説明

暖房便座装置

【課題】便座を暖房する熱量が従来よりも低減されて省エネルギ効果が大きく、また便座表面温度が均一化されて快適であり、かつ経済性及び安全性に優れた暖房便座装置を提供する。
【解決手段】便器上面の形状にあわせて形成され便座8の一部を成すガイド部材2と、前記ガイド部材2の材質に対して熱伝導率の高い特性及び比熱の小さい特性の少なくとも一方を有する材質を用いて形成されるとともに、前記ガイド部材2の上方に配設されて前記便座8の一部を成しかつ上面の一部は着座面とされ、さらに前記ガイド部材2との間に閉空間(帯状閉空間6、7)を区画する便座表面部材3と、前記閉空間(6、7)に温水を供給する給湯手段5と、を備える。なお、前記ガイド部材2は、前記閉空間(6、7)を複数の温水路61〜64、71〜74に区分する分流ガイド41〜46をもつ、ことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房便座装置に関し、特に温水を用いて便座が暖房される暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洋式便器の上面に設置される便座装置においては、使用者が冷たさを感じることなく快適に着座できるように、便座を暖房することが行われている。便座を暖房する方式としては、電熱ヒータ方式やヒートパイプ方式、温水方式などが一般的に用いられている。電熱ヒータ方式は、線状ヒータや面状ヒータなどの発熱体に温度調節装置などを組み合わせて用いることにより、便座表面、換言すれば着座面の温度を一定範囲に保つようにした方式である。ヒートパイプ方式は、便座内部にヒートパイプを配設して熱移送流体を流し便座を加熱する方式である。温水方式は、便座内部に温水を導入することにより、便座を暖房する方式である。
【0003】
この温水方式の暖房便座装置の一例が、特許文献1のトイレ暖房システムに開示されている。このトイレ暖房システムは、熱源機、温水配管、トイレ暖房ユニット及び暖房便座ユニットを備えて温水を循環供給し、トイレの雰囲気と便座の両方を暖房するように構成されている。しかして、暖房便座ユニットの便座には温水管が内蔵され、温水管の入水側は便座の付根部で左右2方向に分岐し、便座外周の近傍に沿って配設され、便座先端部で折り返され、便座内周の近傍に沿って便座付根部で再び結合されている。そして、熱源機から温水配管を経由して供給された温水が、温水管内を流れることにより、便座が暖房されるようになっている。
【特許文献1】特開2004−298275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のトイレ暖房システムを始めとして、便座内の温水管に温水を流す方式では、温水管内部から着座面までの間に管壁部材やその他の部材が介在しており、これらの部材の熱容量や部材間の接触状態に依存する熱抵抗により十分な伝熱ができず、着座面を暖める以上の余分な熱量が必要となっていた。また、特許文献1では、温水が便座付根部から便座先端部まで流れ再び便座付根部に戻るように往復する長い温水管が配設されており、長さ方向における温水温度の降下や温水到達の時間遅れに起因する温度勾配が生じていた。一方、温水管を横断する方向に注目すると、便座表面温度は温水管の真上付近で高く、温水管から離れた端縁部や温水管の間の位置で低くなっている。さらに、便座は付根部で幅広く形成され、先端部で幅狭く形成されるのが一般的であるので、付根部の熱容量が大きくなって温度が上がりにくく、また横断方向の温度変化も顕著になりがちであった。以上説明したように便座表面に温度差が生じることで、使用者が不快に感じるおそれがあった。
【0005】
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであり、便座を暖房する熱量が従来よりも低減されて省エネルギ効果が大きく、また便座表面温度が均一化されて快適であり、かつ経済性及び安全性に優れた暖房便座装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の暖房便座装置は、便器上面の形状にあわせて形成され便座の一部を成すガイド部材と、前記ガイド部材の材質に対して熱伝導率の高い特性及び比熱の小さい特性の少なくとも一方を有する材質を用いて形成されるとともに、前記ガイド部材の上方に配設されて前記便座の一部を成しかつ上面の一部は着座面とされ、さらに前記ガイド部材との間に閉空間を区画する便座表面部材と、前記閉空間に温水を供給する給湯手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明は、便座に内蔵する温水管に代え、ガイド部材と便座表面部材とで閉空間を形成し、閉空間内に熱源となる温水を供給することにより、便座表面部材が温水に広い接触面積で直接的に接触し、良好な伝熱効率で暖房されるようにしたことを主旨としている。さらに、閉空間を複数の温水路に区分する分流ガイドを設けることにより、省エネルギ効果を高めるとともに、便座表面温度をほぼ均一化して快適性を高めることができる。本発明の暖房便座装置は、ガイド部材と、便座表面部材と、給湯手段と、で構成することができ、さらに、ガイド部材には分流ガイドを設けることができる。
【0008】
ガイド部材は、便座の一部を成すとともに、便座表面部材と共同して閉空間を区画する部材である。ガイド部材は、便器上面の形状にあわせて、例えば略環状に形成することができる。ガイド部材を形成する好ましい材質として、熱伝導率が低くかつ機械的強度を有する合成樹脂を例示することができる。なぜなら、閉空間内の温水から熱量が外部へ散逸することを抑制できるからである。
【0009】
便座表面部材は、ガイド部材の上方に配設されて便座の一部を成す部材であり、上面の一部は着座面とすることができる。便座表面部材は、ガイド部材の材質に対して熱伝導率の高い特性及び比熱の小さい特性の少なくとも一方を有する材質を用いて、わずかな間隔でガイド部材を覆う形状に形成することができる。そして、便座表面部材及びガイド部材の辺縁を、例えば溶着して密封することにより、便座の大部分に拡がる閉空間を区画することができる。したがって、この閉空間は着座面にわたって拡がり、後述するように着座面を暖房することができる。便座表面部材を形成する好ましい材質として、熱伝導率が高くかつ比熱が小さいアルミニウムやステンレスなどの金属材料を例示することができる。熱伝導率の高い特性により部材中の温度勾配を低減できる効果が生じ、比熱の小さい特性により部材の温度を上昇させるための熱量を節約できる効果が生じる。
【0010】
なお、ガイド部材と便座表面部材とを主要な部材として構成する便座は、便器上面に固定することもできるが、回動式としてもよい。回動式では、便座に回動枢支部を設け、回動枢支部を便器上面後側で回動可能に保持するようにして、上げ下げ可能な構成とすることができる。便座の後側の回動枢支部に近い箇所を付根部と称し、前側を先端部と称する。
【0011】
前記ガイド部材は、前記閉空間を複数の温水路に区分する分流ガイドをもつ、ことが好ましい。分流ガイドは、例えば、合成樹脂製のガイド部材の上面に筋状に突出する突起を一体樹脂成形して形成することができ、さらに、閉空間の内部で便座表面部材と接するように配設することができる。便座表面部材に接する分流ガイドは、着座面に着座する使用者の荷重を支えて、便座表面部材の変形を低減する支持部材を兼ねることができる。分流ガイドの形状や材質は、上下方向の圧縮力に耐えられる所定の機械的強度を有するものとすることが好ましい。分流ガイドが支持部材を兼ねている態様では、便座表面部材の厚さを1mm程度と非常に薄くしても荷重に耐え、機械的強度を満足することができる。
【0012】
給湯手段は、閉空間ないしは区分された複数の温水路に温水を供給する手段である。給湯手段は、例えば温水を貯留する温水タンクと、温水を送出する送水ポンプと、温水を移送する配管部材とで構成することができ、温水の温度を調節する温度調節手段を備えるようにしてもよい。なお、便座の暖房に用いられた後の温水は、循環して加熱することにより再利用してもよく、汚物水洗用など別の用途に利用するようにしてもよい。
【0013】
以下、閉空間、複数の温水路、及び給湯手段の具体的な態様について詳述する。
【0014】
前記閉空間は、前記便座の左右に別々に区画されて前記便座の前後方向に延びる二箇所の帯状空間とされ、前記分流ガイドは、前記帯状空間を前後方向に並行する複数の前記温水路に区分する、ことが好ましい。
【0015】
閉空間の形状は、ガイド部材及び便座表面部材の互いに向かい合う面の凹凸形状を変更することにより、自在に区画することが可能である。したがって、便座の左右に別々に区画されて便座の前後方向に延びる二箇所の帯状空間を設けることができる。しかしながら、これに限定されず、便座の先端部及び付根部のいずれかで左右が連通した馬蹄形空間ないしは略U字状空間としてもよく、あるいは便座の先端部及び付根部の両方で左右が連通した略環状空間としてもよい。
【0016】
さらに、二箇所の帯状空間の内部には、分流ガイドを前後方向に配設することができ、複数の温水路を前後方向に並行に形成することができる。分流ガイドの設置数に制約はなく、左右の帯状空間でそれぞれ数個程度とすることができる。また、分流ガイドの配置にも制約はないが、略等間隔に並行配置として、区分される温水路の幅を均等化することができる。
【0017】
複数の前記温水路は前記便座の前側の先端部及び後側の付根部で合流されており、前記先端部及び前記付根部の一方に前記給湯手段が接続され、前記先端部及び前記付根部の他方に前記温水を排出する出湯手段が接続されている、ことが好ましい。
【0018】
分流ガイドの前後方向の長さを閉空間の長さよりも短くすることにより、複数の温水路が先端部及び付根部でそれぞれ合流するように形成することができる。さらに、温水路の合流された先端部及び付根部の一方に温水を供給し、他方から温水を排出することができる。すると、温水は便座内の温水路を片道だけ流れて、暖房を行うことになる。
【0019】
前記給湯手段は、前記付根部近傍から前記ガイド部材の下側を経由して前記先端部まで配設されるとともに、前記温水を供給または排出する配管部材を有する、ことでもよい。便座が回動式の場合、上下に大きく動く先端部に外部から直接配管部材を接続することは構造上難しい。したがって、付根部近傍からガイド部材の下側を経由して先端部まで配管部材を配設し、付根部付近で温水の供給と排出の両方を行う構成とすることが好ましい。
【0020】
給湯手段は、常時あるいは間欠的に温水を供給する、ようにしてもよい。少量の温水を常時供給し、または、一定時間間隔で間欠的に温水を供給することにより、便座表面を快適な温度に保つことができる。あるいは便座表面の温度を継続的に検出し、規定温度よりも低下したときに温水を供給するようにしてもよい。これらの方式は、常時保温式ということができる。
【0021】
また、給湯手段は、使用者が着座する直前に温水を供給する、ようにしてもよい。例えば、トイレの扉に開閉検知センサを設けたり、トイレ内に人感センサを設けたりして、使用者の着座を予測し、着座の直前に温水を供給することにより、短時間で便座表面を快適な温度まで暖めるようにしてもよい。この方式は、随時暖房式ということができる。
【0022】
本発明の暖房便座装置は、持ち運び可能なポータブルトイレに装備される、ことでもよい。例えば、集中温水システムを導入した家屋で給湯手段として温水コンセントを使用できる場合、ポータブルトイレを温水コンセントに接続して随時暖房式で、便座を暖房することができる。
【0023】
次に、本発明の暖房便座装置の作用について説明する。本発明では、ガイド部材と便座表面部材とで形成する閉空間内に温水を供給するので、便座表面と温水との間には便座表面部材が介在するだけである。したがって、従来のように温水管材やその他の部材を暖めるための余分な熱量が不要となる。また、従来のような複数の部材間の熱抵抗が存在せず、さらには便座表面部材に熱伝導率の高い材質を用いた態様では厚さ方向における温度勾配が小さくなるので、供給する温水の温度を従来よりも低くすることができる。一方、便座表面部材に比熱の小さい材質を用いた態様では、熱容量が小さいので供給する熱量を少なくすることができ、温水の供給量を低減することができる。とりわけ、分流ガイドが支持部材を兼ねた態様では、便座表面部材を薄く形成することができるので、厚さ方向の温度勾配と熱容量の両面で効果が一層顕著になる。また、ガイド部材には熱伝導率の低い材質を用いているので、余分な熱量の散逸を抑制することができる。以上説明した作用の総合的な効果により、温水の供給量を従来よりも削減することができ、温水温度を従来よりも低くすることができて、省エネルギ効果は極めて高い。
【0024】
また、供給された温水は、閉空間内全体に拡がり、分流ガイドの作用によって、各温水路内をほぼ均等に流れるので、便座表面はほぼ一様に暖められる。さらに、付根部及び先端部の一方から温水を供給し他方から温水を排出する態様では、便座内の片道の温水路中における温水の温度降下や到達の時間遅れはわずかである。これらの作用により、便座表面温度をほぼ均一化することができるので、使用者に不快感を与えるおそれがない。
【発明の効果】
【0025】
以上説明した本発明の暖房便座装置によれば、温水の供給量を従来よりも低減することができ、温水温度を従来よりも低くすることができる。また、余分な熱量を不要としたことで、使用者の着座直前に便座着座面を暖める随時暖房式とすることも可能であり、省エネルギ効果はきわめて高い。さらに、便座表面温度をほぼ均一化することができるので、使用者に不快感を与えるおそれがない。
【0026】
なお、分流ガイドが支持部材を兼ねる態様では、便座表面部材を薄く形成することによるコストダウンの経済的効果も見込むことができる。また、温水温度を従来よりも低くすることで便座表面温度が過昇するおそれを回避することができ、電熱ヒータを用いていないので電気的な事故や障害のおそれもなく、きわめて安全性、防災性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明を実施するための最良の形態を、図1及び図2を参考にして説明する。図1は、洋式便器に設置される本発明の実施例の暖房便座装置を説明する平面図である。また図2は、図1の暖房便座装置の便座内部を前側A−A方向からみた部分断面図である。実施例の暖房便座装置1は、便座8を構成するガイド部材2、便座表面部材3、芯部材81と、ガイド部材2に一体に形成された分流ガイド41〜46と、給湯手段5と、で構成されている。
【0028】
図1において、紙面手前側から奥側へと順に、便座表面部材3、ガイド部材2、芯部材81、が重ねて配設され、便座8が構成されている。便座8は、便器上面の形状にあわせて、中央に卵形の孔部をもつ略環状に形成されており、便器前側(図中下側)で環状部分の幅が狭く、便器左右から後側へと向かうにつれて湾曲し、便器後側(図中上側)で環状部分の前後の幅が拡がっている。便座8の後端は直線状とされ、後端の左右2箇所に回動枢支部82、82が形成されている。回動枢支部82、82は、便器によって回動可能に保持されており、便座8は便器に対して回動して上げ下げされるようになっている。便座8の後側の回動枢支部82、82に近い箇所が付根部83であり、前側に近い箇所が先端部84である。
【0029】
さらに、図2を参考にして、便座8の説明を続ける。便座8は、略環状の芯部材81の上側に、略環状のガイド部材2及び便座表面部材3が組み付けられて製作されるようになっている。芯部材81の底面は平らに形成されて、便器上面に戴置されるようになっている。芯部材81の上面の環状の内縁と外縁とには、それぞれ斜め上方に突出する内溶着部85、外溶着部86が形成されており、さらに内溶着部85と外溶着部86との中間には上方に直立する支持部87が形成されている。
【0030】
ガイド部材2は、熱伝導率の低い合成樹脂製で、芯部材81と類似の略環状とされ、環状の内周側で低く、外周側で高く形成されており、芯部材81との間には隙間ができている。ガイド部材2の下面の環状の幅方向の中間には、下方に突出する被支持部21が形成されている。被支持部21は、芯部材81の支持部87に当接して支持され、下向きの荷重を支持するようになっている。
【0031】
便座表面部材3も、芯部材81と類似の略環状とされ、ガイド部材2の上方(図1の紙面手前側)に配設されるようになっている。便座表面部材3の上面の一部は使用者が着座する着座面である。便座表面部材3には、熱伝導率が高く比熱が小さい材料として厚さ1mm程度のアルミニウムが用いられており、図2に示されるように、ガイド部材2とわずかな間隔を設け、内周側で低く外周側で高く形成されている。また、便座表面部材3の内縁と外縁とには、それぞれ下方に突出する内被溶着部31、外被溶着部32が形成されている。内被溶着部31及び外被溶着部32には、芯部材81の内溶着部85と外溶着部86とがそれぞれ溶着されて、便座8を構成するとともに、荷重の一部を支えるようになっている。さらに、便座表面部材3の下側の内周付近には内シール部33が形成され、外周付近には外シール部34が形成されて、ガイド部材2と共同で密封機能を果たしている。
【0032】
ガイド部材2と便座表面部材3との間の密封は、内シール部33及び外シール部34だけでなく、便座8の付根部82付近と先端部83付近でも行われている。この密封により、図1に破線で示されるように、左右別々でかつ対称な2個の扁平で湾曲した帯状閉空間6、7が区画されており、帯状閉空間6、7は着座面全体に拡がっている。
【0033】
分流ガイド41〜46は、ガイド部材2の上側に左右3本ずつ略等間隔に並行して湾曲しながら前後方向に配設されており、上方に突出して便座表面部材3に接している。分流ガイド41〜46は、2個の帯状閉空間6、7をそれぞれ4個の並行する温水路61〜64、71〜74に区分している。図2に示されるように、分流ガイド41〜46はガイド部材2の上面に一体に形成されており、樹脂成形によって容易に製作されるようになっている。また、図1に示されるように、分流ガイド41〜46の長さは、帯状閉空間6、7よりも短くされており、左右4個の温水路61〜64、71〜74は付根部83付近でそれぞれ合流されてそれぞれが付根合流点66、76とされ、同様に先端部84付近で合流されて先端合流点67、77とされている。なお、分流ガイド41〜46は、便座表面部材3に加えられる下向きの荷重を分担して支えるように形成されている。
【0034】
給湯手段5は、2箇所の付根合流点66、76に温水を供給するとともに、2箇所の先端合流点67、77から排出される使用後の温水を回収する手段である。給湯手段5は、温水タンク51、ポンプ52、給湯側三方弁53、給湯側配管部材54、便座内配管部材55、出湯側三方弁56、出湯側配管部材57、で構成されている。温水タンク51は、温水を貯留するタンクである。ポンプ52は、温水タンク51内の温水を給湯側配管部材54に送出するとともに、出湯側配管部材57から温水を回収し温水タンク51に戻すようになっている。給湯側配管部材54は、ポンプ52と付根合流点66、76とを連通させている。給湯側三方弁53は、給湯側配管部材54の途中に設けられており、外部の冷水源から水を混入させることにより温水温度を調節できるようになっている。便座内配管部材55は、図2に示されるように、ガイド部材2と芯部材81との間の隙間に配設されており、その先端551は左右の先端合流点67、77に接続され、元端552は付根部23近傍まで引き戻されている。出湯側配管部材57は、便座内配管部材55の元端552とポンプ52とを連通させている。出湯側三方弁56は、ポンプ52と温水タンク51との間に設けられており、外部の温水源から温水タンク51に温水を補給したり、使用済みの温水を温水源に戻したりできるようになっている。
【0035】
実施例の給湯手段5は、常時あるいは間欠的に温水を供給する常時保温式としても、着座直前に温水を供給する随時暖房式としても、使用することができる。
【0036】
次に、本発明の実施例の暖房便座装置1の作用について説明する。実施例において、温水に接して暖められる部材は、帯状閉空間6、7を区画する便座表面部材3とガイド部材2のみである。便座表面部材3は厚さ1mm程度のアルミニウムで形成されて熱容量は小さく、また、ガイド部材2には熱伝導率の小さな合成樹脂が用いられて熱量の散逸はわずかである。したがって、温水を移送媒体として供給する熱量を最小限とすることができる。また、便座表面部材3の板厚方向の温度降下はわずかであるので、所望される40℃程度の便座表面温度に対してわずかに高い温水を供給すればよく、温水温度は従来よりも低くすることができる。
【0037】
一方、2個の帯状閉空間6、7は左右対称に形成されているので、それぞれの付根合流点66、76には概ね等量の温水が供給される。さらに、温水は、分流ガイド41〜46の作用によって各温水路61〜64、71〜74内をほぼ均等に流れるので、便座表面部材3は幅方向においてほぼ一様に暖められる。また、温水は、付根合流点66、76から先端合流点67、77までの片道の短い距離を流れた後に排出されるので、各温水路61〜64、71〜74における温水の温度降下や到達の時間遅れはわずかである。したがって、便座表面部材3の表面温度は幅方向にも前後方向にもほぼ均一となって、快適である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】洋式便器に設置される本発明の実施例の暖房便座装置を説明する平面図である。
【図2】図1の実施例の暖房便座装置を、前側からみた部分断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1:暖房便座装置
2:ガイド部材
21:被支持部
3:便座表面部材
31:内被溶着部 32:外被溶着部
33:内シール部 34:外シール部
41〜46:分流ガイド
5:給湯手段
51:温水タンク 52:ポンプ 53:給湯側三方弁
54:給湯側配管部材 55:便座内配管部材 56:出湯側三方弁
57:出湯側配管部材
6、7:帯状閉空間。
61〜64、71〜74:温水路
66、76:付根合流点
67、77:先端合流点
8:便座
81:芯部材 82:回動枢支部 83:付根部
84:先端部 85:内溶着部 86:外溶着部
87:支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器上面の形状にあわせて形成され便座の一部を成すガイド部材と、
前記ガイド部材の材質に対して熱伝導率の高い特性及び比熱の小さい特性の少なくとも一方を有する材質を用いて形成されるとともに、前記ガイド部材の上方に配設されて前記便座の一部を成しかつ上面の一部は着座面とされ、さらに前記ガイド部材との間に閉空間を区画する便座表面部材と、
前記閉空間に温水を供給する給湯手段と、
を備えることを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記閉空間を複数の温水路に区分する分流ガイドをもつ、請求項1に記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記閉空間は、前記便座の左右に別々に区画されて前記便座の前後方向に延びる二箇所の帯状空間とされ、前記分流ガイドは、前記帯状空間を前後方向に並行する複数の前記温水路に区分する、請求項2に記載の暖房便座装置。
【請求項4】
複数の前記温水路は前記便座の前側の先端部及び後側の付根部で合流されており、前記先端部及び前記付根部の一方に前記給湯手段が接続され、前記先端部及び前記付根部の他方に前記温水を排出する出湯手段が接続されている、請求項2または3のいずれか一項に記載の暖房便座装置。
【請求項5】
前記給湯手段は、前記付根部近傍から前記ガイド部材の下側を経由して前記先端部まで配設されるとともに、前記温水を供給または排出する配管部材を有する、請求項4に記載の暖房便座装置。

【図1】
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【図2】
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