最適工程決定装置および最適工程決定方法
【課題】実加工時間以外の他の要因を考慮した上で、最も適切な工程集約を行うことにより、最適工程を決定することができる最適工程決定装置および方法を提供する。
【解決手段】最適工程決定装置は、工具、ホルダおよび工具突出量からなるツーリングを含む複数の個工程の情報と、複数の個工程の順序とを含む暫定工程を算出する暫定最適工程算出ステップと、選択された二つの暫定工程におけるツーリングの類似度を算出する類似度算出ステップと、類似度の高い暫定工程のうち一方の暫定工程におけるツーリングを、他方の暫定工程におけるツーリングに集約した場合の集約工程を複数算出する集約工程算出ステップと、それぞれの集約工程における実加工時間と、1つの暫定工程のツーリングを集約することに伴って短縮される単位集約短縮時間と、集約した暫定工程の数とに基づいて、複数の集約工程の中から最適工程を決定する最適工程決定ステップを実行する。
【解決手段】最適工程決定装置は、工具、ホルダおよび工具突出量からなるツーリングを含む複数の個工程の情報と、複数の個工程の順序とを含む暫定工程を算出する暫定最適工程算出ステップと、選択された二つの暫定工程におけるツーリングの類似度を算出する類似度算出ステップと、類似度の高い暫定工程のうち一方の暫定工程におけるツーリングを、他方の暫定工程におけるツーリングに集約した場合の集約工程を複数算出する集約工程算出ステップと、それぞれの集約工程における実加工時間と、1つの暫定工程のツーリングを集約することに伴って短縮される単位集約短縮時間と、集約した暫定工程の数とに基づいて、複数の集約工程の中から最適工程を決定する最適工程決定ステップを実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素材形状から製品形状に加工するための最適工程を決定する装置およびその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加工工程を決定する装置として、例えば、特開平11−235646号公報(特許文献1)に記載されたものがある。特許文献1には、工程候補が複数の工程からなる場合に、実加工時間が最も短くなるような工程の集約を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−235646号公報([0047]〜[0050])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、実際には、実加工時間の他に、工程を集約することにより短縮できる時間の要素が存在する。そのため、仮に、実加工時間が長くなったとしても、全体として評価した場合には、結果として時間短縮につながる場合がある。しかし、特許文献1では、実加工時間のみを評価対象としているため、他の要因を何ら評価していない。そのため、実際の作業現場においては、トータルの時間が長期化するおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、実加工時間以外の他の要因を考慮した上で、最も適切な工程集約を行うことにより、最適工程を決定することができる最適工程決定装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る最適工程決定装置の発明の構成上の特徴は、
素材形状および製品形状を記憶する形状記憶部と、
複数の工具の情報および複数のホルダの情報をそれぞれ記憶する工具ホルダ情報記憶部と、
前記素材形状から前記製品形状に加工するための最適工程を決定する最適工程決定部と、
を備え、
前記最適工程決定部は、
前記工具、前記ホルダおよび工具突出量からなるツーリングを含む複数の個工程の情報と、複数の前記個工程の順序とを含む暫定工程を算出する暫定最適工程算出ステップと、
選択された二つの前記暫定工程における前記ツーリングの類似度を算出する類似度算出ステップと、
類似度の高い前記暫定工程のうち一方の前記暫定工程における前記ツーリングを、他方の前記暫定工程における前記ツーリングに集約した場合の集約工程を複数算出する集約工程算出ステップと、
それぞれの前記集約工程における実加工時間と、1つの前記暫定工程の前記ツーリングを集約することに伴って短縮される単位集約短縮時間と、集約した前記暫定工程の数とに基づいて、複数の前記集約工程の中から前記最適工程を決定する最適工程決定ステップと、
を実行することである。
【0007】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、
前記単位集約短縮時間は、設備機械の使用者が前記工具および前記ホルダを所有することを時間に換算した所有換算時間であることである。
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1または2において、
前記単位集約短縮時間は、前記設備機械に対して前記工具および前記ホルダを設定するためのツーリング準備時間に応じた値であることである。
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜3の何れか一項において、
前記単位集約短縮時間は、加工に際して実行される工具交換回数時間に応じた値であることである。
【0008】
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜4の何れか一項において、
前記類似度は、前記工具の種類、前記ホルダの種類、前記工具突出量および前記工具の刃径の中から選択された要素の何れかに基づいて決定されることである。
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項5において、
前記類似度は、
各要素が同一の場合の類似度係数が異なるように設定されていることを特徴とする最適工程決定装置。
【0009】
請求項7に係る最適工程決定方法の発明の構成上の特徴は、
形状記憶部に、素材形状および製品形状を記憶し、
工具ホルダ情報記憶部に、複数の工具の情報および複数のホルダの情報をそれぞれ記憶し、
前記工具、前記ホルダおよび工具突出量からなるツーリングを含む複数の個工程の情報と、複数の前記個工程の順序とを含む暫定工程を算出する暫定最適工程算出ステップと、
選択された二つの前記暫定工程における前記ツーリングの類似度を算出する類似度算出ステップと、
類似度の高い前記暫定工程のうち一方の前記暫定工程における前記ツーリングを、他方の前記暫定工程における前記ツーリングに集約した場合の集約工程を複数算出する集約工程算出ステップと、
それぞれの前記集約工程における実加工時間と、1つの前記暫定工程の前記ツーリングを集約することに伴って短縮される単位集約短縮時間と、集約した前記暫定工程の数とに基づいて、前記素材形状から前記製品形状に加工するための最適工程を複数の前記集約工程の中から決定する最適工程決定ステップと、
を備えることである。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、実加工時間の他に、単位集約短縮時間と集約した暫定工程の数を考慮して、最適工程として工程を集約するか否かを決定している。従って、実加工時間が長くなったとしても、単位集約短縮時間に集約工程数を掛け合わせた時間が、実加工時間の長くなった時間以上である場合には、集約した方が最適と判断される。これにより、実際の作業現場におけるトータルの時間として、短縮を図ることができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、設備機械の使用者が所有する工具およびホルダの数を削減することが可能となり、且つ、新たな工具およびホルダを購入することも不要となる。使用者にとって、所有している工具やホルダの保管や管理は、非常にコストおよび時間を要する。所有している工具やホルダの数が減少すると、その保管、管理費を削減することができる。また、現在所有していない工具やホルダを新たに購入するとなると、当然にコストおよび時間を要する。従って、本発明を適用することにより、トータルの時間として、結果的に短縮を図ることができると共に、低コスト化を図ることができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、ツーリング準備時間を考慮することができるため、ツーリング準備時間の削減に伴ってトータルの作業時間を短縮することができる。
請求項4に係る発明によれば、工具交換回数時間を考慮することができるため、工具交換回数時間の削減に伴ってトータルの作業時間を短縮することができる。
請求項5に係る発明によれば、類似度としての要素を、工具の種類、ホルダの種類、工具突出量、工具の刃径の何れかとすることで、確実に工具の類似度を得ることができる。
請求項6に係る発明によれば、集約のし易さ、および、集約した場合の影響度を考慮することができる。これにより、より最適な工程を決定することができる。
【0013】
請求項7に係る発明によれば、請求項1と同様の効果を奏する。また、最適工程決定装置における他の特徴について、最適工程決定方法に適用することができ、その場合の効果は装置のそれぞれにおける効果と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本実施形態の最適工程決定装置の構成図である。
【図2】図2は、素材形状および製品形状を示す図である。
【図3】図3は、工具DBに記憶されている複数の工具の情報を示す図である。
【図4】図4は、ホルダDBに記憶されている複数のホルダの情報を示す図である。
【図5】図5は、代表ツーリングDBに記憶されている複数の代表ツーリングを示す図である。
【図6】図6は、最適工程決定部のメイン処理のフローチャートである。
【図7】図7は、能率別工程候補算出処理のフローチャートである。
【図8】図8は、暫定最適工程算出処理のフローチャートである。
【図9】図9は、最適工程決定処理のフローチャートである。
【図10】図10(a)(b)は、工具軸姿勢を変更させた場合のそれぞれにおける加工可能領域を示す図である。
【図11】図10(a)の場合の加工後形状を示す図である。
【図12】図12(a)(b)は、加工能率の異なるツーリングを示す図である。
【図13】図13(a)は、工具軸姿勢を変更した場合の加工可能領域を示し、図13(b)は、図13(a)のときの加工後形状を示す。
【図14】図14(a)は、工具軸姿勢をさらに変更した場合の加工可能領域を示し、図14(b)は、図14(a)のときの加工後形状を示す。
【図15】図15は、能率別工程候補統合による工程を示す。
【図16】図16(a)は、各工程の最適ツーリングを示し、図16(b)は、各工程の諸元を示し、図16(c)は、各諸元に対する類似度係数を示す。
【図17】図17(a)は、各工程組み合わせにおける類似度を示し、図17(b)は、類似度降順に並び替えた組み合わせを示す。
【図18】図18(a)は、工程集約を行う前における実加工時間および総時間を示し、図18(b)は、第3工程の最適ツーリングを第2工程の最適ツーリングに集約した場合における実加工時間および総時間を示し、図18(c)は、全工程の最適ツーリングを第2工程の最適ツーリングに集約した場合における実加工時間および総時間を示す。
【図19】図19は、代表ツーリングテンプレートを用いた場合の加工可能領域を示し、図19(a)(b)(c)は、それぞれ、加工能率グループが大、中、小の場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の最適工程決定装置およびその方法を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
本実施形態の最適工程決定装置について、図1〜図5を参照して説明する。図1に示すように、最適工程決定装置は、形状記憶部1と、工具DB2と、ホルダDB3と、代表ツーリングDB4と、最適工程決定部5とを備えている。
【0016】
形状記憶部1は、CAD(図示せず)により形成された素材形状および製品形状を記憶する。本実施形態においては、図2に示すように、素材形状を11で示し、製品形状を12で示す。すなわち、製品形状12は、素材形状11からポケット加工を行った形状である。そして、ポケット部の底面形状が、深いところと浅いところを有している。
【0017】
工具DB2(本発明の工具ホルダ情報記憶部に相当する)は、複数の工具の情報を記憶する。この工具は、図3に示すように、ボールエンドミルであって、刃径および形状が異なるものが複数存在する。ここで、本明細書において、「工具の刃径」とは、工具の刃部の外径を意味する。例えば、図3において、最も左側の工具の刃径が最も大きく、左から2番目の工具の刃径が次に大きく、右側2種の工具の刃径が最も小さい。また、図3において、左側3種の工具の形状は、先端部を除く部分が円柱状をなしており、図3の右側1種の工具の形状は、先端部を除く部分が円柱2段状をなしている。つまり、図3の右側1種の工具の形状は、刃部の外径よりも大きな外径の基部を有する形状からなる。そして、この工具DB2には、工具の情報それぞれに工具番号が関連づけられている。
【0018】
ホルダDB3(本発明の工具ホルダ情報記憶部に相当する)は、複数のホルダの情報を記憶する。このホルダには、図4に示すように、刃径および形状の異なるそれぞれの工具を保持できる複数種類あり、且つ、同一の工具を保持できるホルダにも、複数の形状が存在する。このホルダDB3には、ホルダの情報それぞれにホルダ番号が関連づけられている。
【0019】
代表ツーリングDB4(本発明の代表ツーリング記憶部に相当する)は、複数の加工能率グループそれぞれについて、且つ、工具の刃径それぞれについて、代表ツーリングを記憶する。「代表ツーリング」とは、工具、ホルダおよび工具突出量の組み合わせからなる。「加工能率」とは、単位時間あたりの加工体積に相当し、例えば、同じ被削材(ワーク)を同じ材質の工具で加工する場合には、工具突出量(L)/工具刃径(D)(≒剛性)を用いることができる。また、「加工能率グループ」とは、加工能率が所定の範囲内に入るグループを意味する。
【0020】
ここでは、加工能率グループの大、中、小の3種類についての代表ツーリングがある。ここでは、加工能率グループが大のものは、L/Dが5以下とし、加工能率グループが中のものは、L/Dが5〜10とし、加工能率グループが小のものは、L/Dが10以上とする。
【0021】
最適工程決定部5は、素材形状から製品形状に加工するための最適工程を決定する。この最適工程とは、複数の個工程とその順序とからなる。この最適工程を決定するための最適工程決定方法について、図6〜図9のフローチャートに示す。
【0022】
図6に示すように、最適工程決定部5は、まず製品形状を形状記憶部1から読み込む(S1)。続いて、素材形状を形状記憶部1から読み込む(S2)。続いて、工具候補を工具DB2から、ホルダ候補をホルダDB3からそれぞれ読み込む(S3、S4)。
【0023】
続いて、加工能率グループが大に対して、能率別工程候補の算出処理を実行する(S5)。この能率別工程候補算出処理は、図7に示すように、工具の刃径カウンタPを1にセットする(S11)。ここでは、工具DB3に記憶されている工具のうち、最大の刃径、例えば、φ18をP=1とし、次の刃径、例えば、φ10をP=2とし、その次の刃径、例えば、φ8をP=3とする。
【0024】
続いて、代表ツーリングDB4から加工能率グループが大の代表ツーリングを読み込む(S12)。続いて、工具軸姿勢に相当する工具の割出角度のカウンタiを1にセットする(S13)。この第i割出角度を選択する(S14)。すなわち、実際の割出角度を選択する。続いて、選択された割出角度について代表ツーリングにより素材形状を加工した場合における加工可能領域を算出する(S15)。
【0025】
加工可能領域は、図10(a)(b)に示す。まず、ある割出角度における加工可能領域は、図10(a)のハッチングに示す領域である。つまり、製品形状の部分に工具およびホルダが干渉することなく、加工することができる領域である。割出角度を異ならしめた場合には、例えば、図10(b)のハッチングに示す領域となる。
【0026】
図7に戻り説明をする。続いて、割出角度カウンタiが最大値であるか否かを判定し(S16)、最大値でない場合には割出角度カウンタiに1を加算して(S17)、ステップS14から繰り返す。つまり、複数の割出角度のそれぞれについて、代表ツーリングによる加工可能領域をそれぞれ算出する。
【0027】
続いて、複数の加工可能領域(例えば、図10(a)(b)のハッチングに示す領域)のうち、最も加工体積が大きくなる割出角度を算出する(S18)。図10(a)(b)の割出角度を比較した場合には、図10(a)の割出角度が選択される。
【0028】
続いて、ステップS18にて算出された割出角度における加工後形状を算出する(S19)。加工後形状とは、図11に示すように、素材形状から加工可能領域を取り除いた形状である。つまり、加工後形状とは、代表ツーリングにより素材形状を加工した場合における加工後の形状である。
【0029】
続いて、ステップS19にて算出された加工後形状に干渉を起こすことなく素材形状に対して加工後形状となるように加工可能であり、且つ、最も加工能率が高くなるツーリングである最適ツーリングを算出する(S20)。例えば、図12(a)(b)に示すツーリングが、上記加工後形状となるように加工可能であるとする。この場合、両者を比較すると、図12(b)に示すツーリングが、工具突出量が短いため、加工能率が高いツーリングとなる。このように、複数の工具、ホルダおよび工具突出量の組み合わせが複数得られた場合に、その中のうち最も加工能率が高いものが選択される。代表ツーリングは、所定の加工能率グループを得るために目安となるツーリングであって、ここで選択される最適ツーリングとは異なる場合もあり、場合によっては同一となることもある。
【0030】
続いて、ステップS20にて算出された最適ツーリングによる最適工程候補を算出する(S21)。最適工程候補とは、最適ツーリングおよび割出角度を含む工程情報である。
【0031】
続いて、ステップS19にて算出された加工後形状が更新されたか否かを判定し(S22)、更新された場合には、ステップS13から繰り返す。最初は、新たに加工後形状が算出されたので、当然にステップS13から繰り返す。次のステップS13からS21までの処理においては、最初に算出された加工後形状を素材形状に見立てて処理が行われる。
【0032】
例えば、図11の形状を素材形状として加工を行うと、図13(a)のハッチングに示す領域が加工可能領域となり、図13(b)に示す形状が加工後形状となる。そして、ステップS21にて、この工程が、既に算出されている最適工程候補に追加されることになる。そして、ステップS22にて、加工後形状が更新されたと判定されるため、再びステップS13から繰り返す。
【0033】
さらに続けて行う場合には、図13(b)の形状を素材形状として加工を行うことになる。この場合、図14(a)のハッチングに示す領域が加工可能領域となり、図14(b)に示す形状が加工後形状となる。そして、ステップS21にて、この工程が、既に算出されている最適工程候補に追加されることになる。そして、ステップS22にて、加工後形状が更新されたと判定されるため、再びステップS13から繰り返す。
【0034】
続いて、加工後形状が更新されなくなった場合には、工具刃径カウンタPが最大値であるか否かを判定し(S23)、最大値でない場合には工具刃径カウンタPに1を加算して(S24)、ステップ12から繰り返す。つまり、複数の工具の刃径のそれぞれについて、最適工程候補が算出される。そして、工具刃径カウンタPが最大値に達すれば、能率別工程候補算出処理を終了する。
【0035】
図6に戻り説明する。上記において、ステップS5の加工能率グループが大の場合の能率別工程候補算出処理を行った。次に、加工能率グループが中の場合の能率別工程候補算出処理を行う(S6)。さらに、その次に、加工能率グループが小の場合の能率別工程候補算出処理を行う(S7)。このように、複数の異なる加工能率グループのそれぞれについて、かつ、工具の刃径のそれぞれについて、最適工程候補が算出される。
【0036】
続いて、ステップS5〜S7において算出されたそれぞれの最適工程候補を統合して、暫定最適工程を算出する(S9)。例えば、図15に示すように、加工能率グループが大の最適工程候補、加工能率グループが中の最適工程候補、加工能率グループが小の最適工程候補の順に、統合する。それぞれの工程候補が、個工程に相当する。つまり、それぞれの個工程には、工具、ホルダおよび工具突出量からなるツーリング、加工領域、並びに、割出角度(工具軸姿勢)の情報が含まれている。
【0037】
続いて、統合された暫定最適工程を元に、より最適となる暫定最適工程を算出する。この処理については、図8に示す。図8に示すように、まず、暫定最適工程算出処理は、図6のステップS8で算出した暫定最適工程を読み込む(S31)。
【0038】
工程数カウンタjを1にセットする(S32)。さらに、第j工程を排除した工程を算出する(S33)。次に、まず、現時点の暫定最適工程の全てを実行した場合における総加工領域を算出する(S34)。同時に、第j工程排除工程の全てを実行した場合における総加工領域を算出する(S34)。続いて、現時点の暫定最適工程の全てを実行した場合における実加工時間を算出する(S35)。同時に、第j工程排除工程の全てを実行した場合における実加工時間を算出する(S35)。
【0039】
続いて、工程数カウンタjが最大値であるか否かを判定し(S36)、最大値でない場合には工程数カウンタjに1を加算して(S37)、ステップS33から繰り返す。つまり、全ての1つの個工程を排除した場合のそれぞれの一部排除工程について、総加工領域および実加工時間が算出される。
【0040】
そして、工程数カウンタjが最大値に達すると、暫定最適工程を算出(更新)する。つまり、複数の最適工程候補の中から一部を排除した場合に、暫定最適工程の総加工領域と一部排除工程の総加工領域とが一致する一部排除工程を抽出する。つまり、一部排除工程において、現時点の暫定最適工程による総加工領域を加工可能となる一部排除工程が抽出される。さらに、抽出された一部排除工程が複数ある場合には、それらの中から実加工時間が最も短くなる工程を暫定最適工程として更新する(S38)。
【0041】
続いて、暫定最適工程が更新された場合には(S39)、ステップS31から繰り返す。ここで、ステップS31において読み込まれる暫定最適工程は、ステップS38で更新された暫定最適工程となる。つまり、ステップS31〜S38を繰り返すことにより、総加工領域が変わらないように、且つ、実加工時間が短くなるように、個工程を排除していくことができる。これにより、実質的に重複する加工領域を有していた個工程が排除されていく。
【0042】
そして、暫定最適工程が更新されなくなった場合に(S39)、ステップS38で算出された暫定最適工程を、暫定最適工程として決定する(S40)。そして、暫定最適工程算出処理を終了する。
【0043】
図6に戻り説明する。ステップS9において、暫定最適工程算出処理を行った。次に、暫定最適工程に対して、さらに最適となる工程を決定するための最適工程決定処理を行う(S10)。この最適工程決定処理は、図9に示す。図9に示すように、まず、最適工程算出処理は、図6のステップS9で算出した暫定最適工程を読み込む(S51)。
【0044】
続いて、選択された二つの暫定最適工程におけるツーリングの類似度を算出する(S52)。この類似度について、図16および図17を参照して説明する。暫定最適工程における個工程を、第1〜第3工程として説明する。ここでは、図16(a)に示すように、第1工程のツーリング、第2工程のツーリング、第3工程のツーリングが決定されているとする。それぞれのツーリングの諸元は、図16(b)に示すとおりである。すなわち、工具の種類、ホルダの種類、工具の刃径および工具突出量を類似度の要素としている。このとき、類似度係数を、図16(c)に示すように予め設定しておく。類似度係数は、各要素によって異なるように設定されている。
【0045】
そうすると、図17(a)(1)に示すように、第1工程と第2工程の類似度は5点となり、図17(a)(2)に示すように、第1工程と第3工程の類似度は510点となり、図17(a)(3)に示すように、第2工程と第3工程の類似度は1105点となる。図17(a)(1)〜(3)において、類似度を計算する4つの数字は、左から順に、図16(c)における(1)同一工具に関する類似度係数、(2)同一ホルダに関する類似度係数、(3)同一刃径に関する類似度係数、(4)工具突出量に関する類似度係数の順に示している。
【0046】
続いて、類似度降順に組み合わせを並べ替える(S54)。つまり、図17(b)に示すように、最も類似度が高い「第2工程−第3工程」が類似度No.1となり、類似度No.2が「第1工程−第3工程」となり、類似度No.3が「第1工程−第2工程」となる。
【0047】
続いて、類似度No.のカウンタkを1にセットする(S55)。続いて、類似度No.kの一方の工程のツーリングを他方の工程のツーリングに集約した場合の集約工程を算出する(S56)。つまり、最初に算出される集約工程は、第2工程のツーリングを第3工程のツーリングに集約した場合の集約工程と、第3工程のツーリングを第2工程のツーリングに集約した場合の集約工程とが算出される。
【0048】
続いて、それぞれの集約工程を実行した場合における総加工領域を算出する(S57)。続いて、それぞれの集約工程を実行した場合における実加工時間を算出する(S58)。続いて、類似度No.kが最大値であるか否かを判定し(S59)、最大値でない場合には類似度No.kに1を加算して(S60)、ステップS56から繰り返す。つまり、全ての類似度No.について高いものから順に集約されて、集約可能な全ての集約工程について総加工領域および実加工時間が算出される。
【0049】
類似度No.kが最大値になると、暫定最適工程および複数の集約工程の中から、最適工程を決定する(S61)。最適工程決定において、まず、それぞれの集約工程の総加工領域が暫定最適工程の総加工領域に一致する集約工程のみを抽出する。その後に、抽出された集約工程と暫定最適工程との中から、最適工程を決定する。
【0050】
図18に示す表(a)欄(図18(a))には、暫定最適工程を示し、図18に示す表(b)欄(図18(b))には、抽出された集約工程のうち第2工程のツーリング「B」を第3工程のツーリング「C」に集約した工程を示し、図18に示す表(c)欄(図18(c))には、抽出された集約工程のうち第1工程および第2工程のツーリング「A」「B」を第3工程のツーリング「C」に集約した工程を示す。
【0051】
各工程を比較するために、次のように設定した場合を例にあげる。第1工程の加工体積は300mm3とし、第1工程のツーリング「A」による加工能率(単位時間あたりの加工体積)は30mm3/分とする。第2工程の加工体積は60mm3とし、第2工程のツーリング「B」による加工能率は6mm3/分とする。第3工程の加工体積は30mm3とし、第3工程のツーリング「C」による加工能率は3mm3/分とする。
【0052】
そうすると、暫定最適工程において、第1工程の実加工時間は10分、第2工程の実加工時間は10分、第3工程の実加工時間は10分となる。つまり、暫定最適工程における実加工時間は、30分となる。
【0053】
図18(b)の集約工程の場合には、第1工程はツーリング「A」で、第2工程と第3工程がツーリング「C」である。つまり、第2工程のツーリングを第3工程のツーリングに集約した場合を示している。この場合、第1工程の実加工時間は10分、第2工程の実加工時間は20分、第3工程の実加工時間は10分となる。つまり、暫定最適工程における実加工時間は、40分となる。
【0054】
図18(c)の集約工程の場合には、第1工程〜第3工程の全てが、ツーリング「B」である。つまり、第1工程および第2工程のツーリングを第3工程のツーリングに集約した場合を示している。この場合、第1工程の実加工時間は100分、第2工程の実加工時間は20分、第3工程の実加工時間は10分となる。つまり、暫定最適工程における実加工時間は、130分となる。
【0055】
次に、実加工時間に対して、単位集約短縮時間を考慮した総時間を算出する。総時間の算出は、[実加工時間]+[単位集約短縮時間]×[集約数]により行われる。ここで、単位集約短縮時間とは、設備機械の使用者が工具およびホルダを所有することを時間に換算した所有換算時間、設備機械に対して工具およびホルダを設定するためのツーリング準備時間、加工に際して実行される工具交換回数時間に応じた値である。ここでは、単位集約短縮時間を20分とする。
【0056】
また、集約数は、暫定最適工程に対して工程のツーリングを集約した数である。つまり、図18(b)の場合の集約数は、1であり、図18(c)の場合の集約数は、2である。
【0057】
従って、図18の総時間の欄に示すように、図18(a)に示す暫定最適工程の総時間は30分となり、図18(b)に示す集約工程の総時間は20分となり、図18(c)に示す集約工程の総時間は90分となる。総時間が最も短い工程は、図18(b)に示す集約工程となる。そこで、この集約工程を最適工程と決定する。
【0058】
以上説明したような最適工程の決定を行うことで、より最適な工程を決定することができる。さらに、暫定最適工程および集約工程の中から、単位集約短縮時間を考慮した総時間により比較することで、仮に実加工時間が長くなったとしても、単位集約短縮時間に集約工程数を掛け合わせた時間が、実加工時間の長くなった時間以上である場合には、集約した方が最適と判断される。これにより、実際の作業現場におけるトータルの時間として、短縮を図ることができる。
【0059】
特に、単位集約短縮時間を所有換算時間に応じた値とすることで、設備機械の使用者が所有する工具およびホルダの数を削減することが可能となり、且つ、新たな工具およびホルダを購入することも不要となる。所有している工具やホルダの数が減少することで、その保管、管理費を削減することができる。従って、トータルの時間として、結果的に短縮を図ることができると共に、低コスト化を図ることができる。
【0060】
また、単位集約短縮時間をツーリング準備時間に応じた値とすることで、ツーリング準備時間の削減に伴ってトータルの作業時間を短縮することができる。また、単位集約短縮時間を工具交換回数時間に応じた値とすることで、工具交換回数時間の削減に伴ってトータルの作業時間を短縮することができる。
【0061】
また、類似度としての要素を、工具の種類、ホルダの種類、工具突出量、工具の刃径の何れかとし、それぞれの類似度係数を異なるように設定した。これにより、集約のし易さ、および、集約した場合の影響度を考慮することができる。これにより、より最適な工程を決定することができる。
【0062】
<その他の変形態様>
上記第一実施形態においては、割出角度(工具軸姿勢)を変更することができる5軸加工機を対象とした最適工程決定装置について示した。この対象である5軸加工機には、5軸割出加工機の他、5軸同時加工機も対象とすることができる。5軸割出加工機とは、回転軸の少なくとも1軸を割り出した状態(固定した状態)で、他の軸を動作させることにより加工を行う加工機である。また、5軸同時加工機とは、直進軸と回転軸とを同時に制御しながら加工を行う加工機である。
【0063】
この他に、直交3軸のみに移動可能な加工機を対象とした最適工程決定装置にも適用できる。この場合、割出角度(工具軸姿勢)に関する処理を不要とするのみである。具体的には、図7に示す能率別工程候補算出処理におけるステップS13〜S18およびS22が不要となる。その他は、実質的に同一である。
【0064】
また、上記実施形態において、図7に示す能率別工程候補算出処理における加工可能領域の算出(S15)に際して、代表ツーリングを用いた。この他に、図19に示すような代表ツーリングに相当するテンプレートを用いることもできる。例えば、このテンプレートは、円錐形をなし、頂点を製品形状の加工面を習うことにより得られる形状としている。そして、代表ツーリングテンプレートは、上述した代表ツーリングと同様に、複数の加工能率グループのそれぞれについて設定しておく。例えば、図19(a)(b)(c)のそれぞれに示す代表ツーリングテンプレートは、加工能率グループの大、中、小の順のものである。また、加工能率グループは、上記実施形態においては、大、中、小の3種類としたが、2種類としても良いし、4種類以上とすることも可能である。
【符号の説明】
【0065】
1:形状記憶部、2:工具DB、3:ホルダDB
4:代表ツーリングDB、5:最適工程決定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、素材形状から製品形状に加工するための最適工程を決定する装置およびその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加工工程を決定する装置として、例えば、特開平11−235646号公報(特許文献1)に記載されたものがある。特許文献1には、工程候補が複数の工程からなる場合に、実加工時間が最も短くなるような工程の集約を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−235646号公報([0047]〜[0050])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、実際には、実加工時間の他に、工程を集約することにより短縮できる時間の要素が存在する。そのため、仮に、実加工時間が長くなったとしても、全体として評価した場合には、結果として時間短縮につながる場合がある。しかし、特許文献1では、実加工時間のみを評価対象としているため、他の要因を何ら評価していない。そのため、実際の作業現場においては、トータルの時間が長期化するおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、実加工時間以外の他の要因を考慮した上で、最も適切な工程集約を行うことにより、最適工程を決定することができる最適工程決定装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る最適工程決定装置の発明の構成上の特徴は、
素材形状および製品形状を記憶する形状記憶部と、
複数の工具の情報および複数のホルダの情報をそれぞれ記憶する工具ホルダ情報記憶部と、
前記素材形状から前記製品形状に加工するための最適工程を決定する最適工程決定部と、
を備え、
前記最適工程決定部は、
前記工具、前記ホルダおよび工具突出量からなるツーリングを含む複数の個工程の情報と、複数の前記個工程の順序とを含む暫定工程を算出する暫定最適工程算出ステップと、
選択された二つの前記暫定工程における前記ツーリングの類似度を算出する類似度算出ステップと、
類似度の高い前記暫定工程のうち一方の前記暫定工程における前記ツーリングを、他方の前記暫定工程における前記ツーリングに集約した場合の集約工程を複数算出する集約工程算出ステップと、
それぞれの前記集約工程における実加工時間と、1つの前記暫定工程の前記ツーリングを集約することに伴って短縮される単位集約短縮時間と、集約した前記暫定工程の数とに基づいて、複数の前記集約工程の中から前記最適工程を決定する最適工程決定ステップと、
を実行することである。
【0007】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、
前記単位集約短縮時間は、設備機械の使用者が前記工具および前記ホルダを所有することを時間に換算した所有換算時間であることである。
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1または2において、
前記単位集約短縮時間は、前記設備機械に対して前記工具および前記ホルダを設定するためのツーリング準備時間に応じた値であることである。
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜3の何れか一項において、
前記単位集約短縮時間は、加工に際して実行される工具交換回数時間に応じた値であることである。
【0008】
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜4の何れか一項において、
前記類似度は、前記工具の種類、前記ホルダの種類、前記工具突出量および前記工具の刃径の中から選択された要素の何れかに基づいて決定されることである。
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項5において、
前記類似度は、
各要素が同一の場合の類似度係数が異なるように設定されていることを特徴とする最適工程決定装置。
【0009】
請求項7に係る最適工程決定方法の発明の構成上の特徴は、
形状記憶部に、素材形状および製品形状を記憶し、
工具ホルダ情報記憶部に、複数の工具の情報および複数のホルダの情報をそれぞれ記憶し、
前記工具、前記ホルダおよび工具突出量からなるツーリングを含む複数の個工程の情報と、複数の前記個工程の順序とを含む暫定工程を算出する暫定最適工程算出ステップと、
選択された二つの前記暫定工程における前記ツーリングの類似度を算出する類似度算出ステップと、
類似度の高い前記暫定工程のうち一方の前記暫定工程における前記ツーリングを、他方の前記暫定工程における前記ツーリングに集約した場合の集約工程を複数算出する集約工程算出ステップと、
それぞれの前記集約工程における実加工時間と、1つの前記暫定工程の前記ツーリングを集約することに伴って短縮される単位集約短縮時間と、集約した前記暫定工程の数とに基づいて、前記素材形状から前記製品形状に加工するための最適工程を複数の前記集約工程の中から決定する最適工程決定ステップと、
を備えることである。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、実加工時間の他に、単位集約短縮時間と集約した暫定工程の数を考慮して、最適工程として工程を集約するか否かを決定している。従って、実加工時間が長くなったとしても、単位集約短縮時間に集約工程数を掛け合わせた時間が、実加工時間の長くなった時間以上である場合には、集約した方が最適と判断される。これにより、実際の作業現場におけるトータルの時間として、短縮を図ることができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、設備機械の使用者が所有する工具およびホルダの数を削減することが可能となり、且つ、新たな工具およびホルダを購入することも不要となる。使用者にとって、所有している工具やホルダの保管や管理は、非常にコストおよび時間を要する。所有している工具やホルダの数が減少すると、その保管、管理費を削減することができる。また、現在所有していない工具やホルダを新たに購入するとなると、当然にコストおよび時間を要する。従って、本発明を適用することにより、トータルの時間として、結果的に短縮を図ることができると共に、低コスト化を図ることができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、ツーリング準備時間を考慮することができるため、ツーリング準備時間の削減に伴ってトータルの作業時間を短縮することができる。
請求項4に係る発明によれば、工具交換回数時間を考慮することができるため、工具交換回数時間の削減に伴ってトータルの作業時間を短縮することができる。
請求項5に係る発明によれば、類似度としての要素を、工具の種類、ホルダの種類、工具突出量、工具の刃径の何れかとすることで、確実に工具の類似度を得ることができる。
請求項6に係る発明によれば、集約のし易さ、および、集約した場合の影響度を考慮することができる。これにより、より最適な工程を決定することができる。
【0013】
請求項7に係る発明によれば、請求項1と同様の効果を奏する。また、最適工程決定装置における他の特徴について、最適工程決定方法に適用することができ、その場合の効果は装置のそれぞれにおける効果と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本実施形態の最適工程決定装置の構成図である。
【図2】図2は、素材形状および製品形状を示す図である。
【図3】図3は、工具DBに記憶されている複数の工具の情報を示す図である。
【図4】図4は、ホルダDBに記憶されている複数のホルダの情報を示す図である。
【図5】図5は、代表ツーリングDBに記憶されている複数の代表ツーリングを示す図である。
【図6】図6は、最適工程決定部のメイン処理のフローチャートである。
【図7】図7は、能率別工程候補算出処理のフローチャートである。
【図8】図8は、暫定最適工程算出処理のフローチャートである。
【図9】図9は、最適工程決定処理のフローチャートである。
【図10】図10(a)(b)は、工具軸姿勢を変更させた場合のそれぞれにおける加工可能領域を示す図である。
【図11】図10(a)の場合の加工後形状を示す図である。
【図12】図12(a)(b)は、加工能率の異なるツーリングを示す図である。
【図13】図13(a)は、工具軸姿勢を変更した場合の加工可能領域を示し、図13(b)は、図13(a)のときの加工後形状を示す。
【図14】図14(a)は、工具軸姿勢をさらに変更した場合の加工可能領域を示し、図14(b)は、図14(a)のときの加工後形状を示す。
【図15】図15は、能率別工程候補統合による工程を示す。
【図16】図16(a)は、各工程の最適ツーリングを示し、図16(b)は、各工程の諸元を示し、図16(c)は、各諸元に対する類似度係数を示す。
【図17】図17(a)は、各工程組み合わせにおける類似度を示し、図17(b)は、類似度降順に並び替えた組み合わせを示す。
【図18】図18(a)は、工程集約を行う前における実加工時間および総時間を示し、図18(b)は、第3工程の最適ツーリングを第2工程の最適ツーリングに集約した場合における実加工時間および総時間を示し、図18(c)は、全工程の最適ツーリングを第2工程の最適ツーリングに集約した場合における実加工時間および総時間を示す。
【図19】図19は、代表ツーリングテンプレートを用いた場合の加工可能領域を示し、図19(a)(b)(c)は、それぞれ、加工能率グループが大、中、小の場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の最適工程決定装置およびその方法を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
本実施形態の最適工程決定装置について、図1〜図5を参照して説明する。図1に示すように、最適工程決定装置は、形状記憶部1と、工具DB2と、ホルダDB3と、代表ツーリングDB4と、最適工程決定部5とを備えている。
【0016】
形状記憶部1は、CAD(図示せず)により形成された素材形状および製品形状を記憶する。本実施形態においては、図2に示すように、素材形状を11で示し、製品形状を12で示す。すなわち、製品形状12は、素材形状11からポケット加工を行った形状である。そして、ポケット部の底面形状が、深いところと浅いところを有している。
【0017】
工具DB2(本発明の工具ホルダ情報記憶部に相当する)は、複数の工具の情報を記憶する。この工具は、図3に示すように、ボールエンドミルであって、刃径および形状が異なるものが複数存在する。ここで、本明細書において、「工具の刃径」とは、工具の刃部の外径を意味する。例えば、図3において、最も左側の工具の刃径が最も大きく、左から2番目の工具の刃径が次に大きく、右側2種の工具の刃径が最も小さい。また、図3において、左側3種の工具の形状は、先端部を除く部分が円柱状をなしており、図3の右側1種の工具の形状は、先端部を除く部分が円柱2段状をなしている。つまり、図3の右側1種の工具の形状は、刃部の外径よりも大きな外径の基部を有する形状からなる。そして、この工具DB2には、工具の情報それぞれに工具番号が関連づけられている。
【0018】
ホルダDB3(本発明の工具ホルダ情報記憶部に相当する)は、複数のホルダの情報を記憶する。このホルダには、図4に示すように、刃径および形状の異なるそれぞれの工具を保持できる複数種類あり、且つ、同一の工具を保持できるホルダにも、複数の形状が存在する。このホルダDB3には、ホルダの情報それぞれにホルダ番号が関連づけられている。
【0019】
代表ツーリングDB4(本発明の代表ツーリング記憶部に相当する)は、複数の加工能率グループそれぞれについて、且つ、工具の刃径それぞれについて、代表ツーリングを記憶する。「代表ツーリング」とは、工具、ホルダおよび工具突出量の組み合わせからなる。「加工能率」とは、単位時間あたりの加工体積に相当し、例えば、同じ被削材(ワーク)を同じ材質の工具で加工する場合には、工具突出量(L)/工具刃径(D)(≒剛性)を用いることができる。また、「加工能率グループ」とは、加工能率が所定の範囲内に入るグループを意味する。
【0020】
ここでは、加工能率グループの大、中、小の3種類についての代表ツーリングがある。ここでは、加工能率グループが大のものは、L/Dが5以下とし、加工能率グループが中のものは、L/Dが5〜10とし、加工能率グループが小のものは、L/Dが10以上とする。
【0021】
最適工程決定部5は、素材形状から製品形状に加工するための最適工程を決定する。この最適工程とは、複数の個工程とその順序とからなる。この最適工程を決定するための最適工程決定方法について、図6〜図9のフローチャートに示す。
【0022】
図6に示すように、最適工程決定部5は、まず製品形状を形状記憶部1から読み込む(S1)。続いて、素材形状を形状記憶部1から読み込む(S2)。続いて、工具候補を工具DB2から、ホルダ候補をホルダDB3からそれぞれ読み込む(S3、S4)。
【0023】
続いて、加工能率グループが大に対して、能率別工程候補の算出処理を実行する(S5)。この能率別工程候補算出処理は、図7に示すように、工具の刃径カウンタPを1にセットする(S11)。ここでは、工具DB3に記憶されている工具のうち、最大の刃径、例えば、φ18をP=1とし、次の刃径、例えば、φ10をP=2とし、その次の刃径、例えば、φ8をP=3とする。
【0024】
続いて、代表ツーリングDB4から加工能率グループが大の代表ツーリングを読み込む(S12)。続いて、工具軸姿勢に相当する工具の割出角度のカウンタiを1にセットする(S13)。この第i割出角度を選択する(S14)。すなわち、実際の割出角度を選択する。続いて、選択された割出角度について代表ツーリングにより素材形状を加工した場合における加工可能領域を算出する(S15)。
【0025】
加工可能領域は、図10(a)(b)に示す。まず、ある割出角度における加工可能領域は、図10(a)のハッチングに示す領域である。つまり、製品形状の部分に工具およびホルダが干渉することなく、加工することができる領域である。割出角度を異ならしめた場合には、例えば、図10(b)のハッチングに示す領域となる。
【0026】
図7に戻り説明をする。続いて、割出角度カウンタiが最大値であるか否かを判定し(S16)、最大値でない場合には割出角度カウンタiに1を加算して(S17)、ステップS14から繰り返す。つまり、複数の割出角度のそれぞれについて、代表ツーリングによる加工可能領域をそれぞれ算出する。
【0027】
続いて、複数の加工可能領域(例えば、図10(a)(b)のハッチングに示す領域)のうち、最も加工体積が大きくなる割出角度を算出する(S18)。図10(a)(b)の割出角度を比較した場合には、図10(a)の割出角度が選択される。
【0028】
続いて、ステップS18にて算出された割出角度における加工後形状を算出する(S19)。加工後形状とは、図11に示すように、素材形状から加工可能領域を取り除いた形状である。つまり、加工後形状とは、代表ツーリングにより素材形状を加工した場合における加工後の形状である。
【0029】
続いて、ステップS19にて算出された加工後形状に干渉を起こすことなく素材形状に対して加工後形状となるように加工可能であり、且つ、最も加工能率が高くなるツーリングである最適ツーリングを算出する(S20)。例えば、図12(a)(b)に示すツーリングが、上記加工後形状となるように加工可能であるとする。この場合、両者を比較すると、図12(b)に示すツーリングが、工具突出量が短いため、加工能率が高いツーリングとなる。このように、複数の工具、ホルダおよび工具突出量の組み合わせが複数得られた場合に、その中のうち最も加工能率が高いものが選択される。代表ツーリングは、所定の加工能率グループを得るために目安となるツーリングであって、ここで選択される最適ツーリングとは異なる場合もあり、場合によっては同一となることもある。
【0030】
続いて、ステップS20にて算出された最適ツーリングによる最適工程候補を算出する(S21)。最適工程候補とは、最適ツーリングおよび割出角度を含む工程情報である。
【0031】
続いて、ステップS19にて算出された加工後形状が更新されたか否かを判定し(S22)、更新された場合には、ステップS13から繰り返す。最初は、新たに加工後形状が算出されたので、当然にステップS13から繰り返す。次のステップS13からS21までの処理においては、最初に算出された加工後形状を素材形状に見立てて処理が行われる。
【0032】
例えば、図11の形状を素材形状として加工を行うと、図13(a)のハッチングに示す領域が加工可能領域となり、図13(b)に示す形状が加工後形状となる。そして、ステップS21にて、この工程が、既に算出されている最適工程候補に追加されることになる。そして、ステップS22にて、加工後形状が更新されたと判定されるため、再びステップS13から繰り返す。
【0033】
さらに続けて行う場合には、図13(b)の形状を素材形状として加工を行うことになる。この場合、図14(a)のハッチングに示す領域が加工可能領域となり、図14(b)に示す形状が加工後形状となる。そして、ステップS21にて、この工程が、既に算出されている最適工程候補に追加されることになる。そして、ステップS22にて、加工後形状が更新されたと判定されるため、再びステップS13から繰り返す。
【0034】
続いて、加工後形状が更新されなくなった場合には、工具刃径カウンタPが最大値であるか否かを判定し(S23)、最大値でない場合には工具刃径カウンタPに1を加算して(S24)、ステップ12から繰り返す。つまり、複数の工具の刃径のそれぞれについて、最適工程候補が算出される。そして、工具刃径カウンタPが最大値に達すれば、能率別工程候補算出処理を終了する。
【0035】
図6に戻り説明する。上記において、ステップS5の加工能率グループが大の場合の能率別工程候補算出処理を行った。次に、加工能率グループが中の場合の能率別工程候補算出処理を行う(S6)。さらに、その次に、加工能率グループが小の場合の能率別工程候補算出処理を行う(S7)。このように、複数の異なる加工能率グループのそれぞれについて、かつ、工具の刃径のそれぞれについて、最適工程候補が算出される。
【0036】
続いて、ステップS5〜S7において算出されたそれぞれの最適工程候補を統合して、暫定最適工程を算出する(S9)。例えば、図15に示すように、加工能率グループが大の最適工程候補、加工能率グループが中の最適工程候補、加工能率グループが小の最適工程候補の順に、統合する。それぞれの工程候補が、個工程に相当する。つまり、それぞれの個工程には、工具、ホルダおよび工具突出量からなるツーリング、加工領域、並びに、割出角度(工具軸姿勢)の情報が含まれている。
【0037】
続いて、統合された暫定最適工程を元に、より最適となる暫定最適工程を算出する。この処理については、図8に示す。図8に示すように、まず、暫定最適工程算出処理は、図6のステップS8で算出した暫定最適工程を読み込む(S31)。
【0038】
工程数カウンタjを1にセットする(S32)。さらに、第j工程を排除した工程を算出する(S33)。次に、まず、現時点の暫定最適工程の全てを実行した場合における総加工領域を算出する(S34)。同時に、第j工程排除工程の全てを実行した場合における総加工領域を算出する(S34)。続いて、現時点の暫定最適工程の全てを実行した場合における実加工時間を算出する(S35)。同時に、第j工程排除工程の全てを実行した場合における実加工時間を算出する(S35)。
【0039】
続いて、工程数カウンタjが最大値であるか否かを判定し(S36)、最大値でない場合には工程数カウンタjに1を加算して(S37)、ステップS33から繰り返す。つまり、全ての1つの個工程を排除した場合のそれぞれの一部排除工程について、総加工領域および実加工時間が算出される。
【0040】
そして、工程数カウンタjが最大値に達すると、暫定最適工程を算出(更新)する。つまり、複数の最適工程候補の中から一部を排除した場合に、暫定最適工程の総加工領域と一部排除工程の総加工領域とが一致する一部排除工程を抽出する。つまり、一部排除工程において、現時点の暫定最適工程による総加工領域を加工可能となる一部排除工程が抽出される。さらに、抽出された一部排除工程が複数ある場合には、それらの中から実加工時間が最も短くなる工程を暫定最適工程として更新する(S38)。
【0041】
続いて、暫定最適工程が更新された場合には(S39)、ステップS31から繰り返す。ここで、ステップS31において読み込まれる暫定最適工程は、ステップS38で更新された暫定最適工程となる。つまり、ステップS31〜S38を繰り返すことにより、総加工領域が変わらないように、且つ、実加工時間が短くなるように、個工程を排除していくことができる。これにより、実質的に重複する加工領域を有していた個工程が排除されていく。
【0042】
そして、暫定最適工程が更新されなくなった場合に(S39)、ステップS38で算出された暫定最適工程を、暫定最適工程として決定する(S40)。そして、暫定最適工程算出処理を終了する。
【0043】
図6に戻り説明する。ステップS9において、暫定最適工程算出処理を行った。次に、暫定最適工程に対して、さらに最適となる工程を決定するための最適工程決定処理を行う(S10)。この最適工程決定処理は、図9に示す。図9に示すように、まず、最適工程算出処理は、図6のステップS9で算出した暫定最適工程を読み込む(S51)。
【0044】
続いて、選択された二つの暫定最適工程におけるツーリングの類似度を算出する(S52)。この類似度について、図16および図17を参照して説明する。暫定最適工程における個工程を、第1〜第3工程として説明する。ここでは、図16(a)に示すように、第1工程のツーリング、第2工程のツーリング、第3工程のツーリングが決定されているとする。それぞれのツーリングの諸元は、図16(b)に示すとおりである。すなわち、工具の種類、ホルダの種類、工具の刃径および工具突出量を類似度の要素としている。このとき、類似度係数を、図16(c)に示すように予め設定しておく。類似度係数は、各要素によって異なるように設定されている。
【0045】
そうすると、図17(a)(1)に示すように、第1工程と第2工程の類似度は5点となり、図17(a)(2)に示すように、第1工程と第3工程の類似度は510点となり、図17(a)(3)に示すように、第2工程と第3工程の類似度は1105点となる。図17(a)(1)〜(3)において、類似度を計算する4つの数字は、左から順に、図16(c)における(1)同一工具に関する類似度係数、(2)同一ホルダに関する類似度係数、(3)同一刃径に関する類似度係数、(4)工具突出量に関する類似度係数の順に示している。
【0046】
続いて、類似度降順に組み合わせを並べ替える(S54)。つまり、図17(b)に示すように、最も類似度が高い「第2工程−第3工程」が類似度No.1となり、類似度No.2が「第1工程−第3工程」となり、類似度No.3が「第1工程−第2工程」となる。
【0047】
続いて、類似度No.のカウンタkを1にセットする(S55)。続いて、類似度No.kの一方の工程のツーリングを他方の工程のツーリングに集約した場合の集約工程を算出する(S56)。つまり、最初に算出される集約工程は、第2工程のツーリングを第3工程のツーリングに集約した場合の集約工程と、第3工程のツーリングを第2工程のツーリングに集約した場合の集約工程とが算出される。
【0048】
続いて、それぞれの集約工程を実行した場合における総加工領域を算出する(S57)。続いて、それぞれの集約工程を実行した場合における実加工時間を算出する(S58)。続いて、類似度No.kが最大値であるか否かを判定し(S59)、最大値でない場合には類似度No.kに1を加算して(S60)、ステップS56から繰り返す。つまり、全ての類似度No.について高いものから順に集約されて、集約可能な全ての集約工程について総加工領域および実加工時間が算出される。
【0049】
類似度No.kが最大値になると、暫定最適工程および複数の集約工程の中から、最適工程を決定する(S61)。最適工程決定において、まず、それぞれの集約工程の総加工領域が暫定最適工程の総加工領域に一致する集約工程のみを抽出する。その後に、抽出された集約工程と暫定最適工程との中から、最適工程を決定する。
【0050】
図18に示す表(a)欄(図18(a))には、暫定最適工程を示し、図18に示す表(b)欄(図18(b))には、抽出された集約工程のうち第2工程のツーリング「B」を第3工程のツーリング「C」に集約した工程を示し、図18に示す表(c)欄(図18(c))には、抽出された集約工程のうち第1工程および第2工程のツーリング「A」「B」を第3工程のツーリング「C」に集約した工程を示す。
【0051】
各工程を比較するために、次のように設定した場合を例にあげる。第1工程の加工体積は300mm3とし、第1工程のツーリング「A」による加工能率(単位時間あたりの加工体積)は30mm3/分とする。第2工程の加工体積は60mm3とし、第2工程のツーリング「B」による加工能率は6mm3/分とする。第3工程の加工体積は30mm3とし、第3工程のツーリング「C」による加工能率は3mm3/分とする。
【0052】
そうすると、暫定最適工程において、第1工程の実加工時間は10分、第2工程の実加工時間は10分、第3工程の実加工時間は10分となる。つまり、暫定最適工程における実加工時間は、30分となる。
【0053】
図18(b)の集約工程の場合には、第1工程はツーリング「A」で、第2工程と第3工程がツーリング「C」である。つまり、第2工程のツーリングを第3工程のツーリングに集約した場合を示している。この場合、第1工程の実加工時間は10分、第2工程の実加工時間は20分、第3工程の実加工時間は10分となる。つまり、暫定最適工程における実加工時間は、40分となる。
【0054】
図18(c)の集約工程の場合には、第1工程〜第3工程の全てが、ツーリング「B」である。つまり、第1工程および第2工程のツーリングを第3工程のツーリングに集約した場合を示している。この場合、第1工程の実加工時間は100分、第2工程の実加工時間は20分、第3工程の実加工時間は10分となる。つまり、暫定最適工程における実加工時間は、130分となる。
【0055】
次に、実加工時間に対して、単位集約短縮時間を考慮した総時間を算出する。総時間の算出は、[実加工時間]+[単位集約短縮時間]×[集約数]により行われる。ここで、単位集約短縮時間とは、設備機械の使用者が工具およびホルダを所有することを時間に換算した所有換算時間、設備機械に対して工具およびホルダを設定するためのツーリング準備時間、加工に際して実行される工具交換回数時間に応じた値である。ここでは、単位集約短縮時間を20分とする。
【0056】
また、集約数は、暫定最適工程に対して工程のツーリングを集約した数である。つまり、図18(b)の場合の集約数は、1であり、図18(c)の場合の集約数は、2である。
【0057】
従って、図18の総時間の欄に示すように、図18(a)に示す暫定最適工程の総時間は30分となり、図18(b)に示す集約工程の総時間は20分となり、図18(c)に示す集約工程の総時間は90分となる。総時間が最も短い工程は、図18(b)に示す集約工程となる。そこで、この集約工程を最適工程と決定する。
【0058】
以上説明したような最適工程の決定を行うことで、より最適な工程を決定することができる。さらに、暫定最適工程および集約工程の中から、単位集約短縮時間を考慮した総時間により比較することで、仮に実加工時間が長くなったとしても、単位集約短縮時間に集約工程数を掛け合わせた時間が、実加工時間の長くなった時間以上である場合には、集約した方が最適と判断される。これにより、実際の作業現場におけるトータルの時間として、短縮を図ることができる。
【0059】
特に、単位集約短縮時間を所有換算時間に応じた値とすることで、設備機械の使用者が所有する工具およびホルダの数を削減することが可能となり、且つ、新たな工具およびホルダを購入することも不要となる。所有している工具やホルダの数が減少することで、その保管、管理費を削減することができる。従って、トータルの時間として、結果的に短縮を図ることができると共に、低コスト化を図ることができる。
【0060】
また、単位集約短縮時間をツーリング準備時間に応じた値とすることで、ツーリング準備時間の削減に伴ってトータルの作業時間を短縮することができる。また、単位集約短縮時間を工具交換回数時間に応じた値とすることで、工具交換回数時間の削減に伴ってトータルの作業時間を短縮することができる。
【0061】
また、類似度としての要素を、工具の種類、ホルダの種類、工具突出量、工具の刃径の何れかとし、それぞれの類似度係数を異なるように設定した。これにより、集約のし易さ、および、集約した場合の影響度を考慮することができる。これにより、より最適な工程を決定することができる。
【0062】
<その他の変形態様>
上記第一実施形態においては、割出角度(工具軸姿勢)を変更することができる5軸加工機を対象とした最適工程決定装置について示した。この対象である5軸加工機には、5軸割出加工機の他、5軸同時加工機も対象とすることができる。5軸割出加工機とは、回転軸の少なくとも1軸を割り出した状態(固定した状態)で、他の軸を動作させることにより加工を行う加工機である。また、5軸同時加工機とは、直進軸と回転軸とを同時に制御しながら加工を行う加工機である。
【0063】
この他に、直交3軸のみに移動可能な加工機を対象とした最適工程決定装置にも適用できる。この場合、割出角度(工具軸姿勢)に関する処理を不要とするのみである。具体的には、図7に示す能率別工程候補算出処理におけるステップS13〜S18およびS22が不要となる。その他は、実質的に同一である。
【0064】
また、上記実施形態において、図7に示す能率別工程候補算出処理における加工可能領域の算出(S15)に際して、代表ツーリングを用いた。この他に、図19に示すような代表ツーリングに相当するテンプレートを用いることもできる。例えば、このテンプレートは、円錐形をなし、頂点を製品形状の加工面を習うことにより得られる形状としている。そして、代表ツーリングテンプレートは、上述した代表ツーリングと同様に、複数の加工能率グループのそれぞれについて設定しておく。例えば、図19(a)(b)(c)のそれぞれに示す代表ツーリングテンプレートは、加工能率グループの大、中、小の順のものである。また、加工能率グループは、上記実施形態においては、大、中、小の3種類としたが、2種類としても良いし、4種類以上とすることも可能である。
【符号の説明】
【0065】
1:形状記憶部、2:工具DB、3:ホルダDB
4:代表ツーリングDB、5:最適工程決定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材形状および製品形状を記憶する形状記憶部と、
複数の工具の情報および複数のホルダの情報をそれぞれ記憶する工具ホルダ情報記憶部と、
前記素材形状から前記製品形状に加工するための最適工程を決定する最適工程決定部と、
を備え、
前記最適工程決定部は、
前記工具、前記ホルダおよび工具突出量からなるツーリングを含む複数の個工程の情報と、複数の前記個工程の順序とを含む暫定工程を算出する暫定最適工程算出ステップと、
選択された二つの前記暫定工程における前記ツーリングの類似度を算出する類似度算出ステップと、
類似度の高い前記暫定工程のうち一方の前記暫定工程における前記ツーリングを、他方の前記暫定工程における前記ツーリングに集約した場合の集約工程を複数算出する集約工程算出ステップと、
それぞれの前記集約工程における実加工時間と、1つの前記暫定工程の前記ツーリングを集約することに伴って短縮される単位集約短縮時間と、集約した前記暫定工程の数とに基づいて、複数の前記集約工程の中から前記最適工程を決定する最適工程決定ステップと、
を実行することを特徴とする最適工程決定装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記単位集約短縮時間は、設備機械の使用者が前記工具および前記ホルダを所有することを時間に換算した所有換算時間であることを特徴とする最適工程決定装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記単位集約短縮時間は、前記設備機械に対して前記工具および前記ホルダを設定するためのツーリング準備時間に応じた値であることを特徴とする最適工程決定装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項において、
前記単位集約短縮時間は、加工に際して実行される工具交換回数時間に応じた値であることを特徴とする最適工程決定装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項において、
前記類似度は、前記工具の種類、前記ホルダの種類、前記工具突出量および前記工具の刃径の中から選択された要素の何れかに基づいて決定されることを特徴とする最適工程決定装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記類似度は、
各要素が同一の場合の類似度係数が異なるように設定されていることを特徴とする最適工程決定装置。
【請求項7】
形状記憶部に、素材形状および製品形状を記憶し、
工具ホルダ情報記憶部に、複数の工具の情報および複数のホルダの情報をそれぞれ記憶し、
前記工具、前記ホルダおよび工具突出量からなるツーリングを含む複数の個工程の情報と、複数の前記個工程の順序とを含む暫定工程を算出する暫定最適工程算出ステップと、
選択された二つの前記暫定工程における前記ツーリングの類似度を算出する類似度算出ステップと、
類似度の高い前記暫定工程のうち一方の前記暫定工程における前記ツーリングを、他方の前記暫定工程における前記ツーリングに集約した場合の集約工程を複数算出する集約工程算出ステップと、
それぞれの前記集約工程における実加工時間と、1つの前記暫定工程の前記ツーリングを集約することに伴って短縮される単位集約短縮時間と、集約した前記暫定工程の数とに基づいて、前記素材形状から前記製品形状に加工するための最適工程を複数の前記集約工程の中から決定する最適工程決定ステップと、
を備えることを特徴とする最適工程決定方法。
【請求項1】
素材形状および製品形状を記憶する形状記憶部と、
複数の工具の情報および複数のホルダの情報をそれぞれ記憶する工具ホルダ情報記憶部と、
前記素材形状から前記製品形状に加工するための最適工程を決定する最適工程決定部と、
を備え、
前記最適工程決定部は、
前記工具、前記ホルダおよび工具突出量からなるツーリングを含む複数の個工程の情報と、複数の前記個工程の順序とを含む暫定工程を算出する暫定最適工程算出ステップと、
選択された二つの前記暫定工程における前記ツーリングの類似度を算出する類似度算出ステップと、
類似度の高い前記暫定工程のうち一方の前記暫定工程における前記ツーリングを、他方の前記暫定工程における前記ツーリングに集約した場合の集約工程を複数算出する集約工程算出ステップと、
それぞれの前記集約工程における実加工時間と、1つの前記暫定工程の前記ツーリングを集約することに伴って短縮される単位集約短縮時間と、集約した前記暫定工程の数とに基づいて、複数の前記集約工程の中から前記最適工程を決定する最適工程決定ステップと、
を実行することを特徴とする最適工程決定装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記単位集約短縮時間は、設備機械の使用者が前記工具および前記ホルダを所有することを時間に換算した所有換算時間であることを特徴とする最適工程決定装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記単位集約短縮時間は、前記設備機械に対して前記工具および前記ホルダを設定するためのツーリング準備時間に応じた値であることを特徴とする最適工程決定装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項において、
前記単位集約短縮時間は、加工に際して実行される工具交換回数時間に応じた値であることを特徴とする最適工程決定装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項において、
前記類似度は、前記工具の種類、前記ホルダの種類、前記工具突出量および前記工具の刃径の中から選択された要素の何れかに基づいて決定されることを特徴とする最適工程決定装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記類似度は、
各要素が同一の場合の類似度係数が異なるように設定されていることを特徴とする最適工程決定装置。
【請求項7】
形状記憶部に、素材形状および製品形状を記憶し、
工具ホルダ情報記憶部に、複数の工具の情報および複数のホルダの情報をそれぞれ記憶し、
前記工具、前記ホルダおよび工具突出量からなるツーリングを含む複数の個工程の情報と、複数の前記個工程の順序とを含む暫定工程を算出する暫定最適工程算出ステップと、
選択された二つの前記暫定工程における前記ツーリングの類似度を算出する類似度算出ステップと、
類似度の高い前記暫定工程のうち一方の前記暫定工程における前記ツーリングを、他方の前記暫定工程における前記ツーリングに集約した場合の集約工程を複数算出する集約工程算出ステップと、
それぞれの前記集約工程における実加工時間と、1つの前記暫定工程の前記ツーリングを集約することに伴って短縮される単位集約短縮時間と、集約した前記暫定工程の数とに基づいて、前記素材形状から前記製品形状に加工するための最適工程を複数の前記集約工程の中から決定する最適工程決定ステップと、
を備えることを特徴とする最適工程決定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−691(P2011−691A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147831(P2009−147831)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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