を操作することにより制御可能としてもよい。すなわち、リモコン200に便座410の温度を表示させたり、温度を設定可能とすることができる。
【0011】
またさらに、ケーシング500には、衛生洗浄装置としての機能部を併設してもよい。すなわち、この暖房便座装置は、便座410に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴出する吐水ノズル615を有する洗浄機能部などを適宜備える。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。暖房便座装置は、さらに、便座410に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる温風乾燥機能や、便器のボウル内の空気を吸い込み、フィルタや触媒などを介して臭気成分を低減させる脱臭機能などを有するものとすることができる。これら付加機能部の動作についても、例えば、ケーシング500とは別体として設けられたリモコン200により操作可能としてもよい。ただし、本発明においては、吐水ノズル615やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよく、便座410の温風暖房機構と、便座410の電動開閉機構と、が設けられていればよい。
【0012】
図2及び図3は、本実施形態の暖房便座装置の構成を例示する概念図である。
すなわち、図2は、暖房便座装置の全体構成図である。
また、図3(a)は循環送風モードを表し、図3(b)は外気導入モードの状態を表す。
【0013】
ケーシング500には、外気を取り込む吸引口580と、空気を排出する排出口582と、が設けられている。そして、これら吸引口580と排出口582に連通する風路には、開閉自在のダンパ(風路切替手段)546、548がそれぞれ設けられている。そして、これらダンパ546、548により開閉される風路の途上には、温風供給手段550が設けられている。温風供給手段550は、例えば、ファン(送風部)552とヒータ(加熱部)554とを有する。なお、戻入部570は、図3に例示したように送出部560に隣接させる方が好ましい。
【0014】
図3(a)に表したように、循環送風モードにおいては、ダンパ546、548がそれぞれ閉じられて送風が環流される循環風路が形成される。この状態で、ファン552から送出された空気がヒータ554により加熱されて温風が生成され、この温風は送出部560を介して、便座410の中に導入される。便座410の中には、仕切り418により区画された温風の風路(便座内風路)412が形成されている。送出部560から便座410の風路412に導入された温風は、図2及び図3に矢印で表したように便座410の中を流れ、戻入部570を介してケーシング500のファン552の上流側に戻る。すなわち、本具体例の便座暖房装置は、温風供給手段550、送出部560、風路412、戻入部570、温風供給手段550という循環路を形成し、温風がこの循環路を環流するように構成されている。このようにすれば、排熱を抑制して熱効率の優れた温風暖房が可能となる。
【0015】
この循環送風モードにおいては、温風を繰り返し循環させることができるので、無駄な排熱を抑制し、少ないエネルギーで便座410を効率的に暖房することができる。ただし、便座410の温度を下げる際に、単にヒータ554への通電を停止してファン552により送風を循環させ続けただけでは便座410の表面温度はなかなか下がらず、温度の低下速度は小さい。
【0016】
これに対して、本実施形態においては、図3(b)に表したように外気導入モードを実行させることにより、便座410の温度を迅速に下げることが可能とされている。すなわち、外気導入モードにおいては、図3(b)に表したようにダンパ546、548を切り替えることにより、外気の導入が可能とされている。ダンパ546を開いて吸引口580を開放し、一方、ダンパ548は排出口582を開放するとともに、吸引口580と排出口582との間の風路を仕切る位置に切り替わる。この状態でファン552を動作させると、吸引口580から外気を吸引して便座410の風路412に導き、戻入部570を介して排出口582から排出する。便座410の熱は風路412に導入された外気に奪われ、排出口582から外部に排出される。その結果として、便座410の温度を迅速に下げることが可能となる。
【0017】
なお、この外気導入モードにおいては、ヒータ554の通電を停止すれば、便座410の温度をもっとも迅速に下げることができる。ただし本発明はこれには限定されず、ヒータ554に通電しながら外気導入モードを実行してもよい。例えば、便座410の温度を大きく下げる場合にはヒータ554の通電を静止させ、便座410の温度を僅かに下げる場合にはヒータ554に通電しながら外気を導入すればよい。また、トイレ室の気温が設定温度に対して相対的に低い場合にも、便座410の温度が下がり過ぎないようにヒータ554に通電しながら外気を導入するのが好ましい。
【0018】
以下、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明する。
図4は、本実施形態の暖房便座装置の基本構成を例示するブロック図である。
便座410に温風を導入する温風暖房機構として、第1温度検知部540、送風部552、加熱部554、第2温度検知部542が設けられている。第1温度検知部540は、加熱部554の上流側に設けられ、便座410に設けられた風路412から戻ってきた温風の温度を測定する。送風部552は、温風を循環させる流れを形成する。加熱部554は、挿入する温風を所定の温度まで加熱する。第2温度検知部542は、加熱部554の下流側に設けられ、便座410に送出する温風の温度を検知する。これら温度検知部540、542としては、例えばサーミスタや熱電対などの温度センサを用いることができる。制御部510は、第1温度検知部540、第2温度検知部542の検知の結果に基づいて、送風部552、加熱部554の動作を制御する。
【0019】
また、本具体例の暖房便座装置には、さらに、人体検知部520、環境温度検知部522、表面温度推定部524、温度設定部526、便蓋電動開閉部528、便蓋開閉検知部530、便座電動開閉部532、便座開閉検知部534などが適宜設けられている。
人体検知部520は、例えば、焦電センサや赤外線投光式のセンサ、マイクロ波センサなどを用いてトイレ室への使用者の入室や、使用者の存在の有無を検知する。これらのセンサは、ケーシング500に設けてもよく、またはリモコン200(図1など参照)に設けてもよく、あるいはケーシング500ともリモコン200とも別体のセンサユニット(図示せず)として設けてもよい。例えば、トイレ室内において入口の近くに、焦電センサを用いたセンサユニットを配置すれば、トイレに侵入する使用者をより早く検知できる。
【0020】
また、人体検知部520を複数のセンサにより構成してもよい。例えば、焦電センサを用いて使用者のトイレ室への入室を検知し、赤外線投光式のセンサを用いてトイレ室における使用者の存在の有無を検知するようにしてもよい。さらに、便座410に座った状態の使用者を検知する着座センサを含めてもよい。
【0021】
環境温度検知部522は、暖房便座装置が配置されている周囲の環境温度を検知する。例えば、暖房便座装置が設置されているトイレ室の気温を測定することにより、温風暖房機構の動作にフィードバックすることができる。
また、表面温度推定部524は、便座410の座面の温度を推定する。後に詳述するように、第1温度検知部540と第2温度検知部542の検知結果に基づき、さらにこれに環境温度検知部522の検知の結果を加味して、便座410の座面の温度を推定することができる。そして、この推定温度と、設定温度との差に基づき、送風部552及び加熱部554の動作を制御する。
【0022】
以下、表面温度推定部524における推定の方法について説明する。便座410の表面温度は、第1及び第2温度検知部540、542の検知結果に基づいて推定することが可能である。
【0023】
例えば、循環送風モードにより暖房している場合には、便座410の表面温度が低いと風路412を流れる温風から便座410への熱の移動量が大きい。従って、第2温度検知部542により測定される上流側の温風の温度に対して、第1温度検知部540により測定される下流側の温風の温度の低下量は大きくなる。一方、便座410の表面温度が高くなると、風路412を流れる温風から便座410への熱の移動量が小さくなる。従って、第2温度検知部542により測定される上流側の温風の温度に対して、第1温度検知部540により測定される下流側の温風の温度の低下量は小さくなる。表面温度推定部524は、このような関係に基づき、循環送風モードにより暖房している時に、温度検知部540、542の検知結果に基づいて便座410の表面温度を推定することが可能である。
【0024】
一方、外気導入モードにより便座の表面温度を下げる場合には、便座410の表面温度が高いと風路412を流れる風に対する便座410からの熱の移動量が大きい。従って、第2温度検知部542により測定される、吸引口580から吸引された外気の風の温度に対して、第1温度検知部540により測定される下流側の風の温度の上昇量は大きくなる。一方、便座410の表面温度が低くなると、風路412を流れる風に対する便座410からの熱の移動量が小さくなる。従って、第2温度検知部542により測定される外気の風の温度に対して、第1温度検知部540により測定される下流側の温風の温度の上昇量は小さくなる。表面温度推定部524は、このような関係に基づき、外気導入モードにより便座の表面温度を下げている時に、温度検知部540、542の検知結果に基づいて便座410の表面温度を推定することが可能である。なお、ここで、外気の風の温度とは、ヒータ554に通電している場合にはヒータ554で外気を加熱した後の風の温度である。
【0025】
またここで、環境温度検知部522を設け、暖房便座装置が設置されている雰囲気の温度を検知することにより、便座410の表面温度をさらに正確に推定することが可能となる。すなわち、第1温度検知部540と第2温度検知部542との検知結果に基づいて、風路412を流れる温風から便座410への熱の移動量(循環送風モードで暖房する場合)、あるいは、風路412を流れる風への便座410からの熱の移動量(外気導入モードで便座の表面温度を下げる場合)を推定できる。そして、さらに、環境温度検知部522により便座410の周囲の雰囲気の温度の変化量を検知すれば、便座410から周囲雰囲気への放熱量(あるいは便座410への周囲雰囲気からの入熱量)を推定できる。便座410の表面温度は、これら便座内外における熱の移動量のバランスによって決定される。従って、表面温度推定部524は、第1及び第2温度検知部540、542と、環境温度検知部522との検知結果に基づいて、便座410の表面温度をより正確に推定することが可能である。
【0026】
再び図4に戻って説明を続けると、温度設定部526は、便座410の温度を設定する。例えば、リモコン200のスイッチを操作することにより、便座410の目標温度を設定することができる。
図5は、リモコン200に設けられたスイッチを例示する模式図である。
リモコン200の上面には、その両端にケーシング500との通信のための赤外線透過窓231が設けられている。また、大洗浄スイッチ232、小洗浄スイッチ234、便蓋閉スイッチ236、便蓋開スイッチ238、便座開スイッチ240などがそれぞれ設けられている。
【0027】
また、リモコン200の正面には、各種の設定スイッチが設けられている。そして、本具体例のリモコンにおいては、便座410の設定温度を上げるスイッチ526Aと、下げるスイッチ526Bが設けられている。使用者がこれらスイッチ526A、Bを押すことにより、便座410の設定温度を変更できる。
【0028】
再び図4に戻って説明を続けると、便蓋電動開閉部528は、便蓋400を電動により開閉する。また、便蓋開閉検知部530は、便蓋400の開閉状態を検知する。
同様に、便座電動開閉部532は、便座410を電動により開閉する。また、便座開閉検知部534は、便座410の開閉状態を検知する。
【0029】
図6は、送出部560の断面構造を例示する概念図である。
本具体例の場合、ケーシング500には、突出した吹出口562が設けられている。吹出口562の先端にはダンパ564が開閉自在に設けられている。吹出口562は、便座410を開いた状態においては後退し、ケーシング500の前端面が略平坦な面となるようにしてもよい。便座410を閉じた状態においては図6に表したように吹出口562は突出し、便座410に設けられた導入口414に挿入された状態となる。この状態で便座410の風路412に温風を導入することができる。また、ダクト562の周囲に、弾性材料からなるパッキン568を適宜設けることにより、送出部560における温風の「漏れ」を抑制できる。また、戻入部570においても同様の構造を採用することができる。
このような構造にすれば、便座410をケーシング500から取り外して清掃や水洗いなどする際にも、簡単に取り外し、再装着することができる。
【0030】
ただし、本発明はこの構造に限定されるものではなく、例えば、伸縮自在のダクトにより便座410とケーシング500とを接続して温風を循環可能としてもよい。また、例えば、送風部552や加熱部554などを便座410の内部に収容してもよい。また、例えば、便座410の軸支部を介して温風を風路412に導入させてもよい。
【0031】
図7は、乾燥機構を付加した暖房便座装置を表す概念図である。
本具体例においては、便座410に座った状態の使用者の「おしり」などを乾燥する温風乾燥機能部が設けられている。すなわち、ヒータ554の下流には、風路切替部590が設けられている。そして、風路切替部590の下流に温風吹出ダクト592が接続されている。風路切替部590は図示しないダンパなどを内蔵し、ヒータ554から送出された温風の風路を便座410と温風吹出ダクト592との間で切り替える。図7(a)に表した状態においては、ヒータ554から送出された温風は便座410の風路412に導かれ、循環送風モードが可能とされている。
【0032】
一方、図7(b)に表した状態においては、ヒータ554から送出された温風は、温風吹出ダクト592に導かれ、便座410に座った使用者の「おしり」に向けて吹き出される。このようにして、使用者の「おしり」などを乾燥することができる。
【0033】
また、便座410から戻る温風の風路に補助ダンパ594を設け、温風乾燥中には、図7(b)に表したように補助ダンパ594を閉じるとよい。このようにすると、温風乾燥中に、便座410の中に加熱された空気を封じ込めることができ、便座410の温度が低下することを抑制できる。
【0034】
以下、本実施形態の暖房便座装置の動作について4種類の具体例を挙げつつ説明する。 図8は、本実施形態の暖房便座装置の動作の第1の具体例のフローチャートである。
本具体例においては、まず、温風暖房が開始されると、図3(a)に例示したようにダンパ546、548が閉じて、便座410の風路412を含む循環風路が形成される。そして、ファン552とヒータ554が動作して温風の循環を開始する(ステップS102)。そして、図4に関して前述した表面温度推定部524により便座410の表面温度を推定し、これが設定温度となるように、ファン552の送風量やヒータ554の発熱量を調整する。
【0035】
この状態で、便座410の設定温度が変更されると(ステップS104:yes)、設定温度が下げられたか否かを判定する(ステップS106)。すなわち、図5に例示したスイッチ526Bが押されたか否かを判定する。
【0036】
設定温度が下げられていない場合(ステップS106:no)には、便座410の設定温度は上げられたのであるから、温度を上昇させる動作モードが開始される(ステップS200)。これは、例えば、ファン552の送風量を増加させたり、ヒータ554の発熱量を上昇させることにより実行される。この際にも、図4に関して前述した表面温度推定部524により便座410の表面温度を推定し、これが設定温度となるように、ファン552の送風量やヒータ554の発熱量を調整する。
【0037】
一方、設定温度が下げられた場合(ステップS106:yes)には、外気導入モードを開始する。すなわち、図3(b)に関して前述したように、ダンパ546、548を切り替えて外気を導入する。この際に、ヒータ554の通電を停止すると、最も迅速に便座410の温度を下げることができる。
【0038】
そして、この際にも、図4に関して前述した表面温度推定部524により便座410の表面温度を推定する。そして、推定した便座410の表面温度が設定温度若しくはその近傍まで低下したら(ステップS110:yes)、再び図3(a)に例示したようにダンパ546、548を閉じて、便座410の風路412を含む循環風路を形成する。そして、ファン552とヒータ554が動作して温風の循環を開始する(ステップS112)。そして、図4に関して前述した表面温度推定部524により便座410の表面温度を推定し、これが設定温度となるように、ファン552の送風量やヒータ554の発熱量を調整する。
【0039】
以上説明したように、本具体例によれば、使用者がリモコン200などを操作して便座410の設定温度を下げた場合に、図3(b)に表したように外気導入モードが開始され、便座410の温度を設定値まで迅速に下げることができる。
【0040】
図9は、本実施形態の暖房便座装置の動作の第2の具体例のフローチャートである。同図については、図8に関して前述したものと同様のステップには同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本具体例においても、まず、温風暖房が開始されると、循環送風モードにより便座410の暖房が開始される(ステップS102)。そして、使用者がリモコン200などを操作して便座410の設定温度が変更されると(ステップS104:yes)、設定温度が下げられたか否かを判定する(ステップS106)。設定温度が下げられたのではない場合(ステップS106:no)には、温度を上昇させるためのモードが開始される(ステップS200)。
【0041】
一方、設定温度が下げられた場合(ステップS106:yes)には、設定温度と便座410の推定温度との差が所定値T1以上であるか否かを判定する(ステップS120)。ここで、便座410の推定温度は、例えば図4に関して前述したように、表面温度推定部524により推定可能である。
【0042】
設定温度と推定温度との差がT1未満である場合(ステップS120:no)には、循環温度低下モードを開始する(ステップS180)。これは、図3(a)に表したように便座410の風路412を含む循環風路を形成したままの状態で、例えば、ファン552の送風量を低下させたり、ヒータ554の発熱量を下げることにより、便座410への入熱量を低下させる。そして、図4に関して前述した表面温度推定部524により便座410の表面温度を推定し、これが設定温度となるように、ファン552の送風量やヒータ554の発熱量を調整する。
【0043】
一方、設定温度と推定温度との差がT1以上である場合(ステップS120:yes)には、外気導入モードによる温度低下を開始する。すなわち、図3(b)に関して前述したように、ダンパ546、548を切り替えて外気を導入し、便座410の表面温度を迅速に下げる。そして、推定した便座410の表面温度が設定温度まで低下したら(ステップS110:yes)、再び図3(a)に例示したようにダンパ546、548を閉じて、便座410の風路412を含む循環風路を形成する。そして、ファン552とヒータ554が動作して温風の循環を開始する(ステップS112)。
【0044】
以上説明したように、本具体例によれば、使用者がリモコン200などを操作して便座410の設定温度を下げた場合に、まず、その下げ幅を判定する。そして、設定値の下げ幅が小さい場合(T1未満)には、循環送風モードを維持したまま便座410への入熱量を下げて設定温度に近づける。設定温度の下げ幅が小さい場合には、この方法でも比較的容易に便座410の表面温度を設定温度に近づけることができる。
一方、設定温度の下げ幅が大きい場合(T1以上)には、外気導入モードにより便座410の表面温度を迅速に低下する。このように、設定温度の下げ幅に応じて便座410の温度低下方法を選択することにより、ダンパ546、548などを頻繁に動作させる必要がなくなり、機構上の寿命や信頼性を向上させ、またこれらの動作音なども低減できる。また、設定温度の下げ幅が小さい場合に、外気導入モードにより温度低下を開始すると、便座410の内部の温風が一気に排出されて温度が設定値を下回る方向にアンダーシュートすることもあり得る。これに対して、本具体例によれば、このようなアンダーシュートを防止できる。
【0045】
図10は、本実施形態の暖房便座装置の動作の第3の具体例のフローチャートである。同図についても、図8及び図9に関して前述したものと同様のステップには同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本具体例においては、使用者が設定温度を変更しない場合であっても、何らかの理由で便座410の温度が変化した場合に、これに応じて便座410の温度上昇あるいは温度下降のための動作を適宜実行する。
すなわち、温風暖房が開始されると、循環送風モードにより便座410の暖房が開始される(ステップS102)。同時に、図4に関して前述した表面温度推定部524により便座410の表面温度を推定を開始する。
【0046】
そして、便座410の表面の推定温度と設定温度とを比較し、その差が所定値T2以上であるか否かを判定する(ステップS122)。ここで、温度の差の所定値T2は、いわゆる「不感帯」に相当する。すなわち、推定温度と設定温度との差がT2未満であれば、ファン552の送風量やヒータ554の発熱量は変更せず、そのまま循環送風モードにより便座410の暖房を続ける。
【0047】
一方、推定温度と設定温度との差がT2以上である場合(ステップS122:yes)には、便座の温度上昇または温度下降を開始する。すなわち、設定温度が推定温度よりも高い場合(ステップS124:no)には、温度上昇モードを開始する(ステップS200)。そして、図4に関して前述した表面温度推定部524により便座410の表面温度を推定し、これが設定温度となるように、ファン552の送風量やヒータ554の発熱量を調整する。
【0048】
一方、設定温度と推定温度との差がT1未満である場合(ステップS120:no)には、循環温度低下モードを開始する(ステップS180)。すなわち、図3(a)に表したように循環送風モードを維持したまま、ファン552の送風量を低下させたり、ヒータ554の発熱量を下げたりして便座410の温度を低下させる。そして、図4に関して前述した表面温度推定部524により便座410の表面温度を推定し、これが設定温度となるように、ファン552の送風量やヒータ554の発熱量を調整する。
ここで、所定値T1は、温度低下制御の方法を選択するための指標であり、ステップS122におけるT2よりも大きい値が与えられる。
【0049】
また、設定温度と推定温度との差がT1以上である場合(ステップS120:yes)には、外気導入モードによる温度低下を開始する(ステップS108)。すなわち、図3(b)に関して前述したように、ダンパ546、548を切り替えて外気を導入し、便座410の表面温度を迅速に低下する。そして、推定した便座410の表面温度が設定温度まで低下したら(ステップS110:yes)、再び図3(a)に例示したようにダンパ546、548を閉じて、便座410の風路412を含む循環風路を形成する。そして、ファン552とヒータ554が動作して温風の循環を開始する(ステップS112)。
【0050】
以上説明したように、本具体例によれば、便座410の推定温度と設定温度とを比較し、この差が所定の値T2を超えたときに、温度上昇または温度下降のための制御を開始する。従って、例えば、使用者がリモコン200などを操作して便座410の設定温度を変更した場合にも、必要に応じて直ちに温度上昇や温度下降のための制御を開始できる。また、設定値が変更されていない場合でも、使用者の着座や離座、周囲の気温の変化、便蓋400の開閉、あるいはその他の何らかの理由により便座410の温度が変化した時に、これに応じて温度上昇または温度下降のための制御を開始できる。
【0051】
また、便座の温度上昇や温度下降のための制御を開始する下限値として、所定の値T2を設けたことにより、制御系が常に温度上昇と温度下降とを繰り返すチャタリングのような現象を回避でき、安定性の高い制御が可能となる。
【0052】
図11は、本実施形態の暖房便座装置の動作の第4の具体例のフローチャートである。同図についても、図8及び図9に関して前述したものと同様のステップには同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本具体例においても、便座410の推定温度と設定温度とを常に比較し、その差に応じて温度上昇または温度下降の制御を開始する。ただし、温度上昇の制御を開始する下限値と温度下降の制御を開始する下限値とをそれぞれ別に設定可能としている。
【0053】
すなわち、温風暖房が開始されると、循環送風モードにより便座410の暖房が開始される(ステップS102)。同時に、図4に関して前述した表面温度推定部524により便座410の表面温度を推定を開始する。
【0054】
そして、便座410の表面の推定温度と設定温度とを比較し、設定温度が推定温度よりも所定値T3以上高いか否かを判定する(ステップS130)。ここで、所定値T3は、温度上昇の制御を開始するか否かの「不感帯」に相当する。すなわち、設定温度が推定温度よりもT3以上高い場合(ステップS130:yes)には、温度上昇モードを開始する(ステップS200)。そして、図4に関して前述した表面温度推定部524により便座410の表面温度を推定し、これが設定温度となるように、ファン552の送風量やヒータ554の発熱量を調整する。
【0055】
一方、設定温度が推定温度よりもT3以上高くない場合(ステップS130:no)には、推定温度が設定温度よりも所定値T2以上高いか否かを判定する(ステップS122)。ここで、所定値T2は、温度下降の制御を開始するか否かの「不感帯」に相当する。推定温度が設定温度よりも所定値T2以上高くない場合(ステップS122:no)には、推定温度は、設定温度からみた不感帯の範囲内にあるので、温度上昇の制御も温度下降の制御も開始しない。
【0056】
一方、推定温度が設定温度よりも所定値T2以上高い場合(ステップS122:yes)には、設定温度と推定温度との差が所定値T1以上であるか否かを判定する(ステップS120)。設定温度と推定温度との差がT1未満である場合(ステップS120:no)には、循環温度低下モードを開始する(ステップS180)。すなわち、図3(a)に表したように循環送風モードを維持したまま、ファン552の送風量を低下させたり、ヒータ554の発熱量を下げたりして便座410の温度を低下させる。そして、図4に関して前述した表面温度推定部524により便座410の表面温度を推定し、これが設定温度となるように、ファン552の送風量やヒータ554の発熱量を調整する。
ここでも、所定値T1は、温度低下制御の方法を選択するための指標であり、ステップS122におけるT2よりも大きい値が与えられる。
【0057】
設定温度と推定温度との差がT1以上である場合(ステップS120:yes)には、外気導入モードによる温度低下を開始する(ステップS108)。この後は、第3具体例に関して前述したものと同様とすることができる。
【0058】
以上説明したように、本具体例によれば、第1乃至第3具体例に関して前述した各種の効果に加えて、便座の温度上昇の制御を開始するための不感帯と、温度下降の制御を開始するための不感帯とを別々に設定可能としている。従って、例えばヒータ554の加熱速度や便座の温度低下速度などの熱的な環境に応じて、温度上昇の制御と温度下降の制御をそれぞれ最適なタイミングで開始できる。
【0059】
なお、以上説明した各具体例においては、便座410の表面温度を表面温度推定部524において推定し、これを設定温度と比較してファン552やヒータ554を制御するが、本発明はこれには限定されない。すなわち、便座410に温度センサなどを設けて便座410の表面温度を実測し、この実測値が設定値に近づくようにファン552やヒータ554を制御してもよい。または、例えば、与えられた設定温度に対して、これを実現するための第1温度検知部540の目標温度を決定し、第1温度検知部540における検出値がこの目標温度になるようにファン552やヒータ554を制御してもよい。
【0060】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、図1乃至図11に関して前述した各具体例は、技術的に可能な範囲において適宜組み合わせることができ、これらも本発明の範囲に包含される。
また、暖房便座装置の構造や動作の内容についても、図1乃至図11に関して前述したものには限定されず、当業者が適宜設計変更することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができるものも本発明の要旨を含む限り、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置の模式斜視図である。
【図2】本実施形態の暖房便座装置の構成を例示する概念図である。
【図3】本実施形態の暖房便座装置の構成を例示する概念図である。
【図4】本実施形態の暖房便座装置の基本構成を例示するブロック図である。
【図5】リモコン200に設けられたスイッチを例示する模式図である。
【図6】送出部560の断面構造を例示する概念図である。
【図7】乾燥機構を付加した暖房便座装置を表す概念図である。
【図8】本実施形態の暖房便座装置の動作の第1の具体例のフローチャートである。
【図9】本実施形態の暖房便座装置の動作の第2の具体例のフローチャートである。
【図10】本実施形態の暖房便座装置の動作の第3の具体例のフローチャートである。
【図11】本実施形態の暖房便座装置の動作の第4の具体例のフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
200 リモコン、231 赤外線透過窓、232 大洗浄スイッチ、236 便蓋閉スイッチ、238 便蓋開スイッチ、240 便座開スイッチ、300 水洗便器、400 便蓋、410 便座、412 風路、414 導入口、418 仕切り、500 ケーシング、510 制御部、520 人体検知部、522 環境温度検知部、524 表面温度推定部、526 温度設定部、526A、526B スイッチ、528 便蓋電動開閉部、530 便蓋開閉検知部、532 便座電動開閉部、534 便座開閉検知部、540 温度検知部、542 温度検知部、546、548 ダンパ、550 温風供給手段、552 ファン、552 送風部、554 ヒータ、554 加熱部、560 送出部、562 ダクト、562 吹出口、564 補助ダンパ、568 パッキン、570 戻入部、580 吸引口、582 排出口、590 風路切替部、592 温風吹出ダクト、594 補助ダンパ、615 吐水ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風部と、
前記送風部により送風される空気を加熱する加熱部と、
吸引口と、
内部に便座内風路を有する便座と、
風路切替手段と、
を備え、
前記風路切替手段は、前記送風部と前記加熱部と前記便座内風路とを含む循環風路において空気を環流させる循環送風モードと、前記吸引口から吸引された外気を前記便座内風路に導入する外気導入モードと、を実行可能としたことを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
排出口をさらに備え、
前記外気導入モードにおいては、前記送風部により、前記吸引口から吸引された前記外気が前記便座内風路を通過し、前記排出口から排出されることを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記送風部と前記加熱部と前記風路切替手段とを制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記便座の温度が設定温度よりも高い場合に前記外気導入モードを実行させることを特徴とする請求項1または2に記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記送風部と前記加熱部と前記風路切替手段とを制御する制御部をさらに備え
前記制御部は、前記便座の前記設定温度が下げられた場合に前記外気導入モードを実行させることを特徴とする請求項1または2に記載の暖房便座装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記外気導入モードを実行させる際に、前記加熱部による前記空気の加熱を停止させることを特徴とする請求項3または4に記載の暖房便座装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記便座の温度と前記設定温度との差が所定値以上である時に前記外気導入モードを実行させることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項7】
前記便座内風路を通過した空気の温度を検出する第1温度検知部と、
前記第1温度検知部の検出結果に基づいて前記便座の温度を推定する表面温度推定部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項8】
前記便座内風路を通過した空気の温度を検出する第1温度検知部と、
前記便座内風路に導入される空気の温度を検出する第2温度検知部と、
前記第1温度検知部と前記第2温度検知部の検出結果に基づいて前記便座の温度を推定する表面温度推定部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項9】
前記便座内風路を通過した空気の温度を検出する第1温度検知部と、
前記便座内風路に導入される空気の温度を検出する第2温度検知部と、
前記便座が設置されている雰囲気の温度を検出する環境温度検知部と、
前記第1温度検知部と前記第2温度検知部と前記環境温度検知部の検出結果に基づいて前記便座の温度を推定する表面温度推定部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項10】
便器と、
前記便器の上に設けられた請求項1〜9のいずれか1つに記載の暖房便座装置と、
を備えたことを特徴とするトイレ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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