説明

最内外層のバンチ形成を防止できる糸巻取装置およびこれを用いた糸移動方法

【課題】満ボビンにおける最外層のバンチ集中現象と、空ボビンにおける最内層のバンチ集中現象とを防止できる糸巻取装置と方法を提供すること。
【解決手段】回転ドラムと、その上下に回転可能に設けられ、一側端部にトランスファーテール溝が形成されたボビンが装着されたボビンホルダと、上部のボビンに糸が所定トラバース幅で巻き取られるようにするトラバースローラ部と、上部のボビンに接して糸に一定圧力を与えるフリクションローラ部とを備える糸巻取装置において、糸の経路をトラバース位置から離脱させるシフトガイドと、糸の移動・切断時に糸をボビンのトランスファーテール溝にガイドするトランスファーテール形成部と、糸の移動・切断時に糸の経路をボビンのトランスファーテール溝側にガイドするスイングガイド部とを有し、ボビンは、糸の切断用として内向のスロット溝が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最内外層のバンチ形成を防止できる糸巻取装置およびこれを用いた糸移動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1aには、従来技術に係る糸巻取装置と、これによる糸移動および糸切断方法が示されており、図1bには、最内外層のバンチ集中が発生したケーキが示されている。
【0003】
図1aに示すように、従来の糸巻取装置100'は回転可能な回転ドラム110'と、前記回転ドラム110'の上下部にそれぞれ回転可能に設けられたボビンホルダ111'、112'と、前記回転ドラム110'の上部に位置し、ボビンホルダ111'、112'に装着されたボビンに糸を所定幅に巻き取らせるトラバースローラ部120'と、前記ボビンに接触して糸に所定圧力を提供するフリクションローラ部130'とからなっている。ここで、前記ボビンは支管とも言い、またボビンに糸が巻き取られた状態をケーキ(cake)とも言う。
【0004】
このような糸巻取装置100'は、例えば、上部のボビンが満ボビン113'となると、回転ドラム110'が所定角度で回転して満ボビン113'と空ボビン114'の位置が互いに変わる。すなわち、図1aのように、回転ドラム110'が回転して空ボビン114'が上部に位置し、満ボビン113'が下部に位置する。
【0005】
また、この状態で糸(Y)を上部の空ボビン114'側に移動すると同時に切断する。このために、トラバースローラ部120'およびフリクションローラ部130'が前記回転ドラム110'から上部へ所定の高さ上昇し、続いて下部の満ボビン113'が回転を停止する。すると、上部の空ボビン114'は回転し続けているため、上部の空ボビン114'に糸(Y)が移動されると同時に、満ボビン113'と空ボビン114'との間で糸が強制的に切断される。しかしながら、このような従来の糸巻取装置およびこれによる糸移動および切断方法は、糸の移動および切断時に、満ボビンの最外側にバンチが集中して形成されるという問題点がある。すなわち、図1bに示すように、満ボビンに形成されるケーキ(C)の最外側に集中的に糸が巻き取られる最外層のサイドバンチ(SB)が発生する。
【0006】
この問題は、糸移動および切断時に、満ボビン113'と空ボビン114'との間の糸が直ぐに移動および切断されるのではなく、糸が移動および切断位置に移された後にも、満ボビン113'および空ボビン114'が複数回さらに回転してから、はじめて糸の移動および切断が行われるためだと考えられる。特に、満ボビンに形成されたケーキ(C)の最外層に形成されたサイドバンチ(SB)は、製品出荷前に人が一々手作業で除去しなければならないので、糸巻取の生産性を低下させる。
【0007】
また、従来の糸巻取装置およびこれによる糸移動および切断方法は、糸の移動および切断時に、トラバースローラ部120'およびフリクションローラ部130'が回転ドラム110'から所定の高さ上昇することによって、新たに巻き取り始める空ボビンの最内層にバンチが集中して形成されるという問題点がある。すなわち、図1bに示すように、空ボビンにより形成されたケーキ(C)の中央に集中的に糸が巻き取られる最内層にミドルバンチ(MB)が発生する。
【0008】
この問題は、糸移動および切断時に、トラバースローラ部120'およびフリクションローラ部130'が回転ドラム110'から所定の高さ上昇するために発生するものと考えられる。すなわち、空ボビン114'からトラバースローラ部120'までの距離が相対的に遠いため、巻取の初期にボビンの中心部分に集中的に糸が巻き取られるのである。このようにボビンにミドルバンチ(middle bunch)が発生すると、各種生地を製造するための解糸時に糸の張力に差が発生し、染色など後工程時に問題が発生し得、深刻な場合は糸が切れてしまうという問題が発生し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来の問題点を克服するためのものであって、本発明の目的は、糸の移動および切断時に、糸の経路とボビン間の関係によって糸の移動および切断が迅速且つ正確に行われるようにし、巻取済みの満ボビンにおける最外層のバンチ集中現象を防止できる糸巻取装置およびこれを用いた糸移動方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、トラバースローラ部およびフリクションローラ部を上昇させない状態で、糸を移動すると同時に切断できることから、新たに巻き取り始める空ボビンに最内層のバンチ集中現象を防止できる糸巻取装置およびこれを用いた糸移動方法を提供することにある。
【0011】
本発明のまた他の目的は、糸の経路とボビン間の関係によって糸切断が行われることにより、糸の張力またはデニール(denier)のような糸の特性や、ボビンのトランスファーテール溝の状態と関係なく、糸を均一に切断できる糸巻取装置およびこれを用いた糸移動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は、回転ドラムと、前記回転ドラムの上部および下部にそれぞれ回転可能に設けられ、一側端部にトランスファーテール溝が形成された複数のボビンが装着されたボビンホルダと、前記回転ドラムの上部に位置し上部のボビンに糸が所定トラバース幅を有し巻き取られるようにするトラバースローラ部と、前記上部のボビンに接触して前記糸に一定圧力を提供するフリクションローラ部とからなる糸巻取装置において、前記トラバースローラ部の側部に設けられ、前記糸の経路をトラバース位置から離脱させるシフトガイドと、前記フリクションローラ部の上部に設けられ、前記糸の移動および切断時に、前記糸をボビンのトランスファーテール溝(transfer tail groove)にガイドするトランスファーテール形成部と、前記フリクションローラ部の側部に設けられ、前記糸の移動および切断時に、前記糸の経路を前記ボビンのトランスファーテール溝側にガイドするスイングガイド部とをさらに含み、前記ボビンは、前記トランスファーテール溝の一側に糸を切断できるように内側に向かってスロット溝がさらに形成される。
【0013】
前記スロット溝は、例えばボビンの内側に向かって幅が段々小さくなる三角形状である。
【0014】
前記スロット溝は、例えば両側の長さが互いに異なる三角形状である。
【0015】
前記シフトガイドは、前記フリクションローラ部に向かうトラバースローラ部の側部に設けられ、上端を中心に下端が糸の移動および切断時に時計回りに一定の角度で回転して糸をトラバース位置から離脱させることができる。
【0016】
前記トランスファーテール形成部は、前記フリクションローラ部を覆うカバープレートと、前記カバープレートに水平方向に設けられる1次シリンダと、前記1次シリンダに取り付けられると同時に、前記カバープレートに水平方向にスライドできるように設けることにより、前記糸をトラバース位置からボビンのトランスファーテール溝にガイドする1次ガイドと、前記1次ガイドに垂直方向に設けられる2次シリンダと、前記2次シリンダに取り付けられると同時に、前記1次ガイドに垂直方向にスライドできるように設けることにより、前記糸をボビンのトランスファーテール溝から本来のトラバース位置に復帰させる2次ガイドとを含んでなる。
【0017】
前記1次ガイドは、ガイドプレートと、前記ガイドプレートの下端に下部方向に一定の長さで延びて、前記糸をトラバース位置からボビンのトランスファーテール溝にガイドする複数のガイドバーとからなる。
【0018】
前記2次ガイドは、ガイドプレートと、前記ガイドプレートの下端に下部方向に一定の長さで延びて、前記糸をボビンのトランスファーテール溝からトラバース位置に復帰させる複数のガイドバーとからなる。
【0019】
前記1次ガイドには固定突起が形成され、前記2次ガイドには前記固定突起に嵌められて垂直方向に移動可能にする長孔が形成される。
【0020】
前記スイングガイド部は、シリンダと、前記シリンダに取り付けられて回転軸を中心に一定の角度で回転して上部の空ボビンの下端に位置することによって、切断直前まで糸の経路をガイドするスイングガイドとを含み、前記スイングガイドは、糸をトランスファーテール溝側である水平方向にガイドするように水平方向に水平突起および水平切欠溝が形成される。
【0021】
上記の目的を達成するために、本発明に係る方法は、一側のトランスファーテール溝に、スロット溝が形成されたボビンを上部と下部にそれぞれ設け、上部に設けられたボビンが満ボビンとなるまで糸を巻き取る糸巻取段階と、上部に設けられたボビンが満ボビンとなると、前記上部の満ボビンを下部に回転させ、下部の空ボビンを上部に回転させる回転段階と、下部の満ボビンと上部の空ボビンとの間の糸を一側にガイドし、前記空ボビンの上部の糸はトラバース位置から離脱させて前記空ボビンのトランスファーテール溝にガイドすることにより、前記スロット溝により糸の移動および切断が行われるようにする糸切断段階と、前記空ボビンの上部の糸を本来のトラバース位置に復帰させる糸復帰段階とを含んでなる。
【発明の効果】
【0022】
上述のように、本発明に係る糸巻取装置およびこれを用いた糸移動方法は、糸の移動および切断時に、糸の経路とボビン間の関係によって糸移動および切断が迅速且つ正確に行われることにより、巻取済みの満ボビンの最外層にバンチが集中しなくなる。
【0023】
また、本発明に係る糸巻取装置およびこれを用いた糸移動方法は、トラバースローラ部およびフリクションローラ部を上昇させない状態で糸を移動すると同時に切断できるため、新たに巻き取り始める空ボビンの最内層にバンチが集中しなくなる。
【0024】
また、本発明は、糸の経路とボビン間の関係によって糸切断が行われることにより、糸の張力またはデニール(denier)のような糸の特性やボビンのトランスファーテール溝の状態と関係なく、糸を均一に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1a】従来技術に係る糸巻取装置と、これによる糸移動および糸切断方法を示す概略図である。
【図1b】最内外層のバンチ集中が発生したケーキを示す概略図である。
【図2a】本発明に係る糸巻取装置の糸切断方法を示す概略図である。
【図2b】最内外層のバンチ集中が発生しないケーキを示す概略図である。
【図3】本発明に係る最内外層のバンチ形成を防止できる糸巻取装置を示す概略図である。
【図4】本発明に係る最内外層のバンチ形成を防止できる糸巻取装置におけるトランスファーテール形成部を拡大して示した正面図である。
【図5】本発明に係る最内外層のバンチ形成を防止できる糸巻取装置におけるスイングガイド部を示す側面図である。
【図6】本発明に係る糸巻取装置におけるボビン(支管)を示す平面図である。
【図7】本発明に係る糸巻取装置におけるボビン(支管)に糸が移動および切断される状態を示す平面図である。
【図8】本発明に係る糸巻取装置を用いた糸移動方法を示すフローチャートである。
【図9a】図9a〜図9eは本発明に係る糸巻取装置を用いた糸移動方法を順次的に示す概略図である。
【図9b】図9a〜図9eは本発明に係る糸巻取装置を用いた糸移動方法を順次的に示す概略図である。
【図9c】図9a〜図9eは本発明に係る糸巻取装置を用いた糸移動方法を順次的に示す概略図である。
【図9d】図9a〜図9eは本発明に係る糸巻取装置を用いた糸移動方法を順次的に示す概略図である。
【図9e】図9a〜図9eは本発明に係る糸巻取装置を用いた糸移動方法を順次的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できる程度に本発明の望ましい実施形態を添付の図面を参照して詳しく説明する。ただし、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。
【0027】
図2aは本発明に係る糸巻取装置の糸切断方法を示す概略図であり、図2bは最内層および最外層にバンチ集中現象が発生しないケーキを示す概略図である。
【0028】
図2aに示すように、本発明に係る糸巻取装置100の糸切断方法は、基本的に上部の空ボビン114からトラバースローラ部120およびフリクションローラ部130が上昇しない状態で、糸(Y)の経路とボビンに形成されたスロット溝の関係によって糸(Y)の移動および切断を行う。この方法によって、図2bに示すように、空ボビンに形成されるケーキ(C)には最内層の中央にバンチの集中現象が発生しなく、また満ボビンに形成されるケーキ(C)でも最外層のバンチ集中現象が発生しなくなる。すなわち、従来は空ボビンの最内層および満ボビンの最外層にそれぞれバンチ集中現象が発生していたが、本発明ではこのような現象が発生しない。
【0029】
ここで、糸(Y)の経路とボビンに形成されたスロット溝の関係により糸の移動および切断が行われる過程は以下でさらに詳しく説明する。
【0030】
図3は本発明に係る最内外層のバンチ形成を防止できる糸巻取装置を示す概略図である。
【0031】
図3に示すように、本発明に係る糸巻取装置100は、回転可能な回転ドラム110と、前記回転ドラム110の上部および下部にそれぞれ回転可能に設けられ、複数のボビンが装着されたボビンホルダ111、112と、前記回転ドラム110の上部に位置し、上部のボビンに糸が一定トラバース幅を有し巻き取られるようにするトラバースローラ部120と、前記上部のボビンに接触して糸に一定圧力を提供するフリクションローラ部130と、前記糸の経路をトラバース位置から離脱させるシフトガイド140と、前記糸をボビンのトランスファーテール溝にガイドするトランスファーテール形成部150と、前記糸の経路を前記ボビンのトランスファーテール溝側にガイドするスイングガイド部160とを含む。
【0032】
前記回転ドラム110は、糸巻取装置100のフレーム101に取り付けられていて、これはモータの駆動軸に歯合(図示せず)されていることから、所定方向に回転可能である。すなわち、前記回転ドラム110は、ボビンホルダ111、112に挿通されたボビンが満ボビン113となると、約180°または270°回転することによって、満ボビン113と空ボビン114の位置を変えることができる。図面では、満ボビン113が下部に位置し、空ボビン114が上部に位置していることを示す。
【0033】
前記ボビンホルダ111、112は、前記回転ドラム110の上部と下部に一定の長さを有してそれぞれ設けられており、また各モータの駆動軸に歯合(図示せず)されていることから、所定方向に回転可能である。すなわち、このボビンホルダ111、112は、所定速度で回転することによって、それに装着されているボビンに糸を巻き取ることができる。もちろん、このようなボビンホルダ111、112には一定間隔をあけて複数のボビンが装着される。
【0034】
前記トラバースローラ部120は、前記回転ドラム110の上部に設けられていて、これは、トラバースローラ121が糸を所定幅でトラバースさせて下部のボビンに供給されるようにする役割をする。
【0035】
前記フリクションローラ部130は、前記回転ドラム110の直上部に設けられていて、これは、フリクションローラ131が上部のボビンに直接接触して糸に一定圧力を提供することによって、ボビンに糸がこまかく巻き取られるようにする役割をする。
【0036】
前記シフトガイド140は、前記フリクションローラ部130に向かうトラバースローラ部120の側部に設けられている。このシフトガイド140は、上端が前記トラバースローラ部120の側部に一定の角度で回動可能に取り付けられており、上端を中心に下端が糸の移動および切断時に時計回りに一定の角度で回動し、糸をトラバース位置から離脱させる役割をする。すなわち、回転ドラム110の上部に位置したボビンが満ボビン113となると、前記回転ドラム110は、約180°回転することによって上部の満ボビン113は下部に位置し、下部の空ボビン114は上部に位置することになる。続いて、糸は下部の満ボビン113から上部の空ボビン114に移動され、満ボビン113と空ボビン114との間の糸は強制的に切断される。このような糸の移動および切断のために前記シフトガイド140が動作するが、前記シフトガイド140は先に前記糸のトラバース位置を離脱させる。もちろん、このために、前記シフトガイド140には図示していないが、シリンダまたはモータなどが備えられている。さらに、下記のトランスファーテール形成部150およびスイングガイド部160も、やはり上述のように糸の移動および切断のために共に動作する。
【0037】
前記トランスファーテール形成部150は前記フリクションローラ部130の上部に設けられている。しかし、本発明でこのトランスファーテール形成部150の設置位置を限定するのではない。このトランスファーテール形成部150は、前記シフトガイド140によりトラバース位置から外れた糸をボビンのトランスファーテール溝に移動させることによって、糸が上部の空ボビン114に移動するようにし、また満ボビン113と空ボビン114との間の糸が切断されるようにする。
【0038】
前記スイングガイド部160は前記フリクションローラ部130の一側に設けられている。しかし、本発明でこのスイングガイド部160の設置位置を限定するのではない。このスイングガイド部160は、満ボビン113と空ボビン114との間の糸の経路を前記空ボビン114のトランスファーテール溝側に案内する役割をする。このために、前記スイングガイド部160は、糸巻取装置100のフレーム101に取り付けられているシリンダ161と、前記シリンダ161に取り付けられ、回転軸162を中心に一定の角度で回転して上部の空ボビン114の下端に位置することによって、切断直前まで糸の経路をガイドするスイングガイド163とからなっている。
【0039】
図4は、本発明に係る最内外層のバンチ形成を防止できる糸巻取装置におけるトランスファーテール形成部を拡大して示した正面図である。
【0040】
図4に示すように、トランスファーテール形成部150は、カバープレート151と、1次シリンダ152と、1次ガイド153と、2次シリンダ155と、2次ガイド156とを含む。
【0041】
前記カバープレート151は糸巻取装置100におけるフリクションローラ部130の上部を略覆う形状を有する。
【0042】
前記1次シリンダ152は、前記カバープレート151に水平方向(長さ方向)に設けられる。この1次シリンダ152は、空気圧シリンダ、油圧シリンダおよびその等価物の中から選択されたいずれか一つであり、ここでその種類を限定するのではない。
【0043】
前記1次ガイド153は、前記1次シリンダ152に取り付けられると同時に、前記カバープレート151に水平方向にスライドできるように設けられている。例えば、カバープレート151に水平方向にレール(図示せず)が設けられ、前記レールに1次ガイド153がスライドできるように設けられることにより、前記1次シリンダ152の動作によって前記1次ガイド153が水平方向にスライドできる。
【0044】
この1次ガイド153は、水平方向のレールに取り付けられ、スライディングが可能なガイドプレート154と、前記ガイドプレート154の下端に下部方向に一定の長さで延びて、糸をガイドする複数のガイドバー154aとからなる。もちろん、この複数のガイドバー154aによりそれぞれのボビンに巻き取られる糸がトラバース位置からボビンのトランスファーテール溝にガイドされる。
【0045】
前記2次シリンダ155は、前記1次ガイド153に垂直方向(幅方向)に設けられる。この2次シリンダ155は、空気圧シリンダ、油圧シリンダおよびその等価物の中から選択されたいずれか一つであり、ここでその種類を限定するのではない。
【0046】
前記2次ガイド156は、前記2次シリンダ155に取り付けられると同時に、前記1次ガイド153に垂直方向にスライドできるように設けられている。例えば、1次ガイド153に所定距離で離隔して固定突起158aが形成され、前記2次ガイド156には、前記固定突起158aに嵌められ、前記固定突起158aを垂直方向にガイドするように長孔158bが形成される。また、この2次ガイド156は、2次シリンダ155により垂直方向にスライディングが可能であるが、1次ガイド153の水平運動によって共に水平方向にスライドする。
【0047】
この2次ガイド156は、長孔158bが形成され、前記固定突起158aにスライドできるように取り付けられるガイドプレート157と、前記ガイドプレート157の下端に下部方向に一定の長さで延びて糸をガイドする複数のガイドバー157aとからなる。もちろん、このような複数のガイドバー157aにより、糸はボビンに形成されたトランスファーテール溝からトラバース位置に復帰する。
【0048】
ここでは、前記1次ガイド152はガイドレール構造を例として説明し、前記2次ガイド156は長孔構造を例として説明したが、本発明でこのような構造を限定するのではない。すなわち、前記1次ガイド152が長孔構造でも、前記2次ガイド156がガイドレール構造でも構わない。また、前記1次ガイド152および2次ガイド156は、今まで知られている全ての構造を採択して水平または垂直方向に動く構造を実現することができる。
【0049】
図5は、本発明に係る最内外層のバンチ形成を防止できる糸巻取装置におけるスイングガイド部を示す側面図である。
【0050】
図5に示すように、スイングガイド部160はシリンダ161、スイングガイド163およびバンチプレート166を含む。
【0051】
前記シリンダ161は、フリクションローラ部130の側部に設けられているが、本発明でこの設置位置を限定するのではない。また、前記シリンダ161は、空気圧シリンダ、油圧シリンダおよびその等価物の中から選択されたいずれか一つであり、ここでその種類を限定するのではない。
【0052】
前記スイングガイド163は、前記シリンダ161に一側が取り付けられており、他側は回転軸162に取り付けられることにより、前記シリンダ161の動作時に前記回転軸162を中心に所定角度で回動可能になっている。実際に、前記スイングガイド163は、前記回転軸162を中心に所定角度で回転して上部に位置した空ボビン114の下端に位置することによって、糸の切断直前まで糸の経路をガイドする役割をする。前記スイングガイド163の下部には、糸を一端の水平方向にガイドするように水平方向の水平切欠溝165が形成されている。すなわち、前記スイングガイド163の下部には、糸をボビンのトランスファーテール溝に最大限近くガイドする水平突起164が形成されている。この水平突起164はボビン方向にさらに曲がった形状を有する。
【0053】
図6は本発明に係る糸巻取装置におけるボビンを示す平面図である。
【0054】
図6に示すように、ボビンホルダに装着されるボビン114(説明の便宜上、空ボビンを例とする。)は、一端に糸を移動できるように略円形のリング状のトランスファーテール溝114aが形成されている。また、前記トランスファーテール溝114aには、糸を切断するためのスロット溝114bがボビンの内側に向かって切欠形成されている。すなわち、前記スロット溝114bは、ボビンの内側に向かって幅が段々と小さくなる三角形状に切り欠かれて形成されている。より具体的には、前記スロット溝114bは、両側の長さが互いに異なる三角形状で且つ下部方向に傾いた形状に形成されている。
【0055】
図7は、本発明に係る糸巻取装置におけるボビンに糸が移動および切断される状態を示す平面図である。
【0056】
図7で、最左側は糸が巻き取られる前の空ボビン114を示す。同図に示すように、糸は、シフトガイド140、トランスファーテール形成部150およびスイングガイド部160等の動作によって、ボビン114のトランスファーテール溝114a側に形成されたスロット溝114b側にガイドされる。
【0057】
そして図7で中央部分は空ボビン114に糸が移動して切断された状態を示しており、最右側は糸が正常に巻き取られる状態を示す。図7の中央部分に示すように、糸は、シフトガイド140、トランスファーテール形成部150およびスイングガイド部160等の動作によってボビンのトランスファーテール溝114a側にガイドされる。続いて、糸は、トランスファーテール溝114aに掛けられて移動すると同時に、スロット溝114bに掛けられて自動的に切断される。したがって、従来のように、満ボビンの制動力によって糸が切断されるのではなく、ボビンに形成されたスロット溝114bにより糸が自動的に切断されるために、糸の張力やデニール(denier)等の特性に関係なく、常に一定の位置で均一に糸を切断することができる。もちろん、このような動作後には、図7の最右側に示すように、ボビンに糸が所定トラバース幅を有し正常に巻き取られる。
【0058】
図8は本発明に係る糸巻取装置を用いた糸移動方法を示すフローチャートである。
【0059】
図8に示すように、本発明に係る糸巻取装置100を用いた糸移動方法は、糸巻取段階(S1)、回転ドラムの回転段階(S2)、糸切断段階(S3)、糸復帰段階(S4)および糸巻取段階(S5)を含む。
【0060】
図9a〜図9eは、本発明に係る糸巻取装置を用いた糸移動方法を順次的に示す概略図である。ここで、図3〜図8を共に参照する。
【0061】
図9aに示すように、糸巻取段階(S1)では、上部のボビンホルダ112に装着したボビンが満ボビン113となるまで所定のトラバース幅で糸を巻き取る。すなわち、ゴデローラから供給された糸が所定幅でトラバースされながら、上部のボビンホルダ112に固定されたボビンが満ボビン113となるまで巻き取られる。この時、シフトガイド140、トランスファーテール形成部150の1次ガイド153、2次ガイド156およびスイングガイド部160はまだ動作しなく、トラバースローラ部120およびフリクションローラ部130だけが動作する。
【0062】
ここで、図面において英文で表した「GRCENTER」はゴデローラのセンター、「2ND GUIDE」は2次ガイド、「1ST GUIDE」は1次ガイド、「SHIFT GUIDE」はシフトガイド、「T/R CENTER」はトラバースローラ部のセンター、「F/R CENTER」はフリクションローラのセンター、「B/H」はボビンホルダ、「SWING GUIDE」はスイングガイドの相対的位置をそれぞれ意味する。また、図面において相対的に太い線で表したものは現在動作中である構成要素を意味し、相対的に薄い線で表したものは現在動作中でない構成要素を意味する。
【0063】
図9bに示すように、回転ドラムの回転段階(S2)では 上部のボビンが満ボビンとなると、前記上部の満ボビン113を下部に回転させ、下部の空ボビン114を上部に回転させる。すなわち、回転ドラム110を所定角度で回転させることによって、満ボビン113と空ボビン114の位置を変えることができる。
【0064】
図9cに示すように、糸切断段階(S3)では、スイングガイド部160が動作することにより、前記満ボビン113と前記空ボビン114との間の糸を空ボビン114のトランスファーテール溝114a側の最大限近くに案内する。また、空ボビン114の上部に位置したシフトガイド140およびトランスファーテール形成部150も同時に動作することにより、空ボビン114の上部の糸は、トラバース位置を離脱して前記空ボビン114のトランスファーテール溝114aに移動する。ここで、前記トランスファーテール形成部150は、1次ガイド153および2次ガイド156が動作することにより、糸を空ボビン114のトランスファーテール溝114aにガイドする。
【0065】
このような動作によって、糸は、空ボビン114のトランスファーテール溝114aにガイドされて移動する。また、前記糸は、空ボビン114のスロット溝114bに引っ掛かって切断される。すなわち、本発明では、従来のように満ボビンの回転停止による制動力で糸が切断されるのではなく、ボビンに形成されたスロット溝によって糸が決まった位置で正確に切断および移動する。したがって、満ボビン113では従来のような最外層のバンチ集中現象が発生しなくなる。さらに、本発明では、糸の移動および切断時に、トラバース部120およびフリクションローラ部130が上昇しないため、従来のような最内層のバンチ集中現象も発生しなくなる。
【0066】
図9dに示すように、糸復帰段階(S4)では、前記空ボビン114の上部の糸が本来のトラバース位置に復帰する。すなわち、シフトガイド140、トランスファーテール形成部150の1次ガイド153および2次ガイド156が本来の位置に復帰することにより、前記糸がスムーズに本来のトラバース位置に復帰する。実質的に、2次ガイド156により上部の空ボビン114中のトランスファーテール溝114aにあった糸がトラバース位置に復帰する。
【0067】
図9eに示すように、糸巻取段階(S5)では、上部の空ボビン114に本格的に所定のトラバース幅を有し糸が巻き取られる。もちろん、このような糸巻取段階では、シフトガイド140、1次ガイド153、2次ガイド156およびスイングガイド部160が全て本来の位置へ復帰した状態である。
【0068】
ここで本発明は、上述のように、糸の移動および切断時に、トラバースローラ部およびフリクションローラ部が、従来のように上部へ所定の高さ上昇しないまま行われる。したがって、従来のように糸の移動および切断が完了した後、新たに取り巻き始める空ボビンに最内層のバンチ集中現象が発生しない。また、本発明は、上述のように、ボビンに備えられるスロット溝によって糸が切断されることから、糸の張力やデニールなどの特性に関係なく糸を均一に切断することができ、また満ボビンの最外層のバンチ集中現象や空ボビンの最内層のバンチ集中現象が発生しなくなる。
【符号の説明】
【0069】
100…糸巻取装置、101…フレーム、110…回転ドラム、111、112…ボビンホルダ、113…満ボビン、113a…トランスファーテール溝、113b…スロット溝、114…空ボビン、114a…トランスファーテール溝、114b…スロット溝、120…トラバースローラ部、121…トラバースローラ、130…フリクションローラ部、131…フリクションローラ、140…シフトガイド、150…トランスファーテール形成部、151…カバープレート、152…1次シリンダ、153…1次ガイド、154…ガイドプレート、154a…ガイドバー、155…2次シリンダ、156…2次ガイド、157…ガイドプレート、157a…ガイドバー、158a…固定突起、158b…長孔、160…スイングガイド部、161…シリンダ、162…回転軸、163…スイングガイド、164…水平突起、165…水平切欠溝、Y…糸、C…ケーキ、MB…ミドルバンチ、SB…サイドバンチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ドラムと、前記回転ドラムの上部および下部にそれぞれ回転可能に設けられ、一側端部にトランスファーテール溝が形成された複数のボビンが装着されたボビンホルダと、前記回転ドラムの上部に位置し、上部のボビンに糸が所定トラバース幅を有し巻き取られるようにするトラバースローラ部と、前記上部のボビンに接触して前記糸に一定圧力を提供するフリクションローラ部とからなる糸巻取装置において、
前記トラバースローラ部の側部に設けられ、前記糸の経路をトラバース位置から離脱させるシフトガイドと、
前記フリクションローラ部の上部に設けられ、前記糸の移動および切断時に、前記糸をボビンのトランスファーテール溝(transfer tail groove)にガイドするトランスファーテール形成部と、
前記フリクションローラ部の側部に設けられ、前記糸の移動および切断時に、前記糸の経路を前記ボビンのトランスファーテール溝側にガイドするスイングガイド部と
をさらに含み、
前記ボビンは、前記トランスファーテール溝の一側に糸を切断できるように内側に向かってスロット溝がさらに形成されることを特徴とする最内外層のバンチ形成を防止できる糸巻取装置。
【請求項2】
前記スロット溝は、ボビンの内側に向かって幅が段々小さくなる三角形状であることを特徴とする請求項1に記載の最内外層のバンチ形成を防止できる糸巻取装置。
【請求項3】
前記スロット溝は、両側の長さが互いに異なる三角形状であることを特徴とする請求項1に記載の最内外層のバンチ形成を防止できる糸巻取装置。
【請求項4】
前記シフトガイドは、前記フリクションローラ部に向かうトラバースローラ部の側部に設けられ、上端を中心に下端が糸の移動および切断時に時計回りに一定の角度で回転して糸をトラバース位置から離脱させることを特徴とする請求項1に記載の最内外層のバンチ形成を防止できる糸巻取装置。
【請求項5】
前記トランスファーテール形成部は、
前記フリクションローラ部を覆うカバープレートと、
前記カバープレートに水平方向に設けられる1次シリンダと、
前記1次シリンダに取り付けられると同時に前記カバープレートに水平方向にスライドできるように設けることにより、前記糸をトラバース位置からボビンのトランスファーテール溝にガイドする1次ガイドと、
前記1次ガイドに垂直方向に設けられる2次シリンダと、
前記2次シリンダに取り付けられると同時に、前記1次ガイドに垂直方向にスライドできるように設けることにより、前記糸をボビンのトランスファーテール溝から本来のトラバース位置に復帰させる2次ガイドと
を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の最内外層のバンチ形成を防止できる糸巻取装置。
【請求項6】
前記1次ガイドは、
ガイドプレートと、
前記ガイドプレートの下端に下部方向に一定の長さで延びて、前記糸をトラバース位置からボビンのトランスファーテール溝にガイドする複数のガイドバーとからなることを特徴とする請求項5に記載の最内外層のバンチ形成を防止できる糸巻取装置。
【請求項7】
前記2次ガイドは、
ガイドプレートと、
前記ガイドプレートの下端に、下部方向に一定の長さで延びて、前記糸をボビンのトランスファーテール溝からトラバース位置に復帰させる複数のガイドバーと
からなることを特徴とする請求項5に記載の最内外層のバンチ形成を防止できる糸巻取装置。
【請求項8】
前記スイングガイド部は、
シリンダと、
前記シリンダに取り付けられて回転軸を中心に一定の角度で回転して上部の空ボビンの下端に位置することによって、切断直前まで糸の経路をガイドするスイングガイドと
を含み、
前記スイングガイドは、糸をトランスファーテール溝側である水平方向にガイドするように水平方向に水平突起および水平切欠溝が形成されることを特徴とする請求項1に記載の最内外層のバンチ形成を防止できる糸巻取装置。
【請求項9】
一側のトランスファーテール溝に、スロット溝が形成されたボビンを上部と下部にそれぞれ設け、上部に設けられたボビンが満ボビンとなるまで糸を巻き取る糸巻取段階と、
上部に設けられたボビンが満ボビンとなると、前記上部の満ボビンを下部に回転させ、下部の空ボビンを上部に回転させる回転段階と、
下部の満ボビンと上部の空ボビンとの間の糸を一側にガイドし、前記空ボビンの上部の糸は、トラバース位置から離脱させて前記空ボビンのトランスファーテール溝にガイドすることにより、前記スロット溝により糸の移動および切断が行われるようにする糸切断段階と、
前記空ボビンの上部の糸を本来のトラバース位置に復帰させる糸復帰段階と
を含んでなることを特徴とする最内外層のバンチ集中を防止できる糸移動方法。

【図1b】
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【図2b】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図9e】
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【図1a】
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【図2a】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−137987(P2010−137987A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5035(P2009−5035)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(509013655)イルジン エー‐テック カンパニー リミテッド (3)
【Fターム(参考)】