暖房便座装置
【課題】 使用者に不快感を与えずに短時間で便座の加温が可能で、便座の着座面から熱源を離脱させることで安全性を確保できる暖房便座装置を提供する。
【解決手段】 暖房便座装置1は、中空状を呈し、使用者が着座する熱伝導性を持つ着座面21を有する便座20と、便座20に対して開閉自在となり、断面逆U字状を呈し、閉状態時には着座面21に被さる便蓋30と、便蓋30の裏面の凹部に設けられ、便蓋が閉状態には着座面21の内周および中央には当接せず、外周の周囲のみに当接して着座面21を温める発熱部31と、発熱部31を制御する制御装置53とを備えた構成とした。
【解決手段】 暖房便座装置1は、中空状を呈し、使用者が着座する熱伝導性を持つ着座面21を有する便座20と、便座20に対して開閉自在となり、断面逆U字状を呈し、閉状態時には着座面21に被さる便蓋30と、便蓋30の裏面の凹部に設けられ、便蓋が閉状態には着座面21の内周および中央には当接せず、外周の周囲のみに当接して着座面21を温める発熱部31と、発熱部31を制御する制御装置53とを備えた構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座を暖房する暖房便座装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の暖房便座装置について、特許文献1、特許文献2が開示されている。
【0003】
特許文献1の暖房便座装置は、便座に対して開閉自在に取り付けられた便蓋と、便蓋の便座側の面を被覆するように設けられた温度センサを有するヒータと、便座が所定温度になるようにヒータへの給電を制御する第1制御手段と、人がトイレ空間にいないことを検知する人体検知手段と、便蓋を自動的に閉じる自動閉止手段と、人体検知手段によりトイレ空間に人がいないことを検知したとき自動閉止手段を作動させる第2制御手段を備えた構成が知られている。さらに、この暖房便座装置の便座は、断熱性を有する多孔質の材料からなり、表面に熱伝導性のスキン層を形成した便座カバーを便座と便蓋の間に設けられた空隙に装着する構成である。また、この暖房便座装置は、人体検出手段によりトイレ空間に人がいないことを検知したとき、自動閉止手段によって便蓋を閉じることができ、常に自動的に便座カバーを加温することができる。
【0004】
特許文献2の暖房便装置は便座の内側に固着された便座ヒータと、便座ヒータへの給電を制御する便座給電制御部と、便座の表面との接触面積が35%以上となる形状の便蓋と、便座の表面を温め、便蓋側に取り付けられた便蓋ヒータと、便蓋ヒータへの給電を制御する便蓋給電制御部とで構成されている。この暖房便座装置は、便座内部及び便蓋内部の両側にヒータを取り付けて加温しているので、便座及び便蓋の両方の着座表面に対して加温時間を短縮することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−299695号公報
【特許文献2】特開2000−262434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1の暖房便座装置は、便蓋に取り付けられたヒータが短時間で加温するために便座の表面全体を被覆するように便蓋の全体に設けられているので、便蓋を上げて使用者が便座に着座とした際に、使用者は背中にヒータの一部が接触し、不快と感じるおそれがある。この暖房便座装置は、便座と便蓋に取り付けられたヒータとの間に便座カバーを取り付ける空隙が設けられており、便座カバーの大きさによっては、空隙が埋まらずに輻射する状態となるため、便座を加温するヒータの加温時間又は加熱温度によっては消費電力が多くなる。さらに、この暖房便座装置は、便蓋を閉じた後に便座表面を保温し、広範囲の面積を温める構造であるためにエネルギの消費が大きくなるおそれがある。さらに、特許文献2の暖房便座装置は、使用者と接触している便座をヒータによって直接過熱し、着座中は、便座を暖房する熱源が便座から離れないので使用者の安全性を脅かすおそれがある。
【0007】
したがって、本発明は使用者に不快感を与えることなく短時間で便座の加温が可能で、便座の着座面から熱源を離脱させることでより安全性を確保できる暖房便座装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために講じた手段は、中空状を呈し、使用者が着座する熱伝導性を持つ着座面を有する便座と、便座に対して開閉自在となり、断面逆U字状を呈し、閉状態時には着座面に被さる便蓋と、便蓋の裏面の凹部に設けられ、便蓋が閉状態には着座面の内周および中央には当接せず、外周の周囲のみに当接して着座面を温める発熱部と、発熱部を制御する制御装置とを備えた構成とした。
【0009】
この場合、便座は中空部より着座面の直下まで連通する第1通風孔と、便座の中空部に対して温風を送風する温風送風装置とを備え、制御装置は温風送風装置も制御し、発熱部により着座面の外周を加温すると共に、温風送風装置より温風を中空部に供給して着座面を第1通風孔を介して内側から加温すると良い。
【0010】
また、着座面と中空部までの間に着座面からの熱の放出を抑制する断熱部が設けられており、断熱部には、第1通風孔の断熱部を通過する領域に第2通風孔が形成されていると良い。
【0011】
また、便座の前方には、温風送風装置によって中空部内に送風された温風を排気する排気口を有していると良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、この暖房便座装置は、発熱部が凹部形状の便蓋内部の内周に設けられているため、加温後に便蓋を開く際に、便蓋が開動作をすると同時に熱源である発熱部を使用者が着座する便座から離脱させることが可能であり、使用時の安全性を向上できる。また、この暖房便座装置は、凹部形状の便蓋内部の内周に発熱部を設けていることで、便蓋の開動作後に発熱部が使用者の背中に接触することを抑制し、使用者の不快感を取り除くことが可能となる。また、この暖房便座装置は、着座面が熱伝導性を持つ素材で形成されているため、発熱部が着座面の外周と当接するだけでも熱伝導によって着座表面を十分に加温することが可能である。
【0013】
さらに、この暖房便座装置は、中空形状の便座内に温風を送風し、便座に第1通風孔を設けることで便座の着座面を外側のみならず内側からも温めており、便座に対して加熱時間の短縮を行うことが可能である。
【0014】
また、便座が便座の中空部と着座面の間に断熱部を有しているため、発熱部によって温められた着座面の熱が断熱部以降に伝わりにくくなり、暖房便座装置は、断熱部を設けていないときと比べて発熱部への通電量は少なく、所定の温度まで上昇させる時間を短くすることができる。また、この断熱部には、第2通風孔が設けられているため、便座内の温風を着座面へと導くことができ、着座面を加温することが可能となる。
【0015】
また、便座の下面の前方には、温風送風装置によって中空状の便座内に送られた温風を排気する排気口を有している。このため、温風は、排気口により送風ルートが確保されるので、便座内をスムーズに移動でき、便座内の滞留を抑制し所定の温度に便座を加熱することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態における暖房便座装置の構成の斜視図。
【図2】便座の上視図。
【図3】図2に示すA−A断面図。
【図4】図2に示すB−B断面図。
【図5】図2に示すC−C断面図。
【図6】図5に示すD−D断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例に係わる暖房便座装置1の構成について、図1を用いて説明する。図1は暖房便座装置1の構成の斜視図を示している。
【0018】
図1より、暖房便座装置1は、便器10に取り付けられた便座20と、便座20に対して回動自在な便蓋30が設けられている。この便座20には、着座表面を覆う金属製の着座面21が設けられている。また、この便蓋30は、電動開閉装置(図示せず)によって便座に対して自動で開閉が可能となっている。さらに、便蓋30は、凹状の内部の内周に発熱部31が設けられている。この発熱部31は、便蓋30の閉状態時には、着座面21の内周及び中央とは当接することなく、外周の周囲のみに当接して着座面21を加温する。さらに、この暖房便座装置1は、使用者がトイレ空間へ入室したことを検知する人体検知センサ41と、使用者が便座20に着座しているかを検知する着座センサ51と、便座20を温める暖房便座装置1や人体の局部を洗浄する局部洗浄装置(図示せず)等を操作する操作部40が設けられている。さらに、便座20内部の着座着座面21の下面は中空部22を成しており、着座部分の後方部側に洗浄装置と洗浄後の局部を乾燥する局部乾燥装置(図示せず)と同様の温風を生成する加熱部(図示せず)を有する温風送風装置52が設けられている。局部洗浄装置や局部乾燥装置、温風送風装置52を収納している収容部分は本体50に設けられている。この本体50には、温風送風装置52、発熱部31等を制御する制御部53も設けられている。
【0019】
次に、暖房便座装置1の便座20の内部構造について図2から図6を用いて説明する。図2は、図1に示す暖房便座装置1の便座20の上視図を示す。図3は便蓋30の閉動作時の図2に示されたA−A断面図を示し、図4は便蓋30の閉動作時の図2に示されたB−B断面図を示している。また、図5は便蓋30の閉動作時の図2に示されたC−C断面図を示し、図6は図5におけるD−D断面図を示している。
【0020】
図2より、暖房便座装置1の便座20に対して図3から図5までの断面を示し、使用者の着座する方向を前方向とする。
【0021】
図3より、便座20の側部(A−A断面)の構造について説明する。便座20の土台は、樹脂材(例えばポリプロピレン等)である便座上方部23と便座下方部24によって構成され、便座上方部23及び便座下方部24とが重合しすることで中空部22を形成している。便座20は、便座上方部23の上面を被覆するように便座上方部23に沿って断熱材(例えば、ウレタン、ポリエチレン等)である断熱部25が設けられており、この断熱部25の上面には断熱部25に沿うように着座面21が被覆されている。便座上方部23及び断熱部25には、それぞれ着座面の直下に第1通風孔23a及び第2通風孔25aが形成されている。便座上方部23の第1通風孔23aの断熱部25には第2通風孔25aが設けられているため、温風送風装置52によって便座20内に送風された温風を着座面21の裏面へと導くことが可能である。便座下方部24には、便器10と当接するゴム脚26が設けられている。便蓋30には、凹部形状の便蓋30側内部の内周に沿って発熱部31が設けられている。この発熱部31は、内部に熱源となるヒータ(図示せず)及び発熱部31の温度を検知する温度センサ(図示せず)が内蔵されている。発熱部31は、凹部形状の便蓋30側内部の内周に設けられ、略U字形状に形成されているため、便蓋30の閉状態時には便座20の着座面21の一端と当接している。この着座面21は熱源となる発熱部31から着座面21の他端までは距離があるため、着座面21の素材は、熱伝達の良好な金属(例えば、アルミやアルミ合金等)等にすることで、便座20表面を熱が伝わりやすくなるため短時間で所定温度まで温めることが可能である。さらに、便蓋30には発熱部31を固定する固定部32が設けられている。この固定部32には、発熱部31の熱源となるヒータ及び温度センサへと通電するリード線(図示せず)を収容している。この発熱部31は、着座面の内周及び中央部には当接していないため、弾性体(例えばシリコン)等で形成することで、着座面21と弾性変形して当接するので着座面21との接触部分を確保して加温の効率を向上させると共に、当接による着座面21のキズ等の発生を抑制できる。
【0022】
図4より、便座20の前方部(B−B断面)の内部構造を説明する。便座20の前方部の便座下方部24には、便座20内の温風を排気する排気口24aが少なくとも1つ設けられている。この排気口24aは、温風が便器10内に排気されないように、便座下方部24の便器10外側に温風を排気するように形成されている。
【0023】
図5、図6より、便座20の後方部(C−C断面)の構造を説明する。便座20の後方部の便座下方部24には温風送風装置52から送風される温風を取り込む開口部24bが設けられている。図6に示されるような便座上方部23の第1通風孔23aと断熱部25の第2通風孔25aは、矩形状であり、便座20の後方に形成されている。さらに、通風孔23a、25aは、便座20の側部の数箇所に配設されているが、便座20の前方部には配設されていない。これは、便座20に使用者が着座した際に、便座20の前方は、便座20の後方及び側部に比べて人体と触れる面積が少ないため、便座が十分に加温されていなくても使用者の不快感を軽減できる。この通風孔23a、25aの間隔や幅は図5に示されるように限定されるものではない。ただし、使用者が着座した際に、便座上方部23等に破損することが無いように耐久性を考慮して、通風孔23a、25aの間隔及び幅を設ける必要がある
次に、暖房便座装置1の動作について説明する。
【0024】
この暖房便座装置1は、使用者がトイレ空間へ入室した際に人体検知センサ41によって使用者を感知して暖房が開始される。温風による加熱が設定されている場合、発熱部31に取り付けられた第1温度センサ(図示せず)と温風送風装置52に取り付けられた第2温度センサ(図示せず)からの信号をもとに、制御部53が発熱部31及び温風送風装置52を制御する。これにより、便座20の設定温度に対して、発熱部31は発熱し、温風送風装置52は温風を生成して便座20内(中空部22)に送風する。そして、着座面21は、発熱部31と温風送風装置52の温風によって加温される。着座面21の温度が所定温度へ到達したかの判断は、着座面21に取り付けられた第3温度センサ(図示せず)によって行う。便座20の着座面21の温度が所定温度(例えば、30℃)へ上昇すると、電動開閉装置によって便蓋30が便座20に対して自動で全開する。このとき、使用者は、便座20が所定温度に達したことを確認して便座20に着座することが可能となる。使用者の着座後、暖房便座装置1は、温風送風装置52を停止させることで温風による加温を終了する。このため、この暖房便座装置1は、着座面21を加温する熱源が使用者の体温のみとなり、着座面21に対して過度な加温が行われないために安全性を向上できる。また、金属製の着座面21の直下には、断熱部25が設けられているため、着座面21は、使用者の体温でも十分に使用者が不快に思うことなく着座が可能である。
【0025】
また、使用者が着座後に背中暖房を便座20の操作部40に設けられた操作スイッチ(図示せず)によって指示した場合は、全開となった便蓋30に取り付けられている発熱部31を加熱する。この発熱部31は、便蓋30内部の内周に沿って形成されているため背中から腰にかけて直接発熱部分が触れることなく背中を温めることが可能である。
【0026】
そして、使用者が便座20から離れる際は、便座20に取り付けられた着座センサ51がオフとなり、一定時間が経過し、使用者がトイレ空間から退室したことで人体検知センサ41がオフとなると便蓋30が全閉する。
【0027】
以上、実施例の構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、以下に示す態様に変更してもよい。
【0028】
・発熱部31を固定する固定部32が断熱材又は断熱構造であっても良い。これにより、着座面21と接触する発熱部31の熱は、固定部32によって便蓋30への熱を抑制できるため、効率良く着座面21へと熱の伝達が可能となる。
【0029】
・この暖房便座装置1は、便蓋30の端部を延在し、便座20に対してカバー部を形成しても良い。これにより、保温機能を追加した際に、暖房便座装置1は、便座20の熱の放熱を抑制でき、カバー部が無い場合と比べて便座20の加熱時間が短縮できるため、消費電力の削減も可能である。
【0030】
・所定温度に到達したかの判断は、着座面21に取り付けられた第3温度センサの信号ではなく、予め設定した発熱部31及び温風送風装置52の加熱時間によって行われても良い。
【0031】
・制御部53は、本体部50内に設けることに限定されることはない。例えば、便座の側部に設けられた操作部40に設けられていても良い。
【0032】
・発熱部31は熱電素子にて構成しても良い。発熱部31は、通電によって当接する着座面21を所定温度に下げることが可能である。夏季などの室温及び湿度が高い場合に、使用者が冷感のある便座に座ることも可能となる。
【0033】
・暖房便座装置1の暖房開始が人体検知センサ41の信号をもとに行われなくても良い。使用者が入室後に、使用者が室内や便座に取り付けられた操作ボタン等を押すことによって便座20への加温を開始する方法を用いてもよく、必ずしも自動で行う必要はない。ただし、所定温度に達したときに
使用者が所定温度であると認識できるもの(例えば、ランプ等)が必要となる。
【0034】
・発熱部31は、便蓋30の凹状の内周に沿った略U字形状に限定することなく、発熱部分が内周上に断続的に設けられていても良い。
【符号の説明】
【0035】
1 暖房便座装置
20 便座
21 着座面
22 中空部
23a 第1通風孔
24a 排気口
25 断熱部
25a 第2通風孔
30 便蓋
31 発熱部
52 温風送風装置
53 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座を暖房する暖房便座装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の暖房便座装置について、特許文献1、特許文献2が開示されている。
【0003】
特許文献1の暖房便座装置は、便座に対して開閉自在に取り付けられた便蓋と、便蓋の便座側の面を被覆するように設けられた温度センサを有するヒータと、便座が所定温度になるようにヒータへの給電を制御する第1制御手段と、人がトイレ空間にいないことを検知する人体検知手段と、便蓋を自動的に閉じる自動閉止手段と、人体検知手段によりトイレ空間に人がいないことを検知したとき自動閉止手段を作動させる第2制御手段を備えた構成が知られている。さらに、この暖房便座装置の便座は、断熱性を有する多孔質の材料からなり、表面に熱伝導性のスキン層を形成した便座カバーを便座と便蓋の間に設けられた空隙に装着する構成である。また、この暖房便座装置は、人体検出手段によりトイレ空間に人がいないことを検知したとき、自動閉止手段によって便蓋を閉じることができ、常に自動的に便座カバーを加温することができる。
【0004】
特許文献2の暖房便装置は便座の内側に固着された便座ヒータと、便座ヒータへの給電を制御する便座給電制御部と、便座の表面との接触面積が35%以上となる形状の便蓋と、便座の表面を温め、便蓋側に取り付けられた便蓋ヒータと、便蓋ヒータへの給電を制御する便蓋給電制御部とで構成されている。この暖房便座装置は、便座内部及び便蓋内部の両側にヒータを取り付けて加温しているので、便座及び便蓋の両方の着座表面に対して加温時間を短縮することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−299695号公報
【特許文献2】特開2000−262434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1の暖房便座装置は、便蓋に取り付けられたヒータが短時間で加温するために便座の表面全体を被覆するように便蓋の全体に設けられているので、便蓋を上げて使用者が便座に着座とした際に、使用者は背中にヒータの一部が接触し、不快と感じるおそれがある。この暖房便座装置は、便座と便蓋に取り付けられたヒータとの間に便座カバーを取り付ける空隙が設けられており、便座カバーの大きさによっては、空隙が埋まらずに輻射する状態となるため、便座を加温するヒータの加温時間又は加熱温度によっては消費電力が多くなる。さらに、この暖房便座装置は、便蓋を閉じた後に便座表面を保温し、広範囲の面積を温める構造であるためにエネルギの消費が大きくなるおそれがある。さらに、特許文献2の暖房便座装置は、使用者と接触している便座をヒータによって直接過熱し、着座中は、便座を暖房する熱源が便座から離れないので使用者の安全性を脅かすおそれがある。
【0007】
したがって、本発明は使用者に不快感を与えることなく短時間で便座の加温が可能で、便座の着座面から熱源を離脱させることでより安全性を確保できる暖房便座装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために講じた手段は、中空状を呈し、使用者が着座する熱伝導性を持つ着座面を有する便座と、便座に対して開閉自在となり、断面逆U字状を呈し、閉状態時には着座面に被さる便蓋と、便蓋の裏面の凹部に設けられ、便蓋が閉状態には着座面の内周および中央には当接せず、外周の周囲のみに当接して着座面を温める発熱部と、発熱部を制御する制御装置とを備えた構成とした。
【0009】
この場合、便座は中空部より着座面の直下まで連通する第1通風孔と、便座の中空部に対して温風を送風する温風送風装置とを備え、制御装置は温風送風装置も制御し、発熱部により着座面の外周を加温すると共に、温風送風装置より温風を中空部に供給して着座面を第1通風孔を介して内側から加温すると良い。
【0010】
また、着座面と中空部までの間に着座面からの熱の放出を抑制する断熱部が設けられており、断熱部には、第1通風孔の断熱部を通過する領域に第2通風孔が形成されていると良い。
【0011】
また、便座の前方には、温風送風装置によって中空部内に送風された温風を排気する排気口を有していると良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、この暖房便座装置は、発熱部が凹部形状の便蓋内部の内周に設けられているため、加温後に便蓋を開く際に、便蓋が開動作をすると同時に熱源である発熱部を使用者が着座する便座から離脱させることが可能であり、使用時の安全性を向上できる。また、この暖房便座装置は、凹部形状の便蓋内部の内周に発熱部を設けていることで、便蓋の開動作後に発熱部が使用者の背中に接触することを抑制し、使用者の不快感を取り除くことが可能となる。また、この暖房便座装置は、着座面が熱伝導性を持つ素材で形成されているため、発熱部が着座面の外周と当接するだけでも熱伝導によって着座表面を十分に加温することが可能である。
【0013】
さらに、この暖房便座装置は、中空形状の便座内に温風を送風し、便座に第1通風孔を設けることで便座の着座面を外側のみならず内側からも温めており、便座に対して加熱時間の短縮を行うことが可能である。
【0014】
また、便座が便座の中空部と着座面の間に断熱部を有しているため、発熱部によって温められた着座面の熱が断熱部以降に伝わりにくくなり、暖房便座装置は、断熱部を設けていないときと比べて発熱部への通電量は少なく、所定の温度まで上昇させる時間を短くすることができる。また、この断熱部には、第2通風孔が設けられているため、便座内の温風を着座面へと導くことができ、着座面を加温することが可能となる。
【0015】
また、便座の下面の前方には、温風送風装置によって中空状の便座内に送られた温風を排気する排気口を有している。このため、温風は、排気口により送風ルートが確保されるので、便座内をスムーズに移動でき、便座内の滞留を抑制し所定の温度に便座を加熱することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態における暖房便座装置の構成の斜視図。
【図2】便座の上視図。
【図3】図2に示すA−A断面図。
【図4】図2に示すB−B断面図。
【図5】図2に示すC−C断面図。
【図6】図5に示すD−D断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例に係わる暖房便座装置1の構成について、図1を用いて説明する。図1は暖房便座装置1の構成の斜視図を示している。
【0018】
図1より、暖房便座装置1は、便器10に取り付けられた便座20と、便座20に対して回動自在な便蓋30が設けられている。この便座20には、着座表面を覆う金属製の着座面21が設けられている。また、この便蓋30は、電動開閉装置(図示せず)によって便座に対して自動で開閉が可能となっている。さらに、便蓋30は、凹状の内部の内周に発熱部31が設けられている。この発熱部31は、便蓋30の閉状態時には、着座面21の内周及び中央とは当接することなく、外周の周囲のみに当接して着座面21を加温する。さらに、この暖房便座装置1は、使用者がトイレ空間へ入室したことを検知する人体検知センサ41と、使用者が便座20に着座しているかを検知する着座センサ51と、便座20を温める暖房便座装置1や人体の局部を洗浄する局部洗浄装置(図示せず)等を操作する操作部40が設けられている。さらに、便座20内部の着座着座面21の下面は中空部22を成しており、着座部分の後方部側に洗浄装置と洗浄後の局部を乾燥する局部乾燥装置(図示せず)と同様の温風を生成する加熱部(図示せず)を有する温風送風装置52が設けられている。局部洗浄装置や局部乾燥装置、温風送風装置52を収納している収容部分は本体50に設けられている。この本体50には、温風送風装置52、発熱部31等を制御する制御部53も設けられている。
【0019】
次に、暖房便座装置1の便座20の内部構造について図2から図6を用いて説明する。図2は、図1に示す暖房便座装置1の便座20の上視図を示す。図3は便蓋30の閉動作時の図2に示されたA−A断面図を示し、図4は便蓋30の閉動作時の図2に示されたB−B断面図を示している。また、図5は便蓋30の閉動作時の図2に示されたC−C断面図を示し、図6は図5におけるD−D断面図を示している。
【0020】
図2より、暖房便座装置1の便座20に対して図3から図5までの断面を示し、使用者の着座する方向を前方向とする。
【0021】
図3より、便座20の側部(A−A断面)の構造について説明する。便座20の土台は、樹脂材(例えばポリプロピレン等)である便座上方部23と便座下方部24によって構成され、便座上方部23及び便座下方部24とが重合しすることで中空部22を形成している。便座20は、便座上方部23の上面を被覆するように便座上方部23に沿って断熱材(例えば、ウレタン、ポリエチレン等)である断熱部25が設けられており、この断熱部25の上面には断熱部25に沿うように着座面21が被覆されている。便座上方部23及び断熱部25には、それぞれ着座面の直下に第1通風孔23a及び第2通風孔25aが形成されている。便座上方部23の第1通風孔23aの断熱部25には第2通風孔25aが設けられているため、温風送風装置52によって便座20内に送風された温風を着座面21の裏面へと導くことが可能である。便座下方部24には、便器10と当接するゴム脚26が設けられている。便蓋30には、凹部形状の便蓋30側内部の内周に沿って発熱部31が設けられている。この発熱部31は、内部に熱源となるヒータ(図示せず)及び発熱部31の温度を検知する温度センサ(図示せず)が内蔵されている。発熱部31は、凹部形状の便蓋30側内部の内周に設けられ、略U字形状に形成されているため、便蓋30の閉状態時には便座20の着座面21の一端と当接している。この着座面21は熱源となる発熱部31から着座面21の他端までは距離があるため、着座面21の素材は、熱伝達の良好な金属(例えば、アルミやアルミ合金等)等にすることで、便座20表面を熱が伝わりやすくなるため短時間で所定温度まで温めることが可能である。さらに、便蓋30には発熱部31を固定する固定部32が設けられている。この固定部32には、発熱部31の熱源となるヒータ及び温度センサへと通電するリード線(図示せず)を収容している。この発熱部31は、着座面の内周及び中央部には当接していないため、弾性体(例えばシリコン)等で形成することで、着座面21と弾性変形して当接するので着座面21との接触部分を確保して加温の効率を向上させると共に、当接による着座面21のキズ等の発生を抑制できる。
【0022】
図4より、便座20の前方部(B−B断面)の内部構造を説明する。便座20の前方部の便座下方部24には、便座20内の温風を排気する排気口24aが少なくとも1つ設けられている。この排気口24aは、温風が便器10内に排気されないように、便座下方部24の便器10外側に温風を排気するように形成されている。
【0023】
図5、図6より、便座20の後方部(C−C断面)の構造を説明する。便座20の後方部の便座下方部24には温風送風装置52から送風される温風を取り込む開口部24bが設けられている。図6に示されるような便座上方部23の第1通風孔23aと断熱部25の第2通風孔25aは、矩形状であり、便座20の後方に形成されている。さらに、通風孔23a、25aは、便座20の側部の数箇所に配設されているが、便座20の前方部には配設されていない。これは、便座20に使用者が着座した際に、便座20の前方は、便座20の後方及び側部に比べて人体と触れる面積が少ないため、便座が十分に加温されていなくても使用者の不快感を軽減できる。この通風孔23a、25aの間隔や幅は図5に示されるように限定されるものではない。ただし、使用者が着座した際に、便座上方部23等に破損することが無いように耐久性を考慮して、通風孔23a、25aの間隔及び幅を設ける必要がある
次に、暖房便座装置1の動作について説明する。
【0024】
この暖房便座装置1は、使用者がトイレ空間へ入室した際に人体検知センサ41によって使用者を感知して暖房が開始される。温風による加熱が設定されている場合、発熱部31に取り付けられた第1温度センサ(図示せず)と温風送風装置52に取り付けられた第2温度センサ(図示せず)からの信号をもとに、制御部53が発熱部31及び温風送風装置52を制御する。これにより、便座20の設定温度に対して、発熱部31は発熱し、温風送風装置52は温風を生成して便座20内(中空部22)に送風する。そして、着座面21は、発熱部31と温風送風装置52の温風によって加温される。着座面21の温度が所定温度へ到達したかの判断は、着座面21に取り付けられた第3温度センサ(図示せず)によって行う。便座20の着座面21の温度が所定温度(例えば、30℃)へ上昇すると、電動開閉装置によって便蓋30が便座20に対して自動で全開する。このとき、使用者は、便座20が所定温度に達したことを確認して便座20に着座することが可能となる。使用者の着座後、暖房便座装置1は、温風送風装置52を停止させることで温風による加温を終了する。このため、この暖房便座装置1は、着座面21を加温する熱源が使用者の体温のみとなり、着座面21に対して過度な加温が行われないために安全性を向上できる。また、金属製の着座面21の直下には、断熱部25が設けられているため、着座面21は、使用者の体温でも十分に使用者が不快に思うことなく着座が可能である。
【0025】
また、使用者が着座後に背中暖房を便座20の操作部40に設けられた操作スイッチ(図示せず)によって指示した場合は、全開となった便蓋30に取り付けられている発熱部31を加熱する。この発熱部31は、便蓋30内部の内周に沿って形成されているため背中から腰にかけて直接発熱部分が触れることなく背中を温めることが可能である。
【0026】
そして、使用者が便座20から離れる際は、便座20に取り付けられた着座センサ51がオフとなり、一定時間が経過し、使用者がトイレ空間から退室したことで人体検知センサ41がオフとなると便蓋30が全閉する。
【0027】
以上、実施例の構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、以下に示す態様に変更してもよい。
【0028】
・発熱部31を固定する固定部32が断熱材又は断熱構造であっても良い。これにより、着座面21と接触する発熱部31の熱は、固定部32によって便蓋30への熱を抑制できるため、効率良く着座面21へと熱の伝達が可能となる。
【0029】
・この暖房便座装置1は、便蓋30の端部を延在し、便座20に対してカバー部を形成しても良い。これにより、保温機能を追加した際に、暖房便座装置1は、便座20の熱の放熱を抑制でき、カバー部が無い場合と比べて便座20の加熱時間が短縮できるため、消費電力の削減も可能である。
【0030】
・所定温度に到達したかの判断は、着座面21に取り付けられた第3温度センサの信号ではなく、予め設定した発熱部31及び温風送風装置52の加熱時間によって行われても良い。
【0031】
・制御部53は、本体部50内に設けることに限定されることはない。例えば、便座の側部に設けられた操作部40に設けられていても良い。
【0032】
・発熱部31は熱電素子にて構成しても良い。発熱部31は、通電によって当接する着座面21を所定温度に下げることが可能である。夏季などの室温及び湿度が高い場合に、使用者が冷感のある便座に座ることも可能となる。
【0033】
・暖房便座装置1の暖房開始が人体検知センサ41の信号をもとに行われなくても良い。使用者が入室後に、使用者が室内や便座に取り付けられた操作ボタン等を押すことによって便座20への加温を開始する方法を用いてもよく、必ずしも自動で行う必要はない。ただし、所定温度に達したときに
使用者が所定温度であると認識できるもの(例えば、ランプ等)が必要となる。
【0034】
・発熱部31は、便蓋30の凹状の内周に沿った略U字形状に限定することなく、発熱部分が内周上に断続的に設けられていても良い。
【符号の説明】
【0035】
1 暖房便座装置
20 便座
21 着座面
22 中空部
23a 第1通風孔
24a 排気口
25 断熱部
25a 第2通風孔
30 便蓋
31 発熱部
52 温風送風装置
53 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状を呈し、使用者が着座する熱伝導性を持つ着座面を有する便座と、
該便座に対して開閉自在となり、断面逆U字状を呈し、閉状態時には前記着座面に被さる便蓋と、
前記便蓋の裏面の凹部に設けられ、前記便蓋が閉状態には前記着座面の内周および中央には当接せず、外周の周囲のみに当接して前記着座面を温める発熱部と、
前記発熱部を制御する制御装置とを備えた暖房便座装置。
【請求項2】
前記便座は前記中空部より前記着座面の直下まで連通する第1通風孔と、
前記便座の中空部に対して温風を送風する温風送風装置とを備え、前記制御装置は前記温風送風装置も制御し、前記発熱部により前記着座面の外周を加温すると共に、前記温風送風装置より温風を前記中空部に供給して前記着座面を前記第1通風孔を介して内側から加温する請求項1に記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記着座面と前記中空部までの間に前記着座面からの熱の放出を抑制する断熱部が設けられており、前記第1通風孔の前記断熱部を通過する領域に第2通風孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記便座の前方には、前記温風送風装置によって前記中空部内に送風された温風を排気する排気口を有していることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の暖房便座装置。
【請求項1】
中空状を呈し、使用者が着座する熱伝導性を持つ着座面を有する便座と、
該便座に対して開閉自在となり、断面逆U字状を呈し、閉状態時には前記着座面に被さる便蓋と、
前記便蓋の裏面の凹部に設けられ、前記便蓋が閉状態には前記着座面の内周および中央には当接せず、外周の周囲のみに当接して前記着座面を温める発熱部と、
前記発熱部を制御する制御装置とを備えた暖房便座装置。
【請求項2】
前記便座は前記中空部より前記着座面の直下まで連通する第1通風孔と、
前記便座の中空部に対して温風を送風する温風送風装置とを備え、前記制御装置は前記温風送風装置も制御し、前記発熱部により前記着座面の外周を加温すると共に、前記温風送風装置より温風を前記中空部に供給して前記着座面を前記第1通風孔を介して内側から加温する請求項1に記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記着座面と前記中空部までの間に前記着座面からの熱の放出を抑制する断熱部が設けられており、前記第1通風孔の前記断熱部を通過する領域に第2通風孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記便座の前方には、前記温風送風装置によって前記中空部内に送風された温風を排気する排気口を有していることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の暖房便座装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2012−10834(P2012−10834A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148622(P2010−148622)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]