説明

暖房機の動作制御方法及び装置

【課題】 業務用の暖房機を使用する際の省エネルギ性及び経済性を高めるとともに、作業等の中断による時間的損失の発生を回避し、また、低騒音化にも寄与する。
【解決手段】 予め、暖房機H,Heの動作を制御する制御部2に、少なくとも燃焼量の大きい第一動作Pf及び動作開始toから第一動作Pfを行う第一動作時間Δtfa…とこの第一動作時間Δtfa…の経過後に行う第一動作Pfよりも燃焼量の小さい第二動作Psが含まれる複数の異なる動作制御パターンXa…を、外気温度条件に対応させて設定した省エネ動作モードMeを設け、暖房機H,Heを運転する際に、制御部2は、温度センサ3により外気温度Toを検出するとともに、検出した外気温度Toに対応する動作制御パターンXa…を選択し、選択した動作制御パターンXa…に従って暖房機H,Heの動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料を燃焼させて暖房を行う暖房機の動作を制御する際に用いて好適な暖房機の動作制御方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体燃料を燃焼させて暖房を行う暖房機であって、特に、キャスタ(車輪)やハンドルなどを付設することにより可搬式に構成し、工場や体育館等の広い屋内及び作業現場等の屋外における様々な場所での用途を想定した業務用可搬式暖房機は知られており、既に本出願人もこの種の暖房機に用いて好適な赤外線発生装置(暖房機)を特許文献1により提案した。
【0003】
この赤外線発生装置は、赤外線を効率良く放出することを目的としたものであり、気化した液体燃料を触媒燃焼可能な触媒層を有し、その前面が赤外線を放射する赤外線放射面となるように外に表れており、さらに、この触媒層の後方に、当該触媒層の輻射熱により加熱される多孔性の輻射板が当該触媒層に面して配置されることにより、液体燃料を気化する気化室を有し、この気化室で気化した液体燃料が触媒層で一次燃料される構成を備えている。
【特許文献1】特開2001−12706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の赤外線発生装置(暖房機)は、次のような改善すべき課題も残されていた。
【0005】
第一に、この種の暖房機に、外気温度が設定温度になるように燃焼量を自動調整する温度制御機能を設けた場合、この温度制御機能は、その性質上、暖房機を暖房能力に見合う室内等で使用するときは相応に機能するが、空気が流動する屋外或いはこれに類似する環境で使用するときは実質的に機能せず、最大出力(最大燃焼量)により運転が継続してしまう。一方、使用環境によっては、所定のエリアを局所的に暖房すれば良い場合も少なくないため、最大出力が継続した際には、反って暑くなりすぎてしまう場合もある。このように、この種の業務用暖房機は多種多様な用途で使用されるため、本来的に無駄な燃焼消費が発生しやすい側面があり、省エネルギ性及び経済性の観点から更なる改善の余地があった。
【0006】
第二に、この種の暖房機に、燃焼量をマニュアル設定可能なマニュアル設定機能を設ければ、例えば、上述のように暑すぎた場合、使用者は必要に応じて燃焼量が小さくなるようにマニュアル操作することができる。しかし、業務用の暖房機は、主に、工場内や作業現場等で使用することが多いため、燃焼量のマニュアル操作は、作業等の中断を招くことになり、中断による時間的損失が無視できないとともに、作業内容にも悪影響を及ぼす虞れがある。
【0007】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した暖房機の動作制御方法及び装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る暖房機の動作制御方法は、上述した課題を解決するため、液体燃料を燃焼させて暖房を行う暖房機H,Heの動作を制御する動作制御方法において、予め、暖房機H,Heの動作を制御する制御部2に、少なくとも燃焼量の大きい第一動作Pf及び動作開始toから第一動作Pfを行う第一動作時間Δtfa…とこの第一動作時間Δtfa…の経過後に行う第一動作Pfよりも燃焼量の小さい第二動作Psが含まれる複数の異なる動作制御パターンXa…を、外気温度条件に対応させて設定した動作モード(省エネ動作モード)Meを設け、暖房機H,Heを運転する際に省エネ動作モードMeが選択されたなら、制御部2は、外気温度センサ3により外気温度Toを検出するとともに、検出した外気温度Toに対応する動作制御パターンXa…を選択し、選択した動作制御パターンXa…に従って暖房機H,Heの動作を制御するようにしたことを特徴とする。
【0009】
この場合、発明の好適な態様により、第一動作Pfには、暖房機H,Heの最大出力を設定することができるとともに、第二動作Psは、当該最大出力の40〜80〔%〕を設定することができる。なお、第一動作Pfは、運転開始tsから所定時間Δth行う燃焼を安定させる安定化運転が終了してから行うことが望ましい。また、第二動作Psでは、第一動作Pfよりも送風の風量を弱く設定することができる。
【0010】
一方、本発明に係る暖房機の動作制御装置1は、上述した課題を解決するため、液体燃料を燃焼させて暖房を行う暖房機H,Heの動作を制御する動作制御装置を構成するに際して、少なくとも燃焼量の大きい第一動作Pf及び動作開始toから第一動作Pfを行う第一動作時間Δtfa…とこの第一動作時間Δtfa…の経過後に行う第一動作Pfよりも燃焼量の小さい第二動作Psが含まれる複数の異なる動作制御パターンXa…を、外気温度条件に対応させて設定した省エネ動作モードMeを有し、この省エネ動作モードMeが選択されたなら、外気温度センサ3により外気温度Toを検出するとともに、検出した外気温度Toに対応する動作制御パターンXa…を選択し、選択した動作制御パターンXa…に従って暖房機H,Heの動作を制御する制御部2を備えることを特徴とする。
【0011】
この場合、発明の好適な態様により、暖房機Hは、液体燃料の燃焼により赤外線を放射する赤外線放熱パネル5を備えて構成できる。また、制御部2は、省エネ動作モードMeに加えて、燃焼量をマニュアル設定可能なノーマル動作モードMnと、外気温度Toが設定温度となるように温度に対するフィードバック制御を行う温度制御動作モードMcの一方又は双方を備えて構成できる。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明に係る暖房機の動作制御方法及び装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 多種多様な用途で使用され、本来的に無駄な燃焼消費が行われやすい側面のある業務用の暖房機H,Heであっても、省エネ動作モードMeを選択した場合には、運転を開始する際の外気温度Toに対応して、燃焼量の大小を組合わせた最適な動作制御パターンXa…による動作制御を行うことができるため、液体燃料の有効な消費節約が可能となり、暖房機H,Heを使用する際の省エネルギ性及び経済性を飛躍的に高めることができる。
【0014】
(2) 省エネ動作モードMeを選択することにより、燃焼量の大小を組合わせた最適な動作制御パターンXa…による動作制御が自動で行われるため、使用者による燃焼量のマニュアル操作が不要となる。したがって、工場内や作業現場等の業務用として使用される場合であっても、作業等の中断による時間的損失の発生、更には作業内容に悪影響が生じる不具合を解消又は大幅に低減できる。
【0015】
(3) 好適な態様により、第一動作Pfに、暖房機H,Heの最大出力を設定するとともに、第二動作Psに、当該最大出力の40〜80〔%〕を設定すれば、本来の暖房効果を損なうことなく液体燃料の消費節約を確保する観点から最適なパフォーマンスを得ることができる。
【0016】
(4) 好適な態様により、第一動作Pfを、運転開始tsから所定時間Δth行う燃焼を安定させる安定化運転が終了してから行うようにすれば、動作開始toから暖房機H,Heの最大出力(第一動作Pf)を継続させるような場合であっても、暖房機H,Heに無用な負荷や応力等が付加される不具合を回避することができ、暖房機H,Heにおける故障等のトラブル防止及び長寿命化に寄与できる。
【0017】
(5) 好適な態様により、第二動作Psにおいて、第一動作Pfよりも送風の風量を弱く設定すれば、静穏化の要求される使用環境の低騒音化を図ることができる。
【0018】
(6) 好適な態様により、暖房機H,Heに、液体燃料の燃焼により赤外線を放射する赤外線放熱パネル5を設ければ、赤外線、特に、身体にとって熱吸収性や保温性の高い遠赤外線のメリットを享受できるため、省エネ動作モードMeにより、燃焼量が小さくなる第二動作Psに切換わった場合であっても効率的な暖房により良好な暖房効果を維持することができる。
【0019】
(7) 好適な態様により、制御部2に、省エネ動作モードMeに加えて、燃焼量をマニュアル設定可能なノーマル動作モードMnと、外気温度Toが設定温度となるように温度に対するフィードバック制御を行う温度制御動作モードMcの一方又は双方を設ければ、多種多様な用途で使用される業務用の暖房機H,Heであっても、使用するそれぞれの環境において最適な省エネルギ性及び暖房効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
まず、本実施形態に係る動作制御装置1を搭載する暖房機Hの概要について、図3を参照して説明する。
【0022】
図3に示す暖房機Hは、赤外線放熱タイプの業務用可搬式暖房機である。この暖房機Hは、燃料タンク51を備え、この燃料タンク51の底面における長手方向一側には一対のキャスタ(車輪)52…を有するとともに、燃料タンク51の側面に固定したフレーム部53を有し、このフレーム部53により脚部53f…及びハンドル部53hを一体形成する。また、燃料タンク51の上面には旋回台(首振装置)54を介して赤外線ヒータ部55を配設する。赤外線ヒータ部55は、ハウジング部56により覆われ、ハウジング部56の前面開口には赤外線放熱パネル5を配する。この赤外線放熱パネル5は、液体燃料である灯油を燃焼させた際に赤外線を放射する素材を使用して全体を多孔板により形成する。さらに、ハウジング部56の内部であって、赤外線放熱パネル5の後方には、燃焼部22を設ける。この燃焼部22は、ガス化バーナを配した燃焼室やこの燃焼室に送風する燃焼ファンなどを備えている。一方、ハウジング部56の内部であって区画されたエリアには、本実施形態に係る動作制御装置1を含む制御ボックス部を配設するとともに、ハウジング部56の前上部には前方に送風する送風ファン(サーキュレータ)57を配設する。
【0023】
これにより、燃料タンク51から供給される灯油は、気化された後に空気と混合し、得られる混合ガスが燃焼する。この際、ガス化バーナにより青炎(ブルーフレーム)が得られ、この青炎により赤外線放熱パネル5が加熱される。そして、この赤外線放熱パネル5から前方に赤外線が放射(放熱)される。なお、青炎の火炎温度は、赤炎よりも概ね300〔℃〕程度高くなり、この青炎により赤外線放熱パネル5が効率的に加熱される。図4に暖房機Hの放熱範囲特性を示す。
【0024】
このように、暖房機Hに、灯油の燃焼により赤外線を放射する赤外線放熱パネル5を設ければ、赤外線、特に、身体にとって熱吸収性や保温性の高い遠赤外線のメリットを享受することができるため、後述する省エネ動作モードMeにより、燃焼量が小さくなる第二動作Psに切換わった場合であっても効率的な暖房により良好な暖房効果を維持できる利点がある。
【0025】
次に、図3の暖房機Hに搭載する本実施形態に係る動作制御装置1を含む電気系の構成について、図2を参照して説明する。
【0026】
図2中、1は動作制御装置のブロック系統図を示す。動作制御装置1は、暖房機Hの動作を制御する制御部2を備える。制御部2は、CPU等を内蔵したコンピューティング機能を有する制御部本体11を備え、この制御部本体11には、後述する本実施形態に係る動作制御方法を実行するための制御プログラム及び各種データを記憶可能なメモリ11mが付属する。また、制御部本体11の入力ポートには、外気温度Toを検出する外気温度センサ3及び各種切換操作や表示を行う操作パネル13を接続する。操作パネル13は、図3の暖房機Hにおけるハウジング部56の背面に配設され、使用者が任意に操作することができる。操作パネル13には、動作モード選択ボタン13mを備え、少なくとも本実施形態に係る動作制御方法により動作が制御される省エネ動作モードMeを選択することができる。例示する動作モード選択ボタン13mは、省エネ動作モードMeに加えて、燃焼量をマニュアル設定可能なノーマル動作モードMnと、外気温度Toが設定温度となるように温度に対するフィードバック制御を行う温度制御動作モードMcを備える。その他、操作パネル13には、外気温度Toや設定温度などを表示可能な表示部を有するとともに、運転/停止ボタン,運転時間(タイマ)ボタン,首振ボタン等の操作ボタン類、及び電源ランプ,警報ランプ,給油ランプ等の表示ランプ類を備えている。
【0027】
一方、制御部本体11の出力ポートには、ドライバ21を介して燃焼部22を接続する。この場合、燃焼部22には、灯油の供給量を調整する制御弁,燃焼ファンを駆動するファンモータ,点火部等が含まれる。また、制御部本体11の他の出力ポートには、ドライバ23を介して、送風ファン57を駆動するファンモータ24を接続するとともに、他の出力ポートには、ドライバ25を介して、首振装置54に内蔵する首振動作用の首振モータ26を接続する。
【0028】
次に、このように構成する動作制御装置1の動作を含む本実施形態に係る動作制御方法について、図1〜図6を参照して説明する。
【0029】
まず、制御部2には、予め、省エネ動作モードMeとして、少なくとも燃焼量の大きい第一動作Pf及び動作開始toから第一動作Pfを行う第一動作時間Δtfa,Δtfb,Δtfcとこの第一動作時間Δtfa…の経過後に行う第一動作Pfよりも燃焼量の小さい第二動作Psが含まれる複数の異なる動作制御パターンXa,Xb,Xcを、外気温度条件に対応させて設定する。この省エネ動作モードMeは、操作パネル13に設けた動作モード選択ボタン13mにより選択することができる。
【0030】
図5に、省エネ動作モードMeの動作制御パターンを例示する。まず、燃焼量の大きい第一動作Pfには暖房機Hの最大出力を設定するとともに、第二動作Psには当該最大出力の40〜80〔%〕を設定する。例示は60〔%〕である。このように、第一動作Pfに、暖房機Hの最大出力を設定し、第二動作Psに、当該最大出力の40〜80〔%〕を設定すれば、本来の暖房効果を損なうことなく灯油の消費節約を確保する観点から最適なパフォーマンスを得ることができる。また、送風量も第一動作Pf及び第二動作Psに対応させて設定し、第一動作Pfでは送風を強風モードに、第二動作Psでは送風を弱風モードに設定する。特に、第二動作Psの弱風モードは、暖房効果を確保しつつ低騒音化を考慮して設定する。なお、送風は、送風ファン57による送風に適用するが、必要により燃焼ファン等の他の送風用ファンに適用してもよい。
【0031】
そして、外気温度条件に対応する三つの異なる動作制御パターンXa,Xb,Xcは、いずれも第一動作Pf(最大出力)と第二動作Ps(最大出力の60〔%〕)は同じ大きさに設定するとともに、第一動作時間Δtfa,Δtfb,Δtfcをそれぞれ異ならせて設定する。例えば、一例として、第一動作時間Δtfaは1〔時間〕に、第一動作時間Δtfbは0.5〔時間〕に、第一動作時間Δtfcは0〔時間〕に設定することができる。一方、外気温度条件には、第一条件(例えば、−1〔℃〕以下)、第二条件(例えば、0〜9〔℃〕)、第三条件(例えば、10〔℃〕以上)を設定し、第一条件は、第一動作時間Δtfaを設定した動作制御パターンXaに対応させ、第二条件は、第一動作時間Δtfbを設定した動作制御パターンXbに対応させ、第三条件は、第一動作時間Δtfcを設定した動作制御パターンXcにそれぞれ対応させる。
【0032】
次に、暖房機Hの運転時における動作について、図1に示すフローチャートを参照して説明する。
【0033】
まず、暖房機Hを使用する場合、使用者は操作パネル13の運転ボタンをONにする。そして、動作モード選択ボタン13mにより、希望する動作モードを選択する。今、省エネ動作モードMeを選択した場合を想定する(ステップS1)。これにより、制御部2は、外気温度センサ3により外気温度Toを検出する(ステップS2)。外気温度Toの検出結果は、制御部本体11に付与されるため、制御部本体11では、検出された外気温度Toが第一条件,第二条件,第三条件のいずれに対応するかを判断する(ステップS3,S4,S5)。
【0034】
この際、例えば、かなり冷え込んだ状態にあり、外気温度Toが、−2〔℃〕の氷点下であれば、上述した第一条件(−1〔℃〕以下)に対応するため、予め設定された動作制御パターンXaが選択され、制御部2は、この動作制御パターンXaによる動作を開始する(ステップS3,S6)。即ち、動作制御パターンXaに従って暖房機Hの動作を制御する。この際、運転開始tsとなる運転ボタンのONにより燃焼を安定させる安定化運転が行われているため、第一動作Pfは、この安定化運転を行う所定時間Δthが経過してから行う。なお、安定化運転は、いわば自動車の暖気運転に相当し、少なくとも暖房機Hの最大出力よりも小さい出力により数分間の運転が行われる(ステップS7)。このように、第一動作Pfを、安定化運転が終了してから行うようにすれば、動作開始toから暖房機Hの最大出力(第一動作Pf)を継続させるような場合であっても、暖房機Hに無用な負荷や応力等が付加される不具合を回避することができ、暖房機Hにおける故障等のトラブル防止及び長寿命化に寄与できる。
【0035】
そして、所定時間Δthが経過(安定化運転が終了)したなら第一動作Pfに移行させる(ステップS8)。これにより、最大出力(燃焼量)により燃焼が行われるとともに、送風は強風モードで行われる。動作制御パターンXaの場合、第一動作Pfは、動作開始toから第一動作時間Δtfa(1〔時間〕)継続する。なお、動作開始toは、動作モード選択ボタン13mにより省エネ動作モードMeを選択した時点となる。また、第一動作時間Δtfaが経過したなら第二動作Psに移行する(ステップS9,S10)。第二動作Psでは、最大出力の60〔%〕の出力(燃焼量)により燃焼が行われる。この際、第二動作Psでは、送風は弱風モードとなり、暖房機Hは低騒音化する。図5に示す動作制御パターンXaでは、暖房機Hの運転を停止或いは省エネ動作モードMeを停止しない限り、第二動作Psが継続する(ステップS11)。
【0036】
一方、外気温度Toが、5〔℃〕程度の寒さであれば、上述した第二条件(0〜9〔℃〕)に対応するため、予め設定された動作制御パターンXbが選択され、制御部2は、この動作制御パターンXbによる動作を開始する(ステップS4,S12)。また、安定化運転が行われているため、安定化運転が終了したなら第一動作Pfに移行させる(ステップS13,S14)。これにより、最大出力により燃焼が行われる。動作制御パターンXbの場合、第一動作Pfは、動作開始toから第一動作時間Δtfb(0.5〔時間〕)継続する。そして、第一動作時間Δtfbが経過したなら第二動作Psに移行し、最大出力の60〔%〕の出力(燃焼量)による燃焼が行われる(ステップS15,S10)。
【0037】
他方、外気温度Toが、さほど寒くはない15〔℃〕程度であれば、上述した第三条件(10〔℃〕以上)に対応するため、予め設定された動作制御パターンXcが選択され、制御部2は、この動作制御パターンXcによる動作を開始する(ステップS5,S16)。また、安定化運転が行われているため、安定化運転が終了したなら第一動作Pfに移行させる(ステップS17,S18)。これにより、最大出力により燃焼が行われる。動作制御パターンXcの場合、第一動作Pfは、動作開始toから第一動作時間Δtfc(0〔時間〕)に設定されているため、第一動作Pfが行われることなく直ちに第二動作Psに移行し、最大出力の60〔%〕の出力(燃焼量)による燃焼が行われる(ステップS19,S10)。
【0038】
以上、省エネ動作モードMeを選択した場合について説明したが、動作モード選択ボタン13mにより、ノーマル動作モードMnを選択した場合には、運転開始tsからマニュアル設定した燃焼量による連続運転が行われる。マニュアル設定は、操作パネル13に段階的に設定された燃焼量から選択して設定できる。また、動作モード選択ボタン13mにより、温度制御動作モードMcを選択した場合には、外気温度Toが設定温度となるように温度に対するフィードバック制御が行われる。設定温度は、操作パネル13により設定することができる。このように、省エネ動作モードMeに加えて、ノーマル動作モードMnと温度制御動作モードMcの一方又は双方を設ければ、多種多様な用途で使用される業務用の暖房機Hであっても、使用するそれぞれの環境において最適な省エネルギ性及び暖房効果を得ることができる。
【0039】
よって、このような本実施形態に係る動作制御方法及び装置1によれば、多種多様な用途で使用され、本来的に無駄な燃焼消費が行われやすい側面のある業務用の暖房機Hであっても、省エネ動作モードMeを選択した場合には、運転を開始する際の外気温度Toに対応して、燃焼量の大小を組合わせた最適な動作制御パターンXa…による動作制御を行うことができるため、灯油に対する有効な消費節約が可能となる。図6は、省エネ動作モードMeとノーマル動作モードMnの年間灯油消費量〔リットル〕を対比して示す。このデータは、外気温度Toが5〔℃〕,最大出力時における1時間当たりの灯油消費量が4.2〔リットル〕,1日8時間,年間60日間運転した場合の算出値である。即ち、省エネ動作モードMeは、(4.2リットル/時間)×0.5時間+(2.5リットル/時間)×7.5時間×60日で算出し、ノーマル動作モードMnは、(4.2リットル/時間)×8時間×60日で算出したものである。このように、省エネ動作モードMeを使用することにより、暖房機Hを使用する際における省エネルギ性及び経済性を飛躍的に高めることができる。
【0040】
また、省エネ動作モードMeを選択することにより、燃焼量の大小を組合わせた最適な動作制御パターンXa…による動作制御が自動で行われるため、使用者による燃焼量のマニュアル設定が不要とな。したがって、工場内や作業現場等の業務用として使用される場合であっても、作業等の中断による時間的損失の発生、更には作業内容に悪影響が生じる不具合を解消又は大幅に低減できる。
【0041】
次に、本発明に係る暖房機の動作制御方法及び装置1の変更実施形態について、図7及び図8を参照して説明する。
【0042】
図7は、変更実施形態に係る動作制御パターンXeを示す。図5では基本的な動作制御パターン(Xa,Xb,Xc)を示したが、図7に示す動作制御パターンXeは、このような基本的な動作制御パターンに対して、さらに第二の動作制御パターンを追加したものである。例えば、気温は一日の中でも大きく変動する場合があり、第二動作Psにより動作を継続させていても想定外に寒くなることも考えられる。そこで、一定の外気温度条件に達したなら、再度、第一動作Pfを行う。図7に示す動作制御パターンXeでは、第一動作Pfを最大出力の80〔%〕に設定し、第二動作Psを最大出力の50〔%〕に設定するとともに、第一動作Pfを動作開始toから第一動作時間Δtfpだけ行った後に第二動作Psに移行するが、これらの動作は基本的な動作制御パターンとなる。一方、この後、外気温度Toを監視し、設定した外気温度条件(或いは任意に設定した設定温度)まで外気温度Toが低下した場合には、再度、第一動作Pfを第二動作時間Δtfqだけ行う。第二動作時間Δtfqにおける第一動作Pfは、初回の第一動作Pfと同じ出力により行ってもよいし、異なる出力により行ってもよい。或いは送風を弱風モードのまま行ってもよい。図7中、Xemは同じ出力で行う動作制御パターン、Xesは異なる出力で行う動作制御パターンを示す。このように追加される第二の動作制御パターンは、繰り返し行うことができる。なお、仮想線は前述した基本となる動作制御パターンXaを示す。
【0043】
このように、予め設定する動作制御パターンは、少なくとも基本的な動作制御パターンを含むことを条件として、様々な動作制御パターンにより実施可能であり、この場合、図5に示すようないわば固定した動作制御パターンであってもよいし、図7に示すような条件によって変化する動作制御パターンであってもよい。なお、図7において、図5と同様の部分には同一符号を付した。
【0044】
図8は、変更実施形態に係る暖房機Heを示す。図3では、暖房機Hとして、赤外線放熱タイプの業務用可搬式暖房機を示したが、図8に示す暖房機Heは、温風タイプの業務用可搬式暖房機である。図3に示すような赤外線放熱タイプの暖房機Hを用いれば、前述したように、身体にとって熱吸収性及び保温性の高い遠赤外線のメリットを享受できるため、省エネ動作モードMeにより燃焼量の比較的小さい第二動作Psに切換わった場合であっても効率的な暖房により良好な暖房効果を維持できる利点がある。一方、図8に示すような温風タイプの暖房機Heであっても、使用する際の省エネルギ性及び経済性、更には低騒音化、使用者による燃焼量のマニュアル調整を不要にするなどの効果は同様に享受でき、本実施形態(本発明)に係る動作制御方法及び装置1は、様々なタイプの暖房機H,He…に適用することができる。
【0045】
図8に示す暖房機Heは、燃料タンク61を備え、この燃料タンク61の底面における長手方向一側には一対のキャスタ(車輪)62…を有するとともに、長手方向他側には一対の脚部63…を有する。また、燃料タンク61の側面に固定したフレーム部63を有し、このフレーム部63によりハンドル部63h及びヒータ支持部63sを一体形成し、このヒータ支持部63sによりヒータ部65を支持する。ヒータ部65は、円筒形のハウジング部66を備え、このハウジング部66の先端には温風口66hを有する。さらに、ハウジング部66の内部には、バーナを配した燃焼室及び強風発生ファンを含む燃焼部を備える。一方、ハウジング部66の外部には本実施形態に係る動作制御装置1を含む制御ボックス部67を配設する。これにより、燃料タンク61から供給される灯油は、バーナにより燃焼され、発生した熱は強風発生ファンからの強風により温風口66hから前方に放出(放熱)される。
【0046】
以上、各種実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,数量,数値,素材,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0047】
例えば、例示したノーマル動作モードMnと温度制御動作モードMcは、いずれか一方のモードのみであってもよいし、双方とも設けなくてもよい。また、液体燃料として灯油を例示したが他の液体燃料を用いるタイプを排除するものではない。さらに、三つの動作制御パターンXa,Xb,Xcを例示したが、二つ或いは四つ以上であってもよいし、そのパターンの態様も図7をはじめ、各種の態様により実施可能である。一方、暖房機H,Heとして、赤外線放熱タイプ(図3)と温風タイプ(図8)を例示したが、類似の用途で用いられる他のタイプの暖房機に対しても同様に適用することができる。なお、本発明に係る暖房機は、異なる名称が付されたヒータ,乾燥機等を含む概念である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る動作制御方法の処理手順を説明するためのフローチャート、
【図2】本発明の最良の実施形態に係る動作制御装置のブロック系統図、
【図3】同動作制御装置を備える赤外線放熱タイプの暖房機の斜視図、
【図4】同暖房機の放熱範囲特性図、
【図5】同動作制御方法に用いる動作制御パターンの時間対燃焼量特性図、
【図6】同動作制御方法を用いた場合の年間灯油消費量の説明図、
【図7】本発明の変更実施形態に係る動作制御パターンの時間対燃焼量特性図、
【図8】本発明の変更実施形態に係る温風タイプの暖房機の斜視図、
【符号の説明】
【0049】
1:動作制御装置,2:制御部,3:外気温度センサ,H:暖房機,He:暖房機,5:赤外線放熱パネル,Pf:第一動作,Ps:第二動作,Xa:動作制御パターン,Xb:動作制御パターン,Xc:動作制御パターン,Me:省エネ動作モード,Mn:ノーマル動作モード,Mc:温度制御動作モード,to:動作開始,ts:運転開始,Δtfa…:第一動作時間,Δth:所定時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料を燃焼させて暖房を行う暖房機の動作を制御する暖房機の動作制御方法において、予め、前記暖房機の動作を制御する制御部に、少なくとも燃焼量の大きい第一動作及び動作開始から前記第一動作を行う第一動作時間とこの第一動作時間の経過後に行う前記第一動作よりも燃焼量の小さい第二動作が含まれる複数の異なる動作制御パターンを、外気温度条件に対応させて設定した動作モード(省エネ動作モード)を設け、前記暖房機を運転する際に前記省エネ動作モードが選択されたなら、前記制御部は、外気温度センサにより外気温度を検出するとともに、検出した外気温度に対応する前記動作制御パターンを選択し、選択した動作制御パターンに従って前記暖房機の動作を制御することを特徴とする暖房機の動作制御方法。
【請求項2】
前記第一動作は、前記暖房機の最大出力に設定するとともに、前記第二動作は、前記最大出力の40〜80〔%〕に設定することを特徴とする請求項1記載の暖房機の動作制御方法。
【請求項3】
前記第一動作は、運転開始から所定時間行う燃焼を安定させる安定化運転が終了してから行うことを特徴とする請求項1又は2記載の暖房機の動作制御方法。
【請求項4】
前記第二動作は、前記第一動作よりも送風の風量を弱く設定することを特徴とする請求項1又は2記載の暖房機の動作制御方法。
【請求項5】
液体燃料を燃焼させて暖房を行う暖房機の動作を制御する暖房機の動作制御装置において、少なくとも燃焼量の大きい第一動作及び動作開始から前記第一動作を行う第一動作時間とこの第一動作時間の経過後に行う前記第一動作よりも燃焼量の小さい第二動作が含まれる複数の異なる動作制御パターンを、外気温度条件に対応させて設定した省エネ動作モードを有し、この省エネ動作モードが選択されたなら、外気温度センサにより外気温度を検出するとともに、検出した外気温度に対応する前記動作制御パターンを選択し、選択した動作制御パターンに従って前記暖房機の動作を制御する制御部を備えることを特徴とする暖房機の動作制御装置。
【請求項6】
前記暖房機は、前記液体燃料の燃焼により赤外線を放射する赤外線放熱パネルを備えることを特徴とする請求項5記載の暖房機の動作制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記省エネ動作モードに加えて、燃焼量をマニュアル設定可能なノーマル動作モードと、外気温度が設定温度となるように温度に対するフィードバック制御を行う温度制御動作モードの一方又は双方を備えることを特徴とする請求項5又は6記載の暖房機の動作制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−84977(P2010−84977A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252881(P2008−252881)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】