説明

最適化された破断特性を有する防音材料の改良された製造方法

【課題】製造中の製品を保持する中間工程を最小化し、かつ原材料のコストを著しく減少させることができる製造方法を提供する。
【解決手段】建造物に使用される積層構造体は、高温の乾燥温度または長い滞留時間を必要としない積層ステップを含む製造方法により作製される。前記製造方法は、コストを削減すると共に性能を高める原材料を使用する。このことは、特別に調合された粘弾性接着剤を使用することにより達成される。その結果、既存の方法と比べて、製造設備の生産能力、製品コスト、及び製品の性能が、大幅に向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2008年5月8日に出願された米国特許出願第12/117、687号(Brandon D. Tinianov、Kevin J. Surace及びAlbert C. Yanezによる「最適化された破断特性を有する防音材料の改良された製造方法」)の優先権を主張する。また、本出願は、本出願の譲受人に譲渡された米国特許出願第10/658,814号(K. Surace及びM. Poratにより2003年9月8日出願され、2007年2月27日に特許を取得した米国特許第7,181,891号「防音材料及びその製造方法」)、米国特許出願第11/697,691号(B. Tinianovにより2007年4月9日に出願された「向上した破断特性を有する防音材料及びその製造方法」)、及び米国特許出願第11/770,476号(B. Tinianov及びK. Suraceにより2007年6月28日に出願された「防音材料の製造方法」)に関連する(これらの特許文献の開示内容はこの参照により本明細書に組み込まれるものとする)。
【背景技術】
【0002】
現在、建造物の建築に使用される分厚い及び/または重たい積層パネルの製造には、広い作業面積が必要とされている。製造過程の材料が占める空間に加えて、製造に必要とされる面積は、前記材料を長期間に渡って保持する必要がある任意の工程ステップにより増加する。所与の処理量に関しては、処理工程を追加したり、任意のステップにおける処理時間を長くしたりすると、必要とされる作業面積が増加する。
【0003】
例えば、前述の米国特許第7,181,891号(特許文献1)に開示されている積層構造体は、非金属材料からなる2つの外側層(一実施形態では、石膏ウォールボードの紙表面仕上げシート)と内側拘束層とを粘弾性接着剤層によって互いに接合させることにより構成される。ある実施形態では、両外側層間に、他の材料が組み込まれる。このような積層構造体(例えば特許文献1に開示されている積層構造体)の製造方法の一実施形態は、完成した構造体に圧力を加えながら乾燥させるステップを含む。前記接着剤を十分に乾燥させるためには、積層構造体を構成する材料に応じて、数時間から数日間のドゥエル時間(1つの工程ステップに要する時間と定義される)が必要とされ、その間にも、数時間から数日間のドゥエル時間を必要とする他の同様な構造体が製造される。長時間の乾燥時間が必要となるのは、接着剤に含まれている液体が石膏シートに染み込むのに要する時間が原因である。石膏シートに染み込んだ液体はその後、蒸発して周囲環境に放散される。前述した建築工程の乾燥ステップにおいて、大量の材料が保持される。材料の量は、生産速度に依存する。したがって、所望する最終製品処理量及び前記乾燥ステップのドゥエル時間により増加する単一構造体の量に対応する大型の乾燥チャンバが必要とされる。さらに、前記製造工程のあるステップでは、乾燥チャンバを、特定の高温及び低い相対湿度というエネルギー集約型の必要条件に維持することが求められる。
【0004】
例えば、1.2m(4フィート)×2.4m(8フィート)×2.54cm(1インチ)の構造体を1日あたり千個製造することが要求される場合は、50℃ないし60℃(120Fないし140F)の一定温度及び、約30%の相対湿度、及び一定の空気流での乾燥を48時間行う必要があると共に、所与の時間で2千個の構造体を乾燥させるのに必要な環境条件を提供するステージング・エリアが必要となる。そのようなステージング・エリアは、最低でも、約7.6m(25フィート)×13.7m(45フィート)の設置面積と、7.6m(25フィート)の垂直クリアランス、つまり、843.8立方メートル(28,125立方フィート)の乾燥空間を必要とする。一日あたり千個を超える最終製品の製造が求められる場合、さらに大きな乾燥空間が必要となる。長いドゥエル時間を必要とする他の工程ステップでも、所与の製造処理量に必要な設備は同様に増加する。また、サイクル時間(最終製品の製造開始から製造終了までの時間)が長いと、製造される製品の需要の増大に応じて、製造作業に要する時間が長くなる。
【0005】
既存の製造方法の他の重要な側面は、積層パネル(一実施形態では、紙表面仕上げされた石膏ウォールボード)の両外側層が、完成した最終形態の伝統的な建築材料から成ることである。米国特許出願第11/770,476号には、石膏ウォールボードを使用した実施形態では、両外側層の内面に表面仕上げ紙が存在しない場合、両外側層の内面同士を粘弾性接着剤で接合させることが好ましいことが示されている。米国特許出願第11/697,691号には、一方の外側面が耐性紙で覆われていない積層防音パネルに、前記パネルを一体化させることが提案されている。しかし、石膏ウォールボードの両外側面の紙仕上げ面は、耐久性、耐摩耗性を有し、またさらには著しく向上した曲げ剛性を示すので、このことは実際には困難である。また、一方の面が紙仕上げ面で覆われていない改変された石膏ウォールボードは、移送中及び取扱中に損傷及び/または破壊が発生する恐れがある。
【0006】
このような改変された紙仕上げ面を有さない石膏ウォールボードの第2の懸念は、そのような改変材料の製造は難しいため、価格が従来のパネルよりも高くなることである。また、そのような改変材料は一部の製造メーカでしか製造できないため、そのような改変された改変材料の供給は限定される。そのため、積層構造体を二分割することにより、製造中の製品を保持(staging)する中間工程を最小化し、かつ原材料のコストを著しく減少させることができる製造方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,181,891号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
複数の材料を互いに積層させたサンドイッチ構造を有する積層構造体が、あるステップでのドゥエル時間を数時間ないし数日から数分に短縮させた本発明の製造方法により製造される。一実施形態では、ある層に塗布した接着剤を乾燥させた後に、その接着剤層上に別の層を積層させるようにすることにより、完成した積層構造体を乾燥させるための時間がかかる工程を省くことができる。特別に調合した接着剤を塗布した直後に、前記接着剤の表面に気体を吹き付けて前記接着剤を乾燥させることにより感圧型接着剤(PSA)を形成する。その後、感圧型接着剤層の上に別の層を積層させて積層構造体を完成させる。完成後の積層構造体を乾燥させる工程は不要である。一実施形態では、個々の工程のドゥエル時間及び総サイクル時間は、製造中の材料がステージングされたり重なったりしない、ベルトコンベア式の組立ライン装置を使用した積層構造体の組み立て方法が十分可能となるように短縮される。
【0009】
加えて、この製造方法は、原材料となる積層ウォールボードパネルをその主面(表面及び裏面)と平行な方向に二分割することにより、その内面に表面仕上げ紙が存在しない互いに対応する2つの半体を作製する新規な製造ステップを含む。このステップにより、原材料及び本発明の方法により製造された積層パネルが損傷することを減少させると共に、前記積層パネルの破断特性(パネルを2つに切断する性能)を維持または向上させることができる。
【0010】
添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより、本発明をより完全に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による工程フローの一例を示す図である。
【図2】二分割された石膏ウォールボードパネルを示す図である。
【図3】(a)及び(b)は、原材料となる石膏ウォールボードパネルを二分割する方法をそれぞれ示す。
【図4】本発明の方法により作製された防音積層体の側面図である。
【図5】本発明の方法により作製された別の防音積層体の側面図である。
【図6】粘弾性接着剤を粘弾性感圧型接着剤(PSA)に変化させるべく粘弾性接着剤に向けて乾燥ガスを流すための複数の幅方向開口部(602、608)を有するガス拡散板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
【0013】
【表1】

【0014】
ドライウォール工法用の積層構造体は、選択された厚さの石膏ボードまたは他の材料からなる2つの外側層を、前記2つの外側層の内面の全体または一部に特定のパターンで塗布した吸音性接着剤によって互いに接合させたサンドイッチ構造を有する。一実施形態では、前記接着剤層は、特別に調合されたQuietGlue320(登録商標)である。QuietGlue320(登録商標)は、特定の厚さを有する粘弾性材料であり、米国カリフォルニア州サニーベール所在のシリアス・マテリアルズ社(Serious Materials Inc.)から入手可能である。QuietGlue320(登録商標)は、典型的には、下記の表に記載した組成からなる。
【0015】
QuietGlue320の組成
【0016】
【表2】

【0017】
表2に示した好ましい組成は、粘弾性接着剤の一例にすぎない。同様の結果を得るために他の組成を用いることもできる。また、表2に示した所与の範囲は、ここで検討した有用な組成の一例である。2つの石膏ボードの内面間には、約1.6mm(約16分の1インチ)の厚さの接着剤層が形成される。種々の実施形態では、2つの外側石膏ボードの間に、別の組成の様々な数の材料層が挟み込まれる。各材料層は、隣接する層にPSAによって接着される。以下の説明では、「接着剤(adhesive)、「接着剤(glue)」及び「PSA」は、サンドイッチ積層構造体の文脈において互換的に使用される。本明細書では、PSAは、常に、粘弾性接着剤を乾燥させて形成した粘弾性感圧型接着剤層を指す。
【0018】
図1は、本発明による工程フロー100の一例を示す。最上層及び最下層に関する記載は、図2ないし図5における最上層及び最下層を指すものであり、本構造体及び代替的アセンブリの使用時の向きを意図するものではないことを理解されたい。ステップ102において、石膏ウォールボードの形態の原材料を特定する。この材料は、建築業界では一般的であり、石膏コアまたは繊維強化石膏コアを紙層で被覆したものである。典型的には、石膏コアの短辺方向の2つの端面は、被覆されず露出したままにされる。この石膏ウォールボードは、典型的には、幅1.2m×長さ2.4m(4フィート×8フィート)であるが、2.7m(9フィート)、3m(10フィート)及び3.4m(11フィート)の長さも一般的である。石膏シートの厚さは、約6.4mm(約1/4インチ)ないし約25.4mm(約1インチ)の範囲であり得る。このような製品は、建設資材の分野では一般的に入手可能であり、米国イリノイ州シカゴ所在のUSG社(USG Corporation)、米国ノースカロライナ州シャーロット所在のナショナル・ジプサム社(National Gypsum Company)、及びフランス国クールブボア所在のサンゴバン社(Saint-Gobain)によって製造されている。
【0019】
製造プロセスステップ104では、石膏ウォールボードをその主面(表面及び裏面)と平行な方向(厚さ方向と垂直な方向)に二分割する。二分割されたパネルの斜視図を図2に示す。図2では、物品200が、二分割されたパネルを示している。第1の半体202は、図3に示す手段により、第2の半体204から分離される。第1の半体202の厚さ212a及び第2の半体204の厚さ212bは、最終的な積層アセンブリの要求に応じて、互いに同一または異なり得る。図2に見ることができるように、パネル200の外面は紙材206で覆われているが、パネル200の内面208及び210は紙材で覆われていない。
【0020】
石膏パネルを二分割して使用するという本発明の新規な方法は、従来の方法よりも優れた2つの重要な利点を提供する。第1に、二分割される単一のシートは、その半分の厚さのシートの2枚分よりも遥かに安価である。例えば、厚さ15.9mm(5/8インチ)、幅1.2m(4フィート)、長さ2.4m(8フィート)のタイプXの石膏シートの卸売価格は、92.9平方メートル(1000平方フィート)あたり約150ドルである。一方、厚さ7.9mm(5/16インチ)、幅1.2m(4フィート)、長さ2.4m(8フィート)のパネルの卸売価格は、92.9平方メートル(1000平方フィート)あたり約125ないし150ドルである。厚さ15.9mm(5/8インチ)のパネルを2二分割しない場合は、厚さ7.9mm(5/16インチ)のパネルを2枚使用する必要がある。このため、この例では、2つの石膏ウォールボードを互いに積層させて積層体を構成した場合の92.9平方メートル(1000平方フィート)あたりコストは、厚さ7.9mm(5/16インチ)のパネルを2枚積層させた場合は約250ドルないし300ドルかかるが、厚さ15.9mm(5/8インチ)のパネルを二分割して使用する場合は150ドルで済む。このように、石膏パネルを二分割して使用するという本発明の新規な方法によれば、パネルの材料コストを約40%ないし50%節約することができる。第2の利点は、石膏パネルを二分割して使用するという本発明の新規な方法は、標準的な外側材料層を用いないことにより、最適な破断特性を可能にすることである(米国特許第出願第11/697,691号に記載の通り)。このことにより、原材料パネルの調達における自由度が大きくなる。したがって、本発明の新規な製造方法によれば、材料供給性の向上及び材料コストの低下を図ることができる。
【0021】
図3a及び図3bは、原材料となる石膏ウォールボードパネルを二分割する方法の2つの例をそれぞれ示す。図3aは、プラットホーム、ローラ、ベルトコンベアまたは他の適切な支持体304の上に載置された原材料となる石膏ウォールボードパネル302を示す。図3aの右側の符号306は、直接的に接触することなくパネルを切断するのに使用される高強度レーザを示す。米国テキサス州ヒューストン所在のハンズ・レーザ・テクノロジー(Han's Laser Technology Company)社製のCS0405セラミック切断レーザに基づく高強度COレーザなどの、適切な市販のパネル切断装置が利用可能である。この方法は、限られた製造試験では、パネルを2つに切断する方法として実行可能であることが証明されている。
【0022】
図3bは、プラットホーム、ローラ、ベルトコンベアまたは他の適切な支持体304の上に載置された石膏ウォールボード材料パネル302を再び示す。パネル面を横切るように配置されたソーブレード(saw blade)308の形態の機械的切断装置と、バンドソーツール(band saw tool)310などの電動支持構造とが設けられている。適切な市販のパネル切断装置としては、ドイツ国リムシュティング所在のSERRA Maschinenbau GmbH社製のBavaria SL 130i電動製材鋸が挙げられる。この鋸は、剛性のパネル支持構造体に取り付けられた、直線的に移動するヘッドを有している。このSL 130iを使用した試験は、約3.9メートル/分(13フィート/分)という適切な速度で、石膏パネルを2つに切断(二分割)することができる。この速度は、本明細書に開示されている、向上した製造速度に適合するものである。
【0023】
材料パネルを二分割した後、製造ステップ106において2つのパネル(半体)を互いに分離させ、下側半体204の上面の全体または一部に、ステップ108で特定される適切な手段によって上方から接着剤を塗布する。下側半体204の上側部分は、分散型真空吸引カップシステムを使用して持ち上げるのがよい。市販されている真空アシストシステムとしては、ドイツ国グラッテン所在のJ. Schmalz GmbH社製のSaugerspinne真空アシスト吊り上げ装置及びVacuMaster Light真空アシスト吊り上げ装置がある。
【0024】
図4は、作業面408上に載置された、選択された厚さの最下層の石膏パネル406を示す。前述したように、一部の実施形態では、作業面408は、工程ステップを通じて材料を搬送するベルトコンベアであり、例えば、米国イリノイ州エルクグローブ所在のコンベアシステムズ・アンド・エンジニアリング社(Conveyor Systems & Engineering, Inc.)製の長さ300メートル(1000フィート)のOAL ACSIモデル190RBローラベッドベルトコンベアである。石膏ボード406は、真空カップを有する頭上吊り上げ装置を使用して、または、作業者が単純に持ち上げて適切な位置に置くことにより、作業面408上に載置される。持ち上げ装置は、石膏パネルを、作業面の高さまで持ち上げる。例えばQuietGlue320(登録商標)などの接着剤404を、最下層の石膏パネル406の上面の全体または一部に塗布する。接着剤を部分的に塗布する場合、縞状、ランダムパターン、及び他の適切な幾何学的形状などの任意の塗布パターンで塗布することができる。接着剤404は、ローラ(塗布ローラと同様のもの)、ブラシ、幅広ナイフ、またはスプレーノズルを使用して塗布することができる。接着剤404は、石膏406の上面の全体を覆うか、または一部の実施形態では石膏406の上面の全面積よりも小さい面積を覆う(前述した米国特許第出願第11/734,770号に記載の通り)。接着剤404が塗布された最下層石膏層406は、サンドイッチ構造体の中間体410を形成する。
【0025】
次に、製造工程ステップ110において、接着剤の水分含有率が5重量%以下になるように、接着剤404を乾燥させる。
【0026】
一実施形態では、1.2m×2.4m(4フィート×8フィート)のパネル材料上に形成された厚さ0.8mm(1/32インチ)ないし3.2mm(1/8インチ)の粘弾性接着剤の層は、1500立方メートル/分(50000立方フィート/分)の流量の大気流(典型的には19℃ないし24℃で)に曝される。粘弾性接着剤の初期水分含有率は約30重量%であり、大気流に曝した約5分後に水分含有率は約5重量%まで減少する。
【0027】
接着剤404を乾燥させるのに、様々な方法を用いることができる。一実施形態では、接着剤層410が露出しているサンドイッチ中間体をガス拡散器の下方を通過させ、接着剤の約2.54cm(1インチ)ないし30.48cm(1フィート)上方に位置するガス拡散器の開口部から所定の体積の気体、例えば1.5立方メートル/分(50立方フィート/分)の空気が供給される。ある実施形態では、提供される気体は、大気である。他の実施形態では、提供される気体は、予熱された及び/または除湿された大気である。ガス吹き付けシステムは、送風装置から圧縮ガスを受け取るためのプレナムチャンバ(図示せず)を含む。圧縮ガスはその後、ガス拡散器の開口部から接着剤の露出面に向けて吹き付けられる。図6は、例示的なガス拡散板600を示す。ガス拡散板600は、サンドイッチ中間体410がガス拡散器の下方を通過するときに(例えばベルトコンベア法により)、サンドイッチ中間体410と対向するように配置されている。図示した例では、開口部602、604、606、608は、(ガス拡散板の短辺方向に)長さ約45.7cm(18インチ)、幅3.2mm(1/8インチ)であり、幅方向に互いに1.3cm(1/2インチ)隔てて、かつ前記長さ方向(前記短辺方向)に互いに12.7cm(5インチ)ないし20.3cm(8インチ)隔てて互い違いに配置されており、接着剤層は、ガス拡散板の2.54cm(1インチ)ないし30.48cm(1フィート)下方を通過する。ガス拡散板600の開口部(噴出口)の他の設計も使用可能であり、例えば、均一に分布するように配された小孔を用いることもできる。
【0028】
一実施形態では、サンドイッチ中間体パネル410は、ベルトコンベア408によって搬送され、幅1.2m(4フィート)、長さ(ベルトコンベアの搬送方向)7.3m(24フィート)の拡散板600の約15.2cm(6インチ)ないし20.3cm(8インチ)下方を、3メートル/分(10フィート/分)で通過する。接着剤は、大気温度の空気流(約20℃(70F)、相対湿度30%)に約2.4分間曝される。拡散器400及び開口部の正確な排気面積及び形状は重要なことではなく、拡散板600の排気面積は、所望のガス流を提供できるように設定される。また、拡散板600の排出面積は、適切な均等ガス流をガス拡散器から提供すべくプレナムチャンバが適切な背圧を有することができるような十分に小さい面積に設定される。一実施形態では、ガス流の流量は、約1500立方メートル/分(50,000立方フィート/分)である。
【0029】
ベルトコンベアを使用しない一実施形態では、サンドイッチ中間体パネル410は接着剤404を塗布するために作業面408上に載置される。作業面408は、パネル210が載置された作業面と同一または異なり得る。サンドイッチパネル中間体パネル410のサイズ及び形状と略同等のサイズ及び形状を有するガス拡散板600が、サンドイッチ中間体パネルの上方にサンドイッチ中間体パネルと位置合わせして配置される。そして、ガス拡散板600から接着剤の露出面に向けてガス(例えば空気)を5.2m/秒(17フィート/秒)の速度、約1500立方メートル/分(50,000立方フィート/分)の流量で吹き付ける。この工程における重要なパラメータは、接着剤404のPSAへの変化を達成することができる接着剤の乾燥度である。本発明の方法の特定の実施形態では、接着剤404の水分含有量を接着剤404をPSAへ変化させるための適切な水分含有量(例えば、水分センサにより測定された5重量%の水分含有量)にするために、乾燥時間、ガス速度、拡散板600の開口面積、拡散板600から供給されるガスの温度及び湿度、及び接着剤404の厚さの組み合わせが適切に調節される。水分センサとしては、例えば、ドイツ国ハンブルク所在のTews Electronik社製のMW 3260マイクロ波水分センサを使用することができる。これらの因子が適度に一定であると仮定して、乾燥ステップ110での乾燥時間は、予め定められた時間が用いられる。もしも、接着剤が完全に乾燥してしまったら、サンドイッチ中間体に対して、次の材料を接着接合させることができない。約5重量%の水分含有率が、良好な接着性を有する粘着性接着剤を提供し、かつ、製造工程のステップ112でサンドイッチ構造体の組み立てが完了した後に乾燥を必要としない水分含有率である。
【0030】
図5を参照して、本発明の方法を用いて製造される一部の構造体では、追加的な材料層504が、2つの外側パネル(例えば、石膏板402、406)の間に配置される。追加的な材料層の例には、ビニル、金属薄板、合板及び石膏が含まれる(特許文献1に詳述されている)。このような選択肢が選択された場合、ステップ112において、サンドイッチ中間体410の上(すなわち、PSAの露出面上)に追加的な材料層504を載置した後、前述したように、ステップ108において、追加的な材料層504の上面(露出面)に接着剤502を塗布する。そして、ステップ110において、接着剤502を乾燥させてPSAを形成した後、別の材料層をさらに追加するか否かを判断する。別の材料層をさらに追加しない場合は、ステップ112において、PSA層502の上に最上側石膏板402を載置し、サンドイッチ構造体400を完成させる。
【0031】
ステップ114において、完全に組み立てられた積層構造体400に圧力を加えて各層の接合をより強固にする。一実施形態では、積層構造体400を、直径15.24cm(6インチ)のローラの下を通過させ(あるいは、ローラを積層構造体の上を通過させる)、約22.7キログラム(50ポンド)の重量を、約3m/分(10フィート)/分の速度で加える。ステップ114において圧力を加えた後、積層構造体400は完成し、出荷の準備ができる。ステップ114の後に、さらなる乾燥工程または他の製造工程は必要としない。
【0032】
本発明の方法では、粘弾性感圧型接着剤を実質的に形成するために粘弾性接着剤を乾燥させるが、この乾燥工程で粘弾性接着剤を部分的に乾燥させることにより、積層構造体の組み立て後に積層構造体の各材料層を互いに接合させるべく積層構造体を乾燥チャンバに入れて粘弾性接着剤から余分な水分を除去する時間を短縮することができる。
【0033】
本発明の実施形態についての上記の説明は、説明目的のために提示した。上記の説明は、開示された精密な形態に本発明が包括または限定されることは意図していない。様々な変更及び変形が、当業者には明らかであろう。
【0034】
参照により本明細書に組み込まれる様々な開示が、本開示の一部または全部と矛盾する場合、矛盾の範囲、及び/または幅広い開示、及び/または用語の定義において、本開示が優先される。このような組み込まれた開示が互いに部分的にまたは全体的に矛盾する場合、矛盾の範囲において、後の日付の開示が優先される。
【0035】
一般的な概念と特定の実施例について開示したが、本発明の保護範囲は添付のクレーム(特許請求の範囲)により規定されるものとする。添付されたクレームは出願人の権利を開示されたクレームに限定するものではなく、また、35USC120条及び/または35USC251条に従い出願される1またはそれ以上の追加の出願により字義通りにクレームされる主題に限定されるものでもない。
【0036】
本明細書において他に明確に記載しない限り、通常の用語はそれが記載された文脈に対応する通常の意味を有し、通常の技術用語はそれに対応する通常の意味を有するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁、床、天井又はドアを構成するために使用するのに適した、かつ選択された厚さ及び面積を有する平坦パネルを含む積層構造体の製造方法であって、
第1の面及び第2の面を有する第1の外側材料層を提供するステップと、
前記第1の外側材料層の前記第1の面に、水分を含有する粘弾性接着剤層を形成するステップと、
前記接着剤層から選択された量の水分を除去すべく、前記接着剤層の表面に気体を所定時間流すステップと、
前記接着剤層上に第2の材料層を積層させるステップとを含み、
前記第1及び第2の材料層の間に形成された前記接着剤層によって、前記第1及び第2の材料層を互いに接合させるようにしたことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記第2の材料層が、前記積層構造体の外側層であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記第2の材料層を前記接着剤層上に積層させた後に、前記積層構造体に圧力を加えるステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記接着剤層の表面へ流す前に、前記気体を乾燥させるステップをさらに含むことを特徴とする。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1及び第2の材料層が、単一の材料層を二分割することにより作製したものであることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記第2の材料層の露出面に、水分を含有する第2の粘弾性接着剤層を形成するステップと、
前記第2の接着剤層から選択された量の水分を除去すべく、前記第2の接着剤層の表面に気体を所定時間流すステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記第2の接着剤層の表面へ流す前に、前記気体を乾燥させるステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、
前記第2の接着剤層の表面に前記気体を所定時間流した後に、前記第2の粘弾性接着剤層上に第3の材料層を積層させるステップをさらに含み、
それにより前記積層構造体を形成したことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
前記第3の材料層を前記第2の粘弾性接着剤層上に積層させた後に、前記積層構造体に選択された圧力を加えるステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
少なくとも、第1の材料層と、第2の材料層と、前記第1及び第2の材料層を互いに接合させる粘弾性接着剤層とを有する積層構造体を製造する方法であって、
前記第2の材料層が積層される層の露出面に、粘弾性接着剤層を選択されたパターンで形成するステップと、
前記粘弾性接着剤層から選択された量の水分を除去すべく、前記粘弾性接着剤層の表面に気体を流すステップと、
前記粘弾性接着剤層の表面に気体を流した後に、前記粘弾性接着剤層上に第2の材料層を積層させるステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記粘弾性接着剤層を前記露出面に、該露出面の全面積よりも小さい面積を覆うようにして選択されたパターンで形成したことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、
前記粘弾性接着剤層が、前記第1の材料層における前記第2の材料層が積層される面に連続層として形成されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であって、
前記粘弾性接着剤層が、0.8mm(1/32インチ)ないし3.2mm(1/8インチ)の厚さを有することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法であって、
前記粘弾性接着剤層の表面に前記気体を、前記粘弾性接着剤層の水分含有率を5重量%以下にするのに十分な時間流すようにしたことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法であって、
前記粘弾性接着剤の表面に前記気体を、前記粘弾性接着剤の水分含有率を5重量%ないし30重量%にするのに十分な時間流すようにしたことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項10に記載の方法であって、
前記気体が空気であることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
前記空気の温度が、略大気温度であることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
前記空気を前記粘弾性接着剤層の表面に、約300立方メートル/秒ないし約1500立方メートル/秒の流量で流すようにしたことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項10に記載の方法によって製造された構造体。
【請求項20】
請求項1に記載の方法によって製造された構造体。
【請求項21】
請求項10に記載の方法であって、
前記選択されたパターンが、円形、正方形、長方形、三角形、縞状、多角形、ランダムな形状及び半円形からなる群より選択される1以上のパターンを含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項10に記載の方法であって、
前記第1の材料層は、前記第1の材料層が前記積層構造体の一部となったときに該構造体の内側面となる面に紙材または他の材料による表面仕上げが施されていない第1の石膏ウォールボード層であることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、
前記第2の材料層は、前記第2の材料層が前記積層構造体の一部となったときに該構造体の内側面となる面に紙材または他の材料による表面仕上げが施されていない第2の石膏ウォールボード層であることを特徴とする方法。
【請求項24】
壁、床、天井又はドアを構成するために使用するのに適した、かつ選択された厚さ及び面積を有する平坦パネルを含む積層構造体の製造方法であって、
第1の面及び第2の面を有する第1の外側材料層を提供するステップと、
前記第1の外側材料層の前記第1の面の少なくとも一部に、水分を含有する粘弾性接着剤層を形成するステップと、
前記接着剤層から選択された量の水分を除去すべく、前記接着剤層の表面に気体を所定時間流すステップと、
前記接着剤層上に第2の材料層を積層させるステップとを含み、
前記第1の材料層と前記第2の材料層との間に配された前記接着剤層によって、前記第1の材料層と前記第2の材料層とを互いに接合させるようにしたことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、
前記第1の外側材料層が、石膏ウォールボードを二分割することにより作製され、前記石膏ウォールボードの厚さよりも薄い厚さを有し、一般的なウォールボード表面仕上げ材料で被覆された外側面をなす面と前記石膏ウォールボードの内側材料が露出した内側面をなす面とを有し、かつ前記外側面なす面と前記内側面をなす面とが平行となるように構成されていることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、
前記石膏ウォールボードが、紙材またはガラス繊維マットにより表面仕上げされていることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項24に記載の方法であって、
前記粘弾性接着剤層を、前記第1の外側材料層の前記第1の面の全体に形成したことを特徴とする方法。
【請求項28】
壁、床、天井又を構成するために使用するのに適した積層構造体であって、
石膏ウォールボードを二分割することにより作製され、前記石膏ウォールボードの厚さよりも薄い厚さを有し、一般的なウォールボード表面仕上げ材料で被覆された外側面をなす面と前記石膏ウォールボードの内側材料が露出した内側面をなす面とを有し、かつ前記外側面なす面と前記内側面をなす面とが平行となるように構成された、第1の面及び第2の面を有する第1の外側材料層と、
前記接着剤層上に積層された第2の材料層とを含み、
前記接着剤層によって前記第1及び第2の材料層を互いに接合させたことを特徴とする構造体。
【請求項29】
請求項28に記載の積層構造体であって、
前記第2の層が、前記積層構造体の第2の外側材料層であり、
前記第2の外側材料層が、石膏ウォールボードを二分割することにより作製され、前記石膏ウォールボードの厚さよりも薄い厚さを有し、一般的なウォールボード表面仕上げ材料で被覆された外側面をなす面と前記石膏ウォールボードの内側材料が露出した内側面をなす面とを有し、かつ前記外側面なす面と前記内側面をなす面とが平行となるように構成されていることを特徴とする構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−520022(P2011−520022A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508717(P2011−508717)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/043373
【国際公開番号】WO2009/137811
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(506078334)シリアス・マテリアルズ・インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】