説明

暖機装置ならびにプラグインハイブリッド車両

【課題】車両に搭載される動力源1を始動することなく暖機する処理を実行するための構成要素51〜54を有する暖機装置50において、暖機処理を遠隔始動させる際に、暖機処理の始動時期を適切に設定可能とする。
【解決手段】構成要素52,53の動作を制御するための制御装置16を有する。制御装置16は、遠隔始動操作手段41からの動力源1の始動指示信号の入力に基づき遠隔始動操作手段41から車両までの離隔距離を算出する算出手段S1と、この算出結果に基づいて動力源1の始動予定時期を設定する設定手段S2と、この設定した始動予定時期に基づいて前記暖機処理の開始時期を決定する決定手段S9とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される動力源を暖機するための暖機装置に関する。また、本発明は、動力源として内燃機関および電動モータを搭載するプラグインハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両の内燃機関を冷間始動するときには、内燃機関を暖機運転するようになっている。この暖機運転では、内燃機関の冷却水をラジエータへ通さないようにしたうえで、内燃機関をアイドリング回転数よりも適宜高い回転数にして運転するようにしている。
【0003】
このような暖機運転を長時間行うことは、内燃機関の燃費が低下するとともに、内燃機関からのCO2等のエミッション排出量が増える等、好ましくない。
【0004】
そこで、特許文献1に係る従来例として、その要約書の課題に示されているように、自動車のエンジンを作動させずに暖気を行うことが可能な自動車用暖気システムが開示されている。
【0005】
この自動車用暖気システムは、その要約書の解決手段に示されているように、水冷式の冷却循環路及びこれに連通するウォータージャケット23を具備した冷却装置を有する自動車用暖気システム20において、外部電源42と、前記冷却循環路に連通し、前記冷却循環路を流通する循環液を貯溜する循環液貯溜槽36と、前記循環液貯溜槽36に設けられ、前記外部電源42により発熱して前記循環液を加温する発熱部を有する電熱加温手段37と、前記電熱加温手段37に設けられ循環液の温度を検知して前記発熱部を制御する温度制御手段38とを具備したことを特徴としている。
【0006】
また、特許文献2に係る従来例として、その要約書の課題に示されているように、蓄熱装置20に蓄えられた熱を利用した内燃機関の暖機に関し、最適な実施時期を設定するとともに、その実施行程に関する情報を適切な態様で車両使用者に通知することにより、蓄熱装置による暖機機能の活用機会を好適に拡大することを目的とした技術が開示されている。
【0007】
この技術は、その要約書の解決手段に示されているように、エンジンシステム100の電子制御装置(ECU)30により、蓄熱装置20に蓄えられた蓄熱温水をエンジン10に供給する制御(プレヒート)を、エンジン10の始動に先立って開始するようになっている。また、前記ECU30は、蓄熱装置20によるエンジン10の暖機が確実に終了した後にエンジン10の始動を行うように、プレヒートの継続時間をエンジン10の冷却水温に基づいて決定するようになっている。さらに、前記ECU30は、プレヒートが完了すると、エンジン10を自動始動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−3321290号公報
【特許文献2】特開2002−89424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に係る従来例では、段落0059に示されているように、暖気システムの作動時刻をタイマー41により設定するようになっているために、仮に、タイマー41をセットしていない場合には暖気動作が行われなくなる。この他、タイマーにより作動時刻を設定していても、仮に車両使用者が前記作動時刻より大幅に早い時刻に車両に乗り込んだときには、暖気動作が行われていないことになり、また、車両使用者が前記作動時刻より大幅に遅い時刻に車両に乗り込んだときには、内燃機関が冷めている事態になりかねない。このように、特許文献1に係る従来例の場合、いろいろな注意点が必要となる等、車両使用者にとって便利だとは言い切れない。
【0010】
上記特許文献2に係る従来例では、図6、図10、図11に示されているように、イグニッションスイッチを「LOCK」位置から「ON」位置へ切り替えたことを検出すると、エンジン10の冷却水温度が所定値より低い場合にエンジン10を始動せずにプレヒートを行い、前記冷却水温度が所定値以上であるとプレヒートを行わずにエンジン10を始動するようになっている。
【0011】
なお、この従来例において、段落0098には、「電動ポンプEPの作動開始から5〜10秒程度でシリンダヘッド10b内の温度が60〜80℃に達する」と記載されており、また、段落0131には、「エンジン10の始動より5秒程度早くプレヒートを開始することによって、エンジン10が冷間状態をほぼ脱した状態で機関始動を行えるようになる」と記載されている。
【0012】
このようなプレヒートの実行開始タイミングでは、仮に、エンジン10の冷却水温度が所定値未満の場合において、車両使用者がイグニッションスイッチを「LOCK」位置から「ON」位置へ1秒程度と素早く切り替えたとすると、プレヒートが行われることになって、エンジン10の始動が遅延することになり、車両使用者に違和感を与える。
【0013】
さらに、上記特許文献2に係る従来例において、段落0302には、運転者の操作で特定の信号を発信する送信装置をイグニッションキー27aに内蔵し、遠隔操作をトリガーとしてプレヒートを開始するような構成を適用してもよいと記載されている。しかしながら、送信装置からの発信信号を受けた後、どのようなタイミングでプレヒートを開始するのかについての説明がまったくない。そのため、そのことによる狙いやメリットが何であるのか全く不明である。
【0014】
このような事情に鑑み、本発明は、車両に搭載される動力源を始動することなく暖機するための暖機装置において、暖機処理を遠隔始動させる際に、暖機処理の始動時期を適切に設定可能とすることを目的としている。
【0015】
また、本発明は、動力源として内燃機関および電動モータを搭載するプラグインハイブリッド車両において、内燃機関の暖機処理を、車載バッテリの電気エネルギーを無駄に浪費することなく行えるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、車両に搭載される動力源を始動することなく暖機する暖機処理を実行するための構成要素を有する暖機装置であって、前記構成要素の動作を制御するための制御装置を有し、この制御装置は、遠隔始動操作手段からの動力源の始動指示信号の入力に基づいて当該遠隔始動操作手段から前記車両までの離隔距離を算出する算出手段と、この算出結果に基づいて前記動力源の始動予定時期を設定する設定手段と、前記設定した始動予定時期に基づいて前記暖機処理の開始時期を決定する決定手段とを含む、ことを特徴としている。
【0017】
この構成において、暖機装置で暖機処理を実行するにあたって、遠隔始動操作手段から前記車両までの離隔距離を算出しているのは、例えば車両使用者が遠隔始動操作手段の操作位置から車両の存在位置に到着するまでに要する見込み時間を認識し、それに合わせて動力源を始動するためである。また、前記暖機処理の実行開始時期を決定しているのは、前記見込み時間内において早すぎず、また遅すぎずといった適切なタイミングで暖機処理を遂行するためである。この適切なタイミングとは、車両使用者が車両に到着する前に暖機処理を終了させて、動力源を始動することが可能になる時期のことである。
【0018】
これにより、仮に、車両使用者が遠隔始動操作手段を操作してから車両の存在位置に到着するまでに要する見込み時間が比較的長い場合で、かつ、前記暖機処理を行う必要がある場合に、車両使用者が車両に到着する前に暖機装置による暖機処理を終了させて動力源を始動させることが可能になる。
【0019】
そのため、仮に動力源の始動が要求されたとき、直ぐに暖機処理を実行して車両使用者が車両に到着するより遥か前に暖機処理を終了する場合のように、暖機処理後の動力源が再度冷えることを無くすことが可能になる。
【0020】
このように、暖機装置による動力源の暖機処理を、無駄なく適切なタイミングで行うことが可能になる。
【0021】
好ましくは、前記制御装置は、前記始動指示信号の入力に基づいて前記暖機処理が必要であるか否かを判定する暖機要否判定手段と、前記暖機要否判定手段で不要であると判定した場合に、前記設定手段で設定した始動予定時期に動力源を始動させる処理を実行する始動処理手段とをさらに含み、前記決定手段は、前記暖機要否判定手段で必要であると判定した場合に、暖機処理の実行開始時期を決定する。
【0022】
この場合、動力源の状態に関係なく暖機処理を行うのではなく、冷間時に暖機処理を行うようにし、温間時には暖機処理を行わないようにすることが可能になり、暖機装置による暖機処理を無駄に行う必要がなくなる。
【0023】
好ましくは、前記動力源は、内燃機関とされる。この場合、内燃機関の冷間時の始動要求に伴い、暖機装置による内燃機関の暖機処理を適切なタイミングで行えることになる。
【0024】
これにより、仮に内燃機関の始動が要求されたときに、直ぐに暖機処理を実行して車両使用者が車両に到着するより遥か前に暖機処理を終了する場合のように、暖機処理後に内燃機関が再度冷えることを無くすことが可能になる。このような現象は、寒冷地や寒い季節において発生しやすいので、本発明が有効となる。
【0025】
そのため、実際に内燃機関を始動する際に、内燃機関内のオイルが適温になって内燃機関のフリクションロスを軽減することが可能になるとともに、燃料が霧化されやすくなる。その結果、内燃機関の始動性が良好になるとともに、燃焼効率が向上するようになるから、燃費の向上ならびに排気エミッションの低減が可能になる。
【0026】
好ましくは、前記構成要素は、内燃機関の冷却水を貯留するためのタンクと、このタンク内の貯留水を加熱するためのヒータと、前記タンク内の貯留水を前記内燃機関へ導入させるための電動式ポンプと、前記タンク内の貯留水の温度を検出する貯留水温検出手段とを含み、前記制御装置は、前記決定手段で決定した暖機処理の実行開始時期に前記タンク内の貯留水の温度に基づいて前記ヒータによる加熱が必要であるか否かを判定する加熱要否判定手段と、この加熱要否判定手段で必要であると判定したとき、前記ヒータの加熱条件および作動時期を決定して前記作動時期に作動させる対処手段とをさらに含み、前記決定手段は、前記加熱要否判定手段で不要であると判定したとき、前記暖機処理の実行開始時期として前記電動式ポンプの作動時期を決定する。
【0027】
ここでは、暖機装置の構成要素と、暖機処理の実行に伴いタンク内の貯留水を加熱する必要の有無を調べる形態と、暖機処理を実行するための要素に関する作動開始の形態とを特定している。この特定によれば、暖機処理の形態がより明らかになって、実用化しやすくなることがより明らかになる。
【0028】
つまり、この構成での暖機処理は、タンク内の比較的高温の貯留水が電動式ポンプにより内燃機関のウォータージャケットへ導入されることになって、ウォータージャケット内の冷却水がタンクへ送り出されることになる。
【0029】
これにより、内燃機関が短時間で温間状態になる。そのため、この暖機処理の終了後に内燃機関を始動するとき、内燃機関内のオイルが適温になって内燃機関のフリクションロスを軽減することが可能になるとともに、燃料が霧化されやすくなる。その結果、内燃機関の始動性が良好になるとともに、燃焼効率が向上するようになるから、燃費の向上ならびに排気エミッションの低減が可能になる。
【0030】
好ましくは、前記タンクは、その内部と外部とを断熱状態に保つ保温構造とすることができる。
【0031】
この場合、温間状態の内燃機関の停止後において内燃機関内の比較的高温の冷却水をタンクへ貯留させておけば、このタンク内の貯留水の温度低下を抑制することが可能になる。これにより、仮に、タンク内の貯留水の温度低下が少ない状況で、暖機処理を実行する場合には、タンク内の貯留水を加熱するのに要するエネルギー消費を抑えることが可能になる。
【0032】
また、本発明に係るプラグインハイブリッド車両は、動力源としての内燃機関および電動モータと、家庭用電源から電力供給を受けてバッテリを充電するための充電装置と、前記内燃機関を始動することなく暖機するための暖機装置とを備え、前記暖機装置は、前記した構成とされ、この暖機装置の構成要素が前記バッテリの電気エネルギーを受けて作動される、ことを特徴としている。
【0033】
この構成では、車載のバッテリの電気エネルギーで暖機装置を作動するようになっているから、暖機装置に専用のバッテリ等を装備する無駄がなくなり、暖機装置のイニシャルコストの低減が可能になる。
【0034】
また、仮に、前記車載のバッテリを家庭用電源で充電している最中に、暖機処理を実行する場合であれば、前記バッテリから暖機装置の構成要素に電気エネルギーを供給することによってバッテリの電気エネルギーが減少しても、バッテリに家庭用電源から電気エネルギーが補充されることになるので、バッテリの能力低下を抑制または防止することが可能になる。
【0035】
これにより、その後でプラグインハイブリッド車両を走行させる場合に、即座にバッテリを充電するための処理を行わなくて済むようになる。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、車両に搭載される動力源を始動することなく暖機する暖機装置において、暖機処理を遠隔始動させる際に、暖機処理の始動時期を適切に設定することが可能になる。
【0037】
また、本発明は、動力源として内燃機関および電動モータを搭載するプラグインハイブリッド車両において、内燃機関の暖機処理を、車載バッテリの電気エネルギーを無駄に浪費することなく行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るプラグインハイブリッド車両の一実施形態の概略構成を示す図である。
【図2】図1のプラグインハイブリッド車両における内燃機関の冷却システムの概略構成を示す図である。
【図3】図2において内燃機関の温間時(または暖機装置による暖機処理の完了後)の動作説明に用いる図である。
【図4】図1のプラグインハイブリッド車両における動作説明に用いるフローチャートである。
【図5】図2において暖機装置による暖機処理時の動作説明に用いる図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0040】
図1から図5に本発明の一実施形態を示している。まず、図1を参照して、本発明の適用対象とするプラグインハイブリッド車両の概略構成を説明する。
【0041】
プラグインハイブリッド車両とは、家庭用電源(AC100V等)から走行用バッテリ7を充電可能とするための機能を備えているものを言う。
【0042】
この実施形態でのプラグインハイブリッド車両は、動力源として、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関1と、第1および第2のモータジェネレータ2,3とを備え、かつFF(フロントエンジン・フロントドライブ)タイプのパワートレーンを有する構成とされている。
【0043】
また、プラグインハイブリッド車両は、減速機5と、動力分配機構6と、走行用バッテリ7と、インバータ8と、コンバータ9とを少なくとも備えている。
【0044】
プラグインハイブリッド車両を構成する各要素については、基本的に公知の構成と同様であるので、簡単に説明する。
【0045】
内燃機関1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃料を燃焼させて動力を出力する公知の動力源であって、スロットル開度(吸気量)、燃料噴射量、点火時期などの運転状態を制御できるように構成されている。この内燃機関1は、EFI−ECU(Electronic Control Unit)15によって制御される。
【0046】
第1、第2モータジェネレータ2,3は、交流同期電動機であって、電動機として機能するとともに発電機としても機能する。この第1、第2モータジェネレータ2,3はインバータ8を介して走行用バッテリ7に接続されている。また、第1、第2モータジェネレータ2,3には、走行用バッテリ7からインバータ8を介して駆動用電力が供給される。第1、第2モータジェネレータ2,3は、HV−ECU16によってインバータ8を制御することにより回生動作または力行(アシスト)動作を行う。回生電力は走行用バッテリ7にインバータ8を介して充電される。
【0047】
減速機5は、内燃機関1やモータジェネレータ2,3で発生した動力を駆動輪4,4に伝達したり、駆動輪4,4の回転力を内燃機関1や第1、第2モータジェネレータ2,3に伝達したりする。
【0048】
動力分配機構6は、内燃機関1が発生する動力を駆動輪4,4と第1モータジェネレータ2との2経路に分配するもので、例えば一般的に公知の遊星歯車機構で構成されている。この動力分配機構6は、第1モータジェネレータ2の回転数を制御することにより、無段変速機としても機能する。
【0049】
走行用バッテリ7は、第1、第2モータジェネレータ2,3を駆動するための電力を蓄電する。この走行用バッテリ7には、充電装置(充電回路)10が接続されている。この充電装置10は、家庭用電源プラグ11を介して家庭用電源から電力供給を受けて走行用バッテリ7を充電する。この走行用バッテリ7の充放電状態は、バッテリECU17により制御される。
【0050】
インバータ8は、走行用バッテリ7の直流と各モータジェネレータ2,3の交流とを変換しながら電流制御を行う。コンバータ9は、走行用バッテリ7からモータジェネレータ2,3に電力を供給する際に電力を昇圧するもので、走行用バッテリ7とインバータ8との間に設けられている。インバータ8およびコンバータ9は、HV−ECU16によって駆動制御される。
【0051】
EFI−ECU15、HV−ECU16、バッテリECU17は、いずれも、主としてCPU、ROM、RAM等を有する一般的に公知の構成であり、各種プログラムに基づいて後述する機能を実行する。
【0052】
なお、HV−ECU16は、EFI−ECU15およびバッテリECU17と双方向に情報伝達可能に接続されており、プラグインハイブリッド車両における各種機能を統括制御する。
【0053】
例えばプラグインハイブリッド車両においては、発進時や低速走行時等であって内燃機関1の運転効率が悪い場合には、第2モータジェネレータ3のみによりプラグインハイブリッド車両の走行(EV走行)を行い、通常走行時には、例えば動力分配機構6により内燃機関1の動力を2経路に分け、一方で駆動輪4,4の直接駆動を行い、他方で第1モータジェネレータ2を駆動して発電を行う。
【0054】
この時、発生する電力で第2モータジェネレータ3を駆動して駆動輪4,4の駆動補助を行う。また、高速走行時には、さらに走行用バッテリ7からの電力を第2モータジェネレータ3に供給し、この第2モータジェネレータ3の出力を増大させて駆動輪4,4に対して駆動力の追加(駆動力アシスト)を行う。一方、減速時には、駆動輪4,4により従動する第2モータジェネレータ3がジェネレータとして機能して回生発電を行い、回収した電力を走行用バッテリ7に蓄える。
【0055】
さらに、上記プラグインハイブリッド車両においては、車両の運転状態や走行用バッテリ7の状態によって、燃費を向上させるために、内燃機関1を停止させる。そして、その後も、車両の運転状態や走行用バッテリ7の状態を検知して、内燃機関1を再始動させる。このように、プラグインハイブリッド車両においては、イグニッションスイッチがON位置であっても内燃機関1は間欠運転される。
【0056】
次に、図2を参照して、内燃機関1の冷却システムにおける概略構成を説明する。
【0057】
この冷却システムは、要するに、内燃機関1に用いる冷却液の温度を、速やかに所定の設定温度に到達させる一方で、所定の設定温度範囲に保つように構成されている。
【0058】
内燃機関1の内外には、閉ループとされる冷却液循環回路が設けられており、この循環回路内で冷却液が循環されるようになっている。なお、冷却液は、一般的に公知のように、例えばLLC(Long Life Coolant)と呼ばれる不凍液等とされる。
【0059】
この冷却液循環回路は、内燃機関の内部に設けられる内部通路と、内燃機関の外部に設けられる外部通路とを含む。
【0060】
前記内部通路は、主として、内燃機関1のシリンダブロックに設けられるウォータージャケット1aと、内燃機関1のシリンダヘッドに設けられるウォータージャケット1bとを含む。
【0061】
前記外部通路は、主として、シリンダヘッド側ウォータージャケット1bの出口からラジエータ24に至る冷却水排出路21と、ラジエータ24からシリンダブロック側ウォータージャケット1aの入口に至る冷却水導入路22と、車室内を暖房するための熱源としてのヒータコア25が設けられるヒータ通路23とを含む。
【0062】
冷却水導入路22には、電動式ウォーターポンプ26およびサーモスタット27が設けられている。
【0063】
ラジエータ24は、シリンダヘッド側ウォータージャケット1bから冷却水排出路21へ排出される冷却液の熱を放熱して冷却するものである。
【0064】
ヒータコア25は、ヒータ通路23においてシリンダヘッド側ウォータージャケット1bの出口寄りに設けられており、シリンダヘッド側ウォータージャケット1bから排出された高温の冷却液の熱を回収して車室内へ発散するようになっている。
【0065】
なお、ラジエータ24の近傍には、ラジエータ24による冷却水の放熱作用を高めるための電動式送風ファン28が設けられており、また、ヒータコア25の近傍には、ヒータコア25による放熱で発生した暖気を車室内に送り込むための電動式送風ファン29が設けられている。
【0066】
電動式ウォーターポンプ26は、冷却水循環経路内で冷却水を循環させるものであり、その動作はHV−ECU16により制御される。この電動式ウォーターポンプ26を駆動するためのモータドライバ30には、走行用バッテリ7から駆動電流が供給される。
【0067】
サーモスタット27は、内燃機関1の冷却水の温度が所定の規定範囲内である定常運転(暖機完了)の場合に、図3の一点鎖線矢印で示すように、冷却液を循環させるようにして冷却水の熱をラジエータ24で発散させる状態にする一方で、水温が規定範囲の下限値未満である冷間運転の場合に、冷却水を循環させないようにして冷却水の熱をラジエータ24で発散させない状態にする。このサーモスタット27は、例えば冷却液の温度高低に応じて膨張・収縮するサーモワックスを駆動源として弁体を駆動するような一般的に公知の構成とされる。
【0068】
なお、冷却水排出路21においてシリンダヘッド寄りには、内燃機関1の冷却水出口での冷却水の温度を検出するための水温センサ31が設けられている。また、冷却水導入路22においてシリンダブロック寄りには、入水温センサ32が設けられている。この水温センサ31および入水温センサ32の出力はHV−ECU16に入力される。
【0069】
図2に示すように、HV−ECU16には、車両室内に設置されるスタートスイッチ33が接続されている。このスタートスイッチ33は、内燃機関1を始動させるためのスタータ信号をHV−ECU16に入力するもので、HV−ECU16はスタートスイッチ33からのスタータ信号を受けると、EFI−ECU15およびバッテリECU17と協同して内燃機関1を始動させる。
【0070】
なお、プラグインハイブリッド車両に搭載される内燃機関1の始動は、公知の方法と基本的に同様、要するに、第1モータジェネレータ2をスタータモータとして利用して内燃機関1のクランキングを行うとともに、燃料噴射動作および点火動作を制御することにより行う。
【0071】
前記構成のプラグインハイブリッド車両には、車両から離れた位置から内燃機関1を始動させるための遠隔始動装置40と、内燃機関1を始動せずに暖機するための暖機装置50とが搭載されているので、以下で詳細に説明する。
【0072】
遠隔始動装置40は、図1に示すように、主として、無線式の携帯型送信機(リモートコントローラ)41と、無線式の受信部42と、信号処理部43とを含んで構成されている。
【0073】
携帯型送信機41は、車両に対応付けられた固有のID番号(識別符号)を含む電波(エンジン始動指示信号)を送信するものである。この携帯型送信機41が、請求項に記載の遠隔始動操作手段に相当する。
【0074】
受信部42は、携帯型送信機41から送信されたエンジン始動指示信号を受信するアンテナを内蔵しており、受信したエンジン始動指示信号を復調して信号処理部43に出力する。
【0075】
信号処理部43は、受信部42から受け取ったエンジン始動指示信号に基づいて送信元の携帯型送信機41固有のID番号を認識し、この認識したID番号と予め記憶されてあるID番号とを照合し、所定の対応関係を満たしていると判定した場合のみHV−ECU16にスタータ許可信号を出力する。この信号処理部43には、送信元の携帯型送信機41固有のID番号を記憶する不揮発性メモリ(図示省略)を内蔵している。
【0076】
HV−ECU16には、信号処理部43からスタータ許可信号を受け取ると、後で説明する暖機装置50による暖機処理の要否を判定する処理と、前記暖機処理が不要であると判定した場合にEFI−ECU15およびバッテリECU17と協同して内燃機関1を始動させる一方で、前記暖機処理が必要であると判定した場合には前記暖機処理を実行させる処理とを含む機能が新たに追加されている。
【0077】
暖機装置50は、内燃機関1を始動することなく、内燃機関1の温間状態にさせることで内燃機関1を暖機するものであり、図2に示すように、主として、タンク51と、ヒータ52と、電動式ポンプ53と、請求項に記載の貯留水温検出手段としての貯留水温センサ54とを含んで構成されている。
【0078】
この暖機装置50の動作制御は、この実施形態において、専用のECUで行わずに、既存のHV−ECU16を流用して行うようにしている。したがって、HV−ECU16が請求項に記載の制御装置として機能する。当然ながら、暖機装置50に、専用のECUを装備することも可能である。
【0079】
タンク51は、内燃機関1の冷却水を貯留するとともに保温する構造になっている。つまり、このタンク51は、その壁部が中空とされているとともに、その中空部がほぼ真空状態にされることによって、タンク51の内外を断熱状態に保って貯留水を保温する構造になっている。このタンク51の貯留容量は、例えば内燃機関1のウォータージャケット1a,1b内の冷却水封入量と同等、あるいは前記冷却水封入量よりも多く設定される。
【0080】
このタンク51には、内燃機関1から排出される冷却水が導入路55を経て導入されるとともに、内部の貯留水を内燃機関1へ還流路56を経て戻せるようになっている。
【0081】
導入路55は、タンク51と、冷却水排出路21においてシリンダヘッド側ウォータージャケット1b寄りの位置とに連通連結されており、その途中には、逆止弁57と電動式ポンプ53とが設けられている。
【0082】
また、還流路56は、タンク51と、冷却水導入路22において電動式ウォーターポンプ26の冷却水導入部とに連通連結されており、その途中には逆止弁58が設けられている。
【0083】
ヒータ52は、タンク51内の貯留水を加熱するもので、その動作はHV−ECU16により制御される。
【0084】
電動式ポンプ53は、タンク51内の貯留水を内燃機関1へ送出するものであり、その動作はHV−ECU16により制御される。
【0085】
貯留水温センサ54は、タンク51内の貯留水の温度を検出するもので、この検出信号はHV−ECU16に出力される。
【0086】
次に、図4のフローチャートを参照して、内燃機関1の遠隔始動に関する手順や動作について説明する。図4に示すフローチャートは、HV−ECU16を主体とした処理である。
【0087】
遠隔始動装置40の携帯型送信機41から送信された電波を受信部42で受信することに基づき信号処理部43がエンジン始動指示信号をHV−ECU16に送信するが、このエンジン始動指示信号をHV−ECU16受信すると、図4のフローチャートにエントリーする。
【0088】
まず、ステップS1では、エンジン始動指示信号の入力に基づき車両使用者が携帯型送信機41を操作した位置から受信部42が搭載されてある車両の存在位置までの離隔距離を算出する。
【0089】
続くステップS2において、前記ステップS1の算出結果に基づいて内燃機関1の始動予定時期を設定する。詳しくは、このステップS2では、例えば車両使用者が携帯型送信機41を操作した位置から車両の存在位置に到着するまでに要する見込み時間を推定し、この推定結果に基づいて内燃機関1の始動予定時期を設定するのが好ましい。この始動予定時期は、車両使用者が車両に到着する前に設定される。
【0090】
なお、前記見込み時間は、例えば前記ステップS1で算出した離隔距離と、車両使用者の歩行速度とに基づき、車両使用者が携帯型送信機41を操作した位置から車両の存在位置に到達するまでに要する移動時間を算出し、さらに、この算出した移動時間に対し、車両使用者が車両のドアを開けてからシートに着座するまでに要する作業時間を加えることにより、求めることができる。
【0091】
前記歩行速度は、一般的な人の歩行平均速度とすることができ、また、前記作業時間は、予め実験により多数の人に実際に行わせることで計測し、その計測値の平均値とすることができる。これらの数値は、HV−ECU16に備える不揮発性メモリ(図示省略)等に予め記憶される。なお、前記歩行速度や作業時間は、車両使用者の習慣に応じて学習可能に設定することが可能である。例えば車両使用者により始動要求を行う場所が家屋の1階の場合と階上の場合とで歩行速度が異なることがある。また、作業時間についても個人差がある。そこで、実際の移動時間の算出結果から実際の歩行速度を算出し、この実測値と前回値との偏差に基づいて前回値を更新するように学習することができる。また、実際の作業時間を計測し、この実測値と前回値との偏差に基づいて前回値を更新するように学習することができる。そのようにした場合、内燃機関1の始動時期の最適化を図ることが可能になる。
【0092】
この後、ステップS3において、暖機処理を行う必要があるか否かを調べる。このステップS3では、内燃機関1の温度、例えば内燃機関1の冷却水出口の水温を検出するための水温センサ31の検出値T1が第1閾値Ta以上であるか否かを判定する。
【0093】
この第1閾値Taは、例えば内燃機関1の冷間状態での温度、例えば50℃以下で任意に設定することができるが、好ましくは、50℃に設定することができ、HV−ECU16に備える不揮発性メモリ(図示省略)等に予め記憶されている。この第1閾値Ta以上であれば内燃機関1が温間状態であり、また、第1閾値Ta未満であれば内燃機関1が冷間状態である。
【0094】
ここで、前記検出値T1が第1閾値Ta以上である場合には、暖機処理を行う必要がないので、前記ステップS3で肯定判定して、下記ステップS5〜S9に示す暖機処理を実行せずに、ステップS4において内燃機関1の始動処理を実行する。
【0095】
このステップS4では、前記ステップS2で設定した内燃機関1の始動予定時期に基づいて内燃機関1のスタータ信号をインバータ8やEFI−ECU15に出力し、第1モータジェネレータ2をスタータモータとして利用して内燃機関1のクランキングを行うとともに、燃料噴射動作および点火動作を制御することにより行う。この後、このフローチャートを抜ける。
【0096】
しかし、前記検出値T1が第1閾値Ta未満である場合には、暖機処理を行う必要があるので、前記ステップS3で否定判定して、下記ステップS5〜S9に示す暖機処理に移行する。
【0097】
前記のステップS5〜S9で示す暖機処理を説明する。
【0098】
まず、ステップS5において、タンク51内の貯留水を加熱する必要があるか否かを調べる。このステップS5では、タンク51内の貯留水温度、例えば貯留水温センサ54から検出される検出値T2が第2閾値Tb未満であるか否かを判定する。
【0099】
第2閾値Tbは、例えばヒータ52内の貯留水が内燃機関1の温間時の冷却水温度(例えば80℃)未満で任意に設定することができ、予めHV−ECU16に備える不揮発性メモリ(図示省略)等に記憶されている。
【0100】
ここで、前記検出値T2が第2閾値Tb以上である場合には、タンク51内の貯留水を加熱する必要がないので、前記ステップS5で否定判定して、下記するステップS6〜S8を飛ばしてステップS9に移行する。
【0101】
しかし、前記検出値T2が第2閾値Tb未満である場合には、タンク51内の貯留水を加熱する必要があるので、前記ステップS5で肯定判定して、ステップS6に移行する。
【0102】
このステップS6では、前記ステップS5で検出した検出値T2と第2閾値Tbとの差を算出するとともに、この算出結果に基づいてタンク51内の貯留水温度を前記第2閾値Tb以上に昇温させるのに必要な加熱条件、つまりヒータ52による加熱出力と加熱時間とを算出する。
【0103】
この後、ステップS7において、前記算出結果に基づいてヒータ52を作動させることにより、タンク51内の貯留水を加熱する。
【0104】
そして、ステップS8においてタンク51内の貯留水温度、つまり貯留水温センサ54から出力される検出値T2が前記第2閾値Tb以上になったか否かを調べる。
【0105】
ここで、検出値T2が第2閾値Tb未満である場合には前記ステップS8で否定判定して、ヒータ52の加熱が終了するまで継続するが、検出値T2が第2閾値Tb以上になった場合には前記ステップS8で肯定判定して、ステップS9に移行する。
【0106】
このステップS9では、ヒータ52の作動を停止してから、適宜のタイミングで電動式ポンプ53を一定時間だけ作動させることにより、タンク51内の貯留水と内燃機関1のウォータージャケット1a,1b内の冷却水とを入れ替える。これにより、内燃機関1の暖機が行われたことになる。
【0107】
詳しくは、図5の実線矢印で示すように、タンク51内の比較的高温の貯留水が、電動式ポンプ53により還流路56を経て内燃機関1のシリンダブロック側ウォータージャケット1aに圧送されることになるが、その圧力に伴いシリンダブロック側ウォータージャケット1aやシリンダヘッド側ウォータージャケット1b内の冷却水が冷却水排出路21に排出されることになって、この排出された冷却水が導入路55を経てタンク51内へ導入されるようになる。
【0108】
この後、前記したステップS4に移行して、内燃機関1の始動処理を実行してから、このフローチャートを抜ける。
【0109】
なお、内燃機関1の始動処理は、上述したが、要するに、前記ステップS2で設定した内燃機関1の始動予定時期に基づいて内燃機関1のスタータ信号をインバータ8やEFI−ECU15に出力し、第1モータジェネレータ2をスタータモータとして利用して内燃機関1のクランキングを行うとともに、燃料噴射動作および点火動作を制御することにより行う。
【0110】
ところで、前記のような動作において、ステップS1が請求項に記載の算出手段に、また、ステップS2が請求項に記載の設定手段に、さらにステップS9が請求項に記載の決定手段に、それぞれ対応している。ステップS3が請求項に記載の暖機要否判定手段に、また、ステップS4が請求項に記載の始動処理手段に、それぞれ対応している。ステップS5が請求項に記載の加熱要否判定手段に、また、ステップS6〜S8が請求項に記載の対処手段に、それぞれ対応している。
【0111】
以上に説明したように、本発明の特徴を適用した実施形態のプラグインハイブリッド車両によれば、次のような作用、効果が得られる。
【0112】
(1)車両使用者が携帯型送信機41で内燃機関1の遠隔始動を要求すると、内燃機関1の冷間時に暖機装置50による暖機処理を行うようにし、内燃機関1の温間時には暖機装置50による暖機処理を行わないようにしている。
【0113】
そのため、実際に内燃機関1を始動する際に、内燃機関1内のオイルが適温になって内燃機関のフリクションロスを軽減することが可能になるとともに、燃料が霧化されやすくなる。その結果、内燃機関の始動性が良好になるとともに、燃焼効率が向上するようになるから、燃費の向上ならびに排気エミッションの低減が可能になる。
【0114】
さらに、仮に、内燃機関1の状態に関係なく常に暖機装置50を作動する場合に比べると、暖機装置50の作動に関する無駄なエネルギー消費を無くすことが可能になる。
【0115】
(2)内燃機関1の冷間時の始動要求に伴い、暖機装置50による内燃機関1の暖機処理を、車両使用者が車両に到着する前で早すぎず、また遅すぎずといった適切なタイミングで行うようにしている。
【0116】
そのため、仮に内燃機関1の始動が要求されたときに、直ぐに暖機処理を実行して車両使用者が車両に到着するより遥か前に暖機処理を終了する場合のように、暖機処理後に内燃機関1が再度冷えることを無くすことが可能になる。このような現象は、寒冷地や寒い季節において発生しやすいので、本発明が有効となる。
【0117】
(3)プラグインハイブリッド車両に搭載される走行用バッテリ7の電気エネルギーを利用して暖機装置50のヒータ52や電動式ポンプ53を作動させるようにしている。
【0118】
これにより、暖機装置50に専用のバッテリ等を装備するといった無駄がなくなり、暖機装置50のイニシャルコストを低減することが可能になる。
【0119】
また、仮に、走行用バッテリ7を家庭用電源で充電している最中に、暖機処理を実行する場合であれば、走行用バッテリ7から暖機装置50のヒータ52や電動式ポンプ53に電気エネルギーを供給することによって走行用バッテリ7の電気エネルギーが減少しても、この走行用バッテリ7に家庭用電源から電気エネルギーが補充されることになるので、走行用バッテリ7の能力低下を抑制または防止することが可能になる。
【0120】
したがって、その後でプラグインハイブリッド車両を走行させる場合に、即座に走行用バッテリ7を充電するための処理を行わなくて済むようになる。
【0121】
(4)この実施形態では、暖機装置50のタンク51を保温構造にしているから、例えば内燃機関1の停止後において内燃機関1内の高温の冷却水をタンク51へ貯留させておけば、このタンク51内の貯留水の温度低下を抑制することが可能になる。これにより、仮に、車両停止後に内燃機関1の遠隔始動が要求されたときに、タンク51内の貯留水の温度低下が少ないので、暖機処理を実行する場合には、タンク51内の貯留水を加熱するのに要するエネルギー消費を抑えることが可能になるとともに、暖機処理へ比較的速やかに移行できるようになる。
【0122】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲で包含されるすべての変形や応用が可能である。以下で例を挙げる。
【0123】
(1)上記実施形態において、携帯型送信機41を、図示していないが車両キーと一体に形成することが可能である。この他、近年では、例えばスマートキーと呼ばれる携帯機を車両キーの代わりとすることがあるが、そのような場合には、このスマートキーに携帯型送信機41の機能を持たせるようにすることが可能である。
【0124】
(2)上記実施形態では、暖機装置50をプラグインハイブリッド車両に搭載される内燃機関1の暖機に利用する例を挙げているが、プラグインではないハイブリッド車両に搭載される内燃機関1の暖機や、ハイブリッド車両ではない一般車両に搭載される内燃機関1の暖機にも利用することが可能である。
【0125】
(3)上記実施形態で説明した内容において、本発明の特徴と直接的に関係のない構成要素や動作等については特に限定されるものではなく、適宜の代用が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0126】
1 内燃機関
1a シリンダブロック側ウォータージャケット
1b シリンダヘッド側ウォータージャケット
2 第1モータジェネレータ
3 第2モータジェネレータ
7 走行用バッテリ
10 充電装置
11 家庭用電源プラグ
15 EFI−ECU
16 HV−ECU
17 バッテリECU
21 冷却水排出路
22 冷却水導入路
24 ラジエータ
31 内燃機関の冷却水出口の水温センサ
32 入水温センサ
33 スタートスイッチ
40 遠隔始動装置
41 携帯型送信機
42 受信部
43 信号処理部
50 暖機装置
51 タンク
52 ヒータ
53 電動式ポンプ
54 貯留水温センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される動力源を始動することなく暖機する暖機処理を実行するための構成要素を有する暖機装置であって、
前記構成要素の動作を制御するための制御装置を有し、
この制御装置は、遠隔始動操作手段からの動力源の始動指示信号の入力に基づいて当該遠隔始動操作手段から前記車両までの離隔距離を算出する算出手段と、
この算出結果に基づいて前記動力源の始動予定時期を設定する設定手段と、
前記設定した始動予定時期に基づいて前記暖機処理の開始時期を決定する決定手段とを含む、ことを特徴とする暖機装置。
【請求項2】
請求項1に記載の暖機装置において、
前記制御装置は、前記始動指示信号の入力に基づいて前記暖機処理が必要であるか否かを判定する暖機要否判定手段と、
前記暖機要否判定手段で不要であると判定した場合に、前記設定手段で設定した始動予定時期に動力源を始動させる処理を実行する始動処理手段とをさらに含み、
前記決定手段は、前記暖機要否判定手段で必要であると判定した場合に、暖機処理の実行開始時期を決定する、ことを特徴とする暖機装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の暖機装置において、
前記動力源は、内燃機関とされる、ことを特徴とする暖機装置。
【請求項4】
請求項3に記載の暖機装置において、
前記構成要素は、内燃機関の冷却水を貯留するためのタンクと、このタンク内の貯留水を加熱するためのヒータと、前記タンク内の貯留水を前記内燃機関へ導入させるための電動式ポンプと、前記タンク内の貯留水の温度を検出する貯留水温検出手段とを含み、
前記制御装置は、前記決定手段で決定した暖機処理の実行開始時期に前記タンク内の貯留水の温度に基づいて前記ヒータによる加熱が必要であるか否かを判定する加熱要否判定手段と、
この加熱要否判定手段で必要であると判定したとき、前記ヒータの加熱条件および作動時期を決定して前記作動時期に作動させる対処手段とをさらに含み、
前記決定手段は、前記加熱要否判定手段で不要であると判定したとき、前記暖機処理の実行開始時期として前記電動式ポンプの作動時期を決定する、ことを特徴とする暖機装置。
【請求項5】
動力源としての内燃機関および電動モータと、家庭用電源から電力供給を受けてバッテリを充電するための充電装置と、前記内燃機関を始動することなく暖機するための暖機装置とを備え、
前記暖機装置は、請求項1から4のいずれか1つに記載される構成とされ、
この暖機装置の構成要素が前記バッテリの電気エネルギーを受けて作動される、ことを特徴とするプラグインハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−242549(P2010−242549A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90173(P2009−90173)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】