説明

曲げ加工装置

【課題】曲げ形状(例えば曲げ角度)が同じであるが曲げ位置が異なる複数種類のワークを曲げ加工する場合、他種類のワークへの生産切替えが、短時間で可能な、生産効率の良い曲げ加工装置を提供する。
【解決手段】曲げ加工装置100は、ワーク搬送装置1と、パンチ2とダイ4を1組とした金型10と、該金型10を移動自在にレール5aを介して支持する架台5と、前記金型10を移動させるための金型移動手段20と、を備え、前記金型10を金型移動手段20により移動させて所定位置にセットした後、前記ワーク搬送装置1により前記ワークW1、W2を前記金型10のパンチ2の真下まで搬送して前記ワークW1、W2をセットし、パンチ2をワークW1、W2に衝突させてワークW1、W2を曲げる加工をすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの曲げ加工をする装置に関し、特にコネクタ端子の曲げ加工をする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークの曲げ加工をする場合、ワーク搬送装置と、パンチとダイを1組とした金型と、を備えた装置を使用する。金型とワーク搬送装置は、所定位置に固定されている。そして、ワーク搬送装置によりワークを金型のパンチの真下まで搬送してワークをセットし、パンチをワークに衝突させてワークを曲げる。この従来技術は、例えば特許文献1または2に記載されている。
【0003】
しかしながら、曲げ形状(例えば曲げ角度)が同じであるが曲げ位置が異なる複数種類のワークを曲げ加工する場合、従来は、第1種類のワークを所定生産量加工した後、金型をセットし直して金型の固定位置を変更して、第2種類のワークを所定生産量加工していた。このため、他種類のワークへの生産切替え時には、所定時間が必要となり、生産効率が低下する結果となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−108492号公報
【特許文献2】特開2008−166014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、曲げ形状(例えば曲げ角度)が同じであるが曲げ位置が異なる複数種類のワークを曲げ加工する場合、他種類のワークへの生産切替えが、短時間で可能な、生産効率の良い曲げ加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1形態の曲げ加工装置(100)は、
ワーク搬送装置(1)と、パンチ(2)とダイ(4)を1組とした金型(10)と、該金型(10)を移動自在にレール(5a)を介して支持する架台(5)と、前記金型(10)を移動させるための金型移動手段(20)と、を備え、
前記金型(10)を金型移動手段(20)により移動させて所定位置にセットした後、前記ワーク搬送装置(1)により前記ワーク(W1、W2)を前記金型(10)のパンチ(2)の真下まで搬送して前記ワーク(W1、W2)をセットし、パンチ(2)をワーク(W1、W2)に衝突させてワーク(W1、W2)を曲げる加工をすることを特徴とする。
【0007】
他種類のワークへの生産切替え時に、金型をレールを介して移動させ所定位置にセットした後、曲げ加工工程を実行する。金型をレールを介して移動させることにより、金型を短時間で所定位置にセットすることが可能となり、他種類のワークへの生産切替えが、短時間で可能となる。
【0008】
本発明の第2形態の曲げ加工装置(100)は、前記金型移動手段(20)が、サーボモーター(9)とボールねじ(12)を備えることを特徴とする。金型移動手段にサーボモーター(9)とボールねじ(12)を用いることにより、短時間で高精度の金型位置決めが可能となる。
【0009】
本発明の第3形態の曲げ加工装置(200)は、
ワーク搬送装置と、パンチとダイを1組とした金型と、前記ワーク搬送装置を移動自在にレールを介して支持する架台と、前記ワーク搬送装置を移動させるワーク搬送装置移動手段と、を備え、
前記ワーク搬送装置をワーク搬送装置移動手段により所定位置にセットした後、前記ワーク搬送装置により前記ワークを前記金型のパンチの真下まで搬送して前記ワークをセットし、パンチをワークに衝突させてワークを曲げる加工をすることを特徴とする。
【0010】
他種類のワークへの生産切替え時に、ワーク搬送装置をレールを介して移動させ所定位置にセットした後、曲げ加工工程を実行する。ワーク搬送装置をレールを介して移動させることにより、ワーク搬送装置を短時間で所定位置にセットすることが可能となり、他種類のワークへの生産切替えが、短時間で可能となる。
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態の曲げ加工装置において、第1ワークの曲げ加工が始まる直前の状態を表す図である。
【図2】本発明の第1実施形態の曲げ加工装置において、第1ワークを曲げ加工した直後の状態を表す図である。
【図3】本発明の第1実施形態の曲げ加工装置において、第2ワークを曲げ加工した直後の状態を表す図である。
【図4】(a)は第1ワークの平面図であり、(b)は第1ワークの側面図である。
【図5】(a)は第2ワークの平面図であり、(b)は第2ワークの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の曲げ加工装置において、曲げ加工の対象物であるワークWについて説明する。ワークWは、金属製の2種類のコネクタ端子であり、短いコネクタ端子(図4参照)と長いコネクタ端子(図5参照)とがある。短いコネクタ端子を第1ワークW1と、長いコネクタ端子を第2ワークW2と呼ぶこととする。図4に示すように、第1ワークの全長はL1であり、折り曲げ位置は、右端から左方向に距離L2延びた位置のP1である。図5に示すように、第2ワークの全長はL3であり、折り曲げ位置は、右端から左方向に距離L4延びた位置のP2である。L4はL2より長くなっている。
【0014】
(第1実施形態)
次に、本発明の第1実施形態の曲げ加工装置100について説明する。図1は、本発明の第1実施形態の曲げ加工装置100と第1ワークW1とを表している。曲げ加工装置100は、ワーク搬送装置1と、ワーク案内台5bと、パンチ2とダイ4を1組とした金型10と、金型10を移動自在にレール5aを介して支持する架台5と、前記金型10を移動させる金型移動手段20と、を備えている。ワーク搬送装置1にはワーク移動手段1aが取付けられており、ワーク移動手段1aはワーク搬送装置1に対して上下動ができる。ワーク移動手段1aの左端には、ワークWをチャックするチャック爪1aが配置されており、チャック爪1aは開閉操作が可能に形成されている。
【0015】
ワーク案内台5bは、架台5に固定されており、ワークWを案内する機能を持つ。金型10は、パンチ(上金型)2とダイ(下金型)4と、それらの間に配置されたパンチ浮かし用スプリング(図示せず)と、パンチ保持台3とから成る。パンチ保持台3に対してパンチ2がボルト(図示せず)により固定されている。パンチ2の下部には、ワークWと衝突してワークWを折り曲げる凸起部2aが配置されている。ダイ4の下部には、レール5aの上をスライドできるようにスライダ4aが配置されている。ダイ4の上部には、ワークWを成型するためのキャビティ4bが形成されている。
【0016】
金型10を貫通してシャフト6が延在している。シャフト6はパンチ2およびダイ4に対して摺動自在に金型10に組付けられている。シャフト6の上部には雄ネジが形成されて、この雄ネジにナット6aが螺合しており、ナット6aには回り止め(図示せず)が設置されている。パンチ浮かし用スプリングの存在により、ナット6aの下面はパンチ保持台3の上面3aに常に当接している。シャフト6の下部は、上部と同様に雄ネジが形成されて、この雄ネジにナット6b、6cが螺合しており、ナット6b、6cには回り止め(図示せず)が設置されている。
【0017】
ナット6b、6cにその一部が挟まれた状態でシャフトスライダ7が配置されている。シャフトスライダ7は、上板部7bを備え、上板部7bには溝部7aが形成されている。そして、溝部7aを貫通してシャフト6が延び、わずかな隙間を介して上板部7bをナット6b、6cが挟むように、ナット6b、6cがシャフト6に組付けられている。これにより、ナット6b、6cは上板部7bの上面および下面を滑動することができる。
【0018】
シャフトスライダ7は、その下部においてロッド8と接続されており、ロッド8は上下動を可能にするパンチ駆動手段(図示せず)に接続されている。シャフトスライダ7は、架台5に備えられた左壁5cと右壁5dの間に上下方向に摺動自在に配置されている。パンチ駆動手段(図示せず)は、サーボモーター(図示せず)とボールねじ(図示せず)を備えている。
【0019】
一方、金型移動手段20は、ジョイント13、ボールネジ12、プーリーベルト11およびサーボモーター9とから構成されている。
【0020】
(第1ワークの加工方法)
次に、図1、2を参照しながら、第1ワークW1の加工方法を説明する。
【0021】
図1は、第1実施形態の曲げ加工装置100の曲げ加工が始まる直前の状態(直前状態と呼ぶ)を表す図である。金型10は、金型移動手段20により移動させられて架台5のレール5a上の所定位置にセットされている。曲げ加工が始まる前の状態(初期状態と呼ぶ)においては、パンチ2およびパンチ保持台3は、パンチ浮かし用スプリングにより、ダイ4に対して直前状態より一定距離上方に位置する。このため、初期状態においては、パンチ2とダイ4との間には、ワークWが右方向からキャビティ4b内へ搬入される十分な空間が用意されている。
【0022】
この状態で、ワーク移動手段1aは、その上方位置で第1ワークW1をワーク搬送手段(図示せず)から受け取った後、下方へ移動し、第1ワークW1をパンチ2の真下まで搬送してワーク案内台5bの上に載置してセットする。このワークのセット状態で、パンチ駆動手段(図示せず)がオンされると、ロッド8、シャフトスライダ7が下方向に動き、これに伴ってシャフト6およびナット6aが下方向に動く。ナット6aが下方向に動くと、パンチ保持台3およびパンチ2は、パンチ浮かし用スプリングの力に抗して下方向に移動して、図1の状態まで下降して、さらに下降して第1ワークW1に凸起部2aが衝突して、第1ワークW1を下方向に折り曲げる。パンチ2の下面2bがダイ4の上面4cと当接すると、曲げ加工工程は終了する。この終了状態は、図2に表されている。
【0023】
曲げ加工工程が終了すると、パンチ駆動手段(図示せず)がオフされる。すると、パンチ保持台3およびパンチ2は、パンチ浮かし用スプリングの力により、上方向に押上げられる。すると、ナット6a、シャフト6、ナット6b、6c、シャフトスライダ7およびロッド8が上方向に持ち上げられる。これにより、パンチ2とダイ4との間には、ワークWがキャビティ4b内から右方向へ搬出される十分な空間が用意されることになる。
【0024】
この状態で、ワーク移動手段1aは、その下方位置で第1ワークW1をキャビティ4b内から右方向へ搬出し、上方へ移動して、第1ワークW1をワーク搬送手段(図示せず)に受け渡す。後は上記工程の繰り返しとなる。以上が、第1ワークW1の加工方法である。
【0025】
(第2ワークの加工方法)
次に、図3を参照しながら、第2ワークW2の加工方法を説明する。
【0026】
所定数量の第1ワークW1の曲げ加工生産が完了すると、サーボモーター9がオンされる。これにより、サーボモーター9の回転がプーリーベルト11、ボールネジ12に伝達されてジョイント13が左方向に移動されて、ジョイント13に接続されている金型10、さらにはシャフト6も左方向に移動されて、所定位置にセットされる。これにより、第2ワークW2の曲げ加工の初期状態が設定される。第2ワークW2の曲げ加工位置P2が、第1ワークW1の曲げ加工位置P1よりも図において左側に位置するため、金型10を左方向に移動することになる。後の加工方法は第1ワークW1の曲げ加工と同じであるので、その説明を省略する。
【0027】
(第2実施形態)
第1実施形態では、金型をレール上に設置して、ワークの種類を切替えた生産をする時に金型を移動させて、生産切替えに対応した。これとは逆に、ワーク搬送装置をレール上に設置して、金型は固定するという構成を有する曲げ加工装置200(第2実施形態)を使用することにより、同様な生産切替えに対応することも、もちろん可能である。第1実施形態の説明を読めば、第2実施形態の装置200の詳細な構造は容易に理解できるはずである。
【0028】
以上のように、曲げ形状(例えば曲げ角度)が同じであるが曲げ位置が異なる複数種類のワークを曲げ加工する場合、他種類のワークへの生産切替えが、短時間で可能な、生産効率の良い曲げ加工装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0029】
100 第1実施形態の曲げ加工装置
200 第2実施形態の曲げ加工装置
10 金型
20 金型移動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク(W1、W2)の曲げ加工をする装置(100)であって、
ワーク搬送装置(1)と、パンチ(2)とダイ(4)を1組とした金型(10)と、該金型(10)を移動自在にレール(5a)を介して支持する架台(5)と、前記金型(10)を移動させるための金型移動手段(20)と、を備え、
前記金型(10)を金型移動手段(20)により移動させて所定位置にセットした後、前記ワーク搬送装置(1)により前記ワーク(W1、W2)を前記金型(10)のパンチ(2)の真下まで搬送して前記ワーク(W1、W2)をセットし、パンチ(2)をワーク(W1、W2)に衝突させてワーク(W1、W2)を曲げる加工をすることを特徴とする曲げ加工装置(100)。
【請求項2】
前記金型移動手段(20)は、サーボモーター(9)とボールねじ(12)を備えることを特徴とする請求項1に記載の曲げ加工装置(100)。
【請求項3】
ワークの曲げ加工をする装置(200)であって、
ワーク搬送装置と、パンチとダイを1組とした金型と、前記ワーク搬送装置を移動自在にレールを介して支持する架台と、前記ワーク搬送装置を移動させるワーク搬送装置移動手段と、を備え、
前記ワーク搬送装置をワーク搬送装置移動手段により所定位置にセットした後、前記ワーク搬送装置により前記ワークを前記金型のパンチの真下まで搬送して前記ワークをセットし、パンチをワークに衝突させてワークを曲げる加工をすることを特徴とする曲げ加工装置(200)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−221263(P2010−221263A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71874(P2009−71874)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】