説明

暖房用板材とそれを使用した建物の床暖房装置

【課題】 床は暖房されても室内の上方まで暖房することはできなかった。
【解決手段】 天然木材に遠赤外線を放射する軟玉粉を混入して板状の暖房用板材とした。断熱マット、保温ブロック、熱伝導板、給湯パイプを床下の根太間に収容して建物の床暖房装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物の床暖房に使用される暖房用板材と、それを使用した床暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
床暖房装置は以前から各種存在する。床暖房システムには電熱線を熱源とする電気式のもの、湯を熱源とする給湯式のものとがある(特許文献1、2)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−9701号公報
【特許文献2】特開2005−42979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の床暖房装置はそれなりの暖房効果はあるが、湯の熱、電熱線の熱を床下から床板に伝達するものであるため熱効率に難点があった。また、床板は暖かくなるが、室内の上方、例えば、床上1mもの高さまでは暖かくならなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1記載の暖房用板材は、チップ、繊維状等の天然木と、遠赤外線を放射する軟玉粉末と、樹脂接着剤と、水を混合した原料を、厚さ数mmの板状に成形したものである。
【0006】
本発明の請求項2記載の暖房用板材は、請求項1記載の暖房用板材において、天然木が松の木、樹脂接着剤がホルムアルデヒドを含まない暖房用板材である。
【0007】
本発明の請求項3記載の暖房用板材は、請求項1又は請求項2記載の暖房用板材において、原料の混合比率が、天然木50%〜70%(質量%)程度、軟玉粉末15%〜25%(質量%)程度、樹脂接着剤8%〜20%(質量%)程度、水5%〜15%(質量%)程度としたものである。
【0008】
本発明の請求項4記載の建物の床暖房装置は、建物の床下に断熱マットを敷き、その上に保温ブロックを配置し、その上に熱伝導板をセットし、熱伝導板の配管溝内に湯供給パイプを配管し、その上に請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の板材を被せたものである。
【0009】
本発明の請求項5記載の建物の床暖房装置は、請求項4記載の建物の暖房装置において、断熱マット、保温ブロック、熱伝導板、給湯パイプが床下の根太間に収容されたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1記載の暖房用板材は次のような効果がある。
(1)遠赤外線を放射する軟玉粉末を使用したので、暖房用板材を加温することにより軟玉粉末から遠赤外線が放射されて床板が加温されるのは勿論のこと、室内の天井まで暖房されるため、室内全般が暖められ、快適な居住空間となる。
(2)遠赤外線での暖房であるため、室内の人は陽だまりに居るような心地よさが得られる。
(3)軟玉粉末はマイナスイオンを発生するため、身体によい居住環境が得られる。
(4)樹脂接着剤で接着してあるため天然木、軟玉粉末の接着が確実になり、長期間使用しても天然木、軟玉粉末の剥離、分離、形崩れがない。
【0011】
本発明の請求項2記載の暖房用板材は前記効果の他に次のような効果もある。
(1)天然木が松の木であるため、松の木特有の身体に良い成分が発生される。
(2)樹脂接着剤がホルムアルデヒドの無いものであるため、健康に良い居住環境が得られる。
【0012】
本発明の請求項3記載の暖房用板材は、原料の混合比率が、天然木50%〜70%(質量%)程度、軟玉粉末15%〜25%(質量%)程度、樹脂接着剤8%〜20%(質量%)程度、水5%〜15%(質量%)程度であるため、前記効果の他に次のような効果もある。
(1)少ない軟玉粉末で効率の良い暖房が得られる。
(2)天然木の混合比率が最大であるため天然木の良さが発揮される。
(3)樹脂接着剤の混合比率が少ないので、天然木の良さが損なわれない。
【0013】
本発明の請求項4記載の建物の床暖房装置は次のような効果がある。
(1)建物の床下に熱反射マットを敷いてあるため、給湯パイプからの熱が下方に逃げずに床の方へ反射されるため熱伝導効率が良い。
(2)熱反射マットの上に保温ブロックが配置されているため、熱保温性に優れたものとなる。
(3)保温ブロックの上に熱伝導板がセットされているため、熱伝導効率が良く、広い面積が効率良く加温される。
(4)給湯パイプが熱伝導板の配管溝内に配管されているので、給湯パイプが安定し、嵩張らず、薄く仕上がる。
(5)給湯パイプ及び熱伝導板の上に暖房用板材が配置されているので、暖房用板材の広い面積に熱が伝達され、暖房効率が良い。
【0014】
本発明の請求項5記載の建物の床暖房装置は次のような効果がある。
(1)熱反射マット、保温ブロック、熱伝導板、給湯パイプ、暖房用板材が建物の根太の間に配置されているので、それらを設けても嵩張らず、コンパクトにまとまる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(暖房用板材の実施の形態)
本発明の暖房用板材の実施の形態の一例を以下に説明する。この暖房用板材は、天然木と、遠赤外線を放射する軟玉粉末と、樹脂接着剤と、水を混合した原料を、厚さ数mmの板状に成形してある。幅は250mm〜420mm程度、長さは840mm〜1000mm程度とすることができる。天然木繊維にはリギタ松、収入松等の松の木を使用するのが適し、樹脂接着剤には尿素樹脂が適する。
【0016】
(本発明の暖房用板材の製造方法)
本発明の暖房用板材の製造方法の一例を以下に記す。
(1)破砕、選別:リギタ松、収入松等の松の木を破砕して6×20×30mm程度のサイズのチップにし、それをサイズ別に選別する。
(2)解繊:前記チップをスチームで蒸して繊維(ファイバー)状に分解する。
(3)接着剤塗布:天然木ファイバー、接着剤、軟玉粉末を、水を加えて練り合わせる。軟玉粉末として遠赤外線及びマイナスイオンを放射できる軟玉(ネフライト:jade:翡翠)を45μm程度のサイズにした粉末を使用するのが適する。ネフライトは主成分がCaCO3、CaMg(CO32である。この軟玉粉末の遠赤外線放射率は25℃で83%程度である。樹脂接着剤にはホルムアルデヒドの無いものを使用する。これら原料の混合比率は天然木繊維50%〜70%(質量%)程度、軟玉粉末15%〜25%(質量%)程度、樹脂接着剤8%〜20%(質量%)程度、水5%〜15%(質量%)程度が適する。
(4)乾燥:前記(3)の原料を8〜13%の含水率まで乾燥させる。
(5)成形:前記(4)の原料を自由落下によって厚さ3mm程度の板状に成形する。
(6)予圧:前記(5)の成形材を予圧する。この予圧は前記(5)の成形材を薄くし、この後に行われる熱圧時間を短縮するために行う。
(7)熱圧:前記(6)の板を加熱加圧して樹脂接着剤を硬化させて板にする。板のサイズは例えば90mm×180mm程度とする。
(8)冷却:前記(7)の板を冷却して100℃〜50℃にする。冷却にはクーラーを使用することができる。
(9)研磨:前記(8)の板を表面研磨して、表面のくず(例えば早期硬化層)とか付着物等を除去する。
(10)切断:需要者の要求寸法に切断する。
(11)検査及び実験:前記(10)の板の等級判定、製品物性実験をする。
【0017】
(本発明の床暖房装置の実施形態)
本発明の床暖房装置の実施形態の一例を図1〜図3に基づいて以下に示す。この床暖房装置は、建物の根太1の下に張った捨板2の上に断熱マット3を敷き、その上に保温ブロック4を配置し、保温ブロック4の両外側に断熱マット1の両端側を立ち上げて当該ブロック4の側面を被覆し、保温ブロック4及び立ち上げた断熱マット3の両端部上面の上に熱伝導板5をのせ、熱伝導板5の配管溝6内に給湯パイプ7を配管し、その上に前記暖房用板材8を被せて、これら断熱マット3、保温ブロック4、熱伝導板5、給湯パイプ7、暖房用板材8を隣接する根太1間に収容し、暖房用板材8の上面が根太1の上面と面一にしてある。
【0018】
前記捨板2には前記断熱マット3、保温ブロック4、熱伝導板5、給湯パイプ7、暖房用板材8の全体の荷重を支持できる強度の板材であればどのようなものでも使用可能であり、例えば、ベニヤ板とかその他の合板等を使用することができる。
【0019】
前記断熱マット3は給湯パイプ7からの熱が下方に逃げないように遮断(断熱)し、給湯パイプ7からの熱を保温できる(保熱性がある)ものが適する。この実施例では断熱性及び保熱性のある樹脂シートの表面にアルミ箔を貼り付けたものが使用されている。アルミ箔(アルミフィルム)は熱伝導性に優れるため給湯パイプ7からの熱を周囲に広く伝達することができ、樹脂シートはアルミ箔を介して伝わる熱が下方に逃げないように断熱すると共にその熱を保持(保熱)することができる。断熱マット3は図1のようにアルミ箔を上にして捨板2の上に敷く。この場合、断熱マット3の幅を隣接する根太1間の幅よりも広くして、捨板2の上に敷いてから両側の根太1の内面に沿って立ち上げることができるようにしてある。
【0020】
前記保温ブロック4は耐熱性のある樹脂製であり、一枚の基板9の上面に二以上の上方開口の空気室10に区画された区画ブロック11を立ち上げて、空気室10内に空気が溜まるようにし、また、隣接する区画ブロック11間の空間に2個又は4個のガイドブロック12を対向させて立ち上げて、対向する区画ブロック11の間と、対向するガイドブロック12の対向面間に配管空間13を形成し、それら配管空間13に直線状の熱伝導板5の配管溝6を収容できるようにしてある。また、前記区画ブロック11のうち内壁面は円弧状に形成して、コーナー用の熱伝導板5の配管溝6を収容できるようにしてある。前記区画ブロック11、ガイドブロック12の高さ(空気室10の深さ)は任意に選択できるが、保温性(滞留空気の貯留容量)が良く、根太の高さから突出しない高さ等の面から25mm程度が好ましい。この保温ブロック4は図1、図3のように捨板2の上で、隣接する根太間に敷かれた断熱マット3の上に配置される。
【0021】
前記熱伝導板5は熱伝導性に優れた金属製板であり、細長板状の直線状の熱伝導板5aと、ほぼ方形板状のコーナー用の熱伝導板5bとがあり、直線状の熱伝導板5aにはその幅方向中央部に直線状の配管溝6が下方に凹陥して形成されており、コーナー用の熱伝導板5bには真円の1/4の円弧状の配管溝6が形成されている。いずれの配管溝6もその断面形状は半円形であり、それらが直線状の熱伝導板5aとコーナー用の熱伝導板5bの夫々の裏面側に突出して形成されている。コーナー用の熱伝導板5bのうち配管溝6を挟んだ対向位置には切り込み14が開口されて、配管溝6を形成する際にコーナー用の熱伝導板5bが歪まないようにしてある。この熱伝導板5は図1、図4のように保温ブロック4の上に載せる。この場合、配管溝6を保温ブロック4の配管空間13内に配管する。
【0022】
前記給湯パイプ7は耐熱性があり熱伝導率に優れ円弧状に湾曲させることのできる程度の可撓性のあるパイプが適し、例えば、架橋ポリエチレン管が適する。その外径は前記熱伝導板5の配管溝6内に収容できるサイズにしてある。給湯パイプ7も直線のものを用意し、それを前記直線状の熱伝導板5aの配管溝6内に収容して配管し、前記コーナー用の熱伝導板5bにおいて図2、図4のように円弧状に湾曲させてコーナー用の熱伝導板5bの配管溝6内に収容配管できるようにしてある。
【0023】
図1では根太1及び暖房用板材8の上に床材(フロア材)15を張ってある。床材15は既存のものでも、新たに開発されたものでも使用可能である。図1の16は幅木である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の床暖房装置の一例を示す断面図。
【図2】本発明の床暖房装置の分解説明図。
【図3】本発明の床暖房装置において、根太間に敷いた断熱シートの上に保温ブロックを敷いた状態の平面図。
【図4】本発明の床暖房装置において、保温ブロックの上に配置した熱伝道板の溝に給湯パイプを配管した状態の平面図。
【符号の説明】
【0025】
1 根太
2 捨板
3 断熱マット
4 保温ブロック
5 熱伝導板
5a 直線状の熱伝導板
5b コーナー用の熱伝導板
6 熱伝導板の配管溝
7 給湯パイプ
8 暖房用板材
9 保温ブロックの基板
10 保温ブロックの空気室
11 保温ブロックの区画ブロック
12 保温ブロックのガイドブロック
13 保温ブロックの配管空間
14 切り込み
15 床板
16 幅木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ状、繊維状等にした天然木と、遠赤外線を放射する軟玉粉末と、樹脂接着剤と、水を混合した原料を、厚さ数mmの板状に成形したことを特徴とする暖房用板材。
【請求項2】
請求項1記載の暖房用板材において、天然木が松の木、樹脂接着剤がホルムアルデヒドを含まないものであることを特徴とする暖房用板材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の暖房用板材において、原料の混合比率が、天然木50%〜70%(質量%)程度、軟玉粉末15%〜25%(質量%)程度、樹脂接着剤8%〜20%(質量%)程度、水5%〜15%(質量%)程度であることを特徴とする暖房用板材。
【請求項4】
建物の床下に断熱マットを敷き、その上に保温ブロックを配置し、その上に熱伝導板をセットし、熱伝導板の配管溝内に給湯パイプを配管し、その上に請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の暖房用板材を被せたことを特徴とする建物の床暖房装置。
【請求項5】
請求項4記載の建物の床暖房装置において、断熱マット、保温ブロック、熱伝導板、給湯パイプが床下の根太間に収容されたことを特徴とする建物の床暖房装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−308118(P2006−308118A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127504(P2005−127504)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(305019956)サン工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】