説明

曲げ加工装置および曲げ加工方法

【課題】簡易な手法で、板材に傷を形成することなく板材を曲げ加工することができる曲げ加工装置および曲げ加工方法を提供することを課題とする。
【解決手段】下金型12と上金型14で板材Pを挟み込み、板材Pに上方から当接する当接部16Hを有する曲げ用金型16を下降させることで、当接部16Hを板材Pに当接させて板材Pを曲げる。その際、当接部16Hを、板材Pよりも硬さが低い部材で構成させておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材の曲げ加工装置および曲げ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板材の曲げ加工を行う際には、ダイスの上に板材を配置し、ポンチを下降させて板材に押し当てて曲げることが慣用的に行われている(例えば特許文献1参照)。例えばV曲げの加工を行うには、ダイスに形成された凹部(V状の溝)の少なくとも周縁部で支えられるように板材を配置し、ポンチを下降させて板材を押圧することで加工している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−071652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、曲げ加工後の板材には、ダイスに当接していた部分に傷や圧痕が残るという難点があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な手法で、板材に傷を形成することなく板材を曲げ加工することができる曲げ加工装置および曲げ加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、板材の曲げ加工において、板材の表面に何ら傷や圧痕を残すことなく板材を曲げることが困難な原因を検討した。そして以下のことを見い出した。
【0007】
図4(a)および(b)は、それぞれ、従来のV曲げで板材の曲げ加工を行うことを説明する工程毎の模式的側面図であり、図4(c)は図4(b)の部分拡大図である。慣用的な曲げ加工では、図4に示すようにダイス112とポンチ116を使用するものであり、ダイス112の成型用の凹部112Dの上に板材Pを配置し、ポンチ116を下降させることで板材PのV曲げ加工を行ってL字状部材PLを形成する。この曲げ加工時に、図4(c)に示すように、ダイス112の肩部112Sと板材Pとが接触し、その近傍の狭い範囲に高い圧力が作用するため、そこで板材Pの表面に傷や圧痕を生ずる。
【0008】
本発明者は、このような傷や圧痕を生じさせない対策を検討した。そして、板材Pを曲げるためには、その板材Pの曲げようとする部分に、所要のモーメントを加える必要があることに着目した。このモーメントの大きさは、荷重と腕の長さLとの積となる。そして、図4(b)に示すように、V曲げでは腕の長さLが短いために、曲げ加工のための所定の荷重が大きくなり、肩部112Sに当接する板材部分PT(図4(c)参照)の外面に傷や圧痕が生ずることを見出した。
【0009】
また、本発明者は、板材の曲げ加工において、正確な所定の曲げ角度が形成されるように板材を曲げ加工することが困難である原因を検討した。そして以下のことを見い出した。
【0010】
慣用的な曲げ加工ではポンチとダイスを使用して板材をV曲げ加工している。このV曲げ加工では、意図する曲げ角度に対応した角度の凹部112Dをダイス上面側に形成しておく。そして、このダイス112上に板材を載置し、ポンチ116で板材Pを押圧してその凹部112Dの角度を板材Pに転写して曲げ加工を行う。曲げ加工後、板材Pは弾性回復(スプリングバック)を生ずるため、板材Pに形成された曲げ角度は所定の角度より大きくなる。このスプリングバック量は、板材Pの材質や板厚によって変わる。また、同じ材質や板厚でも、機械的性質の相違や板厚の若干の差により、この曲げ角度は異なる。
【0011】
なお、V曲げ加工では、曲げる際にポンチ116とダイス112を使用するため曲げ角度が一義的に決定される。従って、曲げ加工力を制御すれば曲げ角度を若干変えることは可能であるが、既に曲がった板材Pの曲げ角度を設定した曲げ角度に修正することは困難である。
【0012】
このような検討のもとで、本発明者は、板材の外面に傷や圧痕が生じない曲げ方法を鋭意検討し、本発明を完成するに至った。
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、板材を載置する載置面と、前記載置面の一端部に形成され前記板材にL曲げ加工を行うための角部とを有する下金型と、前記下金型との間で前記板材を挟持する上金型と、前記下金型と前記上金型とで挟持された前記板材に上方から当接する当接部を有し、前記当接部を前記板材に当接させて前記角部の外側を下降することで前記板材を曲げる曲げ用金型と、を備え、前記曲げ用金型の少なくとも前記当接部は、前記板材よりも硬さが低い部材、または、前記角部に平行な軸回りに回転自在なローラ、で構成される、曲げ加工装置である。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の曲げ加工装置を用いた曲げ加工方法であって、前記下金型と前記上金型で前記板材を挟み込み、前記曲げ用金型を下降させることで、前記当接部を前記板材に当接させて曲げ加工力を加えることで前記板材を曲げる、曲げ加工方法である。
【0015】
請求項3に係る発明は、前記板材の曲げ角度を測定する角度測定センサーを1個以上配置し、前記角度測定センサーによる測定角度が許容角度範囲内であれば曲げ加工を終了する、曲げ加工方法である。
【0016】
請求項4に係る発明は、前記板材を更に曲げる方向に前記板材を押圧する補助ジグを設け、前記曲げ用金型で前記板材を曲げ加工した後、前記板材を更に曲げる方向に補助ジグで押圧することで角度補正用の曲げ加工を前記板材に行う、請求項3に記載の曲げ加工方法である。
【0017】
請求項5に係る発明は、前記板材の曲げを戻す方向に前記板材を押圧する第2補助ジグを設け、前記曲げ用金型によって前記板材をオーバーベンドさせた後、前記第2補助ジグで前記板材の曲げを戻すことによって角度補正用の曲げ加工を行う、請求項3または4に記載の曲げ加工方法である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、簡易な手法で、板材に傷を形成することなく板材を曲げ加工することができる曲げ加工装置とすることができる。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、簡易な手法で、板材に傷を形成することなく板材を曲げ加工することができる。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、曲げ角度の角度測定誤差を抑制することができる。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、曲げ角度を測定しながら補助ジグによって曲げ加工することによって、角度を容易に補正できる
請求項5に係る発明によれば、反対方向への曲げ加工によりスプリングバックが小さくなるため、高精度曲げが可能となる
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1(a)から(d)は、それぞれ、第1実施形態の曲げ加工装置を用いて板材に曲げ加工を行う工程毎の模式的側面図である。
【図2】第1実施形態の変形例を説明する模式的側面図である。
【図3】第2実施形態で、板材に曲げ加工を行うことを説明する模式的側面図である。
【図4】図4(a)および(b)は、それぞれ、従来の方式で板材に曲げ加工を行う工程毎の模式的側面図であり、図4(c)は図4(b)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0024】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0025】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。図1(a)から(d)は、それぞれ、本実施形態に係る曲げ加工装置を用いて板材の曲げ加工を行う工程毎の模式的側面図である。本実施形態に係る曲げ加工装置10は、加工対象の板材Pを挟持する下金型(ダイス)12および上金型14と、挟持された板材Pに上方から当接して下降する曲げ用金型(ポンチ)16と、を備えている。板材Pとしては、例えば、厚みが30mm程度であっても問題なく曲げ加工できるが、0.5mm程度の薄板であっても問題なく曲げ加工できる。
【0026】
下金型12は、板材Pを載置する載置面12Uと、載置面12Uの一端部(縁部)に形成され板材PにL曲げ加工を行うための角部12Eとを有する。曲げ用金型16は、下金型12と上金型14とで挟持された板材Pに上方から当接する当接部16Hを先端部に有し、角部12Eのすぐ外側を下降することで板材PをL字状に曲げるようになっている。なお、下金型12が下降する際の当接部16Hと角部12Eとの間隔は、曲げ加工する板材Pの厚みに応じて設定変更可能とされている。
【0027】
そして、曲げ用金型16のこの当接部16Hは、板材Pよりも硬さが低い部材で構成されている。この部材の材質は、例えば、硬質ゴム、プラスチックである。曲げ用金型16全体がこのような部材で構成されていてもよい。
【0028】
また、曲げ加工装置10は、板材Pの曲げ角度を測定する角度測定センサー20を有する。更に、曲げ加工装置10は、曲げ用金型16を下降させることで板材Pを曲げ加工した後、板材Pを更に曲げる方向に押圧する補助ジグ24を備えている。本実施形態では、補助ジグ24が曲げ用金型16の所定高さ位置に取り付けられている。なお、補助ジグ24は曲げ用金型16とは別体に設けられていてもよい。また、角度測定センサー20は補助ジグ24よりも下方位置に配置されている。
【0029】
さらに、曲げ加工装置10は、角度測定センサー20による測定結果に基づいて角度補正用の曲げ加工を板材Pに行う制御部30を備えている。制御部30は、補助ジグ24を構成する押圧部(曲げ角度補正用ポンチ)26の移動長さ(押し出し長さ)および押し出し力を設定するようになっている。
【0030】
(作用、効果)
以下、本実施形態の作用、効果について説明する。本実施形態では、まず、下金型12の載置面12Uに平板状の板材Pを載置する。その際、後述の曲がり部P2の内側が角部12Eに位置するように配置する。更に、上金型14を板材Pに上方から当接させて下金型12と上金型14とで板材Pを挟持する。
【0031】
そして、曲げ用金型16を下降させて、当接部16Hを板材Pの上面に当接させ、更に下降させることで板材Pに曲げモーメントを加える(本曲げ加工)。この結果、板材PがL字状に曲がり、下金型12と上金型14とで挟持されている平板状の基部P1と、基部P1に連続し曲がっている曲がり部P2と、曲がり部P2に連続し当接部16Hが当接した平板状の被当接部P3と、で構成されるL字状部材PLが得られる。
【0032】
本実施形態で行うこのようなL曲げ加工では、V曲げ加工に比べ、曲げ加工における腕の長さLが長い。従って、曲げ加工に必要な荷重が小さくなり、板材Pの表面に生ずる傷や圧痕が少ない。そして、当接部16Hの硬さが板材Pの硬さよりも低いので、当接部16Hが板材Pの表面に当接して曲げ加工が行われても、板材Pの表面に傷や圧痕が残ることが回避される。このように表面に傷をつけずに板材Pを曲げてなるL字状部材PLを形成すると、傷を補修せずにこのL字状部材PLをそのまま使用することができる。このことは、塗装した板材を曲げ加工する上で特に大きな効果を奏する。さらに、ステンレス等の板材では塗装せずに、金属の表面の持っている美しさをそのまま使用することができる。例えば、エレベーターの扉や流し台の曲げ加工された部位などにそのまま使用することができる。
【0033】
ここで、この本曲げ加工では、板材Pと曲げ用金型16との間にクリアランスがあり、しかも曲げ加工後にスプリングバックが生じるため、基部P1に対する被当接部P3の曲げ角度θは意図した角度よりも大きくなることが多い。このため、以下のようにして角度補正用の曲げ加工を行う。
【0034】
まず、角度測定センサー20で曲げ角度θを測定する。この測定結果は制御部30へ送信される。このように角度測定センサー20で曲げ角度θを測定することにより、本曲げ加工で形成された曲がり部P2の角度誤差を正確に検出することができる。曲げ用金型16による板材Pの変形では弾性変形や軸受け隙間などが原因となって発生する誤差が生じるが、このように角度測定センサー20によって曲げ角度θを測定することにより、このような誤差が生じていても補助ジグ24や後述の第2補助ジグ44で角度補正用の曲げ加工を適切に行うことが可能である。
【0035】
制御部30は、この測定結果に基づき曲げ角度θの不足角度を算出し、不足角度が0°となるように、補助ジグ24の押圧部26の移動長さ、および、押し出し力の適切な値を算出する。この移動長さや押し出し力を算出する際、板材Pの材質、厚み、角部12Eから押圧部26までの腕の長さ、などを考慮して算出する。また、補助ジグ24の押圧部26が後述の曲がり部P2のすぐ下方に位置するように、必要に応じて曲げ用金型16の上下方向位置を調整する。そして、算出した移動長さ、および、押し出し力で押圧部26を押し出すように補助ジグ24を制御することで、角度補正用の曲げ加工を行う。なお、角度補正用の曲げ加工を行う際、スプリングバックの見込み量を考慮の上で曲げ加工を行うことが好ましい。この見込み量を算出する際、曲げ加工データに基づいて算出してもよいし、有限要素法で算出してもよい。
【0036】
補助ジグ24によって角度補正用の曲げ加工を終了した後、曲げ用金型16を上昇させ、L字状部材PLが当接部16Hおよび押圧部26から解放された状態、すなわちL字状部材PLが曲げ用金型16および押圧部26に非接触となった状態にして、角度測定センサー20で曲げ角度θを正確に測定する。そして、曲げ角度θが許容角度範囲内であれば曲げ加工を終了する。曲げ角度θが許容角度範囲内でなければ、曲げ用金型16を下降させ補助ジグ24を用いて角度補正用の曲げ加工を再度行う。ここで、許容角度範囲については、曲げ加工を行う前に、L字状部材PLの用途等に応じて予め決めておく。
【0037】
この結果、基部P1に対する被当接部P3の曲げ角度θを、容易な手法で意図する角度に極めて近い値にすることができる。高精度に曲げ加工を行うことは、大きな板材を曲げ加工する場合に特に要求される。また、曲げ加工された板材を組み立てるに際し、正確に筐体を製造する必要がある場合には、板材は高精度に曲げ加工される必要がある。特に、厚板材の曲げ加工精度を0.5度以下に抑えることは従来から困難といわれている中、更なる板材の高精度曲げ加工が要求されており、本実施形態により、このような高精度曲げ加工の要求にも応じ得るという優れた効果が得られる。本実施形態を適用可能な具体的な工業品の例としては、農業機械、建築機械や風力発電の筐体部が挙げられる。
【0038】
なお、本実施形態では、補助ジグ24による角度補正用の曲げ加工終了後のスプリングバックを計算し、計算したスプリングバックに基づいて、曲げ加工終了時に押圧部26の位置制御を行って、角度補正用の曲げ加工による曲げ角度θを意図した正確な角度とすることが可能である。そして、このスプリングバックを計算するには、有限要素法を用いて、補助ジグ24の後退の開始直前におけるL字状部材PLの残留応力(計算値)と、引張圧縮試験から得られる除荷時の応力-ひずみ線図(実測値)とに基づき、初等解析によって計算することが好ましい。スプリングバックを計算するには、従来では、材料毎、板厚、曲げ半径、金型など、それぞれに対する大量のデータベースを必要としたが、このように計算して補助ジグ24の位置制御を行うことによりこのような大量のデータベースを必要としなくなるので、この効果は大きい。
【0039】
また、本実施形態では、板材Pと接触する当接部16Hを、板材Pよりも硬さが低い当接部材で構成することで説明したが、テープ等の板材Pよりも軟らかいものを当接部16Hに接着することによっても、板材Pの表面に傷や圧痕を生じさせずに板材Pの曲げ加工を行うことが可能となる。この場合、テープ等が痛んだら交換することが可能である。
【0040】
また、本実施形態では、曲げ用金型16が上方から垂直に降りる例で説明したが、より適切な軌跡を描かせて曲げ加工を行ってもよい。例えば、曲線状の軌跡を描くように曲げ用金型16を上方から下降させてもよい。
【0041】
また、本実施形態では角度測定センサー20を1つ配置した例で説明したが、角度測定センサー20を複数配置して高い精度で角度測定を行っても良い。
【0042】
また、本実施形態では、補助ジグ24で補正用の曲げ加工を行う例で説明したが、曲げ用金型16を更に下降させることで補正用の曲げ加工を大まかに行うことも可能である。この場合、大まかに行った補正用の曲げ加工後の曲げ角度θが許容角度範囲内となっていれば、曲げ加工を終了することが可能である。
【0043】
また、図2に示すように、当接部16Hとして、角部12Eに平行な水平軸回りに回転自在な円筒状のローラ36を設けて、板材Pとローラ36とを転がり接触にして曲げ加工を行うことによっても、板材Pの表面に生ずる傷や圧痕を生じさせること無く、板材Pを曲げることが可能となる。
【0044】
[第2実施形態]
図3は、本実施形態で板材に曲げ加工を行うことを説明する模式的側面図である。本実施形態では、第1実施形態に比べ、図3に示すように、L字状部材PLの内側からL字状部材PLの被当接部P3に当接して押し出し力を与える第2補助ジグ44を更に設けて曲げ加工を行う。本実施形態では、第2補助ジグ44を構成する第2押圧部(曲げ角度補正用第2ポンチ)46が曲がり部P2のすぐ下方に位置するように、第2補助ジグ44が所定高さ位置に設けられている。
【0045】
本実施形態では、補助ジグ24および第2補助ジグ44の配置位置の移動が可能となっており、所定位置への配置、非配置の切り替えを容易に行える構成になっている。
【0046】
本実施形態では、曲げ用金型16の当接部16Hまたは補助ジグ24によって一度オーバーベンドさせた後(すなわち曲げ過ぎた後)、板材Pの曲げを戻す方向に第2押圧部46で被当接部P3を押圧することによって、更に角度補正を行う。なお、第2補助ジグ44で角度補正用の曲げ加工を行う際、スプリングバックの見込み量を考慮の上で曲げ加工を行うことが好ましい。この見込み量の計算を行う際、曲げ加工データに基づいて計算してもよいし、有限要素法で計算してもよい。
【0047】
第2補助ジグ44によって角度補正用の曲げ加工を終了した後、L字状部材PLが第2補助ジグ44から解放された状態、すなわちL字状部材PLが第2押圧部46に非接触となった状態にして、角度測定センサー20で曲げ角度θを正確に測定する。そして、曲げ角度θが許容角度範囲内であれば曲げ加工を終了する。曲げ角度θが許容角度範囲内でなければ、第2補助ジグ44を用いて角度補正用の曲げ加工を再度行う。
【0048】
このように、曲げ用金型16による曲げ方向とは反対方向への曲げ加工を行うことで、板材内部の残留応力や、バウシンガー効果によって、曲げ加工に必要な曲げモーメントが減少する。この曲げモーメント減少によりスプリングバックが小さくなるため、高精度で曲げ加工することが可能となる。
【0049】
なお、本実施形態でも、第1実施形態と同様、第2補助ジグ44による角度補正用の曲げ加工終了後、有限要素法を用いて、第2押圧部46の後退を開始する直前におけるL字状部材PLの残留応力(計算値)と、引張圧縮試験から得られる除荷時の応力-ひずみ線図(実測値)とに基づき、初等解析によってスプリングバックを計算することが可能である。
【0050】
以上の第1実施形態、第2実施形態では平板にL曲げ加工を行ってL字状部材を形成する例で説明したが、本発明はL曲げ加工に限らず、曲げ角度が90°未満となる他の曲げ加工を行うことも可能である。また、曲げ加工によって形成された曲がり部材(例えばL字状部材PL)を更に曲げ加工することによって、あるいは、曲げ用金型を複数設け、複数の曲げ用金型を同時に下降させることで複数の曲げ用金型で板材Pを同時に加工することによって、側面視で、コの字状、円錐台状、クランク状、帽子状、などの種々の形状に加工することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 曲げ加工装置
12 下金型
12E 角部
14 上金型
16 曲げ用金型
16H 当接部
20 角度測定センサー
24 補助ジグ
36 ローラ
44 第2補助ジグ
P 板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材を載置する載置面と、前記載置面の一端部に形成され前記板材にL曲げ加工を行うための角部とを有する下金型と、
前記下金型との間で前記板材を挟持する上金型と、
前記下金型と前記上金型とで挟持された前記板材に上方から当接する当接部を有し、前記当接部を前記板材に当接させて前記角部の外側を下降することで前記板材を曲げる曲げ用金型と、を備え、
前記曲げ用金型の少なくとも前記当接部は、前記板材よりも硬さが低い部材、または、前記角部に平行な軸回りに回転自在なローラ、で構成される、曲げ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の曲げ加工装置を用いた曲げ加工方法であって、
前記下金型と前記上金型で前記板材を挟み込み、前記曲げ用金型を下降させることで、前記当接部を前記板材に当接させて曲げ加工力を加えることで前記板材を曲げる、曲げ加工方法。
【請求項3】
前記板材の曲げ角度を測定する角度測定センサーを1個以上配置し、
前記角度測定センサーによる測定角度が許容角度範囲内であれば曲げ加工を終了する、請求項2に記載の曲げ加工方法。
【請求項4】
前記板材を更に曲げる方向に前記板材を押圧する補助ジグを設け、
前記曲げ用金型で前記板材を曲げ加工した後、前記板材を更に曲げる方向に補助ジグで押圧することで角度補正用の曲げ加工を前記板材に行う、請求項3に記載の曲げ加工方法。
【請求項5】
前記板材の曲げを戻す方向に前記板材を押圧する第2補助ジグを設け、
前記曲げ用金型によって前記板材をオーバーベンドさせた後、前記第2補助ジグで前記板材の曲げを戻すことによって角度補正用の曲げ加工を行う、請求項3または4に記載の曲げ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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